(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】因果推論システム、因果推論方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20231127BHJP
【FI】
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2023135163
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521115122
【氏名又は名称】AquaAge株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】包 娜仁
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-059676(JP,A)
【文献】特表2021-515934(JP,A)
【文献】特開2023-098155(JP,A)
【文献】木村 菱治,医療とApple iPhoneアプリの手軽さで、うつや不安、心の状態をケアする,Mac Fan,日本,株式会社マイナビ,2013年12月01日,第21巻 第12号 ,176-177ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
因果推論システムであって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、登録ステップと、
メンタルヘルス値算出ステップと、変化量算出ステップと、第1推論ステップと、を実行するように構成され、
前記登録ステップでは、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、前記市販薬又は前記処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む薬情報を登録日と共に薬データとして登録し、
前記メンタルヘルス値算出ステップでは、前記ユーザの顔を撮影した顔画像の解析によって前記ユーザの感情を判断することで、前記ユーザのメンタルの健康状態の程度を示すメンタルヘルス値を算出し、
前記変化量算出ステップでは、前記登録日からの前記ユーザの
前記メンタルヘルス値の変化量を算出し
、
前記第1推論ステップでは、
統計学的手法によって得られた判定式を用いて、前記変化量と、前記変化量の算出期間と、前記算出期間中に服用された少なくとも1つの前記市販薬又は前記処方薬の前記商品名又は前記成分とから、前記市販薬又は前記処方薬と前記メンタルヘルス値との因果関係を推論する、因果推論システム。
【請求項2】
請求項1に記載の因果推論システムにおいて、
前記プロセッサは、画像取得ステップと、情報取得ステップとをさらに実行するように構成され、
前記画像取得ステップでは、前記市販薬のパッケージ又は前記処方薬の処方箋を撮影した解析対象画像を取得し、
前記情報取得ステップでは、前記解析対象画像に含まれる文字列から、前記薬情報を取得する、因果推論システム。
【請求項3】
請求項1に記載の因果推論システムにおいて、
前記薬情報には、前記商品名が少なくとも含まれ、
前記第1推論ステップでは、前記因果関係として
、前記商品名と前記メンタルヘルス値との間の第1因果関係を推論する、因果推論システム。
【請求項4】
請求項1に記載の因果推論システムにおいて、
前記薬情報には、前記成分が少なくとも含まれ、
前記第1推論ステップでは、前記因果関係として
、前記成分と前記メンタルヘルス値との間の第2因果関係を推論する、因果推論システム。
【請求項5】
請求項1に記載の因果推論システムにおいて、
前記プロセッサは、予測ステップをさらに実行するように構成され、
前記予測ステップでは、前記因果関係を用いて、前記ユーザの前記市販薬又は前記処方薬による前記メンタルヘルス値の変化予測値を算出する、因果推論システム。
【請求項6】
請求項1に記載の因果推論システムにおいて、
前記登録ステップでは、前記処方薬の前記商品名と、前記処方薬に含まれる前記成分とのうち、少なくとも一方を含む前記薬情報を前記登録日と共に前記薬データとして登録し、
前記第1推論ステップでは
、前記処方薬と前記メンタルヘルス値との前記因果関係を推論する、因果推論システム。
【請求項7】
因果推論システムが実行する因果推論方法であって、
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載
の各ステップを備える、方法。
【請求項8】
プログラムであって、
コンピュータを、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の因果推論システムとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、因果推論システム、因果推論方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の文献に開示されるように、処方箋データ及び購買データに基づいて、生活者への医薬品に関する情報提供を行うシステムが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムは、ユーザ(患者)の身体的疾患に対する服用薬をアドバイスすることができるが、服用薬とユーザのメンタルヘルスとの因果関係は推定できない。そのため、メンタル改善を望むユーザへの服用薬のアドバイスは示唆することができない。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、ユーザのメンタルヘルスに有効な薬を推定できる因果推論システムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、因果推論システムが提供される。この因果推論システムは、プロセッサを備える。プロセッサは、登録ステップと、変化量算出ステップと、第1推論ステップと、を実行するように構成される。登録ステップでは、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、市販薬又は処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む薬情報を登録日と共に薬データとして登録する。変化量算出ステップでは、登録日からのユーザのメンタルヘルス値の変化量を算出する。メンタルヘルス値は、ユーザのメンタルの健康状態の程度を示す。第1推論ステップでは、変化量に基づいて、市販薬又は処方薬とメンタルヘルス値との因果関係を推論する。
【0007】
このような態様によれば、薬情報と共にその登録日が薬データとして登録されることで、登録された薬の服用とメンタルヘルス値の変化量との因果関係を推論できる。そのため、ユーザのメンタルヘルスに有効な薬を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】ユーザ端末3のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】情報処理装置2(プロセッサ23)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】市販薬のパッケージを撮影した解析対象画像Iの一例である。
【
図6】市販薬のパッケージP1における薬情報の一例である。
【
図7】処方薬の処方箋P2における薬情報の一例である。
【
図8】パッケージP1に基づく薬データPD1の一例である。
【
図9】処方箋P2に基づく薬データPD21,PD22の一例である。
【
図11】メンタルヘルス値の算出で用いられる顔画像の一例である。
【
図13】薬データの登録時期とメンタルヘルス値の算出時期との関係を表す模式図である。
【
図15】因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである薬データ登録処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図16】因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである因果推論処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図17】因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである追加推論処理の流れを示すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、ハードウェア構成について説明する。
【0014】
<因果推論システム1>
図1は、因果推論システム1を表す構成図である。因果推論システム1は、複数のユーザ又はそのケア担当者(看護師、介護士等)に対し、市販薬又は処方薬とユーザのメンタルヘルスの変化との間の因果関係を提示するサービスを提供する。
【0015】
因果推論システム1は、情報処理装置2と、ユーザ端末3とを備える。情報処理装置2と、ユーザ端末3とは、電気通信回線を通じて通信可能に構成されている。一実施形態において、因果推論システム1は、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。仮に例えば、情報処理装置2のみからなる場合であれば、因果推論システム1は、情報処理装置2となりうる。以下、これらの構成要素について説明する。
【0016】
<情報処理装置2>
図2は、情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置2は、通信バス20と、通信部21と、記憶部22と、プロセッサ23とを備える。通信部21、記憶部22、及びプロセッサ23は、情報処理装置2の内部において通信バス20を介して電気的に接続されている。
【0017】
<通信部21>
通信部21は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、BLUETOOTH(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置2は、通信部21及びネットワークを介して、外部から種々の情報を通信してもよい。
【0018】
<記憶部22>
記憶部22は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、プロセッサ23によって実行される情報処理装置2に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部22は、プロセッサ23によって実行される情報処理装置2に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0019】
<プロセッサ23>
プロセッサ23は、情報処理装置2に関連する全体動作の処理・制御を行う。プロセッサ23は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。プロセッサ23は、記憶部22に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置2に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部22に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例であるプロセッサ23によって具体的に実現されることで、プロセッサ23に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、プロセッサ23は単一であることに限定されず、機能ごとに複数のプロセッサ23を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0020】
<ユーザ端末3>
図3は、ユーザ端末3のハードウェア構成を示すブロック図である。ユーザ端末3は、通信バス30と、通信部31と、記憶部32と、プロセッサ33と、表示部34と、入力部35と、撮影部36とを備える。通信部31、記憶部32、プロセッサ33、表示部34、入力部35及び撮影部36は、ユーザ端末3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。通信部31、記憶部32及びプロセッサ33の説明は、情報処理装置2における各部の説明と同様のため省略する。
【0021】
<表示部34>
表示部34は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。表示部34は、ユーザ端末3の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。具体的には、表示部34は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又はプラズマディスプレイ等の表示デバイスとして実施されうる。これらの表示デバイスは、ユーザ端末3の種類に応じて使い分けて実施されることが好ましい。
【0022】
<入力部35>
入力部35は、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。操作入力は、命令信号として通信バス30を介してプロセッサ33に転送される。プロセッサ33は、必要に応じて、転送された命令信号に基づいて所定の制御や演算を実行しうる。入力部35は、ユーザ端末3の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部35は、表示部34と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。入力部35がタッチパネルとして実施される場合、ユーザは、入力部35に対してタップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。入力部35としては、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTYキーボード等が採用可能である。
【0023】
<撮影部36>
撮影部36は、画像(静止画又は動画)を撮影する。撮影部36が撮影した画像は、記憶部32に記憶される。
【0024】
情報処理装置2は、オンプレミス形態であってもよく、クラウド形態であってもよい。クラウド形態の情報処理装置2としては、例えば、SaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングという形態で、上述の機能や処理を提供してもよい。
【0025】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。記憶部22に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例であるプロセッサ23によって具体的に実現されることで、プロセッサ23に含まれる各機能部として実行されうる。
【0026】
図4は、情報処理装置2(プロセッサ23)によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、情報処理装置2(プロセッサ23)は、初期設定部231と、画像取得部232と、情報取得部233と、登録部234と、メンタルヘルス値算出部235と、変化量算出部236と、第1推論部237と、第2推論部238と、予測部239と、を備える。
【0027】
<初期設定部231>
初期設定部231は、因果推論システム1を利用するユーザ(例えば、要介護者)の登録を行う。具体的には、初期設定部231は、ユーザの個人情報(氏名、住所、連絡先等)を登録する。また、初期設定部231は、ユーザの情報に加えて、ユーザの介護を行うケア担当者の登録を行ってもよい。
【0028】
<画像取得部232>
画像取得部232は、市販薬のパッケージ又は処方薬の処方箋を撮影した解析対象画像Iを取得する。
図5は、市販薬のパッケージを撮影した解析対象画像Iの一例である。画像取得部232は、ユーザ端末3の撮影部36が撮影した解析対象画像Iをユーザ端末3から受信し、記憶部22に記憶する。
【0029】
<情報取得部233>
情報取得部233は、解析対象画像Iに含まれる文字列から、薬情報を取得する。薬情報は、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、市販薬又は処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含んでいる。これにより、市販薬のパッケージ又は処方薬の処方箋を、ユーザ又はユーザのケア担当者が撮影することで、手軽に薬データを登録することができる。
【0030】
具体的には、情報取得部233は、まず、解析対象画像IからパッケージP1又は処方箋P2を検出する。パッケージには、外箱(つまり化粧箱)及び容器が含まれる。パッケージP1及び処方箋P2は、画像解析アルゴリズムによって検出される。また、1つの解析対象画像Iに複数のパッケージP1又は処方箋P2が含まれる場合は、情報取得部233は、複数のパッケージP1又は処方箋P2を1つずつ抽出する。
【0031】
図6は、市販薬のパッケージP1における薬情報の一例である。情報取得部233は、解析対象画像I中のパッケージP1に含まれる文字列を認識する。文字列は、文字認識アルゴリズム(つまりOCR)によって認識される。さらに、情報取得部233は、認識した文字列を薬情報におけるカテゴリに分類する。パッケージP1から取得される薬情報のカテゴリには、例えば、商品名T11、成分T12、効果T13、メーカーT14、服用年齢T15及び注意事項T16が含まれる。
【0032】
文字列の薬情報の各カテゴリへの分類は、文字列が有する特徴(例えば、文字列を構成する文字の大きさ及び色、文字列の位置、文字列に含まれる単語など)に基づいて行われる。例えば、情報取得部233は、
図6の一番上の文字列について、文字の大きさによってカテゴリを商品名T11及びメーカーT14に絞った上で、この文字列に含まれる単語と、商品名T11及びメーカーT14のそれぞれにおいて頻出する単語データとのマッチングによってこの文字列のカテゴリを商品名T11と判定する。この単語データは、例えば情報処理装置2の記憶部22に記憶されている。
【0033】
図7は、処方薬の処方箋P2における薬情報の一例である。処方箋P2から取得される薬情報のカテゴリには、例えば、商品名T21、患者氏名T22、生年月日T23、交付年月日T24、処方箋の使用期間T25、処方T26、保険医T27、及び医療機関名T28が含まれる。
【0034】
なお、処方箋P2には、処方薬の成分が記載されないが、情報取得部233は、データベースから商品名T21に紐付けられた成分を薬情報として取得する。このデータベースは、例えば情報処理装置2の記憶部22に記憶されている。さらに、1つの処方箋P2に複数の薬(商品名)が記載されている場合は、情報取得部233は、1つの薬ごとに薬情報を取得する。この場合、1つの処方箋P2に記載された複数の薬において、患者氏名、保険医等の情報は同じものとなる。
【0035】
<登録部234>
登録部234は、薬情報を登録日と共に薬データとして登録する。
図8は、パッケージP1に基づく薬データPD1の一例である。登録部234は、市販薬の場合、解析対象画像Iに含まれる文字列の分類結果から、商品名、成分、効果、メーカー、服用年齢、注意事項、及び登録日を含む薬データPD1を作成する。
【0036】
登録日は、薬データPD1の作成日である。ユーザが新たな薬の服用開始日に登録処理を行うことで、薬の服用開始日を登録日と一致させることができる。薬データPD1は、1つの薬ごとに生成され、同じ商品名であっても登録日が異なる薬にはそれぞれ1つずつ薬データPD1が生成される。なお、同じ商品名であっても販売時期によって成分が異なる薬が存在するため、同じ商品名を含む複数の薬データPD1における成分が全て同じとは限らない。
【0037】
図9は、処方箋P2に基づく薬データPD21,PD22の一例である。登録部234は、処方薬の場合、解析対象画像Iに含まれる文字列の分類結果から、商品名、成分、患者氏名、生年月日、交付年月日、処方箋の試用期間、処方、保険医、医療機関、及び登録日を含む薬データPD21,PD22を作成する。なお、
図9の2つの薬データPD21,PD22は、
図7の2つの処方薬を含む、1つの処方箋P2から取得された薬情報に基づいたものである。このように、解析対象画像Iに複数の薬が含まれる場合は、登録部234は、それぞれの薬ごとに薬データを作成する。
【0038】
図10は、服用薬リストPLの一例である。登録部234は、複数の薬データを登録日ごとにグループ化した服用薬リストPLを作成する。服用薬リストPLは、ユーザの薬の登録履歴(つまり服用履歴)を示す情報である。登録部234が作成した薬データPD1,PD21,PD22及び服用薬リストPLは、それぞれ、ユーザ端末3の記憶部32に記憶されてもよいし、情報処理装置2の記憶部22に記憶されてもよい。
【0039】
<メンタルヘルス値算出部235>
メンタルヘルス値算出部235は、ユーザの顔を撮影した顔画像の解析によってメンタルヘルス値を算出する。メンタルヘルス値は、ユーザのメンタルの健康状態の程度を示す。これにより、簡潔なステップで、かつ、客観的に、ユーザのメンタルの健康状態を取得することができる。
【0040】
具体的には、メンタルヘルス値算出部235は、ユーザ端末3又はユーザ端末3以外の撮影装置(例えば、施設に配置された定点観測用のカメラ)で撮影されたユーザの顔画像を取得する。顔画像は、一定間隔で連続して撮影された複数の静止画であってもよいし、動画であってもよい。メンタルヘルス値算出部235は、ユーザの異なる角度の顔画像から、3次元形状の顔データを作成してもよい。
【0041】
図11は、メンタルヘルス値の算出で用いられる顔画像の一例である。メンタルヘルス値算出部235は、例えば、顔の輪郭、眉毛、目、鼻、口等のパーツを画像から抽出し、抽出した輪郭及びパーツに合わせて顔画像内に顔枠FFを作成する。
【0042】
メンタルヘルス値算出部235は、顔枠FFの形状に基づいて、ユーザの感情を判断する。ユーザの感情は、例えば、「1:怒り」、「2:軽蔑」、「3:嫌い」、「4:怖い」、「5:嬉しい」、「6:ニュートラル」、「7:悲しい」及び「8:びっくり」の8項目に分類される。メンタルヘルス値算出部235は、8項目の感情それぞれの予測信頼度(0%から100%)と、8項目の感情それぞれの持続時間とを顔画像から抽出する。これにより、8項目の感情それぞれについての予測信頼度X[%]と持続時間T[s]との集合である感情データが得られる。この感情データは、8×2=16のデータで構成される。なお、ユーザの感情の分類数は8項目に限定されない。
【0043】
メンタルヘルス値算出部235は、統計学的手法によって得られた第1判定式を用いて顔画像から各感情の予測信頼度を算出する。第1判定式は、複数の顔画像と、これらの顔画像に紐づけられた感情ラベルとの組み合わせデータを統計学的手法で解析することで得られる。統計学的手法としては、例えば、多変量解析、教師あり機械学習、これらの組み合わせ等が用いられる。
【0044】
教師あり機械学習では、感情ラベルが付与された顔画像を教師データとして、機械学習が行われる。学習ステップでは、多数のラベル(つまり感情ラベル)付きの顔画像を機械学習回路に分析させる。機械学習回路は、多数のラベル付きデータから顔画像を複数のラベル(つまり感情の種類)に分類するための特徴量を学習し、第1判定式を構築する。機械学習回路は、例えば情報処理装置2に設けられる。第1判定式は、追加学習によるアップデートが可能である。
【0045】
メンタルヘルス値算出部235は、得られた感情データに基づいて、メンタルヘルス値を算出する。
図12は、メンタルヘルス値の一例を示す図である。
図12Aに示すように、メンタルヘルス値は、例えば、メンタルの状態が最も健康的である状態を示す「1」から、メンタルの状態が最も健康的でない状態を示す「5」までの5段階評価として設定される。感情データからメンタルヘルス値への変換は、予め用意された変換式によって行われる。この変換式は、例えば第1判定式と同様の統計学的手法によって得られる。なお、メンタルヘルス値の評価は5段階に限定されない。
【0046】
メンタルヘルス値算出部235は、
図12Bに示すように、算出したメンタルヘルス値にその算出日を追加したメンタルヘルス値データMDを記憶部22に記録する。薬データの登録日に算出されたメンタルヘルス値の算出日は、この薬データの登録日と一致する。メンタルヘルス値データMDには、算出日の異なる複数のメンタルヘルス値が含まれ、新たにメンタルヘルス値が算出される都度、メンタルヘルス値が追加される。
【0047】
<変化量算出部>
変化量算出部236は、薬データの登録日からのユーザのメンタルヘルス値の変化量を算出する。
図13は、薬データの登録時期とメンタルヘルス値の算出時期との関係を表す模式図である。
【0048】
図13に示すように、変化量算出部236は、「薬X」の薬データの登録日D1にメンタルヘルス値(以下、「登録時メンタルヘルス値」ともいう。)を算出してメンタルヘルス値データMDを作成する。その後、変化量算出部236は、登録日から一定期間(例えば2か月)経過した日D2に同じユーザのメンタルヘルス値(以下、「経過後メンタルヘルス値」ともいう。)を算出してメンタルヘルス値データMDに追加する。
【0049】
変化量算出部236は、登録時メンタルヘルス値と、経過後メンタルヘルス値とを比較する。具体的には、変化量算出部236は、登録時メンタルヘルス値と、経過後メンタルヘルス値との差分を「メンタルヘルス値の変化量V」として算出する。
【0050】
また、変化量算出部236は、新たな薬データが登録される都度、メンタルヘルス値を算出する。変化量算出部236は、最新のメンタルヘルス値を経過後メンタルヘルス値として、メンタルヘルス値の変化量Vを更新する。
図13の例では、「薬X」の登録日D1から一定期間経過後、新たな薬である「薬Y」及び「薬Z」が登録された日D3で新たな経過後メンタルヘルス値が算出され、登録時メンタルヘルス値に対する経過後メンタルヘルス値の変化量Vが算出される。
【0051】
<第1推論部>
第1推論部237は、メンタルヘルス値の変化量に基づいて、市販薬又は処方薬とメンタルヘルス値との因果関係を推論する。具体的には、第1推論部237は、因果関係として、第1因果関係と、第2因果関係とを推論する。
【0052】
第1因果関係は、メンタルヘルス値の変化量に基づいて、薬の商品名とメンタルヘルス値との間の因果関係として推論される。第1因果関係は、薬の商品名と、メンタルヘルス値との相関の強さで構成される。第1推論部237は、一人のユーザが服用している複数の薬の商品名と、各薬のメンタルヘルス値に対する相関の強さとを羅列した第1因果関係データを記憶部22に記録する。
【0053】
第1因果関係における相関の強さは、商品名に対応する薬を服用した際のメンタルヘルス値の改善効果(メンタルヘルス値の上昇期待値)の大きさを示す。第1因果関係データにおけるメンタルヘルス値の相関の強さは、ユーザが服用している複数の薬の合計で1となるように正規化されている。例えば、ユーザが薬X、薬Y、及び薬Zの3つの薬を服用しているとき、薬Xとメンタルヘルス値との相関の強さ(改善効果の大きさ)として「0.2」、薬Yとメンタルヘルス値との相関の強さとして「0.5」、薬Zとメンタルヘルス値との相関の強さとして「0.3」といった数値が第1因果関係データに含まれる。ユーザ又はそのケア担当者は、第1因果関係データを参照することで、各薬のメンタルヘルスの改善に対する貢献度合いを判断することができる。
【0054】
第1推論部237は、統計学的手法によって得られた第2判定式を用いて、メンタルヘルス値の変化量と、メンタルヘルス値の変化量の算出期間(つまり登録時メンタルヘルス値の算出時から経過後メンタルヘルス値の算出時までの期間)と、算出期間中に服用された少なくとも1つの薬の商品名とから、第1因果関係を推論する。
【0055】
第2判定式は、メンタルヘルス値の変化量、算出期間、及び薬の商品名を含む入力情報と、これらの入力情報に紐づけられた相関の強さとを含むデータを統計学的手法で解析することで得られる。統計学的手法としては、例えば、多変量解析、教師あり機械学習、これらの組み合わせ等が用いられる。
【0056】
教師あり機械学習では、相関の強さが付与された入力情報を教師データとして、機械学習が行われる。学習ステップでは、多数のラベル(つまり相関の強さ)付きの入力情報を機械学習回路に分析させる。機械学習回路は、多数のラベル付きデータから入力情報を複数のラベル(つまり相関の強さ)に分類するための特徴量を学習し、第2判定式を構築する。
【0057】
教師データは、例えば、多数の患者に対する、種々の薬を服用したときのメンタルヘルス値の変化量の記録データにより作成される。また、機械学習回路は、例えば情報処理装置2に設けられる。第2判定式は、追加学習によるアップデートが可能である。
【0058】
第2因果関係は、メンタルヘルス値の変化量に基づいて、薬の成分とメンタルヘルス値との間の因果関係として推論される。第2因果関係は、薬の成分と、メンタルヘルス値との相関の強さで構成される。つまり、第2因果関係は、第1因果関係の「商品名」を「成分」に置き換えたものである。第1推論部237は、一人のユーザが服用している薬に含まれる複数の成分と、各成分のメンタルヘルス値に対する相関の強さとを羅列した第2因果関係データを記憶部22に記録する。
【0059】
第2因果関係における相関の強さは、1つの成分によるメンタルヘルス値の改善効果の大きさを示す。第2因果関係データにおけるメンタルヘルス値の相関の強さは、ユーザが服用している複数の薬に含まれる複数の成分の合計で1となるように正規化されている。
【0060】
第1推論部237は、統計学的手法によって得られた第3判定式を用いて、メンタルヘルス値の変化量と、メンタルヘルス値の変化量の算出期間と、算出期間中に服用された少なくとも1つの薬に含まれる複数の成分とから、第2因果関係を推論する。ユーザ又はそのケア担当者は、第2因果関係データを参照することで、各成分のメンタルヘルスの改善に対する貢献度合いを判断することができる。
【0061】
第3判定式は、メンタルヘルス値の変化量、算出期間、及び薬の成分を含む入力情報と、これらの入力情報に紐づけられた相関の強さとを含むデータを統計学的手法で解析することで得られる。第3判定式の構築手順は、第1因果関係を推論する第2判定式と同様である。
【0062】
<第2推論部>
第2推論部238は、複数のユーザをそれぞれのメンタルヘルス値に基づいてグループ化し、1つのグループに所属する複数のユーザにおける第2因果関係を分析して、ユーザ毎の成分のメンタルヘルス値への影響量を推論する。これにより、ユーザ又はそのケア担当者が、メンタルヘルス改善に有効な成分に基づいて薬を選択しやすくなる。
【0063】
第2推論部238は、メンタルヘルス値が近い複数のユーザにおける第2因果関係の傾向を解析することで、個別のユーザにおけるメンタルヘルスへの薬の成分の改善寄与度を判定する。つまり、第2推論部238は、まず、メンタルヘルス値及び/又はメンタルヘルス値の変化量に基づいて、複数のユーザをグループ化する。次に、第2推論部238は、1つのグループに所属する複数のユーザにおける第2因果関係を例えば回帰分析等によって分析し、成分とメンタルヘルス値との関係モデルを生成する。
【0064】
例えば、第2推論部238は、個別のユーザに対し、薬に含まれる成分のメンタルヘルスへの有効度合を示す影響量データを提供する。影響量データには、成分ごとのメンタルヘルス改善における有効度合の大きさが含まれる。
【0065】
<予測部239>
予測部239は、因果関係(第1因果関係又は第2因果関係)を用いて、ユーザの市販薬又は処方薬によるメンタルヘルス値の変化予測値を算出する。これにより、ユーザ又はそのケア担当者に薬を服用した際の期待効果を提示することができる。
【0066】
具体的には、
図14に示すように、予測部239は、1つの薬を一定期間(例えば3か月)服用した後の、ユーザのメンタルヘルス値の変化予測値を含む予測データを作成する。メンタルヘルス値の変化予測値は、第1因果関係に含まれる商品名とメンタルヘルス値との相関の強さ、又は第2因果関係に含まれる成分とメンタルヘルス値との相関の強さを用いて算出される。
【0067】
図14は、予測グラフPGの一例である。予測グラフPGは、第2因果関係に基づいた変化予測値を成分毎にグラフ化したものである。予測グラフPGでは、変化予測値として、メンタルヘルス値への影響度の確率が成分毎に表示されている。予測グラフPGでは、上下の軸がメンタルヘルス値への影響度(つまり、メンタルヘルス値の改善効果の大きさ)を示し、グラフの上の領域ほど影響度が大きい。また、各成分のグラフの左右の幅は確率を示している。例えば、成分Aは、他の成分よりもメンタルヘルスへの影響度が小さい、と予測される。一方で、成分Gは、成分Aに比べるとメンタルヘルスへ高い影響を与える可能性が高い。
【0068】
3.因果推論方法
本節では、情報処理装置2の因果推論方法について説明する。この因果推論方法は、情報処理装置2の各部が、各ステップとしてコンピュータにより実行される。
【0069】
具体的には、この因果推論方法は、画像取得ステップと、情報取得ステップと、登録ステップと、メンタルヘルス値算出ステップと、変化量算出ステップと、第1推論ステップと、第2推論ステップと、予報ステップとを備える。
【0070】
画像取得ステップでは、市販薬のパッケージ又は処方薬の処方箋を撮影した解析対象画像を取得する。情報取得ステップでは、解析対象画像に含まれる文字列から、薬情報を取得する。登録ステップでは、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、市販薬又は処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む薬情報を登録日と共に薬データとして登録する。メンタルヘルス値算出ステップでは、ユーザの顔を撮影した顔画像の解析によってメンタルヘルス値を算出する。変化量算出ステップでは、登録日からのユーザのメンタルヘルス値の変化量を算出する。第1推論ステップでは、変化量に基づいて、市販薬又は処方薬とメンタルヘルス値との因果関係を推論する。第2推論ステップでは、複数のユーザをそれぞれのメンタルヘルス値に基づいてグループ化し、1つのグループに所属する複数のユーザにおける第2因果関係を分析して、ユーザ毎の成分のメンタルヘルス値への影響量を推論する。予測ステップでは、因果関係を用いて、ユーザの市販薬又は処方薬によるメンタルヘルス値の変化予測値を算出する。
【0071】
<薬データ登録処理>
図15は、因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである薬データ登録処理の流れを示すアクティビティ図である。以下では、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、情報処理を説明する。
【0072】
薬データ登録処理は、ユーザ端末3の撮影部36によってパッケージ又は処方箋の画像が取得されることから開始される(アクティビティA110)。画像取得後、ユーザ端末3のプロセッサ33は、通信部31を介して画像を情報処理装置2に送信する(アクティビティA120)。情報処理装置2のプロセッサ23は、通信部21を介して、画像を受信する(画像取得ステップ、アクティビティA130)。
【0073】
画像受信後、プロセッサ23は、画像からパッケージ又は処方箋を検出する(アクティビティA140)。次に、プロセッサ23は、検出したパッケージ又は処方箋に記載されている文字列を認識する(アクティビティA150)。文字列の認識後、プロセッサ23は、文字列を薬情報におけるカテゴリに分類する(情報取得ステップ、アクティビティA160)。文字列の分類後、プロセッサ23は、文字列から得た薬情報を登録日と共に薬データとして登録する(登録ステップ、アクティビティA170)。
【0074】
<因果推論処理>
図16は、因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである因果推論処理の流れを示すアクティビティ図である。因果推論処理は、
図15の薬データ登録処理の実行後に連続して実行さるか、定期的又は不定期的に実行される。以下では、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、情報処理を説明する。
【0075】
因果推論処理は、情報処理装置2のプロセッサ23がユーザの顔画像を取得することから開始される(アクティビティA210)。顔画像取得後、プロセッサ23は、顔画像からメンタルヘルス値を算出する(メンタルヘルス値算出ステップ、アクティビティA220)。メンタルヘルス値の算出後、プロセッサ23は、算出したメンタルヘルス値を過去のメンタルヘルス値と比較して、メンタルヘルス値の変化量を算出する(変化量算出ステップ、アクティビティA230)。
【0076】
メンタルヘルス値の変化量の算出後、プロセッサ23は、薬の商品名とメンタルヘルス値との間の第1因果関係と、薬の複数の成分とメンタルヘルス値との間の第2因果関係とをそれぞれ算出する(第1推論ステップ、アクティビティA240)。第1因果関係及び第2因果関係の算出後、プロセッサ23は、第1因果関係又は第2因果関係を用いて、薬によるユーザのメンタルヘルス値の変化予測値を算出する(予測ステップ、アクティビティA250)。
【0077】
変化予測値の算出後、プロセッサ23は、通信部21を介して変化予測値をユーザ端末3に送信する(アクティビティA260)。ユーザ端末3のプロセッサ33は、通信部31を介して変化予測値を受信し、必要に応じてユーザ端末3の表示部34に表示させる(アクティビティA270)。
【0078】
<追加推論処理>
図17は、因果推論システム1によって実行される情報処理の1つである追加推論処理の流れを示すアクティビティ図である。追加推論処理は、定期的に実行される。以下では、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、情報処理を説明する。
【0079】
追加推論処理は、情報処理装置2のプロセッサ23が、因果推論処理によって算出された第2因果関係を取得することから開始される(アクティビティA310)。次に、プロセッサ23は、ユーザ毎の複数の成分それぞれのメンタルヘルス値への影響量が求まるように第2因果関係を解析する(アクティビティA320)。第2因果関係の解析後、プロセッサ23は、解析結果から影響量を推論し、影響量データを作成する(第2推論ステップ、アクティビティA330)。
【0080】
影響量データの作成後、プロセッサ23は、通信部21を介して影響量データをユーザ端末3に送信する(アクティビティA340)。ユーザ端末3のプロセッサ33は、通信部31を介して影響量データを受信し、必要に応じてユーザ端末3の表示部34に表示させる(アクティビティA350)。
【0081】
4.作用
本実施形態の作用をまとめると、次の通りとなる。薬情報と共にその登録日が薬データとして登録されることで、登録された薬の服用とメンタルヘルス値の変化量との因果関係を推論できる。そのため、ユーザのメンタルヘルスに有効な薬を推定できる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0083】
5.その他
上記実施形態では、情報処理装置2が種々の記憶・制御を行ったが、情報処理装置2に代えて、複数の外部装置が用いられてもよい。すなわち、種々の情報やプログラムは、ブロックチェーン技術等を用いて複数の外部装置に分散して記憶されてもよい。
【0084】
本実施形態の態様は、因果推論システム1に限定されず、因果推論方法であっても、プログラムであってもよい。因果推論方法は、因果推論システム1の各ステップを備える。プログラムは、コンピュータを、因果推論システム1として機能させる。
【0085】
因果推論システム1において、ユーザ端末3のプロセッサ33が情報処理装置2のプロセッサ23の機能の一部を実行してもよい。例えば、ユーザ端末3において、パッケージ又は処方箋からの情報の取得や、因果関係の推論が行われてもよい。
【0086】
因果推論システム1は、第2推論部238及び予測部239を必ずしも備えなくてもよい。また、第1推論部237は、第1因果関係及び第2因果関係の一方のみを推論してもよい。
【0087】
薬情報(市販薬又は処方薬の商品名、市販薬又は処方薬に含まれる成分など)は、必ずしも画像から取得される必要はない。例えば、登録部234は、電子化された処方箋に含まれる薬情報を登録してもよいし、ユーザが直接入力した薬情報を登録してもよい。
【0088】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0089】
(1)因果推論システムであって、プロセッサを備え、前記プロセッサは、登録ステップと、変化量算出ステップと、第1推論ステップと、を実行するように構成され、前記登録ステップでは、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、前記市販薬又は前記処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む薬情報を登録日と共に薬データとして登録し、前記変化量算出ステップでは、前記登録日からのユーザのメンタルヘルス値の変化量を算出し、ここで、メンタルヘルス値は、前記ユーザのメンタルの健康状態の程度を示し、前記第1推論ステップでは、前記変化量に基づいて、前記市販薬又は前記処方薬と前記メンタルヘルス値との因果関係を推論する、因果推論システム。
【0090】
(2)上記(1)に記載の因果推論システムにおいて、前記プロセッサは、画像取得ステップと、情報取得ステップとをさらに実行するように構成され、前記画像取得ステップでは、前記市販薬のパッケージ又は前記処方薬の処方箋を撮影した解析対象画像を取得し、前記情報取得ステップでは、前記解析対象画像に含まれる文字列から、前記薬情報を取得する、因果推論システム。
【0091】
(3)上記(1)又は(2)に記載の因果推論システムにおいて、前記薬情報には、前記商品名が少なくとも含まれ、前記第1推論ステップでは、前記因果関係として、前記変化量に基づいて、前記商品名と前記メンタルヘルス値との間の第1因果関係を推論する、因果推論システム。
【0092】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の因果推論システムにおいて、前記薬情報には、前記成分が少なくとも含まれ、前記第1推論ステップでは、前記因果関係として、前記変化量に基づいて、前記成分と前記メンタルヘルス値との間の第2因果関係を推論する、因果推論システム。
【0093】
(5)上記(4)に記載の因果推論システムにおいて、前記プロセッサは、第2推論ステップをさらに実行するように構成され、前記第2推論ステップでは、複数のユーザをそれぞれの前記メンタルヘルス値に基づいてグループ化し、1つのグループに所属する複数のユーザにおける前記第2因果関係を分析して、ユーザ毎の前記成分の前記メンタルヘルス値への影響量を推論する、因果推論システム。
【0094】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の因果推論システムにおいて、前記プロセッサは、予測ステップをさらに実行するように構成され、前記予測ステップでは、前記因果関係を用いて、前記ユーザの前記市販薬又は前記処方薬による前記メンタルヘルス値の変化予測値を算出する、因果推論システム。
【0095】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の因果推論システムにおいて、前記プロセッサは、メンタルヘルス値算出ステップをさらに実行するように構成され、前記メンタルヘルス値算出ステップでは、前記ユーザの顔を撮影した顔画像の解析によって前記メンタルヘルス値を算出する、因果推論システム。
【0096】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の因果推論システムにおいて、前記登録ステップでは、前記処方薬の商品名と、前記処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む前記薬情報を前記登録日と共に前記薬データとして登録し、前記第1推論ステップでは、前記変化量に基づいて、前記処方薬と前記メンタルヘルス値との因果関係を推論する、因果推論システム。
【0097】
(9)因果推論方法であって、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の因果推論システムの各ステップを備える、方法。
【0098】
(10)プログラムであって、コンピュータを、上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の因果推論システムとして機能させるためのプログラム。
もちろん、この限りではない。
【0099】
最後に、本開示に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 :因果推論システム
2 :情報処理装置
3 :ユーザ端末
20 :通信バス
21 :通信部
22 :記憶部
23 :プロセッサ
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :プロセッサ
34 :表示部
35 :入力部
36 :撮影部
231 :初期設定部
232 :画像取得部
233 :情報取得部
234 :登録部
235 :メンタルヘルス値算出部
236 :変化量算出部
237 :第1推論部
238 :第2推論部
239 :予測部
【要約】
【課題】ユーザのメンタルヘルスに有効な薬を推定できる因果推論システムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、因果推論システムが提供される。この因果推論システムは、プロセッサを備える。プロセッサは、登録ステップと、変化量算出ステップと、第1推論ステップと、を実行するように構成される。登録ステップでは、ユーザが服用する市販薬又は処方薬の商品名と、市販薬又は処方薬に含まれる成分とのうち、少なくとも一方を含む薬情報を登録日と共に薬データとして登録する。変化量算出ステップでは、登録日からのユーザのメンタルヘルス値の変化量を算出する。メンタルヘルス値は、ユーザのメンタルの健康状態の程度を示す。第1推論ステップでは、変化量に基づいて、市販薬又は処方薬とメンタルヘルス値との因果関係を推論する。
【選択図】
図1