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特許7390741カーボン量子ドット、カーボン量子ドットの製造方法及び抗菌組成物。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】カーボン量子ドット、カーボン量子ドットの製造方法及び抗菌組成物。
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/15 20170101AFI20231127BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 31/132 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231127BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231127BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20231127BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231127BHJP
【FI】
C01B32/15 ZNM
A61K9/16
A61K31/132
A61K31/198
A61P31/04
B82Y5/00
B82Y40/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021559118
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2019081540
(87)【国際公開番号】W WO2020199202
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】514075507
【氏名又は名称】國立臺灣▲海▼洋大學
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL TAIWAN OCEAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.2,Beining Rd.,Zhongzheng Dist.,Keelung City 202301,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】林翰佳
(72)【発明者】
【氏名】黄志清
(72)【発明者】
【氏名】林翰佑
(72)【発明者】
【氏名】頼佩欣
(72)【発明者】
【氏名】沈凡
(72)【発明者】
【氏名】陳▲ギョク▼儒
(72)【発明者】
【氏名】郭宛静
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527068(JP,A)
【文献】国際公開第2018/010177(WO,A1)
【文献】特表2018-512454(JP,A)
【文献】国際公開第97/001532(WO,A1)
【文献】Hong-Jyuan JIAN et al.,ACS Nano,2017年,Vol.11, No.7,p.6703-6716
【文献】Yu-Jia LI et al.,Adv. Healthcare Mater.,2016年,Vol.5, No.19,p.2545-2554
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/15
A61K 9/16
A61K 31/132
A61K 31/198
A61P 31/04
B82Y 5/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトコアを含むカーボン量子ドットであって、前記グラファイトコアの表面が式(I)化合物、ハロゲン及び正電荷を有し、
【化1】
式(I)の化合物において、R1は、C2-C8アルキル基、[CH-NH-[CH 、[CH-NH-[CH-NH-[CH 、[CH-CH-COOH、C-CHOH-[CH-CH-COOH、および[CH-S-CH-CH-COOHからなる群から選択され、RはHであり、
前記カーボン量子ドットにおいて、前記ハロゲンは15%~40%の重量%を有する、カーボン量子ドット。
【請求項2】
前記ハロゲンが、塩素化合物、臭素化合物又はヨウ素化合物に由来する、請求項1に記載のカーボン量子ドット。
【請求項3】
前記塩素化合物が、塩化水素、塩化アンモニウム、次亜塩素酸、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載のカーボン量子ドット。
【請求項4】
前記臭素化合物が、臭化水素又は臭化カリウムを含む、請求項2に記載のカーボン量子ドット。
【請求項5】
前記ヨウ素化合物が、ヨウ化水素又はヨウ化カリウムを含む、請求項2に記載のカーボン量子ドット。
【請求項6】
請求項1に記載のカーボン量子ドットの製造方法であって、
前記式(I)化合物とハロゲンイオン化合物とを混合して混合物を形成する工程(a)、
【化2】
及び
所定温度で前記混合物を熱分解することにより、カーボン量子ドットを得る工程(b)を含む、カーボン量子ドットの製造方法。
【請求項7】
前記温度が、150~300℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記温度が、240~300℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のカーボン量子ドット及び薬学的に許容される担体を含む、抗菌組成物。
