(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】車両、車両の航続可能距離の算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20231124BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20231124BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20231124BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L7/14
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2022010470
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 7/14
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪を回転させる電動機と、
前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置と、
前記車両の電費及び前記蓄電装置の電力残量に基づいて前記車両の航続可能距離を算出し、算出した前記航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得し、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記電費を演算し、
前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限する
とともに、
前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
前記車両が前記非降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以下の範囲で積算した第1電力量積算値が、第1閾値未満となった場合に前記降坂路走行状態であると判定し、
前記車両が前記降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以上の範囲で積算した第2電力量積算値が、第2閾値を超えた場合に前記非降坂路走行状態であると判定する、
車両。
【請求項2】
車両の駆動輪を回転させる電動機と、
前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置と、
前記車両の電費及び前記蓄電装置の電力残量に基づいて前記車両の航続可能距離を算出し、算出した前記航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得し、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記電費を演算し、
前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
車速に応じて前記下限値を変化させる、
車両。
【請求項3】
請求項
2記載の車両であって、
前記制御装置は、車速が高いほど前記下限値を大きくする、
車両。
【請求項4】
請求項
1記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記第1電力量積算値がゼロ未満である期間の前記走行距離を積算した第1距離積算値に応じて前記第1閾値を変化させ、
前記第2電力量積算値がゼロより大きい期間の前記走行距離を積算した第2距離積算値に応じて前記第2閾値を変化させる、
車両。
【請求項5】
請求項
4記載の車両であって、
前記制御装置は、前記第1距離積算値が大きいほど前記第1閾値を大きくし、前記第2距離積算値が大きいほど前記第2閾値を小さくする、
車両。
【請求項6】
車両の駆動輪を回転させる電動機と、前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置とを備える車両の航続可能距離を算出する方法であって、
コンピュータが行う、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得するステップと、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記車両の電費を演算するステップと、
を備え、
前記電費を演算するステップは、前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限する
とともに、
前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
前記車両が前記非降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以下の範囲で積算した第1電力量積算値が、第1閾値未満となった場合に前記降坂路走行状態であると判定し、
前記車両が前記降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以上の範囲で積算した第2電力量積算値が、第2閾値を超えた場合に前記非降坂路走行状態であると判定する、
方法。
【請求項7】
車両の駆動輪を回転させる電動機と、前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置とを備える車両の航続可能距離を算出する方法であって、
コンピュータが行う、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得するステップと、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記車両の電費を演算するステップと、
を備え、
前記電費を演算するステップは、前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
車速に応じて前記下限値を変化させる、
方法。
【請求項8】
請求項
6又は
7記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、車両の航続可能距離の算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においては、CO2排出量の削減が要求され、駆動源の電動化が急速に進んでいる。具体的には、電気自動車(Electrical Vehicle)や、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electrical Vehicle)といった、駆動源としての電動機と、この電動機に電力を供給可能な蓄電装置と、を備える車両(以下「電動車両」ともいう)の開発が進められている。
【0003】
電動車両では、一般に、車両の電費と、蓄電装置の電力残量とに基づいて航続可能距離が算出され、算出された航続可能距離が車両のユーザに提示される。ユーザは、提示される航続可能距離に基づき、例えば目的地までの距離との関係で、蓄電装置を充電するタイミングを判断する。車両の全動力を蓄電装置に頼る電気自動車においては、航続可能距離が適切に算出されることが極めて重要である。
【0004】
特許文献1に記載された車両では、ある期間の平均車速と、アクセルの操作量に関連する平均駆動力とに基づいて車両の基準電費が決定され、この基準電費に修正係数を乗ずることによって、航続可能距離の算出に用いられる予測電費が算出される。修正係数は、同一期間の基準電費と実電費との比であり、前回の修正係数を加味することによって平滑化される。このようにして算出される予測電費は、ユーザの運転の仕方や路面の勾配などの電費に影響を与える要因を反映しており、且つ急激な増減が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両が降坂路を走行する際に、電動機で回生される電力によって蓄電装置が充電される。降坂路走行時の電費は、蓄電装置の充電と併せて車両の走行距離が伸びていくため、平地又は登坂路走行時の電費に比べて大きく向上する。降坂路走行状態が長時間継続すると、特許文献1に記載された予測電費は降坂路走行時の実電費に近い値となる。その後、降坂路走行を終えて平坦路走行又は登坂路走行に移行した場合に、予測電費が平坦路走行又は登坂路走行の実電費に近い値となるまでに時間を要する。その結果、平坦路走行又は登坂路走行に移行した後の予測電費に基づいて算出される航続可能距離は、真の航続可能距離に対して過大となる虞があり、信頼性に欠ける。
