(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】樹脂塗布装置、樹脂膜形成方法ならびに素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 S
(21)【出願番号】P 2019239419
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】高崎 俊行
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071333(JP,A)
【文献】特開2012-059994(JP,A)
【文献】特開2017-017286(JP,A)
【文献】特開2014-147894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持された基板と、が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された前記基板の主面に、樹脂膜の原料液を供給する原料液供給部と、を備え、
前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面の前記基板と前記フレームとの間に、凸部が配置されて
おり、
前記凸部の前記基板側の面の上部は、前記基板側の面の下部よりも前記フレーム側に位置している、樹脂塗布装置。
【請求項2】
前記凸部の前記基板側の面と前記テーブルとが成す鋭角は、45°以上90°未満である、請求項
1に記載の樹脂塗布装置。
【請求項3】
ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持された基板と、が載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された前記基板の主面に、樹脂膜の原料液を供給する原料液供給部と、を備え、
前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面の前記基板と前記フレームとの間に、凸部が配置されており、
前記テーブルは、前記ダイシングテープを、前記凸部の前記基板側の面に密着させる吸着機構をさらに備える
、樹脂塗布装置。
【請求項4】
前記凸部の高さは、前記フレームの前記載置面とは反対側の面の前記テーブルからの距離より大きい、請求項1
~3のいずれか一項に記載の樹脂塗布装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記基板を取り囲む環状体である、請求項1
~4のいずれか一項に記載の樹脂塗布装置。
【請求項6】
さらに、前記テーブルを、前記載置面の法線を回転軸にして回転させる回転部を備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂塗布装置。
【請求項7】
さらに、前記テーブルに載置された前記ダイシングテープに、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む洗浄液を供給する洗浄液供給部を備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の樹脂塗布装置。
【請求項8】
ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持された基板と、を準備する準備工程と、
前記基板を保持する前記搬送キャリアをテーブルに載置する載置工程と、
前記テーブルに載置される前記基板に、樹脂膜の原料液を供給して、前記基板の主面に前記原料液を含む層を形成する塗布工程と、を備え、
前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面に、凸部が配置されており、
前記載置工程において、前記搬送キャリアは、前記基板と前記フレームとの間に前記凸部が配置されるように、前記テーブルに載置され
、
前記載置工程の後、吸着機構を作動させて、前記ダイシングテープを、前記凸部の前記基板側の面に密着させる吸着工程を備える、樹脂膜形成方法。
【請求項9】
前記塗布工程の後、前記テーブルに載置される前記ダイシングテープに、前記樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む洗浄液を供給して、前記ダイシングテープの表面に付着した前記原料液を前記洗浄液に溶解させて除去する洗浄工程を備える、請求項
8に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項10】
ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持され、複数の素子領域および複数の分割領域に区画されるとともに、第1主面および前記ダイシングテープに貼着された第2主面を有する基板と、を準備する準備工程と、
前記基板の前記第1主面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、
前記樹脂膜に開口を形成して、前記第1主面における前記分割領域を露出させる開口形成工程と、
露出した前記分割領域の前記第1主面から前記第2主面までをプラズマエッチングして、前記基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、を備え、
前記樹脂膜形成工程は、
前記基板を保持する前記搬送キャリアをテーブルに載置する載置工程と、
前記テーブルに載置される前記基板に、前記樹脂膜の原料液を供給して、前記基板の前記第1主面に前記原料液を含む層を形成する塗布工程と、を備え、
前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面に、凸部が配置されており、
前記載置工程において、前記搬送キャリアは、前記基板と前記フレームとの間に前記凸部が配置されるように、前記テーブルに載置され
、
前記載置工程の後、吸着機構を作動させて、前記ダイシングテープを、前記凸部の前記基板側の面に密着させる吸着工程を備える、素子チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂塗布装置、樹脂膜形成方法ならびに素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板をダイシングする方法として、プラズマ照射によるプラズマダイシングが注目されている。プラズマダイシングに供される基板のプラズマエッチングされる領域以外の素子領域は、マスクで覆われている。マスクは、基板上に形成された樹脂膜をパターニングすることにより得られる。このマスクは、素子領域をプラズマから保護する。
【0003】
基板をプラズマダイシングする際、搬送やピックアップ等における基板あるいは素子チップのハンドリング性向上のために、ダイシングテープと、ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームと、を備える搬送キャリアに基板を保持させることが提案されている。基板に上記樹脂膜を形成する際にも、基板を搬送キャリアに保持させた状態で行われる場合が多い。この場合、樹脂膜の原料液は、基板だけでなく、ダイシングテープおよびフレームの表面にも付着する。特に、スピンコート法により樹脂膜を形成する場合、ダイシングテープおよびフレームへの原料液の付着が生じ易い。
【0004】
