(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電池加熱システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231124BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20231124BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/651
H01M10/6571
H01M10/667
H02J7/00 A
H02J7/00 P
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2021531835
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2019072663
(87)【国際公開番号】W WO2020133615
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】201822274044.X
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】左希陽
(72)【発明者】
【氏名】但志敏
(72)【発明者】
【氏名】張偉
(72)【発明者】
【氏名】侯貽真
(72)【発明者】
【氏名】李国偉
(72)【発明者】
【氏名】呉興遠
(72)【発明者】
【氏名】李艷茹
【合議体】
【審判長】吉田 美彦
【審判官】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072955(JP,A)
【文献】特開2014-241434(JP,A)
【文献】特開2011-160617(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103560304(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H02J 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池加熱システムであって、
電池パックに接続されたスイッチアセンブリと、前記スイッチアセンブリに接続されたインバータと、前記インバータに接続されたモータと、を含み、
前記スイッチアセンブリは、前記
電池パックの正極に接続された主正極スイッチと、前記
電池パックの負極に接続された主負極スイッチと、を含み、
前記インバータは、並列に接続された第1相ブリッジアームと第2相ブリッジアームと第3相ブリッジアームとを含み、前記第1相ブリッジアーム、前記第2相ブリッジアーム及び前記第3相ブリッジアームはいずれも上部ブリッジアーム及び下部ブリッジアームを有し、前記上部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられ、前記下部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられており、前記スイッチモジュールには前記スイッチモジュールを保護するためのバッファモジュールが並列に接続されており、
前記モータの第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、それぞれ、前記第1相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、前記第2相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、及び前記第3相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されており、
前記インバータは、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに駆動信号を出力して、前記目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び前記目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを周期的にオンオフ制御して交流電流を発生させるためのモータコントローラをさらに含み、前記目標上部ブリッジアームスイッチモジュールは、前記第1相ブリッジアーム、前記第2相ブリッジアーム、前記第3相ブリッジアームのいずれかのブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールであり、前記目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、前記目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが位置するブリッジアーム以外の少なくとも1つのブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールであり、
前記目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び前記目標下部ブリッジアームスイッチモジュールがオンになるように制御する場合、前記電池パックの放電回路が形成され、
前記目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び前記目標下部ブリッジアームスイッチモジュールがオフになるように制御する場合、前記電池パックの充電回路が形成され、
前記電池加熱システムは、電流センサ及び電池管理モジュールをさらに含み、前記電流センサは、前記電池パックの負極と前記スイッチアセンブリとの間に設けられ、前記電流センサは、電流を収集するのに用いられ、前記電池管理モジュールは、前記モータコントローラに制御信号を送信して、前記モータコントローラの駆動信号の出力を制御し、
前記電流センサは、電流パラメータを前記電池管理モジュールにアップロードし、前記電池管理モジュールは、前記電流パラメータに基づいて、前記モータコントローラに制御信号を送信する前に、前記電流センサをウェイクアップする、
ことを特徴とする電池加熱システム。
【請求項2】
前記インバータは、前記第1相ブリッジアームに並列に接続されたサポートコンデンサをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項3】
前記スイッチアセンブリと前記インバータとの間に位置するZソースネットワーク回路をさらに含み、
前記Zソースネットワーク回路は、前記第1相ブリッジアーム、前記第2相ブリッジアーム、前記第3相ブリッジアームのいずれかのブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールと下部ブリッジアームのスイッチモジュールとが同時にオンになると、前記インバータと前記電池パックが位置する回路とを遮断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項4】
前記Zソースネットワーク回路は、第1ダイオード、第1インダクタ、第1コンデンサ、第2インダクタ及び第2コンデンサを含み、
前記第1ダイオードのアノードは、前記電池パックの正極に接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1インダクタの一端及び前記第1コンデンサの一端に接続され、
前記第1インダクタの他端は、前記第2コンデンサの一端及び前記インバータに接続され、
