(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具
(51)【国際特許分類】
A47L 9/04 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
A47L9/04 A
(21)【出願番号】P 2020104759
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽章
(72)【発明者】
【氏名】藤田 孝一
(72)【発明者】
【氏名】堀部 勇
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-126132(JP,A)
【文献】特開2004-173759(JP,A)
【文献】特開2002-209809(JP,A)
【文献】特開2002-345693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を吸引する清掃機に取り付けられる吸込具であって、
下面に開口する吸込空間を区画するように形成され、前記吸込空間における幅方向の中央に開口する開口から後方に延びる流路が形成されたハウジングと、
前記吸込空間内に配置され
ているとともに前記幅方向に長い
第1掻取ローラと、
前記第1掻取ローラに対して前記幅方向において間隔を空けて前記吸込空間に配置された第2掻取ローラと、
前記吸込空間に配置された遮蔽部と、を備え、
前記第1掻取ローラ及び前記第2掻取ローラの先端間には、空隙が形成されており、
前記
第1掻取ローラ
及び前記第2掻取ローラは、前記流路の前記開口に近づくにつれて細くなる形状を有しており、
前記遮蔽部は、前記吸込空間を区画する前記ハウジングの内壁のうち前記
第1掻取ローラにおいて細径となっている部位に隣接する部位
、前記空隙に隣接する部位及び前記第2掻取ローラの細径となっている部位に隣接する部位から掻取ローラ側に突出する、吸込具。
【請求項2】
前記第1掻取ローラおよび前記第2掻取ローラは、前記先端が基端よりも前方に位置する姿勢で前記ハウジングによって支持され、
前記遮蔽部は、前記第1掻取ローラ及び前記第2掻取ローラの前記先端間の前記空隙の後側で前記内壁から前記掻取ローラ側に突出する、請求項
1に記載の吸込具。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記内壁において前記ハウジングの下面を構成する部位に配置されている、請求項1
又は2に記載の吸込具。
【請求項4】
前記遮蔽部の下面に設けられた集塵部を更に備えている、請求項
3に記載の吸込具。
【請求項5】
前記集塵部は、前記吸込具を前方に移動させたときに、塵埃が前記幅方向の外側に押し出されるように前記幅方向に対して傾斜する第1部位を有し、
前記吸込空間は、前記遮蔽部の前記幅方向の外側に開口している、
請求項
4に記載の吸込具。
【請求項6】
前記集塵部は、前記吸込具を後方に移動させたときに、塵埃が前記幅方向の外側に押し出されるように前記幅方向に対して傾斜する第2部位を有する、
請求項
5に記載の吸込具。
【請求項7】
前記集塵部は、布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成されている、請求項
4~
6の何れか1項に記載の吸込具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具に関する。
【背景技術】
【0002】
吸引式の清掃機に取り付けられる様々な吸込具が開発されている(特許文献1を参照)。特許文献1の吸込具は、下面に開口する吸込空間が形成されたハウジングを有している。吸込空間には、床面上の塵埃を掻き取るための掻取ローラが収容されている。掻取ローラは、吸込空間内で幅方向に延設されているとともに吸込空間を通じてハウジングから下方に露出している。掻取ローラは、吸込空間の前後幅と略等しい太さを有している。したがって、吸込空間の大部分は、掻取ローラによって塞がれ、吸込空間の実質的な開口面積(すなわち、掻取ローラによって塞がれていない余剰の領域の大きさ)は狭くなる。
【0003】
掻取ローラに巻き付いた塵埃を除去することを目的として、掻取ローラの径が幅方向において変化するように掻取ローラが構成されることがある。特許文献2は、吸込具の幅方向における中心位置に向けて徐々に細くなっている掻取ローラを有する吸込具を開示している。特許文献2の吸込具では、掻取ローラが吸込具の幅方向における中心位置に向けて徐々に細くなっているので、塵埃には、掻取ローラの回転によって生じる掻取ローラに対する巻き付き力だけでなく、掻取ローラの先端に向かう方向の力も生じる。このため、掻取ローラに巻き付いた塵埃は、掻取ローラの中心位置に向けて移動しやすくなり、掻取ローラの中心位置の後方で吸込空間に開口する流路を通じて清掃機内に吸い込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-166826号公報
