(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】分岐状シロキサンを含んでなる消泡剤配合物
(51)【国際特許分類】
B01D 19/04 20060101AFI20231124BHJP
C08G 77/06 20060101ALI20231124BHJP
C08G 77/32 20060101ALI20231124BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231124BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231124BHJP
C08G 85/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B01D19/04 A
C08G77/06
C08G77/32
C08K3/36
C08L83/04
C08G85/00
(21)【出願番号】P 2022537521
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067328
(87)【国際公開番号】W WO2021126195
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ハギット、ベン-ダート、レビン
(72)【発明者】
【氏名】フランク、アッヘンバッハ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-005787(JP,A)
【文献】特開昭58-119301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114712899(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第03805661(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0002115(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0064806(US,A1)
【文献】特許第4804483(JP,B2)
【文献】特開2021-191565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/04
C08G 77/06
C08G 77/32
C08G 85/00
C08K 3/36
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消泡剤配合物の製造方法であって、
第1工程において、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(X)を、オルガノポリシロキサン(A)の粘度がオルガノポリシロキサン(X)の粘度より少なくとも40%高くなるように高エネルギー放射線で処理
して分岐状オルガノポリシロキサン(A)を調製し、
第2工程において、前記分岐状オルガノポリシロキサン(A)を、沈殿シリカおよび/またはフュームドシリカから選択されるフィラー(B)およびオルガノポリシロキサン樹脂(C)で処理する、
ことを含む、方法。
R
1
3-a(R
2O)
aSi-[OSiR
3
2]
n-OSi(OR
2)
aR
1
3-a (1)
(式中、
R
1およびR
2は、独立して、ハロゲン置換されていてもよい、
最大30個の炭素原子を有する1価
の飽和もしくは不飽和
のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または水素原子であり、
R
3は、
メチル基、エチル基、ビニル基、オクチル基、または2-プロペニルフェニル基であり、
aは、0または1であり、
nは整数であり、かつ、オルガノポリシロキサン(X)の粘度が、25℃、1013hPaにおいて350~20,000mPa・秒となる値であるが、一般式(1)において、最大0.22mol%のaは1であり、R
2がHであることを条件とする。)
【請求項2】
前記フィラー(B)が20~1000m
2/gのBET比表面積を有する、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記フィラー(B)が、フュームドシリカまたは沈降シリカから選択される、請求項
1または
2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサン樹脂(C)が、下記式:
SiO
2(Q単位)および
R
4
3SiO
1/2(M単位)
(式中、R
4は、ハロゲン置換されていてもよい、1価のC
1-30の飽和炭化水素基、または水素原子である。)
の単位から構成されるMQ樹脂である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
