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特許7390685プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材、その使用方法、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造及びプレキャストコンクリート壁の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材、その使用方法、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造及びプレキャストコンクリート壁の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20231127BHJP
   F16L 25/00 20060101ALI20231127BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20231127BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
E01D19/10
F16L25/00 C
H02G9/06
H02G1/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020100387
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021165518
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020068809
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 康
(72)【発明者】
【氏名】中野 智章
(72)【発明者】
【氏名】村上 政通
(72)【発明者】
【氏名】千福 啓之
(72)【発明者】
【氏名】川村 剛史
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 一治
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】小西 正伸
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-147192(JP,A)
【文献】特許第3834769(JP,B2)
【文献】特開2018-141341(JP,A)
【文献】特開2002-30610(JP,A)
【文献】特開2019-157501(JP,A)
【文献】特開2002-146915(JP,A)
【文献】特開2004-68381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/10
F16L 25/00
H02G 9/06
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
一方の第1プレキャストコンクリート壁の内部の第1埋設管の一端が接続される第1埋設管接続部と、
他方の第2プレキャストコンクリート壁の内部の第2埋設管の一端が接続される第2埋設管接続部と、
上記第1埋設管接続部の他端側の上記第1プレキャストコンクリート壁の側面側の第1接続用開口端部に形成された被係合部と、
上記第1埋設管接続部の内部に全体が収容可能な筒状の中子と、
上記第1埋設管接続部の内部における上記中子の奥側に全体が収容可能な筒状の付勢部材と、
上記中子が上記付勢部材を押し込んで上記第1埋設管接続部に収容された状態で、上記被係合部に係合し、上記中子及び上記付勢部材が抜け出すのを防止する抜け防止部材と、
上記抜け防止部材に連結され、引っ張られることで、上記被係合部から該抜け防止部材を引き出す引張部材とを備え、
上記第1埋設管接続部から飛び出した上記中子の先端側が上記第2埋設管接続部の第2接続用開口端部に嵌まり込んだ状態で、上記第1埋設管と上記第2埋設管とを接続可能に構成されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記中子の外周は、外観上目立つようにマーキングされている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記中子の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布が巻かれている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記抜け防止部材は、棒状部材又はクリップ部材であり、
上記被係合部は、上記第1接続用開口端部に形成された、上記棒状部材又はクリップ部材を着脱可能に保持する差し込み孔である
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記抜け防止部材は、板状部材であり、
上記被係合部は、該板状部材を着脱可能に保持する上記第1接続用開口端部に形成された切欠である
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を使用する継手構造であって、
上記第1埋設管に接続された上記継手部材の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面の間の目地部に開口し、
上記中子が上記付勢部材で上記第2プレキャストコンクリート壁側へ付勢された状態で上記第1埋設管接続部と上記第2埋設管接続部とを跨ぐように配設され、
上記目地部と上記中子の外周面との間に充填剤が充填されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材及び上記第1及び第2埋設管を準備し、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部を接続し、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部を接続し、
上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように上記第1及び第2埋設管を型枠内に配置し、
上記型枠内にコンクリートを打設して上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を形成し、
