(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】粘性流体吐出システム及び車載用モーターの製造装置
(51)【国際特許分類】
B05C 9/14 20060101AFI20231124BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20231124BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20231124BHJP
B05C 9/10 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
B05C9/14
B05C5/00 101
H02K15/12 E
B05C9/10
(21)【出願番号】P 2023054419
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2022054702
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 和義
(72)【発明者】
【氏名】大神 修平
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-276716(JP,A)
【文献】特開2022-155714(JP,A)
【文献】特開2022-176053(JP,A)
【文献】特開平07-100428(JP,A)
【文献】特開平05-111659(JP,A)
【文献】特開平11-319684(JP,A)
【文献】特開2006-126390(JP,A)
【文献】特開2011-126219(JP,A)
【文献】特開2012-066386(JP,A)
【文献】特表2018-523470(JP,A)
【文献】特開2021-112870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-5/04
B05C 7/00-21/00
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料中にフィラーが分散されている樹脂組成物である粘性流体の吐出動作を制御する粘性流体吐出システムであって、
内部に前記粘性流体を貯留し、前記粘性流体を排出する出口をもつ粘性流体供給容器と、
前記出口に
管状の第1配管を介して接続され、前記粘性流体を吸入する循環ポンプ入口から循環ポンプ出口に排出する循環ポンプと、
前記循環ポンプ出口に第2配管を介して接続され、前記粘性流体が導入されるディスペンサ入口と、前記ディスペンサ入口に接続され前記粘性流体を外部に吐出する吐出口と、前記ディスペンサ入口と前記吐出口を接続する流路をもち、前記吐出口への前記粘性流体の流れを開始乃至停止するディスペンサと、
前記循環ポンプを加熱する加熱装置と、
前記循環ポンプ、前記ディスペンサ、前記加熱装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記出口は、前記粘性流体供給容器の底部であって下方に向けて開口し、
前記循環ポンプ入口は、略水平方向から前記粘性流体を吸入し、
前記循環ポンプ出口は、前記循環ポンプ入口よりも上方に開口し、
前記循環ポンプは、ダイヤフラムポンプであり前記循環ポンプ入口から吸入した前記粘性流体を前記循環ポンプ出口に向けて上方に移送し、
前記第1配管は、前記粘性流体供給容器の下部に設けられた前記出口から下方向に向けて取り付けられており、途中で屈曲した後、前記循環ポンプ入口に向けて水平方向に対して8°以上50°以下
であって且つ前記フィラーが前記粘性流体の流れに従い移動する傾斜をもつように斜め下に向けて配管されている、
粘性流体吐出システム。
【請求項2】
前記ディスペンサは、前記流路に接続され前記粘性流体のうち外部に吐出されなかったものを排出するディスペンサ出口をもち、
前記粘性流体供給容器は、排出された前記粘性流体の一部乃至全部が循環して戻る戻り口をもち、
