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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】伸縮装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
G02B23/24 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020014466
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021120731
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211064
【氏名又は名称】中外テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】甲斐田 朋志
(72)【発明者】
【氏名】川北 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】秋森 輝希
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇気
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-038641(JP,A)
【文献】特開2019-108945(JP,A)
【文献】特開平01-257812(JP,A)
【文献】特開2009-160075(JP,A)
【文献】特開2014-227730(JP,A)
【文献】特開平01-247809(JP,A)
【文献】特開2017-012588(JP,A)
【文献】特開2002-085334(JP,A)
【文献】特開平06-245896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24-23/26
G01N 21/84-21/90
G01N 21/93-21/958
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮チューブと、
前記伸縮チューブ内に配置され、前記伸縮チューブへの圧縮気体の供給と前記伸縮チューブからの圧縮気体の排気を行うエアーラインと、
前記伸縮チューブの引き出しと巻き取りを行う巻き取り機構と、
前記伸縮チューブの先端と前記巻き取り機構との間に、前記伸縮チューブ内に充填された圧縮気体の前記巻き取り機構側へのリークを防止するクランプと、を備え、
前記クランプは、前記伸縮チューブの前記巻き取り機構への収納時に、前記クランプが前記エアーラインを潰すことがないように前記エアーラインの形状に合わせた凹凸を有し、
前記巻き取り機構から引き出された前記伸縮チューブ内に前記エアーラインから圧縮気体を供給することで、前記伸縮チューブを上方へ延伸させることを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブの先端に、ジャイロセンサおよびスラスターが設置されており、
前記ジャイロセンサにより前記伸縮チューブの傾きを検知し、当該検知した前記伸縮チューブの傾きに基づき、前記スラスターにより前記伸縮チューブの傾きを補正することを特徴とする伸縮装置。
【請求項3】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記エアーラインは、前記伸縮チューブ内へ圧縮気体を供給する供給ラインと前記伸縮チューブ内から圧縮気体を排気する排気ラインの2系統配置されていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項4】
請求項に記載の伸縮装置であって、
前記クランプより前記巻き取り機構側の伸縮チューブへリークした圧縮空気を排気するポンプを有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項5】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
上方に延伸された前記伸縮チューブの折れ曲がりを防止するサポートを有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項6】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブの内部は、当該伸縮チューブの延伸方向において、仕切り板により複数のセルに分割されており、
