(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20231127BHJP
B29C 48/295 20190101ALI20231127BHJP
B29C 48/53 20190101ALI20231127BHJP
B29C 48/535 20190101ALI20231127BHJP
B29C 48/615 20190101ALI20231127BHJP
B29C 48/64 20190101ALI20231127BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20231127BHJP
【FI】
B29C44/00 E
B29C48/295
B29C48/53
B29C48/535
B29C48/615
B29C48/64
B29C48/395
(21)【出願番号】P 2019146356
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509292076
【氏名又は名称】株式会社 日本油機
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 敦
(72)【発明者】
【氏名】山本 智史
(72)【発明者】
【氏名】並木 和也
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-098335(JP,A)
【文献】特開2018-058267(JP,A)
【文献】国際公開第2017/007032(WO,A1)
【文献】特開2019-018522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0230223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/
B29C 45/
B29C 48/
B29C 67/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体の製造装置であって、
上流側に設けられ、熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、
下流側に設けられ、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、
前記可塑化ゾーンは、圧縮された前記溶融樹脂の密度が一定に保持される計量ゾーンを含み、
前記シリンダの内部に配置された、φ50mm以上のスクリュ外径を有するスクリュと
、
一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、
前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する圧力調整容器とを備え、
前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、
前記スクリュの前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm
3以上100cm
3以下となって
おり、
前記計量ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積Aと、
前記飢餓ゾーンにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、スクリュフライトの数を乗じた容積Bとの比率A/Bが、0.1~1.0の範囲となっていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
【請求項2】
前記製造装置は、押出製造装置であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理発泡剤としての窒素や二酸化炭素を用いた発泡射出成形の方法には、超臨界流体となる高圧の流体を溶融樹脂と剪断混錬して溶解させる方法がある。これに対し、特許文献1には、超臨界流体を必要とせずに比較的圧力の低い窒素や二酸化炭素等を用いて発泡成形体を成形する方法が開示されている。この方法によれば、特別な高圧装置を用いることなく低圧の物理発泡剤により、簡便なプロセスで成形体に微細な発泡セルを形成することができる。
【0003】
図12は、比較的低圧の物理発泡剤を用いて発泡成形を行う成形機の一例を示す参考概略構成図である。成形機100において、ホッパー130より供給された樹脂ペレットは、フィードゾーン112で余熱を与えられ、圧縮ゾーン113および計量ゾーン114を経て、溶融圧縮される。そして、シールゾーン115において溶融樹脂の下流への供給量が制限され、飢餓ゾーン116において溶融樹脂の密度が低下するようになっている。飢餓ゾーン116では、導入口102を介して導入された比較的低圧の物理発泡剤が滞留して、低密度の溶融樹脂と接触し、溶融樹脂の内部に浸透(溶解)するようになっている。物理発泡剤が浸透した溶融樹脂は、再圧縮ゾーン117および再計量ゾーン118を通過して再混錬され、物理発泡剤の溶解量が安定するようになっている。再圧縮された溶融樹脂は、チェックリング119を経てスクリュ120の前方に移動する。このとき、当該溶融樹脂の内圧は、スクリュ背圧として制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図12に示した成形機100では、飢餓ゾーン116においてスクリュ120がシングルフライトとなっている。自動車部品等の比較的サイズの大きい部品を成形可能するために、成形機100をより大型化した場合、すなわちスクリュ120の外径(スクリュ径)をより大径とした場合、スクリュフライト121の深さが深くなることに伴い、スクリュ120における各スクリュフライト121の間に堆積する溶融樹脂の絶対量が増大する。この場合、溶融樹脂の体積の増加率に対して溶融樹脂の表面積の増加率は小さいことから、単位体積当たりの溶融樹脂に対する物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積が低下する。これにより、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が不足し、物理発泡剤が十分に浸透しないという問題が生じるおそれがあった。このような問題は、成形体の発泡性能を低下させる要因となる。なお、飢餓ゾーン116への溶融樹脂の供給量を減少させ、各スクリュフライト121間に滞留する溶融樹脂の量を減らすことで、上記問題の回避を図ろうとした場合、飢餓ゾーン116において、シリンダ110と溶融樹脂との摩擦抵抗が減少することに起因して、飢餓ゾーン116における溶融樹脂の移動速度が低下し、可塑化時間が長くなるという問題が生じる。これは、成形サイクル時間の長時間化や樹脂替えが困難になるという問題等の要因となるため好ましくない。
【0006】
ここで、
図13を用いて、スクリュ120が1回転することに伴い移動する溶融樹脂の最大量について説明する。計量ゾーン114において、スクリュ120が1回転することに伴い下流側に移動する樹脂の最大量は、隣接するスクリュフライト121間の軸回り1周あたりの容積Aである。また、飢餓ゾーン116において、スクリュ120が1回転することに伴い下流側に移動する樹脂の最大量は、隣接するスクリュフライト121間の軸回り1周当たりの容積Bである。このとき、容積Aと容積Bの差を大きくすると、すなわち、容積Aに対して容積Bを大きくすると、飢餓ゾーン116は、飢餓状態となりやすくなる。「飢餓状態」とは、溶融樹脂が飢餓ゾーン116内に充満せずに未充満となる状態、または、溶融樹脂の密度が低下した状態をいう。しかし、容積Aと容積Bとの差が大きくなり過ぎると、飢餓ゾーン116の容積に対して、そこに滞留する溶融樹脂量が著しく減り、飢餓ゾーン116において物理発泡剤の滞留量が増大してしまう。この場合、溶解していない物理発泡剤(余剰ガス)が、再圧縮ゾーン117(
図12参照)にて多く巻き込まれることにより、成形体に破泡(大径の空隙)が発生し、成形体の発泡性能が低下してしまうおそれがあった。このような問題は成形機100が押出成形を行う成形機の場合でも生じうる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、飢餓ゾーンにおいて溶融樹脂を常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧し成形を行う製造装置をより大型化した場合でも、すなわちスクリュ径をより大径とした場合でも、成形体内部に微細セルが形成される良好な成形を実現でき、成形体の発泡性能が低下することのない製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の発泡成形体の製造装置は、熱可塑性樹脂が可塑化溶融して溶融樹脂となる可塑化ゾーンと、前記溶融樹脂が飢餓状態となる飢餓ゾーンとを有し、前記飢餓ゾーンへの物理発泡剤の導入口が設けられたシリンダと、前記シリンダの内部に配置された、φ50mm以上のスクリュ外径を有するスクリュと、一定圧力の前記物理発泡剤を、前記導入口を介して前記飢餓ゾーンに導入し、前記飢餓ゾーンを常時前記一定圧力に保持する圧力調整容器とを備え、前記スクリュは、前記飢餓ゾーンにおいて多条フライト構造となっており、前記スクリュの前記多条フライト構造は、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が、5cm3以上100cm3以下となっている。
【0009】
