(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/18 20210101AFI20231127BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20231127BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20231127BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20231127BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20231127BHJP
【FI】
G03B17/18
G03B13/36
H04N23/63
H04N23/67
G02B7/28 N
(21)【出願番号】P 2019120395
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】澁野 剛治
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-264635(JP,A)
【文献】特開2015-026880(JP,A)
【文献】特開2005-269604(JP,A)
【文献】特開2005-173163(JP,A)
【文献】特開2005-070474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/18
G02B 7/28
G03B 13/36
H04N 23/67
H04N 23/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを含む光学系を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する撮像部と、
前記画像データが示す画像を表示する表示部と、
合焦させる被写体距離を近くする又は遠くする指示を示すユーザ操作を受け付ける操作部と、
合焦の状態に関する評価値に応じて、前記光学系における光軸に沿って前記フォーカスレンズの位置を調整する合焦動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記フォーカスレンズの位置毎に前記合焦の状態に関する評価値を示すグラフを表示するように、前記表示部を制御し、
前記制御部は、
前記ユーザ操作に応じて、前記フォーカスレンズの現在位置から前記合焦動作を開始する開始位置までシフト幅だけ前記フォーカスレンズの位置をシフトさせ、前記シフト幅は、
前記評価値のカーブにおいて前記現在位置の近
傍におけるピーク位置を検出対象から外すように、前記ピーク位置を検出する際の推
定のピーク幅
または所定の幅よりも広い幅であり、
前記シフト後の前記開始位置から前記合焦動作を開始させる、
撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記グラフが表示された状態で前記操作部に入力されるユーザ操作に応じて、前記フォーカスレンズを移動させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記グラフにおいて前記フォーカスレンズの現在位置を示すポインタを前記表示部に表示させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記グラフにおいて、前記合焦動作により検出された合焦位置を示すマーカを前記表示部に表示させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記マーカは、前記合焦位置において前記撮像部によって生成された画像データに基づくサムネイル画像で構成される
請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記グラフが表示された状態で前記フォーカスレンズの位置がシフトして前記合焦動作が行われると、前記制御部は、
前記表示されたグラフにおける前記シフト幅内には前記評価値を追加せずに、前記フォーカスレンズの位置がシフトした後で得られた前記評価値を、前記表示されたグラフに追加するように、前記グラフを更新する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記合焦動作を連続的に繰り返す動作の実行中に、前記指示があった場合、前記フォーカスレンズの位置をシフトして再度、前記合焦動作を実行する
請求項6に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合焦動作を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、デジタルスチルカメラ及びデジタルビデオカメラ等に利用されるオートフォーカス(AF)技術に関して、背景抜けを生じさせることなくAF時間を短縮することを目的とした自動合焦装置を開示している。この自動合焦装置は、フォーカスレンズを光軸方向に移動させて得られる画像信号から焦点評価値を取得するスキャン動作を行う。自動合焦装置は、フォーカスレンズを初期位置から光軸方向へ移動させることによってスキャン動作の開始位置への移動を行う際に、初期位置を含むゾーンの次のゾーンにピーク位置を検出した場合には、フォーカスレンズの移動方向を反転させている。この場合、スキャン動作を行わずにピーク位置にフォーカスレンズが移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、所望の合焦状態を得やすくすることができる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における撮像装置は、撮像部と、表示部と、操作部と、制御部とを備える。撮像部は、フォーカスレンズを含む光学系を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する。表示部は、画像データが示す画像を表示する。操作部は、ユーザの操作を受け付ける。制御部は、合焦の状態に関する評価値に応じて、光学系における光軸に沿ってフォーカスレンズの位置を調整する合焦動作を制御する。制御部は、フォーカスレンズの位置毎に合焦の状態に関する評価値を示すグラフを表示するように、表示部を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における撮像装置によれば、所望の合焦状態を得やすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係るデジタルカメラの構成を示すブロック図
【
図3A】デジタルカメラにおいて被写体の背景に合焦した合焦状態を例示する図
【
図3B】
図3Aの状況からニアシフト操作後の合焦状態を例示する図
【
図4A】デジタルカメラにおいて被写体に対する障害物に合焦した合焦状態を例示する図
【
図4B】
図4Aの状況からファーシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する図
【
図5】実施形態1にかかるデジタルカメラの撮影動作を例示するフローチャート
【
図6A】デジタルカメラにおける通常のオートフォーカスの動作例を示す図
【
図6B】ニアシフト機能を用いたオートフォーカスの動作例を示す図
【
図6C】ファーシフト機能を用いたオートフォーカスの動作例を示す図
【
図7】デジタルカメラにおける山登りAF動作を例示するフローチャート
【
図8】ニアシフト機能を用いたオートフォーカスの動作の別例を示す図
【
図9】デジタルカメラにおける合焦グラフの表示例を示す図
【
図10】デジタルカメラにおけるグラフ表示処理を例示するフローチャート
【
図11A】
図9の構図における初期の状態を例示する表示例を示す図
【
図13】実施形態2にかかるデジタルカメラの撮影動作を例示するフローチャート
【
図14】デジタルカメラにおける合焦動作の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における実施の形態を、図面を適宜参照しながら説明する。ただし、詳細な説明において、従来技術および実質的に同一の構成に関する説明のうち不必要な部分は省略されることもある。これは、説明を簡単にするためである。また、以下の説明および添付の図面は、当業者が本開示を充分に理解できるよう開示されるのであって、特許請求の範囲の主題を限定することを意図されていない。
【0009】
(実施形態1)
以下では、本開示に係る撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの構成および動作について説明する。
【0010】
1.構成
図1は、実施形態1に係るデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。本実施形態のデジタルカメラ1は、カメラ本体100とそれに着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0011】
1-1.カメラ本体
