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特許7390517アルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法及び装置
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  • 特許-アルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法及び装置 図1
  • 特許-アルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法及び装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】アルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B22C5/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023126927
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323006312
【氏名又は名称】折戸 道男
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】折戸 道男
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0000997(US,A1)
【文献】中国実用新案第207127212(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0024549(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ部品鋳造後成型品の不要部切除によるアルミ切粉を含む鋳物砂を熱風乾燥し、該鋳物砂の砂とアルミ切粉を分離し各別に分別回収するアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法。
【請求項2】
熱風乾燥を、搬送経路を覆うエアダクト(14)を形成し、該エアダクト(14)内に熱風を供給する熱風ブロワ(16)を配置した乾燥コンベア(12)により行う請求項1に記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法。
【請求項3】
上側にメッシュ又はパンチングメタルよりなり鋳物砂中の砂のみをふるいに掛けて分離しアルミ切粉を搬送するふるい床(29b)と、ふるいに掛けられた砂を受け止めて搬送する受け床(29a)とを備えた分別コンベア(23)により砂とアルミ切粉の分別を行う請求項1に記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法。
【請求項4】
分別コンベア(23)として振動コンベアを用いる請求項3に記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法。
【請求項5】
アルミ部品鋳造後のアルミ切粉を含む鋳物砂が投入され該鋳物砂を乾燥工程に供給するホッパー(7)と、該ホッパー(7)から排出される鋳物砂を受け取り次工程に搬送し、当該搬送経路上を覆うエアダクト(14)内に熱風を供給する熱風ブロワ(16)を組合わせて配置した乾燥コンベア(12)と、上記乾燥コンベア(12)上で乾燥された鋳物砂を下流側で受け取り次工程に搬送しながら鋳物砂中の砂とアルミ切粉を分離し各別に回収する分別コンベア(23)とを備えたアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離装置。
【請求項6】
鋳物砂が中子を用いた低圧鋳造法による使用済の鋳物砂であって、製品以外の不要部分を切断した際の切粉を含む請求項5に記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離装置。
【請求項7】
分別コンベア(23)が上側にメッシュ又はパンチングメタルよりなり、鋳物砂中の砂のみをふるいに掛けて分離するふるい床(29b)と、通過した砂を受け止めて搬送する受け床(29a)とを備えた請求項5に記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離装置。
【請求項8】
分別コンベア(23)が振動コンベアである請求項5~7のいずれかに記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離装置。
【請求項9】
乾燥コンベア(12)と分別コンベア(23)との間に、乾燥コンベア(12)から送られる鋳物砂を中継して分別コンベア(23)に送り込む移送コンベア(21)を介設してなる請求項5~7のいずれかに記載のアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアルミ鋳造鋳物砂のアルミ切粉分離方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例えば自動車用エンジンの吸気マニホールド等のように、構造が複雑なために中子を使用した低圧鋳造法等においては、鋳造時の湯口や湯上り等、成型品以外の不要部の除去部分の肉厚が厚く、製品との分離をカッターによる切断加工を行う。
