(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】遠心反応小管、遠心反応装置及びその遠心検査方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231124BHJP
C12M 1/24 20060101ALI20231124BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20231124BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20231124BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231124BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20231124BHJP
B04B 11/04 20060101ALI20231124BHJP
B04B 15/02 20060101ALI20231124BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/24
G01N35/00 D
C12Q1/6813 Z
C12Q1/686 Z
B04B5/02 A
B04B11/04
B04B5/02 Z
B04B15/02
B01J19/00 321
(21)【出願番号】P 2021573739
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2019091171
(87)【国際公開番号】W WO2020248203
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】521542199
【氏名又は名称】ワン チンフン
【氏名又は名称原語表記】WANG, Chin Hung
【住所又は居所原語表記】3F.-3, No. 103, Sec. 4, Nanjing E. Rd., Songshan Dist., Taipei 10580, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】ワン チンフン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185151(WO,A1)
【文献】特開2009-106221(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1477400(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 35/00
C12Q 1/00-3/00
B04B 5/02
B04B 11/04
B04B 15/02
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応領域を備える遠心検査用の遠心反応小管であって、
第1の反応を起こすための反応混合物を収容するための第1の反応領域と、
前記第1の反応領域の遠心方向に配置され、第1の遠心力の下で開き、前記反応混合物が前記第1の反応領域から出ることを可能にする第1の単方向弁とを備え、
前記第1の単方向弁によって前記第1の反応領域から分離され
、且つ前記遠心方向に配置された第2の反応領域であって、前記反応混合物が前記第1の遠心力の下で該第2の反応領域に移動して第2の反応を起こす第2の反応領域と、
前記第2の反応領域において前記第1の単方向弁とは反対側に配置され、第2の遠心力の下で開き、前記反応混合物を前記第2の反応領域から出ることを可能にする第2の単方向弁と
を備える、
遠心反応小管。
【請求項2】
前記第2の遠心力が前記第1の遠心力よりも大きい、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項3】
前記第1の遠心力と前記第2の遠心力が1g~80,000gの範囲であり、前記第2の遠心力が前記第1の遠心力よりも大きい、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項4】
前記第1の単方向弁と前記第2の単方向弁が、電気的又は磁気的な制御によって開閉される、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項5】
前記第2の反応領域に配置され、抗体、アプタマー、ペプチド又は核酸を含む生体分子でコーティングされたバイオチップを更に備える、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項6】
前記第2の単方向弁によって前記第2の反応領域から分離された廃液領域を更に備える、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項7】
前記第1の反応領域がポリメラーゼ連鎖反応を起こす、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項8】
前記第2の反応領域が核酸ハイブリダイゼーションを起こす、
請求項7に記載の
遠心反応小管。
【請求項9】
第3の反応を起こすための前記反応混合物を収容するための第3の反応領域と、
前記第3の反応領域と前記第1の反応領域との間に配置され、第3の遠心力の下で前記反応混合物を前記第1の反応領域に移動させる第3の単方向弁と
を更に備える、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項10】
前記
遠心反応小管が実質的に光学材料で作られている、
請求項1に記載の
遠心反応小管。
【請求項11】
前記光学材料が石英、ガラス又はプラスチックを含む、
請求項10に記載の
遠心反応小管。
【請求項12】
遠心反応装置であって、
軸部からある勾配で上向きに傾斜し、対称的に配置され、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の複数の前記
遠心反応小管を受け入れるように適合された複数のホルダを有する反応遠心ディスクを
備える、
遠心反応装置。
【請求項13】
前記勾配が1°~89°の範囲である、
請求項12に記載の遠心反応装置。
【請求項14】
前記
