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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】プラスチックレンズ成型用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20231124BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20231124BHJP
   B29C 39/32 20060101ALI20231124BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20231124BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231124BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20231124BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C39/26
B29C39/32
C09J7/29
C09J7/38
C09J133/06
C09J175/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022133159
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019064565の分割
【原出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2022167964
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕文
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 正直
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004046(WO,A1)
【文献】特開2012-017363(JP,A)
【文献】特開2014-062227(JP,A)
【文献】特開2000-191846(JP,A)
【文献】特開平09-141758(JP,A)
【文献】特開2000-108218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/00 - 39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材の表面上に形成された粘着剤層とを有するプラスチックレンズ成型用粘着テープであって、
前記粘着剤層は、官能基を有するアクリル系共重合体及び該官能基と反応する架橋剤を含み、
前記アクリル系共重合体は、1,100,000以上の重量平均分子量(Mw)、及び10.0以下の分子量の多分散度(Mw/Mn)を有し、
前記アクリル系共重合体は、官能基としてカルボキシル基を有し、
前記アクリル系共重合体の酸価は5.0~75.0mgKOH/gであり、
前記架橋剤は、ポリイソシアネート系化合物であり、
前記アクリル系共重合体が有するカルボキシル基(COOH)の当量に対する前記ポリイソシアネート系化合物が有するイソシアネート基(NCO)の当量の比(NCO/COOH)は、0.20~0.80であり、
G)前記粘着剤層は、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の溶出率が48.0%以下で、かつ、
H)前記粘着テープは、クリープ試験(温度40℃、荷重0.5kg)における800分後のズレ量が0.15mm以上0.50mm以下である、プラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体の酸価は、7.0~38.0mgKOH/gである、請求項1に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体の原料である単量体は、炭素数5~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1または2に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の溶出率が3
8%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テ
―プ。
【請求項5】
前記粘着テープは、クリープ試験における800分後のズレ量が0.20mm以上0.50mm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項6】
前記プラスチックレンズは、チオウレタン系樹脂である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項7】
前記基材は、シート状の第1の基材と、無機薄膜層と、接着層と、シート状の第2の基材と、を順に積層した複合基材である請求項1~6のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着テープは、1.5g/(m・24h)以下のJIS K 7129に従う水蒸気透過度を有する請求項1~7のいずれか一項に記載のプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ成型用粘着テープに関し、特に、高屈折率プラスチックレンズ成型用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
メガネレンズ用途などに実用化されているプラスチックレンズ成型用の熱硬化型の光学用樹脂およびそのモノマーは、チオウレタン系樹脂に代表される重縮合型のタイプと、アクリル系、ビニル系化合物に代表されるラジカル型のタイプの2種類に大別される。中でも、チオウレタン系樹脂は、硫黄原子を含むため高屈折率(例えば、屈折率1.59以上)であること、(チオ)ウレタン結合を形成するため耐衝撃性に優れること、等の長所を活かし、高屈折率メガネレンズ用途を中心に光学用樹脂として広く普及している。
【0003】
上述したチオウレタン系樹脂は、ポリチオール成分とポリイソシアネート成分の縮合反応により(チオ)ウレタン結合を生成させ樹脂を硬化して得ることができるが、光学的な均一性を保ちつつ重合を行うためには、常温から高温まで長時間を掛けて徐々に昇温しながら重合硬化する必要がある。例えば、高屈折率メガネレンズを重合成型する場合には、通常は、20~30℃付近の常温から120~130℃付近の高温まで徐々に昇温しながら重合硬化するのに24時間以上というような長時間の昇温硬化プロセスを必要とする。従って、チオウレタン系樹脂は、高屈折率プラスチックレンズ成型用樹脂として性能面においては優れているが、生産性の面においては、なお改良の余地を残している。
【0004】
上記生産性の課題に対して、特許文献1では、光学的、物性的および生産性にも優れたメガネレンズを提供することを目的に、特定構造のポリチオール化合物をポリイソシアネート化合物でプレポリマー化して得られた成分、特定構造の(メタ)アクリレート化合物からなる成分、及びそれらと共重合可能な化合物からなる成分を含有してなる組成物を重合硬化して得られる樹脂が、高屈折率メガネレンズに好適であること、また該組成物の硬化には加熱による短時間の硬化が可能であることが開示されている。そして、短時間の硬化に関して、実施例の中で、該組成物を凹レンズモールドに注入し、50℃から130℃まで3時間かけて昇温硬化させた後、更に130℃で1時間加熱硬化して、室温まで放冷した後、ガラス型からレンズを離型して、無色透明の凹レンズを得ることが記載されており、上述した従来の昇温硬化プロセスと比較して、硬化開始温度が高く、昇温時間も短時間であることが分かる。
【0005】
また、特許文献2では、光学的欠陥を低減することが主目的ではあるが、成型光学物品を調製するためのプロセスとして、(i)ジチオール成分または(ii)ポリイソシアネート成分を反応容器に導入するステップと;ハロゲン化有機スズの第1の触媒を添加して第1の反応混合物を形成するステップと;第1の反応混合物を加熱するステップと;第三級アミンの第2の触媒を第1の反応混合物に導入するステップと;ジチオール(i)を最初に添加した場合、第1の反応混合物を含有する反応容器にポリイソシアネート(ii)を混合して、またはポリイソシアネート(ii)を最初に添加した場合、第1の反応混合物にジチオール(i)を混合して、第2の反応混合物を形成するステップと;型に第2の反応混合物を充填して、充填された型を用意して、成型光学物品を形成するステップとを含むバッチプロセスが開示されている。そして、該バッチプロセスに関して、実施例の中で、該第2の反応混合物を型に充填し、硬化サイクルを50℃で開始し、12時間かけて130℃へと上昇させ(0.11℃/min)、試料を130℃で6時間保持した後、1時間かけて70℃に冷却し、硬化レンズを得ることが記載されており、上述した従来の昇温硬化プロセスと比較して、硬化開始温度が高く、昇温時間も短時間であることが分かる。
【0006】
一方、プラスチックレンズの成型方法としては、一対のガラスモールド(型)と封止用の粘着テープを用いた注型重合法によって成型する方法が知られている。この方法では、一対のガラスモールドを、所定間隔を隔てて対向配置させる。次に、粘着テープを、一対のガラスモールドの外周面を全周に亘って周方向に沿って貼り付け、重合用セルを作製する。これによって、ガラスモールド間の空間は、粘着テープで封止される。次に、その粘着テープに樹脂注入用のノズルを差し込み、ガラスモールド間の空間内に液状の樹脂(重合性モノマーや重合性プレポリマー)を注入して充填する。その後、その樹脂を加熱や光照射などによって重合硬化させることによって、プラスチックレンズが得られる。この方法により高品質のプラスチックレンズを得るために、プラスチックレンズ成型用粘着テープには、プラスチックレンズの外周縁部に外観不良(白化、シワ等)を発生させないような性能が求められる。
【0007】
特許文献3には、トルエン(20℃)への可溶解分率が30%以下である感圧性接着剤層を有するプラスチックレンズ製造用接着テープが記載されている。実施例では、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート系液状レンズ原料を、40℃から110℃まで35時間かけて徐々に昇温して原料を重合硬化させ、室温まで放冷するプロセスにより、濁りのない無色透明で、側面に接着剤成分の残存がないレンズが得られることが記載されている。しかしながら、このプラスチックレンズ製造用接着テープを上述した短時間昇温プロセス、すなわち、硬化開始温度が高く、昇温時間も短時間であるプロセスによる高屈折率プラスチックレンズの成型に使用した場合に、必ずしも、無色透明のレンズが得られるというわけではなく、上記感圧性接着剤層は高温条件下においては、レンズ原料に対する接着剤層からの溶出量が多くなり、得られた成型品の外周縁部に白化が発生する場合があった。また、高度に架橋構造化すると、感圧性接着剤の保持力が必要以上に大きくなり、例えば、チオウレタン系樹脂等の高屈折率プラスチックレンズ原料の硬化収縮の影響を緩和しづらくなり、すなわち、粘着テープにシワが生じやすくなり、プラスチックレンズ側面にシワが発生する場合があった。したがって、白化とシワの発生の同時抑制について、改善の余地を有していた。
【0008】
一般に、プラスチックレンズの白化とは、光を照射しながらプラスチックレンズを観察した場合に、プラスチックレンズが白く濁って見える状態をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-114825号公報
【文献】特表2018-525499号公報