【請求項10】
前記カーボン量子ドットの直径が、1~8nmである、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
前記カーボン量子ドットが、38~48mVのゼータ電位の正の表面電荷を有する、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載のカーボン量子ドット及び薬学的に許容される担体を含む、感染状況又は疾患を処理するための抗菌組成物。
【請求項13】
前記感染状況又は前記疾患が、微生物の増殖によって引き起こされたものであり、前記微生物が、非多剤耐性菌、薬剤耐性菌及び多剤耐性菌からなる群より選ばれる、請求項12に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
前記非多剤耐性菌が、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・イニエ、カンジダ・アルビカンス及びその組み合わせからなる群より選ばれる、請求項13に記載の抗菌組成物。
【請求項15】
前記多剤耐性菌が、薬剤耐性ブドウ球菌を含む、請求項13に記載の抗菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン量子ドット(Carbon quantum dot、以下、CQDとも略称する)分野に関し、特に、グラファイトコアを有し、表面に式(I)化合物及びハロゲン含有成分に由来するものを含むことを特徴としており、表面に正電荷を有する新規なカーボン量子ドット及びその抗菌用途に関する。さらに、本発明は、カーボン量子ドット及びその組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗微生物特性を持つナノ材料は、微生物の増殖を抑制でき、従来の抗生剤と異なるメカニズムで微生物を破壊する。現在知られている抗菌性ナノ材料は、金属や金属酸化物に由来するものが多い。例えば、銀ナノ粒子について、現在解明された抗菌メカニズムは、Ag+の放出による抗菌性で、細胞膜を破壊し、電子伝達系を干渉してDNAにダメージを与える。また、銅ナノ粒子は、タンパク質の失活を引き起こし、遊離するCu2+を放出することにより、活性酸素種(以下、ROSとも称する)を生成して細胞内のアミノ酸やDNAの合成を破壊する。また、二酸化チタンナノ粒子もROSを生成でき、細胞膜や細胞壁に損傷を与える。さらに、酸化亜鉛ナノ粒子は、細胞膜における脂質やタンパク質との相互作用により、その生理的機能を破壊することができる。上記の抗菌性金属や金属酸化物のナノ粒子は、広域殺菌剤として使用されており、その多様な抗菌メカニズムにより、細菌が薬剤耐性を発生する可能性を大幅に低減した。しかしながら、大部分のヒト細胞に対して、多くの抗菌性金属や金属酸化物のナノ粒子は、毒性がより強いため、これらの使用が制限されている。現在、薬剤耐性菌が蔓延して従来の抗生物質が徐々に効果を失っていく状況に際して、抗菌性金属や金属酸化物の応用にも制限があるため、より効果的かつ安全な、感染症の治療に用いられる新型の抗菌材料が求められている。
【0003】
カーボン量子ドットは、新型の蛍光ナノ材料であり、このような材料は、高い量子収率(quantum yield、以下、QYとも称する)、光安定性、調整可能な励起性と放射性、低い毒性、及び高い生体適合性などの特性を持ち、注目されている新興の材料である。カーボン量子ドットのコア成分は、ほとんど炭素であるが、多くの文献には、カーボン量子ドットを製造する前駆体原料、加工方法又は加工条件が異なると、最終的に生成された量子ドットの構造及び特性も異なるという結果が示されている(Nanoscale Horiz.2019,4,117-137)。例えば、Y.-J.Liらは、クエン酸アンモニウムから誘導されたカーボン量子ドットを、同じくポリアミン類であるスペルミジン及びスペルミンでそれぞれ同じ加工方法により修飾したが、最終的に生成されたカーボン量子ドット誘導体の抗菌力に大きな差があった(Adv Healthc Mater.2016,19,2545-2554)。このことから、類似する構造を持つ化合物前駆体であっても、最終的に生成されたカーボン量子ドットの構造及び特性を完全に予測することができないことが明らかになった。また、H.-J.Jianらの研究に示されたように、スペルミジン又は他のポリアミンを前駆体として、異なる加工条件で製造されたカーボン量子ドットは、構造、特性及び機能がいずれも異なることが示されている(ACS Nano,2017,11,6703-6716)。
【0004】
