(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231124BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231124BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20231124BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231124BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L29/78 618Z
G02F1/1368
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 619A
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
(21)【出願番号】P 2022016832
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2021014484の分割
【原出願日】2013-10-23
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2012234616
(32)【優先日】2012-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】徳永 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】村山 佳右
(72)【発明者】
【氏名】松林 大介
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146946(JP,A)
【文献】特開2012-059860(JP,A)
【文献】特開2012-054547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、29/786、
G02F 1/1368、
H10K 50/10、
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタを有する半導体装置であって、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、且つIn、Ga及びZnを含む第1の酸化物膜と、
前記第1の酸化物膜上に設けられ、且つIn若しくはGaを含む第2の酸化物膜と、
前記第2の酸化物膜上の一対の電極と、
前記第2の酸化物膜上及び前記一対の電極上の酸化物絶縁膜と、を有し、
前記ゲート絶縁膜は、窒化シリコン膜と、前記窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜と、を有し、
前記第2の酸化物膜は、前記第1の酸化物膜と前記酸化物絶縁膜とに挟まれた領域を有し、
前記第1の酸化物膜は、前記酸化物絶縁膜と接する領域を有しておらず、
基板温度が80℃、電界強度が0.66MV/cm、電界印加時間が2000秒のプラスBTストレス試験の前後において、前記トランジスタのしきい値電圧の変動量は、±1.0V以下である、半導体装置。
【請求項2】
トランジスタを有する半導体装置であって、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、且つIn、Ga及びZnを含む第1の酸化物膜と、
前記第1の酸化物膜上に設けられ、且つIn若しくはGaを含む第2の酸化物膜と、
前記第2の酸化物膜上の一対の電極と、
前記第2の酸化物膜上及び前記一対の電極上の酸化物絶縁膜と、を有し、
前記ゲート絶縁膜は、窒化シリコン膜と、前記窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜と、を有し、
前記第2の酸化物膜は、前記第1の酸化物膜と前記酸化物絶縁膜とに挟まれた領域を有し、
前記第1の酸化物膜は、前記酸化物絶縁膜と接する領域を有しておらず、
基板温度が80℃、電界強度が0.66MV/cm、電界印加時間が2000秒のマイナスBTストレス試験の前後において、前記トランジスタのしきい値電圧の変動量は、±0.5V以下である、半導体装置。
【請求項3】
トランジスタを有する半導体装置であって、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、且つIn、Ga及びZnを含む第1の酸化物膜と、
前記第1の酸化物膜上に設けられ、且つIn若しくはGaを含む第2の酸化物膜と、
前記第2の酸化物膜上の一対の電極と、
前記第2の酸化物膜上及び前記一対の電極上の酸化物絶縁膜と、を有し、
前記ゲート絶縁膜は、窒化シリコン膜と、前記窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜と、を有し、
前記第2の酸化物膜は、前記第1の酸化物膜と前記酸化物絶縁膜とに挟まれた領域を有し、
前記第1の酸化物膜は、前記酸化物絶縁膜と接する領域を有しておらず、
基板温度が80℃、電界強度が0.66MV/cm、電界印加時間が2000秒の光プラスBTストレス試験の前後において、前記トランジスタのしきい値電圧の変動量は、±1.0V以下であり、
前記光プラスBTストレス試験の光は、3000luxの白色LEDである、半導体装置。
【請求項4】
トランジスタを有する半導体装置であって、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、且つIn、Ga及びZnを含む第1の酸化物膜と、
前記第1の酸化物膜上に設けられ、且つIn若しくはGaを含む第2の酸化物膜と、
前記第2の酸化物膜上の一対の電極と、
前記第2の酸化物膜上及び前記一対の電極上の酸化物絶縁膜と、を有し、
前記ゲート絶縁膜は、窒化シリコン膜と、前記窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜と、を有し、
前記第2の酸化物膜は、前記第1の酸化物膜と前記酸化物絶縁膜とに挟まれた領域を有し、
前記第1の酸化物膜は、前記酸化物絶縁膜と接する領域を有しておらず、
基板温度が80℃、電界強度が0.66MV/cm、電界印加時間が2000秒の光マイナスBTストレス試験の前後において、前記トランジスタのしきい値電圧の変動量は、±1.0V以下であり、
前記光マイナスBTストレス試験の光は、3000luxの白色LEDである、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタを有する半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いら
れているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリ
コン又は多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリコ
ン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0003】
近年、シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す金属酸化物をトランジスタに用い
る技術が注目されている。なお、本明細書中では、半導体特性を示す金属酸化物を酸化物
半導体とよぶことにする。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、又はIn-Ga-Zn系酸化物を用いたトラ
ンジスタを作製し、該トランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技
術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損量
が多いことは、トランジスタの電気特性の不良に繋がると共に、経時変化やストレス試験
(例えば、BT(Bias-Temperature)ストレス試験)において、トラン
ジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧(Vth)の変動量が増大することの原因と
なる。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、酸化物半導
体膜の欠陥を低減することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、酸化物半導体膜
を用いた半導体装置において、電気特性を向上させることを課題の一とする。また、本発
明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、信頼性を向上させることを
課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板上に形成されるゲート電極、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜、
ゲート絶縁膜を介してゲート電極と重なる多層膜、及び多層膜に接する一対の電極を有す
るトランジスタと、該トランジスタを覆う酸化物絶縁膜とを備える半導体装置であって、
多層膜は、酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜を有し、該酸化物絶縁膜
は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜であり、トランジ
スタは、バイアス温度ストレス試験によってしきい値電圧が変動しない、又はプラス方向
若しくはマイナス方向に変動する特性を有し、マイナス方向若しくはプラス方向への変動
量が1.0V以下、好ましくは0.5V以下であることを特徴とする。
【0009】
なお、酸化物半導体膜は、In若しくはGaを含むことが好ましい。
【0010】
また、In若しくはGaを含む酸化物膜の伝導帯の下端のエネルギー準位が、酸化物半
導体膜の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも真空準位に近い。さらには、In若しくは
Gaを含む酸化物膜の伝導帯の下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜の伝導帯の下端
のエネルギー準位との差は0.05eV以上2eV以下であることが好ましい。なお、真
空準位と伝導帯下端のエネルギー差を電子親和力ともいうため、In若しくはGaを含む
酸化物膜の電子親和力が、酸化物半導体膜の電子親和力より小さく、その差が0.05e
V以上2eV以下であることが好ましい。
【0011】
また、酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜が、In-M-Zn酸化物
膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)であり、酸化物半
導体膜と比較して、In若しくはGaを含む酸化物膜に含まれる前記Mの原子数比が大き
いことが好ましい。
【0012】
また、多層膜は、エネルギーが1.5eV以上2.3eV以下の範囲において、一定光
電流測定法(CPM:Constant Photocurrent Method)で
導出される吸収係数は、1×10-3/cm未満であることが好ましい。
【0013】
また、酸化物半導体膜とIn若しくはGaを含む酸化物膜との間におけるシリコン濃度
が、2×1018原子/cm3未満であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様は、ゲート電極及びゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に、
酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜を有する多層膜を形成し、多層膜に
接する一対の電極を形成し、多層膜及び一対の電極上に、酸化物絶縁膜を形成する半導体
装置の作製方法である。該酸化物絶縁膜は、真空排気された処理室内に載置された基板を
180℃以上260℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力
を100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2
以上0.5W/cm2以下の高周波電力を供給することによって形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、酸化物半導体膜
の欠陥を低減することができる。また、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた
半導体装置において、電気特性を向上させることができる。また、本発明の一態様により
、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図、並びにVg-Id特性を説明する図である。
【
図2】トランジスタのバンド構造を説明する図である。
【
図3】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図4】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図5】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図6】トランジスタのバンド構造を説明する図である。
【
図7】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図8】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図9】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図10】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図11】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図12】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図13】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図14】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図15】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図16】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図17】トランジスタのVg-Id特性を示す図である。
【
図18】光BTストレス試験後のトランジスタのしきい値電圧の変動量を示す図である。
【
図19】酸化物半導体膜の酸素欠損に由来するg値のスピン密度を示す図である。
【
図20】トランジスタに含まれる多層膜のCPM測定結果を示す図である。
【
図21】トランジスタに含まれる多層膜のToF-SIMSの結果を示す図である。
【
図22】トランジスタに含まれる酸化物絶縁膜のTDS測定結果を示す図である。
【
図23】酸化物絶縁膜のダングリングボンドに由来するg値のスピン密度を示す図である。
【
図24】表示装置の画素部の構成例を示す上面図である。
【
図25】表示装置の画素部の構成例を示す断面図である。
【
図26】表示装置の共通電極の接続構造の一例を示す図、及び表示装置の配線の接続構造の一例を示す図である。
【
図27】表示装置の画素部の構成例を示す断面図である。
【
図28】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図29】半導体装置の一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図30】タッチセンサの構成例を示す分解斜視図及び上面図である。
【
図31】タッチセンサの構成例を示す断面図及び回路図である。
【
図32】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図33】液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
【
図34】液晶表示装置の駆動方法の一例を説明するタイミングチャートである。
【
図35】HAXPES測定よって得られた価電子帯スペクトルを示す図である。
【
図36】バンド構造の計算に用いた構造を説明する図である。
【
図37】バンド構造の計算結果を説明する図である。
【
図38】酸化物半導体膜の模式図と、酸化物半導体膜におけるバンド構造を説明する図である。
【
図39】バンド構造の計算結果を説明する図である。
【
図40】チャネル長の変化に対するエネルギー障壁の高さの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分又は同様の機能を有する部分
には、同一の符号又は同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰り返
しの説明は省略する。
【0018】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明
瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない
。
【0019】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0020】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0021】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0022】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、フォトリソグラフィ工程で形成したマスクは除去するものとする。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。
【0024】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、トランジスタの電気特性の不良に繋が
る欠陥の一例として酸素欠損がある。例えば、膜中に酸素欠損が含まれている酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナス方向に変動しやすく、ノーマリー
オン特性となりやすい。これは、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損に起因して電荷が生
じ、低抵抗化するためである。トランジスタがノーマリーオン特性を有すると、動作時に
動作不良が発生しやすくなる、又は非動作時の消費電力が高くなるなどの、様々な問題が
生じる。また、経時変化やストレス試験により、トランジスタの電気特性、代表的にはし
きい値電圧の変動量が増大するという問題がある。
【0025】
酸素欠損の発生原因の一つとして、トランジスタの作製工程に生じるダメージがある。
例えば、酸化物半導体膜上にプラズマCVD法により絶縁膜などを形成する際、その形成
条件によって、当該酸化物半導体膜にダメージが入ることがある。
【0026】
また、酸素欠損に限らず、絶縁膜の構成元素であるシリコンや炭素等の不純物も、トラ
ンジスタの電気特性の不良の原因となる。このため、該不純物が、酸化物半導体膜に混入
することにより、当該酸化物半導体膜が低抵抗化してしまい、経時変化やストレス試験に
より、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大するという問題
がある。
【0027】
そこで、本実施の形態では、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備える半導体装置
において、チャネル領域を有する酸化物半導体膜中の酸素欠損、及び酸化物半導体膜の不
純物濃度を低減することを課題とする。
【0028】
図1(A)乃至
図1(C)に、半導体装置が有するトランジスタ50の上面図及び断面
図を示す。
図1(A)はトランジスタ50の上面図であり、
図1(B)は、
図1(A)の
一点鎖線A-B間の断面図であり、
図1(C)は、
図1(A)の一点鎖線C-D間の断面
図である。なお、
図1(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、酸化物
絶縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している。
【0029】
図1(B)及び
図1(C)に示すトランジスタ50は、基板11上に設けられるゲート
電極15を有する。また、基板11及びゲート電極15上に、ゲート絶縁膜17が形成さ
れ、ゲート絶縁膜17を介して、ゲート電極15と重なる多層膜20と、多層膜20に接
する一対の電極21、22とを有する。また、ゲート絶縁膜17、多層膜20、及び一対
の電極21、22上には、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜
26が形成される。
【0030】
本実施の形態に示すトランジスタ50において、多層膜20は、酸化物半導体膜18、
In若しくはGaを含む酸化物膜19を有する。また、酸化物半導体膜18の一部がチャ
ネル領域として機能する。また、多層膜20に接するように酸化物絶縁膜24が形成され
ている。即ち、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜24との間に、In若しくはGaを含
む酸化物膜19が設けられている。
【0031】
酸化物半導体膜18は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M
-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)がある
。
【0032】
なお、酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率
は、好ましくは、Inが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに
好ましくは、Inが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
【0033】
酸化物半導体膜18は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上
、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導
体を用いることで、トランジスタ50のオフ電流を低減することができる。
【0034】
酸化物半導体膜18の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上10
0nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0035】
In若しくはGaを含む酸化物膜19は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn
酸化物、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd又
はHf)であり、且つ酸化物半導体膜18よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に
近く、代表的には、In若しくはGaを含む酸化物膜19の伝導帯の下端のエネルギーと
、酸化物半導体膜18の伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.0
7eV以上、0.1eV以上、又は0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0
.5eV以下、又は0.4eV以下である。即ち、In若しくはGaを含む酸化物膜19
の電子親和力と、酸化物半導体膜18の電子親和力との差が、0.05eV以上、0.0
7eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、
0.5eV以下、または0.4eV以下である。
【0036】
In若しくはGaを含む酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物であるとき、InとMの
原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50atomic%以
上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atomic%以上と
する。
【0037】
また、酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19がIn-M-Z
n酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd又はHf)の場合、酸化
物半導体膜18と比較して、In若しくはGaを含む酸化物膜19に含まれるM(Al、
Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)の原子数比が大きく、代表的には
、酸化物半導体膜18に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以
上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。
【0038】
また、酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19がIn-M-Z
n酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd又はHf)の場合、In
若しくはGaを含む酸化物膜19をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸
化物半導体膜18をIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x
1がy2/x2よりも大きく、好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上
である。さらに好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きく、より好まし
くは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以上大きい。このとき、酸化物半導体膜におい
て、y2がx2以上であると、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタに安定した電気
特性を付与できるため好ましい。ただし、y2がx2の3倍以上になると、当該酸化物半
導体膜を用いたトランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2はx2以上x
2の3倍未満であると好ましい。
【0039】
例えば、酸化物半導体膜18としてIn:Ga:Zn=1:1:1又は3:1:2の原
子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。また、In若しくはGaを含む
酸化物膜19としてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:6:4、又は1:9:6の原子
数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。なお、酸化物半導体膜18、及び
In若しくはGaを含む酸化物膜19の原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比
のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0040】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜18のキャリア密度や不純物
濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとするこ
とが好ましい。
【0041】
In若しくはGaを含む酸化物膜19は、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際
の、酸化物半導体膜18へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0042】
In若しくはGaを含む酸化物膜19の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましく
は3nm以上50nm以下とする。
【0043】
酸化物半導体膜18において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると
、酸化物半導体膜18において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物
半導体膜18におけるシリコンや炭素の濃度、又はIn若しくはGaを含む酸化物膜19
と、酸化物半導体膜18との界面近傍のシリコンや炭素の濃度を、2×1018原子/c
m3以下、好ましくは2×1017原子/cm3以下とする。
【0044】
また、酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19の結晶構造はそれ
ぞれ、非晶質構造、単結晶構造、多結晶構造、微結晶構造、結晶粒が非晶質領域に分散さ
れた混合構造又は後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Cryst
alline Oxide Semiconductor)であってもよい。なお、微結
晶構造とは、各結晶粒の面方位がランダムである。また、微結晶構造若しくは混合構造に
含まれる結晶粒の粒径は、0.1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上10nm
以下、好ましくは2nm以上4nm以下である。また、少なくとも酸化物半導体膜18の
結晶構造をCAAC-OSとすることで、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動量
をさらに低減することが可能である。
【0045】
また、本実施の形態に示すトランジスタ50において、多層膜20に接するように酸化
物絶縁膜24が形成されている。
【0046】
多層膜20に接するように酸化物絶縁膜24が形成されている。酸化物絶縁膜24は、
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜とする。化学量論的組
成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離す
る。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、TDS法分析
にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018原子/cm3以上、好まし
くは3.0×1020原子/cm3以上である酸化物絶縁膜である。
【0047】
酸化物絶縁膜24としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm
以上400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0048】
また、酸化物絶縁膜24は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が1.5×1018spins/cm3未満、更には1×1018spins/cm
3以下であることが好ましい。
【0049】
ここで、
図1(B)の多層膜20近傍の一点鎖線E-Fにおけるバンド構造について、
図2(A)を用いて説明し、トランジスタ50におけるキャリアの流れについて、
図2(
B)及び
図2(C)を用いて説明する。
【0050】
図2(A)に示すバンド構造において、例えば、酸化物半導体膜18としてエネルギー
ギャップが3.15eVであるIn-Ga-Zn酸化物(成膜に用いたスパッタリングタ
ーゲットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:1:1)を用い、In若しくはGaを含む
酸化物膜19としてエネルギーギャップが3.5eVであるIn-Ga-Zn酸化物(成
膜に用いたスパッタリングターゲットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:3:2)を用
いる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータを用いて測定することができる
。
【0051】
酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19の真空準位と価電子帯
上端のエネルギー差(イオン化ポテンシャルともいう。)は、それぞれ7.9eV、及び
8.0eVである。なお、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光
分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectro
scopy)装置(PHI社 VersaProbe)を用いて測定できる。
【0052】
酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19の真空準位と伝導帯下
端のエネルギー差(電子親和力ともいう。)は、それぞれ4.7eV、及び4.5eVで
ある。
【0053】
また、酸化物半導体膜18の伝導帯の下端をEc_18とし、In若しくはGaを含む
酸化物膜19の伝導帯の下端をEc_19とする。また、ゲート絶縁膜17の伝導帯の下
端をEc_17とし、酸化物絶縁膜24の伝導帯の下端をEc_24とする。
【0054】
図2(A)に示すように、多層膜20において、酸化物半導体膜18とIn若しくはG
aを含む酸化物膜19との界面近傍における伝導帯の下端が連続的に変化している。即ち
、酸化物半導体膜18とIn若しくはGaを含む酸化物膜19との界面近傍における障壁
が無くなだらかに変化している。酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸化物
膜19の間で酸素が相互的に移動することでこのような形状となる。また、多層膜20に
おいて、酸化物半導体膜18における伝導帯の下端のエネルギーが最も低く、当該領域が
チャネル領域となる。
【0055】
ここで、トランジスタにおいて、キャリアである電子の流れる様子について、
図2(B
)及び
図2(C)を用いて説明する。なお、
図2(B)及び
図2(C)において、酸化物
半導体膜18を流れる電子量を破線矢印の大きさで表す。
【0056】
In若しくはGaを含む酸化物膜19と酸化物絶縁膜24との界面近傍においては、不
純物及び欠陥によりトラップ準位27が形成される。このため、例えば、
図2(B)に示
すように、トランジスタのチャネル領域が酸化物半導体膜18の単層である場合、酸化物
半導体膜18において、キャリアである電子はゲート絶縁膜17側において主に流れるが
、酸化物絶縁膜24側においても少量流れる。この結果、酸化物半導体膜18に流れる電
子の一部がトラップ準位27に捕獲されてしまう。
【0057】
一方、本実施の形態に示すトランジスタ50は、
図2(C)に示すように、酸化物半導
体膜18と酸化物絶縁膜24との間にIn若しくはGaを含む酸化物膜19が設けられて
いるため、酸化物半導体膜18とトラップ準位27との間に隔たりがある。この結果、酸
化物半導体膜18を流れる電子がトラップ準位27に捕獲されにくい。トラップ準位に電
子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジス
タのしきい値電圧が変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体膜18とトラップ準位
27との間に隔たりがあるため、トラップ準位27における電子の捕獲を低減することが
可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0058】
なお、酸化物半導体膜18とIn若しくはGaを含む酸化物膜19との界面近傍におけ
る伝導帯の下端のエネルギー差ΔE1が小さいと、酸化物半導体膜18を流れるキャリア
がIn若しくはGaを含む酸化物膜19の伝導帯の下端を乗り越え、トラップ準位27に
捕獲されてしまう。このため、酸化物半導体膜18の伝導帯の下端Ec_18とIn若し
くはGaを含む酸化物膜19の伝導帯の下端Ec_19とのエネルギー差ΔE1を、0.
