(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】少なくとも一人の乗客を収容し、運ぶための可動部分組立体及び対応する集客設備
(51)【国際特許分類】
A63G 27/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A63G27/00
(21)【出願番号】P 2021525033
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2019080182
(87)【国際公開番号】W WO2020094612
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-31
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521193957
【氏名又は名称】シグマ コンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デスフラムス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ビトー,ティエリー
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-199978(JP,A)
【文献】特開2010-005316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G1/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一人の乗客を収容し、運ぶための可動部分組立体(30)であって、支持体(20)と、客室(22)と、また前記支持体(20)と前記客室(22)とに共通である基準軸(200)を中心として前記支持体(20)に対して前記客室(22)を回転誘導するためのガイド(32)とを備え、前記基準軸(200)は、前記可動部分組立体(30)が使用可能状態である場合に水平であり、前記可動部分組立体(30)には、安定化システム(36)が装備され、前記安定化システム(36)が、前記支持体(20)に強固に接続され、前記基準軸(200)を中心とする少なくとも1つの歯付きリング(38)、前記歯付きリング(38)と噛合うように前記客室(22)によって支持されている少なくとも1つの第1歯車(40)、及び前記第1歯車(40)を駆動することができる駆動手段(42)を備え、前記第1歯車(40)が、前記第1歯車(40)の上に位置している前記歯付きリング(38)のゾーンと噛合うように、前記客室(22)によって支持されている、ことを特徴とする、可動部分組立体(30)。
【請求項2】
前記第1歯車(40)が、前記基準軸(200)に平行な第1駆動軸を中心として回転するように、前記客室(22)に対して誘導され
る、ことを特徴とする、請求項1に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項3】
前記第1駆動軸(400)が、軸方向基準平面(Q)に対して、前記基準軸(200)の周りに、また前記軸方向基準平面(Q)の第1側で60°以下の角度扇形(A)に位置付けられて
おり、前記軸方向基準平面(Q)は、前記可動部分組立体(30)が使用可能状態である場合に垂直であり、回転軸を含む、ことを特徴とする、請求項2に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項4】
前記第1駆動軸(400)が、前記軸方向基準平面(Q)に位置付けられている、ことを特徴とする、請求項3に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項5】
前記第1駆動軸(400)が、前記軸方向基準平面(Q)の第1側で、前記軸方向基準平面(Q)から離れて位置付けられている、ことを特徴とする、請求項3に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項6】
前記安定化システム(36)が、前記歯付きリング(38)と噛合うように前記客室(22)によって支持されている少なくとも1つの第2歯車(140)を備え、前記第2歯車(140)が、前記駆動手段(42)によって駆動され、前記第2歯車(140)の上に位置している前記歯付きリング(38)の第2ゾーンと噛合うことができ、前記第2歯車(140)が、第2駆動軸(500)を中心として回転するように前記客室(22)に対して誘導され、前記
第2駆動軸(500)が、前記基準軸(200)に平行であり、前記軸方向基準平面(Q)に対して、前記第1側と反対側である前記軸方向基準平面(Q)の第2側で、前記軸方向基準平面(Q)から離れて、前記基準軸を中心として60°以下の角度扇形に位置付けられている、ことを特徴とする、請求項5に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項7】
