(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】AIを利用した不動産売却計画書オークションシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20231127BHJP
G06Q 30/08 20120101ALI20231127BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q30/08
(21)【出願番号】P 2018203999
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518026291
【氏名又は名称】一般社団法人不動産売却支援ネット
(73)【特許権者】
【識別番号】509060899
【氏名又は名称】藤和コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】露木 裕良
(72)【発明者】
【氏名】池野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】牛島 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森田 尚也
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-350991(JP,A)
【文献】特開2018-106568(JP,A)
【文献】特開平11-282823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援システムであって、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別
、及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、
不動産売却計画書を前記買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を制御するオークション制御部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択させる人工知能と、
前記オークション制御部による競売の結果を教師データとして、
前記人工知能に、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて、前記人工知能を学習させる学習部と
を備え、
前記情報データ収集部は、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
不動産評価値算出部は、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出
し、
前記学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させる
ことを特徴とする不動産売却計画書作成支援システム。
【請求項2】
前記情報データ収集部は、
前記情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて抽出する情報抽出部と、
前記情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析部と、
解析された前記リンク情報を辿って、情報データ間を遷移することにより、情報データを収集するアクセス制御部と
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の不動産売却計画書作成支援システム。
【請求項3】
前記情報選択部は、前記適正な情報を選択する操作者による入力操作を取得する入力インターフェースを有することを特徴とする請求項1に記載の不動産売却計画書作成支援システム。
【請求項4】
通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、前記不動産売却計画書を前記買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を制御するオークション制御部をさらに備え、
前記オークション制御部では、前記買主用端末を通じて買主が、売主による提示価格に応答することにより、売主と買主との間で不動産物件の売買価格又は賃貸価格が決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の不動産売却計画書作成支援システム。
【請求項5】
不動産を売却するための不動産オークションシステムであって、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別
、及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択させる人工知能と、
オークション制御部による競売の結果を教師データとして、
前記人工知能に、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて、前記人工知能を学習させる学習部と
を備え、
前記情報データ収集部は、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
前記学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させ、
前記売却計画書作成部は、前記不動産評価値算出部が、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する
ことを特徴とする不動産オークションシステム。
【請求項6】
通信ネットワーク上に配置されたサーバー装置を通じて、不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援方法であって、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別
、及び売却先候補を不動産情報として、前記サーバー装置の不動産情報取得部が、取得する不動産情報取得ステップと、
前記サーバー装置の情報データ収集部が、売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集ステップと、
前記サーバー装置の情報選択部が、前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択ステップと、
前記サーバー装置の不動産評価値算出部が、前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出ステップと、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を、前記サーバー装置の売却計画書作成部が作成する売却計画書作成ステップと、
通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、
不動産売却計画書を前記買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を、オークション制御部が制御するオークション制御ステップと
を含み、
前記情報選択ステップでは、前記オークション制御ステップにおける競売の結果を教師データとして学習部が
、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて学習させた
人工知能が、前記適正な情報を選択する自動選択ステップを含み、
前記情報データ収集ステップでは、前記情報データ収集部が、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
前記不動産評価値算出ステップでは、前記不動産評価値算出部が、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出
し、
前記自動選択ステップにおいて学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させる
ことを特徴とする不動産売却計画書作成支援方法。
【請求項7】
前記情報データ収集ステップでは、
前記情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて、前記サーバー装置の情報抽出部が抽出する情報抽出ステップと、
前記サーバー装置のリンク解析部が、前記情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析ステップと、
