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特許7390629情報処理方法、情報処理装置、及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/80 20190101AFI20231127BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20231127BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20231127BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20231127BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231127BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B60L53/80
B60L58/12
B60L58/16
B60L58/21
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 302C
H02J13/00 301A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021554079
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028703
(87)【国際公開番号】W WO2021079582
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019193512
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】西川 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
(72)【発明者】
【氏名】楊 長輝
(72)【発明者】
【氏名】天池 正治
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第5205962(JP,B2)
【文献】特開2011-038815(JP,A)
【文献】特開2011-253727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/80
B60L 58/12
B60L 58/16
B60L 58/21
H02J 7/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
電動の移動体の重さを取得し、前記重さは、前記移動体にて用いられる1以上の電池の重さを含み、
前記1以上の電池数毎に、電池数に基づいて算出される前記移動体の消費電力量を取得し、
前記1以上の電池数毎に、前記消費電力量と前記電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出し、
前記1以上の電池数毎に、前記重さに基づいて充電コストを算出し、
前記劣化コスト及び前記充電コストにしたがって、前記移動体に搭載する搭載電池数を決定し、
前記搭載電池数を出力する、
情報処理方法。
【請求項2】
さらに、前記移動体の移動距離を取得し、
前記消費電力量の取得では、前記移動距離と前記重さとから、前記1以上の電池数毎に前記消費電力量を算出することで、前記消費電力量を取得する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項3】
さらに、前記移動体の走行履歴を取得し、
前記消費電力量の取得では、前記走行履歴から、前記1以上の電池数毎に前記移動体の移動距離に対する消費電力量を取得する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記劣化コストの算出では、
さらに、前記1以上の電池数毎に、電池の残量を取得し、前記1以上の電池数毎の前記残量の合計と前記消費電力量とに基づいて前記劣化コストを算出する、
請求項1~3のいずれかに記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記劣化コストの算出では、前記1以上の電池数毎に、1以上の電池のそれぞれに流れる電流に基づいて前記劣化コストを算出する、
請求項1~3のいずれかに記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記搭載電池数の決定では、前記劣化コスト及び前記充電コストの合計にしたがって前記搭載電池数を決定する、
請求項1~5のいずれかに記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記移動距離の取得では、ユーザ入力に基づいて前記移動距離を取得する、
請求項2記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記移動距離の取得では、前記移動体の配車計画に基づいて算出された移動距離を取得する、
請求項2記載の情報処理方法。
【請求項9】
電動の移動体の重さを取得する第1取得部と、前記重さは、前記移動体にて用いられる1以上の電池の重さを含み、
前記1以上の電池数毎に、電池数に基づいて消費電力量を取得する第2取得部と、
前記1以上の電池数毎に、前記消費電力量と前記電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出する劣化コスト算出部と、
前記1以上の電池数毎に、前記重さに基づいて充電コストを算出する充電コスト算出部と、
前記劣化コスト及び前記充電コストにしたがって、前記移動体に搭載する搭載電池数を決定する決定部と、
前記搭載電池数を出力する出力部とを備える、
情報処理装置。
【請求項10】
電動の移動体の重さを取得する第1取得部と、前記重さは、前記移動体にて用いられる1以上の電池の重さを含み、
前記1以上の電池数毎に、電池数に基づいて消費電力量を取得する第2取得部と、
前記1以上の電池数毎に、前記消費電力量と前記電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出する劣化コスト算出部と、
前記1以上の電池数毎に、前記重さに基づいて充電コストを算出する充電コスト算出部と、
前記劣化コスト及び前記充電コストにしたがって、前記移動体に搭載する搭載電池数を決定する決定部と、
前記搭載電池数を出力する出力部としてコンピュータを機能させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動の移動体において搭載する電池の数を出力する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、搭載する電池数が増減可能な車両が提案されている。このような車両においては、出発地から目的地までの距離及び車両諸元などを考慮して妥当な電池数を決定することが要求される。電池数が増大すれば航続距離が延びる一方、重量増により走行効率が悪化するため、妥当な電池数の決定は容易ではない。そこで、特許文献1には、車両諸元に基づいて複数のバッテリ増設パターンごとのバッテリ増設コストを算出し、発電機の諸元と経路情報とに基づいて複数のバッテリ増設パターンごとの燃料コストを算出し、バッテリ増設コストと燃料コストとに基づいて電池数を決定する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、電池数を決定する際に、電池の劣化コストは考慮されていないため、劣化コストを含む電池のトータルのコストを抑制するには、さらなる改善の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5205962号
【発明の概要】
【0005】
本開示は、電池の劣化コストを含む電池のトータルのコストが抑制されるように電池数を決定できる技術を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、電動の移動体の重さを取得し、前記重さは、前記移動体にて用いられる1以上の電池の重さを含み、前記1以上の電池数毎に、電池数に基づいて算出される前記移動体の消費電力量を取得し、前記1以上の電池数毎に、前記消費電力量と前記電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出し、前記1以上の電池数毎に、前記重さに基づいて充電コストを算出し、前記劣化コスト及び前記充電コストにしたがって、前記移動体に実際に搭載する搭載電池数を決定し、前記搭載電池数を出力する。
【0007】
本開示によれば、電池の劣化コストを含む電池のトータルのコストが抑制されるように電池数を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態1に係る情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る端末装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図3】劣化コスト算出情報及び充電コスト算出情報の一例を示す図である。
