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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】測定器及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/28 20060101AFI20231124BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01R13/28 D
G01R13/20 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021132435
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2023026961
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-256876(JP,A)
【文献】特開2002-062316(JP,A)
【文献】特開昭63-066633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0060496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/28
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の波形を測定する測定器であって、
第1の最高サンプリングレートよりも遅いサンプリングレートを有する外部サンプルタイミングと同期する第1のサンプルタイミングに応じて、第1の入力信号に対して第1のパイプライン処理を行う第1の処理部と、
第2の最高サンプリングレートが前記外部サンプルタイミングのサンプリングレートよりも遅い場合に、前記第2の最高サンプリングレートに応じて前記外部サンプルタイミングを間引いて生成された第2のサンプルタイミングに応じて、第2の入力信号に対して第2のパイプライン処理を行う第2の処理部と、
前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号の出力タイミングを、前記第2の処理部により前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の出力タイミングと同期するように調整する調整部と、
前記第1のパイプライン処理が行われ、前記調整部により出力タイミングが調整された前記第1の入力信号の波形と、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の波形とを順次作成する作成部と、
を備える測定器。
【請求項2】
前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号、及び、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を保持することが可能なメモリを更に備え、
前記調整部は、
前記第1のサンプルタイミングに応じて、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を順次保持する保持部と、
前記第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した前記第1のサンプルタイミングの個数を計数する計数部と、
前記第2のサンプルタイミングに応じて、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記保持部から順次読み出して前記メモリに保持させるとともに、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記メモリに保持させる、制御部と、
を備え、
前記作成部は、前記メモリに保持された、前記第1の入力信号の波形と、前記第2の入力信号の波形とを順次作成する、
請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記保持部はFIFOの機能を有する、請求項2に記載の測定器。
【請求項4】
前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号、及び、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を保持することが可能なメモリを更に備え、
前記第1のサンプルタイミングに応じて、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号は、順次前記メモリに保持され、
前記調整部は、
前記第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した前記第1のサンプルタイミングの個数を計数する計数部と、
前記第2のサンプルタイミングに応じて、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記メモリに保持させる制御部と、
を備え、
前記作成部は、
前記個数の前記第1のサンプルタイミングだけ遅延させてから、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を前記メモリから読み出し、
前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号が前記メモリに保持されたことに応じて、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を前記メモリから読み出し、
前記メモリから読み出した前記第1の入力信号の波形と、前記メモリから読み出した前記第2の入力信号の波形と、を順次作成する、
請求項1に記載の測定器。
【請求項5】
外部から入力された前記外部サンプルタイミングを示すサンプリング信号に基づき、前記第1のサンプルタイミングを示す第1のタイミング信号と、前記第2のサンプルタイミングを示す第2のタイミング信号と、を生成し、前記第1のタイミング信号を前記第1の処理部へ出力し、前記第2のタイミング信号を前記第2の処理部へ出力する、タイミング発生部を更に備え、
前記第1の処理部は、前記タイミング発生部から入力された前記第1のタイミング信号が示す前記第1のサンプルタイミングに応じて前記第1のパイプライン処理を行い、
前記第2の処理部は、前記タイミング発生部から入力された前記第2のタイミング信号が示す前記第2のサンプルタイミングに応じて前記第2のパイプライン処理を行う、
請求項1から4のいずれか一項に記載の測定器。
【請求項6】
前記タイミング発生部は、前記外部サンプルタイミングのサンプリングレートが、前記第2の最高サンプリングレートよりもい場合、前記第2のタイミング信号として、前記第2の最高サンプリングレートのサンプルタイミングを前記第2のサンプルタイミングとして示す前記第2のタイミング信号を生成する、請求項5に記載の測定器。
【請求項7】
前記第1のパイプライン処理及び前記第2のパイプライン処理には、A/D変換処理が含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の測定器。
【請求項8】
入力信号の波形を測定する測定器の測定方法であって、
第1の処理部が、第1の最高サンプリングレートよりも遅いサンプリングレートを有する外部サンプルタイミングと同期する第1のサンプルタイミングに応じて、第1の入力信号に対して第1のパイプライン処理を行う工程と、
第2の処理部が、第2の最高サンプリングレートが前記外部サンプルタイミングのサンプリングレートよりも遅い場合に、前記第2の最高サンプリングレートに応じて前記外部サンプルタイミングを間引いて生成された第2のサンプルタイミングに応じて、第2の入力信号に対して第2のパイプライン処理を行う工程と、
調整部が、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号の出力タイミングを、前記第2の処理部により前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の出力タイミングと同期するように調整する工程と、
作成部が、前記第1のパイプライン処理が行われ、前記調整部により出力タイミングが調整された前記第1の入力信号の波形と、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の波形とを順次作成する工程と、
