IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スキンメドの特許一覧

特許7390738キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途
<>
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図1
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図2
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図3
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図4
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図5
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図6
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図7
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図8
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図9
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図10
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図11
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図12
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図13
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図14
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図15
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図16
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図17
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図18
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図19
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図20
  • 特許-キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20231127BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231127BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 13/06 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/36
A61K47/10
A61K8/11
A61K8/73
A61K8/86
B01J13/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021536042
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2019018154
(87)【国際公開番号】W WO2020130699
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166093
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0169396
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519456251
【氏名又は名称】スキンメドカンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウォン イル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヨン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ズン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ファ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヨン ソン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】Manaspon, C. et al.,Preparation of Folate-Conjugated Pluronic F127/Chitosan Core-Shell Nanoparticles Encapsulating Doxorubicin for Breast Cancer Treatment,Journal of Nanomaterials,2012年,vol. 2012,pp. 1-11
【文献】Yuk, S. H. et al.,Enhancement of the Targeting Capabilities of the Paclitaxel-Loaded Pluronic Nanoparticles with a Glycol Chitosan/Heparin Composite,molecular pharmaceutics,2011年,vol.9,pp. 230-236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、B01J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性剤及びプルロニック(登録商標)を含む5~50nmサイズのナノ粒子に分子量3~20KDaのキトサンがコートされたことを特徴とする30~100nmサイズのナノカプセルであって、
前記活性剤は、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、テトランドリン(tetradrine)、シクロスポリンA(cyclosporin A)、デキサメタゾン(dexamethasone)、トコフェリル酢酸(tocopheryl acetate)、アスタキサンチン(astaxanthin)、クルクミン(curcumin)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)、カフェイン酸フェネチルエステル(caffeic acid phenethyl ester;CAPE)、パルミチン酸レチノール(retinyl palmitate)、ミノキシジル(minoxidil)、フィナステリド(finasteride)、ツボクサ(centella asiatica)、ベータシトステロール、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ascorbyl tetraisopalmitate)、トリペプチドコラーゲン(tripeptide collagen)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ホスホリパーゼA2(phospholipase A2;PLA2)、オボアルブミン(ovalbumin)、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、線維芽細胞成長因子(Basic Fibroblast Growth Factor;b-FGF)、及び血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)からなる群から選ばれる1種の薬物であり、
前記プルロニック(登録商標)は、HLB(hydrophile-lipophile balance)が8~29であるプルロニック(登録商標)であり、
前記プルロニック(登録商標)は、プルロニックL35、プルロニックL43、プルロニックL44、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックP85、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF98、プルロニックP103、プルロニックP104、プルロニックP105、プルロニックF108、プルロニックP123及びプルロニックF127からなる群から選択される1種以上であり、
前記キトサンは前記ナノ粒子に物理学的結合によってコートされた
ことを特徴とするナノカプセル。
【請求項2】
活性剤及びHLBが8~29であるプルロニック(登録商標)を有機溶媒に溶かして常温で反応させて反応溶液を製造する第1段階;
ナノ沈殿法(nanoprecipitation)によって前記第1段階の高分子溶液を蒸留水に落とし、持続的に撹拌して反応溶液の有機溶媒を自然蒸発させて5~50nmサイズのナノ粒子を製造する第2段階;及び、
前記第2段階のナノ粒子に分子量3~20KDaのキトサンを蒸留水で添加撹拌し、物理学的結合によってキトサンをコートする第3段階;からなる過程によって製造され
前記プルロニック(登録商標)は、プルロニックL35、プルロニックL43、プルロニックL44、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックP85、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF98、プルロニックP103、プルロニックP104、プルロニックP105、プルロニックF108、プルロニックP123及びプルロニックF127からなる群から選択される1種以上である
ことを特徴とするナノカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記活性剤は、プルロニック(登録商標)100重量部を基準に0~20重量部である
請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項4】
前記第1段階の有機溶媒は、アセトン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、エタノール、アセトニトリル(acetonitrile)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、クロロホルム(chloroform)及びジクロロメタン(dichloromethane)からなる群から選択される1種以上である
請求項2に記載のナノカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記第2段階の蒸留水は、第1段階の有機溶媒の体積を基準に4倍である
請求項2に記載のナノカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記ナノカプセルは、皮膚透過率が活性剤単独処理に対比して2倍以上増加している
請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項7】
請求項1に記載のナノカプセルを含む
ことを特徴とするナノカプセルを含む薬物伝達システム。
【請求項8】
前記薬物伝達システムは、皮膚外用剤又は経口投与製剤である
請求項7に記載のナノカプセルを含む薬物伝達システム。
【請求項9】
請求項1に記載のナノカプセルを含む
ことを特徴とする化粧料組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のナノカプセルを含む
ことを特徴とする健康機能食品組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のナノカプセルを含む
ことを特徴とする医療機器用の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のナノカプセルを含む
