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特許7390682コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20231127BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231127BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231127BHJP
【FI】
C09D4/02
B32B27/30 A
C09D7/63
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019189928
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021063198
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 秀典
(72)【発明者】
【氏名】竹上 功起
(72)【発明者】
【氏名】磯部 元成
(72)【発明者】
【氏名】窪田 博司
(72)【発明者】
【氏名】村松 久司
(72)【発明者】
【氏名】中 建介
(72)【発明者】
【氏名】松川 公洋
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043101(JP,A)
【文献】特開2006-047504(JP,A)
【文献】特開2013-053281(JP,A)
【文献】特開2016-112702(JP,A)
【文献】特表2017-534693(JP,A)
【文献】特表2014-529631(JP,A)
【文献】特開2011-110552(JP,A)
【文献】特開2014-148114(JP,A)
【文献】特開2010-168452(JP,A)
【文献】特開2016-137693(JP,A)
【文献】特表2017-529452(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008825(WO,A1)
【文献】特開2013-231187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
B32B 27/30
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる基材と、
コーティング剤の硬化物からなり、前記基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有する樹脂部材であって、
前記基材は、ポリカーボネート樹脂から構成されており、
前記コーティング剤は、不完全かご型シルセスキオキサン骨格を備えたシルセスキオキサン成分(A)と、
(メタ)アクリロイル基を備えた(メタ)アクリレート成分(B)と、
ラジカル重合開始剤(C)と、を含み、
前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対する前記シルセスキオキサン成分(A)の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、
前記シルセスキオキサン成分(A)における前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格にはフルオロアルキル基が結合している、樹脂部材。
【請求項2】
前記コーティング剤は、前記シルセスキオキサン成分(A)として、不完全かご型シルセスキオキサン骨格と、前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格に結合したラジカル重合性官能基とを備えた重合性シルセスキオキサン(A-1)を含有している、請求項1に記載の樹脂部材。
【請求項3】
前記コーティング剤は、前記シルセスキオキサン成分(A)として、複数の前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格が結合してなるシルセスキオキサンポリマー(A-2)を含有している、請求項1または2に記載の樹脂部材。
【請求項4】
前記コーティング剤は、前記(メタ)アクリレート成分(B)として、イソシアヌル環骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(B-1)と、イソシアヌル環骨格を有し、ウレタン結合を有しないトリ(メタ)アクリレート(B-2)と、を含有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂部材の製造方法であって、
前記基材を準備する準備工程と、
前記基材の表面上に、前記コーティング剤を塗布する塗布工程と、
前記コーティング剤中のラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させ、前記基材の表面上に前記コーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、を有する、樹脂部材の製造方法。
【請求項6】
不完全かご型シルセスキオキサン骨格を備えたシルセスキオキサン成分(A)と、
(メタ)アクリロイル基を備えた(メタ)アクリレート成分(B)と、
ラジカル重合開始剤(C)と、を含み、
前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対する前記シルセスキオキサン成分(A)の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、
前記シルセスキオキサン成分(A)として、複数の前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格が結合してなるシルセスキオキサンポリマー(A-2)を含有しており、
前記シルセスキオキサン成分(A)における前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格にはフルオロアルキル基が結合している、コーティング剤。
【請求項7】
不完全かご型シルセスキオキサン骨格を備えたシルセスキオキサン成分(A)と、
(メタ)アクリロイル基を備えた(メタ)アクリレート成分(B)と、
ラジカル重合開始剤(C)と、を含み、
前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対する前記シルセスキオキサン成分(A)の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、
前記シルセスキオキサン成分(A)における前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格にはフルオロアルキル基が結合している、コーティング剤。
【請求項8】
不完全かご型シルセスキオキサン骨格を備えたシルセスキオキサン成分(A)と、
(メタ)アクリロイル基を備えた(メタ)アクリレート成分(B)と、
ラジカル重合開始剤(C)と、を含み、