現在、カーボン量子ドットの応用は、主に、その蛍光特性を利用して造影剤やプローブとすることである。例えば、多くのがん細胞は細胞表面に大量な葉酸受容体が発現されているので、カーボン量子ドットに葉酸分子をさらに修飾して結合することにより、正常細胞とがん細胞を区別することが報告されている(J.Mater.Chem.2012,22,12568-12573)。また、クエン酸アンモニウムを炭素源として使用してカーボン量子ドットを作製し、さらにマンノースでカーボン量子ドットを修飾することにより、大腸菌を選択的に標識できる蛍光プローブを製造し、迅速な生物学的画像解析を行うことができることが報告されている(Sens.actuators.B,2016,228,465-470)。カーボン量子ドットは、検出プローブとすることも可能であり、過去のデータには、クエン酸とジエチレントリアミンを原料として、水熱法プロセスを行い、さらに、臭化アセチルを用いて臭素官能基化することにより、官能基化カーボン量子ドットを得ることができ、このような材料は、グルタチオンの検出に応用されることが示されている(CN107219204A,2017)。また、クエン酸と濃硫酸及び濃硝酸の混合液との作用で、予めカーボン量子ドットを製造、合成し、抗がん剤であるソラフェニブ(sorafenib)を吸着させることにより、薬物を搭載したカーボン量子ドットを得て、バイオイメージングと癌がん細胞の治療に応用される、抗がん剤搭載カーボン量子ドットが埋め込まれたものの製造方法が開示されている(CN107397958A,2017)。さらに、グルコース及びグリシンを炭素前駆体及び窒素前駆体として、高速ボールミリングで窒素含有カーボン量子ドットを合成し、水熱法でグラファイト相化炭素を製造し、窒素含有カーボン量子ドット/グラファイト相窒化炭素の複合光触媒を製造する技術がある(CN107376967A,2017)。さらに、ワンステップ法で、オクタデシルアミンをオクタデセンに加えた後、クエン酸と反応させることにより、窒素含有量が2.56~4.2%である窒素ドープカーボン量子ドットを製造する方法において、前記窒素ドープカーボン量子ドットは、発光性が調整可能で、粒度が規則的に変化するだけではなく、毒性なし、機能化しやすく、高い安定的な蛍光強度、微細でかつ制御可能な寸法等の特性も有するため、バイオイメージング、センシングやプローブ技術、太陽電池、発光デバイス、電界効果トランジスタ等の光電デバイスに応用されていることが言及された文献がある(CN104357047A,2014)。ヨウ素とグリシンを組み合わせて、ワンステップ水熱炭化法により形成された、安定な蛍光性能、高効率のX線減衰能、及び良好な生体適合性を有するカーボン量子ドットがある(CN104721841B,2015)。アミノ糖類塩酸塩を原料として水熱法で製造された塩素含有カーボン量子ドットは、安定な蛍光と低い毒性という特性を有し、三価鉄イオンの検出に用いられるとともに、蛍光インクや下水処理にも応用可能な効果を有することが報告されている(CN107815310A,2018)。糖アルコールのカーボン量子ドットを塩素と結合し、不動態化により、前記カーボン量子ドット表面にアミン化合物を形成する考察(KR1607575B1,2014);化合物、窒素前駆体及びハロゲン化物前駆体の混合物を用いて、水熱反応を行うことにより、グラフェン量子ドットを製造する研究(KR2018024363A,2016);又は、トリエチレンジアミンと有機酸とを混合し、熱処理を行うことにより製造され、バイオマーカーに用いられる研究(CN106634979,2016);又は、ジアミノエタンを水溶性糖類及び塩化物イオンと混合し、化学反応を行うことにより製造され、バイオマーカー、担体、金属イオン濃度の検出に用いられる検討(CN105754593,2016);又は、リジン及びセリンを、キシリトール及びフッ素あるいは塩素と混合し、マイクロ波法で製造され、磁性材料、光触媒等の用途に用いられる特許(CN106653261,2016);又は、L-リジンをグラフェン及びフッ素と混合し、化学反応を行うことにより製造され、センサーとして用いられる報告(CN108051490A,2017)などがあり;そのほかにも、一級アミン及び三級アミンを含むジアミンを、クエン酸と混合した後、水熱法でカーボン量子ドットを製造する考察(CN107626258A,2017);アミノ酸をクエン酸と混合した後、高温で熱分解することによりカーボン量子ドットを製造する方法、又は1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を用いて水熱法でカーボン量子ドットを製造する方法(CN105819433A,2016)などがある。上記の技術には、カーボン量子ドットの用途が極めて広いことが説明されているものの、いずれも抗菌分野に使用されておらず、また、製造プロセスが複雑である。
【0005】
ポリアミンは、2つ以上のアミノ基から構成される小分子であり、食品や生物体内に広く存在している。生体におけるポリアミン類は、殆どアミノ酸代謝に由来するものであるので、アミノ酸の誘導体ともみなされるが、ポリアミン類の正電気の特性は、その機能の中で最も重要な特徴である。ジアミン類、例えば、プトレシン(putrescine)は、通常、ポリアミン類合成の出発物質として、スペルミジン(spermidine)やスペルミン(spermine)等のより高次のトリアミン、テトラアミン又はほかのポリアミン類をさらに合成することができる。多くの細胞にとって、ポリアミンの存在が非常に重要であり、例えば、その正電荷を有する特性は、DNAの安定化、イオンチャネル機能の調節、遺伝子転写や遺伝子翻訳の調節、ならびに細胞成長や細胞増殖への影響などの重要な生理学的現象において、重要な役割を果たしてきたことが文献に示されている。細胞内におけるポリアミンの存在濃度は、ミリモル濃度の範囲までに達することができ、このような濃度であれば、ポリアミンが細菌増殖を抑制する効果を奏することも報告されている(ACS Infect.Dis.2017,3,777-779)。
【0006】