を含む測定器の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定器及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物理量を電気信号として入力し、その波形をリアルタイムに測定する測定器が知られている。このような測定器は、一般に、電気信号をアナログ信号として入力し、入力信号に対してA/D(Analog-to-Digital)変換処理を含む各種信号処理を行う。このような測定器の中には、それぞれ入力信号に対して信号処理を行う複数のモジュールを備え、複数の入力信号の波形をリアルタイムに測定して比較可能なものが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中山悦郎、山本千秋、「スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能」、横河技報、横河電機株式会社、2012年、第55巻、第1号、p.9-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンプルタイミングを規定する共通のサンプリング信号を外部から入力し、サンプリング信号が示すサンプルタイミングに同期して、A/D変換等の各種信号処理をそれぞれ行う複数のモジュールを備えた測定器を考える。ここで、各モジュールが対応可能な最高サンプリングレート(周波数)が異なるとする。このような測定器において、入力されたサンプリング信号のサンプリングレートが一部のモジュールの最高サンプリングレートを上回る場合、その一部のモジュールによる信号処理は、その一部のモジュール以外のモジュールよりも遅延する。そのため、サンプリング信号のサンプリングレートが最高サンプリングレートを上回るモジュールと、それ以外のモジュールとの間では、信号処理が完了するタイミングにずれが生じる。各モジュールにおいて複数の信号処理がパイプライン処理により実行されている場合、パイプラインを構成する各処理に要する時間のずれが蓄積するため、全体として各モジュールの出力信号の時間的なずれが大きくなる。
【0005】
したがって、従来の構成においては、サンプリング信号のサンプリングレートが一部のモジュールの最高サンプリングレートを上回る場合、すなわち、サンプリング信号のサンプリング周期が一部のモジュールの最高サンプリング周期よりも短い場合、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに正しく比較することができなかった。特に、サンプリング信号のサンプリングレートが時間とともに変動する場合、各モジュールにおいて信号処理に要する時間のずれも変動するため、従来の構成においては、各モジュールの出力信号の時間を揃えてリアルタイムに比較することがより一層困難であった。
【0006】
本開示の目的は、最高サンプリングレートが異なる複数のモジュールを備えた構成において、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能な測定器及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る測定器は、入力信号の波形を測定する測定器であって、第1のサンプルタイミングに応じて、第1の入力信号に対して第1のパイプライン処理を行う第1の処理部と、前記第1のサンプルタイミングよりもサンプリング周期が長い第2のサンプルタイミングに応じて、第2の入力信号に対して第2のパイプライン処理を行う第2の処理部と、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号の出力タイミングを、前記第2の処理部により前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する調整部と、前記第1のパイプライン処理が行われ、前記調整部により出力タイミングが調整された前記第1の入力信号の波形と、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の波形とを順次作成する作成部と、を備える。このように、測定器は、第1の処理部により第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号の出力タイミングを、第2の処理部により第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する。したがって、第1の処理部と第2の処理部とで最高サンプリングレート(最高サンプリング周期の逆数)が異なっていたとしても、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0008】
一実施形態において、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号、及び、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を保持することが可能なメモリを更に備え、前記調整部は、前記第1のサンプルタイミングに応じて、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を順次保持する保持部と、前記第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した前記第1のサンプルタイミングの個数を計数する計数部と、前記第2のサンプルタイミングに応じて、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記保持部から順次読み出して前記メモリに保持させるとともに、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記メモリに保持させる、制御部と、を備え、前記作成部は、前記メモリに保持された、前記第1の入力信号の波形と、前記第2の入力信号の波形とを順次作成する。このように、調整部は、第1のサンプルタイミングに応じて第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を順次保持する保持部により、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号をメモリへ書き込むタイミングを第2のパイプライン処理に合わせる。さらに、調整部は、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数し、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数部が計数した個数だけ繰り返しメモリに保持させる。したがって、第1の入力信号と第2の入力信号との間の時間的ずれ及びサンプリング個数の相違が解消されるため、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0009】
一実施形態において、前記保持部はFIFOの機能を有する。したがって、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を、時間的順序が維持されたまま保持することが可能である。
【0010】
一実施形態において、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号、及び、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を保持することが可能なメモリを更に備え、前記第1のサンプルタイミングに応じて、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号は、順次前記メモリに保持され、前記調整部は、前記第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した前記第1のサンプルタイミングの個数を計数する計数部と、前記第2のサンプルタイミングに応じて、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を、前記計数部が計数した個数だけ前記メモリに保持させ、前記作成部は、前記個数の前記第1のサンプルタイミングだけ遅延させてから、前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号を前記メモリから読み出し、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号が前記メモリに保持されたことに応じて、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号を前記メモリから読み出し、前記メモリから読み出した前記第1の入力信号の波形と、前記メモリから読み出した前記第2の入力信号の波形と、を順次作成する。このように、調整部は、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数し、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数部が計数した個数だけ繰り返しメモリに保持させる。さらに、作成部は、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号をメモリから読み出す処理を第2のパイプライン処理に合わせて遅延させる。したがって、第1の入力信号と第2の入力信号との間の時間的ずれ及びサンプリング個数の相違が解消されるため、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0011】
