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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】多層離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231124BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/32 Z
B32B27/16 101
B32B27/18 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022503596
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006582
(87)【国際公開番号】W WO2021172257
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020034076
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直紀
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179827(JP,A)
【文献】特開2020-019263(JP,A)
【文献】特開2004-035625(JP,A)
【文献】特開2008-094909(JP,A)
【文献】特開2014-136727(JP,A)
【文献】特開2018-178106(JP,A)
【文献】特開2000-263724(JP,A)
【文献】特開平06-299019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
B32B 27/16
B32B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性樹脂及びラジカル捕捉剤を含む離型層Aと、エチレン系重合体を含む樹脂層Bとを含む多層フィルムを、
電子線照射し樹脂層Bが架橋されてなる多層離型フィルムであって、
該離型層Aに含まれる該非架橋性樹脂が、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)及び/又はその共重合体であり、かつ
電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角が90°から130°である、
上記多層離型フィルム。
【請求項2】
前記離型層Aの示差走査熱量計により求められる融点が200℃以上である、請求項1に記載の多層離型フィルム。
【請求項3】
前記ラジカル捕捉剤の全量が、前記離型層Aの総重量に対して0.5~2.0重量%である、請求項1又は2に記載の多層離型フィルム。
【請求項4】
前記ラジカル捕捉剤が、ヒンダードアミン光安定剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、重合禁止剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、フェノール系酸化防止剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項7】
前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤とリン系酸化防止剤とを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項8】
両表面層に前記離型層Aを有し、コア層に前記樹脂層Bを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項9】
プリント配線基板製造プロセスまたは半導体の樹脂封止プロセスに用いる請求項1~のいずれか一項に記載の多層離型フィルム。
【請求項10】
ラジカル捕捉剤及び非架橋性樹脂を含む離型層Aと、エチレン系重合体を含む樹脂層Bと、を含む多層フィルムであって、
該離型層Aに含まれる該非架橋性樹脂が、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)及び/又はその共重合体である、
上記多層フィルム
【請求項11】
請求項10に記載の多層フィルムを電子線照射し、樹脂層Bが架橋されてなる多層離型フィルムであって、
電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角が90°から130°である、
上記多層離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐破断性、追随性、離型性、側面の噛み込み防止、クッション層染み出し抑制等の物性に優れた多層離型フィルムに関し、より具体的にはプリント配線基板製造プロセスまたは半導体の樹脂封止プロセスに幅広く利用可能な多層離型フィルム、その製法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
成形性、追随性が改良されたプリント配線基板製造プロセスに利用される離型フィルムとして、電子線などの放射線にて架橋する中心層と、電子線などの放射線にて架橋しない離型層(表面層)とを有する多層フィルムが開示されている。(特許文献1)。
