IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鞍乗り型車両 図1
  • 特許-鞍乗り型車両 図2
  • 特許-鞍乗り型車両 図3
  • 特許-鞍乗り型車両 図4
  • 特許-鞍乗り型車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20231124BHJP
   B62J 40/00 20200101ALI20231124BHJP
   B62J 11/00 20200101ALI20231124BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J40/00
B62J11/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022550349
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022178
(87)【国際公開番号】W WO2022059274
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020157822
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 寛
(72)【発明者】
【氏名】石坂 勇太
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064951(WO,A1)
【文献】特開2019-119292(JP,A)
【文献】特開2019-93867(JP,A)
【文献】特開2007-76552(JP,A)
【文献】中国実用新案第204775688(CN,U)
【文献】特開2020-84880(JP,A)
【文献】特開2020-100257(JP,A)
【文献】特表2020-509968(JP,A)
【文献】特開2012-51443(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/00
B62J 40/00
B62J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(10)と、エンジン(11)用の吸気を取り込むエアクリーナーボックス(35)と、ブレーキキャリパー(53)に供給する液圧を制御するABSモジュレーター(55)とを備える鞍乗り型車両において、
前記車体フレーム(10)の下方に前記エアクリーナーボックス(35)が配置され、
前記ABSモジュレーター(55)は、前記車体フレーム(10)の車幅方向外側で、前記エアクリーナーボックス(35)に上方から重なる位置に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ブレーキキャリパーは前輪用のフロントブレーキキャリパー(53)を備え、
前記フロントブレーキキャリパー(53)及び前記ABSモジュレーター(55)は、車幅方向の中央に対し、車幅方向の同じ側にオフセットして配置されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ABSモジュレーター(55)は、前記車体フレーム(10)から車幅方向外側に延びるステー(70)に支持され、
前記ステー(70)は、前記エアクリーナーボックス(35)によって下方から支持されることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記ステー(70)は、前記ABSモジュレーター(55)を前方から覆う前壁部(72)と、前記ABSモジュレーター(55)を車幅方向外側から覆う側壁部(71)とを備えることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記ABSモジュレーター(55)の前端(55a)は、前記エアクリーナーボックス(35)の前端(64c)よりも後方に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前輪(2)を支持するフロントフォーク(12)を支持するヘッドパイプ(15)が設けられ、
車両側面視で、後輪(3)の接地点と前記ヘッドパイプ(15)とを結ぶ直線状の旋回軸線(R)上に、前記ABSモジュレーター(55)が配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記車体フレーム(10)は、フロントフォーク(12)を支持するヘッドパイプ(15)と、前記ヘッドパイプ(15)から車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレーム(16)とを備え、
前記エアクリーナーボックス(35)は、前記メインフレーム(16)の下方で、前記メインフレーム(16)を車幅方向に跨いで設けられ、
