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<図1>
  • 特許-イネの生産方法 図1
  • 特許-イネの生産方法 図2
  • 特許-イネの生産方法 図3
  • 特許-イネの生産方法 図4
  • 特許-イネの生産方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】イネの生産方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/22 20180101AFI20231127BHJP
   A01G 7/04 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A01G22/22 Z
A01G7/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020141466
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037370
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 博司
(72)【発明者】
【氏名】北野 英己
(72)【発明者】
【氏名】前島 正義
(72)【発明者】
【氏名】水野 正明
(72)【発明者】
【氏名】松本 省吾
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 元気
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-18278(JP,A)
【文献】橋爪博司、北野英己、水野寛子、木下悟、湯浅元気、東野里江、田中宏昌、 石川健治、松本省吾、榊原均、仁川進、 前島正義、水野正明、堀勝,イネ種子への低温プラズマ照射による成長促進効果,第66回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,2019年02月25日,pp. 06.056
【文献】橋爪博司、北野英己、水野寛子、阿部明子、湯浅元気、東野里江、田中宏昌、石川健治、松本省吾、榊原均、仁川進、前島正義、水野正明、堀勝,酒米品種イネ栽培における低温プラズマ処理の品質への効果,第81回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集,2020年08月26日,pp. 07.032
【文献】橋爪博司、北野英己、水野寛子、阿部明子、三田薫、HSIAO S. N.、湯浅元気、東野里江、田中宏昌、石川健治、松本省吾、榊原均、仁川進、前島正義、水野正明、堀勝,稲穂への低温プラズマ照射がもたらす酒造品種玄米の品質向上,第69回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,公益社団法人応用物理学会,2022年03月10日,pp. 07.105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/22
A01G 7/04
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネに大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程を有し、
前記プラズマ照射工程では、
開花後の穎花または穎果に向けて大気圧プラズマを照射すること
を含むイネの生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載のイネの生産方法において、
前記プラズマ照射工程を
開花後0日以降4日以内に実施すること
を含むイネの生産方法。
【請求項3】
請求項1に記載のイネの生産方法において、
前記プラズマ照射工程を
開花後6日以降に実施すること
を含むイネの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、イネの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ技術は、電気、化学、材料の各分野に応用されている。プラズマの内部では、電子やイオン等の荷電粒子の他に、紫外線やラジカルが発生する。これらには、生体組織の殺菌をはじめとして、生体組織に対する種々の効果があることが分かってきている。
【0003】
また、プラズマが農作物の育成にも効果を奏することが明らかになってきている。例えば、特許文献1には、イネに大気圧プラズマを照射することによりイネの成長を促進する技術が開示されている。特許文献2には、L-乳酸ナトリウムを含有する水溶液にプラズマを照射することによりプラズマ活性化水溶液を製造する技術が開示されている。プラズマ活性化水溶液を用いることにより、酒米の心白米の割合を増加させることが開示されている(引用例2の段落[0083])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-18278号公報
【文献】特開2020-18277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心白米は、米粒の中心領域に白色不透明部分を有する。この心白部は澱粉を含んでおり、心白の多い米粒ははぜ込みに適していると言われる。このため、酒米においては心白米の割合が多いことが好ましい。これに対して、食用米においては心白等がない完全米が良品であるとされている。つまり、食用米においては心白米の割合が少ないことが好ましい。
