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特許7390366平均音速プロファイルに基づく深度又は水深プロファイルの特定方法、かかる速度プロファイルの特定方法、及び関連するソナーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】平均音速プロファイルに基づく深度又は水深プロファイルの特定方法、かかる速度プロファイルの特定方法、及び関連するソナーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01S7/526 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021514058
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074357
(87)【国際公開番号】W WO2020053335
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】1858281
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508013962
【氏名又は名称】エグゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】シャルロ ディディエ
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-003450(JP,A)
【文献】特開平03-108684(JP,A)
【文献】特許第2916362(JP,B2)
【文献】国際公開第01/042812(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03043788(FR,A1)
【文献】米国特許第06577557(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中環境(E)の2点間の深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z;z)又は鉛直に関する側方偏位(y;x;x,y)を特定する方法において、
-少なくとも1つの送信器(15;15,16:4)を使って前記水中環境(E)中に音波を発射するステップと、
-幾つかの受信器(16;16,15)を含む受信アンテナ(14;14,13)を使って前記音波を受信するステップであって、前記受信器は前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号(s)を出力する、ステップと、
-前記受信音波の伝搬定数(α;αM.1,αM.2)を前記受信信号(s)に応じて特定するステップであって、前記伝搬定数は、鉛直に関する前記音波の受信方向を示す受信角度(θ)の正弦を前記受信アンテナの深度における前記音波の局所伝搬速度(c)で割ったものと等しい、ステップと、
-前記音波の伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)を、前記音波の発射時間と受信時間とを隔てる持続時間に応じて特定するステップと、
-前記受信アンテナ(13,14)と前記送信器(4)との間、又は前記受信アンテナ(14;14,13)と前記音波をその前記送信器(15;15,16)から前記受信アンテナ(14;14,13)への伝搬の途中で反射する水中要素(P;M)との間の前記深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z;z)又は鉛直に関する前記側方偏位(y;x;x,y)を:
-前記伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)に前記送信器(4)の深度(z,z)又は前記水中要素(P;M)の深度(z,z’)における前記音波の平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))を乗じた積であって、前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))は、前記送信器(4)の前記深度から前記受信アンテナ(13,14)の深度まで、又は前記水中要素(P;M)の前記深度から前記受信アンテナ(14;14,13)の前記深度までのそれぞれの複数の深度(z)において前記音波により示される複数の局所伝搬速度(c)の調和平均を表す、積に応じて、及び
-鉛直と前記音波の有効伝搬方向との間に画定される平均伝搬角度(θmoy)であって、前記伝搬定数(α;αM,1,αM,2)及び前記送信器(4)の前記深度(z,z)又は前記水中要素(P;M)の前記深度(z,z’)における前記音波の前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))に応じて特定される平均伝搬角度(θmoy
に基づいて特定する、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z;z)と鉛直に関する前記側方偏位(y;x;x,y)の両方を特定するようになされている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))は平均速度プロファイル(cmoy(z))から特定され、前記平均速度プロファイル(cmoy(z))は、前記送信器(4)の前記深度と前記受信アンテナ(13,14)の前記深度との間、又は前記水中要素(P;M)の前記深度と前記受信アンテナ(14;14,13)の前記深度との間でそれ以前に調査された局所伝搬速度プロファイルの数値積分によって特定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第一の位置(O1)から第二の位置(O2)への、その長さ方向軸に平行な前記受信アンテナの変位を含み、前記第一の位置(O1)に関する第一の音波の第一の伝搬時間及び前記受信音波の第一の伝搬定数(α;αM,1,αM,2)及び、それぞれ前記第二の位置(O2)に関する第二の音波の第二の伝搬時間及び第二の伝搬定数(αM,2)の特定を含み、前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))は、前記第一の伝搬時間、前記第二の伝搬時間、及び前記第二の伝搬定数(αM,2)に応じて特定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記送信器(4)の前記深度と前記受信アンテナ(13,14)の前記深度との間、又は前記水中要素(P;M)の前記深度と前記受信アンテナ(14;14,13)の前記深度との間に含まれる複数の深度(z)に関する平均速度プロファイル(cmoy(z))の特定と、前記平均速度プロファイル(cmoy(z))から数値逆変換法によって局所伝搬速度プロファイルの推定を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z;z)は、
-前記伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)に前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))を乗じた積に、
-前記平均伝搬角度(θmoy)の余弦を乗じたもの
よって特定される、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記側方偏位は、
-前記伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)に前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))を乗じた積に、
-前記平均伝搬角度(θmoy)の正弦を乗じたもの
よって特定される、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記平均伝搬角度(θmoy)は、その正弦が前記伝搬定数(α;αM,1,αM,2)に前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))を乗じた積に等しいように特定される、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記平均伝搬角度(θmoy)はさらに、前記送信器(4)の前記深度から前記受信アンテナ(13,14)の前記深度まで、又は前記水中要素(P;M)の前記深度から前記受信アンテナ(14;14,13)の前記深度までのそれぞれの複数の深度(z)において前記音波が示す複数の局所伝搬速度(c)の算術平均を表す算術平均速度
【数1】
に応じて特定される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記平均伝搬角度(θmoy)は、その正弦が前記伝搬定数(α)に前記算術平均速度
【数2】
を乗じたものに等しいように特定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記送信器(15;15,16)と前記受信アンテナ(14;14,13)は同じソナーシステム(10)に取り付けられ、その間にこのソナーシステム(10)は、前記受信アンテナと、前記音波を前記送信器(15;15,16)から前記受信アンテナ(14;14,13)へのその伝搬中に反射する水中要素(P;M)との間の前記深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z)又は鉛直に関する前記側方偏位(y;x)を特定する、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記送信器(4)と前記受信アンテナ(14,13)はそれぞれ、異なるそれぞれの深度(z,z)に位置する2つの異なるシステム(3,10)上に取り付けられ、その間に、前記受信アンテナ(13,14)を備える前記システム(10)が前記受信アンテナ(13,14)と前記送信器(4)との間の前記深度差(z)又は、鉛直に関する前記側方偏位(x,y)を特定する、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
-幾つかの異なる深度(z)に連続的に位置決めされたゾンデによって、それぞれ前記深度(z)の各々において前記音波が示す複数の局所伝搬速度(c)を特定するステップと、その後、
-前記それ以前に特定された複数の局所伝搬速度(c)に応じて前記局所伝搬速度プロファイルを特定するステップと、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記平均速度値(cmoy(z))は:
-前記深度差(zM,1)と
-前記受信アンテナ(14)と前記水中要素(M)との間の第二の深度差(zM,2
との間の偏差が、ある閾値未満となるように特定され、前記第二の深度差(zM,2)は:
-前記第二の伝搬時間(tM,2)に前記平均速度値(cmoy)を乗じた積に応じて、及び
-鉛直と前記第二の音波の有効伝搬方向との間に画定される第二の平均伝搬角度であって、前記第二の伝搬定数(αM.2)に応じて特定される第二の平均伝搬角度
に応じて特定される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
水中環境(E)中の音波の局所伝搬速度(c)を特定する方法において、
-異なる深度(z,zM’,zM’’)に位置する複数の水中要素(M,M’,M’’)について、複数のそれぞれの平均速度値(cmoy(z),cmoy(zM’),cmoy(zM’’))を特定するステップであって、前記値の各々は請求項14において定義される方法にしたがって特定される、ステップと、
記複数の水中要素の各水中要素の各深度(z,zM’,zM’’)について、前記音波の複数の局所伝搬速度(c)を、前記それ以前に特定された複数の平均速度値(cmoy(z),cmoy(zM’),cmoy(zM’’))のそれぞれに応じて特定するステップと、