一実施形態において、外部から入力されたサンプルタイミングを示すサンプリング信号に基づき、前記第1のサンプルタイミングを示す第1のタイミング信号と、前記第2のサンプルタイミングを示す第2のタイミング信号と、を生成し、前記第1のタイミング信号を前記第1の処理部へ出力し、前記第2のタイミング信号を前記第2の処理部へ出力する、タイミング発生部を更に備え、前記第1の処理部は、前記タイミング発生部から入力された前記第1のタイミング信号が示す前記第1のサンプルタイミングに応じて前記第1のパイプライン処理を行い、前記第2の処理部は、前記タイミング発生部から入力された前記第2のタイミング信号が示す前記第2のサンプルタイミングに応じて前記第2のパイプライン処理を行う。このように、外部から入力されたサンプルタイミングを示すサンプリング信号に基づき、第1、第2のタイミング信号を生成するため、外部からのサンプリング信号に同期してリアルタイムに処理を進めることが可能である。
【0012】
一実施形態において、前記タイミング発生部は、前記外部から入力されたサンプルタイミングのサンプリング周期が、前記第2の処理部が対応可能な最高サンプリング周期よりも短い場合、前記第2のタイミング信号として、前記最高サンプリング周期のサンプルタイミングを前記第2のサンプルタイミングとして示す前記第2のタイミング信号を生成する。このように、外部から入力されたサンプルタイミングのサンプリング周期が第2の処理部の最高サンプリング周期よりも短い場合、最高サンプリング周期を第2のサンプルタイミングとするため、第2の処理部の性能に合わせて処理を進めることが可能である。
【0013】
一実施形態において、前記第1のパイプライン処理及び前記第2のパイプライン処理には、A/D変換処理が含まれる。したがって、測定器が備えるA/D変換処理の処理速度が異なる場合であっても、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、入力信号の波形を測定する測定器の測定方法であって、第1の処理部が、第1のサンプルタイミングに応じて、第1の入力信号に対して第1のパイプライン処理を行う工程と、第2の処理部が、前記第1のサンプルタイミングよりもサンプリング周期が長い第2のサンプルタイミングに応じて、第2の入力信号に対して第2のパイプライン処理を行う工程と、調整部が、前記第1の処理部により前記第1のパイプライン処理が行われた前記第1の入力信号の出力タイミングを、前記第2の処理部により前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する工程と、作成部が、前記第1のパイプライン処理が行われ、前記調整部により出力タイミングが調整された前記第1の入力信号の波形と、前記第2のパイプライン処理が行われた前記第2の入力信号の波形とを順次作成する工程と、を含む。このように、測定器の測定方法は、第1の処理部により第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号の出力タイミングを、第2の処理部により第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する。したがって、第1の処理部と第2の処理部とで最高サンプリングレート(最高サンプリング周期の逆数)が異なっていたとしても、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一実施形態によれば、最高サンプリングレートが異なる複数のモジュールを備えた構成おいて、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】比較例に係る測定器の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】サンプリング信号のサンプリングレートを間引く処理を模式的に示すタイミングチャートである。
図3図1のA/D変換器92a,92bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。
図4A図1のA/D変換器92aによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。
図4B図1のA/D変換器92bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。
図5】第1実施形態に係る測定器の構成を模式的に示すブロック図である。
図6図5のA/D変換器12a,12bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。
図7】一実施形態に係る測定器の処理結果を模式的に示すタイミングチャートである。
図8】一実施形態に係る測定器の処理手順を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る測定器の構成を模式的に示すブロック図である。
図10】本開示に係る測定器の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<比較例>
比較例に係る測定器90は、それぞれ入力信号に対して信号処理を行う複数のモジュールを備え、複数の入力信号の波形をリアルタイムに測定する。各モジュールは、サンプルタイミングを規定する共通のサンプリング信号を外部から入力するための入力端子を備え、サンプリング信号が示すサンプルタイミングに同期してデータを取り込む。測定器90の各モジュールは、対応可能な最高サンプリングレート(最高サンプリング周期の逆数)が異なる。
【0018】
外部からのサンプリング信号によるサンプリングの一例は、一定の回転角度だけ回転することに応じて信号を出力するエンコーダを回転体に取り付け、エンコーダからの信号に基づき、回転体の回転に合わせてデータを取り込むような場合である。このような回転体の回転角度に応じたサンプリングを行うことで、測定対象の挙動を回転体の一定の回転角度ごとに正確に記録することができ、回転体の解析に有効なデータを取得することができる。
【0019】
ユーザは、最高サンプリングレート(周波数)が異なる複数の入力モジュールを自由に組み合わせて測定器90に搭載することができる。一般に入力モジュールに使用されるA/D変換器(コンバータ)は、回路規模が同一の場合、A/D変換の分解能(デジタル信号の分解能)とA/D変換のサンプリングレート(時間的分解能)とはトレードオフの関係にある。A/D変換の分解能のbit数が大きいA/D変換器は、分解能のbit数が小さいA/D変換器よりも最高変換サンプリングレートが低い。ユーザは、観測する信号の特徴及び用途に応じて、A/D変換の分解能とサンプリングレートとのどちらを優先するかを選択して、入力モジュールを決定する。
【0020】
図1は、比較例に係る測定器90の構成を模式的に示すブロック図である。測定器90は、入力アンプ91(91a,91b)、A/D変換器92(92a,92b)、インターフェース回路93(93a,93b)、タイミング発生回路94、メモリコントローラ95、波形メモリ96、波形作成回路97、及び表示器98を備える。測定器90は、CH(チャンネル)1及びCH2の各々からアナログ形式の入力信号を入力し、各チャンネル用の入力回路においてデジタル信号に変換して、表示器98に表示する。入力アンプ91a、A/D変換器92a、及びインターフェース回路93aは、CH1の信号をA/D変換する入力回路(入力モジュール)として機能する。入力アンプ91b、A/D変換器92b、及びインターフェース回路93bは、CH2の信号をA/D変換する入力回路として機能する。CH1のA/D変換器92aは、A/D変換の分解能は低いが、高速にA/D変換できる。CH2のA/D変換器92bは、A/D変換器92aと比べて、A/D変換の分解能は高いが、A/D変換は低速である。
【0021】
入力アンプ91(91a,91b)は、物理量に応じたアナログの電気信号を入力信号として入力し、A/D変換器92(92a,92b)の規格に合わせて入力信号を増幅する。観測されるCH1のアナログ信号は、入力アンプ91aで正規化され、A/D変換器92aへ出力される。同時に観測されるCH2のアナログ信号は、入力アンプ91bで正規化され、A/D変換器92bへ出力される。