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載の技術では、心白米の割合を減少させることができない。また、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、酒米または食用米に応じて、心白米の割合を増減させることは困難である。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、心白米の割合の増減を制御することが可能なイネの生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様におけるイネの生産方法は、イネに大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程を有する。プラズマ照射工程では、開花後の穎花または穎果に向けて大気圧プラズマを照射する。
【0009】
このイネの生産方法においては、心白米の割合を制御することができる。つまり、酒米に対しては心白米の割合を増加させ、食用米に対しては心白米の割合を減少させることができる。したがって、このイネの生産方法は、酒米および食用米の両方に対して適している。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、心白米の割合の増減を制御することが可能なイネの生産方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1.Aは第1のプラズマ発生装置の構成を示す断面図であり、図1.Bは電極の形状を示す図である。
図2図2.Aは第2のプラズマ発生装置の構成を示す断面図であり、図2.Bは電極の形状を示す図である。
図3】イネの開花後の成長とプラズマ照射時期を示す図である。
図4】イネに対するプラズマ照射方法を説明する図である。
図5】玄米の一粒重と心白米の割合とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、イネの生産方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。なお、プラズマ発生装置の寸法等は例示であり、例示されている数値範囲以外の数値を用いてもよい。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。第1の実施形態のイネの生産方法においては、イネに大気圧プラズマを直接照射する。そのため、まず、プラズマを照射するプラズマ照射装置について説明する。
【0014】
1.プラズマ装置
1-1.第1のプラズマ発生装置
図1.Aはプラズマ発生装置P10の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P10は、プラズマを点状に噴出する第1のプラズマ発生装置である。図1.Bは、図1.Aのプラズマ発生装置P10の電極2a、2bの形状の詳細を示す図である。
【0015】
プラズマ発生装置P10は、筐体部10と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部10は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。そして、筐体部10の形状は、筒形状である。筐体部10の内径は2mm以上3mm以下である。筐体部10の厚みは0.2mm以上0.3mm以下である。筐体部10の長さは10cm以上30cm以下である。筐体部10の両端には、ガス導入口10iと、ガス噴出口10oとが形成されている。ガス導入口10iは、プラズマを発生させるためのガスを導入するためのものである。ガス噴出口10oは、プラズマを筐体部10の外部に照射するための照射部である。なお、ガスの移動する向きは、図中の矢印の向きである。
【0016】
電極2a、2bは、対向して配置されている対向電極対である。電極2a、2bの対向面方向の長さは、筐体部10の内径より小さい。例えば1mm程度である。電極2a、2bには、図1.Bに示すように、対向面のそれぞれに多数の凹部(ホロー)Hが形成されている。そのため、電極2a、2bの対向面は、微細な凹凸形状となっている。なお、この凹部Hの深さは、0.5mm程度である。
【0017】
電極2aは、筐体部10の内部であってガス導入口10iの近傍に配置されている。電極2bは、筐体部10の内部であってガス噴出口10oの近傍に配置されている。そのため、プラズマ発生装置P10では、電極2aの対向面の反対側からガスを導入するとともに、電極2bの対向面の反対側にガスを噴出するようになっている。そして、電極2a、2b間の距離は、例えば24cmである。電極2a、2b間の距離は、これより小さい距離であってもよい。
【0018】
電圧印加部3は、電極2a、2b間に交流電圧を印加するためのものである。電圧印加部3は、商用交流電圧である、60Hz、100Vを用いて9kVに昇圧するとともに、電極2a、2b間に電圧を印加する。
【0019】
ガス導入口10iからアルゴン等の希ガスを導入するとともに、電圧印加部3により、電極2a、2b間に電圧を印加すると、筐体部10の内部にプラズマが発生する。図1.Aの斜線で示すように、プラズマが発生する領域をプラズマ発生領域Pとする。プラズマ発生領域Pは、筐体部10に覆われている。
【0020】
1-2.第2のプラズマ発生装置
図2.Aはプラズマ発生装置P20の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P20は、プラズマを線状に噴出する第2のプラズマ発生装置である。図2.Bは、図2.Aのプラズマ発生装置P20のプラズマ発生領域Pの長手方向に垂直な断面における部分断面図である。