1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすることが好ましい。
【0059】
また、多層膜20のバックチャネル(多層膜20において、ゲート電極15と対向する
面と反対側の面)側に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁
膜24(
図1(B)参照。)が設けられている。このため、化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を多層膜20に含まれる酸化物
半導体膜18に移動させることが可能であり、当該酸化物半導体膜18の酸素欠損を低減
することができる。
【0060】
以上のことから、酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19を有
する多層膜20と、且つ多層膜20上に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素
を含む酸化物絶縁膜24を有することで、多層膜20における酸素欠損を低減することが
可能である。また、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜24の間にIn若しくはGaを含
む酸化物膜19を設けることで、酸化物半導体膜18、又はIn若しくはGaを含む酸化
物膜19と酸化物半導体膜18との界面近傍におけるシリコンや炭素の濃度を低減するこ
とが可能である。
【0061】
これらの結果、多層膜20において、一定光電流測定法で導出される吸収係数は、1×
10-3/cm未満、好ましくは1×10-4/cm未満となる。吸収係数は、酸素欠損
及び不純物の混入に由来する局在準位に応じたエネルギー(波長により換算)と正の相関
があるため、多層膜20における局在準位密度が極めて低い。
【0062】
なお、CPM測定によって得られた吸収係数のカーブからバンドの裾に起因するアーバ
ックテールと呼ばれる吸収係数分を除くことにより、局在準位による吸収係数を以下の式
から算出することができる。なお、アーバックテールとは、CPM測定によって得られた
吸収係数のカーブにおいて一定の傾きを有する領域をいい、当該傾きをアーバックエネル
ギーという。
【0063】
【0064】
ここで、α(E)は、各エネルギーにおける吸収係数を表し、αuは、アーバックテー
ルによる吸収係数を表す。
【0065】
このような構造を有するトランジスタ50は酸化物半導体膜18を含む多層膜20にお
いて欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能である。
また、ストレス試験の一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験によってしき
い値電圧が変動しない、又はプラス方向若しくはマイナス方向への変動量が1.0V以下
、好ましくは0.5V以下であり、信頼性が高い。
【0066】
ここで、BTストレス試験及び光BTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量が少
ないトランジスタの電気特性を、
図1(D)を用いて説明する。
【0067】
BTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタ
の特性変化(即ち、経年変化)を、短時間で評価することができる。特に、BTストレス
試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変動量は、信頼性を調べるための重要な
指標となる。BTストレス試験前後において、しきい値電圧の変動量が少ないほど、信頼
性が高いトランジスタであるといえる。
【0068】
次に、具体的なBTストレス試験方法について説明する。はじめに、トランジスタの初
期特性を測定する。次に、トランジスタが形成されている基板の温度(基板温度)を一定
に維持し、トランジスタのソース及びドレインとして機能する一対の電極を同電位とし、
ソース及びドレインとして機能する一対の電極とは異なる電位をゲート電極に一定時間印
加する。基板温度は、試験目的に応じて適宜設定すればよい。次に、基板の温度を初期特
性を測定したときと同様の温度とし、トランジスタの電気特性を測定する。この結果、初
期特性におけるしきい値電圧、及びBTストレス試験後のしきい値電圧の差を、しきい値
電圧の変動量として得ることができる。
【0069】
なお、ゲート電極に印加する電位がソース及びドレインの電位よりも高い場合をプラス
BTストレス試験といい、ゲート電極に印加する電位がソース及びドレインの電位よりも
低い場合をマイナスBTストレス試験という。また、光を照射しながらBTストレス試験
を行うことを光BTストレス試験という。光が照射され、且つゲート電極に印加する電位
がソース及びドレインの電位よりも高い場合を光プラスBTストレス試験といい、光が照
射され、且つゲート電極に印加する電位がソース及びドレインの電位よりも低い場合を光
マイナスBTストレス試験という。
【0070】
BTストレス試験の試験強度は、基板温度、ゲート絶縁膜に加えられる電界強度、及び
電界印加時間により決定することができる。ゲート絶縁膜に加えられる電界強度は、ゲー
トと、ソース及びドレインとの電位差をゲート絶縁膜の厚さで除して決定される。例えば
、厚さが100nmのゲート絶縁膜に印加する電界強度を3MV/cmとしたい場合は、
ゲートと、ソース及びドレインとの電位差を30Vとすればよい。
【0071】
図1(D)はトランジスタの電気特性を示す図であり、横軸がゲート電圧(Vg)、縦
軸がドレイン電流(Id)である。トランジスタの初期特性が破線41であり、BTスト
レス試験後の電気特性が実線43である。本実施の形態に示すトランジスタは、破線41
及び実線43におけるしきい値電圧の変動量が0V、又はプラス方向若しくはマイナス方
向への変動量が1.0V以下、好ましくは0.5V以下である。このため、本実施の形態
に示すトランジスタは、BTストレス試験後のしきい値電圧の変動が少ない。この結果、
本実施の形態に示すトランジスタ50は、信頼性が高いことが分かる。
【0072】
なお、酸化物半導体膜を有するトランジスタはnチャネル型トランジスタであるため、
本明細書において、ゲート電圧が0Vの場合、ドレイン電流が流れていないとみなすこと
ができるトランジスタを、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタと定義する。また、
ゲート電圧が0Vの場合、ドレイン電流が流れているとみなすことができるトランジスタ
を、ノーマリーオン特性を有するトランジスタと定義する。
【0073】
また、本明細書において、しきい値電圧(Vth)は、ゲート電圧(Vg[V])を横
軸、ドレイン電流の平方根(Id1/2[A])を縦軸としてプロットした曲線(図示せ
ず)において、最大傾きであるId1/2の接線を外挿したときの、接線とVg軸との交
点のゲート電圧で定義する。
【0074】
以下に、トランジスタ50の他の構成の詳細について説明する。
【0075】
基板11の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板11として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単
結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SO
I基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを
、基板11として用いてもよい。
【0076】
また、基板11として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ50を
形成してもよい。又は、基板11とトランジスタ50の間に剥離層を設けてもよい。剥離
層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板11より分離し、他の
基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ50は耐熱性の劣る基板
や可撓性の基板にも転載できる。
【0077】
ゲート電極15は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タン
グステンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金
属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニ
ウムのいずれか一又は複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極1
5は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミ
ニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上
にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、
窒化タンタル膜又は窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン
膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三
層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン
、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一又は複数を組み合わせた合金膜
、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0078】
また、ゲート電極15は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸
化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化
物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加
したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、
上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0079】
また、ゲート電極15とゲート絶縁膜17との間に、In-Ga-Zn系酸窒化物半導
体膜、In-Sn系酸窒化物半導体膜、In-Ga系酸窒化物半導体膜、In-Zn系酸
窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(In
N、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV以上
の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半導体
を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマリー
オフ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸窒化物半導体
膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜18より高い窒素濃度、具体的には7原子%
以上のIn-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
【0080】
ゲート絶縁膜17は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa-Zn系金属酸
化物、窒化シリコンなどを用いればよく、積層又は単層で設ける。また、
図32に示すよ
うに、ゲート絶縁膜17をゲート絶縁膜17a及びゲート絶縁膜17bの積層構造とし、
多層膜20に接するゲート絶縁膜17bとして、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁物を
用いてもよい。ゲート絶縁膜17bに加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、酸化
物半導体膜18及びゲート絶縁膜17の界面における界面準位密度を低くすることが可能
であり、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。また、ゲート絶縁膜
17aとして、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸
化物半導体膜18からの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜18への水素、
水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜と
しては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、
酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等があ
る。
【0081】
また、ゲート絶縁膜17として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0082】
ゲート絶縁膜17の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上
300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0083】
一対の電極21、22は、導電材料として、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル
、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、又はタングステンから
なる単体金属、又はこれを主成分とする合金を単層構造又は積層構造として用いる。例え
ば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する
二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミ
ニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜
又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜
又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリ
ブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその
上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジ
ウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0084】
また、酸化物絶縁膜24上に、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する窒化物絶
縁膜25を設けることで、多層膜20からの酸素の外部への拡散と、外部から多層膜20
への水素、水等の侵入を防ぐことができる。窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化
酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、酸素、水素、
水等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキ
ング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を
有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム
、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化
窒化ハフニウム等がある。
【0085】
次に、
図1に示すトランジスタ50の作製方法について、
図3を用いて説明する。
【0086】
図3(A)に示すように、基板11上にゲート電極15を形成し、ゲート電極15上に
ゲート絶縁膜17を形成する。
【0087】
ここでは、基板11としてガラス基板を用いる。
【0088】
ゲート電極15の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、蒸
着法等により導電膜を形成し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成す
る。次に、該マスクを用いて導電膜の一部をエッチングして、ゲート電極15を形成する
。この後、マスクを除去する。
【0089】
なお、ゲート電極15は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジ
ェット法等で形成してもよい。
【0090】
ここでは、厚さ100nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。次に
、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜を
ドライエッチングして、ゲート電極15を形成する。
【0091】
ゲート絶縁膜17は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で形成する。
【0092】
ゲート絶縁膜17として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン
膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用い
ることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、ト
リシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、
二酸化窒素等がある。
【0093】
また、ゲート絶縁膜17として窒化シリコン膜を形成する場合、2段階の形成方法を用
いることが好ましい。はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスと
して用いたプラズマCVD法により、欠陥の少ない第1の窒化シリコン膜を形成する。次
に、原料ガスを、シラン及び窒素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素
をブロッキングすることが可能な第2の窒化シリコン膜を成膜する。このような形成方法
により、ゲート絶縁膜17として、欠陥が少なく、且つ水素ブロッキング性を有する窒化
シリコン膜を形成することができる。
【0094】
また、ゲート絶縁膜17として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Meta
l Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い
て形成することができる。
【0095】
次に、
図3(B)に示すように、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜18及びIn若
しくはGaを含む酸化物膜19を形成する。
【0096】
酸化物半導体膜18、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19の形成方法について、
以下に説明する。ゲート絶縁膜17上に、酸化物半導体膜18となる酸化物半導体膜、及
びIn若しくはGaを含む酸化物膜19となるIn若しくはGaを含む酸化物膜を連続的
に形成する。次に、In若しくはGaを含む酸化物膜上にフォトリソグラフィ工程により
マスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜、及びIn若しくはGaを含む酸
化物膜のそれぞれ一部をエッチングすることで、
図3(B)に示すように、ゲート絶縁膜
17上であって、ゲート電極15の一部と重なるように素子分離された酸化物半導体膜1
8、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19を有する多層膜20を形成する。この後、
マスクを除去する。
【0097】
酸化物半導体膜18となる酸化物半導体膜、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19
となるIn若しくはGaを含む酸化物膜は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー
蒸着法、レーザーアブレーション法等を用いて形成することができる。
【0098】
スパッタリング法で該酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜を形成する
場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源
装置等を適宜用いることができる。
【0099】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素の
ガス比を高めることが好ましい。
【0100】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜の
組成にあわせて、適宜選択すればよい。
【0101】
なお、酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜を形成する際に、例えば、
スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上500℃以下、好ましくは15
0℃以上450℃以下、さらに好ましくは200℃以上350℃以下として、加熱しなが
ら酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜を形成することで、後述するCA
AC-OS膜を形成することができる。
【0102】
酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物膜は、各膜を単に積層するのではな
く連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造
)が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面において、トラップ中心や再結合
中心のような欠陥準位、あるいはキャリアの流れを阻害するバリアを形成するような不純
物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された酸化物半導体膜及びIn若しく
はGaを含む酸化物膜の間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失わ
れ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してしまう。
【0103】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(1×10-4Pa~5×10-7Pa程度まで)することが好ま
しい。又は、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー
内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0104】
高純度真性である酸化物半導体膜を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみ
ならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアル
ゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-100℃
以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれること
を可能な限り防ぐことができる。
【0105】
ここでは、スパッタリング法により、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIn-Ga
-Zn酸化物膜(成膜に用いたスパッタリングターゲットの原子数比はIn:Ga:Zn
=1:1:1)を形成した後、スパッタリング法により、In若しくはGaを含む酸化物
膜として厚さ20nmのIn-Ga-Zn酸化物膜(成膜に用いたスパッタリングターゲ
ットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:3:2)を形成する。次に、In若しくはGa
を含む酸化物膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜及びIn若しくはGaを含む酸化物
膜のそれぞれ一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜18及びIn若しく
はGaを含む酸化物膜19を有する多層膜20を形成する。
【0106】
こののち、加熱処理を行ってもよい。
【0107】
次に、
図3(C)に示すように、一対の電極21、22を形成する。
【0108】
一対の電極21、22の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD
法、蒸着法等で導電膜を形成する。次に、該導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマ
スクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、一対の電極21、2
2を形成する。この後、マスクを除去する。
【0109】
ここでは、厚さ50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚
さ100nmのチタン膜を順にスパッタリング法により積層する。次に、チタン膜上にフ
ォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜、アル
ミニウム膜、及びチタン膜をドライエッチングして、一対の電極21、22を形成する。
【0110】
次に、
図3(D)に示すように、多層膜20及び一対の電極21、22上に酸化物絶縁
膜24を形成する。
【0111】
なお、一対の電極21、22を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁
膜24を形成することが好ましい。一対の電極21、22を形成した後、大気開放せず、
原料ガスの流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、酸化物絶縁膜24
を連続的に形成することで、In若しくはGaを含む酸化物膜19と酸化物絶縁膜24と
の界面において、大気成分由来の不純物濃度を低減することができると共に、酸化物絶縁
膜24に含まれる酸素を酸化物半導体膜18に移動させることが可能であり、酸化物半導
体膜18の酸素欠損量を低減することができる。
【0112】
酸化物絶縁膜24としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上260℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持
し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下
、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0
.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上
0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜又は酸化窒
化シリコン膜を形成する。
【0113】
酸化物絶縁膜24の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることができる。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、ト
リシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、
二酸化窒素等がある。
【0114】
酸化物絶縁膜24の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記電力密度の高周波
電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加
し、原料ガスの酸化が進むため、酸化物絶縁膜24中における酸素含有量が化学量論比よ
りも多くなる。しかしながら、基板温度が、上記温度であると、シリコンと酸素の結合力
が弱いため、加熱により酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物絶縁膜を形成すること
ができる。また、In若しくはGaを含む酸化物膜19が酸化物半導体膜18の保護膜と
なる。これらの結果、酸化物半導体膜18へのダメージを低減しつつ、電力密度の高い高
周波電力を用いて酸化物絶縁膜24を形成することができる。
【0115】
なお、酸化物絶縁膜24の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積
性気体の流量を増加することで、酸化物絶縁膜24の欠陥量を低減することが可能である
。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.0
01に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×
1017spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下
である欠陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果、トランジスタの
信頼性を高めることができる。
【0116】
ここでは、酸化物絶縁膜24として、流量160sccmのシラン及び流量4000s
ccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃
とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電極に
供給したプラズマCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。な
お、プラズマCVD装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のプラズマCVD
装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると0.25W
/cm2である。
【0117】
次に、加熱処理を行う。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未
満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下と
する。
【0118】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0119】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1p