鉱油、天然油、イソパラフィン、ポリイソブチレン、オキソアルコール合成の残渣、低分子量合成カルボン酸のエステル類、脂肪酸エステル類、脂肪アルコール類、低分子量アルコールのエーテル類、フタル酸塩、リン酸エステル類、およびワックス類から選択される、1013hPaで100℃超の沸点を有する水不溶性の有機化合物である成分(D)が存在する、請求項
1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、または酸性成分から選択される、成分(E)が存在する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか1項に記載の方法により製造可能な消泡剤配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状ポリマーを高エネルギー放射線で処理して分岐状オルガノポリシロキサン(A)を製造する方法、分岐状オルガノポリシロキサン(A)、分岐状オルガノポリシロキサン(A)を含む消泡剤配合物の製造方法、および分岐状オルガノポリシロキサン(A)を含む消泡剤配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の成分として又は所望しない成分として界面活性剤を含む液体系の多くで、特に水性系で、例えば廃水をガス化するとき、液体を激しく撹拌するとき、蒸留、洗浄または着色作業の際、または調剤手順の間に、これらの系がガス状物質といくぶん激しく接触すると発泡の問題が起きることがある。
【0003】
この発泡は、機械的手段か消泡剤を用いた化学的手段で制御できる。これに関連して、シロキサン系消泡剤が特に有用であることが証明されており、特に、部分的に架橋されたポリジメチルシロキサンの使用が有効である。
【0004】
流動性の分岐状オルガノポリシロキサンの合成は、高価な貴金属触媒(Rh、Pd、Pt)を用いて広く製造されている。欧州特許出願公開第0434060号明細書には、ビニル末端ポリジオルガノシロキサンとペンダント官能化オルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si-H)を用い、白金触媒によるヒドロシリル化により架橋された流体を得ることで製造された流動性の架橋ポリジオルガノシロキサンを含む消泡剤化合物が開示されている。このような方法では、触媒を除去する必要があり、溶解した触媒種を含む流動性シロキサンが着色する可能性がある。さらに、ヒドロシリル化では、ビニル末端ポリジオルガノシロキサンを完全に転化せず、ペンダント官能化オルガノハイドロジェンポリシロキサンを過剰に使用しなくてはならないことがある。流動性オルガノポリシロキサン中のSi-H残基は問題となる可能性があり、泡制御化合物を合成する際の課題となり得る。米国特許第8053480号明細書では、ヒドロシリル化が十分に行われ制御されるように、ビニルポリジオルガノシロキサンとポリオルガノハイドロジェンシロキサンの両方を慎重に選択する必要がある。不飽和脂肪族炭化水素基を過剰に用いて、最終的な架橋オルガノポリシロキサン生成物が得られる。
【0005】
一般に、官能化ポリマーはポリジメチルシロキサンのような非官能化ポリジオルガノシロキサンポリマーよりも高価である。
【0006】
米国特許第5531920号明細書には、主鎖がアルキレン基からなるオルガノシロキサンポリマーが記載されており、ビニルおよびSi-Hで官能化されたオルガノポリシロキサンに白金触媒を使用して、泡制御用途に適した化合物を得ている。
【0007】
一般に遷移金属錯体は、特に高濃度で、毒性的に安全でないとされており、それゆえ、分岐構造を形成するための遷移金属フリーの経路が切望されている。さらに、Si-H含有シロキサンの取り扱いでは、水分に反応しやすく、容易に加水分解されてゲル状固体を形成する可能性がある。
【0008】
米国特許第7829647号明細書には、アンモニウムまたは金属カルボン酸塩とSi-H含有シロキサンを用いて分岐状シロキサンを製造する方法が記載されている。
【0009】
Si-H残基が問題である。欧州特許出願公開第1678335号明細書には、分岐状ポリマーから未反応のSi-Hを除去するために、ヒドロシリル化とアルコール(ROH)による脱水素カップリングの両方を行う工程が記載されている。
【0010】
米国特許第6573355号明細書には、OHまたはアルコキシ(Si-OR)官能基を有するポリジオルガノシロキサンと、ポリオルガノシロキサンと、ジアルキルシクロシロキサンオリゴマーとの組換えを引き起こす水酸化カリウムなどのアルカリ化合物を用いた共加水分解による分岐状オルガノポリシロキサンの製造方法が記載されている。この方法では、直鎖状および環状シロキサンの平衡を止めるために触媒の中和が必要であり、さらに揮発性物質を除去しなくてはならない。多量(0.1重量%超)の環状シロキサンは望ましくなく、この製法では低含量の環状シロキサンを有する分岐状の流体を製造することは難しいかもしれない。
