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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019239858
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108274
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金松 健児
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】澁瀬 康平
(72)【発明者】
【氏名】喜多見 航
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029152(JP,A)
【文献】特表2019-515476(JP,A)
【文献】特表2017-507469(JP,A)
【文献】特開2020-161468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼によりガスを発生させるガス発生器と、
内部空間を有するハウジングと、
前記内部空間に配置され、前記ガス発生器で発生した前記ガスの圧力により駆動されて移動方向に移動する動作ピンと、
前記内部空間に少なくとも一部が配置され、外部電路に接続される第1導電体と、
前記内部空間に少なくとも一部が配置され、前記第1導電体と並列に接続される第2導電体と、
前記内部空間に配置され、前記内部空間で発生するアークを冷却する冷却体と、
を備え、
前記第1導電体は、
前記外部電路に接続される2つの第1端子部と、
前記ハウジングの前記内部空間に収容され、前記動作ピンにより前記2つの第1端子部のうちの少なくとも一方から分離される第1分離部と、
を有し、
前記第2導電体は、
前記2つの第1端子部にそれぞれ接続される2つの第2端子部と、
前記ハウジングの前記内部空間に収容され、前記動作ピンにより前記2つの第2端子部のうちの少なくとも一方から分離される第2分離部と、
を有し、
前記第1分離部及び前記第2分離部は、前記動作ピンの前記移動方向において前記動作ピンの投影領域に位置しており、
前記冷却体は、前記動作ピンの前記移動方向において前記動作ピンの投影領域に配置されている、
遮断装置。
【請求項2】
前記冷却体の少なくとも一部は、前記第1分離部と前記第2分離部との間に配置されている、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
前記冷却体の少なくとも一部は、前記第1分離部及び前記第2分離部のうちで前記動作ピンに近い方と、前記動作ピンと、の間に配置されている、
請求項1又は2に記載の遮断装置。
【請求項4】
前記冷却体の少なくとも一部は、前記第1分離部及び前記第2分離部のいずれよりも前記動作ピンから離れた位置に、配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記動作ピン、前記第1分離部、及び前記第2分離部は、前記動作ピンの前記移動方向において、この順に並んでいる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項6】
前記第1分離部が分離を開始するとき、前記第2導電体における前記2つの第2端子部間は導通している、
請求項5に記載の遮断装置。
【請求項7】
前記第2導電体の前記2つの第2端子部は、前記第1導電体に接続される第1端及び第2端をそれぞれ有し、
前記動作ピンにより前記第1分離部が分離される前において、前記第1導電体における前記第1端に接続される部位と前記第2端に接続される部位との間の部分の電気抵抗は、前記第2導電体における前記第1端と前記第2端との間の部分の電気抵抗より小さい、
請求項1~6のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項8】
前記内部空間を区分し前記第1導電体及び前記第2導電体とは別体に設けられ、前記動作ピンの前記移動方向における前記冷却体の移動を制限する規制体を備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項9】
前記冷却体は、複数の粒子を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項10】
前記冷却体は、多孔質体を有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の遮断装置。
【請求項11】
前記冷却体は、繊維状部材を有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は遮断装置に関し、より詳細には、電路を遮断する遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の回路遮断器は、電気回路に接続されるように設計された少なくとも1つの導電体と、ハウジングと、マトリクスと、パンチと、火工品を用いたアクチュエータと、を備えている。アクチュエータは、点火されたときにパンチを第1の位置から第2の位置に移動させるように設計されている。パンチ及びマトリクスは、パンチが第1の位置から第2の位置に移動するときに、少なくとも1つの導電体を破断して、少なくとも2つの別個の部分にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-507469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている回路遮断器のような遮断装置では、導電体に大電流が流れているときに導電体を破断すると、破断した箇所でアークが発生することがある。
【0005】
本開示は、アークの発生を抑制することが可能な遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遮断装置は、ガス発生器と、ハウジングと、動作ピンと、第1導電体と、第2導電体と、冷却体と、を備える。前記ガス発生器は、燃料の燃焼によりガスを発生させる。前記ハウジングは、内部空間を有する。前記動作ピンは、前記内部空間に配置され、前記ガス発生器で発生した前記ガスの圧力により駆動されて移動方向に移動する。前記第1導電体は、前記内部空間に少なくとも一部が配置され、外部電路に接続される。前記第2導電体は、前記内部空間に少なくとも一部が配置され、前記第1導電体と並列に接続される。前記冷却体は、前記内部空間に配置され、前記内部空間で発生するアークを冷却する。前記第1導電体は、2つの第1端子部と、第1分離部と、を有する。前記2つの第1端子部は、前記外部電路に接続される。前記第1分離部は、前記ハウジングの前記内部空間に収容され、前記動作ピンにより前記2つの第1端子部のうちの少なくとも一方から分離される。前記第2導電体は、2つの第2端子部と、第2分離部と、を有する。前記2つの第2端子部は、前記2つの第1端子部にそれぞれ接続される。前記第2分離部は、前記ハウジングの前記内部空間に収容され、前記動作ピンにより前記2つの第2端子部のうちの少なくとも一方から分離される。前記第1分離部及び前記第2分離部は、前記動作ピンの前記移動方向において前記動作ピンの投影領域に位置している。前記冷却体は、前記動作ピンの前記移動方向において前記動作ピンの投影領域に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、アークの発生を抑制することが可能となるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の遮断装置の断面斜視図である。
図2図2は、同上の遮断装置の斜視図である。
図3図3は、同上の遮断装置の要部の斜視図である。
図4図4は、同上の遮断装置の要部の斜視図である。
図5図5は、同上の遮断装置の一部の部材を取り除いた状態の断面斜視図である。
図6図6は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動される前の状態を示す。
図7図7は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動された直後の状態を示す。
図8図8は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動された後の状態を示す。
図9図9は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンの移動が完了した状態を示す。
図10図10は、変形例1の遮断装置の断面図である。
図11図11は、変形例2の遮断装置の断面図である。
図12図12は、変形例3の遮断装置の断面図である。
図13図13は、変形例4の遮断装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る遮断装置について、添付の図面を参照して説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態の遮断装置1は、図1に示すように、第1導電体2と、第2導電体5と、冷却体3と、ガス発生器70と、動作ピン8と、ハウジング9と、を備える。
