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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】スノードーム
(51)【国際特許分類】
   A63H 23/08 20060101AFI20231127BHJP
   A63H 23/10 20060101ALI20231127BHJP
   A63H 15/00 20060101ALI20231127BHJP
   A63H 33/22 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A63H23/08 B
A63H23/10 A
A63H15/00 Z
A63H33/22 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019099765
(22)【出願日】2019-05-11
(65)【公開番号】P2020185349
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521563194
【氏名又は名称】I-sonat株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一男
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013360(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207011(JP,U)
【文献】登録実用新案第3047748(JP,U)
【文献】ポケデン スノービン,子供の科学,2016年11月10日
【文献】月刊トイジャーナル ToyJournal,月刊トイジャーナル ToyJournal,2016年11月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 23/00-23/16
A63H 15/00-15/08
A63H 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記ドームの前記口の内側に、前記ドームの内壁面から前記口に掛けて傾斜部が設けられている、請求項1に記載のスノードーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスノードームの組み立てに於いて、ドームを密閉するに際し、ドームを満たす液体中に空気が入り込み難いようにした、スノードームに関する。
【背景技術】
【0002】
スノードーム(スノーグローブとも呼ぶ)は19世紀のヨーロッパを発祥として米国で一般化した。スノードームの構造は、主にガラス製の透明な容器をドーム状や球状に形成して、内部に風景などのミニチュアを配し雪に見立てた粉末を納めた後に、スノードームの底部に設けた注入口からグリセリンや水などの透明な液体を注入して満たし、注入口に栓をしたものである。このように構成されたスノードームを手に持って逆さまにしたりすることで、風景に雪を降らせて遊ぶことが出来る。このミニチュアとしてはエッフェル塔や摩天楼などのご当地の風物が用いられるため、土産物としての需要が多い。
【0003】
実用新案登録第3171324号のスノードーム型カレンダー(1)の考案は、上部を半球形に形成したドーム型の透明容器(2)に透明な液体(3)を充填し、液体(3)の内部に微小な装飾片(4)を多数収容すると共に、透明容器(2)の底部(2a)に設けた開口部(8)から上方へ向けて、透明容器(2)内の液体(3)から隔絶された状態で所定幅のスリット(5)を形成する枠部材(5a)を設け、スリット(5)にカレンダー等の表示片(6)を交換可能に挿入すると共に、透明容器(2)の底部(2a)を受ける受台(7)によってスリット(5)の開口部(8)を閉じるようにした。なお透明容器(2)への液体(3)の充填は底部(2a)に設けた注入口(9)から行われ、充填した後の透明容器(2)の密閉は注入口(9)を栓部材(10)で閉じることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3171324号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに実用新案登録第3171324号のスノードーム型カレンダーは良く設計されている。しかしながら欠点もある。上述したように透明容器(2)への液体(3)の充填は底部(2a)に設けた注入口(9)から行われ、また充填した後の透明容器(2)の密閉は注入口(9)を栓部材(10)で閉じることで行われる。ところがこの注入口(9)と栓部材(10)との構成によれば慎重に作業しても注入口(9)に栓部材(10)を嵌め合わせる段階で透明容器(2)の液体(3)の中に気泡が紛れ込むことが多い。泡が入っていると、スノードームを手に持って逆さまにしたりする時に、どうしても泡が気になってしまうし、製品としての完成度も問われてしまう。