【文献】特開2011-188951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
掻取ローラが徐々に細くなる形状を有している場合、吸込空間において掻取ローラによって塞がれていない余剰の領域(すなわち、吸込空間の実質的な開口面積)は広くなる。この結果、余剰の領域に作用する吸引力が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、その目的は、吸引力の低下を抑制することができる構造を有している吸込具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸込具は、塵埃を吸引する清掃機に取り付けられる吸込具であって、下面に開口する吸込空間を区画するように形成され、前記吸込空間における幅方向の中央に開口する開口から後方に延びる流路が形成されたハウジングと、前記吸込空間内に配置されているとともに前記幅方向に長い第1掻取ローラと、前記第1掻取ローラに対して前記幅方向において間隔を空けて前記吸込空間に配置された第2掻取ローラと、前記吸込空間に配置された遮蔽部と、を備える。前記第1掻取ローラ及び前記第2掻取ローラの先端間には、空隙が形成されている。前記第1掻取ローラ及び前記第2掻取ローラは、前記流路の前記開口に近づくにつれて細くなる形状を有している。前記遮蔽部は、前記吸込空間を区画する前記ハウジングの内壁のうち前記第1掻取ローラにおいて細径となっている部位に隣接する部位、前記空隙に隣接する部位及び前記第2掻取ローラの細径となっている部位に隣接する部位から掻取ローラ側に突出する。
【0008】
本発明によれば、第1掻取ローラ及び第2掻取ローラは、吸込空間における幅方向の中央に開口する流路の開口に近くなればなるほど細くなるように形成されているので、第1掻取ローラ及び第2掻取ローラに巻き付いた塵埃を流路の開口に向けて幅方向に移動させることができる。この場合、第1掻取ローラ及び第2掻取ローラが大きな直径を有している部分では、吸込空間のより大きな部分が掻取ローラによって占められるのに対して、これらの掻取ローラが小さな径を有している部分では、吸込空間がこれらの掻取ローラによって占められる領域は比較的小さくなる。すなわち、流路の開口の近くにおいて、これらの掻取ローラが存在していない余剰の領域が広くなる。この広い余剰の領域の体積を小さくするために、遮蔽部が設けられている。すなわち、遮蔽部は、吸込空間を区画する内壁のうち第1掻取ローラにおいて細径となっている部位に隣接する部位、第1掻取ローラ及び第2掻取ローラの先端間の空隙に隣接する部位及び第2掻取ローラの細径となっている部位に隣接する部位から掻取ローラ側に突出する。この結果、吸込空間の実質的な開口面積は小さくなり、吸込空間における吸引力の低下が抑制される。
【0011】
上記構成において、前記第1掻取ローラおよび前記第2掻取ローラは、前記先端が基端よりも前方に位置する姿勢で前記ハウジングによって支持されてもよい。前記遮蔽部は、前記第1掻取ローラ及び前記第2掻取ローラの前記先端間の前記空隙の後側で前記内壁から前記掻取ローラ側に突出してもよい。
【0012】
この構成によれば、第1掻取ローラおよび第2掻取ローラは、先端が基端よりも前方に位置する姿勢でハウジングによって支持されるので、吸込空間における前側の領域の大部分は、第1及び第2掻取ローラによって塞がれる。したがって、遮蔽部は、第1及び第2掻取ローラの前側に設けられなくてもよい。一方、第1及び第2掻取ローラの後側では、吸込空間が第1及び第2掻取ローラによって塞がれていない比較的広い領域が生ずる。この後側の領域を狭くするように遮蔽部が設けられている。すなわち、遮蔽部は、第1及び第2掻取ローラの先端間の空隙の後側で内壁から掻取ローラ側に突出する。この結果、吸込空間の実質的な開口面積は小さくなり、吸込空間における吸引力の低下が抑制される。
【0013】
上記構成において、前記遮蔽部は、前記内壁において前記ハウジングの下面を構成する部位に配置されてもよい。
【0014】
この構成によれば、遮蔽部は、ハウジングの内壁においてハウジングの下面を構成する部位に配置されているので、下面に開口する吸込空間の開口面積を狭くすることができる。このため、吸込空間における吸引力の低下をより確実に抑制することができる。
【0015】
