(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】投写レンズ系及び画像投写装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20231127BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/16
(21)【出願番号】P 2022142261
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2019560947の分割
【原出願日】2018-12-06
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2017243055
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】今岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大西 英夫
(72)【発明者】
【氏名】池應 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山田 克
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195857(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107553(WO,A1)
【文献】特開2016-156986(JP,A)
【文献】特開2017-102239(JP,A)
【文献】特開2010-091751(JP,A)
【文献】特表2013-531807(JP,A)
【文献】特開2013-007881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の画像を拡大側に投写する投写レンズ系であって、
前記投写レンズ系は、
複数のレンズで構成される拡大光学系と、リレー光学系とを有し、
前記拡大光学系は前記リレー光学系よりも拡大側に位置し、
前記拡大光学系と前記リレー光学系との間に中間結像位置を有し、
前記リレー光学系は、
絞りと、
複数の正レンズと、
複数の負レンズとを備え、
前記複数の正レンズにおいて、前記絞りよりも前記拡大側で前記絞りに最も近い第1正レンズと、前記拡大側で前記第1正レンズの次に前記絞りに近い第2正レンズと、前記絞りよりも前記縮小側で前記絞りに最も近い第3正レンズとが、以下の条件(1)~(3)を満足し、
前記複数の負レンズにおいて、前記絞りよりも前記拡大側で前記絞りに最も近い第1負レンズと、前記絞りよりも前記縮小側で前記絞りに最も近い第2負レンズとが、以下の条件(4)~(6)を満足し、前記第2負レンズは、負メニスカス形状を有して凸面を前記拡大側に向け、
前記第1~第3正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズは、以下の条件(7)及び(8)を満足し、
Tp1>99% ・・・(1)
Tp2>99% ・・・(2)
Tp3>99% ・・・(3)
Tn1>99% ・・・(4)
Tn2>99% ・・・(5)
αn1<100×10
-7[/℃] ・・・(6)
dn/dt<-4.5×10
-6 ・・・(7)
|fp/fw|>1.3 ・・・(8)
ここで、
Tp1:前記第1正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tp2:前記第2正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tp3:前記第3正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tn1:前記第1負レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tn2:前記第2負レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
αn1:前記第1負レンズのレンズ材料の常温での線膨張係数
dn/dt:前記少なくとも1枚の正レンズのレンズ材料の常温でのd線に基づく相対屈折率の温度係数
fp:前記少なくとも1枚の正レンズの焦点距離
fw:全系の焦点距
離
である投写レンズ系。
【請求項2】
前記拡大光学系は、複数の正レンズと、複数の負レンズとを備え、
前記拡大光学系の負レンズは、最軸外の主光線と前記投写レンズ系の光軸が交わらない位置に配置される、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項3】
前記投写レンズ系に含まれる全てのレンズの枚数が少なくとも15枚である、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項4】
前記複数の正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズは、以下の条件(9)を満足し、
νp<40 ・・・(9)
ここで、
νp:前記少なくとも1枚の正レンズのレンズ材料のアッベ数
である、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項5】
前記複数の負レンズのうちの少なくとも1枚の負レンズは、以下の条件(10)を満足し、
νn<40 ・・・(10)
ここで、
νn:前記少なくとも1枚の負レンズのレンズ材料のアッベ数
である、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項6】
前記投写レンズ系に含まれる全ての正レンズのうちの少なくとも4枚の正レンズが、以下の条件(11)を満足し、
dn/dt<-4.5×10
-6 ・・・(11)
ここで、
dn/dt:前記4枚の正レンズのレンズ材料の常温でのd線に基づく相対屈折率の温度係数
である、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項7】
前記拡大光学系は、正のパワーを有し、
前記リレー光学系は、正のパワーを有し、
以下の条件(13)を満足する、
8<|fr/f|<12 ・・・(13)
ここで、
fr:前記絞りよりも前記縮小側の焦点距離
f:全系の焦点距離
である、請求項1記載の投写レンズ系。
【請求項8】
前記拡大光学系において、
最も前記縮小側のレンズは、正メニスカス形状を有して凸面を前記拡大側に向け、
前記最軸外の主光線が前記投写レンズ系の光軸とは交差する位置に正レンズが配置される、
請求項2記載の投写レンズ系。
【請求項9】
請求項1記載の投写レンズ系と、
前記画像を形成する画像形成素子と
を備えた画像投写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縮小側の画像を拡大側に投写する投写レンズ系、及び投写レンズ系を備えた画像投写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像投影装置及び撮像装置において、色収差を良好に補正し、且つ温度変化によるフォーカス位置のずれを抑えるための光学系を開示している。特許文献1の光学系では、アッベ数、異常分散性及び温度変化に対する屈折率変化率等を適切な範囲に設定した少なくとも2つの正レンズが、絞りよりも縮小側に設けられている。これにより、軸上光束の幅を大きくして軸上色収差を良好に補正しながら、温度変化による屈折率の変化に起因するフォーカス位置のずれの抑制を図っている。特許文献1は、画像投影装置において高温になる原因として、光源に用いるランプを挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、画像投写装置の高輝度化における画像の画質を良くすることができる投写レンズ系及び画像投写装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る投写レンズ系は、縮小側の画像を拡大側に投写するレンズ系である。投写レンズ系は、複数のレンズで構成される拡大光学系と、リレー光学系とを有し、拡大光学系はリレー光学系よりも拡大側に位置し、拡大光学系とリレー光学系との間に中間結像位置を有する。リレー光学系は、絞りと、複数の正レンズと、複数の負レンズとを備える。複数の正レンズにおいて、絞りよりも拡大側で絞りに最も近い第1正レンズと、同拡大側で第1正レンズの次に絞りに近い第2正レンズと、絞りよりも縮小側で絞りに最も近い第3正レンズとが、以下の条件(1)~(3)を満足する。上記の複数の負レンズにおいて、絞りよりも拡大側で絞りに最も近い第1負レンズと、絞りよりも縮小側で絞りに最も近い第2負レンズとが、以下の条件(4)~(6)を満足する。第1~第3正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズは、以下の条件(7)及び(8)を満足する。
Tp1>99% ・・・(1)
Tp2>99% ・・・(2)
Tp3>99% ・・・(3)
Tn1>99% ・・・(4)
Tn2>99% ・・・(5)
αn1<100×10-7[/℃] ・・・(6)
dn/dt<-4.5×10-6 ・・・(7)
fp/fw>1.3 ・・・(8)
ここで、
Tp1:第1正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tp2:第2正レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tp3:第3正レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tn1:第1負レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tn2:第2負レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
αn1:第1負レンズのレンズ材料の常温での線膨張係数
dn/dt:少なくとも1枚の正レンズのレンズ材料の常温での相対屈折率の温度係数
fp:少なくとも1枚の正レンズの焦点距離
fw:全系の広角端の焦点距離
である。
【0006】
本開示に係る画像投写装置は、上記の投写レンズ系と、画像形成素子とを備える。画像形成素子は、画像を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る投写レンズ系及び画像投写装置によると、画像投写装置の高輝度化における画像の画質を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る画像投写装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図4】
