(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】無排水化排ガス処理システム及び無排水化排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20231124BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20231124BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/78 ZAB
F23J15/00 B
(21)【出願番号】P 2022080438
(22)【出願日】2022-05-16
(62)【分割の表示】P 2017071881の分割
【原出願日】2017-03-31
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 直行
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 展行
(72)【発明者】
【氏名】平山 航一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉田 覚
(72)【発明者】
【氏名】牛久 哲
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊大
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205500970(CN,U)
【文献】特開昭60-041529(JP,A)
【文献】特開2013-094729(JP,A)
【文献】特開2008-080236(JP,A)
【文献】特開2015-128754(JP,A)
【文献】特開平06-210126(JP,A)
【文献】特開昭60-084133(JP,A)
【文献】特開昭60-222135(JP,A)
【文献】特開昭56-155617(JP,A)
【文献】特開2016-140837(JP,A)
【文献】特開2010-279930(JP,A)
【文献】特開2013-006144(JP,A)
【文献】特開平11-156357(JP,A)
【文献】特開2001-021682(JP,A)
【文献】特開2015-128764(JP,A)
【文献】特開平02-198613(JP,A)
【文献】特開2014-188511(JP,A)
【文献】特開2001-145818(JP,A)
【文献】特表平11-511061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73
B01D 53/14-53/18
B01D 53/74-53/85
C02F 1/02- 1/18
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させるボイラと、
前記ボイラからの
塩化水素を含むボイラ排ガスを排出する主煙道に設けられ、前記ボイラ排ガスの熱を回収する熱回収装置と、
前記ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置から排出される脱硫排水を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置と、
前記噴霧乾燥装置に前記排水を蒸発乾燥させる乾燥用ガスを導入する排ガス導入ラインと、
前記噴霧乾燥装置で前記排水を蒸発乾燥した後の排出ガスを前記主煙道に戻す排出ガス送給ラインと、
前記脱硫装置と前記噴霧乾燥装置とを接続する脱硫排水ライン又は前記排出ガス送給ラインに、アルカリ剤を添加するアルカリ供給部と、
前記主煙道、前記排出ガス送給ライン又は前記脱硫排水ラインのいずれか一つ又は複数に設けられ、塩素イオンの濃度を計測する塩素イオン計測装置と、
を備え、
前記アルカリ供給部は、前記主煙道、前記排出ガス送給ライン又は前記脱硫排水ラインのいずれか一つ又は複数において、前記塩素イオン計測装置によって計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が
0.000004以上0.35以下の範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加するよう構成されたことを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記脱硫排水を排出する前記脱硫排水ラインに設けられ、固形物を分離する固液分離器と、
前記固液分離器からの分離水を前記噴霧乾燥装置に供給する分離水導入ラインと、を備え、
前記塩素イオン計測装置及びアルカリ供給部は、前記固液分離器と前記噴霧乾燥装置との間の分離水導入ラインに設けられ、
前記アルカリ供給部は、前記塩素イオン計測装置によって計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記分離水に添加するよう構成されたことを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項3】
燃料を燃焼させるボイラと、
前記ボイラからの
塩化水素を含むボイラ排ガスを排出する主煙道に設けられ、前記ボイラ排ガスの熱を回収する熱回収装置と、
前記ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置からの脱硫排水を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置と、
前記噴霧乾燥装置に前記脱硫排水を蒸発乾燥させる乾燥用ガスを導入する排ガス導入ラインと、
前記噴霧乾燥装置で前記脱硫排水を蒸発乾燥した後の排出ガスを前記主煙道に戻す排出ガス送給ラインと、
前記脱硫装置と前記噴霧乾燥装置とを接続する脱硫排水ライン又は前記排出ガス送給ラインに、アルカリ剤を添加するアルカリ供給部と、
前記脱硫装置又は前記脱硫排水ラインいずれか一つ又は両方に設けられ、液中の電気伝導度を計測する電気伝導度計と、
を備え、
前記アルカリ供給部は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、液中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が
0.000004以上0.35以下の範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加するよう構成されることを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記脱硫排水を排出する前記脱硫排水ラインに設けられ、固形物を分離する固液分離器と、
前記固液分離器からの分離水を前記噴霧乾燥装置に供給する分離水導入ラインと、を備え、
前記電気伝導度計及びアルカリ供給部は、前記分離水導入ラインに設けられ、
前記アルカリ供給部は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、分離水中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が
0.000004以上0.35以下の範囲となるように、前記アルカリ剤を前記分離水に添加するよう構成されたことを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項5】
請求項1又は3において、
前記排出ガス送給ラインに添加する前記アルカリ剤が、液体又は粉体であることを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記排出ガス送給ラインに、前記排出ガス中の固形物を除去する固形物除去装置を設けることを特徴とする無排水化排ガス処理システム。
【請求項7】
塩化水素を含むボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫工程と、