このような構成によれば、飢餓ゾーンにおいて溶融樹脂を、常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧して成形を行う押出製造装置をより大型化した場合、すなわちスクリュ径をより大径とした場合でも、飢餓ゾーンにおけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。これにより、発泡成形体の内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現でき、発泡成形体の発泡性能が低下するのを抑制できる。換言すると、飢餓ゾーンを比較的低圧の物理発泡剤で加圧する押出製造装置において、装置をより大型化した場合、すなわちスクリュ径をより大径とした場合でも、飢餓ゾーンにおけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。これにより、成形体の発泡性能が低下することのない良好な発泡成形を実現でき、成形体の内部に微細な発泡セルを安定的に形成することができる。また、飢餓ゾーンにおいて隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が5cm3~100cm3となっているため、飢餓ゾーンにおいて、飢餓状態を維持しつつ、溶融樹脂を下流に供給する能力が維持されるとともに、隣接するスクリュフライト間に堆積する樹脂量が過多となることによる物理発泡剤の浸透効率の低下が抑制される。これにより、成形体における発泡セルサイズの肥大化や破泡の発生等をより確実に抑えることができ、発泡状態が良好な成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飢餓ゾーンにおいて溶融樹脂を常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧して成形を行う製造装置をより大型化した場合、すなわちスクリュ径をより大径とした場合でも、発泡成形体の内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現でき、発泡成形体の発泡性能が低下するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る発泡成形体の製造装置を示す概略構成図である。
【
図2】同、発泡成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】同、スクリュの一部を示すものであり、スクリュの寸法を説明するための概略図である。
【
図5】スクリュの一部を示すものであり、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積について説明するための概略図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る発泡成形体の製造装置に用いられるスクリュの2条フライト構造部の一部を示す概略図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る発泡成形体の製造装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図8】同、スクリュの3条フライト構造部の一部を示す概略図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る発泡成形体の製造装置を用いて行った評価の条件および結果を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る発砲成形体の製造装置を示す概略構成図である。
【
図12】成形機を示すものであって、課題を説明するための参考概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、
図1に示す製造装置1を用いて発泡成形体を製造する。製造装置1は、射出成形装置(射出製造装置)である。製造装置1は、主に、可塑化シリンダ(シリンダ)10と、シリンダ10の内部に、軸回りに回転自在かつ軸方向に進退自在に配置された可塑化スクリュ(スクリュ)20と、物理発泡剤をシリンダ10に供給するボンベ(物理発泡剤供給機構)50と、金型が設けられた型締めユニット(図示せず)と、シリンダ10および型締めユニットを動作制御するための制御装置(図示せず)とを備えている。
シリンダ10内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、
図1における右手から左手に向かって流動するようになっている。以下、シリンダ10の内部において、
図1における右手を「上流」または「後方」とし、
図1における左手を「下流」または「前方」とする。
【0013】
製造装置1では、シリンダ10内のスクリュ20の回転により、樹脂ペレットが可塑化溶融し、溶融樹脂がシリンダ10内の前方側に送られる。また、溶融樹脂がシリンダ10内の前方側に送られるとともに、スクリュ20が後方に移動して溶融樹脂の計量が行われる。また、スクリュ20は、射出時に前方に移動するようになっている。
【0014】
シリンダ10は、上流側に設けられた可塑化ゾーン40と、下流側に設けられた飢餓ゾーン16とを有している。可塑化ゾーン40は、熱可塑性樹脂が可塑化溶融されて溶融樹脂となるゾーンである。飢餓ゾーン16は、溶融樹脂が飢餓状態となるゾーンである。「飢餓状態」とは、溶融樹脂が飢餓ゾーン16内に充満せずに未充満となる状態、または、溶融樹脂の密度が低下した状態をいう。よって、飢餓ゾーン16内には、溶融樹脂が占有する部分以外の空間が存在していてもよい。
【0015】
シリンダ10は、上流側から下流側に向かって順に、フィードゾーン12と、圧縮ゾーン13と、計量ゾーン14と、シールゾーン15と、飢餓ゾーン16と、再圧縮ゾーン17と、再計量ゾーン18とを有している。フィードゾーン12と、圧縮ゾーン13と、計量ゾーン14とは、可塑化ゾーン40を構成している。フィードゾーン12は、熱可塑性樹脂のペレットに余熱が与えられるゾーンである。圧縮ゾーン13は、熱可塑性樹脂が剪断混錬されて可塑化溶融され、溶融樹脂が圧縮されるゾーンである。計量ゾーン14は、圧縮された溶融樹脂の密度が一定に保持されるゾーンである。シールゾーン15は、下流への溶融樹脂の供給量が制限されるゾーンである。再圧縮ゾーン17は、溶融樹脂が再圧縮されるゾーンである。再計量ゾーン18は、溶融樹脂が計量されるゾーンである。
なお、図示は省略するが、シールゾーン15と飢餓ゾーン16との間に、溶融樹脂の移動速度を調整するゾーンや、溶融樹脂を混錬するフライト構造が設けられたゾーンをさらに設けてもよい。
【0016】
シリンダ10には、飢餓ゾーン16に物理発泡剤を導入するための開口として導入口2が設けられている。この導入口2には、後述する圧力調整容器5が接続されている。圧力調整容器5には、ボンベ50が減圧弁51および圧力計52を介して、配管54により接続されている。ボンベ50は、圧力調整容器5を介してシリンダ10内に物理発泡剤を供給するようになっている。
【0017】
図2に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態の発泡成形体の製造方法について説明する。
(1)熱可塑性樹脂を可塑化溶融する。
まず、シリンダ10の可塑化ゾーン40において、熱可塑性樹脂を可塑化溶融し、溶融樹脂とする(
図2のステップS1)。熱可塑性樹脂としては、目的とする耐熱性や成形体の用途に応じて種々の樹脂を使用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の熱可塑性樹脂、及びこれらの複合材料を用いることができる。特に結晶性樹脂が微細セルを形成しやすいので望ましい。これら熱可塑性樹脂は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂にガラス繊維、タルク、カーボン繊維、セラミック等の各種無機フィラー、セルロースナノファイバー、セルロース、木粉等の有機フィラーを混練したものを用いることもできる。熱可塑性樹脂には、発泡核剤として機能する無機フィラー、有機フィラーや溶融張力を高める添加剤を混合することが好ましい。これらを混合することで、発泡セルを微細化することができる。また、熱可塑性樹脂は、必要に応じてその他の汎用の各種添加剤を含むものであってもよい。
【0018】
スクリュ20が内設されたシリンダ10内において、熱可塑性樹脂の可塑化溶融が行われる。シリンダ10の外壁面にはバンドヒータ(図示せず)が配設されており、これによりシリンダ10が加熱され、さらにスクリュ20の回転による剪断発熱が加わり、熱可塑性樹脂が可塑化溶融するようになっている。
【0019】
(2)飢餓ゾーンの圧力を保持する。
次に、一定圧力の物理発泡剤を圧力調整容器5に供給し、圧力調整容器5から飢餓ゾーン16に一定圧力の加圧流体を導入して、飢餓ゾーン16を前記一定圧力に保持する(
図2のステップS2)。
【0020】
物理発泡剤としては、加圧流体が用いられる。本実施の形態において「流体」とは、液体、気体、超臨界流体のいずれかを意味する。また、物理発泡剤は、コストや環境負荷の観点から、二酸化炭素、窒素等が好ましい。本実施の形態の物理発泡剤の圧力は比較的低圧であるため、例えば、窒素ボンベ、二酸化炭素ボンベ、空気ボンベ等の流体が貯蔵されたボンベ50から、減圧弁51により一定圧力に減圧して取り出した流体を用いることができる。この場合、昇圧装置が不要となるため、製造装置全体のコストを低減できる。なお、必要であれば所定の圧力まで昇圧した流体を物理発泡剤として用いてもよい。例えば、物理発泡剤として窒素を使用する場合、以下の方法で物理発泡剤を生成できる。まず、大気中の空気をコンプレッサーで圧縮しながら窒素分離膜を通して窒素を精製する。次に、精製した窒素をブースターポンプやシリンジポンプ等を用いて所定圧力まで昇圧し、物理発泡剤を生成する。