抗菌性カーボン量子ドットの研究では、Y.-J.Liらは、スペルミジン等の生物由来のポリアミンをカーボン量子ドットの表面に修飾することにより、抗菌力を備えるカーボン量子ドットを作製した(Adv Healthc Mater.2016,19,2545-2554)。H.-J.Jianらは、ポリアミン分子を直接に炭素前駆体及び窒素前駆体として、ワンステップ熱分解法により、表面にポリアミン構造を有しているカーボン量子ドットを作製した(ACS Nano,2017,11,6703-6716)。これらの研究のいずれも、ポリアミン自身が正電荷を持つ天然化合物であるため、これらの表面にポリアミン構造を有しているカーボン量子ドットのいずれも多価の正電荷を持ち、細菌の細胞表面との接触を増加させ、相互作用する結果、細菌細胞膜の破壊を直接に引き起こし、細菌を死滅させることに至ったことを示している。また、ポリアミンカーボン量子ドットは、細胞内のタンパク質、DNA、RNAやほかの重要な分子との相互作用により、細菌の活性を抑制することもできる。
【0007】
上述した先行技術には、異なる前駆体及び異なる方法で様々なカーボン量子ドットを製造すること、並びにそれらの用途が示されているものの、その多くは蛍光標識に応用するものであり、抗菌用途に関するカーボン量子ドットの研究は比較的に少ない。A.Anandらの最新の文献レビューには、現在、異なる前駆体、異なる加工方法及び異なる加工条件で製造されたサイズや構造が異なるカーボン量子ドットは、異なる抗菌特性を有することが記載されている(Nanoscale Horiz.2019,4,117-137)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の背景説明のとおり、カーボン量子ドットに関連する研究が多かったものの、その多くは抗菌分野に関するものではない。また、従来の研究は、通常、カーボン量子ドットの前駆体の製造やその合成方法しか記載されておらず、最終的に生成されたカーボン量子ドットの詳細な成分、構造的特徴、特に、表面の官能基や元素組成等については詳しく同定や定義する記載が殆どない。そのため、既存の情報では、カーボン量子ドットの特徴と抗菌能力との関係性を確立できないので、どのような前駆体やどのようなプロセスで作られたカーボン量子ドットが、どのような抗菌効果を有し得るかについては、従来のカーボン量子ドット研究から直接に推測することができない。
【0009】
さらに、現在、少数の抗菌性カーボン量子ドットに関する報告があるものの、これらの材料の制菌効果をさらに向上する必要がある。例えば、以前に報告された抗菌性カーボン量子ドットの制菌力が塩分の影響を受けやすいので、海水環境でのカーボン量子ドットの効果が劣る(Nanoscale Horiz.2019,4,117-137)。加えて、現在、カーボン量子ドットは、主に細菌に対抗するが、将来的には、真菌も含めてより多様な微生物を抑制できるようにする必要がある(ACS Nano,2017,11,6703-6716)。当然ながら、カーボン量子ドットの安全性も十分に重要な技術的特徴であるので、動物の安全を前提として微生物感染症の治療効果が得られれば、関連分野において極めて大きな進歩となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(I)化合物及びハロゲンイオン化合物を熱分解処理することにより作製された反応生成物に由来するものを含み、
前記反応生成物が、グラファイトコアを含むものであり、表面に式(I)化合物及びハロゲンを有し、かつ表面に正電荷を有する、カーボン量子ドットを提供する。
【化1】
【0011】
上記概念によれば、前記式(I)化合物において、R1が、C2-C8アルキル基、C7アルキルアミン、C10アルキルポリアミン、2-ペンタノール基及びジエチルスルフィド基から選ばれ、R2が、H及びカルボキシル基から選ばれる。
【0012】
上記概念によれば、前記ハロゲンイオンが、塩素化合物、臭素化合物又はヨウ素化合物に由来する。
【0013】
上記概念によれば、前記塩素化合物が、塩化水素、塩化アンモニウム、次亜塩素酸、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む。
【0014】
上記概念によれば、前記臭素化合物が、臭化水素又は臭化カリウムを含む。
【0015】
上記概念によれば、前記ヨウ素化合物が、ヨウ化水素又はヨウ化カリウムを含む。
【0016】
上記概念によれば、前記熱処理温度が、150~300℃である。
【0017】
上記概念によれば、前記熱処理温度が、150~180℃、180~210℃、210~240℃、240~270℃又は270~300℃である。
【0018】
本発明は、式(I)化合物とハロゲンイオンとを混合して前駆体を形成し、所定温度で前記前駆体を熱分解することにより、カーボン量子ドットを得る、カーボン量子ドット及びその組成物の製造方法を提供する。
【化2】
【0019】
上記概念によれば、前記式(I)化合物において、R1が、C2-C8アルキル基、C7アルキルアミン、C10アルキルポリアミン、2-ペンタノール基及びジエチルスルフィド基から選ばれ、R2が、H及びカルボキシル基から選ばれる。
【0020】
上記概念によれば、前記ハロゲンイオンが、塩素化合物、臭素化合物又はヨウ素化合物に由来する。
【0021】
上記概念によれば、前記塩素化合物が、塩化水素、塩化アンモニウム、次亜塩素酸、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む。
【0022】
上記概念によれば、前記臭素化合物が、臭化水素又は臭化カリウムを含む。
【0023】
上記概念によれば、前記ヨウ素化合物が、ヨウ化水素又はヨウ化カリウムを含む。