前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対する前記シルセスキオキサン成分(A)の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、
前記(メタ)アクリレート成分(B)として、イソシアヌル環骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(B-1)と、イソシアヌル環骨格を有し、ウレタン結合を有しないトリ(メタ)アクリレート(B-2)と、を含有しており、
前記シルセスキオキサン成分(A)における前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格にはフルオロアルキル基が結合している、コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法に関する。
【0002】
従来、自動車や鉄道等の車両を構成する部品には、鋼やアルミニウム、ガラス等の無機材料が使用されてきた。近年では、車両の軽量化を目的として、無機材料からなる部品から、プラスチック等の有機材料からなる部品への置き換えが進んでいる。しかし、有機材料は、無機材料に比べて軽量である反面、軟らかく、傷がつきやすい。
【0003】
そこで、有機材料からなる部品の傷に対する耐久性を向上させるために、部品の表面に硬い皮膜を形成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂製基材と、樹脂製基材の表面に形成されたプライマー層と、プライマー層の上に形成されたハードコート層とを有する被覆部材が記載されている。
【0004】
このような2層構造の皮膜は、例えば、樹脂製基材上に液状のプライマーを塗布する工程、プライマーを乾燥させてプライマー層を形成する工程、プライマー層上に液状のコーティング剤を塗布する工程、コーティング剤を硬化させてハードコート層を形成する工程を順次行うことにより作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-240294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の被覆部材のように、プライマー層とハードコート層との2層構造からなる皮膜を形成するに当たっては、樹脂製基材上にプライマーを塗布する工程、プライマーを乾燥させてプライマー層を形成する工程、プライマー層上にコーティング剤を塗布する工程及びコーティング剤を硬化させてハードコート層を形成する工程を順次行う必要がある。そのため、皮膜の形成作業が煩雑になるとともに、皮膜の形成作業に要するコストの増大を招いている。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、このコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一参考態様は、不完全かご型シルセスキオキサン骨格を備えたシルセスキオキサン成分(A)と、
ラジカル重合性官能基を備えた重合性エステル(B)と、
ラジカル重合開始剤(C)と、を含み、
前記シルセスキオキサン成分(A)と前記重合性エステル(B)との合計100質量部に対する前記シルセスキオキサン成分(A)の含有量が0.5質量部以上30質量部以下である、コーティング剤にある。
【0009】
本発明の一態様は、樹脂からなる基材と、
前記の態様のコーティング剤の硬化物からなり、前記基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有しており、
前記コーティング剤中のシルセスキオキサン成分(A)における前記不完全かご型シルセスキオキサン骨格にはフルオロアルキル基が結合している、樹脂部材にある。
【0010】
本発明の他の態様は、前記の態様の樹脂部材の製造方法であって、樹脂からなる基材を準備する準備工程と、
前記基材の表面上に、前記コーティング剤を塗布する塗布工程と、
前記コーティング剤中のラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させ、前記基材の表面上に前記コーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、を有する、樹脂部材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
前記コーティング剤は、前記特定のシルセスキオキサン成分(A)と、(メタ)アクリレート成分(B)と、ラジカル重合開始剤(C)と、を含んでいる。基材上にコーティング剤を塗布すると、コーティング剤中の各成分が、コーティング剤の表面自由エネルギーが最小となるような配置をとる。そのため、基材上に塗布されたコーティング剤の表面近傍には、シルセスキオキサン骨格が存在していると推測される。
【0012】
それ故、ラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させて(メタ)アクリレート成分(B)を重合させることにより、硬度及び潤滑性に優れたコーティング膜を形成することができる。そして、コーティング膜の硬度及び潤滑性を向上させることにより、傷に対する耐久性を向上させることができる。また、前記コーティング膜は、(メタ)アクリレート成分(B)のラジカル重合によって生じる有機成分を含んでいるため、基材との密着性を向上させることができる。
【0013】
さらに、前記コーティング剤は、密着性を向上させるためのプライマー層と、表面の硬さを硬くするハードコート層とからなる従来の2層構造の皮膜と同等の機能を単一の層により実現することができる。
【0014】
従って、前記の態様によれば、基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、このコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例における、赤外吸収スペクトルの測定方法を示す説明図である。
図2図2は、実施例における、コーティング膜中の不完全かご型シルセスキオキサン骨格の分布を示す説明図である。
図3図3は、実施例における、コーティング膜中のフルオロアルキル基の分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[コーティング剤]
前記コーティング剤の構成について説明する。
【0017】
・シルセスキオキサン成分(A)
前記コーティング剤中に含まれるシルセスキオキサン成分(A)は、不完全かご型シルセスキオキサン骨格を有している。不完全かご型シルセスキオキサン骨格は、Si原子とO原子とが交互に結合してなる多面体状を呈するとともに、多面体における隣り合う頂点のうち少なくとも一組の頂点の間が接続されていない構造を有している。すなわち、不完全かご型シルセスキオキサンは、完全かご型シルセスキオキサンにおける辺の一部が開放された構造を有している。不完全かご型シルセスキオキサン骨格に含まれるSi原子及びO原子の数は、特に限定されることはない。
【0018】
不完全かご型シルセスキオキサン骨格中のSi原子には、アルキル基やフルオロアルキル基、(メタ)アクリロイル基などの種々の官能基が結合している。
【0019】
