(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】商標登録出願の準備を支援する装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20231127BHJP
【FI】
G06Q50/18
(21)【出願番号】P 2023075339
(22)【出願日】2023-04-29
(62)【分割の表示】P 2023063107の分割
【原出願日】2023-04-08
【審査請求日】2023-04-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517087831
【氏名又は名称】大谷 寛
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 寛
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-149507(JP,A)
【文献】特開2018-113002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商標登録出願の準備を支援する方法であって、装置が、
ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信するステップと、
前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行うステップと、
前記一組の商品及び/又は役務の
少なくともいずれかについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップと、
選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信するステップと、
前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の要求を行うステップは、
前記一組の商品及び/又は役務の
少なくともいずれかについて、
商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧を登録した商品役務データベースからの関連性が相対的に高い一部のデータの抽出を要求するステップと
、
抽出された前記一部のデータの中から、対応する指定商品候補又は指定役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップと
を含む。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記第1の要求は、列挙された前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、詳細を記述することの指示を含む。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記第2の要求は、前記対応する商品候補及び/又は役務候補の選定を各商品又は役務の詳細に基づいて行うことの指示を含む。
【請求項5】
請求項
1に記載の方法であって、
前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の前記ユーザー端末に対する送信は、前記ユーザー端末において前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の閲覧画面を表示するための閲覧画面表示情報を送信である。
【請求項6】
装置に、商標登録出願の準備を支援する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記
装置が、
ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信するステップと、
前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行うステップと、
前記一組の商品及び/又は役務の
少なくともいずれかについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップと、
選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信するステップと、
前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信するステップと
を含む。
【請求項7】
商標登録出願の準備を支援する装置であって、
ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信し、
前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行い、
前記一組の商品及び/又は役務の
少なくともいずれかについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行い、
選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信して、前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商標登録出願の準備を支援する装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商標登録出願は、願書に商標登録を受けようとする商標(trademark)とそれを使用する用途(usage)を記載して行う。同一又は類似の商標が同一又は類似の用途について既に出願されている場合には、後から出願しても登録を受けることはできず、また、他社の先行出願にかかる商標が登録を受けた場合には、当該他社の商標権を侵害するおそれが生ずる。したがって、商標の採択に加えて、その用途の選定についても、適切な判断が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、商標登録を受けようとする商標がいかなる用途で使用されるかを判断することは必ずしも容易ではない。インターネット、そしてスマートフォンの登場により新たなビジネスモデルが生まれ、さらに近年、メタバース等の従来なかった分野が広がり始めている。このような技術革新に伴い、企業が営む事業は複雑化しており、商標登録出願の願書において、いかなる用途、すなわち、商品(goods)又は役務(services)を選定して記載すれば事業上必要な範囲をカバーすることになるのかについて慎重な検討を要し、商標登録出願の負担となっている。また、十分な検討がなされなければ、事業上必要な範囲の一部をカバーしない商品又は役務の選定となり、後に商標を巡る紛争に発展しかねない。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、商標登録出願の準備を支援するための装置、方法又はそのためのプログラムにおいて、願書に記載すべき商品及び/又は役務の選定を効率化することにある。