前記サーバー装置のアクセス制御部が、解析された前記リンク情報を辿って、情報データ間を遷移することにより、情報データを収集するアクセス制御ステップと
を含むことを特徴とする請求項6に記載の不動産売却計画書作成支援方法。
【請求項8】
前記情報選択ステップでは、前記適正な情報を選択する操作者による入力操作を入力インターフェースが取得する入力ステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の不動産売却計画書作成支援方法。
【請求項9】
前記オークション制御ステップでは、前記買主用端末を通じて買主が売主による提示価格に応答することにより、売主と買主との間で不動産物件の売買価格又は賃貸価格が決定される
ことを特徴とする請求項6に記載の不動産売却計画書作成支援方法。
【請求項10】
通信ネットワーク上に配置されたサーバー装置を通じて、不動産を売却するための不動産オークション方法であって、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として、前記サーバー装置の不動産情報取得部が、取得する不動産情報取得ステップと、
前記サーバー装置の情報データ収集部が、売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集ステップと、
前記サーバー装置の情報選択部が、前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択ステップと、
前記サーバー装置の不動産評価値算出部が、前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出ステップと、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を、前記サーバー装置の売却計画書作成部が作成する売却計画書作成ステップと、
通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、
不動産売却計画書を前記買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を、オークション制御部が制御するオークション制御ステップと
を含み、
前記情報選択ステップでは、前記オークション制御ステップにおける競売の結果を教師データとして学習部が
、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて学習させた
人工知能が、前記適正な情報を選択する自動選択ステップを含み、
前記情報データ収集ステップでは、前記情報データ収集部が、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
前記自動選択ステップにおいて前記学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させ、
前記売却計画書作成ステップでは、前記売却計画書作成部が、前記不動産評価値算出部が、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する
ことを特徴とする不動産オークション方法。
【請求項11】
不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援プログラムであって、コンピューターを、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別
、及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、
不動産売却計画書を前記買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を制御するオークション制御部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択させる人工知能と、
前記オークション制御部による競売の結果を教師データとして、
前記人工知能に、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて、前記人工知能を学習させる学習部として
機能させ、
前記情報データ収集部は、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
不動産評価値算出部は、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出
し、
前記学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させる
ことを特徴とする不動産売却計画書作成支援プログラム。
【請求項12】
前記情報データ収集部は、
前記情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて抽出する情報抽出部と、
前記情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析部と、
解析された前記リンク情報を辿って、情報データ間を遷移することにより、情報データを収集するアクセス制御部と
を備えていることを特徴とする請求項11に記載の不動産売却計画書作成支援プログラム。
【請求項13】
前記情報選択部は、前記適正な情報を選択する操作者による入力操作を取得する入力インターフェースを有することを特徴とする請求項11に記載の不動産売却計画書作成支援プログラム。
【請求項14】
前記オークション制御部では、前記買主用端末を通じて買主が売主による提示価格に応答することにより、売主と買主との間で不動産物件の売買価格又は賃貸価格が決定される
ことを特徴とする請求項11に記載の不動産売却計画書作成支援プログラム。
【請求項15】
不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産オークションプログラムであって、コンピューターを、
少なくとも土地のみであるか否かの区分を含む前記不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
売却を希望する供給者の不動産に関する情報である供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じ
て、類似事例の価格を含む関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択させる人工知能と、
オークション制御部による競売の結果を教師データとして、
前記人工知能に、各種選択肢と販売価格との相関を解析させ、その解析結果である価格予測AIモデルを構築させて、前記人工知能を学習させる学習部、
として機能させ、
前記情報データ収集部は、少なくとも不動産価値検証の類似事例を含む情報源にアクセスして、
価格の数値を読み出し、前記関連情報中のテキストを属性毎に分類し、
前記学習部は、前記人工知能に対し、前記売却計画書作成部が作成した不動産売却計画書を入力し、前記不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比し、その対比した結果が異なる場合にどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、前記情報選択部が選択した選択肢の正当性を帰納法的に検証し、前記人工知能に適正な情報を選択させ、
前記売却計画書作成部は、前記不動産評価値算出部が、売却先候補の種別に基づいて、情報データに含まれる販売先候補需要者における用途に応じた不動産価格を集計して、前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する
ことを特徴とする不動産オークションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産を売却するための不動産売却計画書作成支援システム及び不動産オークションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不動産を売却するにあたり現在の不動産業界では、土地相場、公示価格、自社の販売事例等を用いて売却価格を想定し、「査定書」として金額提示をしている。ところが、売主が高く売ることより売主にとって安かったとしても、多数の物件を早く売却することが不動産業者の利益につながることから、上記査定書は、売却物件の「本当の資産価値」を見出す方針では作成されず、寧ろより安く売却させるべく作成される傾向がある。
【0003】