シルセスキオキサン成分(A)における不完全かご型シルセスキオキサン骨格には、フルオロアルキル基が結合している。これにより、基材上に塗布されたコーティング剤の最表面において、シルセスキオキサン成分(A)を、フルオロアルキル基が表面に露出するように配向させることができる。フルオロアルキル基が露出したコーティング膜は、これにより、コーティング膜の潤滑性をより高めることができる。
【0020】
フルオロアルキル基は、炭化水素基の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されてなる官能基である。フルオロアルキル基は、不完全かご型シルセスキオキサン骨格中において、一部のSi原子に結合していてもよいし、全部のSi原子に結合していてもよい。
【0021】
フルオロアルキル基としては、例えば、一般式CF3(CF2nCH2CH2-(但し、nは0以上の整数)で表されるフルオロアルキル基を採用することができる。かかるフルオロアルキル基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基等がある。シルセスキオキサン成分(A)は、フルオロアルキル基として、これらの官能基から選択される1種の官能基を有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。
【0022】
コーティング剤中には、1種類のシルセスキオキサン成分(A)が含まれていてもよいし、互いに化学構造の異なる2種類以上のシルセスキオキサン成分(A)が含まれていてもよい。
【0023】
例えば、コーティング剤中には、シルセスキオキサン成分(A)として、不完全かご型シルセスキオキサン骨格と、不完全かご型シルセスキオキサン骨格に結合したラジカル重合性官能基とを備えた重合性シルセスキオキサン(A-1)が含まれていてもよい。この場合には、ラジカル重合反応によって、(メタ)アクリレート成分(B)中の(メタ)アクリロイル基と重合性シルセスキオキサン(A-1)中のラジカル重合性官能基とを結合させ、不完全かご型シルセスキオキサン骨格を(メタ)アクリレートのネットワーク中に組み込むことができる。その結果、不完全かご型シルセスキオキサン骨格と有機成分とをより強固に結合することができる。
【0024】
重合性シルセスキオキサン(A-1)中のラジカル重合性官能基としては、ラジカル重合により重合可能な官能基を使用することができる。より具体的には、ラジカル重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基等を使用することができる。重合性シルセスキオキサン(A-1)は、ラジカル重合性官能基として、これらの官能基から選択される1種の官能基のみを有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。ラジカル重合反応における反応性を高める観点からは、重合性シルセスキオキサン(A-1)は、ラジカル重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基のうち1種または2種を有していることが好ましい。
【0025】
また、コーティング剤中には、シルセスキオキサン成分(A)として、1分子中に1個の不完全かご型シルセスキオキサン骨格を有するシルセスキオキサンモノマーが含まれていてもよいし、複数の不完全かご型シルセスキオキサン骨格が互いに結合してなるシルセスキオキサンポリマー(A-2)が含まれていてもよい。後者の場合には、耐熱性をより向上させる効果が期待できる。また、この場合には、コーティング膜の表面近傍における不完全かご型シルセスキオキサン骨格の濃度をより高める効果が期待できる。さらに、シルセスキオキサンポリマー(A-2)を用いることにより、コーティング膜の屈折率の制御をより容易に行うことができる。
【0026】
シルセスキオキサンポリマー(A-2)としては、例えば、数平均分子量が5000~20000であるシルセスキオキサンポリマーを用いることができる。
【0027】
コーティング剤中のシルセスキオキサン成分(A)の含有量は、前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下である。コーティング剤中のシルセスキオキサン成分(A)の含有量は、前記シルセスキオキサン成分(A)と前記(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、コーティング膜の表面近傍に配置される不完全かご型シルセスキオキサン骨格の量をより多くすることができる。その結果、コーティング膜の硬度及び撥水性をより向上させることができる。
【0028】
・(メタ)アクリレート成分(B)
前記コーティング剤中に含まれる(メタ)アクリレート成分(B)は、分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を有している。なお、分子構造中に、(メタ)アクリロイル基と不完全かご型シルセスキオキサン骨格との両方を含む化合物は、(メタ)アクリレート成分(B)からは除外される。
【0029】
(メタ)アクリレート成分(B)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、1-メチルエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸モノエステル;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジエステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を3つ以上備えたエステル等を使用することができる。また、(メタ)アクリレート成分(B)としては、前述した(メタ)アクリル酸エステルのオリゴマーを使用することもできる。
【0030】
コーティング剤中の(メタ)アクリレート成分(B)の含有量は、例えば、シルセスキオキサン成分(A)と(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して80質量部以上99.5質量部以下であることが好ましく、82質量部以上99.3質量部以下であることがより好ましく、85質量部以上99質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、コーティング膜中の有機成分の量を十分に多くすることができる。その結果、コーティング膜と基材との密着性をより向上させることができる。
【0031】
前記コーティング剤は、(メタ)アクリレート成分(B)として、イソシアヌル環骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(B-1)と、イソシアヌル環骨格を有し、ウレタン結合を有しないトリ(メタ)アクリレート(B-2)と、を含有していてもよい。
【0032】
(B-1)成分としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を採用することができる。下記一般式(1)で表される化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはそのε-カプロラクトン変性体との付加反応によって合成することができる。(B-1)成分としては、これらの化合物から選択された1種の化合物を使用してもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0033】