前記ABSモジュレーター(55)は、前記メインフレーム(16)の車幅方向外側で、前記エアクリーナーボックス(35)に上方から重なることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記エアクリーナーボックス(35)は、前記車体フレーム(10)に対し車幅方向の一方側に膨出する一側膨出部(63)と、前記車体フレーム(10)に対し車幅方向の他方側に膨出する他側膨出部(64)とを備え、
前記一側膨出部(63)は、開口(60a)と、前記開口(60a)を覆う開閉可能な蓋部材(61)とを備え、
前記ABSモジュレーター(55)は、前記他側膨出部(64)に上方から重なることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記他側膨出部(64)の上面(64a)は、前記一側膨出部(63)の上面(63a)よりも低い位置にあることを特徴とする請求項8記載の鞍乗り型車両。
【請求項10】
前記ABSモジュレーター(55)は、前記車体フレーム(10)に車幅方向外側から重なることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、ABSモジュレーターが、左右一対で設けられる車体フレームの間に配置される構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-74206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の鞍乗り型車両では、ABSモジュレーターが、左右一対で設けられる車体フレームの間に配置され、車体の奥まった場所に位置するため、ABSモジュレーターの組み付けに手間がかかる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、鞍乗り型車両において、ABSモジュレーターの組み付け性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2020年9月18日に出願された日本国特許出願・特願2020-157822の全ての内容が含まれる。
鞍乗り型車両は、車体フレームと、エンジン用の吸気を取り込むエアクリーナーボックスと、ブレーキキャリパーに供給する液圧を制御するABSモジュレーターとを備える鞍乗り型車両において、前記車体フレームの下方に前記エアクリーナーボックスが配置され、前記ABSモジュレーターは、前記車体フレームの車幅方向外側で、前記エアクリーナーボックスに上方から重なる位置に配置される。
【0006】
また、上述の構成において、前記ブレーキキャリパーは前輪用のフロントブレーキキャリパーを備え、前記フロントブレーキキャリパー及び前記ABSモジュレーターは、車幅方向の中央に対し、車幅方向の同じ側にオフセットして配置されても良い。
また、上述の構成において、前記ABSモジュレーターは、前記車体フレームから車幅方向外側に延びるステーに支持され、前記ステーは、前記エアクリーナーボックスによって下方から支持されても良い。
【0007】
さらに、上述の構成において、前記ステーは、前記ABSモジュレーターを前方から覆う前壁部と、前記ABSモジュレーターを車幅方向外側から覆う側壁部とを備えても良い。
また、上述の構成において、前記ABSモジュレーターの前端は、前記エアクリーナーボックスの前端よりも後方に位置しても良い。
【0008】
また、上述の構成において、前輪を支持するフロントフォークを支持するヘッドパイプが設けられ、車両側面視で、後輪の接地点と前記ヘッドパイプとを結ぶ直線状の旋回軸線上に、前記ABSモジュレーターが配置されても良い。
また、上述の構成において、前記車体フレームは、フロントフォークを支持するヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレームとを備え、前記エアクリーナーボックスは、前記メインフレームの下方で、前記メインフレームを車幅方向に跨いで設けられ、前記ABSモジュレーターは、前記メインフレームの車幅方向外側で、前記エアクリーナーボックスに上方から重なっても良い。
【0009】
また、上述の構成において、前記エアクリーナーボックスは、前記車体フレームに対し車幅方向の一方側に膨出する一側膨出部と、前記車体フレームに対し車幅方向の他方側に膨出する他側膨出部とを備え、前記一側膨出部は、開口と、前記開口を覆う開閉可能な蓋部材とを備え、前記ABSモジュレーターは、前記他側膨出部に上方から重なっても良い。
さらに、上述の構成において、前記他側膨出部の上面は、前記一側膨出部の上面よりも低い位置にあっても良い。
【0010】
また、上述の構成において、前記ABSモジュレーターは、前記車体フレームに車幅方向外側から重なっても良い。
【発明の効果】
【0011】
