(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
D06F39/02 Z
(21)【出願番号】P 2019237021
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】三觜 紳平
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-66059(JP,A)
【文献】特表2006-507915(JP,A)
【文献】特開平11-151397(JP,A)
【文献】特開2003-24692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/02
D06F 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容し、洗濯水が溜められる洗濯槽と、
前記洗濯槽内の洗濯水に浸かる位置に配置され、マグネシウム粒を収容する収容部と、
前記洗濯槽内の洗濯水に通電する通電部と、
前記通電部による通電中に前記洗濯槽内の洗濯水の電気特性を検出する検出部と、
前記収容部内のマグネシウム粒の劣化度合を示す指標値を、前記検出部の検出結果に基いて算出する制御部と、
前記指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、前記収容部内のマグネシウム粒の劣化を報知する報知部とを含む、洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯槽内に設けられ、回転駆動される回転翼をさらに含み、
前記制御部は、前記回転翼の回転停止中に前記検出部が検出した前記洗濯槽内の洗濯水の電気特性に基いて前記指標値を算出する、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯槽内に給水する給水部をさらに含み、
前記制御部は、前記給水部を制御して前記洗濯槽内に給水することによって、前記洗濯槽内で前記収容部のマグネシウム粒の成分が溶けた洗濯水に洗濯物を浸すつけおき洗い運転を実行し、
前記制御部は、前記指標値に応じて前記つけおき洗い運転の運転時間を変更する、請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、前記制御部は、前記収容部内のマグネシウム粒をリフレッシュするリフレッシュ運転を実行する、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記通電部は、前記洗濯槽内の洗濯水に接触する2つの電極と、これらの電極間における極性を定期的に切り替える切替部とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムを用いた洗濯方法が知られる。洗濯機の水槽にマグネシウムを投入すると、マグネシウム(Mg)と水槽内の水(H2O)とが化学反応して、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)と水素(H2)とが発生し、水槽内の水が、マグネシウムイオン(Mg2+)および水酸化物イオン(OH-)を含んだアルカリイオン水に改質される。アルカリイオン水は、洗剤と同様に油脂分を分解する作用を有するので、アルカリイオン水によって水槽内の洗濯物から汚れを落とすことができる。また、アルカリイオン水は、除菌作用を有するので、水槽内の洗濯物および水槽そのものをマイナスイオン水によって除菌することができる。
【0003】
下記特許文献1に記載されたアルカリイオン水生成用具は、スポンジによって構成された本体部と、本体部内に収納される多数個のマグネシウム粒とを有する。アルカリイオン水生成用具は、洗濯物とともに洗濯機の水槽内に投入される。水槽内に水が注入されると、アルカリイオン水生成用具内のマグネシウム粒から水槽内の水にマグネシウムが溶出するので、マグネシウムと水槽内の水とが化学反応してアルカリイオン水が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のアルカリイオン水生成用具は、水槽内において水中で浮遊する。これでは、アルカリイオン水生成用具内の全てのマグネシウム粒が水槽内の水に浸からない場合があるので、マグネシウムと水との化学反応を促進するには限界がある。そこで、マグネシウム粒が水槽内の水に浸かるように、マグネシウム粒を収容した収容部を水槽内の下部に配置する構成が想定される。一方、マグネシウム粒は、使用に応じて劣化するので、収容部を水槽内の下部に配置する構成では、収容部内のマグネシウム粒に使用者の目が届きにくいので、メンテナンスが必要な状態までマグネシウム粒が劣化しても、マグネシウム粒の劣化が気付かれずに放置されるおそれがある。
【0006】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯用のマグネシウム粒のメンテナンスのタイミングを把握できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗濯物を収容し、洗濯水が溜められる洗濯槽と、前記洗濯槽内の洗濯水に浸かる位置に配置され、マグネシウム粒を収容する収容部と、前記洗濯槽内の洗濯水に通電する通電部と、前記通電部による通電中に前記洗濯槽内の洗濯水の電気特性を検出する検出部と、前記収容部内のマグネシウム粒の劣化度合を示す指標値を、前記検出部の検出結果に基いて算出する制御部と、前記指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、前記収容部内のマグネシウム粒の劣化を報知する報知部とを含む、洗濯機である。
【0008】