【0022】
データを取り込むタイミングは、外部からサンプルタイミングとして、タイミング発生回路94に入力される。タイミング発生回路94は、各チャネルのA/D変換器92(92a,92b)の最高サンプリングレートを超えることがないようにサンプルタイミングを適宜間引いた上で、A/D変換器92(92a,92b)に対して変換タイミングを示すタイミング信号として出力する。
【0023】
図2は、タイミング発生回路94が実行するサンプリング信号のサンプリングレートを間引く処理を模式的に示すタイミングチャートである。図2において、外部サンプルタイミングは、外部からタイミング発生回路94へ入力されるサンプルタイミングの波形を模式的に示す。高速タイミングは、タイミング発生回路94からA/D変換器92aへ出力されるタイミング信号の波形を模式的に示す。低速タイミングは、タイミング発生回路94からA/D変換器92bへ出力されるタイミング信号の波形を模式的に示す。メモリ書き込みタイミングは、タイミング発生回路94からメモリコントローラ95へ出力されるタイミング信号の波形を模式的に示す。図2において、外部サンプルタイミングの周期102は低速タイミングの周期101よりも小さい。そこで、タイミング発生回路94は、A/D変換器92bの最高サンプリングレートより早いサンプルタイミングがA/D変換器92bに入力されないように、最高サンプリングレートより速いタイミングが入力された場合、サンプルタイミングを間引く。具体的には、図2のように、タイミング発生回路94は、外部サンプルタイミングの信号の中でA/D変換器92bが追随できない信号を103のようにマスクする。
【0024】
A/D変換器92(92a,92b)は、入力されたタイミング信号が示すサンプルタイミングに合わせてA/D変換を行い、デジタル信号に変換した入力信号をインターフェース回路93(93a,93b)へ出力する。A/D変換器92aが出力するデジタル信号のbit長は、A/D変換器92bが出力するデジタル信号のbit長よりも短い。
【0025】
インターフェース回路93(93a,93b)は、A/D変換器92(92a,92b)から入力されたbit長が異なるデジタル信号のデータ形式を変換して、同一のものに統一する。インターフェース回路93(93a,93b)は、タイミング発生回路94から入力されるタイミング信号が示すタイミングに合わせて、データ形式を統一した入力信号のデータをメモリコントローラ95へ出力する。
【0026】
メモリコントローラ95は、タイミング発生回路94から入力されるタイミング信号が示すタイミングに合わせて、インターフェース回路93(93a,93b)から入力された入力信号のデータを、波形メモリ96に格納する。タイミング発生回路94は、より高速なA/D変換処理を行うA/D変換器92aに入力されるサンプリング信号と同じタイミングを示すタイミング信号をメモリコントローラ95へ出力する。したがって、メモリコントローラ95は、高速なA/D変換を行うA/D変換器92aのサンプリングレートで、CH1及びCH2の入力信号のデータを波形メモリ96に格納する。低速側のA/D変換器92bのデータ転送が追いつかない場合、メモリコントローラ95は、直前に格納したデータと同じデータを波形メモリ96に格納する。このように、直前に格納したデータと同じデータを繰り返し格納する動作はパディングと称される。
【0027】
波形メモリ96に格納されたデータは、必要に応じて、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサの制御に基づき、波形作成回路97で表示波形を作成し、表示器98に表示される。
【0028】
次に、図3図4A、及び図4Bを参照して、測定器90による動作を説明する。図3は、低速側であるCH2のA/D変換器92bの最高サンプリングレートを外部サンプルタイミングのサンプリングレートが超えることがない場合における、A/D変換器92a,92bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。図3において、t1,t2,t3,・・・は、外部サンプルタイミングにより示されるサンプリングを行うべき時刻を示す。A,B,C,・・・はアナログデータの値の変動を図面における上下の位置により示す。「外部サンプルタイミング」は、外部からタイミング発生回路94へ入力されるサンプルタイミングの波形を模式的に示す。「高速A/D」は、CH1のA/D変換器92aにおける処理を示す。「低速A/D」は、CH2のA/D変換器92bにおける処理を示す。
【0029】
一般にA/D変換器の内部では、処理の効率化のために、パイプライン処理によりデータ処理が行われている。そのため、タイミング信号が入力されてから変換データが出力されるまでには、数クロック分の時間が必要である。図3の例では、時刻t1で、アナログデータAに対するA/D変換が開始され、時刻t2で内部パイプラインの処理、時刻t3で2クロック目の内部パイプラインの処理が施されている。t4で、A/D変換器92a,92bからデータが出力されてインターフェース回路93a,93bに入力されるとともにメモリコントローラ95に転送され、t5で、波形メモリ96にアナログデータAに対応するデジタルデータが波形メモリ96に格納される。このように、図3の例では、A/D変換の開始から波形メモリ96への格納までに4クロックの時間を要する。図3では、外部サンプルタイミングは、低速側のCH2のA/D変換器92bの最高サンプリングレートを超えていないので、高速側のA/D変換器92a、低速側のA/D変換器92bに対して、同じタイミングが入力される。各チャネルに入力されるタイミングは同じであるので、波形メモリ96に格納されるデータも同じタイミングのデータになり、格納されるデータが時間的にずれることはない。
【0030】
しかし、外部サンプルタイミングが、低速側のCH2のA/D変換器92bの最高サンプリングレートより高い場合、高速側のCH1のA/D変換器92aから出力されるデータと低速側のA/D変換器92bとで、時間的なずれが生じる。このことについて、図4A及び図4Bを参照して説明する。図4Aは、A/D変換器92bの最高サンプリングレートを外部サンプルタイミングのサンプリングレートが超える場合における、A/D変換器92aによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。図4Bは、図4Aと同じ外部サンプルタイミングが入力された場合における、A/D変換器92bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。一般に、A/D変換器にA/D変換器固有の最高サンプリングレートより高いレートのタイミングを入力すると誤動作を起こすので、最高サンプリングレートを超えないようにタイミング信号を間引いて入力する必要がある。そこで、図2を参照して前述したように、タイミング発生回路94は、低速側のCH2のA/D変換器92bに対して、サンプルタイミングを間引いたタイミング信号を出力する。
【0031】
図4Aにおいて、高速A/D変換器側(CH1)は、図3と同様に、時刻t1にA/D変換処理が開始されてから4クロック後の時刻t5において、アナログデータAに対するA/D変換結果が、波形メモリ96に格納されている。一方、低速側のCH2のA/D変換器92bへのタイミングは、A/D変換器92bが誤動作を起こさないように、タイミング発生回路94により、サンプルタイミングの間引きが行われる。図4Bに示すように、低速側(CH2)へのタイミングは、時刻t1、t4、t7、t10、t13のように、A/D変換器92bの最高サンプリングレートを超えないように間引かれて印加される。
【0032】
A/D変換器92bでは、時刻t1で、アナログデータAに対する変換が開始されるが、高速側(CH1)と同様にデータの出力までは、4クロック分のパイプライン処理が必要である。そのため、時刻t4、時刻t7でパイプライン処理が行われ、時刻t10で、メモリコントローラ95へのデータ転送が行われ、時刻t13でアナログデータAに対応するデータの波形メモリ96への格納が開始される。メモリコントローラ95は、高速側(CH1)のA/D変換済みのデータの格納個数と低速側(CH2)のA/D変換済みのデータの格納個数を揃えるため、高速側のA/D変換器92aのタイミングでデータを格納する。メモリコントローラ95は、低速側のA/D変換器92bからのデータ転送がない場合は、直近にデータ転送されたデータを繰り返し格納することによりデータのパディングを実施する。なお、外部サンプルタイミングは測定器90から見て外部要因であり、不規則でかつ予想できない事象である。そのため、一般的には、タイミング発生回路94における間引きの間隔は不規則であり、高速側(CH1)と低速側(CH2)のデータ個数に関連性はない。したがって、低速側(CH2)のデータをパディングしてデータ個数を揃えないと、データ取り込みの後、高速側データと低速側データの対応が取れなくなってしまう。
