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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】鍔部材及び鍔付きパイプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 4/00 20060101AFI20231127BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20231127BHJP
   B62B 5/06 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
F16B4/00 E
F16B7/04 302Z
B62B5/06 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020110066
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022022535
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000136170
【氏名又は名称】株式会社ピカコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 徹
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-264757(JP,A)
【文献】特開平11-342848(JP,A)
【文献】特開2018-162062(JP,A)
【文献】特開2007-187282(JP,A)
【文献】特開2008-190678(JP,A)
【文献】実開昭63-027312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
F16B 7/00- 7/22
B62B 1/00- 5/08
H01B 17/56- 19/04
B62J 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材(B)に嵌合される鍔部材において、
パイプ材(B)に嵌合する内周部(3)と、この内周部(3)の外側を取り巻く外周部(4)と、内周部(3)と外周部(4)とを連結する架橋部(5)とが弾性材料で一体成形されており、
前記内周部(3)には、パイプ材(B)の外径より大径の嵌合穴(7)と、この嵌合穴(7)から径内方向に突出していてパイプ材(B)の外周面に圧接される圧接部(8)とが形成されていることを特徴とする鍔部材。
【請求項2】
前記圧接部(8)は嵌合穴(7)の180度変位した位置に一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍔部材。
【請求項3】
前記内周部(3)には、嵌合穴(7)に向かって解放した溝(9)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍔部材。
【請求項4】
前記架橋部(5)は、内周部(3)の外周から放射方向に延びていて内周部(3)と外周部(4)とを連結する周方向複数本の架橋壁(5a)と、複数本の架橋壁(5a)間の空間部(5b)とが形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鍔部材。
【請求項5】
前記外周部(4)は嵌合穴(7)の軸線方向視において多角形に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の鍔部材。
【請求項6】
パイプ材(B)とパイプ材(B)に嵌合される鍔部材(A)とを有する鍔付きパイプにおいて、
前記鍔部材(A)には、パイプ材(B)の外径より大径の嵌合穴(7)と、この嵌合穴(7)から径内方向に突出していてパイプ材(B)の外周面に圧接される圧接部(8)と、嵌合穴(7)に向かって解放した溝(9)とが形成されていることを特徴とする鍔付きパイプ。
【請求項7】
前記鍔部材(A)は、嵌合穴(7)を形成した内周部(3)と、多角形の外周部(4)と、外周部(4)の角部(4a)及び/又は平坦部(4b)と内周部(3)の外周面とを周方向複数本の架橋壁(5a)で連結した架橋部(5)とが弾性材料で一体成形されており、
前記圧接部(8)は内周部(3)の嵌合穴(7)の180度変位した位置でかつ溝(9)から略等距離の位置に一対設けられていることを特徴とする請求項6に記載の鍔付きパイプ。
