(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】樹木固定装置及び樹木固定方法
(51)【国際特許分類】
A01G 17/14 20060101AFI20231127BHJP
A01G 17/12 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A01G17/14
A01G17/12
(21)【出願番号】P 2020011763
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】510043858
【氏名又は名称】有限会社 アイ・ピー・エムグリーンステージ
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 興和
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-294330(JP,A)
【文献】特開2006-180796(JP,A)
【文献】特開2003-230323(JP,A)
【文献】特開2002-027850(JP,A)
【文献】特開平08-289677(JP,A)
【文献】特開平05-260862(JP,A)
【文献】実開平05-043845(JP,U)
【文献】実開平05-060256(JP,U)
【文献】特開平10-014414(JP,A)
【文献】特開平05-184248(JP,A)
【文献】特開平04-183330(JP,A)
【文献】特開2009-219432(JP,A)
【文献】特開2002-101774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 17/14
A01G 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の下部に設けられた根鉢部を植樹領域に設けられた凹所に配して固定するための樹木固定装置であって、平面視投影形状が前記根鉢部の平面視投影形状よりも大きく構成された基体と、この基体に対して前記根鉢部を縛り連結する紐状体と、前記凹所に配された前記基体の周縁部を覆う
可撓性を有する網状体から成る面状補強体とで構成され、前記基体は、管状部材を縦横に連結して成る方形枠状部と、管状部材を十字状に重ね連結した十字形状部とを有し、前記方形枠状部と前記十字形状部とで四つの方形開口が形成されたものであることを特徴とする樹木固定装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹木固定装置において、前記管状部材は単管パイプであり、前記
管状部材同士は連結クランプを介して連結されることを特徴とする樹木固定装置。
【請求項3】
樹木の下部に設けられた根鉢部を植樹領域に設けられた凹所に配して固定する樹木固定方法であって、
前記凹所に前記根鉢部の平面視投影形状よりも大きい平面視投影形状に構成された下記の基体を配する工程、
前記基体の周縁部を
可撓性を有する網状体から成る面状補強体で覆う工程、
前記基体に対して前記根鉢部を紐状体で縛り連結する工程、
を有することを特徴とする樹木固定方法。
記
管状部材を縦横に連結して成る方形枠状部と、この方形枠状部に重ね連結状態となり管状部材を十字状に重ね連結した十字形状部とを有し、前記方形枠状部と前記十字形状部とで四つの方形開口が形成された基体。
【請求項4】
請求項
3記載の樹木固定方法において、前記管状部材は単管パイプであり、前記
管状部材同士は連結クランプを介して連結されることを特徴とする樹木固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木固定装置及び樹木固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ゴルフ場や公園などの施設、建物外構や道路などには、良好な景観保持の為、樹木は欠かせないものであり、これら樹木は、他の場所で育ったものを掘り起こして移植されるのが一般的である。しかし、この移植した樹木が根付くには時間が掛かる為、移植した樹木は当然その場所に根付くまでの間若しくは半永久的に固定する必要がある。
【0003】
そこで、従来、移植した樹木を固定するものとして、例えば特許文献1(特開2004-129580号)に開示される樹木用支柱が提案されている。
【0004】