上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁の埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入された上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材を上記被係合部に係合させて上記中子を抜け止めした状態で、一対のプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより並べ、
上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出し、
上記付勢部材に付勢されて飛び出した中子で上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続し、
上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁の間の目地部と上記中子の外周面と間に充填剤を充填する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項8】
請求項7のプレキャストコンクリート壁の設置方法において、
上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出した後、上記付勢部材に付勢された中子が上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続したことを、該中子の外周に施されたマーキングにより確認する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法であって、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部が接続され、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部が接続され、上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように複数組の上記第1及び第2埋設管が上下に直線状に並ぶ上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第1及び第2埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入されたそれぞれの上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材を上記被係合部に係合させて上記中子を抜け止めした状態で、上下に並ぶ全ての中子を塞ぐように上下に長い棒状のシャッター部材を配置する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法において、
上記上下に並ぶ中子に対応する上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出すと共に、上記シャッター部材を徐々に上方に移動させ、
上記付勢部材に付勢されて飛び出した中子で、下側から順番に上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法であって、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部が接続され、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部が接続され、上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように複数組の上記第1及び第2埋設管が上下に直線状に並ぶ上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第1及び第2埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入されたそれぞれの上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材及び引張部材を兼ねる、対応する中子の位置に合わせて長さの異なる上下に長い棒状の複数本のシャッター部材を上記被係合部にそれぞれ係合させて上記中子を抜け止めした状態で、上下に並ぶ全ての中子を塞ぐように上記シャッター部材を配置し、
引き抜くときには、上記複数本のシャッター部材を束ねた状態で一度に引き抜く
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材、その使用方法、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造及びプレキャストコンクリート壁の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等のコンクリート壁高欄の内部にケーブルを収納するための通信管等を埋設することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、コンクリート内埋設輸送管であって、特に港湾施設のうち岸壁内に埋設する船舶用給水等のユーティリティ用の輸送管に好適に用いることのできる埋設構造が知られている。この埋設構造では、輸送管継目をコンクリート伸縮目地部に位置させ、この輸送管継目に伸縮管を介装し、この伸縮管を覆う外管を一方の輸送管側に配設し、外管の外径に外嵌し、外管の軸方向に摺動可能な摺動管を他方の輸送管側に配設し、輸送管をコンクリート内に埋設するようにしている。
【0004】
また、特許文献2のように、電力ケーブル、電話線、CATV用ケーブルや有線放送用ケーブルなどの電力・通信線をケーブル保護管で保護して敷設するに際し、橋梁や高速道路の高架橋などの緩衝部において、特定形状の管継手を用いてケーブル保護管を接続することが知られている。このケーブル保護管の接続構造は、両端部にケーブル保護管の受け口を有する蛇腹管と、ケーブル保護管に固定され、蛇腹管の外周辺を保護するカバー部材から構成され、カバー部材は、一端部が蛇腹管の中央外周辺において所要の間隔で相対するとともに、他端部が前記ケーブル保護管と係合する左右一対の筒状部材で形成され、各筒状部材の先端側に位置する連結部材との取付け部以外は高欄に埋設しており、相対する筒状部材同士は、柔軟性を有する連結部材で一体的に結合している。