【0006】
そこで当発明者は閉栓の作業が楽にスピーディーに行えて、気泡が入り込みにくくなるような構成手段はないものかと思考した。すなわちこの発明は気泡が入り込みにくいようなスノードームの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明では、ドームと、該ドームに設けられた液体注入用の口と、該口を閉じて前記ドームを密閉するための栓とを備え、前記口は口の外側を取り囲む第1の壁を有すると共に、この第1の壁の外側を取り囲む第2の壁を有し、この第2の壁は前記第1の壁と同じ高さか前記第1の壁よりも高く設けられていることを特徴とする、スノードームとした。
【0008】
本発明によれば、液体注入用の口がその外側を取り囲む第1の壁と更にその外側を取り囲む第2の壁とを有すると共に、第2の壁が第1の壁と同じ高さでまたは第2の壁が第1の壁よりも高く設けらており、液体注入用の口を閉じる栓は第1の壁に囲まれた口に栓をするように構成されている。そこでこの口からドームの中に液体を注入する時に、液体を第1の壁から溢れ出させて第2の壁の中に入れ、第1の壁が液体に沈むようにするのである。このことが可能なのは第1の壁の外側を取り囲む第2の壁があることによる。
【0009】
第2の壁が第1の壁と同じ高さに設けられている場合では、第2の壁の高さいっぱいに液体を入れると、液体はその表面張力で盛り上がるので、第1の壁は液体の中に沈むようになる。第2の壁が第1の壁よりも高く設けらている場合では、第1の壁が沈むようにして第2の壁の中に液体を入れることが出来る。その何れの場合であっても第1の壁が液体の中に沈むようになる。従って第1の壁に囲まれた液体注入用の口に栓をする時に、この栓は第2の壁の液体の中に入ってから液体注入用の口を閉じるようになる。この栓が液体注入用の口に到達する前に第2の壁の中の液体に入り込むようになる。すなわち従来のように栓がいきなり液体注入用の口を閉じる場合ではこの栓が空気や気泡を捲き込みやすいのであるが、これに対して本発明によれば、この栓が空気や気泡を捲き込んで液体注入用の口を閉じるようなことは極めて起こりづらいものとなっている。
【0010】
なお本発明の実施に際しては、好適には第2の壁を第1の壁よりも高く設けるようにする。このようにすればこの栓にまつわる空気の影響を、第2の壁の中の液中で十分に除外することが可能になり、作業に余裕が生まれる。
【0011】
さて、前記ドームが底部を有して、この底部に前記口と前記第1の壁とが設けられており、前記底部の外周部に前記第2の壁が設けられているものとしても良い。上述した第1の壁と第2の壁とで二重に囲われた液体注入用の口は、ドームのどの位置に設けても良い分けである。しかしながら内部に風景などのミニチュアが配されていてこれを鑑賞するものであったり、スノードームを手に持って逆さまにしたりすることで、風景に雪を降らせて遊ぶものであったりすることから、上記の栓は目立たないように設けられていることが好ましい。そこでドームに底部を設定してここに液体注入用の口を設けるのである。
【0012】
また本発明の原理上は、第2の壁は第1の壁の近くになくてはならないと言うものではないから、底部の外周部に第2の壁を設けるようにしても良い。更に平らな底部と言うものを設定することが可能である。すなわちこの平らな底部の外周部に第2の壁を設けるようにするのである。
【0013】
次に、前記ドームの前記口の内側に、前記ドームの内壁面から前記口に掛けて傾斜部が設けられているものとしても良い。液体注入用の口からドームの中に液体を注入するわけであるが、この際に注入する液体と交換する形でドーム内の空気を円滑に口から出すようにすることが重要である。傾斜部にはこの時の空気の出を促進する作用がある。
【0014】
なお上述した動的に雪を降らせることを楽しむいわゆるスノードームでなくとも本発明を適用することが可能である。例えば水中花を液体中に配した静的なるドームや、比重が異なる幾種類かの色水を封入して、ドームを傾けることで色水が混ざり合うものの、静かに放置しておくことで色の層に分かれるような動的なドームや、水圧を変化させ得る機構を備え、水圧の脈動的な変化により模型の魚の鰭を動作させて、魚が恰も自然に泳いでいるかのように見せる水槽など、任意のドームに適用することが可能である。またこれ等のドームに照明器具を組み合わせたりすることなども、任意設計事項である。すなわちこれ等は本発明の権利範囲内にある。
