(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】獣医療技術向上支援装置、獣医療技術向上支援システム、獣医療技術向上支援方法、及び獣医療技術向上支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20231127BHJP
【FI】
G16H80/00
(21)【出願番号】P 2023135501
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 香
(72)【発明者】
【氏名】小野 智司
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159834(JP,A)
【文献】特開2004-348095(JP,A)
【文献】国際公開第2022/123735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00
G06Q50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付け部と、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出部と、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定部と、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知部と、
を備える、獣医療技術向上支援装置。
【請求項2】
前記担当二次獣医師確定部が、
前記候補二次獣医師抽出部によって複数の前記候補二次獣医師が抽出された場合に、それら複数の前記候補二次獣医師を前記一次獣医師へ提示させる候補二次獣医師提示制御を経て、前記担当二次獣医師を確定させる、
請求項1に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項3】
前記指導要請情報に、
前記対面指導を受けることとなる地理的場所を表す指導希望場所情報、
がさらに含まれ、
前記指導受諾条件情報に、
前記対面指導を行うことが可能な地理的場所を表す指導可能場所情報、
がさらに含まれる、
請求項1に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項4】
前記指導要請情報に、
前記対面指導の見学を希望する見学希望者を受け入れるか否かを表す見学可否情報、
がさらに含まれ、
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記見学希望者ごとに、見学したい前記獣医療分野を表す見学希望分野情報と、見学先として出向くことが可能な前記地理的場所を表す見学希望場所情報とを含む見学希望情報が格納された見学希望者データベースにもアクセスし、前記見学可否情報が前記見学希望者を受け入れる旨を表す前記一次獣医師についての前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報と、前記見学希望者ごとの前記見学希望情報とを照合することにより、該一次獣医師について、前記候補二次獣医師によって行われる前記対面指導を見学可能な前記見学希望者の抽出を行い、
前記見学可否情報が前記見学希望者を受け入れない旨を表す前記一次獣医師については、前記見学希望者の抽出を行わない、
請求項3に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項5】
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報と、前記見学希望者ごとの前記見学希望情報とを照合することにより、できるだけ多くの前記見学希望者が見学可能な前記対面指導が優先して行われる条件で、前記候補二次獣医師を抽出する、
請求項4に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項6】
前記マッチング成立通知部が、
前記マッチング成立通知処理において、前記マッチングが成立した前記担当二次獣医師によって行われる前記対面指導を見学可能な前記見学希望者に対し、該対面指導が行われる前記日程及び前記地理的場所を通知する、
請求項4に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項7】
前記候補二次獣医師抽出部が、
複数の前記一次獣医師の各々からの前記指導要請情報が前記指導要請情報受け付け部によって受け付けられた段階で、受け付けられた複数の前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、複数の前記一次獣医師のうちのできるだけ多くの前記一次獣医師に対して前記対面指導が行われる条件で、前記一次獣医師と、該一次獣医師に対して前記対面指導を行う前記候補二次獣医師との組み合わせを抽出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項8】
前記指導受諾条件情報に、
前記対面指導で使用する医療器具の種類を特定する使用医療器具情報、
がさらに含まれ、
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記医療器具の種類ごとに、該種類の医療器具を貸し出せる日程を表す貸出可能日程情報が格納された医療器具データベースにもアクセスし、前記使用医療器具情報が表す種類の前記医療器具についての前記貸出可能日程情報を考慮して、前記候補二次獣医師の抽出を行う、
請求項1から6のいずれか1項に記載の獣医療技術向上支援装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載の獣医療技術向上支援装置と、
前記指導要請情報受け付け部に前記指導要請情報を送信する一次獣医師用端末と、
を備える、獣医療技術向上支援システム。
【請求項10】
コンピュータが、
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付けステップと、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出ステップと、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定ステップと、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知ステップと、
を実行する、獣医療技術向上支援方法。
【請求項11】
コンピュータを、
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付け部、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出部、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定部、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知部、
として機能させる、獣医療技術向上支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医療技術向上支援装置、獣医療技術向上支援システム、獣医療技術向上支援方法、及び獣医療技術向上支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、動物を対象とした医療である獣医療の分野において、動物に生じた症状を検索のキーとして、その症状に対応できる獣医師を検索する獣医師連携システムが知られている。獣医師の検索には、獣医師ごとに、その獣医師の専門分野を対応付けた専門獣医師データベースが用いられる。
【0003】
特許文献1は、動物の飼い主のみならず、獣医師であっても上記システムを利用してよい旨を述べている。つまり、獣医師が、自分よりも専門性の高い、他の獣医師に相談を求める目的で上記システムを利用することができる。上記システムの利用者としての獣医師は、上記システムで特定された他の獣医師から、相談に対する回答を電子メールで受け取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4688512号公報(段落0016、段落0038)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、地域の獣医師は、自己の診療で対応できないと判断した場合、大学病院その他の二次診療施設を飼い主に紹介している。しかし、二次診療施設が遠方に位置する場合、二次診療施設への移動は飼い主及び動物にとって大きな負担となる。
【0006】
そこで、この現状に鑑み、飼い主及び動物を二次診療施設へ出向かわせる事態を減らすべく、地域の獣医師において対応可能な症例を増やすことが望まれる。そのためには、地域の獣医師に、対面での指導(以下、対面指導という。)を通じて獣医療の技術(以下、獣医療技術という。)の向上を図らせることが必要不可欠である。
【0007】