前記ディスペンサ出口と前記戻り口とを接続する第3配管を有する請求項1に記載の粘性流体吐出システム。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記粘性流体供給容器、前記第2配管、及び前記ディスペンサのうちの少なくとも1つ、及び/又は、請求項2を引用し前記第3配管を有する場合にはその第3配管を含むその他部位と、前記第1配管を加熱する請求項1又は2に記載の粘性流体吐出システム。
【請求項4】
少なくとも前記第1配管は、フッ素樹脂により内面がライニングされている請求項1又は2に記載の粘性流体吐出システム。
【請求項5】
前記循環ポンプ内の前記粘性流体の温度である循環ポンプ温度を直接的乃至は間接的に測定する温度センサを有し、
前記制御装置は、前記循環ポンプ温度が所定温度以上になった後に前記循環ポンプの駆動を開始する請求項1又は2に記載の粘性流体吐出システム。
【請求項6】
前記粘性流体は、充填材であり、
ステータ及び/又はロータの巻線に前記粘性流体を吐出する請求項1又は2に記載の粘性流体吐出システムを有する車載用モータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を制御して吐出する粘性流体吐出システム及び車載用モータの製造装置に関し、詳しくは数千mPa・sから数万mPa・s程度の流体に好適な粘性流体吐出システム及び車載用モータの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用モータは、小型化が進んでおり、高い放熱性能が要求されている。放熱が充分で無いと、出力が低下するばかりか寿命の低下にも繋がる。放熱性能を向上するため、ステータ巻線などの放熱や固定が必要な部位に、無機物粒子材料をエポキシ樹脂やシリコーンなどの樹脂材料中に分散した樹脂組成物などからなる粘性流体である充填材を充填して封止することが行われる。充填材を充填することにより封止材、電気的又は熱的な絶縁材、伝熱材料としての作用が期待される。分散されたフィラーの種類や形態に応じて充填材に種々の特性を付与することが可能になる。
【0003】
充填材を構成する樹脂組成物などの粘性流体を充填する際に用いる粘性流体吐出システムは、粘性流体を貯留する粘性流体供給容器と、粘性流体を吐出するディスペンサを有する(特許文献1など)。
【0004】
粘性流体の中には、低温になると粘度が急上昇するなど温度変化により粘度が大きく変化するものもあり、装置の稼働時に粘性流体の温度を上昇させることが必要である場合があった。そのような場合に粘性流体供給容器内の粘性流体に対して加熱を行って温度を上昇させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粘性流体吐出システムは、連続稼働させるばかりではなく、稼働と休止とを繰り返すことが一般的である。そうすると、休止状態から稼働状態へと移行するときに適正な粘度になるように粘性流体の温度を上昇させる必要があった。
【0007】
また、樹脂材料中にフィラーが分散されている樹脂組成物である粘性流体は、運転停止時などにおいて放置すると、フィラーが沈降してしまう。ここでダイヤフラムポンプは、下方から粘性流体を吸入し上方に吐出するようにすることで、ダイヤフラムポンプ内部に空隙が生じることが抑制でき、確実に動作させることができる。反対に上方から下方に流れるように配置すると、内部の粘性流体が重力により下方に移動し、内部に空隙が生じるおそれがある。
【0008】
しかしながら粘性流体を下方から上方に流れるように配置すると、沈降したフィラーがうまくダイヤフラムポンプに吸入できず配管中でフィラーが滞留するおそれがあった。特に運転開始の準備時にポンプを動作させずに加熱のみ行うと、配管中に存在する粘性流体の粘度のみが低下した時に粘性流体中のフィラーが沈降してしまう。
【0009】
特に粘性流体は、運転を中止して温度が低下すると粘度が急激に高まるため、再加熱により配管中やポンプ中の移動がし易いようにある程度の大きさの管径をもつ構成にしているため、配管内やポンプ内において断面方向においてフィラーの不均衡が生じ易くなっている。
