(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231127BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
F25B1/00 311C
F25B1/10 E
F25B1/00 304T
F25B1/00 331E
(21)【出願番号】P 2019223863
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】今川 常子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 由樹
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061233(WO,A1)
【文献】特開2019-173987(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230070(WO,A1)
【文献】特開2005-315558(JP,A)
【文献】特開2008-008499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮回転要素から構成される圧縮機構、前記圧縮回転要素から吐出され臨界圧を超えた冷媒により利用側熱媒体を加熱する利用側熱交換器、中間熱交換器、第1膨張装置、熱源側熱交換器が配管で順次接続されて形成される主冷媒回路と、
前記利用側熱交換器から前記第1膨張装置までの間の前記配管から分岐され、分岐された
前記冷媒が第2膨張装置により減圧された後に、前記中間熱交換器で前記主冷媒回路を流れる
前記冷媒と熱交換され、前記圧縮回転要素の圧縮途中の
前記冷媒に合流されるバイパス冷媒回路と、
制御装置と、
前記利用側熱交換器に流入する前記利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタと、
前記圧縮回転要素から吐出される前記冷媒の温度を検出する吐出温度サーミスタと
を備え、
前記制御装置は、
前記
熱媒体入口温度サーミスタの検出温度が上昇する場合、
前記第2膨張装置の弁開度を
大きく、前記第1膨張装置の弁開度を小さくして、前記中間熱交換器の前記主冷媒回路側を流れる前記冷媒の量に対する前記バイパス冷媒回路を流れる前記冷媒の量の比率を増加させ
、
前記第1膨張装置の前記弁開度と前記第2膨張装置の前記弁開度を調整することで、前記吐出温度サーミスタが検出する前記温度を目標値に近づける
ことを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項2】
圧縮回転要素から構成される圧縮機構、前記圧縮回転要素から吐出され臨界圧を超えた冷媒により利用側熱媒体を加熱する利用側熱交換器、中間熱交換器、第1膨張装置、熱源側熱交換器が配管で順次接続されて形成される主冷媒回路と、
前記利用側熱交換器から前記第1膨張装置までの間の前記配管から分岐され、分岐された前記冷媒が第2膨張装置により減圧された後に、前記中間熱交換器で前記主冷媒回路を流れる前記冷媒と熱交換され、前記圧縮回転要素の圧縮途中の前記冷媒に合流されるバイパス冷媒回路と、
制御装置と、
前記利用側熱交換器に流入する前記利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタと、
前記圧縮回転要素から吐出される前記冷媒の圧力を検出する高圧側圧力検出装置
と
を備え、
前記制御装置は、
前記熱媒体入口温度サーミスタの検出温度が上昇する場合、
前記第2膨張装置の弁開度を大きく、前記第1膨張装置の弁開度を小さくして、前記中間熱交換器の前記主冷媒回路側を流れる前記冷媒の量に対する前記バイパス冷媒回路を流れる前記冷媒の量の比率を増加させ、
前記第1膨張装置の
前記弁開度と前記第2膨張装置の
前記弁開度を調整することで、前記高圧側圧力検出装置が検出する圧力値を目標値に近づける
ことを特徴とす
るヒートポンプシステム。
【請求項3】
搬送装置を有し、前記搬送装置によって前記利用側熱媒体を循環させる利用側熱媒体回路を備えることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載
のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記利用側熱媒体を水又は不凍液としたことを特徴とする請求項1~
請求項3のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷凍サイクル装置には、高圧側が超臨界圧力となる冷媒を用い、2段圧縮式の圧縮機、温水を加熱する加熱用熱交換器、冷却器、第1電動膨張弁及び蒸発器を冷
媒配管で環状に接続してなる冷媒回路と、前記加熱用熱交換器と前記冷却器との間の前記冷媒回路から分岐され、その途中に第2電動膨張弁及び前記冷却器を有し、前記加熱用熱交換器から吐出した冷媒の一部を前記圧縮機の低圧側と高圧側との中間に冷媒を戻す中間インジェクション回路とを備えているものがある。