【0021】
飢餓ゾーン16に導入する物理発泡剤の圧力は一定であり、導入される物理発泡剤と同一の一定圧力に飢餓ゾーン16の圧力は保持される。この物理発泡剤の圧力は、0.5MPa~12MPaが好ましく、1MPa~10MPaがより好ましく、1MPa~8MPaがさらにより好ましい。溶融樹脂の種類により最適な圧力は異なるが、物理発泡剤の圧力を1MPa以上とすることで、発泡させるのに必要な量の物理発泡剤を溶融樹脂内に浸透させることができ、12MPa以下とすることで、発泡成形体の耐熱性を向上させることができる。12MPaより大きい圧力(高圧)で製造すると、発泡成形体の発泡セル自体が高圧状態となっており、発泡成形体を高温にすると後膨れという現象が発生するため、発泡成形体の耐熱性が低下する。これに対し、12MPa以下の圧力(低圧)で発泡させると、そのような現象の発生は抑制され、発泡成形体の耐熱性が向上する。
なお、溶融樹脂を加圧する物理発泡剤の圧力が「一定である」とは、所定圧力に対する圧力の変動幅が、好ましくは±20%以内、より好ましくは±10%以内であることを意味する。飢餓ゾーン16の圧力は、例えば、シリンダ10の導入口2に対向する位置に設けられた圧力センサ(図示せず)により測定される。
【0022】
ボンベ50から圧力調整容器5および導入口2を介して、飢餓ゾーン16へ物理発泡剤が供給される。物理発泡剤は、減圧弁51を用いて所定の圧力に減圧した後、昇圧装置等を経ることなく、導入口2から飢餓ゾーン16に導入される。本実施の形態では、シリンダ10に導入する物理発泡剤の導入量、導入時間等を制御しない。そのため、それらを制御する機構、例えば、逆止弁や電磁弁等を用いた駆動弁は不要であり、導入口2は、駆動弁を有さず、常に開放されている。本実施の形態では、ボンベ50から供給される物理発泡剤により、減圧弁51から圧力調整容器5を経て、シリンダ10内の飢餓ゾーン16まで、一定の物理発泡剤の圧力に保持されている。
【0023】
また、物理発泡剤の導入口2は、従来の製造装置の物理発泡剤の導入口と比較して内径が大きい。このため、比較的低圧の物理発泡剤であっても、シリンダ10内に効率良く導入されるようになっている。また、溶融樹脂の一部が導入口2に接触して固化した場合であっても、内径が大きいため、完全に塞がることなく導入口として機能する。例えば、シリンダ10の内径が大きい場合、すなわち、シリンダ10の外径が大きい場合に、導入口2の内径を大きくしやすい。一方、導入口2の内径が大き過ぎる場合、溶融樹脂の滞留が発生して成形不良の原因となり、また、導入口2に接続する圧力調整容器5が大型化して装置全体のコストが上昇してしまう。具体的には、導入口2の内径は、シリンダ10の内径の20%~100%が好ましく、30%~80%がより好ましい。または、導入口2の内径は、シリンダ10の内径に依存せず、3mm~150mmが好ましく、5mm~100mmがより好ましい。なお、これら内径は、導入口2が長穴もしくは楕円穴の場合、短径側の直径を指す。
【0024】
次に、導入口2に接続する圧力調整容器5(導入速度調整容器)について説明する。圧力調整容器5は、物理発泡剤の圧力と、シリンダ10内の飢餓ゾーン16の圧力とを同一の一定圧力とし、飢餓ゾーン16を前記一定圧力に保持する機能を担っている。例えば、飢餓ゾーン16において物理発泡剤が大量に消費された場合に、物理発泡剤の供給が間に合わず、飢餓ゾーン16の圧力が急減するおそれがあるが、圧力調整容器5により物理発泡剤を安定的に供給することが可能となり、飢餓ゾーン16の圧力変動を抑制することができる。また、圧力調整容器5は、一定以上の容積を有するように形成され、シリンダ10へ導入される物理発泡剤の流速を緩やかにし、圧力調整容器5内に物理発泡剤が滞留する時間が確保されている。圧力調整容器5は、周囲に配置されたバンドヒーター(図示せず)により加熱されたシリンダ10に直接接続されており、シリンダ10の熱は圧力調整容器5にも伝導するようになっている。これにより、圧力調整容器5内部の物理発泡剤は加温され、物理発泡剤と溶融樹脂との温度差が小さくなり、物理発泡剤が接触する溶融樹脂の温度を極度に低下させることが抑制され、物理発泡剤の溶融樹脂への溶解量(浸透量)が安定するようになっている。すなわち、圧力調整容器5は、物理発泡剤の加温機能を有するバッファー容器として機能するようになっている。一方で、圧力調整容器5は、その容積が大き過ぎる場合、装置全体のコストが上昇する。圧力調整容器5の容積は、飢餓ゾーン16に存在する溶融樹脂の量にも依存するが、5mL~20Lが好ましく、10mL~2Lがより好ましく、10mL~1Lがさらにより好ましい。圧力調整容器5の容積をこの範囲とすることで、コストを考慮しながら物理発泡剤が滞留する時間を確保できる。また、圧力調整容器5は、導入口2に接続し、その内径が一定となっている筒状の第1ストレート部5aと、第1ストレート部5aに隣接して設けられ、導入口2から離れるに従って、その内径が大きくなるテーパー部5bと、テーパー部5bに隣接して設けられ、その内径が一定となっている筒状の第2ストレート部5cとを有している。圧力調整容器5では、内径が小さい第1ストレート部5aと、内径が大きい第2ストレート部5cとが、それぞれの中心軸が同一直線上となるように設けられ、第1ストレート部5aと第2ストレート部5cとがテーパー部5bにより結合されている。圧力調整容器5の内径の最大値(すなわち第2ストレート部5cの内径)は、導入口2の内径より大きくなっている。このため、溶融樹脂が圧力調整容器5の内部に侵入した場合であっても、物理発泡剤の流通路が確保されやすい。すなわち、物理発泡剤の導入路が、固化した溶融樹脂によって塞がれるのを抑制できる。また、圧力調整容器5の下部に、より多量の物理発泡剤が滞留しやすくなる。圧力調整容器5の下部にはシリンダ10からの熱が伝わるため、より多量の物理発泡剤が効率的に加温されるようになる。これにより、物理発泡剤の溶融樹脂への溶解量(浸透量)がより安定する。
【0025】
また、物理発泡剤は溶融樹脂に接触して浸透することにより、シリンダ10内で消費されるようになっている。飢餓ゾーン16の圧力を一定に保持するために、消費された分の物理発泡剤が圧力調整容器5から飢餓ゾーン16へ導入されることとなる。圧力調整容器5の容積が小さ過ぎる場合、物理発泡剤の置換頻度が高くなるため、物理発泡剤の温度が不安定となり、その結果、物理発泡剤の供給が不安定になる虞がある。このため、圧力調整容器5は、1~10分間に可塑化シリンダにおいて消費される量の物理発泡剤が滞留できる容積を有していることが好ましい。また、例えば、圧力調整容器5の容積は、圧力調整容器5が接続される飢餓ゾーン16の容積の0.1倍~5倍が好ましく、0.5倍~2倍がより好ましい。本実施の形態では、飢餓ゾーン16の容積とは、溶融樹脂を含まない空のシリンダ10において、スクリュ20の軸の直径およびスクリュフライトの深さが一定となっている部分(後述する深溝部20D)が位置している領域の容積をいう。なお、圧力調整容器5は、シリンダ10と別個体の容器としても、シリンダ10と一体に形成し、シリンダ10の一部を構成するものとしてもよい。
【0026】
(3)溶融樹脂を飢餓状態とする。
次に、溶融樹脂を飢餓ゾーン16に流動させ、飢餓ゾーン16において溶融樹脂を飢餓状態とする(
図2のステップS3)。本実施の形態では、溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まる圧縮ゾーン13を、飢餓ゾーン16の上流に設けることにより、飢餓ゾーン16において溶融樹脂を飢餓状態としている。飢餓状態は、飢餓ゾーン16の上流から飢餓ゾーン16への溶融樹脂の送り量と、飢餓ゾーン16からその下流への溶融樹脂の送り量とのバランスにより決定される。飢餓ゾーン16は、前者の方が少ないと飢餓状態となる。
【0027】
スクリュ20は、可塑化溶融状態の低密度の樹脂を飢餓ゾーン16において常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧する製造装置1に用いられるスクリュである。
図3に示すように、スクリュ20は、上流側に位置する第1移行部(第1溝深さ移行部)20Aと、第1移行部20Aの下流側に隣接する第1浅溝部20Bと、第1浅溝部20Bの下流側に隣接するシール部20Cと、シール部20Cの下流側に隣接する深溝部20Dと、深溝部20Dの下流側に隣接する第2移行部(第2溝深さ移行部)20Eと、第2移行部20Eの下流側に隣接する第2浅溝部20Fとを有している。第1移行部20Aは、圧縮ゾーン13に位置している。第1浅溝部20Bは、計量ゾーン14に位置している。シール部20Cは、シールゾーン15に位置している。深溝部20Dは、飢餓ゾーン16に位置している。第2移行部20Eは、再圧縮ゾーン17に位置している。第2浅溝部20Fは、再計量ゾーン18に位置している。
【0028】
ここで、
図4に示すように、スクリュ20において、スクリュ径をD、スクリュ軸の直径をd(スクリュ20における溝部の直径d)、スクリュフライトの深さ(フライト深さ)をh、スクリュピッチ(隣接するスクリュフライトの間隔)Pとする。フライト深さhは、h=(D-d)/2で表される。なお、Dをスクリュ外径といい、dをスクリュ内径ということもできる。本実施の形態では、スクリュ外径は、φ50mm以上となっている。
【0029】
図3に戻り説明する。スクリュ20における可塑化ゾーン40、再圧縮ゾーン17および再計量ゾーン18に対応する部分は、シングルフライト構造、すなわち、スクリュ20の外周面に1つのスクリュフライト7が形成された構造となっている。