また、本発明は、前記洗濯機が、前記洗濯槽内に設けられ、回転駆動される回転翼をさらに含み、前記制御部が、前記回転翼の回転停止中に前記検出部が検出した前記洗濯槽内の洗濯水の電気特性に基いて前記指標値を算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記洗濯機が、前記洗濯槽内に給水する給水部をさらに含み、前記制御部が、前記給水部を制御して前記洗濯槽内に給水することによって、前記洗濯槽内で前記収容部のマグネシウム粒の成分が溶けた洗濯水に洗濯物を浸すつけおき洗い運転を実行し、前記制御部が、前記指標値に応じて前記つけおき洗い運転の運転時間を変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、前記制御部が、前記収容部内のマグネシウム粒をリフレッシュするリフレッシュ運転を実行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記通電部が、前記洗濯槽内の洗濯水に接触する2つの電極と、これらの電極間における極性を定期的に切り替える切替部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗濯機では、マグネシウム粒を収容する収容部が、洗濯槽内の洗濯水に浸かる位置に配置される。これにより、収容部内における多数のマグネシウム粒と洗濯槽内の洗濯水との化学反応が促進されてアルカリイオン水が多量に生成されるので、多量のアルカリイオン水によって洗濯物を効果的に洗濯することができる。
洗濯機では、通電部が洗濯槽内の洗濯水に通電する間に、検出部が洗濯水の電気特性を検出する。そして、収容部内のマグネシウム粒の劣化度合を示す指標値が、検出部の検出結果に基いて算出される。この指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、洗濯機の報知部が、収容部内のマグネシウム粒の劣化を報知する。この報知によって、使用者は、洗濯用のマグネシウム粒のメンテナンスのタイミングを把握できる。
【0013】
また、本発明によれば、洗濯機では、回転翼の回転停止中に検出部が検出した洗濯槽内の洗濯水の電気特性に基いて、収容部内のマグネシウム粒の劣化度合を示す指標値が算出される。回転翼の回転停止中では、洗濯槽内の洗濯水は、不規則な水流が発生しない安定した状態にあるので、検出部は、洗濯水の電気特性を正確に検出することができる。そのため、この電気特性に基いて算出される指標値は、マグネシウム粒の劣化度合を正確に示すので、この指標値が所定の閾値を過ぎた場合に、報知部は、収容部内のマグネシウム粒の劣化を適切なタイミングに報知する。この報知によって、使用者は、洗濯用のマグネシウム粒のメンテナンスに適切なタイミングを把握できる。
【0014】
また、本発明によれば、つけおき洗い運転の運転時間は、収容部内のマグネシウム粒の劣化度合を示す指標値に応じて変更される。そのため、マグネシウム粒が劣化した状態にあっても、洗濯槽内の洗濯物は、つけおき洗い運転において、マグネシウム粒の劣化度合に応じた適切な時間だけアルカリイオン水に浸されることによって効果的に洗浄される。
【0015】
また、本発明によれば、指標値が所定の閾値を過ぎるほど劣化したマグネシウム粒は、リフレッシュ運転によってリフレッシュされることにより、劣化前と同様に洗濯槽内の洗濯水と効果的に化学反応して、アルカリイオン水を多量に生成することができる。
【0016】
また、本発明によれば、通電部は、洗濯槽内の洗濯水に接触する2つの電極間に電流を流すことによって洗濯槽内の洗濯水に通電する。これらの電極間における極性が一定のままだと、電極の表面に泡がついたり電極が腐食したりする不具合が発生することにより、検出部が洗濯槽内の洗濯水の電気特性を正確に検出できなくなるおそれがある。しかし、通電部では、これらの電極間における極性が定期的に切り替えられることにより、電極の不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
【
図2】洗濯機の要部について一部に縦断面を含む斜視図である。
【
図3】洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】洗濯機の洗濯槽内に溜まった洗濯水の電気抵抗の値の推移を示すタイムチャートである。
【
図7】洗濯機で実行される洗濯運転を示すフローチャートである。
【
図8】変形例に係る洗濯運転を示すフローチャートである。
【
図9】洗濯機で実行されるリフレッシュ運転を示すフローチャートである。
【
図10】変形例に係るリフレッシュ運転を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。
図1の紙面に直交する方向を洗濯機1の左右方向Xといい、
図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yといい、
図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、
図1の紙面における奥側を左側X1といい、
図1の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、
図1における左側を前側Y1といい、
図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。
【0019】
洗濯機1は、その外殻をなす筐体2と、筐体2内に収容されて洗濯水が溜められる外槽3と、外槽3内に収容される内槽4と、内槽4内に収容される回転翼5と、内槽4および回転翼5を回転させる駆動力を発生するモータ6と、モータ6の駆動力を内槽4や回転翼5に伝達する電動の伝達機構7とを含む。外槽3および内槽4は、洗濯槽8を構成する。洗濯機1は、内槽4内に配置されて洗濯水を循環させるためのガイドカバー9と、ガイドカバー9に装着されて洗濯水から異物を捕獲するフィルタユニット10と、マグネシウム粒Mを収容する収容部11とをさらに含む。洗濯水は、水道水や、水道水に洗剤などが溶けた水のことである。
【0020】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口15が形成される。上面2Aには、開口15を開閉する扉16が設けられる。上面2Aにおいて開口15の周囲の領域には、液晶操作パネルなどで構成された報知部の一例としての表示操作部17が設けられる。洗濯機1の使用者は、表示操作部17のスイッチなどを操作することによって、洗濯機1の運転条件を自由に選択したり、洗濯機1に対して運転開始や運転停止などを指示したりすることができる。表示操作部17の液晶パネルなどには、洗濯機1の運転に関する情報が目視可能に表示される。
