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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20231127BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231127BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022097646
(22)【出願日】2022-06-16
(62)【分割の表示】P 2018566136の分割
【原出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2022120168
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2017018883
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017072905
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 辰成
(72)【発明者】
【氏名】和泉 光人
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-516263(JP,A)
【文献】特開2014-023478(JP,A)
【文献】特開2014-023479(JP,A)
【文献】特表2002-514212(JP,A)
【文献】特開2011-195569(JP,A)
【文献】特開2006-117626(JP,A)
【文献】特表2007-513975(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057147(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口摂取する固形製剤であって、
ローカストビーンガム及びグアーガムから選ばれる少なくとも一種と、
糖アルコール、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、デンプン、化工デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、α化デンプン、リン酸デンプン、リン酸ジデンプン、酢酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、グリセロールジデンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、橋架デンプン、溶性デンプン、グラフト化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びデキストリンの中から選ばれる1種以上とを含有する裸錠であり、
水性液と接触することで表面の潤滑性が増すようになされている、固形製剤(但し、以下に記載する(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)、(キ)、(ク)及び(ケ)を除く。
(ア)糖アルコール及び水不溶性高分子を含む粒子組成物を含有するもの。
(イ)少なくとも1種の生理学的に許容しうるゲル形成剤を含んでいることを特徴とする咀嚼可能なスクラルフェート含有錠剤または糖衣錠の形態の医薬組成物、
(ウ)下記の成分(a)、(b)、(c)及び(d):
(a)治療活性を有する薬剤;
(b)環境液体に接触した時に相互に架橋することができるヘテロ多糖ガムとホモ多糖ガムからなるゲル化剤であって、前記ヘテロ多糖ガムと前記ホモ多糖ガムの比率が1:3~3:1である前記ゲル化剤;、
(c)薬剤学的に許容される糖、多価アルコール、工業的に生産されている直接打錠希釈物、およびこれらの混合物よりなる群から選択される不活性希釈剤;及び
(d)薬剤学的に許容される疎水性物質、を含有し、
前記(c)である不活性希釈剤と前記(b)であるゲル化剤の比率が1:8~8:1であり、
疾病に罹患した患者に対して病気を治療するために用いられる放出制御固体剤型の経口医薬品
(エ)(a)活性薬剤;(b)増粘剤;及び(c)糖質剤を含有し、前記(b)増粘剤と前記(c)糖質剤との比が1:7以上であり、唾液と接触することでペーストとなることを特徴とする固体状の医薬品。
(オ)キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15~40質量%、崩壊用寒天を15~40質量%、水溶性糖類を10~70質量%及び金属塩を0.2~10質量%含有し、硬度が15~70Nである、錠剤型増粘化剤。
(カ)増粘多糖類を15~45質量%、セルロースを15~40質量%、水溶性糖類を5~70質量%及び金属塩を0.2~10質量%含有し、硬度が15~70Nである錠剤。
(キ)最終錠剤重量を基にして重量%で、
(a) セフアドロキシル一水和物 50%;
(b) 微結晶性セルロース87重量部およびグアーガム13重量部を含有する混合物
10-12%;
(c) 架橋ポリビニルピロリドン 9.5-29%;
(d) コロイド状二酸化ケイ素 2.5-10%;
(e) 第二りん酸カルシウム 4-19%;および
(f) マンニトールまたはマルチトール 9-21%からなる無水の医薬組成物の直接圧縮によって得られるセフアドロキシル一水和物のコーティングされていない錠剤であって、嚥下、咀しゃくまたは水で崩壊して飲用可能な懸濁剤の生成によってヒトに経口投与可能である錠剤。
(ク)トルセミド又はその製薬上許容されうる塩と徐放性賦形剤とを含む徐放性経口剤。
(ケ)糖アルコール、及び、水に触れると滑り性を示すゲル化剤を含む易服用性固形製剤用粒子組成物であって、該粒子組成物の表面の一部または全体が該ゲル化剤によって被覆されていることを特徴とする、前記粒子組成物を打錠してなる錠剤)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における消費者の健康志向の高まりや食品表示の新たな制度として機能性表示食品制度が導入されたことに伴い、日本の健康食品・サプリメントの市場規模は今後も拡大していくことが予想される。サプリメントの中でも経口投与の製剤として、錠剤等の固形製剤が多く用いられているが、大きな錠剤や同時に複数の錠剤を服用することは、錠剤を飲むのが苦手な人や、特に嚥下機能の低い子供や老人にとって困難な場合が多い。
錠剤を嚥下しやすいものとするために、錠剤の滑りやすさ、のどへの引っ掛かりにくさ等を改良することが求められる。この点を考慮して錠剤等の固形製剤のコーティングを工夫した技術がこれまでに複数報告されている(特許文献1~3)。しかしながら、コーティングによって錠剤表面が滑りやすくなり、ある程度は服用性が向上しても、複雑な形状をした咽頭部を通過する際の抵抗は依然大きく、嚥下改善効果は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-60472号公報
【文献】US2010/0266687A1
【文献】US2014/0294958A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、固形製剤を飲むのが苦手な人にも抵抗が少なく容易に服用できる固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は経口摂取する固形製剤であって、
水性液と接触することで表面の潤滑性が増すようになされている、固形製剤を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、最大応力の測定方法の概念図である。
図2図2は、水のみを服用した場合の筋電図である。
図3図3は、実施例1で製造した錠剤を服用した場合の筋電図である。
図4図4は、実施例2で製造した錠剤を服用した場合の筋電図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本実施形態の固形製剤は、経口摂取する固形製剤であって、水性液と接触することで表面の潤滑性が増すようになされている。ここでいう水性液とは、水、茶、清涼飲料、牛乳等の通常飲用に用いる液体、唾液、又はこれらの混合物を指す。本発明の固形製剤は、ゲル化剤を含有しているため、水性液と接触することで表面の潤滑性が増大する。固形製剤はその表面部にゲル化剤を含有していることが好ましい。本実施形態の固形製剤は、服用前の状態ではゲル化剤がゲル化しておらず、服用に際して水性液に触れることでゲル化剤がゲル化するようになされている。ゲル化剤としては、粉状(粒子状)であって、水性液を含んだときにぬめり性を発揮する物質を用いる。本明細書においてゲル化とは、ゲルの存在が確認できることを必須とするものではなく、ゲル化剤が水性液と接触することにより、ぬめり性を発揮していればよい。しかしながら、水性液との接触により実際にゲルの存在が確認できることが好ましい。具体的には、プラスチック製の基板上に固形製剤を静置し、固形製剤の表面積1mm2あたり、25℃の水0.2μLをスポイトで滴下し、その状態で10~20秒間保持した後に、ゲルの存在を確認できることが好ましい。
