(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】電動自転車用のフレーム及び電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 19/30 20060101AFI20231127BHJP
B62K 3/02 20060101ALI20231127BHJP
B62M 6/40 20100101ALI20231127BHJP
【FI】
B62K19/30
B62K3/02
B62M6/40
(21)【出願番号】P 2019208975
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久史
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄大
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-164886(JP,A)
【文献】特開2009-006842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247263(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0241169(US,A1)
【文献】特開2018-016283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/30 - 19/48
B62K 3/02
B62M 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁部を含むブラケットと、
長手方向の一端側に開口縁部を有するダウンチューブと、を備え、
前記開口縁部は、前記ダウンチューブが前記ブラケットから伸びる姿勢となるように、前記前壁部に対して連結される部分であり、
前記ダウンチューブは、
前記開口縁部の一部から前記長手方向の他端側に向けて切り欠かれた配線挿通用の切欠部を、更に有
し、
前記ブラケットは、
前記ダウンチューブ内の配線を後方に引き出すように設けられた開口部を有し、
前記開口部は、
前記ダウンチューブの前記開口縁部の内側に位置し、前記ダウンチューブの内部に直接つながるように形成された第1開口部分と、
前記開口縁部の外側に位置するように、前記第1開口部分に連続して形成された第2開口部分と、を含み、
前記第2開口部分は、前記切欠部を通じて前記ダウンチューブ内から引き出された配線が挿し通されるように構成されている
電動自転車用のフレーム。
【請求項2】
前記切欠部は、前記開口縁部の上部から、前記長手方向の他端側に向けて切り欠かれている
請求項1の電動自転車用のフレーム。
【請求項3】
前記ダウンチューブの後方に位置するように、前記ブラケットに連結されるシートチューブと、
前記ダウンチューブと前記シートチューブとに当たる補強用の上ガセットと、を更に備える
請求項1又は2の電動自転車用のフレーム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項の電動自転車用のフレームと、
前記フレームに装着されるバッテリーと、を備える
電動自転車。
【請求項5】
下側の部分ほど後方に位置するように傾斜した前壁部を含むブラケットと、
長手方向の一端側に開口縁部を有するダウンチューブと、を備え、
前記開口縁部は、前記ダウンチューブが前記ブラケットから伸びる姿勢となるように、前記前壁部に対して連結される部分であり、
前記ダウンチューブは、
前記開口縁部の一部から前記長手方向の他端側に向けて切り欠かれた配線挿通用の切欠部を、更に有し、
前記ブラケットは、
前記ダウンチューブ内の配線を後方に引き出すように設けられた開口部を有し、
前記開口部の一部は、前記ダウンチューブの前記開口縁部の内側に位置し、
前記前壁部には、前記開口部につながるスリットが貫通するように形成されている
電動自転車用のフレーム。
【請求項6】
前記ダウンチューブの後方に位置するように、前記ブラケットに連結されるシートチューブと、
前記ダウンチューブと前記シートチューブとに当たる補強用の上ガセットと、を更に備え、
前記上ガセットは、前記切欠部と、前記開口部のうち前記ダウンチューブの前記開口縁部の内側に位置しない部分と、を上方から覆う
請求項5の電動自転車用のフレーム。
【請求項7】
前記ダウンチューブの下端部の下面と、前記前壁部と、に連結される補強用の下ガセットを、更に備える