【0003】
そして、前記圧縮機の高圧側の冷媒吐出温度を検出する第1温度検出センサと、前記加熱用熱交換器出口の冷媒温度を検出する第2温度検出センサと、前記冷却器出口の冷媒温度を検出する第3温度検出センサと、前記第1温度検出センサの検出温度が第1の所定温度範囲内にある場合には前記第1電動膨張弁の開度を維持するように制御すると共に前記第2温度検出センサの検出温度と前記第3温度検出センサの検出温度との差が第2の所定温度範囲内にある場合には前記第2電動膨張弁の開度を維持するように制御することで、中間インジェクション回路に流れる冷媒循環量を一定の範囲内に抑え、想定した冷凍サイクルの形成の実現を図っている。
【0004】
そして、暖房装置の暖房負荷が軽くなると、加熱用熱交換器への温水回路からの水の戻り温度が上昇し、高段側回転圧縮要素の冷媒吐出温度も上昇するため、第1電動膨張弁を開くことで、高段側回転圧縮要素の冷媒吐出温度を低下させる制御を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、温水を加熱する加熱用熱交換器と中間インジェクション回路とを備え、高圧側が超臨界圧力の冷凍サイクル装置において、加熱用熱交換器への水の戻り温度が上昇したときには、冷凍サイクル装置のCOPも低下するが、それを抑制する技術に関しては開示されていないという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、適切な制御を行うことでCOPの低下を抑制した高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のヒートポンプシステムは、圧縮回転要素から構成される圧縮機構、前記圧縮回転要素から吐出され臨界圧を超えた冷媒により利用側熱媒体を加熱する利用側熱交換器、中間熱交換器、第1膨張装置、熱源側熱交換器が配管で順次接続されて形成される主冷媒回路と、前記利用側熱交換器から前記第1膨張装置までの間の前記配管から分岐され、分岐された前記冷媒が第2膨張装置により減圧された後に、前記中間熱交換器で前記主冷媒回路を流れる前記冷媒と熱交換され、前記圧縮回転要素の圧縮途中の前記冷媒に合流されるバイパス冷媒回路と、制御装置と、前記利用側熱交換器に流入する前記利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタと、前記圧縮回転要素から吐出される前記冷媒の温度を検出する吐出温度サーミスタとを備え、前記制御装置は、前記熱媒体入口温度サーミスタの検出温度が上昇する場合、前記第2膨張装置の弁開度を大きく、前記第1膨張装置の弁開度を小さくして、前記中間熱交換器の前記主冷媒回路側を流れる前記冷媒の量に対する前記バイパス冷媒回路を流れる前記冷媒の量の比率を増加させ、前記第1膨張装置の前記弁開度と前記第2膨張装置の前記弁開度を調整することで、前記吐出温度サーミスタが検出する前記温度を目標値に近づけることを特徴とするものである。
【0009】
これにより、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合でも、バイパス冷媒回路、高段側圧縮回転要素、利用側熱交換器を循環する冷媒の量は増加するため、利用側熱交換器における加熱能力の低減を抑制できる。
【0010】
また、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合でも、中間熱交換器における主冷媒回路を流れる高圧冷媒とバイパス冷媒回路を流れる中間圧冷媒との熱交換量は増加するため、利用側熱交換器における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差の減少を抑制することができる。
【0011】
このため、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、COPの低下を抑制した高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、適切な制御を行うことでCOPの低下を抑制した高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるヒートポンプシステムの構成図
【
図2】本発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の圧力-エンタルピー線図(P-h線図)
【
図3】本発明の実施の形態1におけるヒートポンプシステムにおいて、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合の、冷凍サイクル装置の圧力-エンタルピー線図(P-h線図)