このような不動産業者の主観によって作成される査定書では、客観性の高い予想取引価格が得られにくいという問題があることから、従前では、客観性の高い不動産の予想取引価格を得ようとする不動産売買システムも提案されている(例えば特許文献1)。この特許文献1に開示された不動産売買システムでは、不動産の売却を予定している売主の設定した希望価格で当該不動産の掲示を行い、当該掲示された不動産を購入したい購入希望者がいる場合、売却予定者及び購入希望者を直接取り引きさせる。これにより、不動産業者の主観的な評価を介さずに、売主と買主とが直接取り引きすることが可能となり、売主が設定した希望価格で取引をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された不動産売買システムでは、専門的な知識の無い売主と買主とが直接取引をすることになるため、不動産の利用価値が適正に評価されなかったり、購入後の補償や税金など予想外のコストが発生したりすることがある。この結果、上記不動産売買システムでは、売主にとって不当に安すぎたり、買主にとって不当に高すぎたりする可能性があることから、売却後に売主・買主の双方が納得できないケースが生じる惧れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、不動産取引に際し、売却物件の利用方法を模索して「本当の資産価値」を見い出すとともに、売却後の経費リスクを考慮した不動産売却計画書を売主・買主の双方に提案し、売却後のトラブルを回避しつつ、適正な不動産取引を実現できる不動産売却計画書作成支援システム及び不動産オークションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援システムであって、不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、情報選択部が選択した関連情報に基づいて、不動産の評価値を売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、種別に応じた不動産の評価値を売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部とを備える。
【0008】
また、本発明は、不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援方法であって、
(1)不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として不動産情報取得部が、取得する不動産情報取得ステップと、
(2)情報データ収集部が、供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を売却先候補毎に収集する情報データ収集ステップと、
(3)情報選択部が、情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択ステップと、
(4)不動産評価値算出部が、情報選択部が選択した関連情報に基づいて、不動産の評価値を売却先候補毎に算出する不動産評価値算出ステップと、
(5)種別に応じた不動産の評価値を売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を、売却計画書作成部が作成する売却計画書作成ステップとを含む。
【0009】
また、上述した本発明に係るシステム及び方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。このようなプログラムを、ユーザー端末やWebサーバー等のコンピューターにインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有する3Dグラフィック生成システムを容易に構築することができる。
【0010】
すなわち、本発明は、不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産売却計画書作成支援プログラムであって、コンピューターを、不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、情報選択部が選択した関連情報に基づいて、不動産の評価値を売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、種別に応じた不動産の評価値を売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部として機能させる。
【0011】
このプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、汎用コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0012】
上記発明において情報データ収集部は、情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて抽出する情報抽出部と、情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析部と、解析されたリンク情報を辿って、情報データ間を遷移することにより、情報データを収集するアクセス制御部とを備えていることが好ましい。
【0013】
上記発明において情報選択部は、適正な情報を選択する操作者による入力操作を取得する入力インターフェースを有することが好ましい。
【0014】
上記発明では、通信ネットワークを通じて複数の買主用端末からのアクセスを受け付け、不動産売却計画書を買主用端末に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を制御するオークション制御部をさらに備え、オークション制御部では、買主用端末を通じて買主が提示価格に応答することにより、売主と買主との間で不動産物件の売買価格又は賃貸価格が決定されることが好ましい。
【0015】
上記発明では、情報選択部に対して適正な情報を選択する人工知能と、オークション制御部による競売の結果を教師データとして、人工知能を学習させる学習部とをさらに備えることが好ましい。
【0016】
すなわち、本願に係る他の発明は、不動産を売却するための不動産オークションシステムであって、
前記不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
前記供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択する人工知能と、
前記オークション制御部による競売の結果を教師データとして、前記人工知能を学習させる学習部と
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、他の発明は、不動産を売却するための不動産オークション方法であって、
前記不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として不動産情報取得部が、取得する不動産情報取得ステップと、
情報データ収集部が、前記供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集ステップと、
情報選択部が、前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択ステップと、
不動産評価値算出部が、前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出ステップと、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を、売却計画書作成部が作成する売却計画書作成ステップと、
前記情報選択ステップにおいて、前記適正な情報を人工知能が選択する自動選択ステップと、
前記オークション制御ステップにおける競売の結果を教師データとして、学習部が、前記人工知能を学習させる学習ステップと
を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、他の発明は、
不動産を売却するための計画書を自動的に作成する不動産オークションプログラムであって、コンピューターを、
前記不動産の種別及び売却先候補を不動産情報として取得する不動産情報取得部と、
前記供給者情報に基づいて、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を前記売却先候補毎に収集する情報データ収集部と、
