(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B65H41/00 B
(21)【出願番号】P 2021550566
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034845
(87)【国際公開番号】W WO2021070576
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019188134
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】菊地 毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀行
(72)【発明者】
【氏名】磯邉 柚香
(72)【発明者】
【氏名】松山 吉成
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247537(JP,A)
【文献】特許第5914308(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面にある剥離紙をはがすための、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、
前記所定面から遠い順に開始位置S、途中位置Mおよび終了位置Eを有するガイド溝
と、底面に支持部と、を備える筐体と、
前記ガイド溝に沿って移動可能な
針部と、を備え、
前記開始位置Sと前記途中位置Mとを結んだ線分を線分SMとし、
前記途中位置Mと前記終了位置Eとを結んだ線分を線分MEとし、
前記線分SMと、
前記所定面との間のなす角
のうち、鋭角側をθ1とし、
前記線分SMと前記線分MEとの間のなす角
のうち、θ1と重複する角側をθ2としたときに、
θ1<θ2<θ1+180°を満た
し、
前記針部は、前記開始位置Sから前記途中位置Mの方向に伸びる針を有し、
前記筐体が前記所定面に接した後、前記針部を線分SMに沿って移動させることで前記針を前記剥離紙に刺し、前記針部を線分MEに沿って移動させて移動させることで前記支持部を支点に前記針の先端を前記所定面から離れるように移動させ、剥離紙を前記所定面からはがす、
エンドエフェクタ。
【請求項2】
θ2=θ1+90°を満たす、
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記
針部が、前記剥離紙に対する前記針による加圧を調整するための弾性体を備える、
請求項1
または請求項
2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記ガイド溝がくの字形の形状を呈する、
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記針を保護するカバーをさらに備え、
前記カバーが前記筐体に対して枢動することにより、はがされた前記剥離紙を除去する、
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
所定面にある剥離紙をはがすための、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、
前記所定面から遠い順に開始位置S、途中位置Mおよび終了位置Eを有するガイド溝と、底面に支持部と、を備える筐体と、
前記ガイド溝に沿って移動可能な針部と、を備え、
前記開始位置Sと前記途中位置Mとを結んだ線分を線分SMとし、
前記途中位置Mと前記終了位置Eとを結んだ線分を線分MEとし、
前記ガイド溝はくの字形の形状を有し、
前記針部は、前記開始位置Sから前記途中位置Mの方向に伸びる針を有し、
前記筐体が前記所定面に接した後、前記針部を線分SMに沿って移動させることで前記針を前記剥離紙に刺し、前記針部を線分MEに沿って移動させて移動させることで前記支持部を支点に前記針の先端を前記所定面から離れるように移動させ、剥離紙を前記所定面からはがす、
エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多関節型ロボットとしての双腕ロボットの一方の腕のハンドによって所定位置に保持されたワークの粘着シート上に貼り付けられたフィルムをその双腕ロボットの他方の腕のハンドによってその粘着シートから剥離させて、前記双腕ロボットの前記一方の腕のハンドによって前記ワークを所定部位に貼り付け装着する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、剥離紙をはがすことのできるエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【0005】