鞍乗り型車両は、車体フレームと、エンジン用の吸気を取り込むエアクリーナーボックスと、ブレーキキャリパーに供給する液圧を制御するABSモジュレーターとを備え、車体フレームの下方にエアクリーナーボックスが配置され、ABSモジュレーターは、車体フレームの車幅方向外側で、エアクリーナーボックスに上方から重なる位置に配置される。
この構成によれば、ABSモジュレーターが、車体フレームの車幅方向外側でエアクリーナーボックスに上方から重なる位置に配置されるため、ABSモジュレーターの配置場所にアクセスし易い。このため、ABSモジュレーターの組み付け性が良い。
【0012】
また、上述の構成において、ブレーキキャリパーは前輪用のフロントブレーキキャリパーを備え、フロントブレーキキャリパー及びABSモジュレーターは、車幅方向の中央に対し、車幅方向の同じ側にオフセットして配置されても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターとフロントブレーキキャリパーとが車幅方向に近くなり、ABSモジュレーターとフロントブレーキキャリパーとを簡単に接続できる。ABSモジュレーターとフロントブレーキキャリパーとを接続する部材の配策経路を短くできる。
また、上述の構成において、ABSモジュレーターは、車体フレームから車幅方向外側に延びるステーに支持され、ステーは、エアクリーナーボックスによって下方から支持されても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターを支持するステーを、エアクリーナーボックスによって下方から支持するため、エアクリーナーボックスを利用してABSモジュレーターを強固に支持できる。
【0013】
さらに、上述の構成において、ステーは、ABSモジュレーターを前方から覆う前壁部と、ABSモジュレーターを車幅方向外側から覆う側壁部とを備えても良い。
この構成によれば、ステーの前壁部及び側壁部によって、ABSモジュレーターを前方及び外側方から保護できる。
また、上述の構成において、ABSモジュレーターの前端は、エアクリーナーボックスの前端よりも後方に位置しても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターを、エアクリーナーボックスによって、前方及び下方から保護できる。これにより、例えば、ABSモジュレーターを前方及び下方からの飛び石等から保護できる。
【0014】
また、上述の構成において、前輪を支持するフロントフォークを支持するヘッドパイプが設けられ、車両側面視で、後輪の接地点とヘッドパイプとを結ぶ直線状の旋回軸線上に、ABSモジュレーターが配置されても良い。
この構成によれば、旋回軸線上にABSモジュレーターが配置されるため、ABSモジュレーターが旋回の抵抗になり難く、自動二輪車を左右に旋回させ易い。
また、上述の構成において、車体フレームは、フロントフォークを支持するヘッドパイプと、ヘッドパイプから車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレームとを備え、エアクリーナーボックスは、メインフレームの下方で、メインフレームを車幅方向に跨いで設けられ、ABSモジュレーターは、メインフレームの車幅方向外側で、エアクリーナーボックスに上方から重なっても良い。
この構成によれば、車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレームの車幅方向外側には、大きなスペースを確保できる。このため、メインフレームの車幅方向外側にABSモジュレーターを配置し易いとともに、ABSモジュレーターの組み付け性が良い。また、エアクリーナーボックスがメインフレームを車幅方向に跨ぐため、エアクリーナーボックスの容量を大きく確保できる。
【0015】
また、上述の構成において、エアクリーナーボックスは、車体フレームに対し車幅方向の一方側に膨出する一側膨出部と、車体フレームに対し車幅方向の他方側に膨出する他側膨出部とを備え、一側膨出部は、開口と、開口を覆う開閉可能な蓋部材とを備え、ABSモジュレーターは、他側膨出部に上方から重なっても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターは他側膨出部に上方から重なるため、一側膨出部の蓋部材の開閉にABSモジュレーターが邪魔になり難い、このため、エアクリーナーボックスの蓋部材を容易に開閉できる。
さらに、上述の構成において、他側膨出部の上面は、一側膨出部の上面よりも低い位置にあっても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターを低い位置に配置でき、自動二輪車の重心を低くできる。
【0016】
また、上述の構成において、ABSモジュレーターは、車体フレームに車幅方向外側から重なっても良い。