図4図1に示す電池管理装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図5図1に示すサーバの詳細な構成を示すブロック図である。
図6】車両情報テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図7】走行履歴情報テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図8】電池管理情報テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る端末装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態1において端末装置に表示される入力画面の一例を示す図である。
図11】実施の形態2に係るサーバ及び端末装置の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
図12】電力量情報テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図13】実施の形態2におけるメッセージ画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0010】
(本開示の基礎となる知見)
本発明者は、搭載される電池数が増減可能な移動体において、最適な電池数の決定方法について検討している。このような移動体において、従来では、出発地から目的地までの走行距離に基づいて移動体の必要消費電力量を算出し、必要消費電力量を賄うことが可能な電池数であって最小の電池数が最適な電池数として決定されていた。これは、電池数が減少するにつれて移動体が軽くなって消費電力量が減少し、この消費電力量の減少に伴って充電コストが低下するとの考えに基づいている。このように、従来では、最適な電池数を算出するにあたり、充電コストのみが考慮されていた。
【0011】
電池はDOD(depth of discharge)、すなわち、放電時のSOC範囲が広くなるにつれて、劣化が早まることが知られている。これは、DODが増大すると、電池内において活物質同士をつなぐバインダーに過大な応力がかかり、バインダーが活物質同士を切断してしまうことに起因する。電池数が増大すると各電池の負担が分散されるので、各電池のDODが減少し、各電池の劣化が抑制される。したがって、上述したように充電コストのみを考慮して最適な電池数を決定すると、電池の劣化を早める可能性がある。電池の劣化が早まると、電池の交換サイクルが早まり、長期で見た場合の電池のコストは増大する。
【0012】
以上の考察により、本発明者は、電池数に応じた充電コストと電池数に応じた劣化コストとを考慮に入れて、最適な電池数を決定すれば、電池のトータルのコストが抑制されるとの知見を得て、本開示を想到するに至った。
【0013】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、電動の移動体の重さを取得し、前記重さは、前記移動体にて用いられる1以上の電池の重さを含み、前記1以上の電池数毎に、電池数に基づいて算出される前記移動体の消費電力量を取得し、前記1以上の電池数毎に、前記消費電力量と前記電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出し、前記1以上の電池数毎に、前記重さに基づいて充電コストを算出し、前記劣化コスト及び前記充電コストにしたがって、前記移動体に実際に搭載する搭載電池数を決定し、前記搭載電池数を出力する。
【0014】
本構成によれば、1以上の電池数毎に、消費電力量と電池数とに基づいて電池の劣化コストが算出され、1以上の電池数毎に、移動体の重さに基づいて電池の充電コストが算出され、劣化コストと充電コストとにしたがって、搭載電池数が決定される。このように、本構成では、充電コストに加えて劣化コストが考慮されて搭載電池数が決定されているため、電池の劣化コストを含む電池のトータルのコストが抑制されるように電池数を決定できる。言い換えると、電池の消費電力を抑制しながら電池の劣化を抑制することができる。
【0015】
上記情報処理方法において、さらに、前記移動体の移動距離を取得し、前記消費電力量の取得では、前記移動距離と前記重さとから、前記1以上の電池数毎に前記消費電力量を算出することで、前記消費電力量を取得してもよい。
【0016】
本構成によれば、移動体の移動距離及び重さから、1以上の電池数毎に消費電力量が算出されるため、消費電力量を正確に算出できる。
【0017】
上記情報処理方法において、さらに、前記移動体の走行履歴を取得し、前記消費電力量の取得では、前記走行履歴から、前記1以上の電池数毎に前記移動体の移動距離に対する消費電力量を取得してもよい。
【0018】
本構成によれば、移動体の走行履歴から、1以上の電池数毎の移動距離に対する消費電力量が取得されているため、移動体の走行履歴から妥当な消費電力量を取得できる。
【0019】
上記情報処理方法において、前記劣化コストの算出では、さらに、前記1以上の電池数毎に、電池の残量を取得し、前記1以上の電池数毎の前記残量の合計と前記消費電力量とに基づいて前記劣化コストを算出してもよい。
【0020】
本構成によれば、消費電力量及び電池数に加えて、さらに1以上の電池数毎の電池の残量の合計に基づいて電池の劣化コストが算出されているため、より正確に劣化コストを算出できる。
【0021】
上記情報処理方法において、前記劣化コストの算出では、前記1以上の電池数毎に、1以上の電池のそれぞれに流れる電流に基づいて前記劣化コストを算出してもよい。
【0022】
本構成によれば、1以上の電池のそれぞれに流れる電流に基づいて劣化コストが算出されるため、劣化コストを正確に算出できる。
【0023】
上記情報処理方法において、前記搭載電池数の決定では、前記劣化コスト及び前記充電コストの合計にしたがって前記搭載電池数を決定してもよい。
【0024】
本構成によれば、劣化コスト及び充電コストの合計にしたがって搭載電池数が決定されているため、電池のトータルのコストから直接的に搭載電池数を決定できる。したがって、搭載電池数の決定処理の高速化又は負荷の低減ができる。
【0025】
上記情報処理方法において、前記移動距離の取得では、ユーザ入力に基づいて前記移動距離を取得してもよい。
【0026】
本構成によれば、ユーザに移動距離を入力させることによって移動距離を取得できる。
【0027】
上記情報処理方法において、前記移動距離の取得では、前記移動体の配車計画に基づいて算出された移動距離を取得してもよい。
【0028】
本構成によれば、配車計画に基づいて移動距離を算出することによって移動距離を取得できる。
【0029】
本開示は、このような情報処理方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させる情報処理プログラム、或いはこの情報処理プログラムによって動作する情報処理装置として実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る情報処理システム1の全体構成の一例を示す図である。情報処理システム1は、N(1以上の整数)個の電池パック34が着脱可能な移動体30を管理するシステムである。以下の説明において、情報処理システム1は、移動体30によって荷物を宅配する宅配システムに適用されているものとする。但し、これは一例であり情報処理システム1は宅配システム以外の例えばレンタカーを管理するレンタカーシステムに適用されてもよいし、シェアリングカーを管理するカーシェアリングシステムに適用されてもよい。
【0032】
情報処理システム1は、端末装置10、サーバ20、及び1以上の移動体30を含む。端末装置10及びサーバ20はネットワーク40を介して相互に通信可能に接続されている。端末装置10及び移動体30はネットワーク40を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク40は、例えばインターネットなどの広域通信網である。
【0033】
端末装置10は、例えば宅配システムの宅配拠点に設置されている。宅配拠点には宅配拠点が管轄するエリアに配達する荷物が預けられる。宅配拠点には荷物の宅配に従事する作業員がいる。作業員は、荷物を移動体30に積み込んだり、移動体30により荷物を配達したりする。なお、情報処理システム1がレンタカーシステム又はカーシェアリングシステムに適用される場合、宅配拠点に代えてレンタカー会社又はカーシェアリング会社の営業所が採用される。
【0034】
端末装置10は、例えば、タブレット端末及びスマートフォンなどの携帯端末又は据え置き型のコンピュータである。端末装置10は、移動体30に対して搭載する搭載電池数を報知する。宅配拠点の作業員は、端末装置10により報知された搭載電池数の電池パック34を移動体30に搭載する。
【0035】
サーバ20は、例えば1以上のコンピュータにより構成される。サーバ20は、移動体30の走行履歴を示す走行履歴情報、移動体30の車両情報、及び電池パック34の残量などを管理する。
【0036】