【0010】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、吐出する粘性流体に対して効率的に加熱を行い、適正な粘度にすることができると共に、粘性流体中に含まれるフィラーが沈降してもポンプにより吸入しやすくできる粘性流体吐出システム及びその粘性流体吐出システムを利用した車載用モータの製造装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の粘性流体吐出システムは、樹脂材料中にフィラーが分散されている樹脂組成物である粘性流体の吐出動作を制御する粘性流体吐出システムであって、
内部に前記粘性流体を貯留し、前記粘性流体を排出する出口をもつ粘性流体供給容器と、
前記出口に第1配管を介して接続され、前記粘性流体を吸入する循環ポンプ入口から循環ポンプ出口に排出する循環ポンプと、
前記循環ポンプ出口に第2配管を介して接続され、前記粘性流体が導入されるディスペンサ入口と、前記ディスペンサ入口に接続され前記粘性流体を外部に吐出する吐出口と、前記ディスペンサ入口と前記吐出口を接続する流路をもち、前記吐出口への前記粘性流体の流れを開始乃至停止するディスペンサと、
前記循環ポンプを加熱する加熱装置と、
前記循環ポンプ、前記ディスペンサ、前記加熱装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記循環ポンプ入口は、略水平方向から前記粘性流体を吸入し、
前記循環ポンプ出口は、前記循環ポンプ入口よりも上方に開口し、
前記循環ポンプは、ダイヤフラムポンプであり前記循環ポンプ入口から吸入した前記粘性流体を前記循環ポンプ出口に向けて上方に移送し、
前記第1配管は、前記粘性流体供給容器の下部に設けられた前記出口から下方向に向けて取り付けられており、途中で屈曲した後、前記循環ポンプ入口に向けて水平方向に対して8°以上50°以下の傾斜をもつように斜め下に向けて配管されている。
【0012】
粘性流体を加熱する際に、粘性流体を輸送させる循環ポンプを優先的に加熱することで粘性流体を効果的に加熱することができる。循環ポンプとしてはダイヤフラムポンプが採用できるが、循環ポンプを可動すると、内部に存在する粘性流体に外力を加えることになるため、伝熱による温度上昇に加え、粘性流体自体の移動により加熱を効果的に行うことができる。また、循環ポンプ入口に接続された第1配管を循環ポンプに向かうに従って下がるように一定範囲の傾斜角で傾斜させることでフィラーが沈降しても沈降したフィラーが循環ポンプ入口側に移動して沈降することになり、循環ポンプ入口付近における第1配管断面においてフィラーの層が占める割合が大きくでき、ポンプにより生成される粘性流体の流れにより沈降したフィラーをポンプ中に効果的に吸い込むことが可能になった。
【0013】
特に、前記ディスペンサは、前記流路に接続され前記粘性流体のうち外部に吐出されなかったものを排出するディスペンサ出口とをもち、前記粘性流体供給容器は、排出された前記粘性流体の一部乃至全部が循環して戻る戻り口をもち、前記ディスペンサ出口と前記戻り口とを接続する第3配管を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有することから本発明の粘性流体吐出システムは、休止状態から早期に稼働を開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態(第1実施形態)の樹脂組成物吐出システムの概略を示したフロー図である。
【
図2】本実施形態の樹脂組成物吐出システムにおける撹拌装置を説明する概略断面図である。
【
図4】本実施形態の撹拌装置に用いられる邪魔部材の拡大図である。
【
図5】本実施形態(第2実施形態)の樹脂組成物吐出システムの概略を示したフロー図である。
【
図6】実施例における粘性流体吐出システムの各部位の温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(粘性流体吐出システム:第1形態)