【0005】
また、特許文献3のように、床版の橋軸に直交し、橋面に平行な方向の側端部に、地覆を介して接合されるとともに、橋軸方向に隣接する他のプレキャスト壁高欄部材と接合されるプレキャスト壁高欄部材が知られている。このプレキャスト壁高欄部材は、地覆の上方に配置され、両者のコンクリート部分の間には無収縮モルタル等の目地材が配置される。クレーン等により、プレキャスト壁高欄部材は配置すべき位置の上方まで移動され、受容孔に第1縦方向定着筋及び第2縦方向定着筋が受容され、かつ受容溝に設置済みの隣接するプレキャスト壁高欄部材の横方向定着筋が受容されるように、プレキャスト壁高欄部材を下ろしていき、所定の位置に配置するように施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-147192号公報
【文献】特許第3834769号公報
【文献】特開2018-141341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、隣接するプレキャストコンクリート壁を特許文献3のように落とし込みで接続する場合、両壁間の隙間を埋設管の接続用開口端部同士を接続する中子で接続しようとすると、中子が邪魔をしてプレキャストコンクリート壁の落とし込みを行うことができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隣接するプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより接続する場合であっても、中子を使用して容易に埋設管同士を接続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、中子を一方の埋設管接続部に一時的に収容できるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を対象とする。
【0011】
上記プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材は、
一方の第1プレキャストコンクリート壁の内部の第1埋設管の一端が接続される第1埋設管接続部と、
他方の第2プレキャストコンクリート壁の内部の第2埋設管の一端が接続される第2埋設管接続部と、
上記第1埋設管接続部の他端側の上記第1プレキャストコンクリート壁の側面側の第1接続用開口端部に形成された被係合部と、
上記第1埋設管接続部の内部に全体が収容可能な筒状の中子と、
上記第1埋設管接続部の内部における上記中子の奥側に全体が収容可能な筒状の付勢部材と、
上記中子が上記付勢部材を押し込んで上記第1埋設管接続部に収容された状態で、上記被係合部に係合し、上記中子及び上記付勢部材が抜け出すのを防止する抜け防止部材と、
上記抜け防止部材に連結され、引っ張られることで、上記被係合部から該抜け防止部材を引き出す引張部材とを備え、
上記第1埋設管接続部から飛び出した上記中子の先端側が上記第2埋設管接続部の第2接続用開口端部に嵌まり込んだ状態で、上記第1埋設管と上記第2埋設管とを接続可能に構成されている。
【0012】
上記の構成によると、第1及び第2プレキャストコンクリート壁を製造する際に、第1及び第2埋設管接続部を埋設しておき、第1埋設管接続部側に付勢部材及び中子を嵌め込んだ状態で抜け防止部材で抜け止めすることで、第1及び第2プレキャストコンクリート壁を落とし込みで接続する際に中子が邪魔にならない。そして、落とし込みが終了した後に、引張部材を引いて抜け防止部材を被係合部から引き出すと、付勢部材に付勢されて第1埋設管接続部から飛び出した中子の先端側が第2埋設管接続部の第2接続用開口端部に嵌まり込む。これにより、第1埋設管と第2埋設管とが接続された状態で、モルタル等を流し込んで、第1及び第2プレキャストコンクリート壁を接続することができる。接続後は、抜け防止部材及び引張部材は、取り除かれ、付勢部材と中子は残るが、これらは筒状であるので、第1及び第2埋設管にケーブル等を挿入するときに邪魔にならない。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
上記中子の外周は、外観上目立つようにマーキングされている。
【0014】
上記の構成によると、引張部材を引っ張って抜け防止部材を引き出した後、中子が飛び出して第2接続用開口端部側へ移動すると、そのマーキングが見えていることを確認できる。このため、中子が正常な位置に配置されたのを確認した上で、モルタル等を流し込むことができる。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記中子の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布が巻かれている。
【0016】
上記の構成によると、充填剤であるモルタルに含まれる水分により、水膨張性不織布が膨らむので、中子と第1接続用開口端部及び第2接続用開口端部との間で確実にシールでき、モルタルが第1及び第2埋設管の内部に流れ込まない。
【0017】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記抜け防止部材は、棒状部材又はクリップ部材であり、
上記被係合部は、上記第1接続用開口端部に形成された、上記棒状部材又はクリップ部材を着脱可能に保持する差し込み孔である。
【0018】
上記の構成によると、差し込み孔だと棒状部材やクリップ部材の先端を固定しやすい上に、差し込み孔に差し込んだだけであるので、引張部材を引っ張ったときに抜け防止部材が抜けやすい。
【0019】
第5の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記抜け防止部材は、板状部材であり、
上記被係合部は、該板状部材を着脱可能に保持する第1接続用開口端部に形成された切欠である。
【0020】
上記の構成によると、板状部材であるため、接触面積が広く、付勢部材の付勢力に抗して中子を押さえ込みやすい。また、切欠に差し込んだだけであるので、引張部材によって引っ張った際にも抜け防止部材を切欠から引き出しやすい。
【0021】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を使用する継手構造であって、