前記脱硫工程で排出される脱硫排水を含む排水を噴霧し、前記ボイラ排ガスの一部で乾燥する噴霧乾燥工程と、
前記脱硫排水又は前記噴霧乾燥工程からの排出ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ供給工程と、
前記ボイラ排ガス、噴霧乾燥工程後の排出ガス又は前記脱硫排水のいずれか一つ又は複数の流体に含まれる塩素イオンの濃度を計測する塩素イオン計測工程と、
を備え、
前記アルカリ供給工程は、前記ボイラ排ガス、噴霧乾燥工程後の排出ガス又は前記脱硫排水のいずれか一つ又は複数の流体において計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が
0.000004以上0.35以下の範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする無排水化排ガス処理方法。
【請求項8】
塩化水素を含むボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫工程と、
前記脱硫工程で排出される脱硫排水を含む排水を噴霧し、前記ボイラ排ガスの一部で乾燥する噴霧乾燥工程と、
前記脱硫排水又は前記噴霧乾燥工程からの排出ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ供給工程と、
前記脱硫吸収液又は前記脱硫排水のいずれか一つ又は両方の液中の電気伝導度を計測する電気伝導度計測工程と、
を備え、
前記アルカリ供給工程は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、液中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が
0.000004以上0.35以下の範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする無排水化排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出される排ガスを処理する無排水化排ガス処理システム及び無排水化排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電設備等に設置されるボイラから排出される排ガスを処理するための排ガス処理システムが知られている。排ガス処理システムは、ボイラからの排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、脱硝装置を通過した排ガスの熱を回収するエアヒータと、熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、除塵後の排ガス中の硫黄酸化物を除去するための脱硫装置とを備えている。脱硫装置としては、石灰吸収液等を排ガスと気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式の脱硫装置が一般的に用いられる。
【0003】
近年、各国で排水規制の強化が進められていることを背景として、排水に重金属や有害成分を含んでいたとしても安全かつ簡便に処理する必要がある。その一例として安定して操業することができる無排水化処理設備の出現が望まれている。
【0004】
本出願人は、先に無排水化を実施する設備として、湿式脱硫装置の排水(以下、「脱硫排水」と称す。)を蒸発乾燥させる噴霧乾燥装置内で、一部抽気したボイラ排ガスに接触させて当該ボイラ排ガスの排熱で噴霧乾燥する技術を提案した(特許文献1)。
【0005】
このような無排水化設備では、噴霧乾燥装置内での排水蒸発に伴い、この排水中に含まれる一部成分(例えば水銀、ヒ素、セレン、塩素、ホウ素、マンガン、硝酸イオン等)が揮発し、再度脱硫装置で捕集されることで、系内の成分濃度上昇を引き起こす可能性が指摘されている。そこで、この揮発成分の揮発を抑制する手段として、例えば活性炭又はコークスの一方とアルカリ試薬を同時に脱硫排水に添加する方法が提案されている(特許文献2)。ここで、活性炭又はコークスは重金属(水銀他)の吸着剤、アルカリ試薬は酸性ガス(塩化水素他)の捕集剤として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-196638号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0182910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、重金属は集塵機の灰や脱硫装置の石膏に含まれる形で除去されるため、マスバランス次第では活性炭やコークス無しでも十分に重金属が除去される可能性があり、必ずしも活性炭・コークスとアルカリの両方を添加する必要はない場合がある。加えて、特許文献2においては、アルカリの添加量の制御がされていないため、ボイラの負荷変動、燃料や炭種の変更で排水量や排水組成に変化を生じた際、アルカリ量が少ない場合は酸性ガス除去性能が不足するためアルカリ量を多く添加する傾向にあるが、アルカリ量が多い場合は除去性能が過剰となりアルカリ費用の増大につながる可能性があった。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、アルカリ剤の添加量を最適化することで、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る無排水化排ガス処理システム及び無排水化排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理システムは、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラからのボイラ排ガスを排出する主煙道に設けられ、前記ボイラ排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫装置と、前記脱硫装置から排出される脱硫排水を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置と、前記噴霧乾燥装置に前記脱硫排水を蒸発乾燥させる乾燥用ガスを導入する排ガス導入ラインと、前記噴霧乾燥装置で前記脱硫排水を蒸発乾燥した後の排出ガスを前記主煙道に戻す排出ガス送給ラインと、前記脱硫装置と前記噴霧乾燥装置とを接続する脱硫排水ラインに、アルカリ剤を添加するアルカリ供給部と、前記アルカリ供給部の前後の脱硫排水ラインにおいて、前記脱硫排水中のpHを計測するpH計と、を備え、前記アルカリ供給部は、計測されたpHの計測結果に応じて、前記アルカリ剤添加後の脱硫排水のpH値が所定pH内となるように、前記アルカリ剤を添加することを特徴とする。
【0010】
上記の発明によれば、前記噴霧乾燥装置に導入される脱硫排水中のpHを計測し、所定のpH(例えばpH6~10)を満たすようにアルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0011】
幾つかの実施形態では、上記無排水化排ガス処理システムにおいて、前記脱硫排水を排出する前記脱硫排水ラインに設けられ、固形物を分離する固液分離器と、前記固液分離器からの分離水を前記噴霧乾燥装置に供給する分離水導入ラインと、を備え、前記アルカリ供給部は、前記固液分離器と前記噴霧乾燥装置との間の分離水導入ラインに設けられ、前記pH計は、前記アルカリ供給部の少なくとも前流又は後流の前記分離水導入ラインに設けられ、前記アルカリ供給部は、計測されたpHの計測結果に応じて、前記アルカリ剤添加後の分離水のpH値が所定pHとなるように、前記アルカリ剤を添加することにある。
【0012】