図4は、実施例1の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例2に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図6】
図6は、実施例2に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図7】
図7は、実施例2の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例3に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図9】
図9は、実施例3に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図10】
図10は、実施例3の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例4に係る投写レンズ系のレンズ配置図である。
【
図12】
図12は、実施例4に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図13】
図13は、実施例4の投写レンズ系における光線の光路を示す光路図である。
【
図14】
図14は、実施例4の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例5に係る投写レンズ系のレンズ配置図である。
【
図16】
図16は、実施例5に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図17】
図17は、実施例5の投写レンズ系における光線の光路を示す光路図である。
【
図18】
図18は、実施例5の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図19】
図19は、実施例6に係る投写レンズ系のレンズ配置図である。
【
図20】
図20は、実施例6に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図21】
図21は、実施例6の投写レンズ系における光線の光路を示す光路図である。
【
図22】
図22は、実施例6の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図23】
図23は、実施例7に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図24】
図24は、実施例7に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図25】
図25は、実施例7の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図26】
図26は、実施例8に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図27】
図27は、実施例8に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図28】
図28は、実施例8の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【
図29】
図29は、実施例9に係る投写レンズ系の各種状態におけるレンズ配置図である。
【
図30】
図30は、実施例9に係る投写レンズ系の縦収差を示す収差図である。
【
図31】
図31は、実施例9の投写レンズ系における諸条件の充足性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、或いは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
以下、本開示に係る投写レンズ系及び画像投写装置の実施形態1を、図面を用いて説明する。
【0012】
1.概要
本開示の実施形態1に係る投写レンズ系を備えた画像投写装置の概要を、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る画像投写装置1を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る画像投写装置1は、例えば光出力が2万ルーメン以上等の高輝度プロジェクタである。画像投写装置1においては、
図1に示すように、画像形成素子11等を用いて種々の画像2を示す画像光3が生成され、画像光3が投写レンズ系PLに入射する。投写レンズ系PLは、入射した画像光3の画像2を拡大するように投写光35を出射する。投写レンズ系PLからの投写光35により、画像2の拡大結果の投写画像20が、外部のスクリーン4等に投写される。
【0014】
以上のような画像投写装置1においては、投写画像20をより明るく投写する高輝度化が求められている。画像投写装置1の高輝度化においては、以下の要因により、投写画像20の画質が低下する事態が想定される。
【0015】
即ち、画像投写装置1においては、高輝度を有する画像光3が投写レンズ系PL中を進行する際に、投写レンズ系PLにおける絞りA近傍などの特定のレンズ素子Lnが、光線の密集等により顕著な温度変化を生じることが想定される。レンズ素子Lnの温度変化は、レンズ素子Lnの形状及び屈折率を変化させることにより、ピント位置のシフト、球面収差の発生、及びバックフォーカスの変動など、投写レンズ系PLの性能に様々な影響を及ぼし得る。
【0016】
さらに、画像光3によるレンズ素子Ln上の熱分布は、一様な場合も局所的な場合も起こり得る。それぞれの場合では、ピント位置のシフト方向が異なる等、熱の影響の仕方が変わると考えられる。以上より、画像投写装置1の高輝度化においては、投写する画像2中の輝度に応じた熱の影響で投写レンズ系PLの性能が不安定になり、投写画像20の画質が低下するという事態が想定される。
【0017】
そこで、本実施形態は、高輝度の画像光3による熱の影響を抑制するように、投写レンズ系PLを構成する。これにより、画像投写装置1の高輝度化において熱の影響を抑制し、投写レンズ系PLの性能を安定化させて、投写画像20の画質を良くすることができる。
【0018】
2.画像投写装置について
以下、
図1を用いて、本実施形態に係る画像投写装置1の構成を説明する。
【0019】
本実施形態に係る画像投写装置1は、
図1に示すように、光源10と、画像形成素子11と、透過光学系12と、投写レンズ系PLとを備える。画像投写装置1は、例えばDLP方式で構成される。画像投写装置1の光出力は、3万ルーメン以上であってもよい。
【0020】
光源10は、例えばレーザ光源である。光源10は、例えば青色LD(半導体レーザ)素子を含み、450nm近傍のピーク波長を有する。光源10は、例えば各種の色合成によって白色光の照明光30を発光する。照明光30は、透過光学系12を介して、一様な照度分布において画像形成素子11に照射される。光源10は、ケーラー照明光学系を含んでもよい。
【0021】
画像形成素子11は、例えばDMD(デジタルミラーデバイス)である。画像形成素子11は、例えば画素毎のミラー素子を含んだ画像形成面を有し、外部からの映像信号などに基づき画像2を画像形成面に形成する。画像形成素子11は、画像形成面において照明光30を空間変調して、画像光3を生成する。画像光3は、例えば画像形成面上の画素毎に指向性を有する。
【0022】
画像投写装置1は、例えばRGBに対応する3チップ等、複数の画像形成素子11を備えてもよい。また、画像形成素子11は、DMDに限らず、例えば液晶素子であってもよい。この場合、画像投写装置1は、3LCD方式またはLCOS方式などで構成されてもよい。
【0023】
透過光学系12は、透光性を有する光学素子等を含み、画像形成素子11と投写レンズ系PLとの間に配置される。透過光学系12は、光源10からの照明光30を画像形成素子11に導光する。また、透過光学系12は、画像形成素子11からの画像光3を投写レンズ系PLに導光する。透過光学系12は、例えば、TIR(内部全反射)プリズム、色分解プリズム、色合成プリズム、光学フィルタ、平行平板ガラス、水晶ローパスフィルタ、及び赤外カットフィルタ等の各種の光学素子を含んでもよい。以下、透過光学系12中の光学素子を「バックガラス」という場合がある。
【0024】
投写レンズ系PLは、例えばモジュール化されて画像投写装置1に搭載される。以下、投写レンズ系PLにおいて画像投写装置1の外部に向いた側を「拡大側」といい、拡大側とは反対側を「縮小側」という。透過光学系12の各種バックガラスは、投写レンズ系PLの縮小側に配置される。
【0025】
投写レンズ系PLは、複数のレンズ素子Lnと、絞りAとを備える。レンズ素子Lnの枚数は、例えば15枚以上である。これにより、投写レンズ系PLにおける諸収差を良好に補正することができる。絞りAは、例えば開口絞りである。投写レンズ系PLにおいて、絞りAの開口度合いは、例えば、開放状態などに予め固定されている。投写レンズ系PLは、特にモジュール化されずに画像投写装置1に組み込まれてもよい。以下、本実施形態に係る投写レンズ系PLの詳細について説明する。
【0026】
3.投写レンズ系について
実施形態1では、投写レンズ系PLが、具体的に実施される一例として、負先行型のズームレンズ系を構成する実施例1~3を説明する。負先行型のズームレンズ系は、変倍時に移動する複数のレンズ群を含み、最も拡大側のレンズ群が負のパワーを有するレンズ系である。
【0027】
3-1.実施例1
図2~
図3を用いて、実施例1の投写レンズ系PL1について説明する。
【0028】
図2は、実施例1に係る投写レンズ系PL1の各種状態におけるレンズ配置図である。以下の各レンズ配置図は、投写レンズ系PL1等の全系で4000mmの合焦状態において、各種レンズの配置を示す。図中の左側は、全系の拡大側或いは物体側である。図中の右側は、全系の縮小側或いは像側である。また、各図において最も右側すなわち縮小側に、像面Sの位置を示している。像面Sは、画像形成素子11の画像形成面に対応する。
【0029】
図2(a)は、実施例1の投写レンズ系PL1の広角端におけるレンズ配置図を示す。
図2(b)は、実施例1の投写レンズ系PL1の中間位置におけるレンズ配置図を示す。
図2(c)は、実施例1の投写レンズ系PL1の望遠端におけるレンズ配置図を示す。広角端は、全系が最短の焦点距離fwを有する最短焦点距離状態である。中間位置は、広角端と望遠端との間の中間焦点距離状態である。望遠端は、全系が最長の焦点距離ftを有する最長焦点距離状態である。広角端の焦点距離fwと望遠端の焦点距離ftとに基づき、中間位置の焦点距離fm=√(fw×ft)が規定される。
【0030】
図2(a)と
図2(b)との間に図示した折れ線の矢印は、図中の上から順に、広角端、中間位置及び望遠端の各状態におけるレンズ群の位置を結んで得られる直線である。広角端と中間位置との間、中間位置と望遠端との間は、単純に直線で接続されているだけであり、実際の各レンズ群の動きとは異なる。また、各々のレンズ群の符号に付した記号(+),(-)は、各レンズ群のパワーの正負を示す。