上記構成において、前記遮蔽部の下面に設けられた集塵部を更に備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、集塵部は、ハウジングの下面に配置された遮蔽部の下面に設けられているので、床面に接触する。このため、吸込具が前方に移動されると塵埃が集塵部の前側に溜まり、吸込具が後方に移動されると塵埃が集塵部の後方に溜まる。集塵部の前後において溜まった塵埃は、吸込空間を通じて清掃機内に吸い込まれる。このように、遮蔽部の下面を集塵部の配置に利用することにより、掻取ローラによって掻き取ることができなかった塵埃であっても清掃機に集塵することができる。
【0017】
上記構成において、前記集塵部は、前記吸込具を前方に移動させたときに、塵埃が前記幅方向の外側に押し出されるように前記幅方向に対して傾斜する第1部位を有してもよい。前記吸込空間は、前記遮蔽部の前記幅方向の外側に開口していてもよい。
【0018】
この構成によれば、吸込具を前方に移動させたときに、第1部位によって塵埃を幅方向の外側に押し出すことができるので、集塵部によって捕捉された塵埃が遮蔽部の幅方向の外側から吸込空間に吸い込まれやすくなる。
【0019】
上記構成において、前記集塵部は、前記吸込具を後方に移動させたときに、塵埃が前記幅方向の外側に押し出されるように前記幅方向に対して傾斜する第2部位を有してもよい。
【0020】
この構成によれば、吸込具を後方に移動させたときに、第2部位によって塵埃を幅方向の外側に押し出すことができるので、集塵部によって捕捉された塵埃が遮蔽部の幅方向の外側から吸込空間に吸い込まれやすくなる。
【0021】
上記構成において、前記集塵部は布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成されてもよい。
【0022】
この構成によれば、塵埃が集塵部に絡みつきやすくなるので、吸込具を前後に移動させたときに、より確実に塵埃を集塵部に捕捉することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸引力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る吸込具が取り付けられた吸引式の清掃機の側面図である。
【
図5】
図2のV-V線で切断した簡略断面図である。
【
図6】本実施形態に係る吸込具の変形例の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る吸込具について図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態に係る吸込具を説明するために必要となる主要な構成要素を簡略化して示したものである。したがって、本発明の実施形態に係る吸込具は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
【0026】
図1は、吸込具100が取り付けられた吸引式の清掃機101を示している。清掃機101は、吸引ファン(図示せず)や吸引ファンを駆動するモータ(図示せず)を内蔵する本体部102と、本体部102から延設されたホース103とを備えている。清掃機101は、ホース103の中間位置に設けられた操作部104を更に備えている。吸込具100は、ホース103の先端に接続されている。操作部104は、ホース103に沿って設けられた配線を通じて本体部102と吸込具100とに電気的に接続されている。操作部104は、使用者の操作を受けて、本体部102及び吸込具100の駆動部位を作動させたり停止させたりするための指令信号を生成するように構成されている。
【0027】
吸込具100は、
図1~3に示すように、幅方向(以下、左右方向という)に長い中空の箱構造からなるハウジング120と、塵埃を掻き取るように構成された2つの第1及び第2掻取ローラ141、142と、を備える。
【0028】
ハウジング120は、ハウジング本体120aと、ハウジング本体120aとは別体の前カバー129と、を備える。ハウジング本体120aは、左右方向に長い後側部120aaと、後側部120aaの左右両端部の前側に位置する一対の側部120abと、を有し、中空状に形成されている。ハウジング本体120aは、一対の側部120abの前面を構成する一対の前壁121と、後側部120aaの後面を構成する後壁122と、後側部120aaの左右の側面を構成するとともに、一対の側部120abの左右方向外側の側面を構成する側壁123、124と、後側部120aaの上面を構成するとともに、一対の側部120abの上面を構成する上壁125と、後側部120aaおよび一対の側部120abの下面を構成する下壁126と、を含む。