上記第1埋設管に接続された上記継手部材の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面の間の目地部に開口し、
上記中子が上記付勢部材で上記第2プレキャストコンクリート壁側へ付勢された状態で上記第1埋設管接続部と上記第2埋設管接続部とを跨ぐように配設され、
上記目地部と上記中子の外周面との間に充填剤が充填されている。
【0022】
上記の構成によると、隣接するプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより接続する場合であっても、中子を使用して容易に埋設管同士を接続できる簡単な構成の継手構造が得られる。
【0023】
第7の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材及び上記第1及び第2埋設管を準備し、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部を接続し、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部を接続し、
上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように上記第1及び第2埋設管を型枠内に配置し、
上記型枠内にコンクリートを打設して上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を形成し、
上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁の埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入された上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材を上記被係合部に係合させて上記中子を抜け止めした状態で、一対のプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより並べ、
上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出し、
上記付勢部材に付勢されて飛び出した中子で上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続し、
上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁の間の目地部と上記中子の外周面との間に充填剤を充填する構成とする。
【0024】
上記の構成によると、コンクリート打設後に、第1埋設管接続部に付勢部材と中子とを押し込んだ状態で抜け防止部材を被係合部に係合させて中子を抜け止めした状態で、落とし込みにより隣接するプレキャストコンクリート壁を並べるので、中子が邪魔にならない。そして、並べた後に引張部材を引っ張って抜け防止部材を取り除くと、付勢部材の作用により、中子が移動して第1接続用開口端部と第2接続用開口端部とが接続され、その結果として第1埋設管と第2埋設管とが接続される。その状態で、モルタルなどの充填剤を充填すると、中子で接続されているので、第1埋設管及び第2埋設管の内部にモルタルが流れ込まない。
【0025】
第8の発明では、第7の発明において、
上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出した後、上記付勢部材に付勢された中子が上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続したことを、該中子の外周に施されたマーキングにより確認する。
【0026】
上記の構成によると、引張部材を引っ張って抜け防止部材を引き出した後、中子が飛び出して第2接続用開口端部側へ移動すると、そのマーキングが見えていることを確認できる。このため、中子が正常な位置に配置されたのを確認した上で、モルタル等を流し込むことができる。
【0027】
第9の発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法は、第1から第5のいずれか1つの発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法であって、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部が接続され、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部が接続され、上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように複数組の上記第1及び第2埋設管が上下に直線状に並ぶ上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第1及び第2埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入されたそれぞれの上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材を上記被係合部に係合させて上記中子を抜け止めした状態で、上下に並ぶ全ての中子を塞ぐように上下に長い棒状のシャッター部材を配置する構成とする。
【0028】
また、第10の発明は、第9の発明において、
上記上下に並ぶ中子に対応する上記抜け防止部材を、上記引張部材を引っ張って上記被係合部から抜き出すと共に、上記シャッター部材を徐々に上方に移動させ、
上記付勢部材に付勢されて飛び出した中子で、下側から順番に上記第1接続用開口端部と上記第2接続用開口端部とを接続する構成とする。
【0029】
複数の中子が上下に一直線状に並べられている場合、中子が確実に飛び出しているのを上方から目視できるように、本来ならば下側から順に抜け防止部材を外して中子を飛び出させるようにするが、場合によっては順番を間違えたり、意図しない上側の中子が先に飛び出したりすることがある。しかし、上記の構成によると、上下に並ぶ複数の中子の前に棒状のシャッター部材が配置されているので、下からの順番に従わずに誤って飛び出してきた中子は、シャッター部材が上方に移動してその下端が中子の前よりも上方に移動しない限り、飛び出さない。
【0030】