【0007】
本発明は、航続可能距離を適切に算出する車両、算出方法、及びプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
車両の駆動輪を回転させる電動機と、
前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置と、
前記車両の電費及び前記蓄電装置の電力残量に基づいて前記車両の航続可能距離を算出し、算出した前記航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得し、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記電費を演算し、
前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
前記車両が前記非降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以下の範囲で積算した第1電力量積算値が、第1閾値未満となった場合に前記降坂路走行状態であると判定し、
前記車両が前記降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以上の範囲で積算した第2電力量積算値が、第2閾値を超えた場合に前記非降坂路走行状態であると判定する、
車両である。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、
車両の駆動輪を回転させる電動機と、
前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置と、
前記車両の電費及び前記蓄電装置の電力残量に基づいて前記車両の航続可能距離を算出し、算出した前記航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得し、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記電費を演算し、
前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
車速に応じて前記下限値を変化させる、
車両である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、
車両の駆動輪を回転させる電動機と、前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置とを備える車両の航続可能距離を算出する方法であって、
コンピュータが行う、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得するステップと、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記車両の電費を演算するステップと、
を備え、
前記電費を演算するステップは、前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
前記車両が前記非降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以下の範囲で積算した第1電力量積算値が、第1閾値未満となった場合に前記降坂路走行状態であると判定し、
前記車両が前記降坂路走行状態を継続している期間の、前記電力消費量から前記下限値を減じた値をゼロ以上の範囲で積算した第2電力量積算値が、第2閾値を超えた場合に前記非降坂路走行状態であると判定する、
方法である。
また、本発明の他の一態様は、
車両の駆動輪を回転させる電動機と、前記電動機に電力を供給可能且つ前記電動機で回生される電力によって充電可能な蓄電装置とを備える車両の航続可能距離を算出する方法であって、
コンピュータが行う、
前記車両の単位時間あたりの電力消費量及び走行距離を取得するステップと、
前記電力消費量を積算した積算電力消費量と、前記走行距離を積算した積算走行距離とに基づいて前記車両の電費を演算するステップと、
を備え、
前記電費を演算するステップは、前記車両の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、前記車両が前記降坂路走行状態である場合に、前記電費の良化を制限するとともに、前記電力消費量と、前記電力消費量に対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを前記積算電力消費量に積算して前記電費を演算し、
車速に応じて前記下限値を変化させる、
方法である。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の航続可能距離を適切に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、車両の一例の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の車両の航続可能距離の算出に関連する概略構成を示す図である。
【
図3】航続可能距離の算出処理を説明するための、基本となる処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の仮想電力消費量の演算処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の車両の制御装置が行う、航続可能距離の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の車両の制御装置が行う、航続可能距離の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図5の走行状態判定処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図5及び
図6に示した航続可能距離の算出処理を車両の走行状況に合わせて示すタイミングチャートである。
【
図9】
図1の車両の制御装置が行う、航続可能距離の算出処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1の車両の制御装置が行う、航続可能距離の算出処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図11】
図9のリミット処理に用いられる、車速と、電力消費量に対して設定される下限値との関係を規定したテーブルの一例を示すグラフである。
【
図12】
図9の走行状態判定処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図13】
図9の走行状態判定処理の他の変形例を示すフローチャートである。
【
図14】
図13の走行距離演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図13の走行状態判定処理に用いられる、走行距離と、電力消費量の積算値に対して設定される第1閾値との関係を規定したテーブルの一例を示すグラフである。
【
図16】
図13の走行状態判定処理に用いられる、走行距離と、電力消費量の積算値に対して設定される第2閾値との関係を規定したテーブルの一例を示すグラフである。
【
図17】
図9及び
図10に示した航続可能距離の算出処理を車両の走行状況に合わせて示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[車両]
図1は、本発明の実施形態を説明するための、車両の一例の概略構成を示す。
【0015】
図1に示すように、車両10は、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)であり、内燃機関の一例であるエンジンENGと、電動機の一例であるモータジェネレータMGと、発電機の一例であるジェネレータGENと、蓄電装置の一例であるバッテリBATと、クラッチCLと、電力変換装置11と、車両制御装置12と、を含む。なお、
図1において、太い実線は機械連結を示し、破線は電気配線を示し、細い実線の矢印は制御信号またの送受を示す。
【0016】