【0005】
本明細書において、「商品及び/又は役務」とは、商品及び役務の一方の種類のみである場合と、商品及び役務の両方の種類の場合を含み、「一組の商品及び/又は役務」とは、1又は複数の商品のみである場合、1又は複数の役務のみである場合、及び1又は複数の商品及び1又は複数の役務である場合を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、商標登録出願の準備を支援する方法であって、装置が、ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信するステップと、前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行うステップと、前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップと、選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信するステップと、前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信するステップとを含む。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記第2の要求を行うステップは、前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧を登録した商品役務データベースからの関連性が相対的に高い一部のデータの抽出を要求するステップと、前記一組の商品又は役務のそれぞれについて、抽出された前記一部のデータの中から、対応する指定商品候補又は指定役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップとを含む。
【0008】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様の方法であって、前記商品役務データベースは、前記願書に記載可能な商品及び/又は役務の一覧をチャンク単位に分割して埋め込みを行ったデータベースである。
【0009】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様の方法であって、前記一部のデータは、関連性が上位から所定の順位までの1又は複数のチャンクである。
【0010】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様の方法であって、前記所定の順位は、1位、2位又は3位である。
【0011】
また、本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様の方法であって、前記第1の要求は、列挙された前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、詳細を記述することの指示を含む。
【0012】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様の方法であって、前記第2の要求は、前記対応する商品候補及び/又は役務候補の選定を各商品又は役務の詳細に基づいて行うことの指示を含む。
【0013】
また、本発明の第8の態様は、第2から第5のいずれかの態様の方法であって、前記第1の要求は、列挙された前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、詳細を記述することの指示を含み、前記一部のデータの抽出の要求は、各商品又は役務の詳細に基づいて行うことの指示を含む。
【0014】
また、本発明の第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様の方法であって、前記第2のAIモデルは、前記第1のAIモデルと同一である。
【0015】
また、本発明の第10の態様は、第1から第8のいずれかの態様の方法であって、前記第2のAIモデルは、前記第1のAIモデルと同一のプラットフォーム上で提供されるものである。
【0016】
また、本発明の第11の態様は、第1から第10のいずれかの態様の方法であって、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の前記ユーザー端末に対する送信は、前記ユーザー端末において前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の閲覧画面を表示するための閲覧画面表示情報を送信である。
【0017】
また、本発明の第12の態様は、第11の態様の方法であって、前記閲覧画面表示情報により表示される閲覧画面は、前記一覧において各商品及び/又は役務に紐づけられた類似群コードを含む。
【0018】
また、本発明の第13の態様は、第11又は第12の態様の方法であって、前記閲覧画面表示情報により表示される閲覧画面は、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を区分を分けて表示する。
【0019】
また、本発明の第14の態様は、第11の態様の方法であって、前記閲覧画面表示情報により表示される閲覧画面は、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部が記載された願書を含む。
【0020】
また、本発明の第15の態様は、第11の態様の方法であって、前記閲覧画面表示情報により表示される閲覧画面は、前記ユーザー端末を用いるユーザーが前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部に対するフィードバックを入力可能である。
【0021】
また、本発明の第16の態様は、第15の態様の方法であって、前記フィードバックは、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の中から先行商標調査の対象とする1又は複数の対象商品及び/又は対象役務の選択を含む。
