IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図1
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図2
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図3
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図4
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図5
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図6
  • 特許-伝送路断線位置検出装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】伝送路断線位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022044874
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2017238212の分割
【原出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2022084786
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳大
(72)【発明者】
【氏名】金子 茂
(72)【発明者】
【氏名】小野 武宏
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128626(JP,A)
【文献】特開2019-106023(JP,A)
【文献】特開平02-028798(JP,A)
【文献】特開平07-044789(JP,A)
【文献】特開平01-297931(JP,A)
【文献】実開昭61-074185(JP,U)
【文献】特開平05-217088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機又は受信機に接続された中継器に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続する火災報知設備に使用されるブースターに設けられる伝送路断線位置検出装置であって、
前記受信機は、前記ループ伝送路が正常な場合には、前記ループ伝送路の始端から信号を送信し、前記ループ伝送路で断線障害が発生した場合には、前記ループ伝送路の始端及び終端から信号を送信し、
前記ブースターは、前記ループ伝送路の途中に挿入接続されると共に、始端又は終端の一方から入力された前記受信機からの信号を始端又は終端側の他方に出力し、
前記伝送路断線位置検出装置は、
設けられるブースターよりも始端側に位置するループ伝送路である始端側伝送路の線路電圧を検出する第1電圧検出部と、
設けられるブースターよりも終端側に位置し、前記第1電圧検出部が線路電圧を検出するループ伝送路と同じループ伝送路である終端側伝送路の線路電圧を検出する第2電圧検出部と、
を備え、
前記第1電圧検出部で所定の線路電圧が検出されず且つ前記第2電圧検出部で所定の線路電圧が検出された場合に、前記始端側伝送路に断線障害が発生したと判定することを特徴とする伝送路断線位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機からのループ伝送路に火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に使用される伝送路断線位置検出装置関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた火災報知設備にあっては、受信機から引き出された伝送路に、伝送機能を備えた火災感知器等の端末装置を接続し、火災検出時には、例えば火災感知器からの火災割込みに基づき、検索コマンドを発行して発報した火災感知器のアドレスを特定し、火災発生アドレスを表示すると共に、特定した火災感知器から火災データを収集して監視するようにしている。
【0003】
このように、火災を検出した火災感知器のアドレスが分かると、適切な避難誘導や消火活動が可能となり、特に規模の大きな設備の火災監視には不可欠な機能となっている。
【0004】
また、火災受信機から引き出された伝送路の断線障害に対する信頼性を確保するため、受信機に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備が知られている。
【0005】
図6は従来のループ伝送路を用いた火災報知設備の説明図であり、図6(A)に通常監視状態を示し、図6(B)に断線障害が発生した場合を示している。
【0006】
図6(A)に示すように、受信機10に設けられた伝送部22からは一対の信号線を用いた伝送路12が引き出され、伝送路12は受信機10から引き出された後に再び受信機10に戻るループ状に配置されている。以下、説明では、受信機10にループ状に接続された伝送路12を、ループ伝送路12という。
【0007】