前記安定化システム(36)が、前記第1歯車(40)又は前記第2歯車(140)を前記歯付きリング(38)に交互に結合させることができる結合デバイス(240)を備える、ことを特徴とする、請求項
6に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項8】
前記客室(22)には、少なくとも一人の乗客を収容するための内容積(V)があり、前記歯付きリング(38)が、前記基準軸(200)に直角である平面内の区画から見ると、前記
内容積(V)を取り囲んでいる、ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項9】
前記歯付きリング(38)に、前記基準軸(200)に面する歯部(38.1)がある、ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項10】
前記第1歯車(40)が、前記客室(22)の内側天井(28)の上に位置付けられている、ことを特徴とする、請求項
9に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項11】
前記客室(22)の冷房、暖房、又は空気調節ユニット(44)が、前記客室(22)の内側床(24)の下に位置付けられている、ことを特徴とする、請求項
9又は10に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項12】
前記歯付きリング(38)に、半径方向外方に向く歯部(38.1)があり、前記第1歯車(40)が、前記客室(22)の床(34)の下に位置付けられている、ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項13】
前記第1歯車(40)が噛合う前記歯部の前記ゾーンと、前記可動部分組立体(30)が使用可能状態である場合に、前記基準軸(200)を含み、水平である、平面(H)との間に位置している前記歯付きリング(38)の角度扇形に位置付けられている前記歯付きリング(38)をきれいにするためのデバイスをさらに備える、ことを特徴とする、請求項
9~12のいずれか1項に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項14】
前記第1歯車(40)が噛合う前記歯部の前記ゾーンと、前記可動部分組立体(30)が使用可能状態である場合に、前記基準軸(200)を含み、水平である、平面(H)との間に位置している前記歯付きリング(38)の角度扇形に位置付けられている前記噛合い部に対する障害物を検出するためのデバイスをさらに備える、ことを特徴とする、請求項
9~13のいずれか1項に記載の可動部分組立体(30)。
【請求項15】
少なくとも1つの静止構造体(12)を備える集客設備(10)であって、前記支持体(20)が固定基準枠の垂直平面にループを形成する軌道に従うように、前記静止構造体(12)に対して誘導され、また、前記垂直平面に直角であり、前記基準軸(200)に平行である固定回転軸(100)に対して、前
記軌道の一周を完了することによって、360°回転を行う、請求項1~14のいずれかに記載の少なくとも1つの可動部分組立体(30)を備える、ことを特徴とする、集客設備(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、水平面に対する角度が一定ではない軌道に従った客室における乗客の運送に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] DE476892では、静止構造体と、回転軸を中心として静止構造体に対して回転する可動構造体と、回転軸に平行な軸を中心として可動構造体に対して回転するように、可動構造体によって支持される球形客室とを備える集客設備が述べられる。可動構造体に対する各客室の回転誘導は、客室を取り囲む大径を有するベアリングによってもたらされ、そのベアリングの内側ベアリングレースは、可動構造体に固定され、その外側ベアリングレースは、客室に強固に接続される。客室は、その床が、可動構造体が回転軸を中心として低速で回転する場合にほぼ水平状態を維持するように、バラストで安定している。その軸を中心とする客室のわずかな揺れは、許容できるもので、乗客のもてなしにとっては望ましいものでさえある。
【0003】
[0003] 客室を安定させ、それらの軸を中心とするそれらの回転を制御するために、JP2010005316では、静止内側ベアリングレースに歯付きリングを固定すること、そのリングの歯が内側に半径方向に向けられること、また歯付きリングと噛合う2つの歯車を有するモータ付き駆動デバイスを各客室の床の下に設置すること、が提案される。
【0004】