【0021】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁3Bと、円周壁3Aの上端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口18が形成される。出入口18は、筐体2の開口15に対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口18を開閉する扉19が設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通する貫通孔3Dが形成される。
【0022】
外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路20が上側Z1から接続され、水道水が給水路20から外槽3内に供給される。給水路20の途中には、給水部の一例としての給水弁21が設けられる。給水弁21は、給水を開始したり停止したりするために開閉される。外槽3の底壁3Bには、排水路22が下側Z2から接続され、外槽3内の水は、排水路22から機外に排出される。排水路22の途中には、排水部の一例としての排水弁23が設けられる。排水弁23は、排水を開始したり停止したりするために開閉される。
【0023】
内槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Lを収容することができる。内槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、内槽4の下端に設けられて円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁4Bとを有する。
【0024】
円周壁4Aの内周面と底壁4Bの上面とは、内槽4の内面部である。内槽4の上端には、円周壁4Aの内周面の上端によって縁取られた出入口24が形成される。出入口24は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させ、外槽3の出入口18に下側Z2から連通した状態にある。使用者は、開放された開口15、出入口18および出入口24を介して、内槽4に対して上側Z1から洗濯物Lを出し入れする。
【0025】
内槽4は、外槽3内に同軸上で収容される。外槽3内に収容された状態の内槽4は、内槽4の円中心を通って上下方向Zに延びる回転軸線Jまわりに回転可能である。この実施形態における回転軸線Jは、厳密には垂直方向に延びるが、垂直方向に対する傾斜方向に延びてもよい。傾斜方向は、一例として、上側Z1へ向かうにつれて前側Y1へずれる方向である。回転軸線Jは、外槽3の円中心も通る。内槽4の回転方向は、回転軸線Jまわりの周方向Pと一致する。以下では、回転軸線Jを中心とする径方向を径方向Rといい、径方向Rのうち、回転軸線Jに向う側を径方向内側R1といい、回転軸線Jから離れる側を径方向外側R2という。内槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通孔4Cが複数形成され、外槽3内の洗濯水は、貫通孔4Cを介して外槽3と内槽4との間で行き来できる。これにより、内槽4つまり洗濯槽8の全体にも洗濯水が溜められ、外槽3内の水位と内槽4内の水位とは、一致する。
【0026】
内槽4の内周面の上端部には、周方向Pに沿う環状のバランサ25が取り付けられる。バランサ25は、回転時における内槽4の振動を低減させるものであって、バランサ25の内部の空洞25Aには、振動低減に寄与するための塩水などの液体が収容される。
【0027】
内槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成される。底壁4Bにおいて回転軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを上下方向Zに貫通する貫通孔4Dが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Dを取り囲みつつ回転軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸26が設けられる。支持軸26は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Dに挿通されて、支持軸26の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0028】
回転翼5は、いわゆるパルセータであり、回転軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、内槽4内において底壁4B上に配置される。回転翼5において内槽4の出入口24を臨む上面には、上側Z1へ隆起しつつ回転軸線Jを円中心として放射状に配置された複数の隆起部5Aが設けられる。回転翼5の下面には、回転軸線Jを円中心として放射状に配置された複数の裏羽根5Bが設けられる。内槽4の内部空間において回転翼5の裏羽根5Bが配置された下端部を、スペースSという。回転翼5には、その円中心から回転軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸27が設けられる。回転軸27は、支持軸26の中空部分に挿通されて、回転軸27の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0029】
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、回転軸線Jを中心として回転する出力軸28を有し、駆動力を発生して出力軸28から出力する。
【0030】