ことを特徴とする生活用品用の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンでコートされたナノカプセル及びその用途に関し、より具体的には、プルロニック(登録商標)を含むナノ粒子をキトサンでコートしたナノカプセル及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(nanoparticles)は、一般に、原子よりは大きく細胞よりは小さいサイズであって、直径が1~1,000nm範囲である粒子形態の物質を称するものであり、ナノ粒子のサイズが小さくなりながら得られる表面積増加の効果又は浸透効果を用いて新しい応用分野を作りだしている素材である。特に、電磁気的性質を用いる電子部品分野、薬物吸収性質を用いる医薬、化粧品分野、光触媒や燃料電池分野などにおいて使用が大きく増大している。
【0003】
ナノ粒子は一般に、金(gold)、酸化スズ(tin oxide)、アルブミン(albumin)などの重合物質(polymeric material)のような非活性物質を用いて作ることができるが、このようなレベルの粒子は、より直径の大きい粒子に比べて、生物学的システムに適用されたとき、膜を通じた透過性増大、光学的活性化、分子レベルでの凝集現象に対する調節などのような物理的、化学的、生物学的に明確に区分される特性を有する。
【0004】
ナノカプセルは、ナノサイズの中空の球形カプセルであり、ナノカプセルの中空の内部に様々な物質を入れることができる。リポソームは代表的なナノカプセルの一種であり、両性の性質を有するリン酸脂肪質などが2重に層をなして球形に存在するものであって、水溶性である薬を空いた空間に含めることができ、薬物伝達などに用いられている。しかしながら、このようなリポソームは、構造が安定でなく、透過度が低いという短所から、制限された分野でしか応用されていない。そこで、中空のカプセルの安定性と透過度を増大させようとする試みが多くの方法で接近され、その結果、高分子で作ったナノカプセルが誕生した。
【0005】
医薬分野では、現在、様々な薬物が含まれたナノ伝達体を用いて細胞膜中に伝達して薬物の薬効を発現可能にする多くの研究が行われている。代表的な薬物伝達体について説明すると、まず、リポソーム(liposome)はリン脂質で構成された伝達体であって、親油性及び親水性の薬物をいずれも含有させることができ、生体適合性物質であって、毒性がなく、目的に応じて粒子表面を改質化できるという長所があるが、肝又は脾臓の細胞内で細網内皮系(reticuloendothelial system)によって捕獲されて血液から速かに除去されてしまうか或いは粒子が破られて標的に到達する量が少ないという短所があり、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)をリポソーム表面に修飾化して体内血中滞留時間を増やしたり、或いは様々な抗体又はリガンドを適用させて標的性を増加させている。ミセル(micelle)は、親水性と疎水性の鎖からなる共重合体で構成された伝達体であり、水溶液上で、中心部は疎水性部分が互いに集まって球形をなし、通常、難溶性薬物を中心部に含有させることにより、溶解度増加及び生体利用率を高める研究が行われている(非特許文献1:クォン・イクチャン,2010)。
【0006】
化粧品業界は、美白、シワ防止、抗酸化、抗老化などの機能性化粧品の新素材開発とともに、実際に皮膚への適用時に経皮吸収率を高める技術が重要な課題である。皮膚という障壁によって有効成分が吸収されず、いくら優れた効能を持つ成分といっても皮膚への適用時にその効果を発揮できずに済むためである。したがって、化粧品業界の最大の関心は、有効成分を皮膚に刺激を与えることなく吸収を促進させ、効果を最大化できるかに置かれている。そこで、有効成分の吸収を促進させるための多くの方法が提示されてきており、現在も局所作用(topical effect)から全身作用(systemic effect)などに至るまで活発な研究が行われている。このような研究から、サイズが500nm以下であり且つ水中油(oil in water,O/W)剤形である場合に皮膚透過がよりし易いという事実を確認した(非特許文献2:キム・ウンジュ,et al.,2010)。
【0007】
近年、経皮吸収促進方法において最も多い研究を占める方法は剤形的接近法であり、、大きく5つに分けることができる。第一は、pH感応型高分子水和ゲルである。すなわち、pH感応性を有する高分子水和ゲルを作り、外部環境に不安定な活性物質を化粧品剤形内では安定に保存し、皮膚塗布時に速い放出で容易に皮膚に吸収されるシステムである。第二は、親水性高分子と疎水性高分子がブロック共重合体の形態で結合し、疎水性活性成分を水溶液上に分散させるのに効率的な高分子ミセルである。第三は、100~500nmの粒子サイズを有するエマルジョンの一種であって、一般エマルジョンとは違い、粒子間に凝集現象又は合一現象がないため、低い粘度条件でも長期にわたって安定性を保有する特徴があるナノエマルジョンである。第四は、細胞膜又は角質層の細胞間脂質と構造的に類似な脂質二重層で構成されていることにより、細胞膜と融合して活性成分を効果的に細胞内に伝達する構造であるリポソームである。第五は、エトソームと弾性リポソームであり、リポソームに比べて皮膚透過率をより高めるために考案された方法であって、膜をより柔軟に且つ変形し易い状態に作った剤形である(非特許文献3:Chung,J.Y.,et al.,2014)。
【0008】
食品産業におけるナノ粒子は主として粒子やカプセルの形態で作られるが、これは、栄養成分などを光、酸素、水分、温度などの外部要因から保護して損失を減らし、有用性増大、生理活性増大、安定性増大、標的調節などの長所を有することから、将来の高付加価値食品などにも多様に適用可能である。ナノ技術を適用した食品素材は、既存の食品素材に比べてサイズが減少し、表面積が増加したため、粒子及びカプセルの透過性と滞留時間が向上して生体内吸収及び利用が増加すると期待され、また、溶解度及び分散性(dispersibility)を向上させることができ、生体内細胞に利用時に透過し難い細胞の脂質二重膜を通過する潜在力を有するので、機能性物質の効率的な利用が期待できる(非特許文献4:キム・セフン,et al.,2014)。
【0009】
そこで、本発明者らは、生理学的に有効な物質の人体内伝達システムを開発する過程で、500nm以下、特に、200nm以下の粒子サイズを有し、且つ安定性優れたナノカプセル製造方法を確立し、これにより製造されたナノカプセルに難溶性薬物をローディングし、薬物を含むナノカプセルの優れた皮膚透過率、これによる皮膚内への薬物伝達及び薬物による効能の発現を確認した。なお、製造したナノカプセルの経口投与による生体内有効成分の生体利用率が増加することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従来の先行技術である特許文献1:韓国登録特許第1698809号には、難溶性薬物、プルロニック及びキトサンからなる多層ナノ粒子が記載されているが、薬物を含む第1コアにはグリコール系化合物が、ポロキサマーを含む第2コアには、ポリオキシエーテル系化合物又はポリオキシひまし油系化合物がさらに含まれており、本発明の難溶性薬物及びプルロニックのみからなるナノ粒子とはその構成が相違する。また、韓国登録特許第1748127号には、薬物及びプルロニック(ポロキサマー)を含むナノ粒子をキトサンでコートしたナノ粒子が記載されているが、薬物にプルロニック及びPLGAが含まれたナノ粒子をキトサンでコートしたナノ粒子であり、本発明の薬物及びプルロニックのみからなるナノ粒子をキトサンでコートしたナノカプセルとはその構成が相違し、本発明のナノカプセルの優れた皮膚透過効果は記載されていない。
【0011】
非特許文献5:Escobar-Chavesz,J.J.,et al.,(2006)には、プルロニックゲルの薬学的剤形及びナノ粒子、温度反応性及び皮膚伝達が記載されており、また、キトサンの皮膚透過効果が記載されているが、本発明の薬物及びプルロニックを含むナノ粒子にキトサンがコートされたナノカプセル及びその皮膚透過率増加の効果は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国登録特許第1698809号
【非特許文献】
【0013】
【文献】クォン・イクチャン,2010
【文献】キム・ウンジュ,et al.,2010
【文献】Chung,J.Y.,et al.,2014
【文献】キム・セフン,et al.,2014
【文献】Escobar-Chavesz,J.J.,et al.,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、キトサンがコートされたナノカプセル及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、上記ナノカプセルを含む様々な用途の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、活性剤及びプルロニックを含むナノ粒子にキトサンがコートされたナノカプセルに関する。
【0017】
前記ナノカプセルは、活性剤及びプルロニックを有機溶媒に溶かして常温で反応させて反応溶液を製造する1段階;前記1段階の反応溶液を蒸留水に落とし、持続的に撹拌して反応溶液の有機溶媒を自然蒸発させて除去してナノ粒子を製造する2段階;及び、前記2段階のナノ粒子にキトサンを添加してキトサンをコートする3段階;からなる過程により製造されてよい。
【0018】
前記活性剤は、プルロニック100重量部を基準に0重量部超過~20重量部であってよい。
【0019】
前記活性剤は、抗癌剤、免疫抑制剤、抗酸化剤、抗炎症剤、シワ防止剤、脱毛防止剤、傷治癒剤、皮膚美白剤、栄養補充剤、免疫抗原、タンパク質治療剤、血管再生剤、抗真菌剤、抗生剤、抗ウイルス剤、鎮静剤、鎮痛剤、老化防止剤、皮膚脱色素剤、紫外線遮断剤、染料、着色剤、脱臭剤及び芳香剤からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0020】
前記活性剤は脂溶性又は難溶性の薬物であり、前記脂溶性又は難溶性抗癌剤として、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、テトランドリン(tetradrine)、前記脂溶性又は難溶性免疫抑制剤としてシクロスポリンA(cyclosporin A)、デキサメタゾン(dexamethasone)、前記脂溶性又は難溶性抗酸化剤としてトコフェリル酢酸(tocopheryl acetate)、アスタキサンチン(astaxanthin)、クルクミン(curcumin)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)、前記脂溶性又は難溶性抗炎症剤としてデクスパンテノール(dexpanthenol)、カフェイン酸フェネチルエステル(caffeic acid phenethyl ester;CAPE)、前記脂溶性又は難溶性シワ防止剤としてパルミチン酸レチノール(retinyl palmitate)、前記脂溶性又は難溶性脱毛防止剤としてミノキシジル(minoxidil)、フィナステリド(finasteride)、前記脂溶性又は難溶性傷治癒剤としてツボクサ(centella asiatica)抽出物、ベータシトステロール、前記脂溶性又は難溶性皮膚美白剤としてテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ascorbyl tetraisopalmitate)、前記脂溶性又は難溶性栄養補充剤としてトリペプチドコラーゲン(tripeptide collagen)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0021】
前記活性剤は水溶性薬物であってよく、前記水溶性抗癌剤としてドキソルビシン(doxorubicin)、前記水溶性抗炎症剤としてホスホリパーゼA2(phospholipase A2;PLA2)、前記水溶性免疫抗原としてオボアルブミン(ovalbumin)、前記水溶性タンパク質治療剤としてウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、前記水溶性傷治癒剤として線維芽細胞成長因子(b-FGF)、前記水溶性血管再生剤として血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0022】
前記プルロニックは、プルロニックL35、プルロニックL43、プルロニックL44、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックP85、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF98、プルロニックP103、プルロニックP104、プルロニックP105、プルロニックF108、プルロニックP123及びプルロニックF127からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0023】