pm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、又は希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の
雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、又は希ガスに水素、水等が
含まれないことが好ましい。
【0120】
当該加熱処理により、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に
移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。また、酸
化物絶縁膜24に水、水素等が含まれる場合、水、水素等をブロッキングする機能を有す
る窒化物絶縁膜25を後に形成し、加熱処理を行うと、酸化物絶縁膜24に含まれる水、
水素等が、酸化物半導体膜18に移動し、酸化物半導体膜18に欠陥が生じてしまう。し
かしながら、当該加熱により、酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等を脱離させること
が可能であり、トランジスタ50の電気特性のばらつきを低減すると共に、しきい値電圧
の変動を抑制することができる。なお、加熱しながら酸化物絶縁膜24を、In若しくは
Gaを含む酸化物膜19上に形成することで、酸化物半導体膜18に酸素を移動させ、酸
化物半導体膜18に含まれる酸素欠損を低減することが可能であるため、当該加熱処理を
行わなくともよい。
【0121】
ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
【0122】
また、一対の電極21、22を形成する際、導電膜のエッチングによって、多層膜20
はダメージを受け、多層膜20のバックチャネル側に酸素欠損が生じる。しかし、酸化物
絶縁膜24に化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を適用す
ることで、加熱処理によって当該バックチャネル側に生じた酸素欠損を修復することがで
きる。これにより、多層膜20に含まれる欠陥を低減することができるため、トランジス
タ50の信頼性を向上させることができる。
【0123】
次に、スパッタリング法、CVD法等により、窒化物絶縁膜25を形成する。
【0124】
なお、窒化物絶縁膜25をプラズマCVD法で形成する場合、プラズマCVD装置の真
空排気された処理室内に載置された基板を300℃以上400℃以下、さらに好ましくは
320℃以上370℃以下とすることで、緻密な窒化物絶縁膜を形成できるため好ましい
。
【0125】
窒化物絶縁膜25としてプラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリ
コンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。
原料ガスとして、窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモ
ニアが解離し、活性種が発生する。当該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれる
シリコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素
の結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコ
ン膜を形成することができる。一方、原料ガスにおいて、窒素に対するアンモニアの量が
多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素それぞれの分解が進まず、シリコン及び水素
結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。
これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、
好ましくは10以上50以下とすることが好ましい。
【0126】
ここでは、プラズマCVD装置の処理室に、流量50sccmのシラン、流量5000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を
100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により、厚さ50nmの窒化
シリコン膜を形成する。なお、プラズマCVD装置は電極面積が6000cm2である平
行平板型のプラズマCVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度
)に換算すると1.7×10-1W/cm2である。
【0127】
以上の工程により、酸化物絶縁膜24及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜26を
形成することができる。
【0128】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板
歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450
℃以下とする。
【0129】
以上の工程により、トランジスタ50を作製することができる。
【0130】
チャネル領域として機能する酸化物半導体膜に重畳して、化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を形成することで、当該酸化物絶縁膜の酸素を酸化
物半導体膜に移動させることができる。この結果、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損量
を低減することができる。
【0131】
そして、酸化物半導体膜上にIn若しくはGaを含む酸化物膜を形成することで、化学
量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を形成する際に、当該酸化
物半導体膜にダメージが入ることをさらに抑制できる。加えて、In若しくはGaを含む
酸化物膜を形成することで、当該酸化物半導体膜上に形成する絶縁膜、例えば酸化物絶縁
膜の構成元素が、当該酸化物半導体膜に混入することを抑制できる。
【0132】
上記より、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、欠陥量が低減された半導体装
置を得ることができる。また、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において電気特性が向
上した半導体装置を得ることができる。
【0133】
<変形例1>
本実施の形態に示すトランジスタ50において、必要に応じて、基板11及びゲート電
極15の間に下地絶縁膜を設けてもよい。下地絶縁膜の材料としては、酸化シリコン、酸
化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸
化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。なお、下地絶縁膜
の材料として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化
アルミニウム等を用いることで、基板11から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水
素等の多層膜20への拡散を抑制することができる。
【0134】
下地絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成することができる。
【0135】
<変形例2>
本実施の形態に示すトランジスタ50に設けられる酸化物半導体膜18において、不純
物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特
性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、
欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性と
よぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少
ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体
をチャネル領域に用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノー
マリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真
性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる。従っ
て、当該酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく
、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電
荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある
。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタ
は、電気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、
又はアルカリ土類金属等がある。
【0136】
酸化物半導体に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸
素が脱離した格子(又は酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損に水
素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属
原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。従っ
て、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となり
やすい。
【0137】
そこで、酸化物半導体膜18は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体
的には、酸化物半導体膜18において、二次イオン質量分析法(SIMS:Second
ary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、5
×1018原子/cm3以下、好ましくは1×1018原子/cm3以下、より好ましく
は5×1017原子/cm3以下、さらに好ましくは1×1016原子/cm3以下とす
る。
【0138】
酸化物半導体膜18の水素濃度を低減する方法としては、
図3(B)において酸化物半
導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19を有する多層膜20を形成した後、
加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜18の水素濃度を低減することができる。該加熱
処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは200℃以上45
0℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
【0139】
また、酸化物半導体膜18は、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又は
アルカリ土類金属の濃度を、1×1018原子/cm3以下、好ましくは2×1016原
子/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合する
とキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある
。このため、酸化物半導体膜18のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減する
ことが好ましい。
【0140】
ゲート絶縁膜17の一部に窒化物絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜18のアルカ
リ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することができる。
【0141】
また、酸化物半導体膜18に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャ
リア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用い
たトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜におい
て、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、窒素濃度は、5×101
8原子/cm3以下にすることが好ましい。
【0142】
このように、不純物(水素、窒素、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属等)をできる
限り低減させ、高純度化させた酸化物半導体膜18を有することで、トランジスタがノー
マリーオン特性となることを抑制でき、トランジスタのオフ電流を極めて低減することが
できる。従って、良好な電気特性を有する半導体装置を作製できる。また、信頼性を向上
させた半導体装置を作製することができる。
【0143】
なお、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、
いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長L
が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1
Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下
、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。この場合、オフ電流を
トランジスタのチャネル幅で除した数値は、100zA/μm以下であることが分かる。
また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入又は容量素子から流出する
電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定で
は、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜の一部をチャネル領域に用い、容
量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。そ
の結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/
μmという、さらに低いオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸
化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
【0144】
<変形例3>
本実施の形態に示すトランジスタ50に設けられる一対の電極21、22として、タン
グステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、またはタンタル単体若しく
は合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いることが好ましい。この結果、多層膜20
に含まれる酸素と一対の電極21、22に含まれる導電材料とが結合し、多層膜20にお
いて、酸素欠損領域が形成される。また、多層膜20に一対の電極21、22を形成する
導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結果、多層膜20において、
一対の電極21,22と接する領域近傍に、低抵抗領域が形成される。
図4は、
図1(B
)のトランジスタ50の多層膜20の拡大断面図である。
図4(A)に示すように、In
若しくはGaを含む酸化物膜19において、低抵抗領域28a、29aの大部分が形成さ
れる場合がある。または、
図4(B)に示すように、酸化物半導体膜18及びIn若しく
はGaを含む酸化物膜19において、低抵抗領域28b、29bが形成される場合がある
。または、
図4(C)に示すように、酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸
化物膜19において、ゲート絶縁膜17に接するように低抵抗領域28c、29cが形成
される場合がある。当該低抵抗領域28a~28c、29a~29cは、導電性が高いた
め、多層膜20と一対の電極21、22との接触抵抗を低減することが可能であり、トラ
ンジスタのオン電流を増大させることが可能である。
【0145】
<変形例4>
本実施の形態に示すトランジスタ50の作製方法において、一対の電極21、22を形
成した後、エッチング残渣を除去するため、洗浄処理をしてもよい。この洗浄処理を行う
ことで、一対の電極21、22の間に流れるリーク電流の発生を抑制することができる。
当該洗浄処理は、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxi
de)溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸などの酸性の溶液を用
いて行うことができる。
【0146】
<変形例5>
本実施の形態に示すトランジスタ50の作製方法において、一対の電極21、22を形
成した後、多層膜20を酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、酸化物半導体膜18及
びIn若しくはGaを含む酸化物膜19に酸素を供給してもよい。酸素雰囲気としては、
酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等の雰囲気がある。さらに、当該プラズマ処理
において、基板11側にバイアスを印加しない状態で発生したプラズマに多層膜20を曝
すことが好ましい。この結果、多層膜20にダメージを与えず、且つ酸素を供給すること
が可能であり、多層膜20に含まれる酸素欠損量を低減することができる。また、エッチ
ング処理により多層膜20の表面に残存する不純物、例えば、フッ素、塩素等のハロゲン
等を除去することができる。
【0147】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0148】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と比較して、酸化物半導体膜の欠陥量をさらに低減す
ることが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照して説明する。本実
施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態1と比較して、ゲート絶縁膜及び酸化物
半導体膜の間に、In若しくはGaを含む酸化物膜を有する点が異なる。
【0149】
図5に、半導体装置が有するトランジスタ60の上面図及び断面図を示す。
図5(A)
はトランジスタ60の上面図であり、
図5(B)は、
図5(A)の一点鎖線A-B間の断
面図であり、
図5(C)は、
図5(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。なお、
図5
(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、酸化物絶縁膜23、酸化物絶
縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している。
【0150】
図5に示すトランジスタ60は、基板11上に設けられるゲート電極15を有する。ま
た、基板11及びゲート電極15上に、ゲート絶縁膜17が形成され、ゲート絶縁膜17
を介して、ゲート電極15と重なる多層膜34と、多層膜34に接する一対の電極21、
22とを有する。また、ゲート絶縁膜17、多層膜34、及び一対の電極21、22上に
は、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜26が形成される。
【0151】
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜34は、In若しくはGaを含
む酸化物膜31、酸化物半導体膜32、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33を有す
る。また、酸化物半導体膜32の一部がチャネル領域として機能する。
【0152】
また、ゲート絶縁膜17とIn若しくはGaを含む酸化物膜31が接する。即ち、ゲー
ト絶縁膜17と酸化物半導体膜32との間に、In若しくはGaを含む酸化物膜31が設
けられている。
【0153】
また、酸化物絶縁膜24とIn若しくはGaを含む酸化物膜33が接する。即ち、酸化
物半導体膜32と酸化物絶縁膜24との間に、In若しくはGaを含む酸化物膜33が設
けられている。
【0154】
In若しくはGaを含む酸化物膜31及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33は、実
施の形態1に示すIn若しくはGaを含む酸化物膜19と同様の材料及び形成方法を適宜
用いることができる。
【0155】
酸化物半導体膜32は、実施の形態1に示す酸化物半導体膜18と同様の材料及び形成
方法を適宜用いることができる。
【0156】
なお、In若しくはGaを含む酸化物膜31がIn-M-Zn酸化物であるとき、In
とMの原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic
%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上
とする。酸化物半導体膜32及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33がIn-M-Zn
酸化物であるときは、実施の形態1に示すInとMの原子数比率とすることが好ましい。
【0157】
ここでは、In若しくはGaを含む酸化物膜31として、スパッタリング法により、厚
さ30nmのIn-Ga-Zn酸化物膜(成膜に用いたスパッタリングターゲットの原子
数比はIn:Ga:Zn=1:6:4)を形成する。また、酸化物半導体膜32として厚
さ10nmのIn-Ga-Zn酸化物膜(成膜に用いたスパッタリングターゲットの原子
数比はIn:Ga:Zn=1:1:1)を形成する。また、In若しくはGaを含む酸化
物膜33として厚さ10nmのIn-Ga-Zn酸化物膜(成膜に用いたスパッタリング
ターゲットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:3:2)を形成する。
【0158】
ここで、
図5のトランジスタ60の多層膜34近傍の一点破線G-Hにおけるバンド構
造について、
図6(A)を用いて説明し、トランジスタ60におけるキャリアの流れにつ
いて、
図6(B)を用いて説明する。
【0159】
図6(A)に示すバンド構造において、例えば、In若しくはGaを含む酸化物膜31
としてエネルギーギャップが3.8eVであるIn-Ga-Zn酸化物(成膜に用いたス
パッタリングターゲットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:6:4)を用いる。酸化物
半導体膜32としてエネルギーギャップが3.2eVであるIn-Ga-Zn酸化物(成
膜に用いたスパッタリングターゲットの原子数比はIn:Ga:Zn=1:1:1)を用
いる。In若しくはGaを含む酸化物膜33としてエネルギーギャップが3.5eVであ
るIn-Ga-Zn酸化物(成膜に用いたスパッタリングターゲットの原子数比はIn:
Ga:Zn=1:3:2)を用いる。
【0160】
In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化物半導体膜32、及びIn若しくはGaを
含む酸化物膜33の真空準位と価電子帯上端のエネルギー差(イオン化ポテンシャルとも
いう。)は、それぞれ7.8eV、7.9eV、及び8.0eVである。
【0161】
In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化物半導体膜32、及びIn若しくはGaを
含む酸化物膜33の真空準位と伝導帯下端のエネルギー差(電子親和力ともいう。)は、
それぞれ4.0eV、4.7eV、及び4.5eVである。
【0162】
また、In若しくはGaを含む酸化物膜31の伝導帯の下端をEc_31とし、酸化物
半導体膜32の伝導帯の下端をEc_32とし、In若しくはGaを含む酸化物膜33の
伝導帯の下端をEc_33とする。また、ゲート絶縁膜17の伝導帯の下端をEc_17
とし、酸化物絶縁膜24の伝導帯の下端をEc_24とする。
【0163】
図6(A)に示すように、多層膜34において、In若しくはGaを含む酸化物膜31
と酸化物半導体膜32との界面近傍における伝導帯の下端、及び酸化物半導体膜32とI
n若しくはGaを含む酸化物膜33との界面近傍における伝導帯の下端が連続的に変化し
ている。即ち、In若しくはGaを含む酸化物膜31と酸化物半導体膜32との界面近傍
、及び酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33との界面近傍における
障壁が無く、なだらかに変化している。このような伝導帯の下端を有する構造を、U字型
の井戸(U Shape Well)構造とも呼べる。In若しくはGaを含む酸化物膜
31と酸化物半導体膜32との間、及び酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸
化物膜33との間で酸素が相互的に移動することでこのような形状となる。また、多層膜
34において、酸化物半導体膜32における伝導帯の下端Ec_32のエネルギーが最も
低く、当該領域がチャネル領域となる。
【0164】
ここで、トランジスタ60において、キャリアである電子の流れる様子について、
図6
(B)を用いて説明する。なお、
図6(B)において、酸化物半導体膜32における電子
の流れを破線矢印の大きさで表す。
【0165】
ゲート絶縁膜17とIn若しくはGaを含む酸化物膜31との界面近傍において、不純
物及び欠陥によりトラップ準位36が形成される。また、In若しくはGaを含む酸化物
膜33と酸化物絶縁膜24との界面近傍において、同様にトラップ準位37が形成される
。本実施の形態に示すトランジスタ60においては、
図6(B)に示すように、ゲート絶
縁膜17と酸化物半導体膜32との間にIn若しくはGaを含む酸化物膜31が設けられ
ており、酸化物半導体膜32とトラップ準位36との間には隔たりがある。また、酸化物
半導体膜32と酸化物絶縁膜24との間にIn若しくはGaを含む酸化物膜33が設けら
れており、酸化物半導体膜32とトラップ準位37との間には隔たりがある。
【0166】
これらの結果、酸化物半導体膜32を流れる電子がトラップ準位36、37に捕獲され
にくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果移動度
を高めることができる。また、トラップ準位36、37に電子が捕獲されると、該電子が
マイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動して
しまう。しかしながら、酸化物半導体膜32とトラップ準位36、37との間それぞれに
隔たりがあるため、トラップ準位36、37における電子の捕獲を低減することが可能で
あり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0167】
なお、In若しくはGaを含む酸化物膜31と酸化物半導体膜32との界面近傍におけ
る伝導帯の下端のエネルギー差ΔE2、及び酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含
む酸化物膜33との伝導帯の下端の界面近傍におけるエネルギー差ΔE3がそれぞれ小さ
いと、酸化物半導体膜32を流れるキャリアが、In若しくはGaを含む酸化物膜31の
伝導帯の下端、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33の伝導帯の下端それぞれを乗り
越え、トラップ準位36、37に捕獲されてしまう。このため、In若しくはGaを含む
酸化物膜31と酸化物半導体膜32との伝導帯の下端のエネルギー差ΔE2、及び酸化物
半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33との伝導帯の下端のエネルギー差Δ
E3をそれぞれ、0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすることが好ましい。
【0168】
なお、In若しくはGaを含む酸化物膜31と酸化物半導体膜32との界面近傍におけ
るエネルギー差ΔE2と比較して、酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物
膜33との界面近傍におけるエネルギー差ΔE3を小さくすることで、酸化物半導体膜3
2と、一対の電極21,22との間の抵抗を低減できると共に、トラップ準位36におけ
る電子の捕獲量を低減できるため、トランジスタのオン電流をより増大させると共に、電
界効果移動度をより高めることができる。
【0169】
なお、ここでは、エネルギー差ΔE2よりエネルギー差ΔE3の方が小さいが、トラン
ジスタの電気特性にあわせて、エネルギー差ΔE2及びエネルギー差ΔE3が同じ、又は
エネルギー差ΔE2よりエネルギー差ΔE3が大きくなるように、In若しくはGaを含
む酸化物膜31、酸化物半導体膜32、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33の構成
元素及び組成を適宜選択することができる。
【0170】
また、多層膜34のバックチャネル(多層膜34において、ゲート電極15と対向する
面と反対側の面)側に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁
膜24(
図5参照。)が設けられている。このため、化学量論的組成を満たす酸素よりも
多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を、多層膜34に含まれる酸化物半導
体膜32に移動させることで、当該酸化物半導体膜32の酸素欠損を低減することができ
る。
【0171】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、多層膜34はダメージを
受け、多層膜34のバックチャネル側に酸素欠損が生じるが、化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24に含まれる酸素によって、当該酸素欠損を修
復することができる。これにより、トランジスタ60の信頼性を向上させることができる
。
【0172】
