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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】スイッチング素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20231127BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20231127BHJP
   H01L 29/24 20060101ALI20231127BHJP
   H10N 30/045 20230101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/24
H10N30/045
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020021847
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128990
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】西中 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 昌広
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009405(JP,A)
【文献】特公昭48-005865(JP,B1)
【文献】特開昭63-216380(JP,A)
【文献】特開2019-041107(JP,A)
【文献】特開2007-317729(JP,A)
【文献】Francesco Mezzadri et al.,Crystal Structure and Ferroelectric Properties of ε-Ga2O3 Films Grown on (0001)-Sapphire,Inorganic Chemistry,米国,American Chemical Society,2016年11月08日,12079-12084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H10N 30/045
H01L 29/778
H01L 29/872
H01L 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発分極を有する半導体層を備えるスイッチング素子の製造方法であって、
自発分極制御処理を実施する工程を有し、
前記自発分極制御処理の実施前の前記スイッチング素子が、
第1化合物半導体層と、
前記第1化合物半導体層に対してヘテロ接合する第2化合物半導体層と、
前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の界面に対して対向するゲート電極と、
前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層を介して前記ゲート電極に対向する制御電極
を有し、
前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の少なくとも一方が、強誘電性を有し、
前記自発分極制御処理では、前記ゲート電極と前記制御電極の間に電圧を印加することによって、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層のうちの少なくとも一方で自発分極を発生させる、
製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子に関する。
【0002】
特許文献1に複数の酸化ガリウム層を積層した構造を有する高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が開示されている。HEMTは、2つの半導体層の間のヘテロ接合界面に生じる2次元電子ガスをチャネルとして利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-009405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、HEMTでは、ゲート電極への電圧の印加を停止した状態において、ヘテロ接合界面に2次元電子ガスが生じており、HEMTがオンしている。ゲート電極に所定電圧(例えば、負電圧)を印加することで、2次元電子ガスが消失し、HEMTがオフする。このため、ゲート電極に電圧を印加していない状態では、HEMTに大きいリーク電流が流れる。本明細書では、HEMT等のヘテロ接合界面を有するスイッチング素子において、ゲート電極に対する電圧の印加を停止したときにリーク電流を低減する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するスイッチング素子は、第1化合物半導体層と、前記第1化合物半導体層に対してヘテロ接合する第2化合物半導体層と、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の界面に対して対向するゲート電極、を有する。前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の少なくとも一方が、強誘電性を有する。