【0011】
第1導電体2は、外部電路に接続される。第1導電体2は、2つの第1端子部21,22、及び第1分離部23を有する。2つの第1端子部21,22は、第1導電体2において、外部電路に接続される部分である。第1分離部23は、第1導電体2において、2つの第1端子部21,22をつなぐ部分である。
【0012】
第2導電体5は、第1導電体2と並列に接続される。第2導電体5は、2つの第2端子部51,52、及び第2分離部53を有する。2つの第2端子部51,52は、第2導電体5において、第1導電体2に接続される部分である。第2分離部53は、第2導電体5において、2つの第2端子部51,52をつなぐ部分である。
【0013】
図3に示すように、第2導電体5は、第1端510及び第2端520を有している。第1端510は、2つの第2端子部51,52のうちの一方の第2端子部51において、対応する第1端子部21と接続される端部である。第2端520は、2つの第2端子部51,52のうちの他方の第2端子部52において、対応する第1端子部22と接続される端部である。
【0014】
図1に示すように、ハウジング9は、内部空間90を有する。第1導電体2の第1分離部23、及び第2導電体5の第2分離部53は、内部空間90に収容されている。
【0015】
ガス発生器70は、燃料74の燃焼によりガスを発生させる。
【0016】
動作ピン8は、ハウジング9の内部空間90に配置される。動作ピン8は、ガス発生器70で発生したガスの圧力により駆動されて、移動方向(図1の下方)に移動する。
【0017】
第1分離部23及び第2分離部53は、動作ピン8の移動方向において動作ピン8の投影領域に位置している。本実施形態では、第2分離部53は、第1分離部23よりも動作ピン8から離れている。すなわち、動作ピン8、第1分離部23、及び第2分離部53は、動作ピン8の移動方向において、この順に並んでいる。
【0018】
図7に示すように、第1分離部23は、動作ピン8の移動により、2つの第1端子部21,22のうちの少なくとも一方(ここでは両方)から分離される。また、図8に示すように、第2分離部53は、動作ピン8の移動により、2つの第2端子部51,52のうちの少なくとも一方(ここでは両方)から分離される。
【0019】
図1に示すように、冷却体3は、ハウジング9の内部空間90に配置される。冷却体3は、動作ピン8の移動方向において動作ピン8の投影領域に配置されている。冷却体3は、内部空間90で発生するアークを冷却する。
【0020】
遮断装置1では、動作ピン8が駆動される前(図6参照)において、2つの第1端子部21,22間に電圧が印加されると、第1導電体2の第1分離部23を通る経路(第1経路)と第2導電体5の第2分離部53を通る経路(第2経路)との並列回路に、電流が流れる。
【0021】
遮断装置1では、動作ピン8が駆動されると、第1分離部23が2つの第1端子部21,22から分離される(図7参照)。これにより、第1経路が遮断されて第2経路のみに電流が流れるようになる(転流)。
【0022】
遮断装置1では、動作ピン8の移動によって、さらに、第2分離部53が2つの第2端子部51,52から分離される(図8参照)。これにより、第2経路が遮断される。このとき、第2分離部53が2つの第2端子部51,52から分離される箇所で、アークA1,A2が発生する場合がある。
【0023】
冷却体3は、第2分離部53が第2端子部51から分離されるときに発生するアークA1、及び第2分離部53が第2端子部52から分離されるときに発生するアークA2に、接触する。これにより、アークA1,A2が冷却され、アークA1,A2の消弧が促進される。なお、アークが冷却体3に接触することで、アークを構成する金属ガスが冷却体3に付着する。そのため、冷却体3があることで、アークの発生に起因する内部空間90の圧力の上昇が抑制され得る。
【0024】
本実施形態の遮断装置1によれば、2つの第1端子部21,22間の電路は、第1経路と第2経路との並列回路から、第1経路が遮断されることによって第2経路のみの回路へと変化する。これにより、2つの第1端子部21,22間の電路の電気抵抗が増加し、この電路に流れる電流の大きさが減少する(限流)。そして、2つの第1端子部21,22間の電路は、電流の大きさが減少した状態で第2分離部53が分離されることによって、遮断される。
【0025】
すなわち、本実施形態の遮断装置1は、例えば第2分離部53を備えていない遮断装置に比べて、電路が遮断される時に電路に流れている電流の大きさが小さくなる。そのため、遮断装置1は、第2分離部53を備えていない遮断装置に比べて、アークの発生を抑制することが可能となる。なお、アークの発生を抑制するとは、アークを発生させなくすることに限らず、発生したアークが持続する時間を短くすること、又は発生するアークのエネルギーを小さくすることを含み得る。
【0026】
また、遮断装置1では、冷却体3が、動作ピン8の移動方向において動作ピン8の投影領域に配置されている。そのため、冷却体3が、発生したアークに接触しやすい。これにより、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0027】
(1.2)構成
本実施形態の遮断装置1について、図1図9を参照して、より詳細に説明する。
【0028】
遮断装置1は、上述のように、第1導電体2と、第2導電体5と、冷却体3と、ガス発生器70と、動作ピン8と、ハウジング9と、を備えている。また、遮断装置1は、第1規制体41と、第2規制体42と、を備えている。
【0029】
遮断装置1は、例えば、電動車両等に備えられる。遮断装置1は、例えば、電動車両の電源とモータとを接続する電気回路に設けられ、電源からモータへの電流の供給の有無を切り替える。遮断装置1におけるガス発生器70の動作は、例えば、電動車両に設けられている制御部(ECU:Electronic Control Unit等)によって制御される。
【0030】
以下では、説明の便宜上、動作ピン8の移動方向に沿った方向であって動作ピン8と第1導電体2とが対向する方向(図6の上下方向)を上下方向と呼び、動作ピン8から見て第1導電体2側を下側、第1導電体2から見て動作ピン8側を上側と呼ぶ。また、第1導電体2の長手方向であって2つの第1端子部21,22が並ぶ方向(図6の左右方向)を左右方向と呼ぶ。また、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向(図6の紙面に垂直な方向)を前後方向と呼ぶ。なお、これらの方向は、遮断装置1の構造を説明するための便宜的なものであり、遮断装置1を使用する場合の遮断装置1の向き等を規定するものではない。
【0031】
第1導電体2は、例えば、銅により形成されている。図3図6に示すように、第1導電体2は、上下方向に厚さを有し左右方向に長い矩形の板状に形成されている。図3に示すように、2つの第1端子部21,22、及び第1分離部23は、幅(前後方向の寸法)及び厚さ(上下方向の寸法)が互いに等しい。
【0032】
2つの第1端子部21,22は、外部電路(電動車両の電気回路)に電気的に接続される。2つの第1端子部21,22の各々は、嵌合、接着、溶着、ねじ止め等の適宜の手段で、外部電路に対して電気的に接続され得る。
【0033】
第1分離部23は、2つの第1端子部21,22をつないでいる。2つの第1端子部21,22及び第1分離部23は、一体に形成されている。第1導電体2の長手方向において、一方の第1端子部21と、第1分離部23と、他方の第1端子部22とが、この順に並んでいる。
【0034】
第1導電体2は、第1導電体2の長手方向に並ぶ2つの溝24を有している。各溝24は、第1導電体2の第1の面F1(図6参照)及び第1の面F1とは反対側の第2の面F2(図6参照)のうち、第1の面F1に形成されている。第1の面F1は、動作ピン8と対向する面である。各溝24の深さ方向は、第1導電体2の厚さ方向に沿っている。2つの溝24の各々は、部分円筒状(円弧状)である。2つの溝24は、同心状に形成されている。2つの溝24は、外側(中心から遠い側)の径が互いに等しく、内側(中心に近い側)の径も互いに等しい。
【0035】
2つの溝24が、一方の第1端子部21と第1分離部23との境界部分240、及び他方の第1端子部22と第1分離部23との境界部分240を規定する。境界部分240の破断強度は、第1端子部21,22の各々の破断強度以下である。また、境界部分240の破断強度は、第1分離部23の破断強度以下である。すなわち、境界部分240は、第1導電体2の他の箇所に比べて破断しやすい。
【0036】
2つの第1端子部21,22の各々において、溝24の近くに、貫通孔が形成されている。
【0037】
第2導電体5は、例えば、銅により形成されている。ただし、これに限らず、第2導電体5は、第1導電体2の材料よりも抵抗率の高い導電材料から形成されていてもよい。第2導電体5の厚さは、第1導電体2の厚さよりも薄い。
【0038】