遠心反応小管の反応信号を検出するための信号検出器を更に備える、
請求項12に記載の遠心反応装置。
【請求項15】
反応試薬及び/又は検体を前記
遠心反応小管にそれぞれ導入するための液体ディスペンサを更に備える、
請求項12に記載の遠心反応装置。
【請求項16】
前記
遠心反応小管の反応温度を制御するための温度コントローラを更に備える、
請求項12に記載の遠心反応装置。
【請求項17】
前記
遠心反応小管から出た廃液を回収するための廃液回収装置を更に備える、
請求項12に記載の遠心反応装置。
【請求項18】
遠心検査方法であって、
請求項1に記載の
遠心反応小管を提供する工程と、
検体及び/又は反応試薬を前記第1の反応領域に導入して、前記
遠心反応小管を遠心分離して第1の反応を起こすための反応混合物を形成する工程と
を含む、
方法。
【請求項19】
リンス液を導入し、前記
遠心反応小管を断続的に遠心分離する工程を更に含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記
遠心反応小管の反応信号を検出する工程を更に含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記
遠心反応小管の反応温度を制御する工程を更に含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記
遠心反応小管から出た廃液を回収する工程を更に含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記
遠心反応小管を遠心分離し、第1の遠心力の下で第2の反応を起こすように、前記反応混合物を前記第1の単方向弁を通して第2の反応領域に移動させる工程を更に含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記
遠心反応小管を遠心分離し、第2の遠心力の下で、前記反応混合物を第2の単方向弁を通して前記第2の反応領域から離れるように移動させる工程を更に含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の遠心力が前記第1の遠心力よりも大きい、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の遠心力と前記第2の遠心力が1g~80,000gの範囲であり、前記第2の遠心力が前記第1の遠心力よりも大きい、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の単方向弁と及び前記第2の単方向弁は、電気的又は磁気的な制御によって開閉される、
請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の反応領域がポリメラーゼ連鎖反応を起こす、
請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の反応領域が核酸ハイブリダイゼーションを起こす、
請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実験用反応小管及び反応装置に関し、より詳細には、ワンクリックで分子生物学的試験を行うことができる反応小管及び反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的技術の進歩のために、生化学的及び分子生物学的方法で試験を行うことに対する需要がますます高まっている。核酸配列に基づく増幅と分析を同時に行う既存のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置が市販されているが、全ての検査工程を実行するために、電気ピペット、核酸ハイブリダイゼータ、リンサ、及び信号解釈装置などの他の装置と連動して動作させる必要がある。したがって、試験プロセスは通常複雑で時間がかかるだけでなく、液体輸送プロセスも汚染を受けやすい。
【0003】
解析する核酸や検体が非常に複雑な場合、既存の市販製品では、ワンクリックで分子生物学的検査を全て行うことができず、定性分析と定量分析を同時に行うこともできない。
【発明の概要】
【0004】
従来技術の前述の欠点を考慮して、本開示の目的は、遠心反応小管及び反応装置を提供することである。反応小管の設計により、遠心分離を行うことによって抽出、反応、リンス及び/又は信号検出を同じ反応小管内で行うことが実行可能であり、それによって汚染及び人手需要が軽減される。
【0005】
上記及び他の目的を達成するために、本開示は、
第1の反応を起こすための反応混合物を収容するための第1の反応領域と、
第1の反応領域の遠心方向に配置され、第1の遠心力の下で開き、反応混合物を第1の反応領域から排出させる第1の単方向弁と
を備える、遠心反応小管を提供する。
【0006】
好ましくは、遠心反応小管は、
第1の単方向弁によって第1の反応領域から分離された第2の反応領域であって、反応混合物が第1の遠心力の下で第2の反応領域に移動して第2の反応を起こす第2の反応領域と、
第2の反応領域において第1の単方向弁とは反対側に配置され、第2の遠心力の下で開き、反応混合物を第2の反応領域から排出させる第2の単方向弁と
を更に備える。
【0007】
好ましくは、第2の遠心力は第1の遠心力よりも大きい。
【0008】
好ましくは、第1の遠心力と第2の遠心力は、1g~80,000gの範囲であってもよく、第2の遠心力は、第1の遠心力よりも大きい。
【0009】
好ましくは、第1の単方向弁と第2の単方向弁は、電気的又は磁気的な制御によって開閉してもよい。
【0010】
好ましくは、遠心反応小管は、第2の反応領域に配置され、抗体、アプタマー、ペプチド又は核酸を含む生物学的分子でコーティングされたバイオチップを更に含んでもよい。
【0011】
好ましくは、遠心反応小管は、第2の単方向弁によって第2の反応領域から分離された廃液領域を更に備えてもよい。
【0012】
好ましくは、第1の反応領域はポリメラーゼ連鎖反応を、及び/又は第2の反応領域は核酸ハイブリダイゼーションを起こし得る。
【0013】
好ましくは、遠心反応小管は、
第3の反応を起こすための反応混合物を収容するための第3の反応領域と、
第3の反応領域と第1の反応領域との間に配置され、第3の遠心力の下で反応混合物を第1の反応領域に移動させる第3の単方向弁と
を更に備える。
