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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/08 20060101AFI20231127BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231127BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20231127BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20231127BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01G2/08 A
H01G4/228 Q
H01G4/228 S
H01G4/32 540
H01G4/38 A
H01G4/224 200
H01G4/32 305Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021522723
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020017889
(87)【国際公開番号】W WO2020241145
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019097692
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雄基
(72)【発明者】
【氏名】中田 綾華
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 晃弘
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091250(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084180(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/004704(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103918(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/08
H01G 4/228
H01G 4/32
H01G 4/38
H01G 4/224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の第1の電極に接続される第1のバスバーと、
前記コンデンサ素子が収容されるケースと、
前記ケース内に充填される充填樹脂と、を備え、
前記第1のバスバーは、第1部分と、第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記充填樹脂から露出し、外部端子に接続されるように構成された接続端子部を含み、
前記第2部分は、前記充填樹脂に埋没する埋没部と、前記第1部分から離れて位置し、前記充填樹脂から露出する露出部とを有し、前記第1の電極に接続される接続部を含み、
前記露出部は、前記充填樹脂との間に空隙を設けるように前記充填樹脂から離間する、ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
第2のバスバーをさらに備え、
前記コンデンサ素子は、第1の端面が前記ケースの開口に向き第2の端面が前記ケースの底面を向くように前記ケースに収容され、
前記第1のバスバーは、前記第1の端面上に配置された前記第1の電極に接続され、
前記第2のバスバーは、前記第2の端面上に配置された第2の電極に接続され、
前記露出部は、前記第2部分の一部が、前記第1の端面に対向し、前記第1の端面から離れて張り出すように、構成される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンデンサにおいて、
前記ケース内には、それぞれが前記コンデンサ素子である複数のコンデンサ素子が第1の方向に並んで配置され、
前記複数のコンデンサ素子は、前記第1の方向において、前記第1部分の近くに配置された第1のコンデンサ素子と、前記第1のコンデンサ素子よりも前記第1部分から遠くに配置された第2のコンデンサ素子とを含み、
前記露出部は、少なくとも前記露出部の一部が前記第1の方向に直交する方向において
前記第2のコンデンサ素子を覆うように前記第2部分に配置される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のコンデンサにおいて、
前記露出部は、平坦面を有する、
ことを特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子の両端に設けられた電極面に、それぞれ開口側バスバーおよび底面側バスバーを接続し、これらコンデンサ素子およびバスバーを収納ケース内に収納するようにしたコンデンサが、特許文献1に記載されている。開口側バスバーおよび底面側バスバーは、外部機器接続用の接続端子を有する。収納ケース内には樹脂が充填され、コンデンサ素子と、2つのバスバーの接続端子を除く部分とが樹脂に埋没する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-091250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンデンサに通電されると、コンデンサ素子およびバスバーが、これらに流れる電流により発熱する。