請求項5又は6の電動自転車用のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動自転車用のフレーム及び電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動自転車が開示されている。この電動自転車においては、ダウンチューブのパイプ部に沿って配線を引き回すために、パイプ部の前端から後端にわたって軸線方向に沿って伸びるケーブル保持部を、パイプ部と一体に形成している。ケーブル保持部に挿し通された配線は、パイプ部の前端から後端にわたって、パイプ部の下側を通るように引き回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の電動自転車においては、ダウンチューブのパイプ部の下側を通るように配線が引き回されるので、電動自転車の足跨ぎ性を確保するためにダウンチューブの下端部の位置を低く設定すると、配線に無理な取り回しが強いられるおそれがある。配線が無理に取り回されると、配線の変形、断線等のリスクが高くなる。
【0005】
本開示は、電動自転車用のフレーム及び電動自転車において、配線の変形、断線等のリスクを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動自転車用のフレームは、前壁部を含むブラケットと、長手方向の一端側に開口縁部を有するダウンチューブとを備える。前記開口縁部は、前記ダウンチューブが前記ブラケットから伸びる姿勢となるように、前記前壁部に対して連結される部分である。前記ダウンチューブは、前記開口縁部の一部から前記長手方向の他端側に向けて切り欠かれた配線挿通用の切欠部を、更に有する。
【0007】
本開示の一態様に係る電動自転車は、前記フレームと、前記フレームに装着されるバッテリーとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電動自転車用のフレーム及び電動自転車は、配線の変形、断線等のリスクを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の電動自転車の側面図である。
【
図2】
図2は、同上の電動自転車が備えるフレームの側面図である。
【
図3】
図3は、同上のフレームから下ガセットを除いた要部正面図である。
【
図5】
図5は、同上のフレームの要部を背面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、同上のフレームの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、同上のフレームのブラケットとダウンチューブの斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の電動自転車が備えるリアキャリアの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(一実施形態)
図1には、一実施形態の電動自転車1を示している。一実施形態の電動自転車1は、電動アシスト自転車である。
【0011】
一実施形態の電動自転車1は、電動自転車用のフレーム10と、フレーム10に支持された駆動ユニット11と、駆動ユニット11に電力を供給するようにフレーム10に着脱自在に装着されたバッテリー12とを備える。
【0012】
更に、一実施形態の電動自転車1は、フレーム10の前部に支持されたフロントフォーク13と、フロントフォーク13の下部に回転自在に連結された前輪142と、フレーム10の後部に回転自在に連結された後輪144と、フレーム10の中央部に軸支されたペダル155付きのクランク15と、フロントフォーク13の上部に連結されたハンドル16とを備える。
【0013】
更に、一実施形態の電動自転車1は、フレーム10に装着されたサドル17付きのシートピラー175と、フレーム10に連結されたリアキャリア18と、リアキャリア18に連結されたリアフェンダー19とを備える。
【0014】
一実施形態の電動自転車1では、運転者がペダル155を漕いでクランク15を回転させる動力と、駆動ユニット11から出力される駆動力とが、駆動ユニット11と後輪144の間に架け渡されるチェイン115を介して後輪144に伝達されることで、後輪144が回転駆動される。
【0015】