第1移行部20Aは、上流側から下流側に向かって、スクリュ軸の直径dが徐々に大きくなり、フライト深さhが段階的に小さくなるように形成されている。この第1移行部20Aは、上流側のフィードゾーン12に位置する部分と比較して、スクリュ軸の直径dが大きくなっており、フライト深さhが小さくなっている。第1移行部20Aは、隣接するスクリュフライト7間の溝が上流側から下流側に向かって段階的に浅くなるように形成されているということもできる。なお、第2移行部20Eは、第1移行部20Aと略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0030】
第1浅溝部20Bは、第1移行部20Aにおける大径部分(第1移行部20Aにおける最も下流側の部分)と、スクリュ軸の直径dおよびフライト深さhが略同一となっている。第1浅溝部20Bは、隣接するスクリュフライト7間の溝が浅くなるように形成されているということもできる。なお、第2浅溝部20Fは、第1浅溝部20Bと略同様であるため、重複する説明を省略する。
【0031】
スクリュ20におけるシールゾーン15に対応する部分には、スクリュフライトが形成されていない。シール部20Cは、第1浅溝部20Bと略同一のスクリュ軸の直径dを有し、スクリュフライトの代わりにスクリュ軸に浅い溝が複数形成されている。第1浅溝部20Bおよびシール部20Cは、スクリュ軸の直径が大きくなっており、シリンダ10の内壁とスクリュ20とのクリアランスが縮小するため、下流に送られる樹脂の供給量が低減される。これにより、溶融樹脂の流動抵抗が大きくなる。本実施の形態において、第1浅溝部20Bおよびシール部20Cは、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構である。なお、シール部20Cは、物理発泡剤の逆流、すなわち、シール部20Cの下流側から上流側への物理発泡剤の移動を抑制する効果も奏する。なお、シール部20Cは、スクリュフライトの代わりに、スクリュ20とは別部材の(複数の溝が設けられた)リングが設けられた構造としてもよい。
【0032】
スクリュ20の軸の直径dを大きくした場合や、スクリュ20とは別部材のリングを設けた場合、シリンダ10の内周面とスクリュ20とのクリアランスが縮小し、下流に送られる樹脂の供給量が低減される。これにより、溶融樹脂の流動抵抗が大きくなる。本実施の形態において、少なくとも第1移行部20Aは、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構となっている。第1移行部20A、第1浅溝部20Bおよびシール部20Cの存在により、上流側から飢餓ゾーン16に供給される樹脂流量が低下し、上流側で溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まり、下流側の飢餓ゾーン16では溶融樹脂が未充満(すなわち飢餓状態)となる。
【0033】
なお、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、上流側から飢餓ゾーン16へ供給される樹脂流量を制限するために一時的に溶融樹脂が通過する流路面積を縮小させる機構であれば、特に制限されない。なお、流動抵抗を高める機構としては、スクリュフライトが他の部分とは逆向きに設けられた構造や、スクリュ上に設けられたラビリンス構造等が挙げられる。
【0034】
また、溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、スクリュとは別部材のリング等としてスクリュに設けてもよいし、スクリュの構造の一部としてスクリュと一体に設けてもよい。溶融樹脂の流動抵抗を高める機構は、スクリュとは別部材のリング等として設けると、リングを変更することにより溶融樹脂の流路であるクリアランスの大きさを変更できるので、容易に溶融樹脂の流動抵抗の大きさを変更できるという利点がある。
【0035】
スクリュ20における深溝部20D(飢餓ゾーン16に対応する部分)は、溶融樹脂の飢餓状態を促進するために、上流側の可塑化ゾーン40に位置する部分と比較して、スクリュ軸の直径dが小さくなっており、フライト深さhが大きくなっている。深溝部20Dは、後述する2条フライト構造となっており、隣接するスクリュフライト21,22の間の溝が深くなるように形成されているということもできる。
【0036】
深溝部20Dは、第1移行部20Aおよび第1浅溝部20Bと比較して、飢餓ゾーン16全体に亘って、飢餓ゾーン16に位置する部分のスクリュ軸の直径dが小さく、かつフライト深さhが大きい構造を有していることが好ましい。さらに、深溝部20Dは、飢餓ゾーン16全体に亘って、スクリュ20の軸の直径dおよびフライト深さhが、略一定であることが好ましい。これにより、飢餓ゾーン16における圧力を略一定に保持し、溶融樹脂の飢餓状態を安定させることができる。本実施の形態では、飢餓ゾーン16に対応する深溝部20Dは、スクリュ20の軸の直径dおよびフライト深hが一定となっている。
【0037】
ここで、スクリュが1回転することに伴い移動する溶融樹脂の最大量について、
図5を用いて説明する。
図5は、スクリュ20のうち、計量ゾーン14に対応する一部の部分と、シールゾーン15に対応する部分と、飢餓ゾーン16に対応する一部の部分とを示す図である。なお、
図5では、説明のため、飢餓ゾーン16に対応する部分を、多条フライトではなくシングルフライトとしている。
計量ゾーン14において、スクリュが1回転することに伴い下流側に移動する(送り出される)溶融樹脂の最大量は、隣接するスクリュフライト7間の軸回り1周あたりの容積となる。(これを容積Aとする。)また、飢餓ゾーン16において、スクリュが1回転することに伴い下流側に移動する(送り出される)溶融樹脂の最大量は、隣接するスクリュフライト21間の軸回り1周あたりの容積となる。(これを容積Bとする。)
【0038】
(多条フライト構造)
図3に戻り説明する。本実施の形態では、深溝部20D(飢餓ゾーン16に対応する部分)は、多条フライト構造となっている。
図3では、多条フライト構造の一例として2条フライト構造(ダブルフライト構造)としている。深溝部20Dは、その外周面に形成された第1スクリュフライト21と、第2スクリュフライト22とを備えている。多条フライト構造によれば、溶融樹脂を複数のフライトに分配して移送することができる。また、多重フライト構造とすることで、シングルフライトとした場合と同一量の溶融樹脂を、複数に分割して移送することができる。これにより、製造装置1をより大型化し、スクリュ径Dをより大径とした場合でも、隣接するスクリュフライト間の容積を過度に増大させることなく、溶融樹脂を下流に送ることができる。また、多条フライト構造によれば、スクリュ径Dをより大径とした場合でも、隣接するフライト間の容積が増大するのを抑えることができる。このため、隣接するフライト間に堆積する溶融樹脂の量を低減でき、飢餓状態を安定させることができる。これにより、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制され(物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積を増やすことができ)、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保されるため、飢餓ゾーン16における物理発泡剤の浸透性を高めることができる。
【0039】
図6は、2条フライトの一部を拡大した図である。溶融樹脂が移送される経路には、第1スクリュフライト21により移送される経路と、第2スクリュフライト22により移送される経路との2経路がある。ここで「隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積」を容積Cとする。容積Cは、第1スクリュフライト21と第2スクリュフライト22との間の軸回り1周あたりの容積となる。
図6では、1箇所の容積Cを斜線部としている。このとき、飢餓ゾーン16において、スクリュが1回転することに伴い下流側に移動する溶融樹脂の最大量、すなわち
図5で示した容積Bは、容積Cに、スクリュフライトの数「2」を乗じたものとなる。
【0040】
ここで、多条フライト構造の別の例として、深溝部20D(飢餓ゾーン16に対応する部分)を3条フライトとした場合について説明する。
図7は、深溝部20Dが3条フライトとなっているスクリュ20を備えた製造装置1の全体図であり、
図8は、3条フライトの一部を拡大した図である。深溝部20Dには、第1スクリュフライト21と、第2スクリュフライト22と、第3スクリュフライト23とが設けられている。この場合、溶融樹脂が移送される経路には、第1スクリュフライト21により移送される経路と、第2スクリュフライト22により移送される経路と、第3スクリュフライト23により移送される経路との3経路がある。この場合、隣接するスクリュフライト間の軸回り1周当たりの容積Cは、第1スクリュフライト21と第2スクリュフライト22との間の軸回り1周あたりの容積と、第2スクリュフライト22と第3スクリュフライト23との間の軸回り1周あたりの容積と、第3スクリュフライトと第1スクリュフライトとの間の軸回り1周あたりの容積とがある。
図8では、1箇所の容積Cを斜線部としている。このとき、飢餓ゾーン16において、スクリュが1回転することに伴い下流側に移動する溶融樹脂の最大量、すなわち
図5で示した容積Bは、容積Cに、スクリュフライトの数「3」を乗じたものとなる。一般化すると、容積Bは、n条フライト(nは2以上の整数)の場合、容積C×nとなる。
【0041】
