(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】二次電池および電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231127BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231127BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231127BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231127BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20231127BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20231127BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231127BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231127BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/58
H01M4/36 E
(21)【出願番号】P 2020557655
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045703
(87)【国際公開番号】W WO2020110917
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018225123
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】出口 正樹
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123751(WO,A1)
【文献】特開2016-110900(JP,A)
【文献】特開2017-69184(JP,A)
【文献】特開2015-37012(JP,A)
【文献】特開2015-125858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
H01M 4/36-4/60
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液と、を備え、
前記負極は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含み、
前記負極活物質は、シリケート相と、前記シリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む第1複合材料を含み、
前記シリケート相は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、
前記第1複合材料中の前記シリコン粒子の含有量は、30質量%以上、80質量%以下であり、
前記電解液は、フルオロスルホン酸リチウムを含む、二次電池。
【請求項2】
前記電解液中の前記フルオロスルホン酸リチウムの含有量が、0.1質量%以上、2質量%以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電解液は、更に、LiN(SO
2F)
2およびLiPF
6の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電解液中の前記LiN(SO
2F)
2の濃度が、0.1mol/L以上、1.0mol/L以下である、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解液中の前記LiPF
6の濃度が、0.5mol/L以上、1.5mol/L以下である、請求項3または4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記シリケート相の組成は、式:Li
2zSiO
2+zで表され、
前記式中のzは、0<z<1の関係を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記シリコン粒子の結晶子サイズは、30nm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極活物質は、更に、第2複合材料および第3複合材料の少なくとも一方を含み、
前記第2複合材料は、SiO
2相と、前記SiO
2相内に分散しているシリコン粒子と、を含み、
前記第3複合材料は、炭素相と、前記炭素相内に分散しているシリコン粒子と、を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活物質中の、前記第1複合材料と、前記第2複合材料および前記第3複合材料の少なくとも一方とを合計した含有量は、1質量%以上、15質量%以下である、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むシリケート相と、前記シリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む第1複合材料を含む負極を備える二次電池に用いられる電解液であって、
前記電解液は、フルオロスルホン酸リチウムを、0.1質量%以上、2質量%以下含む、電解液。
【請求項11】
前記電解液は、更に、LiN(SO
2F)
2およびLiPF
6の少なくとも一方を含む、請求項10に記載の電解液。
【請求項12】
前記LiN(SO
2F)
2の濃度が、0.1mol/L以上、1.0mol/L以下である、請求項11に記載の電解液。
【請求項13】
前記LiPF
6の濃度が、0.5mol/L以上、1.5mol/L以下である、請求項11または12に記載の電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池および電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池等の二次電池は、高電圧かつ高エネルギー密度を有するため、小型民生用途、電力貯蔵装置および電気自動車の電源として期待されている。電池の高エネルギー密度化が求められる中、理論容量密度の高い負極活物質として、リチウムと合金化するケイ素(シリコン)を含む材料の利用が期待されている。
【0003】
特許文献1では、負極活物質に、Li2zSiO2+z(0<z<2)で表されるリチウムシリケート相と、リチウムシリケート相中に分散したシリコン粒子と、を含む複合材料を用いた非水電解質二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
電子機器等の更なる高性能化に伴い、その電源として期待される二次電池について、更なる充放電効率の向上(高容量化)が求められている。
【0006】
以上に鑑み、本発明の一側面は、正極と、負極と、電解液と、を備え、前記負極は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含み、前記負極活物質は、シリケート相と、前記シリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む第1複合材料を含み、前記シリケート相は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、前記第1複合材料中の前記シリコン粒子の含有量は、30質量%以上、80質量%以下であり、前記電解液は、フルオロスルホン酸リチウムを含む、二次電池に関する。
【0007】
本発明の別の側面は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むシリケート相と、前記シリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む第1複合材料を含む負極を備える二次電池に用いられる電解液に関し、前記電解液は、フルオロスルホン酸リチウムを、0.1質量%以上、2質量%以下含む。
【0008】