しかしながら、圧縮成形法により半導体チップ等の物品を樹脂封止する際やフレキシブルプリント基板(以下、「FPC」ともいう。)のカバーレイ貼りつけのプレス時に、離型フィルムが破断してしまうという問題が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-179827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術の限界に鑑み、好ましくは圧縮成形法またはトランスファーモールド成形法により半導体チップ等の物品を樹脂封止する工程や、FPCのカバーレイ貼りつけ工程において、半導体樹脂封止後の成型品やFPCのプレス時に、前者ではフィルムの破断、樹脂欠け、側面の噛み込みを生じることなく容易に離型できる多層離型フィルムを、また後者ではフィルムの破断、接着剤染み出し、クッション層染み出しを生じることなく容易に離型できる多層離型フィルムを、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記破断が電子線照射による表面離型層を構成する非架橋性樹脂の劣化によるものであることを見出し、更に適切なラジカル捕捉剤を離型層に含有させることで、当該劣化を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]非架橋性樹脂及びラジカル捕捉剤を含む離型層Aと、エチレン系重合体を含む樹脂層Bとを含む多層フィルムを、電子線照射し樹脂層Bが架橋されてなる多層離型フィルムであって、電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角が90°から130°である、
上記多層離型フィルム。
[2]前記離型層Aの示差走査熱量計により求められる融点が200℃以上である、[1]に記載の多層離型フィルム。
[3]前記離型層Aに含まれる樹脂が、αオレフィン重合体、ポリエステル、フッ素系樹脂、及びポリスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つである、[1]又は[2]に記載の多層離型フィルム。
[4]前記ラジカル捕捉剤の全量が、前記離型層Aの総重量に対して0.5~2.0重量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[5]前記ラジカル捕捉剤が、ヒンダードアミン光安定剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、重合禁止剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、[1]~[4]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[6]前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[7]前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、フェノール系酸化防止剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[8]前記離型層Aに含まれるラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤とリン系酸化防止剤とを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[9]前記離型層Aに含まれるαオレフィン重合体がポリ(4-メチル-1-ペンテン)及び/またはその共重合体であることを特徴とする、[3]~[8]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[10]前記離型層Aに含まれるポリエステルがポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする[3]~[8]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[11]両表面層に前記離型層Aを有し、コア層に前記樹脂層Bを有する、[1]~[10]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[12]プリント配線基板製造プロセスまたは半導体の樹脂封止プロセスに用いる[1]~[11]のいずれかに記載の多層離型フィルム。
[13]ラジカル捕捉剤及び非架橋性樹脂を含む離型層Aと、エチレン系重合体を含む樹脂層Bと、を含む多層フィルム。
[14][13]に記載の多層フィルムを電子線照射し、樹脂層Bが架橋されてなる多層離型フィルムであって、電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角が90°から130°である、上記多層離型フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層離型フィルムは、封止時やプレス時の追随性・離型性を損なわずに、封止時やプレス時のフィルムの破断を抑えることができるものであり、実用上高い価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の多層離型フィルムを用いた、半導体チップの樹脂封止プロセスの一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施例/比較例における、成形後の剥離状態等の試験方法を示す模式図である。
図3】本発明の実施例/比較例における、貼り付け後の剥離状態等の試験方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(多層離型フィルム)
本発明は、非架橋性樹脂及びラジカル捕捉剤を含む離型層Aと、エチレン系重合体を含む樹脂層Bとを含む多層フィルムを、電子線照射し、樹脂層Bが架橋されてなる多層離型フィルムであって、電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角が90°から130°である、上記多層離型フィルムである。
【0010】