【文献】特開平5-255650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、高屈折率プラスチックレンズを短時間昇温プロセスにより成型する際に、成型品の外周縁部のシワ、白化等の欠陥の発生および粘着テープ剥離時の被着体への粘着剤残りを抑制することが可能なプラスチックレンズ成型用粘着テープおよびプラスチックレンズの成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる目的のもと、高屈折率プラスチックレンズ成型用粘着テープの粘着剤層について鋭意検討した結果、高屈折率プラスチックレンズを短時間昇温プロセスにより成型する際に、成型品の外周縁部のシワ、白化等の欠陥の発生を抑制するためには、まず、粘着剤に用いるポリマー(アクリル系共重合体)の重量平均分子量(Mw)および分子量の多分散度(Mw/Mn)を適正な範囲とすることが重要であり、その上で、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の溶出率が48.0%以下、クリープ試験(温度40℃、荷重0.5kg)におけるズレ量が0.15mm以上0.50mm以下となるように設計したアクリル系粘着剤を粘着剤層として用いれば、得られる高屈折率プラスチックレンズ成型品の外周縁部の白化、シワ、気泡、ならびに粘着テープ剥離時のプラスチックレンズおよびモールド側面への粘着剤残りの発生を抑制することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、従来の昇温硬化プロセスと比較して、硬化開始温度が高く、昇温時間も短時間である短時間昇温硬化プロセスを高屈折率プラスチックレンズ成型時に採用する場合、封止テープとして用いる粘着テープにおいてその粘着剤層は、重合初期段階においてまだ十分に硬化していない液状~粘稠かつ高温のプラスチックレンズ用重合性モノマーや重合性プレポリマーにいきなり数時間程度曝されることになる。特に、ポリチオールとポリイソシアネートの反応は他のモノマーよりも遅いため、液状~粘稠の状態が長い。したがって、粘着剤層から粘着剤組成物の一部がモノマーやプレポリマー等のプラスチックレンズ材料へ溶出するリスクが、従来の常温から高温まで長時間を掛けて徐々に昇温させる昇温硬化プロセスよりも急激に高まり、その溶出量がある一定量以上になると得られるプラスチックレンズ成型品の外周縁部に白化が発生しやすくなるものと考えるが、本課題を、粘着剤層の高度な架橋構造化のみで解消しようとすると、白化は抑制される一方で、上述したように粘着剤層が必要以上に硬くなり、高屈折率プラスチックレンズ原料の硬化収縮の影響を緩和しづらくなるため、プラスチックレンズ側面にシワが発生しやすくなる。
【0013】
そこで、本発明者らは、高屈折率プラスチックレンズ成型において、上述したトレードオフの関係にある白化の発生とシワの発生の両方を同時に解消するために、まず、粘着剤層に用いるアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量の多分散度(Mw/Mn)に着目し、検討を行った。その結果、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を1,100,000以上と大きくし、かつ、分子量の多分散度(Mw/Mn)を10.0以下とすれば、アクリル系共重合体の低分子量成分および共重合せずに生じるホモポリマーの低分子量成分、具体的には、重量平均分子量が10,000未満の低分子量成分が極めて少なくなるために、粘着剤層の高度な架橋構造化を必要以上に図らなくても、粘着剤層からのレンズ材料への溶出量を抑制でき、白化が発生するリスクを大幅に低減することができることを見出した。一方で、高度な架橋構造化を図っていないため、粘着剤層は必要以上に硬くはならず、シワの発生も抑制できること、さらに分子量が大きく、分子量の多分散度も比較的小さいため、大きな凝集力を適度な柔軟性とともに併せ持ち、粘着剤残りも抑制できることを見出した。
【0014】
本発明は、次のような構成から成る。すなわち、本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープは、
基材と該基材の表面上に形成された粘着剤層とを有するプラスチックレンズ成型用粘着テープであって、
上記粘着剤層は、官能基を有するアクリル系共重合体及び該官能基と反応する架橋剤を含み、
上記アクリル系共重合体は、1,100,000以上の重量平均分子量(Mw)、及び10.0以下の分子量の多分散度(Mw/Mn)を有し、
上記粘着剤層は、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の溶出率が48.0%以下で、かつ、
上記粘着テープは、クリープ試験(温度40℃、荷重0.5kg)における800分後のズレ量が0.15mm以上0.50mm以下であり、
上記プラスチックレンズは1.59以上の屈折率を有する、ことを特徴とする。
【0015】
上記態様において、上記アクリル系共重合体は、官能基としてカルボキシル基を有し、上記架橋剤は、ポリイソシアネート系化合物であることが好ましい。
【0016】
また、上記アクリル系共重合体は、5.0~75.0mgKOH/gの酸価を有し、前記アクリル系共重合体が有するカルボキシル基(COOH)の当量に対する前記ポリイソシアネート系化合物が有するイソシアネート基(NCO)の当量の比(NCO/COOH)は、0.20~0.80であることが好ましい。
【0017】
また、さらに、上記アクリル系共重合体の原料である単量体は、炭素数5~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
【0018】
また、さらに、上記粘着剤層は、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の溶出率が38.0%以下であることが好ましい。
【0019】
また、さらに、上記粘着テープは、クリープ試験における800分後のズレ量が0.20mm以上0.50mm以下であることが好ましい。
【0020】
また、さらに、上記プラスチックレンズは、チオウレタン系樹脂であることが好ましい。
【0021】
また、さらに、上記基材は、シート状の第1の基材と、無機薄膜層と、接着層と、シート状の第2の基材と、を順に積層した複合基材であることが好ましい。
【0022】
また、さらに、上記粘着テープは、1.5g/(m・24h)以下のJIS K 7129に従う水蒸気透過度を有することが好ましい。
【0023】
さらに、本発明に係るプラスチックレンズの成型方法は、一対のモールドを所定の間隔を隔てて対向配置し、上記両モールドの外周縁部に上記発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープを貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性原料が充填されるキャビティを形成するキャビティ形成工程と、上記キャビティ内に1.59以上の屈折率を有するプラスチックレンズの重合性原料を充填する重合性原料充填工程と、上記重合性原料を重合する重合工程とを有すること、を特徴とする。
【0024】
また、さらに、上記重合工程の重合条件は、45℃以上65℃以下の重合開始温度、130℃以上150℃以下の重合最終温度、0.10℃/分以上0.45℃/分以下の前記重合最終温度に達するまでの昇温速度を有することが好ましい。
【0025】
また、さらに、上記プラスチックレンズは、チオウレタン系樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高屈折率プラスチックレンズを短時間昇温プロセスにより成型する際に、成型品の外周縁部の白化、シワ等の欠陥の発生および粘着テープ剥離時の被着体への粘着剤残りを抑制することが可能な高屈折率プラスチックレンズ成型用粘着テープおよびプラスチックレンズの成型方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態である粘着テープの構造を示した断面図である。
図2】本発明のプラスチックレンズの成型方法に使用するガラスモールドの構造の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(粘着テープの構成)
本発明の粘着テープは、基材と基材の表面上に形成された粘着剤層とを有する。基材は粘着剤層を支持する部材である。基材は、引っ張り強度、耐熱性及び柔軟性を有するフィルム状材料をいう。基材は単一層から成っていてよく、複数の層を有する複合材料であってもよい。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態である粘着テープの構造を示した断面図である。本実施の形態の粘着テープ1は、例えばメガネレンズ等に用いられるプラスチックレンズの作製の用途に使用される。本実施の形態の粘着テープ1は、複合基材2と粘着剤層3とが積層された構造を有していることが好ましい。そして、複合基材2は、第1の基材4上に無機薄膜層5が形成された第1の積層体10と、第2の基材7上に接着層6が形成された第2の積層体20とが積層されて構成されていることが好ましい。また、本実施の形態では、粘着剤層3は、複合基材2における第1の基材4側の面に形成されているが、粘着剤層3は、複合基材2における第3の基材7側の面に形成されていても良い。
【0030】
本実施の形態の粘着テープ1では、必要に応じて、複合基材2(第1の基材4)と粘着剤層3との間や、第1の基材4と無機薄膜層5との間に、密着性を向上させるためのアンカーコート層(図示せず)を設けてもよい。
【0031】
<複合基材>
上述したように、本実施の形態の複合基材2は、第1の積層体10と第2の積層体20とが積層されることで、第1の基材4、無機薄膜層5、接着層6および第2の基材7が順に積層された構造を有している。
以下、複合基材2を構成する各層について説明する。
【0032】
[第1の基材]
本実施の形態の粘着テープ1に用いる第1の基材4の材質は、特に限定されるものではなく、例えばプラスチック製、金属製等の基材を用いることができる。
これらの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする基材を用いることが好ましい。また、第1の基材4としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、ポリイミド、アラミド、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂等の樹脂フィルムを用いてもよい。
詳細については後段で説明するが、本実施の形態の第1の基材4上には、例えばケイ素やアルミニウム等を含む無機薄膜層5を設ける。
【0033】
第1の基材4としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた場合には、第1の基材4の厚さを、9μm以上25μm以下の範囲とすることが好ましい。
第1の基材4の厚さが9μm未満の場合、粘着テープ1の幅方向において第1の基材4の膜厚のムラが大きくなり、第1の基材4上に無機薄膜層5を積層する際にしわ、折れ等が発生しやすくなる。そしてその結果、粘着テープ1において水蒸気透過度が部分的に高くなる場合があり、粘着テープ1を用いて製造されるプラスチックレンズに気泡や白化が発生しやすくなる傾向がある。
【0034】
また、後述する粘着テープ1の製造工程において、第1の基材4上に無機薄膜層5を積層した第1の積層体10は、通常、無機薄膜層5側が外周となるように、巻き取られる。ここで、第1の基材4の厚さが25μmを超えた場合には、第1の基材4の厚さが25μm以下の場合と比較して、第1の積層体10を巻き取った際に第1の積層体10の外周側(無機薄膜層5側)が伸びやすくなる。その結果、第1の積層体10において無機薄膜層5が伸びることで無機薄膜層5の全体に亘ってクラック(ひび割れ)が発生する場合がある。そして、このように無機薄膜層5のクラックが発生した粘着テープ1では、水蒸気透過度が高くなる場合があり、粘着テープ1を用いて製造されるプラスチックレンズに気泡や白化が発生しやすくなる傾向がある。
【0035】
[第2の基材]
第2の基材7の材質は、第1の基材4と同様に、特に限定されるものではなく、例えば、プラスチック製、金属製等の基材を用いることができる。
これらの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする基材を用いることが好ましい。また、第2の基材7としては、第1の基材4と同様に、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、ポリイミド、アラミド、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂等の樹脂フィルムを用いてもよい。
【0036】
第2の基材7としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた場合には、第2の基材7の厚さを18μm以上38μm以下の範囲内とすることが好ましい。