移動体30は、例えば電気自動車などの電動の移動体である。移動体30は、1以上の荷物を積載し、配達先に配達する。移動体30は、車両制御装置31、電池管理装置32、及びスイッチ33_1~33_N、電池パック34_1~34_N、電力線35、及び信号線36を含む。以下、スイッチ33_1,・・・,33_Nを特に区別しない場合、スイッチ33と記載する。また、電池パック34_1,・・・,34_Nを特に区別しない場合、電池パック34と記載する。
【0037】
車両制御装置31及び電池パック34_1~34_Nは電力線35を介して電気的に接続されている。電力線35は、電池パック34_1~34_Nに対応するN個の枝路35_1~35_Nを含む。電力線35は、枝路35_1~35_Nによって電池パック34_1~34_Nを並列接続する。信号線36は、車両制御装置31及び電池管理装置32間を電気的に接続すると共に、電池管理装置32と電池パック34_1~34_Nとを電気的に接続する。信号線36には、電池パック34が備えるセンサが検出した電流値及び電圧値などが流れる。
【0038】
車両制御装置31は、例えば、プロセッサ及びメモリなどを含むコンピュータであり、移動体30の全体制御を司る。電池管理装置32は、電池パック34を管理する。電池管理装置32は、電池パック34の残量などを検出し、ネットワーク40を介してサーバ20に送信する。電池管理装置32は、車両制御装置31から移動体30の走行に関する走行データを取得し、ネットワーク40を介してサーバ20に送信する。
【0039】
スイッチ33_1~33_Nは、それぞれ枝路35_1~35_Nに設けられており、電池パック34_1~34_Nに対応する。スイッチ33は、例えばリレー又は半導体スイッチなどである。スイッチ33は、電池管理装置32からの制御信号又は作業者の操作によって枝路35_1~35_Nを導通又は遮断する。
【0040】
電池パック34は、電池パック34を電力線35に着脱自在に接続するための端子37と、電池パック34を信号線36に着脱自在に接続するための端子38を備える。電池パック34は、例えばリチウムイオン電池などの充電可能な二次電池である。
【0041】
図2は、実施の形態1に係る端末装置10の詳細な構成を示すブロック図である。端末装置10は、プロセッサ11、通信部12、操作部13、メモリ14、及び表示部15を含む。
【0042】
プロセッサ11は、例えばCPUなどの電気回路である。プロセッサ11は、車両情報取得部111、移動距離取得部112、消費電力量算出部113、劣化コスト算出部114、充電コスト算出部115、及び電池数決定部116を含む。
【0043】
車両情報取得部111(第1取得部の一例)は、移動体30の重量などの諸元を含む車両情報を取得する。車両情報取得部111は、例えばサーバ20と通信部12を介して通信することによって車両情報を取得する。移動距離取得部112は、移動体30の移動距離を取得する。この移動距離は、例えば移動体30の走行ルートの移動距離である。
【0044】
ここでは、移動距離取得部112は、例えば操作部13に対して作業員(ユーザ)が入力した情報に基づいて移動距離を算出することによって移動距離を取得する。作業員は、例えば操作部13を操作することによって、出発地(例えば、宅配拠点)、配達先である経由地、及び目的地(例えば、宅配拠点)などの情報を入力する。移動距離取得部112は、入力されたこれらの情報を所定の経路探索システムに入力することによって走行ルート及びその走行ルートの移動距離を取得すればよい。この経路探索システムは、プロセッサ11が備えていてもよいし、ネットワーク40に接続された外部サーバが備えていてもよい。
【0045】
消費電力量算出部113(第2取得部の一例)は、移動体30に搭載する1以上の電池パック34の個数を示す電池数n毎に、電池数nに基づいて算出される移動体30の消費電力量を取得する。ここで、電池数nとは、消費電力量を電池パック34の個数毎に算出するために便宜上使用されるパラメータである。nは1以上の整数である。
【0046】
移動体30の消費電力量は、移動体30の駆動力により決定される。この駆動力は運動の第二法則からF=ma(m:質量、a:加速度)により決定される。このように移動体30の消費電力量は移動体30の重量(質量)に依存するため、この重量が大きいほど消費電力量は大きくなる。また、移動体30の重量は電池数nが増大するにつれて増大する。したがって、消費電力量算出部113は、車両情報取得部111により取得された車両情報に含まれる移動体30の重量に、電池数nに応じた重さの増加量を加算することで、移動体30の総重量を算出する。そして、消費電力量算出部113は、この総重量を、上述の駆動力を求める演算式に入力して移動体30の駆動力を求める。そして、消費電力量算出部113は、求めた駆動力を、消費電力量を求めるために予め定められた電力量算出情報に入力することによって消費電力量を算出すればよい。この電力量算出情報は、例えば、駆動力と消費電力量との対応関係を示す予め定められた関数又はテーブルである。
【0047】
実際には、移動体30の駆動力を求める演算式(F=ma)には、ma以外の空気抵抗などに依存する成分が含まれるが、この成分は、質量に依存しないため駆動力を求める演算式においてオフセットとみなせる。したがって、駆動力を求める演算式は、ma以外の空気抵抗などに依存する成分をオフセットとして含むものであってもよい。なお、電力量算出情報は電池数nを入力すれば消費電力量が求まる関数又はテーブルであってもよい。
【0048】
移動体30の移動距離が増大するにつれて消費電力量は増大する。そこで、消費電力量算出部113は、電力量算出情報によって求めた消費電力量を、移動距離取得部112により取得された移動距離に応じて増大させて、最終的な移動体30の消費電力量を算出してもよい。
【0049】
さらに、電力量算出情報は、移動体30の総重量及び移動距離と、消費電力量との対応関係を予め対応付けた関数又はテーブルであってもよい。この場合、消費電力量算出部113は、総重量及び移動距離を電力量算出情報入力することによって消費電力量を算出してもよい。
【0050】
さらに、消費電力量算出部113は、荷物の積載量及び移動体30に搭乗する人物の重量を考慮に入れて総重量を算出し、この総重量を用いて消費電力量を算出してもよい。
【0051】
劣化コスト算出部114は、電池数n毎に、消費電力量と電池数nとに基づいて電池パック34の劣化コストを算出する。具体的には、劣化コスト算出部114は、消費電力量算出部113により算出された消費電力量と、電池数n毎の電池パック34のトータルの電池総容量とを比較することで、消費電力量を賄うことができる最小電池数n_minを算出する。
【0052】
劣化コスト算出部114は、この最小電池数n_minから移動体30が搭載可能な最大の電池数(搭載可能電池数n_max)までの範囲内において、電池数n毎の劣化コストを算出する。
【0053】
この場合、劣化コスト算出部114は、例えば、電池数nと、電池数nのそれぞれに対応する劣化コストとの対応関係が予め定められた劣化コスト算出情報601(図3参照)を用いて劣化コストを算出する。劣化コストとは、電池パック34の劣化の度合いを見積もった値である。劣化コストは値が増大するほど電池パック34の劣化の度合いが大きいことを示す。
【0054】
図3は、劣化コスト算出情報601及び充電コスト算出情報602の一例を示す図である。図3において劣化コスト算出情報601Bについては実施の形態2で説明し、ここでは、劣化コスト算出情報601Aを用いて説明する。図3に示すように、劣化コスト算出情報601Aは、電池数nがn=1のときに劣化コストが最大であり、電池数nがn=1,2,・・・と増大するにつれて劣化コストが漸次に減少する特性を持つ。これは、電池数nが増大するにつれて、負荷が電池パック34_1~34_Nに分散されるため、1個あたりの電池パック34のDOD(depth of discharge)が低下するからである。また、劣化コスト算出情報601Aにおいては、電池数nが増大するにつれて劣化コストの減少量が小さくなっており、劣化コストは電池数nの増大にともなって非線形に減少していることが分かる。さらに、電池数nがある数以上になると、劣化コストの減少はほとんど見込めないことが分かる。
【0055】
電池パック34は、活物質同士をつなぐバインダーを含む。バインダーは、DODが増大するにつれてバインダーに加わる応力が増大し、その応力がある大きさ以上になると、活物質同士を切断する。これにより、電池パック34の劣化は進行する。このように、バインダーにはある程度の応力が加わらなければ活物質同士を切断しないため、活物質を切断したバインダーの数はDODに対して線形に増大するわけではなく非線形に増大する。その結果、劣化コストは、電池数nの減少に伴って非線形に増大する。劣化コスト算出部114は、劣化コスト算出情報601Aを参照することにより、電池数n毎の劣化コストを算出する。
【0056】
なお、劣化コスト算出部114は、さらに、電池数n毎に、電池パック34の残量を取得し、電池数n毎の残量の合計と消費電力量とに基づいて劣化コストを算出してもよい。例えば、劣化コスト算出部114は、移動体30に対して搭載可能な電池パック34が掲載された電池リストの中からn個の電池パック34をピックアップし、n個の電池パック34のそれぞれの電池ID(識別子)を指定して、n個の電池パック34の残量をサーバ20に問い合わせる。