【0031】
実施例1の投写レンズ系PL1は、3つのレンズ群G1~G3を構成する18枚のレンズ素子L1~L18を備える。
図2(a)に示すように、投写レンズ系PL1の拡大側から縮小側へ順番に、第1、第2及び第3レンズ群G1,G2,G3が並んでいる。投写レンズ系PL1は、変倍時に第1~第3レンズ群G1~G3の各々が、投写レンズ系PL1の光軸に沿って移動することにより、ズームレンズ系として機能する。
【0032】
また、投写レンズ系PL1においては、拡大側から縮小側へ順番に、第1~第18レンズ素子L1~L18が並んでいる。第1~第18レンズ素子L1~L18は、それぞれ正レンズ又は負レンズを構成する。正レンズは、両凸形状または正メニスカス形状を有することによって、正のパワーを有する。負レンズは、両凹形状または負メニスカス形状を有することによって、負のパワーを有する。
【0033】
第1レンズ群G1は、第1~第7レンズ素子L1~L7を含み、負のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第2レンズ素子L2は、両凸形状を有する。第3レンズ素子L3は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第4レンズ素子L4は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第5レンズ素子L5は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第6レンズ素子L6は、両凹形状を有する。第7レンズ素子L7は、両凸形状を有する。
【0034】
第2レンズ群G2は、第8~第10レンズ素子L8~L10を含み、正のパワーを有する。第8レンズ素子L8は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第9レンズ素子L9は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けて配置される。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。
【0035】
第3レンズ群G3は、第11~18レンズ素子L11~L18を含み、正のパワーを有する。第11レンズ素子L11の拡大側には、絞りAが設けられている。第11レンズ素子L11は、両凹形状を有する。第12レンズ素子L12は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けて配置される。第14レンズ素子L14は、両凸形状を有する。第15レンズ素子L15は、両凹形状を有する。第16レンズ素子L16は、両凸形状を有する。第17レンズ素子L17は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けて配置される。第18レンズ素子L18は、両凸形状を有する。
【0036】
図2(a)~(c)では、透過光学系12の一例として、投写レンズ系PL1において最も縮小側の第18レンズ素子L18と像面Sとの間に並んだ3つのバックガラスL19,L20,L21を図示している。バックガラスL19~L21は、例えば各種プリズム、フィルタ及びカバーガラス等である。各図では、説明の便宜上、1つの画像形成素子11に応じた1つの像面Sに対するバックガラスL19~L21を例示している。投写レンズ系PL1は、複数の画像形成素子11を用いる際の各種の透過光学系12に適用可能である。
【0037】
投写レンズ系PL1は、像面Sからの光がバックガラスL19~L21を介して入射する縮小側において、略テレセントリック系を構成する。これにより、透過光学系12におけるプリズムのコートによる色ズレ等を抑制することができる。また、画像形成素子11の像面Sからの光を効率良く投写レンズ系PL1に取り込むことができる。
【0038】
図3は、実施例1に係る投写レンズ系PL1の種々の縦収差を示す収差図である。以下の各収差図は、4000mmの合焦状態において各種の縦収差を例示する。
【0039】
図3(a)は、実施例1の投写レンズ系PL1の広角端における諸収差を示す。
図3(b)は、実施例1の投写レンズ系PL1の中間位置における諸収差を示す。
図3(c)は、実施例1の投写レンズ系PL1の望遠端における諸収差を示す。
図3(a),(b),(c)の各々は、それぞれ図中の左側から順に、球面収差を横軸「SA(mm)」に示す球面収差図と、非点収差を横軸「AST(mm)」に示す非点収差図と、歪曲収差を横軸「DIS(%)」に示す歪曲収差図とを含む。
【0040】
各々の球面収差図において、縦軸「F」はFナンバーを表す。また、図中「d-line」と記した実線は、d線の特性を示す。「F-line」と記した破線は、F線の特性の特性を示す。「C-line」と記した破線は、C線の特性の特性を示す。各々の非点収差図及び歪曲収差図において、縦軸「H」は像高を表す。また、図中「s」と記した実線は、サジタル平面の特性を示す。「m」と記した破線は、メリディオナル平面の特性を示す。
【0041】
図3(a),(b),(c)に例示する各種状態の諸収差は、実施例1の投写レンズ系PL1を具体的に実施した数値実施例1に基づいている。投写レンズ系PL1の数値実施例1については後述する。
【0042】
3-2.高輝度化における熱対策について
以上の実施例1の投写レンズ系PL1を用いて、本実施形態に係る画像投写装置1の高輝度化における投写レンズ系PL1の熱対策について、
図4を参照して説明する。
図4は、実施例1の投写レンズ系PL1における諸条件の充足性を示す図表である。
【0043】
図4に示す図表は、実施例1の投写レンズ系PL1中の全レンズ素子L1~L18の何れが、下記の条件(1)~(11)を満足するのかを示している。レンズ毎の項目における記号「○」は、対応する条件を満足することを示し、空欄は、対応する条件を満足しないことを示す。また、記号「/」は、レンズのパワー等の観点から、対応する条件の判断対象のレンズではないことを示す。
【0044】
また、
図4においては、条件(1)~(11)に関する各種パラメータについても表記している。各種パラメータは、後述するα、T(460nm)、vd及びdn/dtを含む。また、レンズのパワーについて、正レンズには「P」と表記し、負レンズには「N」と表記している。また、各レンズ素子L1~L18のレンズ材料も例示している。
【0045】
本実施形態では、画像投写装置1の画像光3による熱の影響を受け易く、投写レンズ系PL1の性能に影響し易いと考えられる特定のレンズが、以下の条件(1)~(6)を満足するように構成される。特定のレンズは、投写レンズ系PL1において絞りA近傍にあり、第1、第2及び第3正レンズと、第1及び第2負レンズとを含む。
【0046】
第1正レンズは、投写レンズ系PL1における全ての正レンズの中で、絞りAよりも拡大側であって絞りAに最も近い正レンズである。実施例1において、絞りAは、
図2に示すように、第10レンズ素子L10と第11レンズ素子L11との間に位置する。このことから、実施例1の第10レンズ素子L10は、投写レンズ系PL1における第1正レンズであり、以下の条件(1)を満足する。
【0047】
条件(1)は、次式のように表される。
Tp1>99% ・・・(1)
ここで、Tp1は、第1正レンズのレンズ材料の厚さを10mmとした場合に、波長460nmの光が当該レンズ材料を透過する透過率において、表面反射損失を除いた内部透過率である。
図4では、各レンズ素子L1~L18レンズ材料の厚さ10mmにおける波長460nmの光の内部透過率T(460nm)を示している。一般的に、レンズ材料は短波長の光ほどエネルギーを吸収し易いこと、及び画像投写装置には青色光に特に強いピーク強度を有する光源が良く用いられること等から、透過率の基準を上記の波長に設定している。
【0048】
条件(1)によると、絞りA近傍で光線が密集し得る第1正レンズの内部透過率Tp1を高く確保して、第1正レンズが光線の通過時に吸収するエネルギーを低減することができる。第1正レンズの内部透過率Tp1が条件(1)の下限値99%を下回ると、第1正レンズに吸収されるエネルギーが大きくなり、熱の影響が過度に生じてしまう。
【0049】
第2正レンズは、投写レンズ系PL1における全ての正レンズの中で、絞りAよりも拡大側であって、第1正レンズの次に絞りAに近い正レンズである。実施例1では、第10レンズ素子L10の次に拡大側で絞りAに近い正レンズは、
図2に示すように、第8レンズ素子L8である。よって、実施例1の第8レンズ素子L8は、
図4に示すように投写レンズ系PL1における第2正レンズであり、以下の条件(2)を満足する。
【0050】
条件(2)は、次式のように表される。
Tp2>99% ・・・(2)
ここで、Tp2は、第1正レンズの内部透過率と同様に、第2正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率である。第2正レンズの内部透過率Tp2が条件(2)の下限値を下回ると、第2正レンズに吸収されるエネルギーが大きくなり、熱の影響が過度になる。
【0051】
第3正レンズは、投写レンズ系PL1における全ての正レンズの中で、絞りAよりも縮小側であって絞りAに最も近い正レンズである。実施例1では、絞りAの縮小側に隣接する第11レンズ素子L11が負レンズであることから、縮小側で絞りAに最も近い正レンズは、第12レンズ素子L12である。よって、実施例1の第12レンズ素子L12は、
図4に示すように投写レンズ系PL1における第3正レンズであり、以下の条件(3)を満足する。
【0052】
条件(3)は、次式のように表される。
Tp3>99% ・・・(3)
ここで、Tp3は、第1正レンズの内部透過率と同様に、第3正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率である。第3正レンズの内部透過率Tp3が条件(3)の下限値を下回ると、第3正レンズに吸収されるエネルギーが大きくなり、熱の影響が過度になる。
【0053】
第1負レンズは、投写レンズ系PL1における全ての負レンズの中で、絞りAよりも拡大側であって絞りAに最も近い負レンズである。実施例1では、絞りAの拡大側に隣接する第10レンズ素子L10が正レンズであることから、拡大側で絞りAに最も近い負レンズは、第9レンズ素子L9である。よって、実施例1の第9レンズ素子L9は、
図4に示すように投写レンズ系PL1における第1負レンズであり、以下の条件(4)を満足する。
【0054】
条件(4)は、次式のように表される。
Tn1>99% ・・・(4)
ここで、Tn1は、第1正レンズの内部透過率と同様に、第1負レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率である。以下の条件(4)を満足する。第1負レンズの内部透過率Tn1が条件(4)の下限値を下回ると、第1負レンズに吸収されるエネルギーが大きくなり、熱の影響が過度になる。