本開示は、所定面にある剥離紙をはがすための、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、前記所定面から遠い順に開始位置S、途中位置Mおよび終了位置Eを有するガイド溝と、底面に支持部と、を備える筐体と、前記ガイド溝に沿って移動可能な針部と、を備える。前記開始位置Sと前記途中位置Mとを結んだ線分を線分SMとし、前記途中位置Mと前記終了位置Eとを結んだ線分を線分MEとし、前記線分SMと、前記所定面との間のなす角のうち、鋭角側をθ1とし、前記線分SMと前記線分MEとの間のなす角のうち、θ1と重複する角側をθ2としたときに、θ1<θ2<θ1+180°を満たし、前記針部は、前記開始位置Sから前記途中位置Mの方向に伸びる針を有し、前記筐体が前記所定面に接した後、前記針部を線分SMに沿って移動させることで前記針を前記剥離紙に刺し、前記針部を線分MEに沿って移動させて移動させることで前記支持部を支点に前記針の先端を前記所定面から離れるように移動させ、剥離紙を前記所定面からはがす、エンドエフェクタを提供する。
【0006】
本開示によれば、剥離紙をはがすことのできるエンドエフェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一態様に係るエンドエフェクタ1の外観構造を示す斜視図
【
図4】エンドエフェクタ1により剥離紙をはがす工程を示す図(第1段階および第2段階)
【
図5】エンドエフェクタ1により剥離紙をはがす工程を示す図(第3段階および第4段階)
【
図6】エンドエフェクタ1により剥離紙をはがす工程を示す図(第5段階および第6段階)
【
図7】回転ユニット12の3つの姿勢を示す図であり、(a)第1の支持部が開始位置Sにある場合、(b)第1の支持部が途中位置Mにある場合、(c)第1の支持部が終了位置Eにある場合
【
図8】本開示の一実施形態に係るエンドエフェクタ1における、ガイド溝111の形状についての変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
工場等で用いられるロボット装置は、ロボットアームにエンドエフェクタを取り付けることで、種々の作業を行うことができる。例えば、エンドエフェクタとしてロボットハンドを用いて、工場の生産ライン上を流れる部品をピッキングしたり、部品を組み立てたり、等の作業である。このロボットアームおよびエンドエフェクタは、ロボットアームに接続された制御装置(コントローラ)によって制御されるのが一般的である。
【0009】
エンドエフェクタの種類としては、フィンガを有しており、ワークをフィンガで把持するものや、いわゆるソフトハンドのようにハンドの先端が変形可能であるもの等がある。
【0010】
工場で部品を組み立てる際に、両面テープなどの粘着シートによって、ワーク同士を接着する場合がある。この粘着シートは、接着工程が行われる前の段階においては、剥離紙によって保護されている。そのため、上記の接着工程を行うには、粘着シートから剥離紙をはがさねばならない。
【0011】
特許文献1に記載の発明においては、爪部の先端部を両面テープの縁部とそれに対応する剥離紙の縁部との間の境界部分に入り込ませる必要がある。このような操作をロボット装置が自動で行うには、ロボット装置の精確な制御が必要となる。
【0012】
そこで本開示においては、針を備えたエンドエフェクタを用いて、より簡便な方法で剥離紙をはがす。以下、そのような本開示のエンドエフェクタについて説明する。
【0013】
(エンドエフェクタ1の外観構造)
図1は、本開示の一態様に係るエンドエフェクタ1の外観構造を示す斜視図である。
図1の(a)は、カバー13が針121の先端部を覆い隠している状態を示し、
図1の(b)は、カバー13が上方に枢動し、針121の先端部が露出している状態を示している。エンドエフェクタ1は、図示を省略する多関節ロボットアームに接続されることで、ワークに対して種々の作業を行う。本例においては、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタ1は、粘着シートから剥離紙をはがす作業を行う。
【0014】
エンドエフェクタ1は、筐体11と、回転ユニット12とを備えている。なお、エンドエフェクタ1は、カバー13を追加で備えてもよい。
【0015】