エンジンENGは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、供給された燃料を燃焼させることで発生した動力を出力する。エンジンENGは、ジェネレータGENに連結されるとともに、クラッチCLを介して車両10の駆動輪DWに連結される。エンジンENGが出力する動力(以下「エンジンENGの出力」ともいう)は、クラッチCLが切断状態である場合にはジェネレータGENに伝達され、クラッチCLが接続状態(締結状態)である場合には駆動輪DWに伝達される。なお、ジェネレータGEN及びクラッチCLについては後述する。
【0017】
モータジェネレータMGは、主に車両10の駆動源として用いられるモータジェネレータ(いわゆるトラクションモータ)であり、例えば交流モータで構成される。モータジェネレータMGは、電力変換装置11を介して、バッテリBAT及びジェネレータGENに電気的に接続される。モータジェネレータMGには、バッテリBAT及びジェネレータGENの少なくとも一方の電力が供給され得る。モータジェネレータMGは、電力が供給されることによって電動機として動作し、車両10が走行するための動力を出力する。また、モータジェネレータMGは駆動輪DWと連結されており、モータジェネレータMGが出力する動力(以下「モータジェネレータMGの出力」ともいう)は、駆動輪DWに伝達される。車両10は、上述したエンジンENGの出力及びモータジェネレータMGの出力の少なくとも一方が駆動輪DWに伝達されることで走行する。
【0018】
また、モータジェネレータMGは、車両10の制動時(エンジンENGあるいは駆動輪DWによって回転させられる際)に発電機として回生動作し、発電(いわゆる回生発電)を行う。モータジェネレータMGが回生動作することによって発生した電力(以下「回生電力」ともいう)は、例えば、電力変換装置11を介してバッテリBATに供給される。これにより、回生電力によってバッテリBATを充電できる。
【0019】
ジェネレータGENは、主に発電機として用いられ、例えば交流モータで構成される。ジェネレータGENは、エンジンENGの動力によって駆動され、発電を行う。ジェネレータGENが発電した電力は、電力変換装置11を介してバッテリBAT及びモータジェネレータMGの少なくとも一方に供給される。ジェネレータGENが発電した電力をバッテリBATに供給することで、該電力によってバッテリBATを充電できる。また、ジェネレータGENが発電した電力をモータジェネレータMGに供給することで、該電力によってモータジェネレータMGを駆動できる。
【0020】
電力変換装置11は、入力された電力を変換し、変換した電力を出力する装置(いわゆるパワーコントロールユニット。「PCU」ともいう)であり、モータジェネレータMG、ジェネレータGEN、及びバッテリBATと接続される。例えば、電力変換装置11は、第1インバータ111と、第2インバータ112と、電圧制御装置110と、を含んで構成される。第1インバータ111、第2インバータ112、及び電圧制御装置110は、それぞれ電気的に接続される。
【0021】
電圧制御装置110は、入力された電圧を変換し、変換した電圧を出力する。電圧制御装置110としては、DC/DCコンバータなどを用いることができる。電圧制御装置110は、例えば、バッテリBATの電力をモータジェネレータMGに供給する場合には、バッテリBATの出力電圧を昇圧して第1インバータ111へ出力する。また、電圧制御装置110は、例えば、モータジェネレータMGによって回生発電が行われた場合には、第1インバータ111を介して受け付けたモータジェネレータMGの出力電圧を降圧してバッテリBATへ出力する。また、電圧制御装置110は、ジェネレータGENによって発電が行われた場合には、第2インバータ112を介して受け付けたジェネレータGENの出力電圧を降圧してバッテリBATへ出力する。
【0022】
第1インバータ111は、バッテリBATの電力をモータジェネレータMGに供給する場合には、電圧制御装置110を介して受け付けたバッテリBATの電力(直流)を交流に変換してモータジェネレータMGへ出力する。また、第1インバータ111は、モータジェネレータMGによって回生発電が行われた場合には、モータジェネレータMGから受け付けた電力(交流)を直流に変換して電圧制御装置110へ出力する。第2インバータ112は、ジェネレータGENによって発電が行われた場合には、ジェネレータGENから受け付けた電力(交流)を直流に変換して電圧制御装置110へ出力する。
【0023】
バッテリBATは、充放電可能な二次電池であり、直列あるいは直並列に接続された複数の蓄電セルを有する。バッテリBATは、例えば100~400[V]といった高電圧を出力可能に構成される。バッテリBATの蓄電セルとしては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などを用いることができる。
【0024】
クラッチCLは、エンジンENGから駆動輪DWまでの動力伝達経路を接続(締結)する接続状態と、エンジンENGから駆動輪DWまでの動力伝達経路を切断(遮断)する切断状態と、をとり得る。エンジンENGの出力は、クラッチCLが接続状態である場合に駆動輪DWに伝達され、クラッチCLが切断状態である場合には駆動輪DWに伝達されない。
【0025】
車両制御装置12は、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する記憶装置、車両制御装置12の内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置などを備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現され、車両10全体を統括制御する装置(コンピュータ)である。車両制御装置12は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUによって実現されてもよい。
【0026】
具体的に説明すると、車両制御装置12は、エンジンENG、クラッチCL、電力変換装置11と通信可能に設けられている。そして、車両制御装置12は、エンジンENGの出力を制御したり、電力変換装置11を制御することでモータジェネレータMGやジェネレータGENの出力を制御したり、クラッチCLの状態を制御したりする。これにより、車両制御装置12は、後述するように、車両10の走行モードを制御することが可能である。
【0027】
[車両の走行モード]
次に、車両10の走行モードについて説明する。車両10は、走行モードとして、EV走行モードと、ハイブリッド走行モードと、エンジン走行モードと、をとり得る。そして、車両10は、これらの走行モードのうちのいずれかの走行モードによって走行する。車両10をいずれの走行モードで走行させるかは、車両制御装置12によって制御される。
【0028】
[EV走行モード]
EV走行モードは、バッテリBATの電力のみをモータジェネレータMGに供給し、該電力に応じてモータジェネレータMGが出力する動力によって車両10を走行させる走行モードである。
【0029】
EV走行モードの場合、車両制御装置12は、クラッチCLを切断状態にする。また、EV走行モードの場合、車両制御装置12は、エンジンENGへの燃料の供給を停止して、エンジンENGからの動力の出力(以下「エンジンENGの作動」ともいう)を停止させる。このため、EV走行モードでは、ジェネレータGENによる発電が行われないことになる。そして、EV走行モードの場合、車両制御装置12は、バッテリBATの電力のみをモータジェネレータMGに供給するようにし、該電力に応じた動力をモータジェネレータMGから出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0030】
車両制御装置12は、例えば、モータジェネレータMGにバッテリBATからの電力のみが供給され、該電力に応じてモータジェネレータMG1が出力する動力によって、車両10の走行に要求される駆動力(以下「要求駆動力」ともいう)を得られることを条件に、車両10をEV走行モードで走行させる。
【0031】
なお、EV走行モードでは、エンジンENGへの燃料の供給が停止されるので、エンジンENGへの燃料の供給が行われる他の走行モードに比べて、エンジンENGが消費する燃料が低減され、車両10の燃費が向上する。したがって、車両10をEV走行モードとする頻度(機会)を増加させることで、車両10の燃費向上を図ることが可能である。一方で、EV走行モードでは、ジェネレータGENによる発電が行われず、バッテリBATの電力のみによってモータジェネレータMGを駆動することになるので、バッテリBATの電力残量(SOC:State of chargeともいう)が低下しやすくなる。