上記の発明によれば、前記霧乾燥装置に導入される分離水中のpHを計測し、所定のpH(pH6~10)を満たすようにアルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理システムは、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラからのボイラ排ガスを排出する主煙道に設けられ、前記ボイラ排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫装置と、前記脱硫装置から排出される脱硫排水を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置と、前記噴霧乾燥装置に前記排水を蒸発乾燥させる乾燥用ガスを導入する排ガス導入ラインと、前記噴霧乾燥装置で前記排水を蒸発乾燥した後の排出ガスを前記主煙道に戻す排出ガス送給ラインと、前記脱硫装置と前記噴霧乾燥装置とを接続する脱硫排水ライン又は前記排出ガス送給ラインに、アルカリ剤を添加するアルカリ供給部と、前記主煙道、前記排出ガス送給ライン又は前記脱硫排水ラインのいずれか一つ又は複数に設けられ、塩素イオンの濃度を計測する塩素イオン計測装置と、を備え、前記アルカリ供給部は、計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする。
【0014】
上記の発明によれば、前記主煙道、前記排出ガス送給ライン又は前記脱硫排水ラインの流体のいずれか一つ又は複数含まれる塩素イオン濃度を塩素イオン計測装置で計測し、計測した塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0015】
幾つかの実施形態では、上記無排水化排ガス処理システムにおいて、前記脱硫排水を排出する前記脱硫排水ラインに設けられ、固形物を分離する固液分離器と、前記固液分離器からの分離水を前記噴霧乾燥装置に供給する分離水導入ラインと、を備え、前記塩素イオン計測装置及びアルカリ供給部は、前記固液分離器と前記噴霧乾燥装置との間の分離水導入ラインに設けられ、前記アルカリ供給部は、計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記分離水に添加することにある。
【0016】
上記の発明によれば、前記分離水導入ラインの分離水の塩素イオン濃度を塩素イオン計測装置で計測し、計測した塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、分離水にアルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0017】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理システムは、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラからのボイラ排ガスを排出する主煙道に設けられ、前記ボイラ排ガスの熱を回収する熱回収装置と、前記ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫装置と、前記脱硫装置からの脱硫排水を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置と、前記噴霧乾燥装置に前記脱硫排水を蒸発乾燥させる乾燥用ガスを導入する排ガス導入ラインと、前記噴霧乾燥装置で前記脱硫排水を蒸発乾燥した後の排出ガスを前記主煙道に戻す排出ガス送給ラインと、前記脱硫装置と前記噴霧乾燥装置とを接続する脱硫排水ライン又は前記排出ガス送給ラインに、アルカリ剤を添加するアルカリ供給部と、前記脱硫装置又は前記脱硫排水ラインいずれか一つ又は両方に設けられ、液中の電気伝導度を計測する電気伝導度計と、を備え、前記アルカリ供給部は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、液中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする。
【0018】
上記の発明によれば、脱硫装置、前記脱硫排水ラインの液の電気伝導度を計測し、電気伝導度から間接的に塩素イオン濃度を求め、求めた塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0019】
幾つかの実施形態では、上記無排水化排ガス処理システムにおいて、前記脱硫排水を排出する前記脱硫排水ラインに設けられ、固形物を分離する固液分離器と、前記固液分離器からの分離水を前記噴霧乾燥装置に供給する分離水導入ラインと、を備え、前記電気伝導度計及びアルカリ供給部は、前記分離水導入ラインに設けられ、前記アルカリ供給部は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、分離水中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記分離水に添加することにある。
【0020】
上記の発明によれば、分離水の電気伝導度を計測し、電気伝導度から間接的に塩素イオン濃度を求め、求めた塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0021】
幾つかの実施形態では、上記無排水化排ガス処理システムにおいて、前記排出ガス送給ラインに添加する前記アルカリ剤が、液体又は粉体であることにある。
【0022】
上記の発明によれば、排出ガス送給ラインの排出ガス中に、液体又は粉体のアルカリ剤のいずれも添加することができ、酸性ガスの除去をすることが出来る。
【0023】
幾つかの実施形態では、上記無排水化排ガス処理システムにおいて、前記排出ガス送給ラインに、排出ガス中の固形物を除去する固形物除去装置を設けることにある。
【0024】
上記の発明によれば、最適なアルカリ量で酸性ガスを除去しつつ、排出ガス中の固形物を除去することで、主煙道の集塵機の灰に固形物が混入することを防ぐことが出来る。
【0025】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理方法は、ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫工程と、前記脱硫工程で排出される脱硫排水を含む排水を噴霧し、前記ボイラ排ガスの一部で乾燥する噴霧乾燥工程と、前記脱硫排水中のpHを計測するpH計測工程と、前記脱硫排水にアルカリ剤を添加するアルカリ供給工程と、を有し、前記アルカリ供給工程は、計測されたpHの計測結果に応じて、前記アルカリ剤添加後の脱硫排水のpH値が所定pH内となるように、前記アルカリ剤を添加することを特徴とする。
【0026】
上記の発明によれば、前記噴霧乾燥装置に導入される脱硫排水中のpHを計測し、所定のpH(例えばpH6~10)を満たすようにアルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0027】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理方法は、ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫工程と、前記脱硫工程で排出される脱硫排水を含む排水を噴霧し、前記ボイラ排ガスの一部で乾燥する噴霧乾燥工程と、前記脱硫排水又は前記噴霧乾燥工程からの排出ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ供給工程と、前記ボイラ排ガス、噴霧乾燥工程後の排出ガス又は前記脱硫排水のいずれか一つ又は複数の流体に含まれる塩素イオンの濃度を計測する塩素イオン計測工程と、前記アルカリ供給工程は、計測された塩素イオン濃度の結果に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする。
【0028】