以上のことから、In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化物半導体膜32、及びI
n若しくはGaを含む酸化物膜33を有する多層膜34と、且つ多層膜34上に、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24とを有することで、多層
膜34における酸素欠損を低減することが可能である。また、ゲート絶縁膜17と酸化物
半導体膜32との間に、In若しくはGaを含む酸化物膜31が設けられており、酸化物
半導体膜32と酸化物絶縁膜24との間に、In若しくはGaを含む酸化物膜33が設け
られているため、In若しくはGaを含む酸化物膜31と酸化物半導体膜32との界面近
傍におけるシリコンや炭素の濃度、酸化物半導体膜32におけるシリコンや炭素の濃度、
又はIn若しくはGaを含む酸化物膜33と酸化物半導体膜32との界面近傍におけるシ
リコンや炭素の濃度を低減することが可能である。これらの結果、多層膜34において、
一定光電流測定法で導出される吸収係数は、1×10-3/cm未満、好ましくは1×1
0-4/cm未満となり、局在準位密度が極めて低い。
【0173】
このような構造を有するトランジスタ60は、酸化物半導体膜32を含む多層膜34に
おいて欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能であり
、代表的には、オン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。また、ストレス
試験の一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験によってしきい値電圧が変動
しない、又はプラス方向若しくはマイナス方向への変動量が1.0V以下、好ましくは0
.5V以下であり、信頼性が高い。
【0174】
<変形例1>
本実施の形態に示す
図5(A)乃至
図5(C)に示す多層膜34の代わりに、
図5(D
)及び
図5(E)に示すように、In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化物半導体膜
32、In若しくはGaを含む酸化物膜33、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜35
を有する多層膜34aを用いることができる。なお、
図5(D)は、
図5(B)に示す多
層膜34の近傍の拡大図に相当し、
図5(E)は、
図5(C)に示す多層膜34近傍の拡
大図に相当する。
【0175】
In若しくはGaを含む酸化物膜35は、In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化
物半導体膜32、In若しくはGaを含む酸化物膜33それぞれの側面に設けられる。即
ち、酸化物半導体膜32がIn若しくはGaを含む酸化物膜で囲まれている。
【0176】
In若しくはGaを含む酸化物膜35は、In若しくはGaを含む酸化物膜31、33
と同様の金属酸化物で形成される。即ち、酸化物半導体膜32と比較して、In若しくは
Gaを含む酸化物膜35のバンドギャップが大きいため、多層膜34aとゲート絶縁膜1
7の界面近傍のトラップ準位、または多層膜34aと酸化物絶縁膜23との界面近傍のト
ラップ準位における電子の捕獲を低減することが可能である。この結果、トランジスタの
信頼性が向上する。
【0177】
なお、In若しくはGaを含む酸化物膜35は、In若しくはGaを含む酸化物膜31
、酸化物半導体膜32、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33を形成するドライエッ
チング工程において発生する反応生成物が、In若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化
物半導体膜32、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33の側面に付着することで、形
成される。ドライエッチングの条件は、例えば、エッチングガスとして三塩化ホウ素ガス
および塩素ガスを用い、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coup
led Plasma)電力および基板バイアス電力を印加して行えばよい。
【0178】
また、トランジスタ60において、ゲート絶縁膜17及び酸化物絶縁膜24に、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物
絶縁膜を用いる場合、チャネル幅方向の断面構造(
図5(E)を参照。)は、In若しく
はGaを含む酸化物膜31、33、35によって覆われた酸化物半導体膜32を、さらに
、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離す
る酸化物絶縁膜で覆う構造である。
【0179】
当該断面構造を有することで、酸化物半導体膜32の側面を流れるリーク電流を低減す
ることができ、オフ電流の増大を抑制することができると共にストレス試験によるしきい
値電圧の変動量を低減することができ、信頼性を高めることできる。また、ゲート絶縁膜
17及び酸化物絶縁膜24から酸化物半導体膜32に効率的に酸素を移動させることが可
能となり、酸化物半導体膜32の酸素欠損の含有量を低減させることができる。
【0180】
<変形例2>
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜34及び一対の電極21、22
の積層構造は適宜変更することができる。例えば、変形例として
図7に示すようなトラン
ジスタ65とすることができる。
【0181】
トランジスタ65の上面図を
図7(A)に示す。
図7(A)において、一点鎖線A-B
間の断面図を
図7(B)に示し、一点鎖線C-D間の断面図を
図7(C)に示す。なお、
図7(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、In若しくはGaを含む
酸化物膜31、酸化物半導体膜32、保護膜26などを省略している。
【0182】
トランジスタ65は、トランジスタ60と比較して、一対の電極21、22の一部が酸
化物半導体膜32及びIn若しくはGaを含む酸化物膜33で囲まれている点で異なる。
具体的には、トランジスタ65は、In若しくはGaを含む酸化物膜31上に酸化物半導
体膜32が設けられており、酸化物半導体膜32上に一対の電極21、22が設けられて
おり、酸化物半導体膜32及び一対の電極21、22に接してIn若しくはGaを含む酸
化物膜33が設けられている。なお、トランジスタ65において、その他の構成要素の積
層構造はトランジスタ60の積層構造と同じである。
【0183】
トランジスタ65は、一対の電極21、22が酸化物半導体膜32と接していることか
ら、トランジスタ60と比較して、多層膜34と一対の電極21、22との接触抵抗が低
く、トランジスタ60よりもオン電流が向上したトランジスタである。
【0184】
また、トランジスタ65は、一対の電極21、22が酸化物半導体膜32と接している
ことから、多層膜34と一対の電極21、22との接触抵抗を増大させずに、In若しく
はGaを含む酸化物膜33を厚くすることができる。このようにすることで、保護膜26
を形成する際のプラズマダメージ又は保護膜26の構成元素が混入するなどで生じるトラ
ップ準位が、酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33との界面近傍に
形成されることを抑制できる。つまり、トランジスタ65はオン電流の向上としきい値電
圧の変動の低減を両立することができる。
【0185】
トランジスタ65の作製方法を
図8を用いて説明する。まず、
図3(A)と同様にして
、基板11上にゲート電極及びゲート絶縁膜17を形成する(
図8(A)を参照。)。
【0186】
次に、In若しくはGaを含む酸化物膜31となるIn若しくはGaを含む酸化物膜4
4、及び酸化物半導体膜32となる酸化物半導体膜45を連続的に形成し、その後、一対
の電極21、22を形成する(
図8(B)を参照。)。当該In若しくはGaを含む酸化
物膜44は、実施の形態1に示すIn若しくはGaを含む酸化物膜19と同様の材料及び
形成方法を適宜用いることができる。当該酸化物半導体膜45は、実施の形態1に示す酸
化物半導体膜18と同様の材料及び形成方法を適宜用いることができる。また、一対の電
極21、22は、
図3(C)と同様にして形成することができる。なお、一対の電極21
、22は、当該酸化物半導体膜45上に形成される。
【0187】
次に、酸化物半導体膜32となる酸化物半導体膜45及び一対の電極21、22を覆う
ようにして、In若しくはGaを含む酸化物膜33となるIn若しくはGaを含む酸化物
膜を形成する。当該In若しくはGaを含む酸化物膜は実施の形態1に示すIn若しくは
Gaを含む酸化物膜19と同様の材料及び形成方法を適宜用いることができる。
【0188】
その後、In若しくはGaを含む酸化物膜31となるIn若しくはGaを含む酸化物膜
44、酸化物半導体膜32となる酸化物半導体膜45、及びIn若しくはGaを含む酸化
物膜33となるIn若しくはGaを含む酸化物膜のそれぞれ一部をエッチングして、In
若しくはGaを含む酸化物膜31、酸化物半導体膜32及びIn若しくはGaを含む酸化
物膜33を有する多層膜34を形成する(
図8(C)を参照。)。なお、当該エッチング
は、In若しくはGaを含む酸化物膜33となるIn若しくはGaを含む酸化物膜上にフ
ォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いることで実施できる。
【0189】
次に、ゲート絶縁膜17、多層膜34及び一対の電極21、22を覆うようにして、保
護膜26を形成する。保護膜26は、実施の形態1と同様にして形成することができる(
図8(D)を参照)。また、トランジスタ65の作製方法において、実施の形態1を適宜
参照して加熱処理を行うことができる。
【0190】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、酸化物半導体膜32とな
る酸化物半導体膜に酸素欠損などの欠陥が生じ、キャリア密度が増大する場合があるため
、In若しくはGaを含む酸化物膜33となるIn若しくはGaを含む酸化物膜を形成す
る前に、当該酸化物半導体膜を酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、当該酸化物半導
体膜に酸素を供給することが好ましい。このようにすることで、トランジスタ65におい
て、酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33との界面近傍にトラップ
準位が形成されることを抑制でき、しきい値電圧の変動を低減することができる。又は、
トランジスタ65において、多層膜34のうち、酸化物半導体膜32の側面近傍を流れる
リーク電流を低減することができ、オフ電流の増大を抑制することができる。
【0191】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、多層膜34はダメージを
受け、多層膜34のバックチャネル側に酸素欠損が生じるが、化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24に含まれる酸素によって、当該酸素欠損を修
復することができる。これにより、トランジスタ65の信頼性を向上させることができる
。
【0192】
<変形例3>
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜34及び一対の電極21、22
の積層構造は適宜変更することができる。例えば、変形例として
図9に示すようなトラン
ジスタ66とすることができる。
【0193】
トランジスタ66の上面図を
図9(A)に示す。
図9(A)において、一点鎖線A-B
間の断面図を
図9(B)に示し、一点鎖線C-D間の断面図を
図9(C)に示す。なお、
図9(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、保護膜26などを省略し
ている。
【0194】
トランジスタ66は、トランジスタ60と比較して、In若しくはGaを含む酸化物膜
33がゲート絶縁膜17、一対の電極21、22、及び酸化物半導体膜32上に形成され
ている点で異なる。具体的には、トランジスタ66は、In若しくはGaを含む酸化物膜
31上に酸化物半導体膜32が設けられており、In若しくはGaを含む酸化物膜31及
び酸化物半導体膜32を覆うように一対の電極21、22が設けられており、In若しく
はGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32並びに一対の電極21、22を覆うよ
うにIn若しくはGaを含む酸化物膜33が設けられている。なお、トランジスタ66に
おいて、その他の構成要素の積層構造はトランジスタ60の積層構造と同じである。
【0195】
トランジスタ66は、トランジスタ60と比較して、一対の電極21、22の酸化物半
導体膜32と接している面積が広いことから、多層膜34と一対の電極21、22との接
触抵抗が低く、トランジスタ60よりもオン電流が向上したトランジスタである。
【0196】
また、トランジスタ66は、一対の電極21、22が酸化物半導体膜32と大面積にお
いて接していることから、多層膜34と一対の電極21、22との接触抵抗を増大させず
に、In若しくはGaを含む酸化物膜33を厚くすることができる。このようにすること
で、保護膜26を形成する際のプラズマダメージ又は保護膜26の構成元素が混入するな
どで生じるトラップ準位が、酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33
との界面近傍に形成されることを抑制できる。つまり、トランジスタ66はオン電流の向
上としきい値電圧の変動の低減を両立することができる。
【0197】
トランジスタ66の作製方法を
図10を用いて説明する。まず、
図3(A)と同様にし
て、基板11上にゲート電極及びゲート絶縁膜17を形成する(
図10(A)を参照。)
。
【0198】
次に、In若しくはGaを含む酸化物膜31となるIn若しくはGaを含む酸化物膜、
及び酸化物半導体膜32となる酸化物半導体膜を連続的に形成し、当該酸化物半導体膜上
にフォトリソグラフィ工程によってマスクを設け、当該マスクを用いてエッチングしてI
n若しくはGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32を形成する。その後、In若
しくはGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32の端部を覆うようにして一対の電
極21、22を形成する(
図10(B)を参照。)。なお、当該In若しくはGaを含む
酸化物膜は、実施の形態1に示すIn若しくはGaを含む酸化物膜19と同様の材料及び
形成方法を適宜用いることができる。当該酸化物半導体膜は、実施の形態1に示す酸化物
半導体膜18と同様の材料及び形成方法を適宜用いることができる。また、一対の電極2
1、22は、
図3(C)と同様にして形成することができる。
【0199】
次に、酸化物半導体膜32及び一対の電極21、22を覆うようにして、In若しくは
Gaを含む酸化物膜33を形成し、多層膜34を形成する(
図10(C)を参照。)。当
該In若しくはGaを含む酸化物膜は実施の形態1に示すIn若しくはGaを含む酸化物
膜19と同様の材料及び形成方法を適宜用いることができる。なお、
図7(B)のように
、In若しくはGaを含む酸化物膜33は、フォトリソグラフィ工程などで形成したマス
クを用いたエッチングなどで加工してもよいし、成膜したままの状態としてもよい。
【0200】
次に、ゲート絶縁膜17、In若しくはGaを含む酸化物膜33上に保護膜26を形成
する。保護膜26は、実施の形態1と同様にして形成することができる(
図10(D)を
参照)。また、トランジスタ66の作製方法において、実施の形態1を適宜参照して加熱
処理を行うことができる。
【0201】
また、In若しくはGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32を形成するエッチ
ングによって、酸化物半導体膜32の側面に酸素欠損などの欠陥が生じ、キャリア密度が
増大する場合がある。そして、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、酸
化物半導体膜32の表面に酸素欠損などの欠陥が生じ、キャリア密度が増大する場合があ
る。それゆえ、In若しくはGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32を形成した
後、及び一対の電極21、22を形成した後の一方又は双方において、酸化物半導体膜3
2を酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、酸化物半導体膜32に酸素を供給すること
が好ましい。
【0202】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、多層膜34はダメージを
受け、多層膜34のバックチャネル側に酸素欠損が生じるが、化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜24に含まれる酸素によって、当該酸素欠損を修
復することができる。これにより、トランジスタ66の信頼性を向上させることができる
。
【0203】
このようにすることで、トランジスタ66において、酸化物半導体膜32の側面、及び
酸化物半導体膜32とIn若しくはGaを含む酸化物膜33との界面近傍にトラップ準位
が形成されることを抑制でき、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0204】
また、トランジスタ66は、In若しくはGaを含む酸化物膜33がIn若しくはGa
を含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32の側面(チャネル長方向の側面)を覆うよう
にして設けられている(
図9(C)を参照。)。それゆえ、酸化物半導体膜32の側面を
流れるリーク電流を低減することができ、オフ電流の増大を抑制することができる。
【0205】
また、In若しくはGaを含む酸化物膜31及び酸化物半導体膜32を形成する際(図
9(B)を参照。)、酸化物半導体膜32が形成された後、In若しくはGaを含む酸化
物膜31を形成するエッチング工程において、In若しくはGaを含む酸化物膜31及び
酸化物半導体膜32の側面に反応生成物が付着し、In若しくはGaを含む酸化物膜(図
5(D)に示すIn若しくはGaを含む酸化物膜35に相当)が形成される場合がある。
この場合、In若しくはGaを含む酸化物膜33は、酸化物半導体膜32の側面を覆うI
n若しくはGaを含む酸化物膜をさらに覆うようにして形成される。
【0206】
<変形例4>
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜34及び一対の電極21、22
の積層構造は適宜変更することができる。例えば、変形例として
図11に示すようなトラ
ンジスタ67とすることができる。
【0207】
トランジスタ67の上面図を
図11(A)に示す。
図11(A)において、一点鎖線A
-B間の断面図を
図11(B)に示し、一点鎖線C-D間の断面図を
図11(C)に示す
。なお、
図11(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜17、保護膜26な
どを省略している。
【0208】
トランジスタ67は、
図9(B)に示すトランジスタ66において、In若しくはGa
を含む酸化物膜33が、一対の電極21、22を覆うようにして設けられると共に、In
若しくはGaを含む酸化物膜33の端部が一対の電極21、22上に位置する。なお、ト
ランジスタ67において、その他の構成要素の積層構造はトランジスタ66の積層構造と
同じである。
【0209】
トランジスタ67は、
図11(C)に示すように、In若しくはGaを含む酸化物膜3
3が、チャネル幅方向と交差する側面において、In若しくはGaを含む酸化物膜31及
び酸化物半導体膜32の側面を覆うようにして設けられている。それゆえ、酸化物半導体
膜32の側面を流れるリーク電流を低減することができ、オフ電流の増大を抑制すること
ができる。
【0210】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2と異なる構造のトランジスタについ
て、
図12を用いて説明する。本実施の形態に示すトランジスタ70は、酸化物半導体膜
を介して対向する複数のゲート電極を有することを特徴とする。
【0211】
図12に示すトランジスタ70は、基板11上に設けられるゲート電極15を有する。
また、基板11及びゲート電極15上に、ゲート絶縁膜17が形成され、ゲート絶縁膜1
7を介して、ゲート電極15と重なる多層膜20と、多層膜20に接する一対の電極21
、22と、を有する。なお、多層膜20は、酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを
含む酸化物膜19を有する。また、ゲート絶縁膜17、多層膜20、及び一対の電極21
、22上には、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜26が形成
される。また、保護膜26を介して多層膜20と重畳するゲート電極61を有する。
【0212】
ゲート電極61は、実施の形態1に示すゲート電極15と同様に形成することができる
。
【0213】
本実施の形態に示すトランジスタ70は、多層膜20を介して対向するゲート電極15
及びゲート電極61を有する。ゲート電極15とゲート電極61に異なる電位を印加する
ことで、トランジスタ70のしきい値電圧を制御することができる。
【0214】
また、酸素欠損量が低減された酸化物半導体膜18を有する多層膜20を有することで
、トランジスタの電気特性を向上させることが可能である。また、しきい値電圧の変動量
が少なく、信頼性の高いトランジスタとなる。
【0215】
上記実施の形態で開示された酸化物半導体膜はスパッタ法により形成することができる
が、他の方法、例えば、熱CVD法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOC
VD(Metal Organic Chemical Vapor Depositi
on)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を使っても良
い。
【0216】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0217】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチ
ャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0218】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい
。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以
上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の
原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、
第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスは
キャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入しても
よい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した
後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単
原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の
単原子層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さに
なるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜
の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚
調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
【0219】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法で、これまでに記載した実施形態に開示され
た酸化物半導体膜を形成することができ、例えば、MOCVDV法で、InGaZnOX
(X>0)膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジ
エチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、(CH3)3Inである
。また、トリメチルガリウムの化学式は、(CH3)3Gaである。また、ジエチル亜鉛
の化学式は、(CH3)2Znである。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメ
チルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式(C2H5)3Ga)を用いることも
でき、ジエチル亜鉛に代えてジメチル亜鉛(化学式(C2H5)2Zn)を用いることも
できる。
【0220】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(
X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入し
てInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGa
O層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成
する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInG
aO2層やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合
物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得
られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また
、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga
(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いても良い。また、In(CH
3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Zn(CH3)2
ガスを用いても良い。
【0221】
また、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0222】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、酸化物半導体膜に適用可能な一態様について説明する。
【0223】
酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体、単結晶酸化物半導体、及び多結晶酸化物半導
体とすることができる。また、酸化物半導体膜は、結晶部分を有する酸化物半導体(CA
AC-OS)で構成されていてもよい。
【0224】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満又は3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠
陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行う
。
【0225】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0226】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)又は上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面又は上面と平行に配列する。
【0227】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状又は六角形状に配列しているこ
とを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られな
い。
【0228】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0229】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0230】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0231】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面又は上面の法線ベクトルに平行
な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配
列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0232】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、又は加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面又は
上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形状
をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面又
は上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0233】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0234】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0235】
CAAC-OS膜の形成方法としては、三つ挙げられる。
【0236】
第1の方法は、成膜温度を150℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450
℃以下、さらに好ましくは200℃以上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜する
ことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトル又は表面の
法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0237】
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の
熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクト
ル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0238】
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700
℃以下の熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半導
体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行
な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0239】
酸化物半導体膜にCAAC-OSを適用したトランジスタは、可視光や紫外光の照射に
よる電気特性の変動が小さい。よって、酸化物半導体膜にCAAC-OSを適用したトラ
ンジスタは、良好な信頼性を有する。
【0240】
また、CAAC-OSは、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用
い、スパッタリング法によって成膜することが好ましい。当該スパッタリング用ターゲッ
トにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面か
ら劈開し、a-b面に平行な面を有する平板状又はペレット状のスパッタリング粒子とし
て剥離することがある。この場合、当該平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が、
結晶状態を維持したまま被形成面に到達することで、CAAC-OSを成膜することがで
きる。
【0241】
また、CAAC-OSを成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0242】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0243】
また、成膜時の被成膜面の加熱温度(例えば基板加熱温度)を高めることで、被形成面
に到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、被形成面の温
度を100℃以上740℃以下、好ましくは150℃以上500℃以下として成膜する。
成膜時の被形成面の温度を高めることで、平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が
被成膜面に到達した場合、当該被形成面上でマイグレーションが起こり、スパッタリング
粒子の平らな面が被形成面に付着する。
【0244】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0245】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn系化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0246】
InOX粉末、GaOY粉末、及びZnOZ粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理
後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-G
a-Zn系金属酸化物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(又は放冷)しな
がら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、Y及びZは任意の正数であ
る。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末及びZnOZ粉
末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、3:1:2、1
:3:2、1:6:4、又は1:9:6である。なお、粉末の種類、及びその混合するm
ol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0247】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0248】
(実施の形態5)
上記実施の形態で一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表
示装置ともいう。)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部
又は全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することがで
きる。本実施の形態では、上記実施の形態で一例を示したトランジスタを用いた表示装置
の例について、
図13及び
図14を用いて説明する。なお、
図14(A)及び
図14(B
)は、
図13(B)中でM-Nの一点鎖線で示した部位の断面構成を示す断面図である。
【0249】
図13(A)において、第1の基板901上に設けられた画素部902を囲むようにし
て、シール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。
図13(A
)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異な
る領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体又は多結晶半導体で形成された信号線駆
動回路903、及び走査線駆動回路904が実装されている。また、信号線駆動回路90
3、走査線駆動回路904、又は画素部902に与えられる各種信号及び電位は、FPC
(Flexible printed circuit)918から供給されている。
【0250】
図13(B)及び
図13(C)において、第1の基板901上に設けられた画素部90
2と、走査線駆動回路904とを囲むようにして、シール材905が設けられている。ま
た画素部902と、走査線駆動回路904の上に第2の基板906が設けられている。よ
って画素部902と、走査線駆動回路904とは、第1の基板901とシール材905と
第2の基板906とによって、表示素子と共に封止されている。
図13(B)及び
図13
(C)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは
異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体又は多結晶半導体で形成された信号
線駆動回路903が実装されている。
図13(B)及び
図13(C)においては、信号線
駆動回路903、走査線駆動回路904、又は画素部902に与えられる各種信号及び電
位は、FPC918から供給されている。
【0251】
また、
図13(B)及び
図13(C)においては、信号線駆動回路903を別途形成し
、第1の基板901に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線
駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の
一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0252】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(C
hip On Glass)方法、又はワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tap
e Automated Bonding)方法などを用いることができる。
図13(A
)は、COG方法により信号線駆動回路903、走査線駆動回路904を実装する例であ
り、
図13(B)は、COG方法により信号線駆動回路903を実装する例であり、
図1
3(C)は、TAB方法により信号線駆動回路903を実装する例である。
【0253】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントロー
ラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0254】
なお、本明細書における表示装置とは、画像表示デバイスまたは光源(照明装置含む。
)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付けられたモジュール
、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は表示素子にCOG方式によ
りIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0255】
また、第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有
しており、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
【0256】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう。)、発光素
子(発光表示素子ともいう。)を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によっ
て輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro
Luminescence)素子、有機EL素子等が含まれる。また、電子インクなど
、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
図14(
A)に、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示し、
図14(B)に、表
示素子として発光素子を用いた発光表示装置の例を示す。
【0257】
図14(A)及び
図14(B)で示すように、表示装置は接続端子電極915及び端子
電極916を有しており、接続端子電極915及び端子電極916はFPC918が有す
る端子と異方性導電剤919を介して、電気的に接続されている。
【0258】
接続端子電極915は、第1の電極930と同じ導電膜から形成され、端子電極916
は、トランジスタ910、911の一対の電極と同じ導電膜で形成されている。
【0259】
また、第1の基板901上に設けられた画素部902と、走査線駆動回路904は、ト
ランジスタを複数有しており、
図14(A)及び
図14(B)では、画素部902に含ま
れるトランジスタ910と、走査線駆動回路904に含まれるトランジスタ911とを例
示している。
図14(A)では、トランジスタ910及びトランジスタ911上には、絶
縁膜924が設けられ、
図14(B)では、絶縁膜924の上にさらに平坦化膜921が
設けられている。なお、トランジスタ910及びトランジスタ911において酸化物半導
体膜を有する多層膜926は、実施の形態1に示す酸化物半導体膜を有する多層膜20、
又は実施の形態2に示す酸化物半導体膜を有する多層膜34を適宜用いることができる。
絶縁膜924は、実施の形態1に示す保護膜26を適宜用いることができる。絶縁膜92
3は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0260】
本実施の形態では、トランジスタ910、トランジスタ911として、上記実施の形態
で示したトランジスタを適宜適用することができる。トランジスタ910及びトランジス
タ911として、実施の形態1乃至実施の形態3のいずれか一に示すトランジスタを用い
ることで、高画質な表示装置を作製することができる。
【0261】
また、
図14(B)では、平坦化膜921上において、駆動回路用のトランジスタ91
1の多層膜926のチャネル領域と重なる位置に導電膜917が設けられている例を示し
ている。本実施の形態では、導電膜917を第1の電極930と同じ導電膜で形成する。
導電膜917を多層膜926のチャネル領域と重なる位置に設けることによって、BTス
トレス試験前後におけるトランジスタ911のしきい値電圧の変動量をさらに低減するこ
とができる。また、導電膜917の電位は、トランジスタ911のゲート電極と同じでも
よいし、異なっていても良く、導電膜を第2のゲート電極として機能させることもできる
。また、導電膜917の電位は、GND、0V、フローティング状態、又は駆動回路の最
低電位(Vss、例えばソース電極の電位を基準とする場合、ソース電極の電位)と同電
位若しくはそれと同等電位であってもよい。
【0262】
また、導電膜917は外部の電場を遮蔽する機能も有する。すなわち外部の電場が内部
(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮
蔽機能)も有する。導電膜917の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によ
りトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。導電膜917は
、上記実施の形態で示した、いずれのトランジスタにも適用可能である。
【0263】
画素部902に設けられたトランジスタ910は表示素子と電気的に接続し、表示パネ
ルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を
用いることができる。
【0264】
図14(A)において、表示素子である液晶素子913は、第1の電極930、第2の
電極931、及び液晶層908を含む。なお、液晶層908を挟持するように配向膜とし
て機能する絶縁膜932、絶縁膜933が設けられている。また、第2の電極931は第
2の基板906側に設けられ、第1の電極930と第2の電極931とは液晶層908を
介して重なる構成となっている。
【0265】
またスペーサ935は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサ
であり、第1の電極930と第2の電極931との間隔(セルギャップ)を制御するため
に設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0266】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子
液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これ
らの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カ
イラルネマチック相、等方相等を示す。
【0267】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つ
であり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する
直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改
善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶
とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性で
あるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよい
のでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防
止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よ
って液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0268】
第1の基板901及び第2の基板906はシール材925によって固定されている。シ
ール材925は、熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂を用いることができる。
【0269】
また、上記実施の形態で用いる酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、スイッチング
特性が優れている。また、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能で
ある。よって、表示機能を有する半導体装置の画素部に上記トランジスタを用いることで
、高画質な画像を提供することができる。また、同一基板上に駆動回路部又は画素部を作
り分けて作製することが可能となるため、半導体装置の部品点数を削減することができる
。
【0270】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリ
ーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸
化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対し
て1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分で
あるため、画素における開口率を高めることができる。
【0271】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光膜)、偏光部材、位相差部材、反
射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差
基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを
用いてもよい。
【0272】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用い
ることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(R
は赤、Gは緑、Bは青を表す。)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表
す。)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。
なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明
の一態様はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に
適用することもできる。
【0273】
図14(B)において、表示素子である発光素子963は、画素部902に設けられた
トランジスタ910と電気的に接続している。なお、発光素子963の構成は、第1の電
極930、発光層961、第2の電極931の積層構造であるが、示した構成に限定され
ない。発光素子963から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子963の構成は適
宜変えることができる。
【0274】
隔壁960は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂
材料を用い、第1の電極930上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を
持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0275】
発光層961は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成され
ていてもどちらでも良い。
【0276】
発光素子963に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極9
31及び隔壁960上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン膜、窒
化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜
、窒化酸化アルミニウム膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板90
1、第2の基板906、及びシール材936によって封止された空間には充填材964が
設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少
ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッ
ケージング(封入)することが好ましい。
【0277】
シール材936は熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂や、低融点ガラスを含むフリ
ットガラスなどを用いることができる。フリットガラスは、水や酸素などの不純物に対し
てバリア性が高いため好ましい。また、シール材936としてフリットガラスを用いる場
合、
図14(B)に示すように、絶縁膜924上にフリットガラスを設けることで密着性
を高めることができるため好ましい。
【0278】
充填材964としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は
熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリ
イミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エ
チレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよ
い。
【0279】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)
、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けても
よい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸によ
り反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0280】
表示素子に電圧を印加する第1の電極及び第2の電極(画素電極、共通電極、対向電極
などともいう)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、及び電極のパタ
ーン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0281】
第1の電極930、第2の電極931は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、
酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸
化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、イ
ンジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導
電性材料を用いることができる。
【0282】
また、第1の電極930、第2の電極931はタングステン(W)、モリブデン(Mo
)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、
タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(T
i)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はそ
の合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0283】
また、第1の電極930及び第2の電極931として、導電性高分子(導電性ポリマー
ともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、
いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン又はそ
の誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、若しくはアニ
リン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などが
あげられる。
【0284】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回
路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0285】
以上のように上記実施の形態で示したトランジスタを適用することで、表示機能を有す
る信頼性のよい半導体装置を提供することができる。
【0286】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0287】
(実施の形態6)
本実施の形態では、タッチセンサ(接触検出装置)を設けた表示装置(タッチパネルと
もいう。)について、以下に説明する。
【0288】
図24は、表示装置900の画素部の構成例を示す上面図である。
図25は
図24の一
点鎖線OP間の断面図である。なお、
図24において、明瞭化のため、構成要素の一部を
省略している。また、本実施の形態では、実施の形態5で用いた符号を適宜用いて説明す
る。
【0289】
当該画素部は、少なくとも、トランジスタ910と、ゲート電極972を含む走査線と
、一対の電極974、975の一方の電極974を含む信号線と、画素電極として機能す
る第1の電極930と、共通電極として機能する第2の電極931と、スペーサ935と
を有する(
図24を参照。)。
【0290】
トランジスタ910は、ゲート電極972と、ゲート絶縁膜976と、多層膜926と
、一対の電極974、975と、絶縁膜924とを有する。ゲート電極972は、第1の
基板901上の下地膜として機能する絶縁膜923上に設けられている。ゲート絶縁膜9
76は、ゲート電極972上に設けられており、多層膜926は、ゲート電極972と重
畳してゲート絶縁膜976上に設けられており、一対の電極974、975は、多層膜9
26上に設けられており、絶縁膜924は、多層膜926及び一対の電極974、975
上に設けられている(
図25を参照。)。
【0291】
また、絶縁膜924上には有機樹脂膜945が設けられている。有機樹脂膜945上に
は第2の電極931が設けられている。有機樹脂膜945及び第2の電極931上には絶
縁膜937が設けられている。絶縁膜924、絶縁膜937、有機樹脂膜945には電極
975に達する開口が設けられており、当該開口及び絶縁膜937上には第1の電極93
0が設けられている(
図25を参照。)。つまり、第1の電極930は一対の電極974
、975の一方と電気的に接続されている。
【0292】
また、絶縁膜937及び第1の電極930上には配向膜として機能する絶縁膜932が
設けられている。第2の基板906の第1の基板901と対向する面には配向膜として機
能する絶縁膜933が設けられており、絶縁膜932及び絶縁膜933の間には液晶層9
08が設けられている。なお、以上の構成要素に加えて適宜光学部材を設けてもよい。例
えば、第1の基板901及び第2の基板906の外側には偏光板を設けることができる。
【0293】
また、表示装置900は、タッチセンサとして静電容量式のセンサを備えている。第2
の基板906の外側に電極941が設けられている。なお、第2の基板906の外側に設
ける偏光板は、電極941と第2の基板906との間に設ける。
【0294】
第1の基板901側の第2の電極931は、画素の共通電極及びタッチセンサの容量素
子の一方の電極として機能する。電極941は、タッチセンサの容量素子の他方の電極と
して機能する。また、表示装置900の画素部はFFSモードの画素構造を採用している
ことから、第2の基板906側に導電膜が形成されていないので、第2の基板906の帯
電防止用の導電体として電極941が機能する。
【0295】
トランジスタ910は、実施の形態1に記載したトランジスタ50と同様の材料及び同
様の作製方法で形成できる。つまり、ゲート電極972、ゲート絶縁膜976、多層膜9
26、一対の電極974、975及び絶縁膜924のそれぞれは、実施の形態1に記載し
たトランジスタ50のゲート電極15、ゲート絶縁膜17、多層膜20、一対の電極21
、22、保護膜26のそれぞれと同様の材料及び方法を用いることで形成できる。
【0296】
また、トランジスタ910の作製工程を利用して表示装置900の信号線駆動回路及び
走査線駆動回路の一方又は双方を作製することができる。例えば、信号線駆動回路及び走
査線駆動回路の一方又は双方に含まれるトランジスタ及びダイオード、並びにFPCなど
と接続される端子部に設けられる引き回し配線を作製することができる。
【0297】
有機樹脂膜945は、実施の形態5で説明した平坦化膜921又は隔壁960に適用で
きる材料及び作製方法を用いて形成することができる。絶縁膜937は、トランジスタ9
10に含まれる絶縁膜(ゲート絶縁膜976又は絶縁膜924など)に適用できる材料及
び作製方法を用いて形成することができる。
【0298】
また、一対の電極974、975のうち一方の電極である電極975と、第1の電極9
30とは、絶縁膜924、絶縁膜937及び有機樹脂膜945に設けられた開口で接して
いる。当該開口は、フォトリソグラフィ工程などによってレジストマスクを形成し、当該
レジストマスクを用いてエッチングすることによって形成できる。具体的には、絶縁膜9
24及び有機樹脂膜945の一部をエッチングする工程と、絶縁膜937の一部をエッチ
ングする工程によって形成される。
【0299】
図26(A)に、一対の電極974、975と電気的に接続される配線977と、第2
の電極931とが接続されている接続構造の一例の断面図を示す。配線977及び第2の
電極931は絶縁膜924及び有機樹脂膜945に設けられた開口で接している。このよ
うにすることで、配線977に電位を供給することで第2の電極931に電位を供給する
ことができる。なお、配線977は、一対の電極974、975の作製工程を利用して形
成することができる。
【0300】
また、
図26(B)に、FPCなどと接続される端子部における配線の接続構造の一例
の断面図を示す。電極979は、絶縁膜924及び有機樹脂膜945に設けられた開口で
配線977と接しており、ゲート絶縁膜976、絶縁膜924及び有機樹脂膜945に設
けられた開口で配線978と接している。このようにすることで、配線978に電位を供
給することで配線977に電位を供給することができる。なお、配線978はゲート電極
972の作製工程を利用して形成することができる。
【0301】
図26(B)のように電極979により、配線977と配線978とを接続するように
することで、配線977と配線978とが直接接する接続部を作製する場合よりも、フォ
トマスクを1枚少なくすることができる。それは、配線977と配線978とが直接接す
るような接続構造とするには、一対の電極974、975を形成する前に、ゲート絶縁膜
976にコンタクトホールを形成するためのフォトマスクが必要であるが、
図26(B)
の接続構造には、当該フォトマスクが不要であるからである。
【0302】
また、
図25に示すトランジスタ910の代わりに、多階調マスクを用いて
図27に示
すトランジスタ912を作製することで、フォトマスク枚数を削減することが可能である
。多階調マスクとは、多段階の光量で露光を行うことが可能なマスクであり、代表的には
、露光領域、半露光領域、及び未露光領域の3段階の光量で露光を行う。多階調マスクを
用いることで、一度の露光及び現像工程によって、複数(代表的には二種類)の厚さを有