【0022】
また、本発明の第17の態様は、第15の態様の方法であって、前記フィードバックを受信した後に、前記事業を営む上で提供され得る商品及び/又は役務の列挙を第4のAIモデルに要求する第4の要求を行うステップであって、前記第4の要求は、前記フィードバックに応じた指示を含むステップをさらに含む。
【0023】
また、本発明の第18の態様は、第17の態様の方法であって、前記フィードバックは、前記事業の追加説明を含む。
【0024】
また、本発明の第19の態様は、装置に、商標登録出願の準備を支援する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記が、ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信するステップと、前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行うステップと、前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行うステップと、選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信するステップと、前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信するステップとを含む。
【0025】
また、本発明の第20の態様は、商標登録出願の準備を支援する装置であって、ユーザー端末から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信し、前記説明に基づいて、前記事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を列挙することを第1のAIモデルであって、生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する第1の要求を行い、前記一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する第2の要求を行い、選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信して、前記ユーザー端末に、前記1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明に基づいて、当該事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務の列挙を第1の生成AIモデル(generative AI model)に要求し、生成された一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2の生成AIモデルに要求することによって、ユーザーが事業の説明を入力すれば、自動的に1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を表示可能となり、これらを検討材料とすることによって、願書に記載すべき商品及び/又は役務の選定が顕著に効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる商標登録出願の準備を支援するためのシステムを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかる商標登録出願の準備を支援するための方法の流れを示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる第1のAIモデルに対する第1の要求のためのコードの一例の一部を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかる商品役務データベースの一例の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に本発明の一実施形態にかかるシステムを示す。装置100は、商標登録出願の準備を支援するために、ユーザーが用いるユーザー端末110及びAIモデルを提供するプラットフォーム120とインターネット等のIPネットワークを介して通信する。
【0029】
装置100は、 通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理又は各動作を行うためのプログラムを処理部102において実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体(図示せず)に記憶しておき、処理部102の少なくとも1つのプロセッサにおいて当該プログラムに含まれる命令を実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータは当該記憶装置又は記憶媒体に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0030】
また、装置100は、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧が登録された商品役務データベース104を有していてもよい。商品役務データベース104は、
図1においては、装置100の構成要素として示しているが、装置100がIPネットワークを介してアクセス可能なデータベースであってもよい。当該一覧は、商標登録を受けようとする国又は地域において、登録例のある商品及び/又は役務を含むことが好ましい。
【0031】
まず、ユーザー端末110から、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明を受信する(S201)。当該説明の入力は、たとえば、入力画面表示情報を、たとえばHTML形式のファイルとして送信して、ユーザー端末110の表示画面にウェブブラウザ上で表示される入力画面から行ったり、ユーザー端末110にインストールされたアプリケーション(「アプリ」とも呼ぶ。)を動作させ、当該アプリ上で表示される入力画面から行ったりすることができる。なお、「入力画面」とは、ウェブブラウザ上で表示される場合にはウェブページ、モーダルウィンドウ、ポップアップウィンドウ等のさまざまな形式を採用することができ、アプリ上で表示される場合にはアプリの一画面とすることができる。いずれにおいても、事業の説明を入力するための入力欄を有する領域を含む画面であれば、入力画面に該当する。本明細書で言及する他の画面についても、同様の技術を適用することができる。