【0024】
上記概念によれば、前記温度が、150~300℃である。
【0025】
上記概念によれば、前記温度が、150~180℃、180~210℃、210~240℃、240~270℃又は270~300℃である。
【0026】
本発明は、式(I)化合物とハロゲンイオンとを混合して所定温度で熱分解することにより得られた反応生成物である、カーボン量子ドットを提供する。
【化3】
[式中、
1が、C2-C8アルキル基、C7アルキルアミン、C10アルキルポリアミン、2-ペンタノール基及びジエチルスルフィド基から選ばれ、R2が、H及びカルボキシル基から選ばれる。]
【0027】
上記概念によれば、前記ハロゲンイオンが、塩素化合物、臭素化合物又はヨウ素化合物に由来する。
【0028】
上記概念によれば、前記塩素化合物が、塩化水素、塩化アンモニウム、次亜塩素酸、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む。
【0029】
上記概念によれば、前記臭素化合物が、臭化水素又は臭化カリウムを含む。
【0030】
上記概念によれば、前記ヨウ素化合物が、ヨウ化水素又はヨウ化カリウムを含む。
【0031】
上記概念によれば、前記温度が、150~300℃である。
【0032】
上記概念によれば、前記温度が、150~180℃、180~210℃、210~240℃、240~270℃又は270~300℃である。
【0033】
上記概念によれば、前記カーボン量子ドットの組成におけるハロゲンの重量%が、15%~40%である。また、前記カーボン量子ドットの直径が、1~8nmであり、前記カーボン量子ドットが、38~48mVのゼータ電位の正の表面電荷を有する。
【0034】
本発明は、有効量の上述したカーボン量子ドットを含む、抗菌組成物を提供する。
【0035】
本発明は、上述した方法により、さらに前記カーボン量子ドットを少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む組成物に加えることを含む、抗菌組成物の製造方法を提供する。
【0036】
本発明は、感染状況又は疾患を処理する製剤を製造するためのカーボン量子ドットの使用であって、前記カーボン量子ドットが、式(I)化合物とハロゲンイオンとを混合して所定温度で熱分解することにより得られた反応生成物である、カーボン量子ドットの使用を提供する。
【化4】
[式中、
1が、C2-C8アルキル基、C7アルキルアミン、C10アルキルポリアミン、2-ペンタノール基及びジエチルスルフィド基から選ばれ、R2が、H及びカルボキシル基から選ばれる。]
【0037】
上記概念によれば、前記ハロゲンイオンが、塩素化合物、臭素化合物又はヨウ素化合物に由来する。
【0038】
上記概念によれば、前記塩素化合物が、塩化水素、塩化アンモニウム、次亜塩素酸、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む。
【0039】
上記概念によれば、前記臭素化合物が、臭化水素又は臭化カリウムを含む。
【0040】
上記概念によれば、前記ヨウ素化合物が、ヨウ化水素又はヨウ化カリウムを含む。
【0041】
上記概念によれば、前記温度が、150~300℃である。
【0042】
上記概念によれば、前記温度が、150~180℃、180~210℃、210~240℃、240~270℃又は270~300℃である。
【0043】
上記概念によれば、前記カーボン量子ドットの組成におけるハロゲンの重量%が、15%~40%である。
【0044】
上記概念によれば、前記感染状況又は前記疾患が、微生物の増殖によって引き起こされたものであり、前記微生物が、非多剤耐性菌及び/又は多剤耐性菌からなる群より選ばれる。
【0045】
上記概念によれば、前記非多剤耐性菌が、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・イニエ及びカンジダ・アルビカンスからなる群より選ばれ、前記多剤耐性菌が、薬剤耐性ブドウ球菌を含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、式(I)化合物のカーボン量子ドット(Carbon quantum dot、以下、CQDとも称する)及びその塩素含有カーボン量子ドット誘導体の制菌効果の差異を示す。
図2図2は、1,6-ジアミノヘキサンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体の構造において、検出した化合物における塩素の占める重量%についての説明である。
図3図3は、構造において異なる塩素含有量を有する1,6-ジアミノヘキサンのカーボン量子ドット誘導体による、大腸菌(E coli,Escherichia coli)に対する抑制効果の差異を検出した概略図である。
図4図4は、1,6-ジアミノヘキサンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体による、異なる種の菌株に対する抑制効果を検出したデータである。
図5図5は、1,6-ジアミノヘキサンの3種類のハロゲン含有カーボン量子ドット誘導体による制菌力を検出した概略図である。
図6図6(A)~(D)は、1,6-ジアミノヘキサンの3種類のハロゲン含有カーボン量子ドット誘導体による制菌力を検出したシャーレ塗抹効果図である。
