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  • 特許-導管接触器及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】導管接触器及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 14/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B01J14/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022514671
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2019050795
(87)【国際公開番号】W WO2021045790
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】16/562,096
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522084049
【氏名又は名称】ケムター、エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】デービス、スコット ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】フチガミ、ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ラニエ、ウィリアム
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-014920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112093(US,A1)
【文献】特開平10-128002(JP,A)
【文献】特開昭63-162039(JP,A)
【文献】中国実用新案第205109606(CN,U)
【文献】米国特許第03758404(US,A)
【文献】米国特許第03839487(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0282292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 14/00
B01D 11/04
B01F 25/30-25/46
C02F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を行うための導管接触器であって、前記導管接触器は、
中空内部、第1の開放端、および前記第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管と、
前記第2の開放端と流体連通し、かつ近接している分離器と、および、
前記導管内に配置された複数の繊維と
を有し、
前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、150cm/cm435cm/cmである、導管接触器。
【請求項2】
請求項1記載の導管接触器において、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、180cm/cm400cm/cmである、導管接触器。
【請求項3】
請求項1記載の導管接触器において、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、200cm/cm400cm/cmである、導管接触器。
【請求項4】
請求項1記載の導管接触器において、前記導管と前記繊維の長さは、0.25m~10mである、導管接触器。
【請求項5】
請求項1記載の導管接触器において、前記導管の前記中空内部の平均直径は、0.5cm~3mである、導管接触器。
【請求項6】
請求項1記載の導管接触器において、前記繊維の平均直径は、5μm~150μmである、導管接触器。
【請求項7】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を行う方法であって、前記方法は、
導管接触器を提供する工程であって、前記導管接触器は、
中空内部、第1の開放端、および前記第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管と、
前記第2の開放端と流体連通し、かつ近接している分離器と、および、
前記導管内に配置された複数の繊維と、
を有し、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、150cm/cm435cm/cmである、提供する工程と、
前記導管内および前記繊維上に第1の液体を導入する工程と、
第2の液体と前記第1の液体が接触するように、前記第2の液体を前記導管内に導入する工程であって、前記第2の液体は、前記第1の液体と非混和性である、導入する工程と、
(i)前記第1の液体から前記第2の液体へ少なくとも1つの成分を抽出する工程、(ii)前記第2の液体から前記第1の液体へ少なくとも1つの成分を抽出する工程、または、(iii)前記第1の液体からの少なくとも1つの成分と前記第2の液体からの少なくとも1つの成分とを反応させる工程と、および、
前記第1および前記第2の液体を前記分離器内に受ける工程と
を有する、方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、180cm/cm400cm/cmである、方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、200cm/cm400cm/cmである、方法。
【請求項10】
請求項7記載の方法であって、前記第1の液体を導入する前に、前記導管接触器を15℃~100℃の温度に予熱する工程をさらに有する、方法。
【請求項11】
請求項7記載の方法において、前記導管と前記繊維の長さは、0.25m~10mである、方法。
【請求項12】
請求項7記載の方法において、前記導管の前記中空内部の平均直径は、0.5cm~3mである、方法。
【請求項13】
請求項7記載の方法において、前記繊維の平均直径は、5μm~150μmである、方法。
【請求項14】
請求項7記載の方法において、前記第1の液体は、第1の速度で導入され、前記第2の液体は、第2の速度で導入され、前記第1の速度と前記第2の速度との比は2:1~1:10である、方法。
【請求項15】
請求項7記載の方法において、前記第1の液体は、第1の速度で導入され、前記第2の液体は、第2の速度で導入され、前記第1の速度と前記第2の速度の比は1:1~3:1である、方法。
【請求項16】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を促進するためのシステムであって、前記システムは、
中空内部、第1の開放端、および第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管と、