本発明によれば、二次電池の初期の充放電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の一部を切欠いた概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る二次電池は、正極と、負極と、電解液と、を備える。負極は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含み、負極活物質は、シリケート相と、シリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む第1複合材料を含む。シリケート相は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方(アルカリ成分)を含む。第1複合材料中のシリコン粒子の含有量は、30質量%以上、80質量%以下である。電解液は、フルオロスルホン酸リチウム(LiSO3F)を含む。
【0011】
一般に、第1複合材料を用いた電池では、第1複合材料の不可逆容量に起因する正極活物質の利用率低下により初期の充放電効率が低下することがある。第1複合材料の不可逆容量は、主に、充電時にシリケート相に吸蔵されたリチウムイオンの一部が放電時に放出されないことに起因している。より具体的には、シリケート相の一部で生成したLi4SiO4からリチウムイオンが放出され難いことによるものと考えられる。
【0012】
これに対して、本発明では、電解液にフルオロスルホン酸リチウムを含ませることにより、第1複合材料を用いた電池の初期の充放電効率を高めることができる。初回充電時に、フルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンが、優先的に効率良くシリケート相に供給される。その詳細な理由は不明であるが、フルオロスルホン酸リチウム(フルオロスルホン酸成分)とシリケート相(アルカリ成分)との相互作用等により、フルオロスルホン酸リチウムが特異的にシリケート相と接触し易くなっていることによるものと推測される。シリケート相に優先的に効率良く供給されたリチウムフルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンは、第1複合材料の不可逆容量の補填(Li4SiO4の生成)に効率良く利用される。このため、初回充電時に、正極活物質から放出されたリチウムイオンは、シリケート相でのLi4SiO4の生成に(直接または電解液中のリチウムイオンを介して)利用され難くなり、第1複合材料の不可逆容量に起因する正極活物質の利用率低下が抑制されると考えられる。
【0013】
また、例えば初回充電時にフルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンが優先的に効率良くシリケート相に供給されることにより、シリケート相の結晶性が低くなり、リチウムイオン伝導性が向上し、抵抗が小さくなるため、初期の充放電効率がより高められる。
【0014】
上記の電解液を用いて、高容量の第1複合材料を含む負極を備える二次電池の初期の充放電効率を高めることで、二次電池の初期容量およびサイクル特性(サイクル容量維持率)を高めることができる。
【0015】
フルオロスルホン酸リチウムは、フルオロスルホン酸アニオンとして電解液中に存在してもよい。また、フルオロスルホン酸アニオンは、水素と結合したフルオロスルホン酸の状態で電解液中に存在してもよい。以下、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸およびフルオロスルホン酸アニオンを総称してフルオロスルホン酸類とも称する。
【0016】
電解液に含まれるフルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンの少なくとも一部が、第1複合材料の不可逆容量の補填に利用される。フルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンの一部は、電解液のリチウムイオン伝導性の確保に利用されてもよい。フルオロスルホン酸リチウム由来のリチウムイオンの殆どが、第1複合材料の不可逆容量の補填に利用される場合、電解液のリチウムイオン伝導性の確保のためにLiPF6等の他のリチウム塩を併用することが好ましい。また、電解液中でリチウム塩の解離を促進して電解液のリチウムイオン伝導性をより高めるため、フルオロスルホン酸リチウムと、LiPF6等の他のリチウム塩とを併用することが好ましい。
【0017】
電解液の調製時(初回充電前)における電解液中のフルオロスルホン酸リチウムの含有量(電解液全体に対する質量割合)は、例えば0.1質量%以上、3質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、2.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上、2質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上、1.5質量%以下である。
【0018】
フルオロスルホン酸リチウムの含有量が0.1質量%以上である場合、初期の充放電効率を十分に高めることができる。フルオロスルホン酸リチウムの含有量が2質量%以下である場合、負極の不可逆容量に対して適度な量のリチウムイオンを効率良くシリケート相に供給し易い。フルオロスルホン酸リチウムの含有量が2質量%以下である場合、電解液中でフルオロスルホン酸リチウムが解離し易く、適度な粘性を有し、優れたリチウムイオン伝導性を有する電解液を得易い。よって、フルオロスルホン酸リチウムによるシリケート相へのリチウムイオンの供給がより効率的に行われる。
【0019】
電解液の調製時におけるフルオロスルホン酸リチウムの含有量が1質量%以下である場合、例えば初回充電後の電池における電解液中のフルオロスルホン酸リチウムの含有量(電解液全体に対する質量割合)は、例えば、15ppm以下である。電池から取り出された電解液に含まれるフルオロスルホン酸リチウムの含有量は、検出限界に近い微量となっていてもよい。フルオロスルホン酸リチウムの存在が確認できれば、それに応じた作用効果が認められる。
【0020】
なお、電解液中のフルオロスルホン酸リチウムの含有量は、解離していないフルオロスルホン酸もしくはフルオロスルホン酸リチウムと、フルオロスルホン酸アニオンとの合計量として求めればよく、全量をフルオロスルホン酸リチウムの質量に換算して含有量を求めればよい。すなわち、フルオロスルホン酸類は全てフルオロスルホン酸リチウムであると仮定して含有量を求めればよい。例えば、電解液がフルオロスルホン酸リチウムを含み、全フルオロスルホン酸リチウムが解離してフルオロスルホン酸アニオンで存在する場合、全てのフルオロスルホン酸アニオンがフルオロスルホン酸リチウムになっていると仮定する。そして、電解液に含まれるフルオロスルホン酸リチウム量は、フルオロスルホン酸リチウムの式量(105.99)を基準に求められる。
【0021】
電解液中の溶媒の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)等を用いることにより測定し得る。また、電解液中のフルオロスルホン酸類等のリチウム塩の含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)、イオンクロマトグラフィー等を用いることにより測定し得る。
【0022】
電位窓が広く、電気伝導度が高いという点で、電解液は、更に、LiN(SO2F)2(以下、LFSIと称する。)およびLiPF6の少なくとも一方を含むことが好ましい。LFSIは、LSX表面に良質な被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)を形成し易い。また、LiPF6は、正極集電体等に不動態皮膜を適度に形成するため、正極集電体等の腐食が抑制され、電池信頼性が向上する。
【0023】
電解液中のLFSIの濃度は、0.1mol/L、以上1.0mol/L以下であることが好ましい。電解液中のLiPF6の濃度は、0.5mol/L以上、1.5mol/L以下であることが好ましい。電解液中のLFSIおよびLiPF6の合計濃度は、1mol/L以上、2mol/L以下であることが好ましい。上記範囲の濃度のLFSIおよびLiPF6を併用する場合、上記のLFSIおよびLiPF6による効果がバランス良く得られ、電池の初期の充放電効率が更に高められる。
【0024】
負極活物質は、少なくとも高容量の第1複合材料を含む。シリケート相に分散するシリコン粒子量の制御により更なる高容量化が可能となる。シリコン粒子がシリケート相内に分散しているため、充放電時の第1複合材料の膨張収縮が抑制される。よって、第1複合材料は、電池の高容量化およびサイクル特性の向上に対して有利である。
【0025】
