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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】発光装置及びそれを用いた医療装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20231127BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20231127BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20231127BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01S5/022
H01L33/50
A61N5/06 Z
A61N5/067
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020571103
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002680
(87)【国際公開番号】W WO2020162243
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2019017797
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】新田 充
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518046(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008171(WO,A1)
【文献】米国特許第06385221(US,B1)
【文献】国際公開第2017/164214(WO,A1)
【文献】特開2016-119999(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008283(WO,A1)
【文献】特開2006-253099(JP,A)
【文献】特開2009-153712(JP,A)
【文献】特開2012-209190(JP,A)
【文献】特開2015-061902(JP,A)
【文献】特開2018-203983(JP,A)
【文献】国際公開第2012/069542(WO,A1)
【文献】特表2009-500856(JP,A)
【文献】特開平11-009707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
A61N 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固体発光素子と、
第一の波長変換光を放つ第一の蛍光体を含む波長変換体と、
を備え、
前記第一の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を有する蛍光体であり、かつ、Ce 3+ 賦活蛍光体、Eu 2+ 賦活蛍光体又はCr 3+ 賦活蛍光体であり、
各固体発光素子は、エネルギー密度が0.5W/mm以上である一次光を放ち、
複数の前記固体発光素子は同一の種類であり、各固体発光素子は430nm以上480nm以下、500nm以上560nm以下、又は600nm以上700nm以下の波長範囲内に強度最大値を有する前記一次光を放射し、
前記第一の波長変換光は、少なくとも700nm以上800nm未満の波長範囲全体に亘って光成分を有し、
前記波長変換体から発せられる蛍光のエネルギーは100mW以上である、光線力学療法に使用される発光装置。
【請求項2】
前記第一の波長変換光は、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記波長変換体は、前記固体発光素子が発する前記一次光を吸収して可視光である第二の波長変換光を放つ第二の蛍光体をさらに含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第一の蛍光体は、前記一次光及び前記第二の波長変換光の少なくとも一方を吸収することで前記第一の波長変換光を放つ、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第二の蛍光体が放つ蛍光のピーク波長は、500nm以上700nm以下の波長範囲内であり、
前記固体発光素子は、励起源として青色レーザー素子を備える、請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第一の波長変換光は、蛍光ピークが700nm以上1000nm以下の波長範囲内にある、請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の発光装置を備える、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び当該発光装置を用いた医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光線力学療法(Photodynamic therapy(PDT))と呼ばれる、腫瘍に対する治療方法が注目されている。光線力学療法は、腫瘍と選択的に結合する光感受性物質を被検体に投与した後に、光感受性物質に光を照射する治療方法である。腫瘍と結合した光感受性物質に光を照射することにより、光感受性物質が熱や活性酸素種を発するため、熱や活性酸素種により腫瘍を破壊することができる。このような光線力学療法は、正常な生体組織にダメージを与え難いことから、患者への負担が少ない治療方法といえる。
【0003】
光線力学療法において、光感受性物質に照射する光としては、例えば、近赤外光が利用される。近赤外光は、生体内のヘモグロビンや水による吸収及び散乱の影響が小さいため、生体を透過し易い。このため、近赤外光を用いることで、生体内部にある腫瘍の治療が可能となる。なお、650nm以上1400nm未満の波長範囲にある光は、特に生体を透過し易く、当該波長範囲は一般に生体の窓と呼ばれている。
【0004】
近赤外光を放つ発光装置として、特許文献1では、特定の波長変換材料を使用したビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子を開示している。特許文献1では、さらに、当該オプトエレクトロニクス素子が内視鏡に使用され、当該内視鏡は、光線力学的診断および光線力学的治療における使用に適していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-518046号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1において、オプトエレクトロニクス素子を使用した発光装置が放つ近赤外光は、エネルギーが50mW未満と低い。そのため、このような発光装置から発せられた近赤外光を光感受性物質に照射したとしても、光感受性物質が十分に機能しないという問題があった。また、近赤外光のエネルギーが低い場合には、生体の深部にある光感受性物質に近赤外光が十分に照射されないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、光感受性物質を効率的に励起する近赤外光を放射することが可能な発光装置、及び当該発光装置を用いた医療装置を提供することにある。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る発光装置は、光線力学療法に使用される発光装置である。当該発光装置は、エネルギー密度が0.5W/mm以上である一次光を放つ固体発光素子と、第一の波長変換光を放つ第一の蛍光体を含む波長変換体と、を備える。第一の波長変換光は、少なくとも700nm以上800nm未満の波長範囲全体に亘って光成分を有する。そして、波長変換体から発せられる蛍光のエネルギーは、100mW以上である。
【0009】
本発明の第二の態様に係る医療装置は、第一の態様に係る発光装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る発光装置の他の例を示す概略断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る発光装置の他の例を示す概略断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る発光装置の他の例を示す概略断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る発光装置の発光スペクトルと光感受性物質の吸収スペクトルとの関係を抽象的に示すグラフである。
図6図6は、本実施形態に係る内視鏡の構成を概略的に示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る内視鏡システムの構成を概略的に示す図である。
図8図8は、参考例4の発光装置で用いた蛍光体のX線回折パターン、及びICSDに登録されたCaScのパターンを示すグラフである。
図9図9は、実施例1の発光装置で用いた蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。
図10図10は、参考例2の発光装置で用いた蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。
図11図11は、参考例3の発光装置で用いた蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
図12図12は、参考例4の発光装置で用いた蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
図13図13は、参考例5の発光装置で用いた蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