前記第1コンデンサの他端は、前記第2インダクタの他端及び前記インバータに接続され、
前記第2インダクタの一端は、前記電池パックの負極及び第2コンデンサの他端に接続され、前記第2インダクタの他端は、前記インバータに接続され、
前記第2コンデンサの一端は、前記インバータに接続されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電池加熱システム。
【請求項5】
前記スイッチモジュールは、ダイオードを有し、
前記上部ブリッジアームのスイッチモジュールは、前記ダイオードのアノードが前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続され、前記ダイオードのカソードが前記上部ブリッジアームと前記電池パックの正極との間に位置し、
前記下部ブリッジアームのスイッチモジュールは、前記ダイオードのアノードが前記下部ブリッジアームと前記電池パックの負極との間に位置し、前記ダイオードのカソードが前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項6】
前記バッファモジュールは、第1抵抗及び第3コンデンサを含み、
前記上部ブリッジアームのスイッチモジュールに並列に接続された前記バッファモジュールは、前記第1抵抗の一端が前記上部ブリッジアームのスイッチモジュールと前記電池パックの正極との間に位置し、前記第1抵抗の他端が前記第3コンデンサの一端に接続され、前記第3コンデンサの他端が前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続されており、
前記下部ブリッジアームのスイッチモジュールに並列に接続された前記バッファモジュールは、前記第1抵抗の一端が前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続され、前記第1抵抗の他端が前記第3コンデンサの一端に接続され、前記第3コンデンサの他端が前記下部ブリッジアームのスイッチモジュールと前記電池パックの負極との間に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項7】
前記第1抵抗の抵抗値は、0.1Ωから20Ωの範囲であり、
前記第3コンデンサの容量は、0.1μFから15μFの範囲である、
ことを特徴とする請求項6に記載の電池加熱システム。
【請求項8】
前記バッファモジュールは、第2抵抗、第4コンデンサ及び第2ダイオードを含み、
前記上部ブリッジアームのスイッチモジュールに並列に接続された前記バッファモジュールは、前記第2抵抗の一端が前記上部ブリッジアームのスイッチモジュールと前記電池パックの正極との間に位置し、前記第2抵抗の他端が前記第4コンデンサの一端に接続され、前記第4コンデンサの他端が前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続され、前記第2ダイオードのアノードが第2抵抗の一端に接続され、前記第2ダイオードのカソードが第2抵抗の他端に接続されており、
前記下部ブリッジアームのスイッチモジュールに並列に接続された前記バッファモジュールは、前記第2抵抗の一端が前記上部ブリッジアームと前記下部ブリッジアームとの接続点に接続され、前記第2抵抗の他端が前記第4コンデンサの一端に接続され、前記第4コンデンサの他端が前記下部ブリッジアームのスイッチモジュールと前記電池パックの負極との間に位置し、前記第2ダイオードのアノードが前記第2抵抗の一端に接続され、前記第2ダイオードのカソードが第2抵抗の他端に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項9】
前記第2抵抗の抵抗値は、0.1Ωから20Ωの範囲であり、
前記第4コンデンサの容量は、0.1μFから15μFの範囲である、
ことを特徴とする請求項8に記載の電池加熱システム。
【請求項10】
前記スイッチアセンブリは、前記電池パックの正極に接続された主正極スイッチ及び/又は前記電池パックの負極に接続された主負極スイッチを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項11】
前記電池パックの正極と前記スイッチアセンブリとの間に設けられたヒューズモジュールをさらに含み、前記ヒューズモジュールは、前記電池パックと前記電池加熱システムとの接続を遮断するのに用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【請求項12】
前記電池管理モジュールからの通信要求に応答して、前記電池管理モジュールと前記モータコントローラとの間の通信権を開放する車両制御ユニットをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電力分野に属し、特に、電池加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギーの発展に伴い、動力として新エネルギーを採用する分野が増えている。エネルギー密度が高く、循環充電が可能であり、安全で環境に優しいなどの利点があるため、電池は新エネルギー自動車、家庭用電気機器、エネルギー貯蔵システムなどの分野で広く利用されている。
【0003】
しかしながら、低温環境下での電池の使用は一定の制限を受けている。具体的には、低温環境下では電池の放電容量が大きく低下することや、低温環境下では電池が充電できなくなることが考えられる。従って、電池を正常に使用するためには、低温環境下で電池を加熱する必要がある。
【0004】
現在、電池に専用の熱循環容器を設け、熱循環容器中の熱伝導物質を間接的に加熱することで、電池に熱を伝導して、電池の加熱を実現することができる。しかしながら、この加熱方式には時間がかかり、加熱効率が低い。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例は、電池パックの加熱効率を向上させ、且つ、電池加熱システムの安全性を強化することができる電池加熱システムを提供する。
【0006】
本発明は、電池加熱システムを提供し、それは、電池パックに接続されたスイッチアセンブリと、スイッチアセンブリに接続されたインバータと、インバータに接続されたモータと、を含み、インバータは、並列に接続された第1相ブリッジアームと第2相ブリッジアームと第3相ブリッジアームとを含み、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームはいずれも上部ブリッジアーム及び下部ブリッジアームを有し、上部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられ、下部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられており、スイッチモジュールにはスイッチモジュールを保護するためのバッファモジュールが並列に接続されており、モータの第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、それぞれ、第1相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、第2相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、及び第3相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されており、インバータは、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに駆動信号を出力して、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを周期的にオンオフ制御して交流電流を発生させるためのモータコントローラをさらに含み、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム、第3相ブリッジアームのいずれかのブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールであり、目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが位置するブリッジアーム以外の少なくとも1つのブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールである。