【0055】
第2負レンズは、投写レンズ系PL1における全ての負レンズの中で、絞りAよりも拡縮小側であって絞りAに最も近い負レンズである。
図4に示すように、実施例1では第11レンズ素子L11が、投写レンズ系PL1における第2負レンズであり、以下の条件(5)を満足する。
【0056】
条件(5)は、次式のように表される。
Tn2>99% ・・・(5)
ここで、Tn2は、第1正レンズの内部透過率と同様に、第2負レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率である。第2負レンズの内部透過率Tn2が条件(5)の下限値を下回ると、第2負レンズに吸収されるエネルギーが大きくなり、熱の影響が過度になる。
【0057】
条件(2)~(5)によると、それぞれ第2及び第3正レンズ並びに第1及び第2負レンズにおいて、条件(1)と同様に、光線から吸収されるエネルギーを低減して、投写レンズPL1における熱の影響を抑制することができる。
【0058】
条件(6)は、次式のように表される。
αn1<100×10
-7[/℃] ・・・(6)
ここで、αn1は、第1負レンズのレンズ材料の、常温における線膨張係数である。常温は、例えば20℃~30℃である。
図4では、各レンズ素子L1~L18のレンズ材料の常温での線膨張係数αを単位[10
-7/℃]で示している。
【0059】
条件(6)によると、温度変化によるピント位置のシフトが過敏に生じることが想定される負レンズにおいて、特に絞りAの近傍で温度上昇し易い第1負レンズの形状変化を抑制し、投写レンズ系PL1の性能を安定化することができる。第1負レンズの線膨張係数αが条件(6)の上限値を上回ると、負レンズの温度上昇によって形状の局所的な変化を生じ易くなり、熱の影響が過度になる。
【0060】
さらに、本実施形態においては、第1~第3正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズが、以下の条件(7)及び(8)を満足するように構成される。実施例1の投写レンズ系PL1においては、
図4に示すように、第8レンズ素子L8(第2正レンズ)と第10レンズ素子L10(第1正レンズ)との2枚の正レンズが、条件(7)及び(8)を満足する。
【0061】
条件(7)は、次式のように表される。
dn/dt<-4.5×10
-6 ・・・(7)
ここで、dn/dtは、正レンズのレンズ材料の常温での相対屈折率の温度係数である。
図4では、相対屈折率の温度係数dn/dtを単位[10
-6]で示している。
【0062】
屈折率の温度係数が負の正レンズによると、局所的な温度変化によるピント位置のシフト等において、形状の変化による影響と屈折率の変化による影響とが相殺し得る。条件(7)によると、投写する画像2の変化に対して、上記のような相殺によって熱の影響を低減し、投写画像20の画質の変動を抑制できる。正レンズの相対屈折率の温度係数dn/dtが、条件(7)の上限値を上回ると、正レンズの局所的な温度変化における形状の変化の影響を、屈折率の変化の影響で打ち消すことが困難になる。
【0063】
条件(8)は、次式のように表される。
fp/fw>1.3 ・・・(8)
ここで、fpは、1つの負レンズの焦点距離である。fwは、上述のとおり全系の広角端の焦点距離である。
【0064】
条件(8)によると、正レンズの焦点距離fpを長く確保して、正レンズのパワーを弱めておくことにより、熱の影響を緩和することができる。正レンズが条件(8)の下限値を下回ると、投写する画像2に応じてピント位置等が過敏に変動し得る。条件(7),(8)により、投写レンズ系PL1の性能に影響し易い第1~第3の正レンズにおける熱の影響を抑制して、投写レンズ系PL1の性能を安定化することができる。
【0065】
また、本実施形態では、少なくとも1枚の正レンズが、条件(9)を満足してもよい。実施例1の投写レンズ系PL1においては、
図4に示すように、第2レンズ素子L2と第3レンズ素子L3と第12レンズ素子L12と第13レンズ素子L13との4枚が、条件(9)を満足する。
【0066】
条件(9)は、次式のように表される。
νp<40 ・・・(9)
ここで、νpは、正レンズのレンズ材料のアッベ数である。当該アッベ数νpとしては、例えば
図4に示すように、d線に基づくアッベ数vdを採用可能である。
【0067】
一般的に、アッベ数が高いレンズ材料ほど透過率が高い傾向にあり、熱的に有利である。しかし、条件(9)の上限値を上回る正レンズのみでは、投写レンズ系PL1の色収差を良好に補正することが困難になる。条件(9)を満足する正レンズを投写レンズ系PL1に含めることにより、高輝度化による熱耐性を確保しつつ、色収差補正を良好に行うことができる。特に、投写レンズ系PL1の高ズーム化又は広角化に対して良好に色収差を補正できる。少なくとも1枚の正レンズのアッベ数νpが、36よりも小さいことが好ましい。
【0068】
また、本実施形態では、少なくとも1枚の負レンズが、以下の条件(10)を満足してもよい。実施例1の投写レンズ系PL1においては、
図4に示すように、第1レンズ素子L1と第17レンズ素子L17との2枚が、条件(10)を満足する。
【0069】
条件(10)は、次式のように表される。
νn<40 ・・・(10)
ここで、νnは、正レンズのアッベ数νpと同様に、負レンズのレンズ材料のアッベ数である。
【0070】
負レンズの全てが条件(10)の上限値を上回ると、投写レンズ系PL1において色収差補正を良好に行い難くなる。条件(10)によると、高輝度化による熱耐性を確保しつつ、特に高ズーム化又は広角化に対して良好に色収差補正を行える。少なくとも1枚の負レンズのアッベ数νnが、36よりも小さいことが好ましい。
【0071】
また、本実施形態では、少なくとも4枚の正レンズが、以下の条件(11)を満足してもよい。実施例1の投写レンズ系PL1においては、
図4に示すように、第8レンズL8と第10レンズ素子L10と第14レンズ素子L14と第16レンズ素子L16と第18レンズ素子L18との5枚が、条件(11)を満足する。
【0072】
条件(11)は、次式のように表される。
dn/dt<-4.5×10-6 ・・・(11)
ここで、dn/dtは、条件(7)と同様に、正レンズのレンズ材料の常温での相対屈折率の温度係数である。
【0073】
条件(11)によると、局所的な温度変化に対して形状の変化による影響と屈折率の変化による影響とが相殺し、熱の影響を受け難い正レンズが4枚以上、投写レンズ系PL1に組み込まれる。これにより、投写レンズ系PL1の性能の安定性を向上できると共に、色収差を良好に補正することもできる。
【0074】
3-3.実施例2
以上のような高輝度化の対策は、実施例1の投写レンズ系PL1に限らずに実施可能である。
図5~
図7を用いて、実施例2の投写レンズ系PL2について説明する。
【0075】
図5は、実施例2に係る投写レンズ系PL2の各種状態におけるレンズ配置図である。
図5(a),(b),(c)は、
図2(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL2の広角端、中間位置および望遠端におけるレンズ配置図を示す。
【0076】
実施例2の投写レンズ系PL2は、16枚のレンズ素子L1~L16を備える。投写レンズ系PL2における第1~第16レンズ素子L1~L16は、実施例1と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。実施例2の投写レンズ系PL2は、実施例1と同様に、3つのレンズ群G1~G3を含んでズームレンズ系を構成する。
図5(a)~(c)では、透過光学系12の一例のバックガラスL17~L19を図示している。
【0077】
実施例2の投写レンズ系PL2において、第1レンズ群G1は、第1~第6レンズ素子L1~L6を含み、負のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、両凸形状を有する。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第4レンズ素子L4は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第5レンズ素子L5は、両凹形状を有する。第6レンズ素子L6は、両凸形状を有する。
【0078】
第2レンズ群G2は、第7及び第8レンズ素子L7,L8を含み、正のパワーを有する。第7レンズ素子L7は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第8レンズ素子L8は、両凸形状を有する。第7レンズ素子L7と第8レンズ素子L8とは、接合されている。
【0079】
第3レンズ群G3は、第9~第16レンズ素子L9~L16を含み、正のパワーを有する。第9レンズ素子L9の拡大側には、絞りAが設けられている。第9レンズ素子L9は、両凹形状を有する。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、両凸形状を有する。第12レンズ素子L12は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13は、両凹形状を有する。第14レンズ素子L14は、両凸形状を有する。第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第16レンズ素子L16は、両凸形状を有する。
【0080】
図6は、実施例2に係る投写レンズ系PL2の縦収差を示す収差図である。
図6(a),(b),(c)は、
図3(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL2の広角端、広角端、中間位置および望遠端における諸収差を示す。
図6(a)~(c)に例示する諸収差は、後述する数値実施例2に基づいている。
【0081】
図7に、実施例2の投写レンズ系PL2における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図7の図表は、実施例1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例2の投写レンズ系PL2の各レンズ素子L1~L16との対応関係を示している。実施例2の投写レンズ系PL2によっても、画像投写装置1の高輝度化において投写画像20の画質を良くすることができる。
【0082】
3-4.実施例3
図8~
図10を用いて、実施例3の投写レンズ系PL3について説明する。
【0083】
図8は、実施例3に係る投写レンズ系PL3の各種状態におけるレンズ配置図である。
図8(a),(b),(c)は、
図2(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL3の広角端、中間位置および望遠端におけるレンズ配置図を示す。