図3に示すように、第2導電体5は、左右方向に長い底板部501と、底板部501の両端から上方に延びる一対の縦板部502,503と、一対の縦板部502,503の上端から互いに離れる向きに延びる一対の鍔部504,505と、を一体に有している。一対の鍔部504,505の各々の幅(前後方向の寸法)は、底板部501の幅(前後方向の寸法)よりも大きい。各鍔部504,505には、貫通孔が形成されている。第2導電体5は、例えば、第1導電体2よりも薄い金属板に、打抜加工及び折曲加工を施すことで形成され得る。
【0039】
底板部501は、底板部501の他の部分よりも幅(前後方向の寸法)が小さな幅狭部54を2つ有している。2つの幅狭部54は、底板部501の長手方向において、対称な位置に設けられている。第2導電体5において、2つの幅狭部54が、一方の第2端子部51と第2分離部53との境界部分、及び他方の第2端子部52と第2分離部53との境界部分を規定する。幅狭部54は、底板部501の他の箇所に比べて破断しやすい。
【0040】
ハウジング9は、例えば、樹脂により形成されている。ハウジング9は、その内部に空間(内部空間90)を有している。内部空間90は、ハウジング9の外部から隔離された密閉空間である。
【0041】
図1図2図5に示すように、ハウジング9は、第1ボディ91と、第2ボディ92と、第3ボディ93と、第4ボディ94と、第1ホルダ95と、第2ホルダ96と、を備えている。なお、図5は、冷却体3及び動作ピン8を取り除いた状態の遮断装置1を示している。
【0042】
第1ボディ91は、矩形の箱状である。第1ボディ91の上面の中央には、断面円形状の内周面を有し上側に開口する筒状の凹所910が形成されている。凹所910の底面は、湾曲面である。第1ボディ91の上面において凹所910の周りには、円環状の凹所が形成されている。この凹所により、第1ボディ91の上面に第2ボディ92が重ねられた状態で、円環状の溝911が形成される。
【0043】
第2ボディ92は、矩形の箱状である。第2ボディ92は、第1ボディ91の上面に重ねられる。第2ボディ92の中央には、上下方向に延びる断面円形状の貫通孔920が形成されている。貫通孔920の径は、第1ボディ91の凹所910の径よりも小さい。
【0044】
第2ボディ92の上面において貫通孔920の周りには、貫通孔920の径よりも径の大きな断面円形状の凹所921が、貫通孔920と同心状に形成されている。凹所921の底面には、第2導電体5の厚さ程度の深さを有し左右方向に延びる窪みが形成されている。この窪みに、第2導電体5の底板部501が配置される。
【0045】
また、第2ボディ92の上面には、左右方向に延びる嵌合凹所が形成されている。この嵌合凹所に、導電体2の下側の部分が嵌め込まれる。
【0046】
第3ボディ93は、矩形の箱状である。第3ボディ93は、第2ボディ92の上面に重ねられる。第3ボディ93の中央には、上下方向に延びる断面円形状の貫通孔930が形成されている。
【0047】
第3ボディ93の下面において貫通孔930の周りには、貫通孔930の径よりも径の大きな断面円形状の凹所931が、貫通孔930と同心状に形成されている。凹所931の径は、凹所921の径と略同じである。また、第3ボディ93の貫通孔930の内周面において、凹所931の上方には、貫通孔930の内周面から内方に突出する円環状のリブ932が形成されている。
【0048】
また、第3ボディ93の下面には、左右方向に延びる嵌合凹所が形成されている。この嵌合凹所に、導電体2の上側の部分が嵌め込まれる。
【0049】
第3ボディ93の上面において貫通孔930の周りには、円環状の凹所933が形成されている。この凹所に、第2ホルダ96の下端部分が嵌め込まれる。
【0050】
第4ボディ94は、矩形箱状の部分と、その上面に形成された円柱状の部分と、が組み合わされた形状を有している。第4ボディ94は、第3ボディ93の上面に重ねられる。
【0051】
第4ボディ94の中央には、上下方向に延びる貫通孔が形成されている。また、第4ボディ94の下面(第3ボディ93の上面と接する面)には、円環状の溝が形成されている。この溝に、オーリング62が嵌め込まれる。
【0052】
図4に示すように、第1ホルダ95は、第1部分951と、第2部分952と、を有している。第1部分は、その軸が上下方向に沿った中空の円筒状である。第1部分951は、その左右の両側面に凹所を有している。第2部分は、第1部分951と同心の中空の円筒状である。第2部分952は、第1部分951の上面から上方に延びている。第2部分952の外径は、第3ボディ93のリブ932の内径と略等しい。
【0053】
第1ホルダ95は、その中央に、上下方向に延びる断面円形状の貫通孔950を有している。第1ホルダ95の内周面(貫通孔950の内面)には段差953が円環状に形成されている。貫通孔950の径は、段差953より上側の部分の方が、下側の部分よりも大きい。
【0054】
第1ホルダ95は、左右方向に貫通する、断面矩形状の貫通孔954を有している。貫通孔954の断面形状は、第1導電体2の断面形状と略同じである。第1導電体2は、第1ホルダ95の左右の貫通孔954に挿入されることで、第1ホルダ95に保持される。
【0055】
図5に示すように、第1ホルダ95は、凹所921,931で囲まれる空間内に第1部分951が位置し、第3ボディ93のリブ932の内周面に第2部分952の外周面が接触した状態で、第2ボディ92と第3ボディ93との間に保持される。
【0056】
第1ホルダ95が第2ボディ92と第3ボディ93との間に保持された状態で、第1ホルダ95の貫通孔950の下端と第2ボディ92の貫通孔920の内周面の上端とは、つながっている。
【0057】
図1図5に示すように、第1ホルダ95の貫通孔950の径は、第1導電体2における溝24の径とほぼ等しい。より詳細には、貫通孔950の径は、溝24の外側の径よりも小さく、内側の径よりも大きい。第1導電体2は、溝24が貫通孔950の内面の下端と対向する位置で、第1ホルダ95に保持されている。
【0058】
第1導電体2において、一方の第1端子部21における第1分離部23側の端部、及び他方の第1端子部22における第1分離部23側の端部は、ハウジング9(第1ホルダ95)に保持されている。第1導電体2において、一方の第1端子部21における第1分離部23とは反対側の端部、及び他方の第1端子部22における第1分離部23とは反対側の端部は、ハウジング9の外部へ露出している。
【0059】
第2導電体5は、底板部501及び縦板部502,503が第1ホルダ95の下面及び側面に沿い、かつ鍔部504,505が第1導電体2の下面に接触するように、配置される。そして、例えば、第2導電体5の鍔部504(505)に形成されている貫通孔と、第1導電体2の第1端子部21(22)に形成されている貫通孔とに、共通のボルトを通し、ボルトにナットを結合することで、第1導電体2と第2導電体5とが結合される。要するに、本実施形態の遮断装置1では、第2導電体5において、一対の鍔部504,505が、第1導電体2の2つの第1端子部21とそれぞれ接続される第1端510及び第2端520に相当する。
【0060】
遮断装置1では、第2導電体5は、第1導電体2よりも薄い。また、第2経路の長さは第1経路の長さよりも長い。ここで、第1経路は、第1導電体2において第2導電体5に接続される箇所(第1端510に接続される箇所及び第2端520に接続される箇所)の間の部分(第1分離部23を含む部分)である。また、第2経路は、第2導電体5において第1導電体2に接続される箇所(第1端510及び第2端520)の間の部分(第2分離部53を含む部分)である。そのため、遮断装置1では、第1経路の電気抵抗は、第2経路の電気抵抗より小さい。すなわち、遮断装置1では、第1導電体2における第1端510に接続される部位と第2端520に接続される部位との間の部分の電気抵抗は、第2導電体5における第1端510と第2端520との間の部分の電気抵抗より小さい。第1経路の電気抵抗は、第2経路の電気抵抗よりも十分に小さいことが好ましい。特に限定されないが、例えば、第1経路の電気抵抗は、第2経路の電気抵抗の1/100以下である。
【0061】
また、遮断装置1では、第2導電体5における第1端510と第2端520との間の部分の融点は、第1導電体2における第1端510に接続される部位と第2端520に接続される部位との間の部分の融点よりも、高い。すなわち、遮断装置1では、第2経路を構成する部分の方が、第1経路を構成する部分よりも、溶融しにくい。
【0062】
図5に示すように、凹所921,931で囲まれる空間内に第1ホルダ95の第1部分951が配置された状態において、第1導電体2は、第2ボディ92の上面の嵌合凹所及び第3ボディ93の下面の嵌合凹所に嵌め込まれる。このとき、第2導電体5の底板部501は、第2ボディ92の凹所921の底面に形成されている窪み内に位置しており、第1ホルダ95の下面と第2ボディ92の凹所921の底面との間に挟持されている。また、第2導電体5の一対の縦板部502,503は、第1ホルダ95の左右の側壁に沿っている。
【0063】
第1ホルダ95は、例えば、第2ボディ92の材料及び第3ボディ93の材料よりも耐熱性の高い材料で形成されていてもよい。