【0029】
一対の前壁121は、左右方向に間隔を空けて配置されている。後壁122は、左右方向における中央位置が前方に向かって凹む凹部122aを有するように形成されている(
図2参照)。側壁123、124は、一対の前壁121と後壁122とを繋いでいる。上壁125は、後壁122の上部と側壁123、124の上部と一対の前壁121、121の上部とに繋がっている。
【0030】
下壁126は、
図3に示すように、後壁122及び側壁123、124の下端から内側に向かって延び、全体で底面視略コ字状に形成されている。下壁126の下面には、布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成された第1集塵部128が左右方向に延びるように設けられている。尚、第1集塵部128の形状や材質は限定されることはない。第1集塵部128は省略されてもよい。
【0031】
ハウジング本体120aは、仕切壁127を更に含んでいる。仕切壁127は、一対の側部120abの左右方向内側の面を構成する側仕切壁部127a、127aと、後側部120aaの前面を構成する後仕切壁部127bと、を含む(
図2、3参照)。
【0032】
側仕切壁部127a、127aは、前後方向に延びて一対の前壁121、121と後仕切壁部127bの左右端部とに繋がっている。側仕切壁部127a、127aは、下壁126における一対の側部120ab、120abの部位と、上壁125における一対の側部120ab、120abの部位と、を繋いでいる。側仕切壁部127a、127aの高さは、側壁123、124と同じ高さに設定されている。
【0033】
後仕切壁部127bは、左右方向に延びて側仕切壁部127a、127aに繋がっている。後仕切壁部127bは、下壁126における後側部120aa、120aaの部位と、上壁125における後側部120aa、120aaの部位と、を繋いでいる。
【0034】
前カバー129は、後端部が後側部120aaに載置される状態で一対の側部120abに掛け渡されるように配置されている。前カバー129は、後側部120aaに載置される位置から一対の前壁121の左右方向の間まで延びている。前カバー129は、ハウジング本体120aに着脱可能に構成されている。尚、前カバー129は、ハウジング本体120aに着脱できなくてもよい。
【0035】
仕切壁127及び前カバー129は、塵埃を吸い込むための吸込空間111を区画する。吸込空間111は、前カバー129によって上から覆われる。吸込空間111は、下方に向けて開口しており、この開口は、略矩形状に形成されている。吸込空間111は、下面の開口から空気及び塵埃が流れることを許容するとともに、第1及び第2掻取ローラ141、142などが収容される。仕切壁127及び前カバー129は、吸込空間111を区画するハウジング120の内壁の1例である。
【0036】
ハウジング本体120a内には、第1及び第2掻取ローラ141、142を駆動するモータ(図示せず)などを収容する収容空間112が形成されている。
【0037】
ハウジング本体120aには、仕切壁127の後仕切壁部127b及び後壁122の凹部122aを貫通する流路116が形成されている(
図2参照)。流路116の前側の開口115は、仕切壁127の後仕切壁部127bの左右方向の中央位置に形成され、流路116は、吸込空間111に連通している。流路116は、後壁122の凹部122aから後方に延び接続口130に連通している。流路116は、空気及び塵埃が吸込空間111から接続口130へ流れる流動経路として機能する。接続口130は、清掃機101のホース103の先端に接続される。
【0038】
第1掻取ローラ141は、吸込空間111に配置されている(
図3参照)。第1掻取ローラ141は、側壁123の近傍の収容空間112内から仕切壁127の側仕切壁部127aを貫通するテーパ筒部161と、テーパ筒部161に嵌め込まれる軸部163と、テーパ筒部161の外周面に設けられた複数の掻取部162と、を有している(
図3、4参照)。
【0039】
テーパ筒部161は、左右方向に長い筒状の部材であり、左右の側壁123、124間の長さの半分よりも若干短い。テーパ筒部161は、
図4に示すように、吸込空間111において流路116の開口115に近づくにつれて細くなるように、基端から先端に向けて細くなる細長い円錐台形状を有している。テーパ筒部161は、先端が基端よりも前方に位置するように傾斜している(
図3参照)。加えて、テーパ筒部161は、先端が基端よりも下方に位置するように傾斜している(
図4参照)。この姿勢で、テーパ筒部161は、ハウジング120によって支持されている。