この点、特許文献1に係るシステムは、電子メールで相談する機会を獣医師に提供するに過ぎず、対面指導の機会を提供するものではない。従って、特許文献1に係るシステムを獣医師が利用したとしても、対応可能な症例数を増やせると言えるほどの獣医療技術の向上が期待されるとは言い難い。
【0008】
本発明の目的は、対面指導を受ける機会を獣医師に付与することにより、獣医師の獣医療技術の向上を支援することができる獣医療技術向上支援装置、獣医療技術向上支援システム、獣医療技術向上支援方法、及び獣医療技術向上支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る獣医療技術向上支援装置は、
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付け部と、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出部と、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定部と、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知部と、
を備える。
【0010】
前記担当二次獣医師確定部が、
前記候補二次獣医師抽出部によって複数の前記候補二次獣医師が抽出された場合に、それら複数の前記候補二次獣医師を前記一次獣医師へ提示させる候補二次獣医師提示制御を経て、前記担当二次獣医師を確定させてもよい。
【0011】
前記指導要請情報に、
前記対面指導を受けることとなる地理的場所を表す指導希望場所情報、
がさらに含まれ、
前記指導受諾条件情報に、
前記対面指導を行うことが可能な地理的場所を表す指導可能場所情報、
がさらに含まれていてもよい。
【0012】
前記指導要請情報に、
前記対面指導の見学を希望する見学希望者を受け入れるか否かを表す見学可否情報、
がさらに含まれ、
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記見学希望者ごとに、見学したい前記獣医療分野を表す見学希望分野情報と、見学先として出向くことが可能な前記地理的場所を表す見学希望場所情報とを含む見学希望情報が格納された見学希望者データベースにもアクセスし、前記見学可否情報が前記見学希望者を受け入れる旨を表す前記一次獣医師についての前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報と、前記見学希望者ごとの前記見学希望情報とを照合することにより、該一次獣医師について、前記候補二次獣医師によって行われる前記対面指導を見学可能な前記見学希望者の抽出を行い、
前記見学可否情報が前記見学希望者を受け入れない旨を表す前記一次獣医師については、前記見学希望者の抽出を行わないこととしてもよい。
【0013】
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報と、前記見学希望者ごとの前記見学希望情報とを照合することにより、できるだけ多くの前記見学希望者が見学可能な前記対面指導が優先して行われる条件で、前記候補二次獣医師を抽出してもよい。
【0014】
前記マッチング成立通知部が、
前記マッチング成立通知処理において、前記マッチングが成立した前記担当二次獣医師によって行われる前記対面指導を見学可能な前記見学希望者に対し、該対面指導が行われる前記日程及び前記地理的場所を通知してもよい。
【0015】
前記候補二次獣医師抽出部が、
複数の前記一次獣医師の各々からの前記指導要請情報が前記指導要請情報受け付け部によって受け付けられた段階で、受け付けられた複数の前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、複数の前記一次獣医師のうちのできるだけ多くの前記一次獣医師に対して前記対面指導が行われる条件で、前記一次獣医師と、該一次獣医師に対して前記対面指導を行う前記候補二次獣医師との組み合わせを抽出してもよい。
【0016】
前記指導受諾条件情報に、
前記対面指導で使用する医療器具の種類を特定する使用医療器具情報、
がさらに含まれ、
前記候補二次獣医師抽出部が、
前記医療器具の種類ごとに、該種類の医療器具を貸し出せる日程を表す貸出可能日程情報が格納された医療器具データベースにもアクセスし、前記使用医療器具情報が表す種類の前記医療器具についての前記貸出可能日程情報を考慮して、前記候補二次獣医師の抽出を行ってもよい。
【0017】
本発明に係る獣医療技術向上支援システムは、
上述した本発明に係る獣医療技術向上支援装置と、
前記指導要請情報受け付け部に前記指導要請情報を送信する一次獣医師用端末と、
を備える。
【0018】
本発明に係る獣医療技術向上支援方法では、
コンピュータが、
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付けステップと、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出ステップと、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定ステップと、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知ステップと、
を実行する。
【0019】
本発明に係る獣医療技術向上支援プログラムは、
コンピュータを、
二次獣医師の対面指導を望む一次獣医師から、前記対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報と、前記対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報とを含む指導要請情報を受け付ける指導要請情報受け付け部、
前記二次獣医師ごとに、該二次獣医師が専門とする前記獣医療分野を表す指導可能分野情報と、該二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報とを含む指導受諾条件情報が格納された二次獣医師データベースにアクセスし、前記指導要請情報と、前記二次獣医師ごとの前記指導受諾条件情報とを照合することにより、前記一次獣医師に対して前記対面指導を行うことが可能な前記二次獣医師である候補二次獣医師を抽出する候補二次獣医師抽出部、
抽出された前記候補二次獣医師を、前記一次獣医師に対する前記対面指導を行う前記二次獣医師である担当二次獣医師として確定させる担当二次獣医師確定部、
前記担当二次獣医師が確定された場合に、前記一次獣医師と前記担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、前記一次獣医師及び前記担当二次獣医師に通知するマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一次獣医師に対して対面指導を行う担当二次獣医師が確定され、かつ一次獣医師と担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨が、一次獣医師及び担当二次獣医師に通知される。このようにして、担当二次獣医師の対面指導を受ける機会を一次獣医師に付与することにより、一次獣医師の獣医療技術の向上を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る獣医療技術向上支援システムの構成を示す概念図。
【
図2】第1実施形態に係る指導要請情報の主要部分の構成を示す概念図。
【
図3】第1実施形態に係る見学希望情報の主要部分の構成を示す概念図。
【
図4】第1実施形態に係る指導受諾条件情報の主要部分の構成を示す概念図。
【
図5】第1実施形態に係る獣医療技術向上支援装置の構成を示す概念図。
【
図6】第1実施形態に係る獣医療技術向上支援装置の機能を示す概念図。
【
図7】第1実施形態に係る獣医療技術向上支援処理のフローチャート。
【
図8】第1実施形態に係る指導受諾条件情報登録画面の一部を示す概念図。
【
図9】第1実施形態に係る指導受諾条件情報登録画面の他の一部を示す概念図。
【
図10】第1実施形態に係る指導受諾条件情報登録画面の残部を示す概念図。
【
図11】第1実施形態に係る見学希望情報登録画面の一部を示す概念図。
【
図12】第1実施形態に係る見学希望情報登録画面の残部を示す概念図。
【
図13】第1実施形態に係る指導要請情報登録画面の一部を示す概念図。
【
図14】第1実施形態に係る指導要請情報登録画面の他の一部を示す概念図。
【
図15】第1実施形態に係る指導要請情報登録画面の残部を示す概念図。
【
図16】第2実施形態に係る獣医療技術向上支援装置の機能を示す概念図。
【
図17】第3実施形態に係る獣医療技術向上支援装置の機能を示す概念図。
【
図18】第4実施形態に係る獣医療技術向上支援装置の機能を示す概念図。
【
図19】第4実施形態に係る候補二次獣医師抽出部の機能を示す概念図。
【
図20】第4実施形態に係る派遣計画を例示する図。
【
図21】第4実施形態に係る遺伝的アルゴリズムのフローチャート。
【
図22】第5実施形態に係る派遣計画を例示する図。
【
図23】第6実施形態に係る候補二次獣医師抽出部の機能を示す概念図。
【