第11の発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法は、第1から第5のいずれか1つの発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法であって、
上記第1埋設管に上記第1埋設管接続部が接続され、上記第2埋設管に上記第2埋設管接続部が接続され、上記第1埋設管接続部の上記第1接続用開口端部が上記第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ上記第2埋設管接続部の上記第2接続用開口端部が上記第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように複数組の上記第1及び第2埋設管が上下に直線状に並ぶ上記第1及び第2プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第1及び第2埋設管の接続用開口端部同士を接続する上記中子を上記付勢部材が挿入されたそれぞれの上記第1埋設管接続部に圧入し、
上記抜け防止部材及び引張部材を兼ねる、対応する中子の位置に合わせて長さの異なる上下に長い棒状の複数本のシャッター部材を上記被係合部にそれぞれ係合させて上記中子を抜け止めした状態で、上下に並ぶ全ての中子を塞ぐように上記シャッター部材を配置し、
引き抜くときには、上記複数本のシャッター部材を束ねた状態で一度に引き抜く構成とする。
【0031】
上記の構成によると、シャッター部材が、抜け防止部材を兼ねることができ、それぞれの長さが異なるので、引き抜くときには、下側から順番に中子が飛び出す。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、隣接するプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより接続する場合であっても、中子を使用して容易に埋設管同士を接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁の中子挿入工程を示す分解断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁の落とし込み工程を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁のモルタル充填工程を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を含む継手構造を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁を示し、(a)が鋼板ジベル側の側面を示し、(b)が溝側の側面を示す。
図6】一対のプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより接続する様子を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態2に係る図2相当断面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る板状部材が係合された第1埋設管接続部を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態3の変形例1に係る図8相当側面図である。
図10】本発明の実施形態3の変形例2に係る図8相当側面図である。
図11】本発明の実施形態4に係るプレキャストコンクリート壁及びシャッター部材を示す側面図である。
図12】本発明の実施形態4の変形例に係るプレキャストコンクリート壁及びシャッター部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
(実施形態1)
図4は、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’の内部に埋設される埋設管4,4’を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を含む継手構造1を示す。プレキャストコンクリート壁2,2’及び埋設管4,4’は、図4に示すように、全体として基本的に同じ形状をしているが、図1に示すように、1カ所の接合面に着目したときに、理解しやすいように名称を変えている。
【0036】
例えば、図5及び図6に示すように、プレキャストコンクリート壁2,2’は、例えば、高さ900mm程度で、幅(厚さ)は250~450mm程度で、長さは2~3mある。プレキャストコンクリート壁2,2’の一方側側面には、鉛直方向に延びる鋼板ジベル40が埋設されており、他方側側面には、この鋼板ジベル40が嵌まり込む溝部41が形成されている。詳しくは後述するが、このプレキャストコンクリート壁2,2’内に第1及び第2埋設管4,4’等を埋設した状態で、プレキャストコンクリート壁2,2’を多数製造しておき、現場で落とし込みにより多数のプレキャストコンクリート壁2,2’を連結する。
【0037】
図1図3に拡大して示すように、この継手部材は、一方の第1プレキャストコンクリート壁2の内部の第1埋設管4の一端に第1直管部11が接続される円筒状の第1埋設管接続部10と、他方の第2プレキャストコンクリート壁2’の内部の第2埋設管4’の一端に第2直管部21が接続される円筒状の第2埋設管接続部20とを備えている。第1及び第2埋設管4,4’は、例えば、汎用の硬質塩化ビニル電線管よりなる。本実施形態では、高速道路などの高欄の内部に埋設する埋設管4,4’を対象としている。また、第1埋設管接続部10と第2埋設管接続部20とは、例えば異なる形状を有する硬質塩化ビニルなどの樹脂成形品よりなる。第1直管部11と第1埋設管4は、第1ソケット16で連結されている。第2直管部21と第2埋設管4’は、第2ソケット26で連結されている。なお、第1直管部11及び第2直管部21の内径を埋設管4,4’の外径よりも若干大きくして、直管部11,直管部21に埋設管4,4’を挿入するようにしてもよい。
【0038】
第1埋設管接続部10の他端側、すなわち第1プレキャストコンクリート壁2の側面側の第1接続用開口端部12には、被係合部としての差し込み孔14,15が形成されている。本実施形態では、上側差し込み孔14は、半径方向外側へ拡がる突出部13に、第1プレキャストコンクリート壁2の側面と同じ表面から内部に向かって斜めに貫通されている。下側差し込み孔15は、上側差し込み孔14の真下に上下真っ直ぐに貫通されている。そうすることで、第1接続用開口端部12の表面の高さと第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の側面の高さとを揃えながらも、抜け防止部材30の差し込み及び抜き出しを滑らかに行うことができるようになっている。