シリケート相は、アルカリ金属(長周期型周期表の1族元素)およびアルカリ土類金属(長周期型周期表の2族元素)の少なくとも一方を含む。アルカリ金属は、リチウム(Li)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)等を含む。アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等を含む。中でも、不可逆容量が小さく、初期の充放電効率が高いことから、リチウムを含むシリケート相(以下、リチウムシリケート相とも称する。)が好ましい。すなわち、第1複合材料は、リチウムシリケート相と、リチウムシリケート相内に分散しているシリコン粒子とを含む複合材料(以下、LSXまたは負極材料LSXとも称する。)であることが好ましい。
【0026】
高容量化およびサイクル特性の向上のためには、第1複合材料中のシリコン粒子の含有量は、30質量%以上、80質量%以下である必要がある。
【0027】
第1複合材料中のシリコン粒子の含有量が30質量%未満である場合、シリケート相が占める割合が大きい。このため、フルオロスルホン酸リチウムからシリケート相に供給されるリチウムイオンの量が不足し、フルオロスルホン酸リチウムの添加による初期の充放電効率の向上効果が不十分となることがある。
【0028】
第1複合材料中のシリコン粒子の含有量が80質量%超である場合、シリケート相が占める割合が小さい。このため、フルオロスルホン酸リチウムと第1複合材料(シリケート相)の相互作用が小さくなり、フルオロスルホン酸リチウムの添加による初期の充放電効率の向上効果が不十分となることがある。また、第1複合材料中のシリコン粒子の含有量が80質量%超である場合、充放電時の第1複合材料の膨張および収縮の度合いが大きくなり、サイクル特性が低下する。
【0029】
高容量化の観点から、第1複合材料中のシリコン粒子の含有量は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上である。この場合、リチウムイオンの拡散性が良好であり、優れた負荷特性を得易くなる。一方、サイクル特性の向上の観点からは、第1複合材料中のシリコン粒子の含有量は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。この場合、シリケート相で覆われずに露出するシリコン粒子の表面が減少し、電解液とシリコン粒子との反応が抑制され易い。
【0030】
シリコン粒子の含有量は、Si-NMRにより測定することができる。以下、Si-NMRの望ましい測定条件を示す。
【0031】
測定装置:バリアン社製、固体核磁気共鳴スペクトル測定装置(INOVA‐400)
プローブ:Varian 7mm CPMAS-2
MAS:4.2kHz
MAS速度:4kHz
パルス:DD(45°パルス+シグナル取込時間1Hデカップル)
繰り返し時間:1200sec
観測幅:100kHz
観測中心:-100ppm付近
シグナル取込時間:0.05sec
積算回数:560
試料量:207.6mg
シリケート相内に分散しているシリコン粒子は、ケイ素(Si)単体の粒子状の相を有し、単独または複数の結晶子で構成される。シリコン粒子の結晶子サイズは、30nm以下であることが好ましい。シリコン粒子の結晶子サイズが30nm以下である場合、充放電に伴うシリコン粒子の膨張収縮による体積変化量を小さくでき、サイクル特性が更に高められる。例えば、シリコン粒子の収縮時にシリコン粒子の周囲に空隙が形成されて当該粒子の周囲との接点が減少することによる当該粒子の孤立が抑制され、当該粒子の孤立による充放電効率の低下が抑制される。シリコン粒子の結晶子サイズの下限値は、特に限定されないが、例えば5nmである。
【0032】
また、シリコン粒子の結晶子サイズは、より好ましくは10nm以上、30nm以下であり、更に好ましくは15nm以上、25nm以下である。シリコン粒子の結晶子サイズが10nm以上である場合、シリコン粒子の表面積を小さく抑えることができるため、不可逆容量の生成を伴うシリコン粒子の劣化を生じ難い。
【0033】
シリコン粒子の結晶子サイズは、シリコン粒子のX線回折(XRD)パターンのSi(111)面に帰属される回析ピークの半値幅からシェラーの式により算出される。
【0034】
負極活物質は、更に、第2複合材料および第3複合材料の少なくとも一方を含んでもよい。第2複合材料は、SiO2相と、SiO2相内に分散しているシリコン粒子と、を含む。第2複合材料は、SiOx(0<X<2)で表される。第3複合材料は、炭素相と、炭素相内に分散しているシリコン粒子と、を含む。充放電時の第3複合材料の膨張収縮の抑制および高容量化の観点から、第3複合材料中のシリコン粒子の含有量は、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。負極活物質は、第1複合材料100質量部に対して、第2複合材料および第3複合材料の少なくとも一方を、例えば0質量部超、300質量部以下含み、好ましくは80質量部以上、190質量部以下含む。
【0035】
第2複合材料は、充電時の膨張が小さいという面で有利である。第3複合材料は、表面積が大きく、大電流での充放電に対して有利である。ただし、第2複合材料および第3複合材料では、SiO2相および炭素相が中性であるため、第1複合材料の場合のようなフルオロスルホン酸リチウムとの相互作用は生じ難く、優先的かつ効率的なリチウムイオンの供給は行われ難い。
【0036】
高容量化およびサイクル特性の向上の観点から、負極活物質中の第1複合材料の含有量(負極活物質全体に対する質量割合)は、1質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。同様に、負極活物質中の、第1複合材料と、第2複合材料および第3複合材料の少なくとも一方とを合計した含有量(負極活物質全体に対する質量割合)は、1質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。
【0037】
第1複合材料、または第1複合材料と第2複合材料および第3複合材料の少なくとも一方との混合物(以下、第1複合材料等と称する。)は、充放電時に膨張および収縮する。負極活物質中の第1複合材料等の含有量が15質量%以下である場合、充放電時の第1複合材料等の膨張および収縮が、負極合剤層と負極集電体との間や負極活物質粒子同士の間の接触状態に及ぼす影響を小さくすることができる。負極活物質中の第1複合材料等の含有量を15質量%以下に抑えて、第1複合材料等と比べて充放電時の膨張および収縮の度合いが小さい他の負極材料を併用することで、シリコン粒子の高容量を負極に付与しながら優れたサイクル特性を達成することが可能になる。
【0038】
一方、負極活物質中の第1複合材料等の含有量が1質量%以上である場合、第1複合材料等(シリコン粒子)の高容量を負極に十分に付与することができる。
【0039】
負極活物質は、更に、第1複合材料等と比べて充放電時の膨張および収縮の度合いが小さい他の負極材料として、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な炭素材料を含むことが好ましい。負極活物質中の炭素材料の含有量(第1複合材料等と炭素材料との合計に占める割合)は、85質量%以上、99質量%以下であることが好ましい。これにより、高容量化とサイクル特性の向上を両立し易くなる。
【0040】
炭素材料としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)等が例示できる。中でも、充放電の安定性に優れ、不可逆容量も少ない黒鉛が好ましい。黒鉛とは、黒鉛型結晶構造を有する材料を意味し、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン粒子等が含まれる。炭素材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
以下、第1複合材料について更に詳述する。
【0042】
シリコン粒子自身の亀裂を抑制する観点から、シリコン粒子の平均粒径は、初回充電前において、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。初回充電後においては、シリコン粒子の平均粒径は、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。シリコン粒子を微細化することにより、充放電時の体積変化が小さくなり、第1複合材料の構造安定性が更に向上する。
【0043】