前記複数のセル内の各々に、前記エアーラインが配置されていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項7】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブの先端に伸縮可能に構成された複数の円筒体を有し、
前記複数の円筒体が伸長することで、上方へ延伸した前記伸縮チューブを支持することを特徴とする伸縮装置。
【請求項8】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブの周方向において、前記伸縮チューブの内側に前記伸縮チューブ内から圧縮気体の漏れを防止する気密材が設けられていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項9】
請求項に記載の伸縮装置であって、
前記気密材は、前記伸縮チューブの延伸方向において、一定のピッチで複数設けられていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブは二重構造で構成され、
前記エアーラインは、前記二重構造の内部に配置されていることを特徴とする伸縮装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の伸縮装置であって、
前記伸縮チューブの先端に、放射線計測器、3Dスキャンデータ採取装置、温度計、カメラ、照明のうち、少なくとも1つの作業ツールが設置されていることを特徴とする伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置の構成に係り、特に、高所や入口の狭い建屋内、配管内等の点検や作業に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人が簡単に立ち入れない高所や足場を組まなければならない場所等を点検する際、従来は点検者の身に危険が及ぶ可能性とともに、作業時間を要していた。
【0003】
例えば、火災や地震発生後の建屋の現場検証時には、構造物の消失状況や破損状況を把握するために点検者が大きな点検機材を持って内部に入ろうとした場合、倒壊した構造物が入口の一部を塞いで進入の妨げとなったり、破損した構造物が落下したりする恐れがあるため、点検者の安全性確保と作業効率の向上が求められる。
【0004】
また、高架道路や道路橋等の橋梁は、一旦供用を開始すると絶え間なく様々な作用を受けながら長期間使用されるため、状態は絶えず変化しつづける。したがって、供用安全性の確保のために、供用期間を通じて適切なタイミングで橋梁の損傷、機能等の状態を把握し、必要な措置を行うための点検が行われるが、高所での点検や作業のため、やはり点検者の安全性と作業性が重要な課題である。
【0005】
また、タンク内や気密性の高い建屋内の点検には、酸欠などの災害を防止する必要がある。
【0006】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「伸縮チューブの先端から圧縮空気の供給を受けた伸縮チューブは、棒状になって進行する。先端には撮影装置、および、圧縮空気送給用のエアーホースを取付け、伸縮チューブは、圧封ローラーを経て、巻上げドラムに捲着する如く形成すると共に、エアーホースより、コンプレッサにより発生せる圧縮空気を伸縮チューブに送給し、その空圧により管内を自力にて進行する如く形成し、伸縮チューブ先端の撮影装置を、遠隔装置により作動して、管内各部を撮影した写真、または、テレビカメラにて撮影した映像を、地上の再生装置に送ることを特徴とする、下水管等の管内点検装置」が開示されている。
【0007】
特許文献1によれば、エアーホースよりコンプレッサにて発生せる圧縮空気を送給することにより、その空圧により伸縮チューブが管内を自動的に進行し、先端の照明具により管内を照射し、撮影装置、カメラ、テレビカメラを遠隔装置たる赤外線、および電導ケーブル(電源制御送像等)を操作し、管内各部を撮影するものにして従来不可能とされた管径250~1000mmの小口径の管内点検を容易確実に行なうことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭60-38641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、火災や地震発生後の建屋の現場検証、高架道路や道路橋等の橋梁の点検、タンク内や気密性の高い建屋内の点検等、様々な分野で点検者の安全を確保しつつ、効率の良い点検作業が要望されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている技術は、下水管のような横向きに敷設された構造物の内部の点検を前提としており、上述したような高所や足場を組まなければならないような場所の点検作業には不向きである。
