(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】電磁継電器及び電磁継電器用絶縁部材
(51)【国際特許分類】
H01H 50/00 20060101AFI20231127BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20231127BHJP
H01H 50/02 20060101ALI20231127BHJP
H01H 50/20 20060101ALI20231127BHJP
H01H 9/34 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01H50/00 D
H01H50/54 B
H01H50/02 E
H01H50/20 B
H01H9/34
(21)【出願番号】P 2022133086
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018213164の分割
【原出願日】2018-11-13
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智史
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-326530(JP,A)
【文献】特開2016-201286(JP,A)
【文献】特開2011-204473(JP,A)
【文献】特開2018-160423(JP,A)
【文献】特開2013-232341(JP,A)
【文献】特開2013-246874(JP,A)
【文献】特開2018-018781(JP,A)
【文献】特開2012-199113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00
H01H 50/54
H01H 50/02
H01H 50/20
H01H 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固定接点と、
前記第1の固定接点の
右方に位置する第2の固定接点と、
前記第1の固定接点および前記第2の固定接点に接触する可動接触子と、
前記可動接触子の下方に配置された絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、
ベースと、
前記ベースから上方に突出する第1側壁と、
前記可動接触子および前記第1の固定接点の下方に位置し、前記第1側壁と繋がる隔壁と、
前記第1側壁の左方に位置し、前記隔壁を介して前記第1側壁と繋がる第2側壁と、を有し、
前記隔壁の上面は、前記可動接触子の下面と向かい合う位置に配置されている、
電磁継電器。
【請求項2】
前記隔壁は、
前記第1側壁と繋がり、前記ベースから上方に突出する突出部と、
前記第2側壁と前記突出部とを繋ぐ接続部と、を有し、
前記接続部の下面は、前記ベースの上面よりも上方に位置する、
請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記絶縁部材は、
前記ベースから上方に突出し、前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ第3側壁と、
前記ベースから上方に突出し、前記第3側壁と向かい合う位置に配置され、前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ第4側壁と、を更に有し、
前記絶縁部材の上面視において、前記隔壁は、前記第3側壁と前記第4側壁との間に位置する、
請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第2側壁は、
前記第3側壁と繋がる第1部位と、
前記第4側壁と繋がる第2部位と、
前記第1部位と前記第2部位との間に配置され、前記隔壁と繋がる第3部位と、を有し、
前記第1部位の上面および前記第2部位の上面は、前記第1側壁の上面および前記隔壁の上面および前記第3部位の上面よりも下方に位置する、
請求項3に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記隔壁の上面は、前記第1側壁の上面および前記第3部位の上面と同じ高さに位置する、
請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記隔壁の上面は、前記第3側壁の上面および前記第4側壁の上面よりも上方に位置する、
請求項3-5のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記可動接触子の上方に位置する上壁と、前記可動接触子の下方に位置する下壁とを有するホルダと、
前記ホルダを介して前記可動接触子と機械的に結合する駆動軸と、をさらに備え、
前記可動接触子が前記第1の固定接点および前記第2の固定接点に接触していないとき、
前記上壁は、前記第1側壁の上面および前記隔壁の上面よりも上方に位置し、
前記下壁は、前記第1側壁の上面および前記隔壁の上面よりも下方に位置する、
請求項1-6のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記駆動軸が通される挿通孔を形成された継鉄と、
前記継鉄の下方に配置されたコイルと、
前記駆動軸と機械的に結合し、前記コイルによって上方または下方に移動される可動鉄心と、をさらに備え、
前記絶縁部材は、前記継鉄を覆うように前記継鉄の上方に配置されており、
前記絶縁部材の前記ベースには、前記継鉄および前記挿通孔が露出する貫通孔が形成されており、
前記絶縁部材は、前記貫通孔を囲うように形成され、前記ベースから上方に伸びる環状の壁部をさらに有し、
前記壁部の上面は、前記第1側壁の上面および前記下壁よりも下方に位置し、
前記壁部の内径は、前記下壁の外径よりも小さい、
請求項7に記載の電磁継電器。
【請求項9】
前記可動接触子は、
前記第1の固定接点に接触する第1の可動接点と、
前記第1の可動接点の右方に位置し、前記第2の固定接点に接触する第2の可動接点と、を有し、
前記第1の可動接点の左方に位置する第1の永久磁石と、
前記第2の可動接点の右方に位置する第2の永久磁石と、をさらに備える、
請求項1-8のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【請求項10】
ベースと、
前記ベースから上方に突出する第1側壁と、
前記第1側壁の左方に位置し、前記ベースから上方に突出する第2側壁と、
前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ隔壁と、を備え、
前記隔壁は、
前記第1側壁と繋がり、前記ベースから上方に突出する突出部と、
前記第2側壁と前記突出部とを繋ぐ接続部と、を有し、
前記接続部の下面は、前記ベースの上面よりも上方に位置する、
電磁継電器用絶縁部材。
【請求項11】
前記ベースから上方に突出し、前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ第3側壁と、
前記ベースから上方に突出し、前記第3側壁と向かい合う位置に配置され、前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ第4側壁と、をさらに備え、
前記第2側壁は、
前記第3側壁と繋がる第1部位と、
前記第4側壁と繋がる第2部位と、