前記第2の開放端と流体連通し、かつ第2の開放端に近接している分離器と、
前記導管内に配置された複数の繊維であって、
前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、150cm/cm435cm/cmである、繊維と、
第1の液体を前記導管内および前記繊維上に導入するための第1の液体供給部と、および、
第2の液体を、前記第2の液体が前記第1の液体と接触するように前記導管内に導入するための第2の液体供給部であって、
前記第1の液体と前記第2の液体は非混和性である、第2の液体供給部と
を有する、システム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、180cm/cm400cm/cmである、システム。
【請求項18】
請求項16記載のシステムにおいて、前記導管の前記中空内部の体積あたりの前記繊維の総表面積は、200cm/cm400cm/cmである、システム。
【請求項19】
請求項16記載のシステムにおいて、前記第1の液体供給部は、第1の速度で前記導管内に前記第1の液体を導入するように構成され、前記第2の液体供給部は、第2の速度で前記導管内に前記第2の液体を導入するように構成され、前記第1の速度と前記第2の速度との比は2:1~1:10である、システム。
【請求項20】
請求項16記載のシステムにおいて、前記第1の液体供給部は、第1の速度で前記導管内に前記第1の液体を導入するように構成され、前記第2の液体供給部は、第2の速度で前記導管内に前記第2の液体を導入するように構成され、前記第1の速度と前記第2の速度の比は1:1~3:1である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、非混和性液体間の化学反応および/または化学抽出を促進するための導管接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水相と有機相のような非混和性液体を反応させる一つの方法は、一方の相を他方の相に分散させ、物質移動と反応が起こる大きな表面積を持つ小さな液滴を生成する工程を含む。反応物を混合した後、相を分離することは、製品の純度や品質のために必要である。しかし、分散法を用いる場合、相の分離が難しく、時間がかかることがある。
【0003】
繊維反応器または導管接触器を用いる代替方法が採用されており、導管内に配置された繊維またはフィルムは、非混和性液体の撹拌および結果として生じる分離が困難な分散液/エマルションの形成を回避しながら、非混和性液体間の反応を促進するために増加した表面積を提供する。導管接触器の例は、米国特許第7,618,544号および第8,128,825号に記載されており、その両方がその全体として本明細書に組み込まれる。
【0004】
しかし、導管接触器は一般的に構築および維持に費用がかかり、この費用の大部分は、物質移動または反応のために表面積を増やすために使用される繊維またはフィルムに関連するものである。そのため、効率的で費用対効果の高い接触器が依然として必要とされている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第5,904,849号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2017/0014733号明細書
(特許文献3) 米国特許第3,839,487号明細書
(特許文献4) 米国特許第6,550,960号明細書
(特許文献5) 米国特許第3,754,377号明細書
(特許文献6) 米国特許第3,758,404号明細書
(特許文献7) 米国特許第3,977,829号明細書
(特許文献8) 米国特許第3,989,466号明細書
(特許文献9) 米国特許第3,992,156号明細書
(特許文献10) 米国特許第4,491,565号明細書
(特許文献11) 米国特許第4,551,252号明細書
(特許文献12) 米国特許第4,753,722号明細書
(特許文献13) 米国特許第5,354,482号明細書
(特許文献14) 米国特許第5,395,517号明細書
(特許文献15) 米国特許第5,961,819号明細書
(特許文献16) 米国特許第5,997,731号明細書
(特許文献17) 米国特許出願公開第2006/0231490号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2019/0247769号明細書
(特許文献19) 中国特許出願公開第105885937号明細書
(特許文献20) 中国実用新案第205676427号明細書
(特許文献21) 中国特許出願公開第107043636号明細書
(特許文献22) 中国実用新案第207143179号明細書
(特許文献23) 中国特許出願公開第108410501号明細書
(特許文献24) 欧州特許出願公開第0203574号明細書
(特許文献25) 国際公開第85/04894号
(特許文献26) 国際公開第94/08708号
(特許文献27) 国際公開第98/22395号
(特許文献28) 国際公開第2005/056727号
(特許文献29) 国際公開第2005/056728号
(特許文献30) 国際公開第2006/083427号
(特許文献31) 国際公開第2008/156537号
(特許文献32) 国際公開第2009/035480号
(特許文献33) 国際公開第2011/044552号
(特許文献34) 国際公開第2011/066523号
(特許文献35) 国際公開第2012/018657号
(特許文献36) 国際公開第2012/030880号
(特許文献37) 国際公開第2012/066572号
(特許文献38) 国際公開第2012/067988号
(特許文献39) 国際公開第2012/106290号
(特許文献40) 国際公開第2013/131094号
(特許文献41) 国際公開第2013/177057号
(特許文献42) 国際公開第2013/177261号
(特許文献43) 国際公開第2014/011574号
(特許文献44) 国際公開第2014/039350号
(特許文献45) 国際公開第2014/047195号
(特許文献46) 国際公開第2014/085559号
(特許文献47) 国際公開第2014/100454号
(特許文献48) 国際公開第2017/222830号
(非特許文献)
(非特許文献1) (SCHMETZNEEDLES.COM) Thread sizing guide webpage dated 17 July 2017; first and third paragraphs; downloaded on 28 October 2019 from https://web.archive.org/web/20170717042659/https://www.schmetzneedles.com/thread-sizing-guide/
(非特許文献2) International Search Report and Written Opinion for PCT/US19/50795, mailed November 20, 2019, 8 pages.