【0006】
このスイッチング素子においては、第1化合物半導体層と第2化合物半導体層の少なくとも一方が強誘電性を有するので、ソース電極に所定電圧を印加することで第1化合物半導体層と第2化合物半導体層の少なくとも一方で自発分極を発生させることができる。このため、ゲート電極に対する電圧の印加を停止しても、自発分極による電界がヘテロ接合界面に作用する。2次元電子ガスを減少させる方向に自発分極を発生させれば、ゲート電極に対する電圧の印加を停止したときに、ヘテロ接合界面に生じる2次元電子ガスの濃度が低くなる。したがって、このスイッチング素子では、ソース電極に対する電圧の印加を停止したときにリーク電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1のスイッチング素子の断面図。
図2】強誘電体のヒステリシスを示すグラフ。
図3】実施例2のスイッチング素子の断面図。
図4】実施例3のスイッチング素子の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する技術の付加的な特徴について、以下に列記する。なお、以下に列記された各特徴は、それぞれ独立して有用なものである。
【0009】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子は、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の間のヘテロ接合界面に接する第1不純物ドープ層と、前記第1不純物ドープ層に接するソース電極と、前記ヘテロ接合界面に接する第2不純物ドープ層と、前記第2不純物ドープ層に接するドレイン電極、をさらに有していてもよい。
【0010】
この構成によれば、スイッチング素子のオン抵抗を低減することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子は、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層を介して前記ゲート電極に対向する制御電極をさらに有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1化合物半導体層と第2化合物半導体層の少なくとも一方がより自発分極し易い。
【0013】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記第2化合物半導体層が、前記第1化合物半導体層よりも大きいバンドギャップを有していてもよい。
【0014】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子は、前記第2化合物半導体層と反対側で前記第1化合物半導体層に接するベース層を有していてもよい。
【0015】
前記第1化合物半導体層、前記第2化合物半導体層及び前記ベース層が、直方晶の結晶構造を有していてもよい。
【0016】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記第1化合物半導体層が、κ-InGa(0≦a≦2、0≦c≦2、1.9≦a+c≦2.1)により構成されていてもよい。
【0017】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記第2化合物半導体層が、κ-AlGa(0≦v≦2、0≦w≦2、1.9≦v+w≦2.1)により構成されていてもよい。
【0018】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記ベース層が、ε-GaFeOにより構成されていてもよい。
【実施例1】
【0019】
図1に示す実施例1のスイッチング素子10は、半導体基板12、ソース電極40、ドレイン電極42、及び、ゲート電極44を有している。ソース電極40、ドレイン電極42、及び、ゲート電極44は、半導体基板12の上面12aに設けられている。ゲート電極44は、ソース電極40とドレイン電極42の間に配置されている。
【0020】
半導体基板12は、ベース層14、電子走行層16、及び、電子供給層18を有している。ベース層14は、半導体基板12の最下部に配置されている。ベース層14は、ε型のガリウム鉄酸化物(ε-GaFeO)によって構成されている。ベース層14(すなわち、ε-GaFeO)は、直方晶の結晶構造を有している。
【0021】
電子走行層16は、ベース層14上に配置されている。電子走行層16は、κ型の酸化ガリウム(κ-Ga)によって構成されている。電子走行層16(すなわち、κ-Ga)は、ベース層14と同じ直方晶の結晶構造を有している。したがって、ベース層14上に結晶欠陥が少ない高品質の電子走行層16を形成することができる。例えば、ミストCVD法によってベース層14上に電子走行層16を形成することができる。電子走行層16は、i型の半導体層である。また、電子走行層16は、強誘電性を有する。すなわち、電子走行層16に電界が印加されると、電子走行層16内で自発分極が生じる。
【0022】