前記第1部位と前記第2部位との間に配置され、前記隔壁と繋がる第3部位と、を有し、
前記第1側壁の上面と前記第3部位の上面と前記隔壁の上面とは、前記第3側壁の上面と前記第4側壁の上面と前記第1部位の上面と前記第2部位の上面とよりも上方に位置する、
請求項10に記載の電磁継電器用絶縁部材。
【請求項12】
前記ベースには、前記ベースを貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記隔壁の前記接続部の下方に位置する、
請求項10または11に記載の電磁継電器用絶縁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電磁継電器及び電磁継電器用絶縁部材に関し、より詳細には、ベースと、ベースから突出する第1側壁と、第1側壁と繋がる隔壁と、を有する電磁継電器用絶縁部材、及び、このような電磁継電器用絶縁部材を備える電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の電磁継電器(接点装置)は、一対の固定接点と、一対の固定接点に接離する可動接触子と、可動軸と、可動接触子が一対の固定接点に接離するように可動軸を駆動する駆動装置と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁継電器においては、可動接触子が固定接点から離れる場合に、可動接触子と固定接点との間にアークが発生することがある。このため、電磁継電器においては、消弧性能の向上を求められることがあった。
【0005】
本開示は、消弧性能を向上させることができる電磁継電器及び電磁継電器用絶縁部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電磁継電器は、第1の固定接点と、第2の固定接点と、可動接触子と、絶縁部材と、を備える。前記第2の固定接点は、前記第1の固定接点の右方に位置する。前記可動接触子は、前記第1の固定接点および前記第2の固定接点に接触する。前記絶縁部材は、前記可動接触子の下方に配置されている。前記絶縁部材は、ベースと、第1側壁と、隔壁と、第2側壁と、を有する。前記第1側壁は、前記ベースから上方に突出する。前記隔壁は、前記可動接触子および前記第1の固定接点の下方に位置し、前記第1側壁と繋がる。前記第2側壁は、前記第1側壁の左方に位置し、前記隔壁を介して前記第1側壁と繋がる。前記隔壁の上面は、前記可動接触子の下面と向かい合う位置に配置されている。
本開示の一態様に係る電磁継電器用絶縁部材は、ベースと、第1側壁と、第2側壁と、隔壁と、を備える。前記第1側壁は、前記ベースから上方に突出する。前記第2側壁は、前記第1側壁の左方に位置し、前記ベースから上方に突出する。前記隔壁は、前記第1側壁と前記第2側壁とを繋ぐ。前記隔壁は、突出部と、接続部と、を有する。前記突出部は、前記第1側壁と繋がり、前記ベースから上方に突出する。前記接続部は、前記第2側壁と前記突出部とを繋ぐ。前記接続部の下面は、前記ベースの上面よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、消弧性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電磁継電器の遮蔽部材の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の電磁継電器を正面から見た断面図である。
【
図3】
図3は、同上の電磁継電器の遮蔽部材の平面図である。
【
図4】
図4は、同上の電磁継電器を側方から見た断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態との比較例に係る電磁継電器を側方から見た断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る電磁継電器におけるアークの挙動の説明図である。
【
図7】
図7A、7Bは、一実施形態との比較例に係る電磁継電器におけるアークの挙動の説明図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の変形例1に係る電磁継電器を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る接点装置及び電磁継電器について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
電磁継電器1(
図2参照)は、例えば、電動車両等に備えられる。電磁継電器1は、例えば、電動車両の電源からモータへの電流の供給の有無を切り替える。
【0011】
図2に示すように、本実施形態の電磁継電器1は、接点装置2と、電磁石装置5とを備えている。電磁継電器1は、接点装置2及び電磁石装置5を収容するハウジング9を更に備えている。ハウジング9は、気密性を有している。
図1、2に示すように、接点装置2は、複数(
図2では2つ)の固定接点211と、可動接触子22と、遮蔽部材3と、を備えている。接点装置2は、複数(
図2では2つ)の固定端子21と、接圧ばね23と、ホルダ24と、駆動軸25と、内ケース41と、連結体42と、磁束発生部43とを更に備えている。
【0012】
以下では、各固定接点211と対応する可動接点222とが並んでいる方向を上下方向と規定し、可動接点222から見て固定接点211側を上とし、固定接点211から見て可動接点222側を下とする。また、電磁継電器1において、2つの固定接点211が並んでいる方向を左右方向と規定する。ただし、これらの方向は電磁継電器1の使用方向を限定する趣旨ではない。
【0013】
複数の固定端子21の各々は、銅等の導電性材料により形成されている。各固定端子21の形状は、円柱状である。各固定端子21は、内ケース41に形成された貫通孔411に挿入されている。さらに、各固定端子21は、ハウジング9に形成された貫通孔911に挿入されている。各固定端子21は、その上端を内ケース41の上面及びハウジング9の上面から突出させた状態で内ケース41にろう付けによって接合されている。
【0014】
複数の固定端子21は、複数の固定接点211と一対一で対応する。各固定端子21の下端には、対応する固定接点211が取り付けられている。なお、各固定接点211は、固定端子21と一体に形成されていてもよい。
【0015】
可動接触子22は、平板状に形成されている。可動接触子22は、第1方向D1(上下方向)に移動する。可動接触子22は、第1方向D1と直交する第2方向D2(左右方向)に沿って延在する。すなわち、可動接触子22の長手方向は、左右方向に沿っている。可動接触子22は、複数(
図2では2つ)の可動接点222を有している。複数の可動接点222は、可動接触子22の上面のうち、左右方向の両端部分に設けられている。複数の可動接点222は、複数の固定接点211と一対一で対応する。各可動接点222は、対応する固定接点211に対向している。本実施形態では、複数の可動接点222は、可動接触子22のうち複数の可動接点222以外の部位と一体であるが、別体であってもよい。
【0016】