本発明の粘性流体吐出システムについて以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態の粘性流体吐出システムは、樹脂組成物などの粘性流体を吐出するシステムである。粘性流体としては、液体状の樹脂材料からなることが例示できる。例えば、エポキシ樹脂前駆体などの硬化前の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂材料中には、フィラーが含有されている。
【0017】
フィラーとしてはアルミナ、シリカなどの無機物粒子材料、フッ素樹脂などの有機物粒子材料が採用できる。樹脂組成物は、モータジェネレータのような電機部品、半導体素子などの電子装置を封止するような用途に用いることができ、フィラーを分散させることで熱伝導性を向上し、加熱による寸法安定性も向上している。特に粘性流体として、車載用モータ用などに採用される充填材を採用することが好ましい。充填材は、車載用モータのステータ及び/又はロータの巻線に充填されたり、車載用モータの搭載位置にて車載用モータの周囲に充填されたり、車載用モータに電力を供給する配線を充填したりする。充填材は、これらの位置に充填されることで車載用モータの必要な部位に対して外部から気体や液体を遮断する封止材として作用したり、充填した部位について外部から電気的及び/又は熱的に絶縁する絶縁材として作用したり、充填した位置と外部との間の熱伝導性を向上する伝熱材料として作用したりさせることができる。更に、フィラーが分散された樹脂材料が発揮できる特性を期待することも十分に可能である。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物吐出システムは、
図1に示すように、粘性流体供給容器としての撹拌装置1と、撹拌装置1から流出する樹脂組成物を送出する循環ポンプ2と、循環ポンプ2により送出された樹脂組成物の一部乃至全部を外部に吐出するディスペンサ3と、撹拌装置1及び循環ポンプ2の間を連絡する第1配管4aと、循環ポンプ2及びディスペンサ3(ディスペンサ入口)の間を連絡する第2配管4bと、ディスペンサ3(ディスペンサ出口)及び撹拌装置1の戻り口12の間を連絡する第3配管4cと、撹拌装置1に樹脂組成物を第4配管4dを通じて供給する投入タンク7と、これらの装置内に存在する樹脂組成物を加熱する加熱装置(図略)と、これらの装置を制御する制御装置(図略)とを有する。本実施形態では、ディスペンサ出口から撹拌装置1の戻り口12に樹脂組成物を戻す流路をもつことで第1配管4a~第3配管4c内を流れる樹脂組成物についても速やかに加熱することが可能になる。
【0019】
加熱装置は、少なくとも循環ポンプ2内に存在する樹脂組成物を加熱できるようになっている。その他の部材を加熱する場合であっても、加熱手段は、循環ポンプ2をできるだけ早く加熱することが効率的であるため、他の部位よりも早く循環ポンプ2の加熱を介するように制御装置により制御することが好ましい。
【0020】
循環ポンプ2を加熱する方法としては、外側にヒータを配設して外部から加熱したり、内部にヒータを配設して内部から加熱したりできる。撹拌装置1や投入タンク7を加熱する場合には、撹拌槽10や投入タンク7の周囲をヒータにより囲ったり、撹拌槽10や投入タンク7の内部にヒータを投入したりすることができる。ディスペンサ3を加熱する方法としては、外側にヒータを配設して外部から加熱したり、内部にヒータを配設して内部から加熱したりできる。第1配管4a~第4配管4dを加熱する方法としては、外側にヒータを配設して外部から加熱する方法が挙げられる。加熱装置には、加熱の程度を測定する測温手段をもつ。測温手段は、樹脂組成物の温度を測定又は推定する手段であり、樹脂組成物の温度を直接測定する手段、樹脂組成物の温度に関連する何らかの指標を測定することで温度を推定する手段が採用できる。樹脂組成物の温度に関連する何らかの指標としては、樹脂組成物以外の温度(循環ポンプ2を加熱する場合には循環ポンプ2の表面温度など)、ヒータが生成した熱量などである。
【0021】