【0040】
テーパ筒部161には、テーパ筒部161と一体的に回転できるように軸部163が嵌め込まれている。軸部163は、収容空間112内において側壁123と側仕切壁部127aとの間に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。軸部163には、プーリ131が取り付けられている。プーリ131には、収容空間112に配置されたモータのモータ軸に掛け渡されたベルト166が掛け渡されている。これにより、モータの駆動によって第1掻取ローラ141が回転する。
【0041】
複数の掻取部162は、床面上の塵埃を掻き取るためのものである。複数の掻取部162それぞれは、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って螺旋状に延設された帯状の部位である。掻取部162は、弾性変形可能な材料から形成されている。たとえば、掻取部162は、多数のブラシ毛を用いて形成されていてもよいし、帯状のエラストマや帯状の弾性樹脂を用いて形成されていてもよいし、帯状の布材を用いて形成されていてもよい。
【0042】
掻取部162は、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って略一様な突出量でテーパ筒部161の外周面から突出している。掻取部162の突出量は、掻取部162が吸込空間111を通じてハウジング120の下面よりも下方に突出し、床面に接触する値に設定されている。
【0043】
掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対して非平行である。詳細には、掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対してねじれる方向に延設されている。すなわち、掻取部162の基端及び先端のテーパ筒部161の周方向における位置は、互いに相違している。
【0044】
第2掻取ローラ142は、第1掻取ローラ141と左右対称である。すなわち、第2掻取ローラ142の先端は、第1掻取ローラ141の先端に対向している。第2掻取ローラ142は、第2掻取ローラ142の先端から側壁124に向けて左右方向に長くなっている。第2掻取ローラ142のテーパ筒部161には、テーパ筒部161と一体的に回転できるように軸部163が嵌め込まれている。軸部163は、収容空間112内において側壁124と側仕切壁部127aとの間に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。軸部163には、プーリ132が取り付けられている。プーリ132には、収容空間112に収容されたモータのモータ軸に掛け渡されたベルト168が掛け渡されている。これにより、モータの駆動によって第2掻取ローラ142が回転する。
【0045】
第1及び第2掻取ローラ141、142は、左右の側壁123、124間の長さの半分よりも若干短いので、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端の間には、空隙118が形成されている(
図3、4参照)。すなわち、空隙118は、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端に隣接して形成されている。空隙118は、左右方向において吸込空間111の略中央に形成されている。空隙118は、流路116の開口115の前方に位置している。すなわち、空隙118は、開口115の開口方向において開口115と並んでいる。空隙118は、第1及び第2掻取ローラ141、142に巻き付いた長い塵埃(たとえば、毛髪)を除去するために利用される。
【0046】
ハウジング120には、吸込空間111の開口面積を狭くするための遮蔽部117が流路116の開口115の下側に設けられている。遮蔽部117は、ハウジング120において吸込空間111を区画する内壁から第1及び第2掻取ローラ141、142側へ突出している。具体的には、遮蔽部117は、第1及び第2掻取ローラ141、142及び空隙118の後側に位置する後仕切壁部127bから第1及び第2掻取ローラ141、142側へ突出している(
図3、5参照)。
図3、5の例では、遮蔽部117は、後仕切壁部127bの下端から第1及び第2掻取ローラ141、142側へ突出している。これにより、遮蔽部117は、ハウジング本体120aの下面を構成する部位に配置される。遮蔽部117が設けられることにより、吸込空間111のうち第1及び第2掻取ローラ141、142によって塞がれていない領域を狭くすることができる。例えば、遮蔽部117により、吸込空間111が下向きに開放される開口の面積を小さくすることができる。