【0014】
好ましくは、遠心反応小管は、実質的に光学材料から構成され得る。好ましくは、光学材料は、石英、ガラス又はプラスチックであってもよい。
【0015】
本開示の別の目的によれば、本開示の一実施形態は、軸部からある勾配で上向きに傾斜し、対称的に配置され、複数の前記遠心反応小管を受け入れるように適合された複数のホルダを有する反応遠心ディスクを備えた遠心反応装置を更に提供する。
【0016】
好ましくは、傾斜は、約1°~89°の範囲であり得る。
【0017】
好ましくは、遠心反応装置は、遠心反応小管の反応信号を検出するための信号検出器を更に備えてもよい。
【0018】
好ましくは、遠心反応装置は、反応試薬及び/又は検体を遠心反応小管にそれぞれ導入するための液体ディスペンサを更に備えてもよい。
【0019】
好ましくは、遠心反応装置は、遠心反応小管の反応温度を制御するための温度コントローラを更に備えてもよい。
【0020】
好ましくは、遠心反応装置は、遠心反応小管から出た廃液を回収するための廃液回収装置を更に備えてもよい。
【0021】
本開示の更に別の目的によれば、本開示の一実施形態は、
遠心反応小管を提供する工程と、
遠心反応小管を遠心分離して第1の反応を起こすために、検体及び/又は反応試薬を第1の反応領域に導入して反応混合物を形成する工程と
を含む、遠心検査方法を更に提供する。
【0022】
好ましくは、本方法は、リンス液を導入し、遠心反応小管を断続的に遠心分離する工程を更に含んでもよい。
【0023】
好ましくは、本方法は、遠心反応小管の反応信号を検出する工程を更に含んでもよい。
【0024】
好ましくは、本方法は、遠心反応小管の反応温度を制御する工程を更に含んでもよい。
【0025】
好ましくは、本方法は、遠心反応小管を出た廃液を回収する工程を更に含んでもよい。
【0026】
好ましくは、本方法は、遠心反応小管を遠心分離し、第1の遠心力の下で第2の反応を起こすように、第1の単方向弁を介して反応混合物を第2の反応領域に移動させる工程を更に含んでもよい。
【0027】
好ましくは、本方法は、遠心反応小管を遠心分離し、第2の遠心力の下で第2の反応領域から離れるように、第2の単方向弁を通して反応混合物を移動させる工程を更に含んでもよい。
【0028】
好ましくは、第2の遠心力は第1の遠心力よりも大きい。
【0029】
好ましくは、第1の遠心力と第2の遠心力は、1g~80,000gの範囲であってもよく、第2の遠心力は、第1の遠心力よりも大きい。
【0030】
好ましくは、第1の単方向弁と第2の単方向弁は、電気的又は磁気的な制御によって開閉してもよい。
【0031】
好ましくは、第1の反応領域はポリメラーゼ連鎖反応を、及び/又は第2の反応領域は核酸ハイブリダイゼーションを起こし得る。
【0032】
本開示の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、以下、好ましい実施形態を用いて示され、添付の図面とともに描かれ、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下の説明は、本開示を説明し、本開示の実施形態を説明するための具体的な詳細に満ちている。しかしながら、明らかに、特定の詳細がない場合にも、1つ又は複数の実施形態を実施することができる。他の状況では、添付図面を簡略化するために、従来の構造及びプロセスフローが添付図面に概略的に示されている。
【0034】
【
図1】本開示の実施形態1による
遠心反応小管の概略図である。
【0035】
【
図2】本開示の実施形態2による
遠心反応小管の概略図である。
【0036】
【
図3】本開示の実施形態3による
遠心反応小管の概略図である。
【0037】
【
図4】(A)本開示の実施形態3Aによる
遠心反応小管がどのように動作するかを示す概略図である。(B)本開示の実施形態3Aによる
遠心反応小管がどのように動作するかを示す概略図である。(C)本開示の実施形態3Aによる
遠心反応小管がどのように動作するかを示す概略図である。
【0038】
【
図5】(A)本開示の実施形態4による
遠心反応小管の概略図である。(B)本開示の実施形態4Aによる
遠心反応小管の概略図である。
【0039】
【
図6】本開示の実施形態5による
遠心反応小管の概略図である。
【0040】
【
図7】本開示の実施形態6による
遠心反応小管の概略図である。
【0041】
【
図8】本開示の好ましい実施形態による
遠心反応小管の概略図である。
【0042】
【
図9】本開示の一実施形態による反応遠心ディスクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、添付図面によって描かれ、実施形態によって示され、以下に説明される。実施形態は、異なる形態で実施されるが、本開示を実施又は適用するために必ずしも必要ではない。したがって、異なる実施形態は、実施形態を限定するように解釈されてはならない。特定の実施形態の特徴、特定の実施形態を構築及び動作させるための方法の工程、並びに該方法の工程の順序を以下に開示する。しかしながら、同一又は同等の機能及び工程の順序を実現するために、任意の他の特定の実施形態を使用することも実行可能である。逆に、本開示の趣旨を当業者に十分に知らせるために、以下の説明が十分かつ完全に提示され得るように、実施形態が提供される。添付図面で使用される同様の参照番号は、同様の構成要素を示す。以下の説明では、簡潔にするために従来の機能又は構造を省略する。
【0044】
他に定義されない限り、以下に使用される全ての技術用語及び専門用語は、当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有するものとする。本明細書と当業者の理解との間に矛盾がある場合、定義を含む明細書が優先するものとする。
【0045】
以下に使用される各単数名詞は、文脈と矛盾することなく、名詞の複数形を含む。以下に使用される各複数名詞は、文脈と矛盾することなく、名詞の単数形を含む。更に、以下に使用される「少なくとも1つ(at least one)」という表現と「1つ以上(one or more)」という表現は同じ意味を有し、両方とも1つ、2つ、3つ以上を含む。
【0046】