【0033】
図4A及び図4Bから分かるように、高速側(CH1)では、A/D変換済みのデータA、B、C、・・・が順番に波形メモリ96へ格納されていく。図4Aにおいて、高速側(CH1)でA/D変換済みのデータA、B、C、・・・は、波形メモリ96の高速側(CH1)で使用されるアドレス0、1、2、・・・に対応する領域に格納されている。低速側(CH2)では、高速側(CH1)におけるデータ格納が開始される時刻t5においては、A/D変換器92bのパイプラン処理が間に合っていないので、過去にA/D変換されてパイプラインに残っていたデータが不定値として波形メモリ96に格納される。図4Bの例では、波形メモリ96の低速側(CH2)で使用されるアドレス0、1、2、・・・、7に対応する領域には不定値が格納されている。また、アナログデータAに対応するデータは、波形メモリ96のアドレス8の領域から格納され、高速側のデータとは格納位置がずれる。このデータのずれ量は、外部から与えられるサンプルタイミング(サンプリング信号)のサンプリングレートにより変わる。また、サンプリング信号のサンプリングレートはリアルタイムに変動するから、高速側(CH1)と低速側(CH2)のデータずれ量は一定値ではなく、外部サンプリングの状況により変化することになる。そのため、高速側と低速側のデータの波形を同時に並べて表示器98に表示すると、これらの波形は時間的なずれを測定誤差として含んだものとなる。したがって、比較例の測定器90においては、サンプリング信号のサンプリングレートが一部のモジュールの最高サンプリングレートを上回る場合、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに正しく比較することができない。
【0034】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0035】
(第1実施形態)
本実施形態に係る測定器10aは、最高サンプリングレート(最高サンプリング周期の逆数)が異なるA/D変換器を用いて、外部サンプリングを行った場合でも、各A/D変換器からのデータ遅延量を揃え、各A/D変換器のサンプリング同時性を維持した形で波形メモリ16にデータを格納する。したがって、測定器10aによれば、モジュール間のサンプリング誤差をなくして、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに正しく比較することが可能である。
【0036】
図5は、第1実施形態に係る測定器10aの構成を模式的に示すブロック図である。測定器10aは、入力アンプ11(11a,11b)、A/D変換器12(12a,12b)、インターフェース回路13(13a,13b)、タイミング発生回路14、メモリコントローラ15、波形メモリ16、波形作成回路17、表示器18、FIFO(First In First Out)21、計数回路22、個数メモリ23、及びタイミングコントローラ24を備える。測定器10aは、CH1及びCH2の各々からアナログ形式の入力信号を入力し、各チャンネル用の入力回路においてデジタル信号に変換して、表示器18に表示する。入力アンプ11a、第1の処理部としてのA/D変換器12a、及びインターフェース回路13aは、CH1の信号をA/D変換する入力回路(入力モジュール)として機能する。入力アンプ11b、第2の処理部としてのA/D変換器12b、及びインターフェース回路13bは、CH2の信号をA/D変換する入力回路として機能する。CH1のA/D変換器12aは、A/D変換の分解能は低いが、高速にA/D変換できる。CH2のA/D変換器12bは、A/D変換器12aと比べて、A/D変換の分解能は高いが、A/D変換は低速である。以下、外部サンプルタイミングのサンプリングレートは、A/D変換器12aの最高サンプリングレートを超えることはないが、A/D変換器12bの最高サンプリングレートを超える場合の例を説明する。測定器10aは、高速側のCH1のA/D変換済みデータを保持部としてのFIFO21において一時的に保持し、低速側のCH2のA/D変換済みデータの出力のタイミングに合わせて波形メモリ16へ書き込むことで、高速側と低速側のデータの時間的ずれを解消する。すなわち、FIFO21、計数部としての計数回路22、個数メモリ23、及び、制御部ないしタイミング発生部としてのタイミングコントローラ24は、インターフェース回路13aの出力信号と、インターフェース回路13bの出力信号との間の、時間的ずれを調整する調整部として機能する。
【0037】
入力アンプ11(11a,11b)は、物理量に応じたアナログの電気信号を入力信号として入力し、A/D変換器12(12a,12b)の規格に合わせて入力信号を増幅する。観測されるCH1のアナログ信号は、入力アンプ11aで正規化され、A/D変換器12aへ出力される。同時に観測されるCH2のアナログ信号は、入力アンプ11bで正規化され、A/D変換器12bへ出力される。
【0038】
タイミング発生回路14は、サンプルタイミングを規定するサンプリング信号である外部サンプルタイミングを外部から入力する。タイミング発生回路14は、各チャネルのA/D変換器12(12a,12b)の最高サンプリングレートを超えることがないようにサンプルタイミングを適宜間引いた上で、A/D変換器12(12a,12b)に対して変換タイミングを示すタイミング信号として出力する。タイミング発生回路94が実行するサンプリング信号のサンプルタイミングを間引く処理は、図2を参照して説明した比較例に係る測定器90が備えるタイミング発生回路94の処理と同様である。タイミング発生回路14は、外部サンプルタイミングと同じタイミングを示す高速タイミングのタイミング信号を、A/D変換器12a、インターフェース回路13a、FIFO21、計数回路22、及びタイミングコントローラ24bへ出力する。タイミング発生回路14は、A/D変換器12bの最高サンプリングレートに合わせて外部サンプルタイミングを間引いたタイミングを示す低速タイミングのタイミング信号を、A/D変換器12b、インターフェース回路13b、FIFO21、計数回路22、及びタイミングコントローラ24へ出力する。
【0039】
A/D変換器12(12a,12b)は、入力されたタイミング信号が示すサンプルタイミングに合わせてA/D変換を行い、デジタル信号に変換した入力信号をインターフェース回路13(13a,13b)へ出力する。A/D変換器12aが出力するデジタル信号のbit長は、A/D変換器12bが出力するデジタル信号のbit長よりも短い。
【0040】
インターフェース回路13(13a,13b)は、A/D変換器12(12a,12b)から入力されたbit長が異なるデジタル信号のデータ形式を変換して、同一のものに統一する。インターフェース回路13aは、タイミング発生回路14から入力されるタイミング信号が示す高速タイミングに合わせて、データ形式を統一した入力信号のデータをFIFO21へ出力する。これにより、A/D変換器12aからのA/D変換済みデータは、FIFO21に蓄積される。インターフェース回路13bは、タイミング発生回路14から入力されるタイミング信号が示す低速タイミングに合わせて、データ形式を統一した入力信号のデータをメモリコントローラ15へ出力する。
【0041】
FIFO21に蓄積されたA/D変換器12aからのA/D変換済みデータは、タイミングコントローラ24のリード信号により読み出され、メモリコントローラ15に入力される。メモリコントローラ15は、タイミングコントローラ24からのデータライトタイミング信号に応じて、A/D変換器12aからのA/D変換済みデータを波形メモリ16に格納する。
【0042】
メモリコントローラ15に入力されたA/D変換器12bからのA/D変換データは、タイミングコントローラ24からのデータライトタイミング信号に応じて、波形メモリ16に格納される。タイミングコントローラ24からのデータライトタイミング信号のレートが、低速側のA/D変換器12bからのデータレートより速い場合、メモリコントローラ15は、直近で転送されたインターフェース回路13bからのデータをパディングして波形メモリ16に格納する。
【0043】