この構成によれば、ABSモジュレーターを、車体フレームによって車幅方向内側から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2図2は、タンクカバーを取り外した状態における自動二輪車の前部の右側面図である。
図3図3は、車体フレームに対するエアクリーナーボックス及びABSモジュレーターの配置を上方から見た平面図である。
図4図4は、車体フレームに対するエアクリーナーボックス及びABSモジュレーターの配置を車両前方から見た正面図である。
図5図5は、ステーの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号RHは車体右方を示す。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車1の右側面図である。
自動二輪車1は、車体フレーム10と、車体フレーム10に支持されるエンジン11と、前輪2を操舵自在に支持するフロントフォーク12と、後輪3を支持するスイングアーム13と、乗員用のシート14とを備える車両である。
自動二輪車1は、乗員がシート14に跨るようにして着座する鞍乗り型車両である。シート14は、車体フレーム10の後部の上方に設けられる。
【0020】
車体フレーム10は、車体フレーム10の前端に設けられるヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から後下方に延びるメインフレーム16と、メインフレーム16の後端部から下方に延びるピボットフレーム17とを備える。
また、車体フレーム10は、メインフレーム16の後方で車体フレーム10の後部を構成するシートフレーム(不図示)を備える。
【0021】
メインフレーム16は、ヘッドパイプ15から車幅方向の中央を後下方に延びるパイプ材である。メインフレーム16は、ヘッドパイプ15と同様に車幅方向の中央に配置される1本のフレーム部材である。
ピボットフレーム17は、メインフレーム16の後端部から車幅方向の中央を下方に延びる単一の部材である。
【0022】
フロントフォーク12は、ヘッドパイプ15に回動自在に軸支されるステアリングシャフト(不図示)と、上記ステアリングシャフトの上端に固定されるトップブリッジ20と、上記ステアリングシャフトの下端に固定されるボトムブリッジ21と、トップブリッジ20及びボトムブリッジ21に支持される左右一対のフォークチューブ22とを備える。フォークチューブ22はテレスコピック式のサスペンションである。
前輪2は、左右のフォークチューブ22の下端部間に渡される車軸2aに支持される。
乗員がフロントフォーク12を左右に操舵するためのハンドル23は、フロントフォーク12の上端部に取り付けられる。
【0023】
スイングアーム13は、ピボットフレーム17に支持されるピボット軸25に支持される。ピボット軸25は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム13の前端部には、ピボット軸25が挿通される。スイングアーム13は、ピボット軸25を中心に上下に揺動する。
後輪3は、スイングアーム13の後端部に設けられる車軸3aに支持される。
スイングアーム13の後部と車体フレーム10との後部との間には、リアクッション26が掛け渡される。
【0024】
エンジン11は、メインフレーム16の下方、且つ、ピボットフレーム17の前方に配置される。エンジン11は、メインフレーム16及びピボットフレーム17に締結される。
エンジン11は、車幅方向に延びるクランク軸(不図示)を収納するクランクケース30と、クランクケース30の前面部から前方に延出するシリンダー部31とを備える内燃機関である。
シリンダー部31は、ピストン(不図示)を収納するシリンダー31aと、シリンダー31aから前方に延びるシリンダーヘッド31bと、シリンダーヘッド31bを前方から覆うヘッドカバー31cとを備える。
エンジン11は、シリンダー31aのシリンダー軸線31dが車両側面視で略水平に前方へ延びる水平エンジンである。上記ピストンは、シリンダー軸線31dに沿って前後に往復運動する。
【0025】
エンジン11の出力は、エンジン11の後部に設けられる出力軸(不図示)と後輪3とを接続する駆動力伝達部材32によって後輪3に伝達される。
エンジン11の排気装置33は、シリンダーヘッド31bの下面の排気ポートから車両後方に延びる。
【0026】
エンジン11の吸気量を調整するスロットルボディ34は、シリンダー部31の上方に配置される。スロットルボディ34は、シリンダーヘッド31bの上面の吸気ポートに接続される。
外気をエンジン11用の吸気として取り込むエアクリーナーボックス35は、クランクケース30よりも前方且つヘッドパイプ15よりも後方で、上下方向においてシリンダー部31とメインフレーム16との間に配置される。エアクリーナーボックス35は、メインフレーム16の下方に位置し、シリンダー部31に上方から重なる。エアクリーナーボックス35は、スロットルボディ34の前上方に位置する。