ループ伝送路12の信号線間には伝送機能を備えた火災感知器18が接続されており、火災感知器18には固有の感知器アドレスが設定されており、伝送部22から線路電圧を変化させる下り信号を送信し、火災感知器18からは線路電流を変化させる上り信号を送信することで、火災を監視している。
【0008】
火災受信機10に引き込まれたループ伝送路12の終端には、断線監視制御部28が設けられ、伝送部22からループ伝送路12に供給している線路電圧に基づきループ伝送路12の断線障害を監視している。また、ループ伝送路12の終端には、終端の信号線を伝送部22に切替え接続する切替回路部30a,30bが設けられており、通常監視状態で切替回路部30a,30bは伝送部22に対し切り離し状態としている。
【0009】
図6(B)に示すように、運用中に、ループ伝送路12の途中で断線31aが発生したとすると、断線監視制御部28はループ伝送路12の終端の線路電圧が断たれたことにより断線障害を検出して切替回路部30a,30bを作動し、ループ伝送路12の終端側を伝送部22に接続する。
【0010】
このため伝送部22からの信号は、切替回路部30a,30bを介してループ伝送路12の終端側から断線31aの発生箇所に向けて伝送され、断線31aの発生場所とループ伝送路12の終端の間に接続されている火災感知器18との間での信号の送受信が可能となり、断線障害が発生しても、ループ伝送路12に接続された火災感知器18による火災監視機能が失われることはなく、高い信頼性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2008-004033号公報
【文献】特開2010-114632号公報
【文献】特開平1-297931号公報
【文献】実願昭59-156218号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、受信機からのループ伝送路に接続した火災感知器により火災を監視する場合、警戒区域に引き出しされた伝送路を再び受信機に戻すことから、受信機から警戒区域に向けて引き出している通常の伝送路に比べてループ伝送路は略2倍の長さとなり、ループ伝送路の終端側での線路抵抗も増加する。例えば、伝送部と火災感知器で下り信号と上り信号の受信可能な伝送路抵抗が30オームであったとすると、ループ伝送路では終端が60オームとなり、30オームを超える伝送路範囲に接続している火災感知器との送受信ができなくなる。このためループ伝送路の途中にブースターを設けることが考えられる。
【0013】
図7は、従来のループ伝送路にブースターが設けられた火災報知設備を示した説明図であり、図7(A)に通常監視状態を示し、図7(B)に断線障害が発生した場合を示している。
【0014】
図7(A)に示すように、ブースター100は例えばループ伝送路12の半分となる折り返し位置等に挿入接続される。ここで、受信機10から引き出されたループ伝送路14の始端とブースター100との間を始端側伝送路12aといい、ブースター100と受信機10に戻したループ伝送路12の終端との間を終端側伝送路12bという。
【0015】
ブースター100は始端側伝送路12aから入力した下り信号を電圧ブースト回路部102で増幅して終端側伝送路12bに出力し、また、終端側伝送路12bから入力した上り信号を電流ブースト回路部104により増幅して始端側伝送路12aに出力しており、ループ伝送路12の線路長が増加しても、ループ伝送路12の終端側に接続した火災感知器18との間の信号レベルの低下を抑止して伝送部22と信号送受信を確実に行うことができる。
【0016】
しかしながら、ループ伝送路12にブースター100を設けても、図7(B)に示すように、例えば、ループ伝送路12の始点側伝送路12aで断線31bが発生して断線監視制御部28による切替え回路部30a,30bの作動でループ伝送路12の終端側が伝送部22に接続された場合、ブースター100は電圧ブースト回路部102と電流ブースト回路部104により下り信号と上り信号をそれぞれ一方向にのみ増幅するため、切替え回路部30a,30bを介してループ伝送路12の終端側から伝送された下り信号はブースター100を通過することができず、また、ブースター100と断線31bの発生点の間の火災感知器18からの上り信号もブースター100を通過することができず、ブースター100から断線31bの発生点までの間に接続されている火災感知器18による火災監視機能が失われてしまう問題がある。
【0017】
本発明は、受信機又は受信機に接続された中継器に対しループ状に接続されたループ伝送路で断線障害が発生しても全ての火災感知器による火災監視を可能とする火災報知設備に使用される伝送路断線位置検出装置提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(伝送路断線位置検出装置)
本発明は、受信機又は受信機に接続された中継器に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続する火災報知設備に使用されるブースターに設けられる伝送路断線位置検出装置であって、