図24】第6実施形態に係る派遣計画を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一次獣医師、二次獣医師、及び参加希望者によって利用される、実施形態に係る獣医療技術向上支援システムについて説明する。
【0023】
なお、本明細書では、獣医療技術の向上のために他の獣医師から対面指導を受けることを望む獣医師を“一次獣医師”と呼ぶ。また、一次獣医師に対して対面指導を行う立場の獣医師を“二次獣医師”と呼ぶ。一次獣医師は、典型的には、地域の獣医師である。二次獣医師は、典型的には、大学病院その他のいわゆる二次診療施設と称される医療機関に所属する獣医師である。
【0024】
但し、本明細書でいう二次獣医師の概念は、二次診療施設に所属する獣医師に限られない。本明細書でいう二次獣医師は、個人の獣医師であってもよい。また、二次診療施設に所属する獣医師であっても、専門外の分野について対面指導の受講を望む場合等には、本明細書でいう一次獣医師となりうる。
【0025】
また、本明細書では、対面指導の現場の見学を希望する者を“見学希望者”と呼ぶ。見学希望者も、典型的には、地域の獣医師である。但し、見学希望者は、二次診療施設に所属する獣医師であってもよいし、獣医師以外の者、例えば、動物看護師、獣医学を学ぶ学生等であってもよい。
【0026】
以下、図面を参照し、実施形態に係る獣医療技術向上支援システムの構成を述べる。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0027】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る獣医療技術向上支援システム500は、対面指導の受講を望む一次獣医師が操作する一次獣医師用端末100と、自己が行う対面指導の受講の相手を募る二次獣医師が操作する二次獣医師用端末200と、対面指導の現場の見学を希望する見学希望者が操作する見学希望者用端末300とを備える。
【0028】
なお、
図1には、一次獣医師用端末100を代表して1台のみ示すが、本実施形態では複数の一次獣医師の各々が個別の一次獣医師用端末100を操作するものとする。二次獣医師用端末200、見学希望者用端末300についても同様である。即ち、獣医療技術向上支援システム500は、一次獣医師用端末100、二次獣医師用端末200、及び見学希望者用端末300をそれぞれ複数台ずつ備える。
【0029】
また、獣医療技術向上支援システム500は、通信回線NEを介して、一次獣医師用端末100、二次獣医師用端末200、及び見学希望者用端末300の各々に接続される獣医療技術向上支援装置400を備える。
【0030】
獣医療技術向上支援装置400は、一次獣医師用端末100を通じて、対面指導を受けようとする一次獣医師を募る。具体的には、獣医療技術向上支援装置400は、一次獣医師用端末100から、対面指導の受講についての希望条件を表す指導要請情報110を取得する。
【0031】
図2に示すように、指導要請情報110は、対面指導を受けたい獣医療分野を表す指導希望分野情報111と、対面指導を受けたい日程を表す指導希望日程情報112と、対面指導を受けたい地理的場所を表す指導希望場所情報113と、対面指導の見学を希望する見学希望者を受け入れるか否かを表す見学可否情報114とを含む。
【0032】
図1の説明に戻る。また、獣医療技術向上支援装置400は、見学希望者用端末300を通じて、対面指導の現場を見学しようとする見学希望者を募る。具体的には、獣医療技術向上支援装置400は、見学希望者用端末300から、見学に関する希望条件を表す見学希望情報310を取得する。
【0033】
図3に示すように、見学希望情報310は、見学したい獣医療分野を表す見学希望分野情報311と、見学先として出向くことが可能な地理的場所を表す見学希望場所情報312と、見学したい日程を表す見学希望日程情報313とを含む。
【0034】
図1の説明に戻る。また、獣医療技術向上支援装置400は、二次獣医師用端末200を通じて、対面指導を行うことが可能な専門性の高い二次獣医師を募る。具体的には、獣医療技術向上支援装置400は、二次獣医師用端末200から、対面指導を行うにあたっての希望条件を表す指導受諾条件情報210を取得する。
【0035】
図4に示すように、指導受諾条件情報210は、二次獣医師が専門とする獣医療分野を表す指導可能分野情報211と、二次獣医師の指導可能な日程を表す指導可能日程情報212とを含む。
【0036】
図1の説明に戻る。そして、獣医療技術向上支援装置400は、指導要請情報110、指導受諾条件情報210、及び見学希望情報310を用いて、一次獣医師と、その一次獣医師を対面指導する二次獣医師との組み合わせを抽出するマッチング処理を行う。
【0037】
特に、
図2の見学可否情報114が見学希望者を受け入れることを表す場合、マッチング処理では、その見学可否情報114を登録した一次獣医師に対しては、見学希望分野情報311が表す条件を充足する見学希望者の割り当ても行われる。
【0038】
マッチング処理において、
図2に示す指導希望分野情報111は、
図4に示す指導可能分野情報211と照合される。また、
図2の見学可否情報114が見学希望者を受け入れることを表す場合には、
図3に示す見学希望分野情報311が、
図2に示す指導希望分野情報111、及び
図4に示す指導可能分野情報211と照合される。
【0039】
また、マッチング処理において、
図2に示す指導希望日程情報112は、
図4に示す指導可能日程情報212と照合される。また、
図2の見学可否情報114が見学希望者を受け入れることを表す場合には、
図3に示す見学希望日程情報313が、
図2に示す指導希望日程情報112、及び
図4に示す指導可能日程情報212と照合される。
【0040】
また、
図2の見学可否情報114が見学希望者を受け入れることを表す場合、
図2に示す指導希望場所情報113は、
図3に示す見学希望場所情報312と照合される。本実施形態では、二次獣医師が対面指導のために出向くことが可能な地理的場所は、任意であるとする。
【0041】
以下、獣医療技術向上支援装置400のハードウエアの構成を述べる。
【0042】
図5に示すように、獣医療技術向上支援装置400は、通信回線NEに接続される通信装置430を備える。既述の指導要請情報110、指導受諾条件情報210、及び見学希望情報310は、通信回線NE及び通信装置430を通じて、獣医療技術向上支援装置400に取り込まれる。
【0043】
また、獣医療技術向上支援装置400は、指導受諾条件情報210が蓄積されて構成された二次獣医師データベース421を記憶する補助記憶装置420を備える。二次獣医師データベース421は、二次獣医師ごとに、その二次獣医師についての指導受諾条件情報210が対応付けられたデータ構造を有する。
【0044】
また、補助記憶装置420には、見学希望情報310が蓄積されて構成された見学希望者データベース422も記憶されている。また、見学希望者データベース422は、見学希望者ごとに、その見学希望者についての見学希望情報310が対応付けられたデータ構造を有する。
【0045】
また、補助記憶装置420には、既述のマッチング処理の手順を規定した獣医療技術向上支援プログラム425も記憶されている。また、獣医療技術向上支援装置400は、獣医療技術向上支援プログラム425を実行するプロセッサ410と、プロセッサ410による獣医療技術向上支援プログラム425の実行に際し、指導要請情報110、指導受諾条件情報210、及び見学希望情報310等が一時的に蓄えられる主記憶装置440とを備える。
【0046】
以下、プロセッサ410が獣医療技術向上支援プログラム425を実行することにより実現される、獣医療技術向上支援装置400の機能について説明する。
【0047】
図6に示すように、獣医療技術向上支援装置400は、二次獣医師から指導受諾条件情報210を受け付ける指導受諾条件情報受け付け部411を備える。具体的には、指導受諾条件情報受け付け部411は、
図1に示す二次獣医師用端末200から指導受諾条件情報210を取得する。
【0048】
指導受諾条件情報受け付け部411は、指導受諾条件情報210を取得するたびに、取得した指導受諾条件情報210を、その指導受諾条件情報210を送信した二次獣医師を識別する二次獣医師ID情報と対応付けて、二次獣医師データベース421に格納する。このようにして、二次獣医師データベース421が形成されてゆく。
【0049】
また、獣医療技術向上支援装置400は、見学希望者から見学希望情報310を受け付ける見学希望情報受け付け部413を備える。具体的には、見学希望情報受け付け部413は、
図1に示す見学希望者用端末300から見学希望情報310を取得する。
【0050】
見学希望情報受け付け部413は、見学希望情報310を取得するたびに、取得した見学希望情報310を、その見学希望情報310を送信した見学希望者を識別する見学希望者ID情報と対応付けて、見学希望者データベース422に格納する。このようにして、見学希望者データベース422が形成されてゆく。
【0051】
また、獣医療技術向上支援装置400は、一次獣医師から指導要請情報110を受け付ける指導要請情報受け付け部412を備える。具体的には、指導要請情報受け付け部412は、
図1にも示した一次獣医師用端末100から指導要請情報110を取得する。
【0052】