【0032】
次に、装置100は、受信した説明に基づいて、当該事業を営む上で提供され得る商品及び/又は役務を列挙することを生成AIモデル(「第1のAIモデル」とも呼ぶ。)に要求(当該要求を「第1の要求」とも呼ぶ。)する(S202)。
【0033】
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる第1のAIモデルに対する第1の要求のためのコードの一例の一部を示す。
図3の例は、プログラミング言語Pythonで記述したコードの一部であり、当該コードを実行することによって、OpenAI APIを呼び出し、プラットフォーム120上で提供される第1のAIモデルに、ユーザーが説明を入力した事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務を生成させることができる。ここで、変数 “model” は利用する生成AIモデルの種類であり、変数 “instructions” は生成AIモデルに対する指示の記述である。Open AIは例示であり、その他のAPIを用いてもよい。第1の要求を行うためのコードは、記憶部103に記憶しておき、装置100がこれを取得して、当該コードに含まれる変数 “clientBusiness” に入力された事業の説明を設定して得られるコードを実行すればよい。変数 “clientBusiness” に設定する内容は、入力された説明と完全に同一ではなく、当該説明を要約したり、体裁を整えたり、自然言語処理を施したりして、当該説明に対応するものであってもよい。
【0034】
図3の例では、ステップ1で生成された一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、ステップ2で詳細を記述させているところ、変数 “min” で最小の単語数を指示している。このように、各商品又は役務の詳細を一定の単語数又は文字数以上の長さで記述させることは、後述するように、その後のデータ処理、データ表示等において利点がある。ここでは、単語数又は文字数の下限を定めることを説明したが、下限に加えて、又は下限に代替して上限を定めてもよい。上限のみを定めた場合には、上限に近い単語数又は文字数の詳細が得られるように変数 “instructions” に格納される指示を記述することが好ましい。また、この例では、ステップ2において単語数又は文字数に関する指示がなされているが、ステップ1で生成される一組の商品及び/又は役務の全部又は一部について、単語数又は文字数に関する指示がなされるようにしてもよい。このように変数 “instructions” に設定される指示を記述した場合、ステップ1の結果自体が詳細になり、ステップ2が不要となることも考えられる。
【0035】
ユーザー端末110から事業の説明の入力と同時又はその前後に第1のAIモデルに課される条件の指定を受信して、当該指定をコード中の変数に第1のAIモデルに対する指示として設定可能としてもよい。変数 “instructions” の記述を変えることは、記憶部103に記憶されたコードの書き換えを要するが、このようにすれば、第1のAIモデルに課される条件(「第1の条件」とも呼ぶ。)をユーザーからの入力に応じて変更し、実行されるコードをユーザーにとって有益な出力が得られやすいものとすることができる。第1の条件として、たとえば、生成される一組の商品及び/又は役務に含めるべき商品及び/又は役務の指示、生成される一組の商品及び/又は役務に含まれるべき商品及び/又は役務の数の指示等が挙げられる。
【0036】
プラットフォーム120が提供する第1のAIモデルは、第1の要求に応じて、一組の商品及び/又は役務を生成し(S203)、装置100に送信する(S204)。表1に、事業の説明「メタバースにおけるライブ開催」に対して
図3に示したコードの指示により生成された一組の商品及び役務の一例を示す。
【0037】
【0038】
事業の説明として「メタバースにおけるライブ開催」という端的な入力をするのみで、当該事業を営む上で提供され得ると予測される一組の商品及び/又は役務を多岐に渡り列挙させることができている。
【0039】
本発明の一態様を以下にさらに説明していくが、当該一組の商品及び/又は役務の少なくとも一部をユーザー端末110の表示画面に表示させるだけでも、商標登録出願に当たって求められる慎重な検討を著しく効率化させることができ、かかる処理又は動作も本発明の態様に含まれる。この場合、当該態様で解決されるべき課題は、願書に記載すべき商品及び/又は役務の選定を効率化することよりも広く、事業を構成する1若しくは複数の商品及び/又は1若しくは複数の役務の理解を効率化することにあると言える。ユーザー端末110に送信がなされた後、後述するフィードバックを装置100がユーザー端末110より受信するようにしてもよい。
【0040】
次いで、装置100は、列挙された一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補又は役務候補を選定することをAIモデル(「第2のAIモデル」とも呼ぶ。)に要求(当該要求を「第2の要求」とも呼ぶ。)する。上掲の表から分かるように、各商品又は役務の詳細は各商品又は役務自体よりも情報量が多いため、第2の要求において、各商品又は役務に対応する商品候補又は役務候補の選定を各商品又は役務に加えて又は代替して各商品又は役務の詳細に基づいて行うことの指示を与えることが好ましい。第2の要求は、第1の要求と同様に、あらかじめコードを用意しておき、装置100がこれに必要な変数の設定をして実行することによって可能である。
【0041】
図2においては、第1のAIモデルと第2のAIモデルを区別しているところ、これらは、同一のAIモデルとしてもよい。本明細書において「AIモデル」とは、入力に対して出力を予測可能に訓練済みの機械学習モデル」をいい、「生成AIモデル」とは、入力に対して出力を生成可能にテキストデータを用いて訓練済みの大規模言語モデル(LLM)を指す。生成AIモデルとしては、特にトランスフォーマーアーキテクチャを適用したLLMが好ましいが、技術の進展によってアーキテクチャの呼称が変わることは想定される。したがって、本明細書において「トランスフォーマーアーキテクチャ」とは、トランスフォーマーアーキテクチャの1若しくは複数の特徴又はその改良を用いたアーキテクチャを包含する。本明細書において「生成AIモデル」が同一であるか否かは、ユーザーが指定した生成AIモデルの種類が同一であるか否かによって判断する。