【0032】
[ハイブリッド走行モード]
ハイブリッド走行モードは、少なくともジェネレータGENが発電した電力をモータジェネレータMGに供給し、該電力に応じてモータジェネレータMGが出力する動力を主として車両10を走行させる走行モードである。
【0033】
ハイブリッド走行モードの場合、車両制御装置12は、クラッチCLを切断状態にする。また、ハイブリッド走行モードの場合、車両制御装置12は、エンジンENGへの燃料の供給を行って、エンジンENGから動力を出力させ、エンジンENGの動力によってジェネレータGENを駆動する。これにより、ハイブリッド走行モードでは、ジェネレータGENによる発電が行われる。また、ハイブリッド走行モードの場合、車両制御装置12は、クラッチCLにより動力伝達経路を切断状態として、ジェネレータGENが発電した電力をモータジェネレータMGに供給し、該電力に応じた動力をモータジェネレータMGから出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0034】
ジェネレータGENからモータジェネレータMGに供給される電力は、バッテリBATからモータジェネレータMGに供給される電力よりも大きい。したがって、ハイブリッド走行モードでは、EV走行モードに比べて、モータジェネレータMGの出力を大きくすることができ、車両10を走行させる駆動力(以下「車両10の出力」ともいう)として大きな駆動力を得ることができる。
【0035】
なお、ハイブリッド走行モードの場合、車両制御装置12は、必要に応じてバッテリBATの電力もモータジェネレータMGに供給するようにしてもよい。すなわち、車両制御装置12は、ハイブリッド走行モードにおいて、ジェネレータGEN及びバッテリBATの双方の電力をモータジェネレータMGに供給するようにしてもよい。これにより、ジェネレータGENの電力のみをモータジェネレータMGに供給する場合に比べて、モータジェネレータMGに供給する電力を大きくすることができ、車両10の出力として一層と大きな駆動力を得ることができる。
【0036】
[エンジン走行モード]
エンジン走行モードは、エンジンENGが出力する動力を主として車両10を走行させる走行モードである。
【0037】
エンジン走行モードの場合、車両制御装置12は、クラッチCLを接続状態にする。また、エンジン走行モードの場合、車両制御装置12は、エンジンENGへの燃料の供給を行って、エンジンENGから動力を出力させる。エンジン走行モードの場合、クラッチCLによって動力伝達経路が接続状態とされているので、エンジンENGの動力は、駆動輪DWに伝達されて駆動輪DWを駆動する。このように、エンジン走行モードの場合、車両制御装置12は、エンジンENGから動力を出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0038】
また、エンジン走行モードの場合、車両制御装置12は、必要に応じてバッテリBATの電力をモータジェネレータMGに供給するようにしてもよい。これにより、エンジン走行モードでは、バッテリBATの電力が供給されることによってモータジェネレータMGが出力する動力も用いて車両10を走行させることができ、エンジンENGの動力のみによって車両10を走行させる場合に比べて、車両10の出力として一層と大きな駆動力を得ることができる。また、これにより、エンジンENGの動力のみによって車両10を走行させるようにした場合に比べて、エンジンENGの出力を抑制することができ、車両10の燃費向上を図ることができる。
【0039】
図2は、車両10の航続可能距離の算出に関連する概略構成を示す。
【0040】
車両10は、車両10の走行速度(以下「車速」ともいう)を検出する車速センサ20と、バッテリBATの充放電電流、充放電電圧、温度等を検出するバッテリセンサ21と、制御装置22と、表示装置23とを含む。車速センサ20及びバッテリセンサ21による検出結果は制御装置22へ送信される。
【0041】
制御装置22は、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する記憶装置、車両制御装置12の内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置などを備えるECUによって実現される。なお、制御装置22は、車両制御装置12の一部として構成されてもよい。
【0042】
制御装置22は、車速センサ20の検出結果に基づいて単位時間あたりの走行距離を取得し、走行距離を積算した積算走行距離を算出する。また、制御装置22は、バッテリセンサ21の検出結果に基づいて車両10の単位時間あたりの電力消費量を取得し、電力消費量を積算した積算電力消費量を算出する。そして、制御装置22は、積算走行距離及び積算電力消費量を用いて車両10の電費を演算し、電費とバッテリBATの電力残量とに基づいて車両10の航続可能距離を算出する。なお、バッテリBATの電力残量は、バッテリセンサ21の検出結果に基づき、車両制御装置12又は制御装置22によって推定される。
【0043】
そして、制御装置22は、算出した航続可能距離を表示装置23に表示させる。表示装置23は、車両10に関する各種情報を表示可能な表示装置であり、例えば、いわゆる「マルチインフォメーションディスプレイ」と称される液晶ディスプレイであり、車両10のインストルメントパネルに設置されている。ユーザは、表示装置23に表示された航続可能距離に基づき、例えば目的地までの距離との関係で、バッテリBATを充電するタイミングを判断することができる。なお、表示装置23は、車両10のインストルメントパネルに設置された液晶ディスプレイに限らず、ユーザが所持するスマートフォンなどであってもよい。
【0044】
次に、制御装置22が行う、車両10の航続可能距離の算出処理を説明する。なお、車両10はエンジンENGを有するハイブリッド電気自動車であるが、以下に説明する処理は、バッテリの電力のみによって走行可能な車両に適用可能であり、例えばエンジンを有さない電気自動車(Battery Electric Vehicle)にも適用可能である。
【0045】
図3及び
図4は、制御装置22が行う航続可能距離の算出処理を説明するための、基本となる処理を示す。
【0046】
車両10の車両システムが起動されると(ステップS1-Yes)、制御装置22は、現在の積算走行距離D及び積算電力消費量Iを取得する(ステップS2)。積算走行距離D及び積算電力消費量Iは、車両制御装置12又は制御装置22の記憶装置に格納されている。
【0047】
制御装置22は、次式に従って、取得した積算走行距離Dを所定値Dsに拡大又は縮小し、また取得した積算電力消費量Iを積算走行距離Dと同じ比率Ds/Dで拡大又は縮小する(ステップS3)。所定値Dsは、車両10の単位時間あたりの標準的な走行距離(例えば10分で6km~7km)を考慮して設定される。
D=D×(Ds/D)
I=I×(Ds/D)
【0048】
そして、制御装置22は、直近の単位時間あたりの走行距離dを取得する(ステップS4)。ステップS3における積算走行距離D及び積算電力消費量Iの拡大/縮小処理は、積算走行距離D及び積算電力消費量Iに対する重みづけである。この重みづけにより、後述する電費の演算において、直近の単位時間あたりの走行距離d及び電力消費量が電費に与える影響を、積算走行距離D及び積算電力消費量Iにかかわらず平準化することができる。
【0049】
次に、制御装置22は、車両10の走行モードがEV走行モードであるか否かを判定する(ステップS5)。EV走行モードである場合(ステップS5-Yes)、制御装置22は、車両10の単位時間あたりの電力消費量ievを取得し、取得したievを直近の単位時間あたりの電力消費量iとする(ステップS6)。また、EV走行モードでない場合、すなわちハイブリッド走行モード又はエンジン走行モードである場合(ステップS5-No)、制御装置22は、仮想電力消費量iengを演算し、演算したiengを直近の単位時間あたりの電力消費量iとする(ステップS7)。
【0050】
【0051】