また、獣医療技術向上支援装置400は、既述のマッチング処理を行うマッチング処理部414を備える。
【0053】
マッチング処理部414は、指導要請情報110を送信した一次獣医師に対して対面指導を行うことが可能な二次獣医師(以下、候補二次獣医師という。)を抽出する候補二次獣医師抽出部414aを有する。
【0054】
まず、候補二次獣医師抽出部414aは、指導要請情報110に含まれる見学可否情報114が、見学希望者を受け入れる旨を表すか否かを判定する。
【0055】
見学可否情報114が見学希望者を受け入れる旨を表す場合、候補二次獣医師抽出部414aは、以下の処理を行う。即ち、候補二次獣医師抽出部414aは、二次獣医師データベース421及び見学希望者データベース422にアクセスし、一次獣医師から取得された指導要請情報110と、二次獣医師ごとの指導受諾条件情報210と、見学希望者ごとの見学希望情報310とを照合することで、候補二次獣医師と、その候補二次獣医師が行う対面指導を見学可能な見学希望者とを抽出する。候補二次獣医師が複数人存在する場合、候補二次獣医師ごとに見学希望者が抽出される。
【0056】
なお、候補二次獣医師抽出部414aは、できるだけ多くの見学希望者が見学可能な対面指導が優先して行われる条件で、候補二次獣医師を抽出する。以下、一例を述べる。
【0057】
指導希望日程情報112が表す日程に、指導可能日程情報212が表す日程が包含されることを前提として、同一の一次獣医師を対面指導可能な2次獣医師が複数存在し、かつ、それら複数の2次獣医師の各々が行う対面指導の日程が互いに異なる場合がある。そして、その場合、見学希望日程情報313をさらに考慮すると、対面指導の日程ごとに、その対面指導を見学可能な見学希望者の人数が異なっているという事態が生じ得る。
【0058】
そのような場合、候補二次獣医師抽出部414aは、できるだけ多くの見学希望者が見学可能な対面指導が優先して行われる条件で、対面指導の日程の絞り込み、つまり、候補二次獣医師の絞り込みを行う。候補二次獣医師抽出部414aは、最も優先順位の高い候補二次獣医師、即ち最も多くの見学希望者が参加可能な日程で対面指導を行う候補二次獣医師を1名抽出してもよいし、優先順位の相対的に高い、複数の候補二次獣医師を抽出してもよい。
【0059】
一方、見学可否情報114が見学希望者を受け入れない旨を表す場合、候補二次獣医師抽出部414aは、見学希望情報310を考慮せずに、候補二次獣医師を抽出する。即ち、候補二次獣医師抽出部414aは、二次獣医師データベース421にアクセスし、一次獣医師から取得された指導要請情報110と、二次獣医師ごとの指導受諾条件情報210とを照合することで、候補二次獣医師を抽出する。この場合は、見学希望者の抽出は行わない。
【0060】
また、マッチング処理部414は、候補二次獣医師抽出部414aによって抽出された候補二次獣医師の中から、実際に対面指導を担当する1名の二次獣医師(以下、担当二次獣医師という。)を確定させる担当二次獣医師確定部414bを有する。
【0061】
担当二次獣医師確定部414bは、候補二次獣医師抽出部414aによって抽出された候補二次獣医師が複数人存在する場合、それら複数人の候補二次獣医師を一次獣医師へ提示させ、かついずれかの候補二次獣医師の選択を促させる候補二次獣医師提示制御を、一次獣医師用端末100に対して行う。
【0062】
そして、担当二次獣医師確定部414bは、一次獣医師が複数人の候補二次獣医師の中から所望の候補二次獣医師を選択した結果を、一次獣医師用端末100から取得し、その選択の結果が表す1名の候補二次獣医師を、担当二次獣医師として確定させる。
【0063】
また、担当二次獣医師確定部414bは、候補二次獣医師抽出部414aによって抽出された候補二次獣医師が1名のみである場合も、その候補二次獣医師を一次獣医師へ提示させ、かつその候補二次獣医師を講師として受け入れるか否かの判断結果の送信を促させる候補二次獣医師提示制御を、一次獣医師用端末100に対して行う。
【0064】
そして、担当二次獣医師確定部414bは、その候補二次獣医師を講師として受け入れる旨の判断結果を、一次獣医師用端末100から取得すると、その候補二次獣医師を担当二次獣医師として確定させる。なお、その候補二次獣医師を講師として受け入れる旨の判断結果が得られない場合は、マッチングは不成立である。
【0065】
但し、候補二次獣医師が1名のみである場合は、その候補二次獣医師の一次獣医師への提示は必須ではない。この場合、担当二次獣医師確定部414bは、抽出された1名の候補二次獣医師を、一次獣医師に提示することなく、そのまま担当二次獣医師として確定させてもよい。
【0066】
また、獣医療技術向上支援装置400は、担当二次獣医師確定部414bによって担当二次獣医師が確定された場合にマッチング成立通知処理を行うマッチング成立通知部415を備える。マッチング成立通知処理とは、一次獣医師と担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、少なくともそれら一次獣医師及び担当二次獣医師に通知する処理である。
【0067】
具体的には、マッチング成立通知処理では、少なくとも、対面指導が行われる日程を表す指導日程情報、及び対面指導が行われる地理的場所を表す指導場所情報が、一次獣医師及び担当二次獣医師に通知される。ここで、“対面指導が行われる地理的場所”とは、本実施形態では、
図2に示す指導希望場所情報113が表す地理的場所を指す。
【0068】
また、そのマッチングにおいて実現される対面指導を見学可能な上記見学希望者(以下、見学可能者という。)が存在する場合には、すべての見学可能者に対し、見学先が確保できた旨、具体的には、少なくとも上記指導日程情報及び上記指導場所情報が通知される。
【0069】
なお、マッチング成立通知部415は、一次獣医師、担当二次獣医師、及び見学可能者に対する通知を、それぞれ一次獣医師用端末100、二次獣医師用端末200、及び見学希望者用端末300を介して行う。
【0070】
また、獣医療技術向上支援装置400は、担当二次獣医師確定部414bによって担当二次獣医師が確定された場合に、少なくとも二次獣医師データベース421を更新するデータベース更新処理を行うデータベース更新部416を備える。
【0071】
具体的には、データベース更新部416は、担当二次獣医師が確定された場合は、その担当二次獣医師についての既述の指導可能日程情報212から、上記マッチングにおいて実現される対面指導の日程を除外する更新を行う。これは、同じ二次獣医師が同じ日程に重複して対面指導を行うことができないためである。
【0072】
また、データベース更新部416は、上記マッチングにおいて実現される対面指導を見学する見学可能者が存在する場合は、その見学可能者についての見学希望情報310を見学希望者データベース422から削除する更新を行ってもよい。これは、1回の見学の要請に対して複数回の見学が設定されることを避けるためである。但し、1回の見学の要請に対して複数回の見学を設定することが許容される場合は、見学希望情報310の削除は不要である。
【0073】
以下、
図7を参照し、本実施形態に係る獣医療技術向上支援システム500の動作をまとめる。
図7は、獣医療技術向上支援システム500において行われる獣医療技術向上支援処理のフローチャートである。なお、
図7において、獣医療技術向上支援装置400の動作は、本実施形態に係る獣医療技術向上支援方法を表す。
【0074】
予め二次獣医師が、二次獣医師用端末200を用いて、対面指導の相手を募る旨の指導受諾条件情報210を獣医療技術向上支援装置400に登録しているものとする(ステップS10)。指導受諾条件情報受け付け部411は、取得した指導受諾条件情報210を、その二次獣医師を識別する二次獣医師ID情報と対応付けて、二次獣医師データベース421に追記する(二次獣医師データベース追記ステップS11)。
【0075】
同様に、予め見学希望者が、見学希望者用端末300を用いて、見学を申し込む旨の見学希望情報310を獣医療技術向上支援装置400に登録しているものとする(ステップS20)。見学希望情報受け付け部413は、取得した見学希望情報310を、その見学希望者を識別する見学希望者ID情報と対応付けて、見学希望者データベース422に追記する(見学希望者データベース追記ステップS21)。
【0076】
以上説明した二次獣医師データベース421及び見学希望者データベース422が既に形成されていることを前提として、以下、マッチング処理(ステップS30-S36)について述べる。
【0077】
まず、一次獣医師が、一次獣医師用端末100を用いて、対面指導の受講を望む旨の指導要請情報110を獣医療技術向上支援装置400に送信する(ステップS30)。送信された指導要請情報110は、指導要請情報受け付け部412によって取得される(指導要請情報受け付けステップ)。
【0078】
次に、候補二次獣医師抽出部414aが、指導要請情報110を送信した一次獣医師に対して対面指導を行うことが可能な候補二次獣医師を抽出する(候補二次獣医師抽出ステップS31)。
【0079】