【0039】
第2埋設管接続部20の他端側の第2接続用開口端部22は、第1埋設管接続部10の第1接続用開口端部12よりも軸方向長さが短くなっている。第1及び第2接続用開口端部12,22は、それぞれ第1及び第2直管部11,21よりも内径が大きくなっている。
【0040】
図1に示すように、継手構造1は、第1埋設管接続部10の内部に全体が収容可能な中子6を備えている。中子6は、例えば、円筒状の樹脂成形品で構成されている。中子6の長さは、第1埋設管接続部10の内部に全体が入り込む長さとなっており、両端には面取が施されている。このため、第1接続用開口端部12及び第2接続用開口端部22に滑らかに挿入できる。また、中子6の外周は、特にこの長手方向中央部分が、赤色に着色されるなどにより、マーキングされている。中子6の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布8が巻かれている。このため、充填剤であるモルタル3を充填する際に、モルタル3の水分で水膨張性不織布8が膨らんでモルタル3が第1及び第2埋設管4,4’内に流れ込まないようになっている。図2及び図3に示すように、中子6の一端が第1埋設管接続部10内に収容されているときに第1接続用開口端部12のテーパ部に当接し、図3に示すように抜け防止部材30が取り除かれたときに、他端が第2接続用開口端部22のテーパ部に当接するようになっている。中子6の長手方向中央部分は凹んでいるので、モルタル3を流し込むときに、この凹部にもモルタル3が流れ込んで中子6がしっかり固定される。このため、その後のケーブル等の通線作業する際に中子6が移動することはない。一方、モルタル3を充填する前にケーブル等の通線作業をする場合には、この凹部に止め輪を取り付けることで、中子6が移動しないようにしてもよい。なお、中子6の両端内面に面取を設けると、電線等を通線作業する際に、電線等が中子6に引っかかり難くなり、滑らかに挿入できる。
【0041】
また、継手構造1は、第1埋設管接続部10の内部における中子6の奥側に全体が収容可能な筒状の付勢部材としての圧縮コイルバネ7を備えている。圧縮コイルバネ7は、例えばバネ用ステンレス鋼線よりなる。圧縮コイルバネ7を、防錆コーティングしたバネ用鋼線で構成してもよい。図2に示すように、この圧縮コイルバネ7は、圧縮された状態で中子6と共に第1埋設管接続部10の内部に収まる大きさで、埋設後にケーブル等が引っかからないような滑らかな内周面を有するのが望ましい。圧縮コイルバネ7の外径は、第1埋設管接続部10の第1接続用開口端部12の内径より若干小さく、中子6の内径よりも大きい。
【0042】
なお、圧縮コイルバネ7の内側に内面が滑らかな円筒状カバーを設けてもよい。また、圧縮コイルバネ7を筒状のビニルやフィルムで包んで圧縮コイルバネ7と共に伸縮できるようにしてもよい。いずれの場合も、電線等を通線作業する際に、電線等が圧縮コイルバネ7の内周面に引っかかり難くなる。
【0043】
第2埋設管接続部20の第2接続用開口端部22の内径は、中子6の外径よりも若干大きく、奥行きは、第1接続用開口端部12よりも短い。
【0044】
そして、継手構造1は、中子6が圧縮コイルバネ7を押し込んで第1埋設管接続部10に収容された状態で、上下の差し込み孔14,15に係合し、中子6及び圧縮コイルバネ7が抜け出すのを防止する、棒状部材よりなる抜け防止部材30を備えている。この抜け防止部材30は、例えば細長い針金状のものよりなり、圧縮コイルバネ7の付勢力に抗する程度の剛性を有するものが望ましい。
【0045】
この抜け防止部材30には、引っ張られることで、差し込み孔14,15から抜け防止部材30を引き出す引張部材31が連結されている。例えば、この引張部材31は、抜け防止部材30の上端に結ばれた、適度な引張張力を有する紐よりなる。
【0046】
そして、図3に示すように、第1埋設管接続部10から飛び出した中子6の先端側が第2埋設管接続部20の第2接続用開口端部22に嵌まり込んだ状態で、第1埋設管4と第2埋設管4’とを接続可能に構成されている。
【0047】
なお、本実施形態におけるプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材は、第1埋設管接続部10、第2埋設管接続部20、中子6、圧縮コイルバネ7、抜け防止部材30及び引張部材31よりなる。
【0048】
図3に示すように、本実施形態のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造1は、第1埋設管4に接続された第1埋設管接続部10の第1接続用開口端部12が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面の間の目地部に開口し、中子6が圧縮コイルバネ7で第2プレキャストコンクリート壁2’側へ付勢された状態で第1埋設管接続部10と第2埋設管接続部20とを跨ぐように配設され、目地部及び中子6の外周面と第1及び第2接続用開口端部12,22の内周面との間に充填剤としてのモルタル3が充填されている。
【0049】
-プレキャストコンクリート壁の設置方法-
次いで、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造及びプレキャストコンクリート壁の設置方法について説明する。
【0050】
準備工程において、上述した第1及び第2埋設管4,4’、第1及び第2埋設管接続部10,20、中子6、抜け防止部材30、引張部材31等を準備する。
【0051】
まず、型枠組立工程において、工場内等で、木製等の型枠を配置する。
【0052】
次いで、鉄筋組立工程において、型枠内に棒状及び環状の鉄筋51を配筋する。また、一方側側面に鋼板ジベル40も設けておく。
【0053】
次いで、埋設管設置工程において、型枠内において、図1に拡大して示すように、第1埋設管4の一端に第1埋設管接続部10の第1直管部11を、第1ソケット16を用いて接続し、第2埋設管4’の一端に第2埋設管接続部20の第2直管部21を、第2ソケット26を用いて接続する。なお、図4の中央に示す1本の第1埋設管4全体で言えば、右側端部に第1埋設管接続部10が接続され、左側端部に第2埋設管接続部20が接続される。
