(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20231127BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S7/02 212
(21)【出願番号】P 2020047718
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸上 高明
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0235857(US,A1)
【文献】特開2007-240312(JP,A)
【文献】特開2011-232053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、
を具備し、
第1のタイミングにおける前記第1の送信信号の変調周波数と、前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングにおける前記第2の送信信号の変調周波数とは同一であ
り、
前記第1の送信信号の送信開始タイミングは、前記第2の送信信号の送信開始タイミングよりも早い、
レーダ装置。
【請求項2】
第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、
を具備し、
第1のタイミングにおける前記第1の送信信号の変調周波数と、前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングにおける前記第2の送信信号の変調周波数とは同一であり、
前記第1のタイミング及び前記第1のタイミングと異なる第3のタイミングにて、前記第1の送信信号の変調周波数は、前記第2の送信信号の変調周波数よりも高い、
レーダ装置。
【請求項3】
第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、
を具備し、
前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号に対して、前記多重信号に対する符号多重に用いられる符号系列の符号長に対応する送信周期毎に、異なる送信遅延が巡回的に設定され、
前記第1の送信信号の送信開始タイミングは、前記第2の送信信号の送信開始タイミングよりも早い、
レーダ装置。
【請求項4】
前記第2の送信信号を用いて、前記多重信号が物体にて反射された反射波信号をダウンミキシングする受信回路、を更に具備する、
請求項1
から3のいずれか1つに記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号はチャープ信号である、
請求項1
から3のいずれか1つに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記第3のタイミングでの、前記第1の送信信号の変調周波数と前記第2の送信信号の変調周波数との差は、前記第1の送信信号によって検出する距離範囲に基づいて設定される、
請求項
2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの差は、前記第1の送信信号によって検出する距離範囲に基づいて設定される、
請求項1
または2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの差は、測位毎に異なる、
請求項1
または2に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記チャープ信号の周波数掃引幅は、測位毎に異なる、
請求項
5に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記反射波信号に対するAD変換におけるサンプリングレートは、測位毎に異なる、
請求項
4に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記多重信号に対する符号多重数よりも大きい符号長の複数の符号系列のうちの一部を用いて、前記多重信号が符号多重される、
請求項1
から3のいずれか1つに記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記複数の符号系列に含まれる第1の符号系列及び第2の符号系列は、奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素の符号が反転しており、
前記第1の符号系列及び前記第2の符号系列のうち一方が前記第1の送信信号の符号多重に用いられ、前記第1の符号系列及び前記第2の符号系列のうち他方が前記第2の送信信号の符号多重に用いられる、
請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号に対して、前記多重信号に対する符号多重に用いられる符号系列の符号長に対応する送信周期毎に、異なる送信遅延が巡回的に設定される、
請求項1
または2に記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記多重信号が物体にて反射された反射波信号に対するドップラ解析範囲の(前記符号長×2)倍の範囲にて、前記反射波信号におけるドップラ周波数領域での折り返しの判定を行う受信回路、を更に具備する、
請求項13に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分解能が得られるマイクロ波又はミリ波を含む波長の短いレーダ送信信号を用いたレーダ装置の検討が進められている。また、屋外での安全性を向上させるために、車両以外にも、歩行者といった小物体を広角範囲で検知するレーダ装置(例えば、広角レーダ装置と呼ぶ)の開発が求められている。
【0003】
広角な検知範囲を有するレーダ装置の構成として、例えば、複数のアンテナ(又は、アンテナ素子とも呼ぶ)で構成されるアレーアンテナによってターゲット(又は物標と呼ぶ)からの反射波を受信し、素子間隔(アンテナ間隔)に対する受信位相差に基づいて、反射波の到来する方向(又は、到来角と呼ぶ)を推定する手法(到来角推定手法。Direction of Arrival (DOA) estimation)を用いる構成がある。
【0004】
例えば、到来角推定手法には、フーリエ法(FFT(Fast Fourier Transform)法)、又は、高い分解能が得られる手法としてCapon法、MUSIC(Multiple Signal Classification)及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)が挙げられる。
【0005】
また、レーダ装置として、例えば、レーダ受信部に加え、レーダ送信部にも複数のアンテナ(アレーアンテナ)を備え、送受信アレーアンテナを用いた信号処理によりビーム走査を行う構成(MIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダと呼ぶこともある)が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. Li, and P. Stoica, "MIMO Radar with Colocated Antennas", Signal Processing Magazine, IEEE Vol. 24, Issue: 5, pp. 106-114, 2007
【文献】J. Hasch, E. Topak, R. Schnabel, T. Zwick, R. Weigel and C. Waldschmidt, "Millimeter-Wave Technology for Automotive Radar Sensors in the 77 GHz Frequency Band," in IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 60, no. 3, pp. 845-860, March 2012.
【文献】M. Murad et al., "Requirements for next generation automotive radars," 2013 IEEE Radar Conference (RadarCon13), Ottawa, ON, 2013, pp. 1-6.
【文献】J. Wenger and S. Hahn, "Long Range and Ultra-Wideband Short Range Automotive Radar," 2007 IEEE International Conference on Ultra-Wideband, Singapore, 2007, pp. 518-522.
【文献】M. Kronauge, H.Rohling,"Fast two-dimensional CFAR procedure", IEEE Trans. Aerosp. Electron. Syst., 2013, 49, (3), pp. 1817-1823
【文献】Direction-of-arrival estimation using signal subspace modeling Cadzow, J.A.; Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on Volume: 28 , Issue: 1 Publication Year: 1992 , Page(s): 64 - 79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーダ装置(例えば、MIMOレーダ)においてターゲットを検知する方法について十分に検討されていない。
【0009】
本開示の非限定的な実施例は、ターゲットの検知精度を向上するレーダ装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、を具備し、第1のタイミングにおける前記第1の送信信号の変調周波数と、前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングにおける前記第2の送信信号の変調周波数とが同一である。
【0011】
なお、これらの包括的または具体的な実施例は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施例によれば、レーダ装置におけるターゲットの検知精度を向上できる。
【0013】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係るレーダ装置の構成例を示すブロック図
【
図2】実施の形態1に係るレーダ送信信号の一例を示す図
【
図3】実施の形態1に係るレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【
図4】チャープパルスを用いた場合の送信信号と反射波信号の一例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図
【
図6】実施の形態1に係る検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図
【
図8】実施の形態1に係る検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図
【
図9】実施の形態1に係るドップラ折り返し判定の一例を示す図
【
図10】実施の形態1に係るレーダ装置の他の構成例を示すブロック図
【
図11】実施の形態1に係るレーダ送信信号の他の例を示す図
【
図12】実施の形態2に係るレーダ送信信号の一例を示す図
【
図13】実施の形態2に係るドップラ折り返し判定の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重したレーダ送信信号(又は、レーダ送信波と呼ぶ)を複数の送信アンテナ(又は送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信する。そして、MIMOレーダは、例えば、周辺物体において反射された信号(例えば、レーダ反射波と呼ぶ)を複数の受信アンテナ(又は受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、送信アンテナ数と受信アンテナ数との積で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。
【0016】
また、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおける素子間隔を適切に配置することにより、仮想的にアンテナ開口を拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
【0017】
例えば、車載レーダといったレーダ装置において、指向性を狭めて指向性利得を向上させた送信アンテナ(あるいは受信アンテナ)を用いて、検知角範囲(例えば、FOV: Field Of View)を狭めることにより、比較的遠方の距離範囲まで検出するモード(以下、「LR(Long Range)モード」と呼ぶ)がある。また、レーダ装置において、比較的広角の指向性の送信アンテナ(あるいは受信アンテナ)を用いて、検知角範囲(FOV)を広角にすることにより、比較的近傍の距離範囲を検出するモード(以下、「SR(Short Rang)モード」と呼ぶ)がある。例えば、LRモードとSRモードとを併用するレーダシステムがある。
【0018】
なお、SRレンジモードは、例えば、中距離用モード(例えば、「MR(Middle Range)モード」)と呼ばれることもある。
【0019】
LRモードとSRモードとの併用において、例えば、LRモードとSRモードとを時分割で切り替える方法があり得る。
【0020】
例えば、レーダ装置は、LRモード用の送信アンテナからLRモードの変調パルス(あるいは複数の変調パルスからなる変調パルス列)と、SRモード用の送信アンテナからSRモードの変調パルス(あるいは変調パルス列)を、時分割に交互に切り替えて送信してよい。又は、レーダ装置は、LRモード用の送信アンテナからLRモードの変調パルス列を送信後に、SRモード用の送信アンテナからSRモードの変調パルス列を順次に遂次的に送信してよい。
【0021】
また、LRモードとSRモードとの時分割送信又は逐次送信に限らず、例えば、符号多重又はドップラ多重といった同時多重送信が適用されてもよい(例えば、特許文献1を参照)。
【0022】
LRモードとSRモードとの併用において、LRモードとSRモードとを逐次的に切り替える場合、レーダ装置は、例えば、SRモード及びLRモードそれぞれにおける距離及びドップラ成分に対する検出範囲又は分解能に対する要求条件を満たす変調パルス(あるいは変調パルス列)を、SRモード及びLRモードそれぞれにおいて個別に用いて送信可能である。
【0023】
しかしながら、この場合、LRモードとSRモードとは独立的な動作となるため、両方のモードが完了するまでの処理時間が長くなりやすい。また、モードを逐次的に切り替える場合、LRモードの受信結果が得られる時間と、SRモードの受信結果が得られる時間との時間差が大きくなりやすい。このため、例えば、LRモードの受信結果をSRモードにおいて利用する処理、又は、SRモードの受信結果をLRモードにおいて利用する処理は適用されにくい。
【0024】
また、LRモードとSRモードとの併用において、LRモードの変調パルスとSRモードの変調パルスとを時分割で交互に切り替える場合、レーダ装置は、例えば、SRモード及びLRモードの何れか一方における距離の検出範囲又は分解能に対する要求条件を満たす変調パルス(あるいは変調パルス列)を、SRモード及びLRモードそれぞれに設定して送信可能である。この方法では、例えば、LRモードの受信結果をSRモードにおいて利用する処理、又は、SRモードの受信結果をLRモードにおいて利用する処理は適用しやすい。
【0025】
しかしながら、この場合、折り返し(又は、ドップラ折り返しとも呼ぶ)無しで検出可能な最大ドップラ周波数が低下する可能性がある。また、LRモード及びSRモードの両方のモードが完了するまでの時間が長くなる可能性がある。
【0026】
その一方で、例えば、符号多重又はドップラ多重を用いてLRモードとSRモードとを同時多重送信する場合、LRモードの受信結果をSRモードにおいて利用する処理、又は、SRモードの受信結果をLRモードにおいて利用する処理は適用されやすく、かつ、LRモード及びSRモードの両方のモードが完了するまでの時間は、時分割多重と比較して短縮可能である。
【0027】
この場合、SRモード及びLRモードの両方の要求条件(例えば、距離及びドップラ成分に対する検出範囲又は分解能)を満たす変調パルス(あるいは変調パルス列)の使用が望ましい。例えば、LRモードでは遠距離範囲の検出が行われるため、検出可能な距離範囲及び速度範囲の双方をSRモードよりも拡大することが想定される。その一方で、SRモードでは近距離範囲の検出が行われるため、距離分解能及び速度分解能の双方をLRモードよりも向上させた方が、例えば、ターゲットとの衝突の危険性をより正確に検出可能である(例えば、非特許文献2-4を参照)。
【0028】
以下では、一例として、符号多重又はドップラ多重を用いてLRモード及びSRモードの送信信号を同時多重送信する方法について説明する。また、その際の変調パルス列として周波数変調波(又は、チャープ信号とも呼ぶ)を用いる場合に、上述したSRモード及びLRモードの両方の要件(要求仕様)を満たすレーダ波の生成方法について説明する。
【0029】
例えば、LRモード向けに距離範囲を拡大するために、チャープ信号の周波数掃引帯域幅Bwを狭めるアプローチが挙げられる。しかしながら、このアプローチでは、チャープ信号の周波数掃引帯域幅Bwに反比例して距離分解能は粗くなるため、SRモードの要件を満たさなくなる可能性がある。
【0030】
また、LRモード向けに距離範囲を拡大するための別のアプローチとして、例えば、周波数掃引帯域幅Bwを狭めずに、AD(Analogue-to-Digital)変換器のサンプリングレートfsaを高めるアプローチが挙げられる。このアプローチにより、例えば、距離分解能を維持しつつ、最大検出距離範囲を拡大できる。しかしながら、サンプリングレートfsaを高めるアプローチでは、AD変換器の高速化に伴いハードウエアコストが増加する可能性がある。また、例えば、AD変換器の高速化に伴い消費電力も増大し得るため、発熱量も増大する可能性がある。
【0031】
また、別のアプローチとして、例えば、周波数掃引帯域幅Bwを狭めずに、周波数掃引時間を増加するアプローチが挙げられる。このアプローチにより、例えば、AD変換器のサンプリングレートを高めることなく、距離分解能を維持しつつ、距離範囲を拡大できる。しかしながら、このアプローチでは、他のアプローチと比較して、チャープ掃引時間が長くなるため、チャープ送信周期が増大する可能性がある。そのため、例えば、折り返しの生じない最大ドップラ周波数が低下し、LRモードの要件を満たさなくなる可能性がある。
【0032】
そこで、本開示に係る一実施例では、符号多重又はドップラ多重といった同時多重送信において、距離分解能を維持し、距離又はドップラ成分の検出範囲を拡大する方法について説明する。
【0033】
本開示に係る一実施例では、例えば、多重信号毎に、異なる距離範囲を検出可能な同時多重送信を行うレーダ装置(例えば、MIMOレーダ)について説明する。本開示の一実施例によれば、例えば、レーダ装置は、検出可能範囲の異なるモード(例えば、LRモード及びSRモード)を併用(換言すると、混在)した送信において、例えば、高速なAD変換器を用いずに、距離分解能を向上し、距離又はドップラ成分の検出範囲を拡大できる。
【0034】
なお、本開示の一実施例に係るレーダ装置は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよい。移動体に搭載されるレーダ装置は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)、又は、自動運転時の移動体周辺の監視に用いるセンサとして利用可能である。
【0035】
また、本開示の一実施例に係るレーダ装置は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物に取り付けられてよい。このようなレーダ装置は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システムにおけるセンサとして利用可能である。
【0036】
なお、レーダ装置の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
【0037】
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0038】
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(換言すると、MIMOレーダ構成)について説明する。
【0039】
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。
【0040】
また、レーダ装置は、一例として、信号を符号多重送信する構成について説明する。
【0041】
(実施の形態1)
[レーダ装置の構成]
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成例を示すブロック図である。
【0042】
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、測位出力部300とを有する。
【0043】
レーダ送信部100は、例えば、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ107(例えば、(NTx(=NT1+NT2)個)によって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期にて送信する。
【0044】
レーダ受信部200は、例えば、ターゲット(物標。図示せず)において反射されたレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202(例えば、Na個)を含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(換言すると相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(換言すると、測位情報)を出力する。
【0045】
測位出力部300は、レーダ受信部200から入力される到来方向の推定結果に関する情報に基づいて、例えば、距離の折り返し判定処理(一例は後述する)を行ってよい。なお、測位出力部300における処理は、距離の折り返し判定処理に限定されず、他の処理でもよい。
【0046】
なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石を含む。
【0047】
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、第1のレーダ送信信号生成部101-1と、第2のレーダ送信信号生成部101-2と、送信信号生成制御部104と、符号生成部105と、位相回転部106と、送信アンテナ107と、を有する。
【0048】
レーダ送信部100において、例えば、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第1の送信アンテナ107-1は、LRモードに関する処理を行う構成部であり、第2のレーダ送信信号生成部101-2及び第2の送信アンテナ107-2は、SRモードに関する処理を行う構成部でもよい。
【0049】
第1のレーダ送信信号生成部101-1は、例えば、レーダ送信信号(換言すると、ベースバンド信号)を生成する。第1のレーダ送信信号生成部101-1は、例えば、変調信号発生部102-1及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)103-1を有する。以下、第1のレーダ送信信号生成部101-1における各構成部について説明する。
【0050】
変調信号発生部102-1は、例えば、
図2の上段に示すように、のこぎり歯形状の変調信号(換言すると、VCO制御用の変調信号)をレーダ送信周期Tr毎に発生させる。
【0051】
VCO103-1は、変調信号発生部102-1から出力されるレーダ送信信号(変調信号)に基づいて、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を位相回転部106(例えば、第1の送信アンテナ107-1に接続されるNT1個の位相器又は位相変調器)へ出力する。
【0052】
第2のレーダ送信信号生成部101-2は、レーダ送信信号(換言すると、ベースバンド信号)を生成する。第2のレーダ送信信号生成部101-2は、例えば、変調信号発生部102-2及びVCO103-2を有する。以下、第2のレーダ送信信号生成部101-2における各構成部について説明する。
【0053】
変調信号発生部102-2は、例えば、
図2の下段に示すように、のこぎり歯形状の変調信号(換言すると、VCO制御用の変調信号)をレーダ送信周期Tr毎に発生させる。
【0054】
VCO103-2は、変調信号発生部102-2から出力されるレーダ送信信号(変調信号)に基づいて、チャープ信号を位相回転部106(例えば、第2の送信アンテナ107-2に接続されるNT2個の位相器又は位相変調器)、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
【0055】
送信信号生成制御部104は、例えば、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2において生成されるレーダ送信信号の生成を制御する。例えば、送信信号生成制御部104は、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2におけるレーダ送信信号の生成の同期又は送信タイミングを制御してよい。