【0003】
このため中子砂の回収時にアルミ切粉が混入しており、再生砂として使用する場合、砂型の品質やアルミ原料の有効利用の面からも砂からの分離が望ましいが、処理コスト等の面から多くはアルミ切粉を含んだまま砂の再生使用が行われていた。
【0004】
他方、アルミニウム製品の砂型鋳造後に型ばらしした鋳物砂中に混入しているアルミ地金の砂からの分離装置として特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭56-169943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献の発明は、使用済のアルミ鋳造鋳物砂を型ばらしして回収した回収砂内に残存するアルミ塊やバリ等のアルミ地金を分離回収して再利用する際に、アルミ地金とともに鋳物砂の鉱物成分を含むことにより溶解炉の炉材が損傷するのを防止するものである。
【0007】
そしてこの発明の装置は鋳物砂中のアルミ地金が比較的大きい塊状のものを対象としているため、砂とアルミ塊との分離が比較的容易である。
【0008】
しかし前述したように中子を使用した低圧鋳造法による複雑形状のアルミ製品で、中子砂内に多量の切粉が混入している場合には、カッターを用いた切断の際に用いる切断オイルによる砂と切粉の塊が形成され又は両者がオイルにより付着し又は砂と切粉が塊になっていることが多いため、砂とアルミ切粉の分離が十分に行われないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の方法は、第1にアルミ部品鋳造後成型品の不要部切除によるアルミ切粉を含む鋳物砂を熱風乾燥し、該鋳物砂の砂とアルミ切粉を分離し各別に分別回収することを特徴としている。
【0010】
第2に、熱風乾燥を、搬送経路を覆うエアダクト14を形成し、該エアダクト14内に熱風を供給する熱風ブロワ16を配置した乾燥コンベア12により行うことを特徴としている。
【0011】
第3に、上側にメッシュ又はパンチングメタルよりなり鋳物砂中の砂のみをふるいに掛けて分離しアルミ切粉を搬送するふるい床29bと、ふるいに掛けられた砂を受け止めて搬送する受け床29aとを備えた分別コンベア23により砂とアルミ切粉の分別を行うことを特徴としている。
【0012】
第4に、分別コンベア23として振動コンベアを用いることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の装置は、第1に、アルミ部品鋳造後のアルミ切粉を含む鋳物砂が投入され該鋳物砂を乾燥工程に供給するホッパー7と、該ホッパー7から排出される鋳物砂を受け取り次工程に搬送し、当該搬送経路上を覆うエアダクト14内に熱風を供給する熱風ブロワ16を組合わせて配置した乾燥コンベア12と、上記乾燥コンベア12上で乾燥された鋳物砂を下流側で受け取り次工程に搬送しながら鋳物砂中の砂とアルミ切粉を分離し各別に回収する分別コンベア23とを備えたことを特徴としている。
【0014】
第2に、鋳物砂が中子を用いた低圧鋳造法による使用済の鋳物砂であって、製品以外の不要部分を切断した際の切粉を含むことを特徴としている。
【0015】
第3に、分別コンベア23が上側にメッシュ又はパンチングメタルよりなり、鋳物砂中の砂のみをふるいに掛けて分離するふるい床29bと、通過した砂を受け止めて搬送する受け床29aとを備えたことを特徴としている。
【0016】
第4に、分別コンベア23が振動コンベアであることを特徴としている。
【0017】
第5に、乾燥コンベア12と分別コンベア23との間に、乾燥コンベア12から送られる鋳物砂を中継して分別コンベア23に送り込む移送コンベア21を介設してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成される本発明の方法及び装置によれば、格別新しい機能を備えた装置を必要とすることなく、アルミ鋳造鋳物砂から効率よく簡単に切粉を分離することができるので、切粉混入による砂型の品質低下を防止でき、アルミ材料の有効利用にも資することができる。
【0019】
特に、カッター切断時の冷却・潤滑液の使用による解体砂の塊や砂と切粉の付着を、熱風乾燥により解体分散と砂と切粉の分離と容易にし、振動コンベアによりこれらと確実に分離し分別回収できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明装置の概要を示す各処理機の配置の接続例を示す正面図である。
図2】本発明の方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面は本発明の1実施形態を示し、図1に示す装置は、使用済の鋳物砂を型ばらしした後回収し、図示しないコンベア等により投入するホッパー装置1を備えている。
【0022】
上記ホッパー装置1は、上部に例えば一辺1300mm角の箱枠状の開口部2を備え、その下部に側面逆台形断面の収束ケース3を連設し、さらにその下端にスパイラル軸4を左右方向に軸支した軸ケース6を設けたホッパー7を備えている。
【0023】
上記軸ケース6の左突出端には、例えば200mm,30rpm程度のスパイラル軸4の回転駆動用モーター8が、さらに右突出端には、ホッパー7内からスパイラル軸4によって送り出されてきた鋳物砂を下向きに排出する吐出口9が設けられている。ホッパー7は機体フレーム11上に取付けられて支持されている。