本文において用いる前後、上下等の各方向は、水平面上に前輪142と後輪144を乗せた電動自転車1の運転者を基準として、定義される。運転者が電動自転車1に乗って進行する方向が前方、これの反対側が後方である。以下、各構成について詳しく説明する。
【0016】
(フレーム)
図2等に示すように、電動自転車用のフレーム10は、フレーム10の中心部に位置するブラケット2と、ダウンチューブ3と、シートチューブ4と、チェーンステー5と、シートステー6と、ヘッドパイプ7とを備える。
【0017】
フレーム10(つまりフレーム10を構成する上記の各部)は、一例としてアルミニウム合金で形成されているが、アルミニウム合金以外のスチール、チタン、マグネシウム等の他の金属で形成されてもよい。フレーム10は、複数種類の金属で形成されてもよいし、一部に非金属を含んでもよいし、あるいは、フレーム10全体が非金属で形成されてもよい。
【0018】
ブラケット2は、駆動用の機器が支持される金属部材である。ブラケット2は、前壁部21と、第1屈曲部22と、中間壁部23と、第2屈曲部24と、後壁部25と、左右の側壁部26とを一体に有するように、アルミニウム合金製の板材(以下「アルミ板」という。)を曲げ加工して全体が形成されている。
【0019】
一実施形態の電動自転車1において、ブラケット2に支持される駆動用の機器は、電動モータが内蔵された駆動ユニット11であるが、ブラケット2に支持される駆動用の機器はこれに限定されず、例えばセンサー、制御装置等の他の機器がブラケット2に支持されてもよい。
【0020】
ダウンチューブ3は、ブラケット2から前斜め上方に伸びるように、ブラケット2の前壁部21に連結されている。ダウンチューブ3は、楕円状の断面を有する中空の金属部材である(
図6等参照)。ダウンチューブ3のうちブラケット2に連結される部分は、ダウンチューブ3の下端部であり、換言するとダウンチューブ3の後端部である。
【0021】
シートチューブ4は、ブラケット2から後ろ斜め上方に伸びるように、ブラケット2の中間壁部23に連結されている。シートチューブ4は、円形状の断面を有する中空の金属部材である。シートチューブ4の上端部に、サドル17を支持するシートピラー175が挿入される(
図1参照)。シートチューブ4のうちブラケット2に連結される部分は、シートチューブ4の下端部である。
【0022】
チェーンステー5は、ブラケット2から後方に伸びるように、ブラケット2の後部側面に連結されている。チェーンステー5は、円形状の断面を有する左右の筒状のチェーンステー部材52を含む。チェーンステー5の前端部(つまり左右のチェーンステー部材52の前端部)がブラケット2に連結され、チェーンステー5の後端部(つまり左右のチェーンステー部材52の後端部)が後輪144を軸支するように構成されている。
【0023】
シートステー6は、チェーンステー5の後端部とシートチューブ4の上端部とをつなぐ金属部材である。シートステー6は、円形状の断面を有する左右の筒状のシートステー部材62を含む。シートステー6はチェーンステー5の後端部から前斜め上方に伸び(つまり左右のシートステー部材62が、左右のチェーンステー部材52のそれぞれの後端部から前斜め上方に伸び)、シートチューブ4の上端部に連結されている。
【0024】
換言すると、シートステー6は、シートチューブ4の上端部から後ろ斜め下方に伸びて、チェーンステー5の後端部に連結されている(つまり左右のシートステー部材62が、シートチューブ4の上端部から後ろ斜め下方に伸びて、左右のチェーンステー部材52のそれぞれの後端部に連結されている)。シートチューブ4、チェーンステー5及びシートステー6は、ブラケット2を介して、側面視において三角形状をなすように連結されている。
【0025】
ヘッドパイプ7は、フロントフォーク13を回転自在に支持するために、ダウンチューブ3の上端部(換言するとダウンチューブ3の前端部)に連結された金属部材である。
【0026】
なお、上記のダウンチューブ3、シートチューブ4、左右チェーンステー部材52及び左右のシートステー部材62の断面形状は一例に過ぎず、いずれの断面形状においても、楕円形状、真円形状、台形状等の適宜の断面形状に設定することが可能である。
【0027】
更に、電動自転車用のフレーム10には、下ガセット91と上ガセット92が連結されている。
【0028】
下ガセット91は、ダウンチューブ3の下端部の下面に連結され、かつブラケット2の前壁部21に連結される補強用の金属部材である。
【0029】