図3の例でいえば、変数 “model” の値が同一であれば、生成AIモデルとして同一であると表現する。第1のAIモデルと第2のAIモデルが同一でない場合、同一のプラットフォーム120上で提供されるものでもよい。
図2の例では、第1の要求の後に第2の要求をしているところ、第1のAIモデルと第2のAIモデルが同一の生成AIモデルであるか同一のプラットフォーム上で提供される生成AIモデルである場合には、1回のコードの実行によって、これらの要求を行うことも考えられる。
【0042】
一例として、第2のAIモデルに課される条件(以下「第2の条件」とも呼ぶ。)として、商品候補及び/又は役務候補を、第2の要求に含まれる商品及び/又は役務の一覧から選択すべきことの指示を含めてもよいが、第1類から第45類まである商品及び役務を多数含めることは、第2の要求に含めることのできるトークン数の上限を超えてしまう場合があるため、以下では、別の例を挙げて説明する。ここで、「トークン」とは、文字を分割する単位であり、たとえば、変数 “instructions” に記述された入力及びAPIの呼び出しの結果として得られる出力を分割する単位として使用される。
【0043】
装置100は、商品役務データベース104にアクセスして、受信した一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧を登録した商品役務データベース104からの関連性が相対的に高い一部の抽出を要求して(S205)、抽出された当該一部を受信する(S206)。各商品又は役務に対応する商品候補又は役務候補の選定と同様に、各商品又は役務と関連性が相対的に高い一部の抽出の要求においても、各商品又は役務に加えて又は代替して各商品又は役務の詳細に基づいて行うことの指示を与えることが好ましい。
【0044】
商品役務データベース104は、願書に記載可能な商品及び/又は役務の一覧をチャンク単位その他の所定の単位に分割して埋め込みを行ったデータベースとすることができ、この場合、抽出される一部のデータは、たとえば、各商品又は役務と関連性が上位から所定の順位までの1又は複数のチャンクとしてもよい。当該所定の順位は、たとえば、1位、2位又は3位としてもよい。また、商品役務データベース104からの関連性が相対的に高い一部の抽出の要求は、AIモデル(「第3のAIモデル」とも呼ぶ。)に対する要求(当該要求を「第3の要求」とも呼ぶ。)であってもよい。。第3のAIモデルは、第1のAIモデル及び第2のAIモデルの少なくとも一方と同一であるか同一のプラットフォーム上で提供されてもよい。また、第3の要求は、第1の要求と同様に、あらかじめコードを用意しておき、装置100がこれに必要な変数の設定をして実行することによって可能である。
【0045】
図2では、各商品又は役務について、関連性が高い1又は複数のチャンクの抽出を繰り返しているが、受信した一組の商品及び/又は役務のうち必要なものすべてについて、一度の要求で抽出がなされるようにしてもよい。
【0046】
そして、装置100は、抽出された当該一部の中から、各商品又は役務に対応する指定商品候補又は指定役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する(S207)。この例では、商品役務データベース104から抽出された一部の商品及び/又は役務を、商品候補及び/又は役務候補をそこから選定すべき商品及び/又は役務の一覧として第2の要求に含めればよく、トークン数の上限の問題は生じにくくなる。この例とは異なる更なる例としては、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧を、あらかじめ第2のAIモデルが参照可能なデータとして与えておけば、第2の要求に商品候補及び/又は役務候補をそこから選定すべき商品及び/又は役務の一覧を含めること自体不要となる。
【0047】
図2では、一度の要求で、装置100が受信した一組の商品及び/又は役務のうち必要なものすべてについて、商品候補及び/又は役務候補が選定され(S208)、装置100に送信されるものとして示しているところ(S209)、各商品又は役務について都度選定の要求がなされるようにしてもよい。
【0048】
図4に、本発明の第1の実施形態にかかる商品役務データベースの一例の一部を示す。これは、願書に記載可能な第41類の役務を日本国特許庁によってそれぞれに割り当てられた類似群コードとカンマで紐づけてデータベースに登録した例である。たとえば、表1の例で説明すれば、装置100が受信した一組の商品及び/又は役務のうちの役務「仮想ライブイベント」及び/又はその詳細「メタバース内で開催される仮想ライブイベントは、リアルタイムでアーティストがパフォーマンスを行い、視聴者がインタラクティブに参加できる体験を提供します。」と関連性が最も高いチャンクとして
図4に示すデータを含むチャンクを抽出し、当該チャンクを第2のAIモデルに対する第2の要求に含めることで、役務「コンサートの企画又は運営」(41E01)、「インターネットを利用して行う映像の提供」(41E02)、「オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。)」(41E02)、「インターネットを利用して行う音楽の提供」(41E03) 等が選定可能である。たとえば、出願前の調査の目的であれば、類似群コード又はこれに対応するコードを用いる国に対する出願に当たっては、コードが同一であるものは重複として選定から外すようにしてもよい。
【0049】
商品役務データベース104に登録される商品及び又は役務の一覧又はそれを分割した各チャンクは、
図4に示すように、類似群コードをキーとしてソートされていることが好適である。これにより、各商品又は役務と関連性が相対的に高い一部の商品役務データベース104からの抽出の精度が上がるためである。
【0050】
生成AIモデルの出力は、毎回同一とは限らないことから、複数回の出力結果に基づいて、各商品又は役務に対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することの指示を第2の条件として与えたり、各商品又は役務について第2の要求を複数回行い、複数の選定結果に基づいて、装置100において、最終的に1又は複数の商品及び/又は役務を選定するようにしてもよい。また、各商品又は役務について第2の要求を複数回行い、後述するように、それらの選定結果の少なくとも一部をユーザー端末110に送信してもよい。