(非特許文献3) Service Thread "How to estimate a Yarn or Thread size using diameter" (Year: 2021)
(非特許文献4) Minglong "what is proper meaning of 40s/2 and Tex29.5 pf a sewing thread?" (Year: 2021)
(非特許文献5) Schmetzneddles.com (Year: 2019)
(非特許文献6) International Preliminary Report on Patentability for PCT/US19/50795, mailed March 8, 2022, 7 pages.
(非特許文献7) Merichem,"Fiber Film Non-dispersive Hydrocarbon Treating", not dated.
(非特許文献8) Gupta, Yash et al.,"Fibre Film Contactors", Indian Chemical Engineer,2012.
(非特許文献9) Zhang, F. et al.,"Removal of organosulfurs from liquefied petroleum gas in a fiber film contactor using a new formulated solvent", Fuel Processing Technology,2015.
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態によれば、改善された効率および低減された製造コストを有する導管接触器が提供される。従来、導管接触器内の繊維材料の表面積を最大化することで、非混和性液体間のより完全な反応を達成できると考えられていた。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、導管接触器内の繊維材料の量をある程度減らすことにより、導管接触器が、導管接触器に導入された非混和性液体間の化学抽出および/または化学反応をより効率的に促進することができることを見出した。
【0006】
この発見の利用は、そこで使用される繊維材料が総構築費の半分以上を占める可能性があるため、そのような導管接触器の構築および維持の費用に関して大きな利益を提供する。さらに、導管接触器内の繊維材料の減少は、反応液のより大きなスループットや流量を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の図は、本明細書に開示された主題の実施形態を示す。請求された主題は、添付の図と併せて解釈される以下の説明を参照することによって理解することができる。
図1図1は、本明細書に記載のプロセスに有用な導管接触器の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の開示は、多くの異なる実施形態または例を提供する。構成要素および配置の具体例は、本開示を簡略化するために以下に記載される。もちろん、これらは単なる例であり、限定することを意図していない。加えて、本開示は、様々な例において参照数字および/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、簡略化および明確化のためであり、それ自体が、論じた様々な実施形態および/または構成の間の関係を指示するものではない。
【0009】
図1を参照すると、導管接触器は、その長さの一部について導管10内に細長い繊維12の束を有する導管10を含むことができる。繊維12は、ノード15でチューブ14に固定されている。チューブ14は、導管10の一端を超えて延び、チューブ14を通って繊維12上に第1(拘束)相液体をポンプで送る計量ポンプ18と作動上関連している。ノード15の上流で導管10に作動可能に接続されているのは、計量ポンプ22に作動可能に関連している入口パイプ20である。このポンプ22は、第2(連続)相液体を、入口パイプ20を通して導管10に供給し、そこで拘束被覆繊維12の間に絞られる。導管10の下流端には、繊維12の下流端が延びることができる重力分離器または沈殿槽24がある。重力分離器24の上部と作動的に関連するのは、一方の液体の出口のための出口ライン26であり、重力分離器24の下部と作動的に関連するのは、他方の液体の出口のための出口ライン28であり、2つの液体の間に存在する界面30のレベルは、出口ライン28と作動的に関連し、数字34で一般に示される液体レベル制御装置に応答して作用するよう適合したバルブ32で制御される。
【0010】