カメラ本体100(撮像装置の一例)は、画像センサ110と、液晶モニタ120と、操作部130と、カメラ制御部140と、ボディマウント150と、電源160と、カードスロット170とを備える。
【0012】
カメラ制御部140は、操作部130からの指示に応じて、画像センサ110等の構成要素を制御することでデジタルカメラ1全体の動作を制御する。カメラ制御部140は、垂直同期信号をタイミング発生器112に送信する。これと並行して、カメラ制御部140は、露光同期信号を生成する。カメラ制御部140は、生成した露光同期信号を、ボディマウント150及びレンズマウント250を介して、レンズ制御部240に周期的に送信する。カメラ制御部140は、制御動作や画像処理動作の際に、RAM141をワークメモリとして使用する。
【0013】
画像センサ110は、交換レンズ200を介して入射される被写体像を撮像して画像データを生成する素子である。画像センサ110は、例えばCMOSイメージセンサである。生成された画像データは、ADコンバータ111でデジタル化される。デジタル化された画像データは、カメラ制御部140により所定の画像処理が施される。所定の画像処理とは、例えば、ガンマ補正処理、ホワイトバランス補正処理、キズ補正処理、YC変換処理、電子ズーム処理、JPEG圧縮処理である。画像センサ110は、CCDまたはNMOSイメージセンサ等であってもよい。
【0014】
画像センサ110は、タイミング発生器112により制御されるタイミングで動作する。画像センサ110は、記録用の静止画像もしくは動画像またはスルー画像を生成する。スルー画像は、主に動画像であり、ユーザが静止画像の撮像のための構図を決めるために液晶モニタ120に表示される。
【0015】
液晶モニタ120はスルー画像等の画像およびメニュー画面等の種々の情報を表示する。液晶モニタに代えて、他の種類の表示デバイス、例えば、有機ELディスプレイデバイスを使用してもよい。
【0016】
操作部130は、撮影開始を指示するためのレリーズ釦、撮影モードを設定するためのモードダイアル、及び電源スイッチ等の種々の操作部材を含む。カメラ本体100における操作部130を
図2に例示する。
【0017】
図2は、デジタルカメラ1の背面を示した図である。
図2では、操作部130の例として、レリーズ釦131、選択釦132、及び決定釦133、タッチパネル135、および複数のファンクション釦136,137(以下「Fn釦」という)が示されている。操作部130は、ユーザによる操作を受け付けると、カメラ制御部140に種々の指示信号を送信する。
【0018】
レリーズ釦131は、二段押下式のボタンである。レリーズ釦131がユーザにより半押し操作されると、カメラ制御部140はオートフォーカス制御(AF制御)やオート露出制御(AE制御)などを実行する。また、レリーズ釦131がユーザにより全押し操作されると、カメラ制御部140は、押下操作のタイミングに撮像された画像データを記録画像としてメモリカード171等に記録する。
【0019】
選択釦132は、上下左右方向に設けられた押下式ボタンである。ユーザは、上下左右方向のいずれかの選択釦132を押下することにより、液晶モニタ120に表示される各種条件項目を選択したり、カーソルを移動したりすることができる。
【0020】
決定釦133は、押下式ボタンである。デジタルカメラ1が撮影モードあるいは再生モードにあるときに、決定釦133がユーザにより押下されると、カメラ制御部140は液晶モニタ120にメニュー画面を表示する。メニュー画面は、撮影/再生のための各種条件を設定するための画面である。決定釦133が各種条件の設定項目が選択されているときに押下されると、カメラ制御部140は、選択された項目の設定を確定する。
【0021】
タッチパネル135は、液晶モニタ120の表示画面と重畳して配置され、ユーザの指による表示画面上へのタッチ操作を検出する。これにより、ユーザは、液晶モニタ120に表示された画像に対する領域の指定等の操作を行える。
【0022】
Fn釦136,137は、押下式ボタンである。各Fn釦136,137には、例えばメニュー画面における設定により、後述するニア/ファーシフト機能などのユーザ所望の機能を割り当てることができる。
【0023】
図1に戻り、カードスロット170は、メモリカード171を装着可能であり、カメラ制御部140からの制御に基づいてメモリカード171を制御する。デジタルカメラ1は、メモリカード171に対して画像データを格納したり、メモリカード171から画像データを読み出したりすることができる。
【0024】
電源160は、デジタルカメラ1内の各要素に電力を供給する回路である。
【0025】
ボディマウント150は、交換レンズ200のレンズマウント250と機械的及び電気的に接続可能である。ボディマウント150は、レンズマウント250を介して、交換レンズ200との間で、データを送受信可能である。ボディマウント150は、カメラ制御部140から受信した露光同期信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、カメラ制御部140から受信したその他の制御信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、ボディマウント150は、レンズマウント250を介してレンズ制御部240から受信した信号をカメラ制御部140に送信する。また、ボディマウント150は、電源160からの電力を、レンズマウント250を介して交換レンズ200全体に供給する。
【0026】
また、カメラ本体100は、BIS機能(画像センサ110のシフトにより、手振れを補正する機能)を実現する構成として、カメラ本体100のぶれを検出するジャイロセンサ184(ぶれ検出部)と、ジャイロセンサ184の検出結果に基づきぶれ補正処理を制御するBIS処理部183とをさらに備える。さらに、カメラ本体100は、画像センサ110を移動させるセンサ駆動部181と、画像センサ110の位置を検出する位置センサ182とを備える。
【0027】
センサ駆動部181は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置センサ182は、光学系の光軸に垂直な面内における画像センサ110の位置を検出するセンサである。位置センサ182は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。
【0028】
BIS処理部183は、ジャイロセンサ184からの信号及び位置センサ182からの信号に基づき、センサ駆動部181を制御して、カメラ本体100のぶれを相殺するように画像センサ110を光軸に垂直な面内にシフトさせる。センサ駆動部181により画像センサ110を駆動できる範囲には機構的に制限がある。画像センサ110を機構的に駆動できる範囲を「駆動可能範囲」という。
【0029】
1-2.交換レンズ
交換レンズ200は、光学系と、レンズ制御部240と、レンズマウント250とを備える。光学系は、ズームレンズ210と、OIS(Optical Image Stabilizer)レンズ220と、フォーカスレンズ230と、絞り260とを含む。
【0030】
ズームレンズ210は、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。ズームレンズ210は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。ズームレンズ210は、ズームレンズ駆動部211により駆動される。ズームレンズ駆動部211は、使用者が操作可能なズームリングを含む。または、ズームレンズ駆動部211は、ズームレバー及びアクチュエータまたはモータを含んでもよい。ズームレンズ駆動部211は、使用者による操作に応じてズームレンズ210を光学系の光軸方向に沿って移動させる。
【0031】
フォーカスレンズ230は、光学系で画像センサ110上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ230は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。フォーカスレンズ230は、フォーカスレンズ駆動部233により駆動される。
【0032】
フォーカスレンズ駆動部233はアクチュエータまたはモータを含み、レンズ制御部240の制御に基づいてフォーカスレンズ230を光学系の光軸に沿って移動させる。フォーカスレンズ駆動部233は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0033】
OISレンズ220は、OIS機能(OISレンズ220のシフトにより、手振れを補正する機能)において、交換レンズ200の光学系で形成される被写体像のぶれを補正するためのレンズである。OISレンズ220は、デジタルカメラ1のぶれを相殺する方向に移動することにより、画像センサ110上の被写体像のぶれを小さくする。OISレンズ220は1枚又は複数枚のレンズで構成される。OISレンズ220はOIS駆動部221により駆動される。
【0034】