本発明の多層離型フィルムは、成型品や金型に対する離型性を有する離型層A及び電子線架橋されてなる樹脂層B、を含む積層フィルムである。本発明の別の態様は、両表面層に離型層Aを有し、コア層に電子線架橋されてなる樹脂層Bを有する積層フィルムである。本発明の更なる態様は、両表面層に離型層Aを有し、コア層に電子線架橋されてなる樹脂層Bを有し、所望によりコア層の両側に中間層を有する積層フィルムである。
【0011】
(離型層A)
電子線照射後の離型層Aの水に対する接触角は、90°から130°であり、この様な接触角を有することにより離型層Aは濡れ性が低く、硬化した封止樹脂やFPC、金型表面に固着することなく、成型品を容易に離型することができる。
離型層Aの水に対する接触角は、好ましくは95°から120°であり、より好ましくは98°から115°、更に好ましくは100°から110°である。
フィルム表面の水に対する接触角は、当該技術分野における通常の方法で測定すればよく、例えば本願実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
本発明における離型層Aに含まれる非架橋性樹脂とは、下記の方法に従って測定した常温での破断点伸度が、電子線照射前の破断点伸度と比較して、加速電圧200kVで100kGyの吸収線量電子線の照射後に20%以下に低下する樹脂であり、αオレフィン重合体、ポリエステル、フッ素系樹脂、及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。非架橋性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(破断点伸度)
幅15mmのフィルムを用意し、初期チャック間を50mmとし、23℃環境下、300mm/minで伸長させて、フィルムが破断したときの伸度を、破断点伸度とする
(電子線照射)
フィルムサンプルに対し、加速電圧200kVで100kGyの吸収線量にて電子線を照射する。
【0013】
離型層Aに用いることができるαオレフィン重合体の炭素数は3以上、好ましくは6以上である。αオレフィン重合体として、(4-メチルー1-ペンテン)、オクテン、デセンの重合体、または他のオレフィン単位との共重合体が挙げられる。中でも(4-メチルー1-ペンテン)の重合体または共重合体が好ましい。
【0014】
離型層Aに用いることができるフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を含む樹脂であってもよい。テトラフルオロエチレンの単独重合体であってもよいが、他のオレフィンとの共重合体であってもよい。他のオレフィンの例には、エチレンが含まれる。モノマー構成単位としてテトラフルオロエチレンとエチレンとを含む共重合体は好ましい一例であり、この様な共重合体においては、テトラフルオロエチレンに基づく単位とエチレンに基づく単位とのモル比(TFE/E)が80/20~40/60であることが好ましい。
【0015】
離型層Aに用いることができるポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
離型層Aに用いることができるポリスチレン系樹脂には、スチレンの単独重合体及び共重合体が包含され、その重合体中に含まれるスチレン由来の構造単位は少なくとも60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0016】
ポリスチレン系樹脂は、アイソタクチックポリスチレンであってもシンジオタクチックポリスチレンであってもよいが、透明性、入手の容易さなどの観点からはアイソタクチックポリスチレンが好ましく、離型性、耐熱性などの観点からは、シンジオタクチックポリスチレンが好ましい。ポリスチレンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明における離型層Aはラジカル捕捉剤を含む。好ましくは、離型層Aはラジカル捕捉剤を離型層Aの総重量に対して0.5~2.5重量%、より好ましくは0.5~2.0重量%含む。
離型フィルムの樹脂層Bに電子線照射を行う際に、表面側離型層も必然的に照射を受けることになるが、(4-メチル-1-ペンテン)を初めとするαオレフィンの重合体等の非架橋性樹脂は、構造上電子線による分解を受けやすい。ラジカル捕捉剤を上記範囲で含むことにより、電子線照射によって生成したラジカルを捕捉し、デグラデーションを抑えることが出来る。
【0018】
本発明におけるラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤(以下HALSとも言う)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、重合禁止剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
好ましくは、ラジカル捕捉剤は、ヒンダードアミン光安定剤、フェノール系酸化防止剤である。また、ヒンダードアミン光安定剤とリン系酸化防止剤の組み合わせも、破断点伸度を維持できる点から好ましい。
【0019】
ヒンダードアミン光安定剤(HALS)としては、N-H結合を有するヒンダードアミン光安定剤、N-R結合を有する(Rは一価の炭化水素基を示)ヒンダードアミン光安定剤、N-OR結合を有する(Rは一価の炭化水素基を示す)ヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。