以下に使用される「から本質的になる(consisting essentially of)」という表現は、明示的に規定されているもの以外の任意の材料、工程、特徴、成分又は構成要素を含めて、組成物、方法又は装置を定義する際に使用するためのものである。その制限基準は、追加の材料、工程、特徴、成分又は構成要素が、特許請求される発明の本質的かつ新規な特徴に有意に影響しないことである。「から本質的になる」という表現の範囲は、「含む(comprising)」という表現の範囲と「からなる(consisting of)」という表現の範囲との間にある。
【0047】
本開示の比較的広い範囲は、一般的な説明ための近似である数値範囲及びパラメータによって定義される。更に、数値範囲及びパラメータは、必然的に任意の検査方法に関連する標準偏差を伴う。前述の「約(about)」は、実際の値が特定の値又は範囲の限界よりも10%、5%、1%又は0.5%大きくても小さくてもよいことを意味する。あるいは、前述の「約(about)」は、当業者が考慮する考慮事項に応じて、実際の値がその平均の許容可能な標準偏差内に入ることを意味する。本開示の実施形態に加えて、又は特に明記しない限り、以下に記載されている全ての範囲、数、数値、及びパーセンテージ(例えば、使用されている材料の量、期間、温度、動作条件、数値比率などを記述)の後にはそれぞれ「約」という副詞が続く。したがって、以下に開示される全ての数値範囲及びパラメータは、逆に明記のない限り、近似の数値の形で提示されており、必要に応じて変更される。数値及びパラメータは、少なくとも、有効数字及び一般的な十進数表記に適用できるように解釈する必要がある。数値の範囲は、端点と別の端点で定義されるか、又は2つの端点間の範囲として定義される。特に明記のない限り、以下に開示される数値の範囲は、それぞれの端点を含む。
【0048】
一実施形態では、反応試薬、リンス液、及び/又は反応を起こす検体を含む反応混合物を収容するための少なくとも1つの反応領域と、反応領域の遠心方向に配置された少なくとも1つの単方向弁とを備える、遠心反応小管を提供する。反応混合物は、遠心力の下で軸から離れる方向に流れる。遠心速度又は遠心力が閾値を超えると、単方向弁が開き、反応混合物が反応領域から排出される。遠心速度又は遠心力が閾値よりも小さいと、単方向弁は閉じ、反応混合物が元の反応領域に逆流するのを防止する。したがって、単方向弁を繰り返し選択的に開閉することによって、分析対象となる任意の物質(生物学的分子、例えば、タンパク質及び核酸)の精製、増幅及び分析のために、反応小管領域を少なくとも1つの反応領域に分割することは実行可能である。
【0049】
以下に開示される「単方向弁」は、遠心分離前に反応試薬、リンス液及び/又は検体を反応領域内に留まるように制御することができ、遠心分離時に、反応試薬、リンス液及び/又は検体を「単方向弁」を介して別の反応領域に一方向に流すが、逆流させないようにすることができる。
【0050】
単方向弁の動作原理は、様々な方法で実現され得る。例えば、機械的単方向弁は、異なる弾性率を有するばねと、異なる重量のボールとを備えており、金属製又は非金属製であってもよい。反応小管内の異なる弁が異なる大きさの遠心力の下で開閉するように、遠心力の大きさが異なれば、弾性率が異なる弁が対応してもよい。したがって、単方向弁は、遠心力の大きさの大小に応じて、反応混合物の保持又は排出をもたらす。更に、単方向弁は、電気的又は磁気的に開閉を制御することもできる。
【0051】
例えば、単方向弁の開閉が圧縮ばねで制御される場合、圧縮ばねが静止して設けられているため、即ち、遠心分離が開始されていないか、又は遠心力がばねの圧縮応力に達していないため、圧縮ばねは完全に伸び、単方向弁は完全に密閉される。遠心力がばねの圧縮応力に達すると、遠心力の大きさが徐々に大きくなることで圧縮ばねは圧縮されて徐々に短くなるため単方向弁が開き、反応混合物は、軸部を回転させる方向から遠ざかり、それによって単方向弁を通過できるようになる。
【0052】
反応の過程で生成された全ての廃液は、反応小管が開口部を有するかどうか及び廃液の量に応じて、密閉された状態で、又は真空で収集することができる。一実施形態では、廃液は密閉された状態で収集されており、遠心反応小管は廃液領域を更に備えてもよい。廃液領域と反応領域への単方向弁に区別されているため、リンス液又は反応領域で反応を起こした反応混合物は、遠心分離によって反応領域から廃液領域に出ることができ、したがって逆流しない。
【0053】
一実施形態では、反応混合物とのハイブリダイゼーションを起こすために、バイオチップを遠心反応小管の反応領域内に配置し、生物学的分子でコーティングしてもよい。生物学的分子は、抗体、アプタマー、ペプチド又は核酸を含んでもよい。
【0054】
図1に示すように、第1の実施形態では、
遠心反応小管1は、反応領域11と単方向弁12とを備える。
例えば、PCR増幅を起こした後、核酸分子は、反応領域11内の標的核酸で予めコーティングされたバイオチップと反応し得る。
次いで、部分的に相補的な核酸分子をバイオチップに付着させる。次に、遠心分離時に、付着していない核酸分子が単方向弁12を通して除去される。
【0055】
実施形態2では、
図2に示すように、
遠心反応小管2は、反応領域11及び単方向弁12を備えるだけでなく、反応後の廃液を回収する廃液領域13を備える。
【0056】
実施形態3では、
図3に示すように、
遠心反応小管3は、第1の反応領域111と、第1の単方向弁121と、第2の反応領域112と、第2の単方向弁122とを備える。
第1の反応領域111は、反応混合物の第1の反応を起こすために使用してもよい。第1の単方向弁121は、第1の反応領域111の遠心方向に配置されている。
第2の反応領域112と第1の反応領域111とは、第1の単方向弁121によって分離されている。
第2の単方向弁122は、第2の反応領域112において第1の単方向弁121とは反対側に配置されている。
【0057】
実施形態3では、2つの反応領域があることから、同じ遠心反応小管3内で2つの反応を順次実行することができる。
例えば、第1の反応領域111はポリメラーゼ連鎖反応を、及び/又は第2の反応領域112は核酸ハイブリダイゼーションを起こし得る。代替的に、第1の反応領域111は核酸抽出を、及び/又は第2の反応領域112は核酸ハイブリダイゼーションを起こし得る。
【0058】