シリコン粒子の平均粒径は、第1複合材料の断面SEM(走査型電子顕微鏡)写真を観察することにより測定される。具体的には、シリコン粒子の平均粒径は、任意の100個のシリコン粒子の最大径を平均して求められる。シリコン粒子は、複数の結晶子が寄り集まることにより形成されている。
【0044】
シリケート相は、例えば、リチウム(Li)と、ケイ素(Si)と、酸素(O)とを含むリチウムシリケート相(酸化物相)である。リチウムシリケート相におけるSiに対するOの原子比:O/Siは、例えば、2超4未満である。O/Siが2超4未満(後述の式中のzが0<z<2)の場合、安定性やリチウムイオン伝導性の面で有利である。好ましくは、O/Siが2超3未満(後述の式中のzが0<z<1)である。リチウムシリケート相におけるSiに対するLiの原子比:Li/Siは、例えば、0超4未満である。リチウムシリケート相は、Li、SiおよびO以外に、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の他の元素を微量含んでもよい。
【0045】
リチウムシリケート相は、式:Li2zSiO2+z(0<z<2)で表される組成を有し得る。安定性、作製容易性、リチウムイオン伝導性等の観点から、zは、0<z<1の関係を満たすことが好ましく、z=1/2がより好ましい。
【0046】
LSXのリチウムシリケート相は、SiOxのSiO2相に比べ、リチウムと反応し得るサイトが少ない。よって、LSXはSiOxと比べて充放電に伴う不可逆容量を生じ難い。リチウムシリケート相内にシリコン粒子を分散させる場合、充放電の初期に、優れた充放電効率が得られる。また、シリコン粒子の含有量を任意に変化させることができるため、高容量の負極を設計することができる。
【0047】
負極材料LSXのリチウムシリケート相Li2zSiO2+zの組成は、例えば、以下の方法により分析することができる。
【0048】
まず、負極材料LSXの試料の質量を測定する。その後、以下のように、試料に含まれる炭素、リチウムおよび酸素の含有量を算出する。次に、試料の質量から炭素含有量を差し引き、残量に占めるリチウムおよび酸素含有量を算出し、リチウム(Li)と酸素(O)のモル比から2zと(2+z)の比が求められる。
【0049】
炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA-520型)を用いて測定する。磁性ボードに試料を測り取り、助燃剤を加え、1350℃に加熱された燃焼炉(キャリアガス:酸素)に挿入し、燃焼時に発生した二酸化炭素ガス量を赤外線吸収により検出する。検量線は、例えば、Bureau of Analysed Sampe.Ltd製の炭素鋼(炭素含有量0.49%)を用いて作成し、試料の炭素含有量を算出する(高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法)。
【0050】
酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEGMA-830型)を用いて測定する。Niカプセルに試料を入れ、フラックスとなるSnペレットおよびNiペレットとともに、電力5.75kWで加熱された炭素坩堝に投入し、放出される一酸化炭素ガスを検出する。検量線は、標準試料Y2O3を用いて作成し、試料の酸素含有量を算出する(不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法)。
【0051】
リチウム含有量は、熱フッ硝酸(熱したフッ化水素酸と硝酸の混酸)で試料を全溶解し、溶解残渣の炭素をろ過して除去後、得られたろ液を誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)で分析して測定する。市販されているリチウムの標準溶液を用いて検量線を作成し、試料のリチウム含有量を算出する。
【0052】
負極材料LSXの試料の質量から、炭素含有量、酸素含有量、リチウム含有量を差し引いた量がシリコン含有量である。このシリコン含有量には、シリコン粒子の形で存在するシリコンと、リチウムシリケートの形で存在するシリコンとの双方の寄与が含まれている。Si-NMR測定によりシリコン粒子の含有量が求められ、負極材料LSX中にリチウムシリケートの形で存在するシリコンの含有量が求まる。
【0053】
第1複合材料は、平均粒径1~25μm、更には4~15μmの粒子状材料(以下、第1粒子とも称する。)を形成していることが好ましい。上記粒径範囲では、充放電に伴う第1複合材料の体積変化による応力を緩和し易く、良好なサイクル特性を得易くなる。第1粒子の表面積も適度になり、電解液との副反応による容量低下も抑制される。
【0054】
第1粒子の平均粒径とは、レーザー回折散乱法で測定される粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径(体積平均粒径)を意味する。測定装置には、例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA)製「LA-750」を用いることができる。
【0055】
第1粒子は、その表面の少なくとも一部を被覆する導電性材料を具備することが好ましい。シリケート相は、電子伝導性に乏しいため、第1粒子の導電性も低くなりがちである。導電性材料で表面を被覆することで、導電性を飛躍的に高めることができる。導電層は、実質上、第1粒子の平均粒径に影響しない程度に薄いことが好ましい。
【0056】
次に、本発明の実施形態に係る二次電池について詳述する。二次電池は、例えば、以下のような負極と、正極と、電解液とを備える。
【0057】
[負極]
負極は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質を含む。負極は、例えば、負極集電体と、負極集電体の表面に形成され、かつ負極活物質を含む負極合剤層とを具備する。負極合剤層は、負極合剤を分散媒に分散させた負極スラリーを、負極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。負極合剤層は、負極集電体の一方の表面に形成してもよく、両方の表面に形成してもよい。
【0058】
負極合剤は、必須成分として、負極活物質である第1複合材料(第1粒子)を含み、任意成分として、結着剤、導電剤、増粘剤等を含むことができる。負極材料LSX中のシリコン粒子は、多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、負極の高容量化に寄与する。負極合剤は、負極活物質として、更に、第2複合材料、第3複合材料および電気化学的にリチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料よりなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0059】
負極集電体としては、無孔の導電性基板(金属箔等)、多孔性の導電性基板(メッシュ体、ネット体、パンチングシート等)が使用される。負極集電体の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金等が例示できる。負極集電体の厚さは、特に限定されないが、負極の強度と軽量化とのバランスの観点から、1~50μmが好ましく、5~20μmがより望ましい。
【0060】
結着剤としては、樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;アラミド樹脂等のポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸共重合体等のアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル等のビニル樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエーテルサルフォン;スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)等のゴム状材料等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンナノチューブ等のカーボン類;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウム等の金属粉末類;酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類;酸化チタン等の導電性金属酸化物;フェニレン誘導体等の有機導電性材料等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその変性体(Na塩等の塩も含む)、メチルセルロース等のセルロース誘導体(セルロースエーテル等);ポリビニルアルコール等の酢酸ビニルユニットを有するポリマーのケン化物;ポリエーテル(ポリエチレンオキシド等のポリアルキレンオキサイド等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