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、圧縮回転要素から構成される圧縮機構、前記圧縮回転要素から吐出され臨界圧を超えた冷媒により利用側熱媒体を加熱する利用側熱交換器、中間熱交換器、第1膨張装置、熱源側熱交換器が配管で順次接続されて形成される主冷媒回路と、前記利用側熱交換器から前記第1膨張装置までの間の前記配管から分岐され、分岐された前記冷媒が第2膨張装置により減圧された後に、前記中間熱交換器で前記主冷媒回路を流れる前記冷媒と熱交換され、前記圧縮回転要素の圧縮途中の前記冷媒に合流されるバイパス冷媒回路と、制御装置と、前記利用側熱交換器に流入する前記利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタと、前記圧縮回転要素から吐出される前記冷媒の温度を検出する吐出温度サーミスタとを備え、前記制御装置は、前記熱媒体入口温度サーミスタの検出温度が上昇する場合、前記第2膨張装置の弁開度を大きく、前記第1膨張装置の弁開度を小さくして、前記中間熱交換器の前記主冷媒回路側を流れる前記冷媒の量に対する前記バイパス冷媒回路を流れる前記冷媒の量の比率を増加させ、前記第1膨張装置の前記弁開度と前記第2膨張装置の前記弁開度を調整することで、前記吐出温度サーミスタが検出する前記温度を目標値に近づけることを特徴とするヒートポンプシステムである。
【0015】
これにより、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合でも、中間熱交換器における主冷媒回路を流れる高圧冷媒とバイパス冷媒回路を流れる中間圧冷媒との熱交換量は増加するため、利用側熱交換器における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差の減少を抑制することができる。
【0016】
また、バイパス冷媒回路、高段側圧縮回転要素、利用側熱交換器を循環する冷媒の量は増加するため、利用側熱交換器における加熱能力の低減を抑制できる。
【0017】
このため、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、COPの低下を抑制した高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供できる。
【0018】
また、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合でも、バイパス冷媒回路、高段側圧縮回転要素、利用側熱交換器を循環する冷媒の量は増加するため、利用側熱交換器における加熱能力の低減を抑制できる。
【0019】
また、主冷媒回路の冷媒の高圧側の圧力が上昇するため、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差の減少を抑制することができる。
【0020】
また、圧縮回転要素から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度の過度の上昇や低下を防止しつつ、中間熱交換器における主冷媒回路を流れる高圧冷媒とバイパス冷媒回路を流れる中間圧冷媒との熱交換量の増加や、バイパス冷媒回路、高段側圧縮回転要素、利用側熱交換器を循環する冷媒の量の増加を実現できる。
【0021】
このため、安定した冷媒の吐出温度を実現しつつ、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差の減少や利用側熱交換器における加熱能力の低減を抑制できる。
【0022】
第2の発明は、圧縮回転要素から構成される圧縮機構、前記圧縮回転要素から吐出され臨界圧を超えた冷媒により利用側熱媒体を加熱する利用側熱交換器、中間熱交換器、第1膨張装置、熱源側熱交換器が配管で順次接続されて形成される主冷媒回路と、前記利用側熱交換器から前記第1膨張装置までの間の前記配管から分岐され、分岐された前記冷媒が第2膨張装置により減圧された後に、前記中間熱交換器で前記主冷媒回路を流れる前記冷媒と熱交換され、前記圧縮回転要素の圧縮途中の前記冷媒に合流されるバイパス冷媒回路と、制御装置と、前記利用側熱交換器に流入する前記利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタと、前記圧縮回転要素から吐出される前記冷媒の圧力を検出する高圧側圧力検出装置とを備え、前記制御装置は、前記熱媒体入口温度サーミスタの検出温度が上昇する場合、前記第2膨張装置の弁開度を大きく、前記第1膨張装置の弁開度を小さくして、前記中間熱交換器の前記主冷媒回路側を流れる前記冷媒の量に対する前記バイパス冷媒回路を流れる前記冷媒の量の比率を増加させ、前記第1膨張装置の前記弁開度と前記第2膨張装置の前記弁開度を調整することで、前記高圧側圧力検出装置が検出する圧力値を目標値に近づけることを特徴とするヒートポンプシステムである。
【0023】
これにより、圧縮回転要素から吐出される冷媒の圧力の過度の上昇や低下を防止しつつ、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差の減少を抑制することができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明において、搬送装置を有し、前記搬送装置によって前記利用側熱媒体を循環させる利用側熱媒体回路を備えることを特徴とするヒートポンプシステムである。