【0011】
代替方法として、分岐状の流体物を合成するためのフリーラジカルアプローチが記載されている。欧州特許出願公開第273448号明細書には、増感剤の存在下、放射線を使用して重合を開始することが記載されている。独国特許出願公開第3805661号明細書には、高温、有機過酸化物の存在下における大気中の酸素を使用することが記載されている。
【0012】
しかしながら、激しく発泡し界面活性剤が豊富な系では、先行技術により製造された消泡剤配合物は、必ずしも十分な活性を示さないか、高粘度および/または得られた化合物の架橋度のために取り扱いが困難となる。
【0013】
シリコーンは、X線、電子線、ガンマ線などの高エネルギー放射線源の照射により架橋やゲル形成を誘導できることはよく知られている。(Palsule, A S, Clarson SJ, Widenhouse CW; J. Inorg. Organomet. Polym. 2008, 18, 207-221)。高エネルギー電子線の照射は、ゲル形成を引き起こし得るようなレベル以上の放射線を無作為に発生させる(Structure of Randomly Cross-Linked Poly(dimethylsiloxane) Networks Produced by Electron Irradiation, Macromolecules 1993, 26, 20, 5350-5364)。
【0014】
米国特許第8541481号明細書には、非官能化オルガノポリシロキサンの照射により、シリコーンゲル接着剤に適しているとされる架橋ネットワークの生成が記載されている。シリコーンゲルは高分子量であり、流動しにくい特性を示す。このような特性は、典型的に室温で流動性を有するオルガノシロキサンが必要な泡制御化合物にはふさわしくない。
【0015】
米国特許第9359529号明細書には、感圧接着剤用途として架橋した非官能化オルガノポリシロキサンを合成するために電子線を照射することが記載されているが、官能化オルガノポリシロキサンを使用することや、25℃において50,000mPa秒未満の粘度を有する分岐状の流体を合成する方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許出願公開第0434060号明細書
【文献】米国特許第8053480号明細書
【文献】米国特許第5531920号明細書
【文献】米国特許第7829647号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1678335号明細書
【文献】米国特許第6573355号明細書
【文献】欧州特許出願公開第273448号明細書
【文献】独国特許出願公開第3805661号明細書
【文献】米国特許第8541481号明細書
【文献】米国特許第9359529号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
現技術水準の泡制御化合物では粘度の増加をもたらすフィラーの添加を必要としているため、泡制御用途には、25℃で50,000mPa・秒未満の粘度を有するオルガノポリシロキサン流体が望ましい。粘度が高すぎる照射型ポリオルガノシロキサンでは、処理時間や装置の制限のために経済的ではない。
【0018】
本発明は、分岐状オルガノポリシロキサン(A)の製造方法であって、
下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(X)を、オルガノポリシロキサン(A)の粘度がオルガノポリシロキサン(X)の粘度より少なくとも40%高くなるように高エネルギー放射線で処理する、製造方法を提供する。
R1
3-a(R2O)aSi-[OSiR3
2]n-OSi(OR2)aR1
3-a (1),
(式中、
R1およびR2は、独立して、ハロゲン置換されていてもよい、1価のC1-30の飽和もしくは不飽和炭化水素基、または水素原子であり、
R3は、水素原子または1価のC1-9の炭化水素基であり、
aは、0または1であり、
nは整数であり、かつ、オルガノポリシロキサン(X)の粘度が、25℃、1013hPaにおいて350~20,000mPa・秒となる値であるが、一般式(1)において、最大0.22mol%のaは1であり、R2がHであることを条件とする。)
【発明の効果】
【0019】
分岐状オルガノポリシロキサン(A)は、触媒、特にPtを使用せずに、かつシクロアルキルシロキサンおよび水分に反応しやすいSi-H官能化オルガノポリシロキサンを必要とせずに、線状オルガノポリシロキサン(X)から経済的に製造することができる。
【0020】