【0056】
例えば、
図2の上段は、第1のレーダ送信信号生成部101-1から出力されるレーダ送信信号(例えば、第1のレーダ送信波)の例を示し、
図2の下段は、第2のレーダ送信信号生成部101-2から出力されるレーダ送信信号(例えば、第2のレーダ送信波)を示す。
【0057】
送信信号生成制御部104は、例えば、
図2に示すように、送信周期Tr毎に出力される第1のレーダ送信波の送信タイミングを基準として、送信遅延時間(又は、時間遅れとも呼ぶ)Tu遅れて、第2のレーダ送信波を出力するようにタイミングを制御してよい。
【0058】
この制御により、例えば、
図2に示すように、第1のレーダ送信波の送信開始タイミングは、第2のレーダ送信波の送信開始タイミングよりTu早い。換言すると、
図2に示すように、或る送信タイミングにおける第1のレーダ送信波の変調周波数と、上記或る送信タイミングよりもTu遅い送信タイミングにおける第2のレーダ送信波の変調周波数とは同一である。なお、送信遅延時間Tu(換言すると、第1のレーダ送信信号と第2のレーダ送信信号との送信タイミングの差))の設定値の一例については後述する。
【0059】
ここで、例えば、第1のレーダ送信波及び第2のレーダ送信波のチャープの掃引時間、及び、チャープ掃引周波数幅は同一であり、送信タイミング(換言すると、送信遅延時間)が異なることを想定する。
【0060】
なお、レーダ装置の構成は、
図1に示す構成に限らず、例えば、
図3に示すように遅延器108を用いたレーダ装置の構成でもよい。
図3に示すレーダ装置10aは、例えば、レーダ送信部100aにおいて、
図1に示す第2のレーダ送信信号生成部101-2の代わりに、第1のレーダ送信信号生成部101-1からの出力を所定の遅延時間Tu遅延させる遅延器108を用いて、第2のレーダ送信信号を生成してよい。
【0061】
図1において、符号生成部105は、符号多重送信を行う送信アンテナ107毎に異なる符号を生成する。符号生成部105は、生成した符号に対応する位相回転量を位相回転部106へ出力する。また、符号生成部105は、生成した符号に関する情報をレーダ受信部200(後述する出力切替部209)へ出力する。
【0062】
位相回転部106は、例えば、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部105から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ107(例えば、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2)に出力する。例えば、位相回転部106は、位相器及び位相変調器等を含んでよい(図示せず)。
【0063】
位相回転部106の出力信号は、規定された送信電力に増幅され、各送信アンテナ107から空間に放射される。換言すると、レーダ送信信号は、符号に対応する位相回転量が付与されることによって、複数の送信アンテナ107から符号多重送信される。
【0064】
次に、レーダ装置10において設定される符号(例えば、直交符号)の一例について説明する。
【0065】
符号生成部105は、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナ107毎に異なる符号を生成してよい。
【0066】
例えば、以下では、第1の送信アンテナ107-1の数を「NT1」個とし、第2の送信アンテナ107-2の数を「NT2」個とし、符号多重送信を行う送信アンテナ107の数を「NTx」(=NT1+NT2)個とする。ここで、NT1≧1、NT2≧1であり、NTx(=NT1+NT2)≧2である。
【0067】
また、符号多重数を「N
CM」とする。
図1では、一例として、N
CM=N
TXについて説明するが、これに限定されず、例えば、複数の送信アンテナ107の組において同一の符号が送信(例えば、アレー送信又はビームフォーミング送信)されてもよい。この場合、N
CM<N
TXとなる。
【0068】
符号生成部105は、例えば、符号長(換言すると、符号要素数)Locの符号系列(例えば、互いに直交する関係となる直交符号系列(又は、単に符号又は直交符号とも呼ぶ))に含まれるNallcode個(又は、Nallcode(Loc)個と表すこともある)の直交符号のうち、NCM個の直交符号を、符号多重送信用の符号に設定する。
【0069】
例えば、符号多重数NCMは、直交符号数Nallcodeよりも少なく、NCM<Nallcodeである。換言すると、直交符号の符号長Locは、符号多重数NCMよりも大きい。例えば、符号長LocのNCM個の直交符号をCodencm=[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc)]と表記する。ここで、「OCncm(noc)」は、第ncm番の直交符号Codencmにおける第noc番の符号要素を表す。また、「ncm」は符号多重に用いる直交符号のインデックスを表し、ncm=1,…, NCMである。また、「noc」は符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。
【0070】
ここで、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、(Nallcode-NCM)個の直交符号は、符号生成部105において用いられなくてよい(換言すると、符号多重送信に用いられない)。以下、(Nallcode-NCM)個の符号生成部105において用いられない直交符号を「未使用直交符号」と呼ぶ。未使用直交符号の少なくとも一つは、例えば、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定に用いられる(一例は後述する)。
【0071】
未使用直交符号の使用により、レーダ装置10は、例えば、複数の送信アンテナ107から符号多重送信された信号を、符号間干渉を抑制した状態で、個別に分離して受信でき、かつ、検出可能なドップラ周波数の範囲を拡大できる(一例は後述する)。
【0072】
上述したように、符号生成部105において生成されるNCM個の直交符号は、例えば、互いに直交する符号(換言すると、無相関の符号)である。例えば、直交符号系列には、Walsh-Hadamard符号が用いられてよい。Walsh-Hadamard符号の符号長は2のべき乗であり、各符号長の直交符号には、符号長と同数の直交符号が含まれる。例えば、符号長2、4、8又は16のWalsh-Hadamard符号には、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号が含まれる。
【0073】
以下では、一例として、符号数N
CM個の直交符号系列の符号長Locは次式(1)を満たすように設定してよい。
【数1】
【0074】
ここで、ceil[x]は実数x以上の最小の整数を出力する演算子(天井関数)である。符号長LocのWalsh-Hadamard符号の場合、Nallcode(Loc)=Locの関係が成り立つ。例えば、符号長Loc=2、4、8、又は16のWalsh-Hadamard符号は、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号を含むため、Nallcode(2)=2、Nallcode(4)=4、Nallcode(8)=8、及び、Nallcode(16)=16が成立する。符号生成部105は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれるNallcode(Loc)個の符号のうち、NCM個の直交符号を用いてよい。
【0075】
ここで、符号長について説明する。例えば、ターゲット又はレーダ装置10の移動速度に加速度が含まれる場合、符号長が長いほど符号間干渉を受けやすくなる。また、符号長が長いほど、後述するドップラ折り返し判定の際のドップラ折り返し範囲の候補が増大する。このため、同一の距離インデックスに異なる折り返し範囲に亘って複数のドップラ周波数のターゲットが存在する場合には、異なる折り返し範囲において検出されるドップラ周波数インデックスが重複する確率が増大し、レーダ装置10では、折り返しを適切に判定することが困難になる確率が増加し得る。
【0076】
このため、レーダ装置10は、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212における折り返し判定の性能及び演算量の観点から、符号長のより短い符号を用いてもよい。一例として、レーダ装置10は、式(1)を満たす符号長Locのうち最も短い符号長の直交符号系列を用いてもよい。
【0077】
なお、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長LocのWalsh-Hadamard符号には、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]も含まれる。
【0078】
また、符号長LocのWalsh-Hadamard符号と異なる他の符号であっても、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長Locの符号は、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]であってもよいし、又は、当該符号の偶数番目の符号要素が同一であり、奇数番目の符号要素が符号反転している符号[-OCncm(1), OCncm(2),…, -OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]であってよい。
【0079】
未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合、レーダ装置10は、例えば、上述した関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。例えば、上述した関係の符号の組において一方の符号は符号多重送信に用いられ、他方の符号は未使用直交符号に含まれてもよい。この未使用直交符号の選択により、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定精度を向上できる(一例は後述する)。
【0080】
また、上述した関係の符号の組のうち一方の符号は、例えば、LRモード用の送信アンテナである第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,NT1)から送信されるレーダ送信信号の符号多重に用いられ、他方の符号は、SRモード用の送信アンテナである第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,..,NTx)から送信されるレーダ送信信号の符号多重に用いられてもよい。この符号の選択により、例えば、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定精度を向上できる(一例は後述する)。
【0081】
例えば、符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]を第1の送信アンテナ107-1から送信される送信信号に対して用いられる符号とする場合、[-OCncm(1), OCncm(2),…, -OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]は、第2の送信アンテナ107-2から送信される送信信号に対して用いられる符号でもよい。このような符号の選択とする理由の一つは、以下のとおりである。
【0082】
例えば、本開示の一実施例では、第1の送信アンテナ107-1から送信されるレーダ送信信号に対応する受信信号、及び、第2の送信アンテナ107-2から送信されるレーダ送信信号に対応する受信信号は、互いに異なる距離のターゲットの反射波が多重された信号である可能性がある。この場合、多重された信号(換言すると、符号多重信号)は、後述する符号多重分離部213において分離処理されて出力されるため、レーダ装置10では、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の何れか一方が受信される場合がある。
【0083】
ここで、例えば、第1の送信アンテナ107-1から送信された信号が受信され、第2の送信アンテナ107-2から送信された信号が受信されない場合、第2の送信アンテナ107-2から送信された信号に用いられる符号は未使用直交符号と同様にみなすことが可能である。同様に、第2の送信アンテナ107-2から送信された信号が受信され、第1の送信アンテナ107-1から送信された信号が受信されない場合、第1の送信アンテナ107-1から送信された信号に用いられる符号は未使用直交符号と同様にみなすことが可能である。
【0084】
したがって、上述した関係の符号の組を、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,NT1)から送信される送信信号に用いられる符号と、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,..,NTx)から送信される信号に用いられる符号とに分けることにより、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定精度を向上できる。
【0085】
次に、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明する。
【0086】
<NCM=2又は3の場合>
NCM=2又は3の場合、例えば、符号長Loc=4、8、16、32、…のWalsh-Hadamard符号を適用してよい。これらの符号長Locの場合、NCM<Nallcode(Loc)となる。また、符号多重数がNCM=2又は3の場合、これらの符号長Locのうち、符号長が最も短いWalsh-Hadamard符号(例えば、Loc=4)を用いる場合について説明する。
【0087】
例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号をWHLoc(nwhc)と表す。なお、nwhcは符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれる符号インデックスを表し、nwhc=1,…, Locである。例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、直交符号WH4(1)=[1,1, 1, 1]、WH4(2)=[1,-1, 1, -1]、WH4(3)=[1,1, -1, -1]、及び、WH4(4)=[1,-1, -1, 1]が含まれる。
【0088】
ここで、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、WH4(1)= [1,1, 1, 1]とWH4(2) = [1,-1, 1, -1]とは、相互の符号間において、奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組である。また、WH4(3)= [1,1, -1, -1]及びWH4 (4)= [1,-1, -1, 1]も、WH4(1)及びWH4(2)の組と同様な関係の符号の組である。
【0089】
例えば、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合には、レーダ装置10は、このような関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。
【0090】
例えば、符号多重数NCM=2の場合、符号生成部105は、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、2個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は2個となる。
【0091】
例えば、符号生成部105は、WH4(1)とWH4(2)の符号の組、又は、WH4(3)とWH4(4)の符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。例えば、符号多重送信用の符号(Code1及びCode2)の組み合わせは、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の組み合わせ、Code1=WH4(1)及びCode2=WH4(4)の組み合わせ、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(3)の組み合わせ、又は、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(4)の組み合わせでもよい。
【0092】
また、符号多重数NCM=2の場合、例えば、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部105において用いられない(換言すると、符号多重送信に用いられない)2個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の少なくとも一つを、折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
【0093】
以下では、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、未使用直交符号を「UnCodenuc=[UOCnuc(1), UOCnuc(2),…, UOCnuc(Loc) ]」と表す。なお、UnCodenucは第nuc番の未使用直交符号を表す。また、nucは未使用直交符号のインデックスを表し、nuc =1,…, (Nallcode-NCM)である。また、UOCnuc(noc)は第nuc番の未使用直交符号UnCodenucにおけるnoc番の符号要素を表す。また、nocは符号要素のインデックスを表し、noc=1,…,Locである。
【0094】
例えば、符号多重数がNCM=2であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(2)(= [1,-1, 1, -1])及びUnCode2=WH4(4)(= [1,-1, -1, 1])となる。なお、未使用直交符号(UnCode1及びUnCode2)の組み合わせは、WH4(2)及びWH4(4)の組み合わせに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
【0095】
同様に、符号多重数NCM=3の場合、符号生成部105は、例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は1個となる。
【0096】
例えば、符号生成部105は、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を選択してもよい。
【0097】
また、レーダ受信部200の折り返し判定部212は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる(一例は後述する)。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2及びCode3)及び未使用直交符号(UnCode1)の組み合わせは、これらに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
【0098】
<NCM=4、5、6又は7の場合>
NCM=4、5、6又は7の場合、例えば、符号長Loc=8、16、32、…のWalsh-Hadamard符号を適用してもよい。これらの符号長Locの場合、NCM<Nallcode(Loc)となる。また、符号多重数がNCM=4、5、6又は7の場合、これらの符号長Locのうち、符号長が最も短いWalsh-Hadamard符号(例えば、Loc=8)を用いる場合について説明する。
【0099】
例えば、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号には、以下の8個の直交符号が含まれる。
WH8(1)= [ 1 1 1 1 1 1 1 1],
WH8(2)= [ 1 -1 1 -1 1 -1 1 -1],
WH8(3)= [ 1 1 -1 -1 1 1 -1 -1],
WH8(4)= [ 1 -1 -1 1 1 -1 -1 1],
WH8(5)= [ 1 1 1 1 -1 -1 -1 -1],
WH8(6)= [ 1 -1 1 -1 -1 1 -1 1],
WH8(7)= [ 1 1 -1 -1 -1 -1 1 1],
WH8(8)= [ 1 -1 -1 1 -1 1 1 -1]
【0100】
ここで、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、WH8(1)とWH8(2)とは、相互の符号間において奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組である。また、同様に、WH8(3)とWH8(4)の組、WH8(5)とWH8(6)の組、及び、WH8(7)とWH8(8)の組も、WH8(1)とWH8(2)の組と同様な関係の符号の組である。
【0101】
例えば、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合には、符号生成部105は、このような関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように符号を選択する一例として、WH8(1)とWH8(2)の符号の組、WH8(3)とWH8(4)の符号の組、WH8(5)とWH8(6)の符号の組、又は、WH8(7)とWH8(8)の符号の組のいずれかの組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
【0102】
例えば、符号多重数NCM=4の場合、符号生成部105は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、4個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は4個となる。
【0103】
例えば、符号生成部105は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3及びCode4)の組み合わせは、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(7)の組み合わせ、又は、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(8)の組み合わせでもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3及びCode4)の組み合わせは、これらに限定されない。
【0104】
また、符号多重数NCM=4の場合、例えば、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部105において用いられない4個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いる(一例は後述する)。
【0105】
例えば、符号多重数NCM=4であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(7)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(4), UnCode3=WH8(6)及びUnCode4=WH8(8)となる。又は、例えば、符号多重数NCM=4であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(3), UnCode3=WH8(6)及びUnCode4=WH8(7)となる。
【0106】
同様に、例えば、符号多重数NCM=5の場合、符号生成部105は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、5個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は3個となる。
【0107】
例えば、符号生成部105は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4及びCode5)の組み合わせは、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の組み合わせ、又は、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)でもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4及びCode5)の組み合わせは、これらに限定されない。
【0108】
符号多重数NCM=5の場合、例えば、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部105において用いられない3個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いる(一例は後述する)。
【0109】
例えば、符号多重数NCM=5であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(4)及び UnCode3=WH8(6)となる。又は、例えば、符号多重数NCM=5であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(3)及びUnCode3=WH8(6)となる。
【0110】
同様に、例えば、符号多重数NCM=6の場合、符号生成部105は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、6個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は2個となる。