この実施形態では、当業者は、同じ又は異なる遠心分離条件下で第1の単方向弁121と第2の単方向弁122の開閉を制御するように、必要に応じて異なる又は等しい弾性率を有するばねを選択する。好ましい実施形態では、弾性係数の等しいばねが使用されているとき、第1の単方向弁121に重いボールを配置し、第2の単方向弁122に軽いボールを配置することによって、ばねは、異なる重量のボールと連動して動作する。
結果として、第1の単方向弁121が開く遠心力は、第2の単方向弁122が開く遠心力よりも小さい。したがって、低回転速度では、第1の単方向弁121のみが開き、第2の単方向弁122は閉じる。別の好ましい実施形態では、弾性率の異なるばねが使用されているとき、第2の単方向弁122のばねの弾性率は、第1の単方向弁121のばねの弾性率よりも大きく、第1の反応領域111内の反応混合物が第2の反応領域112に留まらずに、遠心分離時に第1の単方向弁121と第2の単方向弁122とを通過するのを防止する。
この状態では、第2の単方向弁122が開く遠心力は、第1の単方向弁121が開く遠心力よりも大きいため、第2の単方向弁122は高回転速度でしか開くことができない。したがって、低回転速度では、第1の単方向弁121のみが開き、第2の単方向弁122は閉じる。
【0059】
好ましい実施形態では、第1の遠心力と第2の遠心力は、1g~80,000gの範囲であってもよく、第2の遠心力は、第1の遠心力よりも大きい。
【0060】
実施形態3Aでは、
図4に示すように、
遠心反応小管は、第1の反応領域111と、第1の単方向弁121と、第2の反応領域112と、第2の単方向弁122とを備える。
実施形態3とは異なり、第1の単方向弁121と第2の単方向弁122は単一のばねによって制御される点が異なる。
図4(A)に示すように、第1の単方向弁121、第2の反応領域112及び第2の単方向弁122は、遠心分離中に遠心力の方向に摺動する摺動要素を共に形成する。ここで、摺動要素はばねに接続されてもよく、それによって摺動要素は遠心分離時に静止状態の位置に戻ることができる。好ましい実施形態では、ばねは、図中の摺動要素の右側に位置する圧縮ばねであってもよい。代替的に、ばねは、摺動要素の左側に位置する引っ張りばねであってもよい。
【0061】
例えば、
図4(A)は、
遠心反応小管の遠心分離がまだ行われておらず、第1の反応領域111と第2の反応領域112とが互いに連通しておらず、摺動要素が静止状態の第1の位置にある状態を示す。第1の遠心力の下で遠心分離を行うと、摺動要素は
図4(B)に示す第2の位置に移動する。結果として、貫通孔が第1の単方向弁121と連通して、反応試薬、リンス液及び/又は検体が第1の単方向弁121を介して第1の反応領域111から第2の反応領域112に移動することが可能になるが、一方、第2の単方向弁122はまだ貫通孔と連通していないので、反応試薬、リンス液及び/又は検体が第2の単方向弁122を通過することはない。
第1の遠心力よりも大きい第2の遠心力の下で更に遠心分離を行うと、摺動要素は
図4(C)に示す第3の位置に移動する。結果として、貫通孔は第2の単方向弁122と連通しているが、貫通孔は第1の単方向弁121と連通しておらず、それにより、反応試薬、リンス液及び/又は検体が、第1の反応領域111に逆流することなく、第2の単方向弁122を介して第2の反応領域112から出ることが可能になる。
【0062】
実施形態4では、
図5(A)に示すように、
遠心反応小管4は、第1の反応領域111、第1の単方向弁121、第2の反応領域112及び第2の単方向弁122を備えるだけでなく、反応後の廃液を回収するための廃液領域13も備える。
【0063】
図5(B)に示すように、実施形態4とは異なり、実施形態4Aは、
遠心反応小管内の第1の単方向弁121と第2の単方向弁122は傾いており、第2の単方向弁122の勾配は、第1の単方向弁121の勾配よりも大きい、という際立った技術的特徴を有する。
この実施形態では、遠心分離の前に、反応試薬、リンス液及び/又は検体は、第1の単方向弁121によって分離され、したがって第1の反応領域111に留まる。
第1の遠心力の下で遠心分離が行われると、反応試薬、リンス液及び/又は検体は、第1の単方向弁121を介して第1の反応領域111から第2の反応領域112に移動する。
第2の単方向弁122の勾配は第1の単方向弁121の勾配よりも大きいので、反応試薬、リンス液及び/又は検体は第2の単方向弁122を通過しない。
第1の遠心力よりも大きい第2の遠心力の下で更に遠心分離を行うと、反応試薬、リンス液及び/又は検体は、第2の反応領域112から出て、第1の反応領域111に逆流することなく、勾配が比較的大きい第2の単方向弁122を通過する。
【0064】
図6に示すように、実施形態5は実施形態3と同様であるが、
遠心反応小管5は、第1の反応領域111、第1の単方向弁121、第2の反応領域112及び第2の単方向弁122を備えるだけでなく、第3の反応領域113及び第3の単方向弁123も備える。
第3の反応領域113は、第3の反応を起こすための反応混合物を含む。第3の単方向弁123は、第3の反応領域113と第1の反応領域111との間に配置される。
第3の遠心力の下で、反応混合物は第1の反応領域111に移動する。
【0065】
実施形態5では、3つの反応領域があることから、同じ遠心反応小管5内で3つの反応を連続して実行してもよい。
例えば、第3の反応領域113は核酸抽出反応を、第1の反応領域111はポリメラーゼ連鎖反応を、及び/又は第2の反応領域112は核酸ハイブリダイゼーションを起こし得る。
【0066】
好ましい実施形態では、前述のように、遠心分離中に、第3の反応領域113内の反応混合物が第1の反応領域111に留まることなく第1の単方向弁121、第2の単方向弁122と第3の単方向弁123を通過するのを防止するために、又は第1の反応領域111内の反応混合物が第2の反応領域112に留まることなく第1の単方向弁121と第2の単方向弁122を同時に通過するのを防止するために、単方向弁の弾性率に応じて(大きい順に)、第2の単方向弁122、第1の単方向弁121と第3の単方向弁123を順次、選択することは可能である。したがって、最低回転速度では、第3の単方向弁123のみが開くが、第1の単方向弁121と第2の単方向弁122は閉じる。第1の単方向弁121が開くのに適した回転速度では、第1の単方向弁121と第3の単方向弁123は開くが、第2の単方向弁122は閉じたままである。