電子供給層18は、電子走行層16上に配置されている。電子供給層18は、κ型のアルミニウムガリウム酸化物(κ-AlGa(0≦v≦2、0≦w≦2、1.9≦v+w≦2.1))により構成されている。電子供給層18(すなわち、κ-AlGa)は、ベース層14及び電子走行層16と同じ直方晶の結晶構造を有している。したがって、電子走行層16上に結晶欠陥が少ない高品質の電子供給層18を形成することができる。例えば、ミストCVD法によって電子走行層16上に電子供給層18を形成することができる。電子供給層18は、i型または低濃度のn型の半導体層である。電子供給層18は、強誘電性を有する。すなわち、電子供給層18に電界が印加されると、電子供給層18内で自発分極が生じる。電子供給層18のバンドギャップは、電子走行層16のバンドギャップよりも大きい。電子供給層18は、電子走行層16に対してヘテロ接合している。すなわち、電子供給層18と電子走行層16の間の界面17は、ヘテロ接合界面である。電子走行層16(κ-Ga)と電子供給層18(κ-AlGa)は格子整合性が良いので、良質なヘテロ接合界面17を得ることができる。ゲート電極44は、電子供給層18上に配置されている。ゲート電極44は、電子供給層18に対してショットキー接触している。ゲート電極44は、電子供給層18を介してヘテロ接合界面17に対向している。
【0023】
半導体基板12は、ソース層20とドレイン層22を有している。ソース層20は、κ型の酸化ガリウム(κ-Ga)により構成されている。なお、ソース層20は、他の材料(例えば、β型の酸化ガリウム(β-Ga))により構成されていてもよい。ソース層20には、シリコンが高濃度にドープされている。したがって、ソース層20は、n型の半導体層である。ソース層20は、半導体基板12の上面12aからヘテロ接合界面17よりも深い位置まで伸びている。ソース層20は、ヘテロ接合界面17に接している。ソース層20上に、ソース電極40が配置されている。ソース電極40は、ソース層20に対してオーミック接触している。
【0024】
ドレイン層22は、κ型の酸化ガリウム(κ-Ga)により構成されている。なお、ドレイン層22は、他の材料(例えば、β型の酸化ガリウム(β-Ga))により構成されていてもよい。ドレイン層22には、シリコンが高濃度にドープされている。したがって、ドレイン層22は、n型の半導体層である。ドレイン層22は、半導体基板12の上面12aからヘテロ接合界面17よりも深い位置まで伸びている。ドレイン層22とソース層20の間には間隔が設けられており、その間隔内にヘテロ接合界面17が配置されている。ドレイン層22は、ヘテロ接合界面17に接している。ドレイン層22上に、ドレイン電極42が配置されている。ドレイン電極42は、ドレイン層22に対してオーミック接触している。
【0025】
図2は、強誘電体(すなわち、電子走行層16と電子供給層18)に印加される電界Eと、これらの内部で生じる分極Pの関係を示している。電界Eとして高電界Esを印加すると、強誘電体の内部で飽和レベルの分極+Psが生じる。その後、電界Eを0まで低下させると、強誘電体の内部に自発分極+Pr(残留分極)が残る。自発分極+Prを消滅させるためには、電界Eを抗電界-Ecまで低下させる必要がある。また、電界Eとしてマイナス側の高電界-Esを印加すると、強誘電体の内部で飽和レベルの分極-Psが生じる。その後、電界Eを0まで上昇させると、強誘電体の内部に自発分極-Pr(残留分極)が残る。自発分極-Prを消滅させるためには、電界Eを抗電界+Ecまで上昇させる必要がある。
【0026】
次に、実施例1のスイッチング素子10の使用方法について説明する。スイッチング素子10の特性は、電子走行層16と電子供給層18の内部で生じている自発分極によって変化する。最初に、自発分極の制御処理について説明する。
【0027】
自発分極の制御処理では、ゲート電極44の電位を変化させることで、電子走行層16と電子供給層18に電界を印加し、電子走行層16と電子供給層18の内部の自発分極を制御する。ゲート電極44の電位は、図示しない外部電源によって制御される。実施例1では、ゲート電極44の電位はソース電極40またはドレイン電極42の電位を基準として制御される。自発分極が生じておらず、かつ、ゲート電極44の電位が0Vの状態では、ヘテロ接合界面17に2次元電子ガス30が発生している。自発分極を発生させることで、ゲート電極44の電位が0Vのときの2次元電子ガス30の濃度を変化させることができる。自発分極の制御処理では、ソース電極40とドレイン電極42を同電位とした状態で、ゲート電極44の電位を制御する。
【0028】
自発分極の制御処理において、ゲート電極44に高電位Vsを印加すると、電子走行層16と電子供給層18に高電界Es(図2参照)が印加される。その後、ゲート電極44の電位を0Vまで変化させると、電子走行層16と電子供給層18の内部に自発分極+Prが残る。自発分極+Prが生じていると、ヘテロ接合界面17に上方向(電子走行層16から電子供給層18に向かう向き)に電界が生じる。自発分極+Prによる電界は、2次元電子ガス30の濃度を低下させる。
【0029】