前記ナノ粒子は、32.5~37℃で粒子サイズが5~80nmであってよい。好ましくは、5~50nmである。
【0024】
前記キトサンは、分子量が3~100kDaであるキトサンであってよい。
【0025】
前記キトサンは、プルロニック100重量部を基準に0.001~200重量部を含むことができる。
【0026】
前記ナノカプセルは、32.5~37℃で粒子サイズが700nm以下であってよい。好ましくは、32.5~37℃で粒子サイズが30~500nmであってよい。より好ましくは30~300nmであり、最も好ましくは30~100nmである。
【0027】
前記1段階の有機溶媒は、アセトン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、エタノール、アセトニトリル(acetonitrile)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、クロロホルム(chloroform)及びジクロロメタン(dichloromethane)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0028】
前記2段階の蒸留水は、前記1段階の有機溶媒体積を基準に4倍を用いることができる。
【0029】
前記ナノカプセルは、皮膚透過率が、活性剤単独処理と対比して2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは14倍以上増加してよい。
【0030】
また、本発明は、前記ナノカプセルを含む薬物伝達システム、化粧料組成物、健康機能食品組成物、医療機器用の組成物、生活用品用の組成物に関する。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明は、キトサンがコートされたナノカプセルに関し、具体的に、活性剤及びプルロニックからなるナノ粒子にキトサンがコートされたナノカプセルに関する。
【0033】
本発明において、“ナノカプセル”は、ナノサイズの中空の球形カプセルであり、ナノカプセルの中空の内部に様々な物質、例えば、活性剤を含むことができる。
【0034】
本発明のナノカプセルは、当業界に公知の製造方法を用いて製造できる。好ましくは、ナノ沈殿法及び膜再分散法であり、より好ましくはナノ沈殿法を用いることができる。
【0035】
最も好ましくは、前記ナノカプセルは、活性剤及びプルロニックを有機溶媒に溶かして常温で反応させて反応溶液を製造する1段階;前記1段階の反応溶液を蒸留水に落として持続的に撹拌して反応溶液の有機溶媒を自然蒸発させて除去してナノ粒子を製造する2段階;及び、前記2段階のナノ粒子にキトサンを添加してキトサンをコートする3段階;からなる過程により製造されてよい。
【0036】
前記1段階の有機溶媒は、アセトン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、エタノール、アセトニトリル(acetonitrile)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、クロロホルム(chloroform)及びジクロロメタン(dichloromethane)からなる群から選択される1種以上でよいが、これに限定されない。好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール及びアセトニトリルからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはアセトンである。
【0037】
前記2段階の蒸留水は、前記1段階の有機溶媒体積を基準にして2~10倍を使用することができる。好ましくは2~5倍を使用し、より好ましくは4倍を使用する。前記蒸留水を有機溶媒体積を基準に2倍未満で使用すると、部分的に沈殿が発生することがあり、10倍を超えると、キトサンコーティングが不安定になるか、或いはナノカプセルの濃度が希釈され、濃縮工程が追加されることがあり、好ましくない。
【0038】
前記活性剤は、水溶性及び脂溶性特性を持つ有効物質であり、抗癌剤、免疫抑制剤、抗酸化剤、抗炎症剤、シワ防止剤、脱毛防止剤、傷治癒剤、皮膚美白剤、栄養補充剤、免疫抗原、タンパク質治療剤、血管再生剤、抗真菌剤、抗生剤、抗ウイルス剤、鎮静剤、鎮痛剤、老化防止剤、皮膚脱色素剤、紫外線遮断剤、染料、着色剤、脱臭剤及び芳香剤などからなる群から選択される1種以上でよいが、これに限定されない。
【0039】
前記活性剤は、プルロニック100重量部を基準に、活性剤の効能及び効果を示す最小限の重量部から20重量部まで、すなわち、0重量部超過~20重量部が含まれてよい。好ましくは、0重量部超過~10重量部が含まれる。前記活性剤が20重量部超過の場合は、ナノ粒子のサイズが大きくなりすぎるか、ナノ粒子に活性剤が全て含まれないため正確な有効量の活性剤を伝達できず、好ましくない。
【0040】
本発明において、“プルロニック(pluronic,poloxamer)”は親水性高分子であり、温度感応性の性質を示し、様々なHLB(hydrophile-lipophile balance)を持つ誘導体が存在する。前記プルロニックは、HLBが8~29であるプルロニック、例えば、プルロニックL35、プルロニックL43、プルロニックL44、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP84、プルロニックP85、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF98、プルロニックP103、プルロニックP104、プルロニックP105、プルロニックF108、プルロニックP123及びプルロニックF127からなる群から選択される1種以上でよく、好ましくは、HLBが15~29であるプルロニック、例えば、プルロニックL35、プルロニックL44、プルロニックL64、プルロニックF68、プルロニックP85、プルロニックF87、プルロニックF88、プルロニックF98、プルロニックP105、プルロニックF108及びプルロニックF127からなる群から選択される1種以上である。ただし、これに限定されるものではない。
【0041】
前記ナノ粒子は活性剤及びプルロニックからなるナノ粒子であり、温度敏感性の性質により、測定温度によってナノ粒子のサイズが変わり得る。具体的に、温度が低いほど粒子サイズが大きくなってよい。
【0042】
前記ナノ粒子は、32.5~37℃で粒子サイズが5~80nmであってよい。好ましくは5~50nmである。
【0043】
本発明において、“キトサン(chitosan)”はキチンの部分的な脱アセチル化によって形成される多糖類であり、毒性のない生体適合性、生分解性の高い高分子物質であって、親水性が高く且つ粘膜付着性が高い性質を有する。キトサンは、酸性環境で溶解度が高く、陽電荷を帯びる傾向があるので、粘膜質のような箇所に付着しやい性質があり、抗細菌性及び止血効果がある。前記キトサンは一般に、酢酸、乳酸などのような酸性溶液に高い溶解度を示す。前記酸性溶液に溶解されたキトサンは、人体への適用時に皮膚刺激又は人体内pHの変化による障害などを誘発することがある。
【0044】
一方、本発明の前記キトサンは、水に溶解しやすいものであって、酸性溶液に溶解されるキトサンを用いる場合に生じる問題点を克服することができる。前記キトサンは、分子量が3~100kDaであってよい。好ましくは3~20kDa、より好ましくは3~10kDaである。前記キトサンの分子量が100kDaを超えると、水に対する溶解度が低いため好ましくない。
【0045】
前記キトサンは、プルロニック100重量部を基準に200重量部以下を含むことができる。好ましくは0.001~200重量部であり、より好ましくは0.001~100重量部である。キトサンが0.001重量部未満であれば、ナノ粒子の表面がキトサンによって十分にコートされず、陽電荷の表面電荷を示し難く、キトサンが200重量部を超えると、ナノカプセルのサイズが大きくなりすぎるか、部分的に沈殿が発生することがあり、好ましくない。
【0046】
前記ナノカプセルは温度敏感性の性質を示すものであり、温度が低いほど粒子サイズが増加し得る。前記ナノカプセルは、10℃で粒子サイズが1,000nm以下であり、10℃よりも高い温度では粒子サイズが小さくなる。
【0047】
前記ナノカプセルは、好ましくは32.5~37℃で粒子サイズが700nmで以下であり、より好ましくは32.5~37℃で粒子サイズが30~500nmであり、さらに好ましくは粒子サイズが30~300nmであり、最も好ましくは粒子サイズが30~100nmである。前記ナノカプセルの粒子サイズが700nmを超えると、皮膚への適用時に皮膚透過効率が低いため好ましくない。
【0048】
前記ナノカプセルは、中空の内部に様々な活性剤を含むことができる。また、前記ナノカプセルは、温度敏感性の性質により、低い温度ではナノカプセルが膨潤(swelling)し、ナノカプセルをなすプルロニック物質同士の間に活性剤が入り込み得るので、脂溶性及び水溶性活性剤の両方を含むことができる。
【0049】
前記ナノカプセルは、表面がキトサンでコートされ、ナノカプセルの表面電荷が陽電荷を帯びるので、皮膚透過率及び粘膜接着性が増加し得る。
【0050】
前記キトサンでコートされたナノカプセルの皮膚透過率は、キトサンをコートしていない高分子カプセル(PluNC)よりも顕著に高く、商業的に最も多用されているリポソーム剤形(Liposome)に比べて6倍以上増加可能であり、ナノカプセルに含まれている活性剤を単独で処理した場合に比べて2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは14倍以上増加し得る。
【0051】
前記ナノカプセルは、ナノ粒子を構成するプルロニックとナノ粒子の表面にコートされるキトサン間の物理学的結合によってなされるものであり、プルロニックとキトサンとの化学的結合によって製造されたプルロニック-キトサン重合体を用いて製造するナノ粒子とは違い、重合体製造工程が別に要らず、重合体製造のために使用される結合剤による毒性を考慮しなくてもよい。
【0052】
また、本発明は、前記ナノカプセルを含む薬物伝達システムに関する。
【0053】
本発明において、“薬物伝達システム”は、治療効能を持つ薬物を生体内の必要な部分に伝達するシステムであり、薬物が必要な組織への伝達効率及び必要な量の薬物を効率的に伝達するものであり、薬物組成物、薬物処方、配合方法又は薬物製剤と理解できる。
【0054】
前記薬物伝達システムは、治療効能のある薬物を含むナノカプセルであってよい。
【0055】
前記薬物は、抗癌剤、免疫抑制剤、抗酸化剤、抗炎症剤、シワ防止剤、脱毛防止剤、傷治癒剤、皮膚美白剤、栄養補充剤、免疫抗原、タンパク質治療剤、血管再生剤、抗真菌剤、抗生剤、抗ウイルス剤、鎮静剤、鎮痛剤、老化防止剤、皮膚脱色素剤、紫外線遮断剤、染料、着色剤、脱臭剤及び芳香剤等からなる群から選択される1種以上でよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記抗真菌剤は、ポリエン(polyene)系、例えば、アムホテリシンB(amphotericin B)、ナイスタチン(nystatin,fungicidin)など、アゾール系(azole)、例えば、ケトコナゾール(ketoconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)など、アリルアミン系(allylamine)、例えば、ブテナフィン(butenafine)、テルビナフィン(terbinafine)、ナフチフィン(naftifine)など、エキノカンジン系(echinocandin)、例えば、アニデュラファンギン(anidulafungin)、カスポファンギン(caspofungin)など、その他抗真菌剤、例えば、オーロン(aurones)、ベンゾ酸(benzoic acid)、シクロピロックス(ciclopirox)、フルシトシン(flucytosine)、グリセオフルビン(griseofulvine)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記抗生剤は、ペニシリン系(penicillin)、セファロスポリン系(cephalosporin)、ポリミキシン(polymyxin)、スルホンアミド(sulfonamide)、キノリン系(quinoline)、リファンピシン(rifampicin)、アミノグリコシド系(aminoglycoside)、マクロライド系(macrolide)、テトラサイクリン系(tetracycline)などであるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記抗ウイルス剤は、抗インフルエンザウイルス(anti-influenza