本実施形態の樹脂組成物吐出システムは、撹拌装置1内に貯留する樹脂組成物を循環ポンプ2により第1配管4a~第3配管4cを循環させ、必要に応じてディスペンサ3により第2配管4bから樹脂組成物を外部に吐出するシステムである。配管は、フッ素樹脂により内面がライニングされていることで粘性流体の移動時の摩擦が低減され、効率的に粘性流体を移送することができるため好ましい。
【0022】
樹脂組成物は、シリカ粒子材料からなるフィラーとそのフィラーを分散するエポキシ樹脂前駆体である樹脂材料との混合部物であり、時間の経過と共にフィラーが沈降する。そのため、撹拌装置1にて樹脂組成物を撹拌し、フィラーが沈降しないようにする。樹脂組成物が少なくなると、投入タンク7から撹拌装置1に樹脂組成物を補充する。
【0023】
ディスペンサ3により樹脂組成物を外部に吐出しない場合には、樹脂組成物は、撹拌装置1から流出して第1配管4a~第3配管4cを通って撹拌装置1に環流する。この流れは循環ポンプ2によって行われる。樹脂組成物は、粘度が温度により大きく変化するため、加熱装置により一定以上に加熱される。
【0024】
樹脂組成物は、加熱によりエポキシ樹脂前駆体が重合して固化するため、粘度が十分に低下できる温度においての重合速度が許容できる範囲で低く且つ硬化させる際の加熱により十分な速度で重合・効果が進行するように、エポキシ樹脂前駆体の種類が選択される。樹脂組成物の粘度として好ましいのは、B型粘度計により測定した粘度が、2000mPa・s以上、70000mPa・s以下である。
【0025】
循環ポンプ2は、ダイヤフラムポンプである。循環ポンプ2は、循環ポンプ入口2aが下方にて開口し、略水平方向から粘性流体を吸入する。循環ポンプ2は、下方に開口する循環ポンプ入口2aから吸入した粘性流体を循環ポンプ2の上方に移送し、上方にて開口する循環ポンプ出口2bから吐出する。
【0026】
循環ポンプ入口2aに接続された第1配管4aは、撹拌装置1の下部中央から循環ポンプ入口2aの間を接続する配管であり、撹拌装置1から下方に向けて垂直に延設された部分から屈曲部4a1にて屈曲し、循環ポンプ入口2aに向けて斜め下に向けて配管されている。斜めの部分の傾斜角は8°以上50°以下であり、下限値としては9°、10°、11°などが例示でき、上限値としては45°、40°、35°、30°などが例示できる。これらの上下限値は任意に組み合わせ可能である。第1配管4aが粘性流体の流れに従って下方に傾斜していることで沈降したフィラーは、少しでも循環ポンプ入口2aの近くに移動していき、できるだけ多くが循環ポンプ入口2a付近に存在するようにできる。その結果、粘性流体の流れに従い、循環ポンプ入口2aから循環ポンプ2内部に吸入しやすくなり、フィラーの偏りも発生が抑制できることになる。
【0027】
ディスペンサ3は、第2配管4bに接続されたディスペンサ入口と樹脂組成物が必要に応じて吐出される吐出口との間を接続する流路に接続され、吐出口から吐出されなかった樹脂組成物が排出され第3配管4cに接続されるディスペンサ出口をもつ。吐出口からの樹脂組成物の吐出の制御方法は特に限定されず、ディスペンサ入口からディスペンサ出口への樹脂組成物の流れからポンプにより吐出口に流して制御したり、弁の開閉にて制御を行ったりすることができる。ディスペンサ3としては、モーノディスペンサ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ、電磁定量ポンプなどが採用できる。
【0028】
撹拌装置1は、粘性流体を供給するものであり、
図2に示すように、撹拌槽10と撹拌翼20と液面計30と邪魔部材40と駆動部(モータ50)とこれらを制御する制御装置(図略)を有する。
【0029】
撹拌槽10は、外周面が略円筒状の槽体である。撹拌槽10の上部は、蓋体11により封止できる。蓋体11の中央にはモータ50が固定されており、蓋体11の中央下部から回転軸21が下方に突出する。モータ50は減速機(図略)を有し、回転動力を出力軸(図略)から出力する。
【0030】