上記のようなコンデンサでは、コンデンサ素子と、2つのバスバーの接続端子を除く部分とが樹脂に埋没しているため、発生した熱が外部へ放出されにくい。よって、通電時にコンデンサ全体が過熱しやすくなることが懸念される。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、通電時に過熱が生じにくいコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主たる態様は、コンデンサに関する。本態様に係るコンデンサは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の第1の電極に接続される第1のバスバーと、前記コンデンサ素子が収容されるケースと、前記ケース内に充填される充填樹脂と、を備える。ここで、前記第1のバスバーは、第1部分と、第2部分と、を含む。前記第1部分は、前記充填樹脂から露出し、外部端子に接続されるように構成された接続端子部を含む。前記第2部分は、前記充填樹脂に埋没する埋没部と、前記充填樹脂から露出する露出部とを有し、前記第1の電極に接続される接続部を含む。前記露出部は、前記第1部分から離れて配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通電時に過熱が生じにくいコンデンサを提供できる。
【0008】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの斜視図であり、図1(b)は、実施の形態に係る、ケース内に充填樹脂が充填される前のフィルムコンデンサの斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る、コンデンサ素子ユニットの分解斜視図である。
図3図3(a)および(b)は、それぞれ、実施の形態に係る、前方上方および後方下方から見た第1バスバーの斜視図である。
図4図4(a)および(b)は、それぞれ、実施の形態に係る、前方上方および後方下方から見た第2バスバーの斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係る、ケースの斜視図である。
図6図6は、実施の形態に係る、ケースの右側の支持リブの位置で切断された、フィルムコンデンサの側面断面図である。
図7図7(a)および(b)は、それぞれ、変更例に係る、コンデンサ素子ユニットの平面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のコンデンサの一実施形態であるフィルムコンデンサ1について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、前後、左右および上下の方向が付記されている。なお、図示の方向は、あくまでフィルムコンデンサ1の相対的な方向を示すものであり、絶対的な方向を示すものではない。また、説明の便宜上、「底面部」、「前側面部」など、一部の構成において、図示の方向に従った名称がつけられる場合がある。
【0011】
本実施の形態において、フィルムコンデンサ1が、特許請求の範囲に記載の「コンデンサ」に対応する。また、第1端面電極110および第2端面電極120が、特許請求の範囲に記載の「第1の電極」と「第2の電極」それぞれ対応する。さらに、第1バスバー200が、特許請求の範囲に記載の「第1のバスバー」に対応し、第2バスバー300が、特許請求の範囲に記載の「第2のバスバー」に対応する。
【0012】
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0013】
図1(a)は、フィルムコンデンサ1の斜視図であり、図1(b)は、ケース400内に充填樹脂500が充填される前のフィルムコンデンサ1の斜視図である。
【0014】
図1(a)および(b)に示すように、フィルムコンデンサ1は、6つのコンデンサ素子100と、第1バスバー200と、第2バスバー300と、ケース400と、充填樹脂500とを備える。6つのコンデンサ素子100、第1バスバー200、第2バスバー300が一体となるように組み付けられることにより、コンデンサ素子ユニット10が構成される。コンデンサ素子ユニット10がケース400内に収容され、ケース400内に充填樹脂500が充填される。充填樹脂500は、熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂である。コンデンサ素子ユニット10の充填樹脂500に埋没した部分が、ケース400および充填樹脂500によって湿気や衝撃から保護される。
【0015】
図2は、コンデンサ素子ユニット10の分解斜視図である。
【0016】
コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に押圧することにより形成される。コンデンサ素子100は、扁平な長円柱に近い形状を有する。コンデンサ素子100には、一方の端面101に、亜鉛等の金属の吹付けにより第1端面電極110が形成され、他方の端面102に、同じく亜鉛等の金属の吹付けにより第2端面電極120が形成される。6つのコンデンサ素子100は、両端面101、102が上下方向を向く状態で、前後2列であって各列に3つずつ配置され、この状態で、これらコンデンサ素子100に第1バスバー200および第2バスバー300が接続される。
【0017】