エアクリーナーボックス35は、エアクリーナーボックス35の後部から後方に延びる接続菅36によってスロットルボディ34に接続される。
【0027】
燃料タンク38は、ヘッドパイプ15とシート14との間でメインフレーム16の上方に配置される。燃料タンク38は、車体フレーム10に固定される。
燃料タンク38の燃料は、吸気通路に設けられる燃料供給装置(不図示)によって、上記吸気ポートに供給される。
【0028】
自動二輪車1は、車体を覆う車体カバー40を備える。
車体カバー40は、燃料タンク38を外側方から覆う左右一対のタンクカバー41と、燃料タンク38を上方から覆う上面カバー42とを備える。
また、車体カバー40は、シート14の下方の車体を外側方から覆うサイドカバー43と、サイドカバー43の下方でピボットフレーム17等を外側方から覆うカバー44とを備える。
自動二輪車1は、前輪2を上方から覆うフロントフェンダー45と、後輪3を上方から覆うリアフェンダー46とを備える。
【0029】
ヘッドパイプ15の前方には、ヘッドライト47が配置される。
自動二輪車1は、駐車時に路面に接地して自動二輪車1を支持するサイドスタンド48を備える。サイドスタンド48は、ピボットフレーム17の下部の左側に設けられる。
サイドスタンド48によって自動二輪車1を駐車した状態では、自動二輪車1は、左側に傾斜する。
【0030】
前輪2のブレーキ装置50は、乗員が操作するブレーキ操作部51と、前輪2に設けられるブレーキディスク52と、ブレーキディスク52を挟圧するフロントブレーキキャリパー53と、ブレーキ操作部51とフロントブレーキキャリパー53とを接続するブレーキ配管54と、ブレーキ配管54の途中に設けられるABSモジュレーター55とを備える。
ブレーキ操作部51の操作により発生する液圧は、ブレーキ配管54を介してフロントブレーキキャリパー53に伝達される。フロントブレーキキャリパー53は、液圧によってブレーキディスク52を挟圧し、前輪2を制動する。
【0031】
ABS(Anti-lock Brake System)モジュレーター55は、ブレーキ装置50の液圧を制御することで、前輪2のロックを防止する制動力調整装置である。
ABSモジュレーター55は、モーターによって駆動されて液圧を調整するポンプ、このポンプに接続される液圧回路部、この液圧回路部を切り替えるバルブ、及び上記モーターを制御する電子制御部等を備える。ABSモジュレーター55は、車両側面視及び上面視で略矩形の箱状である。
【0032】
図2は、タンクカバー41を取り外した状態における自動二輪車1の前部の右側面図である。図3は、車体フレーム10に対するエアクリーナーボックス35及びABSモジュレーター55の配置を上方から見た平面図である。図4は、車体フレーム10に対するエアクリーナーボックス35及びABSモジュレーター55の配置を車両前方から見た正面図である。
【0033】
図2図4を参照し、エアクリーナーボックス35は、箱状のボックス本体60と、ボックス本体60に取り付けられる蓋部材61とを備える。
ボックス本体60は、平面視で、車両前後方向よりも車幅方向に長い箱である。
ボックス本体60の一方の外側面には、ボックス本体60の内部を車幅方向外側に開放する開口60aが設けられる。
蓋部材61は、ボックス本体60の外側面に着脱自在に取り付けられ、開口60aを塞ぐ。蓋部材61をボックス本体60に着脱することで、開口60aを開閉可能である。
【0034】
エアクリーナーボックス35は、メインフレーム16の下方で、メインフレーム16を車幅方向に跨いで設けられる。すなわち、エアクリーナーボックス35は、メインフレーム16の下方で、メインフレーム16を車幅方向に通過するように設けられ、エアクリーナーボックス35の車幅方向の中間部は、メインフレーム16に下方から重なる。
エアクリーナーボックス35は、メインフレーム16に対し車幅方向の一方側(左側)に膨出する一側膨出部63と、メインフレーム16に対し車幅方向の他方側(右側)に膨出する他側膨出部64とを備える。
一側膨出部63は、ボックス本体60においてメインフレーム16の左側の部分と、蓋部材61とによって形成される。
他側膨出部64は、ボックス本体60においてメインフレーム16の右側の部分によって形成される。
【0035】
一側膨出部63内には、外気をろ過して浄化するエアクリーナーエレメント(不図示)が収納される。このエアクリーナーエレメントは、メンテナンス等の際、蓋部材61を取り外した状態で、開口60aから一側膨出部63内に着脱される。
【0036】
車幅方向において、他側膨出部64の長さは、一側膨出部63の長さよりも大きい。
上下方向において、他側膨出部64の長さは、一側膨出部63の長さよりも小さい。
車両前後方向において、他側膨出部64の長さは、一側膨出部63の長さよりも小さい。
他側膨出部64の上面64aは、一側膨出部63の上面63aよりも低い位置にある。