第2の基材7の厚さが過度に小さい場合には、第2の基材7の剛性が低くなりやすく、後述するプラスチックレンズの製造工程において2つのモールド50(図2参照)間の間隔を維持することが困難になる傾向がある。また、第2の基材7の厚さが過度に小さい場合、モールド50と粘着テープ1とにより形成されたキャビティC間に注入したプラスチックレンズ成型用樹脂(モノマーおよびまたはオリゴマーを意味する)100(図2参照)が膨張する力に抗しきれずに粘着テープ1に割れや切断などが生じてキャビティC内に空気が侵入する場合がある。さらに、第2の基材7の厚さが過度に小さい場合、キャビティC内のプラスチックレンズ成型用樹脂100が収縮する力に抗しきれずに、粘着テープ1がキャビティC内の中心に向かって押しつぶされるように引っ張られてシワが発生し、形成されるレンズに粘着テープ1のシワに起因したシワ(テープシワ)が生じる懸念がある。
【0037】
一方、第2の基材7の厚さが過度に大きい場合、第2の基材7の剛性が高くなりやすく、粘着テープ1の伸縮性が低下する傾向がある。また、粘着テープ1の総厚が大きくなって、後述するプラスチックレンズの製造工程において、モールド50に対して粘着テープ1を巻いた際に、粘着テープ1が重なるラップ部分において粘着テープ1の間に隙間が生じてしまい、キャビティCから樹脂100が漏れてしまう場合がある。
【0038】
また、第1の基材4と第2の基材7との関係について考慮すると、第2の基材7の厚さは、第1の基材4の厚さの2倍以上3倍以下の範囲とすることが好ましい。第1の基材4と第2の基材7とがこのような関係を有することで、粘着テープ1を巻き取った際やプラスチックレンズの製造工程等において、粘着テープ1の変形に伴って、第1の基材4と第2の基材7との間に設けられる無機薄膜層5に対して負荷がかかるのを抑制することができる。さらに、第1の基材4と第2の基材7とがこのような関係を有することで、粘着テープ1全体の剛性および伸縮性をプラスチックレンズの成型用途として好ましい範囲とすることができる。これにより、後述するプラスチックレンズの製造工程において、キャビティC内への水分の混入やキャビティCからの樹脂100の漏れ等の発生を抑制することが可能になる。
【0039】
さらにまた、第1の基材4と第2の基材7とを合わせた合計の厚さは、27μm以上60μm以下の範囲にすることが好ましい。第1の基材4と第2の基材7とを合わせた合計の厚さをこのような範囲とすることで、後述するプラスチックレンズの製造工程において、粘着テープ1が重なるラップ部分の段差による液漏れを抑制するとともに、樹脂100の収縮などに伴う変形により粘着テープ1が破損したり剥がれたりするのを抑制することが可能になる。
【0040】
[無機薄膜層]
無機薄膜層5は、無機物質を含んで構成され、粘着テープ1の防湿性およびガスバリア性を高めて、粘着テープ1における水分の透過を抑制するために設けられる。
無機薄膜層5を構成する無機物質としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、ニッケル、チタン、炭化水素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられる。中でも、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、ダイアモンドライクカーボン等の炭化水素を主体とした物質を採用することが好ましい。特に、無機薄膜層5として、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムを用いることが、粘着テープ1における水分の透過を抑制できる点でより好ましい。
尚、上記無機物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
無機薄膜層5の形成方法としては、蒸着法、コーティング法等の公知の方法を用いることができる。中でも、防湿性およびガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で、蒸着法を採用することが好ましい。蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等を含むPVD(物理的気相蒸着法)や、CVD(化学的気相蒸着法)等の方法が含まれる。
【0042】
無機薄膜層5の厚さは、例えば、0.1nm~500nmの範囲であり、好ましくは0.5nm~40nmの範囲である。無機薄膜層5の厚さを上記範囲とすることで、水分の透過を抑制でき、また、無機薄膜層5における割れ等の発生を抑制することができる。また、無機薄膜層5の厚さを上記範囲とすることで、粘着テープ1の透明性の低下を抑制することが可能になる。
【0043】
[接着層]
接着層6は、第1の積層体10における無機薄膜層5と、第2の積層体20における第2の基材7とを接着するために設けられる。接着層6は、接着剤により形成される。接着層6を形成する接着剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤で硬化するポリエステル系接着剤を用いることができる。ただし、接着層6に用いられる接+着剤はこれに限られるものではなく、例えばエポキシ系接着剤やポリエーテル系接着剤等の公知の材料を使用することができる。
【0044】
接着層6の厚さとしては、1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。接着層6の厚さが過度に小さい場合、接着層6と無機薄膜層5との接着強度が不十分となる傾向がある。そして、無機薄膜層5との接着強度が低下した場合には、無機薄膜層5の割れが発生して、粘着テープ1における水蒸気透過度が高くなりやすい。一方、接着層6の厚さが過度に大きい場合、粘着テープ1の総厚が厚くなりやすい。そして、粘着テープ1の総厚が厚くなった場合には、後述するプラスチックレンズの製造工程において、モールド50に対して粘着テープ1を巻いた際に、粘着テープ1が重なるラップ部分において粘着テープ1の間に隙間が生じてしまい、キャビティCから樹脂100が漏れてしまう場合がある。
【0045】
<粘着剤層>
本実施の形態の粘着剤層3は、粘着剤の主剤ポリマーとして、アクリル系共重合体を含む。以下、アクリル系共重合体について詳細に説明する。
【0046】
[アクリル系共重合体]
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル基を有する単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体をいう。単量体混合物には、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基を有するエチレン性不飽和単量体等が含まれる。
【0047】
上記アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,100,000以上、分子量の多分散度(Mw/Mn)が10.0以下である。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算値を使用する。
【0048】
上記重量平均分子量(Mw)が1,100,000未満であると、必然的に、分子量10,000未満の低分子量成分が増えて、短時間昇温プロセスによる高屈折率プラスチックレンズの製造工程において、粘着剤層3の一部がプラスチックレンズ成型用樹脂へ溶出するリスクが高まり、得られるプラスチックレンズ成型品の外周縁部に白化が発生するおそれがある。一方、重量平均分子量(Mw)の上限は、特に制限はされないが、2,000,000以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が2,000,000を超えると、粘着剤組成物溶液の粘度増加により、均一な塗工性が困難となるおそれがある。また、粘着剤層3の応力緩和性が低下し、得られるプラスチックレンズ成型品の側面にシワが発生するおそれがある。上記重量平均分子量(Mw)は、1,200,000以上、1,500,000以下の範囲であることが好ましい。
【0049】
上記分子量の多分散度(Mw/Mn)が、10.0を超えると、必然的に、分子量10,000未満の低分子量成分が増えて、短時間昇温プロセスによる高屈折率プラスチックレンズの製造工程において、粘着剤層3の一部がプラスチックレンズ成型用樹脂へ溶出するリスクが高まり、得られるプラスチックレンズ成型品の外周縁部に白化が発生するおそれがある。一方、分子量の多分散度(Mw/Mn)の下限は、特に制限はされないが、5.0以上であることが好ましい。分子量の多分散度(Mw/Mn)が5.0未満であると、重量平均分子量(Mw)が特に大きい場合に、粘着剤層3の応力緩和性が低下し、得られるプラスチックレンズ成型品の側面にシワが発生するおそれがある。
【0050】
上記アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量の多分散度(Mw/Mn)を上記範囲とすることにより、粘着剤の主剤ポリマーであるアクリル系共重合体の低分子量成分をあらかた排除できるため、必要以上に高度の架橋構造化を図らなくても、短時間昇温プロセスによる高屈折率プラスチックレンズの製造工程において、粘着剤層3の一部がプラスチックレンズ成型用樹脂100へ溶出するリスクを大幅に抑制することができる。さらに、粘着剤層3は必要以上に硬くはならず適度な応力緩和性を維持できるため、高屈折率プラスチックレンズの硬化収縮の影響も緩和することができる。その結果、プラスチックレンズ成型品の周縁部の白化および側面のシワの発生が抑制される。また、粘着剤層3の凝集力も高いため、レンズキャビティCから樹脂100が漏れることなく重合硬化が進み、得られるプラスチックレンズの外周縁部の気泡や欠けの発生を抑制することが可能となるとともに、重合硬化後に粘着テープ1をモールド50から剥離した際のモールド50およびプラスチックレンズ成型品の側面の粘着剤残りの発生も抑制することが可能となる。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に制限はされないが、高分子量化されたアクリル系共重合体の溶液粘度を低減する観点、およびクリープ試験におけるズレ量の適正化の観点から、アルキル基の炭素数は、5~18の範囲が好ましく、8~14の範囲がより好ましい。アルキル基の炭素数が大きいと、後述するアクリル系共重合体の官能基が、炭素数の大きなアルキル基により適度に隠蔽され、極端に高度な架橋構造を形成しないので、適度な応力緩和性を有しやすくなる。その結果、クリープ試験におけるズレ量を適正な範囲としやすい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、2-エチルヘキシルアクリレート(アルキル基の炭素数[以下、単に炭素数と略す]:8、ホモポリマーのTg[以下、単にTgと略す]:-70℃)、イソデシルアクリレート(炭素数:10、Tg:-60℃)、イソウンデシルアクリレート(炭素数:11)、イソドデシルアクリレート(炭素数:12)、イソトリデシルアクリレート(炭素数:13)、イソミリスチルアクリレート(炭素数:14、Tg:-56℃)、デシルメタクリレート(炭素数:10、Tg:-74℃)、ドデシルアクリレート(炭素数:12、Tg:-8℃)、ドデシルメタクリレート(炭素数:12、Tg:-65℃)、トリデシルメタクリレート(炭素数:13、Tg:-40℃)、イソデシルメタクリレート(炭素数:10、Tg:-41℃)、ウンデシルメタクリレート(炭素数:11)、テトラデシルメタクリレート(炭素数:14、Tg:-15℃)等が挙げられる。
【0052】
上記官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、特に制限はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等が挙げられる。粘着剤層3に適度な応力緩和性を付与させる観点から、エチレン性不飽和単量体が有する官能基はカルボキシル基であることが好ましい。
【0053】
単量体混合物に含まれてよいその他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アルキルビニルエーテル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