【0064】
第2ホルダ96は、第4ボディ94の貫通孔内に配置されている。第2ホルダ96は、その外周面が第4ボディ94の貫通孔の内周面に沿う形状を有している。また、第2ホルダ96の下端部分は、第3ボディ93の凹所933に嵌め込まれている。
【0065】
第2ホルダ96は、断面円形状の内周面を有し下側に開口する凹所960を有している。凹所960の内周面の径は、第3ボディ93の貫通孔930の内周面の径と略等しい。第2ホルダ96が、第4ボディ94内及び第3ボディ93の凹所933内に配置された状態で、第2ホルダ96の凹所960の内周面の下端は、第3ボディ93の貫通孔930の内周面の上端と、つながっている。
【0066】
また、第2ホルダ96は、その上端に、円筒状の収容壁961を備えている。収容壁961の内部に、ガス発生器70が配置される。収容壁961とガス発生器70との間には、オーリング64が配置される。ガス発生器70が収容壁961に配置されることで、ハウジング9の内部空間90が密閉される。ハウジング9の内部空間90は、第1ボディ91の凹所910の内面、第2ボディ92の貫通孔920の内面、第1ホルダ95の貫通孔950の内面、第1導電体2の溝24の側面、第3ボディ93の貫通孔930の内面、第2ホルダ96の凹所960の内面、及びガス発生器70の下面で囲まれる空間である。
【0067】
図5に示すように、ハウジング9の内部空間90(密閉空間)は、第1空間SP1と第2空間SP2と第3空間SP3とを含む。第1空間SP1と第2空間SP2と第3空間SP3とは、つながっている。
【0068】
第1空間SP1は、第1ホルダ95の貫通孔950の内面における第1導電体2(破断される前)よりも上側の部分と、第3ボディ93の貫通孔930の内面と、第2ホルダ96の凹所960の内面と、ガス発生器70の下面と、で囲まれる空間である。すなわち、第1空間SP1は、内部空間90において、第1導電体2よりも上側の空間である。この第1空間SP1に、動作ピン8が配置される。
【0069】
第2空間SP2は、第2ボディ92の貫通孔920の内面と、第1ボディ91の凹所910の内面と、で囲まれる空間である。すなわち、第2空間SP2は、内部空間90において、第2導電体5よりも下側の空間である。第2空間SP2は、第1端子部21,22から分離された第1分離部23、及び第2端子部51,52から分離された第2分離部53が、収容される空間である。
【0070】
第3空間SP3は、第1ホルダ95の貫通孔950の内面における第1導電体2(破断される前)よりも下側かつ第2導電体5(破断される前)よりも上側の部分で囲まれる空間である。すなわち、第3空間SP3は、内部空間90において、第1導電体2と第2導電体5との間の空間である。
【0071】
ガス発生器70は、収容壁961の内部に配置される。ガス発生器70は、燃料74の燃焼によりガスを発生させる。ガス発生器70は、発生したガスの圧力に連動して、動作ピン8を移動させる。図1に示すように、ガス発生器70は、燃料74と、ケース71と、通電用の2つのピン電極72と、発熱素子73と、を備えている。
【0072】
ケース71は、中空の円柱状である。ケース71は、その下端に、内部空間を有している。このケース71の内部空間に、燃料74及び発熱素子73が収容される。ケース71は、内部空間を構成する下側の壁に、例えば十字溝が形成されており、この溝が形成された部分が他の部分よりも破断しやすくなっている。
【0073】
燃料74は、温度が上昇すると燃焼してガスを発生させる。燃料74は、例えば、ニトロセルロース、アジ化鉛、黒色火薬、グリシジルアジドポリマ等の火薬である。
【0074】
2つのピン電極72は、ケース71に保持されている。2つのピン電極72の各々の第1端は、ハウジング9の外部に露出している。2つのピン電極72の各々の第2端は、発熱素子73に接続されている。つまり、発熱素子73は、2つのピン電極72の間に接続されている。発熱素子73は、通電されることにより熱を発生する。発熱素子73は、例えばニクロム線、鉄とクロムとアルミの合金線等である。
【0075】
ガス発生器70は、燃料74を燃焼させることによりガスを発生させる。より詳細には、ガス発生器70は、2つのピン電極72の間が通電されると発熱素子73が発熱して、発熱素子73の周りの燃料74の温度を上昇させる。これにより燃料74が燃焼して、ガスが発生する。
【0076】
図1に示すように、動作ピン8は、ハウジング9の内部空間90に配置される。動作ピン8は、ガス発生器70と第1分離部23との間に配置されている。動作ピン8は、電気絶縁性を有している。動作ピン8は、例えば、材料として樹脂を含む。
【0077】
図1図3に示すように、動作ピン8は、第1柱状部81と、第2柱状部82と、を有している。
【0078】
第1柱状部81は、円柱状である。第1柱状部81は、第1分離部23に近い側(下側)に位置する。第1柱状部81の外径は、第1ホルダ95の貫通孔950の径と略等しい。
【0079】
第2柱状部82は、第1分離部23から遠い側(上側)に位置する。第2柱状部82は、第1柱状部81よりも外径が大きな円柱状である。そのため、第1柱状部81と第2柱状部82との間には段差がある。第2柱状部82の外径は、第2ホルダ96の凹所960の内周面の径、及び第3ボディ93の貫通孔930の径と、略等しい。
【0080】
図3に示すように、動作ピン8の第2柱状部82の外周面には、円環状の凹所が形成されている。この凹所に、オーリング65が配置される(図1参照)。オーリング65の外縁は、凹所960の内面に接している。このオーリング65と、動作ピン8及び第2ホルダ96との間の摩擦力により、動作ピン8が、ハウジング9の第1空間SP1内に保持されている。また、動作ピン8の上面には、凹所84が形成されている。
【0081】
動作ピン8は、高さ方向の第1面(上面)がガス発生器70に対向するように、ハウジング9の第1空間SP1内に配置されている。動作ピン8が配置された状態で、ハウジング9内には、動作ピン8の凹所84、ガス発生器70の下面、及び凹所960の内面に囲まれるように、気密な空間(加圧室75)が形成されている(図1参照)。
【0082】
動作ピン8の高さ(上下方向の寸法)は、第1空間SP1の上下方向の寸法よりも小さい。動作ピン8は、動作ピン8の移動方向の先端(第1導電体2の第1分離部23と対向する面;下面)と第1導電体2との間に隙間(以下、「隙間空間SP11」ともいう)を生じるように、ハウジング9の第1空間SP1内に配置されている。
【0083】
第1導電体2において、第1分離部23は、ハウジング9の内部空間90内に位置している。図1に示すように、第1導電体2は、第1分離部23が動作ピン8の下面と対向している。
【0084】
第2導電体5において、第2分離部53(底板部501において、2つの幅狭部54の間の部分)は、ハウジング9の内部空間90内に位置している。図1に示すように、第2導電体5は、第2分離部53が動作ピン8の下面と対向している。
【0085】
図5に示すように、第1規制体41は、ハウジング9の内部空間90に配置されている。第1規制体41は、第2空間SP2に配置されている。第1規制体41は、ここでは樹脂製である。
【0086】
第1規制体41は、円板状である。第1規制体41の外径は、凹所910の径よりも大きい。第1規制体41の外径は、溝911の径と略等しい。第1規制体41は、溝911に嵌め込まれて、ハウジング9に保持されている。第1規制体41は、内部空間90を区分する。第1規制体41は、第2空間SP2に配置され、第2空間SP2を、第1部分空間SP21と第2部分空間SP22とに区分している。
【0087】
第1規制体41において動作ピン8と対向する面(上面)には、第1規制体41の外縁と同心状の溝410が形成されている。溝410の径は、凹所910の径と略等しい。第1規制体41は、厚さ方向(上下方向)に力を受けたとき、溝410の部分において破断しやすい。なお、溝410の径は、動作ピン8の下面の径と略等しくてもよい。
【0088】
第2規制体42は、ハウジング9の内部空間90に配置されている。第2規制体42は、第1空間SP1に配置されている。第2規制体42は、ここでは樹脂製である。
【0089】
第2規制体42は、円板状である。第2規制体42の外径は、貫通孔950の径よりも大きい。第2規制体42は、段差953に嵌め込まれて、第1ホルダ95に保持されている。第2規制体42は、動作ピン8と第1導電体2(第1分離部23)との間に配置されている。第2規制体42は、内部空間90を区分する。第2規制体42は、第1空間SP1に配置されており、第1空間SP1を、隙間空間SP11と、動作ピン8が配置される配置空間SP12と、に区分している。
【0090】
第2規制体42において動作ピン8と対向する面(上面)には、第2規制体42の外縁と同心状の溝420が形成されている。溝420の径は、動作ピン8の下面の径と略等しい。溝420は、動作ピン8の下面の外縁に対向している。第2規制体42は、厚さ方向(上下方向)に力を受けたとき、溝420の部分において破断しやすい。
【0091】