得られる高粘度のオルガノポリシロキサン(A)は架橋部位を有するが、25℃のような通常の温度で液体状であってもよい。この方法では容易にモニターできるので、望ましくないゲル形成を避けることができる。触媒を使用せずに分岐状オルガノポリシロキサン流体を合成できることは、環境への配慮や持続可能性の観点から非常に有利といえる。オルガノポリシロキサン(A)は、泡制御剤の成分として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
高エネルギー放射線は、ガンマ線、X線、または電子線から選択されることが好ましく、より好ましい高エネルギー放射線源は、電子線である。
【0022】
好ましい線量は、オルガノポリシロキサン(X)1kgあたり10~150kGyであり、より好ましくは20~100kGyである。
【0023】
製造方法における好ましい温度は0~100℃であり、より好ましくは10~50℃である。
【0024】
照射されたオルガノポリシロキサン(A)は、ランダムな分岐を有し、25℃における好ましい粘度は1000~80,000mPa・秒であり、より好ましくは1000~50,000mPa・秒である。
【0025】
R1およびR2は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアラルキル基であってもよい。R1およびR2は、好ましくはC1-18であり、より好ましくはC1-9である。R1およびR2の例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、オクチル基、2-プロペニルフェニル基、およびフェニル基が挙げられる。ハロゲン置換されたR1およびR2の例としては、ハロゲン化炭化水素基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基が挙げられる。特に好ましくは、R1はメチル基またはビニル基であり、R2はメチル基である。
【0026】
R3の例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、オクチル基、2-プロペニルフェニル基、またはフェニル基が挙げられる。R3として特に好ましくは、メチル基である。
【0027】
好ましい実施形態におけるR1は、メチル基またはビニル基であるが、経済性の観点からメチル基が最も好ましい。好ましい実施形態におけるR1およびR3は、メチル基であり、R2はメチル基、エチル基、または水素から選択される。
【0028】
本発明はさらに、上記の製造方法によって製造可能な分岐状オルガノポリシロキサン(A)を提供する。
【0029】
本発明はさらに、第1工程が上記のように分岐状オルガノポリシロキサン(A)の製造であり、第2工程において分岐状オルガノポリシロキサン(A)を沈降シリカまたはフュームドシリカから選ばれるフィラー(B)とオルガノポリシロキサン樹脂(C)とで処理する、消泡剤配合物の製造方法を提供する。
【0030】
本発明はさらに、上記の製造方法によって製造可能な消泡剤配合物を提供する。
【0031】
本発明の消泡剤配合物に用いられるフィラー(B)は、好ましくは20~1000m2/gのBET比表面積を有する。フィラー(B)は、好ましくは10μm未満の粒子径と100μm未満の凝集粒子径を有する。
【0032】
フィラー(B)の例としては、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、金属石鹸、微粉砕石英、PTFE粉末、脂肪酸アミド(例えば、エチレンビスステアリン酸アミド)、および微粉砕疎水性ポリウレタンが挙げられる。
【0033】
優先的に使用されるフィラー(B)は、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、または酸化アルミニウムであり、それらのBET比表面積は20~1000m2/gである。これらのフィラーは、好ましくは10μm未満の粒子径と100μm未満の凝集粒子径を有する。
【0034】
好ましいフィラー(B)はシリカであり、より詳細には、50~800m2/gのBET比表面積を有するものである。これらのシリカは、フュームドシリカまたは沈降シリカであってよい。フィラー(B)は、未処理の親水性シリカであってもよいし、前処理を施したものであってもよい。
【0035】
本発明で使用し得る市販の疎水性シリカの例としては、ヘキサメチルジシラザンで処理され、140m2/gのBET比表面積を有するフュームドシリカ「HDK(登録商標) H2000」(ドイツ、Wacker-Chemie GmbHから入手可能)、ポリジメチルシロキサン処理され、90m2/gのBET比表面積を有する沈降シリカ(ドイツ、商品名「Sipernat D10」、Degussa AGから入手可能)である。
【0036】