図7図7は、(A)1,6-ジアミノヘキサンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体、及び(B)スペルミジンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体の、高分解能透過電子顕微鏡(High-resolution transmission electron microscopy、以下、HR-TEMとも称する)分析で検出した結果である。
図8図8は、(A)スペルミジンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体、及び(B)1,6-ジアミノヘキサンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体の、レーザー脱離イオン化質量分析装置で表面構造の組成を検出した結果である。
図9図9は、1,6-ジアミノヘキサンの3種類のハロゲン含有ポリアミンカーボン量子ドット誘導体の粒径サイズ、電位、構造における元素(酸素、窒素、炭素、水素、ハロゲン)含有量を検出した表である。
図10図10は、1,6-ジアミノヘキサンの塩素含有カーボン量子ドット誘導体による、動物に対する有効性の試験結果である。
図11図11は、本願のカーボン量子ドットの構造図である。図11において、1はハロゲン化合物を表し、2は式(I)化合物を表し、3は正電荷を表し、4はグラファイトを表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
1.カーボン量子ドット(Carbon quantum dot、以下、CQDとも称する)の合成方法
式(I)化合物の構造的特徴を有する複数種類のポリアミンやポリアミン誘導体(表1をご参照)と、ハロゲン含有化合物(表2をご参照)に由来するものとを混合して前駆体として、高温(例えば、台湾特許I648003号に記載の実験方法のように、異なる高温の組み合わせで行うこと)で加熱分解することにより、カーボン量子ドットを形成した。得られた固体を室温まで自然冷却した後、脱イオン水を加え、超音波で1時間振盪させた後、高速遠心機を用いて相対遠心力(relative centrifugal force、以下、RCFとも称する)500gで30分間遠心分離することにより、精製して上清液を取り出した。取り出した上清液を透析精製した後、凍結乾燥させることによりカーボン量子ドットを得た。カーボン量子ドットの詳細な構造及び成分の分析に用いられた方法は、ナノ粒子径及び界面電位測定装置、元素分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、高分解能透過電子顕微鏡、レーザー脱離イオン化質量分析装置を含む。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
別の実施例では、表1に示される式(I)化合物及び表2に示されるハロゲン含有化合物を前駆体として、下記の温度で熱分解プロセスを行うことにより、各種類のカーボン量子ドットを製造した。
【0051】
【表3-1】
【表3-2】
【0052】
2.カーボン量子ドットの抗菌試験
【0053】
カーボン量子ドケットの最小制菌濃度(MIC)値は、標準希釈法で複数種類の試験細菌菌株を測定したものであり、前記の試験細菌菌株には、E.coli(Escherichia coli、大腸菌)、P.aeruginosa(Pseudomonas aeruginosa、緑膿菌)、S.enteritidis(Salmonella enterica、サルモネラ菌)、S.aureus(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、多重薬剤耐性ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ともいう)、S.Iniae(Streptococcus iniae、ストレプトコッカス・イニエ)、C.Albicans(Candida albicans、カンジダ・アルビカンス)が含まれていた。
【0054】
細菌の増殖と測定
【0055】
培地から各菌株の単一のコロニーを取り出し、それぞれの増殖に適する培地(10mL)に接種した。培養する細菌を37℃で振とう(200rpm)させ、600nmにおける吸光度(O.D.600)が1.0(光路長:1.0cm)になるまで増殖させた。各細胞混合物を1.0mL取り出して遠心分離(RCF:3,000g、10min、25℃)を行い、そして、次の使用の前に、5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で2回洗浄した。カーボン量子ドットと105CFU/mL菌液とを混合し、最終的に反応菌液濃度が104CFU/mLとなった。3時間反応させた後、それぞれの増殖に適する培地を加え、各菌株の培養温度でインキュベーターに12時間培養した後、600nmにおける吸光度(O.D.600)を測定した。
【0056】
1つの実施例では、表3におけるカーボン量子ドットA0~I0及びそれらに対応するハロゲン含有カーボン量子ドットA1~I1による制菌効果の差異をそれぞれ検出した。その結果を図1に示す。図1は、前駆体として塩素化合物を混合することにより製造されたカーボン量子ドットは、明らかにより優れた制菌力を有することを示す。
【0057】