この樹木用支柱は、植樹された樹木の近傍で土中に打ち込まれる左右一対の金属製杭部材と、土中に打ち込まれる両杭部材の夫々上端部に伸縮調整可能に接続される左右一対の金属製支柱本体と、両支柱本体の上端部同士をつなぐ金属製水平材とを有し、水平材の中央部が縛り紐によって樹木に縛り付けられるように構成されたものであり、各部材が金属製で強度があり腐食しにくい為、樹木を長く堅固に固定することができる。
【0005】
しかしながら、この樹木用支柱は、前述したように樹木における地表面から突出している部位を支持する構造であり、樹木を堅固に固定することができるものの、それら樹木に支柱が施されている状態が見え、景観が良くない(その場で自然に育った樹木でない感じを与え、体裁が悪い。)。
【0006】
そこで、従来においても、例えば特許文献2(特開2009-219432号)に開示されるような樹木固定装置(以下、従来例という。)が提案されている。
【0007】
この従来例は、硬質材で網状に構成された平面材に樹木の根鉢部を載置し、この根鉢部と平面材とを紐状体で連結し、土材で埋めて該土材の重みによって樹木を固定するという所謂地下支柱構造であり、樹木を固定するものが地上に露出しないため、樹木を体裁良く固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-129580号公報
【文献】特開2009-219432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来例は、実際に試してみると、樹木の固定が不十分であり、よって、地下支柱構造でありながら堅固に固定できる技術の提案が望まれている。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みなされたものであり、従来に無い実用的な樹木固定装置及び樹木固定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
樹木30の下部に設けられた根鉢部31を植樹領域50に設けられた凹所51に配して固定するための樹木固定装置であって、平面視投影形状が前記根鉢部31の平面視投影形状よりも大きく構成された基体1と、この基体1に対して前記根鉢部31を縛り連結する紐状体2と、前記凹所51に配された前記基体1の周縁部を覆う可撓性を有する網状体から成る面状補強体3とで構成され、前記基体1は、管状部材1aを縦横に連結して成る方形枠状部1Aと、管状部材1aを十字状に重ね連結した十字形状部1Bとを有し、前記方形枠状部1Aと前記十字形状部1Bとで四つの方形開口が形成されたものであることを特徴とする樹木固定装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の樹木固定装置において、前記管状部材1aは単管パイプであり、前記管状部材1a同士は連結クランプ1bを介して連結されることを特徴とする樹木固定装置に係るものである。
【0014】
また、樹木30の下部に設けられた根鉢部31を植樹領域50に設けられた凹所51に配して固定する樹木固定方法であって、
前記凹所51に前記根鉢部31の平面視投影形状よりも大きい平面視投影形状に構成された下記の基体1を配する工程、
前記基体1の周縁部を可撓性を有する網状体から成る面状補強体3で覆う工程、
前記基体1に対して前記根鉢部31を紐状体2で縛り連結する工程、
を有することを特徴とする樹木固定方法に係るものである。
記
管状部材1aを縦横に連結して成る方形枠状部1Aと、この方形枠状部1Aに重ね連結状態となり管状部材1aを十字状に重ね連結した十字形状部1Bとを有し、前記方形枠状部1Aと前記十字形状部1Bとで四つの方形開口が形成された基体1。
【0015】
また、請求項3記載の樹木固定方法において、前記管状部材1aは単管パイプであり、前記管状部材1a同士は連結クランプ1bを介して連結されることを特徴とする樹木固定方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、樹木を体裁良く固定することができ、しかも、堅固な固定が可能となるなど、従来に無い実用的な樹木固定装置及び樹木固定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本実施例に係る樹木固定方法の工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
例えば、植樹領域50に設けられた凹所51に基体1を配し、続いて、基体1の周縁部を面状補強体3で覆い、続いて、基体1上に樹木30の根鉢部31を配して紐状体2で縛り連結し、続いて、凹所51を土材60で埋める。尚、予め基体1に樹木30の根鉢部31を紐状体2で縛り連結した状態で凹所51に配しても良いし、基体1に根鉢部31を紐状体2で縛り連結した後に、基体1の周縁部を面状補強体3で覆うようにしても良い。