計数回路22は、タイミング発生回路14から低速タイミングのタイミング信号を受信するごとに、高速タイミングの個数を計数する。すなわち、計数回路22は、低速タイミングのタイミング信号が発生すると高速タイミングの個数をリセットした上で、高速タイミングの計数を開始する。計数回路22は、高速タイミングが発生するたびに個数を1だけインクリメントする。このようにして、計数回路22は、ある低速タイミングが発生してから次の低速タイミングが発生するまでの間に発生した高速タイミングの個数を計数する。計数回路22は、低速タイミングが発生するごとに計数結果を個数データとして個数メモリ23に格納する。個数メモリ23は、個数データを、例えばFIFOの方式で保持してもよい。
【0044】
タイミングコントローラ24は、タイミング発生回路14からの高速タイミング及び低速タイミングをもとに、個数メモリ23から個数データを読み出す。タイミングコントローラ24は、読みだした個数データが示す個数のデータをFIFO21から読み出すためのライト信号をメモリコントローラ15に対して出力する。
【0045】
メモリコントローラ15は、ライト信号を受けて、FIFO21からのデータを波形メモリ16に格納する。同時に、メモリコントローラ15は、低速側のデータをインターフェース回路13bから受けて、波形メモリ16に格納する。メモリコントローラ15は、低速側のA/D変換器12bのデータ転送が追いつかない場合、直前に格納したデータと同じデータを波形メモリ16に格納してパディングを行う。
【0046】
波形メモリ16に格納されたデータは、必要に応じて、CPU等のプロセッサの制御に基づき、作成部としての波形作成回路17で表示波形を作成し、表示器18に表示される。表示器18は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescent Display)等により実現される。
【0047】
次に、図6を参照して、測定器10aの動作を説明する。図6は、図5のA/D変換器12a,12bによる処理を模式的に示すタイミングチャートである。図6は、外部サンプルタイミングのサンプリングレートが、A/D変換器12bの最高サンプリングレートは超えるが、A/D変換器12aの最高サンプリングレートは超えない場合における、A/D変換器12a,12bによる処理の一例を示している。図6において、T1,T2,T3,・・・は、外部サンプルタイミングにより示されるサンプリングを行うべき時刻を示す。図6は、時間の経過に従い、外部サンプルタイミングの時間的間隔が広がっていく例を示しているが、外部サンプルタイミングの変動は任意である。「高速データ」は、CH1から入力されたアナログ信号のデータを示す。低速データは、CH2から入力されたアナログ信号のデータを示す。「外部サンプル動作スタート」は、測定器10aのサンプリングが開始するタイミングを二値信号がOFFからONへ切り替わることにより示している。「高速サンプルタイミング」は、CH1のA/D変換器12a等における処理を規定する高速タイミングの波形を示す。「FIFO」は、FIFO21に書き込まれるデータを示す。「高速書き込みデータ」は、メモリコントローラ15により、FIFO21から波形メモリ16に書き込まれる高速側(CH1)のデータを示す。「低速サンプルタイミング」は、CH2のA/D変換器12b等における処理を規定する低速タイミングの波形を示す。「個数メモリ」は、個数メモリ23に格納された高速サンプリングの個数を示す。「低速書き込みデータ」は、メモリコントローラ15により、インターフェース回路13bから波形メモリ16に書き込まれる低速側(CH2)のデータを示す。「個数メモリ読み出し」は、個数メモリ23から読み出される個数データを示す。「書き込み開始」は、低速側(CH2)のデータが波形メモリ16に書き込まれるタイミングを二値信号がOFFからONへ切り替わることにより示している。
【0048】
図6の例では、時刻T0で外部サンプリング動作が開始している。時刻T1で外部サンプルタイミングが外部より入力されると、タイミング発生回路14は、A/D変換器12a、インターフェース回路13a、FIFO21、計数回路22、及びタイミングコントローラ24へ高速サンプルタイミングを出力する。この信号により、高速側のA/D変換器12aの動作が開始する。A/D変換器12aは、パイプライン処理によりA/D変換を行う。図6の例では、T1での高速データAは、時刻T4において、インターフェース回路13aから出力され、FIFO21に格納されている。以降、時刻T2、T3、・・・において、順次、サンプルタイミングが外部から入力されると、それに応じて、タイミング発生回路14は高速サンプルタイミングを出力する。これに合わせて、順次、高速側のCH1の入力データB、C、・・・がデジタル変換されていく。図6の例では、時刻T5において、時刻T2でのデータBのデジタルデータが、時刻T6において、T3でのデータCのデジタルデータが、FIFO21に格納されている。以下、順次、高速サンプルタイミングに応じて、A/D変換器12aによりA/D変換されたデータが、高速サンプルタイミングにおいて、FIFO21に格納されていく。
【0049】
一方、タイミング発生回路14は、低速側のA/D変換器12bの最高サンプリングレートを超えないように外部から入力されるサンプルタイミングを間引き、低速サンプルとして、時刻T1、T6、T11、T15のように、低速サンプルタイミングを出力する。この低速サンプルタイミングにおいて、A/D変換器12bは、時刻T1での低速データa、時刻T6での低速データb、時刻T11での低速データc、時刻T15での低速データd、・・・をデジタルデータに変換する。低速側のA/D変換器12bも、パイプライン処理を行うので、T1での低速側データaは、時刻T15において、インターフェース回路13bから出力される。
【0050】
計数回路22は、ある低速サンプリングが発生してから次の低速サンプリングが発生するまでの間に、高速サンプリングが何回発生したかを計数する。例えば、図6では、低速サンプルの最初のサンプルは時刻T1で発生し、次の低速サンプルはT6で発生している。計数回路22は、この間に発生した高速サンプル個数をカウントする。この例では、高速サンプルは、時刻T1、T2、T3、T4、T5で発生しているので、計数結果は5となる。計数回路22は、このような計数結果を、低速サンプルの発生タイミングで、個数メモリ23に順次格納していく。図6では、次の低速サンプルタイミングの時刻T11では、高速サンプルは、時刻T6、T7、T8、T9、T10の5回発生しているので、計数回路22は、時刻T11のタイミングで、個数メモリ23に格納する。以下、計数回路22は、時刻T15のタイミングで4、時刻T18のタイミングで4を格納していく。
【0051】
タイミングコントローラ24は、外部サンプル動作スタートがOFFからONに切り替わっている時刻T1から、低速側(CH2)のA/D変換器12bが有効なデータを出力するまで待機する機能を有する。図6では、低速側(CH2)の最初のデータがインターフェース回路13bから出力されるのは時刻T15であるから、タイミングコントローラ24は、時刻T15まで動作を待機する。タイミングコントローラ24は、時刻T15まで待機した後、個数メモリ23の最初の値を読み出す。タイミングコントローラ24は、メモリコントローラ15に対して、個数メモリ23から読み出した個数データと同じ数のデータ数をFIFO21から読み出すとともに、FIFO21から読み出したデータを波形メモリ16に書き込む制御を行う。同時にタイミングコントローラ24は、メモリコントローラ15に対して、個数メモリ23から読み出した個数データと同じ個数だけ、低速側のA/D変換器12bから出力されるデータを連続して書き込むように制御する。図6の例では、時刻T15において、高速側のデータA、B、C、D、Eが波形メモリ16に書き込まれ、低速側データaが5回繰り返し書き込まれている。
【0052】
以下、低速サンプルのタイミングにおいて、タイミングコントローラ24が個数メモリ23から個数データを読み出し、その個数データに応じて、高速側(CH1)のデジタルデータがFIFO21から読み出され波形メモリ16に格納される。これと併行して、低速側(CH2)の同一のデジタルデータが、個数メモリ23から読み出された個数データ分、連続して波形メモリ16に格納される。図6の例では、時刻T19において、個数メモリ23から個数5が読み出され、FIFO21からデータF、G、H、I、Jが読み出されて、波形メモリ16に格納される。これと同時に、低速側のデータbが5回連続して波形メモリ16に格納される。同様に、時刻T22では、個数メモリ23から個数4が読み出され、FIFO21からK、L、M、Nが読み出されて、波形メモリ16に格納される。これと併行して、低速側のデータcが4回連続して波形メモリ16に格納される。
【0053】