上ガセット92は、ダウンチューブ3の下端部の上面に連結され、かつシートチューブ4の下端部の前面に連結される補強用の金属部材である。上ガセット92は、ダウンチューブ3の下端部を挟んで下ガセット91の上方に設置される。
【0030】
以上、一実施形態の電動自転車1の基本的な構成について説明した。以下においては、電動自転車用のフレーム10が備える更に特徴的な構成について、詳しく説明する。
【0031】
(ブラケット)
上記したように、ブラケット2においては、一枚のアルミ板をプレス加工(より詳しくは曲げ加工)することによって、前壁部21、第1屈曲部22、中間壁部23、第2屈曲部24、後壁部25及び左右の側壁部26を一つながりに形成している。
【0032】
前壁部21は平板状の壁で構成されており、下側の部分ほど後方に位置するように、鉛直面P1を基準として角度αだけ傾斜している(
図4参照)。ここでの鉛直面P1は、前後方向と直交する鉛直面である。角度αは10°程度であるが、例えば0°から20°の範囲内の角度であることが好ましく、5°から15°の範囲内の角度であることが更に好ましい。
【0033】
前壁部21は、互いに反対側を向く平坦な正面21aと背面21bとを有する。ここでの平坦は、厳密な意味での平坦に限定されず、全体として平らなものを含む。前壁部21の正面21aと背面21bは、下側の部分ほど後方に位置するように、鉛直面P1を基準として角度αだけ傾斜している。
【0034】
中間壁部23は、平板状の壁で構成されており、前斜め上方を向く平坦な上面を有している。前壁部21と中間壁部23は、曲げ加工により直角に折り曲げられた第1屈曲部22を介して、L字に連続している。ここでの直角は厳密な意味での直角に限定されず、略直角な場合を含む。
【0035】
後壁部25は、平板状の壁で構成されており、後ろ斜め上方を向く平坦な上面を有している。後壁部25と中間壁部23は、曲げ加工により折り曲げられた第2屈曲部24を介して、鈍角をなすように連続している。
【0036】
左右の側壁部26は、それぞれ平板状の壁で構成されており、左右に距離をあけて互いに平行に位置している。各側壁部26は、中間壁部23と後壁部25の側縁部から下方に伸びるように形成されている。左右の側壁部26には、中間壁部23と後壁部25の下方に駆動ユニット11を固定するための複数の固定孔265が形成されている。
【0037】
上記の各部を有するブラケット2には、配線を挿通することができる開口部27と、開口部27につながるスリット281,282とが形成されている。
【0038】
開口部27は、ブラケット2のうち前壁部21と第1屈曲部22と中間壁部23とに跨るように、一方向に長く形成されている。後述するように、開口部27は、ダウンチューブ3内に通された配線90(
図4参照)を、ダウンチューブ3の下端部から更に後方に向けて引き出すために設けられている。
【0039】
スリット281,282は、前壁部21に形成されたスリット281と、中間壁部23に形成されたスリット282である。これらスリット281,282、アルミ板を曲げ加工してブラケット2を形成するときの突き合わせ部分に形成されたスリットであるが、別途の加工で同様のスリットを形成することも可能である。
【0040】
前壁部21のスリット281は、開口部27の下側の開口縁から、前壁部21を下方に貫くように一直線状に形成されている(
図5等参照)。スリット281は、前壁部21を前後に貫通するスリットである。後述するように、ダウンチューブ3内に浸入した水は、このスリット281を通じて後方に排出される。
【0041】
前壁部21の背面21bのうち開口部27より下側の部分には、スリット281の上下方向の一部を跨ぐように、左右に長い補強板29が連結されている。補強板29は、後ろ側の部分ほど下側に位置するように傾いた姿勢を有する。補強板29の上面は、後ろ斜め上方を向くように傾斜しているが、補強板29の上面が鉛直上方を向くように設置されてもよい。
【0042】
中間壁部23のスリット282は、開口部27のうち中間壁部23に位置する部分から、後方に向けて一直線状に形成されている(
図7等参照)。スリット282は、中間壁部23を上下に貫通するスリットである。スリット282のうちシートチューブ4に覆われる部分には、上下に貫通する丸孔状の貫通孔232が形成されている。
【0043】