上記アクリル系重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、官能基を有するエチレン性不飽和単量体、およびその他単量体の含有割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が60~99.3質量%、官能基を有するエチレン性不飽和単量体が0.7~10質量%、その他単量体が0~39.3質量%であることが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が70~99質量%、官能基を有するエチレン性不飽和単量体が1~5質量%、その他単量体が0~29質量%である。
【0055】
上記アクリル系共重合体の官能基は、後述の架橋剤によって架橋される架橋点となる官能基である。該官能基は、官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合することにより側鎖として導入されるが、これら官能基の中でも、反応性、汎用性の観点から、活性水素を有するカルボキシル基、水酸基であることが好ましく、得られるプラスチックレンズの白化およびシワ発生の同時抑制の観点から、カルボキシル基であることがより好ましい。官能基がカルボキシル基である場合、該アクリル系共重合体の酸価は、5.0~75.0mgKOH/gの範囲が好ましく、7.0~38.0mgKOH/gの範囲がより好ましい。また、官能基が水酸基である場合、該アクリル系共重合体の水酸基価は、3.0~48.0mgKOH/gの範囲が好ましく、4.8~24.0mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0056】
上記アクリル系共重合体の官能基の量(酸価、水酸基価)が、上記範囲の下限値未満であると、後述する架橋剤の添加量が少ない場合、粘着剤層3の架橋が不十分となるため、短時間昇温プロセスによる高屈折率プラスチックレンズの製造工程において、粘着剤層3の一部がプラスチックレンズ成型用樹脂へ溶出するリスクが高まり、得られるプラスチックレンズ成型品の周縁部に白化が発生するおそれがある。また、粘着剤層3の凝集力も不十分となり、重合硬化後に粘着テープ1をモールド50から剥離した際のモールド50およびプラスチックレンズ成型品の側面に粘着剤残りが発生するおそれがある。一方、上記官能基の量(酸価、水酸基価)が、上記範囲の上限値を超えると、粘着剤層3が必要以上に高度な架橋構造を形成し硬くなりすぎるため、粘着剤層3の応力緩和性が低下し、得られるプラスチックレンズ成型品の側面にシワが発生するおそれがある。また、後述する架橋剤の添加量が多い場合、粘着剤層3の粘着力が低下し、モールド50に対する固定力が悪くなるおそれがある。
【0057】
上記アクリル系共重合体は、通常の重合方法により製造することができる。例えば、目的する単量体組成によって、必要な単量体を所定量配合した単量体混合物を、溶液重合、光重合、塊状重合、懸濁重合または乳化重合のような重合方式を適用して製造することができる。この過程において、必要な場合、適当な重合開始剤または分子量調節剤や連鎖移動剤などが一緒に使用される。汎用性、作業性の観点から、溶液重合により重合するのが好ましい。
【0058】
溶液重合の場合、具体的には、反応容器内にモノマー成分および必要に応じて連鎖移動剤、重合溶媒等を仕込み、例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃の範囲に設定し、該反応系の維持温度を通常50~90℃の範囲に設定し、2~20時間反応させる。また、重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、モノマー成分、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0059】
上記重合溶媒のうち、アクリル系共重合体の重合に際しては、高分子量化の観点から、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さなどの観点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0060】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ系化合物などを使用することが可能である。これら重合開始剤のうち、アクリル系共重合体の重合に際しては、重合初期の重合開始剤として水素引き抜き反応を起こしにくいアゾ系化合物を用い、重合後期の重合開始剤として開始剤効率の良い有機過酸化物を用いることが好ましい。このように、重合初期と重合後期に添加する重合開始剤の種類を変えることにより、高い重量平均分子量(Mw)を有し、適度な分子量の多分散度(Mw/Mn)を有するアクリル系共重合体を好適に合成することができる。
【0061】
[架橋剤]
本実施の形態の粘着剤層3は、上記アクリル系重合体を架橋する目的で、官能基を有するエチレン性不飽和単量体の官能基と反応する架橋剤を含む。上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、金属錯体等の金属系化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、反応性、耐熱性付与、汎用性の観点から、ポリイソシアネート系化合物が好ましい。
【0062】
上記ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーにトリメチロールプロパンなどを付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等を挙げることができる。また、市販のイソシアネート系の架橋剤、例えば、綜研化学社製のコロネートL-45(商品名)、三井化学社製のタケネートA-56(商品名)等を使用することもできる、これらのポリイソシアネート系化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記架橋剤の含有量は、得られるプラスチックレンズの白化およびシワ発生の同時抑制、および粘着剤残りの抑制の観点から、粘着テープ1を80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の粘着剤層の溶出率が48%以下、クリープ試験における800分後のズレ量が0.15mm以上0.50mm以下となるように適宜調整すれば良い。上記アクリル系共重合体における官能基の量との兼ね合いもあるので一概には言えないが、上記架橋剤の含有量は、例えば、アクリル系共重合体100質量部に対して、1.3~5.0質量部の範囲となるように調整するのが好ましい。架橋剤が有するイソシアネート基とアクリル系共重合体が有する活性水素含有官能基の当量比、すなわち、NCO(架橋剤のイソシアネート基)とCOOH(アクリル系共重合体のカルボキシル基)、NCO(架橋剤のイソシアネート基)とOH(アクリル系共重合体の水酸基)の当量比NCO/COOH、NCO/OHで言えば、0.20~0.80の範囲とするのが好ましい。
【0064】
[厚さ]
粘着剤層3の厚さは、10μm以上50μm以下の範囲が好ましい。粘着剤層3の厚さが10μm未満の場合には、モールド50に対する固定力および粘着テープ1同士の重ね合わせ部の接着力が低下し、レンズキャビティCから樹脂100が漏れて、得られるプラスチックレンズの外周縁部に気泡や欠けが発生するおそれがある。一方、粘着剤層3の厚さが50μmよりも厚い場合には、粘着テープ1の厚さが厚くなりすぎて、粘着テープのラップ部に隙間が生じやすくなり、キャビティCから樹脂100が漏れてしまうおそれがある。
【0065】
(粘着テープ)
本実施形態の粘着テープ1は、80℃の温度に調整されたトルエンに2時間浸漬した際の粘着剤層3の溶出率が48.0%以下であり、好ましくは、38.0%以下である。上記溶出率が48.0%を超えると、後述するプラスチックレンズの製造工程において、硬化開始温度が高く、昇温時間も短時間である短時間昇温硬化プロセスを採用した場合、すなわち、粘着剤層が重合初期段階においてまだ十分に硬化していない粘稠かつ高温のプラスチックレンズ用重合性モノマーや重合性プレポリマーに数時間以上曝された場合、粘着剤層から粘着剤組成物の一部がプラスチックレンズ原料であるモノマーやプレポリマーへ溶出するリスクが、従来の常温から高温まで長時間を掛けて徐々に昇温させる昇温硬化プロセスよりも急激に高まり、その溶出物の影響により得られるプラスチックレンズの外周縁部に白化が発生する。上記溶出率が48.0%以下であると、その溶出物の影響を問題のないレベルまで抑制できるため、得られるプラスチックレンズの外周縁部に品質上問題となるレベルの白化は発生しない。
【0066】
また、本実施形態の粘着テープ1は、クリープ試験(温度40℃、荷重0.5kg)における800分後のズレ量が0.15mm以上0.50mm以下である。上記ズレ量がこの範囲であると、後述するプラスチックレンズの製造工程において、重合性モノマーおよびまたは重合性プレポリマーが硬化収縮しても、得られるプラスチックレンズの外周縁部にシワが発生する現象を抑制することが可能になる。また、重合硬化後に粘着テープ1をモールド50から剥離した際のモールド50およびプラスチックレンズ成型品の側面の粘着剤残りの発生も抑制される。上記ズレ量は、好ましくは0.20mm~0.50mmの範囲である。
【0067】
<粘着テープの厚さ>
以上説明したような構成を有する粘着テープ1の全体としての厚さは、37μm以上110μm以下の範囲が好ましい。粘着テープ1の厚さが37μm未満である場合、粘着剤層3の厚さが薄くなるため、モールド50に対する固定力および粘着テープ1同士の重ね合わせ部の接着力が低下し、レンズキャビティCから樹脂100が漏れて、得られるプラスチックレンズの外周縁部に気泡や欠けが発生するおそれがある。一方、粘着テープ1の厚さが110μmを超える場合、粘着テープ1の厚さが厚くなりすぎて、粘着テープのラップ部に隙間が生じやすくなり、キャビティCから樹脂100が漏れてしまうおそれがある。
【0068】
(粘着テープの製造方法)
続いて、図1において説明した第1の実施の形態が適用される粘着テープ1を例に挙げ
て、その製造方法について説明する。粘着テープ1は、複合基材2を形成し、形成した複
合基材2に対して粘着剤層3を積層することで形成される。
【0069】
[複合基材の形成]
まず、第2の基材7として用いるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、例えば、ポリエステル系ウレタン接着剤やエポキシ樹脂接着剤等からなる接着剤をグラビアロール等で塗布し乾燥させる。これにより、第2の基材7上に接着層6が積層された第2の積層体20が形成される。続いて、形成した第2の積層体20に対して、第1の基材4として用いるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に二酸化ケイ素等から構成される無機薄膜層5を積層した第1の積層体10を、無機薄膜層5と接着層6とが対向するように貼り合わせる。これにより、第1の積層体10と第2の積層体20とが積層された複合基材2が形成される。その後、第1の積層体10側(第1の基材4側)が内側となるように、複合基材2を巻き取り、巻き取った複合基材2を40℃~50℃雰囲気下で、48時間エージングする。
【0070】
ところで、複合基材2の形成工程において、例えば、第1の基材4上に積層された無機薄膜層5に対して接着剤を直接塗布することにより接着層6を形成し、この接着層6上に第2の基材7を積層することで複合基材2を形成した場合には、無機薄膜層5に割れや亀裂等が生じる場合がある。具体的には、無機薄膜層5に接着剤を塗布する際や、無機薄膜層5上に形成された接着層6上に第2の基材7を更に積層する際等に、無機薄膜層5に対して負荷がかかり、無機薄膜層5に割れや亀裂等が生じる恐れがある。そして、このような無機薄膜層5を含む粘着テープ1では、無機薄膜層5の割れ等において水分が透過しやすくなり、水蒸気透過度が上昇する懸念がある。
【0071】
これに対し、本実施の形態では、接着層6を無機薄膜層5上に直接積層せずに、接着層6を第2の基材7上に積層して第2の積層体20を形成した後、第1の積層体10と第2の積層体20とを貼り合わせることで複合基材2を形成している。このような工程で複合基材2を形成することにより、本実施の形態では、上述のように無機薄膜層5上に直接、接着層6を形成する場合と比較して、無機薄膜層5に対して負荷がかかるのを抑制できる。その結果、無機薄膜層5における割れや亀裂の発生を抑制でき、粘着テープ1の水蒸気透過度が上昇するのを抑制することが可能になる。