親水性シリカは、消泡剤配合物の所望とする活性に有利である場合、系中で疎水化してもよい。親水性シリカを系中で疎水化する方法は周知である。親水性シリカの系中での疎水化は、例えば、後述の成分(A)または(C)中、または後述の成分(A)、(C)、および所望により(E)の混合物中に分散させたシリカを100~200℃で数時間加熱することで達成できる。KOHなどの触媒や、短鎖のOH末端ポリジメチルシロキサン、シラン、またはシラザンなどの疎水化剤を添加してこの反応をサポートしてもよい。
【0037】
消泡剤配合物は、成分(A)100重量部に対し、いずれの場合でも、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは1~10重量部のフィラー(B)を含む。
【0038】
オルガノポリシロキサン樹脂(C)は、下記式:
SiO2(Q単位)および
R4
3SiO1/2(M単位)
(式中、R4は、上記で特定したR1の定義を有し、好ましくはC1―4アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である)
の単位から構成されるMQ樹脂であることが好ましい。
【0039】
ここで、Q単位に対するM単位のモル比は、好ましくは0.5~2.0であり、より好ましくは0.6~1.0である。M単位およびQ単位の他に、MQ樹脂は所望によりR4SiO3/2(T)単位またはR4
2SiO2/2(D)単位を少量(すべてのシロキサン単位の合計に対し、好ましくは0.01~20mol%、より好ましくは0.01~5mol%の量)含んでもよい。R4は上記で定義した通りである。これらのオルガノポリシロキサンは遊離のSiに結合するヒドロキシル基やアルコキシ基(メトキシ基またはエトキシ基など)を10重量%までさらに含んでもよい。
【0040】
これらのオルガノポリシロキサン樹脂(C)は、25℃、1014.25hPaにおいて、好ましくは1000mPa・s超の粘度を有するか、固体である。これらの樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーで求めた重量平均分子量(ポリスチレン標準換算)は、好ましくは200~200,000g/molであり、より好ましくは1000~20,000g/molである。
【0041】
成分(B)と成分(C)の重量比は、好ましくは95:5~5:95であり、より好ましくは80:20~20:80である。
【0042】
所望により用いられる成分(D)は、周囲大気の圧力下、換言すれば900~1100hPa、特に1014.25hPaで100℃超の沸点を有する水不溶性の有機化合物を含むことが好ましく、鉱油、天然油、イソパラフィン、ポリイソブチレン、オキソアルコール合成の残渣、低分子量合成カルボン酸のエステル類(例えば、ペンタン-1,3-ジオールジイソブチレート)、脂肪酸エステル類(例えば、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸ドデシル、ミリスチン酸イソプロピル)、脂肪アルコール類、低分子量アルコールのエーテル類、フタル酸塩、リン酸エステル類、ワックス類から選択されるものがより好ましい。
【0043】
成分(E)は、NaOH、KOH、CsOH、LiOH、Ca(OH)2などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物や、塩酸、硫酸、ジクロロホスファゼンなどの酸性成分(E)である。
【0044】
成分(A)~(D)と成分(E)との反応生成物には、例えば、フィラー(B)として好ましいシリカと、ケイ酸カリウムやケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物との生成物が含まれる。
【0045】
成分(E)の計量は、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)やエステル類(例えば、酢酸エチル)等の典型的な有機溶媒中で行なってもよい。
【0046】
消泡剤配合物に用いられる成分(B)~(E)は、いずれの場合でも、各成分を1種単独で用いてもよいし、各成分の少なくとも2種を混合して用いてもよい。
【0047】
消泡剤配合物は、25℃、1014.25hPaにおいて、いずれの場合でも、好ましくは100~2,000,000mPa・sの粘度を有し、より好ましくは10,000~80,000mPa・sの粘度を有する。
【0048】
消泡剤配合物の製造は、例えば、コロイドミル、溶解機、ローターステーターホモジナイザー中で高い剪断力をかけて全成分を混合する等、公知の方法で行ってもよい。この場合、微粉砕されたフィラー中に存在する空気の取り込みを防ぐために、減圧下で混合操作を行ってもよい。この操作の後に、例えば、系中でのフィラーの疎水化に必要な処理を続いて行ってもよい。
【0049】
先ず、照射後の成分(A)を導入し、所望により加熱した後、成分(B)、(C)、所望により(D)および所望により(E)を順次添加することも可能である。