【発明の効果】
【0015】
以上本発明は、ドームに設けられた液体注入用の口と、該口を閉じて前記ドームを密閉するための栓とを備え、前記口は口の外側を取り囲む第1の壁を有すると共にこの第1の壁の外側を取り囲む第2の壁を有し、この第2の壁は前記第1の壁と同じ高さか前記第1の壁よりも高く設けられているドームとし、液体注入用の口からドームの中に液体を注入する時に、液体を第1の壁から第2の壁の中に溢れ出させて、第1の壁が液体に沈むようにした。この構成により、液体注入用の口に栓をする時に、栓が液体注入用の口に到達する前に第2の壁の中の液体に浸かるようになるため、この栓が空気や気泡を捲き込み液体注入用の口を閉じるような問題が、極めて起こりづらいと言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】 実施例1を断面図で表した説明図である。
図2】 同実施例の使用状態を表した説明図である。
図3】 実施例2の使用状態を表した説明図である。
図4】 実施例3の使用状態を表した説明図である。
図5】 実施例4の使用状態を表した説明図である。
図6】 実施例5の使用状態を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では本発明の実施例5種を図面に基づいて説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内で工夫される種々変形例もまた本発明の権利範囲に含まれるものである。
【実施例1】
【0018】
図1及び図2で本実施例のスノ―ドームを表す。透明な合成樹脂製のドーム1は底10を有する。この底10には栓2で密閉することが出来る口12が設けられている。この口12の周りには底10の外側に向かって第1の壁11が設けられている。また口12に栓2をする際に栓2の邪魔にならないようにして、第1の壁11の回りに第1の壁11よりも高さの高い第2の壁13が底10の外側に向かうように設けられている。この第2の壁13の内側は口14となっている。なお図1ではドーム1の中身は空気である。
【0019】
本実施例の使用法であるが、図2のように底10を上にして口12からドーム1内に水3を注入する。この際にはドーム1内に空気や気泡を残さないようにすることが肝心である。この水3の注入は、水3が第1の壁11から溢れて第2の壁13内に達するまで行う点が従来と大きく異なる点である。この時までにドーム1内にも第2の壁13内にも気泡が残らないようにする。図中で符号30は第2の壁13内の水を指している。次は栓2の出番である。
【0020】
そこで栓2を口12に近づけて行くと、栓2は最初に第2の壁13内の水30に触れるが、この時に栓2を操って栓2の先に気泡が残っていないようにするのが肝心であるが、これが出来るのは本発明ならではである。このようにしてドーム1内に気泡が残らずまた栓2にも気泡が付着していない状態で、栓2を進めて第1の壁11の口12に栓2をするのである。なお第1の壁11と第2の壁13の高さを同じにする構成が可能であることは上述した通りである。
【実施例2】
【0021】
図3の本実施例のスノードームが実施例1のスノードームと異なる点は、本実施例では実施例1の第2の壁13の代わりを第2の壁43に担わせている点である。透明な合成樹脂製のドーム4は底40を有する。この底40には栓20で密閉することが出来る口42が設けられている。この口42の周りには底40の外側に向かって第1の壁41が設けられている。また第1の壁41よりも高さの高い第2の壁43が、ドーム4の延設部分として底40の外側に向かうように設けられている。従って第2の壁43は第1の壁41よりも外側に在ることになる。この第2の壁43の内側は口44となっている。
【0022】
本実施例の使用法であるが、図3のように底40を上にして口42からドーム4内に水31を注入する。この際にはドーム4内に空気や気泡を残さないようにすることが肝心である。この水31の注入は、水31が第1の壁41から溢れて第2の壁43内に達するまで行う点が従来と大きく異なる点である。この時までにドーム4内にも第2の壁43内にも気泡が残らないようにする。図中で符号32は第2の壁43内の水を指している。次は栓20を行う段取りである。
【0023】