【0011】
そこで、本発明の目的は、人が簡単に立ち入れない高所や入口の狭い建屋内等の点検作業において、点検者の安全性を確保しつつ、点検作業の省力化が可能な伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、伸縮チューブと、前記伸縮チューブ内に配置され、前記伸縮チューブへの圧縮気体の供給と前記伸縮チューブからの圧縮気体の排気を行うエアーラインと、前記伸縮チューブの引き出しと巻き取りを行う巻き取り機構と、前記伸縮チューブの先端と前記巻き取り機構との間に、前記伸縮チューブ内に充填された圧縮気体の前記巻き取り機構側へのリークを防止するクランプと、を備え、前記クランプは、前記伸縮チューブの前記巻き取り機構への収納時に、前記クランプが前記エアーラインを潰すことがないように前記エアーラインの形状に合わせた凹凸を有し、前記巻き取り機構から引き出された前記伸縮チューブ内に前記エアーラインから圧縮気体を供給することで、前記伸縮チューブを上方へ延伸させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人が簡単に立ち入れない高所や入口の狭い建屋内等の点検作業において、点検者の安全性を確保しつつ、点検作業の省力化が可能な伸縮装置を実現することができる。
【0016】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る伸縮装置の全体概要を示す図である。
図2A】本発明の実施例1に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図2B図2AのA-A’断面図である。
図3A】本発明の実施例2に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図3B図3AのB-B’断面図である。
図4】本発明の実施例3に係る伸縮装置の要部構造を示す斜視図及び断面図である。
図5A】本発明の実施例4に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図5B】本発明の実施例4に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図5C】本発明の実施例4に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図6A】本発明の実施例5に係る伸縮装置の全体概要を示す図である。
図6B図6AのD-D’断面図である。
図6C図6AのE-E’断面図である。
図6D図6AのF部の構造を示す図である。
図6E図6Dのホース16及び抑えローラ18を示す図である。
図7】本発明の実施例6に係る伸縮装置の要部構造を示す断面図である。
図8】本発明の実施例7に係る伸縮装置の全体概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0019】
先ず、図1から図2Bを参照して、本発明の実施例1の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図1は、本実施例の伸縮装置の全体概要を示す図である。図2Aは、図1の伸縮装置の要部構造を示す断面図であり、図2Bは、図2AのA-A’断面図である。
【0020】
本実施例の伸縮装置1は、図1に示すように、地上(床)7上に小型の巻き取り機構3が設置されており、巻き取り機構3から引き出された伸縮チューブ2がクランプ4を介して上方に向かって延伸している。伸縮チューブ2の内部には圧縮気体5が充填されており、圧縮気体5の圧力により伸縮チューブ2が上方に延伸している。クランプ4は、伸縮チューブ2の先端と巻き取り機構3との間に設置されており、伸縮チューブ2内に充填された圧縮気体5の巻き取り機構3側へのリークを防止する。また、伸縮装置1は、上方に延伸された伸縮チューブ2の折れ曲がりを防ぐためのサポート25を有している。
【0021】
伸縮チューブ2の先端には、カメラ6が取り付けられており、伸縮チューブ2が上方に向かって延伸することで、建屋の狭い入口(狭隘開口)からカメラ6を進入させて建屋内部を点検(観察)することができる。また、橋梁の下部やタンク内の底部に伸縮装置1を設置し、伸縮チューブ2を上方に向かって延伸させることで、カメラ6により橋梁やタンク内部を点検(観察)することができる。
【0022】
なお、カメラ6は作業ツールの一例であり、例えば、中性子線やガンマ線を計測する放射線計測器、3Dスキャンデータ採取装置、温度計、照明等を設置することも可能である。