-前記水中要素の各々において、それ以前に特定された複数の局所伝搬速度、及び関連する伝搬定数から、前記音波のそれぞれの入射角を特定するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
水中環境(E)中の水中送信器(4)の位置(x,y)を特定する方法において、
その深度(z)がわかっている前記送信器(4)を使って前記水中環境中に音波を発射するステップと、
-水上又は潜水可能艦艇(1)に取り付けられた少なくとも1つの受信アンテナ(13,14)を使って前記音波を受信するステップであって、前記受信アンテナ(13,14)はそれぞれの複数の受信信号(s)を出力する幾つかの受信器(15,16)を含む、ステップと、
-前記受信音波の伝搬定数(α)を前記受信信号(s)に関して特定するステップであって、前記伝搬定数は、前記送信器(4)と前記受信アンテナ(13,14)を含む垂直平面(Pl)内の鉛直に関する前記音波の受信方向を示す受信角度(θ)の正弦を前記受信アンテナの深度(z)における前記音波の局所伝搬速度(c)で割ったものと等しい、ステップと、
-前記音波の有効伝搬方向を、前記伝搬定数(α)と前記水中送信器(4)の前記深度(z)における平均伝搬速度値(cmoy(z))の積に応じて特定するステップであって、前記平均速度値(cmoy(z))は、前記送信器の前記深度(z)と前記受信アンテナの前記深度(z)との間のそれぞれの複数の深度(z)において前記音波が示す複数の局所伝搬速度(c)の調和平均を表す、ステップと、
-前記受信アンテナ(13,14)と前記送信器(4)との間の鉛直に関する側方偏位(x,y)を:
-前記送信器の前記深度(z)と前記受信アンテナの前記深度(z)との間の差、及び
-前記有効伝搬方向と鉛直との間に画定される平均伝搬角度(θmoy)の正接であって、前記平均伝搬角度(θmoy)は、前記伝搬定数(α)と前記送信器(4)の前記深度(z)における前記音波の前記平均速度値(cmoy(z))に応じて特定される、正接
の積に応じて特定するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
ソナーシステム(10)において、
-少なくとも1つの送信器(15,16,4)によって水中環境中にそれ以前に発射されている音波を受信するように構成された受信アンテナ(13,14)であって、前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号(s)を出力するようになされた幾つかの受信器(15,16)を含む受信アンテナ(13,14)と、
-電子処理ユニット(18)であって:
-前記受信音波の伝搬定数(α;αM.1,αM.2)を前記受信信号(s)に応じて特定し、前記伝搬定数は、鉛直に関する前記音波の受信方向を示す受信角度(θ)の正弦を前記受信アンテナの深度における前記音波の局所伝搬速度(c)で割ったものと等しく、
-前記音波の伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)を、前記音波の発射時間と受信時間とを隔てる持続時間に応じて特定し、
-前記受信アンテナ(13,14)と前記送信器(4)との間、又は前記受信アンテナ(14;14,13)と前記音波をその前記送信器(15;15,16)から前記受信アンテナ(14;14,13)への伝搬の途中で反射する水中要素(P;M)との間の深度差(z,Δz;zM,1,zM,2,z;z)又は鉛直に関する側方偏位(y;x;x,y)を:
-前記伝搬時間(t;tM,1,tM,2;t)に前記音波の平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))を乗じた積であって、前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))は、前記送信器(4)の前記深度から前記受信アンテナ(13,14)の深度まで、又は前記水中要素(P;M)の前記深度から前記受信アンテナ(14;14,13)の前記深度までのそれぞれの複数の深度(z)において前記音波により示される複数の局所伝搬速度(c)の調和平均を表す、積に応じて、及び
-鉛直と前記音波の有効伝搬方向との間に画定される平均伝搬角度(θmoy)であって、前記伝搬定数(α;αM,1,αM,2)及び前記送信器(4)の前記深度(z,z)又は前記水中要素(P;M)の前記深度(z,z’)における前記音波の前記平均速度値(cmoy(z),cmoy(z))に応じて特定される平均伝搬角度(θmoy
に基づいて特定する
ようにプログラムされた電子処理ユニット(18)と、
を含むソナーシステム(10)。
【請求項18】
ソナーシステム(10)において、
-その深度(z)がわかっている送信器(4)によって水中環境中にそれ以前に発射されている音波を受信するように構成された受信アンテナ(13,14)であって、前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号(s)を出力するようになされた幾つかの受信器(15,16)を含む受信アンテナ(13,14)と、
-電子処理ユニット(18)であって、:
-前記受信音波の伝搬定数(α)を前記受信信号(s)に応じて特定し、前記伝搬定数は、前記送信器(4)と前記受信アンテナ(13,14)を含む垂直面(Pl)内の鉛直に関する前記音波の受信方向を示す受信角度(θ)の正弦を前記受信アンテナの深度(z)における前記音波の局所伝搬速度(c)で割ったものと等しく、
-前記受信音波の有効伝搬方向を、前記伝搬定数(α)と前記送信器の前記深度(z)における平均伝搬速度値(cmoy(z))の積に応じて特定し、前記平均速度値(cmoy(z))は、前記送信器(4)の前記深度から前記受信アンテナ(13,14)の深度までのそれぞれの複数の深度(z)において前記音波が示す複数の局所伝搬速度(c)の調和平均を表し、
-前記送信器(4)の前記深度(z)を表すデータを取得するか、又はメモリ内で読み取り、
-前記受信アンテナ(13,14)と前記送信器(4)との間の、鉛直に関する側方偏位(x,y)を:
-前記送信器の前記深度(z)と前記受信アンテナの前記深度(z)との間の差と、
-前記有効伝搬方向と鉛直との間に画定される平均伝搬角度(θmoy)の正接であって、前記平均伝搬角度(θmoy)は前記伝搬定数(α)と前記送信器(4)の前記深度(z)における前記音波の前記平均速度値(cmoy(z))に応じて特定される正接
との積に応じて特定する
ようにプログラムされた電子処理ユニット(18)と、
を含むソナーシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、深度差の特定又は、水中環境の2点間の鉛直に関する側方偏位の、これら2点間で伝搬する音波の伝搬時間及び/又は伝搬定数をこの水中環境中の平均速度に基づいて測定することによる特定に関する。
【0002】
これは特に、海底地形の測定及び水中物体又は魚群の位置特定に応用される。これはまた、地形測定自体からの前記平均速度の特定にも応用される。
【背景技術】
【0003】
今日、ますます多くの艦艇がソナーを備えており、これらは水上艦艇か又は潜水艦か、有人艦艇か又はドローンかを問わない。特に、ますます多くの「AUV」(Autonomous Underwater Vehicle(自律航行無人艇))及び「USV」(Unmanned Surface Vehicle)(無人水上艇))ドローンが現在ではソナーを備えている。このようなソナーにより、特に、艦艇の下に位置する海底の水深プロファイルを特定すること(このようなプロファイルは、海底の幾つかの点について、海底のこれらの点の位置を特定する水深及び水平位置データを収集する)、又はこの艦艇の下に延びる水柱の中に位置する物体又は魚群の位置を特定することが可能となる。
【0004】
ソナーの直下に位置する海底のある点の水深を特定するために、ソナーはこの点に向かって音波を発射する。海底で反射すると、この音波がソナーに取り付けられた1つ又は複数の受信器により受信される。音波の発射時間と受信時間との間の持続時間は、音波がソナーと海底との間を一往復するのに必要な時間に等しく、したがって、海底のこの点の位置する水深を特定するために使用できる。その目的のために、この持続時間の半分に環境中での音波のある速度値を乗じる。
【0005】
しかしながら、このような水深特定は、一般に水中環境中の音波の速度が深度に応じて変化するため(特に、水深に伴う温度、密度、又は塩度の変化による)、不正確であることが多い。
【0006】
国際水路機関の“Manual on Hydrography”(公報C-13第1版、2011年2月改訂、インターネットサイト、https://www.iho.int/iho_pubs/CB/C13_index.htm#C-13Fで入手可能)は、ソナーの直下に位置する海底のある点の水深を特定するために、以下を提案している:
-上述のエコー時間測定の前に、水面下のより深い、又はより浅い位置にある異なる点における速度プロファイル、すなわち局所的に示される一連の速度値を音波により調査し、その後、
-以前に調査された速度値の、検討対象の水柱に沿った、調和平均と等しい有効速度を使用すること(同文書第3章2.2.4項)。
【0007】
これは調和平均であるため、この有効速度の逆数は前記局所的音速値の逆数の算術平均と等しい。
【0008】
ソナーの直下に位置していない海底の点については、音波は、ソナーと測深点との間のその移動全体にわたり、回折によって偏位する(水深に伴う音波速度の変化による)。これは、この非直線移動に沿った音波の伝搬時間であり、したがってソナーにより測定される。
【0009】
このような点の水深及び、ソナーに関するその側方偏位(鉛直に関する偏位)を特定するために、前述の文献は、前述の回折の影響を受けて偏位する音線が辿る経路を点ごとにプロットすることが必要であると示している(121ページ)。同文書は、水中環境を幾つかの層の積重ねとしてモデル化することをより明確に提案しており(161ページ)、その音波速度又はその勾配は各層において一定であると仮定される。すると、音線の経路が層ごとに徐々に特定される。したがって、これによってこの経路に沿った伝搬時間を測深点の深さ及びソナーに関するその側方偏位に結び付けることができる。
【0010】
しかしながら、音線の辿る経路は、ソナーが受信した音波の方向が変わるたびに、全体に特定し直さなければならない。
【0011】
この方法の実行にはしたがって、多くの計算が関わり、特にマルチビームソナー(異なる傾斜の複数の音波を同時に発射する)が使用された場合に、多くのコンピュータリソースを必要とする。この方法にはさらに、ソナーから測深点までの深さの全範囲にわたり、事前に音波速度プロファイルを測定することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに関して、本発明は、深度差、又は水中環境の2点間の鉛直に関する側方偏位を、前述の先行技術(国際水路機関の“Manual on Hydrography”)に記載されている多層モデルに基づくのではなく、水中環境の適切な1層モデルに基づいて特定する方法を提案する。この1層モデルでは、音波が環境中で、有効伝搬方向(その受信方向とは異なる)に沿って直線で、有効伝搬方向に左右されない平均速度で伝搬すると仮定される。この1層モデルを使用することによって、このような特定に必要な計算が大幅に単純化されるのと同時に、非常に正確な結果が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は特に、
-少なくとも1つの送信器を使って水中環境中に音波を発射するステップと、
-幾つかの受信器を含む受信アンテナを使って前記音波を受信するステップであって、前記受信器は前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号を出力する、ステップと、
-受信した音波の伝搬定数を前記受信信号に応じて特定するステップであって、前記伝搬定数は、音波の受信方向を示す、鉛直に関する受信角度の正弦を前記受信アンテナの深度における音波の局所伝搬速度で割ったものと等しい、ステップと、