伝達機構7は、支持軸26および回転軸27のそれぞれの下端部と、モータ6から上側Z1に突出した出力軸28の上端部との間に介在される。伝達機構7は、モータ6が出力軸28から出力する駆動力を、支持軸26および回転軸27の一方または両方に対して選択的に伝達する。伝達機構7として、公知のものが用いられる。モータ6からの駆動力が支持軸26に伝達されると、内槽4が、モータ6の駆動力を受けて周方向Pに回転駆動される。モータ6からの駆動力が回転軸27に伝達されると、回転翼5が、モータ6の駆動力を受けて周方向Pに回転駆動される。
【0031】
ガイドカバー9は、複数存在し、円周壁4Aの内周面において周方向Pに分散して並ぶ。これらのガイドカバー9は、周方向Pに等間隔で配置されることが好ましい。それぞれのガイドカバー9は、内槽4の円周壁4Aの下端部から上側Z1へ延びる樋状であって例えば樹脂製であり、その平断面は、例えば径方向内側R1へ凸湾曲した円弧状に形成される。ガイドカバー9は、円周壁4Aの一部を径方向内側R1から覆うように円周壁4Aに固定される。これにより、ガイドカバー9と円周壁4Aとの間には、内槽4内において円周壁4Aの下端部から上側Z1へ延びる循環流路29が形成される。つまり、ガイドカバー9は、循環流路29を構成する。ガイドカバー9が複数存在するので、循環流路29も複数設けられる。
【0032】
循環流路29の下端部は、循環流路29の入口29Aとして、内槽4の内部空間において回転翼5の裏羽根5Bが配置されたスペースSに対して径方向外側R2から接続される。つまり、入口29Aは、内槽4の底壁4B側に配置される。ガイドカバー9には、ガイドカバー9を径方向Rに貫通した開口9Aが形成される。循環流路29において開口9Aから径方向内側R1に露出された部分は、出口29Bであり、出口29Bは、入口29Aよりも高い位置に配置されて内槽4内に臨む。
【0033】
フィルタユニット10は、ガイドカバー9の開口9Aにぴったり収まるフレーム30と、フレーム30に取り付けられたフィルタ31とを含む。フィルタ31は、例えばネットなどで構成されたシート状であり、開口9Aを覆う。
【0034】
図2は、洗濯機1の要部について一部に縦断面を含む斜視図である。収容部11は、周方向Pに延びる円弧状の中空体であって、内槽4の底側、具体的には内槽4内の洗濯水に浸かる位置に配置される。収容部11は、複数設けられ、内槽4の円周壁4Aの下端部と底壁4Bとの境界部において、ガイドカバー9を避けて周方向Pに並んで設けられる。これらの収容部11は、周方向Pに等間隔で配置されることが好ましい。収容部11は、周方向Pに沿って湾曲した内周壁11Aと、内周壁11Aよりも径方向外側R2に配置されて周方向Pに沿って湾曲した外周壁11Bとを有する。
【0035】
収容部11は、内周壁11Aおよび外周壁11Bの上端間に架設されて周方向Pに沿って湾曲した天壁11Cと、内周壁11Aおよび外周壁11Bの下端間に架設されて周方向Pに沿って湾曲した底壁11Dとを有する。天壁11Cでは、径方向内側R1の部分は、径方向内側R1へ向かうにつれて下降するように傾斜し、径方向外側R2の部分は、略水平に延びる。底壁11Dの全体は、径方向内側R1へ向かうにつれて下降するように傾斜する。収容部11は、内周壁11Aと外周壁11Bと天壁11Cと底壁11Dとによって囲まれて周方向Pに沿って湾曲した内部空間11Eを有する。収容部11は、周方向Pにおける一方側から内部空間11Eを塞いだ第1側壁11Fと、周方向Pにおける他方側から内部空間11Eを塞いだ第2側壁11Gとを有する。
【0036】
内周壁11A、天壁11C、第1側壁11Fおよび第2側壁11Gのそれぞれには、内部空間11Eにつながった出入口11Hが形成される。内周壁11Aに形成された出入口11Hは、周方向Pに細長く延びるスリット状であり、周方向Pおよび上下方向Zのそれぞれに並んで複数形成される。天壁11Cに形成された出入口11Hは、天壁11Cにおいて径方向内側R1の部分と径方向外側R2の部分とにまたがって径方向Rに細長く延びるスリット状であり、周方向Pに並んで複数形成される。第1側壁11Fおよび第2側壁11Gのそれぞれに形成された出入口11Hは、上下方向Zに細長く延びるスリット状であり、周方向Pに並んで複数形成される。
【0037】
各収容部11の内部空間11Eには、多数のマグネシウム粒Mが収容される。マグネシウム粒Mは、マグネシウム製の粒であり、新品時におけるマグネシウム粒Mの粒径は、マグネシウム粒Mが出入口11Hを通過できない数mm程度の大きさに設定される。
【0038】
図3は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1は、例えばマイコンによって構成されて筐体2内に内蔵された制御部34(
図1も参照)と、洗濯槽8内に溜まった洗濯水の水位を検出する水位センサ35とをさらに含む。制御部34は、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、計時用のタイマとを含み、報知部の一例として機能する。モータ6、伝達機構7、表示操作部17、給水弁21、排水弁23および水位センサ35のそれぞれは、制御部34に対して電気的に接続される。制御部34は、モータ6に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ6を制御する。制御部34は、伝達機構7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を支持軸26および回転軸27の一方または両方へと切り替える。使用者が表示操作部17を操作して運転条件などについて選択すると、制御部34は、その選択を受け付ける。制御部34は、表示操作部17の表示を制御する。制御部34は、給水弁21および排水弁23の開閉を制御する。水位センサ35の検出結果は、制御部34にリアルタイムで入力される。
【0039】
制御部34は、モータ6、伝達機構7、給水弁21および排水弁23の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。一例として、洗濯運転は、洗濯物Lを内槽4内の洗濯水に所定時間だけ浸けるつけおき洗い運転と、つけおき洗い運転後に洗濯物Lを本格的に洗う本洗い運転と、本洗い運転後に洗濯物Lをすすぐすすぎ運転と、すすぎ運転後に洗濯物Lを脱水する脱水運転とを有する。
【0040】
