(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ライトモジュールシステム及びライトモジュールシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20231124BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20231124BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20231124BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20231124BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20231124BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231124BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231124BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20231124BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20231124BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20231124BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
F21V7/00 590
F21V14/04
F21V9/40 400
B60Q1/26 Z
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W103:60
F21W102:155
F21W102:20
(21)【出願番号】P 2021534986
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085491
(87)【国際公開番号】W WO2020127152
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】プランク、ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】シュリンガー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】モーゼル、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ライジンガー、ベッティーナ
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0086254(US,A1)
【文献】特開2014-189198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21V 7/00
F21V 14/04
F21V 9/40
B60Q 1/26
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 103/60
F21W 102/155
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含むライトモジュールシステムであって、
前記第1ライトモジュールは前記第2ライトモジュールに依存して制御可能であること、
・前記第1ライトモジュールは、非高解像度のライトモジュールとして構成されており、かつ、該ライトモジュールシステムの前方の領域に第1タイプ(1、10)の光分布を生成するよう構成されていること、但し該第1タイプ(1、10)の光分布は明暗調節可能であること、
・前記第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されていること、
・前記第1タイプの光分布の所定部分(4)には最小明るさが割り当てられていること、及び、
・前記第2ライトモジュールは、1つの運転モードにおいて、少なくとも1つの路面投影用光分布(3)を生成するよう、但し該少なくとも1つの路面投影用光分布(3)は情報
それ自体のみの光学表示であり、及び、その際、前記第1タイプの光分布を少なくとも部分的に暗くすることを前記第1ライトモジュールに実行させるようかつ該第1タイプの光分布の所定部分(4)を明るくするよう、構成されていること
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、前記運転モードにおいて、前記第1タイプの光分布を暗くすることによって該第1タイプの光分布の所定部分(4)において最小明るさが達成されたとき、該光分布の所定部分(4)を明るくするよう、構成されていること
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含むこと
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第1ライトモジュールは粗解像度のロービーム用ライトモジュールであること、前記第1タイプの光分布はロービーム用光分布(1、10)であること、最小明るさが割り当てられている前記第1タイプの光分布の所定部分(4)は明暗境界(2)を含むこと
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは更なる運転モードで運転可能であること、該第2ライトモジュールは該更なる運転モードにおいて第2タイプの光分布を生成すること、前記第1タイプの光分布と該第2タイプの光分布は一緒に全体光分布を形成すること
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2タイプの光分布は部分ハイビーム用光分布であること
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載のライトモジュールシステムにおいて、
該ライトモジュールシステムは、前記第1ライトモジュール及び前記第2ライトモジュールに割り当てられており、及び、該第1ライトモジュール及び該第2ライトモジュールを制御するようかつ該第1ライトモジュールを該第2ライトモジュールに依存して制御するよう構成されている制御装置を更に含むこと
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、-20°~+20°、又は-12°~+12°、又は-8.5°~+8.5°、又は-7°~+7°の水平角度領域において高解像度の光分布を照射するよう、構成されていること