【0008】
ゲル化剤が水性液と接触することにより、ぬめり性を発揮することは、本実施形態の固形製剤が、該固形製剤を水に投入した後の最大応力が、該固形製剤を水に投入する前の最大応力に比べて低くなっていることによって確認することができる。ここで、水に投入するとは、プラスチック製の基板上に固形製剤を静置し、固形製剤の表面積1mm2あたり、25℃の水0.2μLをスポイトで滴下し、その状態で10~20秒間保持することを意味する。最大応力の測定手順は、以下の通りである。測定装置の模式図を図1に示す。図1における符号1が固形製剤、符号2がスリット、符号3がシリコンチューブである。
【0009】
<最大応力の測定手順>
上下方向に沿って配置され且つ上下方向に移動可能に固定されたシリコンチューブと、該シリコンチューブを左右方向に挟んだ状態で固定された一対のスリットとを用い、該シリコンチューブにおける該スリットの下側に、固形製剤を1錠充填し、該シリコンチューブを該スリットに沿って上方に移動させることで該シリコンチューブを該固形製剤に対して上方に速度0.5mm/秒で20mm移動させた時の最大応力を測定する。なお、前記測定に用いるシリコンチューブとしては、シリコンチューブの断面積が固形製剤の断面積よりも小さく、かつ、固形製剤の断面積の40%よりも大きいものを使用する。固形製剤の断面積のシリコンチューブの断面積に対する割合は40%以上60%以下であることが好ましく、45%以上55%以下であることがより好ましい。
【0010】
さらに本発明の固形製剤は、上記手順にて測定される固形製剤を水に投入した後の最大応力が20N未満であることが好ましく、15N以下であることがより好ましく、10N以下であることがさらに好ましく、5N以下であることが特に好ましい。
【0011】
上記の上下方向とは、水平な面に対して直交する方向である。また、上記の左右方向とは、上下方向と直交する方向をいう。
上記のシリコンチューブの断面積とは、固形製剤を充填していない状態におけるシリコンチューブをその長手方向と直交する方向で切断した断面におけるシリコンチューブ内面に囲まれた部分の面積を指す。
また、固形製剤の断面積とは、シリコンチューブに充填された状態における固形製剤の、シリコンチューブの長手方向と直交する面で切断した断面のうち、最大面積を有する断面の面積を指す。
【0012】
また、本実施形態の固形製剤は、水を溶媒として測定した崩壊時間が60分以内であり、40分以内であることが好ましく、20分以内であることがさらに好ましい。崩壊時間の下限としては、例えば固形製剤の製造しやすさから1分以上が挙げられる。崩壊時間とは、溶媒中の試料が崩壊するまでの時間を意味する。崩壊時間の測定手順は、第十五改正日本薬局方における項目「6.09」の「崩壊試験法」に記載の方法に従うものである。錠径3~15mm、錠厚4~7mm、重量 150~500mgの錠剤を用いる場合は、崩壊試験器として 富山産業社、型番: NT-400を用いることが好ましい。本実施形態の固形製剤は、剤の厚みに対する崩壊時間が0.01分/mm以上25分/mm以下であることが好ましく、0.05分/mm以上20分/mm以下であることがより好ましく、0.1分/mm以上12分/mm以下であることがさらに好ましく、0.15分/mm以上8分/mm以下であることがよりさらに好ましく、0.2分/mm以上4分/mm以下であることが最も好ましい。
【0013】
<崩壊時間の測定手順>
6本のガラス管を有する崩壊試験器の該ガラス管それぞれに、固形製剤を1粒ずつ入れる。各ガラス管は、上下面が開口しており、ガラス管の下面には網目の開き1.8mm~2.2mmのステンレス網が取り付けられている。固形製剤を入れたガラス管を37±2℃の水中に入れ、崩壊試験器を作動させる。崩壊試験器中のガラス管を観察し、固形製剤が崩壊しかかっている様子が確認されたらガラス管を引き上げ、固形製剤の崩壊の様子を観察する。この作業を繰り返し、固形製剤が完全に崩壊するまで観察する。崩壊試験器を作動させたときから、6個の固形製剤全てが崩壊したときまでの時間を測定し、該測定された時間を崩壊時間とする。尚、固形製剤の残留物をガラス管内に全く認めないか、又は認めても明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき固形製剤は崩壊したものとする。
【0014】
本実施形態の固形製剤の形態としては、錠剤、カプセル、丸剤、粉末等が挙げられ、錠剤又はカプセルの形態とすることが好ましい。いずれの形態である場合も、ゲル化剤が固形製剤の最表面部に存在する。最表面部とは、固形製剤の表面側に位置する部分を指し、固形製剤の表面から中心方向に向かって0mm以上1mm以下の範囲を指す。本実施形態の固形製剤は、その最表面部全体にゲル化剤を有していることが特に好ましい。本明細書中、固形製剤の最表面部における異なる2箇所以上において、ゲル化剤が存在することを確認できれば、最表面部全体にゲル化剤を有しているといえる。ここで表面部においてゲル化剤が存在することは、固形製剤の最表面部の任意の箇所の30mg程度をメス等で削り取り、適量の水を加えてゲル化することで確認できる。例えば最表面部全体にゲル化剤を有している固形製剤は、ゲル化剤を含む混合粉末の打錠物として容易に得ることができる。
【0015】
固形製剤は、表面部とそれよりも中心側の部分とが区別された構造を有していてもよいし、或いは、そのような構造を有していなくてもよい。例えば、固形製剤は、有核錠のような複数層構造であってもよい。中でも、固形製剤が複数層構造を有さず、単層構造である場合、製造の容易性等の点で好ましい。
【0016】
固形製剤は、最表面部以外の箇所にゲル化剤を有していてもよい。例えば、固形製剤は最表面部及びそれよりも中心側の部分(中心部ともいう)の両方においてゲル化剤を含有していてもよい。そのような固形製剤の例としては、単層構造の裸錠を有する錠剤が挙げられる。固形製剤において、最表面部の組成と中心部の組成とは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが裸錠を有する錠剤の製造しやすさから好ましい。固形製剤の中心部にゲル化剤が存在することは、例えば、固形製剤をカッター等で半分に切断し、固形製剤の表面から1mm超中心側の部分における任意の箇所の30mg程度をメス等で削り取り、適量の水等の液媒を加えてゲル化することで確認できる。なお、後述する崩壊剤として列記される成分は本願におけるゲル化剤には含まれない。
【0017】
本実施形態の固形製剤が錠剤である場合について説明する。
錠剤はゲル化剤を有する裸錠を有する錠剤であることが好ましい。一般に、裸錠(素錠ともいう)とは、その表面にコーティング層が形成されていない錠剤を指す。本明細書において「裸錠を有する錠剤」とは、錠剤の表面においてコーティング層の形成されていない部分があり、当該部分が裸錠の状態である錠剤のことを意味する(以下、錠剤表面のコーティング層が形成されていない部分を裸錠部分という)。また、本明細書において「裸錠」とは、表面にコーティング層が実質的に形成されていない錠剤(錠剤の表面積に占めるコーティング層によって被覆される面積の割合が5%未満の錠剤)を意味する。本明細書において「裸錠」は、「裸錠を有する錠剤」に包含される概念である。
【0018】
本実施形態の裸錠を有する錠剤は、裸錠部分に水等の液媒が接触するとぬめり性(滑り性ともいう)を発揮する。本実施形態の裸錠を有する錠剤は、裸錠部分の最表面部にゲル化剤を有することが好ましい。最表面部とは、裸錠部分において表面側に位置する部分を指し、裸錠部分の表面から中心方向に向かって0mm以上1mm以下の範囲を指す。本実施形態の錠剤は裸錠部分、特に裸錠部分の最表面部にゲル化剤を有することにより、水等の液媒に接した際に裸錠部分の表面においてぬめりを生じる。これにより本実施形態の裸錠を有する錠剤は、コーティング層を設けずとも、嚥下が容易なものである。裸錠を有する錠剤は、裸錠部分の最表面部全体にゲル化剤を有していることが特に好ましい。本明細書中、裸錠部分の最表面部における異なる2箇所以上において、ゲル化剤が存在することを確認できれば、裸錠部分の最表面部全体にゲル化剤を有しているといえる。ここで表面部においてゲル化剤が存在することは、その最表面部の任意の箇所の30mg程度をメス等で削り取り、適量の水等の液媒を加えてゲル化することで確認できる。後述するように、裸錠部分の最表面部全体にゲル化剤を有している裸錠を有する錠剤は、ゲル化剤を含む混合粉末の打錠物として容易に得ることができる。
【0019】