【0084】
実施例3の投写レンズ系PL3は、17枚のレンズ素子L1~L17を備える。投写レンズ系PL3における第1~第17レンズ素子L1~L17は、実施例1と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。実施例3の投写レンズ系PL3は、実施例1と同様に、3つのレンズ群G1~G3を含んでズームレンズ系を構成する。
図8(a)~(c)では、透過光学系12の一例のバックガラスL18~L20を図示している。
【0085】
実施例3の投写レンズ系PL3において、第1レンズ群G1は、第1~第6レンズ素子L1~L6を含み、負のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、両凸形状を有する。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第4レンズ素子L4は、両凹形状を有する。第5レンズ素子L5は、両凹形状を有する。第6レンズ素子L6は、両凸形状を有する。
【0086】
第2レンズ群G2は、第7~第9レンズ素子L7~L9を含み、正のパワーを有する。第7レンズ素子L7は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第8レンズ素子L8は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第9レンズ素子L9は、両凸形状を有する。
【0087】
第3レンズ群G3は、第10~第17レンズ素子L10~L17を含み、正のパワーを有する。第10レンズ素子L10の拡大側には、絞りAが設けられている。第10レンズ素子L10は、両凹形状を有する。第11レンズ素子L11は、両凸形状を有する。第12レンズ素子L12は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13は、両凸形状を有する。第14レンズ素子L14は、両凹形状を有する。第15レンズ素子L15は、両凸形状を有する。第16レンズ素子L16は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第17レンズ素子L17は、両凸形状を有する。
【0088】
図9は、実施例3に係る投写レンズ系PL3の縦収差を示す収差図である。
図9(a),(b),(c)は、
図3(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL3の広角端、広角端、中間位置および望遠端における諸収差を示す。
図9(a)~(c)に例示する諸収差は、後述する数値実施例3に基づいている。
【0089】
図10に、実施例3の投写レンズ系PL3における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図10の図表は、実施例1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例3の投写レンズ系PL3の各レンズ素子L1~L17との対応関係を示している。実施例3の投写レンズ系PL3によっても、画像投写装置1の高輝度化において投写画像20の画質を良くすることができる。
【0090】
3-5.実施例1~3について
以上の実施例1~3の投写レンズ系PL1~PL3は、画像投写装置1において縮小側の画像2を、投写画像20として拡大側に投写できる。投写レンズ系PL1~PL3は、絞りAを備え、複数のレンズ群G1~G3を含んだズームレンズ系を構成する。複数のレンズ群G1~G3において最も拡大側のレンズ群G1は、負のパワーを有する。負先行型の投写レンズ系PL1~PL3は、本実施形態において、以下の条件(12)を満足する。
【0091】
条件(12)は、次式のように表される。
2<fr/fw<4.5 ・・・(12)
ここで、frは、絞りAよりも縮小側の広角端の焦点距離である。条件(12)は、全系の広角端の焦点距離fwに対する上記の焦点距離frの比率fr/fwを規定している。
【0092】
具体的に、実施例1の投写レンズ系PL1では、fr/fw=3.32である。実施例2の投写レンズ系PL2では、fr/fw=3.73である。実施例3の投写レンズ系PL3では、fr/fw=2.74である。
【0093】
条件(12)によると、負先行型のズームレンズ系を構成する投写レンズ系PL1~PL3の性能を良好に得ることができる。条件(12)の上限値を上回ると、バックフォーカスを長く保ちながら縮小側のテレセントリック性を保つことが困難になる。条件(12)の下限値を下回ると、収差の補正が困難となり、拡大側に投写される投写画像20の画質が劣化し得る。比率fr/fwは、2.5よりも大きくて且つ4.0未満であることが好ましい。
【0094】
(実施形態2)
以下、図面を用いて実施形態2を説明する。実施形態1では、投写レンズ系PLがズームレンズ系を構成する例を説明したが、投写レンズ系PLは、ズームレンズ系でなくてもよい。実施形態2では、内部で中間的に結像する構成の投写レンズ系PLを説明する。
【0095】
以下、実施形態1に係る画像投写装置1、及び投写レンズ系PLと同様の構成および動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係る投写レンズ系PLの実施例として実施例4~6を説明する。
【0096】
1.実施例4
図11~
図14を用いて、本開示の実施例4の投写レンズ系PL4について説明する。
【0097】
図11は、実施例4に係る投写レンズ系PL4のレンズ配置図である。
図12は、実施例4に係る投写レンズ系PL4の縦収差を示す収差図である。本実施形態の各収差図は、実施形態1と同様に図中の左側から順に、球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図を含む。本実施形態の非点収差図及び歪曲収差図において、縦軸「w」は半画角を表す。
【0098】
図11,12では、実施例4の投写レンズ系PL4による投写距離が4000mmの合焦状態において、各種レンズの配置、及び諸収差を示している。実施例4の投写レンズ系PL4に対応する数値実施例4については後述する。
【0099】
実施例4の投写レンズ系PL4は、
図11に示すように、22枚のレンズ素子L1~L22を備える。本実施形態において、投写レンズ系PL4における第1~第22レンズ素子L1~L22は、実施形態1と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。また、
図11では、透過光学系12の一例のバックガラスL23~L25を図示している。
【0100】
本実施形態において、投写レンズ系PL4における第1~第22レンズ素子L1~L22は、拡大光学系51と、リレー光学系52とを構成する。拡大光学系51は、リレー光学系52よりも拡大側に位置する。
【0101】
拡大光学系51は、第1~第11レンズ素子L1~L11を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0102】
第4レンズ素子L4は、両凸形状を有する。第5レンズ素子L5は、両凸形状を有する。第6レンズ素子L6は、両凹形状を有する。第5レンズ素子L5と第6レンズ素子L6とは、接合されている。第7レンズ素子L7は、両凸形状を有する。
【0103】
第8レンズ素子L8は、両凸形状を有する。第9レンズ素子L9は、両凹形状を有する。第8レンズ素子L8と第9レンズ素子L9とは接合されている。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0104】
リレー光学系52は、第12~第22レンズ素子L12~L22を含み、正のパワーを有する。第12レンズ素子L12は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第13レンズ素子L13は、両凹形状を有する。第12レンズ素子L12と第13レンズ素子L13とは接合されている。第14レンズ素子L14は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第16レンズ素子L16は、両凸形状を有する。第16レンズ素子L16と第17レンズ素子L17との間には、絞りAが配置される。
【0105】
第17レンズ素子L17は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第18レンズ素子L18は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19は、両凹形状を有する。第20レンズ素子L20は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19と第20レンズ素子L20とは接合されている。第21レンズ素子L21は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第22レンズ素子L22は、両凸形状を有する。
【0106】
図13は、実施例4の投写レンズ系PL4における光線の光路を示す光路図である。本実施形態において、投写レンズ系PL4は、拡大光学系51とリレー光学系52との間に中間結像位置MIを有する。投写レンズ系PL4は、縮小側のリレー光学系52を介して像面Sに位置する縮小共役点と共役に、中間結像位置MIにおいて結像する。また、投写レンズ系PL4の中間結像位置MIにおける結像は、拡大側の拡大光学系51を介してスクリーン4等の投写位置に位置する拡大共役点と共役に行われる。
【0107】
本実施形態の投写光学系PL4によると、
図13に示すように、最軸外の主光線31と軸上光線32との間の角度が拡大側において直角近傍にまで到り、投写画像20の画角を広く確保することができる。
【0108】
図14に、実施例4の投写レンズ系PL4における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図14の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例4の投写レンズ系PL4の各レンズ素子L1~L22との対応関係を示している。実施例4の投写レンズ系PL4によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0109】
2.実施例5
図15~
図18を用いて、実施例5の投写レンズ系PL5について説明する。
【0110】
図15は、実施例5に係る投写レンズ系PL5のレンズ配置図である。
図16は、投写レンズ系PL5の縦収差を示す収差図である。
図15,16では、実施例5の投写レンズ系PL5による投写距離が4000mmの合焦状態において、各種レンズの配置、及び諸収差を示している。実施例5の投写レンズ系PL5に対応する数値実施例5については後述する。
【0111】