【0025】
これによれば、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、COPの低下を抑制し、高温の利用側熱媒体を利用できる高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供できる。
【0026】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれかの発明において、前記利用側熱媒体を水又は不凍液としたことを特徴とするものである。
【0027】
これにより、例えば、貯湯タンクに高温水を貯めることができ、また、高温水を用いて暖房する高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムを提供できる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるヒートポンプシステムの構成図である。ヒートポンプシステムは、超臨界蒸気圧縮式冷凍サイクルである冷凍サイクル装置9、利用側熱媒体回路30から構成されている。また、冷凍サイクル装置9は、主冷媒回路10、バイパス冷媒回路20から構成されている。
【0030】
主冷媒回路10は、冷媒を圧縮する圧縮機構11、放熱器である利用側熱交換器12、中間熱交換器13、第1膨張装置14、蒸発器である熱源側熱交換器15が、配管16で順次接続されて形成され、冷媒として二酸化炭素(CO2)を用いている。
【0031】
圧縮機構11は、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとで構成される。利用側熱交換器12は、高段側圧縮回転要素11bから吐出された冷媒により利用側熱媒体を加熱する。
【0032】
なお、圧縮機構11を構成する低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとの容積比は一定で、駆動軸(図示せず)を共通化させ、1つの容器内に配置した1台の圧縮機で構成されている。
【0033】
なお、本実施の形態では、圧縮回転要素が、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとで構成される二段の圧縮機構11を用いて説明するが、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとに分かれてなく、単一の圧縮回転要素においても適用できる。
【0034】
ここで、単一の圧縮回転要素の場合には、バイパス冷媒回路20からの冷媒が合流する位置を圧縮回転要素の圧縮途中とし、バイパス冷媒回路20からの冷媒が合流する位置までの圧縮回転要素を低段側圧縮回転要素11aとし、バイパス冷媒回路20からの冷媒が合流する位置以降の圧縮回転要素を高段側圧縮回転要素11bとして適用することができる。
【0035】
また、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとが、それぞれが独立した2台の圧縮機から構成されている二段の圧縮機構11でもよい。
【0036】
バイパス冷媒回路20は、利用側熱交換器12から第1膨張装置14までの間の配管16から分岐され、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとの間の配管16に接続されている。
【0037】
バイパス冷媒回路20には、第2膨張装置21が設けられている。利用側熱交換器12を通過後の一部の高圧冷媒、又は、中間熱交換器13を通過後の一部の高圧冷媒は、第2膨張装置21により減圧されて中間圧冷媒となった後に、中間熱交換器13で主冷媒回路10を流れる高圧冷媒と熱交換され、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとの間の冷媒と合流される。
【0038】
利用側熱媒体回路30は、利用側熱交換器12、搬送ポンプである搬送装置31、暖房端末32aが熱媒体配管33で順次接続されて形成され、利用側熱媒体として、水又は不凍液を用いている。
【0039】
本実施の形態における利用側熱媒体回路30は、暖房端末32aと並列に貯湯タンク32bを備えており、第1切替弁34、第2切替弁35の切り替えによって利用側熱媒体を、暖房端末32a又は貯湯タンク32bに循環させる。なお、利用側熱媒体回路30は、
暖房端末32a及び貯湯タンク32bのいずれかを備えていればよい。
【0040】
利用側熱交換器12で生成された高温水は、暖房端末32aで放熱して暖房に利用され、暖房端末32aで放熱された低温水は再び利用側熱交換器12で加熱される。
【0041】
また、利用側熱交換器12で生成された高温水は、貯湯タンク32bの上部から貯湯タンク32bに導入され、貯湯タンク32bの下部から低温水が導出されて利用側熱交換器12で加熱される。