ダイシングテープおよびフレームに付着した原料液は、基板を搬送キャリアとともに搬送する際、搬送ユニットの汚染源となり得る。ダイシングテープおよびフレーム上の原料液は、さらに、樹脂膜形成後に行われる他の処理中のパーティクル源にもなり得る。搬送ユニットに付着した原料液やパーティクルは、基板に再付着する場合もある。ダイシングテープおよびフレームに付着した原料液は、プラズマ処理の際に飛散し、基板を汚染する場合がある。
【0005】
これに関し、特許文献1は、フレームの上面に洗浄水を噴出させて、フレームの上面に付着した樹脂を除去することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、フレームで跳ね返った洗浄水が基板にまで飛散して、樹脂膜が部分的に損傷したり、樹脂膜の膜厚にバラツキが生じることがある。この場合、所望のプラズマエッチングが行われ難くなって、素子チップの品質が低下し易い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持された基板と、が載置されるテーブルと、前記テーブルに載置された前記基板の主面に、樹脂膜の原料液を供給する原料液供給部と、を備え、前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面の前記基板と前記フレームとの間に凸部が配置されている、樹脂塗布装置に関する。
【0009】
本発明の他の局面は、ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持された基板と、を準備する準備工程と、前記基板を保持する前記搬送キャリアをテーブルに載置する載置工程と、前記テーブルに載置される前記基板に、樹脂膜の原料液を供給して、前記基板の主面に前記原料液を含む層を形成する塗布工程と、を備え、前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面に、凸部が配置されており、前記載置工程において、前記搬送キャリアは、前記基板と前記フレームとの間に前記凸部が配置されるように、前記テーブルに載置される、樹脂膜形成方法に関する。
【0010】
本発明のさらに他の局面は、ダイシングテープおよび前記ダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、前記ダイシングテープに保持され、複数の素子領域および複数の分割領域に区画されるとともに、第1主面および前記ダイシングテープに貼着された第2主面を有する基板と、を準備する準備工程と、前記基板の前記第1主面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、前記樹脂膜に開口を形成して、前記第1主面における前記分割領域を露出させる開口形成工程と、露出した前記分割領域の前記第1主面から前記第2主面までをプラズマエッチングして、前記基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、を備え、前記樹脂膜形成工程は、前記基板を保持する前記搬送キャリアをテーブルに載置する載置工程と、前記テーブルに載置される前記基板に、前記樹脂膜の原料液を供給して、前記基板の前記第1主面に前記原料液を含む層を形成する塗布工程と、を備え、前記テーブルの前記搬送キャリアが載置される載置面に、凸部が配置されており、前記載置工程において、前記搬送キャリアは、前記基板と前記フレームとの間に前記凸部が配置されるように、前記テーブルに載置される、素子チップの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高品質な素子チップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂塗布装置の要部を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るテーブルに載置された搬送キャリアおよび基板を模式的に示す上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る樹脂塗布装置のブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る樹脂塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る樹脂塗布装置の要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る素子チップの樹脂膜形成方法を示すフローチャートである。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る搬送キャリアとこれに保持された基板とを模式的に示す上面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る載置工程における搬送キャリアを模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る塗布工程中の基板を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る乾燥工程後の基板を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るプラズマダイシング工程で作製された素子チップを模式的に示す断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る樹脂膜除去工程後の素子チップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態係る樹脂塗布装置は、テーブルの基板が載置される面(載置面)に凸部を備える。凸部は、搬送キャリアがテーブルに載置されたとき、基板とフレームとの間に位置するように配置されている。そのため、搬送キャリアがテーブルに載置されると、ダイシングテープは凸部に押しつけられて伸張し、凸部を覆う。
【0014】
基板上に塗布された原料液は、ダイシングテープ上を流動してフレームへと向かう。基板とフレームとの間には凸部が配置されている。凸部はダイシングテープで覆われているため、原料液は凸部に衝突するのではなく、そのままダイシングテープ上を凸部に沿って流動することができる。そして、原料液には凸部によって上向きの力が付加されて、凸部の頂部に到達すると上方に跳ねる。その結果、原料液は、フレームを飛び越えるようにして搬送キャリアの外側へと流出する。これにより、フレームによる原料液の跳ね返りが抑制される。さらに、フレームへの原料液の付着が抑制される。
【0015】
ダイシングテープに付着する原料液は、洗浄液により除去される。洗浄液は、ダイシングテープに向けて供給されて、フレーム側へと流動する。そして、凸部に到達した洗浄液も同様に凸部を飛び越えるように上方に跳ねるため、フレームに衝突し難くなる。よって、洗浄液の跳ね返りが抑制される。その結果、基板上には、損傷が無く、均一な厚みの樹脂膜が形成され易くなって、後のプラズマダイシング工程において所望のエッチングがより実行され易くなるとともに、得られる素子チップの品質が向上する。さらに、フレーム上への原料液の付着が抑制されているため、洗浄液の使用量を低減することができる。
【0016】
本実施形態に係る樹脂膜形成方法は、上記の装置を用いて行うことができる。
本実施形態に係る樹脂塗布装置は、プラズマ処理により基板をダイシングするためのマスクを形成する装置として特に適している。本実施形態は、プラズマダイシング工程を備える素子チップの製造方法を包含する。
【0017】
A.樹脂塗布装置
