(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】生体認証装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1174 20160101AFI20231124BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B5/1174
A61B5/11 210
(21)【出願番号】P 2021518344
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2020017544
(87)【国際公開番号】W WO2020226067
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019087721
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】臼井 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武徳
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-002907(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188418(WO,A1)
【文献】特開2002-233517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裸足またはそれに準ずる状態の人が歩行する地面に敷設され、右足の足底および左足の足底と接触するシート状センサと、
前記人が前記シート状センサの上で静止したとき、もしくは歩行中に生成される前記シート状センサの出力にもとづき、前記右足または左足の中足骨の下の接地部分の内側に位置する第1点、外側に位置する第2点および踵骨の下の接地部分に位置する第3点にもとづく特徴量を導出する特徴量取得部と、
前記特徴量にもとづいて前記人を認証する認証部と、
を備えることを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記第1点から前記第3点の座標を含むことを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記特徴量は、前記第1点から前記第3点がなす三角形により記述されることを特徴とする請求項1または2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記特徴量は、前記人が前記シート状センサの上を1歩進んだときの、前記右足の前記第1点から前記第3点と、前記左足の前記第1点から前記第3点と、にもとづいて生成されることを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記右足、前記左足それぞれの前記第1点から前記第3点の座標を含むことを特徴とする請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記特徴量は、
前記右足の前記第1点と前記左足の前記第1点を対角の頂点とする第1四角形、
前記右足の前記第2点と前記左足の前記第2点を対角の頂点とする第2四角形、
前記右足の前記第3点と前記左足の前記第3点を対角の頂点とする第3四角形、
により記述されることを特徴とする請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記特徴量は、前記第1四角形、前記第2四角形、前記第3四角形それぞれの縦の長さおよび横の長さを含むことを特徴とする請求項6に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記シート状センサは、感圧センサであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の生体認証装置。
【請求項9】
前記特徴量は、前記第1点から前記第3点の少なくともそれらのひとつについて測定された加重の情報を含むことを特徴とする請求項8に記載の生体認証装置。
【請求項10】
前記特徴量取得部は、測定された加重にもとづいて、第1点から第3点に関連する幾何学的な特徴量を補正することを特徴とする請求項8に記載の生体認証装置。
【請求項11】
前記特徴量は時間的な情報を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の生体認証装置。
【請求項12】
前記特徴量は、前記右足と前記左足の一方が着地してからそれらの他方が着地するまでの時間情報を含むことを特徴とする請求項11に記載の生体認証装置。
【請求項13】
前記特徴量は、前記第1点から前記第3点のうち少なくとも2点が着地するタイミングに関する情報を含むことを特徴とする請求項11に記載の生体認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人を特定する生体認証技術に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋認証や瞳の虹彩認証、指の静脈認証、声紋、顔形、筆跡など、人間の身体的特徴にもとづく生体認証が広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4609640号公報
【文献】特開平10-106384号公報
【文献】特許第6299147号公報
【文献】特開平5-324955号公報
【文献】特開平5-324955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの認証は、認証プロセスを人が意識した状態で行われる点で共通している。たとえば、指紋認証や静脈認証では、認証を受ける人が、指をセンサに意図的に接触させる必要があり、虹彩認証では、認証を受ける人が瞳をセンサの正面に固定する必要がある。