【0007】
本発明は、電池加熱システムを提供し、電池加熱システムにおけるモータコントローラは、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに駆動信号を出力して、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールと目標下部ブリッジアームスイッチモジュールとを周期的にオンオフ制御する。電池パック、主正極スイッチ、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール、モータ、目標下部ブリッジアームスイッチモジュール、主負極スイッチで形成される回路に交流電流を発生させ、即ち、電池パックの充放電が交互に行わられる。電池パックの充放電を交互に行う過程では、電池パックに内部抵抗が存在するため、熱量が発生され、即ち、電池パックが内部から発熱され、これにより、電池パックの加熱効率が向上される。電池パックの加熱効率を向上させた上で、バッファモジュールが電気エネルギーを吸収できるため、電池加熱システムで発生する交流電流の急変(例えば、ピーク電圧の発生など)による電池加熱システムへの損害を回避し、電池加熱システムの安全性を強化する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を以下のように説明するが、当該説明により、本発明をよりよく理解することができ、同じ又は類似した符号は、同じ又は類似の特徴を示す。
【
図1】本発明の一実施例に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の他の一実施例に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るバッファモジュールの概略構成図である。
【
図4】本発明の他の一実施例に係るバッファモジュールの概略構成図である。
【
図5】本発明のさらに他の一実施例に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各態様の特徴及び例示的な実施例を詳細に説明する。以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が提示される。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細のいくつかを必要とせずに実施することができることは、当業者にとって自明である。以下の実施例の説明は、本発明の例を示すことによって、本発明のより良い理解を提供するためのものに過ぎない。本発明は、以下に提案するいかなる具体的な構成及びアルゴリズムに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限り、要素、部品及びアルゴリズムのいかなる修正、置き換え及び改善をカバーするものである。図面及び以下の説明では、本発明に不要な曖昧性が生じないように、周知の構造及び技術は示されていない。
【0010】
本発明の実施例は、電池パックの温度が低い条件で、電池パックを加熱して電池パックの温度を上昇させて、電池パックを正常に使用できる温度にすることに適用できる電池加熱システムを提供する。ここで、電池パックは、少なくとも1つの電池モジュール又は少なくとも1つの電池セルを含むことができるが、これらに限定されるものではない。電池パックは、電気自動車に応用でき、モーターに電力を供給するためのものであり、電気自動車の動力源とされる。電池パックは、さらに、車内エアコン、車載プレーヤーなどの電気自動車内の他の電気機器に電力を供給することができる。本発明の実施例において、電池加熱システムの制御により、電池パックが位置する回路に交流電流を発生させる。交流電流は、連続的に電池パックを通過することができ、電池パックの内部抵抗を発熱させ、これにより電池パックの均一で高効率な加熱を実現する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例における電池加熱システムの概略構成図である。
図1に示すように、当該電池加熱システムは、電池パックP1に接続されたスイッチアセンブリと、スイッチアセンブリに接続されたインバータP2と、インバータP2に接続されたモータP3と、を備えている。
【0012】
スイッチアセンブリは、電池パックP1と電池加熱システムとの回路をオンオフするのに使用される。いくつかの例では、スイッチアセンブリは、電池パックP1の正極に接続された主正極スイッチK1を含んでもよい。或いは、スイッチアセンブリは、電池パックP1の負極に接続された主負極スイッチK2を含むことができる。或いは、スイッチアセンブリは、電池パックP1の正極に接続された主正極スイッチK1と、電池パックP1の負極に接続された主負極スイッチK2と、を含む。
図1に示すように、スイッチアセンブリは、電池パックP1の正極に接続された主正極スイッチK1と、電池パックP1の負極に接続された主負極スイッチK2と、を含む。主正極スイッチK1及び主負極スイッチK2は、具体的にはリレーとされてもい。
【0013】
インバータP2は、並列に接続された第1相ブリッジアームと第2相ブリッジアームと第3相ブリッジアームとを含む。第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームは、それぞれ、上部ブリッジアーム及び下部ブリッジアームを有する。また、上部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられ、下部ブリッジアームにはスイッチモジュールが設けられている。
【0014】
スイッチモジュールにはバッファモジュールP27が並列に接続されており、バッファモジュールP27が電気エネルギーを吸収するため、電池加熱システムでスパイク電圧によるスイッチモジュールの焼損が現れることを防止できる。バッファモジュールP27が電気エネルギーを吸収できるため、スイッチモジュールの電圧変化が緩やかであることを保証して、急変を避けることができ、これによってスイッチモジュールを保護する。
【0015】
例えば、
図1に示すように、第1相ブリッジアームは、U相ブリッジアームであり、第2相ブリッジアームは、V相ブリッジアームであり、第3相ブリッジアームは、W相ブリッジアームである。U相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第1スイッチモジュールP21であり、U相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第2スイッチモジュールP22である。V相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第3スイッチモジュールP23であり、V相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第4スイッチモジュールP24である。W相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第5スイッチモジュールP25であり、W相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールは、第6スイッチモジュールP26である。