本実施形態に係る樹脂塗布装置は、ダイシングテープおよびダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、ダイシングテープに保持された基板と、が載置されるテーブルと、テーブルに載置された基板の主面に、樹脂膜の原料液を供給する原料液供給部と、を備える。テーブルの搬送キャリアが載置される載置面の基板とフレームとの間に、凸部が配置されている。
【0018】
(凸部)
凸部は、テーブルの搬送キャリアが載置される載置面であって、基板とフレームとの間に配置される。
凸部の配置場所は、基板とフレームとの間である限り特に限定されない。フレームへの原料液の付着が抑制され易くなる点で、凸部は、基板寄りにあることが望ましい。凸部は、例えば、凸部の基板側の面から基板までの最短距離が、凸部のフレーム側の面からフレームまでの最短距離より小さくなるように配置されてよい。
【0019】
凸部の形状は特に限定されず、テーブルの載置面と交わる方向に突出していればよい。凸部のフレームの径方向における断面は、矩形、三角形、台形等であってよい。なかでも、凸部のフレームの径方向における断面は、原料液が上方に飛び跳ね易くなる点で、載置面から遠ざかるにしたがって細くなる形状(例えば、三角形、台形等)が望ましい。
【0020】
凸部は、例えば、基板の外縁およびフレームの内縁の一部に対向していればよく、基板の外縁の1/4以上を囲んでいることが望ましい。凸部は、基板の外縁の全周を取り囲む環状体であってもよい。
【0021】
凸部の基板側の面は、テーブルの載置面に対して垂直であってもよい。あるいは、凸部の基板側の面の上部は、基板側の面の下部よりもフレーム側に位置していてもよい。言い換えれば、凸部の基板側の面の上部は、フレーム側に傾斜していてもよい。凸部の基板側の面とテーブルの載置面とが成す角度は90°であってよく、凸部の基板側の面とテーブルの載置面とが成す鋭角θは、45°以上90°未満であってよく、60°以上90°未満であってよい。凸部の基板側の面の上部がフレーム側に傾斜していると、原料液は凸部に衝突するのではなく、凸部に沿って容易に流動できる。よって、原料液が凸部に衝突することによる跳ね返りが、抑制され易くなる。
【0022】
凸部は、テーブルと一体的に形成されていてもよく、別体であってもよい。別体である場合、例えば、原料液および洗浄液に対する耐性を有する材料を用いて環状に形成された凸部を、テーブルの載置面の所定の位置に配置してもよい。凸部がテーブルと別体であると、フレームの高さや原料液の流動性等に応じて、凸部の形状を適宜設定することができる。
【0023】
凸部は、凸部から跳ねた原料液および洗浄液がフレームを飛び越えられる程度の高さを有していることが望ましい。テーブルの載置面と平行な方向からみたとき、凸部の高さHは、フレームの載置面とは反対側の面の載置面からの距離Tより大きいことが望ましい。一方、余剰分の原料液が速やかにテーブルの外側に排出されるように、凸部は過度に高くないことが望ましい。凸部の高さHは、例えば、距離Tの1.2倍以上3.0倍以下であってよい。凸部の高さHは、具体的には、1.5mm以上であってよく、2mm以上であってよく、3mm以上であってよい。凸部の高さHは、凸部の最も高い部分の載置面からの距離である。
【0024】
(テーブル)
テーブルには、搬送キャリアに保持された基板が載置される。
テーブルは、その載置面の法線を回転軸にして回転可能であってよい。この場合、原料液および洗浄液に遠心力がかかるため、フレームを飛び越え易くなる。
【0025】
テーブルは、フレームを固定する固定部を有していてもよい。固定部は、例えばクランプである。
テーブルはさらに、ダイシングテープを吸着する吸着機構を備えてもよい。吸着機構によって、ダイシングテープは、凸部の基板側の面に密着していることが好ましい。これにより、原料液および洗浄液がダイシングテープ上を凸部に沿ってスムーズに流動し易くなる。吸着機構は、例えば、真空吸着であってよく、静電吸着であってよい。装置の構成がシンプルになる点で、真空吸着が望ましい。この場合、テーブルには、吸引ポンプに連結された吸引孔が形成されていてよく、あるいは、テーブルの表面が、吸引ポンプに連結された多孔質材料で形成されていてよい。
【0026】
吸引孔は、少なくとも凸部より基板側に配置されていることが望ましい。吸引孔は、特に凸部と基板との間のダイシングテープに対向する位置に配置されていることが望ましい。これにより、ダイシングテープが凸部に密着し易くなる。吸引孔は、基板に対向する領域にも配置されてよく、凸部よりフレーム側にも配置されてよい。
【0027】
吸引孔の数は特に限定されないが、ダイシングテープの固定性が高まる点で、複数であることが好ましい。吸引孔の数および配置間隔は、ダイシングテープおよび基板の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。例えば、吸引孔は、等間隔(例えば、10mm以上200mm以下の間隔)に、2個以上100個以下配置されてよい。吸引孔の形状は特に制限されず、円状、楕円状、多角形状(四角形、六角形など)等であってもよい。吸引孔の大きさも特に限定されず、例えば、同じ面積を有する相当円の直径が、50mm以上315mm以下であればよい。
【0028】
(原料液供給部)
原料液供給部は、テーブルに載置された基板に樹脂膜の原料液を供給する。原料液供給部は、例えば、原料液ノズル、原料液が貯留されるタンク、吐出される原料液の圧力を調整するポンプ等を備える。原料液ノズルの先端には開口が形成されており、原料液は、タンクから原料液ノズルに供給された後、この開口から所定の量および圧力で滴下される。原料液ノズルの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。原料液ノズルは複数あってもよい。
【0029】
原料液は、例えば、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。
【0030】
(洗浄液供給部)
本実施形態にかかる樹脂塗布装置は、洗浄液供給部を備えていてもよい。
洗浄液供給部は、テーブルに載置されたダイシングテープに洗浄液を供給する。洗浄液供給部は、例えば、洗浄液ノズル、洗浄液が貯留されるタンク、吐出される洗浄液の圧力を調整するポンプ等を備える。洗浄液ノズルの先端には開口が形成されている。洗浄液は、タンクから洗浄液ノズルに供給された後、この開口から所定の量および圧力で滴下される。洗浄液ノズルの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。洗浄液ノズルは複数あってもよい。
【0031】
洗浄液のダイシングテープへの着地点は、凸部より基板側であることが望ましい。これにより、凸部による洗浄液の跳ね返り抑制効果が発揮される。また、洗浄液のダイシングテープによる跳ね返りが抑制される点で、洗浄液ノズルの先端からダイシングテープまでの距離は小さいことが望ましい。洗浄液ノズルの先端からダイシングテープまでの最短距離は、例えば、2mm以上30mm以下であってよい。
【0032】
洗浄液は、樹脂膜に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶剤を含む。溶剤は、樹脂膜に含まれる樹脂成分に応じて適宜選択すればよい。上記のレジスト材料を溶解させる溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン(MEK)イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、アセトン、水等が挙げられる。洗浄液は、これら1種を単独で、あるいは2種以上を含む。なかでも、ダイシングテープを溶解させ難い点で、洗浄液は、PGMEAを含むことが望ましい。
【0033】
(回転部)