するレジストマスクを形成することができる。そのため、多階調マスクを用いることで、
フォトマスクの枚数を削減することができる。具体的には、多層膜927及び一対の電極
928、929の形成工程において、多階調マスクを用いることで、フォトマスクを1枚
削減することができる。なお、多階調マスクを用いることで、一対の電極928、929
の端部の外側に多層膜927の端部が位置する。
【0303】
図28は、表示装置900の第2の電極931、及び電極941の構成例を示す平面図
である。
図28に示すように、第2の電極931及び電極941はストライプ状の形状を
有し、第2の電極931と電極941は平面において直交するように配置されている。各
第2の電極931は、引き回し配線951により、基板901に取り付けられたFPC9
54に接続され、各電極941は、引き回し配線952により基板906に取り付けられ
たFPC955に接続されている。
【0304】
図29(A)は、
図28の一点鎖線Q-Rによる断面図であり、
図29(B)は、
図2
8の領域953における平面図である。
図29(A)に示すように、第2の電極931は
、複数の画素に共通に設けられており、第1の電極930は画素ごとに設けられており、
トランジスタ910に接続されている。第2の電極931と電極941が交差している領
域にタッチセンサの静電容量素子が形成される。静電容量素子は、第2の電極931と、
電極941と、第2の電極931及び電極941の間に設けられる誘電体とで構成される
。第2の電極931は、静電容量素子に電位を供給するための電極である。電極941は
、容量素子を流れる電流を取り出すための電極である。
【0305】
表示装置900の動作は、画素に映像信号を入力する表示動作と、接触を検出するセン
シング動作に大別できる。表示動作時は、第2の電極931の電位はローレベルに固定さ
れている。センシング期間には、各第2の電極931にパルス信号が順次印加され、その
電位がハイレベルとされる。このとき、指が表示装置900に接触していると、指の接触
により形成された容量がタッチセンサの静電容量素子に付加されるため、容量素子を流れ
る電流が変化し、電極941の電位が変化する。電極941を順次走査して、電極941
の電位の変化を検出することで、指の接触位置が検出される。
【0306】
上述したように、液晶素子を有する表示装置において、表示装置900の静電容量を構
成する電極として、FFSモードの液晶表示装置に元々設けられていた帯電防止用の導電
体と、画素の共通電極を用いることができるため、軽量、薄型で、かつ高表示品位のタッ
チパネルを提供することが可能である。
【0307】
なお、ここでは、第2の電極931が第1の電極930の下側(第1の基板901側)
に設けられている例を示したが、第2の電極931を第1の電極930の上側に設けるこ
ともできる。
【0308】
なお、表示装置の構造は、本実施の形態で示した表示装置900以外の構造を用いても
よい。例えば、静電容量を形成しタッチパネル基板を液晶表示装置又は発光表示装置の第
1の基板901又は第2の基板906側に取り付ける外付け方式のタッチパネルとするこ
ともできる。また、第1の基板901又は第2の基板906の外側に取り付ける帯電防止
用の導電膜を用いて、表面容量(surface capacitive)型のタッチセ
ンサを構成することもできる。以下、
図30及び
図31を用いて、外付け型のタッチパネ
ルに適用されるタッチセンサの構成例を説明する。
【0309】
図30(A)は、タッチセンサの構成例を示す分解斜視図であり、
図30(B)は、タ
ッチセンサの電極981の構成例を示す平面図であり、
図30(C)は、タッチセンサの
電極982の構成例を示す平面図である。
【0310】
図30(A)乃至
図30(C)に示すように、タッチセンサ980は、基板986上に
、X軸方向に配列された複数の電極981と、X軸方向と交差するY軸方向に配列された
複数の電極982とが形成されている。
【0311】
電極981及び電極982はそれぞれ、複数の四辺形状の導電膜が接続された構造を有
している。複数の電極981及び複数の電極982は、導電膜の四辺形状の部分の位置が
重ならないように、配置されている。電極981と電極982の交差する部分には、電極
981と電極982が接触しないように間に絶縁膜が設けられている。
【0312】
図31(A)は、電極981及び電極982それぞれの接続構造の一例を説明する断面
図であり、電極981と982が交差する部分の断面図を一例として示す。
図31(B)
は、電極981と電極982との交差部分の等価回路図である。
図31(B)に示すよう
に、電極981と電極982の交差する部分には、容量983が形成される。
【0313】
図31(A)に示すように、センサ部989において、電極981は、1層目の導電膜
981a及び導電膜981b、並びに絶縁膜985上の2層目の導電膜981cにより構
成される。導電膜981aと導電膜981bとは、導電膜981cにより接続されている
。電極982は、1層目の導電膜により形成される。電極981、電極982、及び電極
984、並びに絶縁膜985を覆って絶縁膜991が形成されている。絶縁膜985及び
絶縁膜991として、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を形成すればよい
。なお、基板986と電極981及び電極984の間に下地絶縁膜を形成してもよい。下
地絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を形成することがで
きる。
【0314】
電極981及び電極982は、可視光に対して透光性を有する導電材料で形成される。
例えば、透光性を有する導電材料として、酸化シリコンを含む酸化インジウムスズ、酸化
インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛等がある
。
【0315】
導電膜981aは、端子部990において電極984に接続されている。電極984は
、FPCとの接続用端子を構成する。電極982も、電極981と同様に他の電極984
に接続される。電極984は、例えばタングステン膜から形成することができる。
【0316】
電極984とFPCとを電気的に接続するために、電極984上の絶縁膜985及び絶
縁膜991には開口が形成されている。絶縁膜991上には、基板987が接着剤又は接
着フィルム等により貼り付けられている。接着剤又は接着フィルムにより基板986を表
示装置の第1の基板901又は第2の基板906に取り付けることで、タッチパネルが構
成される。
【0317】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0318】
(実施の形態7)
本実施の形態では、表示装置の消費電力を低減するための駆動方法について説明する。
本実施の形態の駆動方法により、画素に酸化物半導体トランジスタを適用した表示装置の
更なる低消費電力化を図ることができる。以下、
図33及び
図34を用いて、表示装置の
一例である液晶表示装置の低消費電力化について説明する。
【0319】
図33は、本実施の形態の液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
図33に示
すように、液晶表示装置500は、表示モジュールとして液晶パネル501を有し、更に
、制御回路510及びカウンタ回路を有する。
【0320】
液晶表示装置500には、デジタルデータである画像信号(Video)、及び液晶パ
ネル501の画面の書き換えを制御するための同期信号(SYNC)が入力される。同期
信号としては、例えば水平同期信号(Hsync)、垂直同期信号(Vsync)、及び
基準クロック信号(CLK)等がある。
【0321】
液晶パネル501は、表示部530、走査線駆動回路540、及びデータ線駆動回路5
50を有する。表示部530は、複数の画素531を有する。同じ行の画素531は、共
通の走査線541により走査線駆動回路540に接続され、同じ列の画素531は共通の
データ線551によりデータ線駆動回路550に接続されている。
【0322】
液晶パネル501には、コモン電圧(以下、Vcomと呼ぶ。)、並びに電源電圧とし
て高電源電圧(VDD)及び低電源電圧(VSS)が供給される。コモン電圧(Vcom
)は、表示部530の各画素531に供給される。
【0323】
データ線駆動回路550は、入力された画像信号を処理し、データ信号を生成し、デー
タ線551にデータ信号を出力する。走査線駆動回路540は、データ信号が書き込まれ
る画素531を選択する走査信号を走査線541に出力する。
【0324】
画素531は、走査信号により、データ線551との電気的接続が制御されるスイッチ
ング素子を有する。スイッチング素子がオンとなると、データ線551から画素531に
データ信号が書き込まれる。
【0325】
Vcomが印加される電極が共通電極に相当する。
【0326】
制御回路510は、液晶表示装置500全体を制御する回路であり、液晶表示装置50
0を構成する回路の制御信号を生成する回路を備える。
【0327】
制御回路510は、同期信号(SYNC)から、走査線駆動回路540及びデータ線駆
動回路550の制御信号を生成する制御信号生成回路を有する。走査線駆動回路540の
制御信号として、スタートパルス(GSP)、クロック信号(GCLK)等があり、デー
タ線駆動回路550の制御信号として、スタートパルス(SSP)、クロック信号(SC
LK)等がある。例えば、制御回路510は、クロック信号(GCLK、SCLK)とし
て、周期が同じで位相がシフトされた複数のクロック信号を生成する。
【0328】
また、制御回路510は、液晶表示装置500外部から入力される画像信号(Vide
o)のデータ線駆動回路550への出力を制御する。
【0329】
データ線駆動回路550は、デジタル/アナログ変換回路(以下、D-A変換回路55
2と呼ぶ。)を有する。D-A変換回路552は、画像信号をアナログ変換し、データ信
号を生成する。
【0330】
なお、液晶表示装置500に入力される画像信号がアナログ信号である場合は、制御回
路510でデジタル信号に変換し、液晶パネル501へ出力する。
【0331】
画像信号は、フレーム毎の画像データでなる。制御回路510は、画像信号を画像処理
し、その処理で得られた情報を元に、データ線駆動回路550への画像信号の出力を制御
する機能を有する。そのため、制御回路510は、フレーム毎の画像データから動きを検
出する動き検出部511を備える。動き検出部511おいて、動きが無いと判定されると
、制御回路510はデータ線駆動回路550への画像信号の出力を停止し、また動きが有
ると判定すると画像信号の出力を再開する。
【0332】
動き検出部511で行う動き検出のための画像処理としては、特段の制約は無い。例え
ば、動き検出方法としては、例えば、連続する2つフレーム間の画像データから差分デー
タを得る方法がある。得られた差分データから動きの有無を判断することができる。また
、動きベクトルを検出する方法等もある。
【0333】
また、液晶表示装置500は、入力された画像信号を補正する画像信号補正回路を設け
ることができる。例えば、画像信号の階調に対応する電圧よりも高い電圧が画素531に
書き込まれるように、画像信号を補正する。このような補正を行うことで液晶素子の応答
時間を短くすることができる。このように画像信号を補正処理して制御回路510を駆動
する方法は、オーバードライブ駆動と呼ばれている。また、画像信号のフレーム周波数の
整数倍で液晶表示装置500を駆動する倍速駆動を行う場合には、制御回路510で2つ
のフレーム間を補間する画像データを作成する、或いは2つのフレーム間で黒表示を行う
ための画像データを生成すればよい。
【0334】
以下、
図34に示すタイミングチャートを用いて、動画像のように動きのある画像と、
静止画のように動きの無い画像を表示するための液晶表示装置500の動作を説明する。
図34には、垂直同期信号(Vsync)、及びデータ線駆動回路550からデータ線5
51に出力されるデータ信号(Vdata)の信号波形を示す。
【0335】
図34は、3mフレーム期間の液晶表示装置500のタイミングチャートである。ここ
では、はじめのkフレーム期間及び終わりのjフレーム期間の画像データには動きがあり
、その他のフレーム期間の画像データには動きが無いとする。なお、k、jはそれぞれ1
以上m-2以下の整数である。
【0336】
最初のkフレーム期間は、動き検出部511において、各フレームの画像データに動き
があると判定される。制御回路510では、動き検出部511の判定結果に基づき、デー
タ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。
【0337】
そして、動き検出部511では、動き検出のための画像処理を行い、第k+1フレーム
の画像データに動きが無いと判定すると、制御回路510では、動き検出部511の判定
結果に基づき、第k+1フレーム期間に、データ線駆動回路550への画像信号(Vid
eo)の出力を停止する。よって、データ線駆動回路550からデータ線551へのデー
タ信号(Vdata)の出力が停止される。さらに、表示部530の書換えを停止するた
め、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号(スタートパルス信
号、クロック信号等)の供給を停止する。そして、制御回路510では、動き検出部51
1で、画像データに動きがあるとの判定結果が得られるまで、データ線駆動回路550へ
の画像信号の出力、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号の出
力を停止し、表示部530の書換えを停止する。
【0338】
なお、本明細書において、液晶パネルに信号を「供給しない」とは、当該信号を供給す
る配線へ回路を動作させるための所定の電圧とは異なる電圧を印加すること、又は当該配
線を電気的に浮遊状態にすることを指すこととする。
【0339】
表示部530の書換えを停止すると、液晶素子に同じ方向の電界が印加され続けること
になり、液晶素子の液晶が劣化するおそれがある。このような問題が顕在化する場合は、
動き検出部511の判定結果に関わらず、所定のタイミングで、制御回路510から走査
線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ信号を供給し、極性を反転させたデータ
信号をデータ線551に書き込み、液晶素子に印加される電界の向きを反転させるとよい
。
【0340】
なお、データ線551に入力されるデータ信号の極性はVcomを基準に決定される。
その極性は、データ信号の電圧がVcomより高い場合は正の極性であり、低い場合は負
の極性である。
【0341】
具体的には、
図34に示すように、第m+1フレーム期間になると、制御回路510は
、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ制御信号を出力し、データ線駆動
回路550へ画像信号Videoを出力する。データ線駆動回路550は、第kフレーム
期間においてデータ線551に出力されたデータ信号(Vdata)に対して極性が反転
したデータ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。よって、画像データに動き
が検出されない期間である第m+1フレーム期間、及び第2m+1フレーム期間に、極性
が反転されたデータ信号(Vdata)がデータ線551に書き込まれる。画像データに
変化が無い期間は、表示部530の書換えが間欠的に行われるため、書換えによる電力消
費を削減しつつ、液晶素子の劣化を防止することができる。
【0342】
そして、動き検出部511において、第2m+1フレーム以降の画像データに動きがあ
ると判定すると、制御回路510は、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550
を制御し、表示部530の書換えを行う。
【0343】
以上述べたように、
図34の駆動方法によると、画像データ(Video)の動きの有
無に関わらず、データ信号(Vdata)は、mフレーム期間毎に極性が反転される。他
方、表示部530の書換えについては、動きを含む画像の表示期間は、1フレーム毎に表
示部530が書き換えられ、動きがない画像の表示期間は、mフレーム毎に表示部530
が書き換えられることになる。その結果、表示部の書換えに伴う電力消費を削減すること
ができる。よって、駆動周波数及び画素数の増加による電力消費の増加の抑えることがで
きる。
【0344】
上述したように、液晶表示装置500では、動画を表示するモードと、静止画を表示す
るモードで、液晶表示装置の駆動方法を異ならせることで、液晶の劣化を抑制して表示品
位を維持しつつ、省電力な液晶表示装置を提供することが可能になる。
【0345】
また、静止画を表示する場合、1フレーム毎に画素を書換えると、人の目は画素の書換
えをちらつきとして感じることがあり、それが疲れ目の原因となる。本実施の形態の液晶
表示装置は、静止画の表示期間では画素の書換え頻度が少ないので、疲れ目の軽減に有効
である。
【0346】
従って、酸化物半導体トランジスタでバックプレーンを形成した液晶パネルを用いるこ
とで、携帯用電子機器に非常に適した、高精細、低消費電力の中小型液晶表示装置を提供
することが可能である。
【0347】
なお、液晶の劣化を防ぐため、データ信号の極性反転の間隔(ここでは、mフレーム期
間)は2秒以下とし、好ましくは1秒以下とするとよい。
【0348】
また、画像データの動き検出を制御回路510の動き検出部511で行ったが、動き検
出は動き検出部511のみで行う必要は無い。動きの有無のデータを液晶表示装置500
の外部から制御回路510へ入力するようにしてもよい。
【0349】
また、画像データに動きが無いと判定する条件は連続する2つのフレーム間の画像デー
タによるものではなく、判定に必要なフレーム数は、液晶表示装置500の使用形態によ
り、適宜決定することができる。例えば、連続するmフレームの画像データに動きが無い
場合に、表示部530の書換えを停止させてもよい。
【0350】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0351】
(実施の形態8)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む。)に適用す
ることができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信
機ともいう。)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ
、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置
、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機
器の一例を
図15に示す。
【0352】
図15(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は
、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示
することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を
示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0353】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能で
ある。それゆえ、表示部9003の表示品位を高くすることができる。
【0354】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003
に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力する
ことができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画
面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、イメージ
センサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせる
ことができる。
【0355】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して
垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、
大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブル
に表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0356】
図15(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100
は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表
示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持し
た構成を示している。
【0357】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キ
ー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作
機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0358】
図15(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。
テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、
さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方
向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の
情報通信を行うことも可能である。
【0359】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いるこ
とが可能である。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができる。
【0360】
図15(C)はコンピュータ9200であり、本体9201、筐体9202、表示部9
203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス920
6などを含む。
【0361】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能で
ある。それゆえ、コンピュータ9200の表示品位を向上させることができる。
【0362】
表示部9203は、タッチ入力機能を有しており、コンピュータ9200の表示部92
03に表示された表示ボタンを指などで触れることで、画面操作や、情報を入力すること
ができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画面操
作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。
【0363】
図16(A)及び
図16(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図16(A
)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示
部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モ
ード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0364】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631b
に用いることが可能である。それゆえ、タブレット端末の表示品位を向上させることがで
きる。
【0365】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部96
31aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領
域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部96
31aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9
631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表
示画面として用いることができる。
【0366】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0367】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0368】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光
の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セン
サだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を
内蔵させてもよい。
【0369】
また、
図16(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0370】
図16(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、充放電制御回路9634を有する。なお、
図16(B)では充放電制御回路96
34の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成につい
て示している。
【0371】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0372】
また、この他にも
図16(A)及び
図16(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻な
どを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有する
ことができる。
【0373】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、
筐体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に
行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウ
ムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0374】
また、
図16(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図16(
C)にブロック図を示し説明する。
図16(C)には、太陽電池9633、バッテリー9
635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3
、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ963
6、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図16(B)に示す充放電制御
回路9634に対応する箇所となる。
【0375】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明す
る。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようD
CDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に
太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ
9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部
9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオン
にしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0376】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず
、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による
バッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を
送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う
構成としてもよい。
【0377】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【実施例1】
【0378】
本実施例では、トランジスタのVg-Id特性、及び光BTストレス試験の測定結果に
ついて説明する。
【0379】
はじめに、試料1に含まれるトランジスタの作製工程について説明する。本実施例では
図3を参照して説明する。
【0380】
まず、
図3(A)に示すように、基板11としてガラス基板を用い、基板11上にゲー
ト電極15を形成した。
【0381】
スパッタリング法で厚さ100nmのタングステン膜を形成し、フォトリソグラフィ工
程により該タングステン膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該タングステン膜の一
部をエッチングし、ゲート電極15を形成した。
【0382】
次に、ゲート電極15上にゲート絶縁膜17を形成した。
【0383】
ゲート絶縁膜として、厚さ50nmの第1の窒化シリコン膜、厚さ300nmの第2の
窒化シリコン膜、厚さ50nmの第3の窒化シリコン膜、及び厚さ50nmの酸化窒化シ
リコン膜を積層して形成した。
【0384】
第1の窒化シリコン膜は、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素
、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に
供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて
2000Wの電力を供給して形成した。
【0385】
次に、第1の窒化シリコン膜の原料ガスの条件において、アンモニアの流量を2000
sccmに変更して、第2の窒化シリコン膜を形成した。
【0386】
次に、流量200sccmのシラン及び流量5000sccmの窒素を原料ガスとして
プラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.1
2MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、第3の窒化シリコン膜を形
成した。
【0387】
次に、流量20sccmのシラン、流量3000sccmの一酸化二窒素を原料ガスと
してプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を40Paに制御し、27.