制御装置22は、駆動力マップを参照し、車両10のアクセルペダルに対する操作量及び車速に基づいて要求駆動力を決定する(ステップS21)。駆動力マップは、アクセルペダルに対する操作量及び車速と、要求駆動力との関係を規定したものであり、制御装置22の記憶装置に予め格納されている。そして、制御装置22は、ステップS21で決定した要求駆動力に対して各種のリミットを適用することによって駆動力目標値を決定する(ステップS22)。
【0052】
次に、制御装置22は、ステップS22で決定した駆動力目標値に伝達効率を乗じた値を電力に換算することによって駆動電力消費量icarを求める(ステップS23)。そして、制御装置22は、エアコン等の補機によって消費される補機電力消費量idevを駆動電力消費量icarに加算し、駆動電力消費量icar及び補機電力消費量idevの合計に対してEVリミットを適用して仮想電力消費量iengを得る(ステップS24)。EVリミットは、例えばバッテリBATの温度との関係でバッテリBATが供給可能な電力の上限を規定するものである。
【0053】
なお、ステップS5及びステップS7の処理は、車両10がエンジンを有さない電気自動車である場合には省略される。
【0054】
再び
図3を参照して、制御装置22は、ステップS4で取得した走行距離dを、重みづけされた積算走行距離Dに積算する。また、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iを、重みづけされた積算電力消費量Iに積算する(ステップS8)。
【0055】
次に、制御装置22は、ステップS8で求めた積算走行距離Dが所定の閾値Dthを超えているか否かを判定する(スッテプS9)。閾値Dthは、所定値Ds及び車両10の単位時間あたりの標準的な走行距離を考慮して適宜設定される。積算走行距離Dが所定の閾値Dthを超えている場合に(ステップS9-Yes)、制御装置22は、積算走行距離Dを所定値Dsに拡大又は縮小し、また積算電力消費量Iを積算走行距離Dと同じ比率Ds/Dで拡大又は縮小する(ステップS10)。
【0056】
制御装置22は、ステップS8で求めた積算走行距離Dが閾値Dth以下である場合には、ステップS8で求めた積算走行距離D及び積算電力消費量Iに基づき、次式に従って電費Rを演算し、ステップS8で求めた積算走行距離Dが閾値Dthを超えている場合には、ステップS10で求めた積算走行距離D及び積算電力消費量Iに基づき、次式に従って電費Rを演算する(ステップS11)。
R(km/Wh)=D(km)/I(Wh)
【0057】
次に、制御装置22は、バッテリBATの電力残量Wを取得し(ステップS12)、ステップS11で求めた電費Rと、電力残量Wとに基づき、次式に従って、車両10の航続可能距離Cを算出する(ステップS13)。そして、制御装置22は、算出した航続可能距離Cを表示装置23に表示させる(ステップS14)。
C(km)=R(km/Wh)×W(Wh)
【0058】
図5から
図7は、制御装置22が行う航続可能距離の算出処理の一例を示す。
【0059】
図5から
図7に示す例は、車両10の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定する処理と、車両10が降坂路走行状態である場合に電費Rの良化を制限する処理とを、上述した基本処理に追加したものである。
【0060】
制御装置22は、ステップS4で走行距離dを取得し、そしてステップS6又はステップS7で電力消費量iを取得した後、車両10の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定する(ステップS31)。
【0061】
【0062】
まず、制御装置22は、車両10の走行状態に関する状態フラグF_DWNHILの値を前回値としてF_DWNHIL_Zに保持する(ステップS41)。そして、制御装置22は、状態フラグF_DWNHILの値に基づいて、車両10の走行状態を取得する(ステップS42)。以下の説明において、F_DWNHIL=1は、車両10が降坂路走行状態であることを意味し、F_DWNHIL_L=0は、車両10が非降坂路走行状態であることを意味するものとする。
【0063】
車両10の走行状態が非降坂路走行状態である場合(ステップS42-Yes)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iを判定用電力消費量ijdgに積算する(ステップS43)。判定用電力消費量ijdgは、車両10が同一の走行状態を継続している間の電力消費量iを積算したものであり、非降坂路走行状態から降坂路走行状態に移行した際に、又は降坂路走行状態から非降坂路走行状態に移行した際にゼロにリセットされる。
【0064】
ここで、非降坂路走行状態、すなわち平坦路走行状態または登坂路走行状態である場合に、車両10はバッテリBATの電力を消費しながら走行しており、電力消費量iは基本的にゼロ以上である。一方、降坂路走行状態である場合に、バッテリBATは回生電力によって充電されるため、電力消費量iはゼロ以下になり得る。非降坂路走行状態から降坂路走行状態への移行を検出するにあたり、ステップS43の電力消費量iの積算においては、電力消費量iをゼロ以下の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算すればよい。
【0065】
そして、判定用電力消費量ijdgが第1閾値ith1未満となった場合に(ステップS44-Yes)、制御装置22は、非降坂路走行状態から降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“1”に設定する(ステップS45)。第1閾値ith1は、短時間の減速回生や短距離の下り勾配道路の走行によって降坂路走行状態へ移行することがないように、ゼロ未満の値で適宜設定される。
【0066】
一方、車両10の走行状態が降坂路走行状態である場合(ステップS42-No)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iを判定用電力消費量ijdgに積算する(ステップS46)。上述のとおり、非降坂路走行状態である場合に、電力消費量iは基本的にゼロ以上である。したがって、降坂路走行状態から非降坂路走行状態への移行を検出するにあたり、ステップS46の電力消費量iの積算においては、電力消費量iをゼロ以上の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算すればよい。
【0067】
そして、判定用電力消費量ijdgが第2閾値ith2を超えた場合に(ステップS47-Yes)、制御装置22は、降坂路走行状態から非降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“0”に設定する(ステップS48)。第2閾値ith2は、短時間の加速や短距離の上り勾配道路の走行によって非降坂路走行状態へ移行することがないように、ゼロより大きい値で適宜設定される。
【0068】
再び
図5を参照して、ステップS31の判定の結果、車両10の走行状態が非降坂路走行状態である場合に(ステップS32-No)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iを、重みづけされた積算電力消費量Iに積算する(ステップS8)。そして、
図6に示すように、制御装置22は、上述したステップS9からステップS14の処理に従って、電費Rを演算し、航続可能距離Cを算出して、算出した航続可能距離Cを表示装置23に表示させる。
【0069】
一方、ステップS31の判定の結果、車両10の走行状態が降坂路走行状態である場合に(ステップS32-Yes)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iに対してリミットを適用し(ステップS33)、リミット適用後の電力消費量iを重みづけされた積算電力消費量Iに積算する(ステップS8)。
【0070】
ステップS33のリミット処理において、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iと、電力消費量iに対して設定される下限値とのいずれか大きいほうを、積算電力消費量Iに積算する電力消費量とする。上述したとおり、降坂路走行状態である場合の電力消費量iがゼロ以下になり得ることを考慮し、本例において、下限値はゼロに設定されている。例えば、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iがゼロ又は正の値である場合に、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iがそのまま積算電力消費量Iに積算される。一方、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iが負の値である場合に、ゼロが積算電力消費量Iに積算される。