virus)剤、例えば、アマンタジン(amantadine)、リマンタジン(rimantadine)、オセルタミビル(oseltamivir)、ザナミビル(zanamivir)など、抗ヘルペスウイルス(anti-herpes virus)剤、例えば、ビダラビン(vidarabine)、アシクロビル(acyclovir)、ホスカルネット(foscarnet)など、抗B型肝炎ウイルス(anti-hepatitis B virus)剤、例えば、ラミブジン(lamivudine)、エンテカビル(entecavir)、テノホビル(tenofovir)など、抗HIV剤、例えば、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、エファビレンツ(efavirenz)、リルピビリン(rilpivirine)、サキナビル(saquinavir)、リトナビル(ritonavir)、ラルテグラビル(raltegravir)、エルビテグラビル(elvitegravir)、ドルテグラビル(dolutegravir)、エンフュヴィルタイド(enfuvirtide)などであるが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記鎮静剤は、ゾルピデム(zolpidem)、ジアゼパム(diazepam)、モルヒネ(morphine)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記鎮痛剤は、アセトアミノフェン(acetaminophen)系列、非ステロイド性消炎鎮痛剤(nonsteroidal antiinflammatory drugs)系列、モルヒネ(morphine)、フェンタニル(fentanyl)、オキシコドン(oxycodone)、ヒドロモルフォン(hydromorphone)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
前記傷治癒剤は、ツボクサ(centella asiatica)、コラーゲン(collagen)、表皮生長因子(epithelial growth factor,EGF)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記抗炎症剤は、メロキシカム(meloxicam)、シリビニン(silibinin)、インドメタシン(indomethacin)、プロポリス(propolis)、カフェイン酸フェネチルエステル(caffeic acid phenethyl ester)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記抗癌剤は、パクリタキセル(paclitaxel)、エストロゲン(estrogen)、ドキソルビシン(doxorubicin)、5-フルオロウラシル(5-fluoro uracil)、ロピナビル(lopinavir)、ニメスリド(nimesulide)、プロゲステロン(progesterone)、レパグリニド(repaglinide)、テトラサイクリン(tetracycline)、オールトランスレチノイン酸(all-trans retinoic acid)、ルテオリン(luteoline)、VEGFR抑制剤(vascular endothelial growth factor receptor(VEGFR) inhibitor)、Wnt/β-カテニン調節剤(Wnt/β-catenin modulator)、ヘッジホッグ抑制剤(hedgehog inhibitor)、PI3K/Akt/mTOR調節剤などでよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記免疫抑制剤は、シクロスポリンA(cyclosporin A)、タクロリムス(tacrolimus)、メトトレキサート(methotrexate)、ラパマイシン(rapamycin)、シロリムス(sirolimus)などでよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記脱毛防止剤は、脱毛抑制又は毛髪成長促進効果がある物質であり、フィナステリド(finasteride)、ミノキシジル(minoxidil)、シクロスポリンA(cyclosporin A)、天然脱毛防止剤、例えば、ヨクイニン(Coicis semen)抽出物、トックリイチゴ(Rubus coreanus)抽出物、甘草(Glycyrrhiza radix)抽出物、コノテガシワ(Thuja orientalis)抽出物、トウキ(Angelicae radix)抽出物、サンシュユ(Cornus officinalis)抽出物など、毛髪成長促進効果があるペプチドなどでよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記活性剤は、脂溶性又は難溶性薬物であってよく、前記脂溶性又は難溶性抗癌剤としてパクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、テトランドリン(tetradrine)、前記脂溶性又は難溶性免疫抑制剤としてシクロスポリンA(cyclosporin A)、デキサメタゾン(dexamethasone)、前記脂溶性又は難溶性抗酸化剤としてトコフェリル酢酸(tocopheryl acetate)、アスタキサンチン(astaxanthin)、クルクミン(curcumin)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)、前記脂溶性又は難溶性抗炎症剤としてデクスパンテノール(dexpanthenol)、カフェイン酸フェネチルエステル(caffeic acid phenethyl ester;CAPE)、前記脂溶性又は難溶性シワ防止剤としてパルミチン酸レチノール(retinyl palmitate)、前記脂溶性又は難溶性脱毛防止剤としてミノキシジル(minoxidil)、フィナステリド(finasteride)、前記脂溶性又は難溶性傷治癒剤としてツボクサ(centella asiatica)抽出物、ベータシトステロール、前記脂溶性又は難溶性皮膚美白剤としてテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ascorbyl tetraisopalmitate)、前記脂溶性又は難溶性栄養補充剤としてトリペプチドコラーゲン(tripeptide collagen)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0067】
前記活性剤は水溶性薬物でよく、前記水溶性抗癌剤としてドキソルビシン(doxorubicin)、前記水溶性抗炎症剤としてホスホリパーゼA2(phospholipase A2;PLA2)、前記水溶性免疫抗原としてオボアルブミン(ovalbumin)、前記水溶性タンパク質治療剤としてウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、前記水溶性傷治癒剤として線維芽細胞成長因子(b-FGF)、前記水溶性血管再生剤として血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0068】
前記薬物伝達システムは、前記ナノカプセル及び薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。
【0069】
前記薬物伝達システムはそれぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して用いることができる。前記薬学組成物に含有可能な担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。製剤化する場合には、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は前記ナノカプセルに少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられてよい。坐剤の基剤には、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられてよい。
【0070】
また、剤形は特に制限されないが、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、パッチ剤、クリーム剤、ゲル剤及びジェルから選択される1種の剤形を有する皮膚外用剤として使用されてよい。経皮吸収を増加させる製剤、例えば、非限定的に、特にジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アルコール、アセトン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含むことができる。塗布頻度は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって適宜可変されてよく、布頻度は、毎月又は一日に10回、好ましくは毎週又は一日に4回、より好ましくは1週に3回又は1日に3回、より好ましくは1日に1回又は2回が提案される。
【0071】
本発明の薬物伝達システムは、ネズミ、家畜、ヒト、愛玩動物などの哺乳動物に様々な経路で投与されてよい。いかなる投与方式も考えられてよいが、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、皮膚、子宮内、硬膜又は脳血管内注射によって投与されてよい。好ましくは皮膚投与である。
【0072】
本発明は、また、前記ナノカプセルを含む化粧料組成物に関する。
【0073】
前記ナノカプセルは、美白、シワ防止、抗酸化、抗老化、抗炎症、紫外線遮断などの機能性化粧品素材を含むことができる。
【0074】
前記美白機能性素材は、楮抽出物、アルブチン(arbutin)、エチルアスコルビルエーテル(ethyl ascorbyl ether)、油溶性甘草抽出物、アスコルビルグルコシド(ascorbyl glucoside)、ニコチンアミド(niacinamide)、α-ビサボロール(α-bisabolol)及びテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ascorbyl tetraisopalmitate)などでよく、これに限定されるものではない。
【0075】
前記シワ機能性素材は、ビタミンA、ビタミンA誘導体(パルミチン酸レチノール、レチニルアセテートなど)、アデノシン、ポリエトキシ化レチンアミドなどでよいが、これに限定されるものではない。
【0076】
前記抗酸化機能性素材は、ビタミンA、ビタミンA誘導体、ビタミンE、ビタミンE誘導体、カロテン(carotene)、リコペン(lycopene)、ルテイン(lutein)、コエンザイムQ10、アスタキサンチンなどでよいが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記化粧料組成物は、前記ナノカプセル及び化粧分野で通常用いられる補助剤、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性活性剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填剤、遮断剤、顔料、吸臭剤又は染料を含有できる。
【0078】
前記補助剤の量は、当該分野で通常使用される量であり、いかなる場合にも、補助剤及びその比率は、本発明に係る化粧料組成物の好ましい性質に悪影響を及ぼさないように選択され得る。
【0079】
前記化粧料組成物は、ローション、スキンソフナー、スキントナー、アンプル、アストリンゼント、クリーム、ファンデーション、エッセンス、パック、マスクパック、石鹸、ボディークレンザー、クレンジングフォーム、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアーオイル、ボディーオイル及びボディーローションからなる群から選択される1つ以上の剤形とすることができるが、これに制限されない。
【0080】
前記化粧料組成物は毎日使用が可能であり、また、定められていない期間にも使用可能であり、好ましくは、使用者の年齢、皮膚状態又は皮膚タイプによって使用量、使用回数及び期間を調節することができる。
【0081】
また、本発明は、前記ナノカプセルを含む健康機能食品組成物に関する。
【0082】
前記ナノカプセルは健康機能食品素材を含むことができる。
【0083】