図17は、実施例5の投写レンズ系PL5における光線の光路を示す。実施例5の投写レンズ系PL5は、実施例4と同様に、中間結像位置MIよりも拡大側の拡大光学系51と、中間結像位置MIよりも縮小側のリレー光学系52とを備える。
【0112】
実施例5において、拡大光学系51は、第1~第11レンズ素子L1~L11を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第1レンズ素子L1と第2レンズ素子L2とは、接合されている。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0113】
第4レンズ素子L4は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第5レンズ素子L5は、両凸形状を有する。第6レンズ素子L6は、両凹形状を有する。第5レンズ素子L5と第6レンズ素子L6とは、接合されている。第7レンズ素子L7は、両凸形状を有する。
【0114】
第8レンズ素子L8は、両凸形状を有する。第9レンズ素子L9は、両凹形状を有する。第8レンズ素子L8と第9レンズ素子L9とは、接合されている。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0115】
リレー光学系52は、第12~第22レンズ素子L12~L22を含み、正のパワーを有する。第12レンズ素子L12は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第13レンズ素子L13は、両凹形状を有する。第12レンズ素子L12と第13レンズ素子L13とは、接合されている。第14レンズ素子L14は、両凸形状を有する。第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第16レンズ素子L16は、両凸形状を有する。第16レンズ素子L16と第17レンズ素子L17との間には、絞りAが配置される。
【0116】
第17レンズ素子L17は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第18レンズ素子L18は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19は、両凹形状を有する。第20レンズ素子L20は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19と第20レンズ素子L20とは、接合されている。第21レンズ素子L21は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第22レンズ素子L22は、両凸形状を有する。
【0117】
図18に、実施例5の投写レンズ系PL5における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図18の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例5の投写レンズ系PL5の各レンズ素子L1~L22との対応関係を示している。実施例5の投写レンズ系PL5によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0118】
3.実施例6
図19~
図22を用いて、実施例6の投写レンズ系PL6について説明する。
【0119】
図19は、実施例6に係る投写レンズ系PL6のレンズ配置図である。
図20は、投写レンズ系PL6の縦収差を示す収差図である。
図19,20では、実施例6の投写レンズ系PL6による投写距離が4000mmの合焦状態において、各種レンズの配置、及び諸収差を示している。実施例6の投写レンズ系PL6に対応する数値実施例6については後述する。
【0120】
図21は、実施例6の投写レンズ系PL6における光線の光路を示す。実施例6の投写レンズ系PL6は、実施例4と同様に、中間結像位置MIよりも拡大側の拡大光学系51と、中間結像位置MIよりも縮小側のリレー光学系52とを備える。
【0121】
実施例6において、拡大光学系51は、第1~第11レンズ素子L1~L11を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0122】
第4レンズ素子L4は、両凸形状を有する。第5レンズ素子L5は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第6レンズ素子L6は、両凹形状を有する。第5レンズ素子L5と第6レンズ素子L6とは、接合されている。第7レンズ素子L7は、両凸形状を有する。
【0123】
第8レンズ素子L8は、両凸形状を有する。第9レンズ素子L9は、両凹形状を有する。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0124】
リレー光学系52は、第12~第22レンズ素子L12~L22を含み、正のパワーを有する。第12レンズ素子L12は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第13レンズ素子L13は、両凹形状を有する。第12レンズ素子L12と第13レンズ素子L13とは、接合されている。第14レンズ素子L14は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第16レンズ素子L16は、両凸形状を有する。第16レンズ素子L16と第17レンズ素子L17との間には、絞りAが配置される。
【0125】
第17レンズ素子L17は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第18レンズ素子L18は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19は、両凹形状を有する。第20レンズ素子L20は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19と第20レンズ素子L20と第21レンズ素子L21とは、接合されている。第21レンズ素子L21は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第22レンズ素子L22は、両凸形状を有する。
【0126】
図22に、実施例6の投写レンズ系PL6における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図22の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例6の投写レンズ系PL6の各レンズ素子L1~L22との対応関係を示している。実施例6の投写レンズ系PL6によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0127】
4.実施例4~6について
以上の実施例4~6の投写レンズ系PL4~PL6は、内部において結像する中間結像位置MIを有するように、拡大光学系51及びリレー光学系52を備える。本実施形態において、投写レンズ系PL4~PL6は、以下の条件(13)を満足する。
【0128】
条件(13)は、次式のように表される。
8<|fr/f|<12 ・・・(13)
ここで、frは、絞りAよりも縮小側の焦点距離である。fは、全系の焦点距離である。
【0129】
具体的に、実施例4の投写レンズ系PL4では、fr/f=10.09である。実施例5の投写レンズ系PL5では、fr/f=9.17である。実施例6の投写レンズ系PL6では、fr/f=10.25である。
【0130】
条件(13)によると、中間結像位置MIを有する投写レンズ系PL4~PL6の性能を良好に得ることができる。条件(13)の上限値を上回ると、バックフォーカスを長く保ちながら縮小側のテレセントリック性を保つことが困難になる。条件(13)の下限値を下回ると、収差の補正が困難となり、投写画像20の画質が劣化し得る。比率fr/fは、8.5よりも大きくて且つ11未満であることが好ましい。
【0131】
(実施形態3)
以下、図面を用いて実施形態3を説明する。実施形態1では、投写レンズ系PLが負先行型の例を説明したが、投写レンズ系PLは正先行型であってもよい。正先行型では、ズームレンズ系における最も拡大側のレンズ群が正のパワーを有する。実施形態3では、正先行型のズームレンズ系を構成する投写レンズ系PLを説明する。
【0132】
以下、実施形態1に係る画像投写装置1、及び投写レンズ系PLと同様の構成および動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係る投写レンズ系PLの実施例として実施例7~9を説明する。
【0133】
1.実施例7
図23~
図25を用いて、本開示の実施例7の投写レンズ系PL7について説明する。
【0134】
図23は、実施例7に係る投写レンズ系PL7の各種状態におけるレンズ配置図である。
図23(a),(b),(c)は、
図2(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL7の広角端、中間位置および望遠端におけるレンズ配置図を示す。
【0135】
実施例7の投写レンズ系PL7は、5つのレンズ群G1~G5を構成する16枚のレンズ素子L1~L16を備える。
図23(a)に示すように、投写レンズ系PL7の拡大側から縮小側へ順番に、第1~第5レンズ群G1~G5が並んでいる。本実施形態において、投写レンズ系PL7は、実施形態1と同様に変倍時に各レンズ群G1~G5が光軸に沿って移動することにより、ズームレンズ系として機能する。
【0136】
投写レンズ系PL7における第1~第16レンズ素子L1~L16は、実施形態1と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。
図23(a)~(c)では、透過光学系12の一例のバックガラスL17~L19を図示している。
【0137】
実施例7の投写レンズ系PL7において、第1レンズ群G1は、第1及び第2レンズ素子L1,L2を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、両凸形状を有する。
【0138】
第2レンズ群G2は、第3~第5レンズ素子L3~L5を含み、負のパワーを有する。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第4レンズ素子L4は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第5レンズ素子L5は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第4レンズ素子L4と第5レンズ素子L5とは、接合されている。
【0139】
第3レンズ群G3は、第6レンズ素子L6で構成され、負のパワーを有する。第6レンズ素子L6は、両凹形状を有する。