OIS駆動部221は、OIS処理部223からの制御を受けて、光学系の光軸に垂直な面内でOISレンズ220をシフトする。OIS駆動部221によりOISレンズ220を駆動できる範囲には機構的に制限がある。OIS駆動部221によりOISレンズ220を機構的に駆動できる範囲(駆動可能範囲)という。OIS駆動部221は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置センサ222は、光学系の光軸に垂直な面内におけるOISレンズ220の位置を検出するセンサである。位置センサ222は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。OIS処理部223は、位置センサ222の出力及びジャイロセンサ224(ぶれ検出器)の出力に基づいてOIS駆動部221を制御する。
【0035】
絞り260は画像センサ110に入射される光の量を調整する。絞り260は、絞り駆動部262により駆動され、その開口の大きさが制御される。絞り駆動部262はモータまたはアクチュエータを含む。
【0036】
ジャイロセンサ184または224は、デジタルカメラ1の単位時間あたりの角度変化すなわち角速度に基づいて、ヨーイング方向及びピッチング方向のぶれ(振動)を検出する。ジャイロセンサ184または224は、検出したぶれの量(角速度)を示す角速度信号をBIS処理部183またはOIS処理部223に出力する。ジャイロセンサ184または224によって出力された角速度信号は、手ぶれやメカノイズ等に起因した幅広い周波数成分を含み得る。ジャイロセンサに代えて、デジタルカメラ1のぶれを検出できる他のセンサを使用することもできる。
【0037】
カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータなどで構成してもよい。例えば、カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGAまたはASIC等のプロセッサで実現できる。
【0038】
2.動作
以上のように構成されるデジタルカメラ1の動作について、以下説明する。
【0039】
デジタルカメラ1は、例えば交換レンズ200がカメラ本体100に装着されて撮影準備のための動作を完了すると、ライブビューモードで動作可能である。ライブビューモードは、画像センサ110が順次、生成した画像データが示す画像をスルー画像として液晶モニタ120に表示する動作モードである。
【0040】
撮影準備のための動作では、カメラ本体100と交換レンズ200間のデータ通信により、カメラ制御部140が、レンズ制御部240からレンズデータ及びAF用データ等を取得する。レンズデータは、レンズ名称、Fナンバー、焦点距離等の交換レンズ200特有の特性値を示すデータである。AF用データは、オートフォーカスを動作させるために必要なデータであり、例えば、フォーカス駆動速度、フォーカスシフト量、像倍率、コントラストAF可否情報の少なくともいずれかを含む。こうした各データは、予めフラッシュメモリ242に格納されている。
【0041】
ライブビューモードでは、スルー画像が動画で液晶モニタ120に表示されるので、ユーザは、液晶モニタ120を見ながら静止画像を撮像するための構図を決めることができる。ライブビューモードとするか否かはユーザが選択可能である。例えば、ライブビューモードの代わりに、電子式ビューファインダ(図示省略)において画像表示を行う動作モードが用いられてもよい。以下では、ライブビューモードが用いられる例を説明する。
【0042】
2-1.ニア/ファーシフト機能について
本実施形態のデジタルカメラ1は、例えばユーザ操作に基づき、オートフォーカスの対象となる被写体距離を近くしたり遠くしたりする機能であるニア/ファーシフト機能を提供する。ニア/ファーシフト機能について、
図3A~4Bを用いて説明する。
【0043】
図3A,3Bは、本実施形態のデジタルカメラ1におけるニアシフト機能を説明するための図である。
【0044】
図3Aは、デジタルカメラ1において、被写体51の背景52に合焦した合焦状態を例示する。例えばライブビューモードの液晶モニタ120を見ながら、ユーザがレリーズ釦131を半押し操作し、デジタルカメラ1のオートフォーカスを動作させた際に、こうした合焦状態になることが想定される。
【0045】
図3Aの例では、所望の被写体51と、被写体51までの距離よりも遠い距離にある背景52とが、AFエリア50の範囲内に含まれている。AFエリア50は、オートフォーカスの動作時に、撮像される画像中で合焦の対象として検知される領域であり、適宜デジタルカメラ1に設定される。本例では、オートフォーカスにおいてAFエリア50内の背景52に合焦してしまい、所望の被写体51にピントが合わない状況になっている。
【0046】
上記のような状況に対して、本実施形態のニアシフト機能によると、デジタルカメラ1は、合焦させる被写体距離を近くするための指示を受け付ける。以下、こうした指示を示すユーザ操作を「ニアシフト操作」という。
図3Bに、
図3Aの状況からニアシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する。
【0047】
図4A,4Bは、本実施形態のデジタルカメラ1におけるファーシフト機能を説明するための図である。
【0048】
図4Aは、被写体51に対する障害物53に合焦した合焦状態を例示する。本例では、AFエリア50の範囲内に、所望の被写体51と、被写体51までの距離よりも近い距離にある(柵等の)障害物53とが含まれている。本例では、オートフォーカスにおいてAFエリア50内の障害物53に合焦してしまい、所望の被写体51にピントが合わない状況になっている。
【0049】
上記のような状況に対して、本実施形態のファーシフト機能によると、デジタルカメラ1は、合焦させる被写体距離を遠くするための指示を受け付ける。以下、こうした指示を示すユーザ操作を「ファーシフト操作」という。
図4Bに、
図4Aの状況からファーシフト操作が入力された後の合焦状態を例示する。
【0050】
図3B,4Bに示すように、本実施形態のニア/ファーシフト機能は、デジタルカメラ1においてオートフォーカス時に被写体51への合焦の障害となる背景52又は障害物53等がある状況下であっても、ユーザの意図した被写体51に合焦させることを可能にする。
【0051】
本実施形態のデジタルカメラ1は、ニア/ファーシフト操作に応じてフォーカスレンズ230の位置をシフトした上でオートフォーカスを開始する簡単な制御により、上記のようなニア/ファーシフト機能を実現する。以下、デジタルカメラ1の動作の詳細を説明する。
【0052】
2-2.動作の詳細
本実施形態のニア/ファーシフト機能を実行するデジタルカメラ1の動作の詳細を、
図5~6Cを用いて説明する。以下では、一例としてAFS(Auto Focus Single)モードにおけるデジタルカメラ1の動作を説明する。AFSモードは、オートフォーカスの動作モードにおいて、レリーズ釦131の半押しを継続すると、自動的に合焦状態を検出する合焦動作を一度、実行して得られた合焦状態を維持する動作モードである。
【0053】
図5は、実施形態1にかかるデジタルカメラ1の撮影動作を例示するフローチャートである。
図5に示すフローは、デジタルカメラ1がオートフォーカスに関してAFSモードに設定された状態で、例えばライブビューモードの動作中に開始する。
図5のフローチャートに示す各処理は、例えばカメラ制御部140によって実行される。
【0054】
まず、カメラ制御部140は、各種の操作部130からの入力に基づいてユーザ操作を受け付けたか否かを判断する(S1~S3)。判断対象とするユーザ操作は、例えばレリーズ釦131の半押し操作(S1)、ニアシフト操作(S2)、及びファーシフト操作(S3)を含む。例えば、ニアシフト操作はFn釦136の押下操作に予め設定でき、ファーシフト操作は別のFn釦137の押下操作に設定できる。カメラ制御部140は、上記いずれかのユーザ操作を受け付けるまで、各種操作部130からの入力を監視し続ける(S1~S3でNO)。
【0055】
カメラ制御部140は、レリーズ釦131が半押しされたと判断すると(S1でYES)、例えば通常のオートフォーカスを動作させるためのAF開始位置およびAF開始方向を設定する(S4,S5)。本実施形態では、オートフォーカスの方式にコントラスト方式を採用し、山登りAF動作(S10)で合焦動作を行う。通常のオートフォーカスの動作例を、
図6Aに例示する。
【0056】
図6Aは、山登りAF動作(S10)で得られるコントラストカーブC1の一例を示す。横軸はフォーカスレンズ位置を示し、縦軸はコントラスト値を示す。フォーカスレンズ位置は、フォーカスレンズ230の光軸に沿った位置である。コントラスト値は、画像のコントラストに基づき合焦状態を評価する評価値の一例である。以下、コントラストカーブC1において、コントラスト値がデジタルカメラ1により得られた部分を図中に実線で示し、得られていない部分を破線で示す。
【0057】