図1に示すように、冷却体3は、ハウジング9の内部空間90に配置されている。冷却体3は、電気絶縁性を有する。冷却体3は、内部空間90内において、第1規制体41と第2規制体42との間に配置されている。
【0092】
本実施形態の遮断装置1では、冷却体3は、内部空間90における第1空間SP1、第2空間SP2、及び第3空間SP3に配置されている。すなわち、冷却体3は、内部空間90において、第1導電体2(第1分離部23)の厚さ方向(上下方向)の両側に配置されている。また、冷却体3は、内部空間90において、第2導電体5(第2分離部53)の厚さ方向(上下方向)の両側に配置されている。冷却体3は、第1導電体2の周囲に配置されている。冷却体3は、第1導電体2(第1分離部23)と接している。また、冷却体3は、第2導電体5の周囲に配置されている。冷却体3は、第2導電体5(第2分離部53)と接している。冷却体3は、動作ピン8の移動方向において、動作ピン8の投影領域に配置されている。
【0093】
図1に示すように、冷却体3の少なくとも一部は、第2規制体42と第1導電体2(第1分離部23)との間の空間(隙間空間SP11)に配置されている。すなわち、冷却体3の少なくとも一部は、第1分離部23及び第2分離部53のうちで動作ピン8に近い方(第1分離部23)と、動作ピン8と、の間に配置されている。以下、隙間空間SP11に配置されている冷却体3を、第1冷却体31ともいう。第1冷却体31は、隙間空間SP11の全体に配置されている。
【0094】
また、冷却体3の少なくとも一部は、第1規制体41と第2導電体5(第2分離部53)との間の空間(第1部分空間SP21)に配置されている。すなわち、冷却体3の少なくとも一部は、第1分離部23及び第2分離部53のいずれよりも動作ピン8から離れた位置に、配置されている。以下、第1部分空間SP21に配置されている冷却体3を、第2冷却体32ともいう。第2冷却体32は、第1部分空間SP21の全体に配置されている。
【0095】
また、冷却体3の少なくとも一部は、第1導電体2(第1分離部23)と第2導電体5(第2分離部53)との間の空間(第3空間SP3)に配置されている。以下、第3空間SP3に配置されている冷却体3を、第3冷却体33ともいう。第3冷却体33は、第3空間SP3の全体に配置されている。
【0096】
図示は省略するが、冷却体3は、第1導電体2の側面とハウジング9の内周面との間の空間にも配置されている。また、冷却体3は、第2導電体5の側面とハウジング9の内周面との間の空間にも配置されている。すなわち、冷却体3は、第1規制体41と第2規制体42との間の空間の全体に、配置(充填)されている。
【0097】
本実施形態の冷却体3は、粒子状である。すなわち、冷却体3は、互いに結合していない多数(複数)の粒子300を含む。冷却体3の材料は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方を含む。ここでは、冷却体3の材料は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方である。
【0098】
冷却体3の材料となる金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、及び酸化鉄のうち少なくも1つを含む。また、冷却体3の材料となる無機酸化物は、例えば、酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つを含む。冷却体3の材料となる金属酸化物又は無機酸化物は、溶融してもガスを発生しない物質であることが好ましい。なお、「溶融してもガスを発生しない」とは、溶融しても全くガスを発生しないことに限らず、遮断装置1の性能に影響を与えない程度(例えば、内部空間90の圧力を過度に上昇させない程度)であれば、僅かにガスを発生してもよい。
【0099】
本実施形態の遮断装置1では、冷却体3の材料は、主成分として酸化アルミニウム(Al)又は酸化ケイ素(SiO)を含む。本実施形態の遮断装置1では、冷却体3を構成する粒子300は、アルミナ粒子である。冷却体3を構成する粒子300の粒径に関して言えば、粒径が大きい程、粒子300間の隙間が大きくなるが、冷却体3全体でみたときの表面積が小さくなる。逆に、粒径が小さいほど、冷却体3全体でみたときの表面積は大きくなるが、粒子300間の隙間が小さくなる。そのため、冷却体3へのアークの接触しやすさの観点から、粒子300の粒径は、大き過ぎず小さ過ぎない適切な範囲に設定されることが好ましい。冷却体3を構成する粒子300の粒径は、例えば、0.3~1mm程度である。ここでの粒径は、平均値であるが、中間値であってもよい。また、冷却体3を構成する粒子300は、球形に限らず、不定形であってもよい。
【0100】
第1冷却体31と第2冷却体32と第3冷却体33とは、材料が互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態の遮断装置1では、第1冷却体31と第2冷却体32と第3冷却体33とは、同じ材料(酸化アルミニウム)から形成される。
【0101】
第1冷却体31と第2冷却体32と第3冷却体33とは、粒子300の粒径(平均粒径)が互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態の遮断装置1では、第1冷却体31及び第3冷却体33の粒径は同じである。また、第1冷却体31(及び第3冷却体33)の方が、第2冷却体32よりも、粒子300の粒径が小さい。すなわち、冷却体3の粒径は、隙間(隙間空間SP11)に配置される粒子(第1冷却体31)及び第3空間SP3に配置される粒子(第3冷却体33)の方が、収容空間SP20に配置される粒子(第2冷却体32)よりも、小さい。
【0102】
冷却体3は、第1規制体41及び第2規制体42によって、上下方向において移動可能な範囲が規定されている。すなわち、冷却体3は、第1規制体41及び第2規制体42によって、上下方向の移動が制限されている。要するに、遮断装置1は、ハウジング9の内部空間90を区分し第1導電体2及び第2導電体5とは別体に設けられ、動作ピン8の移動方向における冷却体3の移動を制限する規制体(第1規制体41、第2規制体42)を備えている。
【0103】
また、ハウジング9の内部空間90における第1空間SP1内には、クッション部97が配置されている。クッション部97は、円環状である。クッション部97は、ここでは、貫通孔930内において動作ピン8の第1柱状部81の周囲を囲むように配置されている。クッション部97は、例えば樹脂製である。クッション部97は、第3ボディ93のリブ932よりも柔らかいことが好ましい。
【0104】
(1.3)動作
次に、遮断装置1の動作について、図6図9を参照して説明する。
【0105】
ピン電極72が通電されずガス発生器70が駆動されていない場合、図6に示すように、2つの第1端子部21,22は、第1経路(第1分離部23を含む経路)及び第2経路(第2分離部53を含む経路)の並列回路を介して、電気的に接続されている。そのため、第1導電体2及び第2導電体5は電路として機能し、第1導電体2及び第2導電体5には、第1端子部21,22に電気的に接続されている外部電路から供給される電流が流れる。なお、上述のように、第1経路の電気抵抗は、第2電路の電気抵抗よりも十分に小さい。そのため、第1経路と第2経路との並列回路で見れば、ほぼすべての電流が第1経路を通って流れ、第2経路にはほぼ電流が流れない。
【0106】
電動車両の制御部等が、2つのピン電極72間に通電すると、ガス発生器70が駆動されて、ピン電極72に接続されている発熱素子73が発熱する。この発熱素子73で発生した熱によって燃料74が点火され、燃料74が燃焼してガスを発生する。ガスは、ケース71において燃料74を収容する内部空間の圧力を上昇させて、内部空間を構成する壁(下壁)を破断し、この破断した部分を通して加圧室75に導入されて加圧室75内の圧力を上昇させる。加圧室75内のガスの圧力により、動作ピン8には、第1分離部23に向かう向き(下向き)の力が作用する。
【0107】
動作ピン8は、オーリング65の摩擦力に抗して駆動されて下方(移動方向)に移動し、動作ピン8の下面が第2規制体42を下方に押す。動作ピン8に押された第2規制体42は、溝420において破断される(図7参照)。
【0108】
動作ピン8が下方へ移動すると、第2規制体42を介して動作ピン8に押されることにより、第1冷却体31は、動作ピン8の移動方向(下方)へ移動する。要するに、冷却体3(第1冷却体31)は、動作ピン8の移動に連動して、動作ピン8の移動方向に移動する。
【0109】
動作ピン8は下方へ移動し、(第2規制体42及び第1冷却体31を介して)第1導電体2の第1分離部23を上方から押す。第1分離部23が動作ピン8に押されることにより、図7に示すように、第1導電体2は、一方の第1端子部21と第1分離部23との境界部分240の溝24、及び他方の第1端子部22と第1分離部23との境界部分240の溝24において破断される。これにより、第1分離部23が2つの第1端子部21,22から切り離され、第1経路が遮断される。