[0004] しかしながら、この配置は、歯のサイズに適合する寸法を有し、歯付きリングを覆う潤滑剤によって閉じ込められる動かない異物が歯間に引っ掛かり、安定化機構を詰まらせると、不具合のリスクを与える。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本発明は、先行技術の欠点を是正し、上述の故障のリスクを与えない安定化機構を提案することを目的とする。
【0006】
[0006] これを実現するために、本発明の第1態様は、少なくとも一人の乗客を収容し、運ぶための可動部分組立体を提案し、可動部分組立体は、支持体と、客室と、また支持体と客室とに共通である基準軸を中心として支持体に対して客室を回転誘導するためのガイドとを備え、基準軸は、可動部分組立体が使用可能状態である場合に水平である。可動部分組立体には、安定化システムが装備され、安定化システムは、支持体に強固に接続され、基準軸を中心とする少なくとも1つの歯付きリング、歯付きリングと噛合うように客室によって支持される少なくとも1つの第1歯車、及び第1歯車を駆動することができる駆動手段を備え、第1歯車が、第1歯車の上に位置する歯付きリングのゾーンと噛合うように客室によって支持される、ことを特徴とする。
【0007】
[0007] 第1歯車が噛合う歯部のゾーンの下に第1歯車を位置付けることで、歯部に固まった可能性のあるあらゆる異質要素を、それが第1歯車と噛合うゾーンに達する前に重力の作用下で落ちるように仕向ける。
【0008】
[0008] 第1歯車が、基準軸に平行な第1駆動軸を中心として回転するように、客室に対して誘導されることが好ましい。この落下作用を有効にするには、第1歯車が、基準軸を含む水平平面から十分に離れている歯付きリングのゾーンと噛合うことが好ましい。第1駆動軸が、軸方向基準平面に対して、基準軸の周りの、また軸方向基準平面の第1側の60°以下の角度扇形に位置付けられ、軸方向基準平面は、可動部分組立体が使用可能状態である場合に、垂直であり、回転軸を含むことが好ましい。
【0009】
[0009] 一実施形態によれば、第1駆動軸が、軸方向基準平面に位置付けられる。この配置は、支持体に対する客室の回転方向が必ずしも同じではない場合、特に好ましいものになる。
【0010】
[0010] 別の実施形態によれば、第1駆動軸が、軸方向基準平面の第1側で、軸方向基準平面から離れて位置付けられる。この配置は、支持体に対する客室の回転方向が常に同じである場合、又は特別扱いの回転方向がある場合、特に好ましいものになる。より具体的には、第1歯車は、歯付きホイールの回転方向において軸方向基準平面の下流に位置する軸方向基準平面の側に、又は言い換えれば、第1歯車が噛合う歯部のゾーンが間隔を空ける軸方向基準平面の側に、位置付けられ得る。このようにして、所与の瞬間に第1歯車が噛合う歯部のゾーンは、その歯が、歯部に固まった可能性のあるあらゆる異物が必ず落ちるのに最も好ましい位置である下方に向く状態で、予め軸方向基準面を通ることが確実になる。
【0011】
[0011] 安定化システムは、歯車を歯付きリングに結合させ、歯車を歯付きリングから外すための結合デバイス、歯車をモータ組立体に結合させ、歯車をモータ組立体から外すためのクラッチ、及び/又は歯車を制動するためのブレーキも備え得る。
【0012】
[0012] この実施形態の変形形態によれば、安定化機構は、歯付きリングと噛合うように客室によって支持され、駆動手段によって駆動される少なくとも1つの第2歯車を備え、第2歯車は、第2歯車の上に位置する歯付きリングの第2ゾーンと噛合うことができ、第2歯車は、第2駆動軸を中心として回転するように客室に対して誘導され、第2駆動軸は、基準軸に平行であり、軸方向基準平面に対して、第1側と反対側である軸方向基準平面の第2側で軸方向基平面から離れて基準軸の周りに60°以下の角度扇形に位置付けられる。このようにして、対称システムがもたらされる。第1歯車及び第2歯車を駆動するためのモータユニットは、2つの独立したモータ又は1つのモータを備え得る。安定化システムが、第1歯車又は第2歯車を歯付きリングに交互に結合させることができる結合デバイスを備えることが好ましい。それにより、結合デバイスは、歯付きホイールの回転方向において軸方向基準平面の下流に位置する歯車のみが、歯付きホイールと噛合い、他の歯車は噛合いが外されているような歯付きリングの回転方向に基づき制御され得る。
【0013】
[0013] 一実施形態によれば、ガイドは、支持体に強固に接続される第1ベアリングリング、客室に強固に接続される第2ベアリングリング、並びに第1ベアリングリング及び第2ベアリングリング上に形成されたベアリングレース上で転がることができるベアリング本体を備える、少なくとも1つのベアリングを備え、第2ベアリングリングは、客室の内側収容容積を取り囲んでいる。
【0014】
[0014] 一実施形態によれば、客室には、少なくとも一人の乗客を収容するための内容積があり、基準軸に直角である平面内の区間から見ると、歯付きリングが内側収容容積を取り囲んでいる。