【0042】
給湯用熱交換器42は、貯湯タンク32b内に配置され、給水配管43からの給水と貯湯タンク32b内の高温水との間で熱交換させる。すなわち、給湯栓41が開栓されると、給水配管43から給湯用熱交換器42内に給水され、給湯用熱交換器42で加熱されて、給湯栓41で所定温度になるように調整され、給湯栓41からから給湯される。
【0043】
なお、給水配管43から給水され、給湯用熱交換器42で加熱されて、給湯栓41から給湯される湯水と、貯湯タンク32b内の高温水とは、互いに混ざり合うことがない間接加熱である。
【0044】
給湯用熱交換器42は、伝熱管として銅管あるいはステンレス管を使用する水熱交換器であって、
図1に示すように、給水源(水道)から延びる給水配管43と、給湯栓41とが接続されている。給水配管43は、常温の水を、給湯用熱交換器42の下端、すなわち、貯湯タンク32b内の下方に入れる。
【0045】
給水配管43より給湯用熱交換器42に入った常温水は、貯湯タンク32b内を下方から上方に移動しながら、貯湯タンク32b内の高温水から熱を奪い、加熱された高温の加熱水となって給湯栓41から給湯される。
【0046】
貯湯タンク32bには、複数の異なる高さ位置において温水の温度を計測する目的で、例えば、複数の第1貯湯タンク温度サーミスタ55a、第2貯湯タンク温度サーミスタ55b、第3貯湯タンク温度サーミスタ55cが設けられている。
【0047】
給水配管43より給湯用熱交換器42に入った常温水は、貯湯タンク32b内を下方から上方に移動しながら貯湯タンク32b内の高温水から熱を奪う構成のため、貯湯タンク32b内の温水は、自然と、上部が高温、下部が低温となる。
【0048】
主冷媒回路10には、高段側圧縮回転要素11bの吐出側の配管16に、高圧側圧力検出装置51、吐出温度サーミスタ52が設けられている。
【0049】
なお、高圧側圧力検出装置51は、高段側圧縮回転要素11bの吐出側から、第1膨張装置14の上流側までの、主冷媒回路10に設けられていて、主冷媒回路10の高圧冷媒の圧力を検出できればよい。
【0050】
また、吐出温度サーミスタ52も、高段側圧縮回転要素11bの吐出側から、第1膨張装置14の上流側までの、主冷媒回路10に設けられていて、主冷媒回路10の高圧冷媒の温度を検出できればよい。
【0051】
利用側熱媒体回路30には、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度を検出する熱媒体入口温度サーミスタ54が設けられている。
【0052】
また、制御装置60は、高圧側圧力検出装置51からの検出圧力、吐出温度サーミスタ
52の検出温度、熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度によって、低段側圧縮回転要素11a及び高段側圧縮回転要素11bの運転周波数、第1膨張装置14の弁開度、第2膨張装置21の弁開度、搬送装置31による利用側熱媒体の搬送量を制御する。
【0053】
図2は、本実施の形態における冷凍サイクル装置について、理想条件での圧力-エンタルピー線図(P-h線図)である。
【0054】
図2のa~e点、およびA~B点は、
図1に示す冷凍サイクル装置における各ポイントに相当する。
【0055】
まず、高段側圧縮回転要素11bから吐出される高圧冷媒(a点)は、利用側熱交換器12で放熱した後の冷媒分岐点(A点)で主冷媒回路10から分岐し、第2膨張装置21により中間圧まで減圧されて中間圧冷媒(e点)となり、中間熱交換器13にて熱交換する。
【0056】
利用側熱交換器12で放熱した後の主冷媒回路10を流れる高圧冷媒は、バイパス冷媒回路20を流れる中間圧冷媒(e点)によって冷却され、エンタルピーが低減された状態(b点)で第1膨張装置14にて減圧される。
【0057】
これにより、第1膨張装置14にて減圧された後に、熱源側熱交換器15に流入する冷媒(c点)の冷媒エンタルピーも低減される。熱源側熱交換器15に流入する時点での冷媒乾き度(全冷媒に対して気相成分が占める重量比率)が低下して冷媒の液成分が増大するため、熱源側熱交換器15において蒸発に寄与し、冷媒比率が増大して外気からの吸熱量が増大され、低段側圧縮回転要素11aの吸入側(d点)に戻る。
【0058】
一方、熱源側熱交換器15において蒸発に寄与しない気相成分に相当する量の冷媒は、バイパス冷媒回路20にバイパスされて低温の中間圧冷媒(e点)となり、中間熱交換器13にて主冷媒回路10を流れる高圧冷媒によって加熱されて冷媒エンタルピーが高まった状態で、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとの間にある冷媒合流点Bに至る。
【0059】
従って、高段側圧縮回転要素11bの吸入側(B点)では、低段側圧縮回転要素11aの吸入側(d点)より冷媒圧力が高いため冷媒密度も高く、かつ、低段側圧縮回転要素11aから吐出した冷媒と合流した冷媒が吸入され、高段側圧縮回転要素11bで更に圧縮されて吐出されるため、利用側熱交換器12に流入する冷媒流量が大幅に増大し、利用側熱媒体である水を加熱する能力が大幅に増大する。