【0072】
[粘着剤層の形成]
続いて、エージングが終了した複合基材2に対して、第1の積層体10における第1の基材4上に、アクリル系共重合体樹脂等からなる粘着剤を塗布し、粘着剤層3を形成する。具体的には、例えばアクリル系共重合体を主成分とする粘着剤を酢酸エチル、トルエン、キシレン等の有機溶剤に溶解した溶液に、架橋剤を添加して粘着剤組成物とする。次いで、この粘着剤組成物を、複合基材2における第1の基材4に対して、乾燥後の厚さが均一となるように、コンマコーターやリップコーター等で塗布する。その後、塗布した粘着剤組成物を所定温度で乾燥させることで、複合基材2上に粘着剤層3を形成する。以上の工程により、図1に示した粘着テープ1(第1の実施の形態)が得られる。
【0073】
一般に、基材に対してコンマコーターやリップコーター等を用いて粘着剤層を形成して粘着テープを作製する場合には、基材に張力を加えながら粘着剤組成物の塗布を行う。ここで、例えば本実施の形態の無機薄膜層5のような無機物質を有する薄膜が基材上に形成されている場合、基材に粘着剤層を形成する際に、基材に張力が加えられたり、薄膜がガイドロールに接触したりすることによって、薄膜に負荷がかかり、薄膜に割れ等が生じる場合がある。そして、薄膜に割れ等が生じた場合には、薄膜の割れ等を介して水分が透過しやすくなることで、粘着テープにおける水蒸気透過度が上昇する場合がある。
【0074】
これに対し、本実施の形態の粘着テープ1の複合基材2は、無機薄膜層5を、接着層6を介して第1の基材4と第2の基材7とで挟んだ構成を有している。これにより、複合基材2に対して粘着剤層3を形成する場合に、複合基材2に対して張力を加えた場合であっても、本構成を有さない場合と比較して、第1の基材4および第2の基材7により無機薄膜層5を保護することが可能になり、無機薄膜層5に割れ等が生じるのを抑制することが可能になる。そして、無機薄膜層5における割れ等の発生を抑制することで、粘着テープ1における水蒸気透過度の上昇を抑制することが可能になる。
【0075】
なお、上記の工程により形成された粘着テープ1は、通常、粘着剤層3が内側になるように巻き取られる。本実施の形態では、粘着剤層3を第1の基材4上に設けているため、粘着テープ1を巻き取った状態では、複合基材2は第1の基材4側が内側となるように巻き取られていることになる。また、上述した複合基材2の形成工程では、第1の積層体10をエージングする際に、第1の基材4側が内側となるように第1の積層体10を巻き取っている。
【0076】
すなわち、本実施の形態では、製造された粘着テープ1が巻き取られた状態と、複合基材2の形成工程において第1の積層体10が巻き取られた状態とで、第1の積層体10の巻き取り方向が等しくなっており、粘着テープ1の製造工程において第1の積層体10に設けられた無機薄膜層5の巻き取り方向が変化していない。ここで、例えば粘着テープ1の製造工程において無機薄膜層5の巻き取り方向が変化した場合には、無機薄膜層5に対して負荷がかかってクラックや欠陥、割れが生じる懸念がある。これに対し、本実施の形態では、粘着テープ1の製造工程において無機薄膜層5の巻き取り方向を変化させない構成を採用することで、無機薄膜層5に対する負荷を抑制し、無機薄膜層5に割れ等が発生するのを抑制することが可能になる。
【0077】
(粘着テープを用いたプラスチックレンズの成型方法)
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1は、例えば、メガネレンズ等として使用されるプラスチックレンズの成型に用いられる。次いで、本実施の形態の粘着テープ1を用いた、プラスチックレンズの成型方法の一例について説明する。
【0078】
図2は、本発明のプラスチックレンズの成型方法に使用するガラスモールドの構造の一例を示した斜視図である。
【0079】
[キャビティ形成工程]
まず、図2に示すように、例えば略円板状の形状を有する一対のモールド50を所定の間隔を隔てて対向配置させた後に、両モールド50の外周縁部に粘着テープ1を周方向に沿って巻き付けるように貼り付ける。そして、モールド50同士の間隔を保持した状態で、モールド50間に形成された空間の開口を連続的に封止する。これによって、図2に示すように、モールド50同士が略平行をなして連結されるとともに、その間にレンズ形状のキャビティCが区画形成される。尚、モールド50としては、一般にガラス(二酸化ケイ素)製のものや金属製のものが多用されるが、モールド50の材質はこれらに限定されるものではない。
【0080】
[樹脂充填工程]
モールド50間にキャビティCを形成した後、続いて、図2に示すように、粘着テープ1の一端を剥離して隙間を開け、その隙間からキャビティCに図示しないノズルを差し込む。そして、そのノズルからキャビティC内に液状の樹脂100を注入して充填する。その後、剥離した粘着テープ1を元に戻し、隙間を塞ぐ。尚、キャビティC内に注入・充填する樹脂100は、例えば、重合性モノマーおよびまたは重合性プレポリマーに重合開始剤や架橋剤を添加したものである。
【0081】
[重合工程]
次に、粘着テープ1を巻き付けてキャビティC内に樹脂100を注入したモールド50を重合炉内に並べ、キャビティC内の樹脂100を加熱または光照射などによって重合反応させて硬化させる。次いで、樹脂100が十分に硬化した後、粘着テープ1を全て剥離してモールド50を取り外すことで、プラスチックレンズが得られる。ここで、加熱による重合工程における短時間昇温プロセスとして、重合開始温度は45℃以上65℃以下、最終の硬化温度130℃以上150℃以下に達するまでの昇温速度が0.10℃/分以上0.45℃/分以下であることが好ましい。重合開始温度、最終の硬化温度および昇温速度が、上記範囲内であれば、短時間昇温プロセスであっても、得られる高屈折率プラスチックレンズの品質を問題のないレベルに維持することができる。
【0082】
尚、本実施の形態で形成されたプラスチックレンズは、例えばメガネレンズとして用いられる。ここで、プラスチックレンズの成型に用いる樹脂100(重合性モノマーまたは重合性プレポリマー)としては、従来公知の材料を用いることができる。例えば超高屈折率(屈折率:1.65以上)のメガネレンズを形成する場合には、エピスルフィド系樹脂(三井化学株式会社製MR-174(商品名)、三菱瓦斯化学株式会社製IU-20(商品名))やチオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR-7(商品名))のモノマーやプレポリマー等が用いられる。
【0083】
また、高屈折率(屈折率:1.59以上1.65未満)のメガネレンズを形成する場合には、チオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR-6(商品名)、三井化学株式会社製MR-8(商品名))やポリエステルメタクリレート(株式会社トクヤマ製TS-26(商品名))、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製Panlite(商品名))のモノマーやプレポリマー等が用いられる。
【0084】
従来、プラスチックレンズの製造工程における重合工程において、外気中の水分が粘着テープ1を透過してキャビティC内に侵入する場合があった。そして、水分が樹脂100に混入し、例えば樹脂100に添加された架橋剤と反応して気体等が発生する場合があった。その結果、プラスチックレンズ中に空隙が形成され、得られるプラスチックレンズに気泡が発生したり、白化が発生したりする場合があった。ここで、外気中の水分が樹脂100に混入することで形成されたプラスチックレンズ中の空隙が大きい場合には、プラスチックレンズの主に周縁部に気泡が発生し、空隙が小さい場合には、プラスチックレンズの主に中央部に白化が発生する。
【0085】
特に、チオウレタン系樹脂のように、樹脂100の硬化にイソシアネート系硬化剤を利用する場合には、樹脂100中のイソシアネート基(NCO基)と樹脂100に混入した水分とが反応して、副生成物としてCOガスが発生する。そして、このCOガスによって空隙が形成されることで、プラスチックレンズに気泡や白化が発生したりする場合があった。
【0086】
これに対し、本実施の形態の粘着テープ1では、粘着テープ1における水分の透過を抑制するための無機薄膜層5を設けている。そして、粘着テープ1は、接着層6を介して、無機薄膜層5を第1の基材4と第2の基材7とで挟んだ構成を有している。このような構成を有することで、本実施の形態の粘着テープ1では、第1の基材4および第2の基材7により無機薄膜層5が保護され、粘着テープ1の製造工程やプラスチックレンズの製造工程において、無機薄膜層5に割れ等が発生しにくい。
【0087】
これにより、本実施の形態では、プラスチックレンズの製造工程において、無機薄膜層5における割れ等に起因して外気中の水分が粘着テープ1を透過してキャビティC内に侵入するのを抑制することが可能になる。
その結果、形成されるプラスチックレンズにおいて、キャビティC内の樹脂100に水分が混入することによって起こる気泡や白化の発生を抑制することが可能になる。
【実施例
【0088】
続いて、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
以下、各実施例および各比較例について詳細に説明する。
【0090】
1.粘着テープ1の作製およびプラスチックレンズの成型
(実施例1)
第1の基材4としての厚さ12μmのポリエステルフィルム上に、シリカを蒸着して無機薄膜層5を積層した第1の積層体10(三菱樹脂株式会社製テックバリアLX(商品名))と、第2の基材7としての厚さ25μmのポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社製ポリエステルフィルム)上に、接着層6としての厚さ1μmのポリエステル系接着剤(三井化学株式会社製タケラックA-310/タケネートA-3(商品名))を積層した第2の積層体20とを、無機薄膜層5と接着層6とが対向するように貼り合わせて複合基材2を形成した。
【0091】
アクリル系共重合体A1(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=78質量%/2質量%/20質量%、酸価14.8mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体A1のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,320,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.3であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-49℃であった。
【0092】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.8質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/COOHの当量比=0.49)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0093】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃
の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。
【0094】
次いで、形成した粘着テープ1を用いて、図2に示した方法で屈折率の異なる2種類の