【0054】
そして、第1埋設管接続部10の第1接続用開口端部12が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面に開口するように、かつ第2埋設管接続部20の第2接続用開口端部22が第1プレキャストコンクリート壁2の側面と対向する側面に開口するように、第1及び第2埋設管4,4’を型枠内に配置する。
【0055】
そして、コンクリート打設工程において、型枠内にコンクリートを打設する。
【0056】
次いで、型枠離型工程において、型枠を離型し、図1に示すように、プレキャストコンクリート壁2,2’が完成する。
【0057】
次いで、図1に示すように、中子挿入工程において、第1埋設管接続部10に圧縮コイルバネ7を挿入した後、中子6を、この圧縮コイルバネ7を押し付けながら挿入して保持する。このとき、中子6の外周端部が面取され、また、第1接続用開口端部12の内周面にテーパ面が設けられているので、挿入しやすい。
【0058】
次いで、図2に示すように、中子保持工程において、引張部材31が基端側に結ばれた抜け防止部材30の先端を上側差し込み孔14に挿入した後、下側差し込み孔15に差し込んで、保持していた中子6から手を離す。図2に示すように、中子6が第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の側面から飛び出さない。
【0059】
このプレキャストコンクリート壁2,2’を多数製造しておき、高速道路などの工事現場に運搬する。
【0060】
そして、工事現場において、図6に示すように、落とし込み工程において、抜け防止部材30を差し込み孔14,15に係合させて中子6を抜け止めした状態で、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’を鋼板ジベル40が溝部41に嵌まり込むようにしながら、クレーン等を用いて落とし込みにより並べ、図2の状態にする。このとき、引張部材31は、作業者が引っ張れる位置に配置しておく。一対のプレキャストコンクリート壁2,2’間の隙間が目地部となる。
【0061】
次いで、抜け防止部材抜き出し工程において、抜け防止部材30を、引張部材31を引っ張って差し込み孔14,15から抜き出す。
【0062】
すると、図3に示すように、圧縮コイルバネ7に付勢された中子6により、第1接続用開口端部12と第2接続用開口端部22とが接続される。その結果、埋設管4,4’同士が密閉状に接続される。このとき、中子6の外周端部が面取され、また、第2接続用開口端部22の内周面にテーパ面が設けられているので、飛び出したときに奥まで入り込みやすい。
【0063】
このとき、中子6の外周がマーキングされているので、そのマーキングを第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’間の隙間から確認することで、確実に中子6が飛び出したのを確認できる。
【0064】
確認後、図3に示すように、モルタル充填工程において、第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’間の目地部並びに中子6の外周面及び接続用開口端部12,22の内周面の間にモルタル3を充填する。このとき、中子6の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布8が巻かれているので、この水膨張性不織布8がモルタルの水分で膨らみ、第1接続用開口端部12及び第2接続用開口端部22との間で確実にシールできる。このため、モルタル3が第1及び第2埋設管4,4’内部に流れ込まない。なお、このとき、第1及び第2接続用開口端部12,22やシール材によっては、第1接続用開口端部12及び第2接続用開口端部22の内周面側までモルタル3は流れ込まない。
【0065】
次いで、充填剤3が乾いた後、埋設管4内に電線等を配線する。第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2の接続後は、抜け防止部材30及び引張部材31は、取り除かれ、圧縮コイルバネ7と中子6は残るが、これらは筒状であるので、第1及び第2埋設管4,4’にケーブル等を挿入するときに邪魔にならない。なお、埋設管4,4’内に挿入するのは、電線等に限定されない。
【0066】
したがって、本実施形態に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材によると、隣接するプレキャストコンクリート壁2,2’を落とし込みにより接続する場合であっても、中子6を使用して容易に接続用開口端部12,22同士を接続できる。
【0067】
(実施形態2)
図7は本発明の実施形態2のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造101を示し、主として抜け防止部材の構成が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各実施形態では、図1から図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0068】
本実施形態の抜け防止部材は、クリップ部材130であり、被係合部は、第1埋設管接続部110の第1接続用開口端部112に形成された、クリップ部材130の先端を着脱可能に保持する下側差し込み孔115である。
【0069】
本実施形態では、1つの差し込み孔115だと固定しやすい上に、引張部材31を引っ張ったときに抜けやすいメリットがある。
【0070】
(実施形態3)
図8は本発明の実施形態3に係る板状部材230で中子6が抜け止めされた継手構造を示し、抜け止め部材及び被係合部の構造が異なる点で上記実施形態1及び2と異なる。
【0071】
本実施形態の抜け防止部材は、ある程度の板幅及び板厚を有する板状部材230であり、被係合部は、この板状部材230を着脱可能に保持する第1接続用開口端部212に形成された切欠214である。
【0072】
本実施形態では、板状部材230であるため接触面積が広く、圧縮コイルバネ7の付勢力に抗して中子6を押さえ込みやすく、引張部材31によって引っ張った際にも板状部材230が切欠214から引き出しやすい。
【0073】
-変形例1-