【0067】
実施形態6では、
図7に示すように、
遠心反応小管6は、第1の反応領域111、第1の単方向弁121、第2の反応領域112、第2の単方向弁122、第3の反応領域113及び第3の単方向弁123を備えるだけでなく、反応後の廃液を回収するための廃液領域13も備える。
【0068】
遠心反応小管内では、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応や核酸ハイブリダイゼーション等の反応や、反応生成物の定性的及び定量的な検出を行う必要があるため、遠心反応小管は耐熱性の光学材料から作られていることが好ましい。「耐熱性」とは、遠心反応小管の特性、例えば、光学的特性が特定の温度で変化しないことを意味する。好ましくは、特定の温度は少なくとも120°Cである。「光学材料」とは、低色分散、低色収差、広範囲の光透過波長、低屈折率、高透過率などの特性を有する材料を意味する。好ましくは、光学材料は、石英、ガラス又はプラスチックを含む。
【0069】
好ましい実施形態では、
遠心反応小管を提供する。
図8に示すように、
遠心反応小管は、第1の反応領域111と、第1の単方向弁121と、第2の反応領域112と、第2の単方向弁122と、廃液領域13とを備える。
反応試薬又は検体を
反応小管に添加した後、反応試薬又は検体が漏れないように、
反応小管の口部を蓋で封止してもよい。
遠心反応小管の長さは60mmであってもよいが、必要に応じて、及び使用されている遠心分離装置に応じて、当業者が長さを調整してもよい。例えば、実施形態1に開示するように、
遠心反応小管が1つの反応領域と1つの単方向弁のみを有する場合、
遠心反応小管の長さは40mmであってもよい。代替的に、実施形態5に示すように、
遠心反応小管が3つの反応領域と3つの単方向弁とを有する場合、
遠心反応小管の長さは100mmであってもよい。
【0070】
第1の反応領域111の外縁は加熱モジュール14に隣接していてもよく、それによって第1の反応領域111の温度は実質的な接触加熱によって上昇する。好ましくは、加熱モジュール14は、第1の反応領域111を効果的に取り囲み、それによって第1の反応領域111を加熱する速度を増加させるために、U字形であってもよい。
同様に、第1の反応領域111と第2の反応領域112の両方の外側に加熱モジュールを配置して、第1の反応領域111と第2の反応領域112の反応温度を独立に制御してもよい。
【0071】
一実施形態では、本開示は、軸部からある勾配で上向きに傾斜する反応遠心ディスクを備える遠心反応装置を提供する。複数のホルダは、反応遠心ディスク上に対称的に配置され、複数の遠心反応小管を受け入れるように適合されている。したがって、反応遠心ディスクは、ソーサー(すなわち、中心が低く、縁が高い)形状であり、軸部から上方外側に傾斜している。その結果、反応遠心ディスク内に入れた後、反応小管は自然に傾き、反応小管内の液体が重力で反応遠心ディスクの軸部に向かって自然に流れるようになる。したがって、反応遠心ディスクの傾斜角が大きいほど、遠心分離時に反応混合物が逆流する速度が大きくなり、それによって反応が加速され、エネルギーが節約される。遠心分離の終わりに、又は遠心力が減少すると、遠心分離によって放出された液体は重力で下方に流れる(即ち、反応遠心ディスクの軸部に向かって逆流する)。断続的な遠心分離は、移送機器がない状態で、液体の迅速な交換又は混合に役立つ。好ましくは、反応遠心ディスクが軸部から傾く勾配は、約1°~89°、好ましくは10°~80°、20°~70°、30°~60°、40°~50°などの範囲であってもよい。任意選択に、反応遠心ディスクは、反応小管が傾くことができるのであれば、水平に置いてもよい。
【0072】
好ましい実施形態では、高い反応フラックスを達成するために、反応遠心ディスク上に配置された8つごとの
反応小管を
図9に示すようにアレイ状に配置して、反応試薬又は検体の導入を高速化してもよい。しかしながら、アレイ状に配置される
反応小管の数は、必要に応じて、及び使用されている遠心分離装置に応じて変化するため、
図9は本開示を限定するものではない。例えば、アレイ状に配置される
反応小管の数は、12、8、6、4又は2であってもよい。
また、
図9に示すように、反応遠心ディスク上には、6グループの
反応小管が配置されており、各グループはアレイ状に配置された8つの
反応小管からなる。同様に、反応遠心ディスク上に配置される
反応小管のグループの数は、必要に応じて、及び使用されている反応遠心ディスクに応じて変化する。例えば、反応遠心ディスク上に配置される
反応小管のグループの数は、8、6、4又は2であってもよい。
【0073】
一実施形態では、遠心反応装置は、反応試薬及び/又は検体を
遠心反応小管に添加するための液体ディスペンサを更に備えてもよい。液体ディスペンサの反応試薬及び/又は検体を導入するために広範囲に移動することは時間がかかる原因となるので、この必要がないように、各
遠心反応小管の口部(例えば、
図1に示す
遠心反応小管1の左端部)は、反応遠心ディスクの軸部に向かって配置されている。
【0074】
一実施形態では、遠心反応装置は、加熱ブロック、液体(温水など)、気体(高温空気など)、又は遠赤外線を含む遠心反応小管の反応温度を制御するための温度コントローラを更に備えてもよい。好ましくは、加熱プロセス中、加熱ブロック及び液体は、遠心反応小管を取り囲むようにU字状又はO字状に配置され、それによって温度制御の効率を高める。
【0075】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応が反応領域で行われている場合、反応領域内の温度を0°C~100°C、好ましくは4°C~95°Cに制御して保持されるべきである。例えば、変性段階では、反応領域内の温度を96°Cに制御して保持し、二本鎖DNAを変性させ、アニーリング段階では、反応領域内の温度を約60°C未満に制御して保持し、プライマーとテンプレートDNAを結合させ、伸長段階では、反応領域内の温度を72°Cに制御して保持し、DNAを伸長させ、そして前述のサイクルを数回繰り返す。
【0076】