各可動接点222は、第1方向D1(上下方向)に移動して、対応する固定接点211に接した状態と、対応する固定接点211から離れた状態とのうちいずれかの状態を成す。より詳細には、電磁石装置5により、可動接触子22を駆動する電磁気力が発生し、可動接触子22が駆動されることで、各可動接点222は、対応する固定接点211から離れた状態から、対応する固定接点211に接した状態となる。これにより、2つの固定接点211間が導通する。また、電磁石装置5が電磁気力を発生していない場合は、電磁石装置5に備えられた復帰ばね55のばね力により、各可動接点222は、対応する固定接点211から離れた状態となる。これにより、2つの固定接点211間が導通していない状態となる。
【0017】
各固定接点211と対応する可動接点222とが互いに対向している方向は、可動接触子22及び可動接触子22の各可動接点222が移動する方向である第1方向D1に一致する。
【0018】
ホルダ24は、上壁241と、下壁242とを有している。上壁241と下壁242とは、上下方向において互いに対向している。上壁241と下壁242との間には、可動接触子22が通されている。
【0019】
接圧ばね23は、例えば、圧縮コイルばねである。接圧ばね23は、伸縮方向を上下方向に向けた状態で、ホルダ24の下壁242と可動接触子22との間に配置されている。接圧ばね23は、上向きのばね力を可動接触子22に加える。すなわち、接圧ばね23は、複数の固定接点211に近づく向きのばね力を可動接触子22に加える。
【0020】
駆動軸25の形状は、丸棒状である。駆動軸25の軸方向は、上下方向に沿っている。駆動軸25の上端は、ホルダ24に結合されている。駆動軸25は、ホルダ24を介して、可動接触子22につながっている。駆動軸25の下端は、電磁石装置5に備えられた可動鉄心53に結合されている。電磁石装置5の状態が電磁気力を発生している状態と電磁気力を発生していない状態との間で切り替わることに伴って、駆動軸25は、上下方向に移動する。これに伴い、ホルダ24が上下方向に移動し、ホルダ24に通された可動接触子22が上下方向に移動する。すなわち、可動接触子22は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)に移動する。要するに、駆動軸25は、可動接触子22を第1方向D1に移動させる。そのため、駆動軸25は、可動接触子22を、各可動接点222が対応する固定接点211に接した状態と対応する固定接点211から離れた状態との間で移動させる。
【0021】
内ケース41は、セラミック等の耐熱性材料により形成されている。内ケース41の形状は、下面が開口した箱状である。内ケース41の上面には、左右方向に並んだ2つの貫通孔411が形成されている。内ケース41の内部の空間は、複数の固定接点211と複数の可動接点222とを収容する収容室410である。すなわち、接点装置2は、収容室410を備えている。収容室410には、水素等の消弧ガスが封入されている。なお、収容室410は、密閉されていなくともよく、外部環境とつながっていてもよい。
【0022】
連結体42の形状は、矩形枠状である。連結体42は、内ケース41にろう付けによって接合されている。さらに、連結体42は、電磁石装置5に備えられた継鉄54にろう付けによって接合されている。これにより、連結体42は、内ケース41と継鉄54とを連結している。
【0023】
遮蔽部材3は、電気絶縁性を有している。遮蔽部材3は、例えば、セラミック又は合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料により形成されている。遮蔽部材3は、収容室410に収容されている。ここで、接点装置2では、各可動接点222が対応する固定接点211に接している状態から離れた状態になるときに、可動接点222と固定接点211との間にアークが発生することがある。遮蔽部材3は、固定接点211と可動接点222との間に発生するアークを遮蔽する。遮蔽部材3の構成の詳細は後述する。
【0024】
磁束発生部43は、1対の永久磁石431を有している。1対の永久磁石431は、内ケース41の外面とハウジング9の内面との間に配置され、固定されている。1対の永久磁石431は、2つの固定接点211が並ぶ方向(第2方向D2)において2つの固定接点211の外側に配置されている。各永久磁石431は可動接触子22に対して第2方向D2に並ぶ位置に配置されている。すなわち、1対の永久磁石431は、可動接触子22の長手方向(左右方向)において可動接触子22に対向する。ここで、1対の永久磁石431が可動接触子22に対向するとは、本実施形態のように、各永久磁石431と可動接触子22との間に、内ケース41等の部材が配置されている場合を含む。1対の永久磁石431は、異極を互いに対向させている。例えば、
図2において右側の永久磁石431は、N極を左に向けており、左側の永久磁石431は、S極を右に向けている。1対の永久磁石431は、各固定接点211と対応する可動接点222との間において、第2方向D2に向く磁束を発生させる。第2方向D2に向く磁束は、各固定接点211又は各可動接点222の周囲に存在することが好ましい。
【0025】
電磁継電器1は、1対の架橋部44を更に備えている。1対の架橋部44は、磁性材料により形成されている。1対の架橋部44のうち一方は、可動接触子22から見て
図2の紙面手前側に配置されており、他方は、可動接触子22から見て
図2の紙面奥側に配置されている。1対の架橋部44は、1対の永久磁石431の間を架け渡すように配置されている。
【0026】
電磁石装置5は、励磁コイル51と、コイルボビン52と、可動鉄心53と、継鉄54と、復帰ばね55と、円筒部材56と、ブッシュ57とを備えている。また、電磁石装置5は、励磁コイル51の両端が接続される一対のコイル端子を備えている。各コイル端子は、銅等の導電性材料により形成され、半田等によってリード線と接続される。
【0027】
コイルボビン52は、樹脂等を材料として形成されている。コイルボビン52は、2つの鍔部521、522と、円筒部523とを有している。円筒部523には、励磁コイル51が巻かれている。鍔部521は、円筒部523の上端から、円筒部523の径方向における外向きに延びている。鍔部521は、円筒部523の下端から、円筒部523の径方向における外向きに延びている。
【0028】
円筒部材56の形状は、上端が開口した有底円筒状である。円筒部材56は、コイルボビン52の円筒部523に収容されている。
【0029】
可動鉄心53は、磁性材料により形成されている。可動鉄心53の形状は、円筒状である。可動鉄心53は、円筒部材56に収容されている。可動鉄心53の内側には、駆動軸25が通されており、可動鉄心53と駆動軸25とは連結されている。可動鉄心53には、上面から下向きに窪んだ凹部531が形成されている。
【0030】
継鉄54は、励磁コイル51の通電時に励磁コイル51で発生した磁束が通る磁気回路の少なくとも一部を形成している。継鉄54は、板状の第1の継鉄541(一の継鉄)と、板状の第2の継鉄542と、一対の板状の第3の継鉄543とを備えている。第1の継鉄541は、可動接触子22と励磁コイル51との間に配置されている。第1の継鉄541は、コイルボビン52の上面に接している。第2の継鉄542は、コイルボビン52の下面に接している。一対の第3の継鉄543は、第2の継鉄542の左右両端から第1の継鉄541へ延びている。第1の継鉄541の形状は、矩形板状である。第1の継鉄541の略中央には、挿通孔544が形成されている。挿通孔544には、駆動軸25が通されている。
【0031】