【請求項8】
前記パイプ材(B)は外周面に鍔部材(A)の幅より広い間隔で一対の突起(11)が設けられており、
前記溝(9)は突起(11)を挿通可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の鍔付きパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材を持つ手を保護する鍔部材、及びその鍔部材をパイプ材に嵌合した鍔付きパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ材は移動車、台車等に着脱自在に取り付けてハンドル(手押し棒)として活用されている。
特許文献1に記載された台車は、矩形外枠の内側の前後方向に、下面の長手方向に連続したスリット状開口を有する断面略C形材を2本平行に並設し、該矩形外枠の後端に横方向の貫通孔を縦方向に複数個形成したパイプ材を設けた荷台部と、2本の断面略C形材のそれぞれのスリット状開口にボルトナットにより前後位置可変に取付けられる車輪取付部と、該パイプ材に挿入して複数段に高さ調節可能なハンドル部とからなる(要約)。
【0003】
この台車のハンドル部はパイプ材で形成され、その端部に手で把持するグリップ部材が嵌合されている。グリップ部材は手先側が隆起していて環状の止め部が一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-129908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術は、グリップ部材は全内周面がパイプ材に嵌合するものであるため、嵌合・離脱するのが面倒になっており、台車の納車時に外し、台車使用時に取り付ける、というような利用は困難であり、常時装着したままになっている。
また、従来技術のハンドル部のグリップ部材は、ハンドル部のグリップ部材を握るとき、手先側の環状止め部によって手が前方へズレ動くのを防止できるが、環状止め部は小さな隆起であるため、構造物の壁に接触しそうになったとき、障害物がハンドル部に倒れてきたときに等に、手が物体と接触したり挟まれたりするのを防止することは困難になっており、鍔、ハンドガードとしての役目は低い。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした鍔部材及び鍔付きパイプを提供することを目的とする。
本発明は、パイプ材に容易に嵌合・離脱でき、パイプ材に嵌合してハンドガードとなる鍔部材を提供することを目的とする。
本発明は、ハンドガードとなる鍔部材をパイプ材に容易に嵌合・離脱できるようにした鍔付きパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
本発明の鍔部材は、パイプ材に嵌合する内周部と、この内周部の外側を取り巻く外周部と、内周部と外周部とを連結する架橋部とが弾性材料で一体成形されており、内周部はパイプ材の外径より大径の嵌合穴と、この嵌合穴から径内方向に突出していてパイプ材の外周面に圧接される圧接部とが形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の鍔付きパイプは、パイプ材は外周面に鍔部材の幅より広い間隔で一対の突起が設けられており、鍔部材はパイプ材の外径より大径の嵌合穴と、この嵌合穴から径内方向に突出していてパイプ材の外周面に圧接される圧接部と、嵌合穴に向かって解放した溝とが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鍔部材によれば、パイプ材に容易に嵌合・離脱でき、パイプ材に嵌合してハンドガードとなり得、パイプ材不使用時にはパイプ材からパイプ材から離脱しておくことができる。
本発明の鍔付きパイプによれば、ハンドガードとなる鍔部材をパイプ材に容易に嵌合・
離脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態を示す鍔部材の正面図である。
図2】鍔部材の斜視図である。
図3】鍔部材の右側面図又は左側面図である。
図4】鍔部材の平面図又は底面図である。
図5】パイプ材に嵌合した鍔部材の斜視図である。
図6】本発明の実施形態を示す鍔付きパイプの断面図である。
図7】鍔付きパイプを4輪台車に使用した側面図である。
図8】鍔部材の第1変形例を示す正面図である。