-音波の伝搬時間を、音波の発射時間と受信時間とを隔てる持続時間に応じて特定するステップと、
-受信アンテナと送信器との間、又は受信アンテナと前記音波をその送信器から受信アンテナへの伝搬の途中で反射する水中要素との間の深度差又は鉛直に関する側方偏位を:
-前記伝搬時間に送信器の深度又は水中要素の深度における音波の平均速度値を乗じた積であって、前記平均速度値は、送信器の深度から受信アンテナの深度まで、又は前記水中要素の深度から受信アンテナの深度までのそれぞれの複数の深度における音波により示される複数の局所伝搬速度の調和平均を表す、積に応じて、及び
-鉛直と音波の有効伝搬方向との間に画定される平均伝搬角度であって、前記伝搬定数及び送信器の深度又は水中要素の深度における音波の前記平均速度値に応じて特定される平均伝搬角度
に基づいて特定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0014】
本出願人は、前記平均速度の適当な値について、前述のように特定された深度差又は側方偏位は、驚くべきことに、一般的に推奨されている水路測量の国際基準に関して(特に、“IHO Standards for Hydrographic Surveys”,Monaco,5th Editionにより定義される精度「1b」及び「特別(special)」の基準に関し、前記精度基準については前述の国際水路機関“Manual on Hydrography”の8~10ページにおいて注意喚起されている)十分に正確であることに気付いた。
【0015】
この方法においては、したがって、音波に生じる回折の影響が正確に考慮され、それによって音波が辿る経路の詳細を特定する必要がない。このことにより、有利なことに、この方法を迅速に、及び/又は限定的なコンピューティングリソースで実行することが可能となる。
【0016】
さらに、前述のように、問題の平均速度の適当な値(検討対象点間の深度差の、及び/又は側方偏位の正確な特定が得られる値)は、音波の傾斜と無関係であることも判明した。それゆえ、この適当な値がわかった(又は特定された)瞬間から、深度差の幾つかの測定値が、異なる傾斜について行われたものではあるが、同じ数値公式によって取得でき、これによってこれらの深度差の特定に必要な計算時間が顕著に短縮される。
【0017】
そのほかに、前述の深度差及び/又は側方偏位は、受信アンテナから送信器まで、又は受信アンテナから前記水中要素までの深度範囲全体にわたってそれ以前に測定された多くの異なる速度を使用しなくてはならない代わりに、1つの速度値に基づいて特定できる点に留意されたい。
【0018】
本発明による特定方法の、個別にも、技術的に可能なあらゆる組合せによっても得られるその他の非限定的で有利な特徴は以下の通りである:
-前記平均速度値は平均速度プロファイルから特定され、平均速度プロファイルは、送信器の深度と受信アンテナの深度との間、又は前記水中要素の深度と受信アンテナの深度との間でそれ以前に調査された局所伝搬速度プロファイルの数値積分によって特定される;
-その長さ方向軸に平行に第一の位置から第二の位置への受信アンテナの変位が提供され、第一の位置に関する第一の音波の第一の伝搬時間及び受信音波の第一の伝搬定数と、それぞれ第二の位置に関する第二の音波の第二の伝搬時間及び第二の伝搬定数の特定を含み、前記平均速度値は、第一の伝搬時間、第二の伝搬時間、及び第二の伝搬定数に応じて特定される;
-送信器の深度と受信アンテナの深度との間、又は前記水中要素の深度と受信アンテナの深度との間に含まれる複数の深度に関する平均速度プロファイルを特定し、平均速度プロファイルから数値逆変換法によって局所伝搬速度プロファイルを推定するようになされている;
-前記深度差と鉛直に関する前記側方偏位の両方を特定するようになされている;
-前記深度差は、
-前記伝搬時間に前記平均速度値を乗じた積に、
-前記平均伝搬角度の余弦を乗じたもの
に関して1000分の1未満の相対偏差を示すように特定される;
-前記側方偏位は、
-前記伝搬時間に前記平均速度値を乗じた積に、
-前記平均伝搬角度の正弦を乗じたもの
に関して1000分の1未満の相対偏差を示すように特定される;
-前記平均速度は、送信器の深度から受信アンテナの深度まで、又は前記水中要素の深度から受信アンテナの深度までのそれぞれの複数の深度において音波が示す複数の局所伝搬速度の調和平均を表す;
-平均伝搬角度は、その正弦が前記伝搬定数に前記平均速度値を乗じた積に関して1000分の1未満の相対偏差を示すように特定される;
-平均伝搬角度はさらに、送信器の深度から受信アンテナの深度まで、又は前記水中要素の深度から受信アンテナの深度までのそれぞれの複数の深度において音波が示す複数の局所伝搬速度の算術平均を表す算術平均速度に応じて特定される;
-平均伝搬角度は、その正弦が前記伝搬定数に前記算術平均速度を乗じたものに関して1000分の1未満の相対偏差を示すように特定される;
-送信器と受信アンテナは同じソナーシステムに取り付けられ、方法実行中、このソナーシステムは、深度差又は、受信アンテナと、前記音波を送信器から受信アンテナへのその伝搬中に反射する水中要素との間の鉛直に関する側方偏位を特定する;
-前記送信器は、前記ソナーシステムの指向性送信アンテナに属し、この送信アンテナは前記音波を発し、少なくとももう1つ別の送信器を含む;
-送信器及び受信アンテナはそれぞれ、異なるそれぞれの深度に位置する2つの異なるシステム上に取り付けられ、方法の実行中、受信アンテナを備えるシステムが深度差又は、受信アンテナと前記送信器との間の鉛直に関する側方偏位を特定する;
-前記受信アンテナは、相互に整列していない少なくとも3つの受信器を含むか、又は前記受信アンテナを含むシステムは少なくとももう1つの別の受信アンテナを含み、前記音波の受信方向は、両方の受信アンテナにより出力された受信信号に基づいて三次元的に位置特定される;
-送信器は水中ビーコンに取り付けられる;
-受信アンテナはソナーシステムに取り付けられる;
-方法は:
-幾つかの異なる深度に連続的に位置決めされたゾンデによって、それぞれ前記深度の各々において音波が示す複数の局所伝搬速度を特定するステップと、その後、
-前記それ以前に特定された複数の局所伝搬速度に応じて局所伝搬速度プロファイルを特定するステップと、
をさらに含む;
-方法は:
-前記音波の発射及び受信の後に、ソナーシステムを変位させるステップと、その後、
-前記送信器を使って、水中環境中に他の音波を発射して、前記他の音波が前記水中要素に到達するようにするステップと、
-前記水中要素での反射後に、受信アンテナを使って前記他の音波を受信するステップと、
-前記他の受信音波に関して、他の伝搬定数をこの他の音波の受信後に受信アンテナの受信器により出力される受信信号に応じて特定するステップであって、前記他の伝搬定数は、鉛直に関する前記他の音波の受信方向を示す他の受信角度の正弦を前記受信アンテナの深度における音波の局所伝搬速度による音波の局所伝搬速度で割ったものと等しい、ステップと;
-他の伝搬時間を、前記他の音波の発射時間と受信時間とを隔てる他の持続時間に応じて特定するステップと、
-前記平均速度を:
-前記音波の伝搬時間と伝搬定数、及び
-前記他の音波の伝搬時間と伝搬定数
に応じて特定するステップと、
をさらに含む;
-前記平均速度値は:
-前記深度差及び、
-受信アンテナと水中要素との間の第二の深度差
との間の偏差が
ある閾値より低くなるように特定され、前記第二の深度差は:
-前記第二の伝搬時間に前記平均速度値を乗じた積に応じて、及び
-鉛直と前記他の音波の有効伝搬方向との間に画定される他の平均伝搬角度であって、前記他の伝搬定数に応じて特定される他の平均伝搬角度に応じて
特定される。
【0019】
本発明はまた、水中環境中の音波の局所伝搬速度を特定する方法にも関し、これは:
-異なる深度に位置する複数の水中要素について、複数のそれぞれの平均速度値を特定するステップであって、前記値の各々は前述の方法にしたがって特定される、ステップと、
-複数の水中要素の深度間隔の中の複数のある深度について、及び特に、前記複数の水中要素の各水中要素の各深度について、音波の複数の局所伝搬速度を前記それ以前に特定された複数の平均速度値に応じて特定するステップと、
-前記水中要素の各々において、それ以前に特定された複数の局所伝搬速度及び関連する伝搬定数から、音波のそれぞれの入射角を特定するステップと、
を含む。
【0020】
本発明はまた、水中環境中の水中送信器の位置を特定する方法にも関し、これは:
-その深度がわかっている前記送信器を使って水中環境中に音波を発射するステップと、
-水上又は潜水可能艦艇に取り付けられた受信アンテナを使って前記音波を受信するステップであって、受信アンテナはそれぞれの複数の信号を出力する幾つかの受信器を含む、ステップと、
-受信音波の伝搬定数を前記受信信号に関して特定するステップであって、前記伝搬定数は、送信器と受信アンテナを含む垂直平面内の鉛直に関する音波の受信方向を示す受信角度の正弦を、前記受信アンテナの深度における音波の局所伝搬速度で割ったものと等しい、ステップと、
-音波の有効伝搬方向を、前記伝搬定数と水中送信器の深度における平均伝搬速度値の積に応じて特定するステップであって、前記平均速度値は、送信器の深度と受信アンテナの深度との間のそれぞれの複数の深度において音波が示す複数の局所伝搬速度の調和平均を表す、ステップと、
-受信アンテナと送信器との間の鉛直に関する側方偏位を:
-送信器の深度と受信アンテナの深度との間の差、及び
-前記有効伝搬方向と鉛直との間に画定される平均伝搬角度の正接であって、平均伝搬角度は、前記伝搬定数と送信器の深度における音波の前記平均速度値に応じて特定される正接
の積に応じて特定するステップと、
を含む。
【0021】
送信器は特に水中ビーコンに取り付けることができ、他方で受信アンテナはソナーシステムに取り付けられる。
【0022】
本発明はまたソナーシステムにも関し、これは:
-少なくとも1つの送信器によって水中環境中にそれ以前に発射されている音波を受信するように構成された受信アンテナであって、前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号を出力するようになされた幾つかの受信器を含む受信アンテナと、
-電子処理ユニットであって、:
-受信音波の伝搬定数を前記受信信号に応じて特定し、前記伝搬定数は、鉛直に関する音波の受信方向を示す受信角度の正弦を前記受信アンテナ深度における音波の局所伝搬速度で割ったものと等しく、
-音波の伝搬時間を、音波の発射時間と受信時間とを隔てる持続時間に応じて特定し、
-受信アンテナと送信器との間の、又は受信アンテナと前記音波を送信器から受信アンテナへのその伝搬中に反射する水中要素との間の深度差又は鉛直に関する側方偏位を:
-前記伝搬時間に音波の平均速度値を乗じた積であって、前記平均速度値は送信器の深度から受信アンテナの深度まで、又は前記水中要素の深度から受信アンテナの深度までのそれぞれの複数の深度において音波が示す複数の局所伝搬速度の調和平均を表す積に応じて、及び
-鉛直と音波の有効伝搬方向との間に画定される平均伝搬角度であって、前記伝搬定数と、送信器の深度における、又は水中要素の深度における音波の前記平均速度値に応じて特定される平均伝搬角度
に応じて特定する
ようにプログラムされた電子処理ユニットと、
を含む。
【0023】
ソナーシステムはまた、前記送信器を含むことができるか、又は、少なくとも数が1つの前記送信器を含む送信アンテナを含むことができる。
【0024】
方法に関して先に述べた様々な任意選択的特徴は、上述のソナーシステムにも当てはめることができる。
【0025】
本発明はまた、ソナーシステムにも関し、これは:
-その深度がわかっている1つの送信器によって水中環境中にそれ以前に発射されている音波を受信するように構成された受信アンテナであって、前記音波の受信時にそれぞれの複数の受信信号を出力するようになされた幾つかの受信器を含む受信アンテナと、
-電子処理ユニットであって、:
-受信音波の伝搬定数を前記受信信号に応じて特定し、前記伝搬定数は、鉛直に関する音波の受信方向を示す受信角度の正弦を前記受信アンテナの深度における音波の局所伝搬速度で割ったものと等しく、