【0047】
より具体的には、遮蔽部117は、後下壁126bの左右方向の中央に形成された空隙対向部117aと、空隙対向部117aの左右両側に形成されたローラ対向部117bと、を有する。空隙対向部117aは、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間の空隙118の近傍まで突出している(
図3参照)。ローラ対向部117bは、第1及び第2掻取ローラ141、142の基端よりも先端により近い先端側の部位の近傍まで突出している。ローラ対向部117bの突出端は、第1及び第2掻取ローラ141、142のテーパ筒部161の外面に略沿うように左右方向に対して傾斜している。これにより、ローラ対向部117bが第1及び第2掻取ローラ141、142に接触しないようにするとともに、遮蔽部117の左右方向の外側に吸込空間111が開口するようにしている。
【0048】
尚、遮蔽部117の位置は、ハウジング本体120aの下面を構成する部位に限定されない。例えば、遮蔽部117は、後仕切壁部127bにおける下端よりも上側の部位から第1及び第2掻取ローラ141、142側へ突出してもよい。後仕切壁部127bは、ハウジングの内壁のうち第1及び第2掻取ローラの細径となっている部位に隣接する部位、空隙118に隣接する部位、及び第1及び第2掻取ローラの先端間の空隙118に隣接する部位の1例である。尚、
図5では、第2掻取ローラ142を簡略化して示している。
【0049】
遮蔽部117の左右両側には、後仕切壁部127bの左右の端まで延びる鍔部119が形成されている。鍔部119も、後仕切壁部127bから第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出している。但し、鍔部119の突出量は、第1及び第2掻取ローラ141、142に接触しないように遮蔽部117よりも小さく設定されている。尚、鍔部119は、省略されてもよい。
【0050】
遮蔽部117の空隙対向部117aの下面には、布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成された第2集塵部155が設けられている。尚、第2集塵部155の材質は、吸込具100を前後に移動させたときに塵埃を捕捉することができれば、起毛布に限定されることはない。第2集塵部155は、空隙対向部117aの下面において流路116の開口と上下に重なる位置に配置されている。
【0051】
第2集塵部155は、吸込具100を前方に移動させたときに、塵埃が左右方向の外側に押し出されるように左右方向に対して傾斜する第1部位155aと、吸込具100を後方に移動させたときに、塵埃が左右方向の外側に押し出されるように左右方向に対して傾斜する第2部位155bと、を有し、全体で略菱形に形成されている(
図3参照)。第1部位155aは、左右方向の中央に位置する頂点から左右方向に対して斜め後方に延びる2辺を有する。第2部位155bは、左右方向の中央に位置する頂点から左右方向に対して斜め前方に延びる2辺を有する。第1部位155aと第2部位155bとが交わる頂点Tは、ローラ対向部117bと唾部119との境界Bよりも前方に位置している。これにより、吸込具100を前後に移動させたときに、第1及び第2部位155a、155bによって塵埃に左右方向に押し出す力を作用させて、塵埃を遮蔽部117の左右方向の外側から吸込空間111に吸い込みやすくしている。尚、第2集塵部155の形状は略菱形に限定されることはない。例えば、第2集塵部155は、吸込具100を前方または後方に移動させたときに、塵埃を左右方向の外側に押し出すことができれば、楕円形や三角形に形成されてもよい。また、第2集塵部155は省略されてもよい。
【0052】
ハウジング本体120aの下面には、複数のローラ151、152が配置されている。複数のローラ151、152は、
図3に示すように、左右下壁126a、126aに配置された一対の左右ローラ151、151と、後下壁126bに配置された中間ローラ152と、を有する。
【0053】
一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aに回転自在に取り付けられている(
図3参照)。この状態で、一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aの下面から下方に突出している。
【0054】
中間ローラ152は、後下壁126bにおいて左右ローラ151、151よりも左右方向の内側に配置されている(