一実施形態では、遠心反応装置は、遠心反応小管の反応信号を検出するための信号検出器を更に備えてもよい。例えば、信号検出器は、蛍光、フォトルミネッセンス、又は可視光写真及び感知システムであってもよい。遠心反応小管の反応領域内での反応の終了時に、マーカー蛍光、フォトルミネッセンス又は色信号の生物学的分子(抗体、アプタマー、ペプチド又は核酸など)を反応領域に添加して、信号を検出することによって反応生成物の定性分析又は定量分析を行うことができる。
【0077】
好ましくは、遠心反応装置は、遠心反応小管から出る廃液を回収するための廃液回収装置を更に備えてもよい。例えば、遠心反応小管の実施形態1、実施形態3及び実施形態5では、遠心反応小管1、3、5のいずれも廃液領域13を有していないため、遠心反応小管1、3、5は反応廃液を回収することができない。この状況では、廃液回収装置が遠心反応装置内に配置され、遠心反応小管から出る廃液を回収するように適合される。好ましい実施形態では、廃液回収装置は、遠心反応装置の内壁に配置された真空抽出装置である。廃液が単方向弁を介して遠心反応小管1、3、5から出ると、廃液は、開いた単方向弁に跳ね返って反応汚染を引き起こすことなく、真空抽出装置によって抽出されて除去される。
【0078】
更に、一実施形態では、本開示は、遠心反応小管を提供する工程と、検体及び/又は反応試薬を反応領域に添加して反応混合物を形成し、遠心反応小管を遠心分離して反応を起こさせる工程とを含む、遠心検査方法を提供する。
【0079】
本開示の実施形態によって提供される遠心検査方法を
図3に示し、以下に説明する。まず、検体及び/又は反応試薬を
遠心反応小管3に順次添加して反応混合物を形成する。
遠心反応小管3は、第1の反応領域111で第1の反応を起こすために遠心分離される。
第1の単方向弁121と第2の単方向弁122が閉じている間、第1の反応を起こすための反応混合物が十分に振動するように、遠心分離速度、即ち、遠心力が制御される。そして、
遠心反応小管3は、第1の遠心力及びそれに応じた速度で遠心分離され、反応混合物は、開いた第1の単方向弁121を介して、第2の反応領域112に移動し、第2の反応を起こす。
遠心反応小管3は、第2の遠心力及びそれに応じた速度で遠心分離され、反応混合物は、開いた第2の単方向弁122を介して、第2の反応領域112から出る。
任意選択で、反応の過程で、液体ディスペンサは
遠心反応小管3にリンス液を加え、
遠心反応小管3は第1及び第2の遠心力よりも小さい遠心力を伴う速度で遠心分離し、第1の反応領域111又は第2の反応領域112を振動させ、リンスする。
【0080】
遠心検査方法の具体的実施形態
【0081】
(1)液体ディスペンサを用いて、遠心反応小管に核酸検体と反応試薬を添加する。
I.検体チャンバ(1.5mL遠心管又は96ウェルプレートなど)から1~20μLの検査対象の検体を取り出し、遠心反応小管に添加する。
II.試薬チャンバ(1.5mL遠心管など)から1~20μLの試薬を取り出し、遠心反応小管に添加する。
III.別の試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から20~30μLの鉱油を取り出し、遠心反応小管に添加する。
IV.第1の単方向弁と第2の単方向弁を閉じたまま、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で行い、検体と反応試薬とを第1の反応領域で混合する。
【0082】
(2)ポリメラーゼ連鎖反応は、遠心分離による混合と温度制御により第1の反応領域で行われ、アンプリコンが生成される。
ポリメラーゼ連鎖反応は、37~60~95°Cで約40~45回の反応サイクルで行われる。
【0083】
(3)核酸の第1の信号検出と定量分析
核酸濃度は、遠心反応装置内の分光光度計により検出される。
【0084】
(4)遠心分離を第1の遠心力の下で行い、アンプリコンは第1の単方向弁を介して核酸バイオチップを含む第2の反応領域に入ることができる。
I.第2の反応領域を50~60°Cに予熱する。
II.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から20μLの変性溶液(強塩基)を取り出し、遠心反応小管に添加する。
III.遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で行い、変性溶液が鉱油を通過して元の反応混合物と混合することができ、その間、第1の単方向弁と第2の単方向弁は閉じたままである。
IV.得られた反応混合物を30分間静置してDNA変性を行い、二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性させて、ハイブリダイゼーションを促進させる。
V.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのハイブリダイゼーション緩衝液(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。
VI.遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で行い、ハイブリダイゼーション緩衝液と反応混合物とを第1の反応領域内で混合してハイブリダイゼーションを促進させることができ、その間、第1の単方向弁と第2の単方向弁の両方は閉じたままである。
VII.遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、前述の混合物を第1の反応領域から第2の反応領域に移動させる。
【0085】
(5)核酸ハイブリダイゼーションは、遠心分離による混合と温度制御を介して第2の反応領域で行われ、リンス工程が行われる。
I.遠心分離を、特定の温度(例えば、50°C)で特定の時間(例えば、30~60分)、低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で断続的に行い、反応混合物を第2の反応領域内で遠心力及び重力の下で往復運動をさせ、ハイブリダイゼーションを促進させる。
II.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、したがって反応混合物全体を第2の反応領域から遠心反応装置の廃液領域又は廃液回収装置に移動させる。