図14図14は、実施例6の発光装置で用いた蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示すグラフである。
図15図15は、実施例7の発光装置で用いた蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本実施形態に係る発光装置、及び当該発光装置を用いた医療装置、並びに光線力学療法について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
[発光装置]
本実施形態に係る発光装置は、光線力学療法に使用される発光装置である。図1乃至図4に示すように、発光装置1,1A,1B,1Cは、固体発光素子2と、第一の波長変換光7を放つ第一の蛍光体4を含む波長変換体3,3Aとを少なくとも備えている。発光装置1,1A,1B,1Cは、固体発光素子2から放射された一次光6が波長変換体3,3Aに入射すると、波長変換体3,3Aが蛍光を放射するものである。
【0013】
(固体発光素子)
固体発光素子2は、一次光6を放射する発光素子である。このような固体発光素子2としては、例えば、面発光レーザーダイオード等のレーザー素子が用いられる。1つのレーザー素子が放射するレーザー光の出力エネルギーは、例えば、0.1W以上であることが好ましく、1W以上であることがさらに好ましく、5W以上であることがさらに好ましい。また、固体発光素子2が放射するレーザー光のエネルギー密度は、例えば、0.5W/mm以上であることが好ましく、2W/mm以上であることがより好ましく、10W/mm以上であることがさらに好ましい。後述するように、波長変換体3,3A中の蛍光体は、高出力のレーザー光を高効率で波長変換でき、さらに高出力のレーザー光に対しても劣化し難い。そのため、固体発光素子2が放射するレーザー光のエネルギー密度が0.5W/mm以上であることにより、発光装置は高出力な近赤外光を放射することが可能となる。
【0014】
発光装置1,1A,1B,1Cに備えられる固体発光素子2は、発光ダイオード(LED)であってもよい。例えば、固体発光素子2として100mW以上のエネルギーの光を放つLEDを利用すれことにより、波長変換体3,3A中の蛍光体を高出力の光で励起することができる。その結果、発光装置1,1A,1B,1Cは高出力な近赤外光を放射することが可能となり、レーザー素子を利用する場合と同様の効果を発揮することが可能となる。
【0015】
上述のように、発光装置1,1A,1B,1Cにおいて、固体発光素子2は、レーザー素子及び発光ダイオードの少なくとも一方であることが好ましい。ただ、固体発光素子2はこれらに限定されず、高いエネルギー密度を有する一次光6を放つことが可能ならば、あらゆる発光素子を用いることができる。具体的には、固体発光素子2は、エネルギー密度が0.5W/mm以上である一次光6を放つ発光素子であることが好ましい。この場合、波長変換体3,3A中の蛍光体を高出力の光で励起することから、発光装置1,1A,1B,1Cは高出力な近赤外光を放射することが可能となる。なお、固体発光素子2が放つ一次光のエネルギー密度は、2W/mm以上であることがより好ましく、10W/mm以上であることがさらに好ましい。固体発光素子2が放つ一次光のエネルギー密度の上限は特に限定されないが、例えば50W/mmとすることができる。
【0016】
固体発光素子2は、430nm以上480nm以下の波長範囲内に強度最大値を有する一次光6を放射することが好ましい。また、固体発光素子2は、励起源としての青色レーザー素子を備え、青色の一次光6を放射することが好ましい。これにより、波長変換体3,3A中の蛍光体を高効率で励起することから、発光装置は高出力な近赤外光を放射することが可能となる。
【0017】
固体発光素子2は、500nm以上560nm以下の波長範囲内に強度最大値を有する一次光6を放射するものであってもよい。これにより、高出力の一次光6で、波長変換体3,3A中の蛍光体を励起できることから、発光装置は高出力な近赤外光を放射することが可能となる。
【0018】
固体発光素子2は、600nm以上700nm以下の波長範囲内に強度最大値を有する一次光6を放射するものであってもよい。これにより、比較的低エネルギーの赤色系光で、波長変換体3,3A中の蛍光体を励起できるようになるので、蛍光体のストークスロスによる発熱の少ない、高出力の近赤外光を放つ発光装置を得ることができる。
【0019】
上述のように、発光装置1,1A,1B,1Cに備えられる固体発光素子2の種類は、特に限定されない。ただ、発光装置1,1A,1B,1Cに備えられる固体発光素子2の種類は、三種以下であることが好ましく、二種以下であることがより好ましく、一種であることがさらに好ましい。このような構成にすることで、固体発光素子2の種類が少ない簡易な構成になるため、コンパクトな発光装置1,1A,1B,1Cを得ることができる。
【0020】
発光装置1,1A,1B,1Cは、波長変換体3,3Aを励起しないレーザー素子をさらに備えてもよい。これにより、波長変換体3,3Aが放つ近赤外光を利用した光線力学療法と、波長変換体3,3Aを励起しないレーザー素子が放つレーザー光を利用した他の治療とを併用できる医療装置向けの発光装置を得ることができる。なお、レーザー素子が放つレーザー光を利用した他の治療としては、光干渉断層法を利用する治療、ICG蛍光撮像法などの蛍光イメージング法を利用する治療、狭帯域光法(Narrow Band Imaging(NBI))を利用する治療、レーザーメス治療などが挙げられる。
【0021】
発光装置1,1A,1B,1Cに備えられる固体発光素子は、同一の種類のものを、複数個備えることが好ましい。このような構成にすることで、波長変換体3,3Aをさらに強いエネルギーの光で励起することができるため、より高出力の近赤外光を放つ発光装置を得ることができる。
【0022】
(波長変換体)
図1乃至図4に示すように、波長変換体3,3Aは、一次光6の受光により、一次光6よりも長波長の蛍光を放射する。図1及び図2に示す波長変換体3,3Aは、正面3aで一次光6を受光し、背面3bから蛍光を放射する構成となっている。これに対し、図3及び図4に示す波長変換体3,3Aは、正面3aで一次光6を受光し、同じ正面3aで蛍光を放射する構成となっている。
【0023】
波長変換体3,3Aは、一次光6を受光して第一の波長変換光7を放つ第一の蛍光体4を含んでおり、第一の波長変換光7は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を持つものである。そのため、発光装置1,1A,1B,1Cは、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲において光成分を持つ連続スペクトルの光を放つことができる。
【0024】
波長変換体3,3Aに含まれる第一の蛍光体4は、第一の波長変換光7が少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を持つものであれば、特に限定されない。ただ、第一の蛍光体4は、Eu2+賦活蛍光体及びCe3+賦活蛍光体の少なくとも一方を含むことが好ましい。Ce3+およびEu2+は、4f⇔4fn-15d許容遷移に基づく光吸収と発光のメカニズムをとる。そのため、これらが賦活される母体結晶によって吸収および発光の波長が変化する。したがって、Ce3+又はEu2+を発光中心とし適切な母体結晶を選択することで、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲において滑らかなバンドスペクトルを形成する蛍光成分を得ることが可能となる。なお、上述の4f⇔4fn-15d許容遷移において、Ce3+はn=1に該当し、Eu2+はn=7に該当する。
【0025】
第一の蛍光体4は、Cr3+賦活蛍光体を少なくとも含むことが好ましい。Cr3+は、d-d遷移に基づく光吸収と発光のメカニズムをとる。そのため、Cr3+が賦活される母体結晶によって吸収および発光の波長が変化する。したがって、Cr3+を発光中心とし適切な母体結晶を選択することで、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲において滑らかなバンドスペクトルを形成する蛍光成分を得ることが可能となる。
【0026】
第一の蛍光体4は、酸化物系の蛍光体であることが好ましく、酸化物蛍光体であることがより好ましい。なお、酸化物系の蛍光体とは、酸素を含むが窒素は含まない蛍光体をいい、例えばカルシウムフェライト型構造を持つアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属ハロアルミン酸塩、希土類アルミン酸塩を挙げることができる。
【0027】
酸化物は大気中で安定な物質であるため、レーザー光による高密度の光励起によって酸化物蛍光体が発熱した場合であっても、窒化物蛍光体で生じるような、大気で酸化されることによる蛍光体結晶の変質が生じ難い。このため、波長変換体3,3Aに含まれる全ての蛍光体が酸化物蛍光体である場合には、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0028】
第一の蛍光体4は、窒化物系の蛍光体であることが好ましく、窒化物蛍光体であることがより好ましい。また、第一の蛍光体4は、酸窒化物系の蛍光体であることが好ましく、酸窒化物蛍光体であることがより好ましい。窒化物は共有結合性が強く、組成の面で様々な変形例を取り得るため、蛍光色の制御や温度消光の改善も容易となる。また、熱伝導性も優れるため、発光装置の小型化に有利である。このため、波長変換体3,3Aに含まれる全ての蛍光体が窒化物系の蛍光体である場合には、発光装置が放つ光の色調制御が容易となり、さらに小型の装置設計も容易となる
【0029】