図3参照)。中間ローラは、後下壁126bに回転自在に取り付けられている。この状態で、中間ローラ152は、後下壁126bの下面から下方に突出している。尚、中間ローラ152は省略されてもよい。
【0055】
ハウジング本体120aの下面を構成する後下壁126bの左右方向の中央位置から後方に突出する後方ブラケット158に一対の後方ローラ153、153が回転自在に取り付けられている(
図3参照)。一対の後方ローラ153、153は、後方ブラケット158の下面から下方に突出している。尚、後方ブラケット158は省略されてもよい。この場合、一対の後方ローラ153、153は省略される。
【0056】
上記吸込具100では、第1及び第2掻取ローラ141、142は、吸込空間111における左右方向の中央に開口115する流路116の開口115に近くなればなるほど細くなるように形成されているので、第1及び第2掻取ローラ141、142に巻き付いた塵埃を流路116の開口115に向けて左右方向に移動させることができる。この場合、第1及び第2掻取ローラ141、142が大きな直径を有している部分では、吸込空間111のより大きな部分が第1及び第2掻取ローラ141、142によって占められるのに対して、第1及び第2掻取ローラ141、142が小さな径を有している部分では、吸込空間111の開口が第1及び第2掻取ローラ141、142によって占められる領域は比較的小さくなるため、流路116の開口115の近くにおいて吸込空間111の開口における第1及び第2掻取ローラ141、142が存在していない余剰の領域が広くなっている。この広い余剰の領域(吸込空間111の開口面積)を小さくするために、遮蔽部117が設けられている。すなわち、遮蔽部117は、吸込空間111を区画する仕切壁127の後仕切壁部127bから第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出している。この結果、第1及び第2掻取ローラ141、142において細径となっている部位と、この部位に隣接する後仕切壁部127bとの間の空隙が狭くなり、吸込空間111における吸引力の低下が抑制される。
【0057】
上記吸込具100では、第1及び第2掻取ローラ141、142は、先端に向けて細くなっているので、第1及び第2掻取ローラ141、142に巻き付いた塵埃は、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端に向けて移動する。このとき、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間に空隙118が形成されているので、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端に到達した塵埃は、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間の空隙118を通じて除去されやすい。一方、第1及び第2掻取ローラ141、142は、先端に向けて細くなるとともに、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間に空隙118が形成されている。そして、この部分に、遮蔽部117が、仕切壁127の後仕切壁部127bから第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出している。したがって、第1及び第2掻取ローラ141、142の細径となっている部位によって塞がれない吸込空間111の開口面積が遮蔽部117に占められることによって小さくなっているため、吸込空間111における吸引力の低下が抑制される。
【0058】
上記吸込具100では、第1及び第2掻取ローラ141、142は、先端が基端よりも前方に位置する姿勢でハウジング120によって支持されるので、吸込空間111における前側の領域の大部分は、第1及び第2掻取ローラ141、142によって塞がれる。したがって、遮蔽部117は、第1及び第2掻取ローラ141、142の前側に設けられていない。一方、第1及び第2掻取ローラ141、142の後側では、吸込空間111が第1及び第2掻取ローラ141、142によって塞がれていない比較的広い領域が生ずる。この後側の領域を狭くするように遮蔽部117が設けられている。すなわち、遮蔽部117は、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間の空隙118の後側で仕切壁127の後仕切壁部127bから第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出する。この結果、吸込空間111の実質的な開口面積は小さくなり、吸込空間111における吸引力の低下が抑制される。