【0016】
いくつかの例では、スイッチモジュールは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)チップ、IGBTモジュール、金属-酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、MOSFET)、Si-MOSチューブウェーハ(Siはシリコンである)、SiC-MOSチューブウェーハ(SiCは炭化珪素である)、パワーMOSチューブ、SiCパワーMOSチューブなどのパワースイッチング素子のうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。ここで、スイッチモジュールにおける各IGBTデバイスとMOSFETデバイスなどとの組み合わせ方式や接続方式は限定されるものではない。上記パワースイッチング素子の材料の種類も限定されるものではなく、例えば、炭化珪素(即ち、SiC)やその他の材料からなるパワースイッチング素子を利用してもよい。なお、上記パワースイッチング素子は、ダイオードを有し、具体的には、寄生ダイオードや、意図的に設けられたダイオードであってもよい。ダイオードの材料の種類も限定されず、例えば、シリコン(即ち、Si)、炭化ケイ素(即ち、SiC)、又は他の材料から製造されたダイオードを利用してもよい。
【0017】
モータP3の第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、それぞれ、第1相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、第2相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、第3相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続される。
【0018】
例えば、
図1に示すように、モータP3の固定子を三相固定子インダクタとして等価化する。固定子インダクタは、エネルギー貯蔵機能を有する。各相の固定子インダクタは、1相のブリッジアームに接続される。3相の固定子インダクタは、それぞれ、第1固定子インダクタL1、第2固定子インダクタL2及び第3固定子インダクタL3とされる。第1相入力端は、第1固定子インダクタL1に対応する入力端である。第2相入力端は、第2固定子インダクタL2に対応する入力端である。第3相入力端は、第3固定子インダクタL3に対応する入力端である。なお、モータP3の第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、入力端として電流を入力してもよいし、出力端として電流を出力してもよい。
【0019】
具体的には、第1固定子インダクタL1の一端が第1相入力端となり、第1固定子インダクタL1の他端が第2固定子インダクタL2の他端及び第3固定子インダクタL3の他端に接続されている。第2固定子インダクタL2の一端が第2相入力端となる。第3固定子インダクタL3の一端が第3相入力端となる。
【0020】
インバータP2は、さらに、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに駆動信号を出力して、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールと目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを周期的にオンオフ制御して、交流電流を発生させるモータコントローラP20を含む。
【0021】
なお、モータコントローラP20は、インバータP2の各スイッチモジュールに接続されている。例えば、モータコントローラP20は、
図1における第1スイッチモジュールP21の制御端、第2スイッチモジュールP22の制御端、第3スイッチモジュールP23の制御端、第4スイッチモジュールP24の制御端、第5スイッチモジュールP25の制御端及び第6スイッチモジュールP26の制御端にそれぞれ接続されており、各スイッチモジュールに駆動信号を送信することができる。この接続関係は、
図1には示されていない。
【0022】
駆動信号は、具体的に、パルス信号としてもよい。さらに、駆動信号は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)信号であってもよい。いくつかの例では、駆動信号の高レベルはスイッチモジュールをオンにし、駆動信号の低レベルはスイッチモジュールをオフにする。駆動信号は、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを周期的にオンオフ制御することができる。
【0023】
ここで、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム、第3相ブリッジアームのいずれかのブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールである。目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが位置するブリッジアーム以外の少なくとも1つのブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチモジュールである。
【0024】
なお、駆動信号の駆動を受信していないスイッチモジュール(即ち、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュール以外のスイッチモジュール)はいずれもオフである。
【0025】
例えば、
図1に示すように、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが第1スイッチモジュールP21である場合、目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、第4スイッチモジュールP24及び/又は第6スイッチモジュールP26である。目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが第3スイッチモジュールP23である場合、目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、第2スイッチモジュールP22及び/又は第6スイッチモジュールP26である。目標上部ブリッジアームスイッチモジュールが第5スイッチモジュールP25である場合、目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、第2スイッチモジュールP22及び/又は第4スイッチモジュールP24である。
【0026】