【0140】
第4レンズ群G4は、第7~第14レンズ素子L7~L14を含み、正のパワーを有する。第7レンズ素子L7の拡大側には、絞りAが配置される。第7レンズ素子L7は、両凸形状を有する。第8レンズ素子L8は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第9レンズ素子L9は、両凸形状を有する。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、両凹形状を有する。第12レンズ素子L12は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第14レンズ素子L14は、両凸形状を有する。
【0141】
第5レンズ群G5は、第15及び第16レンズ素子L15,L16を含み、正のパワーを有する。第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第16レンズ素子L16は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0142】
図24は、実施例7に係る投写レンズ系PL7の縦収差を示す収差図である。
図24(a),(b),(c)は、
図3(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL7の広角端、広角端、中間位置および望遠端における諸収差を示す。
図24(a)~(c)に例示する諸収差は、後述する数値実施例7に基づいている。
【0143】
図25に、実施例7の投写レンズ系PL7における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図25の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例7の投写レンズ系PL7の各レンズ素子L1~L16との対応関係を示している。実施例7の投写レンズ系PL7によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0144】
2.実施例8
図26~
図28を用いて、実施例8の投写レンズ系PL8について説明する。
【0145】
図26は、実施例8に係る投写レンズ系PL8の各種状態におけるレンズ配置図である。
図26(a),(b),(c)は、
図2(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL8の広角端、中間位置および望遠端におけるレンズ配置図を示す。
【0146】
実施例8の投写レンズ系PL8は、4つのレンズ群G1~G4を含み、実施例7と同様にズームレンズ系を構成する。実施例8の投写レンズ系PL8は、17枚のレンズ素子L1~L17を備える。投写レンズ系PL8における第1~第4レンズ群G1~G4、及び第1~第17レンズ素子L1~L17は、それぞれ実施例7と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。
図26(a)~(c)では、透過光学系12の一例のバックガラスL18~L20を図示している。
【0147】
実施例8の投写レンズ系PL8において、第1レンズ群G1は、第1及び第2レンズ素子L1,L2を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第2レンズ素子L2は、両凸形状を有する。
【0148】
第2レンズ群G2は、第3~第6レンズ素子L3~L6を含み、負のパワーを有する。第3レンズ素子L3は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第4レンズ素子L4は、両凹形状を有する。第5レンズ素子L5は、両凹形状を有する。第6レンズ素子L6は、両凸形状を有する。
【0149】
第3レンズ群G3は、第7~第12レンズ素子L7~L12を含み、正のパワーを有する。第7レンズ素子L7は、両凹形状を有する。第8レンズ素子L8は、両凸形状を有する。第8レンズ素子L8と第9レンズ素子L9との間には、絞りAが配置されている。第9レンズ素子L9は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、両凸形状を有する。第12レンズ素子L12は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。
【0150】
第4レンズ群G4は、第13~第17レンズ素子L13~L17を含み、正のパワーを有する。第13レンズ素子L13は、両凸形状を有する。第14レンズ素子L14は、両凹形状を有する。第13レンズ素子L13と第14レンズ素子L14とは、接合されている。第15レンズ素子L15は、両凸形状を有する。第16レンズ素子L16は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第17レンズ素子L17は、両凸形状を有する。
【0151】
図27は、実施例8に係る投写レンズ系PL8の縦収差を示す収差図である。
図27(a),(b),(c)は、
図3(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL8の広角端、広角端、中間位置および望遠端における諸収差を示す。
図27(a)~(c)に例示する諸収差は、後述する数値実施例8に基づいている。
【0152】
図28に、実施例8の投写レンズ系PL8における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図28の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例8の投写レンズ系PL8の各レンズ素子L1~L17との対応関係を示している。実施例8の投写レンズ系PL8によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0153】
3.実施例9
図29~
図31を用いて、実施例9の投写レンズ系PL9について説明する。
【0154】
図29は、実施例9に係る投写レンズ系PL9の各種状態におけるレンズ配置図である。
図29(a),(b),(c)は、
図2(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL9の広角端、中間位置および望遠端におけるレンズ配置図を示す。
【0155】
実施例9の投写レンズ系PL9は、3つのレンズ群G1~G3を含み、実施例7と同様にズームレンズ系を構成する。実施例9の投写レンズ系PL9は、19枚のレンズ素子L1~L19を備える。投写レンズ系PL9における第1~第3レンズ群G1~G3、及び第1~第19レンズ素子L1~L19は、それぞれ実施例7と同様に、拡大側から縮小側へと順番に並んでいる。
図26(a)~(c)では、透過光学系12の一例のバックガラスL20~L22を図示している。
【0156】
実施例9の投写レンズ系PL9において、第1レンズ群G1は、第1~第4レンズ素子L1~L4を含み、正のパワーを有する。第1レンズ素子L1は、両凸形状を有する。第2レンズ素子L2は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第3レンズ素子L3は、両凹形状を有する。第4レンズ素子L4は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第3レンズ素子L3と第4レンズ素子L4とは、接合されている。
【0157】
第2レンズ群G2は、第5~第9レンズ素子L5~L9を含み、負のパワーを有する。第5レンズ素子L5は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第6レンズ素子L6は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第7レンズ素子L7は、両凹形状を有する。第8レンズ素子L8は、両凹形状を有する。第9レンズ素子L9は、正メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。
【0158】
第3レンズ群G3は、第10~第19レンズ素子L10~L19を含み、正のパワーを有する。第10レンズ素子L10の拡大側には、絞りAが配置される。第10レンズ素子L10は、両凸形状を有する。第11レンズ素子L11は、負メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第12レンズ素子L12は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13は、両凹形状を有する。第14レンズ素子L14は、両凸形状を有する。第13レンズ素子L13と第14レンズ素子L14とは、接合されている。
【0159】
第15レンズ素子L15は、負メニスカス形状を有し、凸面を拡大側に向けている。第16レンズ素子L16は、両凹形状を有する。第17レンズ素子L17は、正メニスカス形状を有し、凸面を縮小側に向けている。第18レンズ素子L18は、両凸形状を有する。第19レンズ素子L19は、両凸形状を有する。
【0160】
図30は、実施例9に係る投写レンズ系PL9の縦収差を示す収差図である。
図30(a),(b),(c)は、
図3(a)~(c)と同様に、それぞれ投写レンズ系PL9の広角端、広角端、中間位置および望遠端における諸収差を示す。
図30(a)~(c)に例示する諸収差は、後述する数値実施例9に基づいている。
【0161】
図31に、実施例9の投写レンズ系PL9における諸条件(1)~(11)の充足性を示す。
図31の図表は、実施形態1と同様に各条件(1)~(11)と、実施例5の投写レンズ系PL5の各レンズ素子L1~19との対応関係を示している。実施例9の投写レンズ系PL9によっても、高輝度化における画質を良くすることができる。
【0162】
4.実施例7~9について
以上の実施例7~9の投写レンズ系PL7~PL9は、最も拡大側のレンズ群G1が正のパワーを有する正先行型のズームレンズ系を構成する。本実施形態において、投写レンズ系PL7~PL9は、以下の条件(14)を満足する。
【0163】
条件(14)は、次式のように表される。
0.5<fr/ft<2.0 ・・・(14)
ここで、frは、投写レンズ系PL9において絞りAよりも縮小側の全レンズによる合成の焦点距離である。当該焦点距離frは、例えば望遠端において測定される。条件(14)は、全系の望遠端の焦点距離ftに対する上記の焦点距離frの比率fr/ftを規定している。
【0164】
具体的に、実施例7の投写レンズ系PL7では、fr/ft=0.83である。実施例8の投写レンズ系PL8では、fr/ft=1.73である。実施例9の投写レンズ系PL9では、fr/ft=0.63である。
【0165】