チオウレタン系のプラスチックレンズPL1、PL2を成型した。プラスチックレンズPL1の成型用樹脂の主原料としては、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート56.48質量部およびm-キシリレンジイソシアネート43.52質量部の混合物を用いた。添加剤として、スズ系触媒0.007質量部、酸性リン酸エステル系内部離型剤0.14質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.10質量を用いた。m-キシリレンジイソシアネートと添加剤とを減圧下で撹拌混合した後、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネートを添加し、減圧下、60℃でゆっくりと撹拌混合した。粘度が200cps(23℃)になった時点で撹拌混合を終了し、プラスチックレンズPL1成型用の樹脂組成物を作製した。プラスチックレンズPL2の成型用樹脂の主原料としては、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール48.09質量部およびm-キシリレンジイソシアネート51.91質量部の混合物を用いた。添加剤として、スズ系触媒0.007質量部、酸性リン酸エステル系内部離型剤0.14質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.10質量を用いた。m-キシリレンジイソシアネートと添加剤とを減圧下で撹拌混合した後、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオールを添加し、減圧下、60℃でゆっくりと撹拌混合した。粘度が200cps(23℃)になった時点で撹拌混合を終了し、プラスチックレンズPL2成型用の樹脂組成物を作製した。重合開始温度は60℃とし、10時間かけて重合最終温度130℃へと上昇させ(昇温速度:0.12℃/min)、試料を130℃で5時間保持した後、2時間かけて60℃に冷却し、チオウレタン系プラスチックレンズPL1(屈折率1.60)およびチオウレタン系プラスチックレンズPL2(屈折率1.67)を得た。
【0095】
(実施例2)
アクリル系共重合体A2(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=78質量%/2質量%/20質量%、酸価14.9mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体A2のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,100,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.8であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-49℃であった。
【0096】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.8質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/COOHの当量比=0.49)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0097】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0098】
(実施例3)
アクリル系共重合体A3(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=78質量%/2質量%/20質量%、酸価14.5mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体A3のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,380,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.5であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-49℃であった。
【0099】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.8質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/COOHの当量比=0.50)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0100】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0101】
(実施例4)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を5.0質量部(固形分換算2.3質量部、NCO/COOHの当量比=0.36)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0102】
(実施例5)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を8.3質量部(固形分換算3.7質量部、NCO/COOHの当量比=0.60)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0103】
(実施例6)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を3.2質量部(固形分換算1.4質量部、NCO/COOHの当量比=0.23)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0104】
(実施例7)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を10.0質量部(固形分換算4.5質量部、NCO/COOHの当量比=0.72)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0105】
(実施例8)
アクリル系共共重合体B(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=79質量%/1質量%/20質量%、酸価7.5mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Bのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,350,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.2であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-50℃であった。
【0106】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)5.3質量部(固形分換算2.4質量部、NCO/COOHの当量比=0.75)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0107】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0108】
(実施例9)
アクリル系共重合体C(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=75質量%/5質量%/20質量%、酸価37.1mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Cのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,150,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.7であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-45℃であった。
【0109】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)10.1質量部(固形分換算4.5質量部、NCO/COOHの当量比=0.29)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0110】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0111】
(実施例10)
アクリル系共重合体D(アクリル酸ドデシル/アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸=78質量%/20質量%/2質量%、酸価14.9mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系重合体Dのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,200,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.7であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-22℃であった。
【0112】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.8質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/COOHの当量比=0.49)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0113】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0114】
(実施例11)
アクリル系共重合体E(メタクリル酸イソデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=78質量%/2質量%/20質量%、酸価14.6mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Eのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,360,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.2であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-27℃であった。
【0115】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.8質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/COOHの当量比=0.50)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0116】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0117】
(実施例12)
アクリル系共重合体F(メタクリル酸テトラデシル/アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸=88質量%/10質量%/2質量%、酸価14.9mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Fのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,100,000で、多分散度(Mw/Mn)は10.0であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-20℃であった。
【0118】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)5.0質量部(固形分換算2.3質量部、NCO/COOHの当量比=0.36)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0119】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0120】
(実施例13)
アクリル系共重合体G(アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸/酢酸ビニル=83質量%/2質量%/15質量%、酸価15.0mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Gのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,380,000で、多分散度(Mw/Mn)は10.0であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-57℃であった。