【0110】
第1経路が遮断されると、2つの第1端子部21,22間の電路は第2経路のみとなる。そのため、第1端子部21,22間の電気抵抗が増加し、第1端子部21,22間に流れる電流の大きさが減少する(限流)。なお、図7に示すように、第1分離部23が分離を開始するとき、第2分離部53は2つの第2端子部51,52につながっている。すなわち、第1分離部23が分離を開始するとき、第2導電体5における2つの第2端子部51,52間は導通している。
【0111】
動作ピン8がさらに下方へ移動すると、第2規制体42、第1冷却体31及び第1分離部23を介して動作ピン8に押されることにより、第3冷却体33は、動作ピン8の移動方向(下方)へ移動する。要するに、冷却体3(第3冷却体33)は、動作ピン8の移動に連動して、動作ピン8の移動方向に移動する。
【0112】
動作ピン8が下方へ移動するにつれて、動作ピン8は、(第2規制体42、第1冷却体31、第1分離部23、及び第3冷却体33を介して)第2導電体5の第2分離部53を上方から押す。第2分離部53が動作ピン8に押されることにより、図8に示すように、第2導電体5は、一方の第2端子部51と第2分離部53との間の幅狭部54、及び他方の第2端子部52と第2分離部53との間の幅狭部54において破断される。これにより、第2分離部53が2つの第2端子部51,52から切り離され、第2経路が遮断される。
【0113】
第2導電体5において、第2分離部53が第2端子部51,52から切り離されると、第2導電体5において切り離された部分の間で、アークが発生する場合がある。アークは、例えば、第2端子部51と第2分離部53とをつなぐように、また、第2端子部52と第2分離部53とをつなぐように発生し得る。図8には、一方の第2端子部51と第2分離部53との間に発生するアークA1、及び他方の第2端子部52と第2分離部53との間に発生するアークA2を、点線で模式的に示してある。
【0114】
上述のように、第1分離部23と第2分離部53との間には、第3冷却体33が存在する。そのため、アークA1,A2は、第3冷却体33の隙間内を通り、第3冷却体33に接触し得る。第3冷却体33に接触したアークA1,A2は、第3冷却体33に熱を吸収されて冷却される。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0115】
また、第2空間SP2の第1部分空間SP21には、第2冷却体32が存在する。アークA1,A2の一部は、第2冷却体32側にも回り込んで、第2冷却体32に接触し得る。第2冷却体32に接触したアークA1,A2は、第2冷却体32に熱を吸収されて冷却される。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0116】
なお、動作ピン8と第1分離部23との間には、第1冷却体31が存在する。動作ピン8がさらに下方へ移動すると、第1冷却体31も動作ピン8に押されて下方へと移動し、第1冷却体31がアークA1,A2に接触し得る。第1冷却体31に接触したアークA1,A2は、第1冷却体31に熱を吸収されて冷却される。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0117】
要するに、冷却体3は、第2導電体5に電流が流れている状態で第2分離部53が第2端子部51,52から分離されたときに発生するアークA1,A2を、冷却する。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0118】
動作ピン8が下方へ移動すると、第2規制体42、第1冷却体31、第1分離部23、第3冷却体33、及び第2分離部53を介して動作ピン8に押されることにより、第2冷却体32は、動作ピン8の移動方向(下方)へ移動する。要するに、冷却体3(第2冷却体32)は、動作ピン8の移動に連動して、動作ピン8の移動方向に移動する。
【0119】
動作ピン8が下方へ移動するにつれて、動作ピン8は、(第2規制体42、第1冷却体31、第1分離部23、第3冷却体33、第2分離部53、及び第2冷却体32を介して)第1規制体41を下方に押す。動作ピン8に押された第1規制体41は、溝410において破断される。
【0120】
動作ピン8はさらに下方へ移動し、第2柱状部82の下面がクッション部97を介してリブ932の上面に接触することで、移動を停止する(図9参照)。つまり、動作ピン8は、ハウジング9によって、過度の移動が規制される。要するに、ハウジング9は、動作ピン8を収容する空間(第1空間SP1)に、動作ピン8の過度の移動を規制する規制部を備えている。
【0121】
動作ピン8が移動を停止したとき、第1導電体2の2つ第1端子部21,22の間には、動作ピン8の第1柱状部81が介在している。また、第2導電体5の2つ第2端子部51,52の間には、動作ピン8の第1柱状部81が介在している。すなわち、2つの第1端子部21,22間の電路が、動作ピン8(第1柱状部81)によって電気的に絶縁される。
【0122】
第2規制体42、第1分離部23、第2分離部53、及び第1規制体41は、ハウジング9の内部空間90における第2空間SP2内に収容される(図9参照)。なお、冷却体3(第1冷却体31、第2冷却体32、及び第3冷却体33)は、粒子状であり、第2空間SP2内で互いに混ざり合って収容される。そのため、図9では、冷却体3の図示を省略している。
【0123】
なお、例えば2つの第1端子部21,22間にかかる電圧が大きい場合には、第1導電体2の第1分離部23が第1端子部21,22から切り離されたときに、切り離された部分の間でアークが発生する場合がある。アークは、例えば、一方の第1端子部21と第1分離部23とをつなぐように、また、他方の第1端子部22と第1分離部23とをつなぐように発生し得る。
【0124】
本実施形態の遮断装置1では、上述のように、動作ピン8と第1分離部23との間に、第1冷却体31が存在する。そのため、アークは、第1冷却体31の隙間内を通り、第1冷却体31に接触し得る。第1冷却体31に接触したアークは、第1冷却体31に熱を吸収されて冷却される。これにより、アークの消弧が促進される。また、第1分離部23よりも下方には、第3冷却体33及び第2冷却体32が存在する。アークの一部は、第3冷却体33及び第2冷却体32側にも回り込んで、第3冷却体及び第2冷却体32に接触し得る。これにより、アークの消弧が促進される。
【0125】
(1.4)利点
上述のように、本実施形態の遮断装置1は、第1導電体2と並列に接続される第2導電体5を備えている。そして、動作ピン8によってまず第1導電体2が破断(第1経路が遮断)された後に、第2導電体5が破断(第2経路が遮断)される。そのため、本実施形態の遮断装置1は、例えば第2導電体5を備えていない遮断装置に比べて、電路が遮断される時に電路に流れている電流の大きさが小さくなる。そのため、遮断装置1は、例えば第2導電体5を備えていない遮断装置に比べて、アークの発生を抑制することが可能となる。
【0126】
また、遮断装置1では、冷却体3が、動作ピン8の移動方向において動作ピン8の投影領域に配置されている。そのため、内部空間90でアークが発生したとしても、冷却体3がこのアークに接触し易くなり、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0127】
また、遮断装置1では、冷却体3が粒子状であるため、冷却体3の表面積を大きくすることができ、冷却体3にアークが接触しやすくなり、アークの消弧を更に促進することが可能となる。
【0128】
なお、第2導電体5に電流が流れていない状態或いは第2導電体5に流れる電流の大きさが小さい状態で動作ピン8が駆動された場合には、第2導電体5が破断されたとしても、アークが発生しないこともあり得る。
【0129】
(2)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0130】
(2.1)変形例1
本変形例の遮断装置1Aについて、図10を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Aにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0131】
図10に示すように、遮断装置1Aでは、冷却体3は、第2空間SP2(より詳細には、第1部分空間SP21)及び第3空間SP3に配置されているが、第1空間SP1(隙間空間SP11)には配置されていない。すなわち、冷却体3は、第2冷却体32及び第3冷却体33を含むが、第1冷却体31(図6参照)を含まない。
【0132】
また、遮断装置1Aは、第2規制体42の代わりに第3規制体43を備えている。遮断装置1Aでは、貫通孔950の段差953(図10では図示省略)が貫通孔954の直上に形成されており、この段差953に第3規制体43が嵌め込まれることで第3規制体43がハウジング9に保持されている。第3規制体43の下面は、第1導電体2(第1分離部23)の上面に接していてもよい。また、動作ピン8Aの下端は、貫通孔950に嵌め込まれている(動作ピン8Aは、下端が貫通孔950に嵌め込まれる程度の長さを有している)。