ゲート電極44にマイナス側に高電位-Vsを印加すると、電子走行層16と電子供給層18にマイナス方向に高電界-Es(図2参照)が印加される。その後、ゲート電極44の電位を0Vまで変化させると、電子走行層16と電子供給層18の内部に自発分極-Prが残る。自発分極-Prが生じていると、ヘテロ接合界面17に下方向(電子供給層18から電子走行層16に向かう向き)に電界が生じる。自発分極-Prによる電界は、2次元電子ガス30の濃度を上昇させる。
【0030】
自発分極の制御処理において、ゲート電極44に抗電界-Ecに相当する負の電位を印加すると、自発分極+Prを消滅させることができる。また、自発分極の制御処理において、ゲート電極44に抗電界+Ecに相当する正の電位を印加すると、自発分極-Prを消滅させることができる。
【0031】
次に、スイッチング素子10をスイッチングさせるスイッチング処理について説明する。スイッチング処理では、ゲート電極44の電位は、上述した高電位Vs、-Vs(すなわち、自発分極の制御処理で使用される電位)よりも絶対値が十分に小さい範囲で制御される。例えば、電位+Ve1(図2の電界+E1に相当する電位)と電位-Ve1(図2の電界-E1に相当する電位)の間の範囲内でゲート電極44の電位が制御される。したがって、スイッチング処理においては、電子走行層16と電子供給層18の自発分極はほとんど変化しない。
【0032】
自発分極+Prが生じている状態では、ゲート電極44の電位は、電位+Ve1と0Vの間で制御される。ゲート電極44に電位+Ve1を印加すると、ヘテロ接合界面17に下方向に電界が印加され、電子走行層16の内部のヘテロ接合界面17近傍の領域に2次元電子ガス30が生じる。このため、電流が、ドレイン電極42から、ドレイン層22、2次元電子ガス30及びソース層20を介してソース電極40へ流れる。すなわち、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極44の電位を0Vまで低下させると、2次元電子ガス30の濃度が低下する。自発分極+Prが生じている状態では、ゲート電極44の電位を0Vまで低下させると、2次元電子ガス30の濃度が極めて低くなる。したがって、スイッチング素子10がオフする。このように、自発分極+Prが生じている状態では、スイッチング素子10はノーマリオフ型となり、ソース-ドレイン間に漏れ電流がほとんど生じない。自発分極+Prによって2次元電子ガス30の濃度を十分に低下させれば、漏れ電流を略ゼロとすることができる。
【0033】
自発分極が生じていない状態、または、自発分極-Prが生じている状態では、ゲート電極44の電位は、電位+Ve1と電位-Ve1の間で制御される。自発分極が生じていない状態、または、自発分極-Prが生じている状態でも、ゲート電極44に電位+Ve1を印加すると、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極44の電位を0Vまで低下させると、2次元電子ガス30の濃度が低下する。しかしながら、この場合、ゲート電極44の電位を0Vまで低下させても、自発分極の影響によって比較的高い濃度の2次元電子ガス30がヘテロ接合界面17に残存する。ゲート電極44の電位を-Ve1まで低下させると、2次元電子ガス30が消滅し、スイッチング素子10がオフする。このように、自発分極が生じていない状態、または、自発分極-Prが生じている状態では、ゲート電極44の電位を-Ve1まで低下させないと、スイッチング素子10がオフしない。この場合、スイッチング素子10はノーマリオン型となる。
【0034】
以上に説明したように、実施例1では、自発分極の制御処理によって、スイッチング素子10の特性をノーマリオン型とノーマリオフ型の間で変化させることができる。電子走行層16と電子供給層18の内部に自発分極+Prを生じさせることで、ゲート電圧の印加を停止したとき(すなわち、ゲート電位が0Vのとき)の漏れ電流を抑制することができる。
【0035】
なお、一例では、自発分極の制御処理は、ゲート電極44に印加される電圧の履歴に基づいて適宜実施することができる。
【0036】
なお、実施例1では、ゲート電極44とドレイン電極42の間の間隔が、ゲート電極44とソース電極40の間の間隔よりも広い。これによって、ゲート電極44とドレイン電極42の間の静電容量が低減されている。したがって、スイッチング素子10は、高周波でのスイッチングが可能である。
【0037】
また、実施例1のスイッチング素子10では、ドレイン電極42がn型のドレイン層22を介してヘテロ接合界面17に接続されており、ソース電極40がn型のソース層20を介してヘテロ接合界面17に接続されている。これによって、スイッチング素子10のオン抵抗が低減されている。なお、オン抵抗がそれほど問題とならない場合には、ドレイン層22とソース層20を設けずに、ドレイン電極42とソース電極40を電子供給層18に直接接触させてもよい。
【実施例2】
【0038】