第一の蛍光体4は、ガーネットの結晶構造を有することも好ましい。また、第一の蛍光体4は、ガーネットの結晶構造を有する酸化物蛍光体であることも好ましい。ガーネット構造を有する蛍光体、特に酸化物は、球に近い多面体の粒子形状を持ち、蛍光体粒子群の分散性に優れる。このため、波長変換体3,3Aに含まれる蛍光体がガーネット構造を有する場合には、光透過性に優れる波長変換体を比較的容易に製造できるようになり、発光装置の高出力化が可能となる。また、ガーネットの結晶構造を有する蛍光体はLED用蛍光体として実用実績があることから、第一の蛍光体4がガーネットの結晶構造を有することにより、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0030】
第一の蛍光体4は、希土類珪酸塩、希土類アルミン酸塩、希土類ガリウム酸塩、希土類スカンジウム酸塩、希土類アルミノ珪酸塩、アルカリ土類金属窒化アルミノ珪酸塩、及び希土類窒化珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物を母体としてなる蛍光体であることが好ましい。または、第一の蛍光体4は、希土類珪酸塩、希土類アルミン酸塩、希土類アルミノ珪酸塩、アルカリ土類金属窒化アルミノ珪酸塩、及び希土類窒化珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つを母体としてなる蛍光体であることが好ましい。このような第一の蛍光体4を用いることで、一次光6の一部を近赤外光に容易に変換できるようになる。そのため、蛍光スペクトルの半値幅が大きな近赤外光を得ることが可能となる。
【0031】
具体的には、第一の蛍光体4は、REMMg(SiO、REAl(AlO、REGa(GaO、RESc(GaO、RESc(ScO、REMg(SiO(AlO)、MRE、MAlSiN、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物(A)を母体としてなる蛍光体であることが好ましい。若しくは、第一の蛍光体4は、REMMg(SiO、REAl(AlO、REMg(SiO(AlO)、MRE、MAlSiN、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを母体としてなる蛍光体であることが好ましい。または、第一の蛍光体4は、当該化合物(A)を端成分とする固溶体を母体としてなる蛍光体であることが好ましい。なお、Mはアルカリ土類金属であり、REは希土類元素である。
【0032】
第一の蛍光体4は、セラミックスからなることが好ましい。これにより、第一の蛍光体4の放熱性が高まるため、温度消光による第一の蛍光体4の出力低下が抑制され、高出力の近赤外光を放つ発光装置を得ることができる。
【0033】
上述のように、発光装置1,1A,1B,1Cにおいて、第一の蛍光体4が放つ第一の波長変換光7は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を持つものである。これにより、光感受性物質を効率的に機能させることができる。ただ、第一の波長変換光7は、少なくとも750nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を持つことがより好ましい。また、第一の波長変換光7は、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有することも好ましい。さらに、第一の蛍光体4が放つ第一の波長変換光7は、蛍光ピークが600nm以上1000nm以下の波長範囲内にあることが好ましく、700nm以上1000nm以下の波長範囲内にあることがより好ましい。これにより、第一の蛍光体4が放つ近赤外域の光成分を、光感受性物質がさらに効率よく吸収できる構成になる。また、光吸収特性の異なる、様々な種類の光感受性物質に対応できる構成になる。そのため、光感受性物質から発せられる熱や活性酸素種の量を多くすることが可能な、様々な光線力学療法に対応できる発光装置を提供することができる。
【0034】
第一の蛍光体4が放つ第一の波長変換光7は、1/e蛍光寿命が20ns以上1000μs以下あることが好ましく、20ns以上100μs未満であることがより好ましい。また、第一の波長変換光7は、1/e蛍光寿命が20ns以上2000ns未満であることがさらに好ましく、20ns以上100ns未満であることが特に好ましい。これにより、第一の蛍光体4を励起する励起光の光密度が高い場合であっても、第一の蛍光体4が放つ蛍光の出力が飽和し難くなる。そのため、高出力の近赤外光を放つことが可能な発光装置を得ることができる。
【0035】
波長変換体3は、図1に示すように、第一の蛍光体4に加え、第一の蛍光体4を分散させる封止材5をさらに有することが好ましい。そして、波長変換体3において、第一の蛍光体4は封止材5中に分散していることが好ましい。第一の蛍光体4を封止材5中に分散させることにより、固体発光素子2が放つ一次光6を効率的に吸収し、近赤外光に波長変換することが可能となる。また、波長変換体3をシート状やフィルム状に成形しやすくすることができる。
【0036】
封止材5は、有機材料及び無機材料の少なくとも一方、特に、透明(透光性)有機材料及び透明(透光性)無機材料の少なくとも一方であることが好ましい。有機材料の封止材としては、例えば、シリコーン樹脂などの透明有機材料が挙げられる。無機材料の封止材としては、例えば、低融点ガラスなどの透明無機材料が挙げられる。
【0037】
図1及び図3に示すように、波長変換体3は、第一の波長変換光7を放つ第一の蛍光体4を含んでいる。ただ、波長変換体は、図2及び図4に示すように、固体発光素子2が発する一次光6を吸収して可視光である第二の波長変換光9を放つ第二の蛍光体8をさらに含むことが好ましい。波長変換体3Aが第二の蛍光体8を含むことにより、固体発光素子2が発する一次光6、例えば青色レーザー光との加法混色により、白色の出力光を放射することが可能となる。
【0038】
波長変換体3Aに含まれる第二の蛍光体8は、固体発光素子2が発する一次光6を吸収して可視光である第二の波長変換光9を放射できるものであれば特に限定されない。第二の蛍光体8は、ガーネット型の結晶構造、カルシウムフェライト型の結晶構造、及びランタンシリコンナイトライド(LaSi11)型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。または、第二の蛍光体8は、ガーネット型の結晶構造、カルシウムフェライト型の結晶構造、及びランタンシリコンナイトライド型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つの化合物を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。このような第二の蛍光体8を用いることで、緑色系から黄色系の光成分を多く持つ出力光を得ることができるようになる。
【0039】
具体的には、第二の蛍光体8は、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物(B)を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。若しくは、第二の蛍光体8は、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。または、第二の蛍光体8は、当該化合物(B)を端成分とする固溶体を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。なお、Mはアルカリ土類金属であり、REは希土類元素である。
【0040】
このような第二の蛍光体8は、430nm以上480nm以下の波長範囲内の光をよく吸収し、540nm以上590nm以下の波長範囲内に強度最大値を有する緑色~黄色系の光に高効率に変換する。そのため、このような蛍光体を第二の蛍光体8として用いることにより、可視光成分を容易に得ることが可能となる。
【0041】
波長変換体3Aが第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含む場合、第一の蛍光体4は、固体発光素子2が発する一次光6及び第二の蛍光体8が発する第二の波長変換光9の少なくとも一方を吸収することで、第一の波長変換光7を放つことが好ましい。上述のように、第一の蛍光体4は、固体発光素子2が発する一次光6を吸収して、近赤外光である第一の波長変換光7を放つ蛍光体であることが好ましい。ただ、第一の蛍光体4は、第二の蛍光体8が発する第二の波長変換光9を吸収して、近赤外光である第一の波長変換光7を放つ蛍光体であってもよい。つまり、第二の蛍光体8が一次光6によって励起されて第二の波長変換光9を放射し、第一の蛍光体4は第二の波長変換光9によって励起されて第一の波長変換光7を放射してもよい。この場合、第一の蛍光体4が一次光6によって殆ど励起されない蛍光体であっても、第二の蛍光体8を介することによって、第二の蛍光体8が発する蛍光により励起することが可能となる。これにより、第一の蛍光体4として、可視光を吸収する蛍光体を選択できるようになることから、第一の蛍光体4の選択肢が広がり、工業生産が容易な発光装置となる。また、第一の蛍光体4が第二の波長変換光9を吸収して第一の波長変換光7を放つ場合には、近赤外の光成分強度が大きい第一の波長変換光7を放つことが可能な発光装置となる。
【0042】
波長変換体3,3Aは無機材料からなることが好ましい。ここで無機材料とは、有機材料以外の材料を意味し、セラミックスや金属を含む概念である。波長変換体3,3Aが無機材料からなることにより、封止樹脂等の有機材料を含む波長変換体と比較して熱伝導性が高くなるため、放熱設計が容易となる。このため、固体発光素子2から放射された一次光6により蛍光体が高密度で光励起された場合でも、波長変換体3,3Aの温度上昇を効果的に抑制することができる。その結果、波長変換体3,3A中の蛍光体の温度消光が抑制され、発光の高出力化が可能となる。
【0043】