【0111】
例えば、符号生成部105は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4、Code5及びCode6)の組み合わせは、例えば、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)及びCode6=WH8(8)でもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4、Code5及びCode6)の組み合わせは、これらに限定されない。
【0112】
また、符号多重数NCM=6の場合、例えば、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部105において用いられない2個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いる(一例は後述する)。
【0113】
例えば、符号多重数がNCM=6であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)及びCode6=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(6)及びUnCode2=WH8(7)となる。
【0114】
同様に、例えば、符号多重数NCM=7の場合、符号生成部105は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、7個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は1個となる。
【0115】
例えば、符号生成部105は、符号多重送信用の符号に、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)、Code6=WH8(6)及びCode7=WH8(7)を選択してもよい。なお、符号多重送信用の符号の組み合わせは、これらに限定されない。
【0116】
また、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部105において用いられない1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる(一例は後述する)。
【0117】
例えば、符号多重数NCM=7であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)、Code6=WH8(6)及びCode7=WH8(7)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH(8)となる。
【0118】
以上、符号多重数NCM=4、5、6又は7の場合について説明した。
【0119】
なお、レーダ装置10は、符号多重数NCM=8以上の場合も、符号多重数NCM=2~7の場合と同様に符号多重送信用の符号、及び、未使用直交符号を決定してもよい。
【0120】
例えば、符号生成部105は、式(2)に示す符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、N
CM個の直交符号を符号多重送信用の符号に選択してもよい。この場合、N
CM<Loc=N
allcodeとなる。
【数2】
【0121】
また、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長LocのNallcode=Loc個のWalsh-Hadamard符号のうち、(Nallcode-NCM)個の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。また、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合、符号生成部105は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
【0122】
換言すると、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組の何れか一方が未使用直交符号に含まれ、他方が未使用直交符号に含まれなくてよい。
【0123】
なお、直交符号系列を構成する要素は実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。
【0124】
また、符号は、Walsh-Hadamard符号と異なる他の直交符号でもよい。例えば、符号は、直交M系列符号又は擬似直交符号でもよい。
【0125】
以上、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明した。
【0126】
次に、符号生成部105において生成された符号多重送信用の符号に基づく位相回転量の一例について説明する。
【0127】
レーダ装置10は、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナTx#1~Tx#NTXに対して、それぞれ異なる直交符号を用いた符号多重送信を行う。そこで、符号生成部105は、例えば、第m番の送信周期Trにおいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を設定し、位相回転部106に出力する。ここで、ncm=1,…, NCMである。
【0128】
例えば、位相回転量ψ
ncm(m)は、次式(3)に示すように、符号長Loc回の送信周期の期間毎に、直交符号Code
ncmのLoc個の各符号要素OC
ncm(1),…, OC
ncm(Loc)に相当する位相量を巡回的に付与する。
【数3】
【0129】
ここで、angle(x)は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、angle(1)=0、angle(-1)=π、angle(j)=π/2、及び、angle(-j)=-π/2である。jは虚数単位である。また、OC_INDEXは、直交符号系列Code
ncmの要素を指示する直交符号要素インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(4)のように1からLocの範囲で巡回的に可変する。
【数4】
【0130】
ここで、mod(x,y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1,…,Ncである。Ncは、レーダ装置10がレーダ測位に用いる所定の送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ装置10は、例えば、Locの整数倍(例えば、Ncode倍)となるレーダ送信信号送信回数Ncの送信を行う。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
【0131】
また、符号生成部105は、送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200の出力切替部209へ出力する。
【0132】
位相回転部106は、例えば、NTx個の送信アンテナ107にそれぞれ対応する位相器又は位相変調器を備える。位相回転部106は、例えば、送信周期Tr毎に、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部105から入力される位相回転量ψncm(m)をそれぞれ付与する。
【0133】
例えば、位相回転部106は、送信周期Tr毎に第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2から入力されるチャープ信号に対して、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を付与する。ここで、ncm=1,…,NCMであり、m=1,..,Ncである。
【0134】
NTx個の送信アンテナ107に対する位相回転部106からの出力は、例えば、所定の送信電力に増幅後に、NTx個の送信アンテナ107(例えば、送信アレーアンテナ)から空間に放射される。
【0135】
一例として、第1の送信アンテナ107-1の数NT1=1、第2の送信アンテナ107-2の数NT2=2を用いて(送信アンテナ数NTx= NT1+ NT2=3)、符号多重数NCM=3の符号多重送信する場合について説明する。なお、送信アンテナ数NTx及び符号多重数NCMは、これらの値に限定されない。
【0136】
例えば、位相回転量ψ1(m), ψ2(m)及びψ3(m)が、第m番の送信周期Tr毎に符号生成部105から位相回転部106へ出力される。
【0137】
第1番(ncm=1)の位相回転部106(換言すると、第1の送信アンテナ107-1(例えば、Tx#1)に対応する位相器)は、送信周期Tr毎に第1のレーダ送信信号生成部101-1において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(5)のように位相回転を付与する。第1番の位相回転部106の出力は、第1の送信アンテナ107-1(Tx#1)から送信される。ここで、cp
1(t)は、第1のレーダ送信信号生成部101-1から出力される送信周期Tr毎のチャープ信号を表す。
【数5】
【0138】
同様に、第2番(ncm=2)の位相回転部106は、送信周期Tr毎に第2のレーダ送信信号生成部101-2において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(6)のように位相回転を付与する。第2番の位相回転部106の出力は、第2の送信アンテナ107-2(例えば、Tx#2)から送信される。ここで、cp
2(t)は、第2のレーダ送信信号生成部101-2から出力される送信周期Tr毎のチャープ信号を表す。
【数6】
【0139】
同様に、第3番(ncm=3)の位相回転部106は、送信周期Tr毎に第2のレーダ送信信号生成部101-2において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(7)のように位相回転を付与する。第3番の位相回転部106の出力は、第2の送信アンテナ107-2(例えば、Tx#3)から送信される。
【数7】
【0140】
なお、レーダ装置10は、レーダ測位を継続的に行う場合に、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に、直交符号Codencmに用いる符号を可変に設定してもよい。
【0141】
また、レーダ装置10は、例えば、NTx個の位相回転部106の出力を送信する送信アンテナ107(換言すると、位相回転部106の各出力に対応する送信アンテナ107)を可変に設定してもよい。例えば、複数の送信アンテナ107と、符号多重送信用の符号系列との対応付けは、レーダ装置10におけるレーダ測位毎に異なってもよい。レーダ装置10は、例えば、送信アンテナ107毎に異なる他レーダからの干渉の影響を受けて、信号を受信する場合に、レーダ測位毎に送信アンテナ107から出力される符号多重信号が変わることになり、干渉の影響のランダマイズ効果を得ることができる。
【0142】
以上、レーダ送信部100の構成例について説明した。
【0143】
[レーダ受信部200の構成]
図1において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#Naとも表す)を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部211と、折り返し判定部212と、符号多重分離部213と、距離シフト部214と、方向推定部215と、を有する。
【0144】
各受信アンテナ202は、レーダ測定のターゲットを含む反射物体に反射したレーダ送信信号である反射波信号をそれぞれ受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
【0145】
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
【0146】
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。ミキサ部204は、例えば、受信した反射波信号に対して、第2のレーダ送信信号生成部101-2から入力される、レーダ送信信号であるチャープ信号をミキシングする。換言すると、ミキサ部204は、例えば、SRモード用のチャープ信号を用いて、反射波信号をダウンミキシングする。LPF205は、ミキサ部204の出力信号に対してLPF処理を施すことによって、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号を出力する。例えば、
図4に示すように、送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数(換言すると、ビート信号)として得られる。
【0147】
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部209と、ドップラ解析部210と、を有する。
【0148】
信号処理部206において、AD変換部207は、例えば、LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)を、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換する。
【0149】
ビート周波数解析部208は、例えば、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータをFFT(Fast Fourier Transform)処理する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、ビート周波数解析部208は、FFT処理として、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、窓関数係数を用いることにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。また、Ndata個の離散サンプリングデータ数が2のべき乗ではない場合、ビート周波数解析部208は、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2べき乗個のFFTサイズとしてFFT処理してもよい。この場合、FFT処理によって得られるビート周波数インデックス(例えば、1つのFFTビン)あたりに相当するレーダ反射波の到来遅延は、1/Bwであり、距離に換算するとC0/(2 Bw)に相当する。ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
【0150】
[ビート周波数の検出方法]
以下では、レーダ装置10(レーダ受信部200)におけるビート周波数の検出方法の一例について説明する。
【0151】
なお、例えば、ミキサ部204が直交ミキサ構成である場合のミキサ部204の出力として、I信号成分(同相位相成分、In-phase成分)及びQ信号成分(直交位相成分、Quadrature成分)が得られる。以下では、例えば、I信号成分を用いたビート周波数の検出方法(換言すると、距離検出方法)、及び、I信号成分及びQ信号成分の双方を用いたビート周波数の検出方法(換言すると、距離検出方法)について説明する。
【0152】
<I信号成分を用いたビート周波数の検出方法>
例えば、レンジゲートの時間範囲TRGに対して、Ndata個の離散サンプルデータ(又は、ADサンプルデータとも呼ぶ)が含まれる場合(例えば、ADサンプリング周波数fsa=Ndata/TRGの場合)について説明する。
【0153】
この場合、ビート周波数解析部208のFFT処理において、サンプリング定理に基づいて折り返しなく検出可能な最大のビート周波数f
mbは、例えば、次式(8)に示される。
【数8】
【0154】
図5は、レーダ装置10において検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図である。
【0155】
ここで、LPF205の遮断周波数(又は、カットオフ周波数)f
LPFは、例えば、f
mb程度に設定されてよい。この設定により、レーダ装置10は、例えば、
図5に示すように、第2のレーダ送信信号生成部101-2において生成されたレーダ送信信号(例えば、第2のレーダ送信信号又は第2のレーダ送信波とも呼ぶ)に対する受信ビート信号によって、受信ビート周波数範囲0~f
mbに相当する距離範囲である0~R
max= C
0N
data/(4 Bw)内に存在するターゲットの検出が可能になる。ここで、Bwはチャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C
0は光速度を表す。
【0156】
一方、第1のレーダ送信信号生成部101-1において生成されたレーダ送信信号(例えば、第1のレーダ送信信号又は第1のレーダ送信波とも呼ぶ)に対する受信ビート信号は、第2のレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して送信遅延時間Tuを適用して(換言すると、早いタイミングで)送信される。したがって、例えば、第2のレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)の送信タイミングを基準とした場合、送信遅延時間Tuに相当する距離のターゲットが存在した場合には、第1のレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対する受信ビート信号は、レーダ受信部200において、ドップラ周波数ゼロ成分のビート信号(換言すると、ビート周波数=0)として検出される。
【0157】
例えば、上述したLPF205の通過帯域特性(例えば、カットオフ周波数fLPF=fmb)の設定により、第1のレーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して、送信遅延時間Tuの前後の時間遅れTu±ΔTの範囲のビート信号が検出される。ここでΔT=Ndata/2/Bwである。
【0158】
一例として、送信遅延時間Tuが2R
maxに相当する時間、すなわち、Tu=4R
max/C
0に設定される場合、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、R
maxの範囲、すなわち、R
max~2R
maxの範囲で検出可能となる。レーダ装置10は、例えば、
図5に示すように、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって、受信ビート周波数範囲-f
mb~0において、R
max~2R
maxの距離範囲内に存在するターゲットの検出が可能になる。例えば、
図5では、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を2倍に拡大できる。
【0159】
なお、Tuの値はこれに限定されず、他の値に設定されてよい。例えば、レーダ装置10において想定される検出エリア(換言すると、距離範囲)に応じてTuが設定されてよい。
【0160】
また、レーダ装置10において想定するターゲットが、送信遅延時間Tuに相当する距離を超える距離範囲において検出される場合、ビート周波数解析部208では折り返し(以下、「距離折り返し」と呼ぶ)が発生する可能性がある。例えば、
図5(例えば、Tu=4R
max/C
0)において、R
max~2R
maxの距離範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスと、3R
max~2R
maxの距離範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスとは同一となり、レーダ装置10においてターゲットの距離を区別することが困難な場合がある。
【0161】
例えば、後述する式(10)+式(11)=4×Rmaxの関係より、Rmax~2Rmaxの距離範囲のターゲットが存在した場合の距離rに相当するビート周波数インデックスに対して、4Rmax-rの距離に相当するビート周波数のインデックスは、同一となる。このような距離折り返しによる曖昧性を解決する方法の一つとして、レーダ装置10は、例えば、送信遅延時間Tuを測定毎(換言すると、測位毎)に周期的に可変に設定してもよい。又は、レーダ装置10は、例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変、あるいは、AD変換におけるサンプリングレートを可変に設定してもよい。これらの方法により、距離折り返しによる曖昧性を抑制できる(なお、一例については後述する)。
【0162】
なお、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号による距離検出範囲と、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号による距離検出範囲と、が重複するように距離範囲が設定されてもよい。
【0163】
図6は、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複する場合のレーダ装置10において検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図である。
【0164】
例えば、重複する距離(換言すると、長さ)をR
dupとする場合、送信遅延時間Tuは、(2R
max-R
dup)に相当する時間、すなわち、Tu=(4 R
max -2 R
dup)/ C
0に設定されてよい。この設定により、レーダ装置10は、例えば、
図6に示すように、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号を、(R
max-R
dup)~(2R
max-R
dup)の範囲において検出可能となる。なお、距離検出範囲が重複するためには、例えば、R
dupは0<R
dup≦R
maxの範囲に設定されてよい。
【0165】
また、レーダ装置10において想定するターゲットが送信遅延時間Tuに相当する距離を超える距離範囲において検出される場合、ビート周波数解析部208では距離折り返しが発生する可能性がある。例えば、
図6(例えば、Tu=(4 R
max -2 R
dup)/ C
0)において、(R
max-R
dup)~(2R
max-R
dup)の範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスと、(3R
max-R
dup)~(2R
max-R
dup)の範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスとは同一となり、レーダ装置10においてターゲットの距離を区別することが困難な場合がある。
【0166】
例えば、後述する式(10)+式(11)=4Rmax-2Rdupの関係より、(Rmax-Rdup)~(2Rmax-Rdup)の範囲のターゲットが存在した場合の距離rに相当するビート周波数のインデックスに対して、(4Rmax-2Rdup-r)の距離に相当するビート周波数のインデックスは同一となる。このような距離折り返しによる曖昧性を解決する方法の一つとして、上述したように、レーダ装置10は、例えば、送信遅延時間Tuを測定毎に周期的に可変に設定してもよい。又は、上述したように、レーダ装置10は、例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変、あるいは、AD変換におけるサンプリングレートを可変に設定してもよい。これらの方法により、距離折り返しによる曖昧性を抑制できる(なお、一例については後述する)。
【0167】
次に、距離折り返しによる曖昧性を解決する方法として、例えば、送信遅延時間Tuの値を測定毎に可変に設定する場合を一例に説明する。
【0168】
異なる送信遅延時間の一例として、Tu1及びTu2(Tu1≠Tu2)を用いる場合について説明するが、送信遅延時間Tuは、これに限定されず、3つ以上の送信遅延時間が設定されてもよい。
【0169】
送信信号生成制御部104は、例えば、測定周期毎にTu1及びTu2を交互に設定してよい。例えば、Tu1に相当する距離X0[m]に対して、Tu2に相当する距離は、X0からX[m]シフトした距離(例えばX0+X[m])が設定されてよい。この場合、例えば、測位出力部300において、以下のような距離折り返し判定処理を行ってよい。例えば、測位出力部300は、Tu1を用いたターゲット検出結果(例えば、方向推定部215から出力されるターゲットの方向推定情報Dtarget、距離情報Rtarget、又は、ドップラ速度情報Vtargetが含まれてよい)と、Tu2を用いたターゲット検出結果とを比較してよい。
【0170】
例えば、或る測定周期においてTu1を用いて検出されたターゲット距離に相当するビート周波数インデックスは、距離折り返しを含めると、(Rmax-Rdup)~(2Rmax-Rdup)の範囲のターゲットが存在する場合の距離rに相当するビート周波数のインデックスと、4Rmax-2Rdup-rの距離に相当するビート周波数のインデックスの何れかである可能性がある。
【0171】
レーダ装置10において、次の測定周期においてTu2を用いて検出されるターゲット距離について、正しく測定されている距離のターゲットは、想定速度内の移動範囲において検出可能である。
【0172】