図9】鍔部材の第2変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図6、7において、4輪台車15のコーナのホルダ16に下部を挿入してハンドル(手押し棒)として使用する鍔付きパイプCを例示している。
鍔付きパイプCは、L字状に屈曲している断面円形のパイプ材Bと、このパイプ材Bに嵌合される鍔部材Aとを有する。パイプ材Bは直線形状でもよい。
【0012】
前記パイプ材Bは上側端部が手で握られる部分であり、その握り部分の手前側の外周面に鍔部材Aの幅より広い間隔で一対の突起11が設けられており、鍔部材Aには嵌合穴7に加えて突起11を通過するための溝9が形成されている。
鍔部材Aをパイプ材Bに嵌合するときに、パイプ材Bの端部側の突起11に溝9を対向させて通過させ、一対の突起11間に鍔部材Aを対応させて、鍔部材Aをパイプ材B廻りに回すことにより、一対の突起11が障害となって鍔部材Aのパイプ材B軸線方向の移動が規制され、パイプ材B上での鍔部材Aの位置が設定される。
【0013】
4輪台車15を使用しないときは、鍔付きパイプCをホルダ16から抜き、パイプ材Bから鍔部材Aを離脱させ、鍔部材Aは鍔部材Aのみまとめ、パイプ材Bはパイプ材Bのみをまとめて保存・収納する。
図1~7において、パイプ材Bに嵌合される鍔部材Aは、パイプ材Bに嵌合する内周部3と、この内周部3の外側を取り巻く外周部4と、内周部3と外周部4とを連結する架橋部5とが合成樹脂、ゴム等の弾性材料で一体成形されている。
【0014】
前記内周部3は略円形であって、その内部にパイプ材Bの外径より大径の嵌合穴7と、この嵌合穴7から径内方向に突出していてパイプ材Bの外周面に圧接される一対の圧接部8と、嵌合穴7に向かって解放した溝9とが形成されている。
前記圧接部8は嵌合穴7の180度変位した位置に一対設けられていて、一対の圧接部8の対向面は平坦に形成され、その2面間距離はパイプ材Bの外径より小さくなっている。
【0015】
前記嵌合穴7はパイプ材Bの外径より大径であるので、パイプ材Bに隙間を介在して嵌合するが、圧接部8は2面間距離がパイプ材Bの外径より小さいので、挿入されるパイプ材Bによって弾性変形され、その弾性復元力によりパイプ材Bの外周面に圧接されることになる。
前記溝9は断面四角形で、穴側キー溝形状であって、突起11より幅及び高さが大きな断面形状になっており、突起11を通過するための挿通溝になっている。溝9は嵌合穴7に向かって解放されることにより、その溝内部は嵌合穴7内部と連通している。
【0016】
この溝9は一対の圧接部8の中間位置にあり、即ち、溝9から2つの圧接部8までの距離は略等しく、一対の圧接部8が挿入するパイプ材Bによって押し広げられるときに、その弾性変形を助ける役目をする。
前記パイプ材Bの突起11は、カラーをブラインドリベットでカシメて固定することにより形成している。前記突起11はパイプ材Bにボルト、ネジピン又はビス等を螺合して形成してもよく、その幅及び高さに応じてそれを通過できるように溝9の断面形状も設定される。
【0017】
前記外周部4は嵌合穴7の軸線方向視において八角形に形成されている。外周部4は円形に形成することもできるが、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形に形成する方が、鍔部材Aを保存、収納等をするときに転ばないようにしておけるので好ましい。
鍔部材Aは内周部3と外周部4と架橋部5とを1枚板で形成することも可能であるが、前記架橋部5は、内周部3の外周から放射方向に延びていて内周部3と外周部4とを連結する周方向複数本の架橋壁5aと、複数本の架橋壁5a間の空間部5bとが形成されている。
【0018】
周方向複数本の架橋壁5aは、外周部4が多角形の場合、外周部4の角部4a及び平坦部4bと内周部3の外周面とを連結している。架橋壁5aは外周部4の角部4aのみ又は平坦部4bのみと連結してもよく、その本数、肉厚等は、外周部4にかかる予想衝撃の大きさ、耐久性等を考慮して設定される。
前記架橋部5は周方向複数本の架橋壁5aを有することにより、外周部4に加わる衝撃、負荷を緩衝、分散、変向させることができる。
【0019】
図8は、鍔部材Aの第1変形例を示しており、内周部3には、溝9は嵌合穴7に向かって広がる断面略台形状に形成されており、嵌合穴7の溝9から90度変位した1カ所に圧接部8が設けられている。
圧接部8は溝9と対向する位置(溝9から180度変位した位置)でもよく、前記実施形態のものより嵌合穴7からの突出量は大きくなっている。
【0020】