受信機は、ループ伝送路が正常な場合には、ループ伝送路の始端から信号を送信し、ループ伝送路で断線障害が発生した場合には、ループ伝送路の始端及び終端から信号を送信し、
ブースターは、ループ伝送路の途中に挿入接続されると共に、始端又は終端の一方から入力された受信機からの信号を始端又は終端側の他方に出力し、
伝送路断線位置検出装置は、
設けられるブースターよりも始端側に位置するループ伝送路である始端側伝送路の線路電圧を検出する第1電圧検出部と、
設けられるブースターよりも終端側に位置し、第1電圧検出部が線路電圧を検出するループ伝送路と同じループ伝送路である終端側伝送路の線路電圧を検出する第2電圧検出部と、
を備え、
第1電圧検出部で所定の線路電圧が検出されず且つ第2電圧検出部で所定の線路電圧が検出された場合に、始端側伝送路に断線障害が発生したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
(伝送路断線位置検出装置の効果)
本発明は、受信機又は受信機に接続された中継器に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続する火災報知設備に使用されるブースターに設けられる伝送路断線位置検出装置であって、受信機は、ループ伝送路が正常な場合には、ループ伝送路の始端から信号を送信し、ループ伝送路で断線障害が発生した場合には、ループ伝送路の始端及び終端から信号を送信し、ブースターは、ループ伝送路の途中に挿入接続されると共に、始端又は終端の一方から入力された受信機からの信号を始端又は終端側の他方に出力し、伝送路断線位置検出装置は、設けられるブースターよりも始端側に位置するループ伝送路である始端側伝送路の線路電圧を検出する第1電圧検出部と、設けられるブースターよりも終端側に位置し、第1電圧検出部が線路電圧を検出するループ伝送路と同じループ伝送路である終端側伝送路の線路電圧を検出する第2電圧検出部と、を備え、第1電圧検出部で所定の線路電圧が検出されず且つ第2電圧検出部で所定の線路電圧が検出された場合に、始端側伝送路に断線障害が発生したと判定するようにしたため、始端側伝送路及び終端側伝送路の線路電圧から始端側伝送路で断線が発生した否かを判定することができ、断線発生箇所に合わせて、全ての火災感知器による火災監視を継続することができるように火災報知設備を制御することを可能とし、高い信頼性の火災報知設備を確保することができる。
【0022】
(動作試験に基づき増幅方向の切り替えを行うブースターの効果)
本発明は、受信機又は受信機に接続された中継器に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続する火災報知設備に使用されるブースターであって、ブースターは、ループ伝送路の途中に挿入接続されると共に、一方から入力された信号を増幅して他方に出力し、受信機から送信される信号による動作試験に基づき増幅方向の切り替えを行うようにしたため、ループ伝送路で断線が発生してブースターの増幅方向の切り替えが必要になった場合に、その切り替えが正常に行えることをループ伝送路で断線が発生していないときに確認することができ、高い信頼性の火災報知設備を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ループ伝送路に入出力切替型ブースターが設けられた火災報知設備の概要を示した説明図
図2】入出力切替型ブースターの実施形態を示したブロック図
図3】始端側伝送路で断線障害が発生した場合の入出力切替型ブースターの動作を示したブロック図
図4】通常監視状態と終端側伝送路で断線障害が発生した場合の入出力切替型ブースターの動作を示したブロック図
図5】入出力切替型ブースターの他の実施形態を示したブロック図
図6】従来のループ伝送路を設けた火災報知設備を示した説明図
図7】従来のループ伝送路にブースターが設けられた火災報知設備を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
[火災報知設備]
(火災報知設備の概要)
図1はループ伝送路に入出力切替型ブースターが設けられた火災報知設備の概要を示した説明図である。図1に示すように、火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の受信機10が設置され、受信機10から警戒区域に対し一対の信号線14a,14bを用いたループ伝送路12が引き出されている。
【0025】
ループ伝送路12には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器18が複数台接続されている。ループ伝送路12の中間位置には入出力切替型ブースター16が挿入接続されている。
【0026】
ここで、ループ伝送路12に接続される火災感知器18を含む端末に設定される最大アドレス数は例えば255としており、入出力切替型ブースター16も伝送機能を備えることから、ループ伝送路12には最大254台の火災感知器18が接続できる。
【0027】
(受信機の機能構成)
受信機10は、受信制御部20、伝送部22、操作部23、表示部24、警報部25、移報部26、断線監視制御部28及び切替回路部30a,30bを備える。
