(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2022157730
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】202220767900.9
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517409583
【氏名又は名称】エーエーシー マイクロテック(チャンヂョウ)カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.3 changcao road, Hi-TECH Industrial Zone, Wujin District, Changzhou City, Jiangsu Province, P.R. China
(73)【特許権者】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ツゥイ,ジュイヨン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤオ
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6313276(JP,B2)
【文献】特許第6172543(JP,B2)
【文献】特許第6197083(JP,B2)
【文献】特許第6811517(JP,B2)
【文献】特開2020-022350(JP,A)
【文献】特許第6059795(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を有するハウジングと、前記収容空間内に収容される振動ユニット及び固定子ユニットとを含む振動モータであって、前記振動ユニットが、質量ブロックと、前記質量ブロックに固定される第1駆動部材と、前記質量ブロックを前記収容空間内に支持する弾性部材とを含み、前記固定子ユニットが、前記第1駆動部材に対応して設けられる第2駆動部材を含む振動モータにおいて、
前記弾性部材は、前記質量ブロックに固定される第1固定部と、前記ハウジングに固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部とを接続する弾性部とを含み、前記振動モータは、前記第1固定部及び/又は前記第2固定部に固定される溶接片を更に含み、前記溶接片は、矩形部と、前記矩形部から延在する突出部とを含み、前記突出部の幅は、前記矩形部の幅よりも小さ
く、
前記矩形部は、互いに対向して平行に設けられる第1側辺と、前記第1側辺に垂直な第2側辺とを有し、前記突出部は、一方の前記第1側辺から、前記第2側辺に平行でありながら他方の前記第1側辺を離れて行く方向に沿って延在し、
前記突出部は、前記第1側辺に平行な第3側辺を有し、前記第3側辺とそれに隣接する前記第1側辺との間の垂直ピッチは、0.2mmよりも大きく、
前記第3側辺の端点から前記第2側辺までの垂直ピッチは、0.5mmよりも大きいことを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
前記第3側辺の2つの端点のそれぞれから前記第3側辺に隣接する前記第2側辺までの垂直ピッチは、等しいことを特徴とする請求項
1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記突出部は、台形をなすことを特徴とする請求項
2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記溶接片は、前記第1固定部の前記質量ブロックから離間する表面に位置することを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記溶接片は、前記第2固定部の前記ハウジングから離間する表面に位置することを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記質量ブロックには、前記第1固定部に固定される固定ボスが設けられ、前記溶接片の投影と前記固定ボスの投影とは、前記溶接片の厚み方向において完全に重なることを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記第1側辺は、前記矩形部の長軸方向に沿って延在し、前記第2側辺は、前記矩形部の短軸方向に沿って延在することを特徴とする請求項
1に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記ハウジングは、上ケースと、前記上ケースに固定され且つ前記上ケースとともに囲んで前記収容空間を形成する下蓋とを含み、前記固定子ユニットは、前記下蓋に固定され、
前記質量ブロックには、貫通するスルーホールが設けられ、前記第1駆動部材は、前記スルーホール内に収容され且つ前記質量ブロックに固定される透磁板と前記透磁板に固定される磁性鋼とを含み、
前記第2駆動部材は、前記下蓋に固定され且つ前記スルーホール内に延在して前記磁性鋼に対応して設けられる鉄心と、前記鉄心に巻き付けられるコイルとを含み、前記固定子ユニットは、前記下蓋に固定されるFPCを更に含み、前記FPCは、前記コイルに電気的に接続され、