他側膨出部64の上面64aの後部には、後方に向けて開口する係合部64b(図2)が設けられる。
【0037】
エアクリーナーボックス35は、一側膨出部63の上面63aから上方に延びる固定部65aと、他側膨出部64の上面64aから上方に延びる固定部65bとを備える。
エアクリーナーボックス35は、固定部65aに車幅方向外側から挿通されてメインフレーム16の外側面に締結される固定具66aと、固定部65bに車幅方向外側から挿通されてメインフレーム16の外側面に締結される固定具66bとによって、メインフレーム16に固定される。
【0038】
他側膨出部64の後面は、一側膨出部63の後面よりも前方に位置する。接続菅36は、他側膨出部64の後面から後下方且つ車幅方向内側に延びて、スロットルボディ34に接続される。
【0039】
車体フレーム10は、メインフレーム16の前端部から車幅方向外側に延出する第1固定部16aと、第1固定部16aの後方でメインフレーム16から上方に延出する第2固定部16bとを備える。
【0040】
ABSモジュレーター55は、メインフレーム16の前部の車幅方向外側で、エアクリーナーボックス35に上方から重なる位置に配置される。
すなわち、ABSモジュレーター55は、車幅方向の中央に位置するメインフレーム16に対し、車幅方向外側にオフセットして配置されるとともに、エアクリーナーボックス35の上方に配置される。
【0041】
詳細には、ABSモジュレーター55は、車幅方向において、メインフレーム16を基準に、蓋部材61が設けられる側とは反対側に配置されており、上面視でエアクリーナーボックス35の他側膨出部64の上面64aに上方から重なる。
また、ABSモジュレーター55は、車両側面視で、メインフレーム16の外側面16cに車幅方向外側から重なる。
ABSモジュレーター55は、燃料タンク38(図3)の下方に位置し、燃料タンク38の前端部の側部は、ABSモジュレーター55の後部に上方から重なる。
【0042】
ABSモジュレーター55は、メインフレーム16から車幅方向外側に延びるステー70に支持される。
図5は、ステー70の右側面図である。
図2図5を参照し、ステー70は、ABSモジュレーター55を周囲から囲む籠状であり、ステー70の内側にABSモジュレーター55が収納される。
ABSモジュレーター55及びステー70は、右側のタンクカバー41(図1)によって車幅方向外側から覆われる。
【0043】
ステー70は、ABSモジュレーター55を車幅方向外側から覆う側壁部71と、ABSモジュレーター55を前方から覆う前壁部72と、ABSモジュレーター55を後方から覆う後壁部73と、ABSモジュレーター55を下方から覆う下壁部74と、ABSモジュレーター55を上方から覆う上壁部75とを備える。
ステー70の車幅方向内側の側面は、全体が車幅方向内側に開放する開放面であり、この開放面からABSモジュレーター55をステー70内に収納可能である。
【0044】
ステー70は、ステー70の内側と外側とを連通させる開口部を複数備える籠状であり、ABSモジュレーター55の一部を周囲から覆う。
ステー70は、前壁部72の車幅方向内側の端部の上端から前方に延びる第1取付片76を備える。
ステー70は、上壁部75の車幅方向内側の端部から上方に延びる第2取付片77を備える。
【0045】
ステー70は、第1取付片76及び第2取付片77を介し、メインフレーム16に締結される。
詳細には、第1取付片76は、第1取付片76に上方から挿通される固定具76aによって、メインフレーム16の第1固定部16aに締結される。第1取付片76は、第1取付片76と第1固定部16aとの間に挟まれるラバー部材76bを介し、ラバーマウントされる。
第2取付片77は、第2取付片77に車幅方向外側から挿通される固定具77aによって、メインフレーム16の第2固定部16bに締結される。第2取付片77は、第2取付片77と第2固定部16bとの間に挟まれるラバー部材77bを介し、ラバーマウントされる。
【0046】
また、ステー70は、エアクリーナーボックス35の係合部64bに係合する係合片78と、エアクリーナーボックス35に上方から当接する当接部79とを備える。
係合片78は、ステー70の後壁部73から下壁部74よりも下方まで延出する下方延出部78aと、下方延出部78aから前方に延出する前方延出部78bとを備える。
【0047】
係合片78は、他側膨出部64の係合部64bに前方延出部78bが後方から差し込まれることで、係合部64bに係合する。
当接部79は、下壁部74の前端部の下面に取り付けられたラバー部材である。当接部79は、他側膨出部64の上面64aにおける車幅方向外側の端部に上方から当接する。
ステー70は、係合部64b及び当接部79を介し、エアクリーナーボックス35の他側膨出部64に下方から支持される。