【0121】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)8.3質量部(固形分換算3.7質量部、NCO/COOHの当量比=0.59)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0122】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0123】
(実施例14)
アクリル系共重合体H(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/酢酸ビニル=83質量%/2質量%/15質量%、水酸基価10.0mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Hのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,420,000で、多分散度(Mw/Mn)は9.8であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-54℃であった。
【0124】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)5.0質量部(固形分換算2.3質量部、NCO/OHの当量比=0.53)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0125】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0126】
(比較例1)
アクリル系共重合体I(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル=85質量%/10質量%/5質量%、水酸基価24.0mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Iのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は753,000で、多分散度(Mw/Mn)は17.1であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-48℃であった。
【0127】
続いて、この粘着剤溶液333質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)6.7質量部(固形分換算3.0質量部、NCO/OHの当量比=0.30)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。
【0128】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0129】
(比較例2)
アクリル系共重合体I(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル=85質量%/10質量%/5質量%、水酸基価24.0mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Iのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は753,000で、多分散度(Mw/Mn)は17.1であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-48℃であった。
【0130】
続いて、この粘着剤溶液333質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)11.2質量部(固形分換算5.0質量部、NCO/OHの当量比=0.50)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。
【0131】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0132】
(比較例3)
アクリル系共重合体J(アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸/酢酸ビニル=89.5質量%/0.5質量%/10質量%、酸価3.8mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系重合体Jのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,020,000で、多分散度(Mw/Mn)は31.2であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-63℃であった。
【0133】
続いて、この粘着剤溶液333質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)3.3質量部(固形分換算1.5質量部、NCO/COOHの当量比=1.07)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。
【0134】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0135】
(比較例4)
アクリル系共重合体K(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸メチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル=50質量%/45質量%/5質量%)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体Kのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は672.000で、多分散度(Mw/Mn)は18.2であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-28℃であった。
【0136】
続いて、この粘着剤溶液333質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)3.3質量部(固形分換算1.5質量部、NCO/OHの当量比=0.15)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度30質量%)を調整した。
【0137】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。次いで、実施例1と同様にして、プラスチックレンズを得た。
【0138】
(比較例5)
アクリル系共重合体A4(メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/酢酸ビニル=78質量%/2質量%/20質量%、酸価14.8mgKOH/g)から成る粘着剤の酢酸エチル/トルエン溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたアクリル系共重合体A4のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は1,240,000で、多分散度(Mw/Mn)は16.7であった。また、Foxの式から計算したガラス転移温度Tgは-49℃であった。
【0139】
続いて、この粘着剤溶液250質量部(固形分換算100質量部)に対して、綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)3.2質量部(固形分換算1.4質量部、NCO/COOHの当量比=0.23)をディスパーにて配合し、塗工用粘着剤溶液(固形分濃度40質量%)を調整した。
【0140】
続いて、この塗工用粘着剤溶液を、複合基材2の第1の基材4に塗工した後、110℃
の温度で3分間、加熱することで、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。
【0141】
(比較例6)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を11.7質量部(固形分換算5.3質量部、NCO/COOHの当量比=0.84)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0142】
(比較例7)
綜研化学社製ポリイソシアネート系架橋剤“コロネートL-45”(商品名、固形分濃度45質量%、NCO含有量8質量%)の使用量を2.6質量部(固形分換算1.2質量部、NCO/COOHの当量比=0.19)に変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ1およびプラスチックレンズを得た。
【0143】
2.評価方法
(1)粘着テープ1の評価方法
(1-1)粘着力試験
23℃の温度条件下で、実施例1~14および比較例1~7で作製した粘着テープ1について、JIS Z 0237(2009)に記載された方法に準拠して、対研磨SUS粘着力試験(引き剥がし粘着力試験)を行った。
具体的には、粘着テープ1を研磨したステンレス板(SUS304)に貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、20~40分放置した後、引張試験機を用いて、ステンレス板に対して180°方向へ5mm/sの速度で引き剥がし、対研磨SUS板に対する粘着力を測定した。
【0144】
(1-2)保持力試験
23℃の温度条件下で、実施例1~14および比較例1~7で作製した粘着テープ1について、JIS Z 0237(2009)に記載された方法に準拠して、対研磨SUS粘着力試験(保持力試験)を行った。具体的には、粘着剤層を対研磨SUS板(SUS304)に対して、粘着テープ1の長さ方向の端部がはみ出るようにしてサイズ25mm×25mmの面積で貼り合わせた。そして、粘着テープ1上に質量2kgのローラを5mm/sの速度で1往復させ、圧着した。続いて、粘着テープ1を圧着してから約20分~40分経過した後、40℃の温度条件下で、質量1kgのおもりを粘着テープ1の端部に取り付けた。そして、おもりを取り付けてから粘着テープ1が研磨SUS板から完全に剥がれ落ちるまでの経過時間、または24時間経過後の粘着テープ1のズレ量(mm)を測定した。
【0145】
(1-3)クリープ試験
23℃の温度条件下で、実施例1~14および比較例1~7で作製した粘着テープ1について、粘着剤層を、対研磨SUS板(SUS304)に対して、粘着テープ1の長さ方向の端部がはみ出るようにしてサイズ25mm×25mmの面積で貼り合わせた。そして、粘着テープ1上に質量2kgのローラを5mm/sの速度で1往復させ、圧着した。続いて、粘着テープ1を圧着してから約20分~40分経過した後、40℃に調整した6個掛記録式クリープテスター(株式会社東洋精機製作所、型式C100-6)に試験片をかけ、質量0.5kgの荷重をかけた。その後、800分後のズレ量(mm)を測定することにより、クリープ試験を行った。なお、ズレ量は6試験片の平均値とした。
【0146】
(1-4)粘着層の溶出率の測定
実施例1~14および比較例1~7で作製した粘着テープ1について、サイズ25mm×25mmの面積で裁断し、試験片とした。続いて、20℃および80℃に調整したトルエンに2時間浸漬させ、浸漬前後の重量を測定し、下記(1)式により、それぞれの温度のトルエンに対する溶出率の測定を行った。
溶出率(%)={1-[(W-W)/(W-W)]} ×100 (1)
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0147】
(2)プラスチックレンズの評価
実施例1~14および比較例1~7にて調製した粘着テープ1を用いて作製したプラスチックレンズPL1、PL2について、目視により白化、シワ、気泡の発生の有無の観察、評価した。また、粘着テープ1剥離後のモールドおよびプラスチックレンズの側面に対する粘着剤残りの有無についても、目視により評価した。尚、プラスチックレンズの白化とは、プラスチックレンズに対して光を照射した場合に、プラスチックレンズが白く濁って見える状態をいう。プラスチックレンズに対する白化、シワ、気泡の発生、ならびにモールドおよびプラスチックレンズ側面に対する粘着剤残りの発生についての評価は、以下の基準で行った。
【0148】
(白化の発生)
A:白化が観察されない。
B:白化が、プラスチックレンズ外周縁部において、わずかに観察される。
C:白化が、プラスチックレンズ外周縁部において、明確に観察される。
(気泡の発生)
A:気泡が観察されない。