その一方で、誤って検出されている距離のターゲットは、想定速度の移動範囲に加え、TuがTu1からTu2へ変化した時間に相当する可変距離X[m]の2倍の距離(2X[m])で変化する。このため、レーダ装置10では、測定速度を超える移動速度でターゲットが検出され得る。よって、例えば、測位出力部300は、正しく測定されている距離のターゲットと誤って検出されている距離のターゲットとを区別できる。これにより、レーダ装置10は、例えば、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を、折り返しを考慮して最大3倍に拡大できる。例えば、測位出力部300は、誤って検出されている距離のターゲットを取り除いてよい。例えば、測位出力部300は、誤って検出されているターゲットの距離に対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0173】
なお、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複する場合について説明するが、これに限らず、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複しない場合も同様にして送信遅延時間Tuが設定されてもよい。
【0174】
同様に、レーダ装置10は、チャープ信号の周波数掃引幅を測定毎に可変に設定してもよく、AD変換部207のサンプリングレートを測定毎に可変に設定してもよい。換言すると、チャープ信号の周波数掃引幅、又は、AD変換におけるサンプリングレートは、測位毎に異なってよい。これらの場合でも、折り返しの距離が変動するため、測位出力部300は、正しく測定されている距離のターゲットと誤って検出されている距離のターゲットとを区別し、誤って検出されている距離のターゲット検出結果を取り除いてよい。
【0175】
例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変に設定する場合、送信信号生成制御部104は、測定周期毎に周波数掃引幅Bw1及びBw2(Bw1,≠Bw2)を交互に設定してよい。周波数掃引幅Bwの変化により、Rmaxが変動する(Rmax = C0Ndata/(4 Bw)より)。このため、送信遅延時間Tuが一定の場合でも、送信遅延時間Tuを可変にした場合と同様の効果が得られ、測位出力部300は、誤って検出されている距離のターゲット検出結果を取り除いてよい。また、測位出力部300は、例えば、距離折り返し判定処理を行うことにより、想定速度を超える移動速度で検出されるターゲットに対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0176】
また、例えば、AD変換部207のサンプリングレートを可変に設定する場合、図示しないADサンプルリングレート制御部において、測定周期毎にAD変換部207のサンプリングレートをfsa1及びfsa2を交互に設定してよい。サンプリングレートの変化により、レンジゲートの時間範囲TRG内における、離散サンプルデータ(又は、ADサンプルデータとも呼ぶ)数Ndataが変動し、これに伴いRmaxが変動する(Rmax = C0Ndata/(4 Bw)より)。このため、送信遅延時間Tuが一定の場合でも、送信遅延時間Tuを可変にした場合と同様の効果が得られ、測位出力部300は、誤って検出されている距離のターゲット検出結果を取り除いてよい。また、測位出力部300は、例えば、距離折り返し判定処理を行うことにより、想定速度を超える移動速度で検出されるターゲットに対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0177】
なお、ここでは、一例として、周波数掃引幅Bw1及びBw2、又は、サンプリングレートfsa1及びfsa2を交互に設定する場合について説明したが、周波数掃引幅Bw、及びサンプリングレートfsaの値は2種類に限定されず、3種類以上でもよい。
【0178】
<I信号成分及びQ信号成分を用いたビート周波数の検出方法>
ミキサ部204が直交ミキサ構成である場合、ミキサ部204の出力としてI信号成分及びQ信号成分が得られる。例えば、I信号成分又はQ信号成分毎にLPFが適用され、その出力にAD変換が適用されることにより、I信号成分のAD変換部207の出力、及び、Q信号成分のAD変換部207の出力が得られる。
【0179】
図7は、レーダ装置10において検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図である。
【0180】
例えば、ミキサ部204が直交ミキサ構成である場合、LPF205の遮断周波数(又は、カットオフ周波数)f
LPFを、例えば、2f
mb程度に設定されてよい。この設定により、レーダ装置10は、例えば、
図7に示すように、f
mb~2f
mbの範囲の距離折り返しに相当するビート周波数は、負のビート周波数として検出されるので、検出可能な距離範囲が拡大可能であり、例えば、R
maxIQ=2R
maxの関係となる。
【0181】
例えば、レーダ装置10は、
図7に示すように、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって、受信ビート周波数範囲0~2f
mbに相当する距離範囲である0~R
maxIQ= C
0N
data/(2 Bw)内に存在するターゲットの検出が可能になる。ここで、Bwはチャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C
0は光速度を表す。
【0182】
一方、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、第2のレーダ送信信号に対して送信遅延時間Tuを適用して(換言すると、早いタイミングで)送信される。したがって、例えば、第2のレーダ送信信号の送信タイミングを基準とした場合、送信遅延時間Tuに相当する距離のターゲットが存在した場合には、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、レーダ受信部200において、ドップラ周波数ゼロ成分のビート信号(換言すると、ビート周波数=0)として検出される。
【0183】
例えば、上述したLPF205の通過帯域特性(例えば、カットオフ周波数fLPF=2fmb)の設定により、第1のレーダ送信信号に対して、送信遅延時間Tuの前後の時間遅れTu±ΔTIQの範囲のビート信号が検出される。ここでΔTIQ=Ndata/Bwである。
【0184】
一例として、送信遅延時間Tuが2R
maxIQに相当する時間、すなわち、Tu=4R
maxIQ/C
0に設定される場合、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、R
maxIQの範囲、すなわち、R
maxIQ~2R
maxIQの範囲で検出可能となる。レーダ装置10は、例えば、
図7に示すように、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって、受信ビート周波数範囲-2f
mb~0において、R
maxIQ~2R
maxIQの距離範囲内に存在するターゲットの検出が可能になる。例えば、
図7では、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を2倍に拡大できる。
【0185】
なお、Tuの値はこれに限定されず、他の値に設定されてよい。例えば、レーダ装置10において、LRモードで想定される検出エリア(換言すると、第1のレーダ送信信号によって検出する距離範囲)に基づいてTuが設定されてよい。
【0186】
また、レーダ装置10において想定するターゲットが、送信遅延時間Tuに相当する距離を超える距離範囲で検出される場合、ビート周波数解析部208では距離折り返しが発生する可能性がある。例えば、
図7(例えば、Tu=4R
maxIQ/C
0)において、R
maxIQ~2R
maxIQの距離範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスと、2R
maxIQ~3R
maxIQの距離範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスは同一となり、レーダ装置10においてターゲットの距離を区別することが困難な場合がある。
【0187】
例えば、RmaxIQ~2RmaxIQの距離範囲のターゲットが存在した場合の距離rに相当するビート周波数インデックスに対して、r+RmaxIQの距離に相当するビート周波数のインデックスは同一となる。このような距離折り返しによる曖昧性を解決する方法の一つとして、レーダ装置10は、例えば、送信遅延時間Tuを測定毎に周期的に可変に設定してもよい。又は、レーダ装置10は、例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変、あるいは、AD変換におけるサンプリングレートを可変に設定してもよい。これらの方法により、距離折り返しによる曖昧性を抑制できる(なお、一例については後述する)。
【0188】
なお、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号による距離検出範囲と、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号による距離検出範囲と、が重複するように距離範囲が設定されてもよい。
【0189】
図8は、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複する場合のレーダ装置10において検出可能なビート周波数範囲の一例を示す図である。
【0190】
例えば、重複する距離(換言すると、長さ)をR
dupとする場合、送信遅延時間Tuは、(2R
maxIQ-R
dup)に相当する時間、すなわち、Tu=(4 R
maxIQ -2 R
dup)/ C
0に設定されてよい。この設定により、レーダ装置10は、例えば、
図8に示すように、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号を、(R
maxIQ-R
dup)~(2R
maxIQ-R
dup)の範囲において検出可能となる。なお、距離検出範囲が重複するためには、例えば、R
dupは0<R
dup≦R
maxIQの範囲に設定されてよい。
【0191】
また、レーダ装置10において想定するターゲットが、送信遅延時間Tuに相当する距離を超える距離範囲において検出される場合、ビート周波数解析部208では距離折り返しが発生する可能性がある。例えば、
図8(例えば、Tu=(4 R
maxIQ -2 R
dup)/ C
0)において、(R
maxIQ-R
dup)~(2R
maxIQ-R
dup)の範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスと、(2R
maxIQ-R
dup)~(3R
maxIQ-R
dup)の範囲のターゲットが存在した場合に得られるビート周波数のインデックスとは同一となり、レーダ装置10においてターゲットの距離を区別することが困難な場合がある。
【0192】
例えば、(RmaxIQ-Rdup)~(2RmaxIQ-Rdup)の範囲のターゲットが存在した場合の距離rに相当するビート周波数のインデックスに対して、(r+ RmaxIQ)の距離に相当するビート周波数のインデックスは同一となる。ここで、例えば、Rdup=RmaxIQとする場合、送信遅延時間Tuは、Tu=2RmaxIQ / C0に設定されてよい。この場合、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、0~RmaxIQの距離範囲において検出され得る。また、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は、0~RmaxIQの距離範囲において検出され、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号と同一のビート周波数インデックスとして検出される可能性がある。例えば、想定するターゲットがRmaxIQを超える距離範囲において検出される場合、RmaxIQ~2RmaxIQの距離範囲のターゲットは、ビート周波数解析部208において距離折り返して検出される可能性がある。
【0193】
このような距離折り返しによる曖昧性を解決する方法の一つとして、上述したように、レーダ装置10は、例えば、送信遅延時間Tuを測定毎に周期的に可変に設定してもよい。又は、上述したように、レーダ装置10は、例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変、あるいは、AD変換におけるサンプリングレートを可変に設定してもよい。これらの方法により、距離折り返しによる曖昧性を抑制できる(なお、一例については後述する)。
【0194】
次に、距離折り返しによる曖昧性を解決する方法として、例えば、送信遅延時間Tuの値を測定毎に可変に設定する場合を一例に説明する。
【0195】
異なる送信遅延時間の一例として、Tu1及びTu2(Tu1≠Tu2)を用いる場合について説明するが、送信遅延時間Tuは、これに限定されず、3つ以上の送信遅延時間が設定されてもよい。
【0196】
送信信号生成制御部104は、例えば、測定周期毎にTu1及びTu2を交互に設定してよい。例えば、Tu1に相当する距離X0[m]に対して、Tu2に相当する距離は、X0からX[m]シフトした距離(例えばX0+X[m])が設定されてよい。この場合、例えば、測位出力部300において、以下のような距離折り返し判定処理を行ってよい。例えば、測位出力部300は、Tu1を用いたターゲット検出結果(例えば、方向推定部215から出力されるターゲットの方向推定情報Dtarget、距離情報Rtarget、又は、ドップラ速度情報Vtargetが含まれてよい)と、Tu2を用いたターゲット検出結果とを比較してよい。
【0197】
例えば、或る測定周期においてTu1を用いて検出されたターゲット距離に相当するビート周波数インデックスは、距離折り返しを含めると、(RmaxIQ-Rdup)~(2RmaxIQ-Rdup)の範囲のターゲットが存在する場合の距離rに相当するビート周波数のインデックスと、r + RmaxIQの距離に相当するビート周波数のインデックスの何れかである可能性がある。
【0198】
レーダ装置10において、次の測定周期においてTu2を用いて検出されるターゲット距離について、正しく測定されている距離のターゲットは、想定速度内の移動範囲において検出可能である。
【0199】
その一方で、誤って検出されている距離のターゲットは、想定速度の移動範囲に加え、TuがTu1からTu2へ変化した時間に相当する可変距離X[m]の2倍の距離(2X[m])で変化する。このため、レーダ装置10では、測定速度を超える移動速度でターゲットが検出され得る。よって、例えば、測位出力部300は、正しく測定されている距離のターゲットと誤って検出されている距離のターゲットとを区別できる。これにより、レーダ装置10は、例えば、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を、折り返しを考慮して最大3倍に拡大できる。例えば、測位出力部300は、誤って検出されているターゲットの距離に対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0200】
なお、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複する場合について説明するが、これに限らず、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の双方に対応する距離検出範囲が重複しない場合も同様にして送信遅延時間Tuが設定されてもよい。
【0201】
同様に、レーダ装置10は、チャープ信号の周波数掃引幅を測定毎に可変に設定してもよく、AD変換部207のサンプリングレートを測定毎に可変に設定してもよい。換言すると、チャープ信号の周波数掃引幅、又は、AD変換におけるサンプリングレートは、測位毎に異なってよい。これらの場合でも、折り返しの距離が変動するため、測位出力部300は、正しく測定されている距離のターゲットと誤って検出されている距離のターゲットとを区別し、誤って検出されている距離のターゲット検出結果を取り除いてよい。
【0202】
例えば、チャープ信号の周波数遷移の傾きを可変に設定する場合、送信信号生成制御部104は、測定周期毎に周波数掃引幅Bw1及びBw2(Bw1,≠Bw2)を交互に設定してよい。周波数掃引幅Bwの変化により、RmaxIQが変動する。なお、周波数掃引幅BwとRmaxIQの関係は、RmaxIQ = C0Ndata/(2 Bw)である。このため、送信遅延時間Tuが一定の場合でも、送信遅延時間Tuを可変にした場合と同様の効果が得られ、測位出力部300は、誤って検出されている距離のターゲット検出を取り除いてよい。また、測位出力部300は、例えば、距離折り返し判定処理を行うことにより、想定速度を超える移動速度で検出されるターゲットに対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0203】
また、例えば、AD変換部207のサンプリングレートを可変に設定する場合、図示しないADサンプルリングレート制御部において、測定周期毎にAD変換部207のサンプリングレートをfsa1及びfsa2を交互に設定してよい。サンプリングレートの変化により、レンジゲートの時間範囲TRG内における、離散サンプルデータ(又は、ADサンプルデータとも呼ぶ)数Ndataが変動し、これに伴いRmaxIQが変動する。なお、NdataとRmaxIQとの関係は、RmaxIQ = C0Ndata/(2 Bw)である。このため、送信遅延時間Tuが一定の場合でも、送信遅延時間Tuを可変にした場合と同様の効果が得られ、測位出力部300は、誤って検出されている距離のター ゲット検出結果を取り除いてよい。また、測位出力部300は、例えば、距離折り返し判定処理を行うことにより、想定速度を超える移動速度で検出されるターゲットに対応する検出結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0204】
なお、ここでは、一例として、周波数掃引幅Bw1及びBw2、又は、サンプリングレートfsa1及びfsa2を交互に設定する場合について説明したが、周波数掃引幅Bw、及びサンプリングレートfsaの値は2種類に限定されず、3種類以上でもよい。
【0205】
以上、ビート周波数の検出方法の一例について説明した。
【0206】
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答をRFTz(fb, m)で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,…,Ndata/2であり、z=0,…,Naであり、m=1,…,NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(換言すると、ターゲットとの距離が近い)ビート周波数を示す。
【0207】
また、ビート周波数インデックスf
bは、次式(9)、式(10)及び式(11)を用いて距離情報に変換してよい。以下では、ビート周波数インデックスf
bを「距離インデックスf
b」とも呼ぶ。
【数9】
【数10】
【数11】
【0208】
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
【0209】
例えば、式(9)のR2(fb)は、例えば、第2のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数を距離情報に変換する変換式である。また、式(10)のR1(fb)は、例えば、第1のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数が折り返さない範囲である場合に、ビート周波数を距離情報に変換する変換式である。また、式(11)のR1alias(fb)は、例えば、第1のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数が距離折り返しにより検出される場合に、ビート周波数を距離情報に変換する変換式である。
【0210】
なお、ビート周波数を距離情報に変換する際、レーダ装置10は、例えば、同時多重送信された信号に対応する受信信号を分離処理後に、第1のレーダ送信信号又は第2のレーダ送信信号に応じて式(9)、式(10)及び式(11)に従って距離情報に変換してよい。
【0211】
また、例えば、レーダ装置10は、送信遅延時間Tuの距離換算値(例えば、CoTu/2)を距離ビン間隔(又は、距離分解能)(例えば、Co/2Bw)の整数倍になるように設定してもよい。これにより、距離情報への変換式を統一的に表すことができる。
【0212】
また、例えば、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲と、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲とが重複するように距離範囲を含める場合(例えば、
図6又は
図8)、レーダ装置10は、送信遅延時間Tuの距離換算値(例えば、C
oTu/2)を距離ビン間隔(又は、距離分解能)(例えば、C
o/2Bw)の整数倍になるように設定してもよい。これにより、レーダ装置10は、例えば、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号、及び、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号を用いて、方向推定処理を行うことが可能となる。
【0213】
以下では、一例として、送信遅延時間Tuの距離換算値C
oTu/2を、距離ビン間隔(あるいは距離分解能)C
o/2Bwの整数倍N
LRとなるように設定する場合について説明する。すなわち、C
oTu/2 = N
LR (C
o/2Bw)と表される。この場合、ビート周波数から距離情報への変換式は、例えば、次式(12)及び式(13)に従って表してよい。
【数12】
【数13】
【0214】
式(12)及び式(13)に示すように、例えば、ビート周波数インデックスfbをLRモード用のビート周波数インデックスfbLRに変換することにより、第2のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数を距離情報に変換する変換式R2(fbLR)によって、ビート周波数から距離情報への変換式を統一的に表してもよい。
【0215】
なお、ミキサ部204が直交ミキサ構成の場合、第2のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数のうち、負のビート周波数(例えば、f
b = -N
data/2、…、-1)として検出される信号を、正のビート周波数(例えば、f
b= N
data/2、…、N
data-1)の距離折り返しと見なすことが可能である。このため、以下では、f
b=0,…, N
data-1と表記する。この場合、ビート周波数インデックスf
bは、次式(14)、式(15)及び式(16)に従って距離情報に変換されてよい。
【数14】
【数15】
【数16】
【0216】
また、例えば、送信遅延時間Tuの距離換算値C
oTu/2を、距離ビン間隔(あるいは距離分解能)C
o/2Bwの整数倍N
LRとなるように設定する場合(例えば、C
oTu/2 = N
LR (C
o/2Bw))について説明する。この場合、ビート周波数から距離情報への変換式は、例えば、次式(17)及び式(18)に従って表してよい。
【数17】
【数18】
【0217】
式(17)及び式(18)に示すように、例えば、ビート周波数インデックスfbをLRモード用のビート周波数インデックスfbLRに変換することにより、第2のレーダ送信信号によって検出されるビート周波数を距離情報に変換する変換式R2(fbLR)によって、ビート周波数から距離情報への変換式を統一的に表してもよい。
【0218】
以上、ビート周波数解析部208の動作例について説明した。
【0219】
出力切替部209は、符号生成部105から出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部210のうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、OC_INDEX番目のドップラ解析部210を選択する。
【0220】
信号処理部206は、Loc個のドップラ解析部210-1~210-Locを有する。例えば、第noc番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc回の送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1, …, Locである。
【0221】
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用してもよい。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2, …, 0, …, Ncode/2-1である。
【0222】
例えば、第z番の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(19)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
【数19】
【0223】
また、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理してもよい。例えば、ゼロ埋めしたデータを含めた場合のドップラ解析部210におけるFFTサイズをN
codewzeroとした場合、第z番の信号処理部206におけるドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(20)に示される。
【数20】
【0224】
ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。また、FFTサイズはNcodewzeroであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncodewzero×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=-Ncodewzero/2,…,0,…, Ncodewzero/2-1である。