前記健康機能食品素材は、ビタミン、ミネラル、生菌剤、生物活性ペプチド、抗酸化剤、植物性ステロール、植物抽出物、コエンザイムQ10、オメガ-3、アスタキサンチンなどであってよい。好ましくは、コラーゲントリペプチド、紅参オイル、アスタキサンチン、オメガ-3であってよいが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記健康機能食品組成物は、前記ナノカプセル及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができる。
【0085】
本発明の健康機能食品組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤又は液剤などの形態を含み、本発明のナノカプセルを添加できる食品には、例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0086】
本発明のさらに他の様態は、本発明のナノカプセルを含む医療機器を提供する。
【0087】
前記医療機器は、フィラー、創傷被覆剤、骨修復剤、インプラントコーティング剤、塞栓術補助剤、診断剤などであってよい。
【0088】
本発明のさらに他の様態は、本発明のナノカプセルを含む生活用品用の組成物を提供する。
【0089】
前記生活用品用の組成物は、染色剤、着色剤、脱臭剤、芳香剤などでよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0090】
本発明は、キトサンがコートされたナノカプセル及びその用途に関し、特に、500nm以下、特に200nm以下の粒子サイズを有し、安定性に優れたナノカプセル製造方法を確立し、これにより製造されたナノカプセルに難溶性薬物をローディングし、薬物を含むナノカプセルの優れた皮膚透過率、これによる皮膚内への薬物伝達及び薬物による効能の発現を確認した。また、製造したナノカプセルの経口投与による生体内有効成分の生体利用率が増加することを確認した。
【0091】
これにより、本発明のキトサンがコートされたナノカプセルを用いて、医薬分野、化粧品業界、食品産業などにおける難溶性薬物又は有効物質の人体及び家畜、愛玩動物などのような動物への伝達効率が顕著に増加した優れた伝達システムが開発できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】プルロニックの種類及び温度による製造されたナノ粒子のサイズを確認した結果である。
図2】プルロニック種類によるキトサンナノカプセルの特性を分析した結果であり、(a)はナノカプセルの性状を、(b)はナノカプセルのサイズを、(c)はナノカプセルの多分散性を、(d)はナノカプセルの表面電荷を示している。
図3】キトサンの分子量による製造されたキトサンがコートされたナノカプセルの特性を分析した結果であり、(a)はナノカプセルのサイズを、(b)はナノカプセルの多分散性を、(c)はナノカプセルの表面電荷を、(d)はナノカプセルの形態を確認した結果を示している。
図4】溶媒種類によるキトサンナノカプセルの特性を分析した結果であり、(a)はナノカプセルのサイズを、(b)はナノカプセルの多分散性を、(c)はナノカプセルの表面電荷を示している。
図5】本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの製造方法による粒子のサイズを確認した結果である。
図6】ナノ沈殿法を用いて本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの製造時に、溶媒と蒸留水の混合比率によるナノカプセルの粒子サイズを確認した結果である。
図7】本発明のキトサンがコートされたナノカプセルの細胞毒性の有無を確認した結果である。
図8】パクリタキセル及びドセタキセルを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果であり、(a)はナノカプセルのサイズを、(b)はナノカプセルの多分散性を、(c)はナノカプセルの表面電荷を示している。
図9】(a)シクロスポリンA及び(b)デキサメタゾンを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果であり、それぞれのナノカプセルのサイズ、多分散性、表面電荷を示している。
図10】(a)パルミチン酸レチノール及び(b)トコフェリル酢酸を含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果であり、それぞれのナノカプセルのサイズ、多分散性、表面電荷を示している。
図11】(a)ミノキシジル及び(b)フィナステリドを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果であり、それぞれのナノカプセルのサイズ、多分散性、表面電荷を示している。
図12】温度によるナノカプセルのサイズ及び分散度特性を示すものである。
図13】ドキソルビシンを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果である。
図14】オボアルブミンを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果である。
図15】ウシ血清アルブミンを含むキトサンがコートされたナノカプセルの薬物ローディング量による特性を分析した結果である。
図16】シクロスポリンA(CsA@ChiNC)、ナイルレッド(Nile red@ChiNC)又はピレン(pyrene@ChiNC)を含むキトサンがコートされたナノカプセルの沈殿物生成の有無を確認した結果である。
図17】薬物(CsA及びRP)ローディングキトサンナノカプセルの凍結前後の特性を示す結果である。
図18】キトサン種類による薬物の皮膚透過を示す結果である。
図19】本発明の薬物(ナイルレッド)を含むキトサンがコートされたナノカプセルの皮膚透過率を確認した結果である。
図20】本発明の薬物(ナイルレッド)を含むキトサンがコートされたナノカプセルの皮膚内への薬物伝達効果を確認した結果である。
図21】本発明の薬物(シクロスポリンA,CsA)を含むキトサンがコートされたナノカプセルの皮膚内への薬物伝達による発毛効能を確認した結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよい。却って、ここで紹介される内容が徹底且つ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0094】
<実施例1.キトサンがコートされたナノカプセル製造>
実施例1-1.プルロニック種類によるナノ粒子製造最適化
プルロニック(pluronic,poloxamer)は、親水性高分子であるポリ(エチレンオキシド)(poly(ethylene oxide),PEO)と疎水性高分子であるポリ(プロピレンオキシド)(poly(propylene oxide),PPO)で構成された非イオン性のPEO-PPO-PEO三重ブロック共重合体であって、代表的な温度感応性高分子であり、温度増加による内部構造の変化によって可逆的に変わる独特の特徴を有する。プルロニックのPEO及びPPOの付加モル数によって様々なHLB(hydrophile-lipophile balance)を有するプルロニック誘導体が存在し、プルロニックのHLBは、プルロニックを用いたナノ粒子製造時に粒子サイズに影響を与えることができる。そこで、プルロニック種類によるナノ粒子のサイズを確認した。
【0095】
HLB 2~29に該当するプルロニックを用いてナノ粒子を製造した。具体的に、プルロニック20mgをアセトン1mlに溶かして反応溶液を製造した。製造した反応溶液を、530rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水に徐々に落として投入した後、12時間以上常温でそれぞれ反応させてアセトンが自然に蒸発して除去されるようにし、プルロニックからなるナノ粒子を製造した。製造したナノ粒子のサイズを粒度分析器(Zetasizer,Nono-Zs,Malvern)及び透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy)を用いて分析し、その結果を図1に示した。
【0096】
図1に示すように、プルロニックF127からなるナノ粒子では、25℃で200nm以下、32.5℃~37℃で小さくは5nm、大きくは80nmのナノ粒子を形成し、平均で50nmのナノ粒子が形成できた。プルロニックF68では、25℃で300nm以下、32.5℃~37℃で200nm以下の粒子サイズを示した。
【0097】
また、プルロニックF127及びプルロニックF68の他にも、2~29に該当するプルロニックからなるナノ粒子では、32.5℃~37℃でサイズ200nm以下のナノ粒子が製造されることを確認した。
【0098】
上記のように、プルロニックを用いて温度によって粒子のサイズが調節できることを確認し、下記ナノカプセルのサイズを100nm以下に製造するために、HLB2~29に該当するプルロニックを用いて、ナノ粒子のサイズを5~80nm、好ましくは5~50nmのサイズに最適化した。
【0099】
実施例1-2.プルロニック種類によるナノカプセル製造最適化
【0100】
プルロニック種類によるナノカプセル製造の最適化条件を確認するために、下記表1のHLB2~29に該当するプルロニックを用いてナノ粒子を製造し、キトサンでコートしてナノカプセルを製造した。
【0101】
具体的に、それぞれのプルロニック20mgをアセトン1mlに溶かした後、2時間常温で撹拌した。その後、高分子溶液を、400rpmで撹拌(stirring)する4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落として高分子ナノ粒子を製造した後、6時間程度フードでアセトンを除去した。最終的に脱アセチル化90%、分子量10kDaのキトサン20mgをそれぞれの高分子ナノ粒子に添加し、2時間、常温で撹拌することによってキトサンナノカプセルを製造した。プルロニック種類によって、製造されたキトサンナノカプセル(ChiNC)のサイズ、分散度及び表面電荷を電気泳動光散乱分光光度計(electrophoretic light scattering spectrophotometer)(ELS-Z2,Otsuka)装備を用いて分析し、その結果を図2に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
図2に示すように、HLB(Hydrophilic and Lipophilic Balance)指数が異なるプルロニック5種(F127、P123、P188、L35、L81)を用いてナノ沈殿法(nanoprecipitation)で製造されたキトサンナノカプセル(ChiNC)は、いずれのプルロニック種類においても沈殿物発生無しで安定に製造された。
【0104】
F127とP123で製造されたキトサンナノカプセルは、32.5℃~37℃でサイズが30nm~80nmと、平均で60nm程度のサイズを示し、安定に100nm以下のキトサンナノカプセルを形成した。P188、L35で製造されたキトサンナノカプセルは209nm~688nmと、平均で500nmのサイズを示し、L81で製造されたキトサンナノカプセルは、最大で1.4nmのサイズを示した。分散性では、F127、P123、P188、L35で製造されたキトサンナノカプセルは0.3以下とたいてい単分散性を示し、それに比べて、L81で製造されたキトサンナノカプセルはマイクロサイズであって、やや大きい分散度を示した。表面電荷では、キトサンがプルロニックカプセルの表面に安定にコートされることにより、平均して+20mV程度を示した。
【0105】
この結果から、プルロニック種類によってキトサンナノカプセル剤形最適化をするとき、HLB8~29に該当するプルロニック種類はいずれも適合することが分かり、プルロニック種類及び温度によってキトサンナノカプセルのサイズを700nm以下、30~500nm、30~300nm又は30~100nmに形成することができた。
【0106】
HLB指数が8以下の場合にも、ナノサイズではないが、マイクロカプセルとして製造できることを確認し、局所部位適用などの必要に応じてナノ及びマイクロサイズを持つキトサンカプセルを製造できることを確認した。
【0107】
実施例1-3.キトサン分子量によるキトサンナノカプセル製造最適化
【0108】
前記実施例1-1及び1-2の結果に基づき、プルロニック条件によって様々なキトサン(3kDa~100kDa)によるキトサンナノカプセル製造最適化条件を確立した。
【0109】