を特徴とするライトモジュールシステム。
【請求項9】
自動車前照灯のライトモジュールシステムの制御方法において、
該ライトモジュールシステムは、少なくとも1つの情報を光学的に表示する光分布を生成すること、
該方法は、以下のステップ:
・ライトモジュールシステムを提供すること、但し、該ライトモジュールシステムは第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含み、該第1ライトモジュールは該第2ライトモジュールに依存して制御可能であり、該第1ライトモジュールは非高解像度のライトモジュールとして構成されておりかつ該第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されていること;
・前記第1ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に明暗調節可能な光分布(1、10)を生成すること、但し、該明暗調節可能な光分布(1、10)の所定部分(4)には最小明るさが割り当てられていること;
・前記情報
それ自体のみを表示するために、前記第2ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に少なくとも1つの路面投影用光分布(3)を生成すること;
・暗くされた光分布(10)を生成するために、少なくとも部分的に前記明暗調節可能な光分布(1)を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させること、
・前記最小明るさが割り当てられている前記暗くされた光分布(10)の所定部分(4)を前記第2ライトモジュールによって明るくすること
を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記明暗調節可能な光分布(1)を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させることは、前記少なくとも1つの路面投影用光分布(3)の生成後直ちに実行されること
を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法において、
前記暗くされた光分布(10)の所定部分(4)は、前記第1ライトモジュールが前記明暗調節可能な光分布を暗くし始めた後直ちに又はこの所定部分(4)において前記最小明るさが達成されると同時に、明るくされること
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9~11の何れかに記載の方法において、
前記最小明るさが割り当てられている前記明暗調節可能な光分布の所定部分は明暗境界を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9~12の何れかに記載の方法において、
前記光分布は粗解像度のロービーム用光分布(1)であること、及び、前記最小明るさが割り当てられている前記明暗調節可能な光分布の所定部分(4)は明暗境界(2)を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~8の何れかに記載のライトモジュールシステムに請求項9~13の何れかに記載の方法を実行させる指令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータ読み取り可能媒体を備えた、自動車制御装置。
【請求項17】
請求項1~8の何れかに記載のライトモジュールシステムを少なくとも1つ及び/又は請求項15に記載のコンピュータ読み取り可能媒体を少なくとも1つ又は請求項16に記載の自動車制御装置を少なくとも1つ含む自動車ないし自動車前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含むライトモジュールシステムであって、前記第1ライトモジュールは前記第2ライトモジュールに依存して制御可能であり、前記第1ライトモジュールは、非高解像度のライトモジュールとして構成されており、かつ、該ライトモジュールシステムの前方の領域に第1タイプの光分布を生成するよう構成(適合)されており、但し該第1タイプの光分布、好ましくはその光分布全体は明暗調節可能であり、前記第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されており、前記第1タイプの光分布の所定部分(一部分)には最小明るさが割り当てられて(設定されて)いる、ライトモジュールシステムに関する。
【0002】
更に、本発明は、自動車前照灯のライトモジュールシステムの制御方法であって、該ライトモジュールシステムが少なくとも1つの情報を光学的に表示する光分布を生成する、方法に関する。
【0003】
更に、本発明は、上記の種類のライトモジュールシステムに上記の種類の方法を実行させる指令を含むコンピュータプログラム、並びに、そのようなコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【0004】
更に、本発明は、上記の種類のコンピュータ読み取り可能媒体を備えた、自動車制御装置、とりわけ上記の種類のライトモジュールシステムのための制御装置に関する。
【0005】
更に、本発明は、上記の種類のライトモジュールシステムを少なくとも1つ及び/又は上記の種類のコンピュータ読み取り可能媒体を少なくとも1つ又は上記の種類の自動車制御装置を少なくとも1つ含む自動車ないし自動車前照灯に関する。
【背景技術】
【0006】
今日既に、自動車前照灯は、中央領域の大部分においてフレキシブルな光分布ないし配光パターン(複数)を生成する可能性を創出する高解像度のライトモジュールを備えている。とりわけ、そのようなライトモジュールによって、自動車の前方又は側方の道路上に種々のシンボルが投影されることができる。そのため、高解像度のライトモジュールは情報の光学的な表示のために使用されることができ、情報の光学的表示として役立つ相応のシンボル投影は、しばしば、Advanced Information Beam(AIB)という概念でまとめられる。高解像度のライトモジュールに加えて、そのような自動車前照灯では、光分布の縁部領域をカバーするために、伝統的な、大抵は低いないし粗い解像度を有するライトモジュールが補足手段として付加的に使用される。
【0007】
上記の理由から、第1タイプの光分布全体についての上記の明暗調節可能性(Dimmbarkeit)は、光分布全体が明暗調節可能であることだけではなく、光分布の予め定められた部分が当該光分布の残りの(他の)部分とは独立に又は当該部分に依存して明暗調節可能であることとして理解されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