好ましい実施形態において、成分(D)の溶液としてか成分(D)の一部に溶解した状態で成分(C)を添加する。
【0050】
本発明はさらに、消泡剤配合物を含む洗剤および洗浄用組成物を提供し、当業者であれば、本発明をさらに媒体を用いてそのエマルジョンや粉末に製剤化することができる。本発明の消泡剤配合物は、これまで消泡剤配合物、すなわちオルガノシリコン化合物をベースとする消泡剤(defoaming agents)および/または消泡剤(antifoam agents)が使用されてきたあらゆるところに使用可能である。
【0051】
消泡剤配合物は、崩壊性の泡を制御したい場所に使用できる。消泡剤配合物は、水性界面活性剤系における泡の制御、洗剤での使用、廃水処理プラントでの泡の制御、織物の繊色工程、天然ガスのスクラビング、ポリマー分散液、およびパルプ製造時に発生する水性媒体の消泡に特に適している。
【0052】
本発明はさらに、消泡剤配合物を混合することによって媒体の消泡および/または発泡を防止する方法を提供し、当業者であれば、消泡剤配合物を媒体とともに、そのエマルジョンまたは粉末に製剤化することができる。消泡剤配合物がエマルジョンである場合、アニオン性、カチオン性または非イオン性乳化剤などのシリコーンエマルジョンの調製のために当業者に知られた所望の乳化剤を使用できる。例えば、乳化剤混合物を使用することが好ましく、この場合には、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪酸、C10-20のエトキシ化直鎖状もしくは分岐状アルコール、および/またはグリセロールエステルなどの少なくとも1種の非イオン性乳化剤が含まれるべきである。さらに、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩などの既知の化合物、セルロースエーテル類(カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース等)、ポリウレタン、天然増粘剤(キサンタンガム等)、およびポリウレタンなどの増粘剤、さらに保存料や当業者に知られた他の慣用の添加物を添加することも可能である。本発明のエマルジョンの連続相は、水相が好ましい。ただし、成分(A)~(E)か水不溶性の有機化合物(D)により連続相を形成してエマルジョンの形態で消泡剤配合物を調製することもできる。例えば、洗濯用粉末洗剤の用途では粉末が好ましい。これらの粉末の製造は、成分(A)~(C)、所望により(D)、および所望により(E)を含む本発明の消泡剤配合物を出発原料とし、噴霧乾燥や塊状造粒などの当業者に知られた方法と、当業者に知られた添加剤とを用いて行う。本発明の粉末は、成分(A)~(C)、所望により(D)および所望により(E)を含む消泡剤配合物を2~20重量%含むことが好ましい。使用する担体は、例えば、ゼオライト、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、セルロース誘導体、尿素(誘導体)、および糖類である。本発明の粉末は、80~98重量%の担体材料を含む。本発明の粉末のさらなる構成要素は、例えば、ワックスや有機ポリマーである。
【実施例】
【0053】
以下の実施例において、特に指示のない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量基準である。特に指示のない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力下、すなわち1014.25hPaで、室温、すなわち20℃で、または追加の加熱もしくは冷却せずに室温で反応物が結合する際に達する温度で実施される。
【0054】
実施例で挙げた全ての粘度の数値は、25℃、1014.25hPaの圧力での測定値である。実施例の粘度は、スピンドルS64付きブルックフィールド粘度計を使用して、10~100の回転数で測定した。
【0055】
(実施例1~6-オルガノポリシロキサン(X)の放射線照射によるオルガノポリシロキサン(A)の製造)
成分(X)に該当するオルガノポリシロキサン流体(AK1000とAK2000はポリジメチルシロキサンであり、ViPo1000はビニル末端ポリジメチルシロキサンであり、ドイツ、Wacker-Chemie GmbH社から商業的に入手可能)を購入した状態で使用するか、所望により照射前に成分(X)を脱気処理した。脱気処理した成分(X)は「脱気」と記載する。手順を以下に記載する。1kgのオルガノポリシロキサン流体を撹拌機付き反応器に入れ、動的真空(500hPa)下、10分間気泡が観察されなくなるまで置き、窒素(1014.25hPa)を補充する操作を3回繰り返した。全てのサンプルを放射線試験に適した容器に密封した。ガンマ線照射試験をニューメキシコ州アルバカーキにあるサンディア国立研究所で実施した。X線照射試験をニューヨーク州エッジウッドにあるIBA研究所で実施した。電子線試験は、オハイオ州レバノンにあるE-beam groupで実施した。