【0028】
受信制御部20はCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等とする。伝送部22は、ループ伝送路12に接続した火災感知器18との間で、所定の通信プロトコルに従って信号を送受信する。
【0029】
伝送部22から火災感知器18に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、ループ伝送路12の線路電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0030】
これに対し火災感知器18から受信機10に対する上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、ループ伝送路12に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機に伝送される。
【0031】
受信機10の受信制御部20による監視制御は次のようになる。受信制御部20は通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送部22に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信した火災感知器18は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、受信制御部20は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0032】
火災感知器18は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサデータを含む応答信号を受信機10に送信する。火災感知器18は火災を検出すると受信機10に対し火災割込み信号を送信する。受信制御部20は伝送部22を介して火災割込み信号を受信するとグループ検索コマンド信号を送信して火災を検出している火災感知器18を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災を検出している火災感知器18のアドレスを特定し、火災発生アドレスを表示すると共に、特定した火災感知器から火災データを収集して監視するようにしている。
【0033】
断線監視制御部28はループ伝送路12の終端で得られる信号電圧を検出して監視しており、ループ伝送路12に断線が発生すると信号電圧が断たれて検出できなくなることで断線を検出し、リレー接点やスイッチ素子を用いた切替回路部30a,30bをオン作動することで、ループ伝送路12の終端に伝送部22を接続し、ループ伝送路12の両端から断線位置までの間の伝送路に対し並列的に信号の送受信を行うことで、断線障害をリカバリーする。
【0034】
入出力切替型ブースター16は、通常監視状態では、始端側伝送路12aから入力した下り信号(電圧パルス信号)を電圧増幅して終端側伝送路12bに出力すると共に、終端側伝送路12bから入力した上り信号(電流パルス信号)を電流増幅して始端側伝送路12aに出力しており、始端側伝送路12aに断線障害が発生した場合に、断線監視制御部28により切替回路部30a,30bの作動によりループ伝送路12の終端が伝送部22に接続されたことを条件に、終端側伝送路12bから入力した下り信号(電圧パルス信号)を電圧増幅して始端側伝送路12aに出力すると共に、始端側伝送路12a側から入力した上り信号(電流パルス信号)を電流増幅して終端側伝送路12bに出力するように入出力を切替える構成を備える。
【0035】
入出力切替型ブースター16は商用電源の給電により動作し、さらに通常時に給電され停電時に動作電源として機能する非常用のバッテリを備える。
【0036】
入出力切替型ブースター16は商用電源の給電により動作し、給電状態や信号増幅方向を等のステータス情報を表示する表示灯を備える。
【0037】
入出力切替型ブースター16は固有のアドレスを備え、受信機から自身にあてた信号を認識したとき、ステータス情報の返信・信号増幅方向の切替等の信号に対応した動作を行う。
【0038】
入出力切替型ブースター16は短絡保護用の回路を備える。
【0039】
[入出力切替型ブースター]
図2は入出力切替型ブースターの実施形態を示したブロック図である。図2に示すように、入出力切替型ブースター16は、下り信号ブースト回路部(電圧ブースト回路部)32、上り信号ブースト回路部(電流ブースト回路部)46、ブースター制御部34、伝送部36、第1電圧検出部38、第2電圧検出部40、下り信号入出力切替回路部42,44、及び上り信号入出力切替回路部48,50で構成される。なお、下り信号ブースト回路部32は電圧ブースト回路部として機能し、上り信号ブースト回路部46は電流ブースト回路部として機能する。
【0040】
下り信号ブースト回路部32は、入力した下り信号である電圧パルス信号を一方向に電圧増幅して出力する回路部であり、電圧増幅器と波形整形回路を備える。
【0041】
上り信号ブースト回路部46は、入力した上り信号である電流パルス信号を一方向に電流増幅して出力する回路部であり、電流増幅器と波形整形回路を備える。