図1に示す導管接触器は、流体の流れが水平方向に横断するように配置されているが、導管接触器の配置は、それほど限定されない。場合によっては、導管接触器は、ノード15と同様に入口パイプ14および20が装置の上部を占め、沈殿槽24が装置の下部を占めるように配置され得る。例えば、図1に示される導管接触器を、紙面に対して平行に約90°回転させて、入口パイプ14および20、ノード15および沈殿槽24を、記載した上下の位置に配置することができる。このような配置は、接触器を通して流体を推進するのを助けるために、重力の力を利用することができる。さらに他の実施形態では、図1に示される導管接触器は、入口パイプ14および20並びにノード15が装置の下部を占め、沈殿槽24が装置の上部を占めるように、紙面と平行に反対方向に約90°回転させることができる。このような場合、連続相流体の親水性、表面張力、および反発は、流体が上、下、または横に流れているかどうかに関係なく、拘束相流体が繊維に拘束され続け、したがって、重力に対抗する必要なしに、所望の反応および/または抽出に影響を与えるために十分な接触を達成することが可能である。導管接触器のこのような反転配置は、導管接触器で実施され得る他のタイプの流体接触プロセスと同様に、本明細書に記載される抽出プロセスのいずれにも適用可能であることに留意されたい。さらに、導管接触器は、本明細書に記載される抽出プロセスのいずれか、または導管接触器において実行され得る他の任意のプロセスのために、傾斜位置に配置されてもよい(すなわち、導管接触器の側壁は、導管接触器が配置される室の床に対して0°~90°の間の任意の角度で配置されてよい)ことがさらに留意されたい。
【0011】
本開示の方法によれば、第1の抽出剤または反応液は、チューブ14を介して繊維12に導入することができる。第1の液体と非混和性である第2の液体は、入口パイプ20を介して、および繊維12間の空間、または空隙を介して導管10に導入することができる。繊維12は、第2の液体よりも優先的に第1の液体によって濡らされることになる。第1の液体は繊維12上に薄膜を形成し、第2の液体はそこを通って流れる。繊維12上の第1の液体に対する第2の液体の相対的な移動により、第2の液体と第1の液体との間の新しい界面境界が連続的に形成され、その結果、新しい液体が抽出剤と接触させられ、抽出が引き起こされ、加速される。理論にとらわれることなく、第1の液体は、拘束された繊維12上に、第2の液体よりも大きく薄膜を形成し、2つの液体間の相対的な移動を容易にすると考えられている。
【0012】
本開示の方法によれば、第1の液体は、第1の速度で導管10に導入され、第2の液体は、第2の速度で導入される。第1の速度および第2の速度は、互いに同じであっても異なっていてもよく、一定であっても可変であってもよい。1つ以上の実施形態において、第1の速度と第2の速度との比は、2:1~1:10、1:1~5:1、1:1~3:1、または5:3~2:1である。
【0013】
本開示の実施形態によれば、繊維12は、cm/cmで測定される表面積密度(SA密度)が100~490となるように導管10内に配置される。SA密度は、繊維12を含む導管10内の位置における、導管10内の体積1立方センチメートル当たりの繊維12の総表面積を表す。本明細書で参照されるように、繊維12の表面積は、繊維12の任意の表面特徴(例えば、多孔質繊維内の孔)を考慮せずに、平均繊維直径に基づいて計算される。非限定的な例として、実質的に同じ直径を有し、概して導管10のような導管の入口から出口まで直線的に延びる繊維の場合、SA密度は、導管の所定の長さの中央部をとること(例えば、1に等しい長さを導管の断面内部面積で割ったもので、その結果、前記中央部の体積が1cmに等しくなるようなもの)、前記長さにわたる単一の繊維の表面積を計算し、導管内の繊維の総数を掛けて繊維の総表面積とすること、次に、前記総表面積を前記長さにわたる導管の体積で割ることによって決定することができる。他の例として、所定の長さは、導管内の繊維の長さ(すなわち、導管の外側に延びる繊維の長さを含まない)に設定することができる。この概念は、例えば、各直径の繊維の数に基づいて繊維表面積の計算を分離することにより、様々な直径を有する繊維に直接的な方法で適用することができる。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、SA密度は、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、または少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、少なくとも200、少なくとも205、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、または少なくとも245であってよい。いくつかの実施形態によれば、SA密度は、最大で490、最大で485、最大で480、最大で475、最大で470、最大で465、最大で460、最大で455、最大で450、最大で445、最大で440、最大で435、最大で430、最大で425、最大で420、最大で415、最大で410、最大で405、最大で400、最大で395、最大で390、最大で385、最大で380、または、最大で375であってよい。いくつかの実施形態によれば、SA密度は、前述の下限と上限のいずれかの間の範囲であってもよい。
【0015】