【0060】
以下、利用側熱媒体回路30に貯湯タンク32bを用いる場合について説明する。
【0061】
複数の貯湯タンク温度サーミスタのうち、例えば、貯湯タンク32bの最も高い位置に配置されている第1貯湯タンク温度サーミスタ55aの検出温度が所定値未満の場合、貯湯タンク32b内に高温水が足りないと、制御装置60は判断する。
【0062】
そして、制御装置60は、低段側圧縮回転要素11a及び高段側圧縮回転要素11bを動作させ、利用側熱交換器12で低温水を加熱するが、その加熱生成温度である熱媒体出口温度サーミスタ53の検出温度が目標温度となるように、搬送装置31を動作させる。
【0063】
これにより、貯湯タンク32bの下部から低温水が導出されて利用側熱交換器12で加熱生成された高温水は、貯湯タンク32bの上部から貯湯タンク32bに導入される。
【0064】
そして、貯湯タンク32b内には上部から次第に高温水が貯湯されていくため、熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度は次第に上昇していく。
【0065】
利用側熱媒体回路30に暖房端末32aを用いる場合について説明する。
【0066】
制御装置60は、低段側圧縮回転要素11a及び高段側圧縮回転要素11bを動作させ、利用側熱交換器12で循環水を加熱するが、その循環水の温度差である熱媒体出口温度サーミスタ53の検出温度と熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度との温度差が目標温度差となるように、搬送装置31を動作させる。
【0067】
これにより、利用側熱交換器12で生成された高温水は、暖房端末32aで放熱して暖房に利用され、暖房端末32aで放熱された低温水は、再び利用側熱交換器12で加熱される。このときには、熱媒体出口温度サーミスタ53の検出温度と熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度との温度差が目標温度差となるように制御される。
【0068】
そして、次第に暖房負荷が小さくなるため、熱媒体出口温度サーミスタ53の検出温度と熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度との温度差が目標温度差となるように制御している関係上、熱媒体出口温度サーミスタ53の検出温度及び熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度は次第に上昇していく。
【0069】
以下、
図3を用いて、利用側熱媒体回路30において、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合、すなわち、熱媒体入口温度サーミスタ54の検出温度が上昇する場合について、以下に説明する。
【0070】
図3において、実線は、破線に対して、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇した場合の圧力-エンタルピー線図である。
【0071】
図3において、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇していくと、利用側熱交換器12への冷媒の入口温度(a点)はエンタルピー増加の方向(a‘点)へ移動する。また、利用側熱交換器12からの冷媒の出口温度(A点)はエンタルピー増加の方向(A‘点)へ移動する。
【0072】
同様に、中間熱交換器13のバイパス冷媒回路20からの冷媒の出口温度(B点)もエンタルピー増加の方向(B‘点)へ移動する。また、中間熱交換器13のバイパス冷媒回路20への冷媒の入口温度(e点)もエンタルピー増加の方向(e’点)へ移動する。
【0073】
なお、圧力が臨界圧を超えた状態において、エンタルピー増加の方向へ移動していくと、圧力に対する等温線の傾きも急になっていく。
【0074】
このため、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、冷凍サイクル装置9のCOPの低下を抑制するためには、中間熱交換器13において、中間熱交換器13のバイパス冷媒回路20からの冷媒の出口温度(B‘点)と、中間熱交換器13へのバイパス冷媒回路20への冷媒の入口温度(e’点)との温度差ができるだけ小さくならないように、制御装置60は、第2膨張装置21の弁開度を制御しなければならない。
【0075】
また、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器12において、高段側圧縮回転要素11bから吐出された冷媒により、利用側熱媒体を加熱能力ができるだけ低下しないようにしなければならない。
【0076】
具体的には、中間熱交換器13の主冷媒回路10側を流れる冷媒の量に対するバイパス
冷媒回路20を流れる冷媒の量の比率が増加させる。