-受信音波の有効伝搬方向を、前記伝搬定数と送信器の深度における平均伝搬速度値の積に応じて特定し、前記平均速度値は、送信器の深度から受信アンテナの深度までのそれぞれの複数の深度において音波が示す複数の局所伝搬速度の調和平均を表し、
-送信器の深度を表すデータを取得するか、又はメモリ内で読み取り、
-受信アンテナと送信器との間の、鉛直に関する側方偏位を:
-送信器の深度と受信アンテナの深度との間の差と、
-前記有効伝搬方向と鉛直との間に画定される平均伝搬角度の正接であって、平均伝搬角度は前記伝搬定数及び送信器の前記深度における音波の前記平均速度値に応じて特定される正接
との積に応じて特定する
ようにプログラムされた電子処理ユニットと、
を含む。
【0026】
本発明はまた、上述のソナーシステムを備える水上又は潜水可能な自律航行又は有人艦艇にも関する。
【0027】
非限定的な例として示される添付の図面に関する以下の説明により、本発明を構成するもの及びそれをどのように実装できるかをよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるソナーシステムを備える艦艇の側面図を概略的に示す。
図2図1の艦艇の底面図を概略的に示す。
図3】海底地形を調査する第一の方法の実行中に図1のソナーシステムにより発射される音波ビームを概略的に示す。
図4図1のソナーシステムのより詳細な受信器を概略的に示す。
図5図1のソナーシステムの受信器により受信される音波が辿る経路を概略的に示す。
図6】前述の第一の方法の主要なステップを概略的に示す。
図7A】検討対象の水中環境中の音波の局所伝搬速度の進展とこの環境中の水深に応じたこれらの音波の平均速度の進展を概略的に示す。
図7B】検討対象の水中環境中の音波の局所伝搬速度の進展とこの環境中の水深に応じたこれらの音波の平均速度の進展を概略的に示す。
図8図1のソナーシステムにより音波測量される水深及び海底のある点の側方置に関する特定誤差を概略的に示す。
図9】海底地形の調査と水中環境中の音波の平均速度プロファイルの特定の両方を行う第二の方法の実行中に図1のソナーシステムが連続的に発射する音波ビームを概略的に示す。
図10】この第二の方法の実行中に発射される音波が辿る経路を概略的に示す。
図11】同じ水深の2つの異なる推定間の偏差をこれら2つの推定を特定するために使用される平均速度に応じて概略的に示す。
図12】異なる水深に関するこの第二の方法により特定される平均速度値のほか、この、それ以外にわかっている速度に関する参照値を概略的に示す。
図13】この第二の方法の実行中に特定される音波の局所伝搬速度プロファイルを概略的に示す。
図14】水中ビーコンにより発射され、図1のソナーシステムにより受信される音波の経路を上から見たものを概略的に示す。
図15図14の音波の経路を側面から見たものを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び2は、艦艇1、本明細書では水上艦艇に取り付けられたソナーシステム10を概略的に示す。
【0030】
このソナーシステム10の注目すべき点は、それが測端点の位置(測探点の深度及び側方位置)を、音波の、深度に応じたこれらの音波の伝搬速度の変化に起因する回折を簡単且つ正確に考慮に入れることによって特定するように構成されることである。
【0031】
このソナーシステム10の構造により、異なる動作モードが可能となる。特に、それによって:
-それ以前に調査された水中環境中の音の平均速度プロファイルに基づいて海底の水深プロファイルを特定する、すなわちこの海底の地形を調査すること(図3~8に関して説明する第一の方法)、
-このような水深プロファイル及び音の平均速度プロファイルを特定することであって、この平均速度プロファイルが水深調査自体に基づいて特定されること(図9~13に関して説明する第二の方法)、及び
-ソナーシステム10に関するビーコンの、又は他の水中システムの位置を特定すること(図14及び15に関して説明する第三の方法)
が可能となる。
【0032】
まずソナーシステム10の構造について図1~5に関して説明し、その後、異なる動作モードを説明する。
【0033】
ソナーシステム
図1に概略的に示されるソナーシステム10は:
-幾つかのトランスデューサ15、16及びこれらのトランスデューサのための制御ユニット(図示せず)を含むソナーヘッド11と、
-ソナーヘッド11を操縦するユニット17と、
-ソナーヘッドが取得した信号を処理するユニット18と、
を含む。
【0034】
トランスデューサ15、16の制御ユニットは、受信モードで使用される、電気信号をトランスデューサへの供給に適合させる、又はこれらのトランスデューサのうちの幾つかにより感知される受信信号を増幅及びフィルタ処理するようになされたデジタル-アナログ及びアナログ-デジタル変換器のほか、電子増幅器及びフィルタを含むことができる。
【0035】
ソナーシステム10のトランスデューサ15、16は、十字配置(「ミルズクロス」配置と呼ばれる)に配置され:
-幾つかのトランスデューサ15は、十字の第一の分枝に沿って一直線に次々に配置されて、合同で第一のアンテナ13を形成し、他方で
-残りのトランスデューサ16は、十字の、その第一の分岐に直交する第二の分岐に沿って次々に配置されて、合同で第二のアンテナ14を形成する(図2)。
【0036】
第一のアンテナ13の付近に位置付けられる2つのトランスデューサ15間の距離dはこのアンテナに沿って一定であり、このことは第二のアンテナ14のトランスデューサ16についても同じである。
【0037】
ソナーヘッド11はここで、艦艇1の艦体内に形成されたハウジングの中に挿入され、第一のアンテナ13(ミルズクロスの第一の分枝)が艦艇1の長さ方向軸xに平行になり、第二のアンテナ14が艦艇の横方向軸yに平行になるように方向付けられる。
【0038】
艦体は、当該の長さ方向軸xに沿った長い形状を有し、艦体が直線に沿って移動すると、その進行方向はこの長さ方向軸xと一致する(漂流効果を除く)。横方向軸yは長さ方向軸xに垂直であり、艦艇甲板に平行である。
【0039】
ここで、ソナーシステム10の各トランスデューサ15、16は、艦体周囲の水中環境E中で音波を発射するだけでなく、この環境から来る音波(特に、海底で反射した音波)を受信するようになされる。これらのトランスデューサ15、16の各々はしたがって、送信器としても受信器としても動作するようになされる。
【0040】
第一及び第二のアンテナ13及び14の各々は、好ましくは20センチメートルより長い、又はさらには50センチメートルより長い長さを有し、それによってこのアンテナは音波を高い角度分解能で指向的に発射又は受信できる。
【0041】
これらのアンテナの指向性については、第一のアンテナ13が送信アンテナとして使用され、第二のアンテナ14が受信アンテナとして使用される場合について、後で説明する。この場合、第一のアンテナ13は、
-第一のアンテナ13に垂直な発射平面内で数十度の大きい開口角を有するが、
-この発射平面に垂直なより小さい開口角(例えば、5度未満)を有する(図3参照)、
幾分平坦な形状の、音波ビーム30を形成する音波を発射する。
【0042】
この音波ビーム30はしたがって、扇形の薄い層として伝搬し、一般にこれは「スキャンスワス」と呼ばれる。この発射は、発射されたビームが送信アンテナに平行に(したがって、本明細書では長さ方向軸xに平行に)前記より小さい開口角を示すという点で指向性を有する。すると、海底4のうちこのビーム30が到達する領域は、送信アンテナに垂直な薄く長い帯状領域32に対応する。
【0043】
この帯状領域32は、この帯状領域に沿って分布する海底4の幾つかの小さい基本部分33、33’、33’’...で構成され、各々は点P、P’、P’’を中心に置く。これらの基本海底部分33、33’、33’’の各々は音波を反射させ、これはエコーのようにソナーシステム10に向かって送り返される。この反射音波はその後、第二のアンテナ14によって受信される。
【0044】
第二のアンテナ14の指向性によって、ソナーシステム10は、上述の音波到達帯状領域32に沿った異なる位置を占める異なる海底部分、それぞれ33、33’、33’’から来る2つの受信音波を区別することができる。すると、これによってこれらの基本位置の各々の深度と側方位置、すなわちこれらが中心を置く点P、P’、P’’の深度と側方位置を特定することができる。
【0045】
第二のアンテナ14(本明細書では受信モードで使用される)の指向性については、図4を参照しながら後で説明する。
【0046】
このアンテナの各トランスデューサ16は、このトランスデューサが位置する地点における、アンテナが受信した音波の瞬間的変化を表す受信信号sを出力するようになされる。この音波が直角入射で受信されない場合、これらの受信信号sは相互に関して、受信角度θ、すなわちそれに応じて音波がアンテナにより受信される入射角に直接依存する量だけ時間的にずれる。本明細書で、前記受信信号sの2つ間の時間オフセットは次式F1により求められる:
【数1】
【0047】
この式中、cは、第二のアンテナ14の深度z(深度zはここではほとんどゼロである)における音波の局所伝搬速度である。受信角度θは、アンテナに垂直な、ここでは垂直軸zと一致する方向と、アンテナ14における(すなわち、アンテナ14が位置する場所における)音波の伝搬方向との間に成される。
【0048】
すると、受信信号sの適当な処理によって、これらの信号から、ある受信角度θにおいてアンテナが受信する音波を表す成分を抽出することができる。したがって、異なる入射角でそれぞれ受信される(したがって、海底の点P、P’、P’’から来る)音波はソナーシステム10によって相互に区別できる。従来のビーム整形処理である当該の処理は、例えば各受信信号sに、対応するトランスデューサが占めるアンテナ14に沿った位置に比例する時間オフセットを適用し、その後、このようにオフセットされた受信信号を合算することからなるものとすることができる。
【0049】
上述の式F1によって示されるように、それは受信信号sの2つ間の時間オフセットΔt内に受信音波の受信角度θが介入する(intervenes)伝搬定数αとしてである。
【0050】
伝搬定数αは、一般にスネル-デカルト定数と呼ばれ、受信角度θの正弦を第二のアンテナ14の深度zにおける音波の局所伝搬速度cで割ったものと等しい:α=sin(θ)/c
【0051】
この数量が伝搬定数と呼ばれるのは、いわゆるスネル-デカルトの法則により:
-検討対象点において鉛直と音波の伝搬方向との間に成される傾斜角θの正弦と、
-この点における音波の局所伝搬速度c
との間の比sin(θ)/cが水中環境E中でこの音波が辿る経路31(図5)の各点において同じ値を有する(したがって、一定の数量sin(θ)/cは、この音波が辿る経路31に沿った何れの検討対象点においても、sin(θ)/cと等しい)からである。
【0052】
何れにせよ、ソナーシステム10の処理ユニット18は、上述のもののような音波ビームが発射されるたびに、
-この音波ビームの発射に応答して、第二のアンテナ14のトランスデューサ16により感知される異なる受信信号sを取得し、
-これらの受信信号sに応じて、ある伝搬定数αを有する音波が受信時に受信されたことを特定し、その後、
-音波ビームの発射時間と(第二のアンテナ14による)この音波の受信時間との間の持続時間τを特定する
ようにプログラムされる。
【0053】
後でわかるように、データペアは、この持続時間τと受信音波の伝搬定数αを含み、処理ユニット18が前記音波の第一のアンテナ13から第二のアンテナ14までの伝搬中に)この音波を反射した水中環境Eの要素の深度と側方位置を特定できるようにする。
【0054】
第一及び第二のアンテナ13及び14の動作特性は、第一のアンテナ13が送信モードで動作し、第二のアンテナ14が受信モードで動作する場合において先に説明した。しかしがら、これら2つのアンテナ13、14のそれぞれの役割は、相互に交換することができ、すると、第一のアンテナ13は受信アンテナの役割を果たし、第二のアンテナ14は送信アンテナの役割を果たす。
【0055】