条件(14)によると、正先行型のズームレンズ系を構成する投写レンズ系PL7~PL9の性能を良好に得ることができる。条件(14)の上限値を上回ると、バックフォーカスを長く保ちながら縮小側のテレセントリック性を保つことが困難になる。条件(14)の下限値を下回ると、収差の補正が困難となり、投写画像20の画質が劣化し得る。比率fr/ftは、0.6よりも大きくて且つ1.8未満であることが好ましい。
【0166】
(数値実施例)
以上の投写レンズ系PL1~PL9の実施例1~9それぞれについての数値実施例1~9を以下に示す。
【0167】
1.数値実施例1
以下、実施例1の投写レンズ系PL1に対応する数値実施例1を示す。数値実施例1において、面データを表1-1に示し、各種データを表1-2に示し、単レンズデータを表1-3に示し、ズームレンズ群データを表1-4に示し、ズームレンズ群倍率を表1-5に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
2.数値実施例2
以下、実施例2の投写レンズ系PL2に対応する数値実施例2を示す。数値実施例2において、面データを表2-1に示し、各種データを表2-2に示し、単レンズデータを表2-3に示し、ズームレンズ群データを表2-4に示し、ズームレンズ群倍率を表2-5に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
3.数値実施例3
以下、実施例3の投写レンズ系PL3に対応する数値実施例3を示す。数値実施例3において、面データを表3-1に示し、各種データを表3-2に示し、単レンズデータを表3-3に示し、ズームレンズ群データを表3-4に示し、ズームレンズ群倍率を表3-5に示す。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
4.数値実施例4
以下、実施例4の投写レンズ系PL4に対応する数値実施例4を示す。数値実施例4において、面データを表4-1に示し、各種データを表4-2に示し、単レンズデータを表4-3に示す。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
5.数値実施例5
以下、実施例5の投写レンズ系PL5に対応する数値実施例5を示す。数値実施例5において、面データを表5-1に示し、各種データを表5-2に示し、単レンズデータを表5-3に示す。
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
6.数値実施例6
以下、実施例6の投写レンズ系PL6に対応する数値実施例6を示す。数値実施例6において、面データを表6-1に示し、各種データを表6-2に示し、単レンズデータを表6-3に示す。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
7.数値実施例7
以下、実施例7の投写レンズ系PL7に対応する数値実施例7を示す。数値実施例7において、面データを表7-1に示し、各種データを表7-2に示し、単レンズデータを表7-3に示し、ズームレンズ群データを表7-4に示し、ズームレンズ群倍率を表7-5に示す。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
8.数値実施例8
以下、実施例8の投写レンズ系PL8に対応する数値実施例8を示す。数値実施例8において、面データを表8-1に示し、各種データを表8-2に示し、単レンズデータを表8-3に示し、ズームレンズ群データを表8-4に示し、ズームレンズ群倍率を表8-5に示す。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
9.数値実施例9
以下、実施例9の投写レンズ系PL9に対応する数値実施例9を示す。数値実施例9において、面データを表9-1に示し、各種データを表9-2に示し、単レンズデータを表9-3に示し、ズームレンズ群データを表9-4に示し、ズームレンズ群倍率を表9-5に示す。
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0216】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0217】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において、種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【0218】
(態様のまとめ)
以下、本開示に係る各種態様を例示する。
【0219】
本開示に係る第1の態様は、縮小側の画像を拡大側に投写する投写レンズ系である。投写レンズ系は、絞りと、複数の正レンズと、複数の負レンズとを備える。投写レンズ系における複数の正レンズにおいて、絞りよりも拡大側で絞りに最も近い第1正レンズと、同拡大側で第1正レンズの次に絞りに近い第2正レンズと、絞りよりも縮小側で絞りに最も近い第3正レンズとが、以下の条件(1)~(3)を満足する。上記の複数の負レンズにおいて、絞りよりも拡大側で絞りに最も近い第1負レンズと、絞りよりも縮小側で絞りに最も近い第2負レンズとが、以下の条件(4)~(6)を満足する。第1~第3正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズは、以下の条件(7)及び(8)を満足する。
Tp1>99% ・・・(1)
Tp2>99% ・・・(2)
Tp3>99% ・・・(3)
Tn1>99% ・・・(4)
Tn2>99% ・・・(5)
αn1<100×10-7[/℃] ・・・(6)
dn/dt<-4.5×10-6 ・・・(7)
fp/fw>1.3 ・・・(8)
ここで、
Tp1:第1正レンズのレンズ材料の10mmの厚さにおける波長460nmの光の内部透過率
Tp2:第2正レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tp3:第3正レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tn1:第1負レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
Tn2:第2負レンズのレンズ材料の上記の厚さにおける上記の光の内部透過率
αn1:第1負レンズのレンズ材料の常温での線膨張係数
dn/dt:少なくとも1枚の正レンズのレンズ材料の常温での相対屈折率の温度係数
fp:少なくとも1枚の正レンズの焦点距離
fw:全系の広角端の焦点距離
である。以上の投写レンズ系によると、画像投写装置の高輝度化において熱の影響を受け易く、投写レンズ系の性能に影響し易いことが想定される絞り近傍の、第1~第3正レンズと第1及び第2負レンズとが、熱の影響を抑制する条件(1)~(8)を満足している。これにより、画像投写装置の高輝度化における投写画像の変動を抑制して、画質を良くすることができる。
【0220】
第2の態様は、第1の態様の投写レンズ系において、縮小側において略テレセントリック系を構成する。これにより、縮小側のバックレンズ等における色ズレを抑制できる。
【0221】
第3の態様では、第1の態様の投写レンズ系において、複数の正レンズと複数の負レンズの枚数が少なくとも15枚である。以上の投写レンズ系によると、投写レンズ系における諸収差を良好に補正できる。
【0222】
第4の態様では、第1の態様の投写レンズ系において、複数の正レンズのうちの少なくとも1枚の正レンズは、以下の条件(9)を満足する。
νp<40 ・・・(9)
ここで、
νp:少なくとも1枚の正レンズのレンズ材料のアッベ数
である。以上の投写レンズ系によると、全ての正レンズのうちの少なくとも1枚のアッベ数を条件(9)の上限値未満にすることで、高輝度化における熱の影響を低減しながら、色収差の補正を良好に行える。これにより、高輝度化において投写画像の画質を良くすることができる。
【0223】
第5の態様では、第1の態様の投写レンズ系において、複数の負レンズのうちの少なくとも1枚の負レンズは、以下の条件(10)を満足する。
νn<40 ・・・(10)
ここで、
νn:少なくとも1枚の負レンズのレンズ材料のアッベ数
である。これにより、負レンズにおける熱の影響を低減して、投写画像の画質を向上できる。
【0224】
第6の態様では、複数の正レンズのうちの少なくとも4枚の正レンズが、以下の条件(11)を満足する。
dn/dt<-4.5×10-6 ・・・(11)
ここで、
dn/dt:4枚の正レンズ材料の常温での相対屈折率の温度係数
である。これにより、局所的な温度変化に対して形状の変化による影響と屈折率の変化による影響とが相殺する正レンズを4枚以上用いて熱の影響を低減し、投写画像の画質を向上できる。
【0225】
第7の態様では、第1の態様の投写レンズ系が、複数のレンズ群を含んだズームレンズ系を構成する。複数のレンズ群において、最も拡大側のレンズ群が負のパワーを有する。投写レンズ系は、以下の条件(12)を満足する。
2<fr/fw<4.5 ・・・(12)
ここで、
fr:絞りよりも縮小側の広角端の焦点距離
fw:全系の広角端の焦点距離
である。以上の投写レンズ系によると、負先行型のズームレンズ系として投写画像の画質を良くすることができる。
【0226】
第8の態様では、第1の態様の投写レンズ系が、投写レンズ系の内部において結像する中間結像位置を有する。投写レンズ系において、中間結像位置よりも拡大側に位置する複数のレンズで構成される拡大光学系は、正のパワーを有する。中間結像位置よりも縮小側に位置する複数のレンズで構成されるリレー光学系は、正のパワーを有する。投写レンズ系は、以下の条件(13)を満足する。
8<|fr/f|<12 ・・・(13)
ここで、
fr:絞りよりも縮小側の焦点距離
f:全系の焦点距離
である。以上の投写レンズ系によると、中間結像位置を用いるレンズ系において投写画像の画質を良くすることができる。
【0227】
第9の態様では、第1の態様の投写レンズ系が、複数のレンズ群を含んだズームレンズ系を構成する。複数のレンズ群において最も拡大側のレンズ群が、正のパワーを有する。投写レンズ系は、以下の条件(14)を満足する。
0.5<fr/ft<2.0 ・・・(14)
ここで、
fr:絞りよりも縮小側の焦点距離
ft:全系の望遠端の焦点距離
である。以上の投写レンズ系によると、正先行型のズームレンズ系として投写画像の画質を良くすることができる。
【0228】
第10の態様は、第1の態様の投写レンズ系と、画像を形成する画像形成素子とを備えた画像投写装置である。以上の画像投写装置によると、高輝度化における画像の画質を良くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本開示は、例えば2万ルーメン以上の光出力を有する画像投写装置、及び画像投写装置に搭載される投写レンズ系に適用可能である。
【符号の説明】
【0230】
1 画像投写装置
11 画像形成素子
PL、PL1~PL9 投写レンズ系
L1~L22 レンズ素子
A 絞り