上記の発明によれば、前記主煙道、前記排出ガス送給ライン又は前記脱硫排水ラインの流体のいずれか一つ又は複数含まれる塩素イオン濃度を塩素イオン計測装置で計測し、計測した塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0029】
上述した課題を解決するための本発明の一実施形態に係る無排水化排ガス処理方法は、ボイラ排ガス中に含まれる硫黄酸化物を脱硫吸収液で除去する脱硫工程と、前記脱硫工程で排出される脱硫排水を含む排水を噴霧し、前記ボイラ排ガスの一部で乾燥する噴霧乾燥工程と、前記脱硫排水又は前記噴霧乾燥工程からの排出ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ供給工程と、前記脱硫吸収液又は前記脱硫排水のいずれか一つ又は両方の液中の電気伝導度を計測する電気伝導度計測工程と、前記アルカリ供給工程は、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、液中の塩素イオン濃度を求め、その結果に応じて(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、前記アルカリ剤を前記脱硫排水又は前記排出ガスに添加することを特徴とする。
【0030】
上記の発明によれば、脱硫装置、前記脱硫排水ラインの液の電気伝導度を計測し、電気伝導度から間接的に塩素イオン濃度を求め、求めた塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、噴霧乾燥装置に導入される分離水中のpHを計測し、所定のpH(例えばpH6~10)を満たすようにアルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0032】
また、主煙道中の排ガス又は脱硫液中に含まれる塩素イオン濃度を塩素イオン計測装置で計測し、計測した塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】
図1Aは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例1に係る他の無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図2】
図2は、石灰石膏法の脱硫装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る脱硫排水の噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施例2に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図5】
図5は、実施例3に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図6】
図6は、実施例4に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図7】
図7は、実施例5に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図8】
図8は、実施例6に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図9】
図9は、実施例7に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図10】
図10は、実施例8に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
【
図11】
図11は、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比とpHとの相関関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比とpHとの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0035】
図1Aは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
図1Bは、実施例1に係る他の無排水化排ガス処理システムの概略図である。
図1A-1に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10A-1は、供給された燃料を燃焼させるボイラ11と、ボイラ11からのボイラ排ガス(「排ガス」ともいう)12を排出する主煙道L
11に設けられ、ボイラ排ガス12の熱を回収する熱回収装置であるエアヒータAHと、熱回収後のボイラ排ガス12中の煤塵を除去する除塵装置である電気集塵機(「集塵機」ともいう)13と、除塵後のボイラ排ガス12中に含まれる硫黄酸化物を除去する脱硫装置14と、脱硫装置14から脱硫排水ラインL
21を介して排出される脱硫排水(吸収液法の場合、吸収液スラリー)15から固形物16を除去する固液分離器17と、固液分離器17からの分離水18を含む排水を噴霧する噴霧乾燥装置19と、噴霧乾燥装置19にボイラ排ガス12からの一部の乾燥用ガス12aを主煙道L
11から導入する排ガス導入ラインL
12と、噴霧乾燥装置19で分離水18を蒸発乾燥した後の排出ガス12bを主煙道L
11に戻す排出ガス送給ラインL
13と、固液分離器17と噴霧乾燥装置19とを接続する分離水導入ラインL
22に、アルカリ剤21を添加するアルカリ剤供給部22と、アルカリ剤供給部22の前後の分離水導入ラインL
22において、分離水18中のpHを計測するpH計と、を備え、アルカリ供給部22は、計測されたpHの計測結果に応じて、アルカリ剤添加後の分離水18のpH値が所定pH(pH6~10)内となるように、前記アルカリ剤を添加するものである。
【0036】
本システムにより、排ガス12が脱硫装置14で浄化されると共に、その脱硫排水15から固形物(石膏)16と分離水19とを固液分離し、分離した分離水18を、噴霧乾燥装置19内で導入した乾燥用ガス12aを用いて蒸発乾燥するので、脱硫装置14からの脱硫排水15の無排水化を安定して実施することができる。
【0037】
ここで、無排水化排ガス処理システム10A-1のエアヒータAHは、ボイラ11から主煙道L11を介して供給されるボイラ排ガス12中の熱を回収する熱交換器である。排出されるボイラ排ガス12の温度は例えば300~400℃程度と高温であるため、このエアヒータAHにより高温のボイラ排ガス12と常温の燃焼用空気との間で熱交換を行い、熱交換により高温となった燃焼用空気は、ボイラ11に供給される。
【0038】
このエアヒータAHへ流入するボイラ排ガス12を主煙道L11から排ガス導入ラインL12を介して乾燥用ガス12aとして分岐する場合には、ガス温度が高く(例えば300~400℃)、この高温排熱と分離水18を接触させることによって脱硫排水液滴の噴霧乾燥を効率よく行うことができる。本実施例では、エアヒータAHは、乾燥用ガス12aを分岐する排ガス導入ラインL12の分岐部Xと、排出ガス12bを排出ガス送給ラインL13により主煙道L11側に戻す合流部Yとの間に設置している。
【0039】
集塵機13は、ボイラ11からのボイラ排ガス12中の煤塵を除去するものである。集塵装置としては電気集塵機13以外に、慣性力集塵機、遠心力集塵機、濾過式集塵機、洗浄集塵機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0040】
脱硫装置14は、集塵機13で煤塵が除去された後のボイラ排ガス12中の硫黄酸化物を湿式で除去する装置である。この湿式脱硫装置14では、例えば湿式の脱硫方法として、脱硫吸収液(以下、「吸収液」ともいう)として例えば石灰スラリーを用いる石灰石膏法の脱硫法を用いることができるが、これに限定するものではなく石灰石膏法の脱硫法以外としては、例えば水酸化マグネシウム法、海水法、苛性ソーダ法等の湿式脱硫装置を例示することができる。
【0041】