AIBを実行する場合、情報を光学的に表示するシンボルが、明確に視認可能であるように、光分布の前域範囲(Vorfeldbereich)において十分なコントラストで表示されることが望まれる。
【0010】
本発明の課題は、光分布の予め与えられた、好ましくは重要な領域の明るさを損なうことなく、とりわけこの領域における最小明るさが下回れることなく、光学的に表示される情報の知覚可能性(視認性)を改善することを可能にするライトモジュールシステム及びライトモジュールシステムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の視点により、第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含むライトモジュールシステムが提供される。該ライトモジュールシステムにおいて、
前記第1ライトモジュールは前記第2ライトモジュールに依存して制御可能であること、
・前記第1ライトモジュールは、非高解像度のライトモジュールとして構成されており、かつ、該ライトモジュールシステムの前方の領域に第1タイプの光分布を生成するよう構成されていること、但し該第1タイプの光分布は明暗調節可能であること、
・前記第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されていること、
・前記第1タイプの光分布の所定部分には最小明るさが割り当てられていること、及び、
・前記第2ライトモジュールは、1つの運転モードにおいて、少なくとも1つの路面投影用光分布を生成するよう、但し該少なくとも1つの路面投影用光分布は情報それ自体のみの光学表示であり、及び、その際、前記第1タイプの光分布を少なくとも部分的に暗くすることを前記第1ライトモジュールに実行させるようかつ該第1タイプの光分布の所定部分を明るくするよう、構成されていること
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、
自動車前照灯のライトモジュールシステムの制御方法が提供される。該方法において、該ライトモジュールシステムは、少なくとも1つの情報を光学的に表示する光分布を生成し、
該方法は、以下のステップ:
・ライトモジュールシステムを提供すること、但し、該ライトモジュールシステムは第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含み、該第1ライトモジュールは該第2ライトモジュールに依存して制御可能であり、該第1ライトモジュールは非高解像度のライトモジュールとして構成されておりかつ該第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されていること;
・前記第1ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に明暗調節可能な光分布を生成すること、但し、該明暗調節可能な光分布の所定部分には最小明るさが割り当てられていること;
・前記情報それ自体のみを表示するために、前記第2ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に少なくとも1つの路面投影用光分布を生成すること;
・暗くされた光分布を生成するために、少なくとも部分的に前記明暗調節可能な光分布を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させること、
・前記最小明るさが割り当てられている前記暗くされた光分布の所定部分を前記第2ライトモジュールによって明るくすること
を含むこと
を特徴とする(形態9)。
本発明の第3の視点により、本発明のライトモジュールシステムに本発明の方法を実行させる指令を含むコンピュータプログラムが提供される(形態14)。
本発明の第4の視点により、本発明のコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能媒体が提供される(形態15)。
本発明の第5の視点により、本発明のコンピュータ読み取り可能媒体を備えた、自動車制御装置が提供される(形態16)。
本発明の第6の視点により、本発明のライトモジュールシステムを少なくとも1つ及び/又は本発明のコンピュータ読み取り可能媒体を少なくとも1つ又は本発明の自動車制御装置を少なくとも1つ含む自動車ないし自動車前照灯が提供される(形態17)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、前記運転モードにおいて、前記第1タイプの光分布を暗くすることによって該第1タイプの光分布の所定部分において最小明るさが達成されたとき、該光分布の所定部分を明るくするよう、構成されていることが好ましい。
(形態3)形態1又は2のライトモジュールシステムにおいて、
前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含むことが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかのライトモジュールシステムにおいて、
前記第1ライトモジュールは粗解像度のロービーム用ライトモジュールであること、前記第1タイプの光分布はロービーム用光分布であること、最小明るさが割り当てられている前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含むことが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかのライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは更なる運転モードで運転可能であること、該第2ライトモジュールは該更なる運転モードにおいて第2タイプの光分布を生成すること、前記第1タイプの光分布と該第2タイプの光分布は一緒に全体光分布を形成することが好ましい。
(形態6)形態5のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2タイプの光分布は部分ハイビーム用光分布であることが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかのライトモジュールシステムにおいて、
該ライトモジュールシステムは、前記第1ライトモジュール及び前記第2ライトモジュールに割り当てられており、及び、該第1ライトモジュール及び該第2ライトモジュールを制御するようかつ該第1ライトモジュールを該第2ライトモジュールに依存して制御するよう構成されている制御装置を更に含むことが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかのライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、-20°~+20°、又は-12°~+12°、又は-8.5°~+8.5°、又は-7°~+7°の水平角度領域において高解像度の光分布を照射するよう、構成されていることが好ましい。
(形態9)上記本発明の第2の視点参照。
(形態10)形態9の方法において、
前記明暗調節可能な光分布を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させることは、前記少なくとも1つの路面投影用光分布の生成後直ちに実行されることが好ましい。
(形態11)形態9又は10に記載の方法において、
前記暗くされた光分布の所定部分は、前記第1ライトモジュールが前記明暗調節可能な光分布を暗くし始めた後直ちに又はこの所定部分において前記最小明るさが達成されると同時に、明るくされることが好ましい。
(形態12)形態9~11の何れかの方法において、
前記最小明るさが割り当てられている前記明暗調節可能な光分布の所定部分は明暗境界を含むことが好ましい。
(形態13)形態9~12の何れかの方法において、
前記光分布は粗解像度のロービーム用光分布であること、及び、前記最小明るさが割り当てられている前記明暗調節可能な光分布の所定部分は明暗境界を含むことが好ましい。
(形態14)上記本発明の第3の視点参照。
(形態15)上記本発明の第4の視点参照。
(形態16)上記本発明の第5の視点参照。
(形態17)上記本発明の第6の視点参照。
【0013】
本課題は上記の種類のライトモジュールシステムが本発明に応じ以下のように構成されることによって、即ち、第2ライトモジュールが、1つの運転モードにおいて、少なくとも1つの路面投影用光分布を生成するよう、但し該少なくとも1つの路面投影用光分布は情報の光学的表示を含むか又は当該表示であり、並びに、その際、第1タイプの光分布を少なくとも部分的に―好ましくは漸次的に―暗く(明るさ減少ないし減光)する(低下により暗くする:herab zu dimmen)ことを第1ライトモジュールに(直接的に又は間接的に)実行させるようかつ該第1タイプの光分布の所定部分(一部分)を(選択的に)明るく(明るさ増大ないし増光)するよう、構成(適合)されていることによって、解決される。好ましくは、第2ライトモジュールは、路面投影用光分布の周囲の直近の領域の外部においてその明るさが低減された第1タイプの光分布の全ての領域ないし部分(複数)を(選択的に)明るくする。
【0014】
「光分布の所定部分(一部分)に最小明るさが割り当てられている」という表現は、光分布のこの所定部分に対し、例えば光分布がその完全な明るさから低下により(単調に)暗くされる(heruntergedimmt)ないしは元通りに暗くされる(zurueckgedimmt)場合に下回られてはならない最小の明るさが規定されているとして理解されるものである。特定の自動車照明システムのための最小明るさは、例えば光分布又は光分布の所定部分の特定の点及び/又はセグメントにおいて規定されることができる(例えば2010年8月24日の欧州連合のABl. L 222、1-61頁参照)。
【0015】
「第2ライトモジュールが、1つの運転モードにおいて、少なくとも1つの路面投影用光分布を生成するよう、・・・、及び、その際、第1タイプの光分布を少なくとも部分的に暗く(明るさ減少ないし減光)する(低下により暗くする:herab zu dimmen)ことを第1ライトモジュールに(直接的に又は間接的に)実行させるよう、構成(適合)されている」という表現は、第2ライトモジュールが、路面投影用光分布が生成された後、好ましくはその後直ちに、相応の制御信号(指令)を第1ライトモジュールへ送信し、これによって、第1ライトモジュールに―この場合直接的に―第1タイプの光分布を少なくとも部分的に暗くすることを実行させることを表現している。
【0016】
例えば、第2ライトモジュールは、路面投影用光分布が生成された直後に、第1タイプの光分布の全部又は一部分のみを好ましくは漸次的に暗くすることを第1ライトモジュールに実行させることができる。
【0017】
第2ライトモジュールが上記の運転モードにおいて、第1タイプの光分布が暗くされているとき、光分布の所定部分を(選択的に)明るくすることによって、(第2ライトモジュールは)第1ライトモジュールを支援し、この所定部分における明るさが実質的に損なわれないようにし、とりわけ一定に維持し、最小明るさが下回られることが全くないようにする。このことは、第2ライトモジュールは光分布の所定部分を早くとも第1ライトモジュールが第1タイプの光分布を暗くし始める時点において(選択的に)明るくし始めること―この場合光分布の該所定部分の明るさは実質的に維持される―、及び、遅くとも光分布の該所定部分の明るさが最小明るさに到達するないし最小明るさに低下される時点において(選択的に)明るくし始めること―この場合光分布の該所定部分における明るさは短時間だけ低減される―を意味する。
【0018】
本発明との関連において、「高解像度のライトモジュール」ないし「非高解像度のライトモジュール」という概念は、高解像度のないし非高解像度の光分布を生成するよう構成(適合)されたライトモジュールとして理解されるものである。
【0019】
「光分布の解像度」は、この光分布の遮光されるべき最小のないし独立に制御可能な最小の領域によって定義されることができる。
【0020】
例えば可及的に小さい道路使用者として1mの幅を有するオートバイを想定すると、この道路使用に対しては適切には1.5mの(水平方向の)領域が遮光されることが望ましいであろう。この領域は前照灯のすぐそばではなくある程度の距離の所で遮光されることが望ましいことは明らかである。この距離を計算するために、例えば前照灯が放射することが許される215000cd(カンデラ)の法的に許容される最大光度(Lichtstaerke)が考慮される。凡そ463mの距離の場合、215000cdは1lx(ルクス)の照度(Beleuchtungsstaerke)に相当する―この距離はしばしば「1ルクス限界(Grenze)」と称される。他の道路使用者、例えば上記のオートバイが1ルクス限界の内部にある場合、該道路使用者は、眩惑されないようにするために、遮光されることが望ましい。463mの距離の所における1.5mの領域は凡そ0.18°の(前照灯から見た)開口角従って凡そ0.18°の解像度に相当する。
【0021】
要約すると、光分布は―この光分布を生成するライトモジュールも―解像度の観点から以下のように特徴付けられることができる:
・高解像度光分布:解像度は0.2°以下、例えば0.1°~0.18°;
・高性能解像度:解像度は0.2°~0.5°;
・移行領域:解像度は0.5°~1°;
・中解像度:解像度は1°~3°;
・粗解像度:3°超。
【0022】
解像度は、ライトモジュールによって実現される前照灯機能にも相当し得る。例えば、純粋なロービーム機能及び/又は―非グレアフリー―ハイビーム機能のために、粗解像度のライトモジュールを使用することができる。高性能解像度を達成可能な前照灯モジュールは、グレアフリー(ギラツキなし)のハイビームを生成することができる(例えばLEDマトリックスシステム)。中解像度の光分布を生成可能なライトモジュールは、グレアフリーハイビームに加えて、当該ライトモジュールの向きを変える必要なしに、コーナリングライト(Kurvenlicht)のような更なる動的ロービーム(減光ライト)機能も生成することができる。高解像度ライトモジュールは、道路上(路面)に又は他の投影面上にシンボル、ライン、連続文字(Schriftzuegen)等の投影を生成するよう構成(適合)されたライトモジュールである。
【0023】
第2ライトモジュールはDLPライトモジュールであることが好ましい。そのようなライトモジュールの解像度はDLPライトモジュールに使用されるDLPチップの解像度によって決定されることができる。好ましい一実施形態では、DLPチップは1.3メガピクセルないし1156×1156ピクセルの解像度を有する。そのため、DLPライトモジュールは上記の0.2°よりも光分布の格段により大きな解像度を達成することができる。
【0024】
第2ライトモジュールのための技術としては、更に、DMD、レーザスキャナ、LCD、高解像度LEDアレイ等のような更なる高解像度モジュールが考慮の対象になる。
【0025】
本発明との関連において、「ライトモジュールシステムの前方の領域」という概念は、該システムのライトモジュールの―主放射方向へ見て(向かって)―前方の領域として理解されるものである。ライトモジュールシステムのライトモジュールが自動車前照灯に組み込まれている場合、この領域は自動車前照灯の前方の領域に関連付けられる。光分布(配光パターン)とは、自動車光技術(照明技術)の分野では、文脈に応じて、ライトモジュールないし自動車前照灯によって生成される3次元の光錐(Lichtkegel)―即ちライトモジュールないし自動車前照灯の円錐状に放射される光―、或いは、路面(地面)上における―この場合しばしば「路面(地面)投影」という概念が使用される―又は主放射方向に対し直角ないし垂直に配置された仮想の面(平面)上におけるこの光錐の2次元の投影として理解されるものである。そのような面(平面)としては、例えばライトモジュール、ライトモジュールシステム又は自動車前照灯の前方凡そ25mの距離の所に配置される光(照明)技術試験所の測定スクリーンが使用可能である。上記の領域は典型的にはライトモジュールシステムの前方凡そ1mの所から始まる。
【0026】
「暗く(減光)されていない(ungedimmte)」ないし「暗く(減光)された(gedimmte)」光分布という概念は、減少されていないないし減少された明るさを有する光分布として理解されるものである。
【0027】
最小明るさとは、例えば法律上、例えばECE、FMVSS、AIS、CCCによって要求される最小の明るさであり得る。例えば、ロービーム用光分布の非対称的明暗境界の非対称上り勾配の領域に、ECE-R123に応じた最小明るさ値が規定される。
【0028】
第1ライトモジュールは、光分布の明暗調節をするために、例えば明暗調節可能な(調光可能な)発光手段(レーザダイオード、LED等のような半導体系光源)及び/又はその光通過性が変更可能な絞り装置を含むことができる。そのような絞り装置は、例えばLCD、LCoS等を含むこと又はそのようなものとして構成されることができる。
【0029】
ライトモジュールシステムは、第1ライトモジュール及び第2ライトモジュールに割り当てられている制御装置であって、第1ライトモジュール及び第2ライトモジュールを制御するようかつ第1ライトモジュールを第2ライトモジュールに依存して、既述のように、制御するよう構成(適合)されている制御装置を更に含む場合、目的に適合可能である。上述した制御信号が第2ライトモジュールから第1ライトモジュールへ制御装置を介して到達する場合は、第2ライトモジュールは第1ライトモジュールを間接的に制御する。更に、制御装置は第2ライトモジュールを以下に例示的に説明する種々の運転モードで運転すること及び運転モード間でスイッチすることができる。制御装置は例えば上記の発光手段及び/又は上記の絞り装置も制御することができる。例えば、制御装置は、制御信号を、第1ライトモジュール及び第2ライトモジュールへ送信すること、及び、第1ライトモジュールから及び第2ライトモジュールから受信することができる。とりわけ、制御装置は、第2ライトモジュールを、及び、第2ライトモジュールに依存して第1ライトモジュールを、以下のように制御することができる:
・第2ライトモジュールへの指令1の送信:シンボルの投影(路面投影用光分布が生成される);
・第1ライトモジュールへの指令2の送信:光分布を少なくとも部分的に暗くする(第1タイプの光分布は、少なくとも、路面投影用光分布と最小明るさが割り当てられている光分布の部分を包囲する領域において暗くされる);
・第2ライトモジュールへの指令3の送信:最小明るさが割り当てられている光分布の部分を(選択的に)明るくする((その結果)光分布のこの部分の明るさは好ましくは不変に維持される)。
【0030】
好ましい一実施形態では、路面投影用光分布は第1タイプの光分布内に完全に含まれていることが可能である。「含む(enthalten)」、「重なる(ueberlappen)」等のような概念は、光分布の位置ないしこれらの光分布の領域の位置との関連において、相応の光錐の上記の投影に関するものであることは明らかである。このことは更に以下の
図2によって明らかにされる。
【0031】
更に、第2ライトモジュールは、上記の運転モード(少なくとも1つの路面投影用光分布が生成される運転モード)において、第1タイプの光分布を暗くすることにより第1タイプの光分布の所定部分に最小明るさが(明るさ低下により:von oben)達成されると、光分布の所定部分を(選択的に)明るくするよう、構成(適合)されていることが可能である。この場合、暗くされた光分布の所定部分は、最小明るさが達成されると直ちに―即ち最小明るさの達成と同時に、(選択的に)明るくされることについて、強調されてしかるべきである。
【0032】