図7は、測定器10aの上記のような処理の結果を模式的に示すタイミングチャートである。図7は、比較例に係る測定器90により波形メモリ96に格納されたデータと、測定器10aにより波形メモリ16に格納されたデータとを示している。測定器90では、低速側のA/D変換器92bの最高サンプリングレートを超えるような外部サンプルタイミングでサンプリングを行う場合、高速側のサンプリングデータと低速側のサンプリングデータにサンプリングずれが発生している。例えば、測定器90の高速側のデータAは時刻T4に波形メモリ96に格納されており、低速側のデータaは時刻T15に波形メモリ96に格納されている。これに対し測定器10aでは、取り込むべきデータに対して、高速サンプリングデータ、低速サンプリングデータが同期されてサンプリングされており、サンプリングにずれが発生していない。例えば、測定器10aの高速側のデータAと低速側のデータaはいずれも時刻T15に波形メモリ16に格納されている。また、測定器10aにおいて、低速側のサンプリングデータは、次の低速側のサンプリングデータが出力されるまで、高速サンプリングにおいてパディングされている。例えば、時刻T15において出力された低速側のデータaは、時刻T19において次の低速側のデータfが出力されるまで、高速側のデータB~Eと同じ数の4個だけパディングされている。
【0054】
このように、測定器10aは、低速側のA/D変換器12bの最高サンプリングレートを超えるような外部からのサンプルタイミングでサンプルングを行っても、低速側のデータを正しく取得して、パディング補間することができる。したがって、測定器10aによれば、高速サンプリング及び低速サンプリング間で、サンプリングの時間的なずれを発生させずに波形を測定して比較することが可能である。
【0055】
図8は、一実施形態に係る測定器10aの処理手順を示すフローチャートである。図8を参照して説明する測定器10aの動作は、本実施形態に係る測定器10aの測定方法の一つに相当する。図8の各ステップの動作は、測定器10aの制御に基づき実行される。
【0056】
図8のステップS1において、測定器10aのタイミング発生回路14は、外部からサンプルタイミングを入力する。
【0057】
ステップS2において、測定器10aの計数回路22は、個数データを1だけカウントアップ(インクリメント)する。
【0058】
ステップS3において、測定器10aは、外部からサンプルタイミングが低速側のA/D変換器12bのサンプルタイミングに当たるか否かを判定する。測定器10aは、A/D変換器12bのサンプルタイミングに当たる場合(ステップS3でYES)はステップS4へ進み、そうでない場合(ステップS3でNO)はステップS1へ戻る。
【0059】
ステップS4において、測定器10aの計数回路22は、計数回路22において計数された個数データを個数メモリ23に書き込んだ上で、個数データをクリアして0にリセットする。
【0060】
ステップS5において、測定器10aは、低速側のA/D変換器12の最初のデータがパイプラインから出力されているか否かを判定する。測定器10aは、出力されている場合(ステップS5でYES)はステップS6へ進み、そうでない場合(ステップS5でNO)はステップS1へ戻る。
【0061】
ステップS6において、測定器10aのタイミングコントローラ24は、個数メモリ23から個数データを読み出す。
【0062】
ステップS7において、測定器10aのタイミングコントローラ24は、ステップS6で読みだした個数データの個数だけFIFO21からデータを読み出し、メモリコントローラ15経由で波形メモリ16に書き込むように制御する。
【0063】
ステップS8において、測定器10aのタイミングコントローラ24は、インターフェース回路13bから出力される低速側のデータを、ステップS6で読みだした個数データの個数だけ繰り返して、メモリコントローラ15経由で波形メモリ16に書き込むように制御する。
【0064】
ステップS9において、測定器10aは、外部からのサンプルデータの取り込みが終了したか否かを判定する。測定器10aは、取り込みが終了したと判定された場合(ステップS9でYES)はフローチャートの処理を終了し、そうでない場合(ステップS9でNO)はステップS10へ進む。
【0065】
ステップS10において、測定器10aは、測定器10aのタイミング発生回路14は、外部からサンプルタイミングを入力する。
【0066】
ステップS11において、測定器10aの計数回路22は、個数データを1だけカウントアップする。
【0067】
ステップS12において、測定器10aは、外部からサンプルタイミングが低速側のA/D変換器12bのサンプルタイミングに当たるか否かを判定する。測定器10aは、A/D変換器12bのサンプルタイミングに当たる場合(ステップS12でYES)はステップS13へ進む。測定器10aは、A/D変換器12bのサンプルタイミングに当たらない場合(ステップS12でNO)はステップS10へ戻る。
【0068】
ステップS13において、測定器10aの計数回路22は、計数回路22において計数された個数データを個数メモリ23に書き込んだ上で、個数データをクリアして0にリセットする。そして、測定器10aはステップS6へ戻る。
【0069】
なお、図6及び図7では、高速側のA/D変換器12a及び低速側のA/D変換器12bのパイプライン段数が同一である場合の例を説明したが、パイプライン段数は揃っている必要はない。また、本実施形態では、測定器10aが実行するパイプライン処理としてA/D変換処理が行われる例を説明したが、A/D変換処理以外の処理が行われてもよい。
【0070】
(第2実施形態)
第1実施形態では、高速側のA/D変換済みデータをFIFO21において一時的に保持し、低速側のA/D変換済みデータの出力のタイミングに合わせて波形メモリ16へ書き込むことで、高速側と低速側のデータの時間的ずれを解消する構成例を説明した。本実施形態に係る測定器10bは、高速側のA/D変換済みデータがインターフェース回路13aから出力されると直ちに波形メモリ16に記憶するが、波形メモリ16から波形作成回路17へ高速側のデータを読み出すタイミングを低速側のデータ出力に合わせる。したがって、測定器10bによれば、高速側と低速側のデータの時間的ずれを解消することが可能である。
【0071】
図9は、第2実施形態に係る測定器10bの構成を模式的に示すブロック図である。図9において、第1実施形態と同様の機能を果たす構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
測定器10bにおいて、高速側(CH1)のデータは、高速タイミングの発生に応じて、FIFOを介さずに、インターフェース回路13aからメモリコントローラ15を介して直接波形メモリ16へ書き込まれる。一方で、第1実施形態と同様に、計数回路22は、ある低速タイミングが発生してから次の低速タイミングが発生するまでの間に発生した高速タイミングの個数を計数する。計数回路22は、低速タイミングが発生するごとに計数結果を個数データとして個数メモリ23に格納する。低速側(CH2)のデータは、低速側データのデータ書き込み開始から、低速サンプルタイミングごとにインターフェース回路13bから読み出され、個数メモリ23から読みだしたデータ個数分、繰り返して、メモリコントローラ15を介して、波形メモリ16に書き込まれる。波形作成回路17は、高速側のデータと、低速側のデータのそれぞれについて、書き込まれた個数分のデータを読み出して波形を作成し、表示器18に表示する。波形作成回路17は、低速側が波形メモリ16に格納したデータ数と同じ数の高速側のデータを読み出して波形を作成することによって、高速サンプリング側のデータ表示を遅延させる。これにより、高速データの読み出しを低速側のデータに同期させることが可能である。
【0073】
図10は、本開示に係る測定器の処理手順を示すフローチャートである。以上のように、入力信号の波形を測定する測定器10(10a,10b)において、A/D変換器12aは、第1のサンプルタイミング(高速タイミング)に応じて、第1の入力信号に対して第1のパイプライン処理を行う(ステップS21)。A/D変換器12bは、第1のサンプルタイミングよりもサンプリング周期が長い第2のサンプルタイミング(低速タイミング)に応じて、第2の入力信号に対して第2のパイプライン処理を行う(ステップS22)。FIFO21、計数回路22、個数メモリ23、及びタイミングコントローラ24は、A/D変換器12aにより第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号の出力タイミングを、A/D変換器12bにより第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する(ステップS23)。波形作成回路17は、第1のパイプライン処理が行われ、出力タイミングが調整された第1の入力信号の波形と、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号の波形とを順次作成する(ステップS24)。測定器10(10a,10b)は、作成した第1、第2の入力信号の波形を表示器98に表示する(ステップS25)。このように、測定器10(10a,10b)は、A/D変換器12aにより第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号の出力タイミングを、第A/D変換器12bにより第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号の出力タイミングに合わせて調整する。したがって、A/D変換器12aとA/D変換器12bとで最高サンプリングレート(最高サンプリング周期の逆数)が異なっていたとしても、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0074】