コントラストカーブC1は、フォーカスレンズ位置毎に撮像される画像に基づくコントラスト値によって規定される。フォーカスレンズ位置は、デジタルカメラ1に対して焦点が最も近くなる至近端と最も遠くなる無限端との間で規定される。以下、光軸に沿った方向において、フォーカスレンズ位置が至近端に向かう向きを「ニア側(或いはニア方向)」といい、無限端に向かう向きを「ファー側(或いはファー方向)」という。
【0058】
山登りAF動作(S10)は、フォーカスレンズ230の位置をニア側又はファー側に変化させながら逐次、コントラスト値を求めるスキャン動作を行って、コントラストカーブC1におけるピーク位置を合焦位置として検出する(詳細は後述)。AF開始位置P1は、山登りAF動作において上記のスキャン動作(合焦動作の一例)を始める際にフォーカスレンズ230が位置する開始位置である。AF開始方向D1は、スキャン動作の初期にフォーカスレンズ230を駆動する方向である。
【0059】
図6Aの例のコントラストカーブC1は、3つのピーク位置P10,P11,P12を有している。通常のオートフォーカス時に、カメラ制御部140は、例えば、フォーカスレンズ230の現在位置P0から所定幅W0だけファー側にずらした位置にAF開始位置P1を設定し(S4)、且つAF開始方向D1を逆向き、即ちニア方向に設定する(S5)。所定幅W0は、例えばコントラストカーブC1において現在位置P0近傍の範囲内にあるピーク位置を検出対象とする観点から、想定されるピーク幅(例えば半値幅)よりも小さい幅に設定される。
【0060】
上記のように設定されたAF開始位置P1及びAF開始方向D1に従って、カメラ制御部140は山登りAF動作(S10)の制御を行う。こうした通常のオートフォーカスによると、
図6Aに例示するように、フォーカスレンズ230の(レリーズ釦131の半押し時の)現在位置P0近傍におけるコントラストカーブC1のピーク位置P10が、合焦位置として検出される。
【0061】
一方、ユーザがニアシフト操作を入力すると(S2でYES)、カメラ制御部140は、AF開始位置P1をニア側にシフトし(S6)、且つAF開始方向D1をニア方向に設定する(S7)。ステップS6,S7は、通常よりも近距離にある被写体を対象としてオートフォーカスを動作させるための処理である。この場合の動作例を、
図6Bに例示する。
【0062】
図6Bの動作例は、
図6Aと同様のフォーカスレンズ230の現在位置P0において、ニアシフト操作が入力された場合を例示する。カメラ制御部140は、例えばフォーカスレンズ230の現在位置P0からニア方向にシフト幅W1分シフトした位置に、AF開始位置P1を設定する(S7)。シフト幅W1は、例えば現在位置P0近傍のピーク位置P10を検出対象から外す観点から、通常時の所定幅W0、或いは想定されるピーク幅よりも大きい幅に設定される。例えば、シフト幅W1は、被写界深度のN倍(Nは例えば50以上)に設定される。
【0063】
さらに、カメラ制御部140は、シフトした向きと同じニア方向にAF開始方向D1を設定して(S7)、山登りAF動作を実行する(S10)。例えば
図6Bに示すように、まずフォーカスレンズ230が、現在位置P0からニア方向に向けてAF開始位置P1まで移動する。こうした移動時に、コントラストカーブC1は特に求められていない。その後、AF開始位置P1から更にニア方向に向けて進められるスキャン動作中に、コントラストカーブC1が求められる。これにより、
図6Bの例ではニア側のピーク位置P11が、合焦位置として検出されている。
【0064】
また、ユーザがファーシフト操作を入力した場合(S3でYES)、カメラ制御部140は、AF開始位置P1をファー側にシフトし(S8)、且つAF開始方向D1をファー方向に設定する(S9)。ステップS8,S9は、通常よりも遠距離離にある被写体を対象としてオートフォーカスを動作させるための処理である。この場合の動作例を、
図6Cに例示する。
【0065】
図6Cの動作例は、
図6A,6Bと同様のフォーカスレンズ230の現在位置P0において、ファーシフト操作が入力された場合を例示する。カメラ制御部140は、例えばフォーカスレンズ230の現在位置P0からファー方向にシフト幅W2分シフトした位置に、AF開始位置P1を設定する(S8)。こうしたファーシフト機能のシフト幅W2は、例えば上記ニアシフト機能のシフト幅W1と同様に設定される。
【0066】
さらに、カメラ制御部140は、シフトした向きと同じファー方向にAF開始方向D1を設定して(S9)、山登りAF動作を実行する(S10)。この際のコントラストカーブC1は、
図6Cに示すように、フォーカスレンズ230が現在位置P0からファー方向に向けてAF開始位置P1まで移動する際には特に求められず、AF開始位置P1から更にファー方向に向けて開始されるスキャン動作中に求められる。これにより、
図6Cの例ではファー側のピーク位置P12が、合焦位置として検出されている。
【0067】
図5に戻り、山登りAF動作(S10)の結果としてフォーカスレンズ230が合焦位置にある合焦状態において、カメラ制御部140は、ステップS1~S3で入力されたユーザ操作が解除されたか否かを判断する(S11)。例えば、レリーズ釦131、ニアシフト機能のFn釦136、およびファーシフト機能のFn釦137の内の少なくとも1つに対するユーザ操作が継続している場合、ステップS11でNOに進む。
【0068】
カメラ制御部140は、上記ユーザ操作の継続中(S11でNO)、レリーズ釦131が全押しされたか否かを判断する(S12)。レリーズ釦131が全押しされると(S12でYES)、カメラ制御部140は、撮影を実行する(S13)。この際、カメラ制御部140は、画像センサ110の撮像結果による画像データをメモリカード171に記録する。その後、カメラ制御部140は、ステップS1以降の処理を再度、実行する。
【0069】
一方、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が全押しされていないとき(S12でNO)、ステップS11に戻る。これにより、ステップS11前の山登りAF動作(S10)で得られた合焦状態を維持するAFSの動作が実現される。
【0070】
また、カメラ制御部140は、ステップS1~S3の何れのユーザ操作も継続していない場合(S11でYES)、ステップS1に戻る。その後に再度、ユーザ操作が入力されると(S1~S3でYES)、ステップS10後のフォーカスレンズ230の位置を現在位置として再度、ステップS4~S9の処理が入力されたユーザ操作に応じて行われる。
【0071】
以上の処理によると、ユーザ操作に応じて、合焦動作の対象とする被写体距離を近くしたり遠くしたりするニア/ファーシフト機能を実現できる。例えば
図3Aの状況においてユーザがニアシフト操作を入力すると(S2でYES)、背景52の合焦位置のような現在位置P0近傍から、ニア側に離れたピーク位置P11が検出される。これにより、
図3Bに例示するような所望の被写体51に対する合焦状態が得られる。また、例えば
図4Aの状況においてユーザがファーシフト操作を入力すると(S3でYES)、障害物53からファー側に離れたピーク位置P12を検出して、
図4Bに例示するような所望の合焦状態が得られる。
【0072】
また、以上のようなニア/ファーシフト操作は、例えば各Fn釦136,137の押下と解除を繰り返す(S2,S3,S11)ことにより、複数回、入力可能である。これにより、コントラストカーブC1において多数のピーク位置P10~P12がある場合に、ニア/ファーシフト操作を繰り返すことで、ユーザ所望のピーク位置に選択的に合焦させることができる。この際、例えば各シフト幅W1,W2の大きさを異ならせておくことで、上記のユーザ操作により、所望のピーク位置に行き着き易くすることができる。
【0073】
2-3.山登りAF動作について
山登りAF動作(
図5のS10)の詳細を、
図7を用いて説明する。
【0074】
図7は、デジタルカメラ1における山登りAF動作を例示するフローチャートである。
図7のフローチャートに示す処理は、
図5のステップS1~S3のいずれかで受け付けたユーザ操作に応じて、AF開始位置及びAF開始方向D1が設定された状態(S4~S6)で実行される。
【0075】
まず、カメラ制御部140は、設定されたAF開始位置P1にフォーカスレンズ230を移動するためのコマンドを、レンズ制御部240に送信する(S51)。レンズ制御部240は、受信したコマンドに従ってフォーカスレンズ駆動部233を制御し、フォーカスレンズ230を現在位置P0から当該AF開始位置P1に移動させる。例えば、ニア/ファーシフト操作が入力された場合(
図5のS2,S3)、フォーカスレンズ駆動部233は、それぞれニア/ファー方向に向けて、通常時の所定幅W0よりも大きいシフト幅W1,W2分、フォーカスレンズ230を駆動する。
【0076】
また、カメラ制御部140は、設定されたAF開始方向D1に基づくコマンドをレンズ制御部240に送信して、山登りAF動作におけるスキャン動作を開始させる(S52)。レンズ制御部240は、フォーカスレンズ230がAF開始位置P1に到ってから、フォーカスレンズ駆動部233の制御方法をスキャン動作用の制御方法に変更して、受信したコマンドが示すAF開始方向D1に向けてフォーカスレンズ230を徐々に(例えば所定のピッチ幅で)進行させる。