【0024】
上記ホッパー装置1の下流側(右側)であって吐出口9の下方には、例えばヒンジ型スチールベルトを用い、チップやダイキャスト部品等を搬送するベルトコンベアからなる乾燥コンベア12の始端部が位置するように配置され、吐出口9から排出される鋳物砂を受け取って下流側の次工程に搬送する。コンベアの上側外周には供給される鋳物砂の外部へのこぼれ落ちを防止するガイド枠13が付設されている。
【0025】
さらに上記コンベアの搬送経路上は、長手方向に沿ったトンネル状のエアダクト14で覆われており、その下流側開口端には、熱風ブロワ16が配置され、熱風ブロワ16の排気口17は上記エアダクト14の下流側開口端に向って開口している。コンベアによる鋳物砂の搬送方向とは逆向きの熱風をエアダクト14内に送り、鋳物砂は搬送されながら熱風により乾燥される。
【0026】
図示する例では乾燥コンベア12の機体フレーム18と熱風ブロワ16の機体フレーム19とは各別であるが両者は勿論、分離装置全体としても各部組立分解可能な一体型フレームとしても良い。また熱風ブロワ16は、例えば5.7~12m/min程度の風量で、常温~350℃程度の熱風供給が可能である。
【0027】
乾燥コンベア12の末端側下方には、乾燥されながら搬送された鋳物砂をその始端部側で受け取り、後方(下流側)の高位置に運び上げるZ型フレームの傾斜コンベアからなる移送コンベア21が設置されている。このコンベアは一般にチップ,スクラップ,ダイキャスト製品等の移送が可能なヒンジ型スチールベルト使用のコンベアが用いられる。該移送コンベア21の上面(搬送路側)外周には、荷こぼれ防止用のガイド枠22が設けられている。このコンベアでは、加熱され、粉砕され易くなった乾燥済の鋳物砂をある程度粉砕し且つ砂と切粉の分離をしながら次工程に移送する。
【0028】
さらに上記移送コンベア21の上端下流側の下方位置には、振動コンベアからなる分別コンベア23が配置され、切粉が混入し移送コンベア21の終端から受け取った鋳物砂をその始端部(上流端)側で受け取り、切粉と砂を最終分別しながら終端側で分別回収する。
【0029】
分別コンベア23は、機体フレーム24上にコイルスプリングその他の弾性部材26を介して箱状に囲まれた選別体27が取付けられ、選別体27の底面側には前後復動型の振動機28が取付けられている。
【0030】
さらに選別体27には底板を構成する下側の受け床29aと該受け床29a上に平行に配置されたメッシュ状又はパンチングメタル等からなる平板状のふるい床29bが設けられている。両床材が同時に前後(図面上左右)方向に例えば1~2cm程度復動することにより、搬送物(鋳物砂)を20m/min程度の速度で下流側に搬送する。
【0031】
鋳物砂は移送コンベア21から分別コンベア23に移送されると先ず上段側のふるい床29bによって受け止められて下流側に搬送されるが、ふるい床29bの復動振動によって鋳物砂は混入している切粉と砂が分離され、クレセント状の切削片からなるアルミ切粉はふるい床29b上に残されて下流側に搬送されるが、細粒の砂はふるい(篩い)に掛けられて受け床29a上に落下し、受け床29aの振動により下流側に送られる。
【0032】
受け床29aとふるい床29bの終端側には、両床面上で各別に搬送された砂と切粉をそれぞれ収束回収して排出する排出口31a,31bが下向きに開口して設置されている。該排出口31a,31bの下方には両排出口31a,31bから排出された砂と切粉を個別に回収する次工程への搬送路又は回収容器からなる回収部32a,32bが設けられている。
【0033】
上述したように本発明によれば、アルミ低圧鋳造法等における鋳造後の鋳物のカッティングによる切粉を含む型ばらし後の鋳物砂を、ホッパー7に投入して乾燥コンベア12により熱風乾燥し、分別コンベア23によって振動搬送しながら粉砕及び砂と切粉の分離と分別回収を行うことができる。
【0034】
尚、上記装置では、乾燥コンベア12と分別コンベア23との間に移送コンベア21を介設しているが、乾燥コンベア12として、終端(下流端)を高くした傾斜コンベア(図示しない)により、熱風乾燥済の鋳物砂を直接分別コンベア23に供給すること又は図示する乾燥コンベア12に対し、分別コンベア23を低位置に設置することにより、乾燥コンベア12から分別コンベア23に直接鋳物砂を供給することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
7 ホッパー
12 乾燥コンベア
14 エアダクト
16 熱風ブロワ
21 移送コンベア
23 分別コンベア
29a 受け床
29b ふるい床
【要約】
【課題】アルミ鋳造製品の不要部切除による切粉を含む鋳物砂から切粉を確実に分離する。
【解決手段】この発明の方法は、アルミ部品鋳造後成型品の不要部切除によるアルミ切粉を含む鋳物砂を熱風乾燥し、該鋳物砂の砂とアルミ切粉を分離し各別に分別回収するもので、熱風乾燥を、搬送経路を覆うエアダクト14を形成し、該エアダクト14内に熱風を供給する熱風ブロワ16を配置した乾燥コンベア12により行う。
また、上側にメッシュ又はパンチングメタルよりなり鋳物砂中の砂のみをふるいに掛けて分離しアルミ切粉を搬送するふるい床29bと、ふるいに掛けられた砂を受け止めて搬送する受け床29aとを備えた分別コンベア23により砂とアルミ切粉の分別を行う。
【選択図】図1
図1
図2