上記の裸錠を有する錠剤は、裸錠部分が存在することにより、ゲル化剤の効果が発揮されるため、錠剤の最表面に裸錠部分が存在することが好ましい。具体的には、錠剤の最表面における裸錠部分が占める表面積の割合は、70%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。また、上記の裸錠を有する錠剤がコーティング層を有する場合、錠剤の表面積に占めるコーティング層によって被覆される割合は30%未満であることが好ましく、10%未満であることが特に好ましく、実質的にコーティング層がない(錠剤の表面積に占めるコーティング層によって被覆される面積の割合が5%未満であることを意味する)ことが最も好ましい。また上記の裸錠を有する錠剤がコーティング層を有する場合、コーティング層の厚みは裸錠部分の表面から中心方向に向かって3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下が特に好ましい。コーティング層の厚みを1mm以下とすることにより、ゲル化剤の効果を発揮しやすくするとともに、製造コストを低減することができるとともに、錠剤の大型化を防ぐことができる。コーティング層が錠剤の一部のみを覆う場合、コーティング層は一部に偏って連続的に存在していてもよく、或いはアイランド状等に分散していてもよい。例えば、ゲル化剤以外の粉状物(例えば糖類又はその他の調味料等)を裸錠の表面にまぶすことにより錠剤の表面の一部にコーティング層が存在する程度であれば、裸錠部分に存在するゲル化剤によって効果を奏するため、許容され得る。
【0020】
本実施形態の固形製剤がカプセルである場合、該カプセルがゲル化剤を含むコーティング層によって被覆されていることが好ましい。ゲル化剤は、カプセル皮膜の表面に付着していることが好ましい。例えば、ゲル化剤を含む粉末をソフトカプセル(軟カプセル)またはハードカプセル(硬カプセル)と混合することにより、該カプセルの表面をコーティング層で被覆することができる。この際、カプセルの表面を溶媒等で濡らすことにより付着性を良くしてもよい。ソフトカプセルまたはハードカプセルの表面に対してゲル化剤を含む粉末が付着しにくい場合には、該カプセルの表面を濡らす等することにより、粉末の付着性を向上させることができる。別の被覆方法としては、ソフトカプセルまたはハードカプセルに対して、ゲル化剤を溶解した溶液を噴霧することにより、該カプセルの表面をコーティングすることができる。カプセルとしては、ハードカプセルであっても良いが、ソフトカプセルが特に好ましい。カプセルの表面をコーティング層で被覆する範囲は、該カプセル表面積の50%以上が好ましく、70%%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、表面全体が被覆されていることが最も好ましい。
【0021】
本実施形態の固形製剤が丸剤である場合、該丸剤はゲル化剤を含む裸丸剤を有することが好ましい。このような裸丸剤は表面が水と接触するとぬめり性を発揮する。一般に、裸丸剤はその表面にコーティング層が形成されていない丸剤を指す。該丸剤は裸丸剤中、特に裸丸剤の最表面部にゲル化剤を有することにより、水等の液媒に接した際に裸丸剤表面がぬめりを生じる。これにより丸剤は、コーティング層を設けずとも、嚥下が容易なものとなる。裸丸剤である丸剤は、その表面全体を被覆するコーティング層を設けないので丸剤の大型化を防ぎ製造コストを低減できる利点がある。
【0022】
本実施形態の固形製剤が粉末である場合、該粉末がゲル化剤を含むコーティング層によって被覆されていることが望ましい。例えば、ゲル化剤を含む溶液を芯材となる粉末に対して噴霧することにより、表面の一部がゲル化剤を含むコーティング層によって被覆された粉末を得ることができる。
【0023】
上記のぬめり性及び崩壊時間を実現するために、本実施形態の固形製剤に使用する好ましい成分及び組成について以下詳述する。
以下の固形製剤の成分及び組成は、固形製剤が錠剤である場合は錠剤中に含まれる成分及び組成であり、固形製剤がカプセル剤の場合はカプセル中に含まれる成分及び組成である。特に固形製剤が裸錠を有する錠剤であり、以下の固形製剤の成分及び組成が錠剤を構成する裸錠中に含まれる成分及び組成に該当することが好ましい。
【0024】
固形製剤には、水性液と接触することで表面の潤滑性が増すことを目的としてゲル化剤を配合する。固形製剤に含まれるゲル化剤としては、粉状(粒子状)であって、水等の液媒を含んだときにぬめり性を発揮する物質を用いる。ゲル化剤としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、マンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、寒天、アルギン酸、タマリンドガム、サイリウムシードガム、タラガム、カラギーナン、アカシアガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ジェランガム(脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランラム)、ペクチン、及び大豆多糖類等の天然多糖類;コラーゲン等の蛋白質分解物;ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸;ポリ乳酸、ポリグルタミン酸等のバイオポリマー、並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、天然多糖類が特に好ましい。
前記の誘導体としては、ヒアルロン酸誘導体、アルギン酸誘導体及びポリグルタミン酸誘導体等が挙げられる。また、前記の塩としては、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、ポリグルタミン酸塩等が挙げられる。ヒアルロン酸誘導体としてはヒアルロン酸エステル、アセチル化ヒアルロン酸等が挙げられる。アルギン酸誘導体としてはアルギン酸エステル等が挙げられる。ポリグルタミン酸誘導体としては、ポリグルタミン酸エステル等が挙げられる。アルギン酸塩としてはアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム及びアルギン酸カルシウム等が挙げられる。ヒアルロン酸塩としてはヒアルロン酸ナトリウム及びヒアルロン酸カリウム等が挙げられる。ポリグルタミン酸塩としては、ポリグルタミン酸ナトリウム及びポリグルタミン酸カリウム等が挙げられる。ゲル化剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ゲル化剤が、ローカストビーンガム、マンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、寒天、タマリンドガム、サイリウムシードガム、タラガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ジェランガム、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる1種以上(以下、特定のゲル化剤ともいう)を含むことが摂取後に体内で崩壊しやすい点で好ましく、特に、ローカストビーンガムを含有することが、摂取後の崩壊しやすさに優れるほか、崩壊性とぬめり性の両立が高いレベルで発揮される点で好ましい。
また、ゲル化剤を2種以上組み合わせることも崩壊性とぬめり性との両立を図る点や、製造性の観点で好ましく、特定のゲル化剤と特定のゲル化剤以外のゲル化剤を組み合わせることがさらに好ましい。具体的には、特定のゲル化剤であるローカストビーンガムと、特定のゲル化剤以外のゲル化剤であるキサンタンガム、グァーガム、アルギン酸、カラギーナン等を組み合わせることが好ましい。例えば、キサンタンガム又はグァーガムに、ローカストビーンガムを組み合わせることでぬめり感による嚥下しやすさを効果的に高めることができる。またグァーガムに、ローカストビーンガムを組み合わせることで、摂取後における体内での崩壊性に優れた固形製剤を得ることができる。
【0026】
固形製剤中、ゲル化剤の割合は0.01質量%以上であることが水等の液媒と接触したときのぬめり感を十分に生じさせるために好ましい。また、固形製剤中のゲル化剤の割合は70質量%以下であることが、有効成分の溶出しやすさなどの点から好ましい。これらの点から、固形製剤中、ゲル化剤の割合は0.1質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上50質量%以下であることが一層好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがさらに一層好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが最も好ましい。本実施形態の固形製剤が、固形製剤中に前記特定のゲル化剤から選ばれる少なくとも1種を含む場合、固形製剤中の前記特定のゲル化剤の合計質量の好ましい範囲としては、前記のゲル化剤の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられる。ここでいう、前記特定のゲル化剤から選ばれる少なくとも1種の合計質量とは、固形製剤が前記特定のゲル化剤から選ばれる1種のみを含む場合はその1種の質量であり、固形製剤がこれらのうち2種以上を含む場合はそれらの合計質量である。