復帰ばね55は、例えば、圧縮コイルばねである。復帰ばね55の伸縮方向(上下方向)の第1端は、第1の継鉄541に接しており、第2端は、可動鉄心53の凹部531の底面に接している。復帰ばね55は、可動鉄心53にばね力を加えて可動鉄心53を下向きに移動させる。
【0032】
ブッシュ57は、磁性材料により形成されている。ブッシュ57の形状は、円筒状である。ブッシュ57は、コイルボビン52の内周面と円筒部材56の外周面との間に配置されている。ブッシュ57は、第1~3の継鉄541~543及び可動鉄心53とともに、励磁コイル51の通電時に発生する磁束が通る磁気回路を形成している。
【0033】
励磁コイル51が通電されると、励磁コイル51で発生する磁束が上記磁気回路を通るので、上記磁気回路の磁気抵抗が小さくなるように可動鉄心53が移動する。具体的には、励磁コイル51の通電時に、上記磁気回路のうち第1の継鉄541と可動鉄心53の上端との間のギャップを埋めるように、可動鉄心53が上向きに移動する。より詳細には、可動鉄心53を上向きに移動させようとする電磁気力は、復帰ばね55が可動鉄心53を下向きに押す力(ばね力)を上回るので、可動鉄心53が上向きに移動する。その結果、可動接触子22が上向きに移動し、各可動接点222は、対応する固定接点211に接した状態となる。すなわち、可動接触子22は、ホルダ24、駆動軸25及び可動鉄心53と一緒に、
図2における位置よりも上へ移動する。
【0034】
励磁コイル51が通電された状態から、通電されていない状態になると、可動鉄心53を上向きに移動させる電磁気力が消滅するので、可動鉄心53は、復帰ばね55のばね力により下向きに移動する。その結果、可動接触子22が下向きに移動し、各可動接点222は、対応する固定接点211から離れた状態となる(
図2に示す位置)。
【0035】
次に、遮蔽部材3について詳細に説明する。
【0036】
図1に示すように、遮蔽部材3は、ベース31と、複数(
図1では2つ)の側壁32と、複数(
図1では2つ)の隔壁33とを有している。また、接点装置2は、壁部34を備えている。壁部34は、遮蔽部材3と一体に形成されている。
【0037】
ベース31の形状は、矩形板状である。ベース31の長手方向は、可動接触子22の長手方向(左右方向)に沿っている。ベース31の厚さ方向は、第1方向D1(上下方向)に沿っている。ここで、可動接触子22の長手方向は、第2方向D2に沿っている。つまり、可動接触子22は第2方向D2に延在している。第2方向D2は、第1方向D1に対して直交する。ベース31の厚さ方向は、第1の継鉄541(
図2参照)の厚さ方向に沿っており、ベース31は、第1の継鉄541に接している。ベース31(カバー)は、第1の継鉄541と可動接触子22との間に配置されており、第1の継鉄541を覆っている。また、ベース31は、電気絶縁性を有している。
【0038】
複数(2つ)の側壁32は、ベース31の一の面310(上面)からベース31の厚さ方向に突出している。側壁32の形状は、筒状である。側壁32の下側の開口の一部は、板状の底壁315(後述する)により覆われている。一方の側壁32は、ベース31の長手方向の一方側(左側)に設けられており、他方の側壁32は、ベース31の長手方向の他方側(右側)に設けられている。
【0039】
筒状の壁部34の軸方向は、ベース31の厚さ方向に沿っている。壁部34は、2つの側壁32の間に配置されている。壁部34とベース31とを貫通して形成された貫通孔341には、駆動軸25(
図2参照)が通されている。
【0040】
以下では、特に断りの無い限り、2つの側壁32のうち一方の側壁32に着目して説明するが、他方の側壁32も同様の構成を有している。
【0041】
側壁32は、第1側壁321と、第2側壁322と、第3側壁323と、第4側壁324とを含む。第1側壁321と第3側壁323とは、互いに対向している。第2側壁322と第4側壁324とは、互いに対向している。第2側壁322及び第4側壁324は、第1側壁321と第3側壁323とをつないでいる。ベース31の厚さ方向から見て、側壁32の形状は、第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324を四辺とする長方形状である。
【0042】
側壁32は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)に延在している。具体的には、側壁32は第1方向D1に沿った面を有している。より詳細には、第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324の各々において、厚さ方向における両側の面が第1方向D1に沿っている。
【0043】
側壁32の内部の空間(つまり、第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324で囲まれる空間)は、固定接点211と可動接点222との間で発生したアークが進入可能に設けられた遮蔽室である。すなわち、遮蔽室は、アークが伸張可能な伸張空間320である。隔壁33、第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324はそれぞれ、アークを遮蔽する遮蔽壁35の一部であり伸張空間320に面している。遮蔽壁35は、収容室410の内部に配置されている。収容室410の内部において、側壁32の第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324は、伸張空間320を囲んでいる。第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324は、伸張空間の内部と外部との境界を形成する。アークは、伸張空間320に向かって引き延ばされることで、アーク電圧が高まる。アーク電圧が高まることにより、アークがエネルギーを放出しやすくなり、アークが消弧されるまでに要する時間が短縮される。また、接点装置2において遮断可能な電流及び電圧の大きさが大きくなる。
【0044】
接点装置2において、側壁32は2つ備えられているので、伸張空間320も2つ備えられている。2つの伸張空間320は、2つの固定接点211と一対一で対応し、2つの可動接点222と一対一で対応する。以下では、特に断りの無い限り、2つの伸張空間320のうち一方と、この一方の伸張空間320に対応する固定接点211及び可動接点222との関係について説明する。ただし、他方の伸張空間320と、この他方の伸張空間320に対応する固定接点211及び可動接点222との関係も同様である。
【0045】
伸張空間320は、固定接点211と可動接点222とが互いに対向している方向(第1方向D1)において、固定接点211と可動接点222とのうち一方の接点に対向する位置に設けられている。伸張空間320は、固定接点211と可動接点222とのうち一方の接点(ここでは、可動接点222)に対して、他方の接点(ここでは、固定接点211)が位置する側とは反対側の領域に設けられている。
図3に、上下方向(第1方向D1:
図2参照)を法線とする投影面P1に固定接点211を投影した状態を図示する。伸張空間320は、投影面P1と重なる位置に設けられている。
【0046】