この湿式の脱硫装置の一例について
図2を用いて説明する。
図2は、石灰石膏法の脱硫装置の一例を示す概略図である。
図2に示すように、湿式の脱硫装置14は、吸収液60として例えば石灰石スラリー(水に石灰石粉末を溶解させた水溶液)が用いられ、装置内の温度は50℃前後となっている。石灰石スラリーは、石灰石スラリー供給装置(脱硫装置用石灰供給装置)61から脱硫装置14の塔底部62内の液溜に供給される。脱硫装置14の塔底部62に供給された石灰石スラリーは、吸収液循環ライン65を介して脱硫装置14内の複数のノズル63に送られ、ノズル63から塔頂部64側に向かって液柱として上方に噴出される。吸収液循環ライン65は、送液ポンプ65aが設けられており、送液ポンプ65aを駆動させることで、吸収液循環ライン65からノズル63に石灰石スラリーを送る。脱硫装置14の塔底部62側から上昇してくるボイラ排ガス12がノズル63から噴出する石灰石スラリーと気液接触することにより、ボイラ排ガス12中の硫黄酸化物及び塩化水銀が石灰石スラリーにより吸収され、ボイラ排ガス12から分離、除去される。石灰石スラリーにより浄化されたボイラ排ガス12は、浄化ガス12Aとして脱硫装置14の塔頂部64側より排出され、煙突40から外部に放出される。
【0042】
脱硫装置14の内部において、ボイラ排ガス12中の亜硫酸ガスSO2は石灰石スラリーと下記式(1)で表される反応を生じる。
SO2+CaCO3→CaSO3+CO2・・・(1)
【0043】
さらに、ボイラ排ガス12中のSOxを吸収した石灰石スラリーは、脱硫装置14の塔底部62に供給される空気(図示せず)により酸化処理され、空気と下記式(2)で表される反応を生じる。
CaSO3+1/2O2+2H2O→CaSO4・2H2O・・・(2)
このようにして、ボイラ排ガス12中のSOxは、脱硫装置14において石膏(CaSO4・2H2O)の形で捕獲される。
【0044】
また、上記のように、石灰石スラリーは、脱硫装置14の塔底部62に貯留した液を揚水したものが用いられるが、この揚水される石灰石スラリーには、脱硫装置14の稼働に伴い、反応式(1)、(2)により石膏CaSO4・2H2Oが混合される。以下では、この亜硫酸ガスを吸収するための石灰石石膏スラリー(石膏が混合された石灰石スラリー)を吸収液とよぶ。
【0045】
脱硫装置14で脱硫に用いる吸収液(石灰石スラリー)60は、脱硫装置14の吸収液循環ライン65により、循環再利用されると共に、この吸収液循環ライン65に接続された脱硫排水ラインL21を介して、その一部が脱硫排水15として外部に排出されて、別途固液分離器17に送られ、ここで脱水処理される。この固液分離された分離水18には、例えば水銀、ヒ素、セレン等の有害重金属類や、例えばCl-、Br-、I-、F-等のハロゲンイオンが含まれている。
【0046】
固液分離器17は、脱硫排水15中の固形物(石膏)16と液体分の分離水(濾液)18とを分離するものである。固液分離器17としては、例えばベルトフィルタ、遠心分離機、デカンタ型遠心沈降機等が用いられる。よって、脱硫装置14から排出された脱硫排水15は、固液分離器17により固形物(石膏)16と脱水濾液である分離水18とに分離される。分離した固形物(石膏)16は、システム外部(以下、「系外」という)に排出される。
【0047】
一方、固液分離器17からの分離水18は、
図1に示すように、分離水導入ラインL
22を介して噴霧乾燥装置19に送られ、ここで蒸発乾燥させて、脱硫排水である分離水18の無排水化を図るようにしている。なお、分離水18の一部を返送水18Aとして、返送水ラインL
23を介して脱硫装置14の塔底部62内に供給している。
【0048】
噴霧乾燥装置19は、ボイラ11からのボイラ排ガス12の主煙道L11から分岐した排ガス導入ラインL12を介してボイラ排ガス12からの乾燥用ガス12aが導入されるガス導入手段と、分離水導入ラインL22を介して固液分離器17から導入される分離水18を散布又は噴霧する噴霧手段52とを具備している。そして、導入される乾燥用ガス12aの排熱により散布又は噴霧された分離水18を蒸発乾燥させている。ここでボイラ排ガス12からの乾燥用ガス12aには、ボイラ排ガス12中に含まれる燃焼灰を含んでおり、噴霧乾燥装置19で発生する蒸発乾燥物中には燃焼灰と蒸発塩が混合された状態で存在する。なお、符号L13は噴霧乾燥装置19からの排出ガス12bを主煙道L11に返送する排出ガス送給ラインである。なお、排ガス導入ラインL12及び排出ガス送給ラインL13には、乾燥用ガス12a及び排出ガス12bの流入・排出を停止するためのダンパ手段を設けるようにしてもよい。
【0049】
なお、本実施例の無排水化排ガス処理システム10A-1においては、設けていないが、主煙道L11には、ボイラ排ガス12中の窒素酸化物を除去する脱硝装置を別途設けるようにしてもよい。なお、脱硝装置を設ける場合には、ボイラ11の下流で、主煙道L11から乾燥用ガス12aを分岐する分岐部Xの上流側に設置するのが好ましい。
【0050】
また、排ガス導入ラインL12の分岐部Xと、排出ガス12bを排出ガス送給ラインL13により主煙道L11側に戻す合流部Yとの間に、熱回収部を設置すると共に脱硫装置14と煙突20との間に再加熱部を設置し、ガスガスヒータ(GGH)を構成して、エアヒータAH出口の熱回収部で排ガス12の熱を熱媒により熱回収し、再加熱部において排ガスから熱回収した熱媒により、脱硫装置からの放出ガスを加熱して、大気放出に好ましい温度(約90℃~100℃)とした後、煙突20より大気放出するようにしてもよい。
【0051】
また、脱硫装置14からの脱硫排水15中の固形物を分離しない場合には、
図1Bに示す無排水化排ガス処理システム10A-2のように、固液分離器17の設置は不要となり、
図1Aで分離水18に添加しているアルカリ剤21は、脱硫排水15に直接添加され、その後噴霧乾燥装置19で噴霧乾燥され、無排水化される。本発明は固液分離器17の有無を問わないが、以下の説明では固液分離器17を含む形態について説明する。なお、固液分離機17が無い場合には、分離水18とあるのは、脱硫排水15となる。
【0052】
図3は、実施例1に係る脱硫排水の噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
図3に示すように、本実施例の噴霧乾燥装置19は、噴霧乾燥装置本体51内に、脱硫排水15又は分離水18を噴霧液18aとして噴霧する噴霧手段52と、噴霧乾燥装置本体51に設けられ、噴霧液18aを乾燥する乾燥用ガス12aを導入する導入口51aと、噴霧乾燥装置本体51内に設けられ、乾燥用ガス12aにより噴霧液18aを乾燥・蒸発させる乾燥領域53と、乾燥に寄与した排出ガス12bを排出する排出口51bとを具備するものである。なお、符号57は分離された固形分、V
1、V
2は流量調整バルブを図示する。また、脱硫排水15又は分離水18は別途圧縮機55から供給される空気56により、噴霧乾燥装置本体51内部へ所定の流量と所定の噴霧液滴粒径とで噴霧手段52により噴霧されるようにしてもよい。本実施例では、噴霧液18aの乾燥用ガスとしてボイラ排ガス12から分岐した乾燥用ガス12aを用いているが、本発明はこれに限定されず、噴霧液18aを蒸発乾燥させる乾燥ガスであればボイラ排ガス以外のガスを、乾燥用ガスとして用いるようにしても良い。
【0053】
ここで、噴霧手段52としては、噴霧液18aが所定の液滴径となるように噴霧するものであれば、その形式は限定されるものではない。例えば2流体ノズルや、ロータリーアトマイザ等の噴霧手段を用いることができる。なお、2流体ノズルは比較的少量の分離水18を噴霧するのに適しており、ロータリーアトマイザは、比較的多量の脱硫排水15又は分離水18を噴霧するのに適している。また、噴霧器の数も1基に限定するものではなく、その処理量に応じて複数基設けるようにしてもよい。
【0054】