【0027】
本発明の固形製剤が、特定のゲル化剤とそれ以外のゲル化剤とを含有する場合、固形製剤中の前者:後者の比率は、ぬめり性と崩壊性の両立の観点から、後者100質量部に対し、前者が10質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、15質量部以上900質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以上800質量部以下であることが特に好ましい。
【0028】
例えば、本発明の固形製剤がキサンタンガムとローカストビーンガムとを含有する場合、固形製剤中の前者:後者の比率は、ぬめり性と有効成分の含有量を高める点から、キサンタンガム100質量部に対し、ローカストビーンガムが10質量部以上1000質量部以下であることが一層好ましく、15質量部以上900質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以上800質量部以下であることが特に好ましい。
【0029】
また本発明の固形製剤がグァーガムとローカストビーンガムとを含有する場合、固形製剤中の前者:後者の比率は、ぬめり性と有効成分の含有量を高める点から、グァーガム100質量部に対し、ローカストビーンガムが10質量部以上1000質量部以下であることがより一層好ましく、15質量部以上900質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以上800質量部以下であることが特に好ましい。
【0030】
固形製剤は、さらに糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上(以下これらを特定の賦形剤ともいう)を含有することが好ましい。ゲル化剤とこれらの特定の賦形剤とを組みあわせることで、ぬめり性に優れ、崩壊時間も短い固形製剤が得られる。
【0031】
特定の賦形剤としては、上述したように、(A)単糖類、(B)二糖類、(C)オリゴ糖、(D)セルロース、(E)セルロース誘導体、(F)デンプン、(G)デンプン誘導体及び(H)デンプン分解物の中から選ばれる1種以上を含めばよいが、崩壊性とぬめり性との両立を図る点で、(A)~(H)に記載される成分のうち、異なる区分に属する成分を2以上組み合わせて含むことが好ましい。具体的には、例えば、二糖類及びセルロースの組合せ、二糖類及び還元麦芽糖の組合せ、二糖類及びデンプンの組合せが挙げられる。また、(A)~(H)に記載される成分のうち、異なる区分に属する成分を3以上組み合わせて含むことがさらに好ましい。具体的には、例えば、二糖類、デンプン及びセルロースの組合せ、二糖類、還元麦芽糖及びセルロースの組合せなどが挙げられる。
【0032】
糖アルコールとしては、単糖のアルコール、二糖のアルコール、三糖以上のアルコールが挙げられる。単糖のアルコールとしては、例えばエリスリトール、D-トレイトール、L-トレイトール等のテトリトール、D-アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D-イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D-グルシトール(ソルビトール)等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール、マンニトール、ボレミトール、リビトール、ペルセイトール、D-エリトロ-D-ガラクト-オクチトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられる。また三糖以上のアルコールとしては、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等が挙げられる。糖アルコールとしては、本発明で用いるゲル化剤との組み合わせにより、特に打錠した錠剤の硬度が得られる等の製造性の観点から、特に二糖のアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に、還元麦芽糖及び還元パラチノースから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
単糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノースが挙げられる。これらの中でも、入手しやすさや崩壊性とぬめり性との両立を図る点でグルコースが好ましい。
【0034】
二糖類としては、スクロース、マルトース、ラクトース(乳糖)、トレハロース、ツラノース、セロビオースが挙げられる。これらの中でも、崩壊性の観点からトレハロース、スクロース、マルトースから選ばれる1種以上が好ましく、入手しやすさや崩壊性とぬめり性との両立を図る観点から、スクロース、マルトースがより好ましい。乳糖を含む場合であっても本発明の効果は得られるが、崩壊性とぬめり性との両立を図る観点から、二糖類としては、乳糖以外の二糖類であることがより好ましい。
【0035】
オリゴ糖としては、三糖以上二十糖以下のものが挙げられ、三糖以上十糖以下のものが好ましく、三糖以上六糖以下がより好ましく、具体的には、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース、ゲンチアノース、アカルボース、スタキオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖(イソマルトトリオース、パノース)、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、乳果オリゴ糖が挙げられる。特に、イソマルトオリゴ糖又はフラクトオリゴ糖を用いることが、入手しやすさ、崩壊性とぬめり性との両立を図る点で好ましい。
【0036】
固形製剤は、単糖類、二糖類、オリゴ糖のいずれかを含有することが味のマスキングの点のほか、唾液の分泌促進の点からも好ましい。特に固形製剤は表面部にこれら糖類を含有することが好ましい。
【0037】
セルロースとしては、粉末セルロース、結晶セルロースが挙げられる。結晶セルロースとは、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものである。例えば、第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)に記載の、結晶セルロースに該当するものが挙げられる。結晶セルロースは、結晶セルロース粉末と、結晶セルロース複合体とに分類できるが、本発明の固形製剤にはこれらのいずれも使用可能である。
【0038】
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースが挙げられる。カルボキシメチルセルロースは、エーテル化度が0.2mol/C6~1.0mol/C6であるものが入手容易性の点と、ぬめり性と崩壊時間の両立の点で好ましく、0.5mol/C6~0.8mol/C6であるものがさらに好ましい。カルボキシメチルセルロースナトリウムを内部架橋させたクロスカルメロースナトリウムや低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む場合であっても本発明の効果は得られるが、崩壊性とぬめり性との両立を図る観点から、セルロース誘導体としては、クロスカルメロースナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース以外のセルロース誘導体であることがより好ましい。
【0039】
デンプンとしては、天然デンプンが挙げられる。デンプンの由来としては、コーン、バレイショ、クズ、タピオカ、カンショ、コメ、ムギ、コムギ、オオムギ、ヤムイモ、タロイモ等が挙げられる。デンプンを配合する場合、特に、糖アルコールと組み合わせて配合することが、崩壊性とぬめり性との両立を図る点で好ましい。
【0040】
デンプン誘導体としては、化工デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、α化デンプン、リン酸デンプン、リン酸ジデンプン、酢酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、グリセロールジデンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、橋架デンプン、溶性デンプン、グラフト化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられ、α化デンプンがぬめり性と崩壊時間の両立の点で好ましい。デンプン誘導体を配合する場合、特に、糖アルコールと組み合わせて配合することが、崩壊性とぬめり性との両立を図る点で好ましい。なお、カルボキシメチルスターチナトリウムを含む場合であっても本発明の効果は得られるが、崩壊性とぬめり性との両立を図る観点から、デンプン誘導体としては、カルボキシメチルスターチナトリウム以外のデンプン誘導体であることがより好ましい。