次に、ソナーシステム10の操縦ユニット17及び処理ユニット18に関して、これらは各々、少なくともプロセッサとメモリを含む電子回路によって製作され、注目すべき点として、これらは上述の方法1つ又は幾つかを実行するようにプログラムされる。システムはまた、地球座標系におけるシステムの絶対位置を提供するGPS(“Global Positioning System”(全地球測位システム))アンテナと、この座標系におけるシステムの角度移動(特に、ピッチ及びロール)を表す信号を出力する、少なくとも1つのジャイロスコープを含む姿勢ユニットも含む。すると、艦艇の角度移動は、音波の発射及び受信時に、発射及び受信方向を姿勢ユニットにより出力される信号に応じて電子的に調整することによって補償される。以下、これらの移動は完ぺきに補償されたものと考える。
【0056】
第一の方法:音の平均速度プロファイルに基づく水深プロファイルの特定
前述のように、この第一の方法の実行中、艦艇1の下にある海底の地形は、水中環境中の音の平均速度プロファイルcmoy(z)に基づいて、音波伝搬時間を測定することによって特定される。
【0057】
この第一の方法の実行中、第一のアンテナ13のトランスデューサは送信モードで動作する(このアンテナは送信アンテナとして使用される)。第二のアンテナ14のトランスデューサ16は受信モードで動作する(第二のアンテナ14は受信アンテナとして使用される)。
【0058】
この方法は以下のステップを含む(図6):
a)第一のアンテナ13を使って、前述の音波ビーム30として音波(この音波の時間の長さは例えば1ミリ秒又は数ミリ秒のオーダである)のトレインを発射し、その後
b)ステップa)での発射に応答して第二のアンテナ14のトランスデューサ16により感知される受信信号sを取得する。
【0059】
このようにして得られた受信信号により、処理ユニットは、第一のアンテナ13に垂直な(したがって、ここでは、艦艇1の長さ方向軸xに垂直な)測定線に沿って位置する、且つ艦艇1の直下に位置する海底5の幾つかの点P、P’、P’’の深度及び側方位置を特定することができる(この測定線は、ステップa)で発射された音波30が到達する海底5の細い帯状領域32がそれに沿って延びる平均線に対応する)。
【0060】
ステップa)及びb)にステップc)が続き、その中で艦艇はその長さ方向軸xに平行に新たな位置へとわずかに移動する。
【0061】
すると、ステップa)及びb)が再び実行され、それによって長さ方向軸xに沿った前回のそれに関してわずかにずれた他の測定線に沿って位置する海底の点の深度及び側方位置を特定することが可能となる。
【0062】
それゆえ、ステップa)、b)、及びc)の全体を数回連続して実行することにより、検討対象の海底の地形を表す三次元表面の異なる点の位置を線ごとに調査することが可能となる。
【0063】
ステップb)の毎回の実行中に取得される受信信号sは、処理ステップb’)及びb’’)中に処理される。
【0064】
ステップb’)中、処理ユニット18は、ステップb)で取得した受信信号sに応じて、各々がステップb)で第二のアンテナ14により受信された音波の一方に関連付けられる幾つかのデータペア(α,τ)を特定する。これらのデータペアの各々は、この音波の伝搬定数αと、この音波の発射時間と受信時間とを隔てる持続時間τを含む。
【0065】
ステップb’’)中、処理ユニット18は、これらのデータペアα及びτの各々について、海底5の、検討対象の音波を第一の送信アンテナ13から第二の受信アンテナ14へのその伝搬(往復)中に反射した小部分33の深度z及び側方位置yを特定する。この深度z及び側方位置vによって、この海底小部分33に中心を置く海底の点Pの位置をより正確に特定する。
【0066】
点Pの側方位置yは、横軸y(その原点がソナーヘッド11の中心Oにある長さ方向軸y)に沿ったこの点の座標である。この側方位置yはしたがって、検討対象点Pと第二のアンテナ14(受信アンテナ)との間の、鉛直に関する側方偏位と等しい。
【0067】
他方で、これは実際に、処理ユニット18によって持続時間τに基づいて特定される点Pとソナーヘッド11との間の深度差Δzである。しかしながら、ソナーヘッド11は本明細書において、水中環境Eのほぼ表面に位置しており、開示を単純化するために、深度差Δzは本明細書において、測探点の深度zと等しいと考える。この深度zは、沈入(immersion)と呼ばれることがあり、点Pと水中環境Eの表面の間の垂直に測定された距離と等しい。
【0068】
さらに、点Pにより反射された音波の発射時間と受信時間との間の持続時間τは、この音波が行きに第一のアンテナ13から点Pへと、その後、帰りにこの点Pから第二のアンテナ14へと伝搬するのにかかる時間と等しい点に留意されたい。この例では、この音波が行きと帰りに辿るそれぞれの経路はそれぞれ相互に同じである(図5)。したがって、持続時間τは、この音波が検討対象の点Pから第二の受信アンテナ14へと伝搬するのに必要な伝搬時間tの2倍と等しい。
【0069】
処理ユニット18が測探点Pの深度zと側方位置yを特定するために実行する方法は、それによって、深度zに応じたこれらの音波の伝搬速度cの変化に起因する音波の回折を簡単且つ正確に考慮に入れることが可能となる点で特に注目すべきである。
【0070】
この方法は、受信音波が:
-海底5の点Pから第二のアンテナ14への直線で(及びさらには、第一のアンテナ13から点Pまでの直線に沿って)、
-及び、検討対象点Pの深度zのみに依存する平均速度cmoy(z)で(この平均速度は特に、鉛直に関するこの音波の伝搬方向の傾斜に無関係である)
伝搬すると仮定される伝搬モデルに基づく。
【0071】
このモデルでは、したがって、点Pの深度zと側方位置yは、次式F2及びF3によって表される:
=cmoy(z).t.cos(θmoy)(F2)
=cmoy(z).t.sin(θmo)(F3)
式中:
-伝搬時間tは、音波の発射時間と受信時間とを隔てるこの持続時間τの半分と等しく:t=τ/2、
-θmoyは鉛直と音波の有効伝搬方向との間に画定される平均伝搬角度(点Pと第二のアンテナ14との間の音波の平均伝搬方向)である。
【0072】
換言すれば、平均伝搬角度θmoyは、垂直軸zと、点Pと第二のアンテナ14を結ぶ直線31’との間で画定される。この直線31’は、このモデルで音波が辿ると想定される有効な直線経路に対応する。
【0073】
平均速度cmoy(z)と平均伝搬角度θmoyを適当に選択すると、このモデルによって受信音波を反射した点Pの深度zと側方位置yを非常に確実に、及び正確に特定できることがわかった。
【0074】
この例では、平均伝搬角度θmoyは、受信音波の伝搬定数α(これは実際に、この音波が第二のアンテナによって受信される受信角度θに依存する)に応じて、及びこの平均速度cmoy(z)、又はおそらくは、この有効経路上の音波の算術平均速度
【数2】
に応じて特定される。この算術平均速度
【数3】
は、点Pの深度zから第二のアンテナ14(受信アンテナ)の深度z=0までのそれぞれの複数の深度zにおいて音波が示す局所伝搬速度c(z)の複数の値の算術平均と等しい:
【数4】
【0075】
平均速度cmoy(z)が音波ので有効伝搬方向に無関係であるという点により、取得データの処理と、ソナーシステムによる測探される海底の各点の深度及び側方位置の特定が大幅に容易となる。
【0076】
特に、深度z及びそれに対応する平均速度cmoy(z)の値は、第一の例においては、点Pの側方位置yと無関係に特定でき、それによってこの特定に必要な計算時間を短縮できる(その後、側方位置yはそのように特定された平均速度値に基づいて特定される)。この計算時間短縮は本明細書において一層興味深く、それは海底の幾つかの点P、P’、P’’の深度及び側方位置は、ステップb’’)の毎回の繰り返しで特定されるからである。
【0077】
平均速度cmoy(z)は、点Pの深度zから第二のアンテナ14(受信アンテナ)の深度z=0までのそれぞれの複数の深度zにおいて音波が示す局所伝搬速度c(z)の複数の値の調和平均と等しく、すなわち:
【数5】
である。
【0078】
数量
【数6】
は、音波が、測探点の深度zから受信アンテナの深度z=0まで垂直に伝搬するのにかかる持続時間tvertと等しい点に留意されたい。したがって、平均速度cmoy(z)は、測探点Pと第二のアンテナ14との間の深度差zをこの持続時間tvertで割ったものと等しい。
【0079】
平均伝搬角度θmoyは本明細書においては処理ユニット18により、その正弦が検討対象の音波の伝搬定数αに平均速度cmoy(z)を乗じた積と等しくなるように特定される:
sin(θmoy)=α.cmo(z)(F6)
【0080】
処理ユニット18はしたがって、点Pの深度z及び側方位置yを前述の式F2及びF3によって(すると、平均伝搬角度θmoyは式F6により特定される)、又は次式F7及びF8によって直接特定するようにプログラムされる:
【数7】
=cmoy(z).t.(α.cmoy(z))(F8)。
【0081】
この第一の方法において、水中環境中のそれぞれの複数の深度zについて平均速度cmoy(z)により示される幾つかの値を収集する音の平均速度プロファイルは、処理ユニット18のメモリの中に事前に記録される。
【0082】
この事前記録された平均速度プロファイルと測定データt=τ/2及びαに基づいて、処理ユニット18は、式F7を満たす深度zを(例えば、後述のように反復的に)探す。この深度が特定されると、点Pの側方位置yが、数量cmoy(z).t.(α.cmoy(z))(式F8)を直接計算することによって特定される。
【0083】
この方法の予備段階中に、平均速度cmoy(z)のプロファイルが測定され、その後、処理ユニット18のメモリに記録される。この予備段階中に、ゾンデの深度zにおける音波の局所伝搬速度cを測定するようになされたセンサを備えるプローブが水中環境E中の幾つかの深度に連続的に位置決めされる。したがって、局所伝搬速度のプロファイルc(z)が調査される。代替案として、このゾンデは例えば、ゾンデの深度における水温及び塩度を特定するようになされたセンサを備えることもでき、すると、この数量によって検討対象深度における局所伝搬速度c(z)を特定することができる。
【0084】
その後、平均速度cmoy(z)のプロファイルは、それ以前に調査された局所伝搬速度プロファイルc(z)に基づいて、数値積分によって式F5により特定される。
【0085】
図7Aは、0~2500メートルに含まれる深度(メートルで表される)について測定される局所伝搬速度プロファイルc(z)(メートル毎秒で表される)の例を示す。この例でわかるように、この深度範囲にわたる深度zに伴う局所伝搬速度cの変化は20%に達するかもしれない。したがって、本願に当てはまるように、これらの変化が測定された伝搬時間の分析中に考慮されることが事実上、望ましい。
【0086】
図7Bは、図7Aの局所伝搬速度プロファイルc(z)から推測された平均速度cmoy(z)(メートル毎秒)のプロファイルを示す。この例は、深度z(メートルで表される)に伴う平均速度cmoy(z)の変化は、深度に伴う局所伝搬速度c(z)の変化より漸進的であることを明瞭に示している。実際、式F5に対応する数値積分演算は、ローパスフィルタの効果を有する。これは、伝搬速度c(z)の特定の急速な変化のほか、この速度の測定に影響を与える異なるノイズを排除する。したがって、音の局所伝搬速度プロファイルc(z)に基づくのではなく、平均速度プロファイルcmoy(z)に基づいて測探点の深度を特定することによって、これらのノイズを排除し、これらの深度の特定の精度を高めることが可能となる。
【0087】
ここで、それが式F7を満たすような方法で測探点Pの深度zを特定することを可能にする反復的方法の例を説明する。
【0088】
この方法は、深度zの推定zP,iと、対応する平均速度cmoy(z)の推定cmoy,iを特定するステップを含む。この推定ステップは、連続的に何度か反復的に実行される。
【0089】
このステップのi番目の実行中に、平均速度の新たな推定cmoy,iが、深度zの前回の推定zP,i-1に基づき、及び事前記録された平均速度プロファイルに基づき、次式F9によって特定される:
moy,i=cmoy(zP,i-1)(F9)。