上述のように、波長変換体3,3Aは無機材料からなることが好ましいことから、封止材5は無機材料からなることが好ましい。また、無機材料としては、酸化亜鉛(ZnO)を用いることが好ましい。これにより、蛍光体の放熱性がさらに高まるため、温度消光による蛍光体の出力低下が抑制され、高出力の近赤外光を放つ発光装置を得ることが可能となる。
【0044】
なお、波長変換体3,3Aは、封止材5を使用しない波長変換体とすることもできる。この場合、有機または無機の結着剤を利用して、蛍光体同士を固着すればよい。また、蛍光体の加熱反応を利用して、蛍光体同士を固着することもできる。結着剤としては、一般的に利用される樹脂系の接着剤、またはセラミックス微粒子や低融点ガラスなどを使用することができる。封止材5を利用しない波長変換体は厚みを薄くすることができるため、発光装置に好適に用いることができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る発光装置の作用について説明する。図1に示す発光装置1では、はじめに、固体発光素子2から放射された一次光6が波長変換体3の正面3aに照射される。照射された一次光6は、波長変換体3を透過する。そして、一次光6が波長変換体3を透過する際に、波長変換体3に含まれる第一の蛍光体4が一次光6の一部を吸収して第一の波長変換光7を放射する。このようにして、波長変換体3の背面3bから、出力光として一次光6と第一の波長変換光7とを含む光を放射する。
【0046】
図2に示す発光装置1Aでは、はじめに、固体発光素子2から放射された一次光6が波長変換体3Aの正面3aに照射される。照射された一次光6は、波長変換体3Aを透過する。そして、一次光6が波長変換体3Aを透過する際に、波長変換体3Aに含まれる第二の蛍光体8が一次光6の一部を吸収して第二の波長変換光9を放射する。さらに、波長変換体3Aに含まれる第一の蛍光体4が一次光6及び/又は第二の波長変換光9の一部を吸収して第一の波長変換光7を放射する。このようにして、波長変換体3Aの背面3bから、出力光として一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを含む光を放射する。
【0047】
図3に示す発光装置1Bでは、はじめに、固体発光素子2から放射された一次光6が波長変換体3の正面3aに照射される。一次光6は、多くが波長変換体3の正面3aから波長変換体3内に入射し、残部が正面3aで反射する。波長変換体3では、一次光6で励起された第一の蛍光体4から第一の波長変換光7が放射され、第一の波長変換光7は正面3aから放射される。
【0048】
図4に示す発光装置1Cでは、はじめに、固体発光素子2から放射された一次光6が波長変換体3Aの正面3aに照射される。一次光6は、多くが波長変換体3Aの正面3aから波長変換体3A内に入射し、残部が正面3aで反射する。波長変換体3Aでは、一次光6で励起された第二の蛍光体8から第二の波長変換光9が放射され、一次光6及び/又は第二の波長変換光9で励起された第一の蛍光体4から第一の波長変換光7が放射される。そして、第一の波長変換光7および第二の波長変換光9は正面3aから放射される。
【0049】
このように、本実施形態の発光装置は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有する第一の波長変換光7を放射するため、被検体に投与された光感受性物質を第一の波長変換光7により効率的に機能させることができる。
【0050】
ここで、光線力学療法に使用される光感受性物質は、第一の波長変換光7を吸収して熱及び活性酸素種の少なくとも一方を発し、腫瘍を破壊する能力を持つものであれば特に限定されない。光感受性物質は、例えば、フタロシアニン系の化合物、ポルフィリン系の化合物、クロリン系の化合物、バクテリオクロリン系の化合物、ソラレン系の化合物、ポルフィマーナトリウム系の化合物、タラポルフィンナトリウム系の化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、光感受性物質は、光感受性薬剤、光感受性化合物、光増感剤、発熱物質などと呼ばれることもある。
【0051】
このような光感受性物質は、ソルバトクロミック効果(溶媒の極性の変化によって基底状態および励起状態が変化する効果)や、会合(分子間力による同種分子同士の結合)による電子吸引性の変化によって、被検体内で光吸収特性が変化することがある。また、光感受性物質は、腫瘍等の部位(患部)に集積させるために導入する官能基、置換基、側鎖の種類の違いなどによっても、被検体内で光吸収特性が変化することがある。このため、光感受性物質に照射される光のスペクトル幅が比較的狭い場合や、光感受性物質に照射される光のスペクトルが一定である場合には、光感受性物質の光吸収特性の変化に対応できない。その結果、光感受性物質において、光エネルギーから熱エネルギーへの変換効率や、活性酸素の発生効率が低下する場合があった。
【0052】
これに対して、本実施形態に係る発光装置は、光感受性物質の光吸収特性が変化した場合でも、光感受性物質を高効率に励起することができる。図5では、本実施形態に係る発光装置の発光スペクトルと光感受性物質の吸収スペクトルとの関係のイメージを示している。上述のように、光感受性物質は、ソルバトクロミック効果や、官能基、置換基、側鎖の種類の違いなどによって、光吸収特性が変化することがある。つまり、図5に示すように、光感受性物質の吸収スペクトルのピーク波長は、これらの影響により少なからず変化する。しかしながら、本実施形態の発光装置は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って連続的に光成分を放つ。そのため、たとえ光感受性物質の光吸収特性が変化した場合でも、光感受性物質の吸収スペクトルと第一の波長変換光7の発光スペクトルは大きな重なりを持つ。その結果、光感受性物質は第一の波長変換光7を効率的に吸収することから、光感受性物質は効率的に励起され、熱や活性酸素種を多く発生することが可能となる。
【0053】
本実施形態の発光装置1,1A,1B,1Cにおいて、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギー(蛍光の放射束)は、100mW以上である。つまり、固体発光素子2は、エネルギー密度が0.5W/mm以上である一次光6を波長変換体3に照射することから、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーは100mW以上となる。この場合、波長変換体3から発せられる第一の波長変換光7は高強度となることから、被検体内の光感受性物質をより高効率に励起して、光感受性物質を十分に機能させることが可能となる。また、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーが高い場合には、生体深部にある光感受性物質を効率的に励起して、光感受性物質を機能させることが可能となる。なお、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーは300mW以上であることが好ましく、500mW以上であることがより好ましく、1W以上であることがさらに好ましい。波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーの上限は特に限定されないが、例えば10Wとすることができる。
【0054】
このように、本実施形態の発光装置1,1A,1B,1Cは、光線力学療法に使用される発光装置であって、エネルギー密度が0.5W/mm以上である一次光6を放つ固体発光素子2と、第一の波長変換光7を放つ第一の蛍光体4を含む波長変換体3とを備える。第一の波長変換光7は、少なくとも700nm以上800nm未満の波長範囲全体に亘って光成分を有する。そして、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーは、100mW以上である。発光装置1,1A,1B,1Cは、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有する光を放射するため、光感受性物質に特性変化が生じた場合でも高効率に光感受性物質を励起することができる。また、波長変換体3から発せられる蛍光のエネルギーは100mW以上であることから、光感受性物質を効率的に励起して、光感受性物質を十分に機能させることができる。
【0055】
なお、一次光6は、発光装置1,1A,1B,1Cの出力光に含まれていてもよい。このようにすることで、第一の波長変換光7とは波長が異なる一次光6を利用して、光線力学療法と他の治療とを併用できる医療装置向けの発光装置を得ることができる。他の治療としては、例えば、狭帯域光法を利用する治療などが挙げられる。また、一次光6は、発光装置1,1A,1B,1Cの出力光に含まれていなくてもよい。このようにすることで、第一の波長変換光7のみが出力光となり、ノイズ成分の少ない、光線力学療法向けに適した発光装置を得ることができる。
【0056】
固体発光素子2は、430nm以上480nm以下の波長範囲内に強度最大値を有するレーザー光を放射する青色レーザー素子であることが好ましい。青色レーザー素子は、近赤外光を放つレーザー素子と比べて出力が高い。そのため、青色レーザー素子と波長変換体3,3Aとを組み合わせることにより、従来よりも高出力の近赤外光を放射でき、被検体内の光感受性物質を高効率で励起することが可能となる。
【0057】
発光装置1A,1Cにおいて、波長変換体は、第一の波長変換光7を放つ第一の蛍光体4に加えて、可視光である第二の波長変換光9を放つ第二の蛍光体8をさらに含むことが好ましい。これにより、体内組織の表面に対して第二の波長変換光9を照射して、体内組織の表面状態を観察することが可能となる。
【0058】