前記情報データ収集部が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択する情報選択部と、
前記情報選択部が選択した関連情報に基づいて、前記不動産の評価値を前記売却先候補毎に算出する不動産評価値算出部と、
前記種別に応じた不動産の評価値を前記売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を作成する売却計画書作成部と、
前記情報選択部に対して前記適正な情報を選択する人工知能と、
前記オークション制御部による競売の結果を教師データとして前記人工知能を学習させる学習部、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、これらの発明によれば、不動産取引に際し、売却物件の利用方法を模索して「本当の資産価値」を見い出すとともに、売却後の経費リスクを考慮した不動産売却計画書を売主・買主の双方に提案し、売却後のトラブルを回避しつつ、適正な不動産取引を実現できる。
【0020】
詳述すると、本発明では、不動産の価値を買主の目線に合わせ、
○どのような人がどのように住みたいと思っているのか
○どのような法人がどのような地業をして収益を上げたいと思っているのか
○どのようなタイミングに情報公開をすべきなのか
○どのような資料(計画とコスト)を提供すれば予算限界まで出費して購入してくれるのか
○どのように買主に資産の魅力を伝え競争させれば高額で売却できるのか
などを徹底して追求し、物件毎に「不動産売却計画書」を策定する。この「不動産売却計画書」とは、買主の利用方法を模索し、どのような不動産業者や個人がその不動産をほしがっているかを検証し、必要な資料(規格プランや概算見積もり、諸経費、販売価格等)を提示する。
【0021】
例えば、中古マンションや中古戸建では、リフォームに先だって、間取りの変更やデザインを購入希望者のライフスタイルに合わせデザイン作成し「住みたい」を優先した「不動産売却計画書」を作成する。その場合、建物の瑕疵や物件の不都合も情報開示し、対策や補修工事のコストも算出することや購入後に優遇税制の方法や還付金の提案をすることで、安心して「予算限度額まで」購入価格に充ててもらえるように提案することができる。また、本発明によれば、売却後に発生する税金や還付金を売主と買主の双方に提案することができるため、士業や専門家集団が徹底検証して売却後の経費リスクの軽減を提案することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る不動産売却計画書作成支援システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】実施形態に係る売却計画書作成部の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る情報データ収集部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るオークション実行部の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るAI学習部の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る認識機能モジュールによる認識処理の概要を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係る不動産売却計画書作成業務の概要を示すフロー図である。
【
図8】実施形態に係る不動産売却計画書作成処理の動作を示すフロー図である。
【
図9】実施形態に係るオークション実行処理の動作を示すフロー図である。
【
図10】実施形態に係る不動産売却計画書の概要を示す説明図である。
【
図11】実施形態に係る不動産売却計画書の概要を示す説明図である。
【
図12】実施形態に係る不動産売却計画書作成処理システムの操作画面の構成を示す説明図である。
【
図13】変更例に係るオークション実行処理の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(不動産売却計画書作成支援システム及び不動産オークションシステムの全体構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係る不動産売却計画書作成支援システム及び不動産オークションシステムの実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る不動産売却計画書作成支援システム及び不動産オークションシステムの全体構成を示す概念図であり、
図2は売却計画書作成部の内部構成を示すブロック図である。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
本実施形態にかかるシステム及び方法は、不動産を売却するための不動産売却計画書を自動的に作成するシステム及び方法と、不動産オークションを実行するシステム及び方法とが融合したものであり、
図1に示すように、不動産売却計画書作成支援システムを構成する不動産売却計画書作成部1及びAI学習部3と、不動産オークションを構成するオークション実行部2とから概略構成される。なお、本実施形態では不動産売却計画書作成支援システムにAI学習部を含め、不動産オークションシステムと切離して構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、AI学習部は、不動産オークションシステム側に包含されてもよく、さらには、不動産売却計画書作成支援システム内にAI学習部及び不動産オークションシステムが包含されてもよく、不動産オークションシステム内にAI学習部及び不動産売却計画書作成支援システムが包含されてもよく、これらがそれぞれ独立したシステムであってもよい。
【0025】
不動産売却計画書作成部1は、不動産売却計画書を自動的に、或いは人力による作成を支援する(S101)モジュールである。ここでの不動産計画書作成処理は、
図7に示すように、不動産の供給者である売主に対する電話や面談などによるヒアリングによって(S1101)、売却を希望する不動産に関する情報(不動産情報及び供給者情報)を聞き取り、聞き取った不動産情報を、所定のひな形データであるヒアリングシートに記入する。このヒアリングシートを、例えば
図12に示すようなPC画面上のウィンドウW1を通じて情報取得部11にアップロードすることにより、必要な売却対象物件の不動産情報が入力され、検証内容が設定される(S1102)。
【0026】
そして、この不動産価値の検証では、売却不動産の種別と、売却先候補の種別とに応じて、検証内容(検証項目)を選定する。具体的には、
図10に示すように、ヒアリングシートの解析により売却対象となる不動産の種別を以下のように分類する。
【0027】
○土地のみ
○戸建
○集合住宅の区分所有
○集合住宅一棟
○商業ビル
○工場・倉庫
また、売却先候補の
図10に示す1~8種類の検証オプションを設定し、それぞれの検証オプションに応じて想定される売却先の収益を算出し、その算出結果を加味した想定売値を抽出する。例えば、
図10に示した検証オプション1~3については、「一般エンドユーザー」、「仲介会社」が主な売却候補の種別となる。
【0028】
そして、
図11に示すように、各検証にあたり、上述した不動産の種別特有の調査項目が設定され、調査が行われ、情報データの収集が実行される。例えば、「そのまま売る」という検証オプションでは、「近隣販売価格(駅距離別、土地面積別、建物面積別、築年数別、更地価格)や建築年月、間取、床面積、構造などが基本調査項目となり、全ての不動産の種別が対象となる。なお、「土地のみ」の場合にのみ、「土地分割設計」が追加調査項目となる。そして、これらの調査項目について、不動産売却計画書作成部1の情報データ収集部114が、Web情報を検索する(S104)。この情報データ収集部114は、インターネット上に分散配置された各種サーバーをいわゆるクローラー処理により巡回し、逐次必要な情報を自動的に収集する機能を備えている。
【0029】
次いで、このように収集された情報に基づいて、当該不動産の価値が検証される(S1103)。この不動産価値の検証では、情報データ収集部114がWebやヒアリングシートから取得した情報データの中から、各項目に対するデータを、操作者或いはAI機能によって適宜選択し、所定の計算式に代入して数値化された価格情報及びそれに関連する情報を算定する。このデータの選択は、例えば