【0077】
また、ステップS52から開始されるスキャン動作中に、カメラ制御部140は、レンズ制御部240等へ露光同期信号を送信し続ける。レンズ制御部240は、露光同期信号に関連付けて、当該信号に応じた時点におけるフォーカスレンズ230の現在位置を示すレンズ位置情報をRAM241に保存する。画像センサ110は、露光期間中に露光され、生成された画像データを、ADコンバータ111を介してカメラ制御部140に順次、出力する。
【0078】
カメラ制御部140は、画像センサ110からの画像データに基づいて、コントラスト値を算出する(S53)。具体的に、カメラ制御部140は、1フレームの画像データから輝度信号を求め、輝度信号の画面内における高周波成分を積算して、コントラスト値を求める。こうして算出したコントラスト値は、露光同期信号と関連付けた状態でRAM141に保存される。コントラスト値の算出に用いる高周波の空間周波数帯は、例えばコントラストカーブC1中のピーク部分を先鋭にする観点、及び雑音の影響を回避する観点等から適宜設定される。
【0079】
さらに、カメラ制御部140は、レンズ制御部240にレンズ位置情報を要求し、レンズ制御部240からRAM241に保存されたレンズ位置情報を取得する(S54)。本実施形態において、画像センサ110が1フレーム分の撮像を行うごとに、カメラ制御部140はレンズ位置情報の要求を送信する。
【0080】
次に、カメラ制御部140は、RAM141に格納したコントラスト値と、取得したレンズ位置情報とを対応付けて(S55)、コントラストカーブC1を示す情報としてRAM141に格納する。コントラスト値とレンズ位置情報とは、互いに露光同期信号に関連付けられていることから、カメラ制御部140は、コントラスト値をレンズ位置情報と関連付けて保存することができる。
【0081】
以上のような対応付けによって得られるコントラストカーブC1の情報に基づいて、カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230の合焦位置が検出されたか否かを判断する(S56)。ステップS56の判断は、コントラストカーブC1がピーク値すなわち極大値となるレンズ位置が抽出されたか否かに応じて行われる。
【0082】
フォーカスレンズ230の合焦位置が検出されていない場合(S56でNO)、カメラ制御部140及びレンズ制御部240はステップS53以降の処理を繰り返し、スキャン動作を継続する。この際にフォーカスレンズ230を進めるスキャン動作の進行方向は、例えばコントラストカーブC1の勾配に応じて決定される(S57,S58)。
【0083】
例えば、カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230の現在位置の近傍における勾配が、現在の進行方向に向かって、所定のしきい値よりも急峻に下降しているか否かを判断する(S57)。当該しきい値は、例えば想定されるピーク部分の勾配を考慮して設定される。カメラ制御部140は、コントラストカーブC1が急峻に下降していれば(S57でYES)スキャン動作の進行方向を反転させ(S58)、特に下降していなければ(S57でNO)進行方向を変えずに、ステップS53に戻る。
【0084】
一方、フォーカスレンズ230の合焦位置が検出された場合(S56でYES)、カメラ制御部140は、検出された合焦位置にフォーカスレンズ230を移動させるようにレンズ制御部240にコマンドを送信する(S59)。レンズ制御部240は、受信したコマンドに従ってフォーカスレンズ駆動部233を制御して、当該合焦位置にフォーカスレンズ230を移動させる。
【0085】
カメラ制御部140は、合焦位置へのフォーカスレンズ230の移動が完了する(S59)と、山登りAF動作(
図5のS10)を終了し、ステップS11に進む。
【0086】
以上の山登りAF動作によると、例えば通常のオートフォーカスの設定時には(
図5のS4,S5)、フォーカスレンズ230をAF開始位置P1に移動させてから(S51)、移動させた方向とは逆方向に向けてスキャン動作が開始される(S52)。これにより、フォーカスレンズ230の現在位置P0近傍のピーク位置P10の被写体に合焦するように、フォーカスレンズ位置が調整される(
図6A参照)。
【0087】
一方、ニア/ファーシフト機能の使用時には(
図5のS6~S8)、ニア方向又はファー方向にシフトしたAF開始位置P1にフォーカスレンズ230を移動させてから(S51)、シフトした方向と同じ方向に向けてスキャン動作が開始される(S52)。これにより、フォーカスレンズ230の現在位置P0からニア/ファー方向に離れたピーク位置P11,P12の被写体に合焦するように、フォーカスレンズ位置が調整される(
図6B,6C参照)。この際、シフト後のAF開始位置P1は、所望の被写体の合焦位置を越えていてもよい。この点について、一例としてニアシフト機能を用いた動作例を、
図8を用いて説明する。
【0088】
図8の例では、ニアシフト機能によるシフト後のAF開始位置P1が、コントラストカーブC2上で所望の被写体に対応するピーク位置P13よりもニア側に到っている。この際の山登りAF動作は、ニア方向に向けてスキャン動作を開始した後(S52)、コントラストカーブC2の下り勾配に応じてスキャン動作の進行方向が反転する(S57,S58)。その後、ファー方向にスキャン動作が進む中で、ピーク位置P13が検出できる。このように、ニア/ファーシフト機能において、シフト後のAF開始位置P1が所望の被写体の合焦位置を越えた場合であっても、同被写体に合焦することが可能である。
【0089】
こうしたニア/ファーシフト機能は、コントラストカーブC2上で現在位置P0近傍のピーク部分の範囲(即ちピーク幅)から外れる程度に大きいシフト幅W1,W2を用いることで実現しやすい。ここで、コントラストカーブC2におけるピーク部分の高さ(即ちピーク位置のコントラスト値)は被写体の種類に応じて変動すると考えられる一方で、ピーク幅は、特に被写体の種類に依らず、被写界深度などにより推定可能である。よって、こうした情報よりシフト幅W1,W2を適切に設定できる。又、シフト幅W1,W2は、少なくともスキャン動作のピッチ幅よりも大きい幅に設定可能である。
【0090】
例えばシフト幅W1,W2は、ニア/ファーシフト機能の使用時の被写界深度よりも大きく設定され、例えば被写界深度の10倍から100倍の範囲内で設定される。例えばカメラ制御部140は、絞り値および焦点距離等の交換レンズ200の状態を示すデータをレンズ制御部240から取得して、被写界深度に応じたシフト幅W1,W2を随時、算出できる。
【0091】
2-4.合焦状態のグラフ表示
以上のようなニア/ファーシフト機能を用いた合焦動作時に、本実施形態のデジタルカメラ1がユーザをアシストするための表示動作について、
図9を用いて説明する。
【0092】
図9は、デジタルカメラ1における合焦グラフG1の表示例を示す図である。本実施形態において、デジタルカメラ1の液晶モニタ120は、スルー画像と共に、ニア/ファーシフト機能等による合焦動作と同期して合焦グラフG1を表示する。合焦グラフG1は、フォーカスレンズ位置の至近端から無限端にわたり、コントラストカーブにおけるコントラスト値等の評価値が求められた部分のグラフを示す。
【0093】
合焦グラフG1によると、ユーザは例えば、
図9に示すようにAFエリア50に種々の被写体51~54がある構図において、フォーカスレンズ位置を変えた際の合焦状態の変化を確認することができる。合焦グラフG1は、例えば、ユーザが所望の合焦状態に到るためにニア/ファーシフト操作等を入力する際の目安に用いることができる。合焦グラフG1の横軸は、フォーカスレンズ位置に対応する焦点距離を単位としてもよい。この場合であっても、両者の対応関係から実質的にフォーカスレンズ位置毎のグラフ表示が得られる。
【0094】
また、
図9の表示例において、合焦グラフG1には、現在位置ポインタG11と、合焦位置マーカG12(1)~G12(4)とが付されている。現在位置ポインタG11は、フォーカスレンズ230の現在位置を示す。ユーザは、フォーカスレンズ230の現在位置が、合焦グラフG1において何処に位置するのかを確認することができる。以下、合焦位置マーカG12(1)~G12(4)の総称を合焦位置マーカG12という。
【0095】
合焦位置マーカG12は、合焦グラフG1上で検出済みの合焦位置を示す。合焦位置マーカG12は、例えば対応する合焦位置で撮像された画像に対するサムネイル画像で構成される。例えば、ニア/ファーシフト操作を入力して新たに合焦位置が検出される毎に、新たな合焦位置マーカG12が得られる。
【0096】
本実施形態のデジタルカメラ1は、例えば液晶モニタ120に重畳したタッチパネル135等の操作部130において、合焦位置マーカG12を選択するユーザ操作の入力を受け付ける。こうした選択操作が入力されると、デジタルカメラ1は、選択された合焦位置マーカG12が示すフォーカスレンズ位置に、フォーカスレンズ230を駆動する。これにより、種々の被写体51~54に合焦させる操作を行い易くするアシストを実現できる。