次に、担当二次獣医師確定部414bが、抽出された候補二次獣医師を一次獣医師へ提示させる候補二次獣医師提示制御を、一次獣医師用端末100に対して行う(候補二次獣医師提示制御ステップS32)。この候補二次獣医師提示制御を受けて、一次獣医師用端末100は、対面指導の受講が可能な候補二次獣医師を表示する(ステップS33)。
【0080】
また、一次獣医師用端末100は、表示された候補二次獣医師の中からの所望の候補二次獣医師の選択を受け付ける(ステップS34)。一次獣医師は、所望の候補二次獣医師を選択する操作を、一次獣医師用端末100に対して行う。
【0081】
すると、その選択の結果が、一次獣医師用端末100から担当二次獣医師確定部414bに送信される。担当二次獣医師確定部414bは、一次獣医師用端末100から取得した選択の結果が表す候補二次獣医師を、担当二次獣医師として確定させる(担当二次獣医師確定ステップS35)。
【0082】
なお、既述のとおり、ステップS32からS34の処理は必須ではない。候補二次獣医師抽出ステップS31で抽出された候補二次獣医師が1名のみである場合、担当二次獣医師確定部414bは、抽出された1名の候補二次獣医師を、一次獣医師に提示することなく、そのまま担当二次獣医師として確定させてもよい。
【0083】
次に、マッチング成立通知部415がマッチング成立通知処理を行う(マッチング成立通知ステップS36)。そして、このマッチング成立通知処理を受けて、一次獣医師用端末100、二次獣医師用端末200は、それぞれ一次獣医師、担当二次獣医師に、マッチングが成立した旨を通知する(ステップS37及びS38)。
【0084】
また、担当二次獣医師が行う対面指導を見学する見学希望者がステップS31で抽出されていた場合には、見学可能者に対してもマッチング成立通知処理が行われる。即ち、すべての見学可能者の各々が保有する見学希望者用端末300は、見学先が有る旨を見学可能者に通知する(ステップS39)。
【0085】
また、データベース更新部416が、データベース更新処理を行う(データベース更新ステップS40)。これにより、二次獣医師データベース421における担当二次獣医師についての指導可能日程情報212が更新される。なお、ステップS36とS40との順番は任意である。
【0086】
以下、
図8-
図10を参照し、
図7のステップS10で二次獣医師用端末200に表示される指導受諾条件情報登録画面240について説明する。指導受諾条件情報登録画面240は、指導受諾条件情報210の入力を支援するためのインタフェースである。
【0087】
図8に示すように、指導受諾条件情報登録画面240は、二次獣医師が自己の氏名を入力する入力欄221、二次獣医師が自己の住所を入力する入力欄222、その住所の最寄りの駅又は最寄りの空港を入力する入力欄223、電話番号を入力する入力欄224、及びメールアドレスを入力する入力欄225を有する。
【0088】
図9に示すように、指導受諾条件情報登録画面240は、対面指導が可能な専門分野を選択する選択欄226も有する。二次獣医師は、選択欄226に列挙された複数の専門分野のうち、対面指導が可能なものを選択する。なお、ここで“選択”とは、具体的には、チェックボックスにチェックを入れる操作を指す。二次獣医師が選択欄226で選択した結果が、
図4に示す指導可能分野情報211を表す。
【0089】
図10に示すように、指導受諾条件情報登録画面240は、対面指導のために訪問しやすい日程を入力する入力欄227、対面指導のために訪問可能な日程を入力する入力欄228、対面指導の報酬の振り込み先である口座番号を入力する入力欄229、二次獣医師が自己の肩書、資格、経歴等のプロフィールを入力する入力欄230、二次獣医師が自己の写真の画像を添付する添付欄231等も有する。二次獣医師が入力欄227及び228に入力した結果が、
図4に示す指導可能日程情報212を表す。
【0090】
次に、
図11-
図12を参照し、
図7のステップS20で見学希望者用端末300に表示される見学希望情報登録画面330について説明する。見学希望情報登録画面330は、見学希望情報310の入力を支援するためのインタフェースである。
【0091】
図11に示すように、見学希望情報登録画面330は、見学希望者が自己の氏名を入力する入力欄321、見学希望者が自己のメールアドレスを入力する入力欄322、見学希望者が自己の所属を入力する入力欄323、見学希望者が自己の勤務地を入力する入力欄324、見学希望者が自己の電話番号を入力する入力欄325、見学希望者が自己の住所を入力する入力欄326を有する。
【0092】
図12に示すように、見学希望情報登録画面330は、見学したい獣医療分野と、見学先として出向くことが可能な地理的場所との組み合わせを選択する選択欄327も有する。見学希望者は、選択欄327にマトリクス状に列挙された複数の組み合わせのうち、所望のものを選択する。なお、ここで“選択”とは、具体的には、チェックボックスにチェックを入れる操作を指す。見学希望者が選択欄327で選択した組み合わせが、
図3に示す見学希望分野情報311及び見学希望場所情報312を表す。
【0093】
次に、
図13-
図15を参照し、
図7のステップS30で一次獣医師用端末100に表示される指導要請情報登録画面140について説明する。指導要請情報登録画面140は、指導要請情報110の入力を支援するためのインタフェースである。
【0094】
図13に示すように、指導要請情報登録画面140は、一次獣医師が自己の所属する病院名を入力する入力欄121、その病院の住所を入力する入力欄122、その病院の最寄りの駅又は最寄りの空港を入力する入力欄123、その病院の電話番号を入力する入力欄124、メールアドレスを入力する入力欄125、及び一次獣医師の氏名を入力する入力欄126を有する。一次獣医師が入力欄122及び123で入力した結果が、
図2に示す指導希望場所情報113を表す。
【0095】
図14に示すように、指導要請情報登録画面140は、対面指導の見学を希望する見学希望者を受け入れるか否かを選択する選択欄127も有する。一次獣医師は、選択欄127において見学希望者を受け入れるか否かを選択する。なお、ここで“選択”とは、具体的には、プルダウンメニューから所望の選択肢を指定する操作を指す。一次獣医師が選択欄127で選択した結果が、
図2に示す見学可否情報114を表す。
【0096】
また、指導要請情報登録画面140は、対面指導を受けたい獣医療分野の専科を選択する選択欄128も有する。一次獣医師は、選択欄128において所望の専科を選択する。なお、ここで“選択”とは、具体的には、プルダウンメニューから所望の選択肢を指定する操作を指す。
【0097】
図15に示すように、指導要請情報登録画面140は、対面指導を受けたい日程の第1希望を入力する入力欄129、対面指導を受けたい日程の第2希望を入力する入力欄130、及び対面指導を受けたい日程の第3希望を入力する入力欄131を有する。一次獣医師が入力欄129-131で入力した結果が、
図2に示す指導希望日程情報112を表す。
【0098】
また、指導要請情報登録画面140は、対面指導を受けたい獣医療分野を選択する選択欄132も有する。一次獣医師は、選択欄132において所望の獣医療分野を選択する。なお、ここで“選択”とは、具体的には、プルダウンメニューから所望の選択肢を指定する操作を指す。一次獣医師が選択欄127及び132で選択した結果が、
図2に示す指導希望分野情報111を表す。
【0099】
以上、第1実施形態について説明した。第1実施形態によれば、一次獣医師に対して対面指導を行う担当二次獣医師が確定され、かつ一次獣医師と担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨が、一次獣医師及び担当二次獣医師に通知される。このようにして、担当二次獣医師の対面指導を受ける機会を一次獣医師に付与することにより、一次獣医師の獣医療技術の向上を支援することができる。
【0100】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態において、候補二次獣医師抽出部414aは、1つの指導要請情報110が指導要請情報受け付け部412によって受け付けられるたびに、マッチング処理を行ってもよいし、複数の指導要請情報110が指導要請情報受け付け部412によって受け付けられた段階で、一括してマッチング処理を行ってもよい。以下、後者を採用する場合に適した構成について述べる。
【0101】
図16に示すように、本実施形態では、指導要請情報受け付け部412によって、一次獣医師データベース423が形成される。一次獣医師データベース423は、
図5に示した補助記憶装置420に記憶されるものとする。
【0102】
一次獣医師データベース423には、予め定められた時間長の繰り返し周期の間に、指導要請情報受け付け部412によって受け付けられた複数の指導要請情報110が蓄積されている。なお、繰り返し周期は、例えば、1か月である。一次獣医師データベース423は、一次獣医師ごとに、その一次獣医師が獣医療技術向上支援装置400に送信した指導要請情報110が格納されたデータ構造を有する。
【0103】