本明細書に記載の導管接触器およびプロセスのための繊維材料は、綿、ジュート、絹、処理または未処理の鉱物、金属、金属合金、処理および未処理の炭素同素体、ポリマー、ポリマー混合物、ポリマー複合物、ナノ粒子強化ポリマー、それらの組み合わせ、および耐食性または化学的活性のためのそれらのコーティング繊維であってもよいが、それらに限定されるわけではない。一般に、繊維の種類は、所望の拘束相に適合するように選択される。例えば、親有機性繊維は、実質的に有機である拘束相で使用することができる。この配置は、例えば、繊維に拘束された有機液体を用いて水から有機材料を抽出するために使用することができる。適切な処理または未処理の鉱物には、ガラス、耐アルカリ性ガラス、E-CRガラス、石英、セラミック、玄武岩、それらの組み合わせ、および耐食性または化学活性のためのそれらのコーティングされた繊維が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な金属としては、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、銅、真鍮、鉛、タリウム、ビスマス、インジウム、スズ、亜鉛、コバルト、チタン、タングステン、ニクロム、ジルコニウム、クロム、バナジウム、マンガン、モリブデン、カドミウム、タンタル、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銀、金、プラチナ、パラジウム、イリジウム、これらの合金、およびコーティング金属を含むが、それらに限定されるものではない。
【0016】
適切なポリマーとしては、親水性ポリマー、極性ポリマー、親水性コポリマー、極性コポリマー、疎水性ポリマー/コポリマー、非極性ポリマー/コポリマー、およびそれらの組み合わせ、例えば多糖類、ポリペプチド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリメタクリル酸、官能化ポリスチレン(スルホン化ポリスチレンおよびアミノ化ポリスチレンを含むがこれらに限定されない)、ナイロン、ポリベンズイミダゾール、ポリビニリデンジニトリル、ポリ塩化ビニリデンおよびフッ化物、硫化ポリフェニレン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメラミン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、コポリエチレン-アクリル酸、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリエチレン、ポリクロロエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリフェノール-ホルムアルデヒド、ポリ尿素-ホルムアルデヒド、ポリノボラック、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリエポキシ、ポリエポキシビニルエステル、ポリエポキシノボラックビニルエステル、ポリイミド、ポリシアヌレート、シリコーン、液晶ポリマー、誘導体、複合材料、ナノ粒子強化を含むが、それらに限定されるものではない。
【0017】
場合によっては、繊維は、好ましい相で濡れるように、プロセス流れによる腐食から保護するように処理し、および/または、機能性ポリマーでコーティングすることができる。例えば、炭素繊維は、水性流における濡れ性を改善するために酸化することができ、ポリマー繊維は、水性流における濡れ性の改善を示すことができ、および/またはヒドロキシル、アミノ、酸、塩基、酵素、またはエーテル官能基を含むがこれらに限定されないポリマーへの十分な官能基の組み込みによって腐食から保護されることができる。場合によっては、繊維は、そのような機能性を提供するためにその上に結合された(すなわち、固定化された)化学物質を含んでもよい。いくつかの実施形態において、繊維は、ヒドロキシル、アミノ、酸、塩基またはエーテル官能基に適したものを含むイオン交換樹脂であり得る。他の場合では、ガラスおよび他の繊維は、酸、塩基、またはイオン液体機能性ポリマーでコーティングされ得る。一例として、耐酸性ポリマーでコーティングされた炭素繊維または綿繊維は、強酸溶液の処理に適用できる場合がある。場合によっては、繊維は、特定のプロセスに対して触媒的または抽出的である材料を含むことができる。場合によっては、酵素基は、特定の反応および/または抽出を助けるために繊維を有し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、導管接触器内のすべての繊維は、同じ材料であってもよい(すなわち、同じコア材料と、適用可能であれば、同じコーティングを有する)。他の場合、導管接触器内の繊維は、異なる種類の材料を含んでもよい。例えば、導管接触器は、極性繊維のセットと非極性繊維のセットとを含んでもよい。繊維の材料を変化させた他のセットも考慮されてよい。上述のように、導管接触器内の繊維の構成(例えば、形状、サイズ、繊維を有するフィラメントの数、対称性、非対称性など)は、本明細書に記載のプロセスと同じであっても異なっていてもよい。構成におけるそのような変動は、繊維間の材料の変動に追加的または代替的であり得る。いくつかの実施形態において、異なる種類の繊維(すなわち、異なる構成および/または材料の繊維)は、各セットがそれら自身のそれぞれの入口および/または出口を有する接触器内で並んで走行してもよい。