分散媒としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、またはこれらの混合溶媒等が例示できる。
【0064】
[正極]
正極は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を含む。正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極合剤層とを具備する。正極合剤層は、正極合剤を分散媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。正極合剤層は、正極集電体の一方の表面に形成してもよく、両方の表面に形成してもよい。正極合剤は、必須成分として、正極活物質を含み、任意成分として、結着剤、導電剤等を含むことができる。
【0065】
正極活物質としては、例えば、リチウム含有複合酸化物を用いることができる。例えば、LiaCoO2、LiaNiO2、LiaMnO2、LiaCobNi1-bO2、LiaCobM1-bOc、LiaNi1-bMbOc、LiaMn2O4、LiaMn2-bMbO4、LiMPO4、Li2MPO4F(Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bよりなる群から選択される少なくとも1種である。)が挙げられる。ここで、a=0~1.2、b=0~0.9、c=2.0~2.3である。なお、リチウムのモル比を示すa値は、充放電により増減する。
【0066】
中でも、LiaNibM1-bO2(Mは、Mn、CoおよびAlよりなる群から選択された少なくとも1種であり、0<a≦1.2であり、0.3≦b≦1である。)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が好ましい。高容量化の観点から、0.85≦b≦1を満たすことがより好ましい。結晶構造の安定性の観点からは、MとしてCoおよびAlを含むLiaNibCocAldO2(0<a≦1.2、0.85≦b<1、0<c<0.15、0<d≦0.1、b+c+d=1)が更に好ましい。
【0067】
結着剤および導電剤としては、負極について例示したものと同様のものが使用できる。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛を用いてもよい。
【0068】
正極集電体の形状および厚みは、負極集電体に準じた形状および範囲からそれぞれ選択できる。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン等が例示できる。
【0069】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質(溶質)とを含む。溶媒としては、非水溶媒を用いることができ、水を用いてもよい。電解質は、少なくともリチウム塩を含む。電解液は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解するリチウム塩と、を含む。
【0070】
電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L以上、2mol/L以下が好ましい。リチウム塩濃度を上記範囲に制御することで、イオン伝導性に優れ、適度の粘性を有する電解液を得ることができる。ただし、リチウム塩濃度は上記に限定されない。
【0071】
非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル(後述の不飽和環状炭酸エステルを除く。)、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル等が用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等が挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
リチウム塩は、必須成分としてLiSO3Fを含む。リチウム塩は、更に、LiSO3F以外の他のリチウム塩を含んでもよい。他のリチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2-ベンゼンジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3-ナフタレンジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’-ビフェニルジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5-フルオロ-2-オレート-1-ベンゼンスルホン酸-O,O’)ほう酸リチウム等が挙げられる。イミド塩類としては、LFSI、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C4F9SO2))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(C2F5SO2)2)等が挙げられる。これらの中でも、LiPF6およびLFSIの少なくとも一方が好ましい。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
電解液に、他の添加剤を更に含ませてもよい。添加剤としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、エチレンサルファイト、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、4-フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、アジポニトリル、ピメロニトリル等を用いることができる。また、添加剤として、分子内に炭素-炭素の不飽和結合を少なくとも1つ有する環状炭酸エステル(以下、不飽和環状炭酸エステルと称する。)を含ませてもよい。不飽和環状炭酸エステルが負極上で分解することにより負極表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜が形成され、充放電効率が更に高められる。
【0074】
不飽和環状炭酸エステルとしては、公知の化合物を用いることができる。好ましい不飽和環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート、4-メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、4-エチルビニレンカーボネート、4,5-ジエチルビニレンカーボネート、4-プロピルビニレンカーボネート、4,5-ジプロピルビニレンカーボネート、4-フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。不飽和環状炭酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不飽和環状炭酸エステルは、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0075】
[セパレータ]
通常、正極と負極との間には、セパレータを介在させることが望ましい。セパレータは、イオン透過度が高く、適度な機械的強度および絶縁性を備えている。セパレータとしては、微多孔薄膜、織布、不織布等を用いることができる。セパレータの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンが好ましい。
【0076】
二次電池の構造の一例としては、正極および負極がセパレータを介して巻回されてなる電極群と、電解液とが外装体に収容された構造が挙げられる。或いは、巻回型の電極群の代わりに、正極および負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極群等、他の形態の電極群が適用されてもよい。二次電池は、例えば円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型等、いずれの形態であってもよい。