なお、本実施の形態のコンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムにより形成されたが、これ以外にも、亜鉛、マグネシウム等の他の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。あるいは、コンデンサ素子100は、これらの金属のうち、複数の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよいし、これらの金属どうしの合金を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。
【0018】
図3(a)および(b)は、それぞれ、前方上方および後方下方から見た第1バスバー200の斜視図である。
【0019】
第1バスバー200は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、電極端子部210と、3つの第1接続端子部220と、第2接続端子部230と、中継端子部240と、2つの支持部250とが一体となった構成を有する。本実施の形態では、第1バスバー200は、極のバスバーとされる。
【0020】
電極端子部210は、上方から見て長方形状し、6つのコンデンサ素子100の第1端面電極110を上方から覆う。電極端子部210は、細長い方形状の前板部211と、長方形状の後板部212と、これら前板部211と後板部212との間において矩形波状に上方に張り出す張出部213とで構成される。張出部213の上面は、平坦面213aに形成される。
【0021】
前板部211には、前端部に、左右方向に並ぶように6つの接続ピン214が形成される。また、後板部212には、前後2列で、左右方向に前後に僅かにずれて並ぶ6つの開口部215が形成され、各開口部215の縁に接続ピン214が形成される。
【0022】
前列の各コンデンサ素子100の第1端面電極110に対して前板部211の2つの接続ピン214が接触し、後列の各コンデンサ素子100の第1端面電極110に対して後板部212の2つの接続ピン214が接触する。各接続ピン214が、対応する第1端面電極110に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第1バスバー200が6つのコンデンサ素子100の第1端面電極110に電気的に接続される。各接続ピン214の厚みは、電極端子部210の他の部分の厚みよりも小さくされているので、接続ピン214容量小さく、半田付け等が行いやすくなる。
【0023】
電極端子部210と3つの第1接続端子部220および第2接続端子部230との間が、中継端子部240により中継される。中継端子部240は、電極端子部210の後端部から上方へと延びた後に屈曲して後方へと延びる下板部241と、下板部241の後端部から立ち上がり、下板部241よりも左側に僅かに張り出し右側に大きく張り出す上板部242とで構成される。
【0024】
3つの第1接続端子部220は、等間隔で左右方向に並ぶように中継端子部240の上板部242の上端部に設けられる。第1接続端子部220は、上方に延びた後に屈曲し後方へと延びる鉤形状を有する。第1接続端子部220には、円形の貫通孔221が形成される。貫通孔221には、ナット222が嵌め込まれる。
【0025】
第2接続端子部230は、中継端子部240の上板部242の上端部の右端に設けられる。第2接続端子部230は、上方へと僅かに延びた後に屈曲して後方へ長く延びる形状を有する。第2接続端子部230には、先端部に円形の貫通孔231が形成される。
【0026】
2つの支持部250は、それぞれ、電極端子部210の後板部212の左右の端部から垂下するように設けられ、細長い方形状を有する。支持部250には、下端部の2か所に、逆U字状の嵌込口251が形成される。
【0027】
図4(a)および(b)は、それぞれ、前方上方および後方下方から見た第2バスバー300の斜視図である。
【0028】
第2バスバー300は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、電極端子部310と、3つの第1接続端子部320と、第2接続端子部330と、中継端子部340とが一体となった構成を有する。本実施の形態では、第2バスバー300は、極のバスバーとされる。
【0029】
電極端子部310は、長方形状し、6つのコンデンサ素子100の第2端面電極120を下方から覆う。電極端子部310には、前端部に、左右方向に並ぶように6つの接続ピン311が形成される。また、電極端子部310には、前後2列で、左右方向に前後にずれて並ぶ6つの開口部312が形成され、各開口部312の後縁に接続ピン311が形成される。さらに、電極端子部310には、6つの開口部312よりも前方に、2つの円形の流通孔313が設けられる。
【0030】
各コンデンサ素子100の第2端面電極120に対して電極端子部310の2つの接続ピン311が接触する。各接続ピン311が、対応する第2端面電極120に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第2バスバー300が6つのコンデンサ素子100の第2端面電極120に電気的に接続される。各接続ピン311の厚みは、電極端子部310の他の部分の厚みよりも小さくされているので、接続ピン311容量小さく、半田付け等が行いやすくなる。
【0031】
電極端子部310と3つの第1接続端子部320および第2接続端子部330との間が、中継端子部340により中継される。中継端子部340は、電極端子部310の後端部から上方へと延び、その上端部が僅かに前方に迫り出す下板部341と、下板部341の上端部から上方に延び、下板部341よりも右側に大きく張り出す上板部342とで構成される。下板部341には、左右方向に並ぶように、6つの長円形の流通孔343が形成される。
【0032】