【0015】
[0015] 必要であれば、歯付きリングをきれいにするためのデバイスが、第1歯車が噛合う歯部のゾーンと、可動部分組立体が使用可能状態である場合に、基準軸を含み、水平である平面との間に位置する歯付きリングの角度扇形に位置付けられる。歯付きリングの回転方向において歯車のすぐ前に位置することが好ましい、この種のデバイスは、異物を取り除く傾向にある重力をある程度掛けるように、それが相互作用する歯部のゾーンの下に配置される。
【0016】
[0016] 一実施形態によれば、噛合いに対する障害物を検出するためのデバイスは、第1歯車が噛合う歯部のゾーンと、可動部分組立体が使用可能状態である場合に、基準軸を含み、水平である平面との間に位置する歯付きリングの角度扇形に位置付けられる。重力である場合、又は存在する場合、きれいにするデバイスが、このリングの歯付き表面上の潤滑剤に閉じ込められた異物を解放するのに不十分であると分かり、障害物を検出するためのデバイスが、障害となる異物が事実上、歯車に接触する前に、可動部分組立体を止めさせる。
【0017】
[0017] 客室には、床に直角であり、基準軸を含む客室の軸方向基準平面に位置する重心があることが好ましい。これは、安定化システムによって床の水平状態を維持するのに必要とされるエネルギを抑えるために望ましい。
【0018】
[0018] 客室の重心が、基準軸の下に位置することが好ましい。したがって、安定化システムが外されるか、又は第1歯車を自由に回転させる際、格下げの運転モードがもたらされ得、重力の結果として、ほぼ水平状態が維持される。
【0019】
[0019] 好ましい実施形態によれば、歯付きリングには、基準軸に面する歯部がある。第1歯車が、客室の内側天井の上に位置付けられることが好ましい。これにより、必要であれば、安定化バラストを置くことが可能である区画が床の下にある。特に好都合な一実施形態によると、客室の冷房、暖房、又は空気調節ユニットが、客室の内側床の下に位置付けられる。その質量によって、この種のユニットは、安定化バラストを成す。
【0020】
[0020] 代替の実施形態によれば、歯付きリングには、半径方向外方に向く歯部があり、第1歯車が客室の床の下に位置付けられている。
【0021】
[0021] 本発明の別の態様によれば、該歯付きリングは、集客設備に接続され、この集客設備は、少なくとも1つの静止構造体と、支持体が固定基準枠の垂直平面にループを形成する軌道に従うように、静止構造体に対して誘導され、また、垂直平面に直角であり、基準軸に平行である固定回転軸に対し、ループ形軌跡の一周を完了することによって、360°回転を行う、本発明の第1態様による少なくとも1つの可動部分組立体とを備える。
【0022】
[0022] 一実施形態によれば、回転軸は、静止構造体に強固に接続される1つ以上のガイドベアリングの組立体によって固定され、好ましくは画定される。回転は、特に観覧車型集客設備にとっては、一周よりも多いことが好ましい。そのため、支持体は、観覧車のリム、又はリムそのものの一部に固定され、回転軸を中心として回転することが意図される車であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
[0023] 本発明の他の特徴及び利点は、以下の添付図面を参照の上、以下の発明を実施するための形態で見出すことができる。
【
図2】
図1からの集客設備の可動部分組立体の正面図である。
【
図3】
図2からの可動部分組立体の構造体、具体的には本発明の第1実施形態による安定化システムを示す、構造体の等角図である。
【
図4】
図2からの可動部分組立体の構造体の軸方向断面の等角図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による安定化システムの概略正面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態による安定化システムの概略正面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態による安定化システムの概略正面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態による安定化システムの概略正面図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態による安定化システムの概略正面図である。
【0024】
[0024] より分かりやすくするために、図面のすべてにおいて、同一又は同様の要素は、同じ参照番号で示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0025]