本実施例では、固液分離器17と噴霧乾燥装置19との間の分離水導入ラインL22に、アルカリ剤21を添加するアルカリ剤供給部22と、アルカリ剤供給部22の前後の分離水導入ラインL22において、分離水18中のpHを計測するpH計と、を備えており、計測されたpHの計測結果に応じて、アルカリ剤添加後の分離水18のpH値が所定pH(例えばpH6~10)内となるように、アルカリ剤を添加するようにしている。
【0055】
ここで、アルカリ剤供給部22は、薬剤であるアルカリ剤21を貯留する薬剤貯留部と、貯留部と前記脱硫排水ラインL21とを接続する薬剤ラインと、前記脱硫排水ラインL21に薬剤貯留部からアルカリ剤21を供給する例えばポンプ等の供給部とを備えている。
【0056】
なお、無排水化排ガス処理システム10Aにおいて、固液分離器17を設けない場合は、脱硫排水ラインL21にアルカリ剤21を添加するアルカリ剤供給部22と、アルカリ剤供給部22の前後において脱硫排水15のpHを計測するpH計と、を備え、計測されたpHの計測結果に応じて、アルカリ剤21の添加後の脱硫排水15のpH値が、所定pH(例えばpH6~10)内となるように、アルカリ剤が添加される。
【0057】
本実施例によれば、噴霧乾燥装置19に導入される脱硫排水15又は分離水18中のpHを計測し、所定のpH(pH6~10)を満たすようにアルカリ剤21を添加することで、アルカリ添加量が最適化され、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【0058】
主要な酸性ガスである塩化水素を例として、酸性ガスに起因する成分が系内に蓄積する仕組みを説明する。塩化水素は排ガス12中に含まれる酸性ガスであり、脱硫装置14において石膏スラリーに捕集され塩化カルシウムとなる。塩化カルシウムを含む水溶液は、蒸発する過程で下記式(3)の平衡反応により、塩化水素を発生することが知られている。分離水18中の塩化カルシウムが噴霧乾燥装置19後流の排出ガス送給ラインL13において、塩化カルシウムのまま存在している場合は、排出ガス12bが主煙道L11に戻り、集塵機13で捕集されるため問題は生じないが、下記式(3)により塩化水素を生じる場合は、この塩化水素が脱硫装置14で再度捕集されるため、系内に塩素イオンが蓄積されることとなる。
CaCl2+H2O⇔Ca(OH)Cl+HCl・・・(3)
【0059】
脱硫排水15又は分離水18にアルカリ剤21を添加することで、中和反応により酸性ガスの揮発を防ぐことが出来る。下記式(4)はアルカリ剤として水酸化ナトリウムを使用した場合の中和反応の例である。ここで、アルカリ剤21の添加後の脱硫排水15又は分離水18のpH値がpH6~10となるようにアルカリを添加することで、十分な中和反応が起こり、酸性ガスの揮発が抑制される。
HCl+NaOH→H2O+NaCl・・・(4)
【0060】
よって、脱硫排水15又は分離水18のpHを第1のpH計23Aで計測し、所定のpH(pH6~10)を満たすようにアルカリ剤を添加することで、十分な酸性ガスの除去性能を得ると共に、除去性能が過剰となることを防止でき、アルカリ剤21の添加量を最適化しつつ酸性ガスの除去が可能となる。
【0061】
これにより、先行技術(特許文献2)における酸性ガス除去性能の過不足の防止という課題を克服している。また、pH値を制御する場所をアルカリ剤添加後の脱硫排水15又は分離水18としたことで、ボイラ負荷の変動やボイラ燃料の変化に起因する脱硫排水のpH値の変動にも対応でき、安定してアルカリ量の過不足を防止できるという利点がある。
【0062】
なお、本実施例では、アルカリ剤添加後の脱硫排水15又は分離水18のpH値は、アルカリ剤供給部22と噴霧乾燥装置19との間の分離水導入ラインL22に第2のpH計23Bを設置して計測しても良いし、第1のpH計23AのpH計測値と添加量から計算してもよい。
【0063】
すなわち、分離水導入ラインL22のアルカリ剤供給部22の後流側に、第2pH計23Bを設置する場合は、アルカリ薬剤添加後の脱硫排水15又は分離水18のpHを直接計測できるので、所定pHとなるようにアルカリ薬剤の添加を調整できる。また、分離水導入ラインL22のアルカリ剤供給部22の前流側に、第1のpH計23Aを設置する場合は、アルカリの性質が分かっていれば、計算によりアルカリ添加後のpHを求めることが出来、所定pHとなるようにアルカリ薬剤の添加を調整できる。さらに、第1のpH計23Aと第2のpH計23Bとを両方に設置し、第1のpH計23Aに基づき計算によって調整して投入したアルカリ薬剤によるpHの変化が所定pHとなるかを第2のpH計23Bにおいて、確認するようにしてもよい。
【0064】
アルカリ剤21としては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)等の強アルカリ性、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)等の弱アルカリ性の薬剤を例示することができるが、酸性ガスの除去性能を発揮する薬剤であれば、これらに限定されるものではない。
【0065】
噴霧乾燥装置19に導入される脱硫排水15又は分離水18中のpHを計測し、所定のpH(pH6~10)を満たすようにアルカリ剤21を添加することで、酸性ガスの除去性能の過不足を防止しつつ酸性ガスの除去が可能となる。この結果、最小限のアルカリ費用で酸性ガスの揮発抑制が可能となると共に、脱硫装置14系内への塩素イオン等酸性ガスに起因する成分の蓄積を防止することが出来る。
【実施例2】
【0066】
図4は、実施例2に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。また、本発明は固液分離器の有無を問わないが、ここでは固液分離器を含む形態について記載する。なお、固液分離器が設置されない場合には、分離水18とあるのは、脱硫排水15に置き換えられる。
図4に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Bは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システム10A-1において、主煙道L
11、排出ガス送給ラインL
13、脱硫排水ラインL
21及び分離水導入ラインL
22に、第1~第4の塩素イオン濃度計26A~26Dを各々設置している。本実施例では、第1の塩素イオン濃度計26Aは、主煙道L
11の集塵機13と脱硫装置14との間に設置され、ボイラ排ガス12中の塩素イオン濃度を計測する。また、第2の塩素イオン濃度計26Bは、脱硫排水ラインL
21の脱硫装置14と固液分離器17との間に設置され、脱硫排水15中の塩素イオン濃度を計測する。第3の塩素イオン濃度計26Cは、分離水導入ラインL
22の固液分離器17とアルカリ剤供給部22との間に設置され、分離水18中の塩素イオン濃度を計測する。第4の塩素イオン濃度計26Dは、噴霧乾燥装置19からの排出ガス12bが排出される排出ガス送給ラインL
13に設置され、排出ガス12b中の塩素イオン濃度を計測する。
【0067】
塩素イオン濃度計はいずれか一つを設置すればよいが、複数設置して計測の精度を向上させてもよい。ここで、塩素イオン濃度を計測する装置としては、例えばオンラインのIR計、イオンクロマトグラム、レーザ計測計等を挙げることができるが、塩素イオン濃度を計測する装置であれば、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
本実施例によれば、第1~第4の塩素イオン濃度計26A~26Dのいずれか又は複数の分析結果から、ガス中、液中の塩素イオン濃度を求め、分離水18中の塩素イオン(Cl-イオン)とアルカリ剤との比率、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。
【0069】