【0097】
2-4-1.グラフ表示処理
以上のようにデジタルカメラ1において合焦グラフG1を表示する処理(グラフ表示処理)について、
図10~12Bを用いて説明する。
図10は、デジタルカメラ1におけるグラフ表示処理を例示するフローチャートである。
【0098】
図10に示すフローは、例えばライブビューモードの動作中に開始する。
図10のフローチャートに示す各処理は、例えばカメラ制御部140によって、
図5のフローと並行して実行される。この際、合焦グラフG1等を示すデータは逐次、RAM141に記録される。
【0099】
まず、カメラ制御部140は、例えばレンズ制御部240から、フォーカスレンズ230の現在位置を示すレンズ位置情報を取得する(S61)。取得したレンズ位置情報に応じて、現在位置ポインタG11が、合焦グラフG1において配置される。
【0100】
さらに、カメラ制御部140は、取得したレンズ位置情報が示す位置におけるフォーカスレンズ230の合焦状態に関する評価値が新たに得られたか否かを判断する(S62)。例えば、カメラ制御部140は、山登りAF動作(
図5のS10)の実行中でコントラスト値を算出した際、ステップS62でYESに進む。一方、カメラ制御部140は、特にステップS10の動作を行っていないとき(例えばライブビューモードの動作継続中)、ステップS62でNOに進む。
【0101】
カメラ制御部140は、新たに評価値が得られたと判断すると(S62でYES)、取得したレンズ位置情報が示す位置に新たな評価値を追加するように、合焦グラフG1を更新する(S63)。ステップS63において、カメラ制御部141は、RAM141における合焦グラフG1のデータを適宜、上書きする。
【0102】
さらに、カメラ制御部140は、合焦グラフG1の更新(S63)時に実行した合焦動作において、合焦位置が検出されたか否かを判断する(S64)。ステップS64の判断は、例えば
図7のステップS56と同様に行われる。また、ステップS61~S64は適宜、
図7に示す各処理と共通の処理として実現されてもよい。
【0103】
カメラ制御部140は、合焦位置が検出されると(S64でYES)、検出結果に応じた合焦位置マーカG12を生成する(S65)。例えば、カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230が当該合焦位置にあるときに撮像された画像データに基づき、画像データが示す画像においてAFエリア50など合焦した箇所の画像を切り出して、サムネイル画像を生成する。カメラ制御部140は、生成したサムネイル画像を合焦位置と関連付けて、合焦位置マーカG12としてRAM141に記録する。
【0104】
次に、カメラ制御部140は、以上のようにRAM141に記録した各種情報に基づいて、合焦グラフG1等を表示するように、液晶モニタ120を制御する(S66)。また、カメラ制御部140は、新たな評価値が取得されなかったとき(S62でNO)、および合焦位置が検出されなかったとき(S64でNO)にも、それぞれ得られた情報に基づき合焦グラフG1の表示を行う(S66)。
【0105】
ステップS66において、カメラ制御部140は、取得したレンズ位置情報に基づく現在位置ポインタG11を付して、更新後の合焦グラフG1を液晶モニタ120に表示させる。また、現在までに1つ又は複数の合焦位置が検出された場合、液晶モニタ120は、各合焦位置に対する合焦位置マーカG12を併せて表示する。
【0106】
ステップS66の表示中に、カメラ制御部140は、操作部130においてユーザ操作を受け付ける。例えば、カメラ制御部140は、タッチパネル135において、合焦位置マーカG12にタッチするタッチ操作が入力されたか否かを判断する(S67)。
【0107】
上記のタッチ操作が入力された場合(S67でYES)、カメラ制御部140は、タッチ操作においてタッチされた合焦位置マーカG12が示すフォーカスレンズ位置に、フォーカスレンズ230を移動するように、レンズ制御部240にコマンドを送信する(S68)。レンズ制御部240は、受信したコマンドに応じて、フォーカスレンズ駆動部233を駆動し、フォーカスレンズ230を移動させる。
【0108】
カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230の駆動(S68)後、
図10のフローチャートに示す処理を終了する。カメラ制御部140は、例えば所定の周期において本フローチャートに示す処理を再度、実行する。また、カメラ制御部140は、例えば所定の周期中にタッチ操作が入力されなかった場合(S67でNO)、ステップS61以降の処理を繰り返す。この際、合焦グラフG1の表示が随時、更新される。
【0109】
以上の処理によると、デジタルカメラ1の合焦動作時に得られる種々の合焦状態を、ユーザに対して可視化して、ユーザ所望の合焦状態を得やすくすることができる。ユーザによる操作の一例を、
図11A~
図12Bを用いて説明する。
【0110】
図11Aは、
図9の構図における初期の状態を例示する表示例を示す。
図11Aの状態では、柵53にピントが合っている。カメラ制御部140は、このときのフォーカスレンズ230の現在位置および評価値を取得して(S61,S62)、合焦グラフG1を表示する(S66)。合焦グラフG1には、柵53の合焦位置近傍のピークが現れており、1つ目の合焦位置マーカG12(1)が付される。当該合焦位置マーカG12(1)は、例えば
図11Aのスルー画像と同様のサムネイル画像で構成される。
【0111】
図11Bは、
図11Aからファーシフト操作が行われたときの表示例を示す。ファーシフト機能を用いた合焦動作により(
図5のS8~S10)、現在位置ポインタG11は、柵53の合焦位置からファー側に移動して、被写体51(1体目の動物)の合焦位置に到っている。このとき、カメラ制御部140は逐次、フォーカスレンズ230の現在位置および評価値を取得し(S61,S62)、合焦グラフG1を更新する(S63)。すると、合焦グラフG1において、当該被写体51に対応するピークが現れる。また、カメラ制御部140は、こうした被写体51に応じたサムネイル画像等により、2つ目の合焦位置マーカG12(2)を生成する(S65)。
【0112】
図12Aは、
図11Bからさらにファーシフト操作が行われたときの表示例を示す。本例では、2体目の動物54に対応する合焦位置が、1体目の動物51のファー側にて近接していたことから(
図12B参照)、ファーシフト操作時に飛ばされた場合を例示する。この場合、ファーシフト操作後のスキャン動作がファー方向に進み、現在位置マーカG11は背景52の合焦位置に到っている。ユーザは、こうした様子を合焦グラフG1において確認することができる。又、このときに得られる3つ目の合焦位置マーカG12(3)は、背景52の合焦状態に対応する。
【0113】
図12Bは、
図12Aからニアシフト操作が行われたときの表示例を示す。ニアシフト機能を用いた合焦動作において、スキャン動作がニア方向に進み、現在位置ポインタG11は、背景52の合焦位置からニア側に移動する。こうして、2体目の動物54の合焦位置を探索することができる。又、このときに得られる4つ目の合焦位置マーカG12(4)は、2体目の動物54の合焦状態に対応する。
【0114】
以上のように探索された各被写体51~54に対する合焦位置には、合焦位置マーカG12(1)~G12(4)がそれぞれ付されている。ユーザは、探索結果の合焦位置マーカG12(1)~G12(4)から、所望の被写体に対応する1つを選択する簡単なユーザ操作によって、当該被写体の合焦状態を容易に再現することができる(S67,S68)。
【0115】
例えば、ユーザは、
図12Bの状態から1体目の動物51にピントを合わせたい場合、対応する合焦位置マーカG12(2)を選択するユーザ操作を行う(S67)。すると、デジタルカメラ1においてフォーカスレンズ230が、当該合焦位置マーカG12(2)が示す合焦位置まで移動し(S68)、
図9に示すような所望の状態を容易に得られる。ユーザは、他の各種被写体52,53,54にピントを合わせたい場合も同様に、それぞれ対応する合焦位置マーカG12(3),G12(1),G12(4)を用いて、各々の合焦状態を容易に確認することができる。
【0116】
以上のグラフ表示処理において、合焦位置マーカG12は、サムネイル画像に限らず、例えば合焦した被写体に関するアイコンで構成されてもよい。例えば、カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230が対応する合焦位置にあるときに撮像された画像データに対して、被写体の種別を認識する画像認識を行って、認識された種別に応じたアイコンを合焦位置マーカG12に設定してもよい。
【0117】
また、合焦グラフG1に対するユーザ操作は、合焦位置マーカG12の選択に限定されず、他のユーザ操作が採用されてもよい。例えば、現在位置ポインタG11をドラッグするユーザ操作、或いは合焦グラフG1中で所望の位置にタップするユーザ操作が採用されてもよい。こうした場合においても、カメラ制御部140が、ユーザ操作に従ってフォーカスレンズ230を駆動させる(S68)ことにより、ユーザ所望の合焦状態を容易に再現することができる。