図11に示すようなGUI(Graphical User Interface)であるメニュー画面を通じて各検索画面に移行して、操作者が人手により行うこともでき、AIなどに自動的に選択させることもできる。このように選択された各項目毎の情報データは、売却先候補に合わせて整理した不動産売却計画書を作成し(S1104)、フィードバックされる(S1105)。この作成された
図11に示したGUIに表示することもでき、各種ファイル形式によってダウンロードすることもできる。これらの操作は、
図12に示すようなPC画面上のウィンドウW1を通じて行うことができる。
【0030】
不動産売却計画書作成部1は、情報データ収集部114がインターネット上から収集し蓄積した情報データの中から、売却先候補に合わせた不動産評価を行うために必要な情報を選択して読みだし、売却先候補に種別に応じたロジックやアルゴリズムによって不動産の売却価格を算定する。この情報データの選択は、操作者が人手により行うこともでき、学習機能を備えた人工知能(AI)によって自動的に行うこともできる。
【0031】
オークション実行部2は、目的の不動産を売却する不動産オークションを実行する(S102)モジュールである。AI学習部3は、オークション実行部2によるオークション結果やオークション経過を教師データとして価格予測AIモデルを構築する(S103)モジュールである。
【0032】
(各装置の構成)
以下に、各構成要素について詳述する。
(1)不動産売却計画書作成部
上述したように、不動産売却計画書作成部1は、不動産売却計画書を自動的に、或いは人力による作成を支援するモジュールであり、インターネット上に配置されたサーバー装置により構成され、複数の機能を分散させたサーバー群で実現可能となっている。この不動産売却計画書作成部1を構成するサーバー装置には、Webサーバー機能が含まれ、WWW(WorldWideWeb)等のドキュメントシステムにおいて、HTML(HyperTextMarkupLanguage)、映像、音声、画像などの素材データから構成され、管理用端末装置15等からのアクセスに対し、売却計画書作成に必要なWebページ等のコンテンツを配信できるようになっている。
【0033】
具体的に、不動産売却計画書作成部1には、情報取得部11と、情報選択部12と、不動産評価値算出部13と、出力データ生成部14と、データベース16とを備えている。情報取得部11には、不動産情報取得部111と、ユーザー情報設定部112と、不動産情報取得部111と、情報データ収集部114とが含まれる。
【0034】
情報取得部11は、不動産売却計画書を作成するために必要な情報を取得するモジュールであり、この情報の取得方法としては、管理用端末装置15を通じて操作者が入力するデータを受信したり、AIが自動的に生成したり、Web上から検索された情報を読み込んだり、さらにはデータベース16に蓄積された情報を読み出すなどが挙げられる。
【0035】
上記不動産情報取得部11aは、売却に係る不動産の種別や売却先候補を不動産情報として、管理用端末装置15を通じた受け付けるモジュールである。また、ユーザー情報設定部11bは、売主の情報などを、管理用端末装置15を通じて取得し、設定するモジュールである。売却先候補設定部11cは、売却先候補をユーザー操作やAIによる自動入力による受け付けるモジュールである。
【0036】
情報データ収集部11dは、当該不動産の種別及び売却先候補に応じた関連情報を売却先候補毎に収集するモジュールであり、Web上を検索して情報を収集したり、データベース16から検索したりして情報選択部12に送出する。なお、収集された情報は適宜データベース16に蓄積される。
【0037】
本実施形態において、情報データ収集部114は、
図3に示すように、Web上で検索された情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて抽出する情報抽出部114dと、情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析部114aと、解析されたリンク情報を辿って、情報データ間を遷移することにより、情報データを収集するアクセス制御部114fとを備えている。この情報データ収集部114の詳細については後述する。
【0038】
図2に示す情報選択部12は、情報データ収集部114が収集した関連情報のうち、適正な情報を選択するモジュールであり、この選択は、入力インターフェースである管理用端末装置15を通じて操作者の入力操作によって行うこともでき、またAIによる自動入力も可能となっている。なお、このAIは、情報選択部12において適正な情報を選択する人工知能であり、本実施形態では、オークション制御部22による競売の結果を教師データとして、ディープラーニング等の手法により学習する機能を備えている。
【0039】
不動産評価値算出部13は、情報選択部12が選択した関連情報に基づいて、不動産の評価値を売却先候補毎に算出するモジュールである。出力データ生成部14は、種別に応じた不動産の評価値を売却先候補毎に区分して記述した売却計画書を、出力用ファイルデータとして生成し、出力するモジュールである。
【0040】
このような構成の不動産売却計画書作成部1は、以下のように動作する。
図8は、実施形態に係る不動産売却計画書作成処理の動作を示すフロー図である。
同図に示すように、先ず、需要供給情報取得ステップS201において、ユーザー情報設定部112を通じて、不動産を売却したい売主の情報を設定するとともに、売却先となりそうな候補となる企業や買主を、売却先候補設定部113を通じて設定する。この売主情報は、上述したヒアリングシートを読み込んで所定のテキストデータや数値データを読み出すことにより行える。
【0041】
このヒアリングシートの読み込みにより、売却される不動産の所在地を所定の範囲で示す情報であるエリア情報が収集可能となる。このエリア情報としては、例えば、人口や面積、その他地理的事情を考慮して、都道府県単位、市区町村単位、駅やランドマークを中心とする地域単位、及びその他任意に分割される地域単位で設定される。また、ヒアリングシートには売主の希望販売価格が含まれている。売却先候補は、売却される不動産の使用目的毎に分類された企業や個人を示す情報であって、本実施形態では、住宅用と商業用とを例示しているが、これらに限定されるものではなく、例えば、工場等の工業用やこれら複数の混在型用などを含むようにしてもよい。
【0042】
情報データ収集ステップS202において情報データ収集部114は、売却先候補の種別に基づいて、情報データを集計する。販売先候補需要者における用途(住宅用及び商業用)に応じた不動産価格などを集計する。具体的には、情報データ収集部114が、Web上で検索された情報データから所定の関連情報を、情報取得元及び関連情報に関するキーワードと関連付けて抽出する情報抽出ステップと、情報データに含まれるリンク情報を解析するリンク解析ステップと、解析されたリンク情報を辿って情報データ間を遷移することにより情報データを収集するアクセス制御ステップとを実行する。
【0043】
次いで、不動産評価値算出ステップS203において、不動産評価値算出部13は、蓄積された情報データ及び売却先候補に関する情報に基づいて、用途に応じた不動産の評価値を算出する。その後、不動産評価値出力ステップS204において、出力データ生成部14は、用途に応じた不動産の評価値を売却先候補毎に出力する。
【0044】
(2)情報データ収集部
上述した情報データ収集部114について詳述すると、情報データ収集部114は、いわゆるクローラーと呼ばれ、自動的にインターネット上のリンクを辿って必要な情報を自動的に収集し、各項目(キーワード)毎に情報を整理して蓄積するモジュールである。通信ネットワーク4上に分散配置されたHTML等の情報データを自動的に収集する。
【0045】
ここで、インターネット上にある情報検索の自動化としては、
・不動産価値検証の際の類似事例(例えば、駅からの距離と土地の面積、建物の面積、築年数から類似事例の価格等)
・解体費相場(各地域における建物の構造別解体費相場)
・家賃(住宅サイトから取得可能な近隣の新築戸建情報)
・最寄施設一覧(住所、検索範囲、対象施設などの近隣情報)
・地盤情報(住所から検索可能なエリア毎のリスクや大地震の発生確率)
などに関係する情報を配信する情報源にアクセスし、検索操作を自動的に行って、必要な情報をダウンロードしたり、価格等の数値を読み出したりして、売却予定不動産情報としてデータベースに蓄積する。
【0046】
具体的に情報データ収集部114は、アクセス制御部114fと、リンク解析部114aと、タグ解析部114bとを備え、データベース16内に格納されたアドレスデータベース162に接続されている。
【0047】