【0041】
デンプン分解物としては、デキストリンが挙げられ、DEが8~9.5のものが好ましく挙げられる。
【0042】
固形製剤中の特定の賦形剤の含有量は、裸錠中のゲル化剤100質量部に対し、10質量部以上であることが、ゲル化剤と特定の賦形剤とを併用させる効果をより一層高いものとする点から好ましく、裸錠中のゲル化剤100質量部に対し、特定の賦形剤の量が3000質量部以下であることが、有効成分の含有量を高める点から好ましい。これらの点から、固形製剤中のゲル化剤100質量部に対し、固形製剤中の特定の賦形剤の量が10質量部以上3000質量部以下であることが好ましく、20質量部以上2500質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上2000質量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
また固形製剤100質量部に対し、賦形剤の量は、好ましくは1質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上80質量部以下であり、最も好ましくは3質量部以上70質量部以下であることも好ましい。特に、崩壊性の点から、特定の賦形剤は、固形製剤中、40質量%以上を占めることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であってもよい。また、特定の賦形剤の量の上限としては固形製剤中、95質量%以下であることがゲル化剤を含有する点で好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明における固形製剤は、特定の賦形剤の中でも、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デンプン誘導体(特にα化デンプン)及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上を含有することが、ぬめり性が高いことから好ましく、単糖類、二糖類、オリゴ糖又はデンプン分解物を含有することがさらに好ましい。
【0045】
特に、固形製剤は特定の賦形剤として、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール、結晶セルロース又はセルロース誘導体(特にカルボキシメチルセルロース)を含有することが、ぬめり性に加えて崩壊性に優れる観点から好ましく、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール又はカルボキシメチルセルロースを含有することがさらに好ましい。
また、糖アルコール、二糖類を含有することは、固形製剤の原料粉末の結着性を高め、固形製剤が錠剤である場合、打錠した錠剤の硬度が得られるなどの製剤のしやすさや、有効成分の不快味のマスキング効果が得られる点でも好ましい。
【0046】
単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール、結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースは、特定の賦形剤中の主成分、具体的には、特定の賦形剤中の50質量%以上を占める成分として含有されていることが最も好ましい。
【0047】
また、固形製剤は、特定の賦形剤として、二糖類と、オリゴ糖、糖アルコール、セルロース誘導体、デンプン及びデンプン分解物から選ばれる1種以上とを組み合わせて含むことが、崩壊性とぬめりの向上の点から好ましく、特に、二糖類と、オリゴ糖又はセルロース誘導体との組み合わせが好ましい。裸錠は、特定の賦形剤として、二糖類と、他の特定の賦形剤とを組み合わせて含有する場合は、ぬめり性と崩壊性の両立の観点から、二糖類100質量部に対して、他の特定の賦形剤が1質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以上100質量部以下であることが特に好ましい。
【0048】
また、固形製剤は、特定の賦形剤として、糖アルコールと、デンプン又はα化デンプンとを組み合わせて含むことが、崩壊性とぬめりの向上の点から好ましい。固形製剤は、特定の賦形剤として、糖アルコールと、デンプン又はα化デンプンとを組み合わせて含有する場合は、ぬめり性と崩壊性の両立の観点から、糖アルコール100質量部に対して、デンプン又はα化デンプンが10質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上700質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以上500質量部以下であることが特に好ましい。
【0049】
本実施形態ではデンプン、デンプン誘導体若しくはデンプン分解物を含有し、これをキサンタンガム、ローカストビーンガム及びグァーガム並びにこれらの塩及び誘導体、特にローカストビーンガムと組み合わせることが、硬度とゲル化の程度とのバランスがよい嚥下が容易な固形製剤をより一層得やすい点で好ましい。
また後述するように表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を非含有である条件の下、糖アルコールを、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びグァーガム並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる少なくとも1種と組み合わせることも、硬度や飲みやすさと滑りやすさに優れ、嚥下が容易な固形製剤をより一層得やすい点で好ましい。また後述するようにゲル化剤の被覆層を非含有である条件の下、デンプンとキサンタンガム、ローカストビーンガム又はグァーガム並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる少なくとも1種以上から構成されるゲル化剤と還元麦芽糖を含む固形製剤であることも好ましい。
【0050】
固形製剤は最表面部に特定の賦形剤を含有することが好ましく、さらに固形製剤が裸錠を有する錠剤である場合は、中心部にも特定の賦形剤を含有することが好ましい。
【0051】
3.その他の成分
固形製剤は、流動性改善剤として二酸化ケイ素等を含有することが好ましい。二酸化ケイ素としては、微粒二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸が挙げられる。二酸化ケイ素を含有する場合、固形製剤100質量部に対し、二酸化ケイ素の量は、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.8質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上1.7質量部以下であり、最も好ましくは1質量部以上1.5質量部以下である。
【0052】
固形製剤は、滑沢剤を含有することが、製造性の向上(打錠時の杵つき防止)の点で好ましい。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。滑沢剤を含有する場合、その割合は、本発明の固形製剤中、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
固形製剤は、有効成分を含有してもよい。ここでいう有効成分は、薬剤であってもよく、薬剤以外の機能性成分や植物又は動物、微生物由来の処理物等であってもよい。固形製剤は、前記の有効成分、特定の賦形剤、二酸化ケイ素、崩壊剤、滑沢剤、糖類のほか、結合剤、糖類以外の調味料、乳化剤、香料などを含有し得る。また本実施形態の固形製剤は経口用、つまり内服用であり、嚥下用錠剤である。本実施形態の固形製剤は、サプリメント、健康食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、及び医薬品として用いても良いことは言うまでもない。
【0054】
本実施形態の固形製剤は、最表面部に糖類以外の調味料及び/又は香料を含有することで、固形製剤を口腔内に含んだときに唾液の分泌を促進させ、当該固形製剤への水等の液媒の供給を増すことができる。当該調味料としては、甘味料や、酸味料等を用いることができる。甘味料としては、スクラロースの蔗糖誘導体、アスパルテーム、アリテーム、ネオテーム、グリチルリチン等のペプチド系甘味料、ステビア、カンゾウ等を用いることができる。酸味料としては、有機酸を用いることができ、その例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。香料としてはグレープフルーツフレーバー、レモンフレーバー、オレンジフレーバー等の柑橘系フレーバーのほか、果実類のフレーバー等を用いることができる。