【0225】
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、ドップラ解析部210においてゼロ埋めを用いる場合、以下の説明においてNcodeをNcodewzeroと置き換えることにより、同様に適用でき、同様の効果を得られる。
【0226】
また、ドップラ解析部210は、FFT処理の際に、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
【0227】
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
【0228】
図1において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのLoc個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarを抽出する。
【0229】
CFAR部211は、例えば、次式(21)のように、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献5に開示された処理が適用されてよい。
【数21】
【0230】
CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を折り返し判定部212に出力する。
【0231】
次に、
図1に示す折り返し判定部212の動作例について説明する。
【0232】
折り返し判定部212は、例えば、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに基づいて、ドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar, fs_cfar)の折り返し判定を行う。ここで、z=1,…,Naであり、noc=1,…,Locである。
【0233】
折り返し判定部212は、例えば、想定するターゲットのドップラ範囲を±1/(2×Tr)としてドップラ折り返し判定処理を行ってよい。
【0234】
ここで、例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析部210は、符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。このため、ドップラ解析部210においてサンプリング定理によって折り返しが発生しないドップラ範囲は±1/(2Loc×Tr)である。
【0235】
よって、折り返し判定部212において想定するターゲットのドップラ範囲は、ドップラ解析部210において折り返しが発生しないドップラ範囲よりも広い。例えば、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定して折り返し判定処理を行う。
【0236】
以下、折り返し判定部212における折り返し判定処理の一例を説明する。
【0237】
ここでは、一例として、符号多重数NCM=3であり、符号生成部105が符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を用いる場合について説明する。
【0238】
折り返し判定部212は、例えば、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]及びCode3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。
【0239】
例えば、レーダ装置10が符号長Loc=4の直交符号を用いて符号多重送信を行う場合、上述したように、ドップラ解析部210は符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)=(4×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。よって、ドップラ解析部210においてサンプリング定理よって折り返しが発生しないドップラ範囲は、±1/(2 Loc×Tr)=±1/(8×Tr)となる。
【0240】
折り返し判定部212は、例えば、ドップラ解析部210におけるドップラ解析の範囲(ドップラ範囲)と比較して、直交符号系列の符号長Loc倍の範囲において折り返しの判定を行ってよい。例えば、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210において折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(8×Tr)の4(=Loc)倍のドップラ範囲=±1/(2×Tr)を想定して折り返し判定処理を行う。
【0241】
ここで、CFAR211部において抽出される距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFT
z
noc(f
b_cfar,f
s_cfar)には、例えば、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、
図9における(a)及び(b)に示すような折り返しを含むドップラ成分が含まれる可能性がある。
【0242】
例えば、
図9における(a)に示すように、f
s_cfar<0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、f
s_cfar-Ncode、f
s_cfar、f
s_cfar+Ncode、及び、f
s_cfar+2Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
【0243】
また、例えば、
図9における(b)に示すように、f
s_cfar>0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、f
s_cfar-2Ncode、f
s_cfar-Ncode、f
s_cfar、及び、f
s_cfar+Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
【0244】
折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号を用いて、
図9に示すような±1/(2×Tr)のドップラ範囲において符号分離処理を行う。例えば、折り返し判定部212は、未使用直交符号に対して、
図9に示すような折り返しを含む4(=Loc)通りのドップラ成分の位相変化を補正してもよい。
【0245】
そして、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分の受信電力に基づいて、各ドップラ成分が折り返しであるか否かを判定する。例えば、折り返し判定部212は、折り返しを含むドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を検出し、検出したドップラ成分を真のドップラ成分と判定してよい。換言すると、折り返し判定部212は、折り返しを含むドップラ成分のうち、最小の受信電力と異なる他の受信電力のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
【0246】
この折り返し判定処理により、折り返しを含むドップラ範囲の曖昧性を低減できる。また、この折り返し判定処理により、ドップラ解析部210におけるドップラ範囲(例えば、-1/(8Tr)以上、かつ、1/(8Tr)未満の範囲)と比較して、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。
【0247】
これは、未使用直交符号に基づいて符号分離することにより、例えば、真のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が正しく補正され符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性が維持される。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号とは無相関となり、受信電力はノイズレベル程度となる。
【0248】
一方、例えば、偽のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が誤って補正され符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性は維持されない。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号との相関成分(干渉成分)が発生し、例えば、ノイズレベルよりも大きい受信電力が検出され得る。
【0249】
よって、上述したように、折り返し判定部212は、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を真のドップラ成分と判定し、最小の受信電力と異なる受信電力の他のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
【0250】
例えば、折り返し判定部212は、各アンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に基づいて、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正し、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar,f
s_cfar,DR)を、次式(22)に従って算出する。
【数22】
【0251】
式(22)では、全てのアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力の総和が算出される。これにより、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定精度を向上できる。ただし、式(22)の代わりに、一部のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力が算出されてもよい。この場合でも、例えば、受信信号レベルが十分高い範囲では、折り返し判定の精度を保ちつつ、演算処理量を削減できる。
【0252】
なお、式(22)において、nuc=1,…,Nallcode-NCMである。また、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲の整数値をとる。
【0253】
また、式(22)において、
【数23】
は、要素数が等しいベクトル同士の要素毎の積を表す。例えば、n次ベクトルA=[a
1,..,a
n]及びB=[b
1,..,b
n]に対して、要素毎の積は以下の式(23)で表される。
【数24】
【0254】
また、式(22)において、
【数25】
は、ベクトル内積演算子を表す。また、式(22)において、上付き添え字Tはベクトル転置を表し、上付き添え字*(アスタリスク)は複素共役演算子を表す。
【0255】
式(22)において、α(fs_cfar)は「ドップラ位相補正ベクトル」を表す。ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、例えば、CFAR部211において抽出されたドップラ周波数インデックスfs_cfarが、ドップラ折り返しを含まないドップラ解析部210の出力範囲(換言すると、ドップラ範囲)とする場合に、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する。
【0256】
例えば、ドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、次式(24)のように表される。式(24)に示すドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT
z
1(f
b_cfar, f
s_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFT
z
2(f
b_cfar, f
s_cfar)から第Loc番のドップラ解析部VFT
z
Loc(f
b_cfar, f
s_cfar)のそれぞれにおけるTr,2Tr,…,(Loc-1)Trの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
【数26】
【0257】
また、式(22)において、β(DR)は「折り返し位相補正ベクトル」を表す。折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、例えば、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転のうち、ドップラ折り返しが有る場合を考慮して、2πの整数倍のドップラ位相回転を補正する。
【0258】
例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、次式(25)のように表される。
【数27】
【0259】
例えば、Loc=4の場合、DR=-2,-1,0,1の整数値をとり、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)のように表される。
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【0260】
例えば、Loc=4の場合、
図9における(a)又は(b)においてドップラ解析部210の出力であるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分が検出されるドップラ範囲(例えば、-1/8Tr~+1/8Tr)はDR=0に対応する。また、DR=0のドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対する2πの整数倍のドップラ位相回転(例えば、β(1)、β(-1)及びβ(-2))により、DR=1に対応するドップラ範囲(例えば、1/8Tr~3/8Tr)のドップラ成分、DR=-1に対応するドップラ範囲(例えば、-3/8Tr~-1/8Tr)のドップラ成分、及び、DR=-2に対応するドップラ範囲(例えば、-1/2Tr~-3/8Tr及び3/8Tr~1/2Tr)のドップラ成分が算出される。
【0261】
また、式(22)において、VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)は、例えば、次式(30)のように、第z番のアンテナ系統処理部201におけるLoc個のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)のうち、CFAR部211において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応する成分VFT
z
noc(f
b_cfar, f
s_cfar)(ただし、noc=1,…,Loc)をベクトル形式で表す。
【数32】
【0262】
例えば、折り返し判定部212は、式(22)に従って、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正した未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)を、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲においてそれぞれ算出する。
【0263】
そして、折り返し判定部212は、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを検出する。以下では、次式(31)に示すように、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを「DR
min」と表す。
【数33】
【0264】
以下、上述したような折り返し判定処理によって、ドップラ折り返し判定が可能な理由について説明する。
【0265】
式(30)に示すVFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に含まれる第ncm番の送信アンテナ107(例えば、Tx#ncm)から送信されたレーダ送信信号成分は、例えば、ノイズ成分を無視すると次式(32)のように表される。
【数34】
【0266】
ここで、γz,ncmは、第ncm番の送信アンテナ107から送信されたレーダ送信信号がターゲットに反射した信号が第z番のアンテナ系統処理部201において受信された場合の複素反射係数を表す。また、DRtrueは、真のドップラ折り返し範囲を示すインデックスを表す。DRtrueは、ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲のインデックス値とする。以下、DRmin=DRtureとなるように判定できることを示す。
【0267】
第1番~第N
CM番の送信アンテナ107から送信されたレーダ送信信号成分に対して、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力の総和PowDeMul(nuc,DR,DR
true)は次式(33)で表される。
【数35】
【0268】
なお、式(33)に示すPowDeMul(nuc,DR,DR
true)は、式(22)における、
【数36】
の項の評価値に相当する。
【0269】
式(33)において、DR=DRtrueの場合、未使用直交符号UnCodenucと符号多重送信用の直交符号Codencmとの相関値はゼロ(例えば、UnCodenuc
*・{Codencm}T=0)となるため、PowDeMul(nuc,DR,DRtrue)=0となる。
【0270】
一方、式(33)において、DR≠DR
trueの場合、
【数37】
と符号多重送信用の直交符号Code
ncmとの相関値に依存したPowDeMul(nuc,DR,DR
true)が出力される。ここで、全てのUnCode
nucにおいてPowDeMul(nuc,DR,DR
true)がゼロにならない場合、例えば、次式(34)を満たせば、DR=DR
trueの場合、PowDeMul(nuc, DR
true,DR
true)の電力が最小となり、折り返し判定部212は、DR
true(=DR
min)を検出できる。換言すると、折り返し判定部212は、式(22)に従ってドップラ折り返し判定できる。
【数38】
【0271】
例えば、式(34)を満たすには、
【数39】
の項が他の未使用直交符号UnCode
nuc2に一致しなければよい。ここで、nuc2≠nucである。
【0272】
従って、未使用直交符号が1個の場合には式(34)を満たす。また、未使用直交符号が複数の場合には、例えば、符号生成部105は、
【数40】
の項が他の未使用直交符号に一致しないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
【0273】
ここで、Walsh-Hadamard符号又は直交M系列符号といった符号を用いる場合、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組が含まれる場合がある。
【0274】
一方で、β(0)=[1,1,…,1], β(-Loc/2)=[1, -1, 1,-1,….1,-1]となるため、
【数41】
の項は、UnCode
nucの奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号に変換される。
【0275】
したがって、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合には、例えば、符号生成部105は、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
【0276】
また、例えば、符号生成部105は、上述した関係の符号の組を、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,…,NT1)から送信される第1のレーダ送信信号に用いる符号と、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,…,NTx)から送信される第2のレーダ送信信号に用いる符号と、に分かれるように符号を選択してもよい。
【0277】
例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、WH
4(1)= [1,1, 1, 1]、及び、WH
4(2)= [1,-1, 1, -1]が含まれ、
【数42】
、又は、
【数43】
となる。このため、例えば、符号生成部105は、複数の未使用直交符号にWH
4(1)及びWH
4(2)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。また、WH
4(3)= [1,1, -1, -1]、及び、WH
4(4)= [1,-1, -1, 1]も同様な関係となるため、例えば、符号生成部105は、複数の未使用直交符号にWH
4(3)及びWH
4(4)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
【0278】
なお、未使用直交符号UnCode
nucが複数ある場合、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の代わりに、次式(35)のように、全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を用いてもよい。
【数44】
【0279】
全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の精度を向上できる。
【0280】
例えば、折り返し判定部212は、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1のそれぞれの範囲においてDeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を算出し、受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDR(換言すると、DR
min)を検出する。式(35)を用いる場合、以下では、次式(36)に示すように、DR範囲において最小となる受信電力を与えるDRを「DR
min」と表す。
【数45】
【0281】
また、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR
min)と受信電力とを比較して、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部212は、例えば、次式(37)及び式(38)に従って、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。
【数46】
【数47】
【0282】
例えば、折り返し判定部212は、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に所定値ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が小さい場合(例えば、式(37))、折り返し判定が十分に確からしいと判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行ってもよい。
【0283】
一方、例えば、折り返し判定部212は、受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に、ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が等しいか大きい場合(例えば、式(38))、折り返し判定の精度が十分ではない(例えば、ノイズ成分である)と判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行わなくてもよい。
【0284】
このような処理により、折り返し判定部212における折り返し判定の判定誤りを低減でき、また、ノイズ成分を除去できる。なお、所定値ThresholdDRは、例えば、0から1未満の範囲に設定されてよい。一例として、ノイズ成分が含まれることを考慮すると、ThresholdDRは、0.1~0.5程度の範囲で設定されてもよい。
【0285】
なお、未使用直交符号UnCodenucが複数ある場合、折り返し判定部212は、受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりに、DeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて受信電力との比較をして、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部212は、例えば、式(37)及び式(38)におけるDeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりにDeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の確からしさの精度を向上できる。
【0286】
なお、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の算出式は、例えば、式(22)の代わりに、次式(39)でもよい。
【数48】
【0287】
式(39)において、
【数49】
の項は、ドップラ成分のインデックス(ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、折り返し判定部212における演算量を削減できる。
【0288】
以上、折り返し判定部212の動作例について説明した。
【0289】
次に、符号多重分離部213の動作例について説明する。