【0023】
図2A及び図2Bに示すように、伸縮チューブ2の内部には、エアーライン8及び9が配置されており、エアーライン8,9を介して伸縮チューブ2内への圧縮気体5の供給と排気を行う。ここでは、エアーライン8を圧縮気体5の供給ラインとし、エアーライン9を圧縮気体5の排気ラインとして説明する。
【0024】
エアーライン8から伸縮チューブ2内に供給された圧縮気体5は、その圧力で伸縮チューブ2を上方へ延伸させる。この際、巻き取り機構3に巻き取られていた伸縮チューブ2が引き出される。なお、伸縮チューブ2の巻き取り機構3からの引き出しには、圧縮気体5の圧力を用いてもよく、巻き取り機構3に電動モータ等を設置し、伸縮チューブ2への圧縮気体5の供給量に応じて電動で巻き取り機構3から伸縮チューブ2を引き出すように制御してもよい。
【0025】
圧縮気体5が供給された伸縮チューブ2の下端にはクランプ4が配置されており、クランプ4により伸縮チューブ2内部から圧縮気体5が漏れ出るのを防いでいる。
【0026】
一方、伸縮チューブ2を縮ませたい場合は、エアーライン9を介して伸縮チューブ2内から圧縮気体5を排気する。この際、巻き取り機構3は伸縮チューブ2を巻き取り、巻き取り機構3に回収する。なお、伸縮チューブ2の巻き取り機構3への巻き取りには、例えば、巻き取り機構3にバネ等の弾性体を設置することで、圧縮気体5の排気に合わせてバネの弾性により伸縮チューブ2を巻き取り機構3に巻き取るようにしてもよく、巻き取り機構3に設置した電動モータ等により、伸縮チューブ2からの圧縮気体5の排気量に応じて電動で巻き取り機構3への伸縮チューブ2の巻き取り(回収)を制御してもよい。
【0027】
また、図2Aに示すように、伸縮チューブ2の先端部(図1のカメラ6の設置部)には、ジャイロセンサを用いた上部制御システムが設置されている。この上部制御システムは、姿勢制御装置(スラスター)10及びジャイロセンサ11で構成されており、伸縮チューブ2が上方へ延伸する際に、左右方向に折れ曲がる事象をジャイロセンサ11により検知し、姿勢制御装置(スラスター)10の噴射反力により正規の位置に復元させる。
【0028】
上記特許文献1の技術は、下水管等の「管内」の点検に限定されているため、自由空間における上向きの伸縮を必要とする点検作業への採用は困難である。自由空間では伸縮チューブが折れ曲がることにより、伸縮不能な状態に陥る事象が考えられる。
【0029】
そこで、本実施例のように、伸縮チューブ2の先端部(図1のカメラ6の設置部)に姿勢制御装置(スラスター)10及びジャイロセンサ11を設置し、伸縮チューブ2の上部の延伸方向を制御することで、伸縮チューブ2を所望の方向へ延伸させることができる。
【0030】
また、特許文献1では、エアホース3が伸縮チューブ1の外側に配置されているのに対し、本実施例のようにエアーライン8,9を伸縮チューブ2の内部に配置することで、伸縮チューブ2の外側には圧縮気体の供給ラインがなく、凹凸の少ない形状とすることができ、建屋の狭い入口(狭隘開口)からも容易に進入させることが可能となる。このため、カメラ6の電源配線や信号配線(図示せず)も伸縮チューブ2の内部に配置するのが望ましい。
【0031】
以上説明したように、本実施例の伸縮装置1は、伸縮チューブ2と、伸縮チューブ2内に配置され、伸縮チューブ2への圧縮気体5の供給と伸縮チューブ2からの圧縮気体5の排気を行うエアーライン8,9と、伸縮チューブ2の引き出しと巻き取りを行う巻き取り機構3を備えており、巻き取り機構3から引き出された伸縮チューブ2内にエアーライン8から圧縮気体5を供給することで、伸縮チューブ2を上方へ延伸させるように構成されている。
【0032】
また、伸縮チューブ2の先端には、ジャイロセンサ11および姿勢制御装置(スラスター)10が設置されており、ジャイロセンサ11により伸縮チューブ2の傾きを検知し、当該検知した伸縮チューブ2の傾きに基づき、姿勢制御装置(スラスター)10により伸縮チューブ2の傾きを補正する。
【0033】
また、エアーラインは、伸縮チューブ2内へ圧縮気体5を供給する供給ライン(エアーライン8)と伸縮チューブ2内から圧縮気体5を排気する排気ライン(エアーライン9)の2系統配置されている。
【0034】
なお、伸縮チューブ2には、軽量で高強度、なおかつ、巻き取り機構3からの引き出し・巻き取りが容易な材質を選択するのが好適である。材質には特に制限はないが、例えば、ゴム材や繊維などの柔らかい弾性体が考えられる。例えば、ポリエステルを繊維素材とし、軟質塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)をコーティングした編上ホースを適用することができる。アラミド繊維で補強したシートなども採用可能である。