【0055】
本実施形態に係る固形製剤は、崩壊剤を含有してもよい。崩壊剤としては、例えば、食品添加物として使用可能な、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸マグネシウム、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム等や、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。崩壊剤を含む場合であっても本発明の効果は発揮されるが、ぬめり性に優れる観点から、崩壊剤の含有量は少ない方が好ましく、具体的には、固形製剤100重量部に対し、崩壊剤の配合量は、9.9重量部以下が好ましく、9重量部以下がより好ましく、6重量部以下がさらに好ましく、3重量部以下がよりさらに好ましく、1重量部以下が特に好ましく、非含有であることが最も好ましい。
【0056】
前記崩壊剤の中でも、ぬめり性に優れる観点から、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの中から選ばれる1種以上の崩壊剤(以下これらを特定の崩壊剤ともいう)の含有量は少ない方が好ましい。具体的には、固形製剤100重量部に対し、崩壊剤の配合量は、9.9重量部以下が好ましく、9重量部以下がより好ましく、6重量部以下がさらに好ましく、3重量部以下がよりさらに好ましく、1重量部以下が極めて好ましく、非含有であることが最も好ましい。なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとは、高温で酸化プロピレンとアルカリセルロースを反応させて製造されたものであり、105℃、1時間乾燥したものはヒドロキシプロピル基を5.0~16.0%含むものを意味する。
【0057】
本実施形態に係る固形製剤は、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を含有してもよい。表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を含む場合であっても本発明の効果は発揮されるが、崩壊性に優れる観点から、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子の含有量は少ない方が好ましく、固形製剤100重量部に対し、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子の配合量は、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましく、1重量部以下がよりさらに好ましく、非含有であることが最も好ましい。表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子は、糖アルコールを含む粒子にゲル化剤を噴霧することなどにより形成される。本発明においては、固形製剤中に、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を含有せず、ゲル化剤と特定の賦形剤とが均一に混合された状態とすることによって、崩壊時間をより短いものとしやすくなる。
【0058】
表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を非含有であることは、例えば、固形製剤中のゲル化剤の分布をTOF-SIMSなどの断面イメージングで調べることで確認することができる。この際、ゲル化剤が局所的に集中して存在する層が観察されずに、ゲル化剤が固形製剤中に均一に分散していれば、本発明の固形製剤は、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を非含有であるといえる。
【0059】
固形製剤としては嚥下しやすさを考慮して、例えば円盤型の錠剤である場合は、1粒の重量は100mg以上500mg以下が好ましく、120mg以上450mg以下がより好ましく、150mg以上400mg以下が最も好ましい。直径は5mm以上12mm以下が好ましく、5.5mm以上11mm以下がより好ましく、6mm以上10mm以下が最も好ましい。厚みは2mm以上10mm以下が好ましく、2.5mm以上9mm以下がより好ましく、3mm以上8mm以下が最も好ましい。硬度は3kgf以上20kgf以下が好ましく、4kgf以上18kgf以下がより好ましく、5kgf以上16kgf以下が最も好ましい。直径、厚み、硬度は後述する方法にて測定できる。
【0060】
以下、本実施形態の固形製剤の好適な製造方法についてさらに説明する。
本実施形態の製造方法は、ゲル化剤と、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体及びデンプン分解物から選ばれる1種以上(特定の賦形剤)とを含む原料粉末を打錠するものであり、この方法により錠剤、特に裸錠を有する錠剤を製造することが好ましい。
ゲル化剤、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体及びデンプン分解物としては上述したものが挙げられる。またゲル化剤及び特定の賦形剤を含む粉末におけるゲル化剤及び特定の賦形剤以外の成分としては、上記に挙げた賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、乳化剤、有効成分、調味料、香料等が挙げられる。原料粉末におけるゲル化剤の質量割合の好ましい範囲や、好ましいゲル化剤成分の好ましい質量割合、並びに特定の賦形剤の好ましい質量割合や、二酸化ケイ素、崩壊剤、滑沢剤の好ましい質量割合は、前述した固形製剤中におけるこれらの好ましい質量割合と同様である。
【0061】
また上述したように、錠剤が有核の場合には、原料粉末として、任意の核を含む原料粉末が打錠される。
【0062】
ゲル化剤及び特定の賦形剤を含む原料粉末は、粉末状のゲル化剤と粉末状の特定の賦形剤と必要に応じて含まれる粉末状のその他成分との混合物そのものであってもよく、或いは、粉末状のゲル化剤と粉末状の特定の賦形剤と必要に応じて含まれる粉末状のその他成分との混合物を造粒して得られる造粒粉末であってもよい。
造粒方法としては、経口用の錠剤を顆粒打錠法で製造する際に用いられる公知の造粒方法を特に限定なく使用できる。
【0063】
本実施形態の固形製剤の好適な製造方法は、好ましくは、ゲル化剤の粉末と、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上の粉末とを混合する工程、及び、得られた混合粉末を、ゲル化剤を溶解した水溶液を噴霧せずに打錠する工程を含む。これは上述した通り、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を打錠することにより得られる固形製剤に比して、そのような被覆層を有さずゲル化剤が特定の賦形剤と均一に混合された固形製剤、特に裸錠である方が、崩壊性及びぬめり性、特に崩壊性の点で優れるためである。
【0064】
上記の通り、本実施形態の固形製剤は、ゲル化剤及び特定の賦形剤を含む混合粉末の打錠物、特に当該混合粉末をゲル化剤を含む水溶液を噴霧せずに得られた当該混合粉末を打錠された打錠物であることが、その表面部全体にゲル化剤が存在する固形製剤を容易に得られるため好ましい。「ゲル化剤及び特定の賦形剤を含む混合粉末の打錠物」及び「ゲル化剤を含む水溶液を噴霧せずに混合粉末(ゲル化剤及び特定の賦形剤を含む)を得て、当該混合粉末を打錠した打錠物」の表現に製造方法が含まれていたとしても、裸錠中におけるゲル化剤や特定の賦形剤の存在形態を本明細書で記載する内容よりもさらに詳細に特定することには現実的ではなく、このような表現をとらざるを得ない不可能事情が存在した。
【0065】
本実施形態の固形製剤は、経口摂取する固形製剤であって、水性液と接触することで表面の潤滑性が増すようになされている。特に前述したように固形製剤が裸錠を有する錠剤である場合、前述したように裸錠がゲル化剤を含有することにより、保管時はゲル化剤を含まない裸錠を有する錠剤と変わらない堅い性状であるが、服用時に水等の液媒と接することによりその表面がゲル化してぬめり感や、柔軟性及び弾力性を有し、嚥下しやすいものとなる。また、水等の液媒と接した場合に裸錠部分の形状は保持され、裸錠部分に存在する有効成分等が口腔内で溶け出すことは抑制される。このように、本実施形態の固形製剤は、水等の液媒で膨潤して裸錠の表面にぬめり感を生じさせる特徴を有する。
【0066】
上述した通り、本発明の錠剤の好ましい形態としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0067】
(1)ゲル化剤と、
糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体及びデンプン分解物から選ばれる1種以上と