【0118】
また、合焦グラフG1に対するユーザ操作は、特にタッチ操作に限らず、各種の操作部130に対するユーザ操作であってもよい。例えば、合焦位置マーカG12を選択するユーザ操作として、選択釦132に対する操作が用いられてもよい。
【0119】
3.まとめ
以上のように、本実施形態におけるデジタルカメラ1及びカメラ本体100は、それぞれ撮像装置の一例であり、撮像部の一例としての画像センサ110と、表示部の一例としての液晶モニタ120と、操作部130と、制御部の一例としてのカメラ制御部140とを備える。画像センサ110は、フォーカスレンズ230を含む光学系の一例である交換レンズ200を介して形成される被写体像を撮像して、画像データを生成する。液晶モニタ120は、画像データが示す画像を表示する。操作部130は、ユーザの操作を受け付ける。カメラ制御部140は、合焦の状態に関する評価値に応じて、光学系における光軸に沿ってフォーカスレンズ230の位置を調整する合焦動作を制御する。カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230の位置毎に合焦の状態に関する評価値を示すグラフの一例である合焦グラフG1を表示するように、液晶モニタ120を制御する(S66)。
【0120】
以上の撮像装置によると、デジタルカメラ1が合焦動作を行った際に得られる合焦状態が、合焦グラフG1によって、ユーザに対して可視化される。これにより、ユーザ所望の合焦状態を得やすくすることができる。
【0121】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦グラフG1が表示された状態で操作部130に入力されるユーザ操作に応じて、フォーカスレンズ230を移動させる(S67,S68)。ユーザは、合焦グラフG1を確認しながら各種ユーザ操作を行って、所望の合焦状態を容易に得ることができる。
【0122】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦グラフG1においてフォーカスレンズ230の現在位置を示すポインタの一例である現在位置ポインタG11を液晶モニタ120に表示させる。現在位置ポインタG11により、ユーザは合焦グラフG1における現在の状態を把握することができる。
【0123】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦グラフG1において、合焦動作により検出された合焦位置を示すマーカの一例である合焦位置マーカG12を液晶モニタ120に表示させる。合焦位置マーカG12により、ユーザは合焦グラフG1において検出済みの合焦位置を確認することができる。
【0124】
本実施形態において、合焦位置マーカG12は、合焦位置において画像センサ110によって生成された画像データに基づくサムネイル画像で構成される。ユーザは、合焦位置マーカG12のサムネイル画像において各種被写体に関する合焦位置を把握することができる。
【0125】
本実施形態において、操作部130は、合焦させる被写体距離を近くする又は遠くする指示の一例であるニア/ファーシフト操作を受け付ける(S2,S3)。カメラ制御部140は、指示に応じて、フォーカスレンズ230の位置をシフトするように合焦動作を実行する(S6~S10)。
【0126】
例えば、合焦動作の一例である山登りAF動作のスキャン動作は、フォーカスレンズ230を順次、移動させて、フォーカスレンズ230の位置毎に画像センサ110によって生成される画像データに基づき評価値を算出する(S53)。カメラ制御部140は、AF開始位置P1をシフトしたとき、シフトした向きと同じ向きにフォーカスレンズ230を進めるように合焦動作を開始する(S52)。こうした撮像装置によると、AF開始位置P1をシフトした上で、シフトした向きにスキャン動作が進む。このため、シフト前のフォーカスレンズ230近傍から、シフトした向きに位置する合焦位置を検出し易い。
【0127】
本実施形態において、評価値は、フォーカスレンズ230の位置毎の画像データに関するコントラスト値である。コントラスト値を評価値として用いるスキャン動作により、コントラスト方式のオートフォーカスを実施できる。
【0128】
本実施形態において、上記のようなニア/ファーシフト機能を用いる指示があった場合に(S2,S3でYES)、カメラ制御部140は、フォーカスレンズ230を現在位置P0から開始位置P1までのシフト幅W1,W2だけ移動させる(S6,S8,S51)。シフト幅W1,W2は、例えばレリーズ釦131の半押しにより(S1でYES)、ステップS2,S3の指示がなかった場合に実行される通常の合焦動作(S4,S5,S10)においてフォーカスレンズ230が移動する幅よりも大きい。当該幅は、例えば、通常時のAF開始位置P1が設定される所定幅W0、或いはスキャン動作のピッチ幅であってもよい。シフト幅W1,W2を比較的大きく設定することで、合焦動作の対象とする被写体距離を変更しやすい。
【0129】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦させる被写体距離を近くする指示の一例であるニアシフト操作に応じて(S2でYES)、交換レンズ200等の光学系において至近端に向かう向き即ちニア側に、AF開始位置P1をシフトする(S6)。その後、シフトした向きと同じニア方向に合焦動作が開始され、比較的近い被写体に合焦し易くできる。
【0130】
本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦させる被写体距離を遠くする指示の一例であるファーシフト操作に応じて(S3でYES)、同光学系において無限端に向かう向き即ちファー側に、AF開始位置P1をシフトする(S8)。その後、シフトした向きと同じファー方向に合焦動作が開始され、比較的遠い被写体に容易に合焦し易くできる。
【0131】
(実施形態2)
実施形態1では、AFSモードにニア/ファーシフト機能を適用するデジタルカメラ1の動作例を説明した。実施形態2では、他の動作モードにニア/ファーシフト機能を適用する例を説明する。
【0132】
以下、実施形態1に係るデジタルカメラ1と同様の構成、動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係るデジタルカメラ1を説明する。
【0133】
図13は、実施形態2にかかるデジタルカメラ1の撮影動作を例示するフローチャートである。以下では、一例としてAFC(Auto Focus Continuous)モードにおけるデジタルカメラ1の動作を説明する。AFCモードは、レリーズ釦131の半押しを継続すると、合焦動作を繰り返し実行し、合焦状態を更新し続ける動作モードである。
【0134】
図13に示す動作例において、カメラ制御部140は、実施形態1と同様にステップS1~S10,S12の処理を行う。この際、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が全押しされていないと判断すると(S12でNO)、ステップS1以降の処理を再度、実行する。これにより、レリーズ釦131が半押しされている間(S1でYES)、ステップS10における合焦動作が繰り返し実行され、AFCモードの動作が実現される。
【0135】
本動作例において、カメラ制御部140は、
図5のステップS11の代わりに、ニアフラグF1及びファーフラグF2を用いた処理を行う(S21~S25,S31~S35)。ニアフラグF1及びファーフラグF2は、それぞれニア/ファーシフト機能の状態をON/OFFで管理するフラグであり、RAM141に記憶される。
【0136】
例えば、ニアシフト操作が入力されていないとき(S2でNO)、ニアフラグF1は「OFF」に設定される(S21)。カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されたと判断すると(S2でYES)、ニアフラグF1が「OFF」であるか否かを判断する(S22)。
【0137】
ニアフラグF1が「OFF」である場合(S22でYES)、カメラ制御部140は、ニアシフト機能のための設定を行う(S6,S7)。その後、カメラ制御部140は、ニアフラグF1を「ON」に設定して(S23)、ステップS10に進む。
【0138】
一方、ニアフラグF1が「ON」である場合(S22でNO)、カメラ制御部140は、ステップS6,S7,S23の処理を行わず、ステップS10に進む。
【0139】
また、カメラ制御部140は、レリーズ釦131が半押し中(S1でYES)の状態においてもステップS21と同様に、ニアシフト操作が入力されたか否かを判断する(S24)。この際にも、カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されていなければ(S24でNO)ニアフラグF1を「OFF」に設定する(S25)。又、カメラ制御部140は、ニアシフト操作が入力されると(S24でYES)、ステップS22の判断に進む。