B:気泡が、プラスチックレンズ外周縁部において、わずかに観察される。
C:気泡が、プラスチックレンズ外周縁部において、明確に観察される。
(シワの発生)
A:シワが観察されない。
B:シワが、プラスチックレンズ側面部において、わずかに観察される。
C:シワが、プラスチックレンズ側面部において、明確に観察される。
(粘着剤残りの発生)
A:粘着剤残りが観察されない。
B:粘着剤残りが、モールドおよびまたはプラスチックレンズ側面部において、わずかに観察される。
C:粘着剤残りが、モールドおよびまたはプラスチックレンズ側面部において、明確に観察される。
いずれの試験においても、AまたはBの評価を実用上問題のないレベルと判定した。
【0149】
3.試験結果
実施例1~14および比較例1~7の粘着テープ1に対する評価結果について、表1~4に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
表1~3に示すように、粘着剤層3として、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が1,100,000以上、分子量の多分散度(Mw/Mn)が10.0以下である官能基を有するアクリル系共重合体(A1~A3、B~H)および該官能基と反応する架橋剤を含む粘着剤組成物を用い、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率を48.0%以下、クリープ試験におけるズレ量を0.15mm以上0.50mm以下とした実施例1~14の粘着テープ1では、高屈折率プラスチックレンズPL1(屈折率1.60)およびPL2(屈折率1.67)の短時間昇温プロセスによる成型において、白化を始めとする外観の各特性のいずれにおいても、好ましい結果が得られることが確認された。
【0155】
アクリル系共重合体の酸価が14.8mgKOH/gと同じで、架橋剤の含有量のみが異なる実施例1、実施例4~7の比較において、架橋剤の含有量が1.4質量%(NCO/COOH=0.23)と最も少ない実施例6は、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が47.7%と他の実施例よりも大きいため、粘着剤層3のプラスチックレンズ成型用樹脂への溶出量がやや多くなり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化がわずかに観察された。また、架橋剤の含有量が4.5質量%(NCO/COOH=0.72)と最も多い実施例7は、クリープ試験におけるズレ量が0.15mmと他の実施例よりも小さいため、粘着剤層3の凝集力がやや大きく、すなわち応力緩和性がやや劣り、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワがわずかに観察された。
【0156】
また、アクリル系共重合体の酸価が37.1mgKOH/gと大きく、架橋剤の含有量が4.5質量%と多い実施例9も、クリープ試験におけるズレ量が0.15mmと他の実施例よりも小さいため、粘着剤層3の凝集力がやや大きく、すなわち応力緩和性がやや劣り、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワがわずかに観察された。
【0157】
さらに、アクリル系共重合体の主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が8個で、架橋剤の含有量が3.7質量部である実施例13は、アクリル系共重合体の主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が12個で、架橋剤の含有量が3.7質量部である実施例5と比較して、クリープ試験におけるズレ量が0.18mmと小さいため、粘着剤層3の凝集力がやや大きく、すなわち応力緩和性がやや劣り、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワがわずかに観察された。
【0158】
さらにまた、アクリル系共重合体の官能基が水酸基で、架橋剤の含有量が2.3質量部である実施例14は、アクリル系共重合体の官能基がカルボキシル基で、架橋剤の含有量が2.3質量部である実施例4と比較して、クリープ試験におけるズレ量が0.15mmと小さいため、粘着剤層3の凝集力がやや大きく、すなわち応力緩和性がやや劣り、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワがわずかに観察された。
【0159】
これにより、粘着剤層3として、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が1,100,000以上、分子量の多分散度(Mw/Mn)が10.0以下である官能基を有するアクリル系共重合体および該官能基と反応する架橋剤を含む粘着剤組成物を用い、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率を48.0%以下、クリープ試験におけるズレ量を0.15mm以上0.50mm以下となるように設計した実施例1~14の粘着テープ1は、高屈折率プラスチックレンズの短時間昇温プロセスによる成型用粘着テープ用として有用であることが確認された。
【0160】
これに対し、表3~4に示すように、粘着剤層3が、本発明の構成要件を満たさな比較例1~7は、白化、シワ、気泡、粘着剤残りの少なくともいずれかの評価結果が実施例1~14より劣る結果であることが確認された。
【0161】
具体的には、重量平均分子量(Mw)が753,000と小さく、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が17.1と大きいアクリル系共重合体Iを用いた比較例1は、架橋が不十分な低分子量成分の影響で、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が80.0%と実施例と比較して極めて大きいため、粘着剤層3のプラスチックレンズ成型用樹脂への溶出量が多くなり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が明確に観察された。また、主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が4個で、アクリル系共重合体の官能基が水酸基であるためと推測されるが、クリープ試験におけるズレ量も0.10mmと実施例と比較して極めて小さいため、粘着剤層3の凝集力が大きく、すなわち応力緩和性が劣り、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワが明確に観察された。
【0162】
また、比較例1に対して、架橋剤の含有量を5.0質量%まで多くした比較例2は、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が45.0%と小さくなり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部の白化はわずかに観察される程度に改善されたものの、クリープ試験におけるズレ量も0.10mm以下とさらに小さくなったため、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面のシワについては依然として改善されなかった。
【0163】
さらに、重量平均分子量(Mw)が1,020,000と小さく、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が31.2と極めて大きいアクリル系共重合体Jを用いた比較例3は、架橋が不十分な低分子量成分の影響で、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が75.8%と実施例と比較して極めて大きいため、粘着剤層3のプラスチックレンズ成型用樹脂への溶出量が多くなり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が明確に観察された。また、アクリル系共重合体の酸価が3.8mgKOH/gであるためと推測されるが、クリープ試験におけるズレ量は0.60mmであったため、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワは発生しなかった。なお、粘着剤残りについては、粘着テープ1剥離後のモールドの側面にわずかに観察されるレベルであった。
【0164】
さらにまた、重量平均分子量(Mw)が672,000と小さく、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が18.2と大きく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が1個であるアクリル酸メチルを45質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が4個であるアクリル酸ブチルを50質量%含むアクリル系共重合体Kを用いた比較例4は、特にアクリル酸メチルの溶解度パラメーターSP値がトルエンのSP値と離れているためと推測されるが、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が31.0%であり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が発生しなかった。しかしながら、アクリル系共重合体の官能基が水酸基であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の数が小さいためと推測されるが、クリープ試験におけるズレ量も0.11mmと実施例と比較して小さいため、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワが明確に観察された。また、粘着剤残りについては、重量平均分子量(Mw)が672,000と小さいためと推測されるが、粘着テープ1剥離後のモールドの側面に明確に観察された。
【0165】
さらにまた、重量平均分子量(Mw)が1,240,000で本発明の範囲を満たしているが、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が16.7と大きく本発明の範囲外であるアクリル系共重合体A-4を用いた比較例5は、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が51.6%と比較例1、比較例3と比較して小さくはなっているものの、実施例と比較して該値は依然として大きいため、粘着剤層3のプラスチックレンズ成型用樹脂への溶出量が多くなり、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が明確に観察された。
【0166】
さらにまた、重量平均分子量(Mw)、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が本発明の範囲を満たしているアクリル系共重合体A-1を用いてはいるが、架橋剤の含有量の増量調整により、クリープ試験におけるズレ量が0.10mm以下となった比較例6は、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が発生しなかったものの、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワが明確に観察された。
【0167】
さらにまた、重量平均分子量(Mw)、分子量の多分散度が(Mw/Mn)が本発明の範囲を満たしているアクリル系共重合体A-1を用いてはいるが、架橋剤の含有量の減量調整により、80℃の温度に調整されたトルエンへの溶出率が49.5%となった比較例7は、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の側面にシワが発生しなかったものの、得られたプラスチックレンズPL1およびPL2の外周縁部に白化が明確に観察された。なお、粘着剤残りについては、粘着テープ1剥離後のモールドの側面にわずかに観察されるレベルであった。
【符号の説明】
【0168】
1…粘着テープ、2…複合基材、3…粘着剤層、4…第1の基材、5…無機薄膜層、6…接着層、7…第2の基材、10…第1の積層体、20…第2の積層体、50…モールド、100…プラスチックレンズ成型用樹脂、C…キャビティ。
図1
図2