本実施形態にかかる樹脂塗布装置は、テーブルを回転させる回転部を備えてもよい。この場合、回転部および原料液供給部は、原料液の供給が終了した後、テーブルが回転するように制御される。洗浄液が供給される際にもテーブルが回転しているよう、回転部および洗浄液供給部が制御されてもよい。テーブルは、原料液が供給される際にも回転していてもよい。原料液の供給時、原料液の供給終了後、および洗浄液の供給時におけるテーブルの回転数は、それぞれ異なり得る。例えば、テーブルの回転数は、原料液の供給時<洗浄液の供給時≦原料液の供給終了後の関係になるように制御される。
【0034】
回転部は、例えば、テーブルに接続された回転体、および、回転体を回転駆動させるモータ等を備える。回転部は、テーブルを、その載置面の法線を回転軸にして回転させる。
【0035】
(移動部)
本実施形態にかかる樹脂塗布装置は、原料液ノズルを垂直方向、並進方向および基板の円周方向の少なくとも一方に移動させる第1移動部を備えてもよく、洗浄液ノズルを垂直方向、並進方向および基板の円周方向の少なくとも一方に移動させる第2移動部を備えてもよい。以下、第1移動部および第2移動部をまとめて移動部と称す。移動部が備える移動機構は特に限定されず、公知の機構を適宜用いることができる。
【0036】
(制御部)
制御部は、例えばコンピュータを備え、原料液供給部、洗浄液供給部、回転部および移動部を制御する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る樹脂塗布装置の構成の一部を模式的に示す断面図である。
図2は、本実施形態に係るテーブルに載置された搬送キャリアおよび基板を模式的に示す上面図である。
図2では、便宜的に凸部にハッチングを付している。
【0038】
樹脂塗布装置300は、原料液供給部が備える原料液ノズル3011と、テーブル302と、洗浄液供給部が備える洗浄液ノズル3061と、テーブル302の載置面に配置された凸部309とを備える。テーブル302には、ダイシングテープ22およびダイシングテープ22の外周を保持する環状のフレーム21を備える搬送キャリア20と、ダイシングテープ22に保持された基板10と、が載置される。
【0039】
凸部309は、テーブル302の載置面と交わる方向に突出するとともに、基板10の外縁の全周を取り囲む環状体である。凸部309は、テーブル302の載置面の法線方向からみたとき、基板10とフレーム21との間に配置されている。さらに凸部309は、洗浄液がダイシングテープ22に着地する着地点Pよりフレーム21側に配置されている。
【0040】
テーブル302には、図示しない吸引ポンプに連結された吸引孔302aが複数形成されている。複数の吸引孔302aは、テーブル302の凸部309と基板10との間の環状の領域、および、基板10に対向する円状の領域に配置されている。
【0041】
図3は、本実施形態に係る樹脂塗布装置の一例のブロック図である。樹脂塗布装置300は、テーブル302と、樹脂膜の原料液を供給する原料液供給部301と、洗浄液を供給する洗浄液供給部306と、原料液ノズルおよび洗浄液ノズルの少なくとも1つを移動させる移動部304と、テーブル302を回転させる回転部305と、原料液供給部301、洗浄液供給部306、移動部304および回転部305を制御する制御部303と、を備える。
【0042】
樹脂塗布装置は、例えば、以下のように動作する。
図4は、本実施形態に係る樹脂塗布装置の動作を示すフローチャートである。
樹脂塗布装置の動作が開始されると(ST01)、搬送キャリアに保持された基板が搬送アーム等により停止しているテーブルに載置される(ST02)。これにより、ダイシングテープは、テーブルの載置面に配置された凸部に押しつけられて伸張し、凸部を覆う。次いで、フレームが、固定部によりテーブルに固定される。さらに、吸引ポンプを作動させて、吸引孔から載置面とダイシングテープとの間の気体を吸引し、ダイシングテープを載置面および凸部に密着させる(ST03)。
【0043】
原料液ノズルは、テーブル上であって原料液が滴下される位置よりも上方、あるいは、テーブルに重ならない位置に待機している。洗浄液ノズルも同様に、テーブル上であって洗浄液が滴下される位置よりも上方、あるいは、テーブルに重ならない位置に待機している。
【0044】
続いて、原料液ノズルが、テーブルに載置された基板の上方である所定位置に配置されて、基板に向かって原料液が滴下される(ST04)。原料液が所定量滴下されると、滴下が終了し(ST05)、原料液ノズルが待機場所へと退避する。その後、テーブルを高速で回転させる(ST06)。この遠心力により、滴下された原料液は、基板の外縁に向かって流動し、均一な層が形成される。原料液の余剰部は、そのまま基板から流れ出た後、ダイシングテープを横断し、凸部に到達する。なお、原料液の滴下が開始されてから終了するまでの間、テーブルは、停止していてもよいし、低速で回転していてもよい。原料ノズルの退避とテーブルの高速回転の開始とは、並行して行われてもよい。
【0045】
図5は、本実施形態に係る樹脂塗布装置の要部を模式的に示す拡大断面図である。矢印は、原料液の流れを示している。
基板10を保持する搬送キャリア20が、テーブル302に載置されている。テーブル302には、凸部309が配置されている。テーブル302の載置面と平行な方向からみたとき、凸部309の高さHは、フレーム21の載置面とは反対側の面の載置面からの距離Tより大きい。凸部309の基板10側の面とテーブル302の載置面とが成す鋭角θは、約60°である。
【0046】
ダイシングテープ22は、凸部309と基板10との間の環状の領域に配置された吸引孔302aによって、載置面に真空吸着されている。そのため、ダイシングテープ22は、凸部309の基板10側の面に密着しながら、凸部309を覆うように伸張している。
【0047】
基板10上に供給された原料液P40は、ダイシングテープ22上を流動して、凸部309に到達する。凸部309はダイシングテープ22で覆われているため、原料液P40は、そのままダイシングテープ22上を凸部309に沿って流動し、凸部309の頂部に到達する。このとき、原料液P40には、凸部によって上向きの力が付加されている。そのため、原料液P40は凸部の頂部から上方に跳ねて、フレーム21を飛び越え、フレーム21の外側へと流出する。これにより、フレーム21による跳ね返り、および、フレーム21への原料液P40の付着が抑制される。テーブル302が回転しているため、遠心力によって原料液P40はさらに跳ね易い。
【0048】
次いで、テーブルの回転数を洗浄に適した回転数に変更する(ST07)。このときの回転数は、原料液供給時の回転数より大きく、原料液塗布後の高速での回転数よりも小さくてもよい。
【0049】
続いて、洗浄液ノズルが、テーブルに載置されたダイシングテープの上方である所定位置に配置されて、回転するダイシングテープに向かって、洗浄液が滴下される(ST08)。洗浄液ノズルは所定位置から移動しない一方、テーブルが回転しているため、滴下された洗浄液は、ダイシングテープからフレームに向かって、ダイシングテープ上に残存する原料液を溶解しながら流動し、やがて凸部に到達する。その後、原料液と同様、洗浄液は凸部によって上向きの力を得て、フレームを飛び越え、テーブルの外側へと流出していく。原料液のフレームへの付着が抑制されているため、多くの洗浄液をフレームに接触させる必要はない。洗浄液がフレームに接触し難いことにより、洗浄液の基板への跳ね返りが抑制されて、基板上に均一な厚みの原料液を含む層が形成される。
【0050】