【化1】
【0034】
なお、前記一般式(1)におけるR、R及びRは炭素数2~10の2価の有機基である。R、R及びRは同一の有機基であってもよいし、互いに異なる有機基であってもよい。ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン変性体が付加された場合には、前述した2価の有機基に-COCHCHCHCHCH-または-OCOCHCHCHCHCH-のいずれかの部分構造が含まれる。
【0035】
前記一般式(1)におけるR、RおよびRは水素原子またはメチル基である。R、R及びRは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。R、RおよびRは、水素原子であることが好ましい。この場合には、前記コーティング剤の硬化性をより向上させることができる。
【0036】
ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはそのε-カプロラクトン変性体との付加反応は、触媒を用いずに行ってもよいし、反応を促進させるために触媒を用いて行ってもよい。触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート等のスズ系触媒や、トリエチルアミン等のアミン系触媒を使用することができる。
【0037】
前記コーティング剤中の(B-1)成分の含有量は、シルセスキオキサン成分(A)と(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して20質量部以上60質量部以下であることが好ましく、23質量部以上58質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上54質量部以下であることがさらに好ましい。かかる組成を有するコーティング剤を硬化させることにより、基材との密着性、耐候性及び耐衝撃性に優れたコーティング膜を得ることができる。
【0038】
(B-2)成分としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物等を使用することができる。下記一般式(2)で表される化合物は、例えば、イソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸またはそのε-カプロラクトン変性体との縮合反応によって合成することができる。(B-2)成分としては、これらの化合物から選択された1種の化合物を使用してもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0039】
【化2】
【0040】
なお、前記一般式(2)におけるR、R及びRは炭素数2~10の2価の有機基である。また、n=1~3であり、n=1~3であり、n=1~3であり、n+n+n=3~9である。n+n+nの値は、前記一般式(2)で表される化合物1分子当たりのアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
【0041】
、R及びRは同一の有機基であってもよいし、互いに異なる有機基であってもよい。また、n、n、nは同一の値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。イソシアヌル酸に(メタ)アクリル酸のε-カプロラクトン変性体が縮合した場合には、前述した2価の有機基に-COCHCHCHCHCH-または-OCOCHCHCHCHCH-のいずれかの部分構造が含まれる。
【0042】
前記一般式(2)におけるR10、R11およびR12は水素原子またはメチル基である。R10、R11およびR12は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。R10、R11およびR12は、水素原子であることが好ましい。この場合には、前記コーティング剤の硬化性をより向上させることができる。
【0043】
前記コーティング剤中の(B-2)成分の含有量は、シルセスキオキサン成分(A)と(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して15質量部以上45質量部以下であることが好ましく、17質量部以上43質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。かかる組成を有するコーティング剤を硬化させることにより、基材との密着性、耐候性及び耐衝撃性に優れたコーティング膜を得ることができる。
【0044】
また、前記コーティング剤は、(メタ)アクリレート成分(B)として、更に、(メタ)アクリル当量、つまり、(メタ)アクリロイル基1個当たりの分子量が80~200である80~200の多官能(メタ)アクリレート(B-3)を含んでいてもよい。
【0045】
前記コーティング剤中の(B-3)成分の含有量は、シルセスキオキサン成分(A)と(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して20質量部以上30質量部以下であることが好ましく、23質量部以上27質量部以下であることがより好ましい。かかる組成を有するコーティング剤を硬化させることにより、基材との密着性、耐候性及び耐衝撃性に優れたコーティング膜を得ることができる。
【0046】
・ラジカル重合開始剤(C)
前記コーティング剤中に含まれるラジカル重合開始剤(C)は、コーティング剤中にラジカルを発生させることができる。そして、このラジカルによって(メタ)アクリレート成分(B)等に含まれる(メタ)アクリロイル基同士の重合反応を開始させることができる。
【0047】
前記コーティング剤中のラジカル重合開始剤(C)の含有量は、ラジカル重合開始剤(C)以外の成分の含有量に応じて適宜設定することができる。例えば、ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、シルセスキオキサン成分(A)と(メタ)アクリレート成分(B)との合計100質量部に対して0.1質量部以上10質量部の範囲とすることができる。
【0048】
ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、特定の波長の光を照射することによってラジカルを発生させる光ラジカル重合開始剤や、熱を加えることによってラジカルを発生させる熱ラジカル重合開始剤等を使用することができる。