なお、周期的にオンオフされる各周期における目標上部ブリッジアームスイッチモジュール、目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、同一であっても異なっていてもよく、ここでは限定しない。例えば、各周期における駆動信号は、いずれも、第1スイッチモジュールP21及び第4スイッチモジュールP24のオンオフを駆動する。また、例えば、一番目の周期において、駆動信号は、第1スイッチモジュールP21及び第4スイッチモジュールP24のオンオフを駆動し、二番目の周期において、駆動信号は、第3スイッチモジュールP23及び第2スイッチモジュールP22のオンオフを駆動し、三番目の周期において、駆動信号は、第1スイッチモジュールP21、第4スイッチモジュールP24及び第6スイッチモジュールP26のオンオフを駆動する。即ち、異なる周期において、駆動信号によって駆動される目標上部ブリッジアームスイッチモジュールと目標下部ブリッジアームスイッチモジュールは、異なっていてもよい。
【0027】
駆動信号が目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを駆動して周期的にオンオフすることにより、電池パックP1、主正極スイッチK1、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール、モータP3、目標下部ブリッジアームスイッチモジュール、主負極スイッチK2で形成される回路に交流電流を発生させる。具体的には、交番正弦波電流を生成することができる。即ち、電池パックP1は、充放電を交互に行っている。電池パックP1の充放電が交互に行われる過程で、電池パックP1が発熱し、即ち、電池パックP1が内部から発熱する。そのため、電池パックP1の加熱が実現される。
【0028】
いくつかの例では、駆動信号の周波数は、100Hz~100000Hzの範囲である。駆動信号の周波数は、スイッチモジュールのスイッチング周波数である。駆動信号のデューティ比は、5%~50%の範囲である。駆動信号のデューティ比は、スイッチモジュールのオン時間とオフ時間との合計に対するオン時間の割合である。
【0029】
図1において、電池パックP1と主正極スイッチK1との間の抵抗は、電池パックP1の等価内部抵抗Rxである。電池パックP1の内部抵抗は、温度が低いと抵抗値が大きくなる。例えば、25℃でのパワーリチウム電池の内部抵抗は、25℃でのパワーリチウム電池の内部抵抗の5~15倍である。電池パックP1が充放電を交互に行う過程では、発生する熱量がより大きく、加熱速度がより速い。電池パックP1の内部にヒューズを設けて、電池パックP1の安全な使用を保証することもできる。
【0030】
いくつかの例では、主正極スイッチK1及び主負極スイッチK2は、高圧ボックス内に封入されてもよい。
【0031】
本発明の実施例では、電池加熱システムにおけるモータコントローラP20は、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに駆動信号を出力して、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールと目標下部ブリッジアームスイッチモジュールとを周期的にオンオフ制御する。電池パックP1、主正極スイッチK1、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール、モータP3、目標下部ブリッジアームスイッチモジュール、主負極スイッチK2で形成される回路に交流電流を発生させ、即ち、電池パックP1は、充放電を交互に行っている。電池パックP1の充放電を交互に行う過程では、電池パックP1に内部抵抗が存在するため、熱量が発生し、即ち、電池パックP1が内部から発熱するため、電池パックP1の加熱効率が向上する。電池パックP1の加熱効率を向上させた上で、バッファモジュールP27が電気エネルギーを吸収して、スイッチモジュールを保護するため、電池加熱システムで発生される交流電流の急変(例えば、ピーク電圧の発生など)による電池加熱システムへの損害を回避し、電池加熱システムの安全性を強化する。
【0032】
また、本発明の実施例における熱量は、電池パックP1に交流電流が流れることにより発生され、電池パックP1の内部の発熱が均一化されているため、電池パックP1の加熱効率がさらに向上される。また、インバータP2及びモータP3の構造を変更しないため、構造改造費用が余分に発生することもない。
【0033】
以下では、各スイッチモジュールが1つのパワースイッチング素子を備える例を説明する。
図2は、本発明の他の一実施例に係る電池加熱システムの概略構成図である。
図2は、スイッチモジュールがパワースイッチング素子を含む点で、
図1と異なる。インバータP2は、さらに、サポートコンデンサを含む。電池加熱システムは、さらに、電池パックP1の正極と主正極スイッチK1との間に設けられたヒューズモジュールP4、及び電池パックP1の負極と主負極スイッチK2との間に設けられた電流センサP5を備える。
【0034】
説明を容易にするために、スイッチモジュールにおけるパワースイッチング素子が有するダイオードを
図2に示す。上部ブリッジアームのスイッチモジュールにおいて、ダイオードのアノードは、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、ダイオードのカソードは、上部ブリッジアームと電池パックP1の正極との間に位置する。下部ブリッジアームのスイッチモジュールにおいて、ダイオードのアノードは、下部ブリッジアームと電池パックP1の負極との間に位置し、ダイオードのカソードは、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続される。例えば、
図2に示すように、上部ブリッジアームのスイッチモジュールのダイオードのカソードは、上部ブリッジアームにおける主正極スイッチK1に接続された一端に接続されている。下部ブリッジアームのスイッチモジュールのダイオードのアノードは、下部ブリッジアームにおける主負極スイッチK2に接続された一端に接続されている。
【0035】
図2に示すように、第1スイッチモジュールP21は第1パワースイッチング素子S1を含み、第2スイッチモジュールP22は第2パワースイッチング素子S2を含み、第3スイッチモジュールP23は第3パワースイッチング素子S3を含み、第4スイッチモジュールP24は第4パワースイッチング素子S4を含み、第5スイッチモジュールP25は第5パワースイッチング素子S5を含み、第6スイッチモジュールP26は第6パワースイッチング素子S6を含む。ここで、第1パワースイッチング素子S1のダイオードはVD1であり、第2パワースイッチング素子S2のダイオードはVD2であり、第3パワースイッチング素子S3のダイオードはVD3であり、第4パワースイッチング素子S4のダイオードはVD4であり、第5パワースイッチング素子S5のダイオードはVD5であり、第6パワースイッチング素子S6のダイオードはVD6である。
【0036】
駆動信号により目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールが駆動されてオンになると、電池パックP1の放電回路が形成され、電流方向は、電池パックP1→ヒューズモジュールP4→主正極スイッチK1→目標上部ブリッジアームスイッチモジュール→目標上部ブリッジアームスイッチモジュールに対応する固定子インダクタ→目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに対応する固定子インダクタ→目標下部ブリッジアームスイッチモジュール→主負極スイッチK2→電流センサP5→電池パックP1になる。
【0037】