【0057】
サーバ20は、図8に示す電池管理情報テーブル233を参照し、問い合わせに係るn個の電池パック34のそれぞれの残量を取得して、端末装置10に送信する。これにより、充電コスト算出部115は、電池数nのそれぞれの残量を取得する。そして、充電コスト算出部115は、取得した電池数nのそれぞれの残量を合計することで、電池数nのトータルの電池総容量を算出すればよい。そして、劣化コスト算出部114は、この電池総容量と消費電力量算出部113により算出された消費電力量とを比較することで、最小電池数n_minを算出すればよい。
【0058】
或いは、以下のケースも挙げられる。電池パック34は満充電で使用を開始するよりも満充電より低い残量(例えば、SOCが80%、70%、60%など)で使用を開始した方が、劣化が抑制されることがある。以下、この満充電より低い残量を「開始残量」と呼ぶ。そのため、使用後の電池パック34は、開始残量になるように充電器によって充電された後に移動体30に搭載されることもある。この場合、劣化コスト算出部114は、電池数n毎の電池パック34のトータルの電池総容量を算出するに際して、開始残量に電池数nを乗じることによって電池総容量を算出すればよい。そして、劣化コスト算出部114は、この電池総容量と消費電力量算出部113により算出された消費電力量とを比較することで、最小電池数n_minを算出すればよい。この開始残量は、SOCが100%であってもよい。
【0059】
充電コスト算出部115は、1以上の電池数n毎に、移動体30の重さに基づいて充電コストを算出する。充電コストとは、移動体30の充電に必要なコストを見積もった値であり、電費が低いほど充電コストの値は増大する。電費とは、電気自動車などの電動の移動体30の電力消費率であり、例えば電力1キロワット時当たりの走行キロ数(km/kWh)で表される。したがって、充電コストの値が増大するにつれて電費が低くなる。
【0060】
本実施の形態では、充電コスト算出部115は、電池数nと、電池数nのそれぞれに対する充電コストとの対応関係が予め定められた充電コスト算出情報602(図3参照)を用いて充電コストを算出する。
【0061】
図3に示すように、充電コスト算出情報602は、電池数nがn=1,2,・・・と増大するにつれて、例えば漸次に充電コストが増大する特性を持つ。図3の例では、充電コスト算出情報602は電池数nに対して線形に増大している。これは、電池数nが増大するにつれて移動体30の総重量が増大し、それに伴って電費が低下し、充電コストが増大するからである。充電コスト算出情報602は、この電池数nの増大に伴う総重量の増大による移動体30の電費の低下を考慮に入れて予め算出されている。そのため、充電コスト算出部115が充電コスト算出情報602を参照して得た電池数nに対応する充電コストは、移動体30の重さに基づいて算出された充電コストを示すことになる。
【0062】
電池数決定部116(決定部及び出力部の一例)は、劣化コスト算出部114が算出した劣化コストと、充電コスト算出部115が算出した充電コストとにしたがって、移動体30に実際に搭載する搭載電池数を決定する。
【0063】
図3に示す劣化コスト算出情報601が示す劣化コストと、充電コスト算出情報602が示す充電コストとは、両コストの範囲が同じになるように正規化されている。例えば、劣化コストにおいては、値が0~100%の範囲内になり、充電コストにおいては、値が0~100%の範囲内になるように正規化されている。
【0064】
そこで、充電コスト算出部115は、劣化コスト算出部114が電池数n毎に算出した劣化コストと、充電コスト算出部115が電池数n毎に算出した充電コストとを電池数n毎に加算することで、電池数n毎にトータルコストを算出する。そして、充電コスト算出部115は、電池数n毎に算出したトータルコストの最小値を搭載電池数として決定すればよい。
【0065】
図3を参照して劣化コストのみを考慮して搭載電池数を決定する場合について考察する。ここでは、消費電力量を賄うことが可能な最小電池数n_minが2であったとする。劣化コスト算出情報601Aは電池数nの増大に伴って減少する。図3の例では、搭載可能電池数n_maxが10であるため、電池数nが2以上且つ10以下の範囲において劣化コストが最小になる電池数nはn=10である(604)。したがって、劣化コストのみを考慮した場合の搭載電池数は10となる。しかし、充電コストの観点からすると、電池数n=10は充電コストが最大になっているため、必ずしも妥当ではないことが分かる。
【0066】
次に、充電コストのみを考慮して搭載電池数を決定する場合について考察する。充電コスト算出情報602は、電池数nの増大に伴って充電コストが増大する。したがって、この場合の搭載電池数は、消費電力量を賄うことができる電池数nのうち充電コストを最小とする電池数nはn=2である(605)。しかし、劣化コストの観点からすると、電池数n=2は劣化コストが大きいため妥当ではない。
【0067】
そこで、電池数決定部116は、劣化コストと充電コストとのトータルコストが最小となる電池数nを搭載電池数として決定する。図3において、トータルコストと電池数nとの対応関係を示すトータルコスト情報603は、電池数nがn=3のときにトータルコストが最小になっている。そこで、図3の例では、電池数決定部116は、搭載電池数として3を決定する。
【0068】
ここでは、劣化コストと充電コストとが正規化されていたため、両コストの和がトータルコストとして採用されたが、本開示はこれに限定されない。例えば、両コストが正規化されていない場合、電池数決定部116は、劣化コストと充電コストとのそれぞれを正規化する係数を劣化コストと充電コストとのそれぞれに乗算して加算することによって電池数n毎のトータルコストを算出してもよい。或いは、両コストが正規化されていない場合、電池数決定部116は、劣化コスト及び充電コストと、トータルコストとの対応関係を示す関数を用いて電池数n毎のトータルコストを算出してもよい。
【0069】
電池数決定部116は、上記の処理によって決定した搭載電池数を出力する。この場合、電池数決定部116は、決定した搭載電池数を示すメッセージを生成し、表示部15に表示させることによって、搭載電池数を出力すればよい。但し、これは一例であり、電池数決定部116は、決定した搭載電池数を示すメッセージを表示部15に表示させることに代えて又は加えて搭載電池数を報知する音声メッセージを図略のスピーカから出力してもよい。
【0070】
通信部12は、例えば端末装置10をネットワーク40に接続するための通信回路である。通信部12は、サーバ20から送信された車両情報を受信する。さらに、通信部12は、例えば電池パック34のSOCなどの電池管理情報をサーバ20から受信してもよい。
【0071】
操作部13は、作業員からの指示を受け付ける。例えば、操作部13は、作業員から移動体30の荷物の積載量を示す情報及び移動体30の移動距離を算出するために必要な情報(例えば、宅配拠点及び配達先などの位置情報など)を受け付ける。端末装置10がスマートフォン又はタブレット端末などの携帯情報端末である場合、操作部13は例えばタッチパネルで構成される。端末装置10が据え置き型のコンピュータである場合、操作部13は例えばキーボード及びマウスなどの入力装置で構成される。
【0072】
メモリ14は、例えばハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブなどの不揮発性のメモリである。メモリ14は、劣化コスト算出情報601及び充電コスト算出情報602を記憶する。
【0073】
表示部15は、電池数決定部116が決定した搭載電池数を示すメッセージなどを表示する。表示部15は、例えば液晶パネル又は有機ELパネルなどの表示装置である。
【0074】
図4は、図1に示す電池管理装置32の詳細な構成を示すブロック図である。電池管理装置32は、プロセッサ300及び通信部322を含む。プロセッサ300は、例えばCPUなどの電気回路である。プロセッサ300は、電池監視部301、電池状態推定部302、電池状態通知部303、及び電池制御部304を含む。
【0075】
電池監視部301は、移動体30に搭載された各電池パック34を監視する。ここでは、各電池パック34の電流及び電圧などが監視される。電池監視部301は、電池パック34が備える電流センサ及び電圧センサが検出したセンシングデータを所定のサンプリング周期で取得することで各電池パック34を監視すればよい。
【0076】
電池状態推定部302は、電池監視部301による各電池パック34の監視結果に基づいて各電池パック34の状態を所定のサンプリング周期で推定する。ここで推定される各電池パック34の状態は、例えば各電池パック34のSOC(State of charge)である。例えば、電池状態推定部302は、各電池パック34について、電池監視部301が取得した電流及び電圧を所定の演算式に入力することで各電池パック34のSOCを算出すればよい。
【0077】