N-H結合を有するヒンダードアミン光安定剤としては、Tetrakis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylateやBis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) sebacateを挙げることができ、それぞれ製品名アデカスタブ LA-57、および製品名アデカスタブ LA-77としてADEKA社より入手できる。また後者は、Tinuvin770としてBASFジャパン株式会社より入手できる。
N-R結合を有する(Rは一価の炭化水素基を示す)ヒンダードアミン光安定剤は、Rとしては、炭素数=1~10の炭化水素基が挙げられ、その中でもRがメチル基であるものが好ましい。このようなHALSとしては、Tetrakis(1,2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylateやBis(1,2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) sebacateを挙げることができ、それぞれ製品名アデカスタブ LA-52、および製品名アデカスタブ LA-72としてADEKA社より入手できる。
N-OR結合を有する(Rは一価の炭化水素基を示す)ヒンダードアミン光安定剤は、Rとしては、炭素数=1~10の炭化水素基が挙げられる。このようなHALSとしては、Bis(1-undecanoxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidin-4-yl)carbonate、Bis-(1-octyloxy-2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl) sebacateを挙げることができ、前者は製品名アデカスタブ LA-81としてADEKA社より、後者は製品名Tinuvin123としてBASFジャパン株式会社より入手できる。
フェノール系酸化防止剤としては、Octadecyl-3-(3,5 -di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate(製品名 Irganox1076、BASFジャパン株式会社)、2,6-Di-tert-butyl-4-methylphenol(製品名 H-BHT、本州化学工業株式会社)が挙げられる。
リン系酸化防止剤として、Tris(2,4-di-tert.-butylphenyl)phosphite(製品名 Irgafos168、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。
重合禁止剤としては、メトキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン等が挙げられる。
【0020】
離型層Aは、成形時の金型の温度(典型的には120~180℃)やFPCのプレス時の温度(典型的には150~190℃)に絶え得る耐熱性を有することが好ましい。かかる観点から、離型層Aの融点は、200℃以上であることが好ましい。融点には特に上限は無いが、通常入手可能な結晶性樹脂の融点は、280℃以下であることが多い。
【0021】
(樹脂層B)
本発明における樹脂層Bはエチレン系重合体を含み、電子線照射により、架橋構造を形成する。このエチレン系共重合体によりクッション性を付与できるが、高温加熱しながら圧力をかけるとクッション層の溶融による染み出しが発生してしまう。そこで、電子線架橋をすることでクッション性を維持しながら染み出しを抑えることができる。
プリント配線基板または半導体パッケージに対する離型フィルムの追従性や、プレス時の伸展性の観点から、エチレン系重合体としてポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-シクロオレフィン共重合体が挙げられる。
【0022】
(その他の層)
本形態の多層離型フィルムは、本発明の目的に反しない限りにおいて、離型層A、樹脂層B以外の層を有していてもよい。例えば、両表面層としての離型層Aとコア層としての樹脂層Bとの間に、必要に応じて中間層を有してもよい。中間層に用いる材料は、離型層Aと樹脂層Bとを強固に接着でき、樹脂封止工程や離型工程、FPCのプレス工程においても剥離しないものであれば、特に制限されない。
例えば、離型層Aが4-メチル-1-ペンテン共重合体を含む場合は、中間層は、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド、4-メチル-1-ペンテンとポリエチレンのブレンド、エチレン共重合体、離型層とコア層のブレンド、メチルペンテン、α-オレフィン共重合体を含んでもよい。
中間層の厚みは、離型層Aと樹脂層Bとの接着性を向上できれば、特に制限はないが、例えば0.5~10μmである。
【0023】
本発明の多層離型フィルムの総厚みには特に制限は無いが、例えば10~300μmであることが好ましく、30~150μmであることがより好ましく、50~120μmであることが最も好ましい。多層離型フィルムの総厚みが上記範囲にあると、巻物として使用する際のハンドリング性が良好であるとともに、フィルムの廃棄量が少ないため好ましい。
【0024】
(多層離型フィルムの製造方法)
本発明の多層離型フィルムは、任意の方法で製造されうる。
架橋前の多層フィルムは、例えば、1)離型層Aと樹脂層Bを共押出成形して積層することにより、多層フィルムを製造する方法(共押出成形法)、2)樹脂層Bとなるフィルム上に、離型層Aや中間層となる樹脂の溶融樹脂を塗布・乾燥したり、または離型層Aや中間層となる樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を塗布・乾燥したりして、離型フィルムを製造する方法(塗布法)、3)予め離型層Aとなるフィルムと、樹脂層Bとなるフィルムとを製造しておき、これらのフィルムを積層(ラミネート)することにより、多層フィルムを製造する方法(ラミネート法)などを採用することができる。そして、得られた多層フィルムを電子線照射して樹脂層Bを架橋することで、本発明の多層離型フィルムが得られる。