後壁部25には、前後に長い形状の貫通孔252が形成されている。貫通孔252は、駆動ユニット11とこれの上方に位置するバッテリー12とを電気的に接続させる図示略の接続機器が、挿し通される貫通孔である。バッテリー12は、この接続機器を介して後壁部25の上方に支持された状態で、シートチューブ4の後面に沿って位置する(
図1参照)。
【0044】
一実施形態の電動自転車1では、ブラケット2が上記の構造を備えるので、一枚のアルミ板を曲げ加工して強度の高いブラケット2を構成することが可能である。一実施形態のブラケット2において、前壁部21は、下側の部分ほど後方に位置するように傾斜しているので、前壁部21とダウンチューブ3との接合面積を確保しやすく、これによりブラケット2とダウンチューブ3との接合強度を高めることができる。
【0045】
ブラケット2の上記の構造は一例に過ぎず、例えば、前壁部21が平板状であることは必須ではない。ブラケット2を、複数の板材を接合させて構成することも可能である。
【0046】
(ダウンチューブ)
ダウンチューブ3は、その長手方向の一端側(ダウンチューブ3の後端部)に設けられた開口縁部31(
図6等参照)と、開口縁部31の一部から長手方向の他端側(前方)に向けて切り欠かれた切欠部33とを有する。ここでの開口縁部31の一部は、開口縁部31の上部(より具体的には開口縁部31の上端部)である。
【0047】
ダウンチューブ3のうち開口縁部31で囲まれた開口310と、この開口310につながる切欠部33は、後述するように、配線90を挿し通すために用いられる。
【0048】
ダウンチューブ3の開口縁部31は、前壁部21の正面21aに、溶接によって固定される(
図3、
図4参照)。溶接は、例えばアーク溶接であるが、アーク溶接とは別の種類の溶接(ろう付け溶接を除く)を行うことも可能である。
【0049】
前壁部21の正面21aには、ダウンチューブ3の下端部をブラケット2に接合させる溶接ビード35が設けられている。溶接ビード35は、スリット281を左右に跨ぐように、ダウンチューブ3の開口縁部31の外周縁に沿ってU字状に形成されている。スリット281の上下方向の一部において、前後方向の貫通は溶接ビード35によって塞がれる。
【0050】
図4等に示すように、前壁部21にダウンチューブ3が接合された状態で、ブラケット2の開口部27の一部(以下「第1開口部分27A」という。)は、ダウンチューブ3の開口縁部31の内側に位置する。開口部27の別の部分(以下「第2開口部分27B」という。)は、ダウンチューブ3の開口縁部31の外側に位置する。
【0051】
第1開口部分27Aは、ダウンチューブ3の内部に直接つながる開口部分であって、開口部27のうち、前壁部21に位置する領域の一部で構成される。第2開口部分27Bは、第1開口部分27Aに連続して形成された開口部分である。第2開口部分27Bは、開口部27のうち、前壁部21に位置する領域の残りの部分と、第1屈曲部22及び中間壁部23に位置する領域とで、構成される。
【0052】
(下ガセット)
図6等に示すように、下ガセット91は、ダウンチューブ3の下端部の下面に当たるように設けられた第1縁部911と、ブラケット2の前壁部21の正面21aに当たるように設けられた第2縁部912とを有する。第1縁部911と第2縁部912はともにU字状であり、全体として環状につながるように連続している。
【0053】
フレーム10に下ガセット91が固定されることによって、ブラケット2とダウンチューブ3が補強される。
【0054】
(上ガセット)
上ガセット92は、ダウンチューブ3の下端部の上面に当たるように設けられた第1縁部921と、シートチューブ4の下端部の前面に当たるように設けられた第2縁部922と、ブラケット2の上面に当たるように設けられた第3縁部923とを有する。第1縁部921と第2縁部922はともにU字状である。第3縁部923は、第1縁部921と第2縁部922をつなぐ左右の縁部で構成されている。第1縁部921と第2縁部922と第3縁部923とは、全体として環状につながるように連続している。
【0055】
フレーム10に上ガセット92が固定されることによって、ダウンチューブ3とシートチューブ4とが効果的に補強される。
【0056】
図7に示すように、仮に上ガセット92が装着されていないと、ダウンチューブ3の切欠部33は上方に向けて開放され、また、ブラケット2の第2開口部分27Bは上方に向けて開放される。これに対して、一実施形態の電動自転車1においては、フレーム10に固定された上ガセット92によって、切欠部33と第2開口部分27Bとが上方から覆い隠される。