【0071】
そして、制御装置22は、上述したステップS9からステップS14の処理に従って、電費Rを演算し、航続可能距離Cを算出し、算出した航続可能距離Cを表示装置23に表示させる。
【0072】
図8は、
図5から
図7に示した航続可能距離の算出処理を車両の走行状況に合わせて示すタイミングチャートである。単位時間あたりの電力消費量iの変化を表すグラフにおいて、実線は、ステップS33でリミットが適用された後の電力消費量iを示し、破線はステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iを示す。
【0073】
区間A~Eは全体として比較的長い距離の平坦区間(平坦路)であるが、比較的短い距離の下り勾配区間Dを含む。区間Fは、比較的長い距離の下り勾配区間(降坂路)である。区間Gは平坦路である。また、区間Bにおいて車両10は減速している。
【0074】
区間A~Eにおいて、ステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iは基本的に正の値であるが、車両10が減速する区間B、及び比較的短い下り勾配区間Dにおいては、一時的に負の値となる。一方、区間Fにおいて、ステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iは定常的に負の値である。上述した走行状態判定処理における第1閾値i
th1は、区間B及び区間Dにおける電力消費量iの積算値よりも小さく、且つ区間Fにおける電力消費量iの積算値よりも大きい値に設定される。これにより、
図7に示した走行状態判定処理において、区間Bにおける短時間の減速回生や区間Dにおける短距離の下り勾配道路の走行に起因して降坂路走行状態への移行が検出されることはなく、車両10の走行状態は区間A~Eに亘って非降坂路走行状態に維持される。そして、区間Fにおいて、時刻t1に降坂路走行状態への移行が検出される。
【0075】
このように、電力消費量iを積算した判定用電力消費量ijdgに基づいて車両10の走行状態を判定することにより、平坦路又は登坂路における短時間の減速や比較的短い距離の下り勾配道路の走行と、降坂路走行とを正確に且つ少ない演算負荷で区別することができる。同様に、降坂路における短時間の加速や比較的短い距離の平坦又は上り勾配道路の走行と、平坦路走行又は登坂路走行とを正確に且つ少ない演算負荷で区別することができる。
【0076】
時刻t1に降坂路走行状態への移行が検出されてから、平坦路である区間Gにおいて、時刻t2に非降坂路走行状態への移行が検出されるまでの期間、車両10の走行状態は制御装置22によって降坂路走行状態であると判定される。降坂路走行状態である場合に、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iに対してリミットが適用され、電力消費量iと、電力消費量iに対して設定される下限値(ここではゼロ)とのいずれか大きいほうが、積算電力消費量Iに積算される。区間Fにおける電力消費量iは負の値であるが、時刻t1以降、リミットが適用されることによって、ゼロが積算電力消費量Iに積算される。
【0077】
降坂路走行状態が継続している間、本来であれば、積算走行距離Dは次第に増加し、積算電力消費量Iは次第に減少するところ、以上の処理により、積算電力消費量Iは、少なくとも減少することなく維持される。従って、電費R(R=D/I)の良化が制限される。これにより、降坂路を過ぎて平坦路又は登坂路を走行する際に算出される航続可能距離が、真の航続可能距離に対して過大となることを抑制することができる。
【0078】
車両10の走行状態が降坂路走行状である場合に電費R(R=D/I)の良化を制限することは、バッテリBATの同一の電力残量Wに対して、降坂路走行状態である場合に算出される航続可能距離C(C=R×W)を、非降坂路走行状態である場合に算出される航続可能距離よりも小さくすること、と言い換えることができる。
【0079】
なお、電力消費量iを積算した判定用電力消費量ijdgに替えて、電力消費量iが所定値未満(例えばゼロ未満)であるか否かに基づいて車両の走行状態を判定することもできる。
【0080】
図9及び
図10は、制御装置22が行う航続可能距離の算出処理の他の例を示す。
【0081】
車両の走行抵抗は、主に空気抵抗の影響によって、高車速であるほど大きくなり、電費は、走行抵抗の増加に起因して、高車速であるほど悪化する。
図5から
図7に示した例では、電力消費量iのリミット処理における下限値がゼロ(固定値)とされており、積算電力消費量Iが少なくとも減少することなく維持されるが、積算走行距離Dは、高車速であるほど大きく増加する。その結果、高車速である場合に、電費R(R=D/I)の良化の制限が弱まる可能性がある。
図9及び
図10に示す例は、電力消費量iのリミット処理において、電力消費量iに対して設定される下限値を車速に応じて変化させる。
【0082】
制御装置22の記憶装置には、車速と、電力消費量iに対して設定される下限値i
baseとの関係を規定したテーブルが予め格納されている。
図11は、テーブルの一例を示し、車速の増加に応じて下限値i
baseが単調に増加している。これは、車両が平坦路を走行する際の、車速と、走行のみに要する単位時間あたりの電力消費量との関係の典型である。
【0083】
図9に示すように、制御装置22は、テーブルを参照し、車速に応じた下限値i
baseを取得する(ステップS51)。そして、制御装置22は、車両10の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定する(ステップS52)。ステップS52の走行状態判定処理は、
図7に示した走行状態判定処理と同一である。
【0084】
ステップS52の判定の結果、車両10の走行状態が非降坂路走行状態である場合に(ステップS53-No)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iを、重みづけされた積算電力消費量Iに積算する(ステップS8)。そして、
図10に示すように、制御装置22は、上述したステップS9からステップS14の処理に従って、電費Rを演算し、航続可能距離Cを算出し、算出した航続可能距離Cを表示装置23に表示させる。
【0085】
一方、ステップS52の判定の結果、車両10の走行状態が降坂路走行状態である場合に(ステップS53-Yes)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iに対してリミットを適用し(ステップS54)、リミット適用後の電力消費量iを重みづけされた積算電力消費量Iに積算する(ステップS8)。
【0086】
ステップS54のリミット処理において、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iと、車速に応じた下限値ibaseとのいずれか大きいほうを、積算電力消費量Iに積算する電力消費量とする。そして、制御装置22は、上述したステップS9からステップS14の処理に従って、電費Rを演算し、航続可能距離Cを算出し、算出した航続可能距離Cを表示装置23に表示させる。
【0087】
本例によれば、電力消費量iのリミット処理において、電力消費量iに対して設定される下限値が車速に応じて変化する。これにより、高車速であっても適切に航続可能距離を算出することができる。
【0088】
図12は、
図9及び
図10に示した航続可能距離の算出処理における走行状態判定処理の変形例を示す。
【0089】
まず、制御装置22は、車両10の走行状態に関する状態フラグF_DWNHILの値を前回値としてF_DWNHIL_Zに保持する(ステップS61)。そして、制御装置22は、状態フラグF_DWNHILの値に基づいて、車両10の走行状態を取得する(ステップS62)。
【0090】