筐体11は、ロボットアームが有するアクチュエータAの先端に接続されており、エンドエフェクタ1の外形をほぼ規定している。筐体11はガイド溝111を備えている。ガイド溝111は、回転ユニット12の動きをガイドする溝であり、図示した例においては、くの字形を呈している。ただし、ガイド溝111の形状は、くの字形には限られない。このガイド溝111について、詳しくは後述する。
【0016】
回転ユニット12は、筐体11内に配置されている。回転ユニット12は、その先端に針121を備えている。回転ユニット12は、ロボットアームが有するアクチュエータAによって駆動され、針121を剥離紙に刺し込んで、その針121を回転ユニット12ごと回転させることにより、剥離紙をすくい上げるように持ち上げて、粘着シートからはがす。かかる回転ユニット12の機構についても、詳しくは後述する。
【0017】
カバー13は、筐体11の、アクチュエータAとは反対側の端部に設けられており、回転ユニット12の針121が不用意に各所に刺さることが無いように保護する、安全用の部材である。また、カバー13は後述のように、針121に刺さった剥離紙を針121から除去する機能も有していてよい。このカバー13についても、詳しくは後述する。
【0018】
(エンドエフェクタ1の内部構造)
図2は、
図1に示したエンドエフェクタ1の分解図である。
図3は、
図2に示した回転ユニット12の断面図である。以下、
図2および
図3を参照しつつ、エンドエフェクタ1の内部構造を説明する。なお、アクチュエータAについては、一般的なアクチュエータを用いれば良いため、説明を省略する。
【0019】
回転ユニット12は、本例においては、
図2の右側に示したような構成を備えていてよい。第1リンクプレート1201と、2つの第2リンクプレート1202A,1202Bの一端が、第1回転軸1203を介して回転自在に接続される。第1リンクプレート1201にはネジ1224が挿入され、このネジ1224がアクチュエータAの先端にねじ込まれる(
図3参照)。
【0020】
第2リンクプレート1202A,1202Bの他端と、ホルダ1204とが、第2回転軸1205を介して回転自在に接続される。ホルダ1204は、互いに直交する筒1204Aと筒1204Bとが接合された形状である。このうち、筒1204Aの中を第2回転軸1205が通る。第2回転軸1205の両端には、パイプ1206A,1206Bと、玉軸受1207A,1207Bとがそれぞれ設けられる。なお、第2リンクプレート1202A,1202Bと、玉軸受1207A,1207Bとは、第2回転軸1205と、パイプ1206A,1206Bとを介して接続されている。また、玉軸受1207A,1207Bは、回転ユニット12の第1の支持部を構成する。
【0021】
ホルダ1204が有する筒1204Bには、全ネジ1209が挿入される。全ネジ1209は、
図3に示すように、一端をナット1213で留められ、他端をナット1222,1223で留められる。すなわち、全ネジ1209は、ナット1213からナット1223の間にある各部材の中を貫通している。具体的には、全ネジ1209は、ナット1213、回転ベース1212に設けられた第1の孔1212A、パイプ1208、コの字形のピン圧力プレート1210の一端に設けられた孔1210A、コイルばね1211(弾性体)、筒1204B、回転ベースサポート1218に設けられた孔1218A、ナット1220、パイプ1221、ピン圧力プレート1210の他端に設けられた孔1210B、ナット1222、およびナット1223の中を貫通している。
【0022】
全ネジ1209の外周の一部を覆うように、パイプ1208が設けられる。パイプ1208の一端は、回転ベース1212に設けられた第1の孔1212Aに挿入され、そこで留められる(
図3参照)。パイプ1208の他端は、回転ベースサポート1218に設けられた孔1218Aに挿入され、そこで留められる(
図3参照)。パイプ1208は、ピン圧力プレート1210の一端に設けられた孔1210Aと、コイルばね1211と、筒1204Bとの中を貫通する。パイプ1208の外側を巻くようにコイルばね1211が配置される。コイルばね1211は、ピン圧力プレート1210の孔1210A側の一端と、筒1204Bとの間に配置され、この両者の間で弾性力を発揮する。
【0023】
また、全ネジ1209の外周の一部を覆うように、パイプ1221が設けられる。パイプ1221は、ピン圧力プレート1210の他端に設けられた孔1210Bを貫通し、一端をナット1220によって、他端をナット1222によって、それぞれ留められる。