【0090】
すると、式F7において深度zの新たな推定zP,iが、平均速度cmoy(z)をその推定cmoy,iに置き換えることによって特定される:
【数8】
【0091】
この反復的方法は例えば、平均速度の初期推定cmoy,1=cmoy(z=0)から始まる。
【0092】
当該の推定ステップの連続的実行は、平均速度の2回の連続する推定cmoy,i+1及びcmoy,i間の偏差|cmoy,j+1-cmoy,i|がある閾値より低くなったときに停止する。実際に、この閾値は、例えば1メートル毎秒~1ミリメートル毎秒の間に含めることができる。代替案として、この推定ステップの連続的実行は、深度zpの2回の連続する推定zP,i+1とzP,i間の相対偏差がある必要な精度より低くなったときに停止できる。
【0093】
図8は、測探点Pの実際の深度と前述の水中環境Eの1層モデル(この環境が、伝搬が直線である有効均一層により表されるモデル)に基づいて特定された深度zとの間の偏差を表す誤差εを概略的に示す。この誤差εは、200メートルの測探点の深度についての受信角度θの正弦の関数として表される。
【0094】
測探点Pの実際の側方位置とこのモデルに基づいて特定されたその側方位置yとの間の偏差を表す誤差ε図8に示されている。
【0095】
この図に示される2つの誤差ε及びεは、図7Aの伝搬速度プロファイルc(z)に基づく数値シミュレーションにより特定されている。その目的のために、異なる初期伝搬速度で発射される音波が辿るそれぞれの経路は、200メートルの深度まで、段階的な回折(層ごと)を考慮することによって特定されている。このシミュレーションによって、このような経路を辿る音波について実際に測定されたであろう伝搬時間tを特定し、その後、そこからこの伝搬時間tに基づいて処理ユニットにより実際に特定されたであろう深度z及び側方位置yを推測することが可能となっている。誤差εは、深度測定のこのシミュレーションから得られた深度zと使用された基準深度である200メートルとの間の偏差と等しい。誤差εは、処理ユニットにより特定されたであろう側方位置yと層ごとに段階的に行われた検討対象の音波経路のプロットから得られる側方位置との間の偏差と等しい。このシミュレーションは、0~60度に含まれる受信角度θの値について(及びしたがって、0~約0.85に含まれるsin(θ)の値について)行われている。
【0096】
この図からわかるように、受信音波が鉛直に関して大きく傾斜していても(それらの軌跡が回折によって強く曲げられる状況)、誤差ε及びεは小さいままであり、これらの誤差は5センチメートル未満のままであり、それに対して測探深度は200メートルである。30度未満の受信角度に関して、これらの誤差は3ミリメートルよりはるかに小さい。
【0097】
したがって、この例において、処理ユニット18により実行される特定方法により、非常に確実で正確な深度及び側方位置の値が得られ、それと同時に、音波が辿る経路の点ごとのプロットに基づく特定に関するこれらの数量の数値特定が大幅に簡単になることがわかる。
【0098】
この1層モデルにより正確な結果が得られるということは、以下の理論的議論により一部説明できる。
【0099】
まず、地震測定分野において、震源と受信器との間の地震波伝搬時間tは、次式F11により良好な近似値で得られることが知られている:
【数9】
式中:
-yは、検討対象震源地点と受信器との間の、鉛直に関する側方偏位を示し、
-tvertは、地震波が、検討対象の震源地点の深度zから受信器のそれまで垂直に伝搬するのにかかる時間(式F5の提示中に前述した数量)であり、
-cRMSは、地震波が辿る経路に沿った二乗平均平方根速度である:
【数10】
【0100】
この式(例えば、“Geophysical Signal Processing”,E.A.Robinson,T.S.Durrani and L.G.Peardon,Prentice Hall,1986,ISBN 0133526674の第5章において述べられている)は通常、地震測定の分野において、異なる受信信号を一時的に整列させて、その後、これらの信号を合算し、平均効果により信号対ノイズ比を改善するために使用される。
【0101】
この例として、「垂直」伝搬の時間、tvertは、深度zをこの深度zと表面との間の局所伝搬速度cの調和平均cH(Z)で割ったものと等しい:
【数11】
【0102】
さらに、水中環境では、地質学的環境と異なり、調和平均速度cは二乗平均平方根速度cRMSに非常に近い。例えば、その伝搬速度プロファイルが図7Aでプロットされている本明細書での検討対象の水中環境Eの場合、調和平均速度cと二乗平均平方根速度cRMSとの間の差は、検討対象の深度範囲全体について、毎秒2センチメートル未満のままである。さらに、この水中環境では、調和平均速度cと算術平均速度
【数12】
もまた相互に非常に近く、これは、それらが以下の関係により二乗平均平方根速度cRMSに結び付けられるからである:
【数13】
(二乗平均平方根速度は調和平均速度の、及び算術平均速度の幾何学平均と等しい)。
【0103】
したがって、液体媒質において行われる測定の場合、良好な近似値で:
【数14】
となる。
【0104】
ここで、前述の1層伝搬モデルでは、伝搬時間tは以下の関係により測探点の深度z及び側方位置yに結び付けられる:
【数15】
式中、cmoyは検討中の1層における有効平均速度である。
【0105】
この伝搬モデルが伝搬時間tと座標z、yとの間の実際の物理的つながりをよりよく表すことができるようにするために、実際にこれは、平均速度cmoy(z)について、前述の調和速度cを選択することによって、すなわち前述のようにパラメータ化しなければならない:
【数16】
【0106】
さらに、“Approximate Methods For Ray Tracing”,M.J.Daintith,SaclantCen Conference proceedings No.5,September 1971において示されている特定の結果を延長し、調整することによって、本発明者は以下の結果を実証した:
【数17】
であるε(z)での一次伝搬式を展開することにより、以下の式が導かれる:
【数18】
及び
【数19】
式中、
【数20】
である。
【0107】
次に、これらの式の
【数21】
及び
【数22】
の項を無視し、一次では平均調和速度が
【数23】
と書かれることを利用して、以下の近似式が得られる:
【数24】
【0108】
これらの最後の式は、使用される平均伝搬角度が、非常に良好な近似値で、以下の式F12により定義されることを示している:
【数25】
【0109】
式F12中の調和平均速度cによって算術平均速度
【数26】
を近似することにより、以下の関係
sin(θmoy)=α.c
が得られ、それに基づいて、処理ユニット18は測探点の深度及び側方位置を特定する。上で示される近似sin(θmoy)=α.cの理論的観点からの有効性は、それによって得ることのできる結果の正確さにより帰納的にさらに正当化される(図8参照)。
【0110】
しかしながら、上記の計算は、式F12
【数27】
の近似がはるかによりよいことを示している。
【0111】
代替案として、処理ユニット18はしたがって、次式F13及びF14により各測探点Pの深度z及び側方位置yを特定するような方法でプログラムできる:
【数28】
【0112】
前述の第一の方法において、海底5の地形を表す三次元表面の異なる点の位置は、艦艇1の長さ方向の移動により、線ごとに調査される。
【0113】
代替案として、艦艇はこの方法の全体にわたり同じ位置を保持でき、すると、当該の三次元表面は、このビームを垂直に体系的に発射する代わりに、1回の発射と次の発射との間(すなわち、ステップa)の2回の連続する実行間)の発射音波ビーム30の傾斜を変化させることによって調査される。
【0114】
他の代替案として、海底の、その領域全体にわたる幾つかの点の位置を調査する代わりに、海底の1点のみの深度及び/又は側方位置を調査するようになすこともできる。
【0115】
他方で、この第一の方法は海底の部分以外の水中要素、例えば魚、魚群、又は魚群の一部等の深度及び/又は側方位置を特定するために使用できる(この方法はしたがって、水深プロファイルを特定するためだけの方法ではない)。このような要素の深度及び/又は側方位置は、海底のある点について上で説明したものと同様に特定される。
【0116】
第二の方法:水深プロファイルの特定及び水深調査自体に基づく音波の平均速度プロファイルの特定
この第二の方法では、第一の方法と同様に、海底の異なる点の深度が、前述の1層モデル(1有効層モデル(one-effective-layer model))に基づいて伝搬時間速度測定から特定される。
【0117】
しかしながら、本明細書で、第一の方法と異なり、水中環境E中の搬時間測定の分析中に介入する(intervenes)平均速度プロファイルcmoy(z)は、ソナーシステム10のメモリの中に事前記録されない(これは深度調査の前に測定されない)。
【0118】
この第二の実施形態において、海底のある点の深度は、ソナーシステム10と測探点との間の少なくとも2つの異なる伝搬時間測定の比較により、平均速度プロファイルが事前にわかっていない状態で特定され、これら2つの測定はソナーシステム10の2つの異なる位置について(及びしたがって、受信音波の2つの異なる傾斜について)行われる。
【0119】
これら2つの伝搬時間の比較により、検討対象の点Mの深度zにおける平均速度値cmoy(z)を特定することがさらに可能となる。
【0120】
図9及び10は、一連の伝搬時間測定が行われる方法を概略的に示し、これは、これらの測定値を相互に比較することにより:
-ここでは艦艇1の長さ方向軸xに平行な測定線に沿って位置する海底の幾つかの点M、M’、M’’のそれぞれの深度と、
-この環境における平均速度cmoyの対応する値
を特定できる。
【0121】
艦艇1の第一の位置O1についてのこの一連の測定中に、第一のアンテナ13は図3に関して前述したビーム30等の横方向の音波ビーム40を発射する。このビームは本明細書では、ソナーシステム10の下に垂直に発射される。このビームにより画定される、横方向軸yに平行な平均平面は、ソナーシステム10から下に垂直に延びる。このビームは、長さ方向軸xに垂直な、海底の細い帯状領域42に到達する。この発射に応答して、第二のアンテナ14はこの帯状領域42の要素で反射した音波を受信し、第二のアンテナ14のトランスデューサ16は対応する受信信号を取得する。これらの信号に基づき、処理ユニット18は特に、これら音波の1つがソナーシステム11の直下に位置する海底の点Mまで伝搬するのにかかった第一の伝搬時間tM.1を特定する(この例では、この音波は垂直な直線経路41に沿って、したがってゼロである第一の伝搬定数αM.1で伝搬する)。
【0122】
次に艦艇1はその長さ方向軸xに平行に他の中間位置まで移動する。これらの位置の各々において、ソナーシステム11は、ソナーシステム11とこのシステムの直下に位置する海底の点M’、M’’、...との間の伝搬時間tM’,1、tM’’,1、...を、第一の位置O1について上述したように特定する。
【0123】
次に、艦艇1は第二の位置O2まで移動する。この第二の位置において、第二のアンテナ14は長さ方向の音波ビーム50を送信し、それはその平均平面が長さ方向軸xに平行な薄い層として伝搬する(第二のアンテナ14はこの軸に垂直に延びるため)。したがって、このビームは海底の細い帯状領域52に到達し、これは今度は長さ方向軸xに平行である(それに垂直ではない)。この発射に応答して、第一のアンテナ13はこの帯状領域52の要素で反射した音波を受信し、第一のアンテナ13のトランスデューサ15は対応する受信信号を取得する。これらの信号に基づき、処理ユニット18はすると、
-異なる受信音波がソナーシステム11からこの長さ方向ビーム50の発射により測探される海底の点M、M’、M’’(長さ方向軸xに平行な前述の測定線に沿って分散される点)まで伝搬するのにかかった第二の伝搬時間tM,2、tM’,2、tM’’,2、...と、
-これらの音波の伝搬定数である第二の伝搬定数αM,2、αM’,2、αM’’,2、...