隔壁33は、電気絶縁性を有している。隔壁33は、板状である。隔壁33は、伸張空間320に配置され、伸張空間320を複数の空間(第1の空間SP1及び第2の空間SP2)に分割している。隔壁33はアークを遮蔽する遮蔽壁35の一部である。隔壁33は、伸張空間320の中心に配置されている。隔壁33は、投影面P1と重なる位置に配置されている。つまり、隔壁33は、第1方向D1から見て、固定接点211と重なる位置に配置されている。遮蔽壁35及び遮蔽壁35の隔壁33は、固定接点211と可動接点222とのうち一方の接点(ここでは、可動接点222)に対して、他方の接点(ここでは、固定接点211)が位置する側(可動接点222の上側)とは反対側(可動接点222の下側)の領域に配置されている。
【0047】
より詳細には、隔壁33は、可動接触子22の下側に配置されている。隔壁33は、第1側壁321と第3側壁323とを架け渡すように形成されている。つまり、隔壁33は第1方向D1から見て、第2方向D2に沿って延在している。さらに、隔壁33は、ベース31につながっている。隔壁33の厚さ方向は、第3方向D3に沿っている。第3方向D3は、第1方向D1と第2方向D2とに対して直交する方向である。隔壁33は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)に沿った面331を有している。隔壁33は、第2方向D2から見て、第3方向D3において収容室410の内部の第1の空間SP1と第2の空間SP2との間を区分する。より詳細には、隔壁33は、伸張空間320を2つの空間に分割している。つまり、隔壁33は、伸張空間320を、隔壁33と第2側壁322との間の第1の空間SP1と、隔壁33と第4側壁324との間の第2の空間SP2とに分割している(
図1参照)。そのため、伸張空間320は、第1の空間SP1と第2の空間SP2とを含んでいる。第1の空間SP1と第2の空間SP2とのうちの少なくとも一方は、アークが伸張可能な伸張空間320の少なくとも一部である。
【0048】
隔壁33には、第1方向D1と交差する方向に隔壁33を貫通する貫通孔332が形成されている。具体的には、貫通孔332は、第1方向D1と直交する第3方向D3に隔壁33を貫通している。第1の空間SP1と第2の空間SP2とは、貫通孔332によりつながっている。隔壁33は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)における第1端337(上端)と第2端338(下端)とを有している。隔壁33において、貫通孔332は、第1端337と第2端338とのうち、固定接点211からより遠い側である第2端338に形成されている。
【0049】
遮蔽部材3において、側壁32と、底壁315とは、伸張空間320の外壁を構成している。底壁315は、ベース31の一部である。側壁32及び底壁315により、収容室410(
図4参照)は、伸張空間320と、伸張空間320に隣接する外部の空間とに区分されている。底壁315は、第1方向D1において伸張空間320に面している。つまり、底壁315は第1の空間SP1と第2の空間SP2とに面している。底壁315は、筒状の側壁32の下側の開口を覆っている。底壁315の厚さ方向は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)に沿っている。
【0050】
伸張空間320は、可動接点222と底壁315との間の空間である。隔壁33は、伸張空間320に配置されている。すなわち、遮蔽壁35の隔壁33は、第2方向D2から見て、可動接点222と底壁315との間に配置されている。底壁315と遮蔽壁35とは、つながっている。遮蔽壁35の隔壁33は、底壁315から厚さ方向(上向き)に突出している。遮蔽壁35の側壁32は、底壁315の周縁から底壁315の厚さ方向(上向き)に突出している。すなわち、側壁32は、底壁315の周縁から、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)に突出している。
【0051】
底壁315には、通過孔316が形成されている。通過孔316は、底壁315を第1方向D1(底壁315の厚さ方向)に貫通する貫通孔である。通過孔316は、底壁315のうち、第1方向D1から見て隔壁33と重なる位置に設けられている。底壁315における通過孔316は、遮蔽壁35の隔壁33における貫通孔332とつながっている。通過孔316は、第1の継鉄541(
図2参照)により覆われている。
【0052】
通過孔316は、伸張空間320の第1の空間SP1及び第2の空間SP2に跨る位置に形成されている。したがって、第1の空間SP1及び第2の空間SP2は、通過孔316を通してつながっている。上述の通り、通過孔316は、第1の継鉄541(
図2参照)により覆われている。しかしながら、通過孔316により、少なくとも底壁315の厚さ分の空間が第1の空間SP1と第2の空間SP2との間に形成される。このため、通過孔316は、第1の空間SP1と第2の空間SP2との間の気体の移動に寄与している。
【0053】
側壁32の第1側壁321には、複数(
図1では2つ)の貫通孔328が形成されている。第1側壁321における貫通孔328は、第1方向D1と交差する方向に貫通している。詳細には、貫通孔328は第1方向D1と直交する第2方向D2に貫通している。一方の貫通孔328は、伸張空間320の第1の空間SP1につながっており、他方の貫通孔328は、伸張空間320の第2の空間SP2につながっている。伸張空間320の第1の空間SP1及び第2の空間SP2は、複数の貫通孔328により伸張空間320の外部につながっている。より詳細には、第1の空間SP1及び第2の空間SP2は、複数の貫通孔328により、筒状の壁部34が配置された空間につながっている。
【0054】
ベース31には、複数(4つ。
図3参照)のベース孔318が形成されている。複数のベース孔318の各々は、ベース31をベース31の厚さ方向(第1方向D1)に貫通している。複数のベース孔318は、2つの側壁32の各々における2つの貫通孔328(つまり、計4つの貫通孔328)と一対一で対応している。各ベース孔318は、対応する貫通孔328とつながっている。なお、ベース31において、各ベース孔318は無くてもよい。
【0055】
壁部34は、固定接点211及び可動接点222が互いに対向している方向(第1方向D1)と直交する方向(第2方向D2)において側壁32と並んでいる。壁部34は、収容室410において駆動軸25(
図2参照)を囲んでいる。アークによって発生した気流等により異物が飛散した場合に、異物が壁部34を越えて駆動軸25側へ侵入し難いので、異物の侵入によって駆動軸25の駆動が阻害されることを抑制できる。
【0056】
図4は、固定接点211と可動接点222とが互いに対向している方向(第1方向D1)に沿った平面(以下、平面P2と称す。
図3参照)による電磁継電器1の断面図である。
図4において、仮想経路R5は、収容室410の内部の経路であって、平面P2上の経路である。仮想経路R5は、平面P2上において可動接点222の周りを回って固定接点211と可動接点222とを結んでいる。また、仮想経路R5は、固定接点211と可動接点222との間の空間の外を迂回する経路である。なお、仮想経路R5は、可動接点222ではなく固定接点211の周りを回って固定接点211と可動接点222とを結んでいてもよい。この仮想経路R5は、伸張空間320に隔壁33が配置されていない場合に、固定接点211と可動接点222との間に発生したアークが辿る経路を例示したものである。仮想経路R5は、第3方向D3における固定接点211の一端218(