【0049】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノン}および2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンおよび4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルおよびオキシフェニル酢酸の2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のα-ケトエステル系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;チタノセン系化合物;1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフィニル)プロパン-1-オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-〔4-(フェニルチオ)〕-1,2-オクタンジオン等のオキシムエステル系光重合開始剤;並びにカンファーキノン等を使用することができる。
【0050】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物およびアゾ系化合物等を使用することができる。
【0051】
有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス〔4,4-ジ(t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)〕プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイドおよびt-ブチルハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
【0052】
アゾ系化合物としては、例えば、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタンおよびアゾジ-t-ブタン等を使用することができる。
【0053】
ラジカル重合開始剤(C)成分としては、これらの化合物から選択された1種の化合物を使用してもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0054】
・その他の添加剤
前記コーティング剤中には、前述したシルセスキオキサン成分(A)、(メタ)アクリレート成分(B)及びラジカル重合開始剤(C)の他に、コーティング剤の硬化を損なわない範囲で、コーティング膜の特性を調整するための添加剤が含まれていてもよい。例えば、前記コーティング剤中には、添加剤として、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の、コーティング膜の劣化を抑制するための添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、コーティング膜の耐候性を向上させる効果を期待することができる。
【0055】
また、前記コーティング剤中には、添加剤として、レベリング剤、脱泡剤等の表面調整剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、基材上にコーティング剤を塗布した際に、コーティング剤の厚みを均一にすることができる。その結果、コーティング膜を備えた樹脂部材の傷に対する耐久性をより向上させる効果を期待することができる。
【0056】
前記コーティング剤を硬化させることにより、基材上に透明なコーティング膜を形成することができる。そのため、例えば、窓用透明部材、即ち無機材料からなる窓ガラスの代替となる部材の表面に前記コーティング剤を適用することにより、無機材料からなるガラスに比べて軽量な窓用透明部材を得ることができる。
【0057】
また、例えば、ボディパネルの表面に前記コーティング剤を適用することにより、ボディパネルの表面にクリヤーコート層を形成することができる。更に、必要に応じて前記コーティング剤中に顔料等の着色剤を添加し、コーティング膜を着色することも可能である。
【0058】
[樹脂部材]
前記コーティング剤を樹脂からなる基材上に塗布した後、紫外光を照射してコーティング剤を硬化させることにより、樹脂部材を得ることができる。
この樹脂部材は、樹脂からなる基材と、
前記コーティング剤の硬化物からなり、基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有している。
【0059】
また、前記樹脂部材は、前述したように、潤滑性が高く、硬いコーティング膜を有しているため、例えば砂塵等の粒子が衝突したり擦れたりした場合に、コーティング膜の表面にへこみ傷や擦れ傷などがつきにくい。このように、前記樹脂部材は、傷に対する耐久性が高いため、自動車のボディパネルや窓用透明部材などの自動車用外装部材に好適である。
【0060】
前記樹脂部材において、基材を構成する樹脂は、樹脂部材の用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、樹脂部材を窓用透明部材として使用する場合には、基材にポリカーボネート樹脂を採用することができる。ポリカーボネート樹脂は、耐候性、強度、透明性等の、窓用透明部材に要求される諸特性に優れている。そのため、ポリカーボネート樹脂からなる基材上に透明な前記コーティング膜を形成することにより、窓用透明部材として好適な樹脂部材を得ることができる。
【0061】
前記樹脂部材は、例えば、樹脂からなる基材を準備する準備工程と、
基材の表面上に前記のコーティング剤を塗布する塗布工程と、
コーティング剤に紫外光を照射することにより、基材の表面上にコーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、を有する製造方法により、製造することができる。
【0062】
前記製造方法において、塗布工程でのコーティング剤の塗布には、スプレーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディップコーター、バーコーター、アプリケーター等の公知の塗布装置の中から、所望する膜厚や基材の形状等に応じて適切な装置を選択して使用することができる。
【0063】
塗布工程の後、必要に応じてコーティング剤を加熱して乾燥させる工程を行ってもよい。
【0064】
硬化工程においては、ラジカル重合開始剤(C)の性質に応じて適切な処理を行うことにより、ラジカル重合開始剤(C)成分からラジカルを発生させ、ラジカル重合反応を進行させることができる。例えば、ラジカル重合開始剤(C)として熱ラジカル重合開始剤が含まれている場合には、コーティング剤を加熱することにより、ラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させることができる。また、ラジカル重合開始剤(C)として光ラジカル重合開始剤が含まれている場合には、コーティング剤に適切な波長の光を照射することにより、ラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させることができる。
【0065】
硬化工程の後、必要に応じてコーティング膜を加熱し、硬化を促進させる工程を行ってもよい。
【実施例
【0066】
前記コーティング剤及び表面被覆部材の実施例について説明する。なお、本発明に係るコーティング剤及び表面被覆部材の態様は、以下に示す態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0067】
以下に、本例において使用したシルセスキオキサン成分(A)、(メタ)アクリレート成分(B)及びラジカル反応開始剤(C)を示す。