図1は、1つ以上の脚14によって地面に据え付けられた静止構造体12を備える、水平回転軸100上の観覧車設備10を示し、該静止構造体12は、地面14に対して固定される回転軸100を中心として回転するホイールリム18のガイドベアリング16を形成する。リムは、その周縁上に、客室22用の支持体20を備える。回転軸100は、リムに対してN次の回転対称軸を成すことが好ましく、Nは、支持体20及び客室22の個数である。
【0026】
[0026]
図2に示されるように、各客室22には、一人以上の乗客を収容し、運ぶための内容積Vがあり、内容積Vは、客室床26と客室天井28との間に境界が定められる。これにより、支持体20及び対応する客室22は、一人以上の乗客を収容し、運ぶための可動部分組立体30を形成する。この可動部分組立体30、すなわち
図3~
図6に詳細に示される構造体は、支持体20と客室22とに共通である基準軸200を中心として支持体20に対して客室22を回転誘導するためのガイド32も備え、基準軸は、回転軸100に水平かつ平行である。
【0027】
[0027] ガイド32は、ここでは、客室22の重心が、各々が2つのベアリング34のうちの1つを通る基準軸200に直角である2つの垂直横断面間に位置するように、互いに遠隔である2つの同軸ベアリング34から成る。2つのベアリング34が、それらの位置が、基準軸200に直角であり、客室22の重心Gを含む、客室22の中間垂直横断面に対して互いによく似ているように位置することが好ましい。各ベアリング34は、少なくとも1つの第1ベアリングリング、例えば、支持体20のカラー20.1に強固に接続される内側リング34.1、少なくとも1つの第2ベアリングリング、例えば、客室22のカラー22.2に強固に接続される外側リング34.2、並びに第1ベアリングリング34.1及び第2ベアリングリング34.2上に形成されるベアリングレース上を転がることができる1列以上のベアリング本体34.3を備える。各ベアリング34の一部が床26の下に位置し、別のベアリングが天井28上に位置するような、2つのベアリング34の各々が、内容積Vを取り囲む。
【0028】
[0028] ガイド32は、反対方向S2に基準軸200を中心とした支持体20に対する客室22の回転により、方向S1における観覧車10の回転軸100を中心とした支持体20の回転を可能にすることにより、客室26の床の水平状態が維持されることを可能にする。
【0029】
[0029] これらの回転を同期させるために、可動部分組立体30には、安定化システム36が装備される。この安定化システム36は、ここでは、基準軸200を中心とする2つの歯付きリング38を備え、各歯付きリング38が、ベアリング34及び2つの歯車40のうちの1つの近くに位置付けられていることが好ましく、各歯車40が、2つの歯付きリング38のうちの1つに対応し、対応する歯付きリング38と噛合うように客室22に取り付けられている。客室22には、駆動手段42も装備され、駆動手段42は、各歯車に対応するモータ、又は各歯車に別々のモータを備え得る。
【0030】
[0030] 客室22の床26の水平状態を維持するために、駆動手段42が、例えば、回転軸を中心とする客室の角度位置の測定値と、支持体に対する客室の角度位置の測定値とを比較することによって、観覧車10の回転軸100を中心とするホイールリム12の角度位置にサーボ制御され得る。このため、この角度位置の測定値をもたらすために、ベアリング34のうちの1つが備えられ得る。あるいは、駆動手段42が、客室22に位置付けられる傾斜計においてサーボ制御され得る。他の物理的変数も、特に客室22の荷重、乗客を乗せた客室22の重心の位置、風の速度及び方向、又は観覧車10の移動方向における進行する客室22から導出されたデータが、駆動手段42を制御するのに考慮され得る。
【0031】
[0031] 駆動手段42によって駆動される歯車40の各々、又はそれらのうちの少なくとも1つが、客室22の床26の水平状態を維持するために、支持体20に強固に接続される対応する歯付きリング38と噛合う。床26に直角であり、基準軸200を含む客室22の軸方向基準平面Qに、乗客を乗せた客室22の重心が近ければ近いほど、エネルギが少なくて済む。実際には、乗客を乗せた客室22の重心が、基準軸200と床26との間の基準軸200を含む水平平面Hの下に、又は床26の下に位置し、これにより、駆動手段42の不具合の場合に、重力の作用によって、床26の水平状態がほぼ維持されることが可能になると考えられる格下げの運転モードが可能になる。このため、駆動手段42と歯車40との間の運動学的伝動チェーンにクラッチが備えられる。
【0032】
[0032] この第1実施形態では、各歯付きリング38には、半径方向内方に向く歯部38.1があり、対応する歯車40が、客室22の内側スペースVの天井28の上に位置し、また、客室22の内側天井28の上に、まれには対応する歯車40上に位置する、歯部38.1のゾーンと係合する。この位置付けにより、基準軸200を含む水平平面Hの下に位置する歯部38.1の一部における歯部38.1に落ちた異物が歯車400に達し、それを塞ぐことが防がれる。