【0059】
上記吸込具100では、遮蔽部117は、後仕切壁部127bの下端から第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出することにより、ハウジング120の下面を構成する部位に配置されている。このため、ハウジング120の下面に開口する吸込空間111の開口面積が狭くなっている。このため、吸込空間111における吸引力の低下をより確実に抑制することができる。
【0060】
上記吸込具100では、第2集塵部155は、ハウジング120の下面を構成する部位に配置された遮蔽部117の下面に設けられているので、床面に接触する。このため、吸込具100が前方に移動されると塵埃が第2集塵部155の前側に溜まり、吸込具100が後方に移動されると塵埃が第2集塵部155の後方に溜まる。そして、第2集塵部155は、左右方向の中央に位置する頂点から左右方向に対して斜め後方に延びる2辺を有するので、第2集塵部155の前側に溜まった塵埃は、第2集塵部155の前記2辺から斜め前方に押し出すような力を受けて吸込空間111に吸い込まれる。このとき、第2集塵部155は、流路116の開口115と上下に重なる位置に配置されているので、吸込空間111に吸い込まれた塵埃は流路116の開口115に吸い込まれやすい。このように、遮蔽部117の下面を第2集塵部155の配置に利用することにより、第1及び第2掻取ローラ141、142によって掻き取ることができなかった塵埃であっても清掃機101に容易に集塵することができる。
【0061】
上記吸込具100では、第2集塵部155は、吸込具100を前方に移動させたときに、塵埃が左右方向の外側に押し出されるように左右方向に対して傾斜する第1部位155aを有するので、吸込具100を前方に移動させたときに、第1部位155aによって塵埃を左右方向の外側に押し出すことができる。このため、第2集塵部155によって捕捉された塵埃が遮蔽部117の左右方向の外側から吸込空間111に吸い込まれやすい。
【0062】
上記吸込具100では、第2集塵部155は、吸込具100を後方に移動させたときに、塵埃が左右方向の外側に押し出されるように左右方向に対して傾斜する第2部位155bを有するので、吸込具100を後方に移動させたときに、第2部位155bによって塵埃を左右方向の外側に押し出すことができる。このため、第2集塵部155によって捕捉された塵埃が遮蔽部117の左右方向の外側から吸込空間111に吸い込まれやすい。
【0063】
上記吸込具100では、第2集塵部155は布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成されているので、塵埃が集塵部に絡みつきやすい。このため、吸込具100を前後に移動させたときに、より確実に塵埃を第2集塵部155に捕捉することができる。
【0064】
以上に説明した吸込具100は、本発明の一実施形態であり、その具体的構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0065】
上記吸込具100では、2つの第1及び第2掻取ローラ141、142が設けられたが、床面上の塵埃を掻き取るための掻取ローラは、第1及び第2掻取ローラ141、142を左右方向に結合したような1つの掻取ローラであってもよい。この場合、変形例の掻取ローラは、左右方向における中心位置に向けて徐々に細くなるように形成される。
【0066】
上記吸込具100では、第1及び第2掻取ローラ141、142は、テーパ筒部161の先端が基端よりも前方に位置する姿勢でハウジング120に支持されたが、テーパ筒部161の先端面における中心と基端面における中心とが左右方向に重なる姿勢でハウジング120に支持されてもよい。この場合、第1及び第2掻取ローラ141、142の前側にも、吸込空間111が第1及び第2掻取ローラ141、142によって塞がれていない比較的広い領域が生ずるため、第1及び第2掻取ローラ141、142の先端間の空隙118の前側においても遮蔽部210が配置されてもよい。この場合、遮蔽部210は、例えば、
図6に示すように、前カバー129の内面のうち空隙118の前側から第1及び第2掻取ローラ141、142側に突出するように構成される。また、この場合、遮蔽部117が省略されてもよい。尚、
図6では、第2掻取ローラ142を簡略化して示している。
【符号の説明】
【0067】
100 吸込具
101 清掃機
111 吸込空間
115 開口
116 流路
117 遮蔽部
118 空隙
120 ハウジング
141 掻取ローラ
142 掻取ローラ
155 集塵部
155a 第1部位
155b 第2部位