例えば、モータコントローラP20により第1パワースイッチング素子S1及び第4パワースイッチング素子S4に送信される駆動信号は、第1パワースイッチング素子S1及び第4パワースイッチング素子S4を駆動してオンにする。電池パックP1が放電され、電池パックP1の放電回路が形成される。電流方向は、電池パックP1→ヒューズモジュールP4→主正極スイッチK1→第1パワースイッチング素子S1→第1固定子インダクタL1→第2固定子インダクタL2→第4パワースイッチング素子S4→主負極スイッチK2→電流センサP5→電池パックP1になる。
【0038】
また、例えば、モータコントローラP20により第1パワースイッチング素子S1、第4パワースイッチング素子S4及び第6パワースイッチング素子S6に送信される駆動信号は、第1パワースイッチング素子S1、第4パワースイッチング素子S4及び第6パワースイッチング素子S6を駆動してオンにする。電池パックP1が放電されて、電池パックP1の放電回路が形成される。電流方向は、電池パックP1→ヒューズモジュールP4→主正極スイッチK1→第1パワースイッチング素子S1→第1固定子インダクタL1→第2固定子インダクタL2及び第3固定子インダクタL3→第4パワースイッチング素子S4及び第6パワースイッチング素子S6→主負極スイッチK2→電流センサP5→電池パックP1になる。即ち、第2固定子インダクタL2と第3固定子インダクタL3とが並列に接続された後、さらに、第1固定子インダクタL1に直列に接続される。
【0039】
駆動信号は、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールを駆動してオフにし、固定子インダクタがエネルギー貯蔵機能を有するため、固定子インダクタが放電すると、電池パックP1の充電回路が形成され、電流方向は、目標上部ブリッジアームスイッチモジュールに対応する固定子インダクタ→目標上部ブリッジアームスイッチモジュールのダイオード→主正極スイッチK1→ヒューズモジュールP4→電池パックP1→電流センサP5→主負極スイッチK2→目標下部ブリッジアームスイッチモジュールのダイオード→目標下部ブリッジアームスイッチモジュールに対応する固定子インダクタになる。
【0040】
例えば、モータコントローラP20により第1パワースイッチング素子S1及び第4パワースイッチング素子S4に送信される駆動信号は、第1パワースイッチング素子S1及び第4パワースイッチング素子S4を駆動してオフにする。第1固定子インダクタ及び第2固定子インダクタは、放電して、電池パックP1を充電して、電池パックP1の充電回路を形成する。電流方向は、第1固定子インダクタL1→第1パワースイッチング素子S1のダイオードVD1→主正極スイッチK1→ヒューズモジュールP4→電池パックP1→電流センサP5→主負極スイッチK2→第4パワースイッチング素子S4のダイオードVD4→第2固定子インダクタL2になる。
【0041】
また、例えば、モータコントローラP20により第1パワースイッチング素子S1、第4パワースイッチング素子S4及び第6パワースイッチング素子S6に送信される駆動信号は、第1パワースイッチング素子S1、第4パワースイッチング素子S4及び第6パワースイッチング素子S6を駆動してオフにする。第1固定子インダクタL1、第2固定子インダクタL2及び第3固定子インダクタL3は放電して、電池パックP1を充電して、電池パックP1の充電回路を形成する。電流方向は、第1固定子インダクタL1→第1パワースイッチング素子S1のダイオードVD1→主正極スイッチK1→ヒューズモジュールP4→電池パックP1→電流センサP5→主負極スイッチK2→第4パワースイッチング素子S4のダイオードVD4及び第6パワースイッチング素子S6のダイオードVD6→第2固定子インダクタL2及び第3固定子インダクタL3になる。
【0042】
サポートコンデンサCaは、第1相ブリッジアームに並列に接続されており、同様に、サポートコンデンサCaは、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームのいずれとも並列接続の関係である。サポートコンデンサCaの一端は、第1相ブリッジアームにおける主正極スイッチK1に接続された一端に接続されており、サポートコンデンサCaの他端は、第1相ブリッジアームにおける主負極スイッチK2に接続された一端に接続されている。
【0043】
電池加熱システムが加熱している過程では、スイッチモジュール内のパワースイッチング素子のオン/オフ状態が絶えず切り替わるので、発生される電流は絶えず変化する。発生された変流電流は電池パックP1を通過し続けるが、電池パックP1には一定の電圧降下が存在し、リップル電圧の発生につながる。サポートコンデンサCaは、母線電圧の平滑化や、電池パックP1のリップル電圧の低減に利用でき、電池加熱システムの安定性を保つことができる。
【0044】
電池加熱システムの回路には浮遊インダクタンスが存在し、浮遊インダクタンスは、スイッチモジュール中のパワースイッチング素子がオフになる際に、非常に高いスパイク電圧を発生し、パワースイッチング素子を焼損する可能性がある。サポートコンデンサCaは、本来の電池パックP1からパワースイッチング素子への浮遊インダクタンスを2つの部分に分ける。サポートコンデンサCaの存在下でパワースイッチング素子がオフになる際にスパイク電圧を発生させる浮遊インダクタンスは、サポートコンデンサCaからパワースイッチング素子までのワイヤハーネスの長さに対応する浮遊インダクタンスのみである。即ち、サポートコンデンサCaは、ワイヤハーネスの浮遊インダクタンスを低減するのにも用いられる。
【0045】
いくつかの例では、
図3は、本発明の実施例におけるバッファモジュールP27の概略構成図である。
図3に示すように、バッファモジュールP27は、第1抵抗R1及び第3コンデンサC3を含む。
【0046】
上部ブリッジアームのスイッチモジュールが並列に接続されたバッファモジュールP27において、第1抵抗R1の一端は、上部ブリッジアームのスイッチモジュールと電池パックP1の正極との間に位置し、第1抵抗R1の他端は、第3コンデンサC3の一端に接続され、第3コンデンサC3の他端は、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されている。例えば、上部ブリッジアームのスイッチモジュールが第1スイッチモジュールP21でる場合、第1抵抗R1の一端は、第1パワースイッチング素子S1における主正極スイッチK1に接続された一端に接続されおり、第3コンデンサC3の他端は、U相ブリッジアームの上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されている。
【0047】
下部ブリッジアームのスイッチモジュールに並列に接続されたバッファモジュールP27において、第1抵抗R1の一端は、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、第1抵抗R1の他端は、第3コンデンサC3の一端に接続され、第3コンデンサC3の他端は、下部ブリッジアームのスイッチモジュールと電池パックP1の負極との間に位置している。例えば、下部ブリッジアームのスイッチモジュールが第2スイッチモジュールP22である場合、第1抵抗R1の一端は、U相ブリッジアームの上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、第3コンデンサC3の他端は、第2パワースイッチング素子S2における主負極スイッチK2に接続された一端に接続されている。
【0048】
さらに、第1抵抗R1の抵抗値は、0.1Ω~20Ωの範囲である。第3コンデンサC3の容量は、0.1μF~15μFの範囲である。
【0049】