12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、酸化窒化シリコン膜を形成
した。
【0388】
なお、第1の窒化シリコン膜乃至第3の窒化シリコン膜及び酸化窒化シリコン膜の成膜
工程において、基板温度を350℃とした。
【0389】
次に、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極15に重なる多層膜20を形成した。
【0390】
ここでは、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜18として厚さ35nmの第1のIn
-Ga-Zn酸化物膜をスパッタリング法で形成した後、酸化物半導体膜18上にIn若
しくはGaを含む酸化物膜19として厚さ20nmの第2のIn-Ga-Zn酸化物膜を
形成した。次に、フォトリソグラフィ工程によりIn若しくはGaを含む酸化物膜19上
にマスクを形成し、該マスクを用いて酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸
化物膜19の一部をエッチングした。その後、エッチングされた酸化物半導体膜18及び
In若しくはGaを含む酸化物膜19に加熱処理を行い、多層膜20を形成した。
【0391】
第1のIn-Ga-Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=
1:1:1(原子数比)のターゲットとし、流量50sccmのアルゴン及び流量50s
ccmの酸素スパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室
内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第1のI
n-Ga-Zn酸化物膜を形成する際の基板温度を170℃とした。
【0392】
第2のIn-Ga-Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=
1:3:2(原子数比)のターゲットとし、スパッタリングガスとして流量90sccm
のArと流量10sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の
圧力を0.3Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、第2のIn-
Ga-Zn酸化物膜を形成する際の基板温度を25℃とした。
【0393】
加熱処理は、窒素雰囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った後、窒素及び酸素雰
囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った。
【0394】
ここまでの工程で得られた構成は
図3(B)を参照できる。
【0395】
次に、ゲート絶縁膜17の一部をエッチングしてゲート電極を露出した後(図示しない
。)、
図3(C)に示すように、多層膜20に接する一対の電極21、22を形成した。
【0396】
ここでは、ゲート絶縁膜17及び多層膜20上に導電膜を形成した。該導電膜として、
厚さ50nmのタングステン膜上に厚さ400nmのアルミニウム膜を形成し、該アルミ
ニウム膜上に厚さ100nmのチタン膜を形成した。次に、フォトリソグラフィ工程によ
り該導電膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該導電膜の一部をエッチングし、一対
の電極21、22を形成した。
【0397】
次に、減圧された処理室に基板を移動し、220℃で加熱した後、一酸化二窒素が充填
された処理室に基板を移動させた。次に、処理室に設けられる上部電極に27.12MH
zの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を供給して、一酸化二窒素の分解により発
生した酸素プラズマに多層膜20を曝した。
【0398】
次に、多層膜20及び一対の電極21,22上に保護膜26を形成した(
図3(D)参
照)。ここでは、保護膜26として、酸化物絶縁膜24及び窒化物絶縁膜25を形成した
。
【0399】
まず、上記プラズマ処理の後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜24を形成
した。酸化物絶縁膜24として厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。
【0400】
酸化物絶縁膜24は、流量160sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸化
二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、1500
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。当該条件に
より、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱
離する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0401】
次に、加熱処理を行い、酸化物絶縁膜24から水、窒素、水素等を脱離させた。ここで
は、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行った。
【0402】
次に、減圧された処理室に基板を移動し、350℃で加熱した後、酸化物絶縁膜24上
に窒化物絶縁膜25を形成した。ここでは、窒化物絶縁膜25として、厚さ100nmの
窒化シリコン膜を形成した。
【0403】
窒化物絶縁膜25は、流量50sccmのシラン、流量5000sccmの窒素、及び
流量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を100Pa、基板温度
を350℃とし、1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法に
より形成した。
【0404】
次に、図示しないが、酸化物絶縁膜24及び窒化物絶縁膜25の一部をエッチングして
、一対の電極21、22の一部を露出する開口部を形成した。
【0405】
次に、窒化物絶縁膜25上に平坦化膜を形成した(図示しない)。ここでは、組成物を
窒化物絶縁膜25上に塗布した後、露光及び現像を行って、一対の電極の一部を露出する
開口部を有する平坦化膜を形成した。なお、平坦化膜として厚さ1.5μmのアクリル樹
脂を形成した。こののち、加熱処理を行った。当該加熱処理は、温度を250℃とし、窒
素を含む雰囲気で1時間行った。
【0406】
次に、一対の電極の一部に接続する導電膜を形成した(図示しない)。ここでは、スパ
ッタリング法により厚さ100nmの酸化シリコンを含むITOを形成した。この後、窒
素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0407】
以上の工程により、トランジスタを有する試料1を作製した。
【0408】
また、試料1のトランジスタにおいて、In若しくはGaを含む酸化物膜19を形成し
ないトランジスタを有する試料を試料2として作製した。なお、一対の電極21、22を
形成した後、85%のリン酸を100倍に希釈したリン酸水溶液で酸化物半導体膜18の
表面に洗浄処理を行った。
【0409】
次に、試料1及び試料2に含まれるトランジスタの初期特性としてVg-Id特性を測
定した。ここでは、基板温度を25℃とし、ソース-ドレイン間の電位差(以下、ドレイ
ン電圧という。)を1V、または10Vとし、ソース-ゲート電極間の電位差(以下、ゲ
ート電圧という。)を-20V~+15Vまで変化させたときのソース-ドレイン間に流
れる電流(以下、ドレイン電流という。)の変化特性、すなわちVg-Id特性を測定し
た。
【0410】
図17(A)及び
図17(B)にそれぞれの試料に含まれるトランジスタのVg-Id
特性を示す。
図17において、横軸はゲート電圧Vg、縦軸はドレイン電流Idを表す。
また、実線はそれぞれ、ドレイン電圧Vdが1V、10VのときのVg-Id特性であり
、破線はドレイン電圧Vdを10Vとしたときのゲート電圧に対する電界効果移動度を表
す。なお、当該電界効果移動度は各試料の飽和領域における結果である。
【0411】
なお、各トランジスタは、チャネル長(L)が6μm、チャネル幅(W)が50μmで
ある。また、各試料において、基板内に同じ構造のトランジスタを20個作製した。
【0412】
図17(B)より、試料2に含まれるトランジスタのVg-Id特性において、ドレイ
ン電圧Vdが1Vでのオン電流が流れ始めるゲート電圧(立ち上がりゲート電圧ともいう
(Vg)。)と、10Vのオン電流の立ち上がりゲート電圧が異なっている。また、試料
2に含まれる各トランジスタ間のVg-Id特性のばらつきも大きい。一方、
図17(A
)より、試料1に含まれるトランジスタのVg-Id特性は、ドレイン電圧Vdが1V、
10Vのオン電流の立ち上がりゲート電圧(Vg)が略同一である。そして、試料1に含
まれる各トランジスタ間のVg-Id特性のばらつきが小さい。このことから、酸化物半
導体膜18と酸化物絶縁膜24とが直接接しない構造とすること、具体的には、酸化物半
導体膜18及び酸化物絶縁膜24の間にIn若しくはGaを含む酸化物膜19を設けるこ
とで、トランジスタの初期特性が向上することがわかる。
【0413】
次に、試料1及び試料2のBTストレス試験及び光BTストレス試験を行った。ここで
は、BTストレス試験として、基板温度を80℃、ゲート絶縁膜に印加する電界強度を0
.66MV/cm、印加時間を2000秒とし、ゲート電極に所定の電圧を印加するBT
ストレス試験を行った。なお、BTストレス試験は露点温度が12℃の大気雰囲気で行っ
た。
【0414】
また、上記BTストレス試験と同様の条件を用い、3000lxの白色LED光をトラ
ンジスタに照射しながらゲート電極に所定の電圧を印加する光BTストレス試験を行った
。なお、光BTストレス試験は露点温度が-30℃の乾燥空気雰囲気で行った。
【0415】
ここで、BTストレス試験の測定方法について説明する。はじめに、上記のようにトラ
ンジスタのVg-Id特性の初期特性を測定した。
【0416】
次に、基板温度を80℃まで上昇させた後、トランジスタのソース及びドレインの電位
を0Vとした。続いて、ゲート絶縁膜へ印加される電界強度が0.66MV/cmとなる
ようにゲート電極に電圧を印加し、2000秒保持した。
【0417】
なお、マイナスBTストレス試験(Dark -GBT)では、ゲート電極に-30V
を印加した。また、プラスBTストレス試験(Dark +GBT)では、ゲート電極に
30Vを印加した。また、光マイナスBTストレス試験(Photo -GBT)では、
3000lxの白色LED光を照射しつつ、ゲート電極に-30Vを印加した。また、光
プラスBTストレス試験(Photo +GBT)では、3000lxの白色LED光を
照射しつつ、ゲート電極に30Vを印加した。
【0418】
次に、ゲート電極、ソース及びドレインに電圧を印加したまま、基板温度を25℃まで
下げた。基板温度が25℃になった後、ゲート電極、ソース及びドレインへの電圧の印加
を終了させた。
【0419】
また、試料1及び試料2に含まれるトランジスタの初期特性のしきい値電圧とBTスト
レス試験後のしきい値電圧の差(即ち、しきい値電圧の変動量(ΔVth))を
図18に
示す。
図18において、プラスBTストレス試験(Dark +GBT)、マイナスBT
ストレス試験(Dark -GBT)、光プラスBTストレス試験(Photo +GB
T)、光マイナスBTストレス試験(Photo -GBT)それぞれのしきい値電圧の
変動量ΔVthを示す。
【0420】
なお、本明細書において、しきい値電圧(Vth)は、ゲート電圧(Vg[V])を横
軸、ドレイン電流の平方根(Id1/2[A])を縦軸としてプロットした曲線(図示せ
ず)において、最大傾きであるId1/2の接線を外挿したときの、接線とVg軸との交
点のゲート電圧で定義する。
【0421】
また、
図18より、試料1に含まれるトランジスタのしきい値電圧の変動量の絶対値は
、試料2に含まれるトランジスタのしきい値電圧の変動量(ΔVth)の絶対値に比べて
減少していることがわかる。特に、プラスBTストレス試験(Dark +GBT)によ
るしきい値電圧の変動量(ΔVth)は顕著に減少している。このことから、酸化物半導
体膜18と酸化物絶縁膜24の間に、In若しくはGaを含む酸化物膜19を設けること
で、トランジスタの信頼性が向上することがわかる。
【0422】
以上より、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜24の間に、In若しくはGaを含む酸
化物膜19を設けることで、トランジスタの電気特性を向上させることができる。具体的
には、初期特性を向上させつつ、信頼性も向上させることができる。また、In若しくは
Gaを含む酸化物膜19は、チャネル領域である酸化物半導体膜18に酸化物絶縁膜24
に含まれる元素(例えば、窒素など)が混入することを抑制すると言うことができる。又
は、In若しくはGaを含む酸化物膜19は、電力密度が高いプラズマCVD法で酸化物
絶縁膜24を形成する際にチャネル領域である酸化物半導体膜18がプラズマダメージを
受けることを抑制すると言うことができる。
【実施例2】
【0423】
本実施例では、実施例1の試料1及び試料2に含まれるトランジスタの酸化物半導体膜
18に含まれる酸素欠損の量について説明する。本実施例では、実施例1の試料1及び試
料2に含まれるトランジスタの積層構造と同じ構造の試料を作製し、酸化物半導体膜18
に含まれる酸素欠損の量を評価するためにESR(電子スピン共鳴)法分析を行った。
【0424】
まず、測定した試料について説明する。試料3は、石英上に酸化物半導体膜18を35
nm形成し、酸化物半導体膜18上にIn若しくはGaを含む酸化物膜19を20nm形
成し、In若しくはGaを含む酸化物膜19上に酸化物絶縁膜24を400nm形成した
。
【0425】
試料3の酸化物半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19、並びに酸化物
絶縁膜24は、実施例1の試料1と同様の条件で形成した。
【0426】
試料4は、酸化物半導体膜18を35nm形成し、酸化物半導体膜18上に酸化物絶縁
膜24を400nm形成した。
【0427】
試料4の酸化物半導体膜18及び酸化物絶縁膜24は、実施例1の試料2と同様の条件
で形成した。
【0428】
次に、試料3及び試料4についてESR法分析を行った。ESR測定は、所定の温度で
、マイクロ波の吸収の起こる磁場の値(H0)から、式g=hν/βH0を用いてg値と
いうパラメータが得られる。なお、νはマイクロ波の周波数である。hはプランク定数で
あり、βはボーア磁子であり、どちらも定数である。ESR法分析において、マイクロ波
電力(9.06GHz)は20mW、磁場の向きは試料3及び試料4の膜表面と平行とし
、測定温度を室温とした。
【0429】
図19にESR分析結果を示す。
図19について、横軸は試料名を示し、縦軸は酸化物
半導体膜18及びIn若しくはGaを含む酸化物膜19に含まれる酸素欠損密度に由来す
るg値=1.93のスピン密度を示している。
【0430】
図19より、試料3及び試料4を比較すると、試料3のほうがスピン密度は小さい。つ
まり、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜24との間にIn若しくはGaを含む酸化物膜
19を設けることで、酸化物絶縁膜24を形成する際のプラズマダメージによって酸素欠
損が酸化物半導体膜18に生成されることを抑制できるといえる。
【0431】
また、図示していないが、試料3においてIn若しくはGaを含む酸化物膜19を50
nm設けることで、上記スピン密度は検出下限以下となった。本実施例において、スピン
密度の検出下限は1.0e+17spins/cm3である。従って、酸素欠損を低減す
るという観点からIn若しくはGaを含む酸化物膜19を50nm設けることで酸化物絶
縁膜24を形成する際のプラズマダメージを大きく低減できる。
【0432】
以上より、In若しくはGaを含む酸化物膜19を設けることで、電力密度が高いプラ
ズマCVD法で酸化物絶縁膜24を形成する場合でも電気特性の良好なトランジスタ、及
び該トランジスタを有する半導体装置を作製することができる。
【実施例3】
【0433】
本実施例では、本発明の一態様であるトランジスタに含まれる多層膜の局在準位につい
て説明する。ここでは、当該多層膜をCPM測定で評価した結果について説明する。
【0434】
まず、CPM測定した試料について説明する。
【0435】
ガラス基板上に厚さ30nmのIn若しくはGaを含む第1の酸化物膜を形成し、第1
のIn若しくはGaを含む酸化物膜上に厚さ100nmの酸化物半導体膜を形成し、酸化
物半導体膜上に厚さ30nmのIn若しくはGaを含む第2の酸化物膜を形成することで
多層膜を形成した。
【0436】
本実施例において、In若しくはGaを含む第1の酸化物膜、及びIn若しくはGaを
含む第2の酸化物膜は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:3:2[原子
数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて成膜した酸化物膜である。な
お、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を
0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC電力を0.5kW印加することで形成し
た。
【0437】
また、酸化物半導体膜は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[
原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて成膜した酸化物半導体膜
である。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用
い、圧力を0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC電力を0.5kW印加するこ
とで形成した。
【0438】
以上のようにして作製した試料を試料5とする。
【0439】
次に、試料5についてCPM測定を行った。具体的には、試料5の多層膜に接して設け
た第1の電極及び第2の電極間に電圧を印加した状態で光電流値が一定となるように端子
間の試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲において照射光量から吸収係数を
導出した。
【0440】
図20に、分光光度計によって測定した吸収係数(太点線)と、CPM測定で導出した
吸収係数(太実線)とを、多層膜に含まれる各層のエネルギーギャップ以上のエネルギー
範囲において、フィッティングした結果を示す。なお、CPM測定によって得られた吸収
係数のカーブにおいて、アーバックテール(細点線)の傾きであるアーバックエネルギー
は78.7meVであった。
図20(A)の破線丸で囲んだエネルギー範囲においてCP
M測定で導出した吸収係数からアーバックテール(細点線)の吸収係数分を差し引き、当
該エネルギー範囲における吸収係数の積分値を導出した(
図20(B)参照。)。その結
果、本試料の吸収係数は、2.02×10
-4cm
-1であることがわかった。
【0441】
以上より、試料5の多層膜の局在準位は、不純物や欠陥に起因する準位と考察できる。
従って、多層膜は、不純物や欠陥に起因する準位密度が極めて低いことがわかった。即ち
、多層膜を用いたトランジスタは安定した電気特性を有することがわかる。
【実施例4】
【0442】
本実施例では、本発明の一態様であるトランジスタに含まれる多層膜のシリコン濃度に
ついて説明する。ここでは、当該多層膜をSIMS測定で評価した結果について説明する
。
【0443】
まず、SIMS測定した試料について説明する。
【0444】
シリコンウエハSi上に厚さ10nmのIn若しくはGaを含む酸化物膜81を形成し
、In若しくはGaを含む酸化物膜81上に厚さ10nmの酸化物半導体膜82を形成し
、酸化物半導体膜82上に厚さ10nmのIn若しくはGaを含む酸化物膜83を形成す
ることで多層膜を形成した。
【0445】
本実施例において、In若しくはGaを含む酸化物膜81は、In-Ga-Zn酸化物
(In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリ
ング法にて形成した酸化物膜である。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm
、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC
電力を0.5kW印加することで形成した。
【0446】
また、酸化物半導体膜82は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:
1[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて成膜した酸化物半導
体膜である。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15scc
m用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を300℃とし、DC電力を0.5kW印加す
ることで形成した。
【0447】
また、In若しくはGaを含む酸化物膜83は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga
:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて形
成した酸化物膜である。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを
15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC電力を0.5
kW印加することで形成した。
【0448】
多層膜を形成した後、加熱処理を行わない試料と、450℃にて2時間の加熱処理を行