【0077】
以下、本発明に係る二次電池の一例として角形の非水電解質二次電池の構造を、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の一部を切欠いた概略斜視図である。
【0078】
電池は、有底角形の電池ケース4と、電池ケース4内に収容された電極群1および電解液(図示せず)とを備えている。電極群1は、長尺帯状の負極と、長尺帯状の正極と、これらの間に介在し、かつ直接接触を防ぐセパレータとを有する。電極群1は、負極、正極、およびセパレータを、平板状の巻芯を中心にして捲回し、巻芯を抜き取ることにより形成される。
【0079】
負極の負極集電体には、負極リード3の一端が溶接等により取り付けられている。負極リード3の他端は、樹脂製の絶縁板(図示せず)を介して、封口板5に設けられた負極端子6に電気的に接続されている。負極端子6は、樹脂製のガスケット7により、封口板5から絶縁されている。正極の正極集電体には、正極リード2の一端が溶接等により取り付けられている。正極リード2の他端は、絶縁板を介して、封口板5の裏面に接続されている。すなわち、正極リード2は、正極端子を兼ねる電池ケース4に電気的に接続されている。絶縁板は、電極群1と封口板5とを隔離するとともに負極リード3と電池ケース4とを隔離している。封口板5の周縁は、電池ケース4の開口端部に嵌合しており、嵌合部はレーザー溶接されている。このようにして、電池ケース4の開口部は、封口板5で封口される。封口板5に設けられている電解液の注入孔は、封栓8により塞がれている。
【0080】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
<実施例1>
[第1複合材料(負極材料LSX)の調製]
二酸化ケイ素と炭酸リチウムとを原子比:Si/Liが1.05となるように混合し、混合物を950℃空気中で10時間焼成することにより、式:Li2Si2O5(z=0.5)で表わされるリチウムシリケートを得た。得られたリチウムシリケートは平均粒径10μmになるように粉砕した。
【0082】
平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、70:30の質量比で混合した。混合物を遊星ボールミル(フリッチュ社製、P-5)のポット(SUS製、容積:500mL)に充填し、ポットにSUS製ボール(直径20mm)を24個入れて蓋を閉め、不活性雰囲気中で、200rpmで混合物を50時間粉砕処理した。
【0083】
次に、不活性雰囲気中で粉末状の混合物を取り出し、不活性雰囲気中、ホットプレス機による圧力を印加した状態で、800℃で4時間焼成して、混合物の燒結体(負極材料LSX)を得た。
【0084】
その後、負極材料LSXを粉砕し、40μmのメッシュに通した後、得られたLSX粒子を石炭ピッチ(JFEケミカル株式会社製、MCP250)と混合し、混合物を不活性雰囲気で、800℃で焼成し、LSX粒子の表面を導電性炭素で被覆して導電層を形成した。導電層の被覆量は、LSX粒子と導電層との総質量に対して5質量%とした。その後、篩を用いて、導電層を有する平均粒径5μmのLSX粒子を得た。
【0085】
LSX粒子のXRD分析によりSi(111)面に帰属される回折ピークからシェラーの式で算出したシリコン粒子の結晶子サイズは15nmであった。
【0086】
リチウムシリケート相の組成を上記方法(高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES))により分析したところ、Si/Li比は1.0であり、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は70質量%(シリコン粒子の含有量は30質量%)であった。
【0087】
[負極の作製]
導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、5:95の質量比で混合し、負極活物質として用いた。負極活物質と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)とを、97.5:1:1.5の質量比で混合し、水を添加した後、混合機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌し、負極スラリーを調製した。
【0088】
次に、銅箔の表面に1m2当りの負極合剤の質量が190gとなるように負極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して、銅箔の両面に、密度1.5g/cm3の負極合剤層が形成された負極を作製した。
【0089】
[正極の作製]
リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.8Co0.18Al0.02O2)と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとを、95:2.5:2.5の質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した後、混合機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌し、正極スラリーを調製した。次に、アルミニウム箔の表面に正極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して、アルミニウム箔の両面に、密度3.6g/cm3の正極合剤層が形成された正極を作製した。
【0090】
[電解液の調製]
非水溶媒にリチウム塩を溶解させて電解液を調製した。非水溶媒には、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、酢酸メチル(MA)とを、20:40:40の体積比で含む混合溶媒を用いた。リチウム塩には、LiSO3FおよびLiPF6を用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、0.5質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。
【0091】
[非水電解質二次電池の作製]
各電極にタブをそれぞれ取り付け、タブが最外周部に位置するように、セパレータを介して正極および負極を渦巻き状に巻回することにより電極群を作製した。電極群をアルミニウムラミネートフィルム製の外装体内に挿入し、105℃で2時間真空乾燥した後、電解液を注入し、外装体の開口部を封止して、電池A1を得た。
【0092】
<実施例2>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、50:50の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は50質量%(シリコン粒子の含有量は50質量%)であった。
【0093】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3:97の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0094】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とLFSIとを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、1.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。電解液中のLFSIの濃度は、0.1mol/Lとした。
【0095】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A2を作製した。
【0096】
<実施例3>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、40:60の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は40質量%(シリコン粒子の含有量は60質量%)であった。
【0097】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、2.5:97.5の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0098】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、2.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.2mol/Lとした。