【0025】
(樹脂封止プロセス)
本発明の多層離型フィルムは、例えば、圧縮成形法又はトランスファー成形法による樹脂封止プロセスに使用するものである。本発明の多層離型フィルムは、金型内に半導体チップ等を配置して樹脂を注入成形する際に、半導体チップ等と金型内面との間に配置して使用することができる。本発明の多層離型フィルムを用いることで、金型からの剥離不良、バリの発生等を効果的に防止することができる。
上記圧縮成形法による製造プロセスに用いる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、当該技術分野においては熱硬化性樹脂が広く用いられており、特にエポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
上記トランスファー成形法による製造プロセスに用いる樹脂は、当該技術分野においては熱硬化性樹脂が広く用いられており、特にエポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の多層離型フィルムを用いる樹脂封止プロセスは、当該技術分野において従来公知のものを適宜採用することができ、特に制限は無いが、例えば、圧縮成形法による半導体チップの樹脂封止プロセスの場合には、図1に示す1.から9.の各工程をこの順で実施するプロセスが好ましい。
【0027】
より具体的には、まず「1.フィルムカット」工程において、本発明の多層離型フィルム11を、ロール状の巻物から引き出して、X-Yステージ13上に展開し、所定のサイズに切断する。この多層離型フィルム11の所定のサイズには特に制限は無いが、樹脂封止プロセスに用いる下金型19内に設けられたキャビティ19cの全面をカバーし、更に下金型19を構成するクランパ19bと上金型15の間にフィルム11を挟んで固定するための固定代を含む大きさであることが好ましい。
【0028】
次に、「2.枠型設置」工程において、上記固定代と略重なる形状を有する枠14を、上記X-Yステージ13上に展開され、所定のサイズに切断された多層離型フィルム11上に、上記固定代と略重なるように設置する。
【0029】
次に、「3.樹脂計量」工程において、上記多層離型フィルム11上であって、上記枠14内に、所定量の封止樹脂18を計量しながら配置する。封止樹脂18の量には特に制限は無いが、後記「8.圧縮」工程後のキャビティ19cの体積と略同一であることが望ましい。
【0030】
次に、「4.樹脂+フィルム搬送」工程において、上記多層離型フィルム11を上記枠14に吸着したまま、当該離型フィルム11上に配置された封止樹脂18とともに、X-Yステージ13から分離して搬送し、樹脂封止を行なう下金型19上に配置する。このとき、下金型19に設けられたキャビティ19cを上記多層離型フィルム11が覆い、かつ、上記多層離型フィルム11上に配置された封止樹脂18が上記キャビティ19c上に位置するように、配置することが好ましい。
【0031】
次に、「5.真空吸着」工程において、上記多層離型フィルム11の固定代を、上記枠14と下金型19を構成するクランパ19bとの間で固定しながら、上記下金型19中のキャビティ19c内に設けられた吸着孔から脱気して、上記多層離型フィルム11を、キャビティ19cの内面に沿って吸着支持する。このとき、上記プロセス用離型フィルム11の固定代を、下金型19の周縁部に設けられた吸着孔に吸着することで固定してもよい。
フィルム周縁部にある固定代を固定したまま、キャビティ19cの内面に沿って吸着支持されることで、上記多層離型フィルムは、キャビティ深さに略相当する長さだけ伸張される。本工程におけるキャビティ19cの(初期)深さは、本実施形態の樹脂封止プロセスにより作製される樹脂封止半導体素子の厚さに応じて適宜設定することができる。本工程におけるキャビティ19cの(初期)深さは、通常1.0~10.0mmであるが、これに限定されない。
本工程においては、多層離型フィルム11は、容易にキャビティ19cの内面に沿って吸着支持される柔軟性を有するとともに、金型15、19の加熱温度に耐えられる耐熱性を有することが好ましい。また、樹脂封止後に金型19から容易に離型し、かつ、封止樹脂18から容易に剥離できるものであることが好ましい。
【0032】
次に、「6.基板設置」工程において、半導体チップ17(及び必要に応じて回路部品)が搭載された基板16を、半導体チップ17が下向きとなる様に上金型15に吸着し、該半導体チップ17が下金型19中のキャビティ19cの略中心に位置するように、上金型15を移動して位置合わせする。
【0033】
次に、「7.型締め」工程において、当初のキャビティ19cの空間を維持したまま(下金型19中のキャビティブロック19aを当初位置のまま)、上金型15と下金型19とを接触させ、型締めを行なう。
【0034】
次に、「8.圧縮」工程において、キャビティブロック19aを上昇させ、キャビティ19c中の封止樹脂18を圧縮成形する。これにより、基板16上の半導体チップ17(及び必要に応じて回路部品)が、封止樹脂18によって封止される。
キャビティ19cの初期深さと、圧縮成形後のキャビティ19cの最終深さとの差は、1.0mm以上であることが好ましく、1.3mm以上であることがより好ましく、1.6mm以上であることが特に好ましい。大容量のNAND型フラッシュメモリ等の厚みの大きい半導体チップ17を樹脂封止する場合、キャビティ19cの初期深さと、圧縮成形後のキャビティ19cの最終深さとの差が大きくなる傾向にあり、その様な場合であっても、本発明の多層離型フィルムは、剥離不良等の問題を有効に抑制しながら、厚みの大きい半導体チップ17を適切に樹脂封止することができる。