【0140】
以上のようにニアフラグF1を用いた処理(S21~S25)によると、ニアシフト操作が入力された回数分、ニアシフト機能による合焦動作が実行される。本動作例では、ニアシフト機能のFn釦136の押下操作を継続すると、ニアシフト機能による合焦動作が1回行われ、その後に通常の合焦動作が繰り返される。
【0141】
また、ファーシフト機能に関して、カメラ制御部140は、ニアフラグF1の代わりにファーフラグF2を用いて、ファーシフト操作に応じてステップS21~S25と同様の処理を行う(S31~S35)。これにより、ファーシフト機能についても、ファーシフト操作が入力された回数分、同機能による合焦動作が実行される。
【0142】
以上では、AFCモードの動作例を説明したが、他の様々な動作モードに対しても、ニア/ファーシフト機能は適用可能である。例えば、静止画を連写で撮影する連写AFの動作モードにおいて、
図13と同様の処理を行うことにより、ニア/ファーシフト機能を連写AFに適用できる。また、静止画に限らず、デジタルカメラ1が動画を撮影する動作時にも、ニア/ファーシフト機能を上記と同様に適用可能である。
【0143】
以上のような各種の撮影動作時においても、デジタルカメラ1は、実施形態1と同様にグラフ表示処理(
図10)を実行することにより、合焦グラフG1を表示させることができる。これによっても、各撮影動作時に得られる合焦状態の変動を可視化して、ユーザ所望の合焦状態を得やすくすることができる。
【0144】
以上のように、本実施形態において、カメラ制御部140は、合焦動作を連続的に繰り返す種々の動作の実行中に、ニア/ファーシフト機能を用いる指示があった場合(S24,S34)、フォーカスレンズ230の位置をシフトして(S6,S7)再度、合焦動作を実行する(S10)。これにより、合焦動作を連続的に行う各種の動作中にも、所望の被写体に合焦させ易くすることができる。
【0145】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1,2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0146】
上記の実施形態1,2では、コントラスト方式のオートフォーカスを採用する例を説明したが、本開示はコントラスト方式に限定されず、種々のオートフォーカス技術に適用可能である。デジタルカメラ1における合焦動作の変形例を、
図14を用いて説明する。
【0147】
図14は、変形例の合焦動作における特性曲線C10を例示する。特性曲線C10は、例えば像面位相差方式など、コントラスト方式に代わる合焦動作において得られる評価値で規定される曲線である。横軸はフォーカスレンズ位置を示し、縦軸は、コントラスト値の代わりに合焦状態を評価する評価値を示す。評価値は、例えば像面位相差方式における位相差センサの出力の合致度を示す。位相差センサは、例えば画像センサ110に組み込んで設けられる。
【0148】
図14では、フォーカスレンズ230の現在位置P0を含む検出範囲R1内の特性曲線C10が求められた様子を示す。検出範囲R1は、例えば交換レンズ200の特性によって規定され、現在位置P0を基準としてニア側の範囲及びファー側の範囲を含む。
【0149】
像面位相差方式などの合焦動作において、デジタルカメラ1のカメラ制御部140は、フォーカスレンズ230を現在位置P0から特に動かさない状態において、検出範囲R1内で包括的にフォーカス位置毎の評価値を算出する。カメラ制御部140は、算出した評価値に基づいて、検出範囲R1内のピーク位置P10を合焦位置として検出できる。この場合、検出された合焦位置へ一挙にフォーカスレンズ230を駆動可能である。
【0150】
一方、上記のような通常の合焦動作においては、検出範囲R1外のピーク位置P11,P12については、検出できないことが想定される。そこで、本実施形態では、実施形態1,2と同様のニア/ファーシフト機能により、こうしたピーク位置P11,P12を検出可能にする。
【0151】
図14では、通常の合焦動作を行った場合の検出結果に加えて、ファーシフト機能を用いた場合の合焦動作における検出結果も併せて示している。本実施形態において、例えばファーシフト操作が入力されたときに、カメラ制御部140は、実施形態1,2と同様に、フォーカスレンズ230の現在位置P0からファー側にシフトしたAF開始位置P1にフォーカスレンズ230を移動させ、AF開始位置P1から通常時と同様の合焦動作を実行する。これにより、
図14に示すように、AF開始位置P1を基準として含む検出範囲R1内の評価値が得られ、ファー側のピーク位置P12を検出できる。
【0152】
以上のような変形例の動作は、ニアシフト機能についても、ニア側にAF開始位置P1をシフトすることで、上記のファーシフト機能と同様に行うことができる。また、本変形例は、特に像面位相差方式に限定されず、位相差方式あるいはDFD(Depth From Defocus)にも適用可能である。例えば、評価値は、DFDにおけるコスト値であってもよい。
【0153】
上記変形例のような像面位相差方式など各種の合焦動作に関しても、本実施形態の撮像装置は、コントラスト値の代わりの評価値をフォーカスレンズの位置毎に示すグラフを表示部に表示してもよい。例えば、
図14と同様のグラフが合焦グラフとして表示できる。これにより、各種方式の合焦動作においても、コントラスト方式と同様に、合焦状態に関するグラフ表示によって所望の被写体に合焦させ易くすることができる。
【0154】
また、上記の各実施形態では、ニア/ファーシフト機能を用いる場合に合焦グラフG1が表示される例を説明したが、それ以外の場合に合焦グラフが表示されてもよい。例えば、フォーカスサーチ動作に同期して、合焦グラフG1が表示されてもよい。フォーカスサーチ動作は、例えばコントラスト方式の合焦動作において、無限端から至近端までといった所定範囲にわたりフォーカスレンズ230を移動させながら、各フォーカスレンズ位置の評価値を取得する動作である。この場合、合焦グラフG1においては逐次、取得されたフォーカスレンズ位置毎の評価値が表示される。これによっても、合焦状態の変動がユーザにとって可視化され、所望の被写体に合焦させ易くすることができる。
【0155】
また、上記の各実施形態では、ニア/ファーシフト操作の一例としてFn釦136,137の押下操作を例示した。ニア/ファーシフト操作は、特にこれに限らず、種々のユーザ操作であってもよい。例えば、ニア/ファーシフト操作は、操作部130における各種釦に対するダブルクリック、同時押し、あるいは長押し等であってもよい。また、ニア/ファーシフト操作は、レリーズ釦131の半押し操作と、MFリング又はダイヤル等の操作との組み合わせであってもよい。さらに、例えばメニュー設定において、レリーズ釦131の半押し操作が、ニアシフト操作及びファーシフト操作のいずれかに設定可能であってもよい。
【0156】
また、上記の各実施形態では、ニア/ファーシフト機能を用いる指示がユーザ操作によって行われたが、当該指示はユーザ操作に限らず、例えばデジタルカメラ1における自動判定によって行われてもよい。例えば、カメラ制御部140は、
図4Aのようなスルー画像が得られた際に、柵などの特定の障害物53に合焦したことを画像認識によって検出して、自動的にファーシフト機能を用いるように指示可能である。こうした画像認識は、例えば機械学習により容易に実現可能である。また、ユーザがニア/ファーシフト操作を用いた履歴などの操作ログをフラッシュメモリ142等に蓄積しておき、操作ログに基づき自動的にニア/ファーシフト機能の指示を行ってもよい。
【0157】
また、上記の各実施形態では、ニアシフト機能とファーシフト機能との双方が実現される例を説明した。本実施形態のデジタルカメラ1では、ニアシフト機能とファーシフト機能との一方が実装されてもよい。これによっても、
図3A又は
図4Aのような状況下で、ユーザ所望の被写体51に合焦させ易くすることができる。
【0158】
また、上記の各実施形態では、撮像装置の一例としてレンズ交換式のデジタルカメラについて説明したが、本実施形態の撮像装置は、特にレンズ交換式ではないデジタルカメラであってもよい。また、本開示の思想は、デジタルカメラのみならず、ムービーカメラであってもよいし、カメラ付きの携帯電話或いはPCのような種々の撮像機能を有する電子機器にも適用可能である。
【0159】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0160】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0161】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本開示は、合焦動作を行う各種の撮像装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 デジタルカメラ
100 カメラ本体
120 液晶モニタ
130 操作部
140 カメラ制御部
200 交換レンズ
230 フォーカスレンズ
233 フォーカスレンズ駆動部
240 レンズ制御部