【0099】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A3を作製した。
【0100】
<実施例4>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、55:45の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は55質量%(シリコン粒子の含有量は45質量%)であった。
【0101】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、第3複合材料(SiC粒子)と、黒鉛とを、1.7:2.5:95.8の質量比で混合し、負極活物質として用いた。第3複合材料中のシリコン粒子の含有量は30質量%とし、第3複合材料の平均粒径は5μmとした。
【0102】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とLFSIとを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、1.5質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、0.9mol/Lとした。電解液中のLFSIの濃度は、0.2mol/Lとした。
【0103】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A4を作製した。
【0104】
<実施例5>
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、1.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lとした。
【0105】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A5を作製した。
【0106】
<実施例6>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、25:75の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は25質量%(シリコン粒子の含有量は75質量%)であった。
【0107】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、2:98の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0108】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、1.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。
【0109】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A6を作製した。
【0110】
<実施例7>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、45:55の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は45質量%(シリコン粒子の含有量は55質量%)であった。
【0111】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、第2複合材料と、黒鉛とを、1:2.9:96.1の質量比で混合し、負極活物質として用いた。第2複合材料には、SiO粒子(x=1、平均粒径5μm)を用いた。
【0112】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とLFSIとを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、1.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、0.4mol/Lとした。電解液中のLFSIの濃度は、0.7mol/Lとした。
【0113】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A7を作製した。
【0114】
<実施例8>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、50:50の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は50質量%(シリコン粒子の含有量は50質量%)であった。
【0115】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3:97の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0116】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、0.05質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lとした。
【0117】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A8を作製した。
【0118】
<実施例9>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、50:50の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は50質量%(シリコン粒子の含有量は50質量%)であった。
【0119】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3:97の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0120】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、0.1質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lとした。
【0121】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池A9を作製した。
【0122】
<比較例1>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、50:50の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は50質量%(シリコン粒子の含有量は50質量%)であった。
【0123】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3:97の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0124】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3Fを用いずに、LiPF6を用いた。電解液中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。
【0125】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B1を作製した。
【0126】
<比較例2>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、75:25の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は75質量%(シリコン粒子の含有量は25質量%)であった。
【0127】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、6:94の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0128】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は、2.5質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.2mol/Lとした。