これにより、第1タイプの明暗調節可能な光分布の、例えば明暗調節可能なロービーム用光分布の支援(補助)が更なる条件の下で―具体的には暗くされた光分布の所定部分において例えば該光分布の明暗境界を含む領域において最小明るさが達成される場合に―実行されるという利点が得られる。かくして、第2ライトモジュールが暗くされた光分布の所定部分を(選択的に)明るくする時間は短縮され、その結果、エネルギ消費が適正化(最適化)されることができる。
【0033】
上記の制御装置には、例えば、ライトモジュールシステムによって生成された光分布の明るさを測定するために、カメラのようなセンサ装置が割り当てられる(配される)ことができる。尤も、生成された光分布における明るさの測定は必ずしも不可欠ではない。例えば、第1ライトモジュールが減光閾値を減光パラメータとして含むことが考えられる。第1ライトモジュールがこの減光閾値に減光されると、暗くされた光分布の上記所定部分における最小明るさ値が(自動的に)達成される。減光閾値に到達するとないしは明るさが減光閾値を下回ると、第1ライトモジュールはこのことを第2ライトモジュールへ(直接的に又は制御装置を介して)伝達することができる。この場合、第2ライトモジュールは光分布の上記の所定部分を(選択的に)明るくする(増光する)ことを開始することができる。
【0034】
更に、最小明るさが割り当てられている第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含むことができると、有利であり得る。
【0035】
最小明るさは例えば最小照度(Mindestbeleuchtungsstaerke)で表されることができる。
【0036】
好ましい一実施形態では、第1ライトモジュールは粗解像度のロービーム用ライトモジュールであること、第1タイプの光分布はロービーム用光分布であること、最小明るさが割り当てられている第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界、例えば非対称明暗境界を含むことが可能である。
【0037】
更に、第2ライトモジュールは更なる運転モードで運転可能であること、第2ライトモジュールは更なる運転モードにおいて第2タイプの光分布を生成すること、第1タイプの光分布と第2タイプの光分布は一緒に(両者合わせて)全体光分布を形成すること、第2タイプの光分布は好ましくは部分ハイビーム用光分布であること、全体光分布はハイビーム用光分布を形成することが有利に可能である。
【0038】
部分ハイビーム用光分布は、ロービーム用光分布と一緒に(組み合わせて)ハイビーム用光分布を形成する部分光分布として理解されるものである。
【0039】
第2ライトモジュールは、凡そ-20°~凡そ+20°、例えば凡そ-12°~凡そ+12°、とりわけ凡そ-8.5°~凡そ+8.5°、好ましくは凡そ-7°~凡そ+7°の水平角度領域において高解像度の光分布を照射するよう、構成(適合)されていると、目的に適合することができる。
【0040】
「水平角度領域」という概念は、主放射方向に対し直角(垂直)をなす面(平面)への光分布の2次元投影における角度領域として理解されるものである。しばしば、この用語は光技術試験所における上記の測定スクリーンに関連する。この水平角度領域は光錐のアジマス方向の開口角にも相当する。
【0041】
好ましい一実施形態では、光学的に表示される情報は以下の少なくとも1つであり得る:方向指示矢印(Richtungspfeil)のようなナビゲーション情報;連続文字;ロゴ;例えば投影される横断歩道の形での、歩行者用メッセージ;ウェルカムロゴ等。
【0042】
上記の課題は、上記の種類の方法が本発明に応じ以下のステップを含むことによっても解決される:即ち該方法が、
・ライトモジュールシステムを提供するステップ、但し、該ライトモジュールシステムは第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含み、該第1ライトモジュールは該第2ライトモジュールに依存して制御可能であり、該第1ライトモジュールは非高解像度のライトモジュールとして構成されておりかつ該第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されている;
・前記第1ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に明暗調節可能な光分布を生成するステップ、但し、該明暗調節可能な光分布の所定部分(一部分)には最小明るさが割り当てられている;
・前記情報を光学的に表示するために、前記第2ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に少なくとも路面投影用光分布を生成するステップ;
・暗く(明るさ減少ないし減光)された光分布を生成するために、少なくとも部分的に前記明暗調節可能な光分布を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させるステップ;
・前記最小明るさが割り当てられている前記暗くされた光分布の所定部分を前記第2ライトモジュールによって(選択的に)明るく(明るさ増大ないし増光)するステップ
を含むことによって解決される。
【0043】
情報の光学的表示に使用される路面投影用光分布は、第1タイプの明暗調節可能な光分布によって照射される領域内に完全に含まれることが好ましい。より正確に言えば、路面への路面投影用光分布の2次元投影は、第1タイプの明暗調節可能な光分布の2次元路面投影によって包囲されている。
【0044】
好ましくは、第2ライトモジュールは、路面投影用光分布のコントラストを(可及的に早く)増強するために、該第2ライトモジュールが路面投影用光分布を生成するないし生成したら直ちに、明暗調節可能な光分布を暗くすることを第1ライトモジュールに実行させる。好ましくは、暗くされた光分布の所定部分は、第1ライトモジュールが第1タイプの光分布を暗くし始めた後直ちに、又は、この所定部分において最小明るさが達成される若しくはこの所定部分における明るさが最小明るさに低下されると同時に、(選択的に)明るくされる。
【0045】
既述のように、(元通りに(zurueck-)又は低下により(herab-))暗くされた光分布の所定部分において最小明るさが達成されることができる。尤も、このことはごく短時間だけ起こることである。なぜなら、最小明るさが達成されるや否や、第2ライトモジュールは、所定部分を(選択的に)明るくし、この所定部分の明るさが再び増大されかつ最小明るさ値が下回られないようにするからである。
【0046】