【0051】
装置100は、選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信して(S209)、適宜前記事業と関連づけて記憶部103に記憶する。その後、装置100は、ユーザー端末110に、当該1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を送信する(S210)。当該送信は、ユーザー端末110において当該1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部の閲覧画面を表示するための閲覧画面表示情報の送信としてもよい。
【0052】
たとえば、当該閲覧画面は、当該1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部が記載された願書を含んでもよい。また、当該閲覧画面は、願書に記載可能な商品及び/又は役務の一覧において各商品及び/又は役務に紐づけられた類似群コードを含んでもよい。また、商品役務データベース104に登録される商品及び/又は役務のそれぞれを類似群コードに加えて又は代替して区分と紐づけておくことで、当該閲覧画面において、当該1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部を区分を分けて表示することができる。
【0053】
このように、商標登録を受けようとする商標を使用する事業の説明に基づいて、当該事業を営む上で提供され得る一組の商品及び/又は役務の列挙を第1のAIモデルに要求し、生成された一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、商標登録出願の願書において記載可能な商品及び/又は役務の一覧の少なくとも一部の中から、対応する商品候補及び/又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求することによって、ユーザーが事業の説明を入力すれば、自動的に1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を表示可能となり、これらを検討材料とすることによって、願書に記載すべき商品及び/又は役務の選定が顕著に効率化される。
【0054】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で説明した閲覧画面は、ユーザー端末110を用いるユーザーが、1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部に対するフィードバックを入力可能とすることができる。フィードバックの例としては、当該1又は複数の商品候補及び/又は役務候補の少なくとも一部に対する肯定的又は否定的な選択又は評価、修正の提案又は指定、新たな商品候補又は役務候補の提案又は指定等が挙げられる。肯定的又は否定的な評価は、たとえば、3段階以上の多段階評価が考えられる。
【0055】
フィードバックを受信した後に、装置100は、当該フィードバックに応じた指示を生成AIモデル(「第4のAIモデル」とも呼ぶ。)に課される条件(「第4の条件」とも呼ぶ。)に含めて、第1の要求のように、再度事業を営む上で提供され得る商品及び/又は役務の列挙を要求(当該要求を「第4の要求」とも呼ぶ。)してもよい。第4のAIモデルは、第1乃至第3のAIモデルの少なくともいずれかと同一であるか同一のプラットフォーム上で提供されてもよい。特に、フィードバックに応じた出力の変化をユーザーが把握しやすいので、第4のAIモデルを第1のAIモデルと同一のものとするのが好ましい。また、第4の要求は、第1の要求と同様に、あらかじめコードを用意しておき、装置100がこれに必要な変数の設定をして実行することによって可能である。
【0056】
また、フィードバックとして、閲覧画面に表示された商品候補及び/又は役務候補の中から先行商標調査の対象とする1又は複数の対象商品及び/又は対象役務の選択が挙げられる。この場合、フィードバックを受信した装置100は、選択された1又は複数の対象商品及び/又は対象役務の各商品又は役務に紐づけられた類似群コードを用いて、各商品又は役務について、同一又は類似の先行商標の抽出を先行商標データベース(図示せず)に要求することができる。
【0057】
また、フィードバックとして、事業の追加説明が入力されてもよい。選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を見た上で、事業をより適切に記述した追加説明をユーザーが入力することで、より適切な選定に近づけることができる。追加説明としては、事業が属する業界、競合又は参考となる企業又は事業等が挙げられる。
【0058】
なお、上述の実施形態において、「のみに基づいて」、「のみに応じて」、「のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0059】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【符号の説明】
【0060】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 商品役務データベース
110 ユーザー端末
120 プラットフォーム
【要約】
【課題】商標登録出願の準備を支援するための方法において、願書に記載すべき商品及び/又は役務の選定を効率化する。
【解決手段】まず、ユーザー端末110から、商標を使用する事業の説明を受信する(S201)。次に、装置100は、受信した説明に基づいて、当該事業を営む上で提供され得る商品及び/又は役務を列挙することを生成AIモデルである第1のAIモデルに要求する(S202)。第1のAIモデルは、当該要求に応じて、一組の商品及び/又は役務を生成し(S203)、装置100に送信する(S204)。次いで、装置100は、列挙された一組の商品及び/又は役務のそれぞれについて、対応する商品候補又は役務候補を選定することを第2のAIモデルに要求する。装置100は、選定された1又は複数の商品候補及び/又は役務候補を受信して(S209)、ユーザー端末110にその少なくとも一部を送信する(S210)。
【選択図】
図2