図1を参照して、制御部34は、つけおき洗い運転では、まず、給水弁21を開いて洗濯槽8に給水する。これにより、洗濯槽8内には、洗濯水が溜められる。洗濯槽8内の水位が、内槽4内の洗濯物Lの上端よりも高いつけおき水位まで上昇すると、制御部34は、給水弁21を閉じることによって給水を停止する。
【0041】
内槽4に溜められた洗濯水は、出入口11Hから収容部11の内部空間11Eに流入する。内部空間11Eでは、洗濯水と、マグネシウム粒Mから洗濯水に溶けたマグネシウム成分とが化学反応する。洗濯水とマグネシウムとの化学反応の詳細については、前述したとおりであり、この化学反応により、内部空間11E内の洗濯水は、pH値が大きくなることによって、アルカリイオン水に改質され、出入口11Hから内槽4内に流出する。このように洗濯水が出入口11Hを通って内槽4内と内部空間11Eとを行き来することによって、洗濯槽8内におけるほとんどの洗濯水がアルカリイオン水になる。そのため、つけおき洗い運転では、収容部11のマグネシウム粒Mの成分が溶けた洗濯水であるアルカリイオン水に、内槽4内の洗濯物Lが浸される。
【0042】
洗濯水は、前述したようにアルカリイオン水であり、アルカリイオン水は、洗剤と同様に、油脂分、具体的には酸性の皮脂汚れなどを分解する作用を有する。そのため、内槽4内の洗濯物Lは、内槽4内に溜まったアルカリイオン水に浸かることによって、汚れが落とされる。給水が停止してから所定のつけおき時間が経過すると、制御部34は、つけおき洗い運転を終了する。なお、この実施形態では、つけおき洗い運転中の内槽4および回転翼5は、静止した状態にあるが、回転翼5が定期的に回転してもよい。回転翼5の回転により、内部空間11E内の洗濯水のpH値の増加が促進される。
【0043】
次に、制御部34は、本洗い運転を開始して、回転翼5を回転させる。すると、内槽4内における底壁4B側のスペースSの洗濯水が、回転する回転翼5の裏羽根5Bによって径方向外側R2へ押し出されて各循環流路29の入口29Aに送り込まれる。各循環流路29を上側Z1へ流れた洗濯水は、フィルタユニット10のフィルタ31を通過して循環流路29の出口29Bから径方向内側R1へ流出する(
図1における太い破線の矢印を参照)。フィルタ31は、フィルタ31を通過する洗濯水から糸くずなどの異物を捕獲し、フィルタユニット10内に溜める。出口29Bから内槽4内に戻った洗濯水は、内槽4内の洗濯物Lに上側Z1から浴びせられた後に、スペースSに流れ落ち、再び循環流路29を通って洗濯物Lに浴びせられるように循環する。
【0044】
本洗い運転では、このように回転翼5の回転に伴って洗濯水が循環し、アルカリイオン水が洗濯物Lに浴びせられる。さらに、洗濯物Lは、回転する回転翼5の隆起部5Aによって撹拌されるので、洗濯物Lの汚れが機械的に除去される。なお、洗濯運転の開始時などにおいて、内槽4内に洗剤が自動投入されたり、使用者の手作業によって投入されたりしてもよい。その場合の洗濯水は洗剤成分を含み、本洗い運転では、洗濯物Lの汚れが、洗剤成分によって化学的に分解される。なお、アルカリイオン水におけるアルカリ成分が、洗剤と同様に機能するので、洗剤の使用量を少なく抑えても高い洗浄効果を得ることができる。回転翼5の回転に伴う洗濯水の循環が開始されてから所定の洗い時間が経過すると、制御部34は、回転翼5を停止して、排水弁23を開いて洗濯槽8から排水することによって、本洗い運転を終了する。
【0045】
次に、制御部34は、すすぎ運転を開始する。具体的には、制御部34は、給水弁21を開いて洗濯槽8に給水し、所定のすすぎ水位まで洗濯水を洗濯槽8に溜める。そして、制御部34は、回転翼5を回転させる。すすぎ運転では、つけおき洗い運転と同様に、回転翼5の回転に伴って洗濯水が循環し、アルカリイオン水が洗濯物Lや洗濯槽8の外槽3や内槽4に浴びせられる。これにより、洗濯物Lに残った汚れがアルカリイオン水によって除去されるとともに、アルカリイオン水に含まれるマイナスイオンなどによって洗濯物Lや外槽3や内槽4が除菌される。回転翼5の回転に伴う洗濯水の循環が開始されてから所定のすすぎ時間が経過すると、制御部34は、回転翼5を停止して、排水弁23を開いて洗濯槽8から排水することによって、すすぎ運転を終了する。すすぎ運転は、複数回実施されてもよい。
【0046】
次に、制御部34は、脱水運転を開始する。具体的には、制御部34は、排水弁23を開いた状態で、内槽4を脱水回転させる。脱水回転中における内槽4の回転数は、段階的に上昇し、最終的には例えば800rpmの最高回転数に達した後に、モータ6への電圧の印加が停止されることによって内槽4が惰性回転する。内槽4の脱水回転により生じた遠心力によって、内槽4内の洗濯物Lが脱水される。脱水により洗濯物Lから染み出た水は、排水路22から機外に排出される。内槽4の惰性回転が停止すると、制御部34は、脱水運転を終了する。脱水運転は、最終脱水運転として洗濯運転の最後に実施されるだけでなく、中間脱水運転として本洗い運転などの直後にも実施されてもよい。
【0047】
マグネシウム粒Mは、新品時では、例えば銀色の表面を有するが、使用によって繰り返し洗濯水と接触すると、表面に酸化膜が形成されることによって劣化し、例えば黒色に変色する。劣化したマグネシウム粒Mは、洗濯水と化学反応しにくくなる。前述したようにマグネシウム粒Mは、内槽4の底側の収容部11内に収容されるので、使用者にとっては、マグネシウム粒Mの劣化具合を目視で確認することは困難である。そこで、洗濯機1は、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化に関する構成として、
図3に示す通電部36および検出部37をさらに含む。通電部36および検出部37のそれぞれは、制御部34に対して電気的に接続される。
【0048】
通電部36は、洗濯槽8内の洗濯水に接触する2つの電極40と、これらの電極40間における極性を切り替える切替部41とを含む。以下では、2つの電極40のうち、一方を第1電極40Aといい、他方を第2電極40Bということがある。
図2の要部拡大図である