本実施の形態では、多条フライト構造における隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積Cは、5cm3以上100cm3以下となっている。容積Cは、スクリュ径Dにより最適値が異なるが、少なくとも5cm3以上であることが好ましい。容積Cが5cm3未満である場合、飢餓ゾーン16において飢餓状態を維持すること、および飢餓ゾーン16において溶融樹脂を下流に送る供給能力を維持すること、の両方を成立させることが困難となるためである。また、容積Cは100cm3以下であることが好ましい。容積Cが100cm3より大きい場合、隣接するスクリュフライト間に堆積する樹脂量が過多となり、飢餓ゾーン16での物理発泡剤の浸透効率が低下する。さらには、容積Cは、10cm3以上50cm3以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施の形態では、容積Aを容積Bで除した値(A/B)は、0.1以上1.0以下となっている。発泡成形体の発泡性能の低下を抑制できるとともに、ベントアップ(飢餓ゾーン16の導入口2から溶融樹脂が膨出する現象)の発生を抑制できるためである。さらには、A/Bは、0.4以上0.9以下となっていることがより好ましい。A/Bが、0.4未満である場合、飢餓ゾーン16における溶融樹脂量が小さくなり飢餓率は高くなるが、余剰ガスが多くなるため、発泡効率が低下するとともに、発泡成形体に破泡が生じやすくなる傾向がある。また、A/Bが0.9より大きい場合、飢餓率および物理発泡剤の溶解性が低下するとともに、ベントアップが発生しやすくなる傾向がある。
【0043】
また、スクリュ20が内設されているシリンダ10の内径(スクリュ20のスクリュ径D)は、40mm~300mmとなっている。本発明では例えば、次のように定義する。製造装置1を中型とする場合、シリンダ10の内径は、約40mm~約60mmとなる。製造装置1を大型とする場合、シリンダ10の内径は、約60mm~約300mmとなる。製造装置1を中型とした場合でも本発明の効果は十分に発揮されるが、製造装置1を大型とした場合、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下がより顕著となるため、本発明の効果がより発揮されることとなる。なお、シリンダ10の内径を例えば約40mm未満とした場合、スクリュ20における飢餓ゾーン16に対応する部分を多条フライトとせずにシングルフライトとしても、飢餓ゾーン16における隣接するフライト間の容積が小さく、そこに堆積する樹脂量が少ないため、成形体の発泡性能の低下は認められない傾向がある。なお、シリンダ10の内径の上限を300mmとしているのは、発泡射出成形機において、シリンダ10の内径は、実用上最大300mmとなっているためである。
【0044】
また、多条フライト部におけるスクリュピッチP(
図4参照)を、スクリュ20のスクリュ径Dで除した値(P/D)を、1.0より大きくしてもよい。P/Dは、一般的に1.0前後であるが、フライトを複数に分配する場合、P/Dを1.0より大きくし、隣接するフライト間に必要な最低限の容積を確保する必要があるためである。また、飢餓ゾーン16におけるP/Dを、計量ゾーン14におけるP/Dよりも大きくしてもよい。その場合、飢餓ゾーン16における溶融樹脂の送り速度が速くなり、飢餓ゾーン16の飢餓率を高くすることができる。
【0045】
なお、スクリュ20において、深溝部20D(飢餓ゾーン16に対応する部分)の多条フライト構造は、3条フライト以上としてもよい。また、飢餓ゾーン16以外における他の箇所を多条フライト構造としてもよい。当該他の箇所とは、例えば、スクリュ20における再圧縮ゾーン17、再計量ゾーン18等に対応する部分である。また、多条フライト構造において、サブフライトの厚さをメインフライトの厚さに比べて薄く形成してもよい。厚さとは、スクリュ20の軸方向に対する幅をいう。例えば2条フライトの場合(
図6参照)、第2スクリュフライト22の厚さを第1スクリュフライト21の厚さより薄く形成してもよい。
【0046】
また、飢餓ゾーン16における溶融樹脂の飢餓状態を安定化させるために、ホッパー30からシリンダ10へ供給する熱可塑性樹脂の供給量を制御してもよい。熱可塑性樹脂の供給量が多すぎると飢餓状態を維持することが困難となるためである。本実施の形態では、汎用のフィーダースクリュ(図示せず)を用いて、熱可塑性樹脂の供給量を制御する。熱可塑性樹脂の供給量が制限されることにより、再計量ゾーン18における溶融樹脂の計量速度が、圧縮ゾーン13での可塑化速度よりも大きくなる。この結果、飢餓ゾーン16における溶融樹脂の密度が安定に低下し、溶融樹脂への物理発泡剤の浸透が促進される。なお、ホッパー30からシリンダ10へ供給する熱可塑性樹脂の供給量を絞り過ぎると可塑化時間が長くなるため、好ましくない。
【0047】
また、本実施の形態において、溶融樹脂の流動方向における飢餓ゾーン16の長さは、溶融樹脂と物理発泡剤との接触面積や接触時間を確保するために長いほうが好ましいが、長過ぎると成形サイクルやスクリュ長さが長くなるという弊害が生じる。このため、飢餓ゾーン16の長さは、シリンダ10の内径の2倍~12倍が好ましく、4倍~10倍がより好ましい。また、飢餓ゾーン16の長さは、射出成形における計量ストロークの全範囲を賄うことが好ましい。すなわち、溶融樹脂の流動方向における飢餓ゾーン16の長さは、射出成形における計量ストロークの長さ以上であることが好ましい。
【0048】
また、溶融樹脂の可塑化計量および射出に伴ってスクリュ20は前方および後方に移動するが、飢餓ゾーン16の長さを計量ストロークの長さ以上とすることで、発泡成形体の製造中、常に、導入口2を飢餓ゾーン16内に配置することができる。換言すれば、発泡成形体の製造中にスクリュ20が前方および後方に動いても、飢餓ゾーン16以外のゾーンが、導入口2の位置に来ることはない。これにより、導入口2から導入される物理発泡剤は、発泡成形体の製造中、常に、飢餓ゾーン16に導入される。このように十分かつ適当な大きさ(長さ)を有する飢餓ゾーン16を設け、そこに一定圧力の物理発泡剤を導入することで、飢餓ゾーン16を一定圧力により保持しやすくなる。なお、本実施の形態において、飢餓ゾーン16の長さは、スクリュ20において、スクリュ20の軸の直径およびスクリュフライトの深さが一定である部分の長さ、すなわち深溝部20Dの長さと略同一となっている。
【0049】
なお、本実施の形態では、製造装置1が1つの飢餓ゾーン16を有しているものとしたが、飢餓ゾーン16の数はこれに限定されるものではない。例えば、溶融樹脂への物理発泡剤の浸透を促進するために、飢餓ゾーン16および導入口2を複数設け、複数の導入口2を介して物理発泡剤がシリンダ10に導入される構造としてもよい。
【0050】
(4)溶融樹脂と物理発泡剤とを接触させる。
次に、飢餓ゾーン16を一定圧力に保持した状態で、飢餓ゾーン16において、飢餓状態の溶融樹脂と、一定圧力の物理発泡剤とを接触させる(
図2のステップS4)。すなわち、飢餓ゾーン16において、溶融樹脂を物理発泡剤により一定圧力で加圧する。飢餓ゾーン16は、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)であり物理発泡剤が存在できる空間があるため、物理発泡剤と溶融樹脂とを効率的に接触させることができる。溶融樹脂に接触した物理発泡剤は、溶融樹脂に浸透して消費される。物理発泡剤が消費されると、圧力調整容器5中に滞留している物理発泡剤が飢餓ゾーン16に円滑に供給される。これにより、飢餓ゾーン16の圧力は一定圧力に保持され、溶融樹脂は一定圧力の物理発泡剤に接触し続ける。
【0051】
従来の物理発泡剤を用いた発泡成形では、可塑化シリンダに所定量の高圧の物理発泡剤を所定時間内に強制的に導入していた。このため、物理発泡剤を高圧力に昇圧し、溶融樹脂への導入量、導入時間等を正確に制御する必要があり、物理発泡剤が溶融樹脂に接触するのは、短い導入時間のみであった。これに対して本実施の形態では、シリンダ10に物理発泡剤を強制的に導入するのではなく、飢餓ゾーン16の圧力が一定となるように、一定圧力の物理発泡剤を連続的にシリンダ10内に供給し、連続的に物理発泡剤を溶融樹脂に接触させる。これにより、温度および圧力により決定される溶融樹脂への物理発泡剤の溶解量(浸透量)を、安定化させることができる。また、本実施の形態では、物理発泡剤が常に溶融樹脂に接触しているため、必要十分な量の物理発泡剤が溶融樹脂内に浸透するようになっている。これにより、本実施の形態に係る製造装置1で製造する発泡成形体は、従来の物理発泡剤を用いた成形方法と比較して、低圧の物理発泡剤を用いているにもかかわらず、発泡セルが微細となっている。
【0052】
また、本実施の形態に係る製造方法によれば、物理発泡剤の導入量、導入時間等を制御する必要がないため、逆止弁や電磁弁等の駆動弁、さらにこれらを制御する制御機構が不要となり、装置コストを抑えることができる。また、本実施の形態で用いる物理発泡剤は従来の物理発泡剤よりも低圧であるため装置負荷が小さいという利点がある。
【0053】