タグ解析部114bは、情報データであるHTML中のタグ(マークアップ)を解析し、情報データ中のテキストを属性(リンクアンカーや入力フォーム、テーブル等)毎に分類し、検証項目検索部114c及びリンク解析部114aに出力するモジュールである。
【0048】
リンク解析部114aは、タグ解析部114bにより解析されたリンク情報、すなわちHTMLタグに含まれる”リンクアンカー”を解析し、関連する情報データのアドレスを収集し、アドレスデータベース51に蓄積させるモジュールである。
【0049】
アクセス制御部114fは、リンク解析部114aにより解析されアドレスデータベース51に蓄積されたリンク情報を読み出し、読み出されたリンク先をデータ送受部114gに出力し、データ送受部114gにより、リンクを辿って情報データ間を遷移させて、情報データを収集させるモジュールである。
【0050】
また、情報データ収集部114は具体的に、通信系のモジュールであるデータ送受部114gと、データ収集系のモジュールである情報データ収集部114とを備えている。データ送受部114gは、通信ネットワーク4に接続され、通信ネットワーク4を通じてIPパケットの送受を行う通信デバイスである。このデータ送受部114gは、アクセス制御部114fにより特定されたアドレス(URLやIPアドレス)にアクセスし、HTMLファイル等をダウンロードし、タグ解析部114bに出力する。また、データ送受部114gは、コマンド実行部114eを通じて、情報源となる各Webサーバーに対してコマンドの送信を行う。
【0051】
さらに、情報データ収集部114は、検証項目検索部114cと、情報抽出部114dと、コマンド実行部114eとを備えている。
検証項目検索部114cは、情報抽出部114dの要求に応じて、情報データから検証項目に関する情報を抽出するためのキーワードを蓄積する検証項目データベース161を検索し、検索結果を情報抽出部114dに出力するモジュールである。このキーワードは、情報データ中のタグ(文書レイアウトやテーブル、リスト等)により画定されるテキスト中に含まれる文字列を抽出するためのものであり、本実施形態では、各種不動産情報を抽出する項目(或いはキーワード)として、”最寄り駅の1日平均乗降・乗車人員数”や”所在地(地図上の緯度・経度、路線図)”、”地盤データ(地震予測データ)”等が含まれる。
【0052】
また、検証項目検索部114cには、例えば、キーワード検索のために入力された文字列の履歴をエリア毎に記憶する入力履歴機能を設けてもよい。この入力履歴機能によれば、例えば、ユーザーが頻繁に入力する文字列を履歴の中から抽出して、入力用のテキストボックス(コンボボックス)等に表示し、選択操作によって入力可能とすることにより、ユーザーによる入力作業の支援を実現することができる。
【0053】
情報抽出部114dは、情報データから所定の情報を情報取得元及び上記キーワードと関連付けて抽出し、抽出した情報を情報データベース53に蓄積するモジュールである。例えば、不動産関連のWebサーバーから取得した情報データから抽出された情報について、各項目及び各内容を対応付けて情報データベース53に蓄積する。
【0054】
コマンド実行部114eは、タグ解析部114bにより、Webサーバー上のHTML内に送信フォームが含まれている場合に、この送信フォームを切り出すとともに、送信フォーム中に含まれる送信項目の属性を解析し、解析結果に応じたコマンドを実行(送信)することにより、Webページを遷移させたり、ダウンロードを実行するモジュールである。コマンドを実行することにより得られた情報データは、対応項目と関連付けて、情報データベース163に蓄積される。例えば、タグ解析部114bは、HTMLに含まれる<FORM>~</FORM>までを切り出すとともに、送信フォーム中のインプット用テキストボックスの属性を解析し、コマンドを実行するための送信先アドレス、対応項目のデータ名を関連付けて蓄積する。
【0055】
(3)オークション実行部
次いで、オークション実行部2の構成について説明する。オークション実行部2は、通信ネットワーク4を通じて複数の買主用端末41~43からのアクセスを受け付け、不動産売却計画書を買主用端末41~43に対して公開し、当該不動産を競売対象とするオークションの進行を制御するシステムである。このオークション制御部22では、買主用端末41~43を通じて買主B1~B3が、売主S1が定めた提示価格に応答することにより、売主S1と買主B1~B3との間で不動産物件の売買価格又は賃貸価格が決定される。
【0056】
図4は、本発明に係るオークション実行部2の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態にかかるオークション実行部2は、例えば本発明の不動産オークションプログラムをサーバー装置上で実行することにより実現され、具体的には、オークションの進行を制御するオークション制御部22と、買主情報を記憶し管理する買主データベース164と、買主ユーザーを認証する買主認証部24と、不動産物件及びこの不動産物件の売主に関する不動産情報を記憶し管理する不動産データベース165と、オークションの結果である成約又は不成約を登録するオークション結果データベース166と、インターネットなどの通信ネットワーク4との間でデータ授受を可能とする通信インターフェース23と、システム運営者が使用する管理用端末装置15との間でデータの授受を可能とする入出力インターフェース21とを備えている。
【0057】
不動産データベース165は、不動産物件の売買価格を評価するのに必要な不動産情報、及び不動産売却計画書を蓄積しており、オークション制御部22の伝送要求に応じて不動産情報及び不動産売却計画書を提供する。その不動産情報としては、不動産物件の外観や内部構成を示す静止画又は動画、売主の最低希望価格などが例示され、この他に、計画道路にかかるか否か、市街化調整区域、区画整理事業の範囲、建築条件付きか否か、接道状況(不動産の土地に接する道路が、公道、私道、通常道路か否かなど)、建坪率、容積率、日照問題、斜線規制(「道路斜線」、「隣地斜線」、「北側斜線」及び「高度斜線」)、日照権問題、土地境界線などの法規制情報、水道管やガス管の敷設状況、生活環境(学校や校区、病院、買い物場所など)、高圧電力線の有無などの環境情報、崖地や窪地などの不整形地か否か、断層の有無などの地理的情報、風土や水勢などから当該地の良否を決める風水情報、路線価格の変動、不動産物件の属する行政区の人口変動などの統計情報、不動産鑑定士や税理士、弁護士などの専門家による不動産鑑定情報が挙げられる。その不動産鑑定の対象は、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権、農地、林地、宅地見込地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地などである。
【0058】
また、本実施形態では、不動産取引の安全性を確保すべく、本オークションに参加する買主に対して登録手続を要求する。登録済みの買主情報は、上記買主データベース164に格納されている。買主は登録手続きを済ませると、身分証明番号(買主ID番号)を付与される。そして、オークションに参加する際には、パスワードなどの認証情報とともにID番号が、買主認証部24に転送され、買主ID番号及びパスワードと買主データベース164の登録データとが照合される。買主認証部24は照合結果の真偽を当該買主用端末10に転送し、この結果が真の場合のみに買主用端末10のロックが解除されてアクセスが可能となる。
【0059】
さらに、買主用端末10は、入札価格をオークション制御部22に伝送するためのインターフェース及び通信機能を備えたパーソナルコンピューターやスマートフォン等の汎用コンピューターを用いることができる。買主が入札したりする信号は買主のID登録番号と一緒にオークション制御部22に伝送される。
【0060】
管理用端末装置15は、オークション制御部22に接続して使用される入出力端末であり、オークションの進行役である運営者が、この管理用端末装置15を操作して、オークション開始時又は落札時などをオークション制御部22に通知したり、不動産情報の表示内容を指示したり、不動産情報の表示順位を指示したりなどをすることができる。
【0061】
次に、
図7を参照しながら、本実施形態に係るオークション処理の手順の一例を説明する。先ず、管理用端末装置15を通じてオークション制御部22にオークションの開始が指示されると、オークション制御部22の制御により、不動産データベース165に格納した不動産情報が選択されて、各買主端末41~43の画面に表示させる(ステップS301)。次に、管理用端末装置15から入力された売主の希望価格を、販売価格の初期値若しくは予め不動産データベース165に記憶した初期値を最低価格として設定する(ステップS302)。