電池状態通知部303は、電池状態推定部302が推定した各電池パック34の状態を通信部322を介してサーバ20に送信する。この場合、電池状態通知部303は、各電池パック34のSOCを電池IDと対応付けた電池状態情報を所定のサンプリング周期で通信部322を介してサーバ20に送信すればよい。これにより、サーバ20は、各電池パック34の現在の残量を監視できる。
【0078】
電池制御部304は、電池監視部301の監視結果から各電池パック34が異常であるか否かを判定し、異常である場合、該当する電池パック34に対応するスイッチ33を遮断する。さらに、電池制御部304はある電池パック34が異常であると判定した場合、そのことを示す情報を車両制御装置31及びサーバ20に出力してもよい。この場合、車両制御装置31は該当する電池パック34が異常であることを示すメッセージを移動体30の運転席に設けられたディスプレイに表示すればよい。
【0079】
さらに、電池制御部304は、電池パック34の残量が所定値以下になった場合、移動体30を省電力モードで駆動させるように車両制御装置31に制御コマンドを出力してもよい。省電力モードとは、例えば移動体30のモータの消費電力を通常の消費電力よりも小さくして、電池パック34の残量の減少量を抑制するモードである。
【0080】
通信部322は、例えば電池管理装置32をネットワーク40に接続する通信回路である。通信部322は、各電池パック34の状態監視情報を所定のサンプリング周期でサーバ20に送信する。
【0081】
図5は、図1に示すサーバ20の詳細な構成を示すブロック図である。サーバ20は、プロセッサ21、通信部22、及びメモリ23を含む。プロセッサ21は、例えばCPU、FPGAなどの電気回路である。プロセッサ21は、移動体管理部211及び電池管理部212を含む。
【0082】
移動体管理部211は、車両情報テーブル231及び走行履歴情報テーブル232を管理する。図6は、車両情報テーブル231のデータ構成の一例を示す図である。車両情報テーブル231は、各移動体30の車両情報を記憶するデータベースである。車両情報テーブル231は、移動体ID、重量、前面投影面積、及び搭載可能電池数が対応付けられた車両情報を記憶する。移動体IDは移動体30の識別子である。重量は移動体30の車体の重さである。例えば、移動体30が自動車の場合、重量は人物及び荷物が搭載されていない状態での移動体30の重さを指す。前面投影面積は、移動体30を正面に投影したときにできる陰の面積である。前面投影面積は、空気抵抗の目安となる。前面投影面積は、上述した移動体30の駆動力を求める演算式においてオフセットとなる。搭載可能電池数は、移動体30が搭載可能な最大の電池数nである。ここでは、移動体ID「EV_1」の移動体30の搭載可能電池数として「10」が登録されている。
【0083】
移動体管理部211は、例えば通信部22を用いて各移動体30から車両情報を取得して車両情報テーブル231に記憶させればよい。或いは、移動体管理部211は、サーバ20の管理者が図略の入力装置を用いて入力した車両情報を車両情報テーブル231に記憶させてもよい。なお、車両情報テーブル231が記憶する車両情報は、少なくとも重量及び搭載可能電池数を含んでいれば、他の情報を含んでいてもよい。
【0084】
図7は、走行履歴情報テーブル232のデータ構成の一例を示す図である。走行履歴情報テーブル232は、移動体30の走行履歴を示す走行履歴情報を記憶するテーブルである。走行履歴情報は移動体30の1回の走行時における走行内容を示す。
【0085】
具体的には、走行履歴情報テーブル232は、移動体ID、タイムスタンプ、搭載電池数、荷物の搭載量、移動距離、及び消費電力量が対応付けられた走行履歴情報を記憶する。荷物の搭載量の代わりに車両の総重量が記憶されてもよい。移動体IDは図7に示す移動体IDと同じである。タイムスタンプは、移動体30が実際に走行した時間を示す。ここでは、タイムスタンプには走行開始時刻と走行終了時刻とが含まれている。搭載電池数は、移動体30が走行時に搭載した電池数である。荷物の搭載量は、移動体30が搭載する荷物の重量である。移動距離は移動体30の走行距離である。消費電力量は移動体30が消費した電力量である。
【0086】
移動体管理部211は、例えば、移動体30が走行を開始すると、走行開始時刻から走行終了時刻までの間に移動体30から所定のサンプリング周期で送信される走行データを集計することで、移動距離及び消費電力量を算出し、走行履歴情報テーブル232に記憶させればよい。
【0087】
図5に参照を戻す。電池管理部212は、電池管理情報テーブル233を管理する。図8は、電池管理情報テーブル233のデータ構成の一例を示す図である。電池管理情報テーブル233は、各電池パック34の基本情報及び状態などを含む電池管理情報を記憶する。電池管理情報テーブル233は、電池ID、残量、及び最大容量が対応付けられた電池管理情報を記憶する。電池IDは、各電池パック34の識別子である。残量は各電池パック34の現在の容量である。ここでは、残量としてSOCが採用されている。最大容量は各電池パック34の充電可能な最大の容量である。
【0088】
電池管理部212は、例えば電池管理装置32から所定のサンプリング周期で送信される各電池パック34の電池状態情報に含まれる残量を電池管理情報テーブル233に書き込むことによって、電池管理情報を管理する。電池管理部212は、電池管理装置32と通信することで各電池パック34の最大容量を取得して電池管理情報テーブル233に書き込んでもよいし、サーバ20の管理者が図略の入力装置を用いて入力した最大容量を電池管理情報テーブル233に書き込んでもよい。
【0089】
次に、端末装置10の処理について説明する。図9は、実施の形態1に係る端末装置10の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、ある1台の移動体30の搭載電池数を算出するに際して適用されるフローチャートである。以下、この移動体30を対象移動体と記述する。
【0090】
ステップS1では、車両情報取得部111は、サーバ20と通信することで対象移動体の車両情報を取得する。これにより、図6に車両情報テーブル231の中から、対象移動体に関する重量及び搭載可能電池数などが取得される。なお、図10に示す入力画面1001において、荷物積載量(kg)が入力された場合、車両情報取得部111は、入力された荷物積載量を車両情報として取得してもよい。さらに、このとき、作業員によって対象移動体に搭乗する人物の重量が入力された場合、この人物の重量を車両情報として取得してもよい。
【0091】
ステップS2では、移動距離取得部112は、作業員が入力した出発地、経由地、及び目的地などの情報を所定の経路検索システムに入力することで、対象移動体の走行ルートとその走行ルートの移動距離とを取得する。
【0092】
ステップS3では、消費電力量算出部113は、電池数nをn=1に設定する。ステップS4では、消費電力量算出部113は、ステップS1で取得した重量と、電池数nに応じた電池パック34の重量との合計などから対象移動体の総重量を算出し、算出した総重量と、ステップS2で取得した移動距離とに基づいて対象移動体の消費電力量を算出する。消費電力量の詳細は上述したため、ここでは説明を省く。総重量は、例えば、移動体30の重量及び電池数nに応じた電池パック34の重量の合計値であってもよいし、この合計値にさらに荷物積載量及び搭乗人物の重量などが加えられた値であってもよい。
【0093】
ステップS5では、劣化コスト算出部114は、電池数nに応じた電池総容量を算出する。この場合、上述した各電池パック34の残量を考慮して電池総容量を算出する態様が採用されてもよいし、上述した開始残量を考慮して電池総容量を算出する態様が採用されてもよい。
【0094】
ステップS6では、劣化コスト算出部114は、ステップS4で算出された消費電力量がステップS5で算出された電池総容量よりも小さいか否かを判定する。消費電力量が電池総容量以上と判定された場合(ステップS6でNO)、劣化コスト算出部114は、電池数nを1インクリメントし(ステップS7)、処理をステップS4に戻す。この場合、ステップS4において、消費電力量算出部113は、1インクリメントされた電池数nに応じた電池パック34の重量の合計を考慮して対象移動体の総重量を算出し、上述した手法を用いて消費電力量を算出すればよい。
【0095】
ステップS6において、消費電力量が電池総容量よりも小さいと判定された場合(ステップS6でYES)、処理はステップS8に進む。ステップS6でYESと判定された時点における電池数nが上述した最小電池数n_minとなる。
【0096】
ステップS8では、劣化コスト算出部114は、電池数nが対象移動体の搭載可能電池数n_max以下であるか否かを判定する。電池数nが対象移動体の搭載可能電池数n_max以下の場合(ステップS8でYES)、劣化コスト算出部114は、電池数nにおける劣化コストを算出する(ステップS9)。この場合、劣化コスト算出部114は、図3に示す劣化コスト算出情報601Aを参照し、電池数nに対応する劣化コストを特定することによって、劣化コストを算出すればよい。
【0097】