本実施形態では、繰り返し周期の終了の時点で、マッチング処理が行われる。マッチング処理において、候補二次獣医師抽出部414aは、一次獣医師データベース423に蓄積されている複数の指導要請情報110と、二次獣医師データベース421に蓄積されている複数の指導受諾条件情報210と、見学希望者データベース422に蓄積されている複数の見学希望情報310とを照合することにより、一次獣医師と、その一次獣医師に対して対面指導を行う候補二次獣医師と、その対面指導を見学する見学希望者との組み合わせを抽出する。
【0104】
具体的には、候補二次獣医師抽出部414aは、(I)繰り返し周期の間に指導要請情報110を一次獣医師データベース423に登録したすべての一次獣医師のうち、できるだけ多くの一次獣医師に対して対面指導が行われ、かつ、(II)できるだけ多くの参加希望者が参加可能な対面指導が優先して行われる条件で、上記組み合わせの抽出を行う。
【0105】
このようにして、繰り返し周期ごとに、マッチング処理が行われる。なお、一次獣医師データベース423は、マッチング処理の終了ごとにリセットされる。マッチング成立通知部415は、マッチングが成立しなかった一次獣医師に対しても、その旨を通知する。他の構成及び動作は、第1実施形態と同じである。
【0106】
[第3実施形態]
上述した第1実施形態又は第2実施形態の構成において、二次獣医師によって予め指定された医療器具を対面指導の際に準備できることを、候補二次獣医師を抽出する条件に加えてもよい。以下、具体的に説明する。
【0107】
図17に示すように、本実施形態に係る候補二次獣医師抽出部414aは、マッチング処理において、一次獣医師データベース423、二次獣医師データベース421、及び見学希望者データベース422のみならず、医療器具データベース424も参照する。
【0108】
医療器具データベース424は、医療器具の種類ごとに、その種類の医療器具を貸し出せる日程を表す貸出可能日程情報が格納されたデータ構造を有する。一例として、医療器具データベース424は、医療器具のレンタルを行うレンタル業者が保有するサーバに格納されている。但し、医療器具データベース424は、
図5に示した補助記憶装置420に記憶されていてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、対面指導の受講者を募る二次獣医師が登録する指導受諾条件情報210に、その対面指導で使用する医療器具の種類を特定する使用医療器具情報がさらに含まれているものとする。使用医療器具情報は、その使用医療器具情報が表す種類の医療器具の、対面指導の当日における貸し出しが可能であるかを、医療器具データベース424を用いて調べるために使用される。
【0110】
本実施形態に係る候補二次獣医師抽出部414aは、医療器具データベース424にもアクセスし、使用医療器具情報が表す種類の医療器具についての医療器具貸出可能日程情報を考慮して、マッチング処理を行う。
【0111】
本実施形態では、たとえ、或る一次獣医師が登録した指導希望分野情報111と、或る二次獣医師が登録した指導可能分野情報211とが合致し、かつ、その一次獣医師が登録した指導希望日程情報112と、その二次獣医師が登録した指導可能日程情報212とが合致したとしても、その二次獣医師が登録した上記使用医療器具情報が表す種類の医療器具を対面指導の当日に準備できない場合は、その一次獣医師とその二次獣医師とのマッチングは不成立である。
【0112】
ここで“医療器具を対面指導の当日に準備できない”とは、医療器具データベース424に格納されている上記貸出可能日程情報によって特定される、その医療器具を貸し出せる日程に、対面指導の当日が含まれていないため、その医療器具を対面指導の当日に現場に手配できないことを意味する。
【0113】
つまり、本実施形態では、上記使用医療器具情報が表す種類の医療器具を対面指導の当日に準備できることを前提としたうえで、候補二次獣医師が抽出される。既述の条件(I)及び(II)が満たされるように、一次獣医師と、その一次獣医師に対して対面指導を行う候補二次獣医師と、その対面指導を見学する見学希望者との組み合わせが抽出される点は、第2実施形態の場合と同じである。
【0114】
[第4実施形態]
図18に、本実施形態に係る獣医療技術向上支援装置400の構成を示す。本構成は、
図16に示した構成から、見学希望者に係る構成を省略したものである。つまり、本実施形態では、見学希望者の募集及び対面指導への見学希望者の割り当ては省略される。他の構成及び効果は、第2実施形態と同じである。
【0115】
以下、第4実施形態として、本実施形態に係る候補二次獣医師抽出部414aに適した構成を具体的に述べる。
【0116】
図19に示すように、候補二次獣医師抽出部414aは、入力された情報を統合して制約充足問題として定式化する定式化部414a1と、定式化された問題を解くことで派遣計画を決定する最適化ソルバ部414a2とを有する。
【0117】
まず、定式化部414a1について説明する。定式化部414a1は、派遣計画を作成するために必要な情報である指導要請情報110及び指導受諾条件情報210を、最適化ソルバを利用できるように組合せ最適化問題として定式化する。
【0118】
図20に、派遣計画の一例を示す。
図20に示すように、派遣計画は、一次獣医師からの対面指導の要請(以下、単に要請という。)と、その要請に対して派遣する二次獣医師と、その派遣の日程(スケジュール)との組み合わせを示す表で表現することができる。
【0119】
この派遣計画を表す表においては、3件の要請R1,R2,R3がある。また、3名の二次獣医師D1,D2,D3がおり、3つの日程T1,T2,T3が候補となっている。
【0120】
要請に対して派遣される二次獣医師の各要素が0又は1となっており、1が記載されている二次獣医師が派遣される。例えば、要請R1に対しては二次獣医師D1が、要請R2に対しては二次獣医師D2がそれぞれ派遣される。同様に、要請に対してスケジュールの列で1が記載されている日程が派遣日となる。例えば、要請R1に対しては日程T2に派遣が行われ、要請R2に対しては日程T1に派遣が行われる。
【0121】
定式化部414a1では、このような派遣計画を組合せ最適化問題として表現する。組合せ最適化問題は、変数、目的関数、及び制約条件から構成される。
【0122】
変数は、本実施形態では、派遣される二次獣医師を表わす変数x_(r,d)^((D))∈{0,1}と、派遣の日程を表わす変数x_(r,t)^((T))∈{0,1}とを含む。ここで、“_(●)”は、●がxに対する下付きの添え字であることを表す。また、“^(〇)”は、〇がxに対する上付きの添え字であることを表す。以下同様とする。
【0123】
なお、rは、要請Rrの下付きの添え字を表す変数である。dは、二次獣医師D1,D2,D3のいずれかを表す変数である。tは、日程T1,T2,T3のいずれかを表す変数である。
【0124】
例えば、要請R1に対して二次獣医師D1を派遣する場合は、x_(1,D1)^((D))=1となり、要請R1に対する他の変数x_(1,d)^((D))(d≠D1)は0となる。同様に、要請R1に対して派遣を行う日程がT2であれば、x_(1,T2)^((T))=1となり、要請R1に対する他の変数x_(1,t)^((T))(t≠T2)は0となる。
【0125】
制約条件は、本実施形態では、例えば、
(制約1)「要請に対して1名の二次獣医師を割り当てる」、
(制約2)「要請された獣医療分野と合致する獣医療分野の二次獣医師を派遣する」、
(制約3)「該当する二次獣医師が対面指導可能な日程を割り当てる」、
(制約4)「要請に対して1日の日程を割り当てる」、
等の制約を含む。
【0126】
制約1は、上記の変数表現を採用することで、下式で表わすことができる。
【0127】
【0128】
制約2は、要請Rrにおける獣医療分野をF(Rr)とし、二次獣医師Ddの獣医療分野をF(Dd)とすると、下式で表わすことができる。
【0129】
【0130】
制約3は、要請Rrにおいて希望される日程の集合をT(Rr)とし、二次獣医師Ddの担当可能日程の集合をT(Dd)とすると、下式で表わすことができる。
【0131】
【0132】
制約4は、下式で表わすことができる。
【0133】
【0134】
目的関数は、本実施形態では、すべての制約条件を満たすことができる解は実際に実現可能であるため、必須ではない。但し、実行可能解が複数存在する場合に、その中で最良の解を1つ選択する際には、目的関数が有効である。目的関数は、例えば、下式で表すことができる。
【0135】
【0136】
上式で、fjはj番目の目的関数を表す。例えば、f1として、地理的条件を表すとする。wjはj番目の目的関数の重要性を示す重みである。
【0137】
部分目的関数を定義するために、要請R
rに対する派遣先をA(R
r)とし、要請R
iを担当する二次獣医師D
dの居住地をA(D
d)とし、その派遣先と居住地との2地点間の距離をδとする。なお、居住地は、
図8に示した入力欄222及び223への入力結果によって与えられる。この場合、下式に示す部分目的関数を用いることで、実行可能解の中から、派遣先と二次獣医師の居住地との距離を最小化する派遣計画を得ることができる。
【0138】
【0139】
また、例えば或る二次獣医師Ddが多忙であるためなるべく割当数を抑えたい場合は、部分目的関数を下式のように設定することで、実行可能解の中から二次獣医師Ddへの割当数が最小の派遣計画を得ることができる。
【0140】
【0141】