本発明のキトサンがコートされたナノカプセル製造時に、米国食薬処から承認を受けた生体適合性物質であるプルロニックF127(pluronic F127,poloxamer 407)を使用し、キトサンがコートされたナノカプセルは、ナノ沈殿法(nanoprecipitation)を用いて製造した。具体的に、プルロニックF127 20mgをアセトン1mlに溶かして反応溶液を製造した。製造した反応溶液を、530rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水に徐々に落として投入した後、12時間以上常温で反応させてアセトンが自然に蒸発して除去されるようにし、プルロニックからなるナノ粒子(PluNC)を確保した。確保したPluNCにキトサンを入れて常温で1時間以上混ぜ、本発明のキトサンがコートされたナノカプセル(ChiNC)を製造した。このとき、分子量が3、10、20、50、100kDaであるキトサンを用いてPluNCをコートし、キトサンの分子量によって、製造されたChiNCの形態、サイズ、多分散性指数(polydispersity index,PDI)及び表面電荷を、粒度分析器(Zetasizer,Nono-Zs,Malvern)及び透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy)を用いて分析し、その結果を図3に示した。
【0110】
キトサンは、プルロニックに対して0.001~200重量部混合してキトサンナノカプセルを製造した。このとき、キトサンが0.001重量部未満であると、ナノ粒子の表面がキトサンによって十分にコートされず、陽電荷の表面電荷を示し難く、キトサンが200重量部を超えると、ナノカプセルのサイズが大きくなりすぎるか、部分的に沈殿が発生した。以降の実験ではプルロニックと同じ重量のキトサンを混合した。
【0111】
図3に見られるように、粒子サイズの場合(a)、分子量が20kDa以下のキトサンでコートしたChiNC(ChiNC 3K、ChiNC 10K、ChiNC 20K)は100nm以下のキトサンナノ粒子を形成し、分子量50kDa及び100kDaのキトサンでコートしたChiNC(ChiNC 50K、ChiNC 100K)は、約200nmのサイズを示すことを確認した。多分散性では(b)、分子量が20kDa以下のキトサンでコートしたChiNC(ChiNC 3K、ChiNC 10K、ChiNC 20K)は分散度が0.2以下であり、分子量が50kDa及び100kDaのキトサンでコートしたChiNC(ChiNC 50K、ChiNC 100K)は分散値が0.2~0.3程度であることを確認し、表面電荷では(c)、キトサンをコートしていないPluNC自体表面電荷値が-5mV程度の陰電荷を帯びるのに対し、キトサンをコートした場合、キトサンの分子量に関係なくいずれも陽電荷を帯びることを確認した。また、ナノカプセルの形態を観察した結果、ナノカプセルが球形の構造を示し、キトサンの分子量が大きくなるにつれてナノカプセルのサイズも大きくなることを確認した(d)。
【0112】
本明細書では示していないが、分子量が100kDaを超えるキトサンを用いる場合には、キトサンを酢酸に溶解させてコートしなければならず、酢酸に溶かしてコートする場合、沈殿物が発生して剤形の安定性が減少することを確認した。
【0113】
このことから、本発明のキトサンでコートされたナノカプセルの場合、前記製造方法により、キトサンがプルロニックからなるナノ粒子の表面に安定にコートされることが分かり、また、コートするキトサンの分子量によってナノカプセルのサイズ及び分散性に影響を与えることが分かった。さらに、キトサンの分子量が3~20kDaの場合、サイズが小さく、均一なサイズで剤形の安定性が確保されたナノカプセルを製造できることを確認した。
【0114】
実施例1-4.溶媒によるキトサンナノカプセル製造最適化
【0115】
キトサンナノカプセル製造工程のうち、溶媒によるキトサンナノカプセル製造工程最適化をした。
【0116】
溶媒としてアセトン(acetone;ACE)、エタノール(ethanol;ETH)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、クロロホルム(chloroform;CHL)及びジクロロメタン(dichloromethane;DCM)を選択して評価した。これにより、溶媒によって溶解度の異なる様々な薬物(活性剤)をローディングできるプラットホームを確立することができる。
【0117】
まず、ナノ沈殿(Nanoprecipitation)方法によってプルロニックF127 20mgをアセトン、エタノール、テトラヒドロフラン1mlに溶かした後、2時間反応させた。その後、反応溶液を、400rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落として高分子ナノカプセルを製造した後、6時間フードで溶媒を除去した。最終的に、キトサン(脱アセチル化90%、分子量10kDa)20mgをそれぞれの高分子ナノカプセルに添加し、2時間、常温で撹拌することによってキトサンナノカプセルを製造した。
【0118】
クロロホルムは、シングルエマルジョン(Single emulsion)方法を用いた。プルロニックF127 20mgをクロロホルム1mlに溶かした後、2時間反応させた。その後、反応溶液を、400rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落としてナノ粒子製造した後、ホモゲナイザーを用いて分散させた後、2時間、真空乾燥(vacuum drying)により溶媒を除去した。最終的に、キトサン(脱アセチル化90%、分子量10kDa)20mgをそれぞれの高分子ナノカプセルに添加し、2時間常温で撹拌することによって、キトサンナノカプセルを製造した。
【0119】
前記ナノ沈殿方法とシングルエマルジョン方法による分子量10kDaキトサンコーティングナノカプセル(ChiNC 10K)のサイズ、分散度及び表面電荷を電気泳動光散乱分光光度計(ELS-Z2,Otsuka)装備を用いて分析した。
【0120】
図4に見られるように、水和度(water miscibility)の高い有機溶媒であるアセトン(ACE)、エタノール(ETH)、テトラヒドロフラン(THF)を用いたナノ沈殿法(nanoprecipitation)で製造されたキトサンナノカプセル(ChiNC 10K)はいずれも、60nm程度のサイズを示した。また、多分散性(PDI:polydispersity)も0.3以下を示し、単分散性であった。
【0121】
これに比べて、水和度の低い有機溶媒であるクロロホルム(CHL)を用いてシングルエマルジョン方法で製造されたキトサンナノカプセル(ChiNC 10K)は、約750nm程度のサイズを示し(ジクロロメタン(dichloromethane)でも同一)、多分散性(PDI:polydispersity)も、前記アセトン(ACE)、エタノール(ETH)、テトラヒドロフラン(THF)を用いたナノ沈殿法(nanoprecipitation)で製造されたキトサンナノカプセルに比べて大きく現れた。しかし、全てのキトサンナノカプセルグループにおいて表面電荷は20mV程度を示し、様々な溶媒及び工程法で安定にキトサンがコートされた高分子カプセル、すなわち、キトサンナノカプセルを製造できることを確認した。
【0122】
実施例1-5.薬物を含むナノカプセルの製造方法確立
【0123】
薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルを製造する方法としてナノ沈殿法(nanoprecipitation)及び膜再分散法(membrane resuspension)を用いてそれぞれの製造方法によって製造されたナノカプセルの特性を確認し、薬物としては難溶性物質であるシクロスポリンA(cyclosporine;以下、CsAという)を用いた。
【0124】
膜再分散法(membrane resuspension)は、CsA 0.2mg(2重量%)又は0.6mg(6重量%)とプルロニックF126 10mgを1mlのアセトンに入れ、常温で2時間撹拌して反応溶液を製造した。製造した反応溶液を2時間、ヒュームフード(fume hood)内に放置し、アセトンが揮発しながら膜が形成されるようにした。形成された膜に3次蒸留水5mlを添加して30分以上撹拌し、プルロニックと同じ重量で10kDaキトサンを添加後に撹拌してナノカプセルを製造した。
【0125】
他の方法であるナノ沈殿法(nanoprecipitation)は、CsA 0.2mg又は0.6mgとプルロニックF126 10mgを1mlのアセトンに入れ、常温で2時間撹拌して反応溶液を製造した。製造した反応溶液を、530rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水に徐々に落とし、4時間以上ヒュームフード(fume hood)内で撹拌しながら自然にアセトンが蒸発するようにした。アセトンの除去されたプルロニックからなるナノ粒子が含まれている3次蒸留水に、プルロニックと同じ重量で10kDaキトサンを添加後に撹拌してナノカプセルを製造した。上記の製造方法で製造したナノカプセルの粒子サイズを粒度分析器及び透過電子顕微鏡を用いて測定し、その結果を図5に示した。
【0126】
図5に示すように、CsAが含まれていないナノカプセルの場合、ナノ沈殿法で製造したナノカプセルが膜再分散法で製造したナノカプセルに比べて、サイズが2倍程度小さいことを確認し、CsAを含むナノカプセルの場合、膜再分散法で製造した場合、CsAの含有量によって、製造されたナノカプセルの粒子サイズのばらつきが大きく、CsAの含有量が6重量%の場合には、一部ナノカプセルの凝集が起きるのに対し、ナノ沈殿法で製造したCsAを含むナノカプセルは、CsAの含有量による粒子サイズのばらつきが、膜再分散法に比べて大きくなく、安定したサイズ範囲のナノカプセルを製造できたし、ナノカプセルの凝集が起きず、製造された粒子のサイズが、CsAの含有量が2重量%の時には100nm以下、6重量%を含む時には200nm以下になることを確認した。
【0127】
このことから、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの剤形の安全性を高めるためにはナノ沈殿法を用いることが好ましいということが分かった。
【0128】
実施例1-6.ナノ沈殿法において溶媒及び蒸留水の比率確認
【0129】
前記実施例1-5のナノ沈殿法過程中に、反応溶液の溶媒であるアセトンとナノ粒子を製造するための3次蒸留水の混合比率による製造されたナノカプセルのサイズを確認した。
【0130】
前記実施例1-5のナノ沈殿法と同じ方法で製造するが、ただし、薬物の含有量は6重量%にし、アセトン及び蒸留水の混合比率を、アセトン:蒸留水が1:5又は1:4となるようにして、薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルを製造し、粒子サイズを分析した。その結果を図6に示す。このとき、キトサンでコートする前後のナノカプセルのサイズを分析した。
【0131】
図6に示すように、アセトンと蒸留水の混合比率が1:4の場合、混合比率1:5に比べて、キトサンコーティング前後のキトサンナノカプセルのサイズがいずれも100nm以下に形成されることを確認した。
【0132】
このことから、ナノ沈殿法を用いて本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルを製造する場合、溶媒及び蒸留水が1:4の比率であるときに安定したサイズのナノカプセルを製造できることが分かった。
【0133】
本明細書では示していないが、溶媒がDMSO(dimethyl sulfoxide)、エタノール、アセトニトリル(acetonitrile)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、クロロホルム(chloroform)及びジクロロメタン(dichloromethane)である場合にも、溶媒及び蒸留水が1:4の比率であるときに安定したサイズのナノカプセルを製造できることが分かった(実施例1-4参照)。
【0134】
<実施例2.キトサンがコートされたナノカプセルの細胞毒性確認>
【0135】
前記実施例1-3で製造したキトサンがコートされたナノカプセル(ChiNC)の細胞毒性誘発の有無を確認した。
【0136】
NIH3T3細胞を96ウェルプレートにウェル当たり10,000個となるように分注した後、8~12時間培養した。その後、前記実施例1-3で製造したPluNC又はChiNCを全てそれぞれ10μg/ml、20μg/ml、50μg/ml、100μg/mlとなるように処理し、24時間培養した後、CCK8(cell counting kit-8)及びメーカーから提供されたマニュアルに基づいて細胞生存率を確認し、その結果を図7に示した。このとき、何ら処理しなかったNIH3T3細胞を対照群(control)とし、対照群の細胞生存率を100%基準にしてそれぞれの処理群に対する細胞生存率を分析した。
【0137】