【0057】
(ダウンチューブからの排水)
次に、ダウンチューブ3内に浸入した水を排出する排水構造について、更に詳述する。上記したように、ダウンチューブ3からの排水には、ブラケット2の前壁部21のスリット281が利用される。
【0058】
図4、
図5に示すように、一実施形態の電動自転車1では、開口部27の下側に位置するスリット281のうち、ダウンチューブ3の開口縁部31に囲まれる領域に位置する部分(つまりスリット281の上側部分)で、排水用の貫通部213が構成されている。貫通部213は、ダウンチューブ3内の水を後方に排出するように前壁部21を前後に貫通した部分である。貫通部213の左右の幅は、配線90の幅よりも小さく、かつ水は流通することができる幅である。
【0059】
更に、スリット281のうち、貫通部213を構成する上側部分を除いた部分(つまりスリット281の下側部分)で、前壁部21の背面21bの溝部215が構成されている。溝部215は、貫通部213から下方に一直線状に延長された溝部である。溝部215のうち、正面側にダウンチューブ3の開口縁部31と溶接ビード35が位置する部分は、開口縁部31と溶接ビード35に塞がれることで前後に非貫通であり、他の部分では前後に貫通している。
【0060】
一実施形態の電動自転車1は、上記の排水構造を有することで、ダウンチューブ3の下端部に水が溜まらないように、ブラケット2の貫通部213(つまりスリット281の上側部分)を通じて、ブラケット2側に水を排出することができる。ブラケット2側に排出された水は、補強板29の上面を伝って下方に流れることもあるし、貫通部213につながる溝部215を通じて下方に流れることもある。
【0061】
なお、スリット281によらず貫通部213と溝部215を形成することも可能である。つまり、前壁部21に対してスリット281とは関係なく排水用の貫通孔(貫通部213)を形成することも可能であるし、前壁部21の背面21bに対してスリット281とは関係なく排水用の溝(溝部215)を形成することも可能である。
【0062】
(ダウンチューブからの配線の引き出し)
次に、ダウンチューブ3内に通された配線90をブラケット2側に引き出すための構造について、更に説明する。上記したように、ダウンチューブ3からブラケット2への配線90の引き出しには、ダウンチューブ3側の開口310及び切欠部33と、ブラケット2側の開口部27とが用いられる。
【0063】
一実施形態の電動自転車1では、ダウンチューブ3の開口縁部31の上端部から前方に切り欠かれた形状の切欠部33に、配線90を逃がすことができるため、配線90の無理な取り回しが抑えられる。これにより、配線90にかかる負荷を抑え、配線90の変形、破断等のリスクを低減させながら、配線90を取り回すことが可能となっている。
【0064】
加えて、一実施形態の電動自転車1では、ブラケット2の開口部27のうち、ダウンチューブ3の開口縁部31の外側に位置するように第1開口部分27Aから上方及び後方に延長された第2開口部分27Bが、平面視において切欠部33の後方に並ぶように位置している(
図4、
図7等参照)。切欠部33を通じてダウンチューブ3内から後方に引き出された配線90は、そのまま第2開口部分27Bを通じて、ブラケット2内に(つまり中間壁部23及び後壁部25の下方の空間に)引き出される。
【0065】
そのため、一実施形態の電動自転車1では、配線90にかかる負荷を一層抑え、配線90の変形、断線等のリスクを抑えながら、ダウンチューブ3からブラケット2にかけて配線90を取り回すことが可能である。一実施形態の電動自転車1では、足跨ぎ性を確保するためにブラケット2の下側の箇所にダウンチューブ3を連結させても、切欠部33と第2開口部分27Bを利用して配線90を取り回し、配線90の変形、断線等のリスクを抑えることができる。
【0066】
なお、切欠部33及び第2開口部分27Bは、配線90を挿し通すことができるように構成されていればよく、必ずしも、配線90が常時挿し通されていなくてもよい。
【0067】
配線90は、例えば、電動自転車1のハンドル16に設置された図示略の操作器と駆動ユニット11とを電気的に接続する配線であるが、これに限定されず、他の機能を有する配線でもよい。
【0068】
(リアキャリア)
次に、リアキャリア18について説明する。
図8、
図9及び
図10に示すように、リアキャリア18は、アルミニウム合金等の金属製のパイプを用いて全体が構成されている。
【0069】