図4を参照して、これらの電極40は、上下方向Zに延びる棒状であり、横並びの状態で外槽3の底壁3Bを貫通して配置される。各電極40では、上端部が先端部40Cであり、下端部が根元部40Dである。先端部40Cは、底壁3Bと内槽4の底壁4Bとの間のスペースTにおいて、底壁3Bの外周部沿い、具体的には径方向Rにおいて収容部11と同じ位置に配置される。各電極40の根元部40Dには、電線42が1つずつ接続される。第1電極40Aの根元部40Dに接続された電線42を第1電線42Aといい、第2電極40Bの根元部40Dに接続された電線42を第2電線42Bということがある。第1電線42Aおよび第2電線42Bは、底壁3Bの下側Z2で引き回されて切替部41に接続される。
【0049】
図5は、洗濯機1において通電部36に関する回路図である。第1電線42Aにおいて第1電極40Aとは反対側の部分は、第1接点42Cと第2接点42Dとに分岐する。第2電線42Bにおいて第2電極40Bとは反対側の部分は、第3接点42Eと第4接点42Fとに分岐する。洗濯機1は、第1接点42Cおよび第3接点42Eのどちらかに選択的に接触する第1スイッチ43と、第2接点42Dおよび第4接点42Fのどちらかに選択的に接触する第2スイッチ44と、第1スイッチ43と第2スイッチ44とをつなぐ配線45と、配線45の途中に配置された電源46とを含む。
【0050】
第1接点42Cと第3接点42Eと第1スイッチ43とは、第1リレー47を構成する。第2接点42Dと第4接点42Fと第2スイッチ44とは、第2リレー48を構成する。切替部41は、第1リレー47および第2リレー48を含む。切替部41は、制御部34による制御によって、第1リレー47では、第1スイッチ43を第1接点42Cに接触させて、第2リレー48では、第2スイッチ44を第4接点42Fに接触させる。この状態で内槽4内の洗濯水に浸かった第1電極40Aおよび第2電極40Bの間では、例えば12Vの弱い直流電圧による電流が、正極になった第1電極40Aから、負極になった第2電極40Bに向かって流れる(矢印E1を参照)。一方、切替部41は、制御部34による制御によって、第1リレー47では、第1スイッチ43を第3接点42Eに接触させて、第2リレー48では、第2スイッチ44を第2接点42Dに接触させる。この状態で内槽4内の洗濯水に浸かった第1電極40Aおよび第2電極40Bの間では、極性が切り替わり、前述した電流が、正極になった第2電極40Bから、負極になった第1電極40Aに向かって流れる(矢印E2を参照)。
【0051】
このように、通電部36は、洗濯槽8内の洗濯水に接触する2つの電極40間に電流を流すことによって洗濯槽8内の洗濯水に通電する。これらの電極40間における極性が一定のままだと、電極40の周辺で発生する電気分解に起因して電極40の表面に泡がついたり電極40が腐食したりする不具合が発生するおそれがある。しかし、通電部36では、これらの電極40間における極性が、制御部34の制御を受けた切替部41によって定期的に切り替えられることにより、電極40の不具合を抑制できる。
【0052】
検出部37は、洗濯槽8に溜まった洗濯水の電気特性を通電部36による通電中に検出するセンサである。この実施形態における洗濯水の電気特性は、電気抵抗である。
図6は、洗濯槽8内に溜まった洗濯水の電気抵抗の値の推移を示すタイムチャートである。
図6のタイムチャートでは、横軸は、経過時間(単位:分)を示し、縦軸は、検出部37が検出した洗濯水の電気抵抗の抵抗値(単位:kΩ)を示す。
【0053】
収容部11に収容されたマグネシウム粒Mが全て新品である場合において、通電部36が洗濯槽8内の洗濯水に例えば1時間連続で通電すると、
図6において実線で示すように、洗濯槽8内の洗濯水の電気抵抗は、18kΩの初期値から13kΩまで5kΩ程度低下する。この理由は、マグネシウム粒Mと洗濯水との化学反応が促進されることによって、洗濯水の導電率が向上するからである。一方、収容部11に収容されたマグネシウム粒Mが劣化した場合において、通電部36が洗濯槽8内の洗濯水に同様に通電すると、
図6において破線で示すように、洗濯槽8内の洗濯水の電気抵抗は、下がり具合が緩慢になり、18kΩの初期値から2kΩ程度しか低下しない。この理由は、マグネシウム粒Mと洗濯水との化学反応が鈍くなることによって、洗濯水の導電率が上昇しにくくなるからである。洗濯機1では、このような電気特性、具体的には抵抗値の低下量に基いて、洗濯運転中に収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化具合を確認することができる。
【0054】
具体的には、
図7のフローチャートを参照して、制御部34は、つけおき洗い運転を開始するために、前述したように給水弁21を開いて洗濯槽8に給水する(ステップS1)。制御部34は、洗濯槽8内の水位が上昇してつけおき水位に到達したことを水位センサ35の検出結果に基いて確認すると(ステップS2でYES)、給水を停止し、回転翼5の回転停止中において、通電部36によって洗濯槽8内の洗濯水に通電し、この状態における洗濯水の抵抗値Aを検出部37によって測定して一時記憶する(ステップS3)。洗濯槽8内の水位がつけおき水位に到達したときにおける洗濯槽8内の洗濯水の量は、例えば32Lである。
【0055】
抵抗値Aの測定時から、例えば60分のつけおき時間が到達すると(ステップS4でYES)、制御部34は、回転翼5の回転停止中において、現時点における洗濯水の抵抗値Bを検出部37によって測定する(ステップS5)。抵抗値Bは、抵抗値Aよりも低い値である。制御部34は、回転翼5の回転停止中での検出部37の検出結果である抵抗値Aおよび抵抗値Bに基いて抵抗値の低下量を算出し、抵抗値の低下量と所定の閾値Cとを比較する(ステップS6)。抵抗値の低下量は、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化度合を示す指標値であり、抵抗値Aから抵抗値Bを差し引くことによって得られる。収容部11内のマグネシウム粒Mが新品に近ければ、抵抗値の低下量が閾値C以上である。この場合には(ステップS6でYES)、制御部34は、つけおき洗い運転を終了して、前述した本洗い運転(ステップS7)、すすぎ運転(ステップS8)および脱水運転(ステップS9)を実施する。脱水運転の終了により、洗濯運転全体が終了する。
【0056】