課題はコンピュータプログラムによっても解決される。コンピュータプログラムは、上記のライトモジュールシステムに上記の方法を実行させる指令を含む。コンピュータプログラムは、ライトモジュールシステムに、例えば第2ライトモジュールに、とりわけ第2ライトモジュールの記憶媒体に記憶されていることが可能である。
【0047】
好ましい一実施形態では、コンピュータプログラムは上記の制御装置に記憶されていること、及び、コンピュータプログラムの指令は制御装置に上記の方法を実行させることが可能である。
【0048】
課題はそのようなコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能媒体によっても解決される。
【0049】
上記の制御装置はコンピュータ読み取り可能媒体を含むことが可能である。
【0050】
更に、課題は上記のコンピュータ読み取り可能媒体を備えた自動車制御装置によって解決される。
【0051】
既述のように、ライトモジュールシステムは、上述したように、第1ライトモジュール及び第2ライトモジュールを相応に制御する制御装置を含むことができる。自動車制御装置がこの制御装置であると好都合である。
【0052】
更に、課題は少なくとも1つの上記ライトモジュールシステム及び/又は少なくとも1つの上記コンピュータ読み取り可能媒体又は少なくとも1つの上記自動車制御装置を含む自動車ないし自動車前照灯によって解決される。自動車制御装置ないしライトモジュールシステムの制御装置は例えば1つ以上の自動車前照灯に設けられること、及び、1つ以上の自動車前照灯の組込部分であることが可能である。この制御装置は自動車の中央電子制御システムの組込部分でもあり得る。
【0053】
本発明と更なる利点は、以下に、図面に具体的に示されている例示的な実施例を用いて詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図2】支援されたロービーム用光分布の一例と路面投影用光分布の一例。
【実施例】
【0055】
以下の図においては―別段の指定がない限り―同じ図面参照符号は同じ構成要素を表す。
【0056】
図1及び
図2は、上記の方法に応じて制御される上記のライトモジュールシステムによって生成されることができる光分布を示す。このばあい、ライトモジュールシステムは自動車前照灯ないし自動車に配設されている。
【0057】
次に
図1を参照する。
図1は、例えば光技術試験所の測定スクリーンに結像されている明暗調節可能なロービーム用光分布1の一例を示す。
図1からは、大抵の光技術試験所で使用される直交座標系も見出される。座標系のX軸はHH線又は水平線である。これは、測定スクリーン上において地平線に相当する線である。X軸は道路(試験所では仮想の道路)に対し平行に延伸している。VV線又は垂直線は、HH線に対し直角に立設されており、ライトモジュールの中心からの測光上の光軸と測定スクリーンとの交点においてHH線と交差する。HV点は座標系の原点である。明暗調節可能なロービーム用光分布1は非対称明暗境界(線)2を有する。
【0058】
明暗調節可能なロービーム用光分布1は、上記の第1ライトモジュールによって生成される第1タイプの光分布に相当し得る。
【0059】
図2は、暗く(明るさ減少ないし減光)された状態―これは異なるハッチングによって示されている―にある明暗調節可能なロービーム用光分布10の一例を示し、この状態において、暗く(明るさ減少ないし減光)されたロービーム用光分布は減少(低下)された明るさ(明るさが減少された部分)を有する。更に、
図2では、紙面右側に向かって曲げられた矢印の形の路面投影用光分布3が見出される。矢印は情報の光学的表示である。これによって、例えば右折が予定されていることを合図することができる。既述のように、路面投影用光分布3は種々異なるように構成可能であり、かくして、他の情報を光学的に表示することができる。例えば、路面投影用光分布3は、方向指示矢印のようなナビゲーション情報;連続文字;ロゴ;例えば投影される横断歩道の形での、歩行者用メッセージ;ウェルカムロゴ等であり得る。この種の路面投影用光分布はしばしばグラフィック情報の表示のために使用され、既述のように、“AIB”として略称される。路面投影用光分布3は、上述の第2ライトモジュールが(第1)運転モードで運転される際に、該第2ライトモジュールによって生成される。路面投影用光分布3が生成されると直ちに、第2ライトモジュールは第1ライトモジュールにロービーム用光分布1を暗く(明るさ減少)させる。次いで、第1ライトモジュールは暗く(明るさ減少)されたロービーム用光分布10を生成する。ロービーム用光分布1は、路面投影用光分布3が生成された後に遅れて(どちらかといえば短時間遅れて)暗くされ得る。かくして、路面投影用光分布3のコントラスト及び視認性は向上され、もって、光学的に表示される情報の知覚可能性は改善される。既述のように、ロービーム用光分布の所定部分(一部分)4には、予め設定される最小明るさが割り当てられている。この最小明るさは例えば法律上規定された最小の明るさであり得る。即ち、暗く(明るさ減少ないし減光)された状態において、ロービーム用光分布1は最小明るさを下回らないことないしは最小明るさ値を下回らないことが望まれている。とりわけ、最小明るさが法律上規定されている場合、当該最小明るさは下回られてはならない。更なる(第2の)運転モードでは、第2ライトモジュールは部分ハイビーム用光分布を生成することができる。
【0060】
図1及び
図2から、本発明との関連において「光分布の(所定)部分」という概念は空間的に限定された領域として理解されるものであることが分かる。そのような部分の明るさは、当該部分の形状が変化されることなく、変更(調節)可能である。
【0061】
最小明るさを下回らないようにするために、第2ライトモジュールは、上記の(第1)運転モードで運転されておりかつ路面投影用光分布3を生成している間に、ロービーム用光分布1の所定部分4を(選択的に)明るく(明るさ増大ないし増光)することによって、第1ライトモジュールを支援(補助)する。
図2からは、この所定部分4は非対称明暗境界2の一部分を含むことが見出される。第2ライトモジュールによって所定部分4を明るくすることによって、例えば、この所定部分4において、暗くされていないロービーム用光分布1の場合と同じ明るさ―これは(
図1のものと)同じハッチングで表されている―を達成することが可能になる。上記のライトモジュールシステム又は方法又は自動車前照灯又は自動車を用いることにより、第2ライトモジュールによって(選択的に)明るくされる第1タイプの光分布の所定部分についての同じ明るさは、他の光分布について又は光分布の別異に構成された部分についても達成可能であることは明らかである。
【0062】