【0021】
プラズマ発生装置P20は、筐体部11と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部11は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。筐体部11の両端には、ガス導入口11iと、多数のガス噴出口11oとが形成されている。ガス導入口11iは、図2.Aの左右方向を長手方向とするスリット形状をしている。ガス導入口11iからプラズマ発生領域Pの直上までのスリット幅(図2.Bの左右方向の幅)は、例えば1mmである。
【0022】
ガス噴出口11oは、プラズマを筐体部11の外部に照射するための照射部である。ガス噴出口11oは、円筒形状もしくはスリット形状である。円筒形状の場合のガス噴出口11oは、プラズマ発生領域の長手方向に沿って一直線状に形成されている。ガス噴出口11oの内径は1mm以上2mm以下の範囲内である。また、スリット形状の場合には、ガス噴出口11oのスリット幅を1mm以下とすることが好ましい。これにより、安定したプラズマが形成される。また、ガス導入口11iは、電極2aと電極2bとを結ぶ線と交差する向きにガスを導入するようになっている。
【0023】
電極2a、2bおよび電圧印加部3については、図1に示したプラズマ発生装置P10と同じものである。そして、同様に、商用交流電圧を用いて、電極2a、2b間に電圧を印加する。これにより、プラズマを一直線状に噴出することができる。
【0024】
また、この一直線状にプラズマを噴出するプラズマ発生装置P20を図2.Bの左右方向に列状に並べて配置すれば、プラズマをある長方形の領域にわたって平面的に噴出することができる。
【0025】
2.プラズマ発生装置により発生されるプラズマ
プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。ここで、大気圧プラズマとは、0.5気圧以上2.0気圧以下の範囲内の圧力であるプラズマをいう。
【0026】
本実施の形態では、プラズマ発生ガスとして、主にArガスを用いる。プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマの内部では、もちろん、電子と、Arイオンとが生成されている。そして、Arイオンは、紫外線を発生させる。また、このプラズマは大気中に放出されているため、酸素ラジカルや窒素ラジカル等を発生させる。
【0027】
このプラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。なお、誘電体バリア放電により発生されるプラズマにおけるプラズマ密度は、1×1011cm-3以上1×1013cm-3以下の程度である。したがって、プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマのプラズマ密度は、誘電体バリア放電により発生されるプラズマのプラズマ密度に比べて、3桁程度大きい。したがって、このプラズマの内部では、より多くのArイオンが生成する。そのため、ラジカルや、紫外線の発生量も多い。なお、このプラズマ密度は、プラズマ内部の電子密度にほぼ等しい。
【0028】
そして、このプラズマ発生時におけるプラズマ温度は、およそ1000K以上2500K以下の範囲内である。また、このプラズマにおける電子温度は、ガスの温度に比べて大きい。しかも、電子の密度が1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内の程度であるにもかかわらず、ガスの温度はおよそ1000K以上2500K以下の範囲内である。このプラズマの温度は、プラズマの発生しているプラズマ発生領域Pでの温度である。したがって、プラズマの条件や、ガス噴出口から対象物までの距離を異なる条件とすることにより、対象物の位置でのプラズマ温度を室温程度とすることができる。
【0029】
3.イネの開花後の成長とプラズマ照射時期
図3はイネの開花後の成長とプラズマ照射時期を示す図である。イネは開花後に胚乳組織形成期間と登熟期間とを有する。胚乳組織形成期間においては、胚乳組織が形成される。登熟期間においては、糖の転流や澱粉の蓄積が行われる。
【0030】
第1の実施形態では、イネの開花後にイネの穂に大気圧プラズマを照射する。第1の実施形態では、開花後の穂に向けて大気圧プラズマを照射する。つまり、胚乳組織形成期間または登熟期間の穂にプラズマを照射する。
【0031】
4.イネの生産方法
4-1.発芽工程
イネの種子を発芽させる。そのために、イネの種子を水に漬ける吸水工程を実施する。
【0032】
4-2.育苗工程
次に、発芽した種子を苗代に播種する。そして、種子から苗に成長させる。
【0033】
4-3.田植え
よく育った苗を水田に植える。または、人工気象器の内部で成長させてもよい。
【0034】
4-4.出穂
その後、イネは出穂する。
【0035】
4-5.開花
出穂したイネは開花する。
【0036】
4-6.プラズマ照射工程
図4に示すように、開花後の穂に、プラズマ照射工程を実施する。具体的には、開花後の稲穂の穎花または穎果(K1)に向かって非平衡大気圧プラズマを直接照射する。プラズマ照射工程をイネの開花後0日以降4日以内に実施する。穎花は時間の経過とともに穎果となる。
【0037】