図3に示す実施例2のスイッチング素子100は、ベース層14、電子走行層16及び電子供給層18を有している。実施例2では、電子走行層16が、κ型のインジウムガリウム酸化物(κ-InGa(0≦a≦2、0≦c≦2、1.9≦a+c≦2.1))により構成されている。実施例2のベース層14及び電子供給層18の材料は、実施例1と等しい。κ-InGaは立方晶の結晶構造を有するので、実施例2でも高品質の電子走行層16及び電子供給層18を形成することができる。また、電子走行層16(κ-InGa)と電子供給層18(κ-AlGa)は格子整合性が良いので、良質なヘテロ接合界面17を得ることができる。また、実施例2では、電子供給層18が電子走行層16の上面の一部に形成されている。言い換えると、電子走行層16の表面の一部が、電子供給層18に覆われていない。実施例2では、ソース電極40が電子走行層16と電子供給層18に接しており、ドレイン電極42が電子走行層16と電子供給層18に接している。ゲート電極44は、実施例1と同様に、ソース電極40とドレイン電極42の間の電子供給層18の上面にショットキー接触している。
【0039】
実施例2のスイッチング素子100は、制御電極110を有している。制御電極110は、ソース電極40とドレイン電極42の間の範囲の外側で、電子走行層16に接している。
【0040】
スイッチング素子100の使用時に、制御電極110には固定電位が印加される。これによって、電子走行層16の電位が、制御電極110の電位と略同電位となる。また、ゲート電極44の電位は、制御電極110の電位を基準として制御される。実施例2でも、実施例1と同様に、自発分極の制御処理とスイッチング処理が実施される。実施例2では、電子走行層16の電位が安定するので、ゲート電極44の電位を制御するときに、ヘテロ接合界面17に印加される電界を正確に制御することができる。
【0041】
なお、実施例2では、自発分極の制御処理では制御電極110を基準としてゲート電極44の電位を制御し、スイッチング処理ではソース電極40を基準としてゲート電極44の電位を制御してもよい。
【実施例3】
【0042】
図4に示す実施例3のスイッチング素子200は、ベース層14、電子走行層16及び電子供給層18を有している。実施例3では、電子供給層18が、κ型の酸化ガリウム(κ-Ga)により構成されている。実施例3のベース層14及び電子走行層16の材料は、実施例2と等しい。κ-Gaは立方晶の結晶構造を有するので、実施例3でも高品質の電子供給層18を形成することができる。また、電子走行層16(κ-InGa)と電子供給層18(κ-Ga)は格子整合性が良いので、良質なヘテロ接合界面17を得ることができる。また、実施例3では、電子供給層18の上面に凹部40a、42aが形成されている。凹部40a内にソース電極40が配置されており、凹部42a内にドレイン電極42が配置されている。凹部40aが形成されていることで、ソース電極40とヘテロ接合界面17の間の距離が短くなっており、これらの間の電気抵抗が低減されている。凹部42aが形成されていることで、ドレイン電極42とヘテロ接合界面17の間の距離が短くなっており、これらの間の電気抵抗が低減されている。なお、オン抵抗がそれほど問題とならない場合には、凹部40a、42aを設けなくてもよい。ゲート電極44は、実施例1と同様に、ソース電極40とドレイン電極42の間の電子供給層18の上面にショットキー接触している。
【0043】
実施例3のスイッチング素子200は、制御電極210を有している。制御電極210は、ベース層14の下面に接している。制御電極210は、ベース層14、電子走行層16及び電子供給層18を介してゲート電極44に対向している。また、制御電極210は、放熱板としても機能する。
【0044】
スイッチング素子200の使用時に、制御電極210には固定電位が印加される。これによって、ベース層14の電位が、制御電極210の電位と略同電位となる。また、ゲート電極44の電位は、制御電極210の電位を基準として制御される。実施例3でも、実施例1と同様に、自発分極の制御処理とスイッチング処理が実施される。実施例3では、ベース層14の電位が安定するので、ゲート電極44の電位を制御するときに、ヘテロ接合界面17に印加される電界を正確に制御することができる。また、実施例3では、制御電極210が電子走行層16と電子供給層18を介してゲート電極44に対向しているので、電子走行層16と電子供給層18に電界が印加され易く、自発分極をより効率的に制御することができる。
【0045】
なお、実施例3では、自発分極の制御処理では制御電極210を基準としてゲート電極44の電位を制御し、スイッチング処理ではソース電極40を基準としてゲート電極44の電位を制御してもよい。
【0046】
なお、上述した実施例1~3では、ゲート電極44が電子供給層18にショットキー接触していたが、ゲート電極44と電子供給層18の間にゲート絶縁膜が設けられていてもよい。
【0047】
また、上述した実施例1~3では、電子走行層16と電子供給層18の両方が強誘電性を有していた。しかしながら、電子走行層16と電子供給層18の一方が強誘電性を有しており、他方が強誘電性を有していなくてもよい。
【0048】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
10 :スイッチング素子
12 :半導体基板
14 :ベース層
16 :電子走行層
17 :ヘテロ接合界面
18 :電子供給層
20 :ソース層
22 :ドレイン層
30 :2次元電子ガス
40 :ソース電極
42 :ドレイン電極
44 :ゲート電極
図1
図2
図3
図4