また、測定器10aは、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号、及び、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を保持することが可能な波形メモリ16を更に備える。測定器10aのFIFO21は、第1のサンプルタイミングに応じて、A/D変換器12aにより第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を順次保持する。計数回路22は、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数する。タイミングコントローラ24は、第2のサンプルタイミングに応じて、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を、計数回路22が計数した個数だけFIFO21から順次読み出して波形メモリ16に保持させる。さらに、タイミングコントローラ24は、第2のサンプルタイミングに応じて、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数回路22が計数した個数だけ繰り返し波形メモリ16に保持させる。波形作成回路17は、波形メモリ16に保持された、第1の入力信号の波形と、第2の入力信号の波形とを順次作成する。このように、測定器10aは、第1のサンプルタイミングに応じて第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を順次保持するFIFO21により、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号をメモリへ書き込むタイミングを第2のパイプライン処理に合わせる。さらに、測定器10aは、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数し、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数した個数だけ繰り返し波形メモリ16に保持させる。したがって、第1の入力信号と第2の入力信号との間の時間的ずれ及びサンプリング個数の相違が解消されるため、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0075】
また、測定器10aは、FIFO21を用いることで、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を、時間的順序が維持されたまま保持することが可能である。
【0076】
また、測定器10bは、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号、及び、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を保持することが可能な波形メモリ16を備える。第1のサンプルタイミングに応じて、第1の処理部により第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号は、順次波形メモリ16に保持される。計数回路22は、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数する。タイミングコントローラ24は、第2のサンプルタイミングに応じて、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数回路22が計数した個数だけ繰り返し波形メモリ16に保持させる。波形作成回路17は、計数した個数の第1のサンプルタイミングだけ遅延させてから、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を波形メモリ16から読み出す。さらに、波形作成回路17は、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号が波形メモリ16に保持されたことに応じて、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を波形メモリ16から読み出す。波形作成回路17は、波形メモリ16から読み出した第1の入力信号の波形と、波形メモリ16から読み出した第2の入力信号の波形と、を順次作成する。このように、測定器10bは、第2のサンプルタイミングの周期の間において発生した第1のサンプルタイミングの個数を計数し、第2のパイプライン処理が行われた第2の入力信号を、計数した個数だけ繰り返し波形メモリ16に保持させる。さらに、波形作成回路17は、第1のパイプライン処理が行われた第1の入力信号を波形メモリ16から読み出す処理を第2のパイプライン処理に合わせて遅延させる。したがって、第1の入力信号と第2の入力信号との間の時間的ずれ及びサンプリング個数の相違が解消されるため、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0077】
また、タイミング発生回路14は、外部から入力されたサンプルタイミングを示すサンプリング信号に基づき、第1のサンプルタイミングを示す第1のタイミング信号と、第2のサンプルタイミングを示す第2のタイミング信号と、を生成する。タイミング発生回路14は、第1のタイミング信号をA/D変換器12aへ出力し、第2のタイミング信号をA/D変換器12bへ出力する。A/D変換器12aは、タイミング発生回路14から入力された第1のタイミング信号が示す第1のサンプルタイミングに応じて第1のパイプライン処理を行う。A/D変換器12bは、タイミング発生回路14から入力された第2のタイミング信号が示す第2のサンプルタイミングに応じて第2のパイプライン処理を行う。このように、測定器10(10a,10b)は、外部から入力されたサンプルタイミングを示すサンプリング信号に基づき、第1、第2のタイミング信号を生成するため、外部からのサンプリング信号に同期してリアルタイムに処理を進めることが可能である。
【0078】
また、タイミング発生回路14は、外部から入力されたサンプルタイミングのサンプリング周期が、A/D変換器12bが対応可能な最高サンプリング周期よりも短い場合、第2のタイミング信号として、最高サンプリング周期のサンプルタイミングを第2のサンプルタイミングとして示す第2のタイミング信号を生成する。このように、外部から入力されたサンプルタイミングのサンプリング周期がA/D変換器12bの最高サンプリング周期よりも短い場合、最高サンプリング周期を第2のサンプルタイミングとするため、A/D変換器12bの性能に合わせて処理を進めることが可能である。
【0079】
また、第1のパイプライン処理及び第2のパイプライン処理には、A/D変換処理が含まれる。したがって、測定器10(10a,10b)が備えるA/D変換器(12a,12b)の処理速度が異なる場合であっても、各モジュールの出力信号の波形をリアルタイムに比較することが可能である。
【0080】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 測定器
11 入力アンプ
12 A/D変換器
13 インターフェース回路
14 タイミング発生回路
15 メモリコントローラ
16 波形メモリ
17 波形作成回路
18 表示器
21 FIFO
22 計数回路
23 個数メモリ
24 タイミングコントローラ
90 測定器
91 入力アンプ
92 A/D変換器
93 インターフェース回路
94 タイミング発生回路
95 メモリコントローラ
96 波形メモリ
97 波形作成回路
98 表示器
101 低速タイミングの周期
102 高速タイミングの周期
103 マスク
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10