別の実施例では、式(I)化合物とハロゲンとを、モル比1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:6等の異なる割合で混合して前駆体とし、それぞれ異なるハロゲン含有量のカーボン量子ドットを製造し、そして、それぞれのカーボン量子ドットの組成におけるハロゲンの占める重量%を分析した。図2は、1,6-ジアミノヘキサン(表1における式(I)化合物C)と異なる割合の塩化水素とを混合して前駆体とし、表3のC1-0.5、C1、C1-2、C1-4及びC1-6等のカーボン量子ドットを製造した。図2には、カーボン量子ドットの組成全体における塩素の占める重量%が示されている。これにより、前駆体に添加されたハロゲン化合物が多ければ多いほど、最終的に生成されたカーボン量子ドットの構造に含有されているハロゲンが多くなることが分かった。
【0058】
別の実施例では、構造に異なる塩素含有量を有するカーボン量子ドットによる抗菌効果を検出した。図3は、1,6-ジアミノヘキサン(表1に記載の式(I)化合物C)及び異なる割合の塩化水素を前駆体として製造された、構造に異なる塩素含有量を有するカーボン量子ドット誘導体による、大腸菌(E coli,Escherichia coli)に対する抑制効果の差異を検出した概略図である。図3は、最終的に生成されたカーボン量子ドットの構造において一定量のハロゲンを有すれば、細菌増殖を抑制する能力が、予測できない顕著な向上を奏することを示す。
【0059】
別の実施例では、7つの菌株:E.coli(Escherichia coli、大腸菌)、P.aeruginosa(Pseudomonas aeruginosa、緑膿菌)、S.enteritidis(Salmonella enterica、サルモネラ菌)、S.aureus(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、多重薬剤耐性ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ともいう)、S.Iniae(Streptococcus iniae、ストレプトコッカス・イニエ)、C.Albicans(Candida albicans、カンジダ・アルビカンス)で、カーボン量子ドット誘導体による制菌效果を試験したデータは、図4に示されている。図4は、1,6-ジアミノヘキサンを前駆体としたカーボン量子ドット(表3におけるC0カーボン量子ドット)及びそれに対応する塩素含有カーボン量子ドット(表3におけるC1カーボン量子ドット)による、異なる種類の菌株に対する効果を検出したデータである。図4は、ハロゲン含有C1カーボン量子ドットは、組成にハロゲンを含有していないC0カーボン量子ドットと比べて、上記菌種に対する抗菌力において、いずれも予測できない顕著な優れた効果を奏することを示す。
【0060】
別の実施例では、異なるハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットによる大腸菌に対する制菌力をそれぞれ検出し、その結果を図5に示す。図5は、1,6-ジアミノヘキサン(表1における式(I)化合物C)及び3種類のハロゲン含有化合物(表2)を前駆体として製造されたカーボン量子ドットの制菌力を検出した概略図である。図5は、炭化していない式(I)化合物の制菌力が最も悪く、それと比べて、式(I)化合物のカーボン量子ドット(表3におけるC0カーボン量子ドット)がより優れた制菌力を有し、構造に塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドット(表3におけるC2、C7及びC8カーボン量子ドット)が、さらに10倍以上の制菌力を向上することができることを示す。
【0061】
別の実施例では、異なるハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットによる大腸菌に対する制菌力をそれぞれ検出し、シャーレ塗抹後のコロニー増殖効果の結果を図6に示す。図6(A)~(D)は、表3におけるハロゲンを含有しないC0カーボン量子ドット、並びにハロゲンを含有するC3、C6及びC9カーボン量子ドットによる制菌力のシャーレ塗抹効果を検出した図である。図6は、構造に塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットは、成分にハロゲンを含有しない同種類のカーボン量子ドットと比べて、予測できない顕著な制菌効果を有することを示す。
【0062】
別の実施例では、高分解能透過電子顕微鏡(High-resolution transmission electron microscopy、以下、HR-TEMとも称する)で、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットの構造を分析した。図7(A)は、表3に記載のC1カーボン量子ドットを示し、図7(B)は、表3に記載のE1カーボン量子ドットを示す。これらのハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットは、いずれも中心部に(002)と(100)グラファイト格子面を有するものであり、グラファイトコアを有することが、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットの共通の構造的特徴であることを示す。
【0063】