【0068】
・シルセスキオキサン成分(A)
化合物1:下記構造式で表される、フルオロアルキル基及びメタクリロイル基を備えたシルセスキオキサンモノマー
【0069】
【化3】
【0070】
化合物2:下記構造式で表される、フルオロアルキル基及びビニル基を備えたシルセスキオキサンモノマー
【化4】
【0071】
化合物3:下記化合物4と前記化合物2とを反応させてなる、フルオロアルキル基を備えたシルセスキオキサンポリマー
【0072】
【化5】
【0073】
化合物5:下記化合物6と前記化合物2とを反応させてなる、フルオロアルキル基を備えたシルセスキオキサンポリマー
【0074】
【化6】
【0075】
化合物7:前記化合物4と下記化合物8とを反応させてなる、フルオロアルキル基を備えたシルセスキオキサンポリマー
【0076】
【化7】
【0077】
化合物9:下記構造式で表される、ビニル基を備えたシルセスキオキサンモノマー
【0078】
【化8】
【0079】
・(メタ)アクリレート成分(B)
HBA:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの付加生成物
M-315:イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートを含む混合物(東亞合成株式会社製)
A-DPH:ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、(メタ)アクリル当量96)
SA2403P:アクリロイル基を有するポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製「セルム(登録商標)スーパーポリマー SA2403P」、重量平均分子量20,000)
KUA-PC2I:ウレタンアクリレート(ケーエスエム株式会社製「KUA-PC2I」)
【0080】
・ラジカル反応開始剤(C)
Irgacure(登録商標)754:フォスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤(BASF社製)
Irgacure819:α-ケトエステル系化合物を含む光ラジカル重合開始剤(BASF社製)
【0081】
なお、化合物1~化合物9は、例えば、以下の方法により合成することができる。
【0082】
・化合物1
1.60mmol(2.00g)の化合物4を窒素雰囲気下で9.4mlのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた。この溶液に、7.20mmol(0.7mL)の3-メチル-3-ブテン-1-オールと、1.60×10-3mmol(0.015mL)のKarstedt’s触媒とを加えた。この混合物を50℃で6時間攪拌した後、溶媒を減圧下で留去して粗生成物を得た。粗生成物をHPLCで精製することにより、中間体Aを得た。中間体Aは無色固体であった。中間体Aの収量は1.00mmol(1.52g)であり、収率は63%であった。中間体AのNMR化学シフト(1H、13C、29Si)および高分解能マススペクトロメトリー(HR-MS)の結果は以下の通りである。
【0083】
1H-HMR(in CDCl3,400MHz):δ=3.76-3.63(m,12H,Si(CH32-CH2-CH(CH3)-CH2-C 2 -OH),2.13-2.03(m,14H,Si-CH2-C 2 -CF3),1.83-1.46(m,9H,Si(CH32-CH2-C(CH3)-C 2 -CH2-OH),0.96-0.95(d,9H,Si(CH32-CH2-CH(C 3 )-CH2-CH2-OH),0.93-0.73(m,14H,Si-C 2 -CH2-CF3),0.57-0.51(m,6H,Si(CH32-C 2 -CH(CH3)-CH2-CH2-OH),0.19-0.16(s,18H,Si(C 3 2 -CH2-CH(CH3)-CH2-CH2-OH) ppm。なお、下線を付した水素原子は、化学シフトに対応する水素原子である。
【0084】
13C-NMR(in CDCl3,100MHz):δ=128.34,125.60,60.74,43.09,28.20,28.07,27.88,27.58,27.40,27.26,26.43,25.47,22.66,15.03,6.06,4.89,3.91,1.84,1.31,1.25 ppm。
【0085】
29Si-NMR(in CDCl3,80MHz):δ=12.16,-68.29,-68.16,-69.58 ppm。
【0086】
HR-MS(m/z,[M+Na]+):1525.2674(calc.);1525.2670(observed)。
【0087】
次に、0.269mmol(0.404g)の中間体Aと0.807mmol(0.12mL)のメタクリル酸2-イソシアナトエチルとを1mLのTHFに溶解させた。この溶液を50℃で2時間攪拌した後、溶媒を減圧下で留去することで化合物1を得た。
【0088】
・化合物2
1.80mmol(2.00g)のHepta(3,3,3-trifluoropropyl)tricycloheptasiloxane trisodium silanolateを18mLのTHFに溶解させた。この溶液に窒素雰囲気下で、7.90mmol(1.09mL)のビニルクロロジメチルシランと7.90mmol(1.10mL)のジエチルアミンとを加えた。この混合物を0℃で1時間攪拌し、室温でさらに3時間攪拌した。攪拌が完了した後、不溶部をろ過で除き、減圧下で溶媒を留去することにより粗生成物を得た。粗生成物にクロロホルムと水とを加えて抽出操作を行い、1M塩酸水を用いて2回洗浄を行った後に有機層を脱水した。この有機層から減圧下で溶媒を留去し、乾燥することにより化合物2を得た。化合物2は淡黄色固体であった。化合物2の収量は0.610mmol(0.81g)であり、収率は62%であった。化合物2の1H-NMR化学シフトは以下の通りである。
【0089】
1H-HMR(in CDCl3,400MHz):δ=6.14-6.03(m,6H,Si(CH32-CH=C 2 ),5.82-5.76(d,3H,Si(CH32-C=CH2),2.16-2.03(m,14H,Si-CH2-C 2 -CF3),0.88-0.79(m,14H,Si-C 2 -CH2-CF3),0.24-0.22(d,18H,Si(C 3 2 -CH=CH2) ppm。
【0090】
・化合物3
0.110mmol(0.141g)の化合物2と、0.110mmol(0.150g)の化合物4と、Karstedt’s触媒(0.1M in xylene,11μL)とを2mLのTHFに加えた。この溶液を窒素雰囲気下において80℃で6時間攪拌することにより、化合物2と化合物4とを重合させた。重合終了後、減圧下で反応混合物から揮発成分を留去して粗生成物を得た。分取GPCを用いて粗生成物から低分子量成分を除くことにより、化合物3を得た。化合物3は無色固体であった。化合物3の収量は0.132gであり、収率は45%であった。化合物3のNMR化学シフト(1H、29Si)は以下の通りである。
【0091】