他のいくつかの例では、
図4は、本発明の実施例に係る他のバッファモジュールP27の概略構成図である。
図4に示すように、バッファモジュールP27は、第2抵抗R2と、第4コンデンサC4と、第2ダイオードD2と、を含む。
【0050】
上部ブリッジアームのスイッチモジュールが並列に接続されたバッファモジュールP27において、第2抵抗R2の一端は、上部ブリッジアームのスイッチモジュールと電池パックP1の正極との間に位置し、第2抵抗R2の他端は、第4コンデンサC4の一端に接続され、第4コンデンサC4の他端は、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、第2ダイオードD2のアノードは、第2抵抗R2の一端に接続され、第2ダイオードD2のカソードは、第2抵抗R2の他端に接続されている。例えば、上部ブリッジアームのスイッチモジュールが第1スイッチモジュールP21である場合、第2抵抗R2の一端は、第1パワースイッチング素子S1における主正極スイッチK1に接続された一端に接続されており、第4コンデンサC4の他端は、U相ブリッジアームの上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されている。
【0051】
下部ブリッジアームのスイッチモジュールが並列に接続されたバッファモジュールP27において、第2抵抗R2の一端は、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、第2抵抗R2の他端は、第4コンデンサC4の一端に接続され、第4コンデンサC4の他端がは、下部ブリッジアームのスイッチモジュールと電池パックP1の負極との間に位置し、第2ダイオードD2のアノードは、第2抵抗R2の一端に接続され、第2ダイオードD2のカソードは、第2抵抗R2の他端に接続されている。例えば、下部ブリッジアームのスイッチモジュールが第2スイッチモジュールP22である場合、第2抵抗R2の一端は、U相ブリッジアームの上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続され、第4コンデンサC4の他端は、第2パワースイッチング素子S2における主負極スイッチK2に接続された一端に接続されている。
【0052】
さらに、第2抵抗R2の抵抗値は、0.1Ω~20Ωの範囲である。第4コンデンサC4の容量は、0.1μF~15μFの範囲である。第2ダイオードD2は、ショットキーダイオード(Schottky diode)又はSiCダイオードなどであってもよい。
【0053】
電池加熱システムにおけるワイヤハーネス上の浮遊インダクタンスにより、スパイク電圧が生じる可能性がある。本発明の実施例において、スイッチモジュールにおけるパワースイッチング素子がオフになった場合、上記実施例におけるバッファモジュールP27は、パワースイッチング素子短時間で電流通路を提供することができ、パワースイッチング素子のオフは、バッファモジュールP27におけるコンデンサ(第3コンデンサC3又は第4コンデンサC4)が完全に充放電された後にのみ有効となる。
【0054】
電圧が高すぎてパワースイッチング素子が焼損しないようにする。スイッチモジュールにおけるパワースイッチング素子がオンになった場合、上記実施例におけるバッファモジュールP27のコンデンサ(第3コンデンサC3又は第4コンデンサC4)は、パワースイッチング素子電気エネルギーを吸収し、抵抗(第1抵抗R1又は第2抵抗R2)は、コンデンサに蓄えられたエネルギーを消費し、パワースイッチング素子の両端の電圧を母線電圧に上昇するまで緩やかに上昇させることにより、電圧が瞬時に上昇して、パワースイッチング素子を焼損することを回避することができ、そのため、スイッチモジュール内のパワースイッチング素子を保護でき、電池加熱システムの安全性を高めることができる。
【0055】
なお、パワースイッチング素子の最小オン時間は、バッファモジュールP27の時定数によって決定される。バッファモジュールP27の時定数は、τ=RCであり、Rは、バッファモジュールP27における抵抗(第1抵抗R1又は第2抵抗R2)の抵抗値であり、Cは、バッファモジュールP27におけるコンデンサ(第3コンデンサC3又は第4コンデンサC4)の容量値である。
【0056】
いくつかの例では、電池加熱システムは、さらに、電池パックP1の正極とスイッチアセンブリとの間に配置されたヒューズモジュールP4を含む。スイッチアセンブリが主正極スイッチK1を含む場合、或いは、スイッチアセンブリが主正極スイッチK1及び主負極スイッチK2を含む場合、ヒューズモジュールP4は、電池パックP1の正極と主正極スイッチK1との間に配置される。スイッチアセンブリが主負極スイッチK2を含む場合、ヒューズモジュールP4は、電池パックP1の正極とインバータP2との間に配置される。
【0057】
ヒューズモジュールP4は、電池パックP1と電池加熱システムとの接続を遮断するのに使用される。いくつかの例では、ヒューズモジュールP4は、手動サービスディスコネクト(Manual Service Disconnect、MSD)であってもよい。
【0058】
電池加熱システムは、さらに、電池パックP1の負極とスイッチアセンブリとの間に配置された電流センサP5を含む。スイッチアセンブリが主負極スイッチK2を含む場合、或いは、スイッチアセンブリが主正極スイッチK1及び主負極スイッチK2を含む場合、ヒューズモジュールP4は、電池パックP1の負極と主負極スイッチK2との間に配置される。スイッチアセンブリが主正極スイッチK1を含む場合、ヒューズモジュールP4は、電池パックP1の負極とインバータP2との間に配置される。
【0059】
電流センサP5は、電流を収集するのに用いられる。
【0060】
いくつかの例では、電池加熱システムは、さらに、電池管理モジュール(
図2には示されていない)を含む。電池管理モジュールは、モータコントローラP20に制御信号を送信して、モータコントローラP20の駆動信号の出力を制御するのに用いられる。いくつかの例では、電池管理モジュールは、主正極スイッチK1、主負極スイッチK2と共に高圧ボックス内に封入されてもよい。
【0061】
いくつかの例では、電池管理モジュールは、電池パックP1の温度及び荷電状態を収集し、収集された電池パックP1の温度が加熱温度閾値よりも低く、且つ、荷電状態が加熱許容荷電状態閾値よりも高い場合、電池管理モジュールは、モータコントローラP20に制御信号を送信して、モータコントローラP20の駆動信号の出力を制御してもよい。
【0062】
いくつかの例では、電池管理モジュールは、電池パックP1の状態パラメータを収集し、状態パラメータがパラメータ安全範囲を超えると、モータコントローラP20に停止信号を送信して、駆動信号の出力を停止するように電池コントローラを制御する。モータコントローラP20は、出力される駆動信号の周波数及びデューティ比を所望周波数及び所望デューティ比に調整し、目標上部ブリッジアームスイッチモジュール及び目標下部ブリッジアームスイッチモジュールのオン時間及びオフ時間を制御する。
【0063】
いくつかの例では、電池管理モジュールは、電池パックP1の温度が予想温度閾値に達したと確定すると、モータコントローラP20に停止信号を送信する。モータコントローラP20は、停止信号を受信して、駆動信号の出力を停止する。
【0064】
いくつかの例では、電池管理モジュールは、収集された状態パラメータに基づいて、駆動信号の所望周波数及び所望デューティ比を計算し、駆動信号の所望周波数及び所望デューティ比をモータコントローラP20に送信する。
【0065】