車両10の走行状態が非降坂路走行状態である場合(ステップS62-Yes)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iから、ステップS51で取得した下限値ibaseを減じた値を、ゼロ以下の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算する(ステップS63)。ここで、ステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iは、補機によって消費される補機電力消費量idevを含むので、好ましくは、電力消費量iから補機電力消費量idev及び下限値ibaseを減じた値を、ゼロ以下の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算する。
【0091】
そして、判定用電力消費量ijdgが第1閾値ith1未満となった場合に(ステップS64-Yes)、制御装置22は、非降坂路走行状態から降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“1”に設定する(ステップS65)。
【0092】
一方、車両10の走行状態が降坂路走行状態である場合(ステップS62-No)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7で取得した電力消費量iから、ステップS51で取得した下限値ibaseを減じた値を、ゼロ以上の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算する(ステップS66)。好ましくは、電力消費量iから補機電力消費量idev及び下限値ibaseを減じた値を、ゼロ以上の範囲で判定用電力消費量ijdgに積算する。
【0093】
そして、判定用電力消費量ijdgが第2閾値ith2を超えた場合に(ステップS67-Yes)、制御装置22は、降坂路走行状態から非降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“0”に設定する(ステップS68)。
【0094】
本変形例によれば、電力消費量iから下限値ibaseを減じた値を判定用電力消費量ijdgに積算し、この判定用電力消費量ijdgに基づいて車両10の走行状態を判定しており、高車速において、より的確に走行状態を判定することができる。
【0095】
【0096】
走行状態判定処理において、判定用電力消費量i
jdgに対する閾値(第1閾値i
th1、第2閾値i
th2)を固定値とした場合に、緩い勾配では、判定用電力消費量i
jdgが閾値に達するまでの走行距離が長くなり、急な勾配では、判定用電力消費量i
jdgが閾値に達するまでの走行距離が短くなる。従って、緩い勾配では、急な勾配よりも、非降坂路走行状態から降坂路走行状態への移行、又は降坂路走行状態から非降坂路走行状態への移行の検出が遅れることになる。
図13及び
図14に示す走行状態判定処理は、判定用電力消費量i
jdgに対する閾値を走行距離に応じて変化させる。
【0097】
図13に示すように、制御装置22は、車両10の走行状態に関する状態フラグF_DWNHILの値を前回値としてF_DWNHIL_Zに保持する(ステップS71)。そして、制御装置22は、状態フラグF_DWNHILの値に基づいて、車両10の走行状態を取得する(ステップS72)。
【0098】
車両10の走行状態が非降坂路走行状態である場合(ステップS72-Yes)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7(
図9参照)で取得した電力消費量iから、補機電力消費量i
dev及びステップS51(
図9参照)で取得した下限値i
baseを減じた値を、ゼロ以下の範囲で判定用電力消費量i
jdgに積算する(ステップS73)。
【0099】
次に、制御装置22は、走行距離演算処理を行う(ステップS74)。
【0100】
図14に示すように、走行距離演算処理において、制御装置22は、判定用電力消費量i
jdgがゼロであるか否かを判定する(ステップS91)。判定用電力消費量i
jdgがゼロ未満であるか又はゼロより大きい場合に(ステップS91-No)、制御装置22は、状態フラグF_DWNHILの値と、状態フラグの前回値F_DWNHIL_Zとを比較する(ステップS92)。そして、状態フラグF_DWNHILの値と、状態フラグの前回値F_DWNHIL_Zとが同じである場合(ステップS92-No)、すなわち車両10の走行状態に変化がない場合に、制御装置22は、ステップS4(
図9参照)で取得した走行距離dを判定用走行距離d
jdgに積算する(ステップS93)。
【0101】
一方、判定用電力消費量ijdgがゼロである場合(ステップS91-Yes)、又は状態フラグF_DWNHILの値と、状態フラグの前回値F_DWNHIL_Zとが異なる場合(ステップS92-Yes)、すなわち車両10の走行状態が非降坂路走行状態から降坂路走行状態に移行し、又は降坂路走行状態から非降坂路走行状態に移行した場合に、制御装置22は、判定用走行距離djdgをゼロにリセットする(ステップS94)。
【0102】
再び
図13を参照して、制御装置22は、ステップS74で演算した判定用走行距離d
jdgに応じて第1閾値i
th1を決定する(ステップS75)。制御装置22の記憶装置には、判定用走行距離d
jdgと、第1閾値i
th1との関係を規定したテーブルが予め格納されている。
図15は、テーブルの一例を示し、判定用走行距離d
jdgの増加に応じて第1閾値i
th1が単調に増加している。
【0103】
そして、判定用電力消費量ijdgが第1閾値ith1未満となった場合に(ステップS76-Yes)、制御装置22は、非降坂路走行状態から降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“1”に設定する(ステップS77)。
【0104】
一方、車両10の走行状態が降坂路走行状態である場合(ステップS72-No)、制御装置22は、ステップS6又はステップS7(
図9参照)で取得した電力消費量iから、補機電力消費量i
dev及びステップS51(
図9参照)で取得した下限値i
baseを減じた値を、ゼロ以上の範囲で判定用電力消費量i
jdgに積算する(ステップS78)。
【0105】
次に、制御装置22は、
図14に示した走行距離演算処理を行う(ステップS79)。続いて、制御装置22は、ステップS79で演算した判定用走行距離d
jdgに応じて第2閾値i
th2を決定する(ステップS80)。制御装置22の記憶装置には、判定用走行距離d
jdgと、第2閾値i
th2との関係を規定したテーブルが予め格納されている。
図16は、テーブルの一例を示し、判定用走行距離d
jdgの増加に応じて第2閾値i
th2が単調に減少している。
【0106】
そして、判定用電力消費量ijdgが第2閾値ith2を超えた場合に(ステップS81-Yes)、制御装置22は、降坂路走行状態から非降坂路走行状態への移行を検出し、状態フラグF_DWNHILの値を“0”に設定する(ステップS82)。
【0107】
図17は、
図9及び
図10に示した航続可能距離の算出処理を車両の走行状況に合わせて示すタイミングチャートである。なお、ステップS52の走行状態判定処理は、
図13及び
図14に示した変形例によるものとする。単位時間あたりの電力消費量iの変化を表すグラフにおいて、実線は、ステップS54でリミットが適用された後の電力消費量iを示し、破線はステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iを示す。
【0108】
時刻0~t4の期間、車両10は平坦路を走行しており、ステップS6又はステップS7で取得される電力消費量iは基本的に正の値であるが、時刻t1~t2の期間は、短時間の減速又は比較的短い距離の下り勾配道路の走行に起因して、電力消費量iが負の値となっている。また、時刻t4~t9の期間、車両10は降坂路を走行しており、電力消費量iは基本的に負の値であるが、時刻t6~t7の期間は、短時間の加速又は比較的短い距離の上り勾配道路の走行に起因して、電力消費量iが正の値となっている。時刻t9以降、車両10は再び平坦路を走行している。
【0109】
電力消費量iが一時的に負の値となる時刻t1~t2を含む時刻t1~t3の期間で、電力消費量iをゼロ以下の範囲で積算した判定用電力消費量ijdgはゼロ未満となっている。ステップS4で取得される走行距離dが、時刻t1~t3の期間に亘って判定用走行距離djdgに積算され、判定用走行距離djdgが次第に増加する。判定用走行距離djdgの増加に応じて、上述した走行状態判定処理における第1閾値ith1が増加する。ただし、判定用電力消費量ijdgは、第1閾値ith1未満となることなく、時刻t3でゼロとなり、判定用走行距離djdgはゼロにリセットされる。