【0024】
回転ベース1212に設けられた第2の孔1212Bには、段付きピン1214が挿入される。この段付きピン1214が、回転ユニット12の針121として機能する。段付きピン1214の後端は、ピンの径が減じられている。この段付きピン1214の径が減じられた部分を、肩部1214Aと表現する。
【0025】
また、2本のパイプ1216A,1216Bの一端が、回転ベース1212に差し込まれる。2本のパイプ1216A,1216Bの他端は、回転ベースサポート1218に設けられた2つの孔1218C,1218Dにそれぞれ差し込まれる。また、この孔1218C,1218Dを通って、六角穴付きボルト1219A,1219Bがそれぞれ、パイプ1216A,1216Bの中に挿入される。
【0026】
パイプ1215は、回転ベース1212と回転ベースサポート1218との間に設けられる。パイプ1215の中には、前述の段付きピン1214が挿入される。段付きピン1214の肩部1214Aは、回転ベースサポート1218に設けられた、円筒状の受け部1218Bに当接する(
図3参照)。
【0027】
小径のコイルばね1217が、回転ベースサポート1218と、ピン圧力プレート1210の孔1210Bの端との間に配置される。このコイルばね1217の中には、段付きピン1214の後端の、径が減じられた部分が挿入される。
【0028】
例えば上記のような構造を有する回転ユニット12が、筐体11の中に収容される(
図2参照)。筐体11の両側にはガイド溝111が設けられており、図示した例では玉軸受1207A,1207Bが、ガイド溝111と協働するように取付けられる。
【0029】
筐体11は、その下部に孔112A,112Bを備えている。孔112Aと孔112Bとの間には空間があり、この空間に、回転ユニット12の筒1212Cが配置された状態で、小径ロッドRが孔112A、筒1212C、および孔112Bを貫通する。すると、小径ロッドRにより、回転ユニット12と筐体11とは互いに回転可能に接続されることになる。この筒1212Cは、回転ユニット12の第2の支持部である。
図2および
図3から明らかなように、第2の支持部である筒1212Cは、第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bよりも、針121(段付きピン1214)の先端に近い側に設けられている。
【0030】
また、必須ではないが、筐体11にはカバー13が取り付けられる。筐体11の下部の両側には孔113A,113Bが設けられており、カバー13の両翼に備えられた支点部13A,13Bが、孔113A,113Bに位置合わせされた状態で、回転軸13Cが、孔113A、支点部13A、支点部13B、および孔113Bを貫通する。このような構成とすることで、カバー13は、筐体11に対して枢動自在となる。
【0031】
(エンドエフェクタ1により剥離紙をはがす工程)
図4~
図6は、エンドエフェクタ1により剥離紙をはがす工程を示す図である。
図4に第1段階および第2段階を、
図5に第3段階および第4段階を、
図6に第5段階および第6段階を、それぞれ示している。以下、
図4~
図6に加えて、必要に応じて前述の
図2および
図3も参照しつつ、剥離紙をはがす工程を説明する。なお、エンドエフェクタ1の各構成要素のうち、剥離紙をはがす工程に直接関係のない構成要素については、符号を省略することがある。
【0032】
図4の左側に示した第1段階は、エンドエフェクタ1によって、粘着シートTから剥離紙をはがそうとする、剥離開始時を示している。なお本例において、粘着シートTは作業用の床面(工場のラインにおける載置台の上面等を含む)に置かれているものとする。
【0033】
剥離開始時において、エンドエフェクタ1は、床面から浮いた状態にある。また、カバー13は針121を隠す位置にあり、安全が確保されている。また、玉軸受1207A,1207Bは、回転ユニット12の第1の支持部を構成することを前述したが、第1の支持部は、ガイド溝111の開始位置Sにある。なお、図示されている、くの字形のガイド溝111の開始位置をS、終了位置をE、途中位置をMとする。この図においては、途中位置Mは、溝の角度が変わる位置である。
【0034】
次に、
図4の右側に示した第2段階において、図示を省略するロボットアームが動くことにより、ロボットアームに接続されたエンドエフェクタ1が下降して、床面に接する。ここで、カバー13は、支点部13A,13Bに挿入された回転軸13Cを軸として枢動する(