別の実施例では、レーザー脱離イオン化質量分析装置(laser desorption/ionization mass spectrometry,LDI-MS)で、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットの構造を分析した。カーボン量子ドット表面にレーザーを照射することにより、表面の官能基をイオン化させ、質量分析信号を発生させる。図8(A)は、表3に記載のE1カーボン量子ドットの分析結果であり、図8(B)は、表3に記載のC1塩素含有カーボン量子ドットの分析結果である。C1カーボン量子ドット及びE1カーボン量子ドットは、それぞれ、レーザーで化合物C及び化合物Eをイオン化させられることができ、表面に式(I)化合物が重合されたことが、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットの共通の特徴であることを示す。
【0064】
別の実施例では、ナノ粒子径及び界面電位測定装置(DLS&zeta potential)、元素分析装置(Elemental analysis)、誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry、ICP-MS)で、式(I)化合物、及び式(I)化合物を単独で前駆体とするか、又は式(I)化合物とハロゲン含有化合物とを混合して前駆体として製造されたカーボン量子ドットの構造を分析した。図9は、炭化していない式(I)化合物C、ハロゲンを含有しないC0カーボン量子ドット、並びに塩素、臭素、ヨウ素をそれぞれ含有するC1、C6及びC8カーボン量子ドットの構造についての、粒径サイズ、電位、成分における元素含有量(酸素、窒素、炭素、水素、ハロゲン)を比較した。式(I)化合物Cの3種類のハロゲン含有カーボン量子ドット(C1、C6及びC8)の構造における成分のいずれにも、それらの前駆体とされたハロゲン原子を有し、かつ、構造の表面に正味の正電荷を有することが観察された。
【0065】
別の実施例では、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットを動物の感染防止に適用する効果を検出しており、以下、ハタ養殖を例として示す。表3のハロゲン含有C1カーボン量子ドットの1mgカーボン量子ドットを餌1Kgに加え、均一に混合し、2インチのハタ稚魚の餌やりに用いた。連続7日間の餌やりを行った後、チャレンジ試験(チャレンジする菌株は、ビブリオ・キャンベル(Vibrio campbellii、V.Campbelliiとも称する)である)を行って、ハタを106CFU/mLのビブリオ・キャンベルに1時30分間浸させた後、一般環境に移し、その生存率を観察した。図10には、3回の独立の試験結果が示され、ハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットの餌やりがハタの健康に影響を与えることなく、また、重度の細菌感染の場合ではハタの生存率を1.5~4倍と効果的に高めることが証明された。
【0066】
図11は、本願のカーボン量子ドットの構造の概略図であり、当該カーボン量子ドットは、式(I)化合物及びハロゲンイオン化合物を熱分解処理することにより作製された反応生成物に由来するものであり、前記反応生成物が、グラファイトコアを含むものであり、表面に式(I)化合物及びハロゲンを有し、かつ表面に正電荷を有する。
【化5】
【0067】
本願に記載の実施例は、その群のうちの1つの構成が、上記製品若しくは上記プロセスに表現される、用いられる、又は関することを含むものである。本願に含まれる複数の実施例は、1つ以上またはすべての構成が、上記製品若しく上前記プロセスに表現される、用いられる、又は関することを含むものである。
【0068】
なお、下記の事項を留意すべきである。本願は、式(I)化合物及びハロゲン化合物を前駆体として製造されたハロゲンを含有する式(I)化合物のカーボン量子ドットであり、使用された合成前駆体、ハロゲン源、合成方法、並びに最終的なカーボン量子ドットの構造及び特性は、いずれも先行技術の特徴と異なる。また、本願の実施例では、式(I)化合物のカーボン量子ドットの構造にハロゲンを含有することにより、予測できないくらい抗菌效果を顕著に向上する特性を有するという知見が得られた。さらに、本願の新規なカーボン量子ドットは、従来の抗菌カーボン量子ドットと比べて、より優れた制菌力を有することが証明され、海水ハタの疾患予防に適用され、真菌に属するカンジダ・アルビカンスに対抗できること等の多くの予測できない顕著な利点を有する。最も好ましい実施例では、1,6-ジアミノヘキサン(表1における式(I)化合物C)の塩素含有カーボン量子ドット(表3におけるC1カーボン量子ドット)は、大腸菌の最小制菌濃度を0.0001mg/mlまでに低くすることができる。
【0069】
発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、通常のものを超えない実験により、本発明に記載の特定の実施例の多くの同程度の設備を識別又は証明する。本願の(保護する)範囲は、公開された特定実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施例を含むものである。なお、本願の教示に適するように装置、状況又は材料に行った改良は、本願の本質的範囲から離れていないと理解されることができる。
【符号の説明】
【0070】
なし。
【生物材料の受託】
【0071】
なし。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(A)】
図6(B)】
図6(C)】
図6(D)】
図7(A)】
図7(B)】
図8
図9
図10
図11