【0290】
符号多重分離部213は、折り返し判定部212における折り返し判定結果、及び、符号多重送信用の符号に基づいて、符号多重信号の分離処理を行う。
【0291】
例えば、符号多重分離部213は、次式(40)のように、折り返し判定部212における折り返し判定結果であるDR
minを用いた折り返し位相補正ベクトルβ(DR
min)に基づいて、CFAR部211において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号分離処理を行う。折り返し判定部212にて、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、真のドップラ折り返し範囲であるインデックスを判定できることから(換言すると、DR
min=DR
trueとなるように判定できることから)、符号多重分離部213においては、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、符号多重に使用している直交符号間の相関値をゼロとすることができ、符号多重信号間の干渉を抑圧した分離処理が可能となる。
【数50】
【0292】
ここで、DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力に対する直交符号Codencmを用いて符号多重信号を符号分離した出力(例えば、符号分離結果)である。なお、z=1,…,Naであり、ncm=1,…,NCMである。
【0293】
なお、符号多重分離部213は、式(40)の代わりに、次式(41)を用いてもよい。
【数51】
【0294】
式(41)において、
【数52】
の項(ただし、式(41)では、DR=DR
min)はドップラ成分のインデックス(例えば、ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、符号多重分離部213における演算量を削減できる。
【0295】
以上のような符号分離処理によって、レーダ装置10は、折り返し判定部212において、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定した折り返し判定結果に基づいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与される直交符号Codencmによって符号多重送信された信号を分離した信号を得ることができる。
【0296】
また、レーダ装置10は、例えば、符号分離処理時に、符号要素毎のドップラ解析部210の出力に対して、ドップラ折り返しを含めたドップラ位相補正(例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DRmin)に基づく処理)を行う。このため、符号多重信号間における相互干渉は、例えば、ノイズレベル程度にまで低減可能である。換言すると、レーダ装置10では、符号間干渉を低減でき、レーダ装置10における検出性能の劣化への影響を抑制できる。
【0297】
図10は、レーダ装置10の別の構成例を示す。
図1に示すレーダ装置10の構成において、式(22)、式(39)、式(40)及び式(41)に示すように、
【数53】
の項は、折り返し判定部212及び符号多重分離部213において共通的に用いられる。そこで、例えば、
図10に示すレーダ装置10bのレーダ受信部200bは、位相補正部216を備え、ドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対してドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)を乗算した出力
【数54】
を、折り返し判定部212b及び符号多重分離部213bに出力してもよい。折り返し判定部212b及び符号多重分離部213bは、
【数55】
の項を演算しなくてよく、レーダ装置10bにおいて上記項の重複する演算処理を低減できる。
【0298】
以上、符号多重分離部213の動作例について説明した。
【0299】
図1において、距離シフト部214は、例えば、符号多重分離部213から入力される信号を距離情報に変換してよい。例えば、距離シフト部214は、符号多重分離部213において符号多重信号を分離処理して得られた信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)のうち、第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,N
T1)から送信された符号多重信号を、符号分離処理して得られた信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して、距離情報への変換を行い、距離情報を方向推定部215へ出力してよい。
【0300】
例えば、送信遅延時間Tuの距離換算値(例えば、CoTu/2)を距離ビン間隔(あるいは距離分解能)Co/2Bwの整数倍NLRとなるように設定する場合(例えば、CoTu/2 = NLR (Co/2Bw))、距離情報の変換において、距離インデックスfb_cfarがLRモード用のビート周波数インデックスfbLRに変換され、例えば、式(9)に従って距離情報が得られてもよい。
【0301】
ここで、LRモード用のビート周波数インデックスfbLRは、例えば、式(12)、式(13)、式(17)、式(18)より、以下のように変換されてよい。
【0302】
ミキサ部204において直交ミキサ非使用時:
距離折り返し無い場合、fbLR = NLR - fb_cfar
距離折り返し有りの場合、fbLR = fb_cfar + NLR
【0303】
ミキサ部204において直交ミキサ使用時:
距離折り返し無い場合、fbLR = fb_cfar - (Ndata/2) + NLR
距離折り返し有りの場合、fbLR = fb_cfar + NLR
【0304】
想定するターゲットがビート周波数解析部208において距離折り返しが発生しない距離範囲となる場合、距離シフト部214は、例えば、上述した距離折り返し無い場合の距離情報の変換を適用(換言すると、採用)してよい。一方、想定するターゲットの距離範囲がビート周波数解析部208において距離折り返しが発生する可能性がある範囲の場合、距離シフト部214は、例えば、上述した距離折り返し有りの場合、及び、距離折り返し無い場合の両方の距離情報の変換を適用(換言すると、採用)してよい。
【0305】
なお、本開示の一実施例では、第1の送信アンテナ107-1から送信されるレーダ送信信号に対応する受信信号、及び、第2の送信アンテナ107-2から送信されるレーダ送信信号に対応する受信信号は、互いに異なる距離のターゲットの反射波が多重された信号である可能性がある。この場合、多重された信号(換言すると、符号多重信号)は、符号多重分離部213において分離処理されてDeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)として出力されるため、例えば、レーダ装置10では、第1のレーダ送信信号及び第2のレーダ送信信号の何れか一方が受信される場合があり得る。
【0306】
そのため、距離シフト部214は、例えば、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,N
T1)から送信される符号多重信号が符号分離処理され、距離変換された受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)の電力和が、閾値(又は、判定値と呼ぶ)P
ThDOP1未満の電力レベルである場合、方向推定部215へ信号を出力しなくてよい。例えば、距離シフト部214は、次式(42)のように、閾値P
ThDOP1以上の電力レベルである受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)を方向推定部215へ出力してもよい。換言すると、閾値P
ThDOP1以上の電力レベルである受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)に対して、方向推定部215におけるLRモード用、又は、SRモード/LRモード併用の方向推定処理が行われてもよい。
【数56】
【0307】
または、距離シフト部214は、次式(43)のように、閾値P
ThDOP1の代わりに、全ての送信アンテナ107(例えば、ncm=1,..,N
Tx)に対応する受信信号電力和を用いた適応的な判定値を用いてもよい。ここで、α
ThDop1は係数値である(ただし0<α
ThDop1<1)。
【数57】
【0308】
同様に、距離シフト部214は、例えば、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= N
T1+1,..,N
Tx)から送信される符号多重信号が符号分離処理されて得られる受信信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)の電力和が、閾値(又は、判定値と呼ぶ)P
ThDOP2未満の電力レベルである場合、方向推定部215へ信号を出力しなくてよい。例えば、距離シフト部214は、次式(44)のように、閾値P
ThDOP2以上の電力レベルである受信信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)を方向推定部215へ出力してもよい。換言すると、閾値P
ThDOP2以上の電力レベルである受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)に対して、方向推定部215におけるSRモード用、又は、SRモード/LRモード併用の方向推定処理が行われてもよい。
【数58】
【0309】
または、距離シフト部214は、次式(45)のように、閾値P
ThDOP2の代わりに、全ての送信アンテナ107(例えば、ncm=1,..,N
Tx)に対応する受信信号電力和を用いた適応的な判定値を用いてもよい。ここで、α
ThDop2は係数値である(ただし0<α
ThDop2<1)。
【数59】
【0310】
なお、ミキサ部204が直交ミキサ構成であり、Rdup=RmaxIQの場合、以下のような距離折り返し判定処理が適用されてもよい。
【0311】
例えば、Rdup=RmaxIQの場合、NLR=(Ndata/2)であるので、距離折り返し無い場合、fbLR = fb_cfarとなり、距離折り返し有りの場合、fbLR = fb_cfar+(Ndata/2)となる。
【0312】
例えば、Rdup=RmaxIQの場合、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号が0~RmaxIQの距離範囲において検出される場合、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号は0~RmaxIQの距離範囲において、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号と同一のビート周波数インデックスによって検出される可能性がある。
【0313】
よって、距離シフト部214は、例えば、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= N
T1+1,..,N
Tx)から送信される符号多重信号が符号分離処理されて得られる受信信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)の総和電力が、次式(46)のように、閾値(又は、判定値と呼ぶ)P
ThDop2以上の場合、距離折り返し無しと判定してもよい。距離シフト部214は、例えば、距離折り返し無しと判定した場合、距離折り返し無い場合の距離情報の変換、すなわち、f
bLR = f
b_cfarを用いて、受信信号を方向推定部215へ出力してよい。
【数60】
【0314】
一方、Rdup=RmaxIQの場合、第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号がRmaxIQ~2RmaxIQの距離範囲において検出される場合、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号はRmaxIQ~2RmaxIQの距離範囲において検出されない。このため、第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号と同一のビート周波数のインデックスでは、ノイズレベル程度の受信電力となる可能性がある。
【0315】
よって、距離シフト部214は、例えば、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= N
T1+1,..,N
Tx)から送信される符号多重信号が符号分離処理されて得られる受信信号DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)の総和電力が、次式(47)のように、閾値P
ThDop未満の場合、距離折り返し有りと判定してもよい。距離シフト部214は、例えば、距離折り返し有りと判定した場合、距離折り返し有りの場合の距離情報の変換、すなわち、f
bLR = f
b_cfar+(N
data/2)を用いて、受信信号を方向推定部215へ出力してよい。
【数61】
【0316】
以上、距離シフト部214における動作例について説明した。
【0317】
図1において、方向推定部215は、符号多重分離部213から入力される距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力に対する符号分離結果DeMul
z
ncm(f
b_cfar, f
s_cfar)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
【0318】
例えば、方向推定部215は、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,NT1)から送信された符号多重信号に対応する受信信号DeMulz
ncm(fbLR, fs_cfar)を用いて、LRモード用の方向推定(以下、「LR-DOA」とも呼ぶ)を行ってよい。
【0319】
また、例えば、方向推定部215は、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,..,NTx)から送信された符号多重信号に対応する受信信号DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、SRモード用の方向推定処理(以下、「SR-DOA」とも呼ぶ)を行ってよい。
【0320】
なお、LRモード用の第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲と、SRモード用の第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲とが重複するように距離範囲が設定されてよい(例えば、
図6又は
図8)。この場合、レーダ装置10は、例えば、検出可能な距離範囲が重複する距離(例えば、R
max-R
dup~R
maxの距離範囲、又は、R
maxIQ-R
dup~R
maxIQの距離範囲)において、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1から送信された符号多重信号を符号分離処理し、距離変換された受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)、及び、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2から送信された符号多重信号を符号分離処理して得られるビート周波数インデックスf
bLRの受信信号DeMul
z
ncm(f
bLR, f
s_cfar)を用いて、SRモード及びLRモード併用の方向推定処理(以下、「SR/LR-DOA」とも呼ぶ)を行ってもよい。この場合、方向推定部215は、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2を用いて送信された符号多重信号に対応する受信信号を用いて、方向推定処理を行うことが可能である。このため、アレー利得を向上でき、仮想アレーによる開口長の増大による角度分解能を向上できる。
【0321】
以下、LR-DOA、SR-DOA、及び、SR/LR-DOAの例について説明する。
【0322】
<(1)LRモード用の方向推定(LR-DOA)>
方向推定部215は、例えば、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,NT1)から送信される符号多重信号が符号分離処理され、距離変換された受信信号DeMulz
ncm(fbLR, fs_cfar)を用いて、LRモード用の方向推定(LR-DOA)を行ってよい。
【0323】
例えば、方向推定部215は、式(48)に示す仮想受信アレー相関ベクトルhLR(fbLR, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
【0324】
仮想受信アレー相関ベクトルh
LR(f
bLR, f
s_cfar)は、送信アンテナ数N
T1と受信アンテナ数Naとの積であるN
T1×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh
LR(f
bLR, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
【数62】
【0325】
方向推定部215は、例えば、方向推定評価関数値PLR(θ, fbLR, fs_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出してよい。方向推定部215は、例えば、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
【0326】
なお、方向推定評価関数値PLR(θ, fbLR, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献6に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
【0327】
例えば、N
T1×Na個の仮想受信アレーが等間隔d
LRで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(49)及び式(50)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
【数63】
【数64】
【0328】
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、aLR(θu)は、方位方向θuの到来波に対するNT1×Na個の仮想受信アレーが等間隔dLRで直線状に配置される場合の仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。
【0329】
また、方位方向θuは到来方向推定を行うLRモード方位範囲内(例えば、θminLR≦θu≦θmaxLR)を方位間隔DStepで変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定されてよい。
θu=θminLR + u×DStep、u=0,…, NU-1
NU=floor[(θmaxLR-θminLR)/DStep]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
【0330】
また、式(49)において、DcalLRは、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(NT1×Na)次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、DcalLRは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
【0331】
<(2)SRモード用の方向推定(SR-DOA)>
方向推定部215は、例えば、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,..,NTx)から送信される符号多重信号が符号分離処理して得られる受信信号DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、SRモード用の方向推定(SR-DOA)を行ってよい。
【0332】
例えば、方向推定部215は、式(51)に示す仮想受信アレー相関ベクトルhSR(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
【0333】
仮想受信アレー相関ベクトルh
SR(f
b_cfar, f
s_cfar)は、送信アンテナ数N
T2と受信アンテナ数Naとの積であるN
T2×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh
SR(f
b_cfar, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
【数65】
【0334】
方向推定部215は、例えば、方向推定評価関数値PSR(θ, fb_cfar , fs_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出してよい。方向推定部215は、例えば、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
【0335】
なお、方向推定評価関数値PSR(θ, fb_cfar, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献6に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
【0336】
例えば、N
T2×Na個の仮想受信アレーが等間隔d
SRで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(52)及び式(53)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
【数66】
【数67】
【0337】
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、aSR(θu)は、方位方向θuの到来波に対するNT2×Na個の仮想受信アレーが等間隔dSRで直線状に配置される場合の仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。
【0338】
また、方位方向θuは到来方向推定を行うSRモード方位範囲内(例えば、θminSR≦θu≦θmaxSR)を方位間隔DStepで変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定されてよい。
θu=θminSR + u×DStep、u=0,…, NU-1
NU=floor[(θmaxSR-θminSR)/DStep]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
【0339】
また、式(52)において、DcalSRは、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(NT2×Na)次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、DcalSRは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
【0340】
<(3)SR/LRモード併用の方向推定(SR/LR-DOA)>
例えば、LRモード用の第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲と、SRモード用の第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲とが重複するように距離範囲が設定される場合があり得る。
【0341】
この場合、方向推定部215は、例えば、検出可能な距離範囲が重複する距離範囲(例えば、(Rmax-Rdup)~Rmaxの距離範囲、又は、(RmaxIQ-Rdup)~RmaxIQの距離範囲)において、LRモード用の第1の送信アンテナ107-1(例えば、ncm=1,..,NT1)から送信される符号多重信号が符号分離処理され、距離変換された受信信号DeMulz
ncm(fbLR, fs_cfar)、及び、SRモード用の第2の送信アンテナ107-2(例えば、ncm= NT1+1,..,NTx)から送信される符号多重信号が符号分離処理されて得られるビート周波数インデックスfbLRの受信信号DeMulz
ncm(fbLR, fs_cfar)を用いて、SR/LRモード併用の方向推定処理(SR/LR-DOA)を行ってよい。
【0342】
例えば、方向推定部215は、式(54)に示す仮想受信アレー相関ベクトルhLR/SR(fbLR, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
【0343】
仮想受信アレー相関ベクトルh
LR/SR(f
bLR, f
s_cfar)は、送信アンテナ数N
Txと受信アンテナ数Naとの積であるN
Tx×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh
LR/SR(f
bLR, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
【数68】
【0344】
方向推定部215は、例えば、方向推定評価関数値PLR/SR(θ, fbLR, fs_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出してよい。方向推定部215は、例えば、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