を特定する。
【0124】
したがって、この測定線に沿って位置する各点M、M’、M’’の深度は:
-1回目に(第二の位置O1から)、垂直に伝搬する音波によって、次に、
-2回目に(第二の位置O2から)、その伝搬方向が鉛直に関して傾斜された音波によって(この第二の測定中、点Mの位置を測探する音波が辿る経路51はしたがって、図10に示されるように回折により曲げられる)
測探される。
【0125】
その後、この点の深度は処理ユニット18により、この第一の測定値とこの第二の測定値を相互に比較することによって特定される。
【0126】
その目的のために、処理ユニット18はまず、検討対象点Mの深度zにおける平均速度値cmoy(z)を、第一の伝搬時間tM,1、第二の伝搬時間tM,2、及び第二の伝搬定数αM,2に応じて特定する。
【0127】
次に、処理ユニット18は点Mの深度zをこの平均速度値に基づいて特定する。
【0128】
より正確には、処理ユニット18は、平均速度値cmoy(z)を、
-第一の伝搬時間tM,1に基づいて特定される深度zの第一の推定zM,1と、
-第二の伝搬時間tM,2と第二の伝搬定数αM,2に基づいて特定される深度zの第二の推定zM,2
との間の二乗平均平方根偏差εが最小である(又は少なくとも閾値より低い、例えば10センチメートルより低い)値である平均速度値cmoy(z)を特定し、これら2つの推定の各々は、この同じ平均速度値cmoy(z)に基づいて特定される。そのため:
【数29】
となる。
【0129】
第一の推定zM,1と第二の推定zM,2は各々、式F2及びF6により、又は式7により上述の1層モデルに基づいて特定され、すなわち、
【数30】
である。
【0130】
本明細書に記載の第二の方法の特定の実施形態において、二乗平均平方根偏差εの最小化(ここでは、この偏差をゼロにする量)は、次式F16にしたがって点Mでの平均速度cmoy(z)を特定することにつながる:
【数31】
【0131】
処理ユニット18は例えば、式F16により、又は二乗平均平方根偏差εを最小化する値cの数値調査により(式F15による)平均速度cmoy(z)を特定できる。
【0132】
この方法において、それぞれ第一のアンテナ13によって第二の位置O2から受信された異なる音波に関連付けられる異なるデータペア(αM,2,tM,2)、(αM’,2,tM’,2)、(αM’’,2,tM’’,2)、の中で、第一の位置O1から測探されたものと同じ点Mにより反射された音波に対応する1つ(αM,2,tM,2)を識別しなければならない(この方法は、同じ点の深度の2つの異なる推定の比較に基づくため)ことに留意されたい。その目的のために、処理ユニット18は例えば、これらのデータペアから、検討対象のデータペア(α,t)に応じて(例えば、式
【数32】
により)特定された側方偏位xが第一の位置O1を第二の位置O2から分離する距離(例えば、艦艇1上に取り付けられたGPSシステム又はログ等の位置特定システム2によりわかっている距離)に最も近い1つを選択できる。
【0133】
図11は、海底が平坦で、深度200メートルにある状況における2つの深度推定zM,1及びzM,2(メートルで表される)間の偏差εの値を、調整される可変値c(メートル毎秒)に応じて概略的に示す。そこからこれらの深度推定zM,1及びzM,2が導出される第一及び第二の伝搬時間及び第二の伝搬定数の値はここで、図8に関して先に説明したように、数値シミュレーションにより得られる。
【0134】
この図からわかるように、この状況において、偏差εの最小値がc=1510.8メートル毎秒で得られる。ここで、検討対象の水中環境Eにおいて、深度200メートルでの平均速度cmoyの値は、1510.7メートル毎秒である。これは、この方法が実際に、幾つかの水深測定値を比較することによって測探環境E中のこの平均速度の実際の値に極めて近い平均速度の値を特定できることを示している。
【0135】
図12はさらに、水深調査自体から特定される、10~150メートルに含まれる異なる深度z(メートルで表される)についての平均速度cmoyの幾つかの値(これらの値はメートル毎秒で表され、このグラフ上で星印としてプロットされている)と、同じ深さについての平均速度の基準値cmoy ref(連続線として表される)を示す。水深調査自体から導出される平均速度値は、海底の深度が3キロメートルの長さにわたり10メートルから150mまで漸進的に変化する状況で、前述のように数値シミュレーションにより得られる伝搬時間から特定される。この図は再び、水深調査から推測される平均速度値がこの速度の基準値に非常に近いことを示している(これらの基準値cmoy,refは、局所伝搬速度の基準プロファイルcref(z)の積分により得られる)。
【0136】
したがって、第二の方法により、各測定深度についてリアルタイムの水深測定値と平均速度値の推定を得ることが可能となる。したがって、平均速度プロファイルは異なる深度について得られた平均速度値から得られる。
【0137】
さらに、この第二の方法の実行中、処理ユニット18が音波の局所伝搬速度プロファイルc(z)を、前述のように特定された平均速度プロファイルcmoy(z)から(すなわち、相互に比較される幾つかの水深調査から)特定するようになされてもよい。
【0138】
その目的のために、深度zでの局所伝搬速度c(z)は、例えば、以下の反転公式F17(式F5から推測される)により特定できる:
【数33】
【0139】
図13は、10~150メートルに含まれる異なる深度z(メートルで表される)についてそのように特定された局所伝搬速度プロファイルc(z)(メートル毎秒で表される)を概略的に示す。これらの同じ深度について、この図はまた、局所伝搬速度の基準プロファイルcref(z)も示す(この基準プロファイルは、それらが例えば異なる深度に連続的に設置されたゾンデにより測定されたであろう局所伝搬速度値を収集し、このプロファイルはここで、10~150メートルの範囲に分散された幾つかの深度についてしかわからず、したがって、区分的一定偏差の破線プロファイルを示す)。これら2つのプロファイルは相互に非常に近く(これら2つのプロファイルの相対偏差は1000分の0.5より低いままである)、これは、このような水深測定の比較による局所伝搬速度プロファイルc(z)の特定方法によって、確実で正確な結果が得られることを示す。
【0140】
したがって、局所伝搬速度プロファイルc(z)がリアルタイムで、水深調査自体と同時に得られる。
【0141】
しかしながら、式F17において、分母にある導関数dcmoy(z)/dzは、効果のために(for effect)、平均速度プロファイルcmoy(z)に影響を与える可能性のあるわずかなノイズ又は数値誤差を増幅しなければならない可能性がある点に留意されたい。
【0142】
それに対処するために、処理ユニット18は例えば、後述するような補正手順を実行できる。
【0143】
例えば、間隔[z,z]の一定の局所伝搬速度を前提として、それをcと呼び、zでの平均速度測定値cmoy(z)及びzでの平均速度値cmoy(z)は以下の通りとなる:
【数34】
【0144】
より一般的には、局所伝搬速度プロファイルc(z)は、検討対象深度間隔[z,z]にわたり線形に変化すると仮定され得る:z∈[z,z]の場合、c(z)=c+g(z-z)。
【0145】
すると、この速度プロファイルを特徴付ける2つの可変値c1及びgの値は、処理ユニットにより、以下の費用関数FCを最小化する値として特定される:
【数35】
式中、和Σは、それについて平均速度cmoy(z)が特定された間隔[z,z]の異なる深度zに関する。
【0146】
様々な代替案が上述の第二の方法に適用されてよい。
【0147】
第一に、第一の伝搬時間tM,1の測定は、その伝搬方向が鉛直に関して傾斜された音波(前述の例示的実施形態の場合に当てはまる、垂直の伝搬ではない)により行うことができる。この場合、点Mにおける平均速度値cmoy(z)は、第一及び第二の伝搬時間tM,1、tM,2並びに第二の伝搬定数αM,2に加えて、この第一の音波が伝搬する場合の第一の伝搬定数αM,1を考慮することによって特定される。この代替案の範囲内で、深度zの第一の推定zM,1は例えば、
【数36】
と等しいものとして特定される(c及びtM,1のみに応じて特定されるのではない)。平均速度値cmoy(z)に関して、ここでもまた、これは二乗平均平方根偏差εを最小化するような方法で、(又は少なくともそれがある閾値より小さくなるような方法で)特定される。
【0148】
他の代替案として、この第二の方法では、ソナーシステムと海底の同じ点Mとの間の伝搬時間tM,iをソナーシステムの3つ以上の異なる位置について測定するようになすことができる。これらの位置の各々Oについて、ソナーシステムはすると、上述の伝搬時間tM,1に加えて、点Mの深度を測探した音波の伝搬定数αM,1を特定する。
【0149】
次に、点Mにおける平均速度値cmoy(z)が処理ユニット18により、それに関して、各々が前記位置Oの1つで測定されたペア(αM,i,tM,i)の1つに基づいて特定される深度zの推定zM,iの集合の散らばりを表す総合偏差ε’が最小である(又は、前述の閾値より低い)値であるものとして特定される。
【0150】
総合偏差ε’は例えば、この推定の集合の標準偏差若しくは分散又は2つずつとったこれらの推定間の二乗平均平方根偏差の和と等しくすることができる。これらの推定の各々は、上述のように、前述の1層モデルに基づいて(及び、したがって例えば式F7により)特定される。