ステップS10では、充電コスト算出部115は、電池数nにおける充電コストを算出する。この場合、充電コスト算出部115は、図3に示す充電コスト算出情報602を参照し、電池数nに対応する充電コストを特定することによって、充電コストを算出すればよい。
【0098】
ステップS11では、電池数決定部116は、ステップS9で算出した劣化コストと、ステップS10で算出した充電コストとを加算し、電池数nにおけるトータルコストを算出する。
【0099】
ステップS12において、電池数決定部116は、電池数nが搭載可能電池数n_maxより小さいか否かを判定する。電池数nが搭載可能電池数n_maxより小さい場合(ステップS12でYES)、電池数nがインクリメント可能であるため、電池数決定部116は、電池数nを1インクリメントし(ステップS13)、処理をステップS9に戻す。以上、ステップS9~ステップS13のループの繰り返しにより、最小電池数n_minから搭載可能電池数n_maxまでの範囲内において電池数n毎のトータルコストが算出される。
【0100】
ステップS8において、電池数nが搭載可能電池数n_maxより大きい場合(ステップS8でNO)、電池数決定部116は、異常であることを作業員に報知する(ステップS14)。ここで異常が報知されるのは、搭載可能電池数n_maxの電池パック34を対象移動体に搭載したとしても、消費電力量を賄うことができないからである。ここでの報知の態様としては、例えば、異常であることを示すメッセージを表示部15に表示したり、音声メッセージを図略のスピーカから出力したりする態様が採用できる。なお、この報知において、搭載可能電池数n_maxの電池パック34を対象移動体に搭載したとしても、消費電力量を賄うことができない旨のメッセージが出力されてもよい。ステップS14の処理が終了すると図9に示すフローは終了する。
【0101】
ステップS12において、電池数nが搭載可能電池数n_max以上の場合(ステップS12でNO)、電池数決定部116は、電池数n毎のトータルコストの中からトータルコストが最小になる電池数nを決定し、その電池数nを搭載電池数として決定する(ステップS15)。
【0102】
ステップS16では、電池数決定部116は、搭載電池数を作業員に報知する。この場合、電池数決定部116は、搭載電池数を示すメッセージを表示部15に出力したり、搭載電池数を示す音声メッセージを図略のスピーカから出力したりすればよい。以上により図9に示すフローは終了する。
【0103】
図10は、実施の形態1において端末装置10に表示される入力画面1001,1002,1003,1004の一例を示す図である。入力画面1001は、対象移動体を選択するための入力画面であり、例えば図9のステップS1において、車両情報取得部111により端末装置10の表示部15に表示される。入力画面1001は、車両入力欄R1、荷物積載量入力欄R2、及び車両情報確定ボタンB1を含む。車両入力欄R1は、対象移動体の識別情報を入力する欄である。ここでは、「EV-1」、「EV-2」など、端末装置10が設置された宅配拠点が管理する移動体30の移動体IDが一覧表示されている。作業員は、車両入力欄R1に一覧表示された移動体IDから任意の移動体IDを選択する操作を入力することによって対象移動体を選択する。
【0104】
車両入力欄R1には、「新規登録」欄が設けられている。作業員により「新規登録」欄が選択されると、移動体IDを入力する画面(図略)が表示される。作業員はこの画面を通じて新規の移動体30を登録できる。以後、登録された移動体30の移動体IDが車両入力欄R1に一覧表示される。
【0105】
荷物積載量入力欄R2は、車両入力欄R1で選択された移動体30に積載される荷物の重量を入力する欄である。作業員は例えば該当する移動体30が配達する荷物の総重量を荷物積載量入力欄R2に入力する。なお、荷物積載量入力欄R2に対する入力は任意であり、必須ではない。車両情報確定ボタンB1は、車両入力欄R1及び荷物積載量入力欄R2に対する入力が終了された場合に作業員により選択されるボタンである。車両情報確定ボタンB1を選択する操作が入力されると、入力画面1002が表示部15に表示される。
【0106】
入力画面1002は、対象移動体の移動距離を間接的に入力するための画面であり、例えば図9のステップS2において移動距離取得部112により端末装置10の表示部15に表示される。
【0107】
入力画面1002には、タブ欄R21、目的地入力欄R22、戻るボタンB21、及び距離確定ボタンB22を含む。タブ欄R21には入力画面1002の表示と入力画面1004の表示とを切り替えるためのタブが表示される。タブ欄R21において、作業員により「目的地」タブを選択する操作が入力されると、移動距離取得部112は、入力画面1002を表示部15に表示する。一方、タブ欄R21において、作業員により「直接」タブを選択する操作が入力されると、移動距離取得部112は、入力画面1004を表示部15に表示する。
【0108】
目的地入力欄R22は、対象移動体の目的地及び経由地を入力するための欄である。ここでは、対象移動体の目的地を入力する欄と経由地を入力する欄とが含まれている。作業員は、目的地を入力する欄に対象移動体の目的地を入力し、経由地を入力する欄に対象移動体の経由地を入力する。作業員は、目的地を入力する欄及び経由地を入力する欄に直接、位置情報(例えば、住所又は緯度及び軽度)を入力してもよいし、地図画面上から目的地及び経由地となる位置を指定することで、目的地及び経由地の位置情報を入力してもよい。この場合、作業員は、「地図から選択」欄を選択する操作を入力する。そうすると、表示部15に地図画面が表示され、作業員はその地図画面上から目的地及び経由地を指定する操作を入力することで、目的地及び経由地の位置情報を入力できる。
【0109】
目的地入力欄R22にはさらに「+経由地追加」欄が設けられている。作業員は「+経由地追加」欄を選択する操作を入力すると、追加する経由地を入力するための入力欄(図略)が目的地入力欄R22に表示される。作業員は、この入力欄に経由地の位置情報を入力することができる。なお、対象移動体が宅配拠点を出発して、1以上の配達先を経由して宅配拠点に戻る走行ルートを移動する場合、目的地は例えば宅配拠点となり、経由地は配達先となる。
【0110】
作業員による目的地入力欄R22への入力が終了すると、移動距離取得部112は、入力された目的地及び経由地を公知の経路探索システムに入力して、対象移動体の移動ルート及び移動距離を算出する。算出された移動距離は、目的地入力欄R22の下部の「ルートで約xxxkmです。」と記載された欄に表示される。
【0111】
距離確定ボタンB22は、対象移動体に対する移動距離が確定した場合に作業員により選択されるボタンである。距離確定ボタンB22を選択する操作が入力されると、表示部15には入力画面1003が表示される。戻るボタンB21は入力画面1002を入力画面1001に戻すためのボタンである。
【0112】
入力画面1004は、対象移動体の移動距離を直接的に入力する画面である。入力画面1004は、タブ欄R41、距離入力欄R42、戻るボタンB41、及び距離確定ボタンB42を含む。タブ欄R41はタブ欄R21と同じである。距離入力欄R42は作業員が直接的に、対象移動体の移動距離を入力する欄である。作業員は例えば外部の経路探索システムなどから入手した最適ルートの移動距離を距離入力欄R42に入力する。戻るボタンB41は戻るボタンB21と同じである。距離確定ボタンB42は、距離確定ボタンB22と同じである。
【0113】
入力画面1003は、図9のフローによって最終的に決定された搭載電池数を作業員に報知する入力画面であり、例えば図9のステップS16において表示される。
【0114】
この例では、対象移動体である移動体IDが「EV-1」の移動体30に対して荷物をxxxkg搭載し、xxxkm走行したときの搭載電池数として「3個」が表示される。また、この表示の下には最低電池数が2個であることが表示されている。この最低電池数は、消費電力量を賄うことが可能な最小電池数n_minである。
【0115】
戻るボタンB31は入力画面1003を入力画面1002又は入力画面1004に戻すボタンである。TOPボタンB32は、入力画面1003を入力画面1001に戻すボタンである。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態によれば、劣化コストに加えて充電コストが考慮されて搭載電池数が決定されているため、電池パック34のトータルコストが抑制されるように電池数を決定できる。
【0117】
(実施の形態2)
実施の形態2は、サーバ20Aが主体となって搭載電池数を決定するものである。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0118】
図11は、実施の形態2に係るサーバ20A及び端末装置10Aの詳細な構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る情報処理システム1の全体構成は図1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0119】