所定量の洗浄液が滴下されると、洗浄液の供給およびテーブルの回転が停止され(ST9)、洗浄液ノズルが待機場所へと退避する(ST10)。最後に、基板が搬送キャリアごと装置の外に搬出されて(ST11)、動作は終了する(ST12)。
【0051】
B.樹脂膜形成方法
本実施形態に係る樹脂膜形成方法は、ダイシングテープおよびダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、ダイシングテープに保持された基板と、を準備する準備工程と、基板を保持する搬送キャリアをテーブルに載置する載置工程と、テーブルに載置される基板に、樹脂膜の原料液を供給して、基板の主面に原料液を含む層を形成する塗布工程と、を備える。テーブルの搬送キャリアが載置される載置面に凸部が配置されており、載置工程において、搬送キャリアは、基板とフレームとの間に凸部が配置されるように、テーブルに載置される。
図6は、本実施形態に係る樹脂膜形成方法を示すフローチャートである。
【0052】
(i)準備工程(S1)
ダイシングテープおよびダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、ダイシングテープに保持された基板と、を準備する。
【0053】
(基板)
基板は、第1主面および第2主面を備えるとともに、例えば、複数の素子領域と複数の分割領域とに区画されている。分割領域は、素子領域を画定している。基板は、半導体層を備える。基板の素子領域は、さらに配線層を備えてよい。基板の分割領域は、さらに絶縁膜とTEG(Test Element Group)等の金属材料とを備えてよい。分割領域における基板をエッチングすることにより、素子チップが得られる。
【0054】
基板の大きさは特に限定されず、例えば、最大径50mm以上300mm以下程度である。基板の形状も特に限定されず、例えば、円形、角型である。また、基板には、オリエンテーションフラット(オリフラ)、ノッチ等の切欠きが設けられていてもよい。
【0055】
半導体層は、例えば、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等を含む。素子チップにおける半導体層の厚みは特に限定されず、例えば、20μm以上1000μm以下であり、100μm以上300μm以下であってもよい。
【0056】
配線層は、例えば、半導体回路、電子部品素子、MEMS等を構成しており、絶縁膜、金属材料、樹脂層(例えば、ポリイミド)、レジスト層、電極パッド、バンプ等を備えてもよい。絶縁膜は、配線用の金属材料との積層体(多層配線層あるいは再配線層)として含まれてもよい。
【0057】
分割領域の形状は、直線に限られず、所望の素子チップの形状に応じて設定されればよく、ジグザグであってもよいし、波線であってもよい。なお、素子チップの形状としては、例えば、矩形、六角形等が挙げられる。
【0058】
分割領域の幅は特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。分割領域の幅は、例えば、10μm以上、300μm以下である。複数の分割領域の幅は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。分割領域は、通常、複数本、基板に配置されている。隣接する分割領域同士のピッチも特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。
【0059】
(搬送キャリア)
搬送キャリアは、フレームとフレームに固定されたダイシングテープとを備える。
【0060】
フレームは、基板の全体と同じかそれ以上の面積の開口を有した枠体であり、所定の幅および略一定の薄い厚みを有している。フレームは、ダイシングテープおよび基板を保持した状態で搬送できる程度の剛性を有している。フレームの開口の形状は特に限定されないが、例えば、円形や、矩形、六角形など多角形であってもよい。フレームの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂等が挙げられる。
【0061】
ダイシングテープの材質は特に限定されない。なかでも、基板が貼着され易い点で、ダイシングテープは、粘着層と柔軟性のある非粘着層とを含むことが好ましい。
【0062】
非粘着層の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂フィルムには、伸縮性を付加するためのゴム成分(例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等)、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、導電性材料等の各種添加剤が配合されていてもよい。また、上記熱可塑性樹脂は、アクリル基等の光重合反応を示す官能基を有していてもよい。非粘着層の厚みは特に限定されず、例えば、50μm以上、300μm以下であり、好ましくは50μm以上、150μm以下である。
【0063】
粘着層を備える面(粘着面)の外周縁は、フレームの一方の面に貼着しており、フレームの開口を覆っている。粘着面のフレームの開口から露出した部分に、基板の一方の主面(第2主面)が貼着されることにより、基板はダイシングテープに保持される。基板は、ダイアタッチフィルム(DAF)を介して、ダイシングテープに保持されてもよい。
【0064】
粘着層は、紫外線(UV)の照射によって粘着力が減少する粘着成分からなることが好ましい。これにより、プラズマダイシング後に素子チップをピックアップする際、UV照射を行うことにより、素子チップが粘着層から容易に剥離されて、ピックアップし易くなる。例えば、粘着層は、非粘着層の片面に、UV硬化型アクリル粘着剤を5μm以上100μm以下(好ましくは5μm以上15μm以下)の厚みに塗布することにより得られる。
【0065】
図7Aは、搬送キャリアとこれに保持された基板とを模式的に示す上面図である。
図7Bは、
図7Aに示すA-A線での断面図である。
【0066】
搬送キャリア20は、環状のフレーム21とフレーム21に固定されたダイシングテープ22とを備える。フレーム21には、位置決めのためのノッチ21aやコーナーカット21bが設けられていてもよい。粘着面22Xの外周縁は、フレーム21の一方の面に貼着し、粘着面22Xのフレーム21の開口から露出した部分に、基板10の一方の主面が貼着される。
【0067】
(ii)載置工程(S2)
基板を保持する搬送キャリアをテーブルに載置する。搬送キャリアは、テーブルと、ダイシングテープの非粘着面とが接するように、テーブルに載置される。
【0068】
テーブルの載置面には、凸部が、基板とフレームとの間に位置するように配置されている。そのため、搬送キャリアがテーブルに載置されると、ダイシングテープは凸部に押しつけられて伸張し、凸部を覆う。搬送キャリアが載置された後、フレームを固定部(クランプ等)によりテーブルに固定されてもよい。さらに、上記のような吸着機構により、ダイシングテープを載置面に密着させてもよい。
【0069】
図8は、本実施形態に係る載置工程における搬送キャリアを模式的に示す断面図である。テーブル302の載置面には凸部309が配置されている。凸部309の表面は、ダイシングテープ22により覆われている。テーブル302には、吸引孔302aが複数形成されており、ダイシングテープ22を載置面および凸部309の基板10側の面に吸着している。
【0070】
(iii)塗布工程(S3)
基板を被覆する樹脂膜を形成する。樹脂膜は、基板の素子領域をプラズマ等から保護するために設けられる。
【0071】