また、本実施の形態では、発泡成形体の製造中、常に、飢餓ゾーン16が一定圧力に保持される。つまり、シリンダ10内で消費された物理発泡剤を補うために、前記一定圧力の物理発泡剤を連続的に供給しながら、発泡成形体の製造方法の全ての工程が実施される。また、本実施の形態では、例えば、連続で複数ショットの射出成形を行う場合、射出工程、成形体の冷却工程および成形体の取出工程が行われている間も、次のショット分の溶融樹脂がシリンダ10内で準備されており、次のショット分の溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で加圧される。つまり、連続で行う複数ショットの射出成形では、シリンダ10内に、溶融樹脂と一定圧力の物理発泡剤が常に存在して接触している状態、つまり、シリンダ10内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で、可塑化計量工程、射出工程、成形体の冷却工程、取り出し工程等を含む、射出成形の1サイクルが行われる。同様に、押出成形等の連続成形を行う場合にも、シリンダ10内に、溶融樹脂と一定圧力の物理発泡剤が常に存在して接触している状態、つまり、シリンダ10内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で成形が行われる。
製造装置1を大型とした場合でも、適切な大きさの圧力調整容器5を設けることにより、シリンダ10内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で成形が行なわれることが担保され、成形体内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現できるという低圧の物理発泡剤を用いた成形方法の効果を享受できる。例えば、飢餓ゾーン16において物理発泡剤が大量に消費された場合に、物理発泡剤の供給が間に合わず、飢餓ゾーン16の圧力が急減する恐れがあるが、圧力調整容器5により安定的に物理発泡剤が供給されて、飢餓ゾーン16の圧力変動が抑制され、シリンダ10内で溶融樹脂が物理発泡剤により一定圧力で常時、加圧された状態で成形が行われることが可能となる。
【0054】
(5)溶融樹脂を発泡成形に成形する。
次に、物理発泡剤を接触させた溶融樹脂を発泡成形体に成形する(
図2のステップS5)。シリンダ10には、飢餓ゾーン16の下流に隣接する再圧縮ゾーン17が設けられている。スクリュ20の回転により、飢餓ゾーン16の溶融樹脂は再圧縮ゾーン17に流動するようになっている。再圧縮ゾーン17では、溶融樹脂が再圧縮され、圧力が高まるようになっている。物理発泡剤を含む溶融樹脂は、再圧縮ゾーン17において圧力調整され、スクリュ20の前方に押し出されて計量される。シリンダ10には、当該計量を行うためのゾーンとして、再圧縮ゾーン17の下流に隣接する再計量ゾーン18が設けられている。
【0055】
このとき、スクリュ20の前方に押し出された溶融樹脂の内圧は、スクリュ20の後方に接続する油圧モータ、油圧シリンダまたは電動モータ(不図示)により、スクリュ背圧として制御される。本実施の形態では、溶融樹脂から物理発泡剤を分離させずに均一相溶させ、樹脂密度を安定化させるため、スクリュ20の前方に押し出された溶融樹脂の内圧、すなわちスクリュ背圧は、一定に保持されている飢餓ゾーン16の圧力よりも1~6MPa程度高くなるように制御することが好ましい。なお、本実施の形態では、スクリュ20前方の圧縮された樹脂が上流側に逆流しないように、スクリュ20の先端にチェックリング19が設けられている。これにより、計量時、飢餓ゾーン16の圧力は、スクリュ20前方の樹脂圧力に影響されないようになっている。
【0056】
本実施の形態では、シリンダ10から金型内のキャビティ(図示せず)に、再計量ゾーン18で計量した溶融樹脂を射出充填して射出発泡成形を行う。射出発泡成形としては、金型のキャビティ内に、金型キャビティ容積の75%~95%の充填容量の溶融樹脂を充填して、気泡が拡大しながら金型キャビティを充填するショートショット法を用いてもよい。また、金型キャビティ容積の90%~100%の充填量の溶融樹脂を充填した後、キャビティ容積を拡大させて発泡させるコアバック法を用いてもよい。得られる発泡成形体は内部に発泡セルを有しており、熱可塑性樹脂の冷却時の収縮が抑制され、冷却歪が緩和されるため、ヒケやソリが軽減され、低比重の発泡成形体を得ることができる。
【0057】
本実施の形態に係る製造方法では、物理発泡剤の溶融樹脂への導入量、導入時間等を制御する必要がないため、複雑な制御装置を省略または簡略化することができ、装置コストを低減できる。また、飢餓ゾーン16を一定圧力に保持した状態で、飢餓ゾーン16において、飢餓状態の溶融樹脂と前記一定圧力の物理発泡剤とを接触させる。これにより、物理発泡剤の溶融樹脂に対する溶解量(浸透量)を単純な機構により安定化させることができる。
【0058】
(発泡成形体の評価)
製造装置1により製造された(射出)発泡成形体(成形品)の評価方法について説明する。熱可塑性樹脂としてタルクを20%混合したポリプロピレン(出光ライオンコンポジット製、4700G)を用いた。成形品の厚み(2.5mm)を一定とし、スクリュシリンダの径にあわせて、成形品の大きさを変更した(150mm角~800mm角)。ゲート部、中央部および流動末端部における成形品の発泡セルの状態を断面SEMにて評価した。視野1mm角における発泡セルを観察し、平均セルが50μm以下を合格とした。また、発泡セルの均一性に関しては、成形品を透かして目視で確認し、破泡が確認できるかどうかを評価した。
【0059】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて更に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例および比較例に限定されるものではない。
図9は、実施例および比較例をまとめた図である。
【0060】
[実施例1]
実施例1では、スクリュシリンダ内径φ56mmのスクリュを用い、発泡射出成形を行った。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはダブルフライト構造とした。スクリュ1回転に伴い移動する溶融樹脂の最大容量について、計量ゾーン14における容積Aを30cm3とし、飢餓ゾーン16における容積B(容積C×2経路)を38cm3とした。また、A/B(0.1~1.0が望ましい)を0.78とした。また、飢餓ゾーン16の多条フライトにおける隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積C(5cm3~100cm3が望ましい)を、19cm3とした。
金型に150mm角の平板を用い、減圧弁51の調整による窒素による物理発泡剤の圧力が8MPa、スクリュ背圧が10MPa、樹脂温度が180~210℃、金型温度が40℃という条件で、可塑化計量後、射出速度50mm/sで射出充填を行った。保圧20MPaの圧力にて2秒印加した後、金型を5mm開き3倍のコアバック発泡を行った。
【0061】
実施例1の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は22μmと小さいものであり良好であった。また、破泡は認められなかった。また、連続で100ショット成形したが、ベントアップは発生しなかった。
【0062】
[実施例2]
実施例2では、スクリュシリンダ内径φ80mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはダブルフライト構造とした。また、計量ゾーン14における容積Aを43cm3とし、飢餓ゾーン16における容積B(容積C×2経路)を52cm3とした。また、A/Bを0.82とした。また、容積Cを26cm3とした。それ以外については実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0063】
実施例2の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は28μmと小さいものであり良好であった。また、破泡は認められなかった。また、連続で100ショット成形したが、ベントアップは発生しなかった。
【0064】
[実施例3]
実施例3では、スクリュシリンダ内径φ100mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはダブルフライト構造とした。また、計量ゾーン14における容積Aを55cm3とし、飢餓ゾーン16における容積B(容積C×2経路)を86cm3とした。また、A/Bを0.63とした。また、容積Cを43cm3とした。また、金型は250×400mm角の平板を用いた。それ以外については実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0065】
実施例3の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は35μmと小さいものであり良好であった。また、破泡は認められなかった。また、連続で100ショット成形したが、ベントアップは発生しなかった。
【0066】
[実施例4]
実施例4では、スクリュシリンダ内径φ200mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはトリプルフライト構造とした。また、計量ゾーン14における容積Aを110cm3とし、飢餓ゾーン16における容積B(容積C×3経路)を171cm3とした。また、A/Bを0.64とした。また、容積Cを57cm3とした。また、金型は800mm角の平板を用いた。それ以外については実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0067】
実施例4の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は38μmと小さいものであり良好であった。また、破泡は認められなかった。また、連続で100ショット成形したがベントアップは発生しなかった。
【0068】
[比較例1]