すなわち、計測された塩素イオン濃度を基に、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるアルカリ剤の添加量を、演算装置により求められる。この演算装置により求められたアルカリ剤21の添加量を、アルカリ剤供給部22は制御装置の指令又は作業員の判断によりアルカリ剤21を供給する。
【0070】
ここで、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比について、
図11を参照して説明する。
図11は、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比とpHとの相関関係を示すグラフである。
図11において、縦軸は「アルカリ剤(体積モル濃度(mol/L))/塩素イオン(体積モル濃度(mol/L))」を示す。この縦軸の記載を簡略して、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比という。
図11の計測試験に用いた排水中の塩素イオン濃度は50,000mg/L(1,451mmol/L)と1,000mg/L(29mmol/L)とした。
【0071】
本試験例では、アルカリ剤として弱アルカリ性物質(炭酸カルシウム)を添加した場合の挙動の最大と最小、強アルカリ性物質(水酸化ナトリウム)を添加した場合の最大と最小を示す。ケース1は、排水中の塩素(Cl)イオン濃度が50,000mg/L(1,451mmol/L)で強アルカリ性であり、ケース2は、排水中の塩素(Cl)イオン濃度が1,000mg/L(29mmol/L)で強アルカリ性である。ケース3は、排水中の塩素(Cl)イオン濃度が50,000mg/L(1,451mmol/L)で弱アルカリ性であり、ケース4は、排水中の塩素(Cl)イオン濃度が1,000mg/L(29mmol/L)で弱アルカリ性である。
【0072】
図11に示すように、横軸のpH値がpH=6-10の範囲となるのは、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が0.000004~0.35の範囲となる。よって、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比の所定範囲とは、「アルカリ(体積モル濃度)/塩素イオン(体積モル濃度)」の比が0.000004~0.35の範囲となる。なお、この相関関係は、排水中のCl濃度(mg/L)、アルカリ濃度(強アルカリ性、弱アルカリ性)等により変化するが、「アルカリ剤(体積モル濃度)/塩素イオン(体積モル濃度)」の比が0.000004~0.35の範囲であれば、pH値を所定の範囲に調整することができる。また、横軸のpH値がpH=7-8の範囲となるように、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を調整するようにしても良い。
【0073】
なお、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が変動する因子として、排水中のCl濃度(mg/L)、アルカリの解離度(強アルカリ性、弱アルカリ性)以外には、例えば噴霧液のイオン強度、固形分濃度等があるが、特には、排水中のCl濃度(mg/L)等が支配的となる。
【0074】
また、
図12は、排水、噴霧乾燥装置の出口及び主煙道における(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比とpHとの相関関係を示すグラフである。
図12の試験に用いた排水中の塩素イオン濃度は40,000mg/L(1,161mmol/L)であり、強アルカリ性物質をアルカリ剤として添加している。
図12に示すように、噴霧乾燥装置の出口及び主煙道における(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比とpHとの相関関係を示す挙動は、排水の挙動と近似していることが判明した。
【0075】
本実施例によれば、ガス(ボイラ排ガス12、排出ガス12b)中、液(脱硫排水15、分離水18)中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲となるように、アルカリ剤21を添加することで、アルカリ剤21の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【実施例3】
【0076】
図5は、実施例3に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1、2の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Cは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システム10A-1において、脱硫装置14、脱硫排水ラインL
21及び分離水導入ラインL
22に、液の電気伝導度を計測する第1~第3の電気伝導度計27A~27Cを設置している。電気伝導度計はいずれか一つを設置すればよいが、複数設置して計測の精度を向上させてもよい。
【0077】
本実施例によれば、脱硫排水15又は分離水18において、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオン濃度をもとめ、分離水18中の塩素イオン(Cl-イオン)とアルカリ剤との比率、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。
【0078】
本実施例によれば、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲(0.000004~0.35)となるように、アルカリ剤21を添加することで、アルカリ剤21の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【実施例4】
【0079】
図6は、実施例4に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1~3の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Dは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システム10A-1において、主煙道L
11、排出ガス送給ラインL
13、脱硫排水ラインL
21及び分離水導入ラインL
22に、第1~第4の塩素イオン濃度計26A~26Dを設置している。また、本実施例では、排出ガス送給ラインL
13に粉体状のアルカリ剤粉体21a又は液体状のアルカリ剤21を供給するアルカリ剤粉体供給部22A又はアルカリ剤供給部22を設置している。塩素イオン濃度計はいずれか一つを設置すればよいが、複数設置して計測の精度を向上させてもよい。
【0080】
本実施例によれば、第1~第4の塩素イオン濃度計26A~26Dのいずれか又は複数の分析結果から、ガス(ボイラ排ガス12、排出ガス12b)中、液(脱硫排水15、分離水18)中の塩素イオン濃度をもとめ、分離水18中の塩素イオン(Cl-イオン)とアルカリ剤との比率である、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。
【0081】
本実施例によれば、ガス(ボイラ排ガス12、排出ガス12b)中、液(脱硫排水15、分離水18)中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲(0.000004~0.35)となるように、粉体状のアルカリ剤粉体21a又は液体状のアルカリ剤21を添加することで、アルカリ剤の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【実施例5】
【0082】