樹脂膜は、テーブルに載置される基板に、樹脂膜の原料液を供給し、乾燥させることにより形成される。原料液を基板に供給する方法は特に限定されない。例えば、原料液を液体状のまま基板に供給してもよいし、原料液を霧や泡などの状態で基板に供給してもよい。なかでも、均一な樹脂膜が得られ易い点で、原料液を液体状のまま基板に供給した後、テーブルを回転させるスピンコート法が好ましい。スピンコート法では原料液が基板上から流出するため、原料液はフレームで跳ね返ったり、フレーム上に付着し易い。しかし、テーブル上に凸部を配置することにより、フレームによる跳ね返りおよびフレームへの原料液の付着は抑制される。
【0072】
スピンコート法におけるテーブルの回転速度は、特に限定されないが、300rpm以上であってよく、500rpm以上であってよい。また、テーブルの回転速度は、5000rpm以下であってよく、3000rpm以下であってよい。原料液を供給する際、テーブルは停止していてもよいし、より低速(例えば、10rpm以上50rpm以下)で回転していてもよい。
【0073】
原料液は、例えば、上記の通り、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。
【0074】
原料液の粘度は特に限定されない。生産性の観点から、原料液のJIS Z 8803に準拠して測定される20℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であってよい。
【0075】
原料液の供給量は、所望の樹脂膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。樹脂膜の厚みは特に限定されないが、プラズマダイシング工程により完全には除去されない程度であることが好ましい。樹脂膜の厚みは、例えば、プラズマダイシング工程において樹脂膜がエッチングされる量(厚み)を算出し、このエッチング量以上になるように設定される。樹脂膜の厚みは、例えば、5μm以上60μm以下である。
【0076】
図9は、本実施形態に係る塗布工程中の基板を模式的に示す断面図である。樹脂膜の原料液P40は液体状のまま、基板10に向かって原料液ノズル3011から供給されている。塗布工程中、テーブル302はその載置面の法線を回転軸として回転しており、原料液P40は、基板10の外縁に向かって流動する。さらに原料液P40は、そのままダイシングテープ22上を凸部309に沿って流動し、凸部309の頂部に到達した後、上方に跳ねてフレーム21の外側へと流出する。
【0077】
(iv)洗浄工程(S4)
洗浄工程では、主にダイシングテープに付着した原料液が除去される。洗浄液は、テーブルに載置されているダイシングテープに向けて供給される。洗浄液は、ダイシングテープからフレームに向かって、ダイシングテープ上に残存する原料液を溶解しながら流動する。溶解した原料液を含む洗浄液は、さらに凸部に沿って流動し、凸部の頂部に到達した後、上方に跳ねてフレームの外側へと流出する。
【0078】
洗浄工程は、塗布工程の後、速やかに行われることが望ましい。原料液が固化、乾燥する前に洗浄工程を行うことにより、原料液が除去され易くなるためである。
【0079】
洗浄液をダイシングテープに供給する方法は特に限定されない。例えば、洗浄液を液体状のままダイシングテープに供給してもよいし、樹脂膜の原料液を霧や泡などの状態でダイシングテープに供給してもよい。なかでも、洗浄効果が高い点で、洗浄液を液体状のままダイシングテープに供給する方法が好ましい。
【0080】
洗浄液を供給する際、テーブルをその載置面の法線を回転軸として回転させてもよい。これにより、溶解した原料液を速やかにダイシングテープ上から取り除くことができるとともに、洗浄液がフレームを飛び越え易くなる。洗浄工程におけるテーブルの回転速度は、特に限定されないが、300rpm以上であってよく、500rpm以上であってよい。また、テーブルの回転速度は、2000rpm以下であってよく、1500rpm以下であってよい。
【0081】
洗浄液の粘度は特に限定されない。生産性の観点から、洗浄液のJIS Z 8803に準拠して測定される20℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であってよい。
【0082】
(v)乾燥工程(S5)
基板の主面に形成された原料液を含む層を乾燥させてもよい。これにより、基板の主面を覆う樹脂膜が形成される。
乾燥条件は特に限定されず、原料液の成分および濃度、ダイシングテープの耐熱性等を考慮して適宜設定すればよい。乾燥機構としては、例えば、ヒーターを用いる加熱乾燥、排気装置を用いる減圧乾燥、または給気装置を用いる温風乾燥が挙げられる。
【0083】
図10は、本実施形態に係る乾燥工程後の基板を模式的に示す断面図である。基板10の第1主面10Xに、樹脂膜40が形成されている。樹脂膜40は、基板10の側面にも形成されてよい。一方、ダイシングテープ22の粘着面22X上およびフレーム21には、樹脂膜40は形成されていない。
【0084】
C.素子チップの製造方法
本実施形態に係る素子チップの製造方法は、ダイシングテープおよびダイシングテープの外周を保持する環状のフレームを備える搬送キャリアと、ダイシングテープに保持され、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1主面およびダイシングテープに貼着された第2主面を有する基板と、を準備する準備工程と、基板の第1主面を被覆する樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、樹脂膜に開口を形成して、第1主面における分割領域を露出させる開口形成工程と、露出した分割領域の第1主面から第2主面までをプラズマエッチングして、基板を複数の素子チップに個片化するプラズマダイシング工程と、を備える。樹脂膜形成は、上記の樹脂膜形成方法により実行される。
図11は、本実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【0085】
(1)準備工程(S11(S1))
まず、搬送キャリアに保持された基板を準備する。基板および搬送キャリアの形状、材質等は上記の通りである。
【0086】
(2)樹脂膜形成工程(S12(S2~S5))
樹脂膜形成工程は、上記の樹脂膜形成方法の載置工程(ii)、塗布工程(iii)、洗浄工程(iv)および乾燥工程(v)により実行される。上記樹脂膜形成方法によれば、基板上に均一な樹脂膜を形成することができる。
【0087】
(3)開口形成工程(S13)
樹脂膜に開口を形成して、基板の分割領域を露出させる。
【0088】
開口は、例えば、フォトレジストにより形成された樹脂膜のうち、分割領域に対応する領域をフォトリソグラフィ法によって除去することにより形成される。熱硬化性樹脂あるいは水溶性レジストにより形成された樹脂膜のうち、分割領域に対応する領域をレーザスクライビングによりパターニングして、開口を形成してもよい。
【0089】
開口は、分割領域における樹脂膜および配線層が除去されることにより形成されてもよい。分割領域における配線層の除去は、後述するプラズマダイシング工程において行ってもよい。この場合、配線層を除去するためのプラズマを発生させる条件と、基板をエッチングするためのプラズマを発生させる条件とは異なり得る。
【0090】
開口形成工程の後、プラズマダイシング工程を行う前に、開口をレーザ光あるいはプラズマによりクリーニングする工程を行ってもよい。クリーニング工程におけるレーザ光は、通常、開口形成工程で用いられるレーザ光とは異なる条件で照射される。同様に、クリーニング工程で用いられるプラズマは、通常、個片化を行うときに発生させるプラズマとは異なる条件で発生させる。クリーニング工程は、例えば、開口形成工程に起因する残渣を低減する目的で行われる。これにより、さらに高品質のプラズマエッチングを行うことが可能になる。