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、人に意識させずに認証を完了できる認証方式の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、生体認証装置に関する。生体認証装置は、裸足またはそれに準ずる状態の人が歩行する地面に敷設され、右足の足底および左足の足底と接触するシート状センサと、人がシート状センサの上で静止したとき、もしくは歩行中に生成されるシート状センサの出力にもとづき、右足または左足の中足骨の下の接地部分の内側に位置する第1点、外側に位置する第2点および踵骨の下の接地部分に位置する第3点にもとづく特徴量を導出する特徴量取得部と、特徴量にもとづいて人を認証する認証部と、を備える。
【0007】
特徴量は、第1点から第3点の座標を含んでもよい。
【0008】
特徴量は、第1点から第3点がなす三角形にもとづいて記述されてもよい。
【0009】
特徴量は、人がシート状センサの上を1歩進んだときの、右足の第1点から第3点と、左足の第1点から第3点と、にもとづいて生成されてもよい。
【0010】
特徴量は、右足、左足それぞれの第1点から第3点の座標を含んでもよい。
【0011】
特徴量は、右足の第1点と左足の前記第1点を対角の頂点とする第1四角形、右足の第2点と左足の第2点を対角の頂点とする第2四角形、右足の第3点と左足の第3点を対角の頂点とする第3四角形、にもとづいて記述されてもよい。
【0012】
特徴量は、第1四角形、第2四角形、第3四角形それぞれの縦の長さおよび横の長さを含んでもよい。
【0013】
シート状センサは、感圧センサであってもよい。特徴量は、少なくとも第1点から第3点のひとつについて測定された加重の情報を含んでもよい。
【0014】
特徴量取得部は、測定された加重にもとづいて、第1点から第3点に関連する幾何学的な特徴量を補正してもよい。
【0015】
特徴量は時間的な情報を含んでもよい。特徴量は、右足と左足の一方が着地してからそれらの他方が着地するまでの時間情報を含んでもよい。特徴量は、第1点から第3点のうち少なくとも2点が着地するタイミングに関する情報を含んでもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、人が無意識に歩行している最中に認証できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る生体認証装置を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、人間の足の骨格を示す図であり、
図2(b)は、足底の主たる接地部分を示す図である。
【
図3】
図3(a)~(d)は、特徴量の一例を説明する図である。
【
図4】歩行中に取得可能な特徴量を説明する図である。
【
図5】人が静止したときに両足に関して得られる特徴量を示す図である。
【
図6】人が歩行しているときに両足に関して得られる特徴量を示す図である。
【
図7】歩行時の特徴量の記述の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
図1は、実施の形態に係る生体認証装置100を示す図である。生体認証装置100は、シート状センサ110、特徴量取得部120、認証部130を備える。シート状センサ110は、裸足またはそれに準ずる状態の人2が歩行する地面や床に敷設され、右足4の足底と左足6の足底と接触する。「裸足に準ずる」とは、靴下や足袋、ストッキングなどを履いた状態を含み、後述する足の特徴量の取得を妨げない状態をいう。
【0021】
シート状センサ110は、足底の圧力が強い部分を検出可能に構成される。シート状センサ110としては、抵抗膜センサや静電容量センサなど、公知の技術を用いればよく、特に限定されない。
【0022】
図2(a)は、人間の足の骨格10を示す図であり、
図2(b)は、足底の主たる接地部分を示す図である。
図2(b)に示すように、通常、人間の足は、足底の二箇所20,22で接地する。
図2(b)の接地部分20は、
図2(a)の中足骨12の下側に位置しており、これを第1接地部分と称する。また
図2(b)の接地部分22は、
図2(a)の踵骨14の下側に位置しており、これを第2接地部分と称する。
【0023】
本発明者らが検討したところ、直立状態あるいは歩行中に、末節骨16、基節骨18は動いているが、それ以外の骨(間接)は動いていない。つまり、
図2(b)の第1接地部分20と第2接地部分22の位置関係は実質的に不変とみなすことができる。本実施の形態では、第1接地部分20と第2接地部分22の幾何学的な情報を生体認証の特徴量として利用する。
【0024】
図1の特徴量取得部120は、人2がシート状センサ110の上で静止したとき、もしくは歩行中に生成されるシート状センサ110の出力にもとづいて、
図2(b)に示す第1接地部分20および第2接地部分22の幾何学的な情報に関連する特徴量を抽出する。
図3(a)~(d)は、特徴量の一例を説明する図である。
図3(a)に示すように、第1接地部分20は、内側の第1点P1と、外側の第2点P2によって特徴付けることができる。また第2接地部分22は、その中央の第3点P3によって特徴付けることができる。特徴量取得部120は、第1点P1、第2点P2および第3点P3に関する量を、特徴量として取得する。別の観点からみると、第1点P1~第3点P3がなす三角形24を特徴量としている。
【0025】
たとえば特徴量取得部120は、第1点P1~第3点P3それぞれの座標の組み合わせを特徴量としてもよい。以下では、人2の左右方向をx軸、進行方向をy軸にとるものとする。このとき、特徴量は、P1=(x1,y1)、P2=(x2,y2)、P3=(x3,y3)のように表してもよい。
【0026】
あるいは
図3(b)に示すように、第1点P1~第3点P3がなす三角形24の3辺の長さl
1~l
3を特徴量としてもよい。
【0027】
あるいは
図3(c)に示すように、第1点P1~第3点P3がなす三角形24の3辺のうち、いずれか2辺l