他の場合、異なるタイプの繊維は、同じ入口と出口の間に延在してもよい。いずれの実施形態においても、異なる種類の繊維は、導管接触器内に個別に分散されてもよく、または代替的に、異なる繊維の種類の各々が一緒に配置されてもよい。いずれの場合も、異なる種類の繊維の使用は、単一または複数の連続相流れから導管接触器内で同時に行われる複数の分離、抽出、および/または反応を容易にすることができる。例えば、導管接触器が、それぞれ異なる繊維の種類の複数の束で満たされ、それぞれが自身の拘束相流体入口に接続され、オフ角で配置される場合、束は、連続相流体が、各束によって、または各束から抽出された異なる材料を有する複数の繊維束を順次通過するように配置することができる。繊維径は特に限定されず、例えば、5~150μm、10~100μm、12~75μm、15~60μm、17~50μm、20~45μm、20~35μm、または20~25μmであっても良い。導管接触器の長さは特に限定されず、例えば、0.25~10m、0.5~5m、0.75~3m、1~2.5m、または1.5~2mであってもよい。導管接触器の直径または幅は同様に特に限定されず、例えば、0.5cm~3m、5cm~2.5m、10cm~2m、15cm~1.5m、20cm~1m、25~75cm、30~70cm、35~65cm、40~60cm、45~55cm、または50cmであってもよい。
【0019】
本開示の導管接触器および方法を用いて達成され得る化学反応の例としては、エピクロロヒドリン反応;O-アルキル化(エーテル化);N-アルキル化;C-アルキル化;キラルアルキル化;S-アルキル化;エステル化;エステル交換;置換(例えば、シアン化物、水酸化物、フッ化物、チオシアン酸塩、シアン酸塩、ヨウ化物、硫化物、亜硫酸塩、アジ化物、亜硝酸塩、または硝酸塩による);その他の求核性脂肪族および芳香族置換;酸化;加水分解;エポキシ化および不斉エポキシ化;マイケル付加;アルドール縮合;ウィティッグ縮合;ダルツェンス縮合;カルベン反応;チオリン酸化;還元;カルボニル化;遷移金属共触媒;HCl/HBr/HOCl/H2SO4反応;およびポリマー合成またはポリマー修飾が含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、有機ハロゲン化物(R-X)および有機酸(R’-H)は、本明細書に記載のプロセスによって結合されて、結合生成物(R-R’)を生成してもよく、ここでR-XおよびR’-Hは同一分子上または異なる分子上にあることが可能である。このような実施形態において、有機酸(R’H)は、シクロペンタジエン、アセト酢酸、またはアセチレンなどの炭素酸を有し得、または、有機酸は、カルボン酸;チオカルボン酸;フェノール、アルコール、チオール、アミン、エタノールアミンなどを有し得る。他の実施形態では、水、アルコール、カルボン酸、無機酸、チオール、アミンなどをエポキシドと反応させて、アルキルエーテルアルコール、アルキルチオエーテルアルコール、エステルアルコール、およびアミノアルコール、リン酸エステルまたはボレートエステルなど(ただし、これに限らない)のグリコールまたは置換グリコールを形成する。
【0020】
1つ以上の実施形態において、導管接触器は、例えば、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、または100℃以上、または前述の値のいずれかの間の温度範囲の温度で加熱または維持されてもよい。ある実施形態では、導管接触器の温度は、反応物の沸点に制限される。しかし、導管接触器を圧力で操作すると、反応物の沸点を超える反応温度を使用することができ、100℃を超える反応温度も可能である。導管接触器内の圧力は特に限定されず、例えば、5~75psi、10~60psi、15~40psi、20~30psi、または25psiであり得る。
【0021】
本開示の実施形態によれば、非混和性液体間のより効率的な化学反応および/または化学抽出を促進しながら、より少ない繊維材料の使用によって導管接触器の構築および維持のコストを低減することができる。さらに、導管内の繊維材料の減少により、非混和性液体のスループットまたは流量が増加し、導管接触器の効率をさらに増幅させることができる。
【0022】
実施例
以下の表1に記載されたSA密度を提供するために、繊維は導管内に配置された。苛性溶液(2%NaOHを含む60/40水エタノール)および約14%の遊離脂肪酸(FFA)を含む油を、それぞれ75ml/分および125ml/分の速度で繊維に流した。その後、油相と苛性相を回収し、分離した。表1に示す抽出率は、油から除去されたFFAの割合を示す。
【表1】
【0023】
上記表1に示すように、比較例2は実施例1~6に比べて非常に高いSA密度を有していたが、比較例2の抽出率は実施例1~6の抽出率より実質的に劣るものであった。さらに、比較例1に示すように、SA密度が100未満の場合、転化率が低下した。