なお、発光装置1A,1Cにおいて、第二の蛍光体8が放つ蛍光のピーク波長は、500nm以上700nm以下の波長範囲内であり、固体発光素子2は、励起源として青色レーザー素子を備えることがより好ましい。これにより、第二の蛍光体8が放つ第二の波長変換光9と固体発光素子2が放つ青色の光成分との加法混色により、発光装置は、白色の光成分を放射することができる。そのため、体内組織の表面に対して白色の光成分を照射して、体内組織の表面状態を観察することが可能となる。また、高い実用実績を持つ蛍光体を第二の蛍光体8として利用でき、さらに、市場調達が容易で比較的安価な、高い実用実績を持つ青色半導体レーザー素子を固体発光素子2として利用できる。そのため、工業生産に適する発光装置を容易に得ることが可能となる。
【0059】
また、発光装置1,1A,1B,1Cは、第一の波長変換光7および第二の波長変換光9を集光するレンズをさらに備えてもよい。これにより、波長変換体3,3Aが放つ波長変換光を、効率的に患部に照射することができるため、観察精度や治療能力がより高い発光装置を得ることができる。
【0060】
上述のように、発光装置1,1A,1B,1Cは、フタロシアニン系の化合物や、ポルフィリン系の化合物、クロリン系の化合物、バクテリオクロリン系の化合物、ソラレン系の化合物、ポルフィマーナトリウム系の化合物、タラポルフィンナトリウム系の化合物などの光感受性物質を利用する光線力学療法に使用することができる。ただ、発光装置1,1A,1B,1Cを用いる光線力学療法はこれらに限定されず、近赤外光領域(例えば、650nm以上1400nm未満の波長範囲)に吸収スペクトルを持つ光感受性物質を利用する光線力学療法に用いることができる。
【0061】
[医療装置]
次に、本実施形態に係る医療装置について説明する。具体的には、医療装置の一例として、発光装置を備えた内視鏡、及び当該内視鏡を用いた内視鏡システムについて説明する。
【0062】
本実施形態に係る内視鏡は、上述の発光装置1,1A,1B,1Cを備えるものである。図6に示すように、内視鏡11は、スコープ110、光源コネクタ111、マウントアダプタ112、リレーレンズ113、カメラヘッド114、及び操作スイッチ115を備えている。
【0063】
スコープ110は、末端から先端まで光を導くことが可能な細長い導光部材であり、使用時には体内に挿入される。スコープ110は先端に撮像窓110zを備えており、撮像窓110zには光学ガラスや光学プラスチック等の光学材料が用いられる。スコープ110は、さらに、光源コネクタ111から導入された光を先端まで導く光ファイバーと、撮像窓110zから入射した光学像が伝送される光ファイバーとを有する。
【0064】
マウントアダプタ112は、スコープ110をカメラヘッド114に取り付けるための部材である。マウントアダプタ112には、種々のスコープ110が着脱自在に装着される。
【0065】
光源コネクタ111は、発光装置から、体内の患部等に照射される照明光を導入する。本実施形態では、照明光は可視光及び近赤外光を含んでいる。光源コネクタ111に導入された光は、光ファイバーを介してスコープ110の先端まで導かれ、撮像窓110zから体内の患部等に照射される。なお、図6に示すように、光源コネクタ111には、発光装置からスコープ110に照明光を導くための伝送ケーブル111zが接続されている。伝送ケーブル111zには、光ファイバーが含まれていてもよい。
【0066】
リレーレンズ113は、スコープ110を通して伝達される光学像を、イメージセンサの撮像面に収束させる。なお、リレーレンズ113は、操作スイッチ115の操作量に応じてレンズを移動させて、焦点調整及び倍率調整を行ってもよい。
【0067】
カメラヘッド114は、色分解プリズムを内部に有する。色分解プリズムは、例えば、リレーレンズ113で収束された光を、R光(赤色光)、G光(緑色光)、B光(青色光)に分解する。なお、色分解プリズムは、IR光(近赤外光)をさらに分解できるものであってもよい。これによって、近赤外光を用いる蛍光イメージング法を利用した、病巣部の特定が可能な内視鏡11にもなる。
【0068】
カメラヘッド114は、さらに、検出器としてのイメージセンサを内部に有する。イメージセンサは、各々の撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。イメージセンサは特に限定されないが、CCD(Charge Coupled Device)及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の少なくとも一方を用いることができる。イメージセンサは、例えば、B成分(青色成分)、R成分(赤色成分)、及びG成分(緑色成分)の光をそれぞれ受光する専用のセンサである。なお、カメラヘッド114には、IR成分(近赤外光成分)を受光する専用のセンサをさらに有していてもよい。これによって、近赤外光を用いる蛍光イメージング法を利用した、病巣部の特定が可能な内視鏡11にもなる。
【0069】
カメラヘッド114は、色分解プリズムの替わりに、カラーフィルターを内部に有していてもよい。カラーフィルターは、イメージセンサの撮像面に備えられる。カラーフィルターは、例えば3つ備えられており、3つのカラーフィルターは、リレーレンズ113で収束された光を受けて、R光(赤色光)、G光(緑色光)、B光(青色光)をそれぞれ選択的に透過する。なお、IR光(近赤外光)を選択的に透過するカラーフィルターがさらに備えられることで、近赤外光を用いる蛍光イメージング法を利用した、病巣部の特定が可能な内視鏡11にもなる。
【0070】
近赤外光を用いる蛍光イメージング法を利用する場合、IR光を選択的に透過するカラーフィルターには、照明光に含まれる近赤外光(IR光)の反射成分をカットするバリアフィルムが備えられていることが好ましい。これにより、蛍光イメージング法で使用される蛍光薬剤から発せられたIR光からなる蛍光のみが、IR光用のイメージセンサの撮像面に結像するようになる。そのため、蛍光薬剤により発光した患部を明瞭に観察し易くなる。
【0071】
なお、図6に示すように、カメラヘッド114には、イメージセンサからの電気信号を、後述するCCU12に伝送するための信号ケーブル114zが接続されている。
【0072】
このような構成の内視鏡11では、被検体からの光は、スコープ110を通ってリレーレンズ113に導かれ、さらにカメラヘッド114内の色分解プリズムを透過してイメージセンサに結像する。
【0073】
本実施形態に係る内視鏡システム100は、図7に示すように、被検体内を撮像する内視鏡11、CCU(Camera Control Unit)12、発光装置1,1A,1B,1C、及びディスプレイなどの表示装置13を備えている。
【0074】
CCU12は、少なくとも、RGB信号処理部、IR信号処理部、及び出力部を備えている。そして、CCU12は、CCU12の内部又は外部のメモリが保持するプログラムを実行することで、RGB信号処理部、IR信号処理部、及び出力部の各機能を実現する。
【0075】
RGB信号処理部は、イメージセンサからのB成分、R成分、G成分の電気信号を、表示装置13に表示可能な映像信号に変換し、出力部に出力する。また、IR信号処理部は、イメージセンサからのIR成分の電気信号を映像信号に変換し、出力部に出力する。
【0076】
出力部は、RGB各色成分の映像信号及びIR成分の映像信号の少なくとも一方を表示装置13に出力する。例えば、出力部は、同時出力モード及び重畳出力モードのいずれかに基づいて、映像信号を出力する。
【0077】
同時出力モードでは、出力部は、RGB画像とIR画像とを別画面により同時に出力する。同時出力モードにより、RGB画像とIR画像とを別画面で比較して、患部を観察できる。重畳出力モードでは、出力部は、RGB画像とIR画像とが重畳された合成画像を出力する。重畳出力モードにより、例えば、RGB画像内で、蛍光イメージング法で使用される蛍光薬剤により発光した患部を明瞭に観察できる。
【0078】
表示装置13は、CCU12からの映像信号に基づいて、患部等の対象物の画像を画面に表示する。同時出力モードの場合、表示装置13は、画面を複数に分割し、各画面にRGB画像及びIR画像を並べて表示する。重畳出力モードの場合、表示装置13は、RGB画像とIR画像とが重ねられた合成画像を1画面で表示する。
【0079】
上述のように、本実施形態に係る内視鏡11は、発光装置1,1A,1B,1Cを備えており、スコープ110の撮像窓110zから第一の波長変換光7を放射する。そのため、内視鏡11を用いることにより、体内の患部に集積した光感受性物質を効率的に励起して、光感受性物質を十分に機能させることが可能となる。
【0080】
また、内視鏡11が第二の蛍光体8を含む発光装置1A,1Cを備えている場合、内視鏡11は、第一の波長変換光7に加えて、可視光である第二の波長変換光9を放射する。そのため、内視鏡システム100を用いることで、患部の位置を特定しつつ、患部に第一の波長変換光7を照射することが可能となる。
【0081】
このように、本実施形態の医療装置は、発光装置1,1A,1B,1Cを備えている。ただ、医療装置は内視鏡や内視鏡システムに限定されず、光線力学療法に使用されるあらゆる医療装置に発光装置1,1A,1B,1Cを適用することができる。例えば、光線力学療法に使用され、被検体の外部から近赤外光を照射する光源装置にも、発光装置1,1A,1B,1Cを用いることができる。
【0082】
[光線力学療法]
次に、本実施形態に係る光線力学療法について説明する。本実施形態の光線力学療法は、上述の発光装置1,1A,1B,1C又は医療装置を用いる方法である。具体的には、本実施形態の光線力学療法は、病巣部の位置を特定する工程と、被検体に光感受性物質を投与する工程と、光感受性物質が接触した病巣部に、第一の波長変換光7を照射する工程と、を有する。
【0083】
本実施形態の光線力学療法は、まず、被検体である患者の病巣部の位置を特定する。病巣部の位置の特定には、例えば、蛍光イメージング法が使用できる。蛍光イメージング法は、蛍光薬剤を被検体に投与して被検体内の腫瘍等に特異的に集積させた後、特定波長の光によって蛍光薬剤を励起し、蛍光薬剤から放射された蛍光を撮像することで、腫瘍の有無や位置を把握する手法である。