III.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのリンス液1(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加し、遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、リンス液1を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で3分間、断続的に行い、バイオチップをリンスする。
IV.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、したがってリンス液1を第2の反応領域から除去する。
V.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのリンス液2(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、リンス液2を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で3分間、断続的に行い、バイオチップをリンスする。
VI.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、リンス液2を第2の反応領域から除去する。
【0086】
(6)核酸の第2の信号解釈及び定性的分析
I.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から50μLの抗体含有複合体溶液(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、複合体溶液を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で断続的に行い、複合体溶液を20分間、バイオチップと反応させる。
II.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、複合体溶液を第2の反応領域から除去する。
III.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのリンス液3(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、リンス液3を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で3分間、断続的に行い、バイオチップをリンスする。
IV.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、リンス液3を第2の反応領域から除去する。
V.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から50μLの着色剤(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、着色剤を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で断続的に行い、着色剤をバイオチップと15分間反応させる。
VI.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、第2の反応領域から着色剤を除去する。
VII.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのリンス液4(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、リンス液4を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で3分間、断続的に行い、バイオチップをリンスする。
VIII.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、リンス液4を第2の反応領域から除去する。
IX.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLの固定停止剤(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、固定停止剤を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で断続的に行い、固定停止剤をバイオチップと3分間反応させる。
X.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、固定停止剤を第2の反応領域から除去する。
XI.試薬チャンバ(1.5mL又は15mL遠心管など)から100μLのリンス液5(塩緩衝液)を取り出し、遠心反応小管に添加する。遠心分離を中速(例えば、500~1000gの遠心力の下)で行い、第1の単方向弁のみを開き、リンス液5を第2の反応領域に移動させる。その後、遠心分離を低速(例えば、10~100gの遠心力の下)で3分間、断続的に行い、バイオチップをリンスする。
XII.遠心分離を高速(例えば、1500~4000gの遠心力の下)で行い、第2の単方向弁を開き、リンス液5を第2の反応領域から除去する。
XIII.写真は、バイオチップ上の検体参照番号に従ってカメラで順次撮影され、次いでソフトウェアで解析し、結果報告を出力する。例えば、特定の患者の検体に対応するバイオチップ上の特定の箇所は、特定の検査を受けると色が変化し、特定の患者の試験結果が陽性であることを示す。
【0087】
(7)検査終了
【0088】
したがって、本開示は、人間の介入なしにワンクリックで分子生物学的試験を達成するための遠心反応小管、遠心反応装置及びその遠心検査方法を提供する。遠心力の下で、遠心反応小管により、分子生物学的検査機のサイズを小型化して、エネルギーを節約し、スペースを節約し、検査期間を短縮することができる。更に、その過程を通して、操作を簡単、迅速、正確かつ低コストにし、安全確保し、エネルギーを節約し、汚染防止するように、反応を異なる機械間で切り替える必要がない。
【0089】
本開示は好ましい実施形態によって上記に開示されているが、好ましい実施形態は本開示を限定するものではなく例示である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で当業者が好ましい実施形態に対して行った同等の修正又は変更は、本開示の特許請求の範囲に含まれるとみなされなければならない。