【0091】
図12は、本実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。分割領域102における樹脂膜40および配線層12が除去されて、開口から分割領域102における半導体層11が露出している。
【0092】
(4)プラズマダイシング工程(S14)
基板をプラズマに晒して、開口から露出する分割領域を第2主面までエッチングし、基板から複数の素子チップを形成する。複数の素子チップは、ダイシングテープに保持された状態で得られる。
【0093】
図13を参照しながら、プラズマエッチングに使用されるプラズマ処理装置100を具体的に説明する。プラズマ処理装置は、これに限定されるものではない。
図13は、プラズマ処理装置100の構造を概略的に示す断面図であり、便宜上、樹脂膜40を省略している。
【0094】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。搬送キャリア20は、ダイシングテープ22の基板10を保持している面が上方を向くように、ステージ111に搭載される。ステージ111は、搬送キャリア20の全体を載置できる程度の大きさを備える。ステージ111の上方には、基板10の少なくとも一部を露出させるための窓部124Wを有するカバー124が配置されている。カバー124には、フレーム21がステージ111に載置されている状態のとき、フレーム21を押圧するための押さえ部材107が配置されている。押さえ部材107は、フレーム21と点接触できる部材(例えば、コイルバネや弾力性を有する樹脂)であることが好ましい。これにより、フレーム21およびカバー124の熱が互いに影響し合うことを抑制しながら、フレーム21の歪みを矯正することができる。
【0095】
ステージ111およびカバー124は、真空チャンバ103内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、石英(SiO2)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1の電極109が配置されている。第1の電極109は、第1の高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0096】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガス(プロセスガス)の供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にプロセスガスが供給された状態で、第1の電極109に第1の高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0097】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0098】
電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119と称す。)と、第2の高周波電源110Bに電気的に接続された第2の電極120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、ダイシングテープ22はステージ111に押し付けられて固定される。以下、ダイシングテープ22をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。ダイシングテープ22のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0099】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載されたダイシングテープ22が冷却されるとともに、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、基板10やダイシングテープ22が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0100】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、搬送キャリア20のフレーム21を支持する。支持部122は、第1の昇降機構123Aにより昇降駆動される。搬送キャリア20が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0101】
カバー124の端部には、複数の昇降ロッド121が連結しており、カバー124を昇降可能にしている。昇降ロッド121は、第2の昇降機構123Bにより昇降駆動される。第2の昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、第1の昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0102】
制御装置128は、第1の高周波電源110A、第2の高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、第1の昇降機構123A、第2の昇降機構123Bおよび静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。
図14は、本実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【0103】
基板10のエッチングは、基板10が保持された搬送キャリア20を真空チャンバ内に搬入し、基板10がステージ111に載置された状態で行われる。
基板10の搬入の際、真空チャンバ103内では、昇降ロッド121の駆動により、カバー124が所定の位置まで上昇している。図示しないゲートバルブが開いて搬送キャリア20が搬入される。複数の支持部122は、上昇した状態で待機している。搬送キャリア20がステージ111上方の所定の位置に到達すると、支持部122に搬送キャリア20が受け渡される。搬送キャリア20は、ダイシングテープ22の粘着面22Xが上方を向くように、支持部122の上端面に受け渡される。
【0104】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡されると、真空チャンバ103は密閉状態に置かれる。次に、支持部122が降下を開始する。支持部122の上端面が、ステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111に載置される。続いて、昇降ロッド121が駆動する。昇降ロッド121は、カバー124を所定の位置にまで降下させる。このとき、カバー124に配置された押さえ部材107がフレーム21に点接触できるように、カバー124とステージ111との距離は調節されている。これにより、フレーム21が押さえ部材107によって押圧されるとともに、フレーム21がカバー124によって覆われ、基板10は窓部124Wから露出する。
【0105】
カバー124は、例えば、略円形の外形輪郭を有したドーナツ形であり、一定の幅および薄い厚みを備えている。窓部124Wの直径はフレーム21の内径よりも小さく、その外径はフレーム21の外径よりも大きい。したがって、搬送キャリア20をステージ111の所定の位置に搭載し、カバー124を降下させると、カバー124は、フレーム21を覆うことができる。窓部124Wからは、基板10の少なくとも一部が露出する。
【0106】