図7は、実施例5に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1~4の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図7に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Eは、実施例1に係る無排水化排ガス処理システム10A-1において、脱硫装置14、脱硫排水ラインL
21及び分離水導入ラインL
22に、液の電気伝導度を計測する第1~第3の電気伝導度計27A~27Cを設置している。また、本実施例では、排出ガス送給ラインL
13に粉体状のアルカリ剤紛体21a又は液体状のアルカリ剤21を供給するアルカリ剤紛体供給部22A又はアルカリ剤供給部22を設置している。電気伝導度計はいずれか一つを設置すればよいが、複数設置して計測の精度を向上させてもよい。
【0083】
本実施例によれば、吸収液60、脱硫排水15又は分離水18において、予め求めた電気伝導度と塩素イオンとの関係より、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオン濃度をもとめ、分離水18中の塩素イオン(Cl-イオン)とアルカリ剤との比率、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。
【0084】
本実施例によれば、吸収液60、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲(0.000004~0.35)となるように、粉体又は液体状のアルカリ剤21aを添加することで、アルカリ剤21の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【実施例6】
【0085】
図8は、実施例6に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。
図8に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Fは、無排水化排ガス処理システム10A-1において、排出ガス送給ラインL
13に、排出ガス12b中の固形物を除去する固形物除去装置として、例えばバグフィルタ25を設けている。本実施例は無排水化排ガス処理システム10B~10Eにも同様に適用できる。実施例1では噴霧乾燥装置19から排出される排出ガス中の固形分(蒸発塩等)19aは集塵機13で捕集され、集塵機13の捕集灰と混ざって排出される。この場合、灰に固形分(蒸発塩等)が混ざることで、有害金属等の含有量が増加し、灰の売却が困難になる可能性がある。
【0086】
本実施例によれば、バグフィルタ25を設置することで、排出ガス12b中の固形物を除去し、噴霧乾燥装置19から排出される排出ガス12b中の固形分(蒸発塩等)19aが集塵機13で捕集した灰に混入することを防止できる。
【実施例7】
【0087】
図9は、実施例7に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1~5の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図9に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Gは、実施例4に係る無排水化排ガス処理システム10Dにおいて、脱硫排水ラインL
21及び分離水導入ラインL
22に、第2の塩素イオン濃度計26B、第3の塩素イオン濃度計26Cを各々設置している。
【0088】
本実施例では、脱硫排水15又は分離水18の液中の塩素イオンを直接計測する場合であり、本実施例によれば、第2、第3の塩素イオン濃度計26B、26Cのいずれか又は複数の分析結果から、分離水18中の塩素イオン濃度を求め、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオン(Cl-イオン)とアルカリ剤との比率、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲(0.000004~0.35)となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。
【0089】
本実施例によれば、脱硫排水15又は分離水18中の塩素イオンを直接計測し、分離水18中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲(0.000004~0.35)となるように、アルカリ剤21を添加することで、アルカリ剤21の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【実施例8】
【0090】
図10は、実施例8に係る無排水化排ガス処理システムの概略図である。なお、実施例1~5の無排水化排ガス処理システムと同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図10に示すように、本実施例に係る無排水化排ガス処理システム10Hは、実施例4に係る無排水化排ガス処理システム10Dにおいて、主煙道L
11、排出ガス送給ラインL
13に、第1の塩素イオン濃度計26A、第4の塩素イオン濃度計26Dを各々設置している。
【0091】
実機のプラントにおいては、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比はガス中と液中とで異なり、さらにはガス中においてもボイラ排ガス12と排出ガス12bでも変動する。また、運転条件によっても変動の幅が異なる。よって、ガス(ボイラ排ガス12と排出ガス12b)中の塩素イオン濃度を塩素イオン濃度計で計測し、その計測値をもととせずに、一度液中の塩素イオン濃度に変換して、その変換した液中の塩素イオン濃度を基準として、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比が所定範囲となるように、アルカリ剤21をアルカリ剤供給部22から添加するようにしている。これにより、1つのプラントにおいて、ガス中と液中との2つの所定範囲を定めることがなくなり、実機での制御が簡易となる。なお、前述した
図12においても、アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)比とpHとの相関関係を示す挙動は、排水の挙動と近似していることを示している。
【0092】
すなわち、実機のプラントにおいては、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比は、液(脱硫排水15又は分離水18)に対してのみ定め、ボイラ排ガス12中、排出ガス12b中においては定めることを不用としている。なお、この変換は各種ガス流量と脱硫排水流量により求めることができる。
【0093】
本実施例によれば、ガス(ボイラ排ガス12、排出ガス12b)中の塩素イオン濃度を、液(脱硫排水15、分離水18)中の塩素イオン濃度に変換し、この液中の塩素イオン濃度に応じて、(アルカリ剤/塩素(Cl)イオン)モル比を、充分な中和反応が起こる所定範囲(0.000004~0.35)となるように、粉体又は液体状のアルカリ剤を添加することで、アルカリ剤の添加量を最適化し、酸性ガスの除去性能の過不足を防止することが出来る。
【符号の説明】
【0094】
10A-1、10A-2、10B~10H 無排水化排ガス処理システム
11 ボイラ
12 ボイラ排ガス
13 集塵機
14 脱硫装置
15 脱硫排水
16 固形物
17 固液分離器
18 分離水
19 噴霧乾燥装置
21 アルカリ剤
21a アルカリ剤粉体
22 アルカリ剤供給部
22A アルカリ剤粉体供給部
23A~23B 第1~第2のpH計
25 バグフィルタ
26A~26D 第1~第4の塩素イオン濃度計
27A~27C 第1~第3の電気伝導度計
L11 主煙道
L21 脱硫排水ライン
L22 分離水導入ライン