また、キャビティ19cの最終深さ(圧縮成形後の樹脂厚み)は、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることが特に好ましい。キャビティ19cの最終深さが0.5mm以上であることによって、大容量のNAND型フラッシュメモリ等の厚みの大きい半導体チップ17を適切に樹脂封止することができる。
圧縮成形にあたっては、封止樹脂18が適切な流動性を示す温度まで加熱することが好ましく、また封止樹脂18が熱硬化性樹脂である場合にあっては、成形後の封止樹脂が十分に硬化する温度、時間で加熱することが好ましい。例えば、樹脂封止プロセスにおける最高温度を、110から190℃に設定することができ、120から180℃に設定することがより好ましい。
その際の成形圧力、硬化時間にも特に限定は無く、封止樹脂18の種類、および封止温度に対応して適宜好ましい条件を設定すればよいが、例えば成形圧力50~300kN、より好ましくは70~150kN、硬化時間1~60分、より好ましくは2~10分の範囲で適宜設定することができる。
【0035】
封止樹脂18としては、液状樹脂であっても、常温で固体状の樹脂であってもよいが、樹脂封止時加熱により液状となるものなどの封止材を適宜採用できる。封止樹脂材料として、具体的には、主としてエポキシ系樹脂(高分子内に残存させたエポキシ基で架橋ネットワークを形成することで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂であり、好ましくはビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)が用いられ、エポキシ系樹脂以外の封止樹脂として、ポリイミド系樹脂(主鎖の繰り返し単位にイミド結合を有する高分子樹脂であり、好ましくはビスマレイミド系など)、シリコーン系樹脂(主骨格の繰り返し単位にシロキサン結合を有する高分子樹脂であり、好ましくは熱硬化付加型など)など封止樹脂として通常使用されているものを好適に用いることができる。
【0036】
次に、「9.型開き(離型)」工程において、上金型15を下金型19から分離し、成型品(樹脂封止半導体チップ)を金型外へ取り出す。このとき、成型品が多層離型フィルム11から容易に剥離することが好ましく、特にキャビティ19c側面の多層離型フィルム11が、成型品に噛み込むことなく剥離することが好ましい。また、剥離後の成型品の表面が、樹脂欠け等の無い良好な外観を有することが好ましい。本発明の多層離型フィルムを用いると、この様な好ましい結果を実現することが容易となる。
【0037】
(FPCカバーレイ貼り付けプロセスにおける多層離型フィルムの使用)
本発明の多層離型フィルムは、プリント配線基板を構成する、金属配線パターンが形成された回路基材と、カバーレイフィルムとを、加熱加圧して積層する工程において、カバーレイフィルムと加熱加圧のための熱盤等との間に配置して使用することができる。本発明の多層離型フィルムを用いることで、熱盤等からの離型不良、カバーレイフィルム上の接着剤のはみ出し等を効果的に防止することができる。
上記カバーレイフィルム上の接着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、当該技術分野においては熱硬化性樹脂が広く用いられており、特にエポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
上記製造プロセスとしては、FPC用回路基材とカバーレイフィルムとの積層一体化工程が最も代表的であるが、これに限定されるものではなく、本発明の多層離型フィルムは、可撓性ではないプリント配線基板の製造プロセス等にも適用することができる。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
【0039】
以下の実施例/比較例/製造例において、物性/特性の評価は下記の方法で行った。
【0040】
(水に対する接触角(水接触角))
JIS R3257に準拠して、接触角測定器(Kyowa Inter face Science社製、FACECA-W)を用いて、電子線照射後の離型層A表面の水接触角を測定した。
【0041】
(破断点伸度)
製造例で作製した単層離型フィルムを用い、初期チャック間を50mmとし、23℃環境下、300mm/minでTD方向に伸長させて、フィルムが破断したときの伸度を、破断点伸度として測定した。測定方向は、TD方向(フィルム製造時の幅方向)とした。
評価は、加速電圧200kVで100kGyの吸収線量電子線照射後の破断点伸度の値が、電子線照射前の破断点伸度の値と比較して、20%超えを示す場合は「○」、20%以下の場合は「×」と評価した。
【0042】
(離型性:半導体樹脂封止)
各実施例/比較例で作製した多層離型フィルムを用い、図1に示すようなプロセスで、半導体チップの樹脂封止を行なった。
封止樹脂としては、日立化成工業(株)製のエポキシ系リードフレームパッケージ用封止材(銘柄:CEL-9750ZHF10)を用いた。
当該図1のプロセス中の、「4.樹脂+フィルム搬送」、「5.真空吸着」、並びに「7型締め」及び「9.圧縮」の詳細条件を、図2(a)、(b)、並びに(c)に示す。図2(a)中、型締め初期のキャビティ29cの深さaは、2.4mmであり、図2(b)中、キャビティ29cの幅は、54mmであり、図2(b)中、キャビティ29cの紙面垂直方向の長さは、221mmであり、図2(c)中、型締め、圧縮後のキャビティ最終深さaは、0.8mmであった。また、成形金型の温度(成形温度)は175℃、成形圧力は96kN、成形時間は120秒であった。