すなわち、ABSモジュレーター55は、ステー70を介しメインフレーム16に支持されるとともに、ステー70を介しエアクリーナーボックス35に支持される。このため、エアクリーナーボックス35を利用してABSモジュレーター55を強固に支持できる。
【0048】
ABSモジュレーター55は、ステー70の前壁部72に前方から挿通されてABSモジュレーター55の前面55aに締結される前側固定具80aによって、ステー70に固定される。
また、ABSモジュレーター55は、ステー70の下壁部74に下方から挿通されてABSモジュレーター55の下面に締結される下側固定具80bによって、ステー70に固定される。
【0049】
ABSモジュレーター55の前端である前面55aは、上面視において、他側膨出部64の前端である膨出部前面64cよりも後方に位置する。このため、他側膨出部64によってABSモジュレーター55を前下方から覆うことができ、ABSモジュレーター55を前下方からの飛び石等に対して保護できる。
また、ABSモジュレーター55の外側面55bは、上面視において、他側膨出部64の外側面よりも車幅方向内側に位置する。このため、ABSモジュレーター55を他側膨出部64によって車幅方向外側から保護できる。
【0050】
図2を参照し、ブレーキ配管54は、ブレーキ操作部51とABSモジュレーター55とを接続する第1ブレーキ配管54aと、ABSモジュレーター55とフロントブレーキキャリパー53とを接続する第2ブレーキ配管54bとを備える。
第1ブレーキ配管54aの一端は、ハンドル23(図1)の右端部に設けられるブレーキ操作部51に接続される。
第1ブレーキ配管54aの他端は、ABSモジュレーター55の上面の配管接続部55cに接続される。
【0051】
第2ブレーキ配管54bの一端は、ABSモジュレーター55の上面の配管接続部55cに接続される。
第2ブレーキ配管54bは、メインフレーム16に対し右側に配置されたABSモジュレーター55から前方かつ下方に延び、第2ブレーキ配管54bの他端は、右側のフォークチューブ22の下端部に設けられるフロントブレーキキャリパー53に接続される。
すなわち、ABSモジュレーター55及びフロントブレーキキャリパー53は、車幅方向の中央に対し共に右側に配置され、車幅方向の中央に対し車幅方向の同じ側にオフセットして配置される。このため、ABSモジュレーター55とフロントブレーキキャリパー53とが車幅方向に近くなり、第2ブレーキ配管54bを短くできる。
【0052】
図1を参照し、車両側面視で、後輪3の接地点とヘッドパイプ15とを結ぶ直線は、自動二輪車1の旋回軸線Rである。自動二輪車1は、旋回軸線Rを中心に左右にバンクして旋回する。
ABSモジュレーター55は、車両側面視で、自動二輪車1の前部において旋回軸線R上に位置する。
【0053】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、自動二輪車1は、車体フレーム10と、エンジン11用の吸気を取り込むエアクリーナーボックス35と、フロントブレーキキャリパー53に供給する液圧を制御するABSモジュレーター55とを備え、車体フレーム10の下方にエアクリーナーボックス35が配置され、ABSモジュレーター55は、車体フレーム10の車幅方向外側で、エアクリーナーボックス35に上方から重なる位置に配置される。
この構成によれば、ABSモジュレーター55が、車体フレーム10の車幅方向外側でエアクリーナーボックス35に上方から重なる位置に配置されるため、ABSモジュレーター55の配置場所にアクセスし易い。このため、ABSモジュレーター55の組み付け性が良い。また、ABSモジュレーター55をエアクリーナーボックス35によって下方から効果的に保護できる。
【0054】
また、ブレーキキャリパーは前輪2用のフロントブレーキキャリパー53を備え、フロントブレーキキャリパー53及びABSモジュレーター55は、車幅方向の中央に対し、車幅方向の同じ側にオフセットして配置される。
この構成によれば、ABSモジュレーター55とフロントブレーキキャリパー53とが車幅方向に近くなり、ABSモジュレーター55とフロントブレーキキャリパー53とを簡単に接続できる。ABSモジュレーター55とフロントブレーキキャリパー53とを接続する部材であるブレーキ配管54の配策経路を短くできる。
また、ABSモジュレーター55は、車体フレーム10から車幅方向外側に延びるステー70に支持され、ステー70は、エアクリーナーボックス35によって下方から支持される。
この構成によれば、ABSモジュレーター55を支持するステー70を、エアクリーナーボックス35によって下方から支持するため、エアクリーナーボックス35を利用してABSモジュレーター55を強固に支持できる。
【0055】
さらに、ステー70は、ABSモジュレーター55を前方から覆う前壁部72と、ABSモジュレーター55を車幅方向外側から覆う側壁部71とを備える。