【0084】
次に、被検体に光感受性物質を投与し、患部に光感受性物質を特異的に集積させる。被検体に投与される光感受性物質としては、上述のように、近赤外光領域の光を吸収し、熱や活性酸素種を発生させる物質を使用することができる。なお、光感受性物質を被検体に投与するタイミングは、病巣部の位置を特定する前であってもよい。
【0085】
そして、光感受性物質が接触した病巣部に、第一の波長変換光7を照射する。上述のように、第一の波長変換光7は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有し、そのエネルギーは100mW以上である。そして、近赤外光領域の光は、生体内のヘモグロビンや水によって散乱され難く、生体を透過し易いため、第一の波長変換光7は生体を透過して、光感受性物質を強く励起する。励起した光感受性物質は、熱や活性酸素種を発生し、接触した腫瘍を破壊する。
【0086】
上述のように、第一の波長変換光7は、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有するため、光感受性物質に特性変化が生じた場合でも、高効率に励起することができる。また、第一の波長変換光7は、100mW以上の高エネルギーであるため、生体深部にある光感受性物質を励起して、光感受性物質を十分に機能させることが可能となる。
【0087】
病巣部の位置を特定する方法は、蛍光イメージング法に限定されない。例えば、狭帯域光法や画像解析により、病巣部の位置を特定してもよい。また、外科手術の際には、目視によって病巣部の位置を把握してもよい。この場合、光ファイバーなどを介さずに、発光装置から放射される光を、病巣部に直接照射してもよい。また、光ファイバーなどを介したファイバー型の装置を用いて、発光装置から放射される光を病巣部に照射してもよい。なお、外科手術でも、病巣部の位置を特定する際に、蛍光イメージング法や狭帯域光法、画像解析を用いることはできる。
【0088】
ここで、患者の病巣部には、腫瘍以外に新生血管も含まれる。新生血管とは、腫瘍の周囲に特異的に形成される血管であり、腫瘍の増殖や転移を助長する働きを持つ。本実施形態の光線力学療法は、新生血管に光感受性物質を特異的に集積させて、破壊するものであってもよい。
【0089】
本実施形態の光線力学療法は、制御性T細胞を破壊するものであってもよい。制御性T細胞とは、免疫寛容を司る細胞であり、腫瘍の周辺環境では、制御性T細胞が活性化し、腫瘍に対する免疫系の働きを阻害する。そのため、光線力学療法によって、制御性T細胞に光感受性物質を特異的に集積させて破壊し、免疫系の働きを活性化させることで、腫瘍を治療することができる。このような治療方法は、光免疫療法と呼ばれることがある。
【実施例
【0090】
以下、実施例により本実施形態の発光装置をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらによって限定されるものではない。
【0091】
[蛍光体の調製]
(実施例1)
固相反応を利用する調製手法を用いて、実施例1で使用する酸化物蛍光体を合成した。実施例1の蛍光体は、(Y0.98Ce0.02Mg(AlO)(SiOの組成式で表される酸化物蛍光体である。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
酸化イットリウム(Y):純度3N、信越化学工業株式会社
酸化セリウム(CeO):純度4N、信越化学工業株式会社
酸化アルミニウム(θ-Al):純度>4N5、住友化学株式会社
酸化マグネシウム(MgO):純度4N、株式会社高純度化学研究所
二酸化珪素(SiO):純度>3N、日本アエロジル株式会社
【0092】
なお、原料同士の反応性を高める目的で、酸化アルミニウムについては、住友化学(株)製のAKP-G008を使用した。また、実施例では、反応促進剤として以下の化合物粉末を用いた。
フッ化アルミニウム(AlF):純度3N、株式会社高純度化学研究所
炭酸カリウム(KCO):純度2N5、関東化学株式会社
【0093】
まず、化学量論的組成の化合物(Y0.98Ce0.02Mg(AlO)(SiOとなるように、上記原料を秤量した。次に、ボールミルを用いて、秤量した原料及び微量の反応促進剤を、適量の水(純水)と共に十分に湿式混合した。得られた混合原料を容器に移し、乾燥機を用いて120℃で一晩乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
【0094】
上記焼成原料を蓋付きの小型アルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて1600℃の大気中で4時間焼成した後、焼成物を軽く解砕した。解砕後の焼成物を、再び小型アルミナるつぼに移した。次に、焼成物が入った小型アルミナるつぼを、炭素が入った一回り大きなアルミナるつぼの内部に入れ、るつぼ蓋をした。そして、当該アルミナるつぼを、箱型電気炉を用いて1400℃で2時間焼成した。このように、1400℃の焼成により発生するCOガスによって、焼成物に還元処理を施すことで、本例の蛍光体を得た。得られた蛍光体の体色は、濃い橙色であった。なお、実験の都合上、後処理については省略した。
【0095】
参考例2、参考例3)
固相反応を利用する調製手法を用いて、参考例2及び参考例3で使用する窒化物蛍光体を合成した。参考例2の蛍光体は、La2.991Ce0.009(Si,Al)(N,O)11-xの組成式で表される窒化物蛍光体である。また、参考例3の蛍光体は、La2.982Ce0.012(Si,Al)(N,O)11-xの組成式で表される窒化物蛍光体である。
【0096】
窒化物蛍光体を合成する際、主原料として、窒化ランタン(III)(LaN)、窒化ケイ素粉末(Si)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、フッ化セリウム粉末(CeF)を使用した。
【0097】
まず、化学量論的組成の化合物La2.991Ce0.009(Si,Al)(N,O)11-x、La2.982Ce0.012(Si,Al)(N,O)11-xとなるように、上記原料を秤量した。ただ、LaN粉末は、化学量論値よりも24%過剰に秤量した。
【0098】
次に、秤量した原料を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、乳鉢を用いて乾式混合した。得られた混合原料を窒化ホウ素製のるつぼに入れ、0.5MPaの窒素雰囲気中、1900℃で2時間焼成した。そして、焼成物を、濃度10%の硝酸溶液中で1時間洗浄した。これにより、参考例2及び参考例3の蛍光体を得た。
【0099】
参考例4)
固相反応を利用する調製手法を用いて、参考例4で使用する酸化物蛍光体を合成した。参考例4の蛍光体は、(Ca0.1Sr0.897Eu0.003)Scの組成式で表される酸化物蛍光体である。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
炭酸カルシウム(CaCO):純度3N、和光純薬工業株式会社
炭酸ストロンチウム(SrCO):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化スカンジウム(Sc):純度3N、信越化学工業株式会社
酸化ユウロピウム(Eu):純度3N、信越化学工業株式会社
【0100】
まず、化学量論的組成の化合物(Ca0.1Sr0.897Eu0.003)Scとなるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、純水を入れたビーカー中に投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した。これによって、純水と原料からなるスラリー状の混合原料を得た。その後、スラリー状の混合原料を、乾燥機を用いて全量乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
【0101】
上記焼成原料を小型アルミナるつぼに移し、管状雰囲気炉を利用して、1500℃の還元性ガス(96vol%N+4vol%H)雰囲気中で1時間の還元処理を行うことによって、本例の蛍光体を得た。なお、還元性ガスの流量は1L/min、昇降温速度は300℃/hとした。
【0102】
得られた蛍光体の体色は、薄い紫色であった。このことは、参考例4の蛍光体が、紫色光以外の可視光(例えば、青色光、緑色光、黄色光及び赤色光)を比較的強く吸収することを示唆する。
【0103】
参考例5)
固相反応を利用する調製手法を用いて、参考例5で使用する窒化物蛍光体を合成した。参考例5の蛍光体は、(La0.896Gd0.1Ce0.004(Si,Al)(N,O)11-xの組成式で表される窒化物蛍光体である。
【0104】
窒化物蛍光体を合成する際、主原料として、窒化ランタン(III)(LaN)、窒化ガドリニウム(III)(GdN)、窒化ケイ素粉末(Si)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、窒化セリウム粉末(CeN)を使用した。
【0105】
まず、化学量論的組成の化合物(La0.896Gd0.1Ce0.004(Si,Al)(N,O)11-xとなるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、乳鉢を用いて乾式混合した。得られた混合原料を窒化ホウ素製のるつぼに入れ、0.5MPaの窒素雰囲気中、1900℃で2時間焼成した。そして、焼成物を、濃度10%の硝酸溶液中で1時間洗浄した。これにより、参考例5の蛍光体を得た。得られた蛍光体の体色は、薄い赤色であった。
【0106】
(実施例6)
固相反応を利用する調製手法を用いて、実施例6で使用する酸化物蛍光体を合成した。実施例6の蛍光体は、Gd(Ga0.97Cr0.03Ga12の組成式で表される酸化物蛍光体である。また、実施例6の蛍光体は、Cr3+賦活蛍光体である。なお、実施例6の酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