また、上述した部分目的関数f1とf2との重み付き線形和を取ったものを目的関数として用いることで、2つの条件を考慮した実行可能解を得ることができる。
【0142】
なお、二次獣医師の数や派遣日程候補が依頼数に対して充分でない過制約な場合は、実行可能解が得られ難い。そこで、そのような場合には、可能な限り制約を充足する解を得るために、目的関数を制約違反数として表現し、これを最小化する形に定式化してもよい。具体的には、この場合の目的関数は、下式で与えられる。
【0143】
【0144】
但し、
【数9】
であり、g
jは、j番目の制約条件の違反量を表す。w
jは、j番目の制約違反の重要性を示す重みである。N^((R))は、要請の総数である。N^((D))は、派遣可能な二次獣医師の総数である。
【0145】
次に、最適化ソルバ部414a2について説明する。最適化ソルバ部414a2は、定式化部414a1によって明確化された変数、制約条件、目的関数で構成される組合せ最適化問題を解く。即ち、与えられたすべての制約条件を満たす解(変数の値組)が存在する場合は、それらの中から目的関数を最小化する解を発見する。これにより、すべての変数x_(r,d)^((D))及びx_(r,t)^((T))の値が定まり、
図20に示す派遣計画が得られる。
【0146】
本実施形態に係る候補二次獣医師抽出部414aは、上述した定式化部414a1の構成に最大の特徴を有する。最適化ソルバ部414a2そのものは、公知の数理計画ソルバを用いて構成してもよいし、遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法、山登り法、タブー探索等のメタヒューリスティクスを用いて構成してもよい。
【0147】
以下では、遺伝的アルゴリズムを用いて解を求める手順について概説する。遺伝的アルゴリズムは、複数の解の候補(以下、解候補ともいう。)を作成し、それらを組み合わせることで徐々によい解を作成し、最終的に実用的な準最適解を得る最適化アルゴリズムである。
【0148】
以下では、解候補をχ1,…,χN(P)と表記し、それら解候補の集合をχと表記する。即ち、集合χは、要素χ1,…,χN(P)によって構成される。特に、遺伝的アルゴリズムでは、解候補χ1,…,χN(P)の集まりを集団と呼ぶ。本実施形態に係る集合χは、下式で与えられる。
【0149】
【0150】
図21に、遺伝的アルゴリズムのフローチャートを示す。まず、集団サイズと呼ばれるパラメータN
(P)と同数の解候補をランダムに生成する(ステップS311)。
【0151】
次に、生成した解候補χ1,…,χN(P)のそれぞれを評価する(ステップS312)。即ち、目的関数(Fとする。)の値F(χ1),…, F(χN(P))を計算する。ここで同時に,解候補χ1,…,χN(P)がすべての制約条件を満たすかどうかを確認する。すべての制約条件を満たし、目的関数の値が優れた解候補ほど問題の条件を満たすよい解候補となる。
【0152】
次に、予め定められた終了条件を満たすかどうかを確認し(ステップS313)、終了条件を満たす場合は反復を終了してその時点で最もよい解候補を出力してアルゴリズムを終了する。ここで、終了条件とは、例えば、予め決められた繰り返し回数の間、本アルゴリズムを繰り返す、あるいは、予め決められた世代の間、集団中の最良解候補の目的関数値が改善しない(それ以上の改善が困難な充分によい解が得られた)等の条件とする。
【0153】
次に、現在の集団に含まれる解候補から、新たな解候補を含む集団を作成する。例えば、交叉と突然変異の2種類の操作を用いて新しい解候補を作成する(ステップS314)。
【0154】
交叉は、2つの解候補χp,χqから、それぞれの部分解を抽出して組み合わせることで新たな解候補を作成する操作である。例えば、その1つの方法である一様交叉は、変数と同じ数のマスク変数(0又は1の値をとる)集合を用意してその値をランダムに決定し、新たに作成される解候補χuは、マスク変数の値が0の変数はχpの値を採用し、1の変数はχqの値を採用する。同時に作成される解候補χVは、マスク変数の値が0の変数はχqの値を採用し、1の変数はχpの値を採用する。このようにして、χp,χqの双方の特徴を引き継いだ新たな解候補を作成する。
【0155】
突然変異は、交叉によって得られた個体に対してごく低い確率でランダムに一部の変数の値を変更する操作である。例えば、各変数に対して1%の確率で突然変異を適用するかどうかを判定し、突然変異を適用する場合は、対象となる変数の値をランダムに変更する。
【0156】
最適化ソルバ部414a2は、上述したステップS311-314の繰り返しにより、対象問題のドメイン知識を用いることなく、良好な準最適解を発見することができる。
【0157】
[第5実施形態]
以下、第5実施形態として、
図16に示す候補二次獣医師抽出部414aに適した構成を述べる。
図19に示したように、候補二次獣医師抽出部414aが定式化部414a1と最適化ソルバ部414a2とを有する点は、第4実施形態の場合と同じである。
【0158】
定式化部414a1は、派遣計画を作成するために必要な情報である指導要請情報110、指導受諾条件情報210、及び見学希望情報310を、最適化ソルバを利用できるように組合せ最適化問題として定式化する。
【0159】
ここで、本実施形態では、第4実施形態で決定した派遣案に対して見学希望者を割り当てるのではなく、見学希望者の希望を最大限充足できるように派遣する二次獣医師の選定及び派遣日程の決定を行う点に留意されたい。即ち、本実施形態における派遣計画は、要請に対して派遣する二次獣医師と、その派遣日程と、その派遣時に受け入れる見学希望者(複数名の受け入れを許可)とから構成される。
【0160】
図22に、本実施形態に係る派遣計画を例示する。本実施形態に係る変数は、先の第4実施形態に係る変数x_(r,d)^((D))∈{0,1},x_(r,t)^((T))∈{0,1}に加えて、見学希望者の割り当てを表わす変数x_(r,g)^((G))∈{0,1}を含む。例えば、既述の要請1に対して見学希望者G
2を割り当てる場合は、x_(1,2)^((G))=1となる。
【0161】
本実施形態に係る制約条件は、先の第4実施形態に係る制約1-4に加えて、
(制約5)「要請に対して受け入れ可能な人数以下の見学希望者を割り当てる」、
(制約6)「希望する専科の見学を割り当てる」、
等の制約を含む。
【0162】
制約5は、上記の変数を用いて、下式のように表すことができる。但し、N(G)(Rr)は、要請Rrにおける受け入れ可能な見学希望者の上限を表す。
【0163】
【0164】
制約6は、下式のように表すことができる。但し、F(Gg)は、見学希望者Ggが希望する獣医療分野を表す。
【0165】
【0166】
本実施形態では、目的関数として、先の第4実施形態に係る目的関数を下式のように拡張したものを用いる。
【0167】
【0168】
但し、
【数14】
であり、N
(G)は見学希望件数である。また、部分目的関数f
3は、見学希望者の充足度を表わすものとする。具体的には、部分目的関数f
3は、下式のように設定することができる。これにより、実行可能解の中から受け入れ可能な見学希望数を最大化する派遣計画を立案できる。
【0169】
【0170】
なお、本実施形態に係る最適化ソルバ部414a2の構成は、先の第4実施形態に係る最適化ソルバ部414a2の構成と同様である。最適化ソルバ部414a2は、与えられたすべての制約条件を満たす解(変数の値組)が存在する場合は,それらの中から目的関数を最小化する解を発見する。これによりすべての変数x_(r,d)^((D)),x_(r,t)^((T)),及びx_(r,g)^((G))の値が定まり、
図22に示す派遣計画が得られる。
【0171】
[第6実施形態]
図23に、本実施形態に係る獣医療技術向上支援装置400の構成を示す。本構成は、
図17に示した構成から、見学希望者に係る構成を省略したものである。つまり、本実施形態では、見学希望者の募集及び対面指導への見学希望者の割り当ては省略される。他の構成及び効果は、第3実施形態と同じである。
【0172】
以下、第6実施形態として、本実施形態に係る候補二次獣医師抽出部414aに適した構成を具体的に述べる。
図19に示したように、候補二次獣医師抽出部414aが定式化部414a1と最適化ソルバ部414a2とを有する点は、第4実施形態の場合と同じである。
【0173】
定式化部414a1は、派遣計画を作成するために必要な情報である指導要請情報110、指導受諾条件情報210、及び医療器具についての既述の貸出可能日程情報を、最適化ソルバを利用できるように組合せ最適化問題として定式化する。
【0174】
ここで、本実施形態では、第4実施形態で決定した派遣案に対して医療器具を割り当てるのではなく、医療器具の貸出しの可否を考慮して、派遣する二次獣医師の選定及び派遣日程の決定を行う点に留意されたい。即ち、本実施形態における派遣計画は、要請に対して派遣する二次獣医師と、その派遣日程と、その派遣先で行う対面指導で必要となる医療器具の貸出計画(複数の機器の貸出しも考慮)とから構成される。
【0175】