一方、収容部11内のマグネシウム粒Mが許容できないほど劣化した状態にあれば、抵抗値の低下量が閾値Cを過ぎて閾値C未満になる。この場合には(ステップS6でNO)、制御部34は、収容部11内のマグネシウム粒Mが劣化してお手入れが必要である旨を、表示操作部17におけるお手入れランプ(図示せず)の点灯などによって、使用者に報知する(ステップS10)。なお、洗濯機1は、ここでの報知の一例として、表示操作部17における表示に代えてブザーを鳴らしてもよいし、表示操作部17の表示とブザーとを組み合わせることによって報知してもよい。そして、制御部34は、つけおき洗い運転を終了して、本洗い運転(ステップS7)、すすぎ運転(ステップS8)および脱水運転(ステップS9)を実施する。なお、お手入れランプは、洗濯機1の電源が入った状態では、本洗い運転以降も点灯したままである。
【0057】
洗濯運転には、
図8に示す変形例が挙げられる。なお、
図8では、
図7の処理ステップと同じ処理ステップには、
図7と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。変形例では、制御部34は、つけおき洗い運転を開始して、まず、初期値が零であるカウント値Dを初期値にリセットして(ステップS21)、洗濯槽8に給水する(ステップS1)。カウント値Dは、制御部34によって記憶される。そして、洗濯槽8内の水位がつけおき水位に到達すると(ステップS2でYES)、制御部34は、給水を停止して通電部36によって洗濯槽8内の洗濯水に通電し、この状態における洗濯水の抵抗値Aを検出部37によって測定して一時記憶する(ステップS3)。
【0058】
そして、抵抗値Aの測定時から1分経過すると(ステップS22でYES)、制御部34は、カウント値Dをインクリメント(+1)する(ステップS23)。インクリメント後のカウント値Dは、抵抗値Aの測定時からの経過時間(単位:分)と同じである。インクリメント後のカウント値Dが90未満であれば(ステップS24でNO)、制御部34は、現時点における洗濯水の抵抗値Bを測定する(ステップS5)。そして、制御部34は、抵抗値Aから抵抗値Bを差し引くことによって抵抗値の低下量を算出し、低下量と閾値Cとを比較する(ステップS6)。収容部11内のマグネシウム粒Mが新品に近いことによって抵抗値の低下量が閾値C以上であれば(ステップS6でYES)、制御部34は、つけおき洗い運転を終了して、本洗い運転(ステップS7)、すすぎ運転(ステップS8)および脱水運転(ステップS9)を実施する。
【0059】
一方、抵抗値の低下量が閾値C未満になるまで収容部11内のマグネシウム粒Mが劣化すると(ステップS6でNO)、制御部34は、ステップS22以降の処理を繰り返す。これにより、カウント値Dが大きくなる(ステップS23)。そして、抵抗値Aの測定時からの経過時間が90分に到達すると(ステップS24でYES)、制御部34は、表示操作部17のお手入れランプを点灯させることによって、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化を使用者に報知する(ステップS10)。このように、抵抗値の低下量が閾値C未満であれば(ステップS6でNO)、制御部34は、つけおき洗い運転の運転時間、つまり前述したつけおき時間を最大90分まで延長する。すなわち、制御部34は、抵抗値の低下量に応じて、つけおき時間を変更する。お手入れランプを点灯させた制御部34は、本洗い運転(ステップS7)、すすぎ運転(ステップS8)および脱水運転(ステップS9)を実施する。
【0060】
以上のように抵抗値の低下量が閾値C未満になってお手入れランプが点灯した場合には、制御部34は、収容部11内のマグネシウム粒Mをお手入れ、つまりリフレッシュする専用のコースであるリフレッシュ運転を実行することができる。具体的には、
図9のフローチャートを参照して、使用者が表示操作部17を操作してリフレッシュ運転の開始を指示すると、制御部34は、給水弁21を開いて空の洗濯槽8に給水する(ステップS31)。制御部34は、洗濯槽8内の水位が上昇して所定のリフレッシュ位に到達したことを水位センサ35の検出結果に基いて確認すると(ステップS32でYES)、給水を停止するとともに、洗濯機1の全体動作を一時停止し、前述したブザーを鳴らす(ステップS33)。洗濯槽8内の水位がリフレッシュ水位に到達したときにおける洗濯槽8内の洗濯水の量は、例えば16Lであり、リフレッシュ水位における洗濯水の水面は、収容部11よりも高い位置にある。
【0061】
ブザーの報知を受けた使用者は、扉16および扉19を開いて、所定の洗浄剤を手作業で出入口24から内槽4内に投入する(
図1参照)。ここでの洗浄剤として、クエン酸の錠剤や液体が挙げられる。洗浄剤を投入した使用者が扉16および扉19を閉じて表示操作部17を操作すると、制御部34は、洗濯機1の一時停止を解除して再スタートする(ステップS34)。そして、制御部34は、回転翼5を回転させることによって、洗濯槽8内の洗濯水を撹拌する(ステップS35)。これにより、洗浄剤が効果的に洗濯水に溶けてクエン酸水溶液が生成され、収容部11の出入口11Hから内部空間11Eに流入する(
図1参照)。内部空間11Eにおけるマグネシウム粒Mは、クエン酸水溶液に漬け込まれる。すると、マグネシウム粒Mは、表面から酸化膜が除去されることによってリフレッシュする。
【0062】
制御部34は、ステップS35における洗濯水の撹拌を、例えば1分間継続した後に、回転翼5の回転を停止し、排水弁23を開いて洗濯槽8から排水する。そして、制御部34は、洗濯槽8に給水して回転翼5を回転させることによってマグネシウム粒Mをすすぎ、その後に、排水弁23を開いた状態で内槽4を回転させることによってマグネシウム粒Mを脱水する(ステップS36)。その後、制御部34は、表示操作部17におけるお手入れランプを消灯してリフレッシュ運転を終了する(ステップS37)。
【0063】
リフレッシュ運転には、
図10に示す変形例が挙げられる。なお、
図10では、
図9の処理ステップと同じ処理ステップには、