図2参照)。またカバー13の下部には凸部132が設けられている。エンドエフェクタ1が下降すると、この凸部132が最初に床面に接するので、さらにエンドエフェクタ1が下降した場合、カバー13の支点部13A,13Bとは反対側の端が持ちあがるように、カバー13が
図4の時計回り方向に枢動する。この枢動により、カバー13の内側に隠れていた針121が露出する。すなわち、カバー13が針121の先端部から外される。
【0035】
次に、
図5の左側に示した第3段階において、アクチュエータAが第1リンクプレート1201を下向きに押す(
図3を併せて参照)。すると、第1回転軸1203と、第2リンクプレート1202A,1202Bの一端とが押し下げられる。ここで、第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bが、ガイド溝111に沿って移動可能なようにはめ込まれている。そのため、第2リンクプレート1202A,1202Bの他端は、第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bと共に、ガイド溝111に沿って、ガイド溝111の開始位置Sから、途中位置Mへと移動する。なお、第2段階と第3段階を比較すればわかるように、第2リンクプレート1202A,1202Bは、アクチュエータAによる押圧に応じて揺動する揺動リンクである。
【0036】
図2および
図3を併せて参照する。第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bが開始位置Sから途中位置Mへと移動すると、筒1204Bによって押されたコイルばね1211が、ピン圧力プレート1210の一端(1210A側)を押す。すると、これに連動してピン圧力プレート1210の他端(1210B側)が段付きピン1214を押し、段付きピン1214の先端が飛び出る。すなわち、針121が飛び出て、床面に置かれた粘着シートTの表面の剥離紙を軽く刺す。以上のような機構であるため、コイルばね1211は、剥離紙に対する針121による加圧を調整する機能を有している。逆に言えば、剥離紙に対する針121による加圧を調整する必要が無い場合は、コイルばね1211は不要である。この場合、例えばコイルばね1211の代わりに弾性力の無いパイプを配するなど、第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bの移動に応じて針121が単に飛び出るような構成へと、構成変更を行えばよい。なお、
図5の左側に示した、なす角度αについては、
図5の右側に示した第4段階についての説明時に、併せて説明する。
【0037】
次に、
図5の右側に示した第4段階において、アクチュエータAが第1リンクプレート1201をさらに下向きに押す(
図3を併せて参照)。すると、第1回転軸1203と、第2リンクプレート1202A,1202Bの一端とがさらに押し下げられる。ここで、玉軸受1207A,1207Bが、ガイド溝111に沿って移動可能なようにはめ込まれている。そのため、第2リンクプレート1202A,1202Bの他端は、第1の支持部である玉軸受1207A,1207Bと共に、ガイド溝111に沿って、ガイド溝111の途中位置Mから、終了位置Eへと移動する。
【0038】
ここで、玉軸受1207A,1207Bが回転ユニット12の第1の支持部を構成すること、および、筒1212Cが回転ユニット12の第2の支持部であることについて、既に説明した。筒1212C(および孔112B)は、第3段階においても第4段階においても、粘着シートTが置かれた床面に接するような位置にある。つまり、回転ユニット12における第2の支持部は、第3段階から第4段階に移行しても、位置がほぼ変わらない。一方で、第1の支持部を構成する玉軸受1207A,1207Bは、ガイド溝111に沿って途中位置Mから終了位置Eまで押し下げられている。これにより、第1の支持部と第2の支持部とを結んだ線分は、より床面に近くなるように倒れる。すなわち、第1の支持部と第2の支持部とを結んだ線分と、床面とのなす角度αは、第3段階から第4段階へと移行するにつれて、小さくなる。その結果、回転ユニット12そのものが、第3段階から第4段階へと移行するにつれ、より床面に近くなるように倒れこむ。すると、針121の床面に対する角度もまた、徐々に小さくなる。
【0039】
針121の床面に対する角度が、徐々に小さくなることにより、第3段階で剥離紙を軽く刺した針121は、この剥離紙の一部をすくい上げるよう持ち上げて、粘着シートTからはがす(
図5の右側の状態)。粘着シートTから、はがされつつある剥離紙Pが、