この構成によれば、ステー70の前壁部72及び側壁部71によって、ABSモジュレーター55を前方及び外側方から保護できる。
また、ABSモジュレーター55の前端である前面55aは、エアクリーナーボックス35の前端である膨出部前面64cよりも後方に位置する。
この構成によれば、ABSモジュレーター55を、エアクリーナーボックス35によって、前方及び下方から保護できる。これにより、例えば、ABSモジュレーター55を前方及び下方からの飛び石等から保護できる。
【0056】
また、前輪2を支持するフロントフォーク12を支持するヘッドパイプ15が設けられ、車両側面視で、後輪3の接地点とヘッドパイプ15とを結ぶ直線状の旋回軸線R上に、ABSモジュレーター55が配置される。
この構成によれば、旋回軸線R上にABSモジュレーター55が配置されるため、ABSモジュレーター55が旋回の抵抗になり難く、自動二輪車1を左右に旋回させ易い。ABSモジュレーター55は、例えば自動二輪車1の姿勢を検出するジャイロセンサー等の電装品に比較して重い部品であるが、重いABSモジュレーター55を旋回軸線R上に配置することで、自動二輪車1の旋回に対するABSモジュレーター55の影響を小さくできる。
また、車体フレーム10は、フロントフォーク12を支持するヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレーム16とを備え、エアクリーナーボックス35は、メインフレーム16の下方で、メインフレーム16を車幅方向に跨いで設けられ、ABSモジュレーター55は、メインフレーム16の車幅方向外側で、エアクリーナーボックス35に上方から重なる。
この構成によれば、車幅方向の中央を後下方に延びる1本のメインフレーム16の車幅方向外側には、大きなスペースを確保できる。このため、メインフレーム16の車幅方向外側にABSモジュレーター55を配置し易いとともに、ABSモジュレーター55の組み付け性が良い。また、エアクリーナーボックス35がメインフレーム16を車幅方向に跨ぐため、エアクリーナーボックス35の容量を大きく確保できる。
【0057】
また、エアクリーナーボックス35は、車体フレーム10に対し車幅方向の一方側に膨出する一側膨出部63と、車体フレーム10に対し車幅方向の他方側に膨出する他側膨出部64とを備え、一側膨出部63は、開口60aと、開口60aを覆う開閉可能な蓋部材61とを備え、ABSモジュレーター55は、他側膨出部64に上方から重なる。
この構成によれば、ABSモジュレーター55は他側膨出部64に上方から重なるため、一側膨出部63の蓋部材61の開閉にABSモジュレーター55が邪魔になり難い、このため、エアクリーナーボックス35の蓋部材61を容易に開閉できる。
さらに、他側膨出部64の上面64aは、一側膨出部63の上面63aよりも低い位置にある。
この構成によれば、ABSモジュレーター55を低い位置に配置でき、自動二輪車1の重心を低くできる。また、ABSモジュレーター55の上方に、例えば、燃料タンク38等の他の部品を配置するスペースを確保し易い。
【0058】
また、ABSモジュレーター55は、車体フレーム10に車幅方向外側から重なる。
この構成によれば、ABSモジュレーター55を、車体フレーム10によって車幅方向内側から保護できる。
ABSモジュレーター55が車体フレーム10に車幅方向外側から重なるため、車体フレーム10から延びてABSモジュレーター55を支持するステー70を短くできる。
【0059】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、ABSモジュレーター55は、前輪2のブレーキ装置50の液圧を制御するものとして説明したが、これに限らず、ABSモジュレーター55は、後輪3のブレーキ装置の液圧も制御しても良い。
上記実施の形態では、一側膨出部63の開口60aは車幅方向外側に開放するものとして説明したが、これに限らず、開口60aは、例えば、上方、下方、前方、及び後方の少なくともいずれかに開放しても良い。
また、上記実施の形態では、自動二輪車1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備える3輪の鞍乗り型車両及び4輪以上を備える鞍乗り型車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 前輪
3 後輪
10 車体フレーム
11 エンジン
12 フロントフォーク
15 ヘッドパイプ
16 メインフレーム
35 エアクリーナーボックス
53 フロントブレーキキャリパー(ブレーキキャリパー)
55 ABSモジュレーター
55a 前面(ABSモジュレーターの前端)
60a 開口
61 蓋部材
63 一側膨出部
63a 上面
64 他側膨出部
64a 上面
64c 膨出部前面(エアクリーナーボックスの前端)
70 ステー
71 側壁部
72 前壁部
R 旋回軸線
図1
図2
図3
図4
図5