【0345】
なお、方向推定評価関数値PLR/SR(θ, fbLR, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献6に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
【0346】
例えば、N
Tx×Na個の仮想受信アレーが等間隔d
LR/SRで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(55)及び式(56)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
【数69】
【数70】
【0347】
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、aLR/SR(θu)は、方位方向θuの到来波に対するNTx×Na個の仮想受信アレーが等間隔dLR/SRで直線状に配置される場合の仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。
【0348】
また、方位方向θuは到来方向推定を行うSR/LRモード方位範囲内(例えば、θminLR/SR
≦θu≦θmaxLR/SR)を方位間隔DStepで変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定されてよい。SR/LRモード方位範囲は例えば、SRモード方位範囲の角度範囲よりも狭く、LRモード方位範囲よりも広い角度範囲で設定されてもよい。
θu=θminLR/SR + u×DStep、u=0,…, NU-1
NU=floor[(θmaxLR/SR-θminLR/SR)/DStep]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
【0349】
また、式(55)において、DcalLR/SRは、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(NTx×Na)次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、DcalLR/SRは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
【0350】
以上、LR-DOA、SR-DOA、及び、SR/LR-DOAの例について説した。
【0351】
方向推定部215は、例えば、方向推定結果を出力し、さらに、測位結果として、距離インデックスfbLR又はfb_cfarに基づく距離情報、ターゲットのドップラ周波数インデックスfb_cfar及び折り返し判定部212における判定結果DRminに基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
【0352】
方向推定部215は、例えば、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarと折り返し判定部212での判定結果であるDR
minとに基づいて、式(57)に従って、ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを算出してもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarは、例えば、ドップラ解析部210のFFTサイズをLoc×Ncodeに拡張した場合のドップラインデックスに相当する。以下、f
es_cfarを「拡張ドップラ周波数インデックス」と呼ぶ。
【数71】
【0353】
なお、ドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定しており、このドップラ範囲に対応する拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarの範囲は-Loc×Ncode/2≦fes_cfar<Loc×Ncode/2となることから、式(57)において、算出の結果、fes_cfar<-Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar+Loc×Ncodeをfes_cfarとする。また、fes_cfar≧Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar-Loc×Ncodeをfes_cfarとする。
【0354】
また、ドップラ周波数情報は相対速度成分に変換して出力されてもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを相対速度成分v
d(f
es_cfar)に変換するには、次式(58)を用いて変換してもよい。ここで、λは送信無線部(図示せず)から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長であり、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長でる。また、Δ
fは、ドップラ解析部210におけるFFT処理でのドップラ周波数間隔である。例えば、本実施の形態では、Δ
f=1/{Loc×N
code×T
r}である。
【数72】
【0355】
以上、方向推定部215の動作例について説明した。
【0356】
図1において、測位出力部300は、例えば、方向推定部215から入力されるターゲットの検出結果(例えば、ターゲットの方向推定情報D
target、距離情報R
target、ドップラ速度情報V
targetを含む)を、複数の測定周期期間に亘り一時的に記憶してよい。また、測位出力部300は、例えば、ターゲットの検出結果に基づいて、上述した距離折り返し判定処理を行ってよい。測位出力部300は、例えば、距離折り返しによって誤って検出された結果を除いたターゲット検出結果を出力してよい。
【0357】
以上、レーダ装置10の動作例について説明した。
【0358】
以上のように、本実施の形態では、レーダ装置10は、例えば、第1のレーダ送信信号(例えば、LRモード用のレーダ送信波)、及び、第1のレーダ送信信号よりも送信タイミングの遅い第2のレーダ送信信号(例えば、SRモード用のレーダ送信波)を生成し、第1のレーダ送信信号と第2のレーダ送信信号とを符号多重した多重信号を送信する。また、レーダ装置10は、例えば、レーダ受信部においてSRモード用の第2のレーダ送信波を用いて、反射波信号をダウンミキシングする。
【0359】
この処理により、レーダ装置10は、LRモード用の第1のレーダ送信波によって、SRモードと比較して遠方の距離まで検出可能となる。換言すると、レーダ装置10は、SRモード用のチャープ信号に基づく距離分解能を維持しつつ、LRモード用の検出可能な距離範囲を拡大できる。例えば、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を最大2倍に拡大、又は、折り返しを考慮すると最大3倍に拡大できる。
【0360】
また、レーダ装置10では、例えば、AD変換部207のサンプリングレートfsaを高めることなく、距離分解能を維持しつつ、最大検出距離範囲を拡大できるので、AD変換の高速化に伴うハードウエアコストの増加を抑制できる。
【0361】
また、レーダ装置10は、例えば、受信信号(例えば、符号多重信号の符号要素毎のドップラ解析部210の出力)に対して、符号多重送信に未使用の直交符号を用いて、ドップラ折り返しの判定を行ってよい。この判定により、例えば、レーダ装置10は、ドップラ解析部210におけるドップラ解析範囲と比較して、直交符号系列の符号長倍のドップラ範囲において折り返しを判定できる。よって、本実施の形態によれば、レーダ装置10は、曖昧性なく検出可能なドップラ範囲を、1アンテナ送信時と同等のドップラ範囲に拡大できる。
【0362】
また、レーダ装置10は、例えば、ドップラ折り返しの判定結果に基づいて、符号分離の際に、折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、符号多重信号間の相互干渉をノイズレベル程度に抑えることができるので、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。
【0363】
よって、本実施の形態によれば、レーダ装置10は、例えば、符号多重又はドップラ多重といった同時多重送信において、距離分解能を維持したまま。距離及びドップラ成分の検出範囲を拡大できる。よって、本実施の形態によれば、レーダ装置10におけるターゲットの検知精度を向上できる。
【0364】
なお、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2は、例えば、同程度の指向特性を有する送信アンテナでもよく、異なる指向特性を有する送信アンテナでもよい。例えば、第1のレーダ送信波によって、第2のレーダ送信波と比較して遠方の距離まで検出可能とするために、第1のレーダ送信波の送信に用いる第1の送信アンテナ107-1は、例えば、第2の送信アンテナ107-2よりも指向性を狭めて、指向性利得を高めたアンテナでもよい。これにより、レーダ装置10では、第1のレーダ送信波によって、第1の送信アンテナ107-1の指向性方向において遠方距離のターゲットをより良好な受信品質(例えば、SNR:Signal to Noise Ratio)で検出でき、ターゲットの検出性能を向上できる。
【0365】
また、本実施の形態では、一例として、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2による視野角の少なくとも一部が重複する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2それぞれは、互いに重複する視野角を有さない指向方向の異なるアンテナでもよい。
【0366】
また、上述した実施の形態では、複数の受信アンテナ202は、例えば、同程度の指向特性を有する受信アンテナでもよく、異なる指向特性を有する受信アンテナでもよい。例えば、複数の受信アンテナ202のうち、指向特性が異なる2種類の受信アンテナを、それぞれを第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナとする。例えば、第1の受信アンテナは、第2の受信アンテナよりも指向性を狭めて、指向性利得を高めたアンテナでもよい。この受信アンテナの構成により、レーダ装置10では、例えば、第1のレーダ送信波によって遠方距離まで検出可能となることから、第1のレーダ送信波の反射波の受信信号のうち、第1の受信アンテナの指向性方向において受信された受信信号は、第2の受信アンテナと比較して、遠方距離のターゲットをより良好な受信品質(例えば、SNR)で検出でき、ターゲットの検出性能を向上できる。
【0367】
また、上述した実施の形態において、第1のレーダ送信波の送信に用いる第1の送信アンテナ107-1は、第2の送信アンテナ107-2よりも指向性を狭めて指向性利得を高めたアンテナを用い、更に、複数の受信アンテナ202のうち、第1の受信アンテナは、第1の送信アンテナの指向性方向に、第2の受信アンテナよりも指向性を狭めて指向性利得を高めたアンテナを用いてもよい。これにより、第1の受信アンテナの指向性方向が第1の送信アンテナの指向性方向と重複するので、第1のレーダ送信波の反射波の受信信号のうち、第1の受信アンテナにおいて受信される受信信号は、送受信アンテナの指向性利得の向上により、遠方距離のターゲットをより良好な受信品質(例えば、SNR)で検出でき、ターゲットの検出性能を向上できる。
【0368】
上述した実施の形態において、LRモード用の送信アンテナ107-1から送信される第1のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲と、SRモード用の送信アンテナ107-2から送信される第2のレーダ送信信号に対する受信ビート信号によって検出可能な距離範囲とが重複するように距離範囲が設定される場合、距離検出範囲が重複する距離において、SR/LRモード併用の方向推定処理(SR/LR-DOA)を行ってよい。これにより、レーダ装置10は、例えば、第1の送信アンテナ107-1及び第2の送信アンテナ107-2を用いて送信されたレーダ送信信号に対する受信信号を用いて方向推定処理を行うことができる。このため、レーダ装置10では、アレー利得を向上でき、仮想受信アレーによる開口長が増大することから角度分解能を向上できる。
【0369】
また、上述した実施の形態において、レーダ装置10は、LRモード用の第1のレーダ送信波を、SRモード用の第2のレーダ送信波よりも時間的に早く送信を開始し、レーダ受信部においてSRモード用の送信チャープ信号を用いてレーダ反射波をダウンミキシングする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、レーダ装置10は、LRモード用の第1のレーダ送信波を、SRモード用の第2のレーダ送信波の周波数変調開始周波数(あるいは送信チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数)を異ならせて送信してもよい。例えば、レーダ装置10は、或る送信タイミング(例えば、第1のタイミング)及び第1のタイミングと異なるタイミング(例えば、第3のタイミング)において、第1のレーダ送信波の変調周波数を、第2のレーダ送信波の変調周波数よりも高く設定してよい。この場合、LRモード用の第1のレーダ送信波をSRモード用の第2のレーダ送信波よりも時間的に早く送信せずに、上記と同様の効果(例えば、距離分解能を維持しつつ、検出可能な距離範囲を拡大できる効果)が得られる。
【0370】
例えば、
図11に示すように、第1のレーダ送信波の周波数変調開始周波数を「f
cp_st1」とし、送信遅延時間Tuの時間経過後において、第2のレーダ送信波の周波数変調周波数が「f
cp_st1」となるように、第2のレーダ送信波の周波数変調開始周波数「f
cp_st2」を設定してもよい。換言すると、f
cp_st1≠f
cp_st2であり、f
cp_st1=f
cp_st2+Tu×(d
fcp/T
sa)となるように設定されてよい。ここで、d
fcpは、AD変換部207のサンプリング周期T
saあたりに、チャープ信号の周波数が掃引される周波数変調掃引幅を表す。例えば、レーダ装置10において、SRモード用の送信チャープ信号を用いてレーダ送信波をダウンミキシングする場合、
図2と
図11に示す第1のレーダ送信波と第2のレーダ送信波との関係は同様の関係になる。
【0371】
または、周波数変調開始周波数の代わりに、レーダ送信波の中心周波数(送信チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数)を用いてもよい。例えば、第1のレーダ送信波の中心周波数を「fcp_center1」とし、第2のレーダ送信波の中心周波数を「fcp_center2」とした場合、fcp_center1≠fcp_center2であり、fcp_center1―fcp_center2=Tu×(dfcp/Tsa)となるように設定されてもよい。
【0372】
なお、第1のレーダ送信波の変調周波数と第2のレーダ送信波の変調周波数との差は、例えば、レーダ装置10においてLRモードで想定される検出エリア(換言すると、第1のレーダ送信信号によって検出する距離範囲)に基づいて設定されてよい。
【0373】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るレーダ装置は、実施の形態1に係るレーダ装置10(例えば、
図1)と同様でよい。
【0374】
本実施の形態では、例えば、送信信号生成制御部104におけるレーダ送信信号(または、レーダ送信波とも呼ぶ)生成の制御方法が実施の形態1と異なる。
【0375】
レーダ装置10は、例えば、符号送信周期(例えば、Loc×Tr)毎に、レーダ送信信号の送信遅延を巡回的に設定してよい。送信遅延の設定により、例えば、実施の形態1と比較して、レーダ装置10において検出可能なドップラ範囲を拡大できる。
【0376】
本実施の形態に係る送信信号生成制御部104は、例えば、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2において生成されるレーダ送信信号の生成を制御する。例えば、送信信号生成制御部104は、第1のレーダ送信信号生成部101-1及び第2のレーダ送信信号生成部101-2におけるレーダ送信信号の生成の同期又は送信タイミングを制御してよい。
【0377】
例えば、
図12の上段は、第1のレーダ送信信号生成部101-1から出力されるレーダ送信信号(例えば、第1のレーダ送信波)の例を示し、
図12の下段は、第2のレーダ送信信号生成部101-2から出力されるレーダ送信信号(例えば、第2のレーダ送信波)を示す。
【0378】
送信信号生成制御部104は、例えば、
図12に示すように、実施の形態1と同様、送信周期Tr毎に出力される第1のレーダ送信波の送信タイミングを基準として、送信遅延時間(又は、時間遅れとも呼ぶ)Tu遅れて、第2のレーダ送信波を出力するようにタイミングを制御してよい。
【0379】
また、送信信号生成制御部104は、例えば、第1のレーダ送信波及び第2のレーダ送信波に対して、符号送信周期(例えば、Loc×Tr)毎に、送信遅延d
t1、d
t2、…、d
tLoc-1を巡回的に設定してよい。送信遅延d
tの設定により、例えば、
図12に示すように、第1のレーダ送信波及び第2のレーダ送信波は、送信周期Tr毎に、それぞれ設定された送信遅延d
t1、d
t2、…、d
tLoc-1の経過後に送信される。
【0380】
これにより、第1のレーダ送信波及び第2のレーダ送信波には、送信周期Tr毎に送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1の何れかが設定される。なお、各送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1の何れかに0が設定されてよいが、少なくとも一つは0でない値が含まれてよい。
【0381】
次に、レーダ受信部200の動作例について説明する。
【0382】
以下、折り返し判定部212における折り返し判定処理の一例を説明する。
【0383】
ここでは、一例として、符号多重数NCM=3であり、符号生成部105が符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を用いる場合について説明する。
【0384】
折り返し判定部212は、例えば、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部105が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]及びCode3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。
【0385】
例えば、レーダ装置10が符号長Loc=4の直交符号を用いて符号多重送信を行う場合、上述したように、ドップラ解析部210は符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)=(4×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。よって、ドップラ解析部210においてサンプリング定理よって折り返しが発生しないドップラ範囲は、±1/(2 Loc×Tr)=±1/(8×Tr)となる。
【0386】
折り返し判定部212は、例えば、ドップラ解析部210におけるドップラ解析の範囲(ドップラ範囲)の(直交符号系列の符号長Loc×2)倍の範囲において折り返しの判定を行ってよい。例えば、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210において折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2 Loc×Tr)(=±1/(8×Tr))の8(=2Loc)倍のドップラ範囲=±1/Trを想定して折り返し判定処理を行う。
【0387】
ここで、CFAR211部において抽出される距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFT
z
noc(f
b_cfar,f
s_cfar)には、例えば、±1/Trのドップラ範囲において、
図13における(a)及び(b)に示すような折り返しを含むドップラ成分が含まれる可能性がある。
【0388】
例えば、
図13における(a)に示すように、f
s_cfar<0の場合、±1/Trのドップラ範囲において、f
s_cfar-3Ncode、f
s_cfar-2Ncode、f
s_cfar-Ncode、f
s_cfar、f
s_cfar+Ncode、f
s_cfar+2Ncode、f
s_cfar+3Ncode、及び、f
s_cfar+4Ncodeの8(=2Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
【0389】
また、例えば、
図13における(b)に示すように、f
s_cfar>0の場合、±1/Trのドップラ範囲において、f
s_cfar-4Ncode、f
s_cfar-3Ncode、f
s_cfar-2Ncode、f
s_cfar-Ncode、f
s_cfar、f
s_cfar+Ncode、f
s_cfar+2Ncode、及び、f
s_cfar+3Ncodeの8(=2Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。これらのf
s_cfar に対し、可能性のあるドップラ成分(8(=2Loc)通り)をf
s_cfarに対するドップラ成分候補と呼ぶ。
【0390】
折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号を用いて、
図13に示すような±1/Trのドップラ範囲において符号分離処理を行う。例えば、折り返し判定部212は、未使用直交符号に対して、
図13に示すような折り返しを含む8(=2Loc)通りのドップラ成分に対応した位相変化を補正してもよい。
【0391】
そして、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分の受信電力に基づいて、各ドップラ成分が真のドップラ成分か否かを判定する。例えば、折り返し判定部212は、fs_cfarに対するドップラ成分候補のうち、受信電力が最小のドップラ成分を検出し、検出したドップラ成分を真のドップラ成分と判定してよい。換言すると、折り返し判定部212は、fs_cfarに対するドップラ成分候補のうち、最小の受信電力と異なる他の受信電力のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
【0392】
この折り返し判定処理により、±1/Trのドップラ範囲における曖昧性を低減する(換言すると、曖昧性を解決する)。また、この折り返し判定処理により、ドップラ解析部210におけるドップラ範囲(例えば、-1/(8Tr)以上、かつ、1/(8Tr)未満の範囲)と比較して、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(Tr)以上、かつ、1/(Tr)未満の範囲に拡大できる。
【0393】
これは、未使用直交符号に基づいて符号分離することにより、例えば、真のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が正しく補正され符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性が維持される。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号とは無相関となり、受信電力はノイズレベル程度となる。
【0394】
一方、例えば、偽のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が誤って補正され符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性は維持されない。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号との相関成分(干渉成分)が発生し、例えば、ノイズレベルよりも大きい受信電力が検出され得る。
【0395】
よって、上述したように、折り返し判定部212は、未使用直交符号に基づいて符号分離されたfs_cfarに対するドップラ成分候補のうち、受信電力が最小のドップラ成分を真のドップラ成分と判定し、最小の受信電力と異なる受信電力の他のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
【0396】
例えば、折り返し判定部212は、各アンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に基づいて、f
s_cfarに対するドップラ成分候補の各ドップラ成分に応じた位相変化を補正し、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar,f
s_cfar,DR)を、次式(59)に従って算出する。
【数73】
【0397】
式(59)では、全てのアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力の総和が算出される。これにより、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定精度を向上できる。ただし、式(59)の代わりに、一部のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力が算出されてもよい。この場合でも、例えば、受信信号レベルが十分高い範囲では、折り返し判定の精度を保ちつつ、演算処理量を削減できる。
【0398】