図5の右側に示されている。
【0040】
なお、
図5の右側の状態においては、針121の先端が既に接地していないため、コイルばね1211(
図2および
図3参照)を縮めたままにしておく力が働かない。言い換えると、コイルばね1211を圧縮する力が逃げた状態となる。よって、コイルばね1211は伸びた状態となる。すると、コイルばね1211に連動して、針121の先端はさらに飛び出ることになる。
【0041】
次に、
図6の左側に示した第5段階において、エンドエフェクタ1が接続されたロボットアームを操作して、剥離紙Pを針121にひっかけたまま、エンドエフェクタ1を上昇させる。すると、剥離紙Pの全体が、粘着シートTからはがれる。
【0042】
次に、
図6の右側に示した第6段階において、カバー13が図における反時計回りに枢動することにより、カバー13の底面が剥離紙に当たり、針121に刺さった剥離紙Pが、針121から除去されはじめる。
【0043】
次に、
図4の左側に示した第1段階に戻る。第1段階において、剥離紙Pは既に除去されている。そして、アクチュエータAが初期状態に戻るので、回転ユニット12も
図4の左側に示したような初期状態に戻る。
【0044】
以上のように、本開示の一実施形態に係るエンドエフェクタ1を用いることによって、粘着シートから剥離紙を、簡易にはがすことができる。剥離紙に針121を刺して、すくい上げるようにしてはがすので、ロボットアームおよびエンドエフェクタ1の操作において、高い精度が要求されない。
【0045】
図7は、回転ユニット12の3つの姿勢を示す図であり、
図7の(a)第1の支持部が開始位置Sにある場合、
図7の(b)第1の支持部が途中位置Mにある場合、
図7の(c)第1の支持部が終了位置Eにある場合をそれぞれ示している。なお、
図7の(a)が
図4に示した第2段階に、
図7の(b)が
図5に示した第3段階に、
図7の(c)が
図5に示した第4段階に、それぞれ相当する。また、カバー13については図示を省略する。
【0046】
既に説明したように、くの字形のガイド溝111に沿って、第1の支持部が移動することにより、途中位置Mにおいて針121が飛び出し、終了位置Eにおいて針121が横に寝るように傾いていることが、
図7に示されている。
【0047】
(変形例1:線分MEの角度)
図8は、本開示の一実施形態に係るエンドエフェクタ1における、ガイド溝111の形状についての変形例を示す図である。
図8の(a)が示しているように、ガイド溝111が開始位置Sと途中位置Mと終了位置Eとを有している。開始位置Sと途中位置Mとを結んだ線分を線分SMとする。また、途中位置Mと終了位置Eとを結んだ線分を線分MEとする。線分SMと、エンドエフェクタ1を床面上に置いたときの水平方向との間のなす角をθ
1とする。線分SMと線分MEとの間のなす角をθ
2とする。この時、
図1~
図7に示したエンドエフェクタ1においては、線分MEが床面に対して垂直に降りるように、すなわちθ
2=θ
1+90°であるように、開始位置S、途中位置M、および終了位置Eを決め、線分SMおよび線分MEに沿ってガイド溝111を形成した。このようにすれば、第1の支持部が線分SMを移動している際には、回転ユニット12における針121が飛び出る効果を奏し、第1の支持部が線分MEを移動している際には、針121が床面に近づくように倒れ、剥離紙をすくい上げる効果を奏するので、好適である。
【0048】
しかしながら、線分MEの角度は、上記のものには限られない。例えば、
図8の(b)に示したように、θ
1<θ
2<θ
1+180°を満たすように、角度θ
1,θ
2を決定して、これらの角度に基づいて、開始位置S、途中位置M、および終了位置Eを決め、線分SMおよび線分MEに沿ってガイド溝111を形成することができる。
【0049】
(変形例2:曲線状のガイド溝)
また、上述のエンドエフェクタ1においては、ガイド溝111の形状が、線分SMと線分MEの二つの直線を接合した軌跡に沿って形成されていた。しかしながら、曲線の軌跡に沿って、ガイド溝111の形状を決定することもできる。
【0050】
例えば、
図8の(c)に示したように、曲線上に変曲点M’がある場合を考える。変曲点は、連続な曲線上の点であって、その点において曲線が凹から凸へと、またはその逆へと変化する点を言う。変曲点M’が途中位置であるとして、元々の曲線に含まれる3つの点(開始位置S、変曲点M’、終了位置E)に基づいて、直線状の線分SM’および線分M’Eを引き、これら2つの線分に基づいて、上述と同様にして角度θ