【0129】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B2を作製した。
【0130】
<比較例3>
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子を負極活物質に用いずに、SiOと黒鉛とを、5:95の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0131】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3Fを用いずに、LiPF6を用いた。電解液中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。
【0132】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B3を作製した。
【0133】
<比較例4>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、15:85の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は15質量%(シリコン粒子の含有量は85質量%)であった。
【0134】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、2:98の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0135】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は0.5質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.2mol/Lとした。
【0136】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B4を作製した。
【0137】
<比較例5>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、55:45の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は55質量%(シリコン粒子の含有量は45質量%)であった。
【0138】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3.5:96.5の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0139】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3Fを用いずに、LiPF6とLFSIとを用いた。電解液中のLiPF6の濃度は、0.4mol/Lとした。電解液中のLFSIの濃度は、0.7mol/Lとした。
【0140】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B5を作製した。
【0141】
<比較例6>
負極材料LSXの調製において、平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li2Si2O5)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、55:45の質量比で混合した。得られた導電層を有するLSX粒子について、Si-NMRにより測定されるLi2Si2O5の含有量は55質量%(シリコン粒子の含有量は45質量%)であった。
【0142】
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子と、黒鉛とを、3.5:96.5の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0143】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3Fを用いずに、LFSIを用いた。電解液中のLFSIの濃度は、1.0mol/Lとした。
【0144】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B6を作製した。
【0145】
<比較例7>
負極の作製において、導電層を有するLSX粒子を負極活物質に用いずに、SiO粒子(x=1、平均粒径5μm)と黒鉛とを、5:95の質量比で混合し、負極活物質として用いた。
【0146】
電解液の調製において、リチウム塩には、LiSO3FとLiPF6とを用いた。電解液中のLiSO3Fの含有量は1.0質量%とした。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lとした。
【0147】
上記以外、実施例1と同様の方法により、電池B7を作製した。
【0148】
<比較例8>
SiO粒子の代わりにSiC粒子(シリコン粒子の含有量:30質量%、平均粒径:5μm)を用いた以外、比較例7と同様の方法により、電池B8を作製した。
【0149】
上記で作製した各電池について、以下の方法で評価を行った。
【0150】
[評価1:初期容量]
作製後の各電池について、0.3Itの電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.2Vの定電圧で電流が0.015Itになるまで定電圧充電した。その後、0.3Itの電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。充電と放電との間の休止期間は10分とした。充放電は25℃の環境下で行った。このときの放電容量を、初期容量として求めた。評価結果を表1に示す。
【0151】
なお、(1/X)Itは、電流を表し、(1/X)It(A)=定格容量(Ah)/X(h)であり、Xは定格容量分の電気を充電または放電するための時間を表す。例えば、0.5Itとは、X=2であり、電流値が定格容量(Ah)/2(h)であることを意味する。
【0152】
[評価2:サイクル容量維持率]
0.3Itの電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.2Vの定電圧で電流が0.015Itになるまで定電圧充電した。その後、0.3Itの電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。充電と放電との間の休止期間は10分とした。充放電は25℃の環境下で行った。
【0153】
上記充放電の条件で充放電を繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の割合(百分率)を、サイクル容量維持率として求めた。
【0154】
評価結果を表1に示す。
【0155】
【0156】
LiSO3Fを含む電解液と、LSX粒子を含む負極とを備える電池A1~A3、A5~A6、A8~A9では、高い初期容量およびサイクル容量維持率が得られた。LiSO3Fの含有量が0.1~2質量%である電解液を用いた電池A1~A3、A5~A7、A9では、初期の充放電効率(初期容量)がより高められた。LiSO3Fを含む電解液と、LSX粒子とSiO粒子またはSiC粒子とを含む負極とを備える電池A4、A7においても、高い初期容量およびサイクル容量維持率が得られた。
【0157】
電池B1、B5、B6では、LiSO3Fを含まない電解液を用いたため、初期容量およびサイクル容量維持率が低下した。電池B2では、LSX粒子中のSi粒子含有量が30質量%未満であるため、初期容量が低下した。電池B3では、負極活物質にSiO粒子および黒鉛を用い、LiSO3Fを含まない電解液を用いたため、初期容量およびサイクル容量維持率が低下した。電池B4では、LSX粒子中のSi粒子含有量が80質量%超であるため、初期容量およびサイクル容量維持率が低下した。電池B7では、LiSO3Fを含む電解液を用いたが、負極活物質にSiO粒子および黒鉛を用いたため、初期容量およびサイクル容量維持率が低下した。電池B8では、LiSO3Fを含む電解液を用いたが、負極活物質にSiC粒子および黒鉛を用いたため、初期容量およびサイクル容量維持率が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明に係る二次電池は、移動体通信機器、携帯電子機器等の主電源に有用である。
【符号の説明】
【0159】
1 電極群
2 正極リード
3 負極リード
4 電池ケース
5 封口板
6 負極端子
7 ガスケット
8 封栓