を含む裸錠を有する錠剤。
【0068】
(2)前記裸錠が、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖及びデンプン分解物から選ばれる1種以上を含む、(1)に記載の錠剤。
【0069】
(3)前記ゲル化剤が、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、マンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、寒天、アルギン酸、タマリンドガム、サイリウムシードガム、タラガム、カラギーナン、アカシアガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ジェランガム(脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランラム)、ペクチン、及び大豆多糖類等の多糖類;ゼラチン、コラーゲン等の蛋白質分解物;ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸;ポリ乳酸、ポリグルタミン酸等のバイオポリマー、並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の錠剤。
【0070】
(4)ゲル化剤を溶解した水溶液を噴霧することによって造粒した粒子を打錠することによって得られた錠剤を除く、(1)―(3)の何れか1の錠剤。
【0071】
(5)クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むものを除く、(1)―(4)の何れか1の錠剤。
【0072】
(6)ゲル化剤と、
単糖類、二糖類、オリゴ糖、α化デンプン及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上を含む裸錠を有する、(1)―(5)の何れか1の錠剤。
【0073】
(7)ローカストビーンガム、マンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、寒天、タマリンドガム、サイリウムシードガム、タラガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ジェランガム、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる1種以上と、
単糖類、二糖類、オリゴ糖、α化デンプン及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上とを含む裸錠を有する、(1)―(6)の何れか1の錠剤。
【0074】
(8)ローカストビーンガム、マンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、寒天、タマリンドガム、サイリウムシードガム、タラガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ジェランガム、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、並びにこれらの塩及び誘導体から選ばれる1種以上と、
キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸、カラギーナンから選ばれる1種以上と、
単糖類、二糖類、オリゴ糖、α化デンプン及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上とを含む裸錠を有する、(1)―(7)の何れか1の錠剤。
【0075】
(9)ゲル化剤と、
二糖類と、
オリゴ糖、糖アルコール、セルロース誘導体、デンプン、デンプン分解物から選ばれる1種以上とを含む裸錠を有する(1)―(8)の何れか1の錠剤。
【0076】
(10)ゲル化剤と、
糖アルコールと、
デンプン、α化デンプンから選ばれる1種以上とを含み、
ゲル化剤の被覆層を非含有である、(1)―(9)の何れか1の錠剤。
【実施例
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし本発明の範囲は係る実施例に限定されない。なお、表1-3に記載の材料としては、それぞれ市販の製品を用いた。特にイソマルトオリゴ糖としては、昭和産業株式会社製イソマルト900Pを用いた。また結晶セルロースとしては、日本製紙株式会社製KCフロックW-400Gを用いた。カルボキシメチルセルロースとしては、エーテル化度が0.5~0.7mol/C6のカルボキシメチルセルロースカルシウムを用いた。デンプン粉末としては、フロイント産業株式会社製パーフィラー102を用いた。α化デンプンとしては、三和澱粉工業株式会社製NON-GMOコーンアルファ-Yを用いた。デキストリンとしては、松谷化学工業株式会社製マックス1000を用いた。
【0078】
1.ぬめり性の評価
〔実施例1〕
原料粉末として、表1の配合比に従い、400粒分の各種原料(ステアリン酸カルシウムを除く)をビニール袋内で混合した後、篩を通し、さらにステアリン酸カルシウムを添加、混合した。この混合粉末をロータリー打錠機(菊水製作所)で直接打錠して、円盤型の裸錠を得た。得られた裸錠の硬度をシュロイニゲル錠剤硬度計で測定した。また、得られた裸錠の錠径(直径)、錠厚をデジタルノギス(デジマチックキャリパCD-15AX;ミツトヨ)で測定したところ、硬度7.4kgf、錠径10mm、錠厚3.52mmであった。また、得られた裸錠1粒の重量を測定したところ、270mgであった。なお、硬度、錠径、錠厚及び重量は、3粒それぞれの測定値の平均値である。
【0079】
〔実施例2〕
表1の配合比に従い、原料粉末の配合比率を変更した以外は、実施例1と同様にして裸錠を得た。得られた裸錠について実施例1と同様の測定を行ったところ、硬度7.7kgf、錠径10mm、錠厚3.50mm、重量270mgであった。
【0080】
〔実施例1及び2の評価〕
実施例1及び2で得られた裸錠について、服用時の喉の筋電位測定と服用感アンケートとを単盲検クロスオーバーにて実施した。
また、錠剤の滑りやすさを評価するため斜面滑落時間を測定した。
【0081】
・裸錠の服用方法
被験者は錠剤を飲むのが苦手との自覚がある健常な成人6名を選出した(男女比は2:4)。服用方法は、まず対象となる裸錠4粒を口に含んだ後に22℃の水20mLを口に含み、裸錠を水と一緒に服用することとした。
【0082】
・筋電位測定
筋電位測定は、筋電計(AM科学株式会社製ワイヤレス筋電計測・分析システム「Lateo」)を用いた。測定方法は筋電計に付属のマニュアルに従ったが、具体的には、以下の通りに行った。筋電計の電極を喉に装着し、喉を馴化させるため、裸錠を服用する際と同量の水20mLを被験者に服用させた。次に、水20mLを服用した際の喉の筋電位を測定した。その後、裸錠4粒を口に含んだ後に、水20mLで服用した際の喉の筋電位を各試験区についてそれぞれ測定した。筋肉活動量は得られた筋電位(単位ボルト(V))に基づいて算出された積分値から、水のみを服用したときの筋肉活動量を100(%)とした時の相対値を求めた。一人当たり1回の相対値を合算し、人数で割った値を、筋肉活動量(%)とした。なお、図1図3において1Countは1/200秒である。
なお、各試験区の測定は、約5分の休息時間を空けて行い、裸錠を服用する順番は被験者ごとに変更した。
【0083】
・アンケート
滑りやすさは、錠剤を服用した際に引っかかり、喉を進んでいかない程度に滑りが無く飲みにくい場合を最低評価(-3点)とし、喉への摩擦が感じられず、喉に引っかかることが無い程度に滑りやすく飲みやすい場合を最高評価(3点)とする7段階で評価させた。
べたつきは、舌や咽頭部で付着を感じる程度にべたついて飲みにくい場合を最低評価(-3点)とし、舌や咽頭部で付着せず、ぬめりだけを感じる程度にべたつきが無く飲みやすい場合を最高評価(3点)とする7段階で評価させた。
【0084】
・斜面滑落時間
30°に傾斜させて固定した断面U字状のアルミチャンネル(側面視で直線状、チャンネル長さ90cm、幅1.2cm)に、チャンネル上部から毎分150mlの水を供給した。この状態で、チャンネルの上端部より10cm下の位置から裸錠1粒を滑らせて流し、下端部までの80cmを滑走するのに要した時間(秒)を測定した。試験は5回行い、5回の平均値を算出し、斜面滑落時間(秒)とした。
【0085】
筋電位測定により得られた喉の筋肉活動量(%)を表1に示し、代表的な筋電図を図2図4に示す。
アンケートにより得られた評価点について6人の平均値及び斜面滑落時間(秒)の測定結果を表1に示す。なお、表1において、裸錠の組成の単位は質量部である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1及び図2図4から明らかな通り、実施例1及び2の裸錠は、水のみを服用した場合と比較して、喉の筋肉活動量は1.5倍程度の増加に抑えられており、服用する際に力がいらず、嚥下ストレスを感じ難く、嚥下しやすい裸錠となっている。アンケートでも滑りやすさを感じつつも、舌や咽頭部で裸錠がべとついて付着することなく、嚥下しやすいものとなっていることが分かる。