カバー124は、例えば、セラミックス(例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなど)や石英などの誘電体や、アルミニウムあるいは表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの金属で構成される。押さえ部材107は、上記の誘電体や金属の他、樹脂材料で構成され得る。
【0107】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡された後、直流電源126からESC電極119に電圧を印加する。これにより、ダイシングテープ22がステージ111に接触すると同時にステージ111に静電吸着される。なお、ESC電極119への電圧の印加は、ダイシングテープ22がステージ111に載置された後(接触した後)に、開始されてもよい。
【0108】
エッチングが終了すると、真空チャンバ103内のガスが排出され、ゲートバルブが開く。複数の素子チップを保持する搬送キャリア20は、ゲートバルブから進入した搬送機構によって、プラズマ処理装置100から搬出される。搬送キャリア20が搬出されると、ゲートバルブは速やかに閉じられる。搬送キャリア20の搬出プロセスは、上記のような搬送キャリア20をステージ111に搭載する手順とは逆の手順で行われてもよい。すなわち、カバー124を所定の位置にまで上昇させた後、ESC電極119への印加電圧をゼロにして、搬送キャリア20のステージ111への吸着を解除し、支持部122を上昇させる。支持部122が所定の位置まで上昇した後、搬送キャリア20は搬出される。
【0109】
半導体層をエッチングするプラズマの発生条件は、半導体層の材質などに応じて設定される。
半導体層は、例えば、ボッシュプロセスによりプラズマエッチングされる。ボッシュプロセスでは、半導体層が深さ方向に垂直にエッチングされる。半導体層がSiを含む場合、ボッシュプロセスは、堆積ステップと、堆積膜エッチングステップと、Siエッチングステップとを順次繰り返すことにより、半導体層を深さ方向に掘り進む。
【0110】
堆積ステップは、例えば、プロセスガスとしてC4F8を150sccm以上250sccm以下で供給しながら、真空チャンバ内の圧力を15Pa以上25Pa以下に調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W以上2500W以下として、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を0W以上50W以下として、2秒以上15秒以下、処理する条件で行われる。
【0111】
堆積膜エッチングステップは、例えば、プロセスガスとしてSF6を200sccm以上400sccm以下で供給しながら、真空チャンバ内の圧力を5Pa以上15Pa以下に調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W以上2500W以下として、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を300W以上1000W以下として、2秒以上10秒以下、処理する条件で行われる。
【0112】
Siエッチングステップは、例えば、プロセスガスとしてSF6を200sccm以上400sccm以下で供給しながら、真空チャンバ内の圧力を5Pa以上15Pa以下に調整し、第1の高周波電源から第1の電極への投入電力を1500W以上2500W以下として、第2の高周波電源から第2の電極への投入電力を50W以上500W以下として、10秒以上20秒以下、処理する条件で行われる。
【0113】
上記のような条件で、堆積ステップ、堆積膜エッチングステップ、および、Siエッチングステップを繰り返すことにより、Siを含む半導体層は、10μm/分以上20μm/分以下の速度で深さ方向に垂直にエッチングされ得る。
【0114】
図15は、本実施形態に係るプラズマダイシング工程で作製された素子チップを、模式的に示す断面図である。基板の分割領域がエッチングされて、基板から複数の素子チップ200が形成されている。素子チップ200の配線層12は、樹脂膜40により覆われている。
【0115】
(5)樹脂膜除去工程(S15)
プラズマダイシング工程の後、プラズマ処理装置においてアッシングを行ってもよい。これにより、樹脂膜が除去される。アッシング用のプロセスガス(例えば、酸素ガス(O2)や、O2ガスとフッ素を含むガスとの混合ガス等)を、アッシングガス源から真空チャンバ内に導入する。一方、減圧機構による排気を行い、真空チャンバ内を所定の圧力に維持する。第1の高周波電源からの高周波電力の投入により、真空チャンバ内には酸素プラズマが発生し、カバーの窓部から露出している個片化された素子チップの表面の樹脂膜が除去される。
【0116】
具体的には、アッシングは、例えば、アッシングガスとしてCF4とO2との混合ガス(流量比CF4:O2=1:10)を150sccm以上300sccm以下で供給しながら、真空チャンバ内の圧力を5Pa以上15Pa以下に調整し、第1の高周波電源から第1の電極への印加電力を1500W以上5000W以下として、第2の高周波電源から第2の電極への印加電力を0W以上300W以下とする条件により行われる。なお、アッシング工程における第2の電極への印加電力は、プラズマダイシング工程における第2の電極への印加電力よりも小さくなるように設定することが望ましい。
【0117】
樹脂膜が水溶性である場合、アッシングに替えて、水洗により樹脂膜を除去してもよい。
【0118】
図16は、本実施形態に係る樹脂膜除去工程で作製された素子チップを、模式的に示す断面図である。配線層12を覆っていた樹脂膜40が除去されている。
【0119】
樹脂膜除去工程の後、素子チップは、ダイシングテープから取り外される。
素子チップを、例えば、ダイシングテープの非粘着面側から、ダイシングテープとともに突き上げピンで突き上げる。これにより、素子チップの少なくとも一部は、ダイシングテープから浮き上がる。その後、ピックアップ装置により、素子チップはダイシングテープから取り外される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の樹脂膜形成方法および樹脂塗布装置は、基板の主面に均一な樹脂膜を形成できるため、特にプラズマダイシングにより素子チップを製造する方法に好適である。
【符号の説明】
【0121】
10:基板
10X:第1主面
10Y:第2主面
11:半導体層
12:配線層
20:搬送キャリア
21:フレーム
21a:ノッチ
21b:コーナーカット
22:ダイシングテープ
22X:粘着面
22Y:非粘着面
40:樹脂膜
P40:樹脂膜の原料液
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
108:誘電体部材
109:第1の電極
110A:第1の高周波電源
110B:第2の高周波電源
111:ステージ
112:プロセスガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2の電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123A、123B:昇降機構
124:カバー
124W:窓部
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング
200:素子チップ
300:樹脂塗布装置
301:原料液供給部
3011:原料液ノズル
302:テーブル
302a:吸引孔
303:制御部
304:移動部
305:回転部
306:洗浄液供給部
3061:洗浄液ノズル
309:凸部