稲穂の穎花または穎果に大気圧プラズマを照射する際のプラズマ密度時間積は、6×1016sec・cm-3以上4×1017sec・cm-3以下であるとよい。この数値範囲は、例えば、プラズマ密度が2×1016cm-3の大気圧プラズマを3秒以上20秒以下で照射した場合に相当する。プラズマ密度時間積は、イネの穎花または穎果に照射するプラズマ生成物のおおよその量を規定する量である。
【0038】
また、大気圧プラズマの発光領域が、穎花または穎果に接触していても、接触していなくてもよい。プラズマの照射距離は、5mm以上30mm以下であるとよい。プラズマの照射距離とは、プラズマ発生装置P10、P20の照射口から穎花または穎果までの距離である。プラズマの照射距離は、上記の範囲外であってもよい。プラズマ生成物がイネの穎花または穎果に照射されることに変わりないからである。
【0039】
4-7.収穫
その後、苗を通常の育成方法により育成し、収穫する。
【0040】
5.プラズマをイネに直接照射する効果
イネの開花後0日以降4日以内の期間に大気圧プラズマを稲穂の穎花または穎果に照射することにより、心白米の割は減少する。このため、第1の実施形態のイネの生産方法は食用米の生産に適している。
【0041】
6.変形例
6-1.小型化したプラズマ発生装置
プラズマ発生装置P10、P20等をさらに小型化してもよい。十分に小型化することにより、ペン型のプラズマ発生装置を製造することができる。その場合であっても、プラズマ発生装置P10、P20と同等のプラズマ密度が得られる。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点はプラズマ照射工程の実施時期である。そのため、異なる点について説明する。
【0043】
1.イネの生産方法
1-1.プラズマ照射工程
第2の実施形態においても開花後の穂に、プラズマ照射工程を実施する。具体的には、開花後の稲穂の穎花または穎果に向かって非平衡大気圧プラズマを直接照射する。プラズマ照射工程をイネの開花後6日以降20日以内に実施する。
【0044】
2.第2の実施形態の効果
イネの開花後6日以降20日以内の期間に大気圧プラズマを稲穂の穎花または穎果に照射することにより、心白米の割は増加する。このため、第1の実施形態のイネの生産方法は酒米の生産に適している。
【0045】
3.変形例
第2の実施形態の変形例を用いてもよい。
【実施例
【0046】
1.イネ
本実験では、酒造好適米の山田錦(イネの品種)を栽培した。
【0047】
2.実験方法
育苗したイネを田植えし、開花後の稲穂に大気圧プラズマを照射した。開花後の経過日数を変えて大気圧プラズマを直接照射した。その際に、プラズマ発生装置P20を用いた。プラズマ発生装置P20におけるプラズマ密度は、2×1016cm-3であった。プラズマガスはアルゴンガスであった。プラズマ照射時間は10秒または20秒であった。
【0048】
稲穂の一粒ずつにマーカーにより目印をつけた。この目印は開花日を示している。これにより、稲穂の一粒ずつに開花してから何日後に大気圧プラズマを照射したか識別することが可能である。
【0049】
3.実験結果
プラズマ照射時間は10秒であっても20秒であってもほとんど差が無かった。
【0050】
図5は、玄米の一粒重と心白米の割合とを示すグラフである。図5の横軸は開花後からプラズマを照射するまでの日数である。図5の上のグラフの縦軸は玄米の一粒の重さである。図5の下のグラフの縦軸は心白の割合である。なお、図5の一番左の欄は、プラズマを照射しなかったイネの値を示している。
【0051】
図5に示すように、プラズマの照射により玄米の一粒重に変化はなかった。
【0052】
イネにプラズマを照射しなかった場合には、心白米の割合は30%程度であった。イネの開花後1日後にプラズマを照射した場合には、心白米の割合は20%程度であった。イネの開花後5日後にプラズマを照射した場合には、心白米の割合は30%程度であった。イネの開花後10日後にプラズマを照射した場合には、心白米の割合は48%程度であった。イネの開花後15日後にプラズマを照射した場合には、心白米の割合は45%程度であった。
【0053】
イネの開花後0日以降4日以内にプラズマを照射した場合には、心白米の割合が減少している。その一方、イネの開花後6日以降20日以内にプラズマを照射した場合には、心白米の割合が増加している。
【0054】
3.実験のまとめ
イネが胚乳組織形成期間の初期段階にあるときに大気圧プラズマを照射した場合には、心白米の割合は減少する。一方、イネが胚乳組織形成期間を終了する期間に大気圧プラズマを照射した場合には、心白米の割合は増加する。また、イネが登熟期間にあるときに大気圧プラズマを照射した場合には、心白米の割合は増加する。
【0055】
このようにイネの開花後の成長段階に応じて稲穂に非平衡大気圧プラズマを直接照射することにより、心白米の割合を増加または減少させることができる。つまり、心白米の割合を制御することができる。
【0056】
(付記)
第1の態様におけるイネの生産方法は、イネに大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程を有する。プラズマ照射工程では、開花後の穎花または穎果に向けて大気圧プラズマを照射する。
【0057】
第2の態様におけるイネの生産方法においては、プラズマ照射工程を開花後0日以降4日以内に実施する。
【0058】
第3の態様におけるイネの生産方法においては、プラズマ照射工程を開花後6日以降に実施する。
【符号の説明】
【0059】
P10、P20…プラズマ発生装置
10、11…筐体部
10i、11i…ガス導入口
10o、11o…ガス噴出口
2a、2b…電極
P…プラズマ発生領域
H…凹部(ホロー)
K1…穎花または穎果
図1
図2
図3
図4
図5