その後、図1中の「9.型開き(離型)」に示すようにして、上金型を引き上げ、樹脂封止された半導体チップ(半導体パッケージ)を離型フィルムから離型した。離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。

◎:離型フィルムが、金型の開放と同時に自然に剥がれる。
○:離型フィルムは自然には剥がれないが、手で引っ張ると(張力を加えると)簡単に剥がれる。
×:離型フィルムが、半導体パッケージの樹脂封止面に密着しており、手では剥がせない。
【0043】
(離型性:FPCカバーレイ貼り付け)
図3に示す構成の装置を用い、回路基材75、の両側にカバーレイフィルム76を配置し、その両側に離型フィルム71a若しくは72b、及びガラス布78a若しくは78bをこの順で重ね合わせ、熱盤77a若しくは77bを用いて、温度:180℃、圧力:10MPa、加熱加圧時間:130秒(予圧:10秒、本圧:120秒)で加熱加圧して貼り合わせを行い、フレキシブルプリント基板を作製した。
1)回路基材75は、柔軟性樹脂基材である厚み25μmのポリイミドフィルム上に、金属配線パターンである厚み22μm(銅:12μm、メッキ:10μm)の銅配線が形成されたものを使用し、銅配線部のライン幅/スペース幅は、それぞれ40μm及び60μmであった。
2)カバーレイフィルム76は、柔軟性樹脂基材である厚み12.5μmのポリイミドフィルム上に、厚み25μmの接着剤層が 形成されたものを使用した(ニッカン工業株式会社製、商品名:CISV1225DB)。
このカバーレイフィルム76には回路基材75の端子部分に相当する部分(開口部)が複数打ち抜かれていた。カバーレイフィルム76の開口部のサイズは4mm×7mmであった。
3)回路基材75とカバーレイフィルム76との重ね合わせにあたっては、前者の銅配線と後者の接着剤層とが対向する様に配置し、カバーレイフィルム76と離型フィルム71aとの重ねあわせにあたっては、前者のポリイミドフィルム層と、後者の離型層とが対向するように配置した。
加熱加圧後、直ちに離型フィルムを剥離し、離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。

○:フレキシブルプリント基板から容易に剥離可能
×: フレキシブルプリント基板に貼りつき容易には剥離不可
【0044】
(離型層の破断:半導体樹脂封止)
上記工程で離型を行った際の離型フィルムの破断性を、以下の基準で評価した。

〇:樹脂封止後、離型フィルムを半導体パッケージから離型した後に、フィルム破れ無し
×:樹脂封止後、離型フィルムを半導体パッケージから離型した後に、フィルム破れ有り
【0045】
(離型層の破断:FPCカバーレイ貼り付け)
上記工程で離型を行った際の離型フィルムの破断性を、以下の基準で評価した。

〇:加熱加圧後、離型フィルムをFPCから離型した後に、フィルム破れ無し
×:加熱加圧後、離型フィルムをFPCから離型した後に、フィルム破れ有り
【0046】
(金型追随性:半導体樹脂封止)
上記工程で離型を行った際の離型フィルムの金型追随性を、以下の基準で評価した。

○:半導体パッケージに、樹脂欠け(樹脂が充填されない部分)が全くないか、半導体パッケージの端部に、樹脂欠けが僅かにある。
×:半導体パッケージの端部に、樹脂欠けが多くある。または成形時フィルム破れが発生する。
【0047】
(追随性(接着剤染み出し抑制):FPCカバーレイ貼り付け)
上述の離型性の評価におけるものと同様の装置、フィルムの組み合わせで、加熱加圧後のFPCの銅配線上への接着剤の流れ出し量を、光学顕微鏡(Keyence社製、VHX-5000)で観察し、追随性を以下の基準で評価した。

○:開口部への流れ出しが25μm未満
×:開口部への流れ出しが25μmを超える
【0048】
(側面噛み込み:半導体樹脂封止)
上記工程で離型を行った際の、離型フィルムの側面噛み込みによる剥離不良を、以下の基準で評価した。

◎:半導体パッケージ側面に、噛み込み跡もなく剥離不良もなし。
○:半導体パッケージ側面に、噛み込み跡はあるが、剥離不良はなし。
×:半導体パッケージ側面に、噛み込み跡があり、剥離不良も発生あり。
【0049】
(クッション層染み出し:FPCカバーレイ貼り付け)
上述の離型性の評価におけるものと同様の装置、フィルムの組み合わせで加熱加圧後、離型フィルム中のクッション層が染み出すことによって、離型フィルム78aと78b接着している程度によって評価した。

○:離型フィルム78aと78bを容易に剥がすことができ、クッション層の染み出しが小さいと判断される。
×:離型フィルム78aと78bを容易に剥がすことができないため、クッション層の染み出しが大きいと判断される。
【0050】
<製造例1~16:単層50μm厚みフィルム(離型層)の評価>
【0051】
(製膜)
三井化学株式会社製4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(製品名:TPX、銘柄名:DX818、融点:232℃)95wt%、添加剤(ラジカル捕捉剤)5wt%の組成比で、マスターバッチを作製した。使用した添加剤(ラジカル捕捉剤)の種類は、表1の処方、添加剤の欄に示す通りであり、添加剤の詳細は以下の通りである。
【0052】
・(Tinuvin770)ヒンダードアミン光安定剤(HALS)
BASFジャパン株式会社製 Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) sebacate(製品名:Tinuvin770DF)
・(Tinuvin123)ヒンダードアミン光安定剤(HALS)
BASFジャパン株式会社製 Bis-(1-octyloxy-2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl) sebacate(製品名:Tinuvin123)