酸化ガドリニウム(Gd):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ガリウム(Ga):純度4N、和光純薬工業株式会社
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所
【0107】
まず、化学量論的組成の化合物Gd(Ga0.97Cr0.03Ga12となるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、純水を入れたビーカー中に投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した。これによって、純水と原料からなるスラリー状の混合原料を得た。その後、スラリー状の混合原料を、乾燥機を用いて全量乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
【0108】
上記焼成原料を小型アルミナるつぼに移し、箱型電気炉を利用して、1500℃の大気中で1時間の焼成を行うことによって、本例の蛍光体を得た。なお、昇降温速度は400℃/hとした。得られた蛍光体の体色は、濃い緑色であった。
【0109】
(実施例7)
固相反応を利用する調製手法を用いて、実施例7で使用する酸化物蛍光体を合成した。実施例7の蛍光体は、(Gd0.75La0.25(Ga0.97Cr0.03Ga12の組成式で表される酸化物蛍光体である。また、実施例7の蛍光体は、Cr3+賦活蛍光体である。そして、実施例7の酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
酸化ガドリニウム(Gd):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ランタン(La):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ガリウム(Ga):純度4N、和光純薬工業株式会社
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所
【0110】
まず、化学量論的組成の化合物(Gd0.75La0.25(Ga0.97Cr0.03Ga12となるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、純水を入れたビーカー中に投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した。これによって、純水と原料からなるスラリー状の混合原料を得た。その後、スラリー状の混合原料を、乾燥機を用いて全量乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
【0111】
上記焼成原料を小型アルミナるつぼに移し、箱型電気炉を利用して、1450℃の大気中で1時間の焼成を行うことによって、本例の蛍光体を得た。なお、昇降温速度は400℃/hとした。得られた蛍光体の体色は、濃い緑色であった。
【0112】
[評価]
(結晶構造解析)
実施例1の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(X‘Pert PRO;スペクトリス株式会社、PANalytical社製)を用いて評価した。
【0113】
詳細は省略するが、評価の結果、実施例1の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。つまり、実施例1の蛍光体は、ガーネット蛍光体であることが分かった。このようにして、実施例1の蛍光体が、化合物としての(Y0.98Ce0.02Mg(AlO)(SiOであることを確認した。
【0114】
次に、参考例2及び参考例3の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(RINT2100;株式会社リガク製)を用いて評価した。
【0115】
詳細は省略するが、評価の結果、参考例2及び参考例3の蛍光体は、正方晶の結晶系を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。そして、一般式LaSi11で表される窒化物の結晶と殆ど同じ結晶構造を持つことが分かった。つまり、参考例2及び参考例3の蛍光体は、窒化物蛍光体であることが分かった。このようにして、参考例2及び参考例3の蛍光体が、各々、化合物としてのLa2.991Ce0.009(Si,Al)(N,O)11-x、及び、La2.982Ce0.012(Si,Al)(N,O)11-xであることを確認した。
【0116】
次に、参考例4の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(MiniFlex;株式会社リガク製)を用いて評価した。
【0117】
図8では、参考例4の蛍光体のX線回折(XRD)パターンを示す(図中(1))。参考のため、図8では、ICSD(Inorganic Crystal Structure Database)に登録されたCaScのパターンも示す(図中(2))。図8から判るように、参考例4の蛍光体のXRDパターンは、ICSDに登録されたCaScのパターンと一致した。このことは、参考例4の蛍光体が、CaScと同じカルシウムフェライト型の結晶構造を持つ化合物であることを示す。
【0118】
なお、参考例4の蛍光体の回折ピークは、ICSDに登録されたCaScの回折ピークと比較して、低角側に位置していた。回折ピークの低角シフトは、結晶の格子面間隔値(d値)の増加を示す。このため、この結果は、相対的にイオン半径が大きなSr2+(イオン半径1.26Å、8配位)が、CaSc:Eu2+蛍光体の結晶を構成するCa2+(イオン半径1.12Å、8配位)の一部と置換して、結晶の格子間隔が大きくなったことを示唆する。以上の結果から、参考例4は、(Ca0.1Sr0.897Eu0.003)Scの組成式で表される酸化物蛍光体であるとみなされる。
【0119】
次に、参考例5の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(MiniFlex;株式会社リガク製)を用いて評価した。
【0120】
詳細は省略するが、評価の結果、参考例5の蛍光体は、正方晶の結晶系を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。そして、参考例5の蛍光体は、一般式LaSi11で表される窒化物の結晶と殆ど同じ結晶構造を持つことが分かった。つまり、参考例5の蛍光体は、窒化物蛍光体であることが分かった。このようにして、参考例5の蛍光体が、化合物としての(La0.896Gd0.1Ce0.004(Si,Al)(N,O)11-xであることを確認した。
【0121】
次に、実施例6の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(MiniFlex;株式会社リガク製)を用いて評価した。
【0122】
詳細は省略するが、評価の結果、実施例6の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。つまり、実施例6の蛍光体は、ガーネット蛍光体であることが分かった。このようにして、実施例6の蛍光体が、化合物としてのGd(Ga0.97Cr0.03Ga12であることを確認した。
【0123】
次に、実施例7の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(MiniFlex;株式会社リガク製)を用いて評価した。
【0124】
詳細は省略するが、評価の結果、実施例7の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。つまり、実施例7の蛍光体は、ガーネット蛍光体であることが分かった。このようにして、実施例7の蛍光体が、化合物としての(Gd0.75La0.25(Ga0.97Cr0.03Ga12であることを確認した。
【0125】
(分光特性)
次に、実施例1の蛍光体の励起特性と蛍光特性を、分光蛍光光度計(FP-6500;日本分光株式会社製)を用いて評価した。図9では、実施例1の蛍光体の励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は450nmとし、励起スペクトル測定時のモニター波長は蛍光ピーク波長とした。また、図9において、蛍光スペクトルと励起スペクトルは、いずれもピークを1として規格化して示している。
【0126】
実施例1の蛍光体の蛍光スペクトルは、Ce3+の5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、実施例1の蛍光体の蛍光スペクトルは、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成した。
【0127】
なお、実施例1の蛍光体の蛍光スペクトルと励起スペクトルのピーク波長は、各々、625nmと473nmであった。このことは、実施例1の蛍光体が、波長430~480nm付近の青色光を効率よく吸収して、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。
【0128】
次に、実施例1と同様に、参考例2の蛍光体の励起特性と蛍光特性を、分光蛍光光度計を用いて評価した。図10では、参考例2の蛍光体の励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は540nmとし、励起スペクトル測定時のモニター波長は蛍光ピーク波長とした。また、図10では、蛍光スペクトルと励起スペクトルは、いずれもピークを1として規格化して示している。
【0129】