1H-NMR(in Acetone-d6,400MHz):δ=6.23-5.84(m,6H,Si(CH32-CH=CH2),2.31-2.30(m,14H,Si-CH2-CH2-CF2),1.06-1.01(m,14H),0.73-0.27(br,6H),0.26-0.06(br,18H) ppm。
【0092】
29Si-NMR(in Acetone-d6,80MHz):δ=13.29,12.30,12.43,11.84,-69.73,-69.90 ppm。
【0093】
・化合物4
1.80mmol(2.00g)のhepta(3,3,3-trifluoropropyl)tricycloheptasiloxane trisodium silanolateを30mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させた。この溶液に、窒素雰囲気下でクロロジメチルシランのジクロロエタン溶液を15mL加えた。混合物を60℃で6時間撹拌した後、蒸留水を加えた。この混合物にクロロホルムを加えて抽出操作を行った後、不溶部をろ過で除いた。その後、減圧下で溶媒を留去し、乾燥することにより化合物4を得た。化合物4は白色固体であった。化合物4の収量は1.55mmol(1.93g)であり、収率は88%であった。化合物4のNMR化学シフト(1H、13C、29Si)およびHR-MSの結果は以下の通りである。
【0094】
1H-HMR(in CDCl3,400MHz):δ=4.78-4.75(d,3H,Si(CH32 ),2.17-2.03(m,14H,Si-CH2-C 2 -CF3),0.96-0.82(m,14H,Si-C 2 -CH2-CF3),0.26-0.20(d,18H,Si(C 3 2 H) ppm。
【0095】
13C-NMR(in CDCl3,100MHz):δ=128.39,128.31,125.65,125.57,28.09,27.86,27.78,27.56,27.48,27.41,27.25,5.67,5.65,4.71,3.90,0.35 ppm。
【0096】
29Si-HMR(in CDCl3,80MHz):δ=-2.27,-66.20,-68.47,-68.97 ppm。
【0097】
HR-MS(m/z,[M+Na]+):1267.0479(calc.);1267.0477(observed)。
【0098】
・化合物5
0.207mmol(0.274g)の化合物2と、これと等モル(0.207mmol、0.229g)の化合物6を2mLのTHFに溶解させた。この溶液に4μLのKarstedt’s触媒(0.1M in xylene)を加えた後、窒素雰囲気下で6時間還流して化合物2と化合物6とを重合させた。重合終了後、スカベンジャー(SiliaMets(登録商標) triamine)によって触媒を取り除き、減圧下で揮発成分を留去することで、化合物5を得た。化合物5は無色固体であった。また、上記の方法により得られた化合物5の数平均分子量Mnは5.3×103であり、多分散度Mw/Mnは4.8であった。
【0099】
・化合物6
0.518mmol(0.44g)のtrisilanolheptaphenyl-IC-POSSと、4.7mmol(0.65mL)のトリエチルアミンとを8mLのトルエンに溶解させた。溶液の温度を0℃にしたのち、2.25mmolのクロロジメチルシランを窒素雰囲気下で溶液に滴下した。この混合物を0℃で1時間攪拌し、室温でさらに3時間攪拌した。攪拌が完了した後、混合物に蒸留水を加え、次いでトルエンで抽出した。その後、不溶部をろ過で除き、減圧下で溶媒を留去することにより粗生成物を得た。粗生成物をメタノールに溶解させた後、再結晶させることにより化合物6を得た。化合物6は無色固体であった。また、化合物6の収率は87%であった。化合物6のNMR化学シフト(1H、13C、29Si)は以下の通りである。
【0100】
1H-NMR(in CDCl3,400MHz):δ=7.65(d,J=6.8Hz,2H),7.51(dd,J=1.2Hz,8.2Hz,6H),7.41-7.33(m,15H),7.20(dt,J=53.2Hz,7.8Hz,12H),4.99(sep,J=52.8Hz,3H),0.41(d,J=52.8Hz,18H) ppm。
【0101】
13C-NMR(in CDCl3,100MHz):δ=134.2-134.0,132.6,131.1,130.8,130.6,130.3,130.2,128.0,127.9,127.8,127.6 ppm。
【0102】
29Si-NMR(CDCl3,80MHz)δ=-2.8,-77.2,-77.5,-78.2 ppm。
【0103】
・化合物7
0.208mmol(0.217g)の化合物8と、0.207mmol(0.258g)の化合物4を2mLのTHFに溶解させた。この溶液に4μLのKarstedt’s触媒(0.1M in xylene)を加えた後、窒素雰囲気下で6時間還流して化合物2と化合物6とを重合させた。重合終了後、スカベンジャー(SiliaMets triamine)によって触媒を取り除き、減圧下で揮発成分を留去することで、化合物7を得た。化合物7は無色固体であった。また、上記の方法により得られた化合物7の数平均分子量Mnは3.4×103であり、多分散度Mw/Mnは7.9であった。化合物7のNMR化学シフト(1H、29Si)は以下の通りである。
【0104】
1H-HMR(in CDCl3,400MHz):δ=2.07(br,14H),1.82(br,7H),0.95(br,42H),0.82(br,14H),0.55(br,14H),0.46(m,12H),0.16-0.11(m) ppm。
【0105】
29Si-HMR(in CDCl3,80MHz):δ=13.39,9.74,-66.19,-67.18--67.85 ppm。
【0106】
・化合物8
0.632mmol(0.5g)のtrisilanolheptaisobutyl-IC-POSSと、6.3mmol(0.88mL)のトリエチルアミンとを7mLのTHFに溶解させた。溶液の温度を0℃にしたのち、2.84mmolのクロロジメチルビニルシランを窒素雰囲気下で溶液に滴下した。この混合物を0℃で1時間攪拌し、室温でさらに3時間攪拌した。攪拌が完了した後、混合物に蒸留水を加え、次いでヘキサンを加えて抽出操作を行った。その後、不溶部をろ過で除き、減圧下で溶媒を留去することにより粗生成物を得た。GPCを用いて粗生成物を精製することにより、化合物8を得た。化合物8は無色固体であった。また、化合物8の収率は69%であった。化合物8のNMR化学シフト(1H、13C、29Si)は以下の通りである。
【0107】
1H-NMR(in CDCl3,400MHz):δ=6.15(dd,J=14.8Hz,20.4Hz,3H),5.92(dd,J=4.0Hz,14.8Hz,3H),5.75(dd,J=4.0Hz,20.4Hz,3H),1.90-1.77(m,7H),0.97-0.94(m,42H),0.58-0.54(m,14H),0.20(s,18H) ppm。
【0108】
13C-NMR(in CDCl3,100MHz):δ=139.2,131.8,26.1,25.9,25.7,25.0,24.1,24.0,23.9,23.8,22.5,0.4 ppm。
【0109】