図9は、鍔部材Aの第2変形例を示しており、内周部3には、嵌合穴7に向かって解放される溝は形成されていなく、嵌合穴7の90度変位した4カ所に圧接部8が設けられている。内周部3には、小さな断面形状(突起11を通過できない大きさ)の嵌合穴7に向かって解放される溝を形成して、圧接部8の弾性変形を容易にしてもよい。
従って第2変形例の鍔部材Aは、突起11を持たないパイプ材Bに嵌合することができ、既存のパイプ材Bに鍔部材Aを嵌合し、鍔部材Aのみの圧接力で鍔部材Aに装着されることになる。
【0021】
前記実施形態及び第1、2変形例で示した鍔部材は、パイプ材Bに嵌合される鍔部材において、パイプ材Bに嵌合する内周部3と、この内周部3の外側を取り巻く外周部4と、内周部3と外周部4とを連結する架橋部5とが弾性材料で一体成形されており、前記内周部3には、パイプ材Bの外径より大径の嵌合穴7と、この嵌合穴7から径内方向に突出していてパイプ材Bの外周面に圧接される圧接部8とが形成されているので、パイプ材Bに容易に嵌合・離脱でき、パイプ材Bに嵌合してハンドガードとなり得る。
【0022】
また、鍔部材の圧接部8は、嵌合穴7の180度変位した位置に一対設けられているので、パイプ材Bに対してバランスよく圧接して嵌合でき、パイプ材Bからの抜け止めを確実にできる。
さらに、鍔部材の内周部3には、嵌合穴7に向かって解放した溝9が形成されているので、圧接部8の変形を容易にでき、パイプ材Bの外周面に突起11が設けられている場合は、その突起11を通過する位置までパイプ材Bに対して鍔部材を嵌合していくことができる。
【0023】
さらにまた、鍔部材の架橋部5は、内周部3の外周から放射方向に延びていて内周部3と外周部4とを連結する周方向複数本の架橋壁5aと、複数本の架橋壁5a間の空間部5bとが形成されているので、外部から力が加わっても効率よく逃がすことができ、かつ大きく形成しても材料、重量を軽減できる。
そして、鍔部材の外周部4は、嵌合穴7の軸線方向視において多角形に形成されているので、外周部4の平坦部4bを接地させると廻り止めができる。
【0024】
前記実施形態で示した鍔付きパイプは、パイプ材Bとパイプ材Bに嵌合される鍔部材Aとを有する鍔付きパイプにおいて、前記鍔部材Aには、パイプ材Bの外径より大径の嵌合穴7と、この嵌合穴7から径内方向に突出していてパイプ材Bの外周面に圧接される圧接部8と、嵌合穴7に向かって解放した溝9が形成されているので、ハンドガードとなる鍔部材Aをパイプ材Bに容易に嵌合・離脱できる。
【0025】
また、鍔付きパイプの鍔部材Aは、嵌合穴7を形成した内周部3と、多角形の外周部4
と、外周部4の角部4a及び/又は平坦部4bと内周部3の外周面とを周方向複数本の架橋壁5aで連結した架橋部5とが弾性材料で一体成形されており、前記圧接部8は内周部3の嵌合穴7の180度変位した位置でかつ溝9から略等距離の位置に一対設けられているので、外部から力が加わっても効率よく逃がすことができ、かつ大きく形成しても材料、重量を軽減でき、パイプ材Bに対して鍔部材Aをバランスよくかつ確実に嵌合しておくことができる。
【0026】
さらに、鍔付きパイプのパイプ材Bは、外周面に鍔部材Aの幅より広い間隔で一対の突起11が設けられており、前記溝9は突起11を挿通可能な形状に形成されているので、突起11を有するパイプ材Bに鍔部材Aを嵌合して位置決めをすることができる。
前記鍔部材Aはパイプ材Bに対してネジ等の締結具を用いて固定されるものではないので、鍔付きパイプを使用しないときは、鍔部材Aをパイプ材Bから簡単に離脱させることができ、流通、保存、収納等を鍔部材Aのみで行うことができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
例えば、実施形態及び第1変形例の鍔部材Aは、嵌合穴7に溝9を形成していても、突起11を持たない既存のパイプ材Bに嵌合装着して、ハンドカバーとして作用させることができる。
【0028】
溝9は嵌合穴7の軸線方向に沿った直線溝であるが、螺旋溝でもよく、また、圧接部8の変形を容易にするための小さな溝は、複数本形成したり、突起11を挿通する挿通溝と併設したりしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
A 鍔部材
B パイプ材
C 鍔付きパイプ
3 内周部
4 外周部
4b 平坦部
5 架橋部
5a 架橋壁
5b 空間部
7 嵌合穴
8 圧接部
9 溝
11 突起
15 四輪台車
16 ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9