・(LA-52)ヒンダードアミン光安定剤(HALS)
ADEKA社製 Tetrakis(1,2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylate(製品名:アデカスタブ LA-52)
・(LA-57):ヒンダードアミン光安定剤(HALS)
ADEKA社製 Tetrakis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylate(製品名:アデカスタブ LA-57)
・(BHT)フェノール系酸化防止剤
本州化学工業株式会社製 2,6-Di-tert-butyl-4-methylphenol(製品名:H-BHT)
・(Irganox1076)フェノール系酸化防止剤
BASFジャパン株式会社製 Octadecyl-3-(3,5 -di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate(製品名 Irganox1076)
・(Irgafos168)リン系酸化防止剤
BASFジャパン株式会社製 Tris(2,4-di-tert.-butylphenyl)phosphite(製品名 Irgafos168)
【0053】
次に、表1に記載の処方となるようにブレンド後、得られた樹脂組成物を270℃の温度で溶融押出して、T型ダイのスリット幅を調整することにより、厚み50μmの無延伸フィルムを製膜した。
【0054】
(電子線照射)
得られた単層50μm厚みフィルムを電子線照射装置により加速電圧200kVで100kGyの吸収線量に電子線を照射した。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
ラジカル捕捉剤(添加剤)を含まない単層樹脂フィルム(製造例16)の破断点伸度は553%であったが、電子線照射後の当該フィルムの破断点伸度は5%まで低下し(製造例11)、電子線照射後の破断点伸度は照射前と比べて1%未満まで低下した。
単層樹脂フィルム全量に対し0.5~2.0重量%のラジカル捕捉剤(添加剤)を含んだ製造例1~10の単層樹脂フィルムは、破断点伸度の値が、電子線照射前の破断点伸度の値と比較して20%超えを示し、良好に破断点伸度が維持されていた。
【0057】
<実施例1~8、比較例1~2:多層フィルムの評価>
【0058】
(製膜)
上記表1に記載の組成比でブレンドした樹脂組成物を、離型層用の樹脂として使用した。
低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)を、コア層用の樹脂として使用した。
4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」40質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)60質量部をブレンドして樹脂組成物を作製し、中間層の樹脂として使用した。
3台の押出機(各40mmφ)を用意し、第1の押出機に上記記載の離型層用の樹脂を供給し、270℃の温度で溶融した。第2の押出機には、コア層用の樹脂を供給し、210℃の温度で溶融した。第3の押出機には、コア層用の樹脂を供給し、270℃の温度で溶融した。
溶融化した樹脂を分配アダプターへ導き、270℃に温度設定したTダイを通して、離型層/中間層/コア層/中間層/離型層からなる層構成の5層フィルムを引き取った。
得られた5層共押出フィルムは、半導体樹脂封止用が総厚み50μm、FPCカバーレイ貼付け用が総厚み120μmで、層構成は表2、3に記載した。
【0059】
(電子線照射)
得られた多層フィルムを加速電圧200kVで表2、表3に記載の吸収線量にて電子線を照射した。評価結果を表2、表3に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
離型層にラジカル捕捉剤(添加剤)を含む樹脂組成物を用いた実施例1~4の半導体樹脂封止用多層フィルムは、離型層の破断、側面の噛み込み、金型追随性、離型性の全ての評価項目で良好な結果が得られたが、離型層にラジカル捕捉剤(添加剤)を含まない樹脂組成物を用いた比較例1では離型層の破断を抑制することができなかった。
同様に、離型層にラジカル捕捉剤(添加剤)を含む樹脂組成物を用いた実施例5~8のFPCカバーレイ貼付け用多層フィルムは、離型層の破断、クッション層染み出し、追随性、離型性の全ての評価項目で良好な結果が得られたが、離型層にラジカル捕捉剤(添加剤)を含まない樹脂組成物を用いた比較例2では離型層の破断を抑制することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の多層離型フィルムは、従来技術では実現できなかった高いレベルで、耐破断性、追随性、離型性、側面の噛み込み防止、クッション層染み出し抑制等の優れた物性を実現することができるという実用上高い価値を有する技術的効果をもたらすものであり、半導体プロセス産業、光学素子製造産業、電子部品産業、電気電子産業、機械産業、自動車産業をはじめとする産業の各分野において高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0064】
11、21: 多層離型フィルム
12: カッター
13: X-Yステージ
14、24: 枠
15、25: 上金型
16:26: 基板
17:27: 半導体チップ
18: 封止樹脂
19、29: 下金型
19a、29a: キャビティブロック
19b、29b: クランパ
19c、29c: キャビティ
: キャビティの初期深さ
: キャビティの最終深さ
75: 回路基材
76: カバーレイフィルム
71a、71b: 多層離型フィルム
77a、77b: 熱盤
78a、78b: ガラス布
図1
図2
図3