3つの第1接続端子部320は、等間隔で左右方向に並ぶように中継端子部340の上板部342の上端部に設けられる。第1接続端子部320は、上方に延びた後に屈曲し後方へと延びる鉤形状を有する。第1接続端子部320には、円形の貫通孔321が形成される。貫通孔321には、ナット322が嵌め込まれる。
【0033】
第2接続端子部330は、中継端子部340の上板部342の上端部の右端に設けられる。第2接続端子部330は、上方へと僅かに延びた後に屈曲して後方へ長く延びる形状を有する。第2接続端子部330には、先端部に円形の貫通孔331が形成される。
【0034】
図2に示すように、第1バスバー200の中継端子部240において、下板部241の上面と上板部242の前面および後面とが第1絶縁シート600により覆われる。また、第2バスバー300の中継端子部340において、下板部341の上側の前面および後面と上板部342の前面および後面とが第2絶縁シート700により覆われる。
【0035】
第1絶縁シート600および第2絶縁シート700は、絶縁紙や、アクリル樹脂、シリコン樹脂等の電気的な絶縁性を有する樹脂材料により形成される。第1絶縁シート600および第2絶縁シート700により第1バスバー200と第2バスバー300との間の絶縁距離、第2バスバー300とコンデンサ素子100の第1端面電極110との間の絶縁距離などが確保される。
【0036】
コンデンサ素子ユニット10の後側において、第1バスバー200の3つの第1接続端子部220と第2バスバー300の3つの第1接続端子部320は、第1接続端子部220と第1接続端子部320とが左右方向に交互に配置されるように並び、第1バスバー200の第2接続端子部230と第2バスバー300の第2接続端子部330とが左右方向に並ぶ。
【0037】
図5は、ケース400の斜視図である。
【0038】
ケース400は、樹脂製であり、たとえば、熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(PPS)により形成される。ケース400は、ほぼ直方体の箱状に形成され、底面部401と、底面部401から立ち上がる前側面部402、後側面部403、左側面部404および右側面部405とを有し、上面が開口する。
【0039】
左側面部404および右側面部405の前端部には、上端部に取付タブ410が設けられる。取付タブ410には、取付孔411が形成される。これら取付タブ410は、フィルムコンデンサ1がインバータ装置等の外部装置の設置部に固定される際に用いられる。また、左側面部404および右側面部405には、内壁面の前後2か所に、底面部401から上方へ延びる支持リブ420が形成される。前後の支持リブ420の間隔は、第1バスバー200の支持部250の前後の嵌込口251の間隔と等しくされる。
【0040】
図1(b)に示すように、コンデンサ素子ユニット10がケース400内に収容される。このとき、第1バスバー200の左の支持部250の嵌込口251にケース400の左側面部404の支持リブ420の先端部が嵌め込まれ、第1バスバー200の右側の支持部250の嵌込口251にケース400の右側面部405の支持リブ420の先端部が嵌め込まれる。これにより、コンデンサ素子ユニット10が、ケース400に対して前後左右および上下方向に位置決めされる。6つのコンデンサ素子100は、一方の端面101、即ち第1端面電極110がケース400の開口400a側を向き、他方の端面102、即ち第2端面電極120がケース400の底面部401側を向く。
【0041】
ケース400内に液相状態の充填樹脂500が注入される。このとき、充填樹脂500が、第2バスバー300の流通孔313、343を通ることにより、コンデンサ素子ユニット10とケース400の底面部401との間に充填樹脂500が行き渡りやすくなる。充填樹脂500がケース400の開口400aの近傍までケース400内に満たされ、充填樹脂500の注入が完了すると、ケース400が加熱される。これにより、ケース400内の充填樹脂500が硬化する。
【0042】
こうして、図1(a)のように、フィルムコンデンサ1が完成する。
【0043】
図6は、ケース400の右側の支持リブ420の位置で切断された、フィルムコンデンサ1の側面断面図である。なお、図6には、便宜上、ケース400内の充填樹脂500が、その注型面(外部に露出する表面)のみが実線で描かれた状態とされている。
【0044】
図6に示すように、第1バスバー200は、ケース400内の充填樹脂500から露出し、第1接続端子部220および第2接続端子部230が設けられる第1部分201(二点鎖線で包囲)と、充填樹脂500に埋没する埋没部202a(破線で包囲)と充填樹脂500から露出する露出部202b(一点鎖線で包囲)とを有し、第1端面電極110に接続される接続ピン214が設けられる第2部分202と、を含む。露出部202bは、第1部分201から離れて、即ち第1部分201から後側の埋没部202aを隔てて位置する。
【0045】
6つのコンデンサ素子100は、前後方向において、第1部分201に近い後列のコンデンサ素子100と第1部分201から遠い前列のコンデンサ素子100とを含む。露出部202bは、そのほぼ全体が前後方向において前列のコンデンサ素子100にかかる(上方から見て重なる)ように第2部分202に設けられる。
【0046】