【0133】
本変形例の遮断装置1Aでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第2冷却体32及び第3冷却体33)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第1冷却体31を省略することで、構成の簡素化、及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0134】
なお、第3規制体43は、第1導電体2の下面に接するように、すなわち冷却体3(第3冷却体33)と導電体2との間に、配置されていてもよい。また、第3規制体43は、省略されてもよい。
【0135】
(2.2)変形例2
本変形例の遮断装置1Bについて、図11を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Bにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0136】
図11に示すように、遮断装置1Bでは、冷却体3は、第1空間SP1(より詳細には、隙間空間SP11)及び第3空間SP3に配置されているが、第2空間SP2(第1部分空間SP21)には配置されていない。すなわち、冷却体3は、第1冷却体31及び第3冷却体33を含むが、第2冷却体32(図6参照)を含まない。
【0137】
また、遮断装置1Bは、第1規制体41の代わりに、第4規制体44を備えている。第4規制体44は、ハウジング9の第2ボディ92の凹所921の底面に形成された円環状の溝に嵌め込まれ、第2導電体5の底板部501とともに第2ボディ92と第1ホルダ95との間に挟持されることで、ハウジング9に保持されている。第4規制体44は、動作ピン8の移動方向における第3冷却体33の移動を制限する。第4規制体44の上面は、第2導電体5(第2分離部53)の下面に接していてもよい。
【0138】
本変形例の遮断装置1Bでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第1冷却体31及び第3冷却体33)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第2冷却体32を省略することで、構成の簡素化、及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0139】
なお、第4規制体44は、第2導電体5の上面に接するように、すなわち第3冷却体33と第2導電体5(第2分離部53)との間に、配置されていてもよい。
【0140】
(2.3)変形例3
図12に示すように、遮断装置1Cでは、冷却体3は、第1空間SP1(より詳細には、隙間空間SP11)及び第2空間SP2(より詳細には、第1部分空間SP21)に配置されているが、第3空間SP3には配置されていない。そのため、第3空間SP3は、ブランクである。すなわち、冷却体3は、第1冷却体31及び第2冷却体32を含むが、第3冷却体33(図6参照)を含まない。
【0141】
また、遮断装置1Bは、第3規制体43及び第4規制体44をさらに備えている。本変形例では、第3規制体43は、例えば第1ホルダ95を成型する際に、同時に(例えば二色成型によって)形成されてもよい。
【0142】
本変形例の遮断装置1Bでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第1冷却体31、第2冷却体32)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第3冷却体33を省略することで、構成の簡素化、及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0143】
(2.4)変形例4
本変形例の遮断装置1Dについて、図13を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Dにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0144】
図13に示すように、遮断装置1Dでは、冷却体3は、多孔質体を有する。冷却体3を構成する多孔質体は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成される。多孔質体は、多数の微細な孔を有する一つの部材であってもよいし、自身又は他の部材との間に隙間を形成するように配置された一又は複数の部材(部材自体は孔を有していても有していなくてもよい)の集まりであってもよい。
【0145】
より詳細には、本変形例の遮断装置1Dにおける多孔質体は、繊維状部材301の集まりである。つまり、本変形例の遮断装置1Dでは、冷却体3は、繊維状部材301を有する。繊維状部材301は、骨格となる紐状の部分から枝分かれした一又は複数の側鎖部分を更に備えていてもよい。
【0146】
本変形例の遮断装置1Dでは、冷却体3が、互いの間に隙間を形成する繊維状部材301を備えているため、冷却体3は変形(圧縮)可能である。
【0147】
また、本変形例の遮断装置1Dは、第1規制体41を備えておらず、第2空間SP2(図5参照)全体に第2冷却体32が配置されている。
【0148】
本変形例の遮断装置1Dでは、動作ピン8が下方へ移動すると、動作ピン8に直接又は間接的に押されることにより、冷却体3が圧縮される。そのため、基本例の遮断装置1のような、移動後の冷却体3を収容するための空間(第2部分空間SP22:図5参照)が不要である。そのため、本変形例の遮断装置1Dによれば、製造工程を簡略化し得る。
【0149】
本変形例の遮断装置1Dでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第1冷却体31、第2冷却体32、第3冷却体33)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0150】
もちろん、本変形例の遮断装置1Dでも、第1規制体41、第3規制体43、第4規制体44等を備えていてもよい。
【0151】
(2.5)その他の変形例
一変形例において、遮断装置1は、冷却体3として、第1冷却体31、第2冷却体32、第3冷却体33のうちのいずれかのみを備えていてもよい。ただし、アークA1,A2の消弧を促進する観点から、遮断装置1は、第2導電体5の両側に冷却体3を備えていること、すなわち、第2冷却体32と、第1冷却体31及び第3冷却体33のうちの少なくとも一方と、を備えていることが、好ましい。
【0152】
一変形例において、第1冷却体31は、隙間空間SP11の全体に配置されていなくてもよい。同様に、第2冷却体32は、第1部分空間SP21の全体に配置されていなくてもよい。また、第3冷却体33は、第3空間SP3の全体に配置されていなくてもよい。
【0153】
一変形例において、冷却体3は、互いに結合していない複数の粒子300と、多孔質体(繊維状部材301)と、の両方を有していてもよい。
【0154】
一変形例において、動作ピン8,8Aは、複数の部材から構成されていてもよい。動作ピン8,8Aは、例えば、第1柱状部81と、第2柱状部82とが、異なる材料から形成される別の部材から構成されていてもよい。動作ピン8,8Aにおいて、動作ピン8,8Aの移動後に第1導電体2及び第2導電体5(第1端子部21,22、第2端子部51,52)と対向しない部分、例えば第2柱状部82は、電気絶縁性を有していなくてもよい。
【0155】
一変形例において、動作ピン8,8Aの形状は、例示した形状に限られず、例えば任意の多角柱状等であってもよい。
【0156】
一変形例において、溝24の径及び動作ピン8,8Aの径は、第1ホルダ95の貫通孔950の径より小さくてもよい。すなわち、第1導電体2における境界部分240(第1導電体2において破断される部分)の全体がハウジング9の内部空間90内に位置し、第1端子部21の一部(第1分離部23側の端部)及び第1端子部22の一部(第1分離部23側の端部)も、内部空間90内に位置していてもよい。同様に、第2導電体5における幅狭部54(第2導電体5において破断される部分)の全体がハウジング9の内部空間90内に位置し、第2端子部51の一部(第2分離部53側の端部)及び第2端子部52の一部(第2分離部53側の端部)も、内部空間90内に位置していてもよい。
【0157】
一変形例において、冷却体3は、第1導電体2、第2導電体5と接していなくてもよい。
【0158】
一変形例において、溝24は、第1導電体2の第1の面F1に代えて又は加えて、第2の面F2に形成されていてもよい。
【0159】
一変形例において、遮断装置1,1A~1Dは、発生したアークを引き延ばすための永久磁石を備えていてもよい。永久磁石は、例えば、ハウジング9内の空間に配置されてもよいし、ハウジング9に埋め込まれていてもよい。
【0160】
一変形例において、第1端子部21,22、及び第1分離部23は、一体の部材でなくてもよい。一変形例において、第2端子部51,52、及び第2分離部53は、一体の部材でなくてもよい。