参考例2の蛍光体の蛍光スペクトルは、Ce3+の5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、参考例2の蛍光体の蛍光スペクトルは、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成した。
【0130】
なお、参考例2の蛍光体の蛍光スペクトルと励起スペクトルのピーク波長は、各々、630nmと531nmであった。このことは、参考例2の蛍光体が、波長510nm~560nm付近の緑~黄色光を効率よく吸収して、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。
【0131】
次に、実施例1と同様に、参考例3の蛍光体の蛍光特性を、分光蛍光光度計を用いて評価した。図11では、参考例3の蛍光体の蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は540nmとした。また、図11では、蛍光スペクトルは、ピークを1として規格化して示している。なお、図11における540nm付近のシャープなスペクトルは、励起光として利用したモノクロ光が、蛍光体によって反射された光成分である。
【0132】
参考例3の蛍光体の蛍光スペクトルは、Ce3+の5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードな蛍光スペクトルであった。そして、参考例3の蛍光体の蛍光スペクトルは、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成した。また、参考例3の蛍光体の蛍光スペクトルにおけるピーク波長は、634nmであった。
【0133】
以上のことは、参考例3の蛍光体が、540nm付近の単一波長の光を吸収して、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。
【0134】
次に、参考例4の蛍光体の蛍光特性を、分光蛍光光度計を用いて評価した。図12では、参考例4の蛍光体の蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は460nmとした。
【0135】
参考例4の蛍光体の蛍光スペクトルは、Eu2+の4f5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、参考例4の蛍光体の蛍光スペクトルは、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成するとみなせるスペクトルであった。なお、参考例4の蛍光体の蛍光スペクトルにおける長波長の成分は若干のノイズを含むが、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に光成分を有することは、当業者であれば明らかである。
【0136】
以上のことは、参考例4の蛍光体が、460nm付近の波長の青色光を吸収して、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。なお、参考例4の蛍光体の蛍光スペクトルにおける半値幅は、約100nmであった。
【0137】
次に、参考例5の蛍光体の蛍光特性を、分光蛍光光度計を用いて評価した。図13では、参考例5の蛍光体の蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は540nmとした。ここで、図13における540nm付近のシャープなスペクトルは、励起光として利用したモノクロ光が、蛍光体によって反射された光成分である。
【0138】
参考例5の蛍光体の蛍光スペクトルは、Ce3+の5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、参考例5の蛍光体の蛍光スペクトルは、少なくとも700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成するとみなせるスペクトルであった。また、参考例5の蛍光体の蛍光スペクトルは、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成するとみなせるスペクトルでもあった。
【0139】
以上のことは、参考例5の蛍光体が、540nm付近の波長の緑色光を吸収して、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。また、以上のことは、参考例5の蛍光体が、540nm付近の波長の緑色光を吸収して、600nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。なお、参考例5の蛍光体の蛍光スペクトルにおける半値幅は、約160nmであった。
【0140】
次に、実施例6の蛍光体の励起特性及び蛍光特性を、分光蛍光光度計を用いて評価した。図14では、実施例6の蛍光体の励起スペクトルと蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトル測定時の励起波長は450nmとし、励起スペクトル測定時のモニター波長は蛍光ピーク波長とした。また、図14では、蛍光スペクトルと励起スペクトルの発光強度が同じになるように、発光強度を規格化して示している。
【0141】
実施例6の蛍光体の蛍光スペクトルは、Cr3+のd-d遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、実施例6の蛍光体の蛍光スペクトルは、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成するとみなせるスペクトルであった。なお、実施例6の蛍光体における蛍光スペクトルのピーク波長は、735nmであった。
【0142】
また、図14から判るように、実施例6の蛍光体は、400nm以上500nm以下の波長領域と、580nm以上680nm以下の波長領域とに、強い励起帯を有していた。すなわち、実施例6の蛍光体は、紫~青緑色の光と、橙~深赤色の光を強く吸収し、蛍光を放つ蛍光体であった。
【0143】
以上のことは、実施例6の蛍光体が、紫色、青色、青緑色、橙色、赤色及び深赤色から選択される少なくとも一種類の光を放つ固体発光素子によって励起されることを示すものである。そして、実施例6の蛍光体は、励起光を、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成する蛍光へと波長変換できることを示すものである。なお、実施例6の蛍光体の蛍光スペクトルにおける半値幅は、約100nmであった。
【0144】
次に、実施例7の蛍光体を含む波長変換体を作製して、蛍光特性を評価した。具体的には、まず、実施例7の蛍光体を、ハンドプレスを用いてペレット状にすることで、波長変換体を作製した。次いで、得られた波長変換体をレーザー光で励起し、その際に波長変換体から放射される蛍光のエネルギー(蛍光の放射束)を測定した。この際、レーザー光の中心波長は445nmとした。また、レーザー光のエネルギーは0.93Wから3.87Wまで変化させた。レーザー光のエネルギーの評価には、パワーメーターを用いた。また、波長変換体から発せられた蛍光のエネルギーの評価には、積分球を用いた。
【0145】
【表1】
【0146】
表1では、レーザー光のエネルギーを0.93Wから3.87Wまで変化させたときの、波長変換体から放射された蛍光のエネルギーを示している。参考のため、レーザー光のエネルギー密度も表1に示した。
【0147】
表1に示すように、波長変換体からは、100mW以上のエネルギーの光が放出された。そして、レーザー光のエネルギーを0.93Wから3.87Wまで高めた場合であっても、波長変換体は高いエネルギーの光を放射した。すなわち、Cr3+賦活蛍光体は、励起光のエネルギーが高い領域においても、高い発光効率を維持できることが分かった。この結果は、蛍光出力の飽和を抑制するためには、短残光性(10μs未満)の蛍光体の使用が必須とされていた従来の技術常識とは大きく異なるものであり、驚くべきものである。また、高いエネルギーのレーザー光で蛍光体を励起した場合、蛍光体が発熱し、蛍光体の温度が上昇することを考慮すると、実施例7の蛍光体は、温度上昇による発光効率の低下が少ない優れた蛍光体であるともいえる。
【0148】
図15は、実施例7の蛍光体を含む波長変換体を、3.87Wのエネルギーのレーザー光で励起したときの蛍光スペクトルである。実施例7の蛍光体を含む波長変換体の蛍光スペクトルは、Cr3+のd-d遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルであった。そして、この蛍光スペクトルは、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘ってバンドスペクトルを形成するとみなせるスペクトルであった。なお、実施例7の蛍光体を含む波長変換体を、3.87Wのエネルギーのレーザー光で励起したときの蛍光スペクトルのピーク波長は、767nmであった。また、この蛍光スペクトルのピークの半値幅は約100nmであった。
【0149】
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0150】
特願2019-017797号(出願日:2019年2月4日)の全内容は、ここに援用される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示によれば、光感受性物質を効率的に励起する近赤外光を放射することが可能な発光装置、及び当該発光装置を用いた医療装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0152】
1,1A,1B,1C 発光装置
2 固体発光素子
3,3A 波長変換体
4 第一の蛍光体
6 一次光
7 第一の波長変換光
8 第二の蛍光体
9 第二の波長変換光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15