【0077】
すなわち、第2膨張装置21の弁開度を大きくして、主冷媒回路10を循環する冷媒の量に対する、バイパス冷媒回路20、高段側圧縮回転要素11b、利用側熱交換器12を循環する冷媒の量の比率を増加させる。
【0078】
これにより、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇する場合でも、中間熱交換器13における主冷媒回路10を流れる高圧冷媒とバイパス冷媒回路20を流れる中間圧冷媒との熱交換量は増加する。
【0079】
このため、利用側熱交換器12における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差(a‘点~A‘点)の減少を抑制することができる。
【0080】
なお、高段側圧縮回転要素11bから吐出される高圧冷媒(a‘点)と利用側熱交換器12で放熱した後の冷媒分岐点(A’点)とのエンタルピー差は、高段側圧縮回転要素11bの吸入側(B‘点)とバイパス冷媒回路20を流れる中間圧冷媒(e’点)とのエンタルピー差に高段側圧縮回転要素11bのエンタルピー差が付加されたものである。
【0081】
このため、利用側熱交換器12における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差(a‘点~A‘点)を大きくするには、中間熱交換器13のバイパス冷媒回路20のエンタルピー差(B‘点~e’点)を大きくすれば良い。
【0082】
また、バイパス冷媒回路20、高段側圧縮回転要素11b、利用側熱交換器12を循環する冷媒の量は増加するため、利用側熱交換器12における加熱能力の低減を抑制できる。
【0083】
また、制御装置60は、第1膨張装置14の弁開度を小さくする。これにより、主冷媒回路10の冷媒の高圧側の圧力が上昇するため、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器12における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差(a‘点~A‘点)の減少を抑制することができる。
【0084】
また、制御装置60は、第1膨張装置14の弁開度と前記第2膨張装置21の弁開度を調整することで、吐出温度サーミスタ52が検出する温度を目標値に近づける。なお、吐出温度の目標値は、制御装置60に予め設定してある値である。
【0085】
これにより、高段側圧縮回転要素11bから吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度の過度の上昇や低下を防止しつつ、中間熱交換器13における主冷媒回路10を流れる高圧冷媒とバイパス冷媒回路20を流れる中間圧冷媒との熱交換量の増加や、バイパス冷媒回路20、高段側圧縮回転要素11b、利用側熱交換器12を循環する冷媒の量の増加を実現できる。
【0086】
また、制御装置60は、第1膨張装置14の弁開度と第2膨張装置21の弁開度を調整することで、高圧側圧力検出装置51が検出する圧力値を目標値に近づけるようにしている。
【0087】
これにより、高段側圧縮回転要素11bから吐出される冷媒の圧力の過度の上昇や低下を防止しつつ、利用側熱交換器12に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、利用側熱交換器12における冷媒の出口と冷媒の入口とのエンタルピー差(a‘点~A‘点)の減少を抑制することができる。
【0088】
なお、低段側圧縮回転要素11aと高段側圧縮回転要素11bとに分かれてなく、単一の圧縮回転要素であってもよく、単一の圧縮回転要素の場合には、バイパス冷媒回路20からの冷媒を圧縮回転要素の圧縮途中とする。
【0089】
また、利用側熱媒体を水又は不凍液とすることで、暖房端末32aに用い、又は貯湯タンク32bに高温水を貯えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明にかかる高圧側が超臨界圧力で運転するヒートポンプシステムは、利用側熱交換器に流入する利用側熱媒体の温度が上昇しても、適切な制御を行うことでCOPの低下を抑制するので、冷凍、空調、および、給湯、暖房機器のヒートポンプシステム等に有用である。
【符号の説明】
【0091】
9 冷凍サイクル装置
10 主冷媒回路
11 圧縮機構
11a 低段側圧縮回転要素
11b 高段側圧縮回転要素
12 利用側熱交換器
13 中間熱交換器
14 第1膨張装置
15 熱源側熱交換器
16 配管
20 バイパス冷媒回路
21 第2膨張装置
30 利用側熱媒体回路
31 搬送装置
32a 暖房端末
32b 貯湯タンク
33 熱媒体配管
34 第1切替弁
35 第2切替弁
41 給湯栓
42 給湯用熱交換器
43 給水配管
51 高圧側圧力検出装置
52 吐出温度サーミスタ
54 熱媒体入口温度サーミスタ
55a 第1貯湯タンク温度サーミスタ
55b 第2貯湯タンク温度サーミスタ
55c 第3貯湯タンク温度サーミスタ
60 制御装置