【0035】
また、本実施例では、伸縮チューブ2内へ圧縮気体5を供給するエアーライン8と伸縮チューブ2内から圧縮気体5を排気するエアーライン9の2系統を配置しているが、1系統のエアーラインを配置し、圧縮気体5の供給ラインと排気ラインを兼ねることも可能である。
【0036】
また、エアーライン8,9の材質には特に制限はないが、伸縮チューブ2と同様に、
ゴム材や繊維などの柔らかい弾性体が考えられる。例えば、アクリルゴムやシリコーンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム材、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン等の樹脂を採用することができる。
【0037】
また、クランプ4は、伸縮チューブ2の巻き取り機構3からの引き出し・巻き取りの際に、伸縮チューブ2の移動に合せて回転するが、この回転動作は、巻き取り機構3と同様に、圧縮気体5の圧力を用いてもよく、クランプ4に電動モータ等を設置し、伸縮チューブ2への圧縮気体5の供給量に応じて電動で動作するように制御してもよい。
【0038】
また、圧縮気体5には、空気や不活性ガス、その他の加圧ガス等の任意の種類の気体を使用することが可能であり、水などの液体も採用可能である。
【0039】
また、図1に示すように、巻き取り機構3にポンプ26を接続し、クランプ4よりも巻き取り機構3側の伸縮チューブ2内を吸引し、クランプ4からリークした圧縮空気5を排気するように構成してもよい。伸縮チューブ2の内部に充填された圧縮気体5をクランプ4で完全に密閉するのが困難な場合、一時的に圧縮空気5の供給を停止した後、ある程度時間が経つと徐々に圧縮気体5がクランプ4から巻き取り機構3側へリークし、クランプ4の前後で圧力が釣り合ってしまい、その後、圧縮気体5により伸縮チューブ2を上手く延伸できないことが想定される。このような場合、クランプ4よりも巻き取り機構3側の伸縮チューブ2内の空気を吸引するのが有効である。
【0040】
なお、上記では主に自由空間において伸縮チューブ2を上方へ延伸させる例を説明したが、配管内に沿って曲がるように伸縮チューブ2を延伸させることも可能である。
【実施例2】
【0041】
次に、図3Aおよび図3Bを参照して、本発明の実施例2の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図3Aは、本実施例の伸縮装置の要部構造を示す断面図であり、実施例1の図2Aに相当する。図3Bは、図3AのB-B’断面図である。
【0042】
本実施例の伸縮装置1は、図3Aに示すように、伸縮チューブ2の先端部に姿勢制御装置(スラスター)10を設置しておらず、その代わりに、図3Bに示すように、伸縮チューブ2の内部を仕切り板12により複数のセルに分割し、それぞれのセルの内部にエアーライン8,9を配置している点において、実施例1とは異なっている。
【0043】
伸縮チューブ2を圧縮気体5の圧力により上方へ延伸させる際、クランプ4より巻き取り機構3側に多少の空気が流れ出る(漏れる)可能性があり、伸縮チューブ2に「たるみ」が発生し、カメラ6やジャイロセンサ11、伸縮チューブ2の上部の自重に耐えられずに折れる曲がる事象が想定される。
【0044】
そこで、本実施例では、ジャイロセンサ11により伸縮チューブ2の傾きを検知した場合、傾いた方のセルにエアーライン8から圧縮気体5を注入し姿勢を制御する。これにより、実施例1のように、姿勢制御装置(スラスター)10を搭載することなく、伸縮チューブ2の姿勢を制御することが可能となる。
【0045】
つまり、本実施例の伸縮装置1では、伸縮チューブ2の内部は、伸縮チューブ2の延伸方向において、仕切り板12により複数のセルに分割されており、複数のセル内の各々に、エアーライン8,9が配置されている。
【0046】
なお、図3Bでは、伸縮チューブ2の内部を仕切り板12により縦方向(伸縮チューブ2の延伸方向)に4分割している例を示しているが、セルの数は4つに限定されるものではなく、2分割や3分割、或いは、5分割以上の複数に分割してもよい。分割されたセルの数を増やすことで、より精度の高い姿勢制御が可能になる。
【実施例3】
【0047】
図4を参照して、本発明の実施例3の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図4は、本実施例の伸縮装置の要部構造を示す斜視図(上図)及び断面図(下図)である。
【0048】