サーバ20Aは、プロセッサ21A、通信部22、及びメモリ23Aを含む。プロセッサ21Aは、図5で説明した移動体管理部211及び電池管理部212の他、配車計画部213、車両情報取得部214、移動距離取得部215、消費電力量算出部216、劣化コスト算出部217、充電コスト算出部218、及び電池数決定部219を含む。
【0120】
メモリ23Aは、図5で説明した車両情報テーブル231、走行履歴情報テーブル232、及び電池管理情報テーブル233の他、電力量情報テーブル234、劣化コスト算出情報235、及び充電コスト算出情報236をさらに記憶する。
【0121】
移動体管理部211は、走行履歴情報テーブル232に記憶された走行履歴情報に基づいて電力量情報テーブル234を作成する。
【0122】
図12は、電力量情報テーブル234のデータ構成の一例を示す図である。電力量情報テーブル234は、各移動体30について、電池数n毎の移動距離の範囲及び消費電力量が対応付けられた電力量情報を記憶するテーブルである。
【0123】
電力量情報テーブル234は、移動体ID、電池数、荷物の搭載量の範囲、移動距離の範囲、及び消費電力量を含む。移動体IDは、移動体30の識別子である。電池数は移動体30に搭載される電池数である。荷物の搭載量の範囲は、移動体30に搭載される荷物の搭載量の範囲である。荷物の搭載量の範囲としては、例えば予め定められた所定量の範囲が採用される。荷物の搭載量の範囲は、例えば0kg超L1kg未満、L1kg以上L2kg未満、L2kg以上L3kg未満というように、所定量(例えば100kg、150kg、200kgなど)の範囲毎に分類されてもよい。或いは、荷物の搭載量の範囲は、例えば軽量(例えば0kg超100kg未満に相当)、中量(例えば100kg以上200kg未満に相当)、重量(例えば200kg以上に相当)などと表現されてもよい。移動距離の範囲は移動体30の移動距離の範囲である。この移動距離の範囲としては、例えば予め定められた所定距離の範囲が採用される。移動距離の範囲は、例えば0km超A1km未満、A1km以上A2km未満、A2km以上A3km未満というように、所定距離(例えば1km、5km、10kmなど)の範囲毎に分類されてもよい。或いは、移動距離の範囲は、例えば近距離(例えば0km超5km未満に相当)、中距離(例えば5km以上20km未満に相当)、長距離(例えば20km以上に相当)などと表現されてもよい。消費電力量は該当する電池数の電池パック34が搭載された移動体30が該当する移動距離の範囲内で移動したときに消費した消費電力量の平均値である。
【0124】
移動体管理部211は、図7に示す走行履歴情報テーブル232に記憶された走行履歴情報を、移動体ID、搭載電池数、荷物の搭載量の範囲、及び移動距離の範囲の組合せ毎に分類する。移動体管理部211は、分類した組合せについて、消費電力量のそれぞれの平均値を算出する。これにより、移動体30のそれぞれについて、電池数、荷物の搭載量の範囲及び移動距離の範囲の組合せ毎の消費電力量の平均値が得られる。移動体管理部211は、算出した消費電力量の平均値を電力量情報テーブル234の該当する消費電力量の欄に書き込む。
【0125】
以上の処理が移動体30毎に行われ、電力量情報テーブル234が生成される。なお、電力量情報テーブル234が記憶する移動距離及び消費電力量は、該当する移動体30の走行履歴情報が走行履歴情報テーブル232に追加される毎に更新されてもよいし、該当する移動体30の一定個数分の走行履歴情報が走行履歴情報テーブル232に追加される毎に更新されてもよい。また、電力量情報テーブル234のうちの消費電力量は、走行履歴情報のうちの電池搭載数、荷物の搭載量、及び移動距離を訓練データとし消費電力量をリファレンスデータとして機械学習を用いて訓練された機械学習モデルを用いて算出されてもよい。この場合、移動体単体、移動体の種類、又は属性が類似する移動体のグループ毎に、機械学習モデルが訓練される。また、電池の種類毎に、機械学習モデルが訓練されてもよい。この場合、走行履歴情報に、搭載される電池の種類が追加される。
【0126】
電池管理部212の処理の詳細は、図5に示す電池管理部212と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0127】
配車計画部213は、サーバ20Aが管理対象とする移動体30のそれぞれに対する配車計画を作成する。配車計画は、例えば各移動体30が配達するべき荷物及び配達する時間帯(例えば、午前又は午後など)を定めた情報である。さらに、配車計画には、各移動体30が配達するべき荷物の総重量が含まれる。
【0128】
配車計画部213は、例えば、全ての荷物の配達先の情報から各宅配拠点が取り扱うべき荷物を割り当てると共に、各宅配拠点において各移動体30が配達する荷物を割り当てる。この場合、配車計画部213は、例えば、各移動体30の荷物の積載能力と各荷物の希望配達時間などを考慮に入れて、各移動体30の負担が平準化されるように、配車計画を作成すればよい。
【0129】
車両情報取得部214は、図2に示す車両情報取得部111と同様、移動体30の車両情報をメモリ23Aが記憶する車両情報テーブル231から取得する。
【0130】
移動距離取得部215は、配車計画部213において作成された各移動体30の配車計画にしたがって、各移動体30の最適な走行ルート及びその走行ルートの移動距離を算出する。この場合、移動距離取得部215は、各移動体30の配車計画が示す配達先及び配達時刻などを経路探索システムに入力することによって、各移動体30の走行ルート及び移動距離を取得すればよい。
【0131】
消費電力量算出部216は、図2に示す消費電力量算出部113と同様、各移動体30の消費電力量を算出する。但し、本実施の形態では、消費電力量算出部216は、走行履歴情報テーブル232に所定数以上の走行履歴情報が蓄積され、蓄積された走行履歴情報に基づいて電力量情報テーブル234が算出された場合、電力量情報テーブル234を用いて電力量情報を算出してもよい。電力量情報テーブル234を用いた消費電力量の算出については後述する。
【0132】
劣化コスト算出部217、充電コスト算出部218、及び電池数決定部219のそれぞれの処理の詳細は、図2に示す劣化コスト算出部114、充電コスト算出部115、及び電池数決定部116と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0133】
劣化コスト算出情報235及び充電コスト算出情報236はそれぞれ図2に示す劣化コスト算出情報601及び充電コスト算出情報602と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0134】
端末装置10Aは、プロセッサ11A、通信部12A、及び表示部15Aを含む。実施の形態2はサーバ20Aが処理主体であるため、プロセッサ11Aにおいて、実施の形態1のプロセッサ11が備える各ブロックはサーバ20Aのプロセッサ21Aが備えている。
【0135】
プロセッサ11Aは、例えば、CPUなどの電気回路であり、端末装置10Aの全体制御を司る。プロセッサ11Aは、サーバ20から端末装置10Aが管轄する1以上の移動体30のそれぞれに対する搭載電池数を示す情報を通信部12Aを介して取得する。通信部12Aは、例えば端末装置10Aをネットワーク40に接続する通信回路であり、サーバ20Aから送信された搭載電池数を示す情報を受信する。表示部15Aは、プロセッサ11Aの制御の下、各移動体30のそれぞれに対する搭載電池数を示す情報を表示する。
【0136】
次に、実施の形態2における情報処理システム1の動作について図9のフローチャートを用いて説明する。実施の形態2において、図9に示すフローは例えば、配車計画部213が配車計画を作成した場合に開始される。ここで、配車計画は、各配送拠点の営業日に合わせて例えば1日に1回、所定時刻に実施される。
【0137】
ステップS1~S13の処理は、実施の形態1ではプロセッサ11が実行していたが、実施の形態2では、サーバ20Aのプロセッサ21Aが実行する点が相違する。ステップS1~S13、S15の処理の詳細は処理主体がサーバ20Aであること以外は、実施の形態1と同じである。
【0138】
但し、実施の形態2では、ステップS4において、消費電力量算出部216は、電力量情報テーブル234を参照し、以下の処理により移動体30の電力消費量を算出する。消費電力量算出部216は、処理対象となる移動体30の移動体IDと、ステップS2において取得された移動体30の移動距離と、ステップS3又はステップS7で設定された電池数nとに対応する消費電力量を電力量情報テーブル234から決定する。詳細には、消費電力量算出部216は、該当する移動体30の移動体IDと電池数nとを格納するレコードを電力量情報テーブル234から抽出する。消費電力量算出部216は、抽出したレコードの中から、ステップS2で取得された移動距離が属する移動距離の範囲を格納するレコードを抽出する。消費電力量算出部216は、抽出したレコードに格納された消費電力量の値を移動体30の消費電力量として算出する。
【0139】
なお、該当する移動体30において対応する消費電力量が電力量情報テーブル234に格納されていなかった場合、消費電力量算出部216は、実施の形態1で説明した消費電力量算出部113による消費電力量の算出方法を用いて消費電力量を算出すればよい。