いくつかの例では、モータコントローラP20は、スイッチモジュールの温度を収集し、スイッチモジュールの温度がスイッチ温度安全閾値を超えると、駆動信号の出力を停止する。
【0066】
上記電流センサP5は、電流パラメータを電池管理モジュールにアップロードして、電池管理モジュールが分析演算を行うようにしてもよい。電池管理モジュールは、モータコントローラP20に制御信号を送信する前に、電流センサP5をウェイクアップしてもよい。
【0067】
いくつかの例では、電池加熱システムは、さらに、車両制御ユニット(
図2には示されていない)を含み、車両制御ユニットは、示された電池管理モジュールの通信要求に応答して、電池管理モジュールとモータコントローラP20との間の通信権を開放するのに用いられる。電池管理モジュールとモータコントローラP20との間のハンドシェイク通信によって、電池管理モジュールとモータコントローラP20との間で通信接続を構築する。
【0068】
図5は、本発明のさらに他の一実施例に係る電池加熱システムの概略構成図である。
図5は、
図5に示す電池加熱システムがサポートコンデンサを含まない点で、
図3と異なる。
図5に示す電池加熱システムは、さらに、Zソースネットワーク回路を含む。
【0069】
ここで、Zソースネットワーク回路は、スイッチアセンブリとインバータP2との間に配置されている。Zソースネットワーク回路は、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム、第3相ブリッジアームのいずれかのブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールと下部ブリッジアームのスイッチモジュールとが同時にオンになると、インバータP2と電池パックP1が存在する回路とを遮断するのに用いられる。
【0070】
同一ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールと下部ブリッジアームのスイッチモジュールとが同時にオンになると、電池加熱システムでは大電流が発生し、スイッチモジュールのパワースイッチング素子が焼損する。本発明の実施例において、Zソースネットワーク回路は、同一ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチモジュールと下部ブリッジアームのスイッチモジュールとが同時にオンになった場合、インバータP2と電池パックP1が存在する回路とを遮断することができ、即ち、電池加熱システムの回路が遮断され、そのため、スイッチモジュール内のパワースイッチング素子の焼損を回避でき、電池加熱システムの安全性を向上させることができる。
【0071】
いくつかの例では、
図5に示すように、Zソースネットワーク回路は、第1ダイオードD1と、第1インダクタLaと、第1コンデンサC1と、第2インダクタLbと、第2コンデンサC2と、を含む。
【0072】
ここで、第1ダイオードD1のアノードは、電池パックP1の正極に接続され、第1ダイオードD1のカソードは、第1インダクタLaの一端及び第1コンデンサC1の一端に接続されている。第1インダクタLaの他端は、第2コンデンサC2の一端及びインバータP2に接続されている。第1コンデンサC1の他端は、第2インダクタLbの他端及びインバータP2に接続されている。第2インダクタLbの一端は、電池パックP1の負極及び第2コンデンサC2の他端に接続され、第2インダクタLbの他端は、インバータP2に接続されている。第2コンデンサC2の一端は、インバータP2に接続されている。
【0073】
以下、
図5のU相ブリッジアームを例として説明するが、第1インダクタLa及び第2インダクタLbは、いずれも、電気エネルギーを電磁エネルギーに変換して第1インダクタLa及び第2インダクタLbに蓄えることができる。U相ブリッジアームにおける第1パワースイッチング素子S1と第2パワースイッチング素子S2とが同時にオンになると、第1インダクタLaと第1コンデンサC1とが並列に接続され、第1インダクタLaには第1コンデンサC1を介して電流が流れ続ける。第1インダクタLa、第1パワースイッチング素子S1、第2パワースイッチング素子S2及び第1コンデンサC1は、回路を形成する。第1インダクタLaがエネルギーを放出し、第1コンデンサC1の右側両端の電圧が上昇する。第1コンデンサC1の左側両端の電圧は、電池パックP1の電圧である。第1コンデンサC1の右側両端の電圧が第1コンデンサC1の左側両端の電圧よりも高くなると、第1ダイオードD1がオフになり、電池パックP1とインバータP2との間の通路が遮断される。同様に、U相ブリッジアームにおける第1パワースイッチング素子S1と第2パワースイッチング素子S2とが同時にオンになると、第2インダクタLbと第2コンデンサC2とが並列に接続され、第2インダクタLbには第2コンデンサC2を介して電流が流れ続ける。第2インダクタLb、第1パワースイッチング素子S1、第2パワースイッチング素子S2及び第2コンデンサC2は、回路を形成する。第2インダクタLbがエネルギーを放出し、第2コンデンサC2の右側両端の電圧が上昇する。第2コンデンサC2の左側両端の電圧は、電池パックP1の電圧である。第2コンデンサC2の右側両端の電圧が第2コンデンサC2の左側両端の電圧よりも高くなると、第2ダイオードD2がオフになり、電池パックP1とインバータP2との間の通路が遮断される。従って、第1パワースイッチング素子S1及び第2パワースイッチング素子S2の焼損を防止することができる。
【0074】
U相ブリッジアームにおける第1パワースイッチング素子S1と第2パワースイッチング素子S2とが同時にオンにしていない場合、第1ダイオードD1がオンになる。第1コンデンサC1は、電池パックP1、第1コンデンサC1、第2インダクタLbで形成される回路によって充電される。第2コンデンサC2は、電池パックP1、第2コンデンサC2、第1インダクタLaで形成される回路によって充電される。第1インダクタLa及び第2インダクタLbは、Zソースネットワーク回路以後の負荷にエネルギーを供給する。
【0075】
なお、本明細書における各実施例は段階的に記載されているが、各実施例の間では同一又は類似した部分を相互に参照することができ、各実施例は、他の実施例と異なる点を中心に説明した。なお、本発明は、前述且つ図示の特定の構成に限定されるものではない。当業者は、本発明の要旨を理解した後、様々な変更、修正、及び追加を行うことができる。
【0076】
前述の実施例はいずれも例示的であって制限的なものではないことは、当業者であれば理解すべきである。様々な実施例に見られる様々な技術的特徴を組み合わせて、有益な効果を得ることができる。当業者であれば、図面、明細書、及び特許請求の範囲を検討した上で、開示された実施例の他の変形例を理解且つ実施できることは理解すべきである。特許請求の範囲において、「含む」、「備える」、「有する」という用語は、他の装置又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つ」は、複数を排除するものではなく、「第1」、「第2」という用語は、任意の特定の順序を表すものではなく、名称を示すものである。特許請求の範囲における任意の符号は、いずれも、保護の範囲を限定するものとして解釈されてはいけない。特許請求の範囲に記載された複数の部分の機能は、単一のハードウェア又はソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。異なる従属クレームに特定の技術的特徴が現れることは、これらの技術的特徴の組み合わせが有益な効果を取得できないことを意味するものではない。