【0161】
一変形例において、動作ピン8,8Aの投影領域以外の領域に、追加の冷却体が配置されてもよい。例えば、ハウジング9の第2空間SP2の内壁面に形成された凹所に、冷却体が配置されてもよい。
【0162】
一変形例において、冷却体3の密度(充填率)は、動作ピン8の動作を阻害しない程度に適宜に設定され得る。
【0163】
一変形例において、第1分離部23が第1端子部21,22から分離されるよりも前に、第2分離部53が第2端子部51,52から分離されてもよい。例えば、動作ピン8、第2分離部53、第1分離部23が、この順に並んでいてもよい。なお、先に分離される分離部(この場合、第2分離部53)を通る経路の方が、後に分離される分離部(この場合、第1分離部23)を通る経路よりも、電気抵抗が小さいことが好ましい。
【0164】
一変形例において、ハウジング9は、内部空間90を密閉するための適宜の追加のオーリング(例えば、第1ボディ91と第2ボディ92との間に配置されるオーリング)を備えていてもよい。
【0165】
(3)まとめ
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0166】
第1の態様の遮断装置(1,1A~1D)は、ガス発生器(70)と、ハウジング(9)と、動作ピン(8,8A)と、第1導電体(2)と、第2導電体(5)と、冷却体(3)と、を備える。ガス発生器(70)は、燃料(74)の燃焼によりガスを発生させる。ハウジング(9)は、内部空間(90)を有する。動作ピン(8,8A)は、内部空間(90)に配置され、ガス発生器(70)で発生したガスの圧力により駆動されて移動方向に移動する。第1導電体(2)は、内部空間(90)に少なくとも一部が配置され、外部電路に接続される。第2導電体(5)は、内部空間(90)に少なくとも一部が配置され、第1導電体(2)と並列に接続される。冷却体(3)は、内部空間(90)に配置され、内部空間(90)で発生するアークを冷却する。第1導電体(2)は、2つの第1端子部(21,22)と、第1分離部(23)と、を有する。2つの第1端子部(21,22)は、外部電路に接続される。第1分離部(23)は、ハウジング(9)の内部空間(90)に収容され、動作ピン(8,8A)により2つの第1端子部(21,22)のうちの少なくとも一方から分離される。第2導電体(5)は、2つの第2端子部(51,52)と、第2分離部(53)と、を有する。2つの第2端子部(51,52)は、2つの第1端子部(21,22)にそれぞれ接続される。第2分離部(53)は、ハウジング(9)の内部空間(90)に収容され、動作ピン(8,8A)により2つの第2端子部(51,52)のうちの少なくとも一方から分離される。第1分離部(23)及び第2分離部(53)は、動作ピン(8,8A)の移動方向において動作ピン(8,8A)の投影領域に位置している。冷却体(3)は、動作ピン(8,8A)の移動方向において動作ピン(8,8A)の投影領域に配置されている。
【0167】
この態様によれば、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。また、内部空間(90)で発生したアークの消弧を促進することが可能となる。
【0168】
第2の態様の遮断装置(1,1A,1B,1D)では、第1の態様において、冷却体(3)の少なくとも一部(第3冷却体33)は、第1分離部(23)と第2分離部(53)との間に配置されている。
【0169】
この態様によれば、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。また、内部空間(90)で発生したアークの消弧を促進することが可能となる。
【0170】
第3の態様の遮断装置(1,1B~1D)では、第1又は第2の態様において、冷却体(3)の少なくとも一部(第1冷却体31)は、第1分離部(23)及び第2分離部(53)のうちで動作ピン(8)に近い方(第1分離部23)と、動作ピン(8)と、の間に配置されている。
【0171】
この態様によれば、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。また、内部空間(90)で発生したアークの消弧を促進することが可能となる。
【0172】
第4の態様の遮断装置(1,1A~1C)では、第1~第3のいずれか1つの態様において、冷却体(3)の少なくとも一部(第2冷却体32)は、第1分離部(23)及び第2分離部(53)のいずれよりも動作ピン(8,8A)から離れた位置に、配置されている。
【0173】
この態様によれば、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。また、内部空間(90)で発生したアークの消弧を促進することが可能となる。
【0174】
第5の態様の遮断装置(1,1A~1D)では、第1~第4のいずれか1つの態様において、動作ピン(8,8A)、第1分離部(23)、及び第2分離部(53)は、動作ピン(8,8A)の移動方向において、この順に並んでいる。
【0175】
この態様によれば、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。また、内部空間(90)で発生したアークの消弧を促進することが可能となる。
【0176】
第6の態様の遮断装置(1,1A~1D)では、第5の態様において、第1分離部(23)が分離を開始するとき、第2導電体(5)における2つの第2端子部(51,52)間は導通している。
【0177】
この態様によれば、2つの第1端子部(21,22)間の電路が遮断される際に、2つの第1端子部(21,22)間に流れている電流の大きさを小さくすることができ、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。
【0178】
第7の態様の遮断装置(1,1A~1D)では、第1~第6のいずれか1つの態様において、第2導電体(5)の2つの第2端子部(51,52)は、第1導電体(2)に接続される第1端(510)及び第2端(520)をそれぞれ有する。動作ピン(8,8A)により第1分離部(23)が分離される前において、第1導電体(2)における第1端(510)に接続される部位と第2端(520)に接続される部位との間の部分(第1経路)の電気抵抗は、第2導電体(5)における第1端(510)と第2端(520)との間の部分(第2経路)の電気抵抗より小さい。
【0179】
この態様によれば、2つの第1端子部(21,22)間の電路が遮断される際に、2つの第1端子部(21,22)間に流れている電流の大きさを小さくすることができ、内部空間(90)内でのアークの発生を抑制することが可能となる。
【0180】
第8の態様の遮断装置(1,1A~1D)は、第1~第7のいずれか1つの態様において、規制体(第1規制体41~第4規制体44)を備える。規制体は、内部空間(90)を区分する。規制体は、第1導電体(2)及び第2導電体(5)とは別体に設けられる。規制体は、動作ピン(8,8A)の移動方向における冷却体(3)の移動を制限する。
【0181】
この態様によれば、冷却体(3)を所望の位置に保持しやすくなる。そのため、遮断装置(1,1A~1D)の取り扱い性が向上する。
【0182】
第9の態様の遮断装置(1,1A~1C)では、第1~第8のいずれか1つの態様において、冷却体(3)は、複数の粒子(300)を有する。
【0183】
この態様によれば、冷却体(3)の表面積を大きくすることができ、冷却体(3)にアークが接触しやすくなり、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0184】
第10の態様の遮断装置(1D)では、第1~第9のいずれか1つの態様において、冷却体(3)は、多孔質体を有する。
【0185】
この態様によれば、冷却体(3)の表面積を大きくすることができ、冷却体(3)にアークが接触しやすくなり、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0186】
第11の態様の遮断装置(1D)では、第1~第10のいずれか1つの態様において、冷却体(3)は、繊維状部材(301)を有する。
【0187】
この態様によれば、冷却体(3)の表面積を大きくすることができ、冷却体(3)にアークが接触しやすくなり、アークの消弧を促進することが可能となる。また、冷却体(3)の変形(圧縮)が容易となる。
【符号の説明】
【0188】
1,1A~1D 遮断装置
2 第1導電体
21 第1端子部
22 第1端子部
23 第1分離部
3 冷却体
31 第1冷却体
32 第2冷却体
33 第3冷却体
300 粒子
301 繊維状部材
41 第1規制体(規制体)
42 第2規制体(規制体)
43 第3規制体(規制体)
44 第4規制体(規制体)
5 第2導電体
51 第2端子部
52 第2端子部
53 第2分離部
510 第1端
520 第2端
70 ガス発生器
74 燃料
8,8A 動作ピン
9 ハウジング
90 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13