った試料を準備した。加熱処理を行わない試料を試料6とし、加熱処理を行った試料を試
料7とした。
【0449】
試料6及び試料7について、飛行時間二次イオン質量分析(ToF-SIMS:Tim
e-of-flight secondary ion mass spectrome
try)を行い、深さ方向のSi濃度[atoms/cm
3]を測定した。
図21(A)
に、試料6における多層膜の深さ方向のSiO
3の二次イオン強度から換算したSi濃度
[atoms/cm
3]を示し、
図21(B)に試料7における多層膜の深さ方向のSi
O
3の二次イオン強度から換算したSi濃度[atoms/cm
3]を示す。
【0450】
図21(A)及び
図21(B)より、シリコンウエハとIn若しくはGaを含む酸化物
膜81との界面、及びIn若しくはGaを含む酸化物膜83の上面において、Si濃度が
高くなることがわかった。また、酸化物半導体膜82のSi濃度がToF-SIMSの検
出下限である1×10
18atoms/cm
3程度であることがわかった。これは、In
若しくはGaを含む酸化物膜81及びIn若しくはGaを含む酸化物膜83が設けられる
ことにより、シリコンウエハや表面汚染などに起因したシリコンが酸化物半導体膜82に
まで影響することがなくなるためであると考察できる。
【0451】
また、
図21(A)及び
図21(B)に示す結果より、加熱処理によってシリコンの拡
散は起こりにくく、成膜時の混合が主であることがわかる。
【0452】
以上より、本実施例に示すような多層膜を用いることで、安定した電気特性を有するト
ランジスタを作製することができる。
【0453】
(参考例1)
ここでは、上記実施例で説明したトランジスタの酸化物絶縁膜24として、化学量論的
組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化窒化シ
リコン膜について説明する。
【0454】
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離す
ることを評価するために、TDS測定を行って酸素の脱ガス量を測定した。
【0455】
まず、測定をしたサンプル構造について説明する。参考試料1は、シリコンウエハ上に
以下の条件で厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。当該条件は、流量160
sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧
力を200Pa、基板温度を220℃とし、1500Wの高周波電力を平行平板電極に供
給したプラズマCVD法により形成した。
【0456】
参考試料2は、シリコンウエハ上に以下の条件で厚さ400nmの酸化窒化シリコンを
成膜した参考試料である。当該条件は、参考試料1の条件において、シランを流量200
sccmに変更した条件であり、その他の条件は参考試料1と同じである。
【0457】
参考試料1及び参考試料2のTDS測定の結果を
図22(A)及び
図22(B)に示す
。
図22(A)及び
図22(B)において、参考試料1及び参考試料2ともに、酸素の質
量数に相当するM/z=32のピークが観察された。従って、参考試料1及び参考試料2
の酸化窒化シリコン膜は、加熱によって膜中に含まれている酸素の一部が脱離するといえ
る。
【0458】
なお、加熱されることで脱離する酸素の量は、酸素分子に換算した値(単位面積あたり
)を用いて評価できる。参考試料1は3.2×1014分子/cm2であった。参考試料
2は1.9×1014分子/cm2であった。なお、参考試料1の脱離する酸素の量を酸
素原子に換算した値(単位体積あたり)は1.6×1019原子/cm3であり、参考試
料2の脱離する酸素の量を酸素原子に換算した値(単位体積あたり)は9.5×1018
原子/cm3であった。
【0459】
以上より、参考試料1及び参考試料2の条件で形成した酸化窒化シリコン膜を酸化物半
導体膜と重畳する領域に設けた後、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜中の酸素欠損
を修復することができ、電気特性が良好なトランジスタを作製できる。
【0460】
(参考例2)
参考例1の参考試料1及び参考試料2で用いた酸化物絶縁膜の欠陥密度について説明す
る。ここでは、当該酸化物絶縁膜の欠陥量について、ESR(電子スピン共鳴)法分析結
果を用いて説明する。
【0461】
まず、評価した試料の構造について説明する。
【0462】
参考試料3及び参考試料4は、石英基板上に形成された厚さ100nmの酸化物半導体
膜と、酸化物半導体膜上に形成された厚さ400nmの酸化物絶縁膜とを有する。
【0463】
参考試料3及び参考試料4の酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:G
a:Zn=1:1:1(原子数比)のターゲットとし、流量50sccmのアルゴン及び
流量50sccmの酸素スパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給
し、処理室内の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお
、酸化物半導体膜を形成する際の基板温度を170℃とした。
【0464】
次に、窒素雰囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った後、窒素及び酸素雰囲気で
、450℃、1時間の加熱処理を行った。
【0465】
次に、酸化物半導体膜上に酸化物絶縁膜を形成した。当該酸化物絶縁膜を、参考試料1
の酸化窒化シリコン膜と同様の条件を用いて形成した試料を、参考試料3とする。
【0466】
酸化物半導体膜上に形成された酸化物絶縁膜を、参考試料2の酸化窒化シリコン膜と同
様の条件を用いて形成した試料を、参考試料4とする。
【0467】
次に、参考試料3及び参考試料4についてESR法分析を行った。ここでは、下記の条
件でESR法分析を行った。測定温度を-170℃とし、9.1GHzの高周波電力(マ
イクロ波パワー)を1mWとし、磁場の向きは作製した試料の膜表面と平行とした。
【0468】
シリコンのダングリングボンドに由来するg(g値)=2.001に現れる信号のスピ
ン密度を
図23に示す。
【0469】
スピン密度は、参考試料3と比較して参考試料4の方が低減しているとわかる。即ち、
酸化物絶縁膜の成膜条件において、シラン流量を200sccm、一酸化二窒素の流量を
4000sccmとすることで、欠陥の少ない酸化窒化シリコン膜、代表的には、ESR
法分析により、g=2.001に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/c
m3未満、好ましくは3×1017spins/cm3以下、好ましくは1.5×101
7spins/cm3以下の酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0470】
以上より、上記条件によって酸化物絶縁膜を形成することでシランの流量を多くするこ
とによって、形成した酸化物絶縁膜中の欠陥密度を低減することができる。
【0471】
(参考例3)
ここでは、酸化物半導体膜のエネルギーギャップ内に生成される欠陥準位の定量化につ
いて説明する。本参考例では、高輝度硬X線を用いた光電子分光法であるHAXPES(
Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy)によ
る測定結果について説明する。
【0472】
HAXPES測定を行った試料について説明する。
【0473】
シリコンウエハ上に厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、当該酸化窒化シリ
コン膜上に厚さ100nmの酸化物半導体膜を形成し、当該酸化物半導体膜上に厚さ5n
mの酸化シリコン膜を形成した試料(試料8)を作製した。
【0474】
試料8において、酸化窒化シリコン膜は、流量1sccmのシラン及び流量800sc
cmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を40Pa、基板温度を400℃とし
、150Wの高周波電力(60MHz)を平行平板電極に供給したプラズマCVD法によ
り形成した。
【0475】
試料8において、酸化物半導体膜は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1
:1:1[原子数比])であるターゲットを用いて、成膜ガスとしてアルゴンガスを30
sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を300℃と
し、DC電力を0.5kW印加する、スパッタリング法で形成した。
【0476】
試料8において、酸化シリコン膜は、シリコンを含むターゲットを用いて、成膜ガスと
して酸素ガスを50sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を100℃とし、D
C電力を1.5kW印加する、スパッタリング法で形成した。なお、当該酸化シリコン膜
は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離
する酸化シリコン膜である。
【0477】
また、シリコンウエハ上に厚さ100nmの酸化物半導体膜を形成した試料(試料9)
を作製した。また、シリコンウエハ上に厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、
当該酸化窒化シリコン膜上に厚さ100nmの酸化物半導体膜を形成した試料(試料10
)を作製した。
【0478】
試料9及び試料10において、酸化物半導体膜及び酸化窒化シリコン膜は、試料8と同
様の方法で作製した。また、試料8乃至試料10において、各試料とも酸化物半導体膜を
形成した後に、窒素及び酸素雰囲気下で450℃の加熱処理を行った。また、試料8につ
いては、さらに酸化シリコン膜を形成した後に酸素雰囲気下で300℃の加熱処理を行っ
た。
【0479】
次に、試料8乃至試料10においてHAXPES測定を行った。HAXPES測定は、
励起X線として硬X線(6~8keV程度)を用いた光電子分光法である。
【0480】
図35に、各試料についてのHAXPES測定によって得られた価電子帯スペクトルを
示す。
図35において、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)を示し
、縦軸はスペクトル強度(Intensity)を示している。横軸の0eVの位置は酸
化物半導体膜の伝導帯とみなすことができ、横軸の値が3eV付近の位置は酸化物半導体
膜の価電子帯と見なすことができる。つまり、横軸の0eVの位置から3eV付近の位置
を酸化物半導体膜のエネルギーギャップとみなすことができる。
【0481】
また、価電子帯スペクトルの強度は、酸化物半導体膜のエネルギーギャップ内に生成さ
れる欠陥準位に起因する。例えば、欠陥準位が存在すると価電子帯スペクトルの強度は高
くなる。
【0482】
また、HAXPES測定の原理を踏まえると、HAXPES測定で検出される信号は、
試料の表面近くの欠陥を反映していると考えることができる。
図35の試料9及び試料1
0の結果から、酸化物半導体膜のエネルギーギャップ内に生成される欠陥準位は、酸化物
半導体膜の表面近傍に存在する欠陥に対応するものであると考察できる。
【0483】
図35の横軸0eV~3eVの範囲において、試料8のスペクトルは、試料9及び試料
10のスペクトルよりも強度が低いことが確認できた。従って、試料8のように、加熱に
より酸素の一部が脱離する酸化シリコン膜を酸化物半導体膜に接して設け、加熱処理をす
ることによって、酸化物半導体膜の表面近傍(酸化物半導体膜と酸化シリコン膜との界面
近傍)に存在する欠陥を修復できることが確認できた。そして、上記欠陥準位は酸化物半
導体膜に含まれる酸素欠損に対応するものであると考察できる。つまり、加熱により酸素
の一部が脱離する酸化シリコン膜を酸化物半導体膜に接して設け、加熱処理をすることに
よって、酸化物半導体膜の表面近傍の酸素欠損を修復できるといえる。
【0484】
ここでは、酸化物半導体膜上に設けた酸化シリコン膜をスパッタリング法で形成してい
るが、当該酸化シリコン膜は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加
熱により酸素の一部が脱離する酸化シリコン膜であれば、プラズマCVD法で形成した酸
化シリコン膜であっても酸化物半導体膜の表面近傍に存在する欠陥を修復できると考察で
きる。従って、実施の形態1など、本明細書に記載した方法で形成した酸化シリコン膜で
あれば、酸化物半導体膜の表面近傍に存在する欠陥を修復できると考察できる。
【0485】
(参考例4)
ここでは、酸化物半導体を用いたトランジスタのソース及びドレイン間のエネルギー障
壁について説明する。
【0486】
チャネル領域となる酸化物半導体膜として真性または実質的に真性の酸化物半導体膜を
用いた場合、当該酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、酸化物半導体膜のエネ
ルギーギャップの半分程度の障壁が、ソース電極及びドレイン電極である一対の電極と酸
化物半導体膜との間で形成されると考えられる。ところが、実際には、酸化物半導体膜を
用いたトランジスタは、Vg-Id特性において、ゲート電圧が0V付近からドレイン電
流が流れ始めるため、このような考えに問題があると示唆される。
【0487】
そこで、
図36(A)に示すように、ゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上の酸化
物半導体膜OSと、酸化物半導体膜OS上に設けられたソース電極S及びドレイン電極D
とを有する構造のトランジスタを仮定し、該トランジスタのチャネル長(L)を変更した
場合の一点鎖線H1-H2におけるバンド構造を計算により導出した。なお、
図36(A
)では、ソース電極S及びドレイン電極Dと接する酸化物半導体膜OSの領域にn型化さ
れた低抵抗領域nを設けている。つまり、当該酸化物半導体膜OSには低抵抗領域nと、
真性または実質的に真性な領域iとが含まれる。なお、当該計算において、酸化物半導体
膜OSは厚さ35nm、ゲート絶縁膜GIは厚さ400nmであるとして計算した。
【0488】
ポアソン方程式を解くことによりバンドの曲がり幅を見積もると、バンドの曲がり幅は
、デバイの遮蔽長λDで特徴付けられる長さであることがわかった。なお、デバイの遮蔽
長λDは下式で表すことができ、下式においてkBはボルツマン定数である。
【0489】
【0490】
上式において、酸化物半導体膜OSの真性キャリア密度niを6.6×10-9cm-
3とし、酸化物半導体膜OSの比誘電率εを15とし、温度を300Kとすると、デバイ
の遮蔽長λDは、5.7×1010μmと、非常に大きな値であることがわかった。従っ
て、チャネル長がデバイの遮蔽長λDの2倍である1.14×1011μmよりも大きけ
れば低抵抗領域nと、真性または実質的に真性な領域iとのエネルギー障壁は、酸化物半
導体膜OSのエネルギーギャップの半分となることがわかる。
【0491】
図37は、チャネル長が0.03μm、0.3μm、1μm、10μm、100μm及
び1×10
12μmのときのバンド構造の計算結果を示す。ただし、ソース電極及びドレ
イン電極の電位はGND(0V)に固定されている。なお、
図37中の、nは低抵抗領域
を示し、iは低抵抗領域に挟まれた真性または実質的に真性な領域を示し、一点鎖線は酸
化物半導体膜のフェルミエネルギーを示し、破線は酸化物半導体膜のmid gapを示
す。
【0492】
図37より、チャネル長が十分大きい1×10
12μmの場合、低抵抗領域と真性また
は実質的に真性な領域の電子エネルギーの差が、酸化物半導体膜のエネルギーギャップの
半分となることがわかった。ところが、チャネル長を小さくしていくと、徐々に低抵抗領
域と真性または実質的に真性な領域の電子エネルギーの差が小さくなり、チャネル長が1
μm以下ではほとんどエネルギー障壁がないことがわかった。なお、低抵抗領域の電子エ
ネルギーはソース電極及びドレイン電極である一対の電極によって固定される。
【0493】
上述したように、チャネル長が小さいとき、低抵抗領域と、真性または実質的に真性な
領域とのエネルギー障壁は十分小さくなることがわかる。
【0494】
ここで、チャネル長が小さいとき、低抵抗領域と、真性または実質的に真性な領域との
エネルギー障壁は十分小さくなる理由について考察する。
【0495】
酸化物半導体膜の模式図と、酸化物半導体膜におけるバンド構造について、
図38を用
いて説明する。
図38(A)に、真性または実質的に真性な領域601と、低抵抗領域6
02、603とを有する酸化物半導体膜600のチャネル長中央における伝導帯の下端E
c_0を示す。また、酸化物半導体膜600のチャネル長をL_0とする。
図38(A)
において、L_0>2λ
Dである。
【0496】
図38(B)は、
図38(A)よりもチャネル長の小さい酸化物半導体膜、及びそのバ
ンド構造を示す。
図38(B)に、真性または実質的に真性な領域611と、低抵抗領域
612、613とを有する酸化物半導体膜610のチャネル長中央における伝導帯の下端
Ec_1を示す。また、酸化物半導体膜610のチャネル長をL_1とする。
図38(B
)において、チャネル長L_1<L_0であり、L_1<2λ
Dである。
。
【0497】
図38(C)は、
図38(A)及び
図38(B)に示す酸化物半導体膜よりもチャネル
長の小さい酸化物半導体膜、及びそのバンド構造を示す。
図38(C)に、真性または実
質的に真性な領域621と、低抵抗領域622、623とを有する酸化物半導体膜620
のチャネル長中央における伝導帯の下端Ec_2を示す。また、酸化物半導体膜620の
チャネル長をL_2とする。チャネル長L_2<L_1であり、L_2<<2λ
Dである
。
【0498】
図38(A)において、フェルミ準位Efと伝導帯の下端Ec_0のエネルギー差をエ
ネルギー障壁ΔH_0と示し、
図38(B)において、フェルミ準位Efと伝導帯の下端
Ec_1のエネルギー差をエネルギー障壁ΔH_1と示し、
図38(C)において、フェ
ルミ準位Efと伝導帯の下端Ec_2のエネルギー差をエネルギー障壁ΔH_2と示す。
【0499】
酸化物半導体膜において、一対の電極と接する領域は低抵抗領域となる。このため、真
性または実質的に真性な領域と低抵抗領域との接合部が近づく程、伝導帯の下端のエネル
ギーが低下し、湾曲する。
図38(A)に示すように、チャネル長L_0が十分大きい場
合は、エネルギー障壁ΔH_0は、Eg(バンドギャップ)/2に相当する。
【0500】
一方、
図38(B)及び
図38(C)に示すように、チャネル長が小さくなると、伝導
帯の下端Ec_1、Ec_2の湾曲している部分が重なるため、エネルギー障壁ΔH_1
、ΔH_2が、Eg/2より低くなると考えられる。このように、チャネル長が小さくな
ることにより、真性または実質的に真性な領域における伝導帯の下端の低下が生じること
を、本明細書ではCBL効果(Conduction Band Lowering E
ffect)という。
【0501】
次に、
図36(A)に示した構造においてゲート絶縁膜GIの下にゲート電極GEを設
けた、ボトムゲート構造のトランジスタを仮定し、該トランジスタのチャネル長(L)を
変更した場合の一点鎖線H1-H2におけるバンド構造を計算により導出した。当該計算
に用いたトランジスタの構造を
図36(B)に示す。なお、当該計算において、酸化物半
導体膜OSは厚さ35nm、ゲート絶縁膜GIは厚さ400nmであるとして計算した。
【0502】
図39は、当該構造のトランジスタにおいて、チャネル長を1μm、10μm、50μ
m、100μm、1×10
5μm及び1×10
12μmのときのバンド構造の計算結果を
示す。ただし、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極の電位はGND(0V)に固
定されている。なお、
図39中の、nは低抵抗領域を示し、iは酸化物半導体膜において
、低抵抗領域に挟まれた真性または実質的に真性な領域を示し、一点鎖線は酸化物半導体
膜のフェルミエネルギーを示し、破線は酸化物半導体膜のmid gapを示す。
【0503】
図39に示したバンド構造は、
図36(A)に示した構造において行った計算と同様の
計算をして得られた結果である。しかし、
図36(B)の構造のようにゲート電極を設け
た場合、チャネル長(L)が1μmよりも大きい場合でも、低抵抗領域と、真性または実
質的に真性な領域とのエネルギー障壁は、チャネル長(L)に依存せず、おおよそ一定の
値となることがわかる。
【0504】
図40に、
図36(A)及び
図36(B)の各構造の、チャネル長(L長)に対するエ
ネルギー障壁の高さを示す。
【0505】
図40より、ゲート電極を設けていない
図36(A)の構造では、チャネル長が大きく
なるにつれて、エネルギー障壁の高さは単調に増加し、チャネル長が1×10
12μmの
ときには、酸化物半導体膜のエネルギーギャップの半分(1.6eV)となることがわか
る。一方、ゲート電極を設けた
図36(B)の構造では、チャネル長が1μmよりも大き
い場合でも、エネルギー障壁の高さはチャネル長に依存しないことがわかる。
【0506】
上記より、真性または実質的に真性の酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、CBL
効果によって、エネルギー障壁が酸化物半導体膜のエネルギーギャップの半分の値よりも
低くなることから、Vg-Id特性においてゲート電圧が0V付近からドレイン電流が流
れ始めると考察できる。また、ある程度のチャネル長(1μm)よりも大きいトランジス
タのエネルギー障壁は、チャネル長に依存せず一定の値となることから、真性または実質
的に真性の酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、Vg-Id特性においてゲート電圧
が0V付近からドレイン電流が流れ始めると考察できる。
【0507】
本発明の一態様のトランジスタに含まれる多層膜は、真性または実質的に真性の酸化物
半導体膜を有するため、当該多層膜を有するトランジスタは、Vg-Id特性においてゲ
ート電圧が0V付近からドレイン電流が流れ始めると考察できる。