【0024】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を行うための導管接触器が本明細書に記載されている。導管接触器は、中空内部、第1の開放端、および第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管;第2の開放端と流体連通し、かつ近接している分離器;および導管内に配置された複数の繊維を含む。導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、100cm/cm~490cm/cmである。
【0025】
導管接触器は、以下の特徴の任意の組合せを含むことができる:
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、125cm/cm~450cm/cm
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、150cm/cm~435cm/cm
導管と繊維の長さは、0.25m~10m;
導管の中空内部の平均直径は、0.5cm~3m;および/または
繊維の平均直径は、5μm~150μm。
【0026】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を行う方法が本明細書に記載されている。本方法は、中空内部、第1の開放端、および第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管;第2の開放端と流体連通し、かつ第2の開放端に近接している分離器;および導管内に配置された複数の繊維を有する導管接触器であって、前記導管の中空内部の体積当たりの前記繊維の総表面積が100cm/cm~490cm/cmである導管接触器を提供する工程と、前記導管内および前記繊維上に第1の液体を導入する工程と、第2の液体と前記第1の液体が接触するように、前記第2の液体を前記導管内に導入する工程であって、前記第2の液体は、前記第1の液体と非混和性である、導入する工程と、(i)前記第1の液体から前記第2の液体へ少なくとも1つの成分を抽出する工程、(ii)前記第2の液体から前記第1の液体へ少なくとも1つの成分を抽出する工程、または、(iii)前記第1の液体からの少なくとも1つの成分と前記第2の液体からの少なくとも1つの成分とを反応させる工程と、および、前記第1および前記第2の液体を前記分離器内に受ける工程と、を含む。
【0027】
本方法は、以下の特徴の任意の組合せを含むことができる:
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、125cm/cm~450cm/cm
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、150cm/cm~435cm/cm
第1の液体を導入する前に、導管接触器を15℃~100℃の温度に予熱する工程;
導管と繊維の長さは、0.25m~10m;
導管の中空内部の平均直径は、0.5cm~3m;
繊維の平均直径は、5μm~150μm;
第1の速度と第2の速度との比は2:1~1:10であり、第1の液体は、前記第1の速度で導入され、第2の液体は、前記第2の速度で導入され、および/または、
第1の速度と第2の速度の比は1:1~3:1である。
【0028】
非混和性液体間の化学反応または化学抽出を促進するためのシステムが本明細書に開示されている。このシステムは、中空内部、第1の開放端、および第1の開放端の反対側に第2の開放端を有する導管;第2の開放端と流体連通し、かつ第2の開放端に近接している分離器;および導管内に配置された複数の繊維を有する導管接触器であって、前記導管の中空内部の体積当たりの前記繊維の総表面積が100cm/cm~490cm/cmである導管接触器と;第1の液体を導管内および繊維上に導入するための第1の液体供給部と;および第2の液体を、第2の液体が第1の液体と接触するように導管内に導入するための第2の液体供給部とを含み、前記第1の液体と前記第2の液体は非混和性である。
【0029】
本システムは、以下の特徴の任意の組合せを含むことができる:
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、125cm/cm~450cm/cm
導管の中空内部の体積あたりの繊維の総表面積は、150cm/cm~435cm/cm
第1の速度と第2の速度との比は2:1~1:10であり、第1の液体供給部は、前記第1の速度で導管内に第1の液体を導入するように構成され、第2の液体供給部は、前記第2の速度で導管内に第2の液体を導入するように構成され、および/または、
第1の速度と第2の速度の比は1:1~3:1である。
【0030】
本開示の範囲から逸脱することなく、前記に変形を加えることができることが理解される。いくつかの例示的な実施形態において、様々な例示的な実施形態の要素および教示は、例示的な実施形態の一部または全部において、全体的にまたは部分的に組み合わされてもよい。さらに、様々な例示的な実施形態の要素および教示のうちの1つまたは複数が、少なくとも部分的に省略され、および/または、少なくとも部分的に、様々な例示的な実施形態の他の要素および教示のうちの1つまたは複数に組み合わされてもよい。
図1