比較例1では、スクリュシリンダ内径φ100mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはシングルフライト構造とした。また、計量ゾーン14における容積Aを55cm3とし、飢餓ゾーン16における容積Bを86cm3とした。また、A/Bを0.63とした。それ以外については実施例3と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0069】
比較例1の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は47μmであり、やや肥大していた。また、流動末端部に破泡が認められた。これは、シングルフライトで、容積Aと容積Bとの差が大きいため、飢餓ゾーン16において、隣接するフライト間に堆積する樹脂量が少なくなり、滞留する物理発泡剤の量が増大することで、溶けきれない余剰ガスが再圧縮時に巻き込まれたと推定される。
【0070】
[比較例2]
比較例2では、スクリュシリンダ内径φ200mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはダブルフライト構造とした。また、容積Cを105cm3とした。それ以外については実施例4と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0071】
比較例2の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、セル径が大きく、破泡が散見された。これは、飢餓ゾーン16において、隣接するスクリュフライト間に滞留する樹脂量が多くなり、物理発泡剤との接触面積が減少したことで、物理発泡剤の溶解量が不十分になったためと推定される。また、滞留する物理発泡剤の量が多くなり過ぎ、再圧縮時に余剰ガスが巻き込まれたと推定される。
【0072】
[比較例3]
比較例3では、スクリュシリンダ内径φ56mmのスクリュを用いた。また、飢餓ゾーン16におけるスクリュはダブルフライト構造とした。また、飢餓ゾーン16における容積Bを28cm3とした。また、A/Bを1.07とした(すなわち飢餓率を低くした)。それ以外については、実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0073】
比較例3では、ベントアップが多発し、樹脂の供給量を相当量絞りこまないと連続して成形することが困難であった。
【0074】
以上のように、本実施の形態に係る製造装置および製造方法にあっては、飢餓ゾーン16において溶融樹脂を、常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧して発泡成形を行う装置をより大型化した場合、すなわちスクリュ径をより大径とした場合であっても、飢餓ゾーン16におけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。このため、発泡成形体(成形品)の内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現でき、発泡成形体の発泡性能が低下するのを抑制できる。
換言すると、飢餓ゾーン16を比較的低圧の物理発泡剤で加圧する製造装置(製造方法)において、装置をより大型化した場合、すなわちスクリュシリンダの内径(スクリュ径)をより大径とした場合でも、飢餓ゾーン16におけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。これにより、成形体の発泡性能が低下することのない良好な発泡成形を実現でき、成形体の内部に微細な発泡セルを安定的に形成することができる。
【0075】
また、飢餓ゾーン16において隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積(容積C)が5cm3~100cm3の範囲となっているため、飢餓ゾーン16において、飢餓状態を維持しつつ、溶融樹脂を下流に送る供給する能力が維持されるとともに、隣接するスクリュフライト間に堆積する樹脂量が過多となることによる物理発泡剤の浸透効率の低下が抑制される。これにより、成形体における発泡セルサイズの肥大化や破泡の発生等をより確実に抑えることができ、発泡状態が良好な成形体を得ることができる。
【0076】
また、計量ゾーン14における隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積Aと、飢餓ゾーン16における隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、スクリュフライトの数を乗じた容積Bとの比率A/Bが、0.1~1.0の範囲となっているため、飢餓ゾーン16において物理発泡剤が余剰となるのが抑制されるとともに、ベントアップの発生が抑制される。これにより、成形体における破泡の発生をより確実に抑え、発泡状態が良好な成形体を得ることができるとともに、成形体の生産性を向上させることができる。
【0077】
(第2の実施の形態)
次に、図面を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、製造装置を押出成形装置とする場合について説明する。
【0078】
図10に示す製造装置500は押出成形装置(押出製造装置)である。製造装置500は、スクリュ520が内設された可塑化シリンダ(シリンダ)510、物理発泡剤をシリンダ510に供給する物理発泡剤供給機構600、シリンダ510を動作制御するための制御装置(不図示)等を備えている。シリンダ510内において可塑化溶融された溶融樹脂は、
図10における右手から左手に向かって流動する。本例のシリンダ510内部において、
図10における右手を「上流」または「後方」とし、左手を「下流」または「前方」とする。
【0079】
シリンダ510の先端には、ダイス590が設けられており、ダイス590から溶融樹脂が大気中に押し出されることにより溶融樹脂が押出成形される。ダイス590の先端は樹脂圧力が高まるように出口が狭くなった孔が空いており、紐状(棒状)の成形体が作られる。
シリンダ510の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂をシリンダ510に供給するための樹脂供給口501、および物理発泡剤をシリンダ510内に導入するための導入口502が設けられている。
【0080】
樹脂供給口501には、樹脂供給用のホッパー591、およびフィードスクリュ592が配設され、導入口502には、圧力調整容器(導入速度調整容器)550が配設されている。この圧力調整容器550は、
図1に示す圧力調整容器5と同様の構造を有する。圧力調整容器550には、物理発泡剤供給機構600が、配管554、減圧弁551、圧力計552、およびバッファータンク553を介して接続されている。また、シリンダ510の導入口502に対向する位置には、圧力をモニターするセンサ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0081】
シリンダ510は、上流側から下流側に向かって順に、フィードゾーン512と、圧縮ゾーン513と、計量ゾーン514と、飢餓ゾーン516と、再圧縮ゾーン517と、再計量ゾーン518とを有している。フィードゾーン512と圧縮ゾーン513とは、可塑化ゾーン540を構成している。なお、可塑化ゾーン540に、さらに計量ゾーン514が含まれていてもよい。
フィードゾーン512は、熱可塑性樹脂のペレットに余熱が与えられるゾーンである。圧縮ゾーン513は、熱可塑性樹脂が剪断混錬されて可塑化溶融され、溶融樹脂が圧縮されるゾーンである。計量ゾーン514は、圧縮された溶融樹脂の密度が一定に保持されるゾーンである。飢餓ゾーン516は、溶融樹脂が飢餓状態となるゾーンである。再圧縮ゾーン517は、溶融樹脂が再圧縮されるゾーンである。再計量ゾーン518は、溶融樹脂が計量されるゾーンである。
【0082】
スクリュ520は、可塑化溶融状態の低密度の樹脂を飢餓ゾーン516において常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧する製造装置500に用いられるスクリュである。
図11に示すように、スクリュ520は、上流側に位置する第1移行部(第1溝深さ移行部)520Aと、第1移行部520Aの下流側に隣接する第1浅溝部520Bと、第1浅溝部520Bの下流側に隣接する深溝部520Cと、深溝部520Cの下流側に隣接する第2移行部(第2溝深さ移行部)520Dと、第2移行部520Dの下流側に隣接する第2浅溝部520Eとを有している。第1移行部520Aは、圧縮ゾーン513に位置している。第1浅溝部520Bは、計量ゾーン514に位置しており、シールの役割も果たしている。深溝部520Cは、飢餓ゾーン516に位置している。第2移行部520Dは、再圧縮ゾーン517に位置している。第2浅溝部520Eは、再計量ゾーン518に位置している。
【0083】
スクリュ520は、熱可塑性樹脂の可塑化溶融を促進するため、シリンダ510内において回転自在に配設されている。換言すると、スクリュ520は、シリンダ510内に回転自在に配置(支持)されている。また、スクリュ520には、溶融樹脂の流動抵抗および圧力を高めるための機構として、第1移行部(第1大径部)520Aおよび第1浅溝部520Bと、第2移行部(第2大径部)520Dおよび第2浅溝部520Eが設けられている。
【0084】