【0110】
電力消費量iが定常的に負の値となる時刻t4以降、電力消費量iをゼロ以下の範囲で積算した判定用電力消費量ijdgが再びゼロ未満となっている。ステップS4で取得される走行距離dが判定用走行距離djdgに積算され、判定用走行距離djdgが次第に増加する。判定用走行距離djdgの増加に応じて、上述した走行状態判定処理における第1閾値ith1が再び増加する。そして、時刻t5で、判定用電力消費量ijdgが第1閾値ith1未満となり、降坂路走行状態への移行が検出される。
【0111】
電力消費量iが一時的に正の値となる時刻t6~t7を含む時刻t6~t8の期間で、電力消費量iをゼロ以上の範囲で積算した判定用電力消費量ijdgはゼロより大きくなっている。ステップS4で取得される走行距離dが、時刻t6~t8の期間に亘って判定用走行距離djdgに積算され、判定用走行距離djdgが次第に増加する。判定用走行距離djdgの増加に応じて、上述した走行状態判定処理における第2閾値ith2が減少する。ただし、判定用電力消費量ijdgは、第2閾値ith2より大きくなることなく、時刻t8でゼロとなり、判定用走行距離djdgはゼロにリセットされる。
【0112】
電力消費量iが定常的に正の値となる時刻t9以降、電力消費量iをゼロ以上の範囲で積算した判定用電力消費量ijdgが再びゼロより大きくなっている。ステップS4で取得される走行距離dが判定用走行距離djdgに積算され、判定用走行距離djdgが次第に増加する。判定用走行距離djdgの増加に応じて、上述した走行状態判定処理における第2閾値ith2が再び減少する。そして、時刻t10で、判定用電力消費量ijdgが第2閾値ith2より大きくなり、非降坂路走行状態への移行が検出される。
【0113】
以上のように、判定用電力消費量ijdgに対する閾値(第1閾値ith1及び第2閾値ith2)が走行距離に応じて変化することにより、判定用電力消費量ijdgが閾値に達するまでの走行距離が短縮される。これにより、例えば降坂路の勾配が比較的緩やかであっても、速やかに降坂路走行状態への以降を検出することができ、また降坂路に続く道路が平坦路であっても、速やかに非降坂路走行状態への移行を検出することができる。
【0114】
上述した、制御装置22が行う種々の処理は、制御装置22がプログラムを実行することによって実現され得る。このようなプログラムは、コンピュータが読取可能な非一時的な記録媒体に記録して提供可能であり、ネットワークを介したダウンロードによっても提供可能である。
【0115】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0116】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素などを示しているが、これに限定されるものではない。
【0117】
(1) 車両(10)の駆動輪(DW)を回転させる電動機(MG)と、
電動機(MG)に電力を供給可能且つ電動機(MG)で回生される電力によって充電可能な蓄電装置(BAT)と、
車両(10)の電費及び蓄電装置(BAT)の電力残量に基づいて車両(10)の航続可能距離を算出し、算出した航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置(22)と、
を備え、
制御装置(22)は、
車両(10)の単位時間あたりの電力消費量(i)及び走行距離(d)を取得し、
電力消費量(i)を積算した積算電力消費量(I)と、走行距離(d)を積算した積算走行距離(D)とに基づいて電費を演算し、
車両(10)の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、車両(10)が降坂路走行状態である場合に、電費の良化を制限する、
車両。
【0118】
(2) 上記(1)の車両であって、
車両(10)が降坂路走行状態である場合に、制御装置(22)は、電力消費量(i)と、電力消費量(i)に対して設定される下限値(ibase)とのいずれか大きいほうを積算電力消費量(I)に積算して前記電費を演算する、
車両。
【0119】
(3) 上記(2)の車両であって、
制御装置(22)は、
車両(10)が非降坂路走行状態を継続している期間の、電力消費量(i)から下限値(ibase)を減じた値をゼロ以下の範囲で積算した第1電力量積算値(ijdg)が、第1閾値未満(ith1)となった場合に降坂路走行状態であると判定し、
車両(10)が降坂路走行状態を継続している期間の、電力消費量(i)から下限値(ibase)を減じた値をゼロ以上の範囲で積算した第2電力量積算値(ijdg)が、第2閾値値未満(ith2)を超えた場合に非降坂路走行状態であると判定する、
車両。
【0120】
(4) 上記(2)又は(3)の車両であって、
制御装置(22)は、車速に応じて下限値(ibase)を変化させる、
車両。
【0121】
(5) 上記(4)の車両であって、
制御装置(22)は、車速が高いほど下限値(ibase)を大きくする、
車両。
【0122】
(6) 上記(3)の車両であって、
制御装置(22)は、
第1電力量積算値(ijdg)がゼロ未満である期間の走行距離(d)を積算した第1距離積算値(djdg)に応じて第1閾値(ith1)を変化させ、
第2電力量積算値(ijdg)がゼロより大きい期間の走行距離(d)を積算した第2距離積算値(djdg)に応じて第2閾値(ith2)を変化させる、
車両。
【0123】
(7) 上記(6)の車両であって、
制御装置(22)は、第1距離積算値(djdg)が大きいほど第1閾値(ith1)を大きくし、第2距離積算値(djdg)が大きいほど第2閾値(ith2)を小さくする、
車両。
【0124】
(8) 車両(10)の駆動輪(DW)を回転させる電動機(MG)と、
電動機(MG)に電力を供給可能且つ電動機(MG)で回生される電力によって充電可能な蓄電装置(BAT)と、
車両(10)の電費及び蓄電装置(BAT)の電力残量に基づいて車両(10)の航続可能距離を算出し、算出した航続可能距離を表示する処理を実行する制御装置(22)と、
を備え、
制御装置(22)は、
車両(10)の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、
前記蓄電装置(BAT)の同一の電力残量に対して、降坂路走行状態である場合に算出する航続可能距離を、非降坂路走行状態である場合に算出する航続可能距離よりも小さくする、
車両。
【0125】
(9) 上記(8)記載の車両であって、
前記制御装置は、車両(10)の単位時間あたりの電力消費量(i)が所定値未満である場合に、制御装置(22)は車両(10)の走行状態が前記降坂路走行状態であると判定する、
車両。
【0126】
(10) 車両(10)の駆動輪(DW)を回転させる電動機(MG)と、電動機(MG)に電力を供給可能且つ電動機(MG)で回生される電力によって充電可能な蓄電装置(BAT)とを備える車両の航続可能距離を算出する方法であって、
コンピュータ(22)が行う、
車両の単位時間あたりの電力消費量(i)及び走行距離(d)を取得するステップと、
電力消費量(i)を積算した積算電力消費量(I)と、走行距離(d)を積算した積算走行距離(D)とに基づいて車両の電費を演算するステップと、
を備え、
電費を演算するステップは、車両(10)の走行状態が降坂路走行状態及び非降坂路走行状態のいずれであるかを判定し、車両(10)が降坂路走行状態である場合に、電費の良化を制限する、
方法。
【0127】
(11) 上記(10)の方法であって、
車両(10)が降坂路走行状態である場合に、電費を演算するステップは、電力消費量(i)及び電力消費量(i)に対して設定される下限値(ibase)のいずれか大きいほうを積算電力消費量(I)に積算して電費を演算する、
方法。
【0128】
(12) 上記(10)又は(11)の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0129】
10 車両
11 電力変換装置
12 車両制御装置
20 車速センサ
21 バッテリセンサ
22 制御装置
23 表示装置
BAT バッテリ(蓄電装置)
DW 駆動輪
ENG エンジン
MG モータジェネレータ(電動機)
GEN ジェネレータ(発電機)