1および角度θ
2を決定する。角度θ
1,θ
2が、θ
1<θ
2<θ
1+180°の不等式を満たす場合には、元の曲線に沿ってガイド溝111の形状を決定してよい。
【0051】
また、
図8の(d)に示したように、曲線上に変曲点が無い場合、曲線上の任意の点を途中位置Nとして定めてもよい。そして、直線である線分SNおよび線分NEに基づいて、角度θ
1,θ
2を決定する。角度θ
1,θ
2が、θ
1<θ
2<θ
1+180°の不等式を満たす場合には、元の曲線に沿ってガイド溝111の形状を決定してよい。
【0052】
以上のように、アクチュエータAによる押圧に応じて揺動する、揺動リンク1202をさらに備え、揺動リンク1202が第1の支持部(玉軸受1207A,1207B)と接続されていてよい。これにより、アクチュエータAによる押圧の力を、揺動リンクが受けて、第1の支持部へとその力を伝える。そのため、第1の支持部が、ガイド溝111に沿って、適切に動くようになる。
【0053】
また、回転ユニット12が、剥離紙に対する針121による加圧を調整するためのコイルばね1211(弾性体)を備えてよい。これにより、針121が剥離紙を粘着シートTごと刺し貫かないように、押圧を調整することができる。
【0054】
また、ガイド溝111がくの字形の形状を呈してよい。これにより、まず針121を突出させて剥離紙を刺し、次に剥離紙を針121ですくい上げるようにして、粘着シートTからはがすことができる。
【0055】
また、ガイド溝111が、開始位置Sと、途中位置Mと、終了位置Eとを有し、開始位置Sと途中位置Mとを結んだ線分を線分SMとし、途中位置Mと終了位置Eとを結んだ線分を線分MEとし、線分SMと、エンドエフェクタ1を床面上に置いたときの水平方向との間のなす角をθ1とし、線分SMと線分MEとの間のなす角をθ2としたときに、θ1<θ2<θ1+180°を満たす。また、より特定的には、θ1+45°<θ2<θ1+135°を満たし、さらに特定的には、θ2=θ1+90°を満たす。これにより、第1の支持部が途中位置Mから終了位置Eへと移動する間に、回転ユニット12および回転ユニット12が有する針121の動きを適切に規定することができる。
【0056】
また、回転ユニット12が第2の支持部(筒1212C)をさらに備え、第2の支持部は、第1の支持部よりも、針121の先端に近い側に設けられていてよい。これにより、針121の先端に近い側に設けられた第2の支持部を支点として、第1の支持部がガイド溝111に沿って移動することで、回転ユニット12が回転し、剥離紙を針121ですくい上げるようにはがすことができる。
【0057】
また、針121を保護するカバー13をさらに備え、カバー13が筐体11に対して枢動することにより、はがされた剥離紙を除去する。これにより、カバー13が安全面での機能に加えて、はがされた剥離紙を除去する機能を備えることができる。
【0058】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、剥離紙をはがすことのできるエンドエフェクタとして有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 エンドエフェクタ
11 筐体
111 ガイド溝
112A 孔
112B 孔
113A 孔
113B 孔
12 回転ユニット
121 針
132 凸部
1201 第1リンクプレート
1202 揺動リンク
1202A 第2リンクプレート
1202B 第2リンクプレート
1203 第1回転軸
1204 ホルダ
1204A 筒
1204B 筒
1205 第2回転軸
1206A パイプ
1206B パイプ
1207A 玉軸受
1207B 玉軸受
1208 パイプ
1209 全ネジ
1210 ピン圧力プレート
1210A 孔
1210B 孔
1211 コイルばね
1212 回転ベース
1212A 第1の孔
1212B 第2の孔
1212C 筒
1213 ナット
1214 段付きピン
1214A 肩部
1215 パイプ
1216A パイプ
1216B パイプ
1217 コイルばね
1218 回転ベースサポート
1218A 孔
1218B 受け部
1218C 孔
1218D 孔
1219A ボルト
1219B ボルト
1220 ナット
1221 パイプ
1222 ナット
1223 ナット
1224 ネジ
13 カバー
13A 支点部
13B 支点部
13C 回転軸
A アクチュエータ
E 終了位置
M,N 途中位置
M’ 変曲点
P 剥離紙
R 小径ロッド
S 開始位置
T 粘着シート