【0020】
従って、樹木30を固定するものが地上に露出しないため、樹木30を体裁良く固定することができる。
【0021】
また、本発明は、樹木30の根鉢部31が縛り連結され根鉢部31の平面視投影形状よりも大きい平面視投影形状の基体1には、凹所51を埋める土材60の重量とともに樹木30の重量もかかる為、樹木30が固定されることになり、しかも、基体1の周縁部を覆う面状補強体3を介して基体1の周囲における土材60の重量も該基体51に付与することができる為、樹木30は堅固に固定される。
【0022】
即ち、本発明のように基体1の上に配される土材60の重量を利用して樹木30を固定する構造(地下支柱構造)の場合、例えば基体1の平面視投影形状が大きければ大きいほど土材60を受ける表面積が大きくなり、樹木30を固定する力が大きくなるが、基体1が大きくなって重量が増える分、搬送したり凹所51への配設作業が厄介になるなど作業性が悪くなり、コストも高くなるなど、基体1を大きくするにも限界がある。
【0023】
この点、本発明は、基体1の周縁部を面状補強体3で覆うことにより、基体1の平面視投影形状を大きくしたのと同様な状態とし、この状態で土材60を受けるという構成としたから、基体1を必要以上に大きくする必要はなく(作業性及びコスト性を悪化させることはなく)、樹木30を固定するに十分な重量を基体1に対して簡易且つ確実に付与することができ、樹木30は堅固に固定される。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、樹木30の下部に設けられた根鉢部31を植樹領域50に設けられた凹所51に配して固定するための樹木固定装置である。
【0026】
尚、本実施例で言う植樹領域50とは、例えばゴルフ場や公園などの樹木30を移植する任意の領域であり、根鉢部31とは、樹木30を掘り出したときの根とこの根の周囲に付着している土とから成る塊状体であり、本実施例では、この根鉢部31に縄掛けをして根巻きが施されている。
【0027】
具体的には、本実施例は、凹所51の底部に配される基体1と、この基体1に対して根鉢部31を縛り連結する紐状体2と、凹所51に配された基体1の周縁部(及び該基体1の周辺部位にして凹所51の所定部位)を覆う面状補強体3とで構成されている。
【0028】
基体1は、
図1,2に図示したように管状部材1aを縦横に連結して成る平面視正方形の方形枠状部1Aと、この方形枠状部1Aの内側に架設状態に連結され管状部材1aを交叉状(十字)に連結して成る交叉形状部1B(十字形状部)とで構成されており、根鉢部31の平面視投影形状よりも大きい平面視投影形状を有する格子形状に構成されている。本書面で言う平面視投影形状とは、平面方向から見た際に所定の面積を有する形状のものを意味する。
【0029】
また、本実施例では、管状部材1aとして適宜な金属製の単管パイプを採用しており、この管状部材1a同士を連結クランプ1bを用いて連結している。
【0030】
紐状体2は、
図1に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で設けられたテープ状体(平テープ)であり、基体1(管状部材1a)に対して根鉢部31を堅固に縛り連結(図示省略のバックルを使用して緊縛)し得るように構成されている。
【0031】
尚、紐状体2は、適宜な強度と耐久性を有して堅固に縛り連結でき、環境に優しい材料のものであれば適宜採用し得るものである。
【0032】
面状補強体3は、
図1,2に図示したように可撓性を有して腐食しにくい平面視長方形状の網状体若しくは布体であり、本実施例では、適宜な合成樹脂製の網部材(三井化学産資株式会社製の高強度プラスチック網:二軸のテンサー(登録商標))を採用している。
【0033】
本実施例では、面状補強体3を4枚用意しており、この各面状補強体3の大きさは、凹所51に配された基体1の周縁部にして四つの角部夫々に配した際、この基体1の周縁部及び該基体1の周辺部位にして凹所51の所定部位を覆う程度の大きさに設定されている。
【0034】
この面状補強体3は、基体1を全部覆うような大きさ形状のものであっても、基体1の全ての周縁部を覆うような大きさ形状のものでも良いが、種々試したところ、前述した基体1の周縁部にして四つの角部を覆う程度の大きさ形状で樹木30を固定するに十分であることを確認している(作業性及びコスト性からしても面状補強体3は必要最小限のもので良い。)。
【0035】
以上の構成から成る樹木固定装置を用いた樹木固定方法について説明する。
【0036】