1,l
2とそれらの間の角度αの組み合わせを特徴量としてもよい。
【0028】
あるいは
図3(d)に示すように、第1点P1~第3点P3がなす三角形24のいずれか一辺の長さl
1と、その両端の角度α,βの組み合わせを特徴量としてもよい。
【0029】
図1に戻る。認証部130は、特徴量取得部120が取得した特徴量にもとづいて人2を認証する。たとえば特徴量取得部120は、予め測定しておいた特徴量が登録されるデータベースを保持している。特徴量取得部120は、現在取得された特徴量が、データベースに登録されているかを、パターンマッチングによって判定してもよい。認証の方式やアルゴリズムは特に限定されない。
【0030】
シート状センサ110は、感圧センサであってもよい。この場合、第1点P1~第3点P3の少なくともひとつに関して得られた加重を、特徴量に含めてもよい。これにより、特徴量は、人2の体重などの情報を含むこととなり認証の精度を高めることができる。
【0031】
より好ましくは、第1点P1と第2点P2の加重を特徴量に含めてもよい。これにより、特徴量は、人2の姿勢に関する情報(外側加重か内側加重など)を含むこととなり、認証の精度を高めることができる。
【0032】
好ましくは、人2が静止しているときよりも、歩行中に得られるシート状センサ110の出力にもとづいて、特徴量を生成するとよい。歩行中に特徴量を生成することにより、特徴量に、第1点P1~第3点P3がなす三角形24の情報に加えて、この三角形24が進行方向に対してどれくらい傾いているか、すなわち歩行中の足の向きの情報を付加することができる。
図4は、歩行中に取得可能な特徴量を説明する図である。たとえば、進行方向に伸びる直線26と、線分P2-P3がなす角度θを、特徴量に追加してもよい。
【0033】
図3(a)~(d)、
図4の例では、片足(右足)のみについて特徴量を生成したが、両足について特徴量を取得するようにしてもよい。
【0034】
図5は、人2が静止したときに両足に関して得られる特徴量を示す図である。この場合、右足について得られる三角形24R(3点P1R~P3R)と、左足について得られる三角形24L(第1点P1L~第3点P3L)が特徴量となる。人間の足は左右で異なるため、特徴量の情報量が増え、認証精度を高めることができる。この場合において、左右の三角形24L,24Rの相対的な位置関係も、特徴量に含めてもよい。たとえば、任意の位置を原点とし、人2の左右方向にx軸、進行方向にy軸をとり、第1点P1L~P3L,P1R~P3Rの座標を特徴量としてもよい。
【0035】
図6は、人2が歩行しているときに両足に関して得られる特徴量を示す図である。右足について、三角形24R(3点P1~P3)と、左足について得られる三角形24L(第1点P1~第3点P3)が特徴量の基本的な情報となる。この例では左足が前に出た状態を示すが、その逆であってもよい。
図5の場合と同様に、人間の足は左右で異なるため、特徴量の情報量が増え、認証精度を高めることができる。
【0036】
それに加えて、左右の三角形24L,24Rの相対的な位置関係も、特徴量に含めてもよく、歩幅Δyや、左右の足の間隔(歩隔)Δx、左右それぞれの足の向きθL、θRの任意の組み合わせを特徴量に含めることができる。この場合、人2の骨格から決まる歩行のパターンを考慮した認証が可能となる。
【0037】
図6の場合においても、任意の位置を原点とし、人2の左右方向にx軸、進行方向にy軸をとり、第1点P1L~P3L,P1R~P3Rの座標を特徴量としてもよい。
【0038】
図7は、歩行時の特徴量の記述の別の一例を示す図である。たとえば特徴量は、右足の第1点P1Rと左足の第1点P1Lを対角の頂点とする第1四角形31、右足の第2点P2Rと左足の第2点P2Lを対角の頂点とする第2四角形32、右足の第3点P3Rと左足の第3点P3Lを対角の頂点とする第3四角形33、にもとづいて記述されてもよい。
【0039】
図7において、特徴量は、第1四角形31、第2四角形32、第3四角形33それぞれの縦の長さおよび横の長さにもとづいて記述されてもよい。
【0040】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0041】
(変形例1)
特徴量は、時間的情報を含んでもよい。たとえば歩行中に特徴量を取得する場合、踵が着地してから、中足部分が着地するまでの時間を、特徴量に含めてもよい。
【0042】
あるいは、右足と左足の一方が着地してから、それらの他方が着地するまでの時間情報を含んでもよい。
【0043】
(変形例2)
加重を検出可能なシート状センサ110を用いた場合において、特徴量取得部120は、測定された加重にもとづいて、第1点から第3点に関連する幾何学的な特徴量(座標や三角形、四角形に関する情報)を補正してもよい。人は、重い荷物を抱えて持つと、歩幅が狭くなったり、歩隔が開いたり、左右の足の角度が開いたりして、通常の歩行パターンとは異なる歩行パターンが観測される場合がある。そこで測定された加重にもとづいて、人が荷物を持っているか否かを判定し、荷物を持っていると推定される場合には、測定された特徴量を補正して、荷物を持っていないときの通常時の特徴量を生成し、認証を行ってもよい。補正に用いる補正式は、多数の人について、荷物を持った状態と持たない状態とで特徴量を測定し、それらの対応関係から生成してもよい。
【0044】
(用途)
生体認証装置100の用途は特に限定されないが、病院内での認証や、空港でのセキュリティチェックなどに用いることができる。
【0045】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、個人を特定する生体認証技術に関する。
【符号の説明】
【0047】
2 人
4 右足
6 左足
10 骨格
12 中足骨
14 踵骨
20 第1接地部分
22 第2接地部分
100 生体認証装置
110 シート状センサ
120 特徴量取得部
130 認証部
P1 第1点
P2 第2点
P3 第3点