図4の紙面左側の端)と、可動接点222のうち、第3方向D3において固定接点211の一端218が位置する側とは反対側の一端228(
図4の紙面右側の端)とを結んでいる。ここで、第3方向D3は、第1方向D1と第2方向D2とに対して直交する方向である。第2方向D2は、第1方向D1に沿った平面P2と交差する方向である。
【0057】
第3方向D3における固定接点211の一端218は、一例として、固定接点211の表面のうち、法線方向が左方向に沿っている領域である。つまり、第3方向D3における固定接点211の一端218は、固定接点211の表面において最も端(ここでは、左端)に位置する点のみならず、この点を含む領域に相当する。可動接点222の一端228は、一例として、可動接点222の表面のうち、法線方向が右方向に沿っている領域である。つまり、第3方向D3における可動接点222の一端228は、可動接点222の表面において最も端(ここでは、右端)に位置する点のみならず、この点を含む領域に相当する。
【0058】
隔壁33は、仮想経路R5上に配置されている。具体的には、隔壁33は、板状であり、隔壁33の厚さ方向は、第1方向D1に沿った平面P2に沿った方向(第3方向D3)である。隔壁33は、平面P2に直交する方向に延在している。
【0059】
磁束発生部43(
図2参照)の1対の永久磁石431(
図2参照)により発生する磁束は、平面P2と交差する。すなわち、1対の永久磁石431は、平面P2と交差する磁束を固定接点211の周囲に発生させる。要するに、固定接点211と可動接点222との間において、磁束の方向は第2方向D2(
図4の紙面奥行き方向)となる。1対の永久磁石431は、平面P2と交差する方向(第2方向D2)において可動接触子22に対向している。
【0060】
次に、
図4、5を参照して、収容室410において固定接点211と可動接点222との間にアークが発生した場合のアークの挙動の一例について説明する。
図4において、一点鎖線A1~A3は、それぞれ発生したアークの移動経路を仮想的に表している。同様に、
図5において、一点鎖線A5、A6は、発生したアークの移動経路を仮想的に表している。
図5は、実施形態の電磁継電器1との比較例としての電磁継電器1Qを示す図である。電磁継電器1Qは、遮蔽部材3の代わりに、隔壁33を有していない遮蔽部材3Qを備えている点で、実施形態の電磁継電器1と相違する。
【0061】
図4において、アークは、ローレンツ力により移動する。すなわち、磁束発生部43(
図2参照)の1対の永久磁石431(
図2参照)により発生する磁束は、第2方向D2に沿っている。そして、アークにおける電流の向きはおおよそ第1方向D1に沿っているため、第1方向D1に延びるアークには、第1方向D1及び第2方向D2と直交する第3方向D3(
図4では紙面左向き)のローレンツ力が作用する。
【0062】
アークは、ローレンツ力により引き延ばされる。
図4に示す白抜きの矢印は、アークが引き延ばされる過程を表している。すなわち、発生したアークは、収容室410の内部において、一点鎖線A1で示す位置から、一点鎖線A2で示す位置を経由して、一点鎖線A3で示す位置へと引き延ばされる。このように引き延ばされることで、アークは、伸張空間320に到達する。
【0063】
ここで、伸張空間320には、隔壁33が配置されているため、アークは隔壁33を越えて第1の空間SP1から第2の空間SP2へと移動し難い。したがって、隔壁33が無い場合と比較して、アークが、伸張空間320のうち隔壁33の手前側(
図4の紙面左側)において引き延ばされた状態が維持される(言い換えれば、第1の空間SP1に留まる)可能性が高まる。
【0064】
仮に、
図5に示すように、伸張空間320に隔壁33が配置されていない場合は、一点鎖線A5で示すように、アークが更に引き延ばされ、可動接触子22の周囲を回る可能性がある。そして、引き延ばされたアークが、可動接点222のうち、第3方向D3において固定接点211の一端218が位置する側とは反対側の一端228に到達する可能性が高まる。アークが可動接触子22の一端228に到達すると、アークは、固定接点211と可動接点222とを直線状に結ぶ位置(
図5の一点鎖線A6を参照)へと転移することがある。すなわち、一点鎖線A5で示す伸張したアークが、長さがより短いアークに戻り得る。このように比較的短いアークが発生すると、アーク電圧が下がり、消弧するために要する時間が長くなる等、電磁継電器1Qの消弧性能が低下する可能性がある。
【0065】
本実施形態の電磁継電器1では、
図4の一点鎖線A3で示すように、アークを転移させることなく引き延ばされた状態に維持しやすい。したがって、本実施形態の電磁継電器1は、比較例に係る電磁継電器1Qと比較して、消弧性能が高くなる。
【0066】
次に、
図6、7A、7Bを参照して、隔壁33に形成された貫通孔332の機能について説明する。
図6に示す電磁継電器1Rと
図7A、7Bに示す電磁継電器1Sとを対比しやすくするために、電磁継電器1R、1Sでは、遮蔽部材3R、3Sの第1側壁321R、321Sには貫通孔328(
図4参照)が形成されておらず、底壁315R、315Sには通過孔316が形成されていないこととしている。
図6に示す電磁継電器1Rにおいては、隔壁33に貫通孔332が形成されている。これに対して、
図7A、7Bに示す電磁継電器1Sにおいては、隔壁33Sに貫通孔332が形成されていない。
【0067】
図6に示す電磁継電器1Rでは、固定接点211と可動接点222との間に発生したアークが、
図6に白抜き矢印で示すように、一点鎖線A1、A2、A3で示す位置を経由して、伸張空間320の第1の空間SP1へと伸張する。ここで、アークにより収容室410内のガスの気流が生じる可能性がある。伸張空間320の第1の空間SP1で発生した気流は、矢印100に示すように、貫通孔332を通って第2の空間SP2へ流れ易くなる。そのため、アークは、第1の空間SP1で発生した気流が固定接点211側に押し戻されにくく、一点鎖線A3で示すように引き延ばされた状態が維持されやすい。
【0068】
一方で、
図7Aに示す電磁継電器1Sでは、
図6に示す電磁継電器1Rと同様に、固定接点211と可動接点222との間に発生したアークが、一点鎖線A1、A2、A3で示す位置を経由して、伸張空間320の第1の空間SP1へと引き延ばされる(
図7Aの白抜き矢印参照)。ここで、アークにより気流が生じると、
図7Bに白抜き矢印で示すように、気流の圧力により、アークが固定接点211及び可動接点222が位置する側へと押し戻され、一点鎖線A7で示すようにアーク長が比較的短い状態となることがある。そのため、アークは、
図6に示す電磁継電器1Rと比較して、伸張空間320の内部において引き延ばされた状態が維持され難い。
【0069】
図4に示す本実施形態に係る電磁継電器1では、伸張空間320で発生した気流は、側壁32における複数の貫通孔328、及び、底壁315における通過孔316を通して流れ出し得る。したがって、固定接点211の付近から伸張空間320へ移動したアークが、気流により固定接点211側へ押し戻される可能性を低減できる。これにより、複数の貫通孔328及び通過孔316が無い場合よりもアークが引き延ばされやすくなるので、電磁継電器1の消弧性能が向上する。また、伸張空間320で発生した気流は、隔壁33における貫通孔332を通しても流れ出し得る。したがって、気流によりアークが固定接点211側へ押し戻される可能性を更に低減できる。
【0070】