撹拌槽10内では撹拌翼20が回転駆動されるため、形状が円筒状から離れるとそれだけ撹拌されない部分が増加する。そのため、撹拌槽10の外周面を円筒に近づけることにより、できるだけ撹拌されない部分が少なくなる。撹拌槽10の底面の形状は特に限定されず、球面の一部、下方に向けて縮径される円錐形、平面などが挙げられる。
【0031】
撹拌槽10には、底部中央付近に流出口(図略)、外周面上方に戻り口12及び投入口13をもつ。流出口には第1配管4aの一端部が接続され、樹脂組成物が外部方向Fに流れ、外部に流出していく。環流口には第3配管4cの一端部が接続され、樹脂組成物が内部方向Rに向けて流れ、外部から撹拌槽10内に向けて環流してくる。
【0032】
撹拌翼20は、回転軸21と基部22aと翼部22b及び22cとをもつ。回転軸21は撹拌槽10の中央付近に上下方向に延びるように配設され、蓋体11の上部に固定されたモータ50の出力軸に同軸に接続されている。回転軸21の先端近傍(図面下方)には、基部22aが固定されている。特に基部22aが回転軸21に固定される位置は、撹拌槽10内の最大液面を基準として撹拌槽の底面から20%以下の範囲にすることが好ましい。
【0033】
基部22aは、回転軸21に中央部分で固定され且つその固定部分から外方に向けて撹拌槽10の底面に沿って延設される。基部22aの両方の先端から撹拌槽10の外周面に沿って翼部22bが上方向に延設される。
【0034】
撹拌翼20のうち、基部22aと翼部22b及び22cの外形は、撹拌槽10の内面形状に概ね倣った形状になっている。そのため、撹拌槽10内に貯留された樹脂組成物を効率よく撹拌することができる。撹拌翼20と撹拌槽10の内面との隙間の平均値が、6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることが更に好ましい。
【0035】
撹拌翼20の撹拌方向は特に限定されないが、撹拌翼20の撹拌方向により後述する邪魔部材40の適正な形状が異なるため同一の装置については同一の撹拌方向を採用することが好ましい。
【0036】
基部22aの上側の最も下にある部分Wは、撹拌槽10内の最大液面を基準として撹拌槽10の底面から20%以下の範囲にあることが好ましい。この位置が低いほど液面計30を深く挿入することが可能になる。翼部22b及び22cの上端は、最大液面を基準として撹拌槽10の底面から80%以上にすることが好ましい。
【0037】
液面計30は、静電容量式などの樹脂組成物に接触することで液面の高さを測定するセンサである。液面計30は、
図3に示すように、翼部22b及び22cが回転しても干渉しない位置に配設される。そして翼部22b及び22cの回転により上方から見て反時計回りに発生する樹脂組成物の旋回流が直接液面計30にあたらないように、邪魔部材40を液面計30に対して撹拌翼20の回転方向の前側(
図3では時計回り方向)に配設する。邪魔部材40は、板状邪魔部材41と筒状邪魔部材42とをもつ。板状邪魔部材41は、
図4に示すように、水平方向の断面がL字状になるように折り曲げられた上下方向に長い方形の部材である。そして、最大液面の少し上から液面計30の最下部の少し下までの範囲を液面計30の周囲を覆う、パンチングメタルから構成された筒状邪魔部材42にて囲っている。パンチングメタルの孔径は、1mm~10mm程度にすることで、樹脂組成物の通過はル程度許容しながら、樹脂組成物が液面計30にぶつかって液面計30が測定する見かけの樹脂組成物の液面が上昇することが抑制できる。
【0038】
(粘性流体吐出システムのその他の態様:第2形態)
本実施形態の粘性流体吐出システムは、
図5に示すように、ディスペンサ3から撹拌装置1に樹脂組成物を戻す第3配管4cが無い点を除き、
図1に示す第1実施形態の粘性流体吐出システムと同じ構成をもつ。なお、第3配管4cをなくしたことで、ディスペンサ3のディスペンサ出口と撹拌槽10の環流口がなくなっている。なお、
図5は第2実施形態の粘性流体吐出システムを表しているが、第1実施形態の粘性流体吐出システムと同様の機能をもつ部材については第1実施形態の粘性流体吐出システムと同じ符号を付して説明をしている。
【0039】