リアキャリア18は、荷物等を載せることができるキャリア本体181と、キャリア本体181を自転車用のフレーム10に連結させるためにキャリア本体181の前端部に形成された左右の連結部185と、キャリア本体181と後輪144の支軸1442との間に介在される左右のキャリアステー187とを備える。キャリア本体181と左右のキャリアステー187は、いずれも金属製のパイプを用いて形成されている。
【0070】
キャリア本体181は、U字状に曲げられた金属製の主パイプ182のうち左右に距離をあけて位置する部分の間に、前後に距離をあけて複数の連結部材183を架設したものである。U字状の主パイプ182の両端部(つまり前端部)に、左右の連結部185が形成されている。左右の連結部185はともに、左右に潰された二重筒構造を有する(
図9参照)。
【0071】
各連結部185の二重筒構造は、主パイプ182の端部開口を通じて金属製の短い補助パイプ184を挿入したうえで、主パイプ182の端部と補助パイプ184とを左右に一括的に潰した構造である。これにより強度が増大された各連結部185には、主パイプ182と補助パイプ184とを左右に貫く連結孔186が形成されている。各連結部185は、連結孔186に挿入される連結具65を介して、フレーム10のシートステー6に連結される(
図1参照)。
【0072】
左右のキャリアステー187の長手方向の両端部には、それぞれ連結部1875が形成されている。連結部1875は、連結部185と同様の二重筒構造を有する。つまり、各連結部185の二重筒構造は、キャリアステー187を形成する金属パイプの端部開口を通じて金属製の短い補助パイプを挿入したうえで、この金属パイプの端部と補助パイプとを左右に一括的に潰した構造である。各連結部1875には、連結孔1876が左右に貫通形成されている。
【0073】
左右のキャリアステー187のそれぞれにおいて、上側に位置する連結部1875は、この連結部1875の連結孔1876に挿入される連結具188を介して、キャリア本体181に連結される。下側に位置する連結部1875は、この連結部1875の連結孔1876を介して、後輪144の支軸1442に連結される。
【0074】
更に、リアキャリア18は、キャリア本体181に取り付けられたフェンダー支持部材189を備える。フェンダー支持部材189は、複数の連結部材183の一つを兼ねる左右に長い平板状の連結部材1892と、連結部材1892と一体に形成された側面視L字状の支持体1894とを有する。
【0075】
支持体1894は、連結部材1892の左右方向の中間部から下方に延長された縦部分と、該縦部分の下端部から後方に延長された横部分とを有し、この横部分に、後輪用のリアフェンダー19を固定するための固定孔1896が上下に貫通形成されている。
【0076】
リアフェンダー19は、固定孔1896に上方から挿入される図示略の固定具を介して、キャリアステー187(ひいてはリアキャリア18を介してフレーム10)に固定される。
【0077】
(変形例)
一実施形態の電動自転車1が備える各構成は、いずれも一例に過ぎず、同様の作用効果を奏する範囲内において適宜変形を施すことが可能である。
【0078】
例えば、一実施形態の電動自転車1は、駆動ユニット11が搭載された電動アシスト自転車であるが、例えば電動モーターの回転力だけで前輪142と後輪144の少なくとも一方を回転駆動させることのできる電動自転車でもよい。また、一実施形態の電動自転車1では前輪142と後輪144の二つの車輪を備えているが、車輪の数は特に限定されず、例えば車輪を三つ備えてもよい。
【0079】
また、一実施形態の電動自転車1のフレーム10は、配線90を挿し通すための切欠部33と第2開口部分27Bを両方備えているが、切欠部33と第2開口部分27Bの一方だけを備えることも可能である。
【0080】
(態様)
上記した一実施形態及び変形例の説明から明らかなように、第1の態様の電動自転車用のフレーム(10)は、前壁部(21)を含むブラケット(2)と、長手方向の一端側に開口縁部(31)を有するダウンチューブ(3)とを備える。開口縁部(31)は、ダウンチューブ(3)がブラケット(2)から伸びる姿勢となるように、前壁部(21)に対して連結される部分である。ダウンチューブ(3)は、開口縁部(31)の一部から長手方向の他端側に向けて切り欠かれた配線挿通用の切欠部(33)を、更に有する。
【0081】