図7に示すように、PluNC又は全てのChiNCが全ての濃度で90%以上の細胞生存率を示すことを確認した。
【0138】
このことから、本発明のキトサンがコートされたナノカプセルは細胞毒性を起こさない生体適合性に優れた物質であることが分かった。
【0139】
<実施例3.難溶性(脂溶性)活性剤を含むキトサンがコートされたナノカプセル製造条件確立>
【0140】
本発明では、活性剤のうち、脂溶性特性を持つ抗癌剤(paclitaxel,docetaxel)、抗炎症剤(dexamethasone)、免疫抑制剤(cyclosporin A)、抗酸化剤(tocopheryl acetate)、シワ防止剤(retinyl palmitate)、脱毛防止剤(minoxidil,finasteride)、老化防止剤(tocopheryl acetate,retinyl palmitate)を含む、キトサンがコートされたナノカプセル製造条件を確立した。
【0141】
ドセタキセル、パクリタキセル、デキサメタゾン、トコフェリル酢酸、シクロスポリンA、パルミチン酸レチノールをそれぞれ1mlのアセトンに溶かした後、反応溶液をプルロニックF127 20mgに溶かして2時間反応させた。その後、反応溶液を、400rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落として薬物ローディング高分子ナノカプセルを製造した後、6時間フードでアセトンを除去した。最終的に、キトサン(脱アセチル化90%、分子量10kDa)20mgをそれぞれの高分子ナノカプセルに添加し、2時間常温で撹拌することにより、薬物ローディングキトサンナノカプセルを製造した。最終的に、ローディングされなかった薬物を除去するために限外濾過(ultrafiltration)(Amicon Ultra-15 filter)を行った。
【0142】
一方、フィナステリド、ミノキシジル、トコフェリル酢酸、パルミチン酸レチノールをそれぞれ1mlのエタノールに溶かした後、反応溶液をプルロニックF127 20mgに溶かして2時間反応させた。その後、反応溶液を、400rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落として薬物ローディング高分子ナノカプセルを製造した後、6時間フードでエタノールを除去した。最終的に、キトサン(脱アセチル化90%、分子量10kDa)20mgをそれぞれの高分子ナノカプセルに添加し、2時間常温で撹拌することにより、薬物ローディングキトサンナノカプセルを製造した。最終的に、ローディングされなかった薬物を除去するために限外濾過(Amicon Ultra-15 filter)を行った。
【0143】
製造された薬物がローディングされたChiNC 10Kのサイズ、分散度及び表面電荷を、電気泳動光散乱分光光度計(ELS-Z2,Otsuka)装備を用いて分析した。
【0144】
実施例3-1.パクリタキセル及びドセタキセルを含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0145】
図8に見られるように、パクリタキセル(PTX)がローディングされたナノカプセルを製造できたが、ローディング含有量(0.1wt%)までにローディング前後のサイズ、分散度、表面電荷に大きい影響を及ぼさなかった。0.2wt%ではナノカプセルの直径が3μmに達したが、沈殿は発生せず、局所的に使用可能なキトサンマイクロカプセルを製造可能であることを確認した。しかし、0.5wt%では部分的沈殿物が発生した。
【0146】
ドセタキセル(DOC)の場合は、2wt%まで安定にキトサンナノカプセル内にローディングされ得ることを確認した。また、3wt%までは沈殿物無しで製造される剤形条件を確認し、抗癌剤がローディングされたキトサンナノカプセル及びキトサンマイクロカプセルが製造できることも確認した。
【0147】
実施例3-2.シクロスポリンA及びデキサメタゾンを含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0148】
図9に見られるように、シクロスポリンA(CsA)の場合は、5wt%まで安定にキトサンナノカプセル内にローディングされ得ることを確認した。また、10wt%までは沈殿物無しで製造される剤形条件を確認した。5wt%のローディング量ではキトサンナノカプセルを形成し、相対的にやや大きいサイズのキトサンナノカプセルを用いた局所的治療を考慮すれば、10wt%までローディング可能であることを確認した。また、温度敏感性を評価した結果、10℃では粒子サイズが700nm以上になり、32.5℃又は37℃では100nm以下(30~100nm)になることを確認した
【0149】
デキサメタゾン(DEX)の場合、3wt%まで最適にローディング可能であり、5wt%まで沈殿物が発生しないことから、900nmサイズの大きいキトサンナノカプセルを製造できることを確認した。
【0150】
実施例3-3.パルミチン酸レチノール及びトコフェリル酢酸を含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0151】
図10に見られるように、パルミチン酸レチノール(RP)の場合は、5wt%まで安定にキトサンナノカプセル内にローディングされ得ることを確認した。また、10wt%ローディング含有量ではキトサンナノカプセルのサイズが100nm程度のサイズを示したが、分散度及び表面電荷において略類似する結果を示し、安定に製造され、沈殿物も発生しなかった。
【0152】
下記表2に見られるように、活性剤としてパルミチン酸レチノールを使用した場合、20wt%までローディングしたとき、サイズは増加するが、分散度及び表面電荷が大きくばらつかず、20wt%の高農度でローディング可能であることを確認した。
【0153】
【表2】
【0154】
トコフェリル酢酸(TA)の場合、2wt%まで最適にローディング可能であり、5wt%まで沈殿物は発生せず、90nmサイズのキトサンナノカプセルが製造できた。
【0155】
実施例3-4.ミノキシジル及びフィナステリドを含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0156】
図11に見られるように、ミノキシジル(MX)の場合には、5wt%まではローディング前のキトサンナノカプセルのサイズ、分散度、表面電荷に大きな影響がなく、安定にキトサンナノカプセル内に最適にローディングされ得ることを確認した。
【0157】
また、フィナステリド(FS)の場合には、0.1wt%まで最適にローディング可能であり、2wt%まで沈殿物は発生せず、4μmサイズのキトサンマイクロカプセルが製造できた。また、5wt%でローディングしたとき、分散度及び表面電荷がローディング前のキトサンナノカプセルと大きく異なるので、好ましくは0.1wt%までが最適のローディング条件であり、マイクロカプセル製造により局所的伝達の目的で使用する場合には、2wt%まで可能であることを確認した。
【0158】
上記のように、難溶性(脂溶性)活性剤を0.1wt%~20wt%の範囲で100nm以下のキトサンがコートされたナノカプセルの製造条件を確立し、これにより、テトランドリン(tetradrine)、アスタキサンチン(astaxanthin)、クルクミン(curcumin)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)、カフェイン酸フェネチルエステル(caffeic acid phenethyl ester;CAPE)、ツボクサ(centella asiatica)、ベータシトステロール、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ascorbyl tetraisopalmitate)、トリペプチドコラーゲン(tripeptide collagen)などの活性剤のキトサンコーティングナノカプセル最適化条件が確立できた。
【0159】
<実施例4.水溶性活性剤を含むキトサンがコートされたナノカプセル製造条件確立>
【0160】
本発明では、活性剤のうち、水溶性特性を持つ抗癌剤(doxorubicin)、免疫抗原剤(ovalbumin)、タンパク質治療剤薬物(bovine serum albumin,BSA)を含む、キトサンがコートされたナノカプセル製造条件を確立した。
【0161】
1mlのアセトンにプルロニックF127 20mgを溶かして2時間反応させた。その後、反応溶液を、400rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水(deionized water)に徐々に落として薬物ローディング高分子ナノ粒子を製造した後、6時間フードでアセトンを除去した。最終的に、キトサン(脱アセチル化90%、分子量10kDa)20mgをそれぞれの高分子ナノ粒子に添加し、2時間常温で撹拌することによって薬物ローディングキトサンナノカプセルを製造した。
【0162】
製造したキトサンナノカプセル内に水溶性薬物(ドキソルビシン、BSA、オボアルブミン)を添加した後、4℃で2時間ローディングされるように保管した。ローディングされなかった薬物は限外濾過(Amicon Ultra-15 filter)で除去した後、ローディング条件最適化した。
【0163】
ローディングされなかったドキソルビシンは、吸光度(480nm)を用いて測定し、BSAとオボアルブミンは、クマシーブルーアッセイ(Coomassie blue assay)を用いて吸光度(580nm)で測定した。
【0164】
水溶性薬物がローディングされたキトサンナノカプセル(ChiNC 10K)のサイズ、分散度及び表面電荷を、電気泳動光散乱分光光度計(ELS-Z2,Otsuka)装備を用いて分析した。
【0165】
実施例4-1.ドキソルビシンを含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0166】
脂溶性薬物をキトサンナノカプセル内にローディングする方法と違い、水溶性薬物の場合、図12に示すように、キトサンナノカプセルの温度感応性特性(4℃でサイズが1μmに増加しながら体積膨張(volume expansion)発生)を用いて低温(4℃)でローディングした。
【0167】
図13に示すように、ドキソルビシン(DOX)をローディングしたキトサンナノカプセルの場合、サイズ、分散度、表面電荷のすべてが略類似しており、特に、10wt%まで安定にローディングされ得ることを確認した。図13には示していないが、20wt%でもマイクロカプセルの形成が可能であった。
【0168】
吸光度分析法で確認した結果、最適のローディング含有量は6wt%であった。
【0169】
実施例4-2.オボアルブミンを含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0170】
図14に示すように、オボアルブミン(OVA)をローディングしたキトサンナノカプセルの場合、5wt%までサイズ、分散度、表面電荷が類似しており、沈殿物無しで安定にローディングされ得ることを確認した。吸光度分析法で確認した結果、最適のローディング含有量は3wt%であった。
【0171】
実施例4-3.ウシ血清アルブミン(BSA)を含むキトサンがコートされたナノカプセル製造
【0172】
図15に示すように、様々なタンパク質治療剤のモデル薬物であるBSA(67kDa)をローディングしたキトサンナノカプセルの場合、5wt%までサイズ、分散度、表面電荷が類似しており、沈殿物無しで安定にローディングされ得ることを確認した。吸光度分析法で確認した結果、最適のローディング含有量は4wt%であった。
【0173】
上記のように水溶性活性剤0.1wt%~20wt%の範囲で100nm以下のキトサンがコートされたナノカプセルの製造条件を確立し、これにより、ホスホリパーゼA2(phospholipase A2;PLA2)、線維芽細胞成長因子(Basic Fibroblast Growth Factor;b-FGF)、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)などの活性剤のキトサンコーティングナノカプセル最適化条件が確立できた。
【0174】
<実施例5.薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセル剤形安定性確立>
【0175】
実施例5-1.薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセル剤形安定性
【0176】
前記実施例4で確立された薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの製造方法及び条件に基づき、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルを製造し、薬物として難溶性薬物であるシクロスポリンA(CsA)、モデル難溶性薬物として一般に使用されているナイルレッド(Nile red)及びピレン(Pyrene)を使用した。