【0140】
実施の形態2のステップS14では、サーバ20Aの電池数決定部219は、異常であることを示すメッセージを通信部22を介して端末装置10Aに送信し、このメッセージを受信した端末装置10Aは、表示部15Aにこのメッセージを表示する。これにより、異常であることが作業員に報知される。この場合、端末装置10Aは異常であることを示すメッセージの音声を図略のスピーカから出力してもよい。
【0141】
実施の形態2のステップS16では、サーバ20Aの電池数決定部219は、搭載電池数を示すメッセージを通信部22を介して端末装置10Aに送信し、このメッセージを受信した端末装置10Aは、このメッセージを表示部15Aに表示する。これにより、移動体30に対する搭載電池数が作業員に通知される。なお、搭載電池数が示す音声メッセージを図略のスピーカから出力してもよい。
【0142】
実施の形態2において、電池数決定部219は、ある宅配拠点が管理する全ての移動体30に対する搭載電池数を算出した場合に、各移動体30のそれぞれの搭載電池数を示すメッセージを端末装置10Aに表示させてもよい。
【0143】
図13は、実施の形態2におけるメッセージ画面1300の一例を示す図である。メッセージ画面1300には、ある宅配拠点が管理する移動体30に関する搭載電池数が一覧表示されている。詳細にはメッセージ画面1300には、車両ID、積載量、配送ルート(移動距離)、及び搭載電池数が含まれている。車両IDの欄には、各移動体30の移動体IDが表示されている。積載量の欄には各移動体30が積載する荷物の総重量が表示されている。この総重量は、配車計画部213によって算出された各移動体30の荷物の総重量である。配送ルート(移動距離)は各移動体30の配送ルートとその移動距離である。なお配送ルートの表示欄を選択する操作が入力されると、端末装置10Aは地図画像上に配送ルートがオーバーラップ表示された地図画面を表示部15Aに表示してもよい。搭載電池数の欄には各移動体30の搭載電池数が表示されている。
【0144】
このように、メッセージ画面1300には、各移動体30に対する搭載電池数が表示されているため、作業員は各移動体30に搭載するべき電池数を容易に確認できる。さらに、メッセージ画面1300には、各移動体30の積載量及び移動距離が表示されるため、搭載電池数の妥当性を作業員に報知できる。
【0145】
以上、説明したように、実施の形態2においては、サーバ20Aが主体となって搭載電池数が決定されるため、端末装置10Aの処理負担を軽減できる。
【0146】
本開示は下記の変形例が採用できる。
【0147】
(1)図3に示す劣化コスト算出情報601は、電池数nに対応して複数設けられていてもよい。これは、電池数nが増大するにつれて、移動体30の総重量は増大し、この総重量の増大に伴って劣化コストは減少するからである。例えば、図3において、劣化コスト算出情報601Bは、劣化コスト算出情報601Aよりも大きな電池数nが対応づけられている。劣化コスト算出情報601Bは、電池数nが小さい領域(例えば電池数n=1~2)において劣化コストの低下率が劣化コスト算出情報601Aよりも大きくなっている。このように、変形例(1)では、大きな電池数nが対応付けられた劣化コスト算出情報601ほど、電池数nが小さい領域における劣化コストの低下率が大きくなる特性を備えている。
【0148】
この場合、劣化コスト算出部114は、設定された電池数nに対応する劣化コスト算出情報601をメモリ14から読み出し、読み出した劣化コスト算出情報601を参照することによって、劣化コストを算出すればよい。
【0149】
ここでは、劣化コスト算出情報601は、電池数nに対応して複数設けられているとして説明したが、電池数nと移動体30に対する荷物の積載量との組に対応して複数設けられていてもよい。この場合、複数の劣化コスト算出情報601は、例えば電池数nと積載量との組が示す移動体30の重量の増加量が増大するにつれて、電池数nが小さい領域における劣化コストの低下率が大きくなる特性を備えていればよい。
【0150】
さらに、この場合、劣化コスト算出部114は設定された電池数nと移動体30の実際の積載量とに対応する劣化コスト算出情報601をメモリ14から読み出し、読み出した劣化コスト算出情報601を参照することによって、劣化コストを算出すればよい。
【0151】
(2)変形例(1)では、劣化コスト算出情報601は電池数nに応じて複数設けられている、又は電池数nと積載量との組に応じて複数設けられているとして説明した。変形例(2)では、1つの劣化コスト算出情報601をメモリ14に記憶しておき、劣化コスト算出部114は、電池数nに応じて、又は電池数n及び積載量の組に応じてメモリに記憶された劣化コスト算出情報601を補正してもよい。
【0152】
この場合、劣化コスト算出部114は、電池数nが増大するにつれて、電池数nが小さい領域での劣化コストの低下率が大きくなるように劣化コスト算出情報601を補正すればよい。或いは、劣化コスト算出部114は、電池数n及び積載量の組によって示される移動体30の重量の増加量が増大するにつれて、電池数nが小さい領域での劣化コストの低下率が大きくなるように劣化コスト算出情報601を補正すればよい。
【0153】
(3)劣化コスト算出部114は、電池数n毎に、電池パック34のそれぞれに流れる放電電流に基づいて劣化コストを算出してもよい。電池パック34は並列接続されているため、電池数nが増大するにつれて各電池パック34に流れる放電電流は減少する。その結果、各電池パック34のDODが減少し、劣化コストの悪化は抑制される。そこで、変形例(3)では、メモリ14に放電電流と劣化コストとの対応関係が予め定められた情報を劣化コスト算出情報601として記憶させておく。劣化コスト算出部114は、電池数nに応じて各電池パック34に流れる放電電流を算出する。そして、劣化コスト算出部114は、メモリ14から放電電流と劣化コストとが対応付けられた劣化コスト算出情報601を読み出し、算出した放電電流に対応する劣化コストを算出すればよい。この場合の劣化コスト算出情報601としては、例えば、図3において、縦軸が劣化コスト、横軸が電池数nに対応する各電池パック34に流れる電流が設定された情報を採用すればよい。
【0154】
(4)実施の形態1において、端末装置10が備える各種機能は、移動体30が備えていてもよい。この場合、これらの各種機能は車両制御装置31又は電池管理装置32が備えればよい。
【0155】
(5)各実施の形態において、決定された搭載電池数と移動体30に実際に搭載されている電池数とが異なるか否かを判定し、判定結果にしたがって通知が出力されてもよい。例えば、端末装置10又はサーバ20は、移動体30に搭載されている電池数を電池管理装置32等から取得し、取得された電池数と決定された搭載電池数とが異なるか否かを判定する。取得された電池数と決定された搭載電池数とが異なると判定された場合、端末装置10又はサーバ20は、電池数の変更を勧める通知を出力する。出力された通知は、端末装置10に備えられる表示部15又はスマートフォン等の外部の端末にて表示される。なお、当該通知は、表示の代わりに又はそれと共に、スマートスピーカ等により音声を用いて提示されてもよい。
【0156】
(6)各実施の形態は、家庭又はオフィスなどの特定の場所に設置される蓄電装置に適用されてもよい。
具体的には、情報処理システムは、
1以上の電池を備える蓄電装置の消費電力量を取得し、
1以上の電池数毎に、消費電力量と電池数とに基づいて電池の劣化コストを算出し、
1以上の電池数毎に、電池数に基づいて電池の利用コストを算出し、
劣化コスト及び利用コストにしたがって、蓄電装置に搭載する搭載電池数を決定し、
搭載電池数を出力する。
消費電力量は、特定の時間単位又は利用単位当たりの値である。例えば、消費電力量は、一日当たり、又は一回の利用当たりの値などであってよい。利用コストは、電池を搭載することによりかかる費用である。例えば、利用コストは、電池の購入費、レンタル費、又はメンテナンス費などであってよい。
電池数が多いと、劣化コストは減少するが、利用コストが増加する。電池数が少ないと、劣化コストが増加するが、利用コストは減少する。また、劣化コストと利用コストとのバランスは消費電力量によって変わる。そこで、情報処理システムは、上記のように、消費電力量に基づき、劣化コスト及び利用コストのトータルコストが小さくなるように電池数を決定する。
【0157】
このように、本構成では、利用コスト及び劣化コストが考慮されて搭載電池数が決定されているため、電池の劣化コストを含む電池のトータルのコストが抑制されるように電池数を決定できる。言い換えると、電池の利用コストを抑制しながら電池の劣化を抑制することができる。また、蓄電装置のユーザ毎に消費電力は異なるため、各ユーザに適したトータルコストとなる電池数を決定できる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本開示は、電池のトータルコストが抑制される電池数を決定できるため、電池数が変更可能な移動体において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13