フィルムコンデンサ1は、たとえば、電気自動車において電気モータを駆動するためのインバータ装置に搭載され得る。インバー装置には電源装置(バッテリー)から直流の電力が供給される。インバータ装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar transistor)を含むインバータ回路を備え、直流の電力を3相交流の電力に変換し、電気モータへ供給する。第1バスバー200の第2接続端子部230および第2バスバー300の第2接続端子部330には、それぞれ対応する、電源装置に繋がる外部端子(図示せず)が、貫通孔231、331を用いたネジ止めにより接続される。また、第1バスバー200の3つの第1接続端子部220および第2バスバー300の3つの第1接続端子部320には、それぞれに対応する、インバータ回路に繋がる外部端子(図示せず)が、ナット222、322を用いたネジ止めにより接続される。
【0047】
フィルムコンデンサ1に通電されると、6つのコンデンサ素子100、第1バスバー200および第2バスバー300が、これらに流れる電流により発熱する。発生した熱は、第1バスバー200における、充填樹脂500から露出した第1部分201と、第2バスバー300における、充填樹脂500から露出した中継端子部340の上板部342、第1接続端子部320および第2接続端子部330とから外部に放出される。さらに、本実施形態では、発生した熱が、上記の部分のみならず、第1バスバー200に設けられた露出部202bからも外部に放出される。
【0048】
特に、第1バスバー200の第1部分201から遠い前列のコンデンサ素子100で発生した熱は、第1部分201からは放出されにくい。しかしながら、第1バスバー200では、露出部202bが前列のコンデンサ素子100にかかるように設けられているので、前列のコンデンサ素子100の熱も、露出部202bによって良好に放出される。
【0049】
なお、露出部202bの上面である張出部213の上面は、平坦面213aに形成されており、フィルムコンデンサ1がインバータ装置に搭載された際、インバータ装置側で準備された冷却器(図示せず)を平坦面213aに装着することができる。この場合、冷却器により冷却(吸熱)されることで、露出部202bからの放熱効果が一層高まる。
【0050】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0051】
フィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子100の第1端面電極110に接続される第1バスバー200が、充填樹脂500から露出し、外部端子に接続される第1接続端子部220および第2接続端子部230が設けられる第1部分201と、充填樹脂500に埋没する埋没部202aと、第1部分201から離れて位置し、充填樹脂500から露出する露出部202bとを有し、第1端面電極110に接続される接続ピン214が設けられる第2部分202と、を含むような構成とされる。
【0052】
この構成によれば、通電時にコンデンサ素子100および第1バスバー200で発生した熱を、第1バスバー200の第1部分201のみならず露出部202bからも外部に放出させることができる。よって、放熱効果が高まるため、通電時にフィルムコンデンサ1全体が過熱しにくくなる。
【0053】
また、コンデンサ素子100は、一方の端面101がケース400の開口400a側を向き他方の端面102がケース400の底面部401側を向くようにケース400に収容される。第1バスバー200は、一方の端面101の第1端面電極110に接続され、第2バスバー300は、他方の端面102の第2端面電極120に接続される。そして、第1バスバー200の第2部分202は、一方の端面101に対向する部分(実施の形態では、電極端子部210)を含み、当該対向する部分の一部が、張出部213として一方の端面101から離れる方向(上方向)に張り出すことにより、露出部202bが形成される。
【0054】
この構成によれば、第1バスバー200に、容易に露出部202bを形成できる。しかも、第1バスバー200の露出部202bが形成される部分とコンデンサ素子100との間に、絶縁等を目的とする隙間が形成されなくてよいので、露出部202bをコンデンサ素子100に近づけて設けることができる。これにより、コンデンサ素子100で発生した熱が露出部202bに伝わりやすくなり、露出部202bで放熱が行われやすくなる。
【0055】
なお、コンデンサ素子100が、両端面101、102がケース400の前後または左右の側面部402、403、404、405側を向くようにケース400に収容される場合、第1バスバー200には、開口400a側を向くコンデンサ素子100の周面と対向する部分に露出部202bが設けられることになる。この場合、上記対向する部分とコンデンサ素子100の周面との間に、絶縁等を目的とする隙間の形成が必要となり得る。よって、露出部202bをコンデンサ素子100に近づけて設けることが難しくなる。
【0056】
さらに、ケース400内には、複数のコンデンサ素子100が前後に並んで配置される。複数のコンデンサ素子100は、前後方向において、第1部分201に近いコンデンサ素子100と第1部分201から遠いコンデンサ素子100とを含み、露出部202bは、少なくともその一部が前後方向において第1部分201から遠いコンデンサ素子100にかかるように第2部分202に設けられる。
【0057】
この構成によれば、第1部分201から遠いコンデンサ素子100の熱も、露出部202bによって良好に放出できる。
【0058】
さらに、露出部202bは、平坦面213aを有するような構成とされている。
【0059】
この構成によれば、フィルムコンデンサ1が外部装置に搭載された際、外部装置側で準備された冷却器を平坦面213aに装着することができ、露出部202bからの放熱効果が一層高まる。
【0060】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0061】