29Si-NMR(CDCl3,80MHz)δ=-2.6,-67.3,-67.8,-68.0 ppm。
【0110】
・化合物9
3.99mmol(3.16g)のtrisilanolheptaisobutyl-IC-POSSと、40.2mmol(5.6mL)のトリエチルアミンとを40mLのTHFに溶解させた。溶液の温度を0℃にしたのち、18.0mmolのクロロジメチルシランを窒素雰囲気下で溶液に滴下した。この混合物を0℃で1時間攪拌し、室温でさらに3時間攪拌した。攪拌が完了した後、混合物に蒸留水を加え、次いでn-ヘキサンを加えて抽出操作を行った。その後、不溶部をろ過で除き、減圧下で溶媒を留去することにより粗生成物を得た。粗生成物をメタノールで再結晶させることにより、中間体Bを得た。
【0111】
次に、1.60mmol(2.00g)の中間体Bと、7.20mmol(0.70mL)の3-メチル-3-ブテン-1-オールとを9.4mLのTHFに溶解させた。この溶液を窒素雰囲気下において50℃の温度で6時間攪拌することにより、中間体Cを得た。
【0112】
次に、0.327mmol(0.400g)の中間体Cと、0.848mmol(0.14mL)のメタクリル酸2-イソシアナトエチルとを1mLのTHFに溶解させた。この溶液を50℃で2時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去することにより化合物9を得た。
【0113】
本例においては、まず、有機溶媒中に表1~表3に示す質量比で各成分を溶解または分散させてコーティング剤(試験剤1~19)を調製した。また、試験剤の調製とは別に、基材として、ポリカーボネートからなる板厚5mmの板材を準備した。なお、表1~表3に示した「PSQ」は、具体的には、不完全かご型以外の骨格を有するシルセスキオキサンである。
【0114】
フローコーターを用いて基材の片面上に試験剤を塗布した後、基材を100℃の温度で10分間加熱してコーティング剤を乾燥させた。その後、試験剤に紫外光を照射することにより基材中のラジカル重合開始剤(C)からラジカルを発生させた。なお、本例においては、紫外光の光源として、ピーク照度300mW/cm2の高圧水銀ランプを使用した。
【0115】
以上により、基材の片面上に試験剤の硬化物からなるコーティング膜を形成し、樹脂部材を得た。得られた樹脂部材のコーティング膜に水を滴下し、水の接触角を測定した。各樹脂部材における水の接触角を表1~表3の「初期接触角」欄に示す。
【0116】
また、表1に示す試験剤1、2、4及び表2に示す試験剤15を用いて作製した樹脂部材については、水の接触角を測定した後の樹脂部材を用いて劣化試験を行った。劣化試験においては、メタルハライドランプを使用したUV耐候性試験を行い、樹脂部材のコーティング膜を劣化させた。劣化試験後のコーティング膜に水を滴下し、水の接触角を測定した。これらの樹脂部材における、劣化試験後の水の接触角を表1及び表2の「劣化試験後接触角」欄に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
表1及び表2に示すように、試験剤1~試験剤15には、前記特定のシルセスキオキサン成分(A)と、(メタ)アクリレート成分(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とが含まれている。そのため、これらの試験剤を基材上で硬化させることにより、優れた撥水性を備えたコーティング膜を形成することができる。一方、表3に示すように、前記特定のシルセスキオキサン成分(A)を含まない試験剤16~試験剤19の撥水性は、試験剤1~試験剤15に比べて劣っていた。
【0121】
コーティング膜中のシルセスキオキサン成分(A)の配向状態をより詳しく調べるため、試験剤1及び試験剤16について、以下の方法により、コーティング膜の厚み方向における不完全かご型シルセスキオキサン骨格及びフルオロアルキル基の分布状態の評価を行った。まず、図1に示すように、各テストピース1のコーティング膜2を、基材3とともに、コーティング膜2の厚み方向に対して傾斜した方向に切削した。これにより、コーティング膜2の最表面21に対して傾斜した傾斜面22を露出させた。
【0122】
図1に示すように、傾斜面22には、コーティング膜2における、最表面からの深さの異なる種々の部分が露出している。それ故、傾斜面22上の複数の位置において、全反射測定法による赤外吸収スペクトルを取得し、傾斜面22上の測定位置を最表面21からの深さに換算することによって、厚み方向における不完全かご型シルセスキオキサン骨格及びフルオロアルキル基の分布の状態を評価することができる。
【0123】
本例の試験剤の組成では、赤外吸収スペクトルにおける波数1065cm-1付近に不完全かご型シルセスキオキサン骨格のシロキサン結合に由来するピークが現れる。従って、赤外吸収スペクトルにおける波数1065cm-1の吸光度が大きいほど、より多くの不完全かご型シルセスキオキサン骨格が存在していると判断することができる。同様に、赤外吸収スペクトルにおける波数1210cm-1付近にフルオロアルキル基のC-F結合に由来するピークが現れる。従って、赤外吸収スペクトルにおける波数1210cm-1の吸光度が大きいほど、より多くのフルオロアルキル基が存在していると判断することができる。
【0124】
図2に、赤外吸収スペクトルに基づいて作成した不完全かご型シルセスキオキサン骨格の厚み方向の分布を示す。図2の縦軸はシロキサン結合に由来する吸収ピークの吸光度であり、横軸は、傾斜面22上の測定位置から換算した最表面21からの深さ(μm)である。
【0125】
また、図3に、赤外吸収スペクトルに基づいて作成したフルオロアルキル基の厚み方向の分布を示す。図3の縦軸はC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度であり、横軸は、傾斜面22上の測定位置から換算した最表面21からの深さ(μm)である。
【0126】
図2及び図3に示したように、試験剤1は、試験剤16に比べて表面近傍におけるシロキサン結合及びC-F結合に由来するピークの吸光度が高かった。これらの結果から、試験剤1の硬化物からなるコーティング膜の表面には、フルオロアルキル基が露出していると推定することができる。また、コーティング膜の表面近傍には、フルオロアルキル基に伴って浮上した不完全かご型シルセスキオキサン骨格が多く存在していると推定することができる。
【0127】
また、試験剤1から作製したコーティング膜の内部は、表面に比べてシロキサン結合及びC-F結合に由来するピークの吸光度が低かった。この結果から、試験剤1の硬化物からなるコーティング膜の内部には、表面に比べて(メタ)アクリレート成分(B)が重合してなる有機成分が豊富に存在していると推定することができる。
【0128】
これらの配向状態は、試験剤1と同様にフルオロアルキル基を備えたシルセスキオキサン成分(A)を含む試験剤2~試験剤14についても実現されていると考えられる。
【0129】
従って、前記特定の組成を有するコーティング剤によれば、基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 樹脂部材
2 コーティング膜
3 基材
図1
図2
図3