図9と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。また、変形例に関連して、洗濯機1は、例えば洗浄剤の液体を溜めたタンク51と、給水路20において給水弁21よりも下流側の部分とタンク51とをつないだ供給路52と、供給路52の途中に配置されて制御部34によって開閉される供給弁53とを含む(
図1および
図3を参照)。
【0064】
制御部34は、変形例に係るリフレッシュ運転を開始するために、洗濯槽8に給水する(ステップS31)。そして、洗濯槽8内の水位がリフレッシュ位に到達すると(ステップS32でYES)、制御部34は、給水を停止するとともに、供給弁53を開く(ステップS41)。これにより、タンク51内の洗浄剤が、供給路52および給水路20を順に流れて洗濯槽8内に自動投入される。その後、制御部34は、回転翼5を回転させることによって、洗濯槽8内の洗濯水を撹拌する(ステップS35)。これにより、収容部11の内部空間11Eにおけるマグネシウム粒Mは、クエン酸水溶液に漬け込まれることによってリフレッシュする。
【0065】
制御部34は、ステップS35における洗濯水の撹拌を、例えば1分間継続した後に、回転翼5の回転を停止し、排水弁23を開いて洗濯槽8から排水する。そして、制御部34は、マグネシウム粒Mをすすぎ、その後に、排水弁23を開いた状態で内槽4を回転させることによってマグネシウム粒Mを脱水する(ステップS36)。その後、制御部34は、表示操作部17におけるお手入れランプを消灯してリフレッシュ運転を終了する(ステップS37)。
【0066】
以上のように、洗濯機1では、マグネシウム粒Mを収容する収容部11が、洗濯槽8内の洗濯水に浸かる位置に配置される。これにより、収容部11内のほぼすべてのマグネシウム粒Mと洗濯槽8内の洗濯水との化学反応が促進されてアルカリイオン水が多量に生成されるので、多量のアルカリイオン水によって洗濯物Lを効果的に洗濯することができる。特に、収容部11という専用のスペースに多量のマグネシウム粒Mを収容できるので、多量のアルカリイオン水を生成して洗浄力の向上を図ることができる。
【0067】
洗濯機1では、通電部36が洗濯槽8内の洗濯水に通電する間に、検出部37が洗濯水の電気抵抗の抵抗値を検出する。制御部34は、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化度合を示す抵抗値の低下量を、検出部37の検出結果に基いて算出する(ステップS6)。この指標値が閾値Cを過ぎた場合に(ステップS6でNO)、制御部34は、表示操作部17によって、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化を報知する(ステップS10)。この報知によって、使用者は、洗濯用のマグネシウム粒Mのメンテナンスのタイミングを把握できる。
【0068】
また、制御部34は、回転翼5の回転停止中に検出部37が検出した洗濯水の電気抵抗に基いて、抵抗値の低下量を算出する。回転翼5の回転停止中では、洗濯槽8内の洗濯水は、不規則な水流が発生しない安定した状態にあるので、検出部37は、洗濯水の電気抵抗値を正確に検出することができる(ステップS3およびS5)。そのため、この抵抗値に基づいて算出される低下量は、マグネシウム粒Mの劣化度合を正確に示すので、この低下量が閾値Cを過ぎた場合に、制御部34は、表示操作部17によって、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化を適切なタイミングに報知する(ステップS10)。この報知によって、使用者は、洗濯用のマグネシウム粒Mのメンテナンスに適切なタイミングを把握できる。
【0069】
また、つけおき洗い運転の運転時間は、収容部11内のマグネシウム粒Mの劣化度合を示す指標値に応じて変更される(ステップS23およびS24)。そのため、マグネシウム粒Mが劣化した状態にあっても、洗濯槽8内の洗濯物Lは、つけおき洗い運転において、マグネシウム粒Mの劣化度合に応じた適切な時間だけアルカリイオン水に浸されることによって効果的に洗浄される。すなわち、マグネシウム粒Mが劣化した場合には、つけおき時間が延長されるので、マグネシウム粒Mが新品である場合と同様の洗浄効果を得られる。
【0070】
また、抵抗値の低下量が閾値Cを過ぎるほど劣化したマグネシウム粒Mは、リフレッシュ運転(
図9および
図10参照)によってリフレッシュされることにより、劣化前と同様に洗濯槽8内の洗濯水と効果的に化学反応して、アルカリイオン水を多量に生成することができる。
【0071】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、収容部11は、内槽4に対して着脱可能であってもよい。この場合、使用者は、収容部11を内槽4から離脱させて収容部11内のマグネシウム粒Mをメンテナンスした後に、離脱時とは逆の手順で収容部11を内槽4に装着し直すことができる。これにより、マグネシウムのメンテナンス性の向上を図れる。また、前述したお手入れランプが点灯した場合、使用者は、収容部11を内槽4から離脱させて収容部11内のマグネシウム粒Mを新品に交換してもよい。
【0073】
また、マグネシウム粒Mの劣化度合を示す指標値を算出するための洗濯水の電気特性として、前述した実施形態では電気抵抗が用いられるが、導電率を用いてもよい。また、前述した実施形態では、抵抗値の低下量が閾値Cを下回った場合に、マグネシウム粒Mが劣化したと判断される。一方、抵抗値の低下量以外の指標値を用いた場合には、この指標値が所定の閾値を上回った場合に、マグネシウム粒Mが劣化したと判断されることもあり得る。
【0074】
また、洗濯機1は、前述した実施形態では、縦型洗濯機であるが、内槽4の回転軸線Jが前後方向Yに沿って水平に延びたドラム式洗濯機であってもよい。さらに、洗濯機1は、乾燥機能を有する洗濯乾燥機であってもよいし、二槽式洗濯機であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 洗濯機
5 回転翼
8 洗濯槽
11 収容部
17 表示操作部
21 給水弁
34 制御部
36 通電部
37 検出部
40 電極
41 切替部
C 閾値
L 洗濯物
M マグネシウム粒