本実施例の伸縮装置1は、図4に示すように、大きさが異なる複数の円筒体13を重ねてテレスコープ(伸縮望遠鏡)状にし、最小径の円筒体13の上面を伸縮チューブ2に接触/結合し、圧縮気体5を伸縮チューブ2に封入することにより複数の円筒体13を上下に移動させる。(縮み状態⇔伸び状態)
各円筒体13には、図4の下図に示すように、上面内面と下端外面にフランジがついており、小径の円筒体13の下端外面のフランジと次の大径の円筒体13の上面内面のフランジが結合することにより複数の円筒体13が伸びていく。
【0049】
圧縮気体5は伸縮チューブ2内に充填されるため、各円筒体13にはシール材を設けておらず、気密性を保つ必要がない。
【0050】
本実施例のように複数の円筒体13を用いた構成とすることで、伸縮チューブ2を圧縮気体5の圧力により上方へ延伸させる際、伸縮チューブ2を円筒体13で支えることができ、伸縮チューブ2が折れ曲がることなく、上方に延伸させることができる。
【0051】
なお、各円筒体13のフランジにキャリッジ(車輪等の装置)を設置し、円筒体13の内面にガイドレールを付けるなどして、フランジと円筒体13の摩擦を軽減するのが望ましい。或いは、フランジと円筒体13の間に潤滑剤を設けてもよい。
【0052】
また、円筒体13の材質には、アルミニウム系の合金や炭素繊維コンポジット等、軽量で強度のある材料を用いるのが好適である。
【実施例4】
【0053】
図5Aから図5Cを参照して、本発明の実施例4の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図5A及び図5Bは、本実施例の伸縮装置の要部構造を示す断面図である。なお、図5Aの右図(作動時)は、図5BのC-C’断面図である。また、図5Cは、後述する気密材14と伸縮チューブ2がクランプ4によりクランプされた状態を示す図である。
【0054】
本実施例の伸縮装置1は、図5A及び図5Bに示すように、伸縮チューブ2の内面に気密材14が設けられている点において、実施例1とは異なっている。
【0055】
上述したように、本発明では、エアーライン8,9を伸縮チューブ2の内部に配置し、伸縮チューブ2の外表面は凹凸の少ない形状としている。エアーライン8,9を伸縮チューブ2の内部に配置することで、圧縮気体5がクランプ4から巻き取り機構3側に流れ出る(漏れる)恐れがあるため、本実施例では、伸縮チューブ2の内面に圧縮気体5の漏れを防止する気密材14を設けている。
【0056】
図5Aに示すように、伸縮チューブ2の巻き取り機構3への収納時には、伸縮チューブ2の内面において互いに対向する気密材14同士が密着して、伸縮チューブ2は平板状に収納される。一方、伸縮チューブ2が圧縮気体5の圧力により上方に延伸する際(作動時)には、気密材14同士の密着が開放され、伸縮チューブ2内に圧縮気体5が充填される。
【0057】
また、図5Cに示すように、伸縮チューブ2の巻き取り機構3への収納時に、クランプ4がエアーライン8,9や図示しない配線等を潰すことがないようにエアーライン8,9や配線等の形状に合わせて凹凸を設けている。
【0058】
以上説明したように、本実施例の伸縮装置1は、伸縮チューブ2の周方向において、伸縮チューブ2の内側に伸縮チューブ2内から圧縮気体5の漏れを防止する気密材14が設けられている。
【0059】
なお、図5Bに示すように、気密材14は、伸縮チューブ2の内面の一部に設けてもよく、縦方向(伸縮チューブ2の延伸方向)に一定のピッチ(間隔)で複数設けてもよい。或いは、伸縮チューブ2の内面の全面に渡って設けることも可能である。
【0060】
また、気密材14は、伸縮チューブ2内部から圧縮気体5が大量に漏れるのを防ぐために、ある程度の気密性があればよく、完全な気密はとらなくてもよい。気密材14の材質には、特に制限はないが、例えば、伸縮チューブ2やエアーライン8,9と同様に、ゴム材や繊維などの柔らかい弾性体が考えられる。
【実施例5】
【0061】
図6Aから図6Eを参照して、本発明の実施例5の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図6Aは、本実施例の伸縮装置の全体概要を示す図である。図6B及び図6Cは、それぞれ図6AのD-D’断面図とE-E’断面図である。また、図6D及び図6Eは、図6AのF部の構造を示す図であり、ホース16及び抑えローラ18をそれぞれ異なる方向から見た図である。
【0062】
本実施例の伸縮装置1は、図6Aに示すように、伸縮チューブを2分割のホース16で構成し、それぞれのホース16を2つの巻取ドラム15により引き出しと巻き取りが可能になるように構成されている。2つの巻取ドラム15から引き出された2分割されたホース16は、F部のファスナ取付・脱着機構19により接合され、エアーライン8から圧縮気体(空気等)が供給されることで、一体の伸縮チューブとして上方に延伸される。