なお、式(59)において、nuc=1,…,Nallcode-NCMである。また、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、DR=-Loc, -Loc+1,…,0,…, Loc-1の範囲の整数値をとる。ここで、DRは、fs_cfarに対するドップラ成分候補における各ドップラ成分に応じた位相変化を補正することに対応している。
【0399】
また、式(59)において、
【数74】
は、要素数が等しいベクトル同士の要素毎の積を表す。例えば、n次ベクトルA=[a
1,..,a
n]及びB=[b
1,..,b
n]に対して、要素毎の積は以下のように表される。
【数75】
【0400】
また、式(59)において、
【数76】
は、ベクトル内積演算子を表す。また、式(59)において、上付き添え字Tはベクトル転置を表し、上付き添え字*(アスタリスク)は複素共役演算子を表す。
【0401】
式(59)において、αdt(fs_cfar)は「ドップラ位相補正ベクトル」を表す。ドップラ位相補正ベクトルαdt(fs_cfar)は、例えば、CFAR部211において抽出されたドップラ周波数インデックスfs_cfarが、ドップラ折り返しを含まないドップラ解析部210の出力範囲(換言すると、ドップラ範囲)とする場合に、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する。
【0402】
例えば、ドップラ位相補正ベクトルα
dt(f
s_cfar)は、次式(60)のように表される。式(60)に示すドップラ位相補正ベクトルα
dt(f
s_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT
z
1(f
b_cfar, f
s_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFT
z
2(f
b_cfar, f
s_cfar)から第Loc番のドップラ解析部VFT
z
Loc(f
b_cfar, f
s_cfar)のそれぞれにおけるTr+d
t1,2Tr+d
t2,…,(Loc-1)Tr+d
tLoc-1の時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
【数77】
【0403】
また、式(59)において、βdt(DR)は「折り返し位相補正ベクトル」を表す。折り返し位相補正ベクトルβdt(DR)は、例えば、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転のうち、ドップラ折り返しが有る場合を考慮して、2πの整数倍のドップラ位相回転を補正する。
【0404】
例えば、折り返し位相補正ベクトルβ
dt(DR)は、次式(61)のように表される。
【数78】
【0405】
式(61)において、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、DR=-Loc, -Loc+1,…,0,…, Loc-1の範囲の整数値をとる。
【0406】
式(61)に示す折り返し位相補正ベクトルβdt(DR)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFTz
1(fb_cfar, fs_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFTz
2(fb_cfar, fs_cfar)から第Loc番のドップラ解析部VFTz
Loc(fb_cfar, fs_cfar)のそれぞれにおけるTr+dt1,2Tr+dt2,…,(Loc-1)Tr+dtLoc-1の時間遅れを考慮して2πの整数倍の位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。このようなドップラ位相補正ベクトルαdt(fs_cfar)及び位相補正ベクトルβdt(DR)fs_cfarによる位相補正は、fs_cfarに対するドップラ成分候補における各ドップラ成分に応じた位相変化を補正することに対応している。
【0407】
ここで、本実施の形態では、例えば、符号送信周期(Loc×Tr)毎に、送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1が巡回的に設定されるため、αdt(fs_cfar)及びβdt(DR)は、実施の形態1におけるα(fs_cfar)(例えば、式(24))及びβ(DR)(例えば、式(25))とは異なる。本実施の形態では、例えば、符号送信周期毎に、送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1が巡回的に設定されることで、DR=-Loc, -Loc+1,…,0,…, Loc-1の範囲において異なる位相補正係数(例えば、αdt(fs_cfar)及びβdt(DR))の値が得られる可能性がある。これにより、本実施の形態では、実施の形態1と比較して、より広いドップラ範囲における折り返しの判定を可能となる。
【0408】
例えば、Loc=4の場合、DR=-4, -3, -2,-1,0,1,2,3の整数値をとり、符号送信周期毎に送信遅延d
t1、d
t2、…、d
tLoc-1が巡回的に設定されない場合、β(DR)は次式(62)のように、重複した位相補正値となり得る。
【数79】
【0409】
一方、符号送信周期毎に巡回的に送信遅延d
t1、d
t2、…、d
tLoc-1が巡回的に設定される場合、β
dt(DR)は、次式(63)のように表される。
【数80】
【0410】
例えば、式(63)において、DR=-Loc, -Loc+1,…,0,…, Loc-1の範囲において、各送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1が0.5Tr以下の値に設定される場合、各β(DR)に対して、DRの可変範囲において異なる2π以内の位相回転が付与されるので、βdt(DR)のそれぞれは異なる位相補正値に設定され得る。これにより、折り返し判定部212は、DR=-Loc, -Loc+1,…,0,…, Loc-1の範囲(換言すると、-1/(Tr)以上、かつ、1/(Tr)未満の範囲)における折り返しの判定が可能となる。
【0411】
なお、各送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1の設定値が小さいほど、例えば、位相補正値における位相差が小さくなり、折り返し判定の精度が低減し得る。一方、各送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1の設定値が大きいほど、レーダ送信信号の送信時間が増加し得る。一例として、各送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1の設定値は、0.1Tr~0.25Tr程度の値に設定されてよい。
【0412】
例えば、Loc=4の場合、
図13における(a)又は(b)においてドップラ解析部210の出力であるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分が検出されるドップラ範囲(例えば、-1/8Tr~+1/8Tr)はDR=0に対応する。また、DR=0のドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対する2πの整数倍のドップラ位相回転(例えば、2π×DR、DR=-4,-3,-2,-1,1,2,3)に対して、各DRに対応するドップラ範囲のドップラ成分が算出されてよい。
【0413】
例えば、折り返し判定部212は、式(59)に従って、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正した未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)を、DR=-Loc, -Loc +1,…,0,…, Loc -1の範囲においてそれぞれ算出する。
【0414】
そして、折り返し判定部212は、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを検出する。以下では、次式(64)に示すように、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを「DR
min」と表す。
【数81】
【0415】
なお、未使用直交符号UnCode
nucが複数ある場合、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の代わりに、次式(65)のように、全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を用いてもよい。
【数82】
【0416】
全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の精度を向上できる。
【0417】
例えば、折り返し判定部212は、DR=-Loc, -Loc +1,…,0,…, Loc -1のそれぞれの範囲においてDeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を算出し、受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDR(換言すると、DR
min)を検出する。式(65)を用いる場合、以下では、次式(66)に示すように、DR範囲において最小となる受信電力を与えるDRを「DR
min」と表す。
【数83】
【0418】
また、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR
min)と受信電力とを比較して、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部212は、例えば、次式(67)及び式(68)に従って、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。
【数84】
【数85】
【0419】
例えば、折り返し判定部212は、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に所定値ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が小さい場合(例えば、式(67))、折り返し判定が十分に確からしいと判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行ってもよい。
【0420】
一方、例えば、折り返し判定部212は、受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に、ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が等しいか大きい場合(例えば、式(68))、折り返し判定の精度が十分ではない(例えば、ノイズ成分である)と判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行わなくてもよい。
【0421】
このような処理により、折り返し判定部212における折り返し判定の判定誤りを低減でき、また、ノイズ成分を除去できる。なお、所定値ThresholdDRは、例えば、0から1未満の範囲に設定されてよい。一例として、ノイズ成分が含まれることを考慮すると、ThresholdDRは、0.1~0.5程度の範囲で設定されてもよい。
【0422】
なお、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の算出式は、例えば、式(59)の代わりに、次式(69)でもよい。
【数86】
【0423】
式(69)において、
【数87】
の項は、ドップラ成分のインデックス(ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、折り返し判定部212における演算量を削減できる。
【0424】
以上、折り返し判定部212の動作例について説明した。
【0425】
符号多重分離部213は、折り返し判定部212における折り返し判定結果、及び、符号多重送信用の符号に基づいて、符号多重信号の分離処理を行う。
【0426】
例えば、符号多重分離部213は、次式(70)のように、折り返し判定部212における折り返し判定結果であるDR
minを用いた折り返し位相補正ベクトルβ
dt(DR
min)に基づいて、CFAR部211において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号分離処理を行う。折り返し判定部212にて、-1/Tr以上、かつ、1/Tr未満のドップラ範囲で、真のドップラ折り返し範囲であるインデックスを判定できることから(換言すると、DR
min=DR
trueとなるように判定できることから)、符号多重分離部213においては、-1/Tr以上、かつ、1/Tr未満のドップラ範囲で、符号多重に使用している直交符号間の相関値をゼロとすることができ、符号多重信号間の干渉を抑圧した分離処理が可能となる。
【数88】
【0427】
ここで、DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力に対する直交符号Codencmを用いて符号多重信号を符号分離した出力(例えば、符号分離結果)である。なお、z=1,…,Naであり、ncm=1,…,NCMである。
【0428】
なお、符号多重分離部213は、式(70)の代わりに、次式(71)を用いてもよい。
【数89】
式(71)において、
【数90】
の項(ただし、式(71)では、DR=DR
min)はドップラ成分のインデックス(例えば、ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、符号多重分離部213における演算量を削減できる。
【0429】
以上のような符号分離処理によって、レーダ装置10は、折り返し判定部212において、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)の2Loc倍のドップラ範囲±1/Trまでを想定した折り返し判定結果に基づいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与される直交符号Codencmによって符号多重送信された信号を分離した信号を得ることができる。
【0430】
また、レーダ装置10は、例えば、符号分離処理時に、符号要素毎のドップラ解析部210の出力に対して、ドップラ折り返しを含めたドップラ位相補正(例えば、折り返し位相補正ベクトルβdt(DRmin)に基づく処理)を行う。このため、符号多重信号間における相互干渉は、例えば、ノイズレベル程度にまで低減可能である。換言すると、レーダ装置10では、符号間干渉を低減でき、レーダ装置10における検出性能の劣化への影響を抑制できる。
【0431】
なお、式(71)において、
【数91】
の項は、折り返し判定部212及び符号多重分離部213において共通的に用いられる。そこで、例えば、
図10に示すレーダ装置10bは、位相補正部216を備え、ドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対してドップラ位相補正ベクトルα
dt(f
s_cfar)を乗算した出力
【数92】
を折り返し判定部212b及び符号多重分離部213bに出力してもよい。折り返し判定部212b及び符号多重分離部213bは、
【数93】
の項を重複して演算しなくてよく、レーダ装置10bにおいて上記項の重複する演算処理を低減できる。
【0432】
以上、符号多重分離部213の動作例について説明した。
【0433】
以上のように、本実施の形態では、レーダ装置10は、例えば、実施の形態1と同様、LRモード用の第1のレーダ送信波を、SRモード用の第2のレーダ送信波よりも時間的に早く送信し、レーダ受信部においてSRモード用の第2のレーダ送信波を用いてレーダ反射波をダウンミキシングする。この処理により、レーダ装置10は、LRモード用の第1のレーダ送信波によって、SRモードと比較して遠方の距離まで検出可能となる。換言すると、レーダ装置10は、SRモード用のチャープ信号に基づく距離分解能を維持しつつ、LRモード用の検出可能な距離範囲を拡大できる。例えば、SRモード用の検出可能な距離範囲と比較して、LRモード用の検出可能な距離範囲を最大2倍に拡大、又は、折り返しを考慮すると最大3倍に拡大できる。
【0434】
また、本実施の形態では、レーダ装置10は、例えば、符号多重送信数よりも多くの直交符号が生成可能な符号長の直交符号系列を用いて、符号送信周期(Loc×Tr)毎に、巡回的に送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1を設けて符号多重送信する。
【0435】
これにより、レーダ装置10は、例えば、受信信号(例えば、符号多重信号の符号要素毎のドップラ解析部210の出力)に対して、符号多重送信に未使用の直交符号を用いて、ドップラ折り返しの判定を行うことができる。例えば、符号送信周期(Loc×Tr)毎に、巡回的に送信遅延dt1、dt2、…、dtLoc-1を設けることで、折り返し判定部212において検出可能なドップラ範囲を、実施の形態1と比較して2倍に拡大できる。
【0436】
また、レーダ装置10は、例えば、折り返し判定結果に基づいて、符号分離の際に折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、曖昧性なく検出可能なドップラ周波数範囲を±1/Trとし、符号多重信号間の相互干渉をノイズレベル程度に抑えることができるので、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。これにより、本実施の形態では、例えば、実施の形態1と比較して、第1のレーダ送信波あるいは第2のレーダ送信波に基づくドップラ分解能を維持しつつ、ドップラの検出範囲を2倍に拡大できる。
【0437】
なお、本実施の形態では、レーダ装置10が、LRモード用の第1のレーダ送信波を、SRモード用の第2のレーダ送信波よりも時間的に早く送信し、レーダ受信部においてSRモード用の送信チャープ信号を用いてレーダ反射波をダウンミキシングする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、レーダ装置10は、第1のレーダ送信波を用いて送信する場合(換言すると、第2のレーダ送信波を送信しない場合)、あるいは、第2のレーダ送信波を用いて送信する場合(換言すると、第1のレーダ送信波を送信しない場合)にも適用してもよい。この場合でも、例えば、折り返し判定部212により検出可能なドップラ範囲を、実施の形態1と比較して2倍に拡大できる。レーダ装置10は、例えば、この結果に基づいて、符号分離の際に、折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、曖昧性なく検出可能なドップラ周波数範囲を±1/Trとし、符号多重信号間の相互干渉をノイズレベル程度に抑えることができるので、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。
【0438】
また、本実施の形態では、送信遅延(例えば、dt1、dt2、…、dtLoc-1)の設定と、実施の形態1の動作(例えば、送信時間遅延Tuの適用)とを組み合わせる場合について説明したが、送信遅延の設定は、実施の形態1と組み合わせなくてもよい。例えば、レーダ装置10は、第1のレーダ送信波と第2のレーダ送信波と送信タイミング(又は、周波数変調開始周波数又は中心周波数)を同等に設定し、符号送信周期毎に送信遅延を巡回的に設定してもよい。換言すると、レーダ装置10は、送信遅延時間Tuを設定せずに、送信遅延dtを設定してもよい。この場合でも、レーダ装置10では、曖昧性なく検出可能なドップラ周波数範囲を拡大できる。
【0439】
以上、本開示の一実施例に係る各実施の形態について説明した。
【0440】
本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
【0441】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
【0442】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0443】
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0444】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0445】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0446】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0447】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0448】
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、を具備し、第1のタイミングにおける前記第1の送信信号の変調周波数と、前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングにおける前記第2の送信信号の変調周波数とは同一である。
【0449】
本開示の一実施例において、前記第2の送信信号を用いて、前記多重信号が物体にて反射された反射波信号をダウンミキシングする受信回路、を更に具備する。
【0450】
本開示の一実施例において、前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号はチャープ信号である。
【0451】
本開示の一実施例において、前記第1の送信信号の送信開始タイミングは、前記第2の送信信号の送信開始タイミングよりも早い。
【0452】
本開示の一実施例において、前記第1のタイミング及び前記第1のタイミングと異なる第3のタイミングにて、前記第1の送信信号の変調周波数は、前記第2の送信信号の変調周波数よりも高い。
【0453】
本開示の一実施例において、前記第3のタイミングでの、前記第1の送信信号の変調周波数と前記第2の送信信号の変調周波数との差は、前記第1の送信信号によって検出する距離範囲に基づいて設定される。
【0454】
本開示の一実施例において、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの差は、前記第1の送信信号によって検出する距離範囲に基づいて設定される。
【0455】
本開示の一実施例において、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの差は、測位毎に異なる。
【0456】
本開示の一実施例において、前記チャープ信号の周波数掃引幅は、測位毎に異なる。
【0457】
本開示の一実施例において、前記反射波信号に対するAD変換におけるサンプリングレートは、測位毎に異なる。
【0458】
本開示の一実施例において、前記多重信号に対する符号多重数よりも大きい符号長の複数の符号系列のうちの一部を用いて、前記多重信号が符号多重される。
【0459】
本開示の一実施例において、前記複数の符号系列に含まれる第1の符号系列及び第2の符号系列は、奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素の符号が反転しており、前記第1の符号系列及び前記第2の符号系列のうち一方が前記第1の送信信号の符号多重に用いられ、前記第1の符号系列及び前記第2の符号系列のうち他方が前記第2の送信信号の符号多重に用いられる。
【0460】
本開示の一実施例において、前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号に対して、前記多重信号に対する符号多重に用いられる符号系列の符号長に対応する送信周期毎に、異なる送信遅延が巡回的に設定される。
【0461】
本開示の一実施例において、前記多重信号が物体にて反射された反射波信号に対するドップラ解析範囲の(前記符号長×2)倍の範囲にて、前記反射波信号におけるドップラ周波数領域での折り返しの判定を行う受信回路、を更に具備する。
【0462】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の送信信号及び第2の送信信号を生成する信号生成回路と、前記第1の送信信号と前記第2の送信信号とを符号多重した多重信号を送信する送信回路と、を具備し、前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号に対して、前記多重信号に対する符号多重に用いられる符号系列の符号長に対応する送信周期毎に、異なる送信遅延が巡回的に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0463】
本開示は、広角範囲を検知するレーダ装置として好適である。
【符号の説明】
【0464】
10,10a,10b レーダ装置
100,100a レーダ送信部
101-1 第1のレーダ送信信号生成部
101-2 第2のレーダ送信信号生成部
102-1,102-2 変調信号発生部
103-1,103-2 VCO
104 送信信号生成制御部
105 符号生成部
106 位相回転部
107-1 第1の送信アンテナ
107-2 第2の送信アンテナ
108 遅延器
200,200b レーダ受信部
201 アンテナ系統処理部
202 受信アンテナ
203 受信無線部
204 ミキサ部
205 LPF
206 信号処理部
207 AD変換部
208 ビート周波数解析部
209 出力切替部
210 ドップラ解析部
211 CFAR部
212,212b 折り返し判定部
213,213b 符号多重分離部
214 距離シフト部
215 方向推定部
216 位相補正部
300 測位出力部