【0056】
【0057】
実施例1~6はオルガノポリシロキサン流体(X)の架橋を誘導する放射線の能力を示している。実施例1、2、3および5では非官能化オルガノポリシロキサン(X)を使用している。実施例4および6では官能化オルガノポリシロキサン(X)を使用している。どちらの流体も放射線照射に適しており、高エネルギー放射線に照射さらされると粘度が増加している。
【0058】
(液体洗剤における消泡効果試験)
(実施例7および比較例V1 照射後の実施例1、5および6を用いた本発明の消泡剤配合物の製造)
消泡剤配合物を製造するために、溶解機を用いて表2に記載の成分を混合し、1500ppmのKOH(成分(E)の濃度20%のメタノール溶液の形態)の存在下で150℃で4時間加熱し、冷却後、溶解機を用いて再び均質化した。
【0059】
【0060】
A1:300m2/gのBET比表面積を有する親水性フュームドシリカ(Wacker Chemie AG,ドイツからHDK(登録商標)T30の名称で入手可能)。
B1:室温で固体であり、40mol%のCH3SiO1/2単位、50mol%のSiO4/2単位、8mol%のC2H5OSiO3/2単位および2mol%のHOSiO3/2単位からなり、7900g/mol(ポリスチレン標準換算)の重量平均分子量であるシリコーン樹脂。
C1:235~270℃の沸点を有する炭化水素混合物。
D1:8000mPa・秒の粘度を有する、トリメチルシロキサン基を末端に有する非官能化直鎖状ポリジメチルシロキサン。
【0061】
(洗剤系での試験)
消泡剤の活性能を試験するための測定系:実施例7a-iおよび比較例C1は、以下の条件で回転シリンダー試験を行った。実施例は、10重量%のメチルエチルケトン溶液として調製し、蒸留水300部に1.8部の洗剤(表3に記載)を含むシリンダーに添加(100μL)した。シリンダーを密閉し、30rpmで12分間回転させた。サイクルの終了時に泡の高さ(mm)を直ちに記録した。高さが低いと、より効果的な消泡剤であること、すなわち、性能がより良いことを示す。
【0062】
(洗濯用洗剤配合物W1の製造)
65.09gの完全脱塩水に、16.80gのアルコキシ化脂肪アルコール(BASF SEからLutensol(登録商標)TO 8の名称で入手可能)を激しく攪拌しながら添加する。5.70gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Aldrichから工業製品として入手可能)および5.70gのドデシル硫酸ナトリウム(Aldrichから90%の製品として入手可能)を加え、その後短時間攪拌した。5.61gの1,2-プロパンジオール(Merckから入手可能)を混合する。最後に、1.00gのクエン酸三ナトリウム二水和物(Aldrichから入手可能)を、全ての成分が溶解するまで撹拌しながら加える。当業者であれば、水系の液体洗剤配合物を欧州特許出願公開第3310451号明細書に記載のように調製できる。
【0063】
【0064】
(黒液での試験)
80℃に温度設定された1000ml循環ポンプ装置で、400mlの合成黒液をポンプ速度83.6L/hで循環させる。当業者にとって、合成黒液は米国特許第6207722号明細書に記載された商業パルププロセスからの市販の黒液を表す。
【0065】
泡レベルが75mmの高さに達するとすぐに、消泡剤(消泡剤配合物中の成分(A)~(C)、所望により(D)および所望により(E)に基づいて10mg)を計量投与し、消泡剤の添加と泡崩壊の開始後に達成された泡崩壊時間と最低泡レベルを記録する。泡崩壊時間t1が短く、泡レベルh1が低いほど、消泡剤が速効性に優れる。これに続き、最低泡レベルから元の泡レベル(50mm)に戻るまでの時間t2で表される消泡剤の長期効果を確認する。
【0066】
(実施例8a~gおよび比較例V2-照射後の実施例1、5および6を用いた本発明の消泡剤配合物の製造)
消泡剤配合物を製造するために、溶解機を用いて表4に記載の成分を混合し、1500ppmのKOH(濃度20%のメタノール溶液の形態)の存在下で150℃で3時間加熱し、冷却後、溶解機を用いて再び均質化した。実施例8a~gは、40重量%鉱油溶液として調製し、添加した(10μL)。
【0067】
【0068】
【0069】
本発明に該当する実施例では、黒液の消泡に対して効果が高いことを示している。実施例8a~gは、比較例V2と比較して、分岐状オルガノポリシロキサン流体を用いた消泡剤化合物の効果を実証している。本発明に該当する実施例8a~gは、泡崩壊時間(t1)に優れ、実施例8a、b、d、fおよびgは、長期効果(t2)に効果的であることを示している。