【0042】
下り信号入出力切替回路部42,44は、切替えリレー接点又はFETなどのスイッチ素子で構成される。下り信号入出力切替回路部42は下り信号ブースト回路部32の入力側に設けられ、切替端子aに始端側伝送路12aのプラス側が接続され、切替端子bに終端側伝送路12bのプラス側が接続され、コモン端子cは下り信号ブースト回路部32の入力に接続される。
【0043】
下り信号入出力切替回路部44は下り信号ブースト回路部32の出力側に設けられ、切替端子aに終端側伝送路12bのプラス側が接続され、切替端子bに始端側伝送路12aのプラス側が接続され、コモン端子cは下り信号ブースト回路部32の出力に接続される。
【0044】
下り信号入出力切替回路部42,44は、切替端子a側が第1切替位置となり、切替端子b側が第2切替位置となる。このため下り信号入出力切替回路部42,44が図示の切替端子aとなる第1切替位置の場合、下り信号ブースト回路部32に始端側伝送路12aを入力接続すると共に下り信号ブースト回路部32の出力を終端側伝送路12bに接続し、また、切替端子bとなる第2切替位置の場合、下り信号ブースト回路部32に終端側伝送路12bを入力接続すると共に下り信号ブースト回路部32の出力を始端側伝送路12aに接続することになる。
【0045】
上り信号入出力切替回路部48,50は、切替えリレー接点又はFETなどのスイッチ素子で構成される。上り信号入出力切替回路部48は上り信号ブースト回路部46の入力側に設けられ、切替端子aに終端側伝送路12bのプラス側が接続され、切替端子bに始端側伝送路12aのプラス側が接続され、コモン端子cは上り信号ブースト回路部46の入力に接続される。
【0046】
上り信号入出力切替回路部50は上り信号ブースト回路部46の出力側に設けられ、切替端子aに始端側伝送路12aのプラス側が接続され、切替端子bに終端側伝送路12bのプラス側が接続され、コモン端子cは上り信号ブースト回路部46の出力に接続される。
【0047】
上り信号入出力切替回路部48,50は、切替端子a側が第1切替位置となり、切替端子bが第2切替位置となる。このため上り信号入出力切替回路部48,50が図示の切替端子aとなる第1切替位置の場合、上り信号ブースト回路部46に終端側伝送路12bを入力接続すると共に上り信号ブースト回路部46の出力を始端側伝送路12aに接続し、また、切替端子bとなる第2切替位置の場合、上り信号ブースト回路部46に始端側伝送路12aを入力接続すると共に上り信号ブースト回路部46の出力を終端側伝送路12bに接続することになる。
【0048】
第1電圧検出部38は、始端側伝送路12aの線路電圧を検出してブースター制御部34に出力する。第2電圧検出部40は、終端側伝送路12bの線路電圧を検出してブースター制御部34に出力する。
【0049】
ブースター制御部34は、CPU、メモリ、及び各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、CPUによるプログラムの実行により入出力切替制御を行う。ブースター制御部34による入出力切替制御は、第1電圧検出部38及び第2電圧検出部40で所定の線路電圧が検出されている場合(ループ伝送路12が正常又は終端側伝送路12bが断線している場合)、下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50を図示の切替端子a側の第1切替位置に切替え、始端側伝送路12aから入力した下り信号を下り信号ブースト回路部32で電圧増幅して終端側伝送路12bに向けて出力させると共に、終端側伝送路12bから入力した上り信号を上り信号ブースト回路部46で電流増幅して始端側伝送路12aに向けて出力させる。
【0050】
また、ブースター制御部34による入出力切替制御は、始端側伝送路12aの断線により第1電圧検出部38で所定の線路電圧が検出されず、且つ、断線監視制御部28により切替回路部30a,30bの作動によりループ伝送路12の終端が伝送部22に接続されたことにより、第2電圧検出部40で所定の線路電圧が検出されている場合は、下り信号回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50を切替端子b側の第2切替位置に切り替え、終端側伝送路12bから入力した下り信号を電圧増幅して始端側伝送路12aに向けて出力させると共に、始端側伝送路12aから入力した上り信号を電流増幅して終端側伝送路12bに向けて出力させる。
【0051】
[ループ線路が断線した場合の動作]
(始端側伝送路の断線)
図3は始端側伝送路で断線障害が発生した場合の入出力切替型ブースターの動作を示したブロック図であり、図2に示したブースター制御部34、伝送部36、第1電圧検出部38及び第2電圧検出部40は省略している。
【0052】
ループ伝送路12に断線のない通常監視状態にあっては、図2に示したように、下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50は図示の切替端子a側となる第1切替位置に切り替わっており、始端側伝送路12aから入力した下り信号を下り信号ブースト回路部32で電圧増幅して終端側伝送路12bに向けて出力させ、また、終端側伝送路12bから入力した上り信号を上り信号ブースト回路部46で電流増幅して始端側伝送路12aに向けて出力するようにしている。