なお、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合した裸錠では、実施例1又は2に比べると滑りやすさ及びべたつきにくさが低下する。
【0088】
また、斜面滑落時間を比較すると、表1に示す通り、実施例1、2は2秒以下で滑り落ちることからも、実施例の裸錠は水と接触することにより滑りやすくなるため、嚥下しやすいものとなっていることがわかる。
なお、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合した裸錠は、実施例1又は2に比べると斜面滑落性が低下する。
【0089】
以上より、ゲル化剤と、特定の賦形剤(糖アルコール、α化デンプン)を含有する裸錠の場合、錠剤を飲むのが苦手な人でも、抵抗が少なく容易に服用できることが可能となった。
【0090】
2.崩壊性の評価
〔実施例3~6〕
下記表1の配合比に従い、硬度を9kgfに、錠径9mm、錠厚4.81~5.08mm(実施例3は4.81mm、実施例4及び6は4.89mm、実施例5は5.08mm)に、重量を300mgに変更した以外は、実施例1と同様にして裸錠を得た。
下記の方法により、得られた裸錠について崩壊時間の測定を行った。結果を表2に示す。
【0091】
・崩壊時間
第十五改正日本薬局方における項目「6.09」の「崩壊試験法」に記載の方法で、崩壊試験器(富山産業株式会社、型番:NT-40H)を用いて、n=6で崩壊時間を測定した。なお、溶液は水を用いた。
【0092】
表2の組成における単位は質量部である。
【0093】
【表2】
【0094】
表2から明らかな通り、ゲル化剤と特定の崩壊剤(糖アルコール、セルロース、セルロース誘導体、デンプン)を配合した裸錠は、崩壊時間が短いことが分かった。また、特定の崩壊剤(クロスポビドン)を配合した場合であっても、配合しない場合と比べて崩壊時間は2割程度短縮するに留まった。
【0095】
3.ぬめり性及び崩壊時間の評価
〔実施例7~14、16~21、比較例1〕
下記表3の配合比に従い、実施例1と同様にして、裸錠を得た。得られた実施例7~14、16~21、比較例1の裸錠は、硬度、錠径、錠厚ともに実施例3~5と同程度であり、重量300mgであった。
【0096】
〔実施例15〕
ソルビトール57.1質量部、マルトース30.0質量部を流動層造粒機(流動層造粒乾燥・コーティング機 型式:FD-LAB-1型、パウレック社)に投入し、結晶セルロースの懸濁液を噴霧後、さらに、キサンタンガムを熱水で希釈し0.1%(w/v)にした懸濁液を噴霧することによって造粒し、ソルビトール及びマルトースの混合粉末からなる粒子表面にキサンタンガムの被覆層が形成された粒子組成物(表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子)を得た。
得られた粒子組成物に、ステアリン酸カルシウム0.5質量部を混合後、ロータリー打錠機(菊水製作所)を用いて打錠し、硬度、錠径、錠厚ともに実施例3~5と同程度であり、重量300mgの裸錠を得た。裸錠中の結晶セルロース及びキサンタンガムの量は、表1に示す量であった。
【0097】
実施例7~21、比較例1で得られた裸錠について、実施例3~6と同様の方法により、崩壊時間の測定を行った。結果を表3に示す。
【0098】
さらに、下記方法にて、実施例7~21、比較例1で得られた裸錠について最大応力を測定した。
【0099】
<最大応力の測定手順>
裸錠をプラスチック製の基板上に静置し、裸錠の表面積1mm2あたり、25℃の水0.2μLをスポイトで滴下し、その状態で15秒間保持した。
長手方向が上下方向と一致するように上下方向に沿って配置され且つ上下方向に移動可能に固定された内径9mm、外径11mmのシリコンチューブと、該シリコンチューブを左右方向に挟んだ状態で固定された一対のスリットとを用い、該シリコンチューブにおける該スリットの下側に、前記裸錠(錠径9mm)を1粒充填した。該シリコンチューブを該スリットに沿って、該裸錠に対して上方に速度0.5mm/秒で20mm移動させた時の最大応力を株式会社 山電製クリープメータ(RE2-33005C)を用いて測定した。測定に用いたシリコンチューブの断面積は、裸錠の断面積の50%であった。応力が20を超えた場合にはその時点で測定を終えた。シリコンチューブとしては、扶桑ゴム産業社製クリアシリコーン角チューブを用いた。スリットとしては、株式会社 山電製の特殊円柱押出治具(AT-43446)を用い、これを互いの最小間隔が2mmとなる位置に固定させた。
最大応力は3連の平均値として求めた。
【0100】
表3の組成における単位は質量部である。
【表3】
【0101】
表3における実施例7~21と比較例1との比較から判る通り、特定の賦形剤のみを含みゲル化剤を非含有である比較例1の裸錠に対して、ゲル化剤及び特定の賦形剤を含む実施例7~21の裸錠では、最大応力が大きく低下する。
また、実施例7~14の結果から、特定の賦形剤の中でも、単糖類、二糖類、オリゴ糖又はデンプン分解物を含む裸錠の場合、最大応力が特に低いことが判る。
【0102】
さらに、実施例15及び16の比較から、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を打錠して得られた裸錠に比べて、糖アルコールをゲル化剤と混合して打錠した裸錠は、崩壊時間が短くなり、最大応力が低くなることが判る。
【0103】
なお、表面がゲル化剤によって被覆された糖アルコール及びゲル化剤を含む粒子を打錠して得られた裸錠に比べて、糖アルコールをゲル化剤と混合して打錠した裸錠の崩壊時間が短くなり、最大応力が低くなる傾向は、糖アルコールとしてソルビトールを用いた場合のみではなく、ソルビトール以外の糖アルコール(エリスリトールやマンニトール等)についても認められる。
【0104】
また、実施例17~21の結果から、ゲル化剤としてローカストビーンガムを用いた場合、特に崩壊時間が短くなり、最大応力が低くなることから、崩壊性とぬめり性との両立を図る観点において、ゲル化剤の中でもローカストビーンガムが特に優れていることが判る。
【0105】
実施例1と同様にして、以下の裸錠(処方例1~41)を製造した。いずれの裸錠も、ぬめり性、崩壊性に優れたものであった。特に、二種以上のゲル化剤を組み合わせた裸錠、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デンプン誘導体及びデンプン分解物の中から選ばれる1種以上を含有する裸錠、特定の賦形剤のうち異なる区分に属する成分を2以上組みあわせて含む裸錠、二糖類と、オリゴ糖、糖アルコール、セルロース誘導体、デンプン及びデンプン分解物から選ばれる1種以上とを組み合わせた裸錠は、優れたぬめり性、崩壊性に優れていた。また、処方例1~41で作成した裸錠にショ糖をまぶし、錠剤の表面積に占めるコーティング層によって被覆される割合が20%以上30%未満となるように調製(水を用いてショ糖を付着させることにより割合を調製)した裸錠を有する錠剤についても、ぬめり性、崩壊性に優れたものであった。同様に、錠剤の表面積に占めるコーティング層によって被覆される割合が5%以上10%未満となるように調製した裸錠についても、ぬめり性、崩壊性に優れたものであった。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
処方例42
内容液(サフラワー油95質量%、ミツロウ5質量%)を調製し、グリセリン16.4質量%、精製水36.8質量%、ゼラチン43.3質量%及びカラメル色素3.5質量%の割合で含むカプセル皮膜(乾燥前の重量)に充填することでソフトカプセルとした。カプセル化は、カプセル皮膜液を流延しフィルム化すると共に、内部に内容液を充填しヒートシールし、成形されたソフトカプセルを乾燥させることによって行った(1粒あたり300mg)。ソフトカプセル1粒に対して、ローカストビーンガム(粉末)の重量が5mgとなるように、ソフトカプセルとローカストビーンガムを混合し、ローカストビーンガムを付着させた。この工程により、表面の一部にゲル化剤が付着したソフトカプセルを得た。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の固形製剤は、嚥下しやすく、表面全体のコーティングを行う必要がないため、コーティングによる大型化を避けることができ、また、コーティングを行わないことにより製造コストを低減することができる。また、摂取後における崩壊しやすさにも優れている。従って、本発明の固形製剤は、サプリメント、健康食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、及び医薬品等として使用や製造することができ、有用であることは明らかである。
図1
図2
図3
図4