また、図9に示すように、本実施形態の変形例1として、板状部材330を第1接続用開口端部312の高さ方向中間部に形成した差し込み孔314に差し込むようにしてもよい。
【0074】
この場合、板状部材330の取付位置が重要である。差し込み孔314を下側に設けると、板状部材330を引き抜いた後、飛び出してくる中子6が板状部材330に引っかかりやすいという問題がある。
【0075】
上下中間部に差し込み孔314を設けることで、中子6をしっかり押さえ込みつつ、引き抜いた後、飛び出してくる中子6によって板状部材330が引っかからないというメリットがある。
【0076】
-変形例2-
また、図10に示すように、本実施形態の変形例2として、板状部材330’を第1接続用開口端部312’の高さ方向中間部に形成した差し込み孔314’に半径方向外側から差し込むようにしてもよい。この場合は、側方から抜き差しできるので、差し込み作業が極めて容易である。
【0077】
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4に係るシャッター部材430で上下に並ぶ複数の中子6がさらに抜け止めされた継手構造を示し、上下に長いシャッター部材430を用いる点で上記実施形態1~3と異なる。
【0078】
本実施形態のシャッター部材430は、中子6の外径よりも幅が狭く、上下方向に長さの長い板部材よりなる。
【0079】
本実施形態では、図11に示すように、第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’にそれぞれ複数組の第1及び第2埋設管4,4’が上下に一直線状に並んで埋設されている。これらに対応する複数の中子6を上記実施形態1と同様の方法で押さえ込んで抜け防止部材30で抜け止めする。
【0080】
次いで、上下に並ぶ全ての中子6の前方を塞ぐようにシャッター部材430を上下に真っ直ぐに配置した後、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’を落とし込みにより並べる。シャッター部材430を真っ直ぐ配置できるように図示しない治具を下端側に用いてもよい。また、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’を落とし込みにより並べた後に、シャッター部材430で全ての中子を塞いでいてもよい。
【0081】
そして、下から順に抜け防止部材30を取り外し、中子6を飛び出させるときに、抜け防止部材30には番号付きの引張部材31がついており、上方から引張部材31を引き上げるが、複数の引張部材31がある場合、お互いが絡まりあっており、注意深く作業しなければ、引っ張る順番を誤る可能性がある。つまり、下からの順番を誤り、上側を解除してしまうことがある。
【0082】
しかし、本実施形態では、シャッター部材430を下から上へ移動させ、動作の必要な中子6のところまで開口するようにしておけば、仮に誤ってそれよりも上方の抜け防止部材30を解除したとしても、シャッター部材430があるので、中子6が意図せず飛び出すことはない。このため、上方から中子6の飛び出しを確認し難くなることはない。
【0083】
また、中子6の外径よりもシャッター部材430の幅を狭くしているのは、抜け防止部材30が動作時にシャッター部材430と引っかかり難くするためである。
【0084】
-変形例-
また、図12に示すように、本実施形態の変形例として、例えば、埋設管4,4’が上下に4つ並んでいる場合に、長さの異なるシャッター部材530を束ねた状態で、それぞれ下端を対応する埋設管4,4’の差し込み孔515に差し込む。
【0085】
各シャッター部材530の下端部530aは、他の部分よりも板厚が厚くなっている。例えば、他の部分が板厚0.5mmとすると、下端部530aは、1mm程度となっている。中子6の押圧力に対抗するために、下端部530aの板厚が厚くなっている。
【0086】
そして、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’を並べた後にシャッター部材530を引き抜くときには、束ねたシャッター部材530を一度に引き抜く。
【0087】
すると、長さが異なるので、下側から順番に中子6が飛び出す。この変形例では、複数のシャッター部材530が、抜け防止部材30及び引張部材31を兼ねている。
【0088】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0089】
すなわち、上記実施形態では、図4に示すように、1本の埋設管4,4’を1つのプレキャストコンクリート壁2,2’に配置しているが、1つのプレキャストコンクリート壁2,2’に2本以上の埋設管4,4’を上下に並べるように配置してもよい。その場合、下側の抜け防止部材30から抜き出すようにすればよい。上側から行うと、下側の中子6の状況を確認し辛いためである。また、上側の中子6と下側の中子6とでマーキングの色を変えるとよい。そうすると、遠くから覗いたときにいずれの中子6の飛び出しが不十分かわかりやすくなる。
【0090】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0091】
1 継手構造
2 第1プレキャストコンクリート壁
2’ 第2プレキャストコンクリート壁
2a 側面
2b 接続用開口
3 モルタル(充填剤、目地部)
4 第1埋設管
4’ 第2埋設管
4a 一端
6 中子
7 圧縮コイルバネ(付勢部材)
8 水膨張性不織布
10 第1埋設管接続部
11 第1直管部
12 第1接続用開口端部
13 突出部
14,15 差し込み孔(被係合部)
16 第1ソケット
20 第2埋設管接続部
21 第2直管部
22 第2接続用開口端部
26 第2ソケット
30 抜け防止部材
31 引張部材
40 鋼板ジベル
41 溝部
51 鉄筋
101 継手構造
110 第1埋設管接続部
112 第1接続用開口端部
115 差し込み孔(被係合部)
130 クリップ部材
212 第1接続用開口端部
214 切欠(被係合部)
230 板状部材
312,312’ 第1接続用開口端部
314,314’ 差し込み孔
330,330’ 板状部材
430 シャッター部材
515 差し込み孔
530 シャッター部材
530a 下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12