【0033】
[0033] 歯車40の回転軸400が、
図5に示されるように、軸方向基準平面Qの近くに、もしくは直に軸方向基準平面Qに、又は
図6に示されるように、軸方向基準平面Qの1つの側で、基準軸の周りの軸方向基準平面に対して±60°以下の角度扇形Aに、位置付けられることが好ましい。この場合、各歯車40が、所与の瞬間に、歯車40と係合する歯付きゾーンが、少し前に軸方向基準平面Qを通ったような、客室22に対する歯付きリング38の回転方向において、軸方向基準平面Qの下流に配置されることが好ましい。
【0034】
[0034] 床の下に位置するスペースは、客室22の重心を下げる一因となる客室22の冷房、暖房、及び空気調節ユニット44によって占められる。
【0035】
[0035] 各歯車40には、歯部38.1から歯車40を解放することができる解放機構が備えられる。また、モータ故障の場合、歯車40の自由回転を可能にするクラッチも考えられる。これらの配置により、この設備の運転能力を高める冗長性が確保され、モータ42に不具合がある場合、対応する歯車40が系脱し、他のモータ42が単独で、客室22の位置付けを確実にし、歯部38.1の下の歯車40の位置付けにも関わらず、歯車40のうちの1つと対応する歯部38.1との間に異物が挟まった場合、解放機構が、影響を受けた歯車40が解放されることを可能にし、他の歯車40が単独で、客室22の位置付けを確実にする。
【0036】
[0036] 他の実施形態によれば、その歯部38.1が半径方向外方を向き、また歯車40が歯部38.1の下に位置するリング38が、
図7及び8に示されるように、客室22の床26の下に位置付けられる。この位置付けにより、歯部に引っ掛かった可能性のある異物を自由落下によって出すのと同じ作用が可能になる。
【0037】
[0037] ここでは、また、各歯車40の回転軸400が、
図7に示されるように、軸方向基準平面に、又は
図8に示されるように、基準軸の周りの軸方向平面に対して±60°以下の角度扇形に軸方向平面から少し離れて、位置付けられることが好ましい。この場合、歯車は、所与の瞬間に、歯車と係合する歯付きゾーンが、少し前に軸方向基準平面を通ったように、歯付きリングの回転方向S1において、軸方向基準平面Qの下流に配置されることが好ましい。
【0038】
[0038]
図9に示される実施形態によれば、軸方向基準平面Qのいずれかの側に、好ましくは軸方向基準平面Qから等間隔で位置する2つの歯車40、140と、歯付きリング38と客室22との相対回転方向に基づき、同じ歯付きリング38と係合する2つの歯車40、140のうちの1方又はもう一方に係合する機構240と、がある。歯付きリング38と噛合う歯車40、140は、体系的に、客室22に対してリングの回転方向S1において、軸方向基準平面Qの下流に位置する歯車である。第1歯車40の回転軸400及び第2歯車140の回転軸500が、基準軸の周りの軸方向基準平面に対して±60°以下の角度扇形に位置することが好ましい。
【0039】
[0039] もちろん、図面及び上記に示された例は、単に例として、非限定的に与えられる。他の実施形態を暗示するように示されたそれらの中から様々な実施形態を組み合わせることが可能であることが明確に述べられる。
【0040】
[0040] 簡略化実施形態によれば、安定化システム24は、1つの歯車40に対応する1つの歯付きリング38のみを備え得る。したがって、歯付きリングが空の客室22の重心を含む横断面の近くに位置付けられることが好ましい。ガイド32が2つのベアリングを備える場合、1つの歯付きリング38が2つのベアリング34間に軸方向に位置付けられることが好ましい。
【0041】
[0041] 客室22に強固に接続される各ベアリングの歯付きリングは、内側リング34.1又は外側リング34.2であり得る。
【0042】
[0042] 歯付きリング38と歯車40との間にもたらされた噛合いが傾斜する場合には異なる向きも考えられるが、歯車40の回転軸が、基準軸200に平行であることが好ましい。
【0043】
[0043] 支持体は、観覧車10のリム12の一部である必要はない。支持体は、垂直平面において、円形又は非円形のいずれかの閉ループを形成する、EP2075043に記載の類の静止構造体のガイド路上の可動車であってもよい。提案されたすべての構成では、ループにおける支持体20の動きは、ループの完全一周ごとに一周期の固定基準枠に対する支持体20の一回転をもたらす。
【0044】
[0044] 発明を実施するための形態及び添付図面及び特許請求の範囲から、当業者には明らかになるような特徴のすべてが、それらが他の定められた特徴との関係において、単独又は組み合わせのいずれかで具体的に述べられていない場合でも、これが明確に除外されておらず、又は技術的状況がこのような組み合わせを不可能又は無意味にしない限り、ここに開示された他の特徴又は特徴群と組み合わされ得ることに目が向けられるはずである。