【0062】
各端末41~43の画面には、不動産物件である家屋の外観とともに、「建坪率」「容積率」「斜線規制」などの当該不動産関連の法規制情報などが表示され、買主である不動産購入者などは、これら画像情報などを参考にしつつこの現在価格に応答するか否かを決める。ここで、表示するのに好適な不動産情報としては、現実味あるイメージと大量の情報を短時間で買主に提供することが可能な3次元画像や3次元動画像が挙げられる。具体的には、CG(コンピューターグラフィックス)による、不動産物件の外観や内部構成の3次元静止画像や3次元動画像、不動産物件周辺を撮影したビデオ画像などが含まれる。また、各買主端末41~43の画面には、不動産売却計画書にある売却先の種別に応じた販売価格も表示される。買主は、自分自身の購入目的から不動産売却計画書にある売却先の種別を参照して、種別に応じた不動産価値を参考にして入札価格を判断することができる。
【0063】
また、不動産売却計画書にある不動産物件周辺の地図情報を表示させつつ、オークション進行役若しくは買主がその地図上にある任意の一点を指定すると、その指定点に関連付けられた情報、例えば、拡大地図情報、生活環境情報などの関連情報が表示されるようになっている。このような関連情報は、不動産データベース165に格納された不動産情報から適宜選択できる。
【0064】
次に、
図7のステップS303において、入札の受付が開始される。この入札の受付は一定の期間継続され、その間に買手は入札価格を一度だけ入力する。そして、入札の受付期間が終了した後、先ず、入力の有無を判断する(ステップS304)。入札があった場合(ステップS304における「Y」)、オークション制御部22においてこの最高入札価格が予め設定した売主希望価格以上であるか否かの条件判定処理を行う(ステップS307)。この売主希望価格は、売主所望の最低希望価格であり、最高入札価格が売主希望価格以上である場合(ステップS307における「Y」)、その最終入札価格を落札価格とし(ステップS308)、この落札価格と落札者番号(ID番号)を表示し(ステップS309)、次いで、成約、不動産物件番号、落札価格及び落札者ID番号をデータ管理部25に伝送し、オークション結果データベース166に登録して(ステップS310)、オークション処理は終了する。
【0065】
一方、前記ステップS307において、入札がなかった場合(ステップS304における「N」)、或いはステップS307において最高入札価格が売主希望価格未満である場合(ステップS304における「N」)、オークション制御部22は、不動産データベース165を参照して売主が希望価格を下げることを承認しているか否かを調べ(ステップS305)、売主希望価格を下げることを承認していない場合には(ステップS305における「N」)、当該不動産物件の不成約が確定し、不成約をデータ管理部25のオークション結果データベース166に登録する(ステップS306)。
【0066】
他方、ステップS305において、売主希望価格を下げることを承認している場合には(ステップS305における「Y」)、最低価格を設定し直し、再度、前記ステップS301からオークション処理を開始する。他方、前記最高入札価格がその売主希望価格以下である場合は、最高入札価格を落札価格とし(ステップS308)、前記ステップS309、ステップS310の処理の後、オークション処理が終了する。
【0067】
(4)AI学習部
次いで、AI学習部3について詳述する。
図5及び
図6は、AI学習部3の構成を示すブロック図である。AI学習部3は、情報選択部12において適正な情報を選択する人工知能であり、本実施形態では、オークション制御部22による競売の結果を教師データとして、人工知能を学習させるシステムである。
【0068】
AI学習部3は、オークション結果を教師データとして学習した人工知能であるディープラーニング認識部31に対し、不動産売却計画書作成部1が作成した不動産売却計画書を入力し、人工知能であるディープラーニング認識部31の不動産売却計画書に記載された各種選択肢及び価格設定と、オークション結果である不動産の売却額とを対比する比較部としての役割を果たす。具体的にこのAI学習部3は、ディープラーニング認識部31に教師データとして入力されたオークション結果と同一物件についての不動産売却計画書に記載された売却価格とを対比し、その対比した結果が一致するかどうか、異なるとすればどの選択肢が誤っていたかを確認することによって、不動産売却計画書を作成する際に不動産売却計画書作成部1において情報選択部12が選択した各種選択肢の正当性を帰納法的に検証する。
【0069】
ディープラーニング認識部31は、いわゆるディープラーニング(深層学習)により、画像認識を行うモジュールである。このディープラーニングは、現在多くの分野で有用性が認められ、実用化が進んでいる。
【0070】
本実施形態においても、オークションの結果を、不動産売却計画書を作成する際の各種選択肢及び価格を自動設定のための学習データ(教師データ)として機能検証に利用する。具体的には、ディープラーニング認識部31では、所定のディープラーニングのアルゴリズムに従って、各種選択肢と販売価格との相関を解析し、その解析結果であるディープラーニング認識結果(価格予測AIモデル)D32を出力する。
【0071】
ディープラーニング認識部31に実装されたアルゴリズムとしては、本実施形態では、ニューラルネットワークの多層化、特に3層以上のものを備え、人間の脳のメカニズムを模倣した学習及び認識システムである。この認識システムに画像等のデータを入力すると、第1層から順番にデータが伝搬され、後段の各層で順番に学習が繰り返される。この過程では画像内部の特徴量(特徴ベクトル)が自動で計算される。
【0072】
この特徴量とは問題の解決に必要な本質的な変数であり、特定の概念を特徴づける変数である。この特徴量を抽出できれば問題の解決になり、パターン認識や画像認識に大きな効果が得られることがわかっている。ディープラーニング認識部31においても、不動産売却計画書D
31が入力されて、計画書中の特徴点(各種選択肢)を
特徴ベクトルとして階層的に複数抽出し、抽出された特徴
ベクトルの階層的な組合せパターンによりオブジェクトを認識する。この認識処理の概要を
図6に示す。同図に示すように、ディープラーニング認識部31の認識機能モジュールは、多クラス識別器であり、複数の物体が設定され、複数の物体の中から特定の特徴点
である特徴ベクトルを含むオブジェクト601(ここでは、例えば「所在地」)を検出する。この認識機能モジュールは、入力ユニット(入力層)607、第1重み係数608、隠れユニット(隠れ層)609、第2重み係数610、及び出力ユニット(出力層)611を有する。
【0073】
このとき入力ユニット607には複数個の特徴ベクトル602が入力される。第1重み係数608は、入力ユニット607からの出力に重み付けする。隠れユニット609は、入力ユニット607からの出力と第1重み係数608との線形結合を非線形変換する。第2重み係数610は隠れユニット609からの出力に重み付けをする。出力ユニット611は、各クラス(例えば、売却先候補毎の売却価格等)の識別確率を算出する。ここでは出力ユニット611を3つ示すが、これに限定されない。出力ユニット611の数は、物体識別器が検出可能な物体の数と同じである。出力ユニット611の数を増加させることによって、地震予想等の事象識別器が検出可能な物体が増加する。
【0074】
本実施形態に係るディープラーニング認識部31は、三層ニューラルネットワークの例であり、物体識別器は、第1重み係数608及び第2重み係数610を、誤差逆伝播法を用いて学習する。また、ディープラーニング認識部31は、ニューラルネットワークに限定されるものではなく、多層パーセプトロン及び隠れ層を複数層重ねたディープニューラルネットワークであってもよい。この場合、物体識別器は、第1重み係数608及び第2重み係数610をディープラーニング(深層学習)によって学習すればよい。
【0075】
さらに、
図5に示すように、ディープラーニング認識部31には、教師学習データD323を提供する教師データ提供部32が接続可能となっている。教師データ提供部32は、項目抽出部322と、教師データ作成部321と、キーワード処理部とを備えている。
【0076】
項目抽出部322は、ディープラーニング認識を行うために、認識対象となる画像中の特定物の領域分割(セグメンテーション)を行うモジュールである。詳述すると、ディープラーニング認識を行うためには、情報データ中の特定の項目や関連キーワードを抽出する必要があり、不動産価格に影響する各種事象に対応している。