本実施形態の粘性流体吐出システムは、ポンプ2により常に加圧状態になっており、ディスペンサ3を制御することにより吐出口から吐出される樹脂組成物の量が調節される。
【0040】
本実施形態(第2形態)の粘性流体吐出システムは、第1実施形態が撹拌装置1から流出した樹脂組成物のうちディスペンサ3の吐出口から吐出しなかったものは、撹拌装置1内に戻す第3配管4cが設けられていたのに対し、本実施形態では撹拌装置1から流出した樹脂組成物は全てディスペンサ3の吐出口から吐出される点で異なっている。第1実施形態の粘性流体吐出システムでは、撹拌装置1から流出する樹脂組成物の量はディスペンサ3の吐出口からの吐出量以上であれば任意に決定することができ、必要ならば一定にすることも可能であるが、本実施形態ではディスペンサ3の吐出口から吐出する流量がそのまま撹拌装置1からの流出量になる。
【0041】
(車載用モータの製造装置)
本実施形態の車載用モータの製造装置は、車載用モータのステータ及び/又はロータの巻線に充填材を充填する粘性流体吐出システムとその他必要に応じて選択される手段とを有する。
【0042】
車載用モータは車両に搭載されるモータであり、特に車両の駆動用のモータである。車両に搭載されるモータは、使用条件が厳しいことが多く、適正な封止が要求されるものが多い。車両としては、自動車、自動二輪車、原動機付自転車などの一般的な車両、産業用車両、鉄道車両などに搭載されるモータである。本実施形態の車載用モータの製造装置が有する粘性流体吐出システムは、粘性流体としての充填材をステータ巻線に吐出してステータ巻線を封止する。
【0043】
粘性流体吐出システムは、先述した本実施形態の粘性流体吐出システムがそのまま採用できるため更なる説明は省略する。
【0044】
その他必要に応じて選択される手段としては、ステータ巻線を巻回する巻回装置、吐出された充填材を加熱することで硬化させる硬化装置、無機物粒子材料を樹脂材料中に分散させた充填材を調製する充填材調製装置が例示される。
【実施例】
【0045】
本発明の粘性流体吐出システムについて実施例に基づき詳細に説明を行う。粘性流体としてのエポキシ樹脂を用い、
図1に示す粘性流体吐出システムを用いて試験を行う。
粘性流体吐出システムは、加熱装置として、撹拌槽10、第1配管4a~第3配管4cのそれぞれについて外部から加熱する独立して制御可能な加熱装置を配設し、循環ポンプ2を始動すると同時にこれらの加熱装置により加熱を開始する。
【0046】
・第1条件:上記加熱条件・第2条件:上記加熱条件に加えて、撹拌槽10内に加熱装置としての投げ込みヒータを投入し、循環ポンプ2を外部から加熱する加熱装置を配設して循環ポンプ2の始動と同時に加熱を開始する。・第3条件:上記加熱条件に加えて、循環ポンプ2を外部から加熱する加熱装置を配設して循環ポンプ2の始動と同時に加熱を開始する。
【0047】
上記条件で運転を行った場合の撹拌槽10内の温度、ディスペンサ3の直前の温度、気温を経時的に測定した結果を
図6に示す。
【0048】
図より明らかなように、循環ポンプ2に加熱装置を配設した条件2及び3は、循環ポンプ2に加熱装置を配設していない条件1よりもディスペンサ3前の昇温速度が大きくなり、早期に高温にまで達した。そのため早期にディスペンサ3から吐出する樹脂組成物の温度を目標の温度に到達させることが可能になった。
【0049】
条件2及び3を比較すると、撹拌槽10内への投げ込みヒータの有無により撹拌槽10内の昇温速度は大きく変わったものの、ディスペンサ3前における昇温速度には大きな差はないことが分かった。
【0050】
以上の結果から、加熱装置を配設する部位として循環ポンプ2は好ましいことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0051】
1…撹拌装置 2…循環ポンプ 3…ディスペンサ 4a~4d…第1配管~第4配管
10…撹拌槽 11…蓋体
20、25…撹拌翼 21、26…回転軸 22a、27a、27b…基部 22b、22c、27c、27d…翼部
30…液面計
51、52…邪魔部材(51…板状邪魔部材、52…筒状邪魔部材)
50…モータ