その栓20を口42に近づけて行くと、栓20は最初に第2の壁43内の水32に触れるが、この時に栓20を操って栓20の先に気泡が残っていないようにするのが肝心であるが、これが出来るのは本発明ならではである。このようにしてドーム4内に気泡が残らず、栓20にも気泡が付着していない状態で、栓20を進めて第1の壁41の口42に栓20をするのである。なお第1の壁41と第2の壁43の高さを同じにする構成が可能であることは上述した通りである。
【実施例3】
【0024】
図4の本実施例のスノードームが実施例2のスノードームと異なる点は、本実施例では実施例2の第1の壁41に相当する第1の壁47が底46に開けられた口48の断面そのものである点である。またドーム45内にはグリセリン33が満たされる。
【0025】
図4中で符号49は第2の壁を指す。透明な合成樹脂製のドーム45は底46を有し、この底46には栓21で密閉することが出来る口が設けられているが、この口の断面が壁47である。この第1の壁47である口よりも高い位置に第2の壁49が、ドーム45の延設部分として底46の外側に向かうように設けられている。従って第2の壁49は上記第1の壁47よりも外側に在ることになる。
【0026】
本実施例の使用法であるが、図4のように底46を上にして口48からドーム45内にグリセリン33を注入する。この際にはドーム45内に空気や気泡を残さないようにすることが肝心である。グリセリン33の注入は、グリセリン33が第1の壁47から溢れて第2の壁49内に達するまで行う点が従来と大きく異なる点である。この時までにドーム45内にも第2の壁49内にも気泡が残らないようにする。図中符号34は第2の壁49内すなわち口400内のグリセリンを指している。
【0027】
その栓21を口48に近づけて行くと、栓21は先ず第2の壁49内のグリセリン34に触れるが、この時に栓21を操って栓21の先に気泡が残っていないようにすることが肝心であるが、これが出来るのは本発明ならではである。このようにしてドーム45内に気泡が残らず、栓21にも気泡が付着していない状態で、栓21を進めて第1の壁47の口48に栓21をするのである。
【実施例4】
【0028】
本実施例はその構成の殆どを上述した実施例1に倣うものであるが、ドーム1の底10の内側の於いて第1の壁11の接続部分の、口12に面する角に傾斜部15が形成されている点に特徴を有する。
【0029】
この構成によれば、底10を上にして口12からドーム1内に水3を注入するに当り、ドーム1内に空気や気泡を残さないようにすることが肝心であるが、口12に傾斜部15が形成されていることによって、この部位での空気や気泡が口12から出易くなると言う作用効果が追加される。
【実施例5】
【0030】
本実施例はその構成の殆どを上述した実施例2に倣うものであるが、ドーム4の底40の内側の於いて第1の壁41の口42に向けて肉薄となるように、傾斜部401が形成されている点に特徴を有する。
【0031】
この構成によれば、底40を上にして口42からドーム4内に水31を注入するに当って、底40の内側の前面が口42に向かう傾斜部401となっていることにより、空気や気泡が口42から出易くなる、すなわちドーム4内に空気や気泡を残さないようにすると言う作用効果がより向上することになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
従来はともすれば気泡が入りやすいスノードームであったが、本発明では液体注入用の口の外側を取り囲む第1の壁と、さらにその外側を取り囲む第2の壁とを有し、第2の壁の内側まで液体を注入した時に第1の壁が液体に沈むようにしたため、液体注入用の口に栓をする時に、栓が液体注入用の口に到達する前に第2の壁の中の液体に浸かるようになり、この栓が空気や気泡を捲き込み液体注入用の口を閉じるような問題が、極めて起こり難いものとなっている。これは恰もスノードームの全体を液没(液体が水であれば水没)させて、ドーム内に液体を入れて液体注入用の口に栓をする、と言う作業を行っているに等しいと言うことが出来る。すなわち本発明には産業上の利用可能性があると共に十分な価値が認められる。
【符号の説明】
【0033】
1 ドーム 10 底 11 第1の壁
12 口 13 第2の壁 14 口
15 傾斜部
2 栓 20 栓 21 栓
3 水 30 水 31 水
32 水 33 グリセリン 34 グリセリン
4 ドーム 40 底 41 第1の壁
42 口 43 第2の壁 44 口
45 ドーム 46 底 47 第1の壁
48 口 49 第2の壁 400 口
401 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6