【0053】
この状態で図3に示すように、始端側伝送路12aで断線52が発生したとすると、図1に示した受信機10の断線監視制御部28が断線52によりループ伝送路12の終端での線路電圧が断たれたことを検出して切替回路部30a,30bをオンし、伝送部22をループ伝送路12の終端に接続する。このため図3の断線52の発生箇所に対し、伝送部22から出力された下り信号がループ伝送路12の始端と終端の両側から伝送された状態となる。
【0054】
このとき入出力切替型ブースター16の第1電圧検出部38は断線52により所定の線路電圧が検出されなくなり、第2電圧検出部40はループ伝送路12の終端が伝送部22に接続されたことで所定の線路電圧が検出されることとなり、その結果、図3に示すように、ブースター制御部34は、下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50を切替端子b側となる第2切替位置に切り替え、終端側伝送路12bから入力した下り信号を下り信号ブースト回路部32で電圧増幅して断線52が発生している始端側伝送路12aに向けて出力させ、また、断線52が発生している始端伝送路12aから入力した上り号を上り信号ブースト回路部46で電流増幅して終端側伝送路12bに向けて出力させる。
【0055】
このためループ伝送路12の始端側伝送路12aに断線52が発生しても、ループ伝送路12に接続している全ての火災感知器18と受信機10の伝送部22との間で下り信号と上り信号の送受信が可能となり、火災感知器18による火災監視機能が失われることがない。
【0056】
なお、断線52はループ伝送路12に用いている信号ケーブルの断線であり、図3にあってはプラス側の信号線の断線52として示しているが、一般的に発生するプラス側とマイナス側の両方の信号線が断線した場合でも上記効果を生じることができる。
【0057】
(終端側伝送路の断線)
図4は通常監視状態と終端側伝送路で断線障害が発生した場合の入出力切替型ブースターの動作を示したブロック図であり、図2に示したブースター制御部34、伝送部36、第1電圧検出部38及び第2電圧検出部40は省略している。
【0058】
図4に示すように、下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50が切替端子a側となる第1切替位置に切り替わっている通常監視状態で、終端側伝送路12bで断線54が発生したとすると、図1に示した受信機10の断線監視制御部28が断線54によりループ伝送路12の終端での線路電圧が断たれたことを検出して切替回路部30a,30bをオンし、伝送部22をループ伝送路12の終端に接続する。このため図3の断線54の発生箇所に対し、伝送部22から出力された下り信号がループ伝送路12の始端と終端の両側から伝送される状態となる。
【0059】
このとき入出力切替型ブースター16の第1電圧検出部38は終端側伝送路12bの断線54に影響されることなく所定の線路電圧が検出されており、第2電圧検出部40は
ブースターから下り方向に信号出力していることから電圧印加されているため開放端が切替回路部30aから断線箇所に変わっただけであり、所定の線路電圧が検出されることとなり、これはループ伝送路12に断線のない正常な状態と同じであり、このためブースター制御部34は、下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50の切替端子a側となる第1切替位置の切替えを維持することになる。
【0060】
即ち、終端側伝送路12bの断線54に対しては受信機10の断線監視制御部28による切替回路部30a,30bのオンでループ伝送路12の終端に伝送部22を接続する制御のみによりリカバリーすることができる。
【0061】
[入出力切替型ブースターの他の実施形態]
図5は入出力切替型ブースターの他の実施形態を示したブロック図である。図5に示すように、本実施形態の入出力切替型ブースター16は、始端側伝送路12aから入力した下り信号を一方向に電圧増幅して終端側伝送路12bに出力する第1下り信号ブースト回路部32aと、終端側伝送路12bから入力した下り信号を逆方向に電圧増幅して始端側伝送路12aに出力する第2下り信号ブースト回路部32bを設け、また、終端側伝送路12bから入力した上り信号を一方向に電流増幅して始端側伝送路12aに出力する第1上り信号ブースト回路部46aと、始端側伝送路12aから入力した上り信号を逆方向に電流増幅して終端側伝送路12bに出力する第2上り信号ブースト回路部46bを設けたことを特徴とする。
【0062】
第1下り信号ブースト回路部32aと第2下り信号ブースト回路部32bに対しては下り信号入出力切替回路部42,44が設けられ、第1上り信号ブースト回路部46aと第2上り信号ブースト回路部46bに対しては上り信号入出力切替回路部48,50が設けられる。
【0063】