植樹領域50に重機により掘削して成る凹所51(植穴)を設け、この凹所51に基体1を配する(
図3(a))。尚、この基体1は現場で管状部材1aを組んだものでも、予め工場で管状部材1aを組んだものを現場に持ち込んでも良い。
【0037】
続いて、基体1の周縁部にして四つの角部に面状補強体3を配して、この基体1の周縁部及び該基体1の周辺部位にして凹所51の所定部位を覆う(
図3(b))。この際、基体1の内側部位(交叉形状部1B)に客土して植え床70を作る。尚、面状補強体3は基体1の周縁部(方形枠状部1A)に限らず、交叉形状部1Bに配して覆うようにしても良い。
【0038】
続いて、樹木30を植え床70上に配し、この状態で基体1に対して根鉢部31を紐状体2で縛り連結する(
図3(c))。
【0039】
尚、予め基体1に樹木30の根鉢部31を紐状体2で縛り連結した状態で凹所51に配しても良いし、基体1に根鉢部31を紐状体2で縛り連結した後に、基体1の周縁部を面状補強体3で覆うようにしても良い。
【0040】
続いて、凹所51を土材60(埋戻し土としての掘削土にピートモスやパーライトなどの土壌改良材を混入したもの)で埋める(
図3(d))。この土材60で埋める際、適宜水を付与(水締め)して土材60と根鉢部31との空間を無くすようにする。
【0041】
本実施例は上述のように構成したから、樹木30を固定するものが地上に露出しないため、樹木30を体裁良く固定することができる。
【0042】
また、本実施例は、樹木30の根鉢部31が縛り連結され根鉢部31の平面視投影形状よりも大きい平面視投影形状の基体1には、凹所51を埋める土材60の重量とともに樹木30の重量もかかる為、樹木30が固定されることになり、しかも、基体1の周縁部を覆う面状補強体3を介して基体1の周囲における土材60の重量も該基体51に付与することができる為、樹木30は堅固に固定される(
図4参照)。
【0043】
即ち、本実施例のように基体1の上に配される土材60の重量を利用して樹木30を固定する構造(地下支柱構造)の場合、例えば基体1の平面視投影形状が大きければ大きいほど土材60を受ける表面積が大きくなり、樹木30を固定する力が大きくなるが、基体1が大きくなって重量が増える分、搬送したり凹所51への配設作業が厄介になるなど作業性が悪くなり、コストも高くなるなど、基体1を大きくするにも限界がある。本実施例に係る基体1は、作業性に影響する大きさ(面積と重量)及びコストを考慮して管状部材1aを格子状に組んでシンプルな構造としており、基体1を必要最小限の大きさとしている。
【0044】
そこで、本実施例は、基体1の周縁部を面状補強体3で覆うことにより、基体1の平面視投影形状(面積)を大きくしたのと同様な状態とし、この状態で土材60を受けるという構成としたから、基体1を必要以上に大きくする必要はなく(作業性及びコスト性を悪化させることはなく)、樹木30を固定するに十分な重量を基体1に対して簡易且つ確実に付与することができる。
【0045】
また、本実施例の基体1は、基体1は、管状部材1aを縦横に連結して成る方形枠状部1Aと、この方形枠状部1Aの内側に管状部材1aを交叉状に連結して成る交叉形状部1Bとで構成され、方形枠状部1Aの管状部材1aと交叉形状部1Bの管状部材1aとは適宜な手段により連結されているから、必要最小限の大きさと重量により作業性が良く、しかも、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになる。
【0046】
また、本実施例は、交叉形状部1Bは管状部材1aを十字状に連結して成る十字形状部であるから、シンプルな構造でありながら前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0047】
また、本実施例は、管状部材1aは単管パイプであるから、軽量で作業性に秀れ、しかも、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになる。
【0048】
また、本実施例は、面状補強体3は可撓性を有する網状体若しくは布体であるから、この点においても簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになる。
【0049】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0050】
1 基体
1A 方形枠状部
1B 十字形状部
1a 管状部材・単管パイプ
1b 連結クランプ
2 紐状体
3 面状補強体
30 樹木
31 根鉢部
50 植樹領域
51 凹所