前記コイルが通電後で前記磁性鋼と相互作用することにより、前記弾性部材は、前記質量ブロックを駆動して往復運動させることを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特にモバイル電子製品分野に適用される振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発展に伴い、携帯電話、ハンドヘルドゲーム機、ナビゲーション装置、ハンドヘルドマルチメディアエンターテインメント機器等の携帯型消費電子製品は、益々人々の愛顧を受けてきている。これらの電子製品は、一般的に、振動モータを用いてシステムフィードバックを生成する。例えば、携帯電話の着信提示、情報提示、ナビゲーション提示、ゲーム機の振動フィードバック等がある。このような広範な応用には、振動モータの優れた性能や長い耐用年数が求められている。
【0003】
関連技術の振動モータは、収容空間を有するハウジングと、前記収容空間に位置する振動ユニットと、前記ハウジングに固定される固定子ユニットとを含み、振動ユニットは、通常、質量ブロック及び弾性部材を含み、弾性部材は、溶接片を介して前記質量ブロックに溶接される。しかし、関連技術の溶接片が通常矩形であり、前記溶接片と前記弾性部材との溶接面も矩形であるため、弾性部材の前記溶接片に近接する上下縁位置に応力が集中しやすく、弾性部材の縁部の疲労寿命が短く、弾性部材が破断し、振動モータの信頼性が低下してしまった。
【0004】
したがって、上記問題を解決する新たな振動モータを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に鑑みて、本発明は、疲労寿命が長く、信頼性がより高い振動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、振動モータを提供する。当該振動モータは、収容空間を有するハウジングと、前記収容空間内に収容される振動ユニット及び固定子ユニットとを含み、前記振動ユニットは、質量ブロックと、前記質量ブロックに固定される第1駆動部材と、前記質量ブロックを前記収容空間内に支持する弾性部材とを含み、前記固定子ユニットは、前記第1駆動部材に対応して設けられる第2駆動部材を含み、前記弾性部材は、前記質量ブロックに固定される第1固定部と、前記ハウジングに固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部とを接続する弾性部とを含み、前記振動モータは、前記第1固定部及び/又は前記第2固定部に固定される溶接片を更に含み、前記溶接片は、矩形部と、前記矩形部から延在する突出部とを含み、前記突出部の幅は、前記矩形部の幅よりも小さい。
【0007】
好ましくは、前記矩形部は、互いに対向して平行に設けられる第1側辺と、前記第1側辺に垂直な第2側辺とを有し、前記突出部は、一方の前記第1側辺から、前記第2側辺に平行でありながら他方の前記第1側辺を離れて行く方向に沿って延在する。
【0008】
好ましくは、前記突出部は、前記第1側辺に平行な第3側辺を有し、前記第3側辺とそれに隣接する前記第1側辺との間の垂直ピッチは、0.2mmよりも大きい。
【0009】
好ましくは、好ましくは、前記第3側辺の端点から前記第2側辺までの垂直ピッチは、0.5mmよりも大きい。
【0010】
前記第3側辺の2つの端点のそれぞれから前記第3側辺に隣接する前記第2側辺までの垂直ピッチは、等しい。
【0011】
好ましくは、前記突出部は、台形をなす。
【0012】
好ましくは、前記溶接片は、前記第1固定部の前記質量ブロックから離間する表面に位置する。
【0013】
好ましくは、前記溶接片は、前記第2固定部の前記ハウジングから離間する表面に位置する。
【0014】
好ましくは、前記質量ブロックには、前記第1固定部に固定される固定ボスが設けられ、前記溶接片の投影と前記固定ボスの投影とは、前記溶接片の厚み方向において完全に重なる。
【0015】
好ましくは、前記第1側辺は、前記矩形部の長軸方向に沿って延在し、前記第2側辺は、前記矩形部の短軸方向に沿って延在する。
【発明の効果】
【0016】
関連技術よりも、本発明に係る振動モータのうち、弾性部材の第1固定部及び/又は第2固定部に固定される溶接片が、第1矩形部と、前記矩形部から延在する突出部とを含み、前記突出部の幅が前記矩形部の幅よりも小さく、突出部の幅を小さくすることにより、弾性部材の上下縁の応力が集中するという従来設計における問題を有効に解決し、縁での応力を低減し、弾性部材の疲労寿命を長くし、実際の生産及び応用過程における弾性部材の疲労破断のリスクを低減し、振動モータの信頼性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明における振動モータの弾性部材と溶接片の斜視図である。
【
図5】本発明における振動モータの弾性部材と溶接片の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面及び具体的な実施形態を用いて本発明の解決手段を明瞭で完全に説明する。
【0019】
図1-
図5に示すように、本発明は、振動モータ100を提供する。当該振動モータ100は、収容空間10を有するハウジング1と、前記収容空間10内に収容される振動ユニット2及び固定子ユニット3とを含む。
【0020】
前記ハウジング1は、収容空間10を有する上ケース11と、前記上ケース11に固定され且つ前記上ケース11とともに囲んで前記収容空間10を形成する下蓋12とを含み、前記固定子ユニット3は、前記下蓋12に固定されている。
【0021】