ループ伝送路12に断線がない場合又は終端側伝送路12bに断線が発生した場合は、第1電圧検出部38及び第2電圧検出部40による所定の線路電圧の検出に基づきブースター制御部34が下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50を切替端子a側となる第1切替位置に切替え、第1下り信号ブースト回路部32aをループ伝送路12に挿入接続して始端側伝送路12aから入力した下り信号を電圧増幅して終端側伝送路12bに出力し、また、第1上り信号ブースト回路部46aをループ伝送路12に挿入接続して終端側伝送路12bから入力した上り信号を電流増幅して始端側伝送路12aに出力する。
【0064】
一方、始端側伝送路12aに断線が発生した場合は、第1電圧検出部38により所定の線路電圧が検出されなくなり、第2電圧検出部40により所定の線路電圧が検出され、これに基づき、ブースター制御部34が下り信号入出力切替回路部42,44及び上り信号入出力切替回路部48,50を切替端子b側となる第2切替位置に切替え、第2下り信号ブースト回路部32bをループ伝送路12に挿入接続し、終端側伝送路12bから入力した下り信号を電圧増幅して始端側伝送路12aに出力し、また、第2上り信号ブースト回路部46bをループ伝送路12に挿入接続して始端側伝送路12aから入力した上り信号を電流増幅して終端側伝送路12bに出力する。
【0065】
それ以外の構成及び機能は図2の実施形態と同じになることから同一符号を付して説明は省略する。
【0066】
このようにループ伝送路12の伝送方向に応じて専用の第1下り信号ブースト回路部32aと第2下り信号ブースト回路部32b及び第1上り信号ブースト回路部46aと第2上り信号ブースト回路部46bを設けたことで、ループ伝送路12の中間点に入出力切替型ブースター16が設けられず、始端側伝送路12aと終端側伝送路12bの抵抗を含む電気的特性が相違していても、出力側の伝送路の電気的特性に適合した増幅率を個別に設定して最適な信号の増幅伝送を可能とする。増幅率の設定手段は、公知の可変抵抗を用いて行うようにしても良い。
【0067】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、断線障害を例にとっているが例えば回路の短絡部を切り離すショートサーキットアイソレータの動作のようにシステムが意図的に断線させた場合であっても、ブースターは断線とみなして動作する。
【0068】
上記の実施形態は、受信機からループ配線が引き出されているが、受信機と接続する中継器から引き出されるループ配線に対し感知器とブースターを接続するようにしても良い。
【0069】
上記の実施形態は、上り信号と下り信号を同時に増幅可能なものとしているが、断線時に信号の増幅方向を切り替えるものであれば片方向のみの増幅するものであっても良い。例えば、電圧信号と電流信号がともに下り信号である火災報知システムの場合、通常時は下り信号を増幅し、断線時は増幅方向を変更する。
【0070】
上記の実施形態に加え、入出力切替型ブースター16は入出力を絶縁するものであって良い。例えば、入力端子及び第1電圧検出部38に対して増幅部をフォトカプラ等で絶縁すると共に、出力端子及び第2電圧検出部40と増幅部をフォトカプラ等で絶縁させる。入出力端子を絶縁させることで、GND線のみが断線した場合に発生するブースターの信号出力と受信機側の信号出力が衝突することを防ぐことが可能となる。
【0071】
上記の実施形態に加え、火災報知システムは自動試験機能を有するものであっても良い。例えば、伝送部22の出力について始端側のみ出力停止させ、切替回路部30a,30bをオンとしたとき入出力切替型ブースター16の信号増幅方向が反転することを確認する。また、受信機から入出力切替型ブースター16に対して信号を送信し増幅方向を切り替えるようにしても良い。
【0072】
上記の実施形態は、R型の受信機からのループ伝送路を介してR型の火災感知器を接続した火災報知設備を例にとっているが、P型の受信機から引き出したループ型の感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した火災報知設備についても同様に適用できる。
【0073】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0074】
10:受信機
12:ループ伝送路
12a:始端側伝送路
12b:終端側伝送路
14a,14b:信号線
16:入出力切替型ブースター
18:火災感知器
20:受信制御部
22,36:伝送部
28:断線監視制御部
30a,30b:切替回路部
32:下り信号ブースト回路部
32a:第1下り信号ブースト回路部
32b:第2下り信号ブースト回路部
34:ブースター制御部
38:第1電圧検出部
40:第2電圧検出部
42,44:下り信号入出力切替回路部
46:上り信号ブースト回路部
46a:第1上り信号ブースト回路部
46b:第2上り信号ブースト回路部
48,50:上り信号入出力切替回路部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7