第1の態様の電動自転車用のフレーム(10)によれば、開口縁部(31)に囲まれた開口(310)とつながるように切欠部(33)が形成されているので、ダウンチューブ(3)内を通した配線(90)を、この切欠部(33)に挿し通すことによって、配線(90)の無理な取り回しを抑えることができる。そのため、配線(90)の変形、断線等のリスクを低減することができる。
【0082】
第2の態様の電動自転車用のフレーム(10)は、第1の態様との組み合わせにより実現される。第2の態様の電動自転車用のフレーム(10)において、切欠部(33)は、開口縁部(31)の上部から、長手方向の他端側に向けて切り欠かれている。
【0083】
第2の態様の電動自転車用のフレーム(10)によれば、開口縁部(31)に囲まれた開口(310)の上部とつながるように切欠部(33)が形成されるので、ダウンチューブ(3)内を通した配線(90)を、この上側の切欠部(33)に挿し通すことによって、配線(90)の無理な取り回しを抑えることができる。そのため、足跨ぎ性を確保するためにダウンチューブ(3)の下端部の位置を低く設定しても、配線(90)の変形、断線等のリスクを抑えることができる。
【0084】
第3の態様の電動自転車用のフレーム(10)は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現される。第3の態様の電動自転車用のフレーム(10)は、ダウンチューブ(3)の後方に位置するように、ブラケット(2)に連結されるシートチューブ(4)と、ダウンチューブ(3)とシートチューブ(4)とに当たる補強用の上ガセット(92)とを更に備える。
【0085】
第3の態様の電動自転車用のフレーム(10)によれば、上ガセット(92)によって、ダウンチューブ(3)とシートチューブ(4)とを効果的に補強することができ、足跨ぎ性を確保しながら、ダウンチューブ(3)やシートチューブ(4)が変形、破損等することを抑えることができる。
【0086】
第4の態様の電動自転車用のフレーム(10)は、第1から第3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第4の態様の電動自転車用のフレーム(10)において、ブラケット(2)は、ダウンチューブ(3)内の配線(3)を後方に引き出すように設けられた開口部(27)を有する。開口部(27)は、第1開口部分(27A)と第2開口部分(27B)とを含む。第1開口部分(27A)は、ダウンチューブ(3)の開口縁部(31)の内側に位置し、ダウンチューブ(3)の内部に直接つながるように形成されている。第2開口部分(27B)は、開口縁部(31)の外側に位置するように、第1開口部分(27A)に連続して形成されている。第2開口部分(27B)は、切欠部(33)を通じてダウンチューブ(3)内から引き出された配線(90)が挿し通されるように構成されている。
【0087】
第4の態様の電動自転車用のフレーム(10)によれば、ダウンチューブ(3)において、開口縁部(31)に囲まれた開口(310)とつながるように切欠部(33)が形成されるとともに、ブラケット(2)において、開口縁部(31)の内側の第1開口部(27A)とつながるように第2開口部(27B)が形成されているので、ダウンチューブ(3)内を通した配線(90)を、この切欠部(33)と第2開口部(27B)を利用して挿し通すことによって、配線(90)の無理な取り回しを抑えることができる。そのため、配線(90)の変形、断線等のリスクを低減することができる。
【0088】
第1の態様の電動自転車(1)は、第1から第4のいずれか一つの態様の電動自転車用のフレーム(10)と、フレーム(10)に装着されるバッテリー(12)とを備える。
【0089】
第1の態様の電動自転車(1)によれば、フレーム(10)が備えるダウンチューブ(3)において、開口縁部(31)に囲まれた開口(310)とつながるように切欠部(33)が形成されているので、ダウンチューブ(3)内を通した配線(90)を、この切欠部(33)に挿し通すことによって、配線(90)の無理な取り回しを抑えることができる。そのため、配線(90)の変形、断線等のリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 電動自転車
10 フレーム
12 バッテリー
2 ブラケット
21 前壁部
27 開口部
27A 第1開口部分
27B 第2開口部分
3 ダウンチューブ
31 開口縁部
33 切欠部
4 シートチューブ
90 配線
92 上ガセット