前記振動ユニット2は、質量ブロック21と、前記質量ブロック21に固定される第1駆動部材22と、前記質量ブロック21を前記収容空間10内に支持する弾性部材23とを含む。具体的に、前記質量ブロック21には、貫通するスルーホール211が設けられ、前記第1駆動部材22は、スルーホール211内に収容され且つ前記質量ブロック21に固定される透磁板221と前記透磁板221に固定される磁性鋼222とを含む。
【0022】
前記固定子ユニット3は、前記第1駆動部材22に対応して設けられる第2駆動部材31を含み、前記第2駆動部材31は、前記下蓋12に固定され且つ前記スルーホール211内に延在して前記磁性鋼222に対応して設けられる鉄心311と、前記鉄心311に巻き付けられるコイル312とを含み、前記コイル312と前記鉄心311とは、何れも前記磁性鋼222と間隔を空けて設けられ、前記固定子ユニットは、前記下蓋12に固定されるFPC31を更に含み、前記FPC31は、前記コイル312に電気的に接続されている。前記コイル312が通電後で前記磁性鋼222と相互作用することにより、前記弾性部材23は、前記質量ブロック21を駆動して往復運動させる。
【0023】
具体的に、本実施例において、前記弾性部材23は、前記質量ブロック21に固定される第1固定部231と、前記上ケース11に固定される第2固定部232と、前記第1固定部231と前記第2固定部232とを接続する弾性部233とを含み、前記振動モータ100は、前記第1固定部231と前記第2固定部232とに固定される溶接片4を更に含み、前記溶接片4は、前記第1固定部231の前記質量ブロック21から離間する表面と、前記第2固定部232の前記上ケース11から離間する表面に固定されている。
【0024】
図2-
図5に示すように、前記溶接片4は、矩形部41と、前記矩形部41から延在する突出部42とを含み、前記突出部42の幅は、前記矩形部41の幅よりも小さい。以下では、前記溶接片4の構造について更なる記述を行う。
【0025】
図5に示すように、前記矩形部41は、互いに対向して平行に設けられる第1側辺411と、前記第1側辺411に垂直な第2側辺412とを有し、前記突出部42は、一方の前記第1側辺411から、前記第2側辺412に平行でありながら他方の前記第1側辺411を離れて行く方向に沿って延在し、前記突出部42は、前記第1側辺411に平行な第3側辺421を有し、前記第3側辺421と隣接する前記第1側辺411との間の垂直ピッチは、
図5のD1に示すように、0.2mmよりも大きい。前記第3側辺421の端点から前記第2側辺412までの垂直ピッチは、
図5のD2に示すように、0.5mmよりも大きい。より好ましくは、前記第3側辺421の2つの端点のそれぞれから隣接する前記第2側辺412までの垂直ピッチは、等しい。その際、前記突出部42は、台形をなす。本実施例において、前記第1側辺411に平行である方向において、前記矩形部41の幅、即ち、前記第1側辺411の長さは、前記第1固定部231の幅に等しい。その際、溶接片4は、前記第1固定部231を完全に覆う。図面から分かるように、前記第1側辺411は、前記矩形部41の長軸方向に沿って延在し、前記第2側辺412は、前記矩形部41の短軸方向に沿って延在する。実際の生産及び応用過程において、弾性部材23の縁が裁断成形された後、多くのミクロ製造欠陥が存在し、それらが疲労亀裂源の主な発生地である。本発明では、前記溶接片4の2つの部分、即ち、前記矩形部41と前記突出部42は、前記第1固定部231から前記弾性部233に近づく方向に、幅が徐々に減少し、前記弾性部材23の溶接片4に近接する上下縁での応力集中を低減し、その代わりに、弾性部材23の上下縁の間、即ち中央部に最大応力を集中させ、弾性部材23の上下縁の応力を低減し、弾性部材23の疲労破断のリスクを低減する。
【0026】
それ相応に、前記質量ブロック21には、前記第1固定部231に固定される固定ボス212が設けられ、前記溶接片4の投影と前記固定ボス212の投影とは、前記溶接片4の厚み方向において完全に重なる。即ち、当該固定ボス212には、前記突出部42の形状と同じ部分も設けられている。これにより、前記第1固定部231が前記溶接片4と前記固定ボス212との間に介在されたときに、両側も弾性部材23に対して均一且つ同じ作用をする。
【0027】
本発明の振動モータは、収容空間を有するハウジングと、前記収容空間内に収容される振動ユニット及び固定子ユニットとを含み、前記振動ユニットは、質量ブロックと、前記質量ブロックに固定される第1駆動部材と、前記質量ブロックを前記収容空間内に支持する弾性部材とを含み、前記固定子ユニットは、前記第1駆動部材に対応して設けられる第2駆動部材を含み、前記弾性部材は、前記質量ブロックに固定される第1固定部と、前記ハウジングに固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部とを接続する弾性部とを含み、前記振動モータは、前記第1固定部及び/又は前記第2固定部に固定される溶接片を更に含み、前記溶接片は、矩形部と、前記矩形部から延在する突出部とを含み、前記突出部の幅は、前記矩形部の幅よりも小さい。関連技術よりも、本発明に係る振動モータは、弾性部材の溶接片における突出部の幅を小さくすることにより、弾性部材の上下縁の応力が集中するという従来設計における問題を有効に解決し、縁での応力を低減し、弾性部材の疲労寿命を長くし、実際の生産及び応用過程における弾性部材の疲労破断のリスクを低減し、振動モータの信頼性を向上させる。
【0028】
上述したのは、本発明の実施形態に過ぎない。なお、当業者が本発明の創造的思想から逸脱しない前提で改良もなすことができるが、これらの改良は、何れも本発明の保護範囲に含まれる。