本書においては、簡潔さを目的として、本発明の説明のために役立ち得る構成要素に限定して本発明を説明した。しかしながら、当業者であれば、例えばライトモジュールシステムが調節・位置調整装置、電力供給手段、センサ手段、例えば放射された光分布の明るさを決定するための1つ以上のカメラ等のような、本書では明示されていない複数の更なる構成要素を有し得ることは、本書の説明から明確に読み取れる。
【0063】
特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を限定することは全く意図していない。
【0064】
以下に、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含むライトモジュールシステム。
前記第1ライトモジュールは前記第2ライトモジュールに依存して制御可能である。
・前記第1ライトモジュールは、非高解像度のライトモジュールとして構成されており、かつ、該ライトモジュールシステムの前方の領域に第1タイプの光分布を生成するよう構成されている。但し該第1タイプの光分布は明暗調節可能である。
・前記第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されている。
・前記第1タイプの光分布の所定部分には最小明るさが割り当てられている。
・前記第2ライトモジュールは、1つの運転モードにおいて、少なくとも1つの路面投影用光分布を生成する。但し該少なくとも1つの路面投影用光分布は情報の光学表示であり、及び、その際、前記第1タイプの光分布を少なくとも部分的に暗くすることを前記第1ライトモジュールに実行させるようかつ該第1タイプの光分布の所定部分を明るくするよう、構成されている。
[付記2]上記のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、前記運転モードにおいて、前記第1タイプの光分布を暗くすることによって該第1タイプの光分布の所定部分において最小明るさが達成されたとき、該光分布の所定部分を明るくするよう、構成されている。
[付記3]上記のライトモジュールシステムにおいて、
前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含む。
[付記4]上記のライトモジュールシステムにおいて、
前記第1ライトモジュールは粗解像度のロービーム用ライトモジュールである;前記第1タイプの光分布はロービーム用光分布である;最小明るさが割り当てられている前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界、例えば非対称明暗境界を含む。
[付記5]上記のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは更なる運転モードで運転可能である;該第2ライトモジュールは該更なる運転モードにおいて第2タイプの光分布を生成する;前記第1タイプの光分布と該第2タイプの光分布は一緒に全体光分布を形成する;該第2タイプの光分布は好ましくは部分ハイビーム用光分布である。
[付記6]上記のライトモジュールシステムにおいて、
該ライトモジュールシステムは、前記第1ライトモジュール及び前記第2ライトモジュールに割り当てられており、及び、該第1ライトモジュール及び該第2ライトモジュールを制御するようかつ該第1ライトモジュールを該第2ライトモジュールに依存して制御するよう構成されている制御装置を更に含む。
[付記7]上記のライトモジュールシステムにおいて、
前記第2ライトモジュールは、凡そ-20°~凡そ+20°、例えば凡そ-12°~凡そ+12°、とりわけ凡そ-8.5°~凡そ+8.5°、好ましくは凡そ-7°~凡そ+7°の水平角度領域において高解像度の光分布を照射するよう、構成されている。
[付記8]自動車前照灯のライトモジュールシステムの、好ましくは上記の何れかのライトモジュールシステムの、制御方法。
該ライトモジュールシステムは、少なくとも1つの情報を光学的に表示する光分布を生成する。
該方法は、以下のステップ:
・ライトモジュールシステムを提供すること、但し、該ライトモジュールシステムは第1ライトモジュールと第2ライトモジュールを含み、該第1ライトモジュールは該第2ライトモジュールに依存して制御可能であり、該第1ライトモジュールは非高解像度のライトモジュールとして構成されておりかつ該第2ライトモジュールは高解像度のライトモジュールとして構成されていること;
・前記第1ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に明暗調節可能な光分布を生成すること、但し、該明暗調節可能な光分布の所定部分には最小明るさが割り当てられていること;
・前記情報を表示するために、前記第2ライトモジュールによって前記ライトモジュールシステムの前方の領域に少なくとも1つの路面投影用光分布を生成すること;
・暗くされた光分布を生成するために、少なくとも部分的に前記明暗調節可能な光分布を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させること、
・前記最小明るさが割り当てられている前記暗くされた光分布の所定部分を前記第2ライトモジュールによって明るくすること
を含む。
[付記9]上記の方法において、
前記明暗調節可能な光分布を暗くすることを前記第2ライトモジュールによって前記第1ライトモジュールに実行させることは、前記少なくとも1つの路面投影用光分布の生成後直ちに実行される;好ましくは、前記暗くされた光分布の所定部分は、前記第1ライトモジュールが前記第1タイプの光分布を暗くし始めた後直ちに又はこの所定部分において前記最小明るさが達成されると同時に、明るくされる。
[付記10]上記の方法において、
前記最小明るさが割り当てられている前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界を含む。
[付記11]上記の方法において、
前記光分布は粗解像度のロービーム用光分布である;前記最小明るさが割り当てられている前記第1タイプの光分布の所定部分は明暗境界、例えば非対称明暗境界を含む。
[付記12]上記の何れかのライトモジュールシステムに上記の何れかの方法を実行させる指令を含むコンピュータプログラム。
[付記13]上記のコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能媒体。
[付記14]上記のコンピュータ読み取り可能媒体を備えた、自動車制御装置、とりわけ上記の何れかのライトモジュールシステムのための制御装置。
[付記15]上記の何れかのライトモジュールシステムを少なくとも1つ及び/又は上記のコンピュータ読み取り可能媒体を少なくとも1つ又は上記の自動車制御装置を少なくとも1つ含む自動車ないし自動車前照灯。