図10に戻り説明する。シリンダ510では、樹脂供給口501からシリンダ510内に熱可塑性樹脂が供給され、熱可塑性樹脂がバンドヒータ(図示せず)によって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ520が正回転することにより下流に送られる。溶融樹脂は、第1浅溝部520Bの上流側では溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まり、第1浅溝部520Bの下流側では、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)となる。さらに下流に送られた溶融樹脂は、スクリュ520の第2移行部520Dの存在により、圧縮されて圧力が高まり、物理発泡剤と溶融樹脂が分離しないように調整される。さらに下流に送られた樹脂は、ダイス590から押し出される。
【0085】
また、物理発泡剤が導入される導入口502は、飢餓ゾーン516に設けられている。このように、シリンダ510は、飢餓ゾーン516および導入口502を1個ずつ有し、導入口502を介して物理発泡剤が導入されるようになっている。
【0086】
本実施の形態では、スクリュ520の外径(スクリュ外径)は、φ50mm以上となっている。スクリュ520の外径は、例えばφ115mmとなっている。スクリュ520における可塑化ゾーン512、圧縮ゾーン513、計量ゾーン514、再圧縮ゾーン517、および再計量ゾーン518に対応する部分は、シングルフライト構造、すなわち、スクリュ520の外周面に1つのスクリュフライト507が形成された構造となっている。
【0087】
深溝部(小径部)520Cは、溶融樹脂の飢餓状態を促進するために、上流側の第1浅溝部520Bと比較して、スクリュ軸の直径d(
図4参照)が小さくなっており、フライト深さh(
図4参照)が大きくなっている。本実施の形態では、深溝部520Cは2条フライト構造(ダブルフライト構造)となっている。換言すると、深溝部520Cは、隣接するスクリュフライト531,532の間の溝ピッチが狭くなるように形成されている。
【0088】
深溝部520Cは、第1浅溝部520Bおよび第2浅溝部520Eと比較して、飢餓ゾーン516全体に亘って、飢餓ゾーン516に位置する部分のスクリュ軸の直径dが小さく、かつフライト深さhが大きい構造を有していることが好ましい。本実施の形態では、飢餓ゾーン516に対応する深溝部520Cは、スクリュ軸の直径dおよびフライト深hが一定となっている。ただし、溶融樹脂の飢餓状態、つまり樹脂が圧縮されていない状態が一定の範囲で維持されていれば、飢餓ゾーン516におけるスクリュ軸の直径dおよびフライト深さhは必ずしも一定でなくてもよい。
【0089】
深溝部520Cは、その外周面に形成された第1スクリュフライト531と、第2スクリュフライト532とを備えている。多条フライト構造によれば、溶融樹脂を複数のフライトに分配して移送することができる。また、多重フライト構造とすることで、シングルフライトとした場合と同一量の溶融樹脂を、複数に分割して移送することができる。これにより、製造装置500をより大型化し、スクリュ径Dをより大径とした場合でも、隣接するスクリュフライト間の容積を過度に増大させることなく、溶融樹脂を下流に送ることができる。また、多条フライト構造によれば、スクリュ径Dをより大径とした場合でも、隣接するフライト間の容積が増大するのを抑えることができる。このため、隣接するフライト間に堆積する溶融樹脂の量を低減でき、飢餓状態を安定させることができる。これにより、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制され(物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積を増やすことができ)、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保されるため、飢餓ゾーン516における物理発泡剤の浸透性を高めることができる。なお、本実施の形態では、深溝部520Cの多条フライト構造を2条フライトとしたが、3条フライト以上としてもよい。
【0090】
物理発泡剤供給機構600は、ボンベ601と、窒素を所定圧力まで昇圧するエアー駆動のブースターポンプ602と、圧力計603と、減圧弁604と、を有している。また、本実施の形態では、紐状の成形物が得られるよう、押出口が孔形状のダイス590を用いている。紐の厚みに相当する押出口の隙間の大きさは、例えば0.2mmとなっている。
【0091】
次に、製造装置500を用いた発泡成形体の製造について説明する。本実施の形態では、製造装置500を用いて連続的に紐状の発泡成形体を押出成形により製造する。熱可塑性樹脂としては、例えば非強化ポリアミド6(PA6)(東レ製、アミランCM1021FS)を用いる。樹脂供給用のホッパー591から熱可塑性樹脂の樹脂ペレットを供給し、スクリュ520を正回転させる。フィードゾーン512において、熱可塑性樹脂を加熱、混練し、溶融樹脂とする。飢餓ゾーン516の飢餓状態を安定に維持するため、フィードスクリュ592を用いて、ホッパー591からシリンダ510への樹脂ペレットの供給量を制限してもよい。樹脂ペレットの送り量を少なくすることで、フィードゾーン512の溶融樹脂を少なくすることができる。これにより、下流の飢餓ゾーン516での飢餓状態が安定する。スクリュ520を回転数150rpmで正回転し続けることにより、溶融樹脂をフィードゾーン512から圧縮ゾーン513に流動させ、さらに、飢餓ゾーン516に流動させる。
【0092】
溶融樹脂は、スクリュ510の第1浅溝部520Bと、シリンダ510の内壁との隙間から飢餓ゾーン516へ流動するため、飢餓ゾーン516への溶融樹脂の供給量が制限される。これにより、第1浅溝部520Bの上流側の圧縮ゾーン513においては溶融樹脂が圧縮されて圧力が高まり、下流側の飢餓ゾーン516においては、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)となる。飢餓ゾーン516では、溶融樹脂が未充満(飢餓状態)であるため、溶融樹脂が存在しない空間に導入口502から導入された窒素が存在し、その窒素により溶融樹脂は加圧される。さらに、溶融樹脂は下流に送られ、再圧縮ゾーン517において再圧縮される。
【0093】
さらに、溶融樹脂を再圧縮ゾーン517に送り再圧縮した後、ダイス590から大気中に連続的に押出すことで、所定の長さの紐状の発泡成形体を得ることができる。例えば、溶融樹脂をダイス590の押出口の隙間の大きさの5倍に発泡させ、直径1.0mmの紐状成形体を得ることができる。
【0094】
本実施の形態の押出製造装置500によれば、第1の実施の形態で示した射出製造装置1の実施例1~実施例4(
図9参照)の場合と同様に、良好な成形体(成形品)を得ることができる。
【0095】
以上のように、本実施の形態に係る製造装置500にあっては、飢餓ゾーン516において溶融樹脂を、常時一定圧力の物理発泡剤にて加圧して成形を行う装置をより大型化した場合(すなわちスクリュ外径をより大径とした場合)であっても、飢餓ゾーン516におけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。このため、発泡成形体(成形品)の内部に微細セルが形成される良好な発泡成形を実現でき、発泡成形体の発泡性能が低下するのを抑制できる。
【0096】
換言すると、飢餓ゾーン516を比較的低圧の物理発泡剤で加圧する製造装置500(製造方法)において、装置をより大型化した場合、すなわちスクリュシリンダの内径(スクリュ外径)をより大径とした場合でも、飢餓ゾーン516におけるフライト構造が多条フライト構造となっていることで、シングルフライトの場合と同一量の溶融樹脂が複数に分割して移送される。このとき、隣接するスクリュフライト間の容積が過度に大きいものとならないため、そこに堆積する溶融樹脂の量を低減できる。このため、物理発泡剤と溶融樹脂との接触面積の低下が抑制されるとともに、物理発泡剤の溶融樹脂への浸透時間が確保される。これにより、成形体の発泡性能が低下することのない良好な発泡成形を実現でき、成形体の内部に微細な発泡セルを安定的に形成することができる。
【0097】
また、飢餓ゾーン516において隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積が5cm3~100cm3の範囲となっているため、飢餓ゾーン516において、飢餓状態を維持しつつ、溶融樹脂を下流に送る(供給する)能力が維持されるとともに、隣接するスクリュフライト間に堆積する樹脂量が過多となることによる物理発泡剤の浸透効率の低下が抑制される。これにより、成形体における発泡セルサイズの肥大化や破泡の発生等をより確実に抑えることができ、発泡状態が良好な成形体を得ることができる。
【0098】
また、計量ゾーン514における隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積Aと、飢餓ゾーン516における隣接するスクリュフライト間の軸回り1周あたりの容積に、スクリュフライトの数を乗じた容積Bとの比率A/Bが、0.1~1.0の範囲となっているため、飢餓ゾーン516において物理発泡剤が余剰となるのが抑制されるとともに、ベントアップの発生が抑制される。これにより、成形体における破泡の発生をより確実に抑え、発泡状態が良好な成形体を得ることができるとともに、成形体の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 射出製造装置
500 押出製造装置
2,502 導入口
5,550 圧力調整容器
10,510 可塑化シリンダ(シリンダ)
40,540 可塑化ゾーン
16,516 飢餓ゾーン
20,520 スクリュ