【0177】
CsA、ナイルレッド又はピレン0.2mg又は0.5mgとプルロニックF126 10mgを1mlのアセトンに入れ、常温で2時間撹拌して反応溶液を製造した。製造した反応溶液を、530rpmで撹拌している4mlの3次蒸留水に徐々に落とし、4時間以上ヒュームフード(fume hood)内で撹拌しながら自然にアセトンが蒸発するようにした。アセトンの除去されたプルロニックからなるナノ粒子が含まれている3次蒸留水に、プルロニックと同じ重量で10kDaキトサンを添加した後に撹拌し、それぞれの薬物が含まれているキトサンがコートされたナノカプセルを製造し(それぞれ、CsA@ChiNC、Nile red@ChiNC、Pyrene@ChiNCという。)、製造したCsA@ChiNC、Nile red@ChiNC、Pyrene@ChiNCを常温に放置して沈殿物発生の有無を確認し、安定性を確認した。その結果を図16に示した。
【0178】
図16に示すように、CsA@ChiNC、Nile red@ChiNC、Pyrene@ChiNCはいずれも沈殿物が発生しないことを確認した。
【0179】
このことから、本発明の薬物を含むキトサンコートされたナノカプセルが剤形的に安定であることが分かった。
【0180】
実施例5-2.薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの凍結乾燥安定性
【0181】
キトサンナノカプセル剤形の安定性評価のために、3次蒸留水とPBS内における安定性評価及び凍結乾燥前後の安定性評価を行った。
【0182】
図17に示すように、シクロスポリンAとパルミチン酸レチノール(RP)がローディングされたキトサンナノカプセルを、37℃、100rpm条件下で安定性を評価した結果、4週間、精製水とPBS中でいずれもサイズが類似である結果を示し、安定性がよく維持され得ることを確認した。
【0183】
また、凍結乾燥前(Before FD or B.F:before freeze-drying)と後(After FD or A.F:after freeze-drying)のキトサンナノカプセルのサイズ変化及び沈殿物発生がないことが観察され、安定性に優れること確認し、特に、凍結乾燥過程で凍結防止剤(cryoprotectants)無しで容易に凍結乾燥再分散ができることを確認した。
【0184】
<実施例6.薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの経皮伝達効果確認>
【0185】
薬物又は有効成分の経皮への伝達剤形の開発は、製薬及び化粧品業界で注目している分野である。そこで、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの皮膚透過率及びこれによる薬物伝達効能を確認した。
【0186】
実施例6-1.フランツ拡散セルシステムを用いた皮膚透過最適化のためのキトサン種類最適化
【0187】
実施例1-3において分子量20kDa以下のキトサンでコートしたChiNC(ChiNC 3K、ChiNC 10K、ChiNC 20K)は、100nm以下のキトサンナノ粒子を安定に形成したことを確認したが、このうち、皮膚透過率において最適化されたキトサンナノカプセルを確立するためにフランツ拡散セルシステムを用いた。
【0188】
フランツ拡散セルシステムは、ドナーチャンバー(donor chamber)に、薬物を含む剤形を適用し、レセプターチャンバー(receptor chamber)には、PBS(phosphate buffered saline)のような生理食塩水などを充填し、ドナーチャンバーとレセプターチャンバーとの間には透過膜、動物皮膚又は細胞培養皮膚などのような透過層を固定させた後、ドナーチャンバーから透過層を通過してレセプターチャンバーに透過される薬物の量を測定することによって皮膚透過度などが測定できる。
【0189】
フランツ拡散セルシステムのレセプターチャンバーには、PBS(0.05%ポリソルベート80含有pH 7.4)を5ml入れた後、レセプターチャンバーとドナーチャンバーとの間にヒト死体皮膚(human cadaver skin)を1.5×1.5cmのサイズで覆って固定させ、フランツセル(Franz cell)のドナー部分に各サンプルを入れた。レセプターチャンバーの条件は、37℃、600rpmに調節し、サンプリング時間は0.5、1、2、4、8、12、18、24時間に500μlずつ回収し、時間別に皮膚から透過して出た薬物の量をHPLCで測定し、図18に示した。
【0190】
図18に見られるように、CsAの場合、キトサン10kDaを使用して製造したキトサンナノカプセル(ChiNC 10K)において最高の皮膚透過率を示した。キトサン3kDaに比べて統計的に有意な差を示した理由は、図3に見られるように、ChiNC 10KがChiNC 3Kに比べて表面電荷がより高かったためと評価される。
【0191】
キトサン10kDaを使用して製造したキトサンナノカプセル(ChiNC 10K)は、キトサンをコートしていない高分子カプセル(PluNC)に比べて皮膚透過率が顕著に増加し、商業的に最も多用されているリポソーム(Liposome)剤形に比べて皮膚透過率が6倍以上高かった。
【0192】
薬物としてRPを使用して評価した結果、最適の条件であるChiNC 10Kにおいて、対照群であるRP自体のみを実験した場合に比べて14倍以上の皮膚透過率を示すことから、キトサン10kDaを使用する場合、薬物の皮膚透過率を向上させることができるという結果を得た。
【0193】
実施例6-2.フランツ拡散セルシステムを用いたキトサンコーティングナノカプセルの皮膚透過率確認
【0194】
実施例6-1のような方法で、フランツ拡散セルシステムにおいてナノカプセル、キトサンコーティングナノカプセルの皮膚透過率を確認した。
【0195】
ドナーチャンバーに、2wt%のナイルレッドを含むキトサンがコートされたナノカプセル(Nile red@ChiNC)を2mg/mlとなるように入れた。このとき、対照群としてナイルレッド単独(Nile red)、ナイルレッドを含むキトサンがコーティングされなかったナノカプセル(Nile red @PluNC)を処理した。レセプターチャンバーの条件を37℃、600rpmに調節し、0.5、1、2、3、8、12、24時間にレセプターチャンバーから500μlずつサンプルを採取し、各時間別サンプルの蛍光を測定して皮膚透過率を測定し、その結果を図19に示した。
【0196】
図19に見られるように、ナイルレッドを単独で処理した場合には、皮膚透過がほとんど起きないのに対し、Nile red@PluNC及びNile red@ChiNCを使用した場合、皮膚透過率が増加し、特に、Nile red@ChiNCの皮膚透過率がNile red@PluNCに比べて4倍以上増加したことを確認した。
【0197】
このことから、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルの皮膚透過率が優れていることが分かった。
【0198】
<実施例7.動物モデルを用いた経皮伝達確認>
【0199】
実施例7-1.動物モデルにおいてキトサンコートされたナノカプセルを用いたナイルレッド経皮伝達
【0200】
実施例4に基づいて製造した2重量%のナイルレッドを含むキトサンがコートされたナノカプセル(Nile red@ChiNC)を、2mg/mlの濃度となるように製造し、300mlずつ5日間、除毛したネズミの背部に塗った。その後、背部の皮膚を採取して10%中性ホルマリン溶液で12時間固定させ、固定された皮膚をOCT(Optimal Cutting Temperature)コンパウンドと混合して液体窒素及び-20℃以下で凍らせた後、クリオセクション(cryosection)機器を用いて20μm厚に切片してスライドガラスに付着させ、皮膚組織サンプルを確保した。確保した皮膚組織サンプルを3次蒸留水で洗浄した後、蛍光顕微鏡を用いてナイルレッドの皮膚内分布現況を観察し、その結果を図20に示した。
【0201】
図20に示すように、Nile red@ChiNCを塗布した場合、皮膚組織内にナイルレッドが存在することを確認した。
【0202】
このことから、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルが、皮膚を通して薬物を伝達できることが分かった。
【0203】
実施例7-2.経皮伝達による薬物の効能発現確認
【0204】
シクロスポリンAは乾癬及びアトピー治療剤として使用されており、発毛効果があると報告されたが、シクロスポリンAは疎水性性質が高いため水溶液に溶解されず、皮膚内に伝達するのに制限がある。したがって、シクロスポリンAを溶解させるためには、アセトンのような有機溶媒で溶解させた後に塗布しなければならないが、有機溶媒は、皮膚塗布時に皮膚刺激及び皮膚障壁の損失を引き起こすことがある。
【0205】
そこで、皮膚刺激及び損傷無しで効果的にシクロスポリンAを皮膚内に浸透させて発毛の効能を増大させることによって脱毛治療において優れた効果が得られることから、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルを用いてシクロスポリンAの経皮伝達及びこれによる発毛効果を確認した。
【0206】
発毛実験のために、食薬処ガイドラインにしたがって7週齢の黒色C57B/6、雌ネズミの背部の毛を除去した。背部の毛を除去したネズミを、食塩水を処理した対照群(CTL)、アセトンに溶かしたシクロスポリンA処理群(CsA)、及び実施例4で製造した5重量%のシクロスポリンAを含むキトサンがコートされたナノカプセル処理群(CsA@ChiNC)に分け、それぞれの試料を、1周に5日、4週間に塗布(1回塗布時のCsAの量が50mg/kgとなるように塗布)して肉眼で発毛効果を確認し、その結果を図21に示した。
【0207】
図21に示すように、アセトンに溶かしたCsA自体処理群では、発毛の最大効果を示す4週目に、5匹の全てにおいて毛が育つことが確認されたが、対照群(CTL)では5%未満と自然発毛が観察された。CsA自体処理群の場合には、CsAを溶かしたアセトンによって皮膚の組織及び障壁が損失され、CsAの薬物が皮膚内に浸透したためと予想される。
【0208】
CsA@ChiNC処理群では、5匹のうち4匹において発毛があり、その効能は、CsA自体処理群と比較するとき、80%以上の発毛効能を示すことを確認した。
【0209】
さらに、前記それぞれの処理群のネズミの背部の皮膚を採取して毛嚢の数及びサイズを観察し、その結果を図21の(b)及び(c)に示した。
【0210】
図21の(b)及び(c)に見られるように、アセトンに溶かしたCsA自体処理群(D)とCsA@ChiNC(C)処理群において毛嚢数及びサイズが類似することを確認した。
【0211】
上記の結果から、本発明の薬物を含むキトサンがコートされたナノカプセルが、皮膚透過率の他、皮膚内への薬物伝達効率にも優れることが分かり、難溶性薬物の人体及び動物内伝達のためのプラットホーム技術として利用可能であることが確認できた。
【0212】
<実施例8.ナノカプセルの経口投与による生体内有効成分の生体利用率増加確認>
【0213】
シクロスポリンA(CsA)薬物が担持されているナノカプセルの経口実験のために雄SDラット(Male Sprague-Dawley rat)(200~250g)を使用した。CsAが5重量%ローディングされているナノカプセル(1ml精製水、50mg/kg)をフィーディングニードルを用いて投与した。その後、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間にそれぞれ血液を採取し、HPLCで定量分析した。
【0214】
実験の結果、キトサンナノカプセルグループにおいて、キトサンがコートされていないナノカプセルに比べて、CsAの血液内半減期及び生体利用率が増加することを確認した。
【0215】
また、前記実施例7の方法のように、発毛実験のために食薬処ガイドラインにしたがって7週齢の黒色C57B/6、雌ネズミの背部の毛を除去した後、前記のような方法でCsA及びCsA@ChiNC溶液を1週に3回、4週間に経口投与した結果、CsA経口投与グループに比べてCsA@ChiNC溶液を経口投与したネズミグループにおいて発毛効能がより向上した。これは、キトサンナノカプセルによって生体内吸収率が向上したためと考えられ、本発明のキトサンナノカプセルを用いた薬物伝達システムが優れた薬物伝達効果を有することを確認した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21