【0077】
キーワード処理部323は、各々のキーワードと特定の情報ソースとの関連付けを行うモジュールである。この関連付けには、特定の情報ソースに関連付けられた特定のキーワードに対して関連する情報(メタデータ)を注釈として付与することであり、XML等の記述言語を用いてメタデータをタグ付けし、多様な情報を「情報の意味」と「情報の内容」に分けてテキストで記述する。
【0078】
このようにオークション結果に基づいて学習したディープラーニング認識部31に対しては、情報取得部11が収集した情報データD33が入力される。この入力を受けてディープラーニング認識部31では、情報データの解析を行い、学習結果を反映させて、最も適正な情報ソースを選択するとともに、各選択肢とともに演算された価格を情報選択部12に返答する。
【0079】
(変更例)
なお、以上説明した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0080】
図13を参照しながら、変更例に係るオークション処理の手順の一例を説明する。先ず、管理用端末装置15を通じてオークション制御部22にオークションの開始が指示されると、オークション制御部22の制御により、不動産データベース165に格納した不動産情報が選択されて、各買主端末41~43の画面に表示させる(ステップS401)。次に、管理用端末装置15から入力された販売価格の初期値若しくは予め不動産データベース165に記憶した初期値を開始価格として表示させる(ステップS402)。
【0081】
各端末41~43の画面には、不動産物件である家屋の外観とともに、「建坪率」「容積率」「斜線規制」などの当該不動産関連の法規制情報などが表示され、買主である不動産購入者などは、これら画像情報などを参考にしつつこの現在価格に応答するか否かを決める。ここで、表示するのに好適な不動産情報としては、現実味あるイメージと大量の情報を短時間で買主に提供することが可能な3次元画像や3次元動画像が挙げられる。具体的には、CG(コンピューターグラフィックス)による、不動産物件の外観や内部構成の3次元静止画像や3次元動画像、不動産物件周辺を撮影したビデオ画像などが含まれる。また、各買主端末41~43の画面には、不動産売却計画書にある売却先の種別に応じた販売価格も表示される。買主は、自分自身の購入目的から不動産売却計画書にある売却先の種別を参照して、種別に応じた不動産価値を参考にして入札価格を判断することができる。
【0082】
また、不動産売却計画書にある不動産物件周辺の地図情報を表示させつつ、オークション進行役若しくは買主がその地図上にある任意の一点を指定すると、その指定点に関連付けられた情報、例えば、拡大地図情報、生活環境情報などの関連情報が表示されるようになっている。このような関連情報は、不動産データベース165に格納された不動産情報から適宜選択でき。
【0083】
次に、
図13のステップS403において、現在価格が、予め設定された希望価格よりも小さいか否かを条件判定される。この希望価格は、売主所望の落札価格であり、予め不動産データベース165に格納されている。現在の入札価格(現在価格)が希望価格以上である場合(ステップS403における「Y」)、各買主用端末41~43の画面に「売切」を表示する。これにより、各買主は、売主所望の価格レベルに達したことを知ることができる。
【0084】
一方、現在価格が希望価格未満である場合(ステップS403における「N」)、次のステップに進み、現在価格に対して複数の買主の応答があるか否かを判定する(ステップS405)。複数の買主がある場合、管理用端末装置15での操作又はオークション制御部22の制御により、現在価格を上げて(ステップS406)画面に表示させる(ステップS402)。応答する買主が一人になるまで、前記ステップS402~S406の処理を繰り返す。次に、応答者が一人になると、オークション制御部22においてこの最終入札価格が予め設定した売主希望価格以上であるか否かの条件判定処理を行う(ステップS407)。この売主希望価格は、売主所望の最低希望価格である。最高入札価格が売主希望価格以上である場合、その最終入札価格を落札価格とし(ステップS408)、この落札価格と落札者番号(ID番号)を表示し、次いで、成約、不動産物件番号、落札価格及び落札者ID番号をデータ管理部25に伝送し、オークション結果データベース166に登録して(ステップS410)、オークション処理は終了する。
【0085】
他方、前記ステップS407において最高入札価格が売主希望価格未満である場合、オークション制御部22は、不動産データベース165を参照して売主が提示可能な新たな売主希望価格が記録されているか否かを調べ(ステップS411)、記録されていない場合は、当該不動産物件の不成約が確定し、不成約をデータ管理部25のオークション結果データベース166に登録する(ステップS412)。一方、不動産データベース165を参照して新たな提示価格がある場合、その提示した売主希望価格が最高入札価格以下であるか否かの条件判定を行う(ステップS413)。前記売主希望価格が最高入札価格以下とならない場合は、現在価格の初期値を指定し直し、再度、前記ステップS401からオークション処理を開始する。他方、前記最高入札価格がその売主希望価格以下である場合は、最高入札価格を落札価格とし(ステップS408)、前記ステップS409、ステップS410の処理の後、オークション処理は終了する。
【0086】
なお、前記ステップS413において売主希望価格が最高入札価格以下とならず、再度、前記ステップ1からオークション処理を開始する場合、上位数人に限ったオークションを行うように制御してもよい。また、上記オークション処理では、現在価格を上げる場合のみを述べたが、入札者がいない場合に、現在価格を下げることで最終価格を決める処理を行うことも当然にできる。
【0087】
(作用・効果)
以上述べたように、本実施形態によれば、不動産取引に際し、売却物件の利用方法を模索して「本当の資産価値」を見い出すとともに、売却後の経費リスクを考慮した不動産売却計画書を売主・買主の双方に提案し、売却後のトラブルを回避しつつ、適正な不動産取引を実現できる。また、本実施形態によれば、売却後に発生する税金や還付金を売主と買主の双方に提案することができるため、士業や専門家集団が徹底検証して売却後の経費リスクの軽減を提案することも可能となる。
【0088】
特に、本実施形態では、自動的にインターネット上の情報を収集するため、操作者の労力を軽減することができる。また、収集した情報データの中から適切な情報を選択するにあたり、その選択操作を操作者が行うことができるため、操作者の経験や知識を生かした不動産評価を行うことができる。さらに、本実施形態では、このような必要な情報の選択を人工知能によって自動的に行うことも可能であることから、操作者の省力化を図ることもでき、より適正な不動産売却計画書の作成が可能となる。この人工知能は、オークション実行部2によって売却された結果や、オークションの経過などを教師データとして学習することから、より実情に即した判断ができるようになり、より信憑性の高い不動産売却計画書をより簡便に提供できるようになる。
【符号の説明】
【0089】
B1~B3…買主
1…不動産売却計画書作成部
2…オークション実行部
3…AI学習部
4…通信ネットワーク
10…買主用端末
11…情報取得部
11a…不動産情報取得部
11b…ユーザー情報設定部
11c…売却先候補設定部
11d…情報データ収集部
12…情報選択部
13…不動産評価値算出部
14…出力データ生成部
15…管理用端末装置
16…データベース
21…入出力インターフェース
22…オークション制御部
23…通信インターフェース
24…買主認証部
25…データ管理部
31…ディープラーニング認識部
32…教師データ提供部
41~43…買主用端末
51…アドレスデータベース
53…情報データベース
111…不動産情報取得部
112…ユーザー情報設定部
113…売却先候補設定部
114…情報データ収集部
114a…リンク解析部
114b…タグ解析部
114c…検証項目検索部
114d…情報抽出部
114f…アクセス制御部
114g…データ送受部
114e…コマンド実行部
161…検証項目データベース
162…アドレスデータベース
163…情報データベース
164…買主データベース
165…不動産データベース
166…オークション結果データベース
321…教師データ作成部
322…項目抽出部
323…キーワード処理部