【0063】
F部のファスナ取付・脱着機構19には、抑えローラ18が配置されており、ホース16の接合面に設けられたファスナを抑えローラ18により抑え付けることで、2分割のホース16を接合し、一体の伸縮チューブになる。
【0064】
以上説明したように、本実施例の伸縮装置1は、ファスナを介して互いに接合可能な2本のホース16と、2本のホース16の引き出しと巻き取りをそれぞれ行う2つの巻き取り機構(巻取ドラム15)と、2つの巻き取り機構(巻取ドラム15)から引き出された2本のホース16をつなぎ合わせて1本の伸縮チューブを形成するファスナ取付・脱着機構19と、伸縮チューブへの圧縮気体5の供給と伸縮チューブからの圧縮気体5の排気を行うエアーライン8,9を備えており、ファスナ取付・脱着機構19により一体化された伸縮チューブ内にエアーライン8,9から圧縮気体5を供給することで、伸縮チューブを上方へ延伸させる。
【0065】
本実施例のように、伸縮チューブを2分割のホース16で構成し、それぞれのホース16を2つの巻取ドラム15により引き出しと巻き取りが可能な構成にすることで、巻取ドラム15によるホース16の引き出しと巻き取りが容易になる。
【0066】
なお、巻取ドラム15の動作は、他の実施例と同様に、圧縮気体5の圧力を用いてもよく、巻取ドラム15に電動モータ等を設置し、一体化されたホース16への圧縮気体5の供給量に応じて電動で巻取ドラム15からホース16を引き出すように制御してもよい。
【0067】
また、図6Aでは、本実施例の伸縮装置の構造が分かり易くなるように、エアーライン8,9をホース16の外側に配置しているが、上記の各実施例のように、一体化されたホース16の内部にエアーライン8,9を配置されるように構成するのが望ましいことは言うまでもない。
【実施例6】
【0068】
図7を参照して、本発明の実施例6の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図7は、本実施例の伸縮装置の要部構造を示す断面図であり、ホース16とエアーライン8,9の配置関係を示している。
【0069】
本実施例の伸縮装置1は、図7に示すように、伸縮チューブを構成するホース16を2重構造とし、2つのホース16の間にエアーライン8,9を配置するように構成されている。
【0070】
実施例1~5では、一体化されたホース16の内部全体へ圧縮気体5を供給する必要があるのに対し、本実施例のように、延伸させるホース16を2重構造とし、2重構造のホース16の内部のみにエアーライン8から圧縮気体5を供給することで、圧縮気体5の供給量を削減することができる。
【実施例7】
【0071】
図8を参照して、本発明の実施例7の伸縮装置の構成とその動作(作用)について説明する。図8は、本実施例の伸縮装置の全体概要を示す図である。
【0072】
本実施例の伸縮装置1は、図8に示すように、ヘリウムガス22を封入するホース(バルーン)20を有し、ヘリウムガス注入チューブ21からヘリウムガス22を封入・抜き取りすることで上下方向の移動(上方への延伸)を可能な構成としている。
【0073】
また、ホース(バルーン)20の下部にはプロペラ駆動装置24を設置し、そこにプロペラ23を四方向に配置し、横方向への移動も可能にしている。ホース(バルーン)20の上部にはカメラ6を設置しており、撮影を可能に構成されている。
【0074】
本実施例では、プロペラ23はプロペラ駆動装置24の四方向に配置されており、自由空間においてホース(バルーン)20を360°自在に移動させることができる。そのため、プロペラ駆動装置24、プロペラ23、カメラ6はなるべく小型のものを採用するのが望ましい。
【0075】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…伸縮装置、2…伸縮チューブ、3…巻き取り機構、4…クランプ、5…圧縮気体、6…カメラ、7…地上(床)、8…エアーライン(供給)、9…エアーライン(排気)、10…姿勢制御装置(スラスター)、11…ジャイロセンサ、12…仕切り板、13…(複数の)円筒体、14…気密材、15…(電動)巻取ドラム、16…ホース、17…気密ファスナ、18…抑えローラ、19…ファスナ取付・脱着機構、20…ホース(バルーン)、21…ヘリウムガス注入チューブ、22…ヘリウムガス、23…プロペラ、24…プロペラ駆動装置、25…サポート、26…ポンプ。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8