また、本実施形態では、可動接触子22に左から右へと電流が流れる場合を想定した。可動接触子22に流れる電流の向きが本実施形態とは逆向きの場合は、アークに作用するローレンツ力の向きが逆向きになるので、アークは、
図4の紙面右側に引き延ばされることになる。この場合も、本実施形態と同様に、隔壁33によりアークの移動を制限して、アークが引き延ばされた状態を維持できる。すなわち、隔壁33によって分割された第1の空間SP1と第2の空間SP2は、アークが伸張可能な伸張空間として用いることができる。電磁継電器1は、電流の流れる方向が任意である両極性の電磁継電器として用いられ得る。ここで、遮蔽部材3の形状は、第3方向D3(
図4の紙面左右方向)において線対称である。そのため、電磁継電器1では、電流の流れる方向がいずれであっても同様の性能を発揮し得る。
【0071】
(実施形態の変形例1)
次に、実施形態の変形例1について、
図8を参照して説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本変形例の電磁継電器1A及び接点装置2Aにおいては、1対の永久磁石431の配置が実施形態とは異なる。1対の永久磁石431は、第3方向D3における可動接触子22の両側に配置されている。つまり、永久磁石431は可動接触子22に対して第3方向D3に並ぶ位置に配置されている。より詳細には、1対の永久磁石431は、内ケース41の外面とハウジング9の内面との間に配置され、固定されている。
【0073】
1対の永久磁石431は、同極を互いに対向させている。例えば、
図8において紙面右側の永久磁石431は、N極を左に向けており、紙面左側の永久磁石431は、N極を右に向けている。1対の永久磁石431は、第1方向D1に沿った平面P2(
図8の紙面と略平行な平面)と交差する磁束を固定接点211の周囲に発生させる。より詳細には、1対の永久磁石431は、可動接触子22の長手方向(
図8の紙面奥行き方向)に沿った磁束を固定接点211の周囲に発生させる。
【0074】
本変形例において、固定接点211の周囲における磁束の方向は、実施形態と同様であるから、固定接点211と可動接点222との間に発生したアークは、実施形態と同様にして引き延ばされる。
【0075】
(実施形態のその他の変形例)
次に、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、実施形態の変形例1と適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0076】
遮蔽部材3において、貫通孔332及び貫通孔328が設けられていることは必須ではない。遮蔽部材3において、伸張空間320は、少なくとも上に開放されていればよい。すなわち、伸張空間320は、少なくとも固定接点211及び可動接点222が位置する側が開放されていればよい。
【0077】
また、側壁32を貫通孔328が貫通する方向は、第2方向D2に限らず、例えば、第3方向D3であってもよい。また、第1側壁321のみに貫通孔328が形成されていることに限らず、第1側壁321、第2側壁322、第3側壁323及び第4側壁324のうち少なくとも1つに貫通孔328が形成されていてもよい。
【0078】
また、遮蔽部材3において、通過孔316が設けられていることは必須ではない。
【0079】
また、通過孔316は、電気絶縁性を有する絶縁シートにより覆われていてもよい。すなわち、遮蔽部材3と継鉄54との間に絶縁シートが挟まれていてもよい。この場合、継鉄54にアークが到達する可能性を低減できる。
【0080】
また、遮蔽部材3は、例えば金属などの導電性を有する材料を有していてもよい。つまり、遮蔽部材3の少なくとも一部が、導電性を有していてもよい。
【0081】
また、遮蔽部材3には、隔壁33に代えて、隔壁33とは異なる形状の部材が備えられていてもよい。つまり、実施形態における隔壁33の機能は伸張空間320に進入したアークの移動を制限することであり、アークの移動を制限するための部材として、隔壁33のように壁状の部材に限らず、別の形状の部材を採用可能である。例えば、隔壁33に代えて、棒状の部材が第1側壁321と第3側壁323との間を架け渡すように備えられていてもよい。
【0082】
また、遮蔽部材3には、隔壁33に代えて、伸張空間320の第2の空間SP2を上から覆うカバー部材が備えられていてもよい。この場合、第1の空間SP1に進入するアークが第2の空間SP2を通ってから、カバー部材を越えて可動接点222の一端228へと移動する可能性を低減できる。また、遮蔽部材3には、隔壁33に加えてカバー部材が備えられていてもよい。また、カバー部材には、貫通孔が形成されていてもよい。また、カバー部材は、第2の空間SP2を上から覆うことに代えて、第1の空間SP1を上から覆ってもよい。
【0083】
また、実施形態において伸張空間320は、隔壁33により第1の空間SP1と第2の空間SP2とに分割されているが、第1の空間SP1と第2の空間SP2とのうち一方は空洞ではなくてもよい。例えば、第2の空間SP2に相当する箇所に樹脂が充填されていてもよい。この場合であっても、少なくとも第1の空間SP1に進入するアークについては、アークが引き延ばされた状態が維持される可能性を高められる。
【0084】
また、接点装置2及び電磁石装置5を収容するハウジング9が気密性を有していることは必須ではない。
【0085】
また、固定接点211及び可動接点222の個数は2つに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0086】
また、永久磁石431が可動接触子22の長手方向において可動接触子22に対向する場合において、永久磁石431の個数は1つであってもよい。つまり、永久磁石431は、可動接触子22の長手方向の両端のうち一端側のみに配置されていてもよい。
【0087】
また、永久磁石431の個数は1つ又は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0088】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0089】
第1の態様に係る接点装置2(又は2A)は、固定接点211と、可動接触子22と、収容室410と、遮蔽壁35と、を備える。可動接触子22は、可動接点222を有する。可動接点222は、第1方向D1に移動して固定接点211に接した状態と固定接点211から離れた状態とのうちいずれかの状態を成す。可動接触子22は、第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って延在する。収容室410は、固定接点211と可動接点222とを収容する。遮蔽壁35は、収容室410の内部に配置されている。遮蔽壁35は、隔壁33を有する。隔壁33は、第2方向D2から見て、第3方向D3において収容室410の内部の第1の空間SP1と第2の空間SP2との間を区分する。第3方向D3は、第1方向D1と第2方向D2とに直交する。隔壁33は、固定接点211と可動接点222とのうち一方の接点(可動接点222)に対して、他方の接点(固定接点211)が位置する側とは反対側の領域に配置されている。
【0090】