【0151】
例えば、3つの伝搬時間測定tM,1、tM,2、tM,3が行われて点Mの位置特定をする場合、ソナーシステムの3つの異なる位置について、この総合偏差ε’は以下のように定義できる:
ε’=[zM,1(tM,1,αM,1,c)-zM,2(tM,2,αM,2,c)]+[zM,2(tM,2,αM,2,c)-zM,3(tM,3,αM,3,c)]+[zM,3(tM,3,αM,3,c)-zM,1(tM,1,αM,1,c)]
【0152】
第三の方法:水中ビーコンの位置の特定
この第三の方法では、水中ビーコン3の送信器4が音波を発射し、これはその後、ソナーシステム10により受信される(図14及び15)。
【0153】
すると、ソナーシステム10の処理ユニット18はソナーシステム10に関するこのビーコン3の位置を:
-ソナーシステムによるその受信時に測定されるこの音波の伝搬定数αに基づき、また検討中の実施形態によれば、さらに、
-この音波がこの送信器4からソナーシステム10まで伝搬するのにかかった伝搬時間t
に基づいて特定する。
【0154】
本明細書での当該の音波は片道の移動を行うのに対し、第一及び第二の方法で発射される音波は(エコーのように)往復移動する点に留意されたい。したがって、伝搬時間tはこの音波の発射時間とこの音波の受信時間とを隔てる持続時間と等しい(この持続時間の半分と等しいのではない)。
【0155】
何れにせよ、このビーコン3の位置はここでは再び、前述の1層伝搬モデルに基づいて、平均速度cmoy(z)のプロファイルに応じて特定される。この第三の方法において、このプロファイルは処理ユニット18のメモリの中に事前記録される。
【0156】
他方で、この第三の方法では、第一及び第二のアンテナ13及び14はどちらも受信モードで使用される。
【0157】
発射された音波がビーコン3とソナーシステム10との間で辿る経路61は、送信器4の中心Bを通り、ソナーヘッド11の中心Oを通過する伝搬Plの垂直平面内にある。
【0158】
この音波の受信点Oにおける第二の音波伝搬方向は:
-伝搬平面Plの中の、この伝搬方向と鉛直zとの間に成されるその受信角度θ及び、
-伝搬平面Plと平面(x,y)(長さ方向軸xに平行な垂直平面)との間に成される指示角φ
によって位置特定される。
【0159】
音波の伝搬定数αは、前述のように、受信角度θの正弦を受信アンテナ13及び14の深度における音波の局所伝搬速度cで割ったものと等しい。処理ユニット18は、特に、伝搬定数αを、この音波の受信中に第一のアンテナ13及び第二のアンテナ14のトランスデューサ15、16により感知された受信信号に基づいて特定するようにプログラムされる。
【0160】
この例において、距離dだけ分離された第一のアンテナ13の2つのトランスデューサ15により出力された2つの受信信号間の時間オフセットΔtは、Δt=d.α.cos(φ)で求められる。それと比較して、距離dだけ分離された第二のアンテナ14の2つのトランスデューサ16により出力された2つの受信信号間の時間オフセットΔtは、Δt=d.α.sin(φ)で求められる。受信音波の伝搬定数α及び量α.cos(φ)及びα.sin(φ)はすると、これらの時間オフセットに基づいて得ることができる。伝搬定数は、例えば量
【数37】
を計算することによって特定される。
【0161】
この第三の方法の第一の実施形態において、処理ユニット18は、ソナーシステムに関する送信器4の中心Bの位置を、伝搬定数αと伝搬時間tの両方に基づいて特定する。
【0162】
この第一の実施形態は、ビーコン3とソナーシステム10が同じ共通の時間基準を共有する状況に適応され、それによって処理ユニット18は伝搬時間tを特定することができる(ソナーシステムとビーコンは各々、例えばクロックを有し、これらの2つのクロックは正確に相互に同期される)。
【0163】
この第一の実施形態において、処理ユニット18は、以下のように、ソナーシステム10に関連付けられる座標系x,y,zの中でビーコン3の位置を特定する座標x,y,zを特定する。
【0164】
まず、深度z及び対応する平均速度が、次式を解くことによって特定される:
【数38】
【0165】
その後、「水平」座標x,yが次式により特定される:
【数39】
【0166】
処理ユニット18はさらに、ビーコンが固定された座標系内のビーコン3の位置を地球座標系X,Y,Zとして特定するようにプログラムできる。そのために、処理ユニット18は、地球座標系で特定される艦艇1の位置をこの艦艇に取り付けられた位置特定システム2によって取得し、艦艇1はビーコン3により発射された音波の受信中、同じ位置にある。すると、ビーコン3の位置は地球基準システム内の艦艇1の位置及びソナーシステム10に関するビーコンの位置(x,y,z)に応じて特定される。
【0167】
この第三の方法の第二の実施形態において、処理ユニット18は、ソナーシステム10に関する送信器4の中心Bの側方位置(x,y)を、受信音波の伝搬定数α及びそれ以前にわかっているビーコンの深度z’に基づいて特定する。
【0168】
この深度z’は、例えばこの深度を表すデータがビーコン3からソナーシステム10へとビーコンにより発射された音波を通じて発信されているため、処理ユニット18により知られる。
【0169】
この第二の実施形態により、有利な点として、ソナーシステム10とこのビーコン3が共通の時間基準を共有していなくても、ビーコン3の位置を特定することが可能となる。
【0170】
水平面(x,y)内の送信器4の中心Bの側方位置を特定する座標x,yは各々:
-送信器4、z’と、ここではゼロと考えられるソナーヘッドの深度との差と、
-(第一の方法の説明の中で)先に定義された平均伝搬角度θmoyの正接
の積に応じて特定される。
【0171】
この平均伝搬角度θmoyの正接tan(θmoy)は、受信音波の伝搬定数α及び送信器4の深度z’における平均速度cmoy(z’)に応じて特定される:
【数40】
【0172】
この第二の実施形態では、すると、処理ユニット18は例えば次式により座標x,yを特定する:
【数41】
【0173】
代替案として、しかしながら、平均伝搬角度θmoyの正接は、(調和)平均速度cmoy(z’)に応じて特定されるのではなく、算術平均速度
【数42】
に応じて特定できる。この場合、平均伝搬角度θmoyの正接は次式により特定される:
【数43】
【0174】
さらに、第一の実施形態と同様に、処理ユニット18はさらに、ビーコンが固定された座標系、例えば地球座標系X,Y,Zにおいてビーコン3の位置を特定するようにプログラムできる。
【0175】
この第三の方法は本明細書では水中ビーコンの位置に適用されているものの、これは音波を発射する他の水中システム、例えば前述の艦艇1とは異なる潜水艦の位置の特定及び、検討中の実施形態が何であっても適用されてよい点に留意されたい。
【0176】
様々な代替案が上述の方法及びソナーシステムに適用されてよい。
【0177】
まず、ソナーシステムは、水上艦艇ではなく、潜水可能艦体にも、この艦艇が自律航行型か無人型かを問わず、取り付けることができる。
【0178】
この場合、特定されるのは、直接的に海底のある点の深度又は位置特定されるビーコンの送信器の深度ではなく、海底のこの点の(又はこの送信器の)深度zとソナーシステム10の受信アンテナの深度zとの間の差Δz=z-zである。
【0179】
第一、第二、及び第三の方法はすると、操縦ユニット17及び処理ユニット18によって前述のものと全体的に同様に、ただし次式により平均速度cmoy(z)を特定することによって:
【数44】
及び、任意選択により、次式により算術平均速度を特定することによって:
【数45】
実行される。
【0180】
他方で、測探点の、又は送信器のビーコンの位置を特定するために使用される1層モデルは、前述のものとは若干異なる方法でパラメータ化できる。それゆえ、例えば、平均伝搬角度θmoyは、sin(θmoy)=α.cmoy(z)である(又は、代替的に、
【数46】
である)前述の(最適)ケースに関してわずかな相対偏差を示す可能性がある。しかしながら、この相対偏差は1000分の1(すなわち、0.001)未満に保たれることが好ましく、なぜなら、それによって処理ユニットにより特定される深度及び側方偏位について、前述のものに匹敵する程度に高い精度に保つことが可能となるからである。
【0181】
さらに、前述のように、ソナーシステムはより単純な構造を有することができ、それは例えば、その受信器(例えば、少なくとも4個)がλ/2(λは発射される音波の平均波長)だけ離間され、「ミルズクロス」に配置された2つの完全なマルチセンサリニアアンテナの代わりに、相互に整列していない最低3つの受信器で構成されるラクナ受信システム(その受信器はλ/2より大きく離間される)を含むことができる。この場合、角度アンビギュイティは、例えば広帯域信号(そのスペクトルコンテンツは広い周波数バンドにわたる)を発することによって解消(すなわち、排除)できる。
【0182】
他の代替案として、コマンド、操縦、及び処理ユニットは同じ電子ユニットとして製作でき、又はそれと反対に、前述のものより多い数のモジュールにさらに分割することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15