たとえば、コンデンサ素子ユニット10において、第1接続端子部220および第2接続端子部230、即ち第1部分201からの距離が変わる方向(前後方向)にコンデンサ素子100の個数が増やされた場合に、それに応じて張出部213の個数が増やされることで、露出部202bの個数が増やされてもよい。
【0062】
図7(a)および(b)は、それぞれ、変更例に係る、コンデンサ素子ユニット10の平面図および側面図である。
【0063】
本変更例では、コンデンサ素子ユニット10に、前後に3列となるように並べられた9個のコンデンサ素子100が含まれる。第1バスバー200には、電極端子部210に2つの張出部213が設けられ、2つの張出部213の間に中間板部216が設けられる。中間板部216には左右方向に6つの開口部217が形成され、各開口部217の後縁に接続ピン214が形成される。これら接続ピン214は、前から2列目の3つのコンデンサ素子100の第1端面電極110に半田付け等の接合方法により接合される。2つの張出部213の充填樹脂500から露出する部分が露出部202bとなる。前側の露出部202bは、ほぼ全体が最前列のコンデンサ素子100にかかり、後側の露出部202bは、ほぼ全体が前から2列目のコンデンサ素子100にかかる。
【0064】
なお、第2バスバー300にも、電極端子部310に、2列目の3つのコンデンサ素子100の第2端面電極120に接合される接続ピン311が設けられる。
【0065】
本変更例では、最前列のコンデンサ素子100および前から2列目のコンデンサ素子100で発生した熱が前側と後側の露出部202bにより良好に外部に放出される。
【0066】
また、上記実施の形態では、コンデンサ素子ユニット10において、第1部分201からの距離が変わらない方向(左右方向)に、複数のコンデンサ素子100が配列されている。しかしながら、上記の方向に、1つのコンデンサ素子100が配列される構成が採られてもよい。即ち、第1部分201からの距離が変わる方向(前後方向)にのみ複数のコンデンサ素子100が並べられたフィルムコンデンサ1において、露出部202bが設けられるような構成が採られてもよい。
【0067】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100の長手方向が、第1バスバー200の第1部分201からの距離が変わる方向(前後方向)となるように、コンデンサ素子100が配列されている。しかしながら、コンデンサ素子100の短手方向が、第1バスバー200の第1部分201からの距離が変わる方向(前後方向)となるように、コンデンサ素子100が配列されてもよい。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、露出部202bのほぼ全体が、第1バスバー200の第1部分201から遠いコンデンサ素子100にかかっている。しかしながら、露出部202bは、すくなくともその一部分、望ましくは半分以上の部分が第1部分201から遠いコンデンサ素子100にかかればよい。
【0069】
さらに、上記実施の形態では、第1バスバー200および第2バスバー300に、3つの第1接続端子部220、320が設けられているが、第1接続端子部220、320の個数は、適宜、変更されてよい。
【0070】
さらに、上記実施の形態では、第1バスバー200のみが、第1部分201と、露出部202bを含む第2部分202とを備える。しかしながら、第1バスバー200に加えて、第2バスバー300も、第1部分と、露出部を含む第2部分とを備えるようにされてもよい。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、第1バスバー200が極のバスバーとされ、第2バスバー300が極のバスバーとされている。しかしながら、第1バスバー200が極のバスバーとされ、第2バスバー300が極のバスバーとされてもよい。
【0072】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層することで形成されたものであるが、これ以外にも、誘電体フィルムの両面にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムと絶縁フィルムとを重ね、これを巻回または積層することにより、これらコンデンサ素子100が形成されてもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態では、本発明のコンデンサの一例として、フィルムコンデンサ1が挙げられた。しかしながら、本発明は、フィルムコンデンサ1以外のコンデンサに適用することもできる。
【0074】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0075】
なお、上記実施の形態の説明において「上方」「下方」等の方向を示す用語は、構成部材の相対的な位置関係にのみ依存する相対的な方向を示すものであり、鉛直方向、水平方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両の電装等に使用されるコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
100 コンデンサ素子
101 一方の端面
102 他方の端面
110 第1端面電極(電極)
120 第2端面電極(電極)
200 第1バスバー(バスバー)
201 第1部分
202 第2部分
202a 埋没部
202b 露出部
213a 平坦面
300 第2バスバー(他のバスバー)
400 ケース
400a 開口
401 底面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7