上記の構成によれば、固定接点211と可動接点222との間に発生するアークが伸張した場合に、アークの伸張を隔壁33によって遮ることができる。したがって、伸張したアークが、より短い長さのアークに戻る可能性を低減できる。その結果、アークの長さが長い状態を維持できる可能性が高まる。これにより、アーク電圧が比較的大きい状態を維持できるので、接点装置2(又は2A)の消弧性能が向上する。
【0091】
また、第2の態様に係る接点装置2(又は2A)では、第1の態様において、隔壁33は、第1方向D1から見て、第2方向D2に沿って延在する。
【0092】
上記の構成によれば、隔壁33のうち、第2方向D2に沿った部位により、アークを遮ることができる。
【0093】
また、第3の態様に係る接点装置2(又は2A)は、第1又は2の態様において、第1の空間SP1と第2の空間SP2とのうち少なくとも一方は、アークが伸張可能な伸張空間320の少なくとも一部である。
【0094】
上記の構成によれば、伸張空間320へと移動したアークを隔壁33により遮ることができる。
【0095】
また、第4の態様に係る接点装置2(又は2A)は、第3の態様において、底壁315を更に備える。底壁315は、第1方向D1において伸張空間320に面する。隔壁33は、第2方向D2から見て、底壁315と上記一方の接点(可動接点222)との間に配置されている。
【0096】
上記の構成によれば、アークは底壁315を越えて移動し難いので、伸張空間320へと移動したアークが伸張空間320の外部へ広がる可能性を低減できる。
【0097】
また、第5の態様に係る接点装置2(又は2A)では、第4の態様において、遮蔽壁35は、側壁32を有する。側壁32は、底壁315の周縁から第1方向D1に突出している。
【0098】
上記の構成によれば、アークは側壁32を越えて移動し難いので、伸張空間320へと移動したアークが伸張空間320の外部へ広がる可能性を低減できる。
【0099】
また、第6の態様に係る接点装置2(又は2A)は、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、駆動軸25と、壁部34と、を更に備える。駆動軸25は、可動接触子22を第1方向D1に移動させる。壁部34は、筒状である。壁部34は、収容室410において駆動軸25を囲む。
【0100】
上記の構成によれば、アークによって発生した気流等により異物が飛散した場合に、異物が壁部34を越えて駆動軸25側へ侵入し難いので、異物の侵入によって駆動軸25の駆動が阻害されることを抑制できる。
【0101】
また、第7の態様に係る接点装置2(又は2A)では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、上記一方の接点は可動接点222である。
【0102】
上記の構成によれば、可動接点222を基準として固定接点211が位置する側とは反対側へ移動するアークを隔壁33により遮ることができる。
【0103】
また、第8の態様に係る接点装置2(又は2A)は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、永久磁石431を更に備える。永久磁石431は、固定接点211と可動接点222との間において第2方向D2に向く磁束を発生させる。
【0104】
上記の構成によれば、永久磁石431により発生するローレンツ力により、アークを引き延ばすことができる。
【0105】
また、第9の態様に係る接点装置2では、第8の態様において、永久磁石431は、可動接触子22に対して第2方向D2に並ぶ位置に配置されている。
【0106】
上記の構成によれば、可動接触子22の周りに第2方向D2に沿った磁束を発生させ、この磁束により発生するローレンツ力をアークに作用させてアークを引き延ばすことができる。
【0107】
また、第10の態様に係る接点装置2Aでは、第8の態様において、永久磁石431は、可動接触子22に対して第3方向D3に並ぶ位置に配置されている。
【0108】
上記の構成によれば、可動接触子22の周りに第2方向D2に沿った磁束を発生させ、この磁束により発生するローレンツ力をアークに作用させてアークを引き延ばすことができる。
【0109】
また、第11の態様に係る接点装置2(又は2A)では、第1~10の態様のいずれか1つにおいて、隔壁33は、電気絶縁性を有する。
【0110】
上記の構成によれば、隔壁33が電気伝導性を有する場合と比較して、隔壁33では、アークを遮る性能が高まる。
【0111】
また、第12の態様に係る接点装置2(又は2A)では、第1~11の態様のいずれか1つにおいて、隔壁33は、第1方向D1から見て、固定接点211と重なる位置に配置されている。
【0112】
上記の構成によれば、第1方向D1から見て、アークが隔壁33に向かって或る向きに移動する場合と、アークが隔壁33に向かって上記或る向きとは反対向きに移動する場合との両方の場合に、アークを隔壁33により遮ることができる。
【0113】
また、第13の態様に係る接点装置2(又は2A)は、第1~12の態様のいずれか1つにおいて、固定接点211を2つ備える。可動接触子22は、可動接点222を2つ有する。2つの可動接点222は、2つの固定接点211に対向する。
【0114】
上記の構成によれば、2点切りタイプの接点装置2(又は2A)を構成できる。
【0115】
第1の態様以外の構成については、接点装置2(又は2A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0116】
また、第14の態様に係る電磁継電器1(又は1A)は、第1~13の態様のいずれか1つに係る接点装置2(又は2A)と、電磁石装置5と、を備える。電磁石装置5は、励磁コイル51を有する。
【0117】
上記の構成によれば、固定接点211と可動接点222との間に発生するアークが伸張した場合に、アークの伸張を隔壁33によって遮ることができる。したがって、伸張したアークが、より短い長さのアークに戻る可能性を低減できる。その結果、アークの長さが長い状態を維持できる可能性が高まる。これにより、アーク電圧が比較的大きい状態を維持できるので、電磁継電器1(又は1A)における接点装置2(又は2A)の消弧性能が向上する。
【0118】
また、第15の態様に係る電磁継電器1(又は1A)では、第14の態様において、電磁石装置5は、継鉄54を有する。継鉄54には、励磁コイル51で発生した磁束が通る。継鉄54は、一の継鉄(第1の継鉄541)を含む。一の継鉄は、可動接触子22と励磁コイル51との間に配置されている。接点装置2(又は2A)は、カバー(ベース31)を備える。カバーは、一の継鉄と可動接触子22との間に配置されており一の継鉄を覆う。カバーは、電気絶縁性を有する。
【0119】
上記の構成によれば、アークはカバー(ベース31)を越えて移動し難いので、継鉄54をアークから保護できる。
【0120】
第14の態様以外の構成については、電磁継電器1(又は1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0121】
1、1A 電磁継電器
2、2A 接点装置
22 可動接触子
25 駆動軸
211 固定接点
222 可動接点
31 ベース(カバー)
32 側壁
33 隔壁
34 壁部
35 遮蔽壁
315 底壁
320 伸張空間
410 収容室
431 永久磁石
5 電磁石装置
51 励磁コイル
54 継鉄
541 第1の継鉄(一の継鉄)
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
SP1 第1の空間
SP2 第2の空間