図24に、本実施形態に係る派遣計画を例示する。本実施形態に係る変数は、先の第4実施形態に係る変数x_(r,d)^((D))∈{0,1},x_(r,t)^((T))∈{0,1}に加えて、医療器具の割り当てを表わす変数x_(r,i)^((I))∈{0,1}を含む。例えば、既述の要請1に対して医療器具I
2を割り当てる場合は、x_(1,2)^((I))=1となる。
【0176】
本実施形態に係る制約条件は、先の第4実施形態に係る制約1-4に加えて、
(制約7)「医療器具を貸出可能な日程に派遣を行う」、
(制約8)「派遣に必要な医療器具を割り当てる」、
等の制約を含む。
【0177】
制約7は、上記の変数を用いて、下式のように表すことができる。但し、T(Ii)は、医療器具Iiが貸出し可能な日程の集合を表す。
【0178】
【0179】
制約8は、下式のように表すことができる。但し、I(Rr)は、要請Rrにて必要となる医療器具の種類を表し、I(Ii)は、医療器具Iiの種類を表す。
【0180】
【0181】
本実施形態では、目的関数として、先の第4実施形態に係る目的関数を下式のように拡張したものを用いる。
【0182】
【0183】
部分目的関数f4は、地理的条件を表わすものとする。具体的には、部分目的関数f4は、下式のように設定することができる。これにより、実行可能解の中から派遣先と医療器具の送付元A(Ii)との距離を最小化する派遣計画を立案できる。
【0184】
【0185】
なお、本実施形態に係る最適化ソルバ部414a2の構成は、先の第4実施形態に係る最適化ソルバ部414a2の構成と同様である。最適化ソルバ部414a2は、与えられたすべての制約条件を満たす解(変数の値組)が存在する場合は,それらの中から目的関数を最小化する解を発見する。これによりすべての変数x_(r,d)^((D)),x_(r,t)^((T)),及びx_(r,g)^((I))の値が定まり、
図24に示す派遣計画が得られる。
【0186】
以上、第1-第6実施形態について説明した。以下に述べる変更も可能である。
【0187】
図6に示す指導受諾条件情報受け付け部411は、データベース更新部416とは独立して、二次獣医師からの要求に応じて、その二次獣医師が二次獣医師データベース421に登録している指導受諾条件情報210を書き換える書き換え処理を行ってもよい。具体的には、指導受諾条件情報受け付け部411は、登録済の指導可能日程情報212を書き換えたい旨の二次獣医師からの要求に沿って、その二次獣医師が二次獣医師データベース421に登録している指導可能日程情報212を書き換えてもよい。指導要請情報受け付け部412、見学希望情報受け付け部413についても同様である。
【0188】
図3には、見学希望日程情報313を含む見学希望情報310を例示したが、見学希望情報310は、見学希望日程情報313を含んでいなくてもよい。即ち、見学希望者が見学を希望する日程は任意であってもよい。
【0189】
また、第1-第3実施形態において、見学希望者に係る構成を省略してもよい。つまり、見学希望者の募集及び対面指導への見学希望者の割り当てを省略し、マッチング処理において一次獣医師と候補二次獣医師との組み合わせを抽出してもよい。この場合、既述の条件(II)は、一次獣医師と候補二次獣医師との最適な組み合わせを抽出するための指針から除外される。
【0190】
第1-第3実施形態では、二次獣医師が対面指導を行うために任意の地理的場所に出向くことができることを前提とし、
図2に示す指導希望場所情報113は、専ら、
図3に示す見学希望場所情報312と照合されることにより見学希望者の絞り込みに用いられた。二次獣医師が登録する指導受諾条件情報210に、その二次獣医師が対面指導を行うことが可能な地理的場所を表す指導可能場所情報が含まれていてもよい。そして、候補二次獣医師抽出部414aは、候補二次獣医師の抽出のために、
図2に示す指導希望場所情報113を、指導可能場所情報とも照合してもよい。つまり、二次獣医師が登録した指導可能場所情報が表す地理的場所に、
図2に示す指導希望場所情報113が表す地理的場所が含まれることを、その二次獣医師が候補二次獣医師として抽出されるための条件に加えてもよい。
【0191】
獣医療技術向上支援装置400のハードウエア構成及びソフトウエア構成は一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0192】
プロセッサ410、補助記憶装置420、通信装置430、及び主記憶装置440を含む獣医療技術向上支援装置400の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、
図5に示した獣医療技術向上支援プログラム425を、既存のコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータに獣医療技術向上支援装置400の機能を実現させることができる。
【0193】
獣医療技術向上支援プログラム425は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、及びDVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等が例示される。
【0194】
また、獣医療技術向上支援プログラム425は、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。つまり、通信ネットワーク上のサーバ装置に獣医療技術向上支援プログラム425を格納しておき、通常のコンピュータシステムがその獣医療技術向上支援プログラム425をダウンロード等することで獣医療技術向上支援装置400を構成してもよい。また、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)に獣医療技術向上支援プログラム425を掲示し、通信ネットワークを介して獣医療技術向上支援プログラム425を配信してもよい。また、搬送波に獣医療技術向上支援プログラム425を重畳し、通信ネットワークを介して配信してもよい。
【0195】
獣医療技術向上支援装置400の機能を、オペレーティングシステム(以下、OSと記す。)とアプリケーションプログラムの分担、又はOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合等には、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。獣医療技術向上支援プログラム425は、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行されてもよい。
【0196】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされる。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0197】
100…一次獣医師用端末、
110…指導要請情報、
111…指導希望分野情報、
112…指導希望日程情報、
113…指導希望場所情報、
114…見学可否情報、
121-126,129-131…入力欄、
127,128,132…選択欄、
140…指導要請情報登録画面、
200…二次獣医師用端末、
210…指導受諾条件情報、
211…指導可能分野情報、
212…指導可能日程情報、
221-225,227-230…入力欄、
226…選択欄、
231…添付欄、
240…指導受諾条件情報登録画面、
300…見学希望者用端末、
310…見学希望情報、
311…見学希望分野情報、
312…見学希望場所情報、
313…見学希望日程情報、
321-326…入力欄、
327…選択欄、
330…見学希望情報登録画面、
400…獣医療技術向上支援装置、
410…プロセッサ、
411…指導受諾条件情報受け付け部、
412…指導要請情報受け付け部、
413…見学希望情報受け付け部、
414…マッチング処理部、
414a…候補二次獣医師抽出部、
414a1…定式化部、
414a2…最適化ソルバ部、
414b…担当二次獣医師確定部、
415…マッチング成立通知部、
416…データベース更新部、
420…補助記憶装置、
421…二次獣医師データベース、
422…見学希望者データベース、
423…一次獣医師データベース、
424…医療器具データベース、
425…獣医療技術向上支援プログラム、
430…通信装置、
440…主記憶装置、
500…獣医療技術向上支援システム、
NE…通信回線。
【要約】
【課題】対面指導を受ける機会を獣医師に付与することにより、獣医師の獣医療技術の向上を支援することができる獣医療技術向上支援装置、獣医療技術向上支援システム、獣医療技術向上支援方法、及び獣医療技術向上支援プログラムを提供する。
【解決手段】指導要請情報受け付け部412は、一次獣医師から指導要請情報110を受け付ける。候補二次獣医師抽出部414aは、指導要請情報110と、二次獣医師ごとの指導受諾条件情報210とを照合することにより、一次獣医師に対して対面指導を行うことが可能な候補二次獣医師を抽出する。担当二次獣医師確定部414bは、抽出された候補二次獣医師を、一次獣医師に対する対面指導を行う担当二次獣医師として確定させる。マッチング成立通知部415は、一次獣医師と担